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明細書 :グラフト化高分子基材の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6470031号 (P6470031)
公開番号 特開2016-117814 (P2016-117814A)
登録日 平成31年1月25日(2019.1.25)
発行日 平成31年2月13日(2019.2.13)
公開日 平成28年6月30日(2016.6.30)
発明の名称または考案の名称 グラフト化高分子基材の製造方法
国際特許分類 C08J   7/18        (2006.01)
C08F 283/02        (2006.01)
D06M  14/26        (2006.01)
FI C08J 7/18
C08F 283/02
D06M 14/26
請求項の数または発明の数 8
全頁数 14
出願番号 特願2014-257596 (P2014-257596)
出願日 平成26年12月19日(2014.12.19)
審査請求日 平成29年11月17日(2017.11.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
発明者または考案者 【氏名】宮▲崎▼ 孝司
【氏名】堀 照夫
【氏名】能藤 紘史
個別代理人の代理人 【識別番号】100111855、【弁理士】、【氏名又は名称】川崎 好昭
審査官 【審査官】芦原 ゆりか
参考文献・文献 特開2012-224729(JP,A)
特表2012-531531(JP,A)
特開平03-184557(JP,A)
特表2012-513546(JP,A)
特開2012-031294(JP,A)
国際公開第2009/017030(WO,A1)
特開2005-248362(JP,A)
特開2001-70435(JP,A)
調査した分野 C08J 7/00-02,7/12-18
B29C 71/04
D06M 14/00-36
C08J 9/00-42
C08F 251/00-289/00,291/00-297/08
特許請求の範囲 【請求項1】
高分子フィルムからなる包装袋内に高分子基材を収容した後内部を減圧して封止することで包装袋を高分子基材に密着した密封状態に設定する密封工程と、包装袋内に密封状態に設定された高分子基材に対して放射線を照射する照射工程と、包装袋を開封して水を含むラジカル重合性化合物溶液を所定量注入した後内部を減圧して封止することでラジカル重合性化合物溶液を充填した密封状態に設定する注入工程と、ラジカル重合性化合物溶液を充填した密封状態に設定された高分子基材を所定の温度で所定時間グラフト重合を行う後重合工程とを備えているグラフト化高分子基材の製造方法。
【請求項2】
高分子フィルムからなる包装袋内に高分子基材及びラジカル重合性化合物溶液を収容した後内部を減圧して封止することで高分子基材をラジカル重合性化合物溶液で充填した密封状態に設定する密封工程と、ラジカル重合性化合物溶液に充填された密封状態に設定された高分子基材に対して放射線を照射する照射工程と、ラジカル重合性化合物溶液を充填した密封状態に設定された高分子基材を所定の温度で所定時間グラフト重合を行う後重合工程とを備えているグラフト化高分子基材の製造方法。
【請求項3】
前記高分子基材は、高分子の主鎖に芳香環構造を有するG値が1未満の素材からなる請求項1又は2に記載のグラフト化高分子基材の製造方法。
【請求項4】
前記包装袋に用いる高分子フィルムは、ポリオレフィン樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、または、これらの樹脂フィルムのいずれかを内面側に積層したラミネートフィルムである請求項1から3のいずれかに記載のグラフト化高分子基材の製造方法。
【請求項5】
前記密封工程及び前記注入工程において、大気圧をゼロとしたゲージ圧で-10kPa以下の減圧状態に設定する請求項1から4のいずれかに記載のグラフト化高分子基材の製造方法。
【請求項6】
前記ラジカル重合性化合物溶液は、ラジカル重合性化合物の濃度が1重量%~70重量%である請求項1から5のいずれかに記載のグラフト化高分子基材の製造方法。
【請求項7】
前記ラジカル重合性化合物溶液は、非イオン性または陰イオン性界面活性剤を0.01~5.0重量%を含み、ラジカル重合性化合物と界面活性剤の重量比[ラジカル重合性化合物濃度(重量%)/界面活性剤濃度(重量%)]が4~2000である請求項1から6のいずれかに記載のグラフト化高分子基材の製造方法。
【請求項8】
前記高分子基材は、繊維状、シート状またはバルク状の形態を有しており、前記包装袋内に重ね合せて収容される請求項1から7のいずれかに記載のグラフト化高分子基材の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維状、シート状、バルク状といった様々な形態の高分子基材に、親水性、疎水性、吸放湿性、静電防止性、接着性、物質吸着性、温度応答性等の機能を付与した耐久性を有するグラフト化高分子基材の製造方法に関し、特に、γ線や電子線などの放射線照射により活性種(ポリマーラジカル)が生成しにくい高分子基材に、ラジカル重合性化合物を効率よくグラフト重合するグラフト化高分子基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子線照射法により高分子基材にラジカル重合性化合物をグラフト重合する放射線グラフト化高分子基材の製造方法が実用化されている。例えば、ラジカル重合性化合物溶液を付与した高分子基材を高分子フィルムの間に密着し、その高分子フィルム上から電子線を照射し、その後加熱重合を行う方法が知られている(特許文献1参照)。また、高分子基材に電子線を照射した後、ラジカル重合性化合物溶液を付与し、ラジカル重合性化合物溶液が付与された高分子基材の両面をフィルムで密着し、0℃から130℃の範囲の温度条件で後重合を促進する方法が知られている(特許文献2参照)。
【0003】
こうした従来の製造方法によれば、開放系のグラフト重合と異なり、高分子基材及びラジカル重合性化合物がフィルムシールにより空気中の酸素と遮断されており、空気雰囲気においても加熱処理することで後重合が容易に進行する。これは、高分子基材及びラジカル重合性化合物が空気中の酸素と遮断されるため、空気中の酸素によるラジカルの失活が起こり難くなるとともに、ラジカル重合性化合物の揮散が抑えられるからである。この後重合によって、高分子基材のフィラメント表層に生成したグラフト層に未反応のラジカル重合性化合物が拡散浸透し、ラジカル重合性化合物が高分子基材内部に存在するポリマーラジカルと反応することで、グラフト層が高分子基材内部へ進行してグラフト層の厚みが増加する。これにより、比較的高いグラフト率のグラフト化高分子を容易に製造することができる、という効果が期待できる。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2001-164467号公報
【特許文献2】特開2005-060555号公報
【0005】

【非特許文献1】Y. Tabata, Y. Itoand, S. Tagawa, "CRC Handbook of Radiation Chemistry", Boston, p.721-p.733 (1991)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来の製造方法により、非特許文献1に記載されているように、ポリマーラジカルの生成効率を示すG値が高い高分子基材、例えば、オレフィン系高分子基材やセルロース系高分子基材などには比較的容易にグラフト重合することができる。しかしながら、高分子の主鎖に芳香環構造を有するG値が1未満の高分子基材に対しては、従来の製造方法ではグラフト重合しにくいといった課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、ポリマーラジカル生成効率の低い高分子基材に対しても効率よくグラフト重合することができるグラフト化高分子基材の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るグラフト化高分子基材の製造方法は、厚さ0.01mm~2mmの高分子フィルムからなる包装袋内に高分子基材を収容した後内部を減圧して封止することで包装袋を高分子基材に密着した密封状態に設定する密封工程と、包装袋を密着した密封状態に設定された高分子基材に対して放射線を照射する照射工程と、包装袋を開封して水を含むラジカル重合性化合物溶液を所定量注入した後内部を減圧して封止することでラジカル重合性化合物溶液を充填した密封状態に設定する注入工程と、ラジカル重合性化合物溶液を充填した密封状態に設定された高分子基材を0℃~100℃の温度で所定時間グラフト重合を行う後重合工程とを備えている。
【0009】
本発明に係る別のグラフト化高分子基材の製造方法は、厚さ0.01mm~2mmの高分子フィルムからなる包装袋内に高分子基材及びラジカル重合性化合物溶液を収容した後内部を減圧して封止することで高分子基材をラジカル重合性化合物溶液で充填した密封状態に設定する密封工程と、ラジカル重合性化合物溶液に充填された密封状態に設定された高分子基材に対して放射線を照射する照射工程と、ラジカル重合性化合物溶液を充填した密封状態に設定された高分子基材を0℃~100℃の温度で所定時間グラフト重合を行う後重合工程とを備えている。
【0010】
上記のグラフト化高分子基材の製造方法において、前記高分子基材は、高分子の主鎖に芳香環構造を有するG値が1未満の素材からなる。さらに、前記包装袋に用いる高分子フィルムは、ポリオレフィン樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、または、これらの樹脂フィルムのいずれかを内面側に積層したラミネートフィルムである。さらに、前記密封工程及び前記注入工程において、大気圧をゼロとしたゲージ圧で-10kPa以下の減圧状態に設定する。さらに、前記ラジカル重合性化合物溶液は、ラジカル重合性化合物の濃度が1重量%~70重量%である。さらに、前記ラジカル重合性化合物溶液は、非イオン性または陰イオン性界面活性剤を0.01~5.0重量%を含み、ラジカル重合性化合物と界面活性剤の重量比[ラジカル重合性化合物濃度(重量%)/界面活性剤濃度(重量%)]が4~2000である。さらに、前記高分子基材は、繊維状、シート状またはバルク状の形態を有しており、前記包装袋内に重ね合せて収容される。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、高分子フィルムからなる包装袋内に被グラフト対象物である高分子基材を収容した後、内部を減圧して空気中の酸素の非常に少ない状態で放射線を照射することから、ラジカル重合性化合物溶液の注入工程までの搬送に時間を要しても、高分子基材に生成されたポリマーラジカルの失活を防止することができる。
【0012】
さらに、繊維状や多孔質状の高分子基材の場合、その微細な繊維間や多孔質状空間に空気を含んでおり、大気圧下ではラジカル重合性化合物溶液が細部まで注入することが難しい。そのため、ラジカル重合性化合物と照射された高分子基材との接触部分が減少し、グラフト重合反応の斑(むら)が生じやすいという問題がある。しかし、本発明では、減圧状態とすることで繊維間や多孔質状空間の空気が除去され、かつ、ラジカル重合性化合物溶液で充填した状態とすることで高分子基材の細部までラジカル重合性化合物が浸透し、グラフト化率の向上を図ることが可能となる。また、高分子基材が重ね合せて収容されている場合でも、内部の空気が除去されてラジカル重合性化合物溶液で充填された状態とすることで、内部まで斑なくグラフト重合反応を生成させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1及び2並びに比較例1から3に関するグラフト率の算出結果をまとめた表である。
【図2】実施例3-1~3-6に関するグラフト率の算出結果をまとめた表である。
【図3】実施例4-1~4-3及び実施例5-1~5-2に関するグラフト率の算出結果をまとめた表である。
【図4】実施例6及び比較例4に関するグラフト率の算出結果をまとめた表である。
【図5】実施例7及び比較例5に関するグラフト率の算出結果をまとめた表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下に記載した実施の形態によって何ら限定されるものではない。

【0015】
本発明では、高分子基材が処理中に空気中の酸素と接触する時間を減少させるため、まず、照射工程では、プラスチックフィルムからなる包装袋内に高分子基材を収容した後内部を減圧して封止することで包装袋を高分子基材に密着した密封状態に設定する密封工程を行った後、包装袋により密封状態の高分子基材にγ線又は電子線等の放射線を照射する。

【0016】
高分子基材は、密封工程により包装袋内において脱気された減圧状態で密封されているため、空気中の酸素の影響をほとんど受けることがなくなり、高分子基材中の過酸化物ラジカルの生成が抑止されるとともに生成したポリマーラジカルの失活も少なくなる。そして、包装袋が高分子基材に密着された状態に設定されているので、高分子基材に対して効率よく放射線を照射することができる。また、高分子基材全体が包装袋により包装された状態となっているので、高分子基材全体に満遍なく放射線を照射することができ、高分子基材を搬送する場合においても、包装袋に密封された状態で容易に搬送移動させることが可能で、取扱いが容易になる。

【0017】
次に、後重合工程では、密封状態の包装袋を開封して水を含むラジカル重合性化合物溶液を所定量注入した後内部を減圧して封止することでラジカル重合性化合物溶液を充填した密封状態に設定する注入工程を行った後、所定温度で所定時間グラフト重合を行う。

【0018】
注入工程によりラジカル重合性化合物溶液を充填した密封状態に設定することで、ポリマーラジカルが生成された高分子基材を空気中の酸素に極力接触しないようにすることができ、ポリマーラジカルの失活を抑止して効率よくグラフト率を向上させることが可能となる。また、包装袋内が減圧状態となっているため、少ない量の溶液でも高分子基材の細部にまで効率よく注入することができ、包装袋内への空気の流入を極力少なくして短時間で包装袋内を再度密封状態に設定することが可能となる。また、密封状態では、ラジカル重合性化合物溶液が充填された状態の中に高分子基材が密封されるため、高分子基材全体に満遍なく安定した状態で効率よくグラフト重合を行うことができる。そして、ラジカル重合性化合物溶液を充填した密封状態で容易に搬送移動することが可能で、取扱いが容易になる。

【0019】
本発明に用いる高分子基材の素材としては特に限定はなく、電子線照射によりラジカル反応の活性種が生成するものであればよい。こうした高分子素材の具体例としては、例えば、ポリエチレン(PE)若しくはポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン類、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類、ナイロンやアラミド等のポリアミド類、ポリイミド類、レーヨン、ポリビニルアルコール、セルロース、セルロース系、又はウール等が挙げられ、これらの高分子素材を複数種類含むものでもよい。高分子の主鎖に芳香環構造を有するG値が1未満の高分子基材としては、PET等のポリエステル類、ポリイミド類、芳香族ポリアミド類といったものが挙げられるが、本発明では、こうしたポリマーラジカル生成効率の低い高分子基材に対してグラフト率を向上させることができる。

【0020】
高分子基材の形態は特に限定されるものではなく、例えば、繊維状、シート状、バルク状の高分子基材が挙げられる。繊維状の高分子基材としては、トウ(束)、糸、織編物からなる布帛、不織布、立体構造状の織編物のいずれでもよい。また、シート状の高分子基材としては、フィルム、膜、シートなどのいずれでもよい。

【0021】
包装袋内に高分子基材を挿入する場合には、高分子基材の挿入量をできるだけ多くすることでグラフト率の向上を図ることができる。注入工程においてラジカル重合性化合物溶液を注入する開口から包装袋内に流入する空気量は、開口面積及び開口時間に応じて変化するが、ラジカル重合性化合物溶液を注入する開口面積及び開口時間が一定である場合、流入する空気量も一定となる。そのため、高分子基材の挿入量が多いほど、単位重量当たりの高分子基材と接触する空気量は減少することとなる。したがって、高分子基材の挿入量を多くするほど、高分子基材に生成したポリマーラジカルの空気中の酸素による失活が減少するようになり、グラフト率が向上する。繊維状又は膜状の高分子基材であれば、複数枚重ねて挿入することで、グラフト率を向上させることができる。

【0022】
本発明に用いる包装袋は、高分子フィルムを袋状に形成したもので、高分子フィルムとしては、酸素透過性の低い素材からなるものであれば特に限定されないが、PE、PP等のポリオレフィン樹脂フィルム、PET等のポリエステル樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルムといった単一の素材からなる樹脂フィルム、または、これらの樹脂フィルムを複数種類積層したラミネートフィルム、これらの樹脂フィルムとエチレン-ビニルアルコール共重合体等の酸素透過性の低い樹脂フィルムとを積層したラミネートフィルムが挙げられる。また、酸素透過率が4cc/m2/hr/atm以下の高分子フィルムが好ましい。好ましくは、上述したポリマーラジカル生成効率を示すG値の低いPETやポリイミド樹脂等の単一素材からなる樹脂フィルム、またはこうした樹脂フィルムを内面側に配置したラミネートフィルムがよい。

【0023】
また、高分子フィルムの厚みは、0.01mm~2mmが好ましく、より好ましくは、0.025mm~0.15mmである。高分子フィルムの厚みが0.01mmより薄くなると、擦傷等により遮蔽性が低下し、厚みが2mmより厚くなると、減圧処理した際に高分子基材と高分子フィルムが密着された状態となりにくい。

【0024】
包装袋の形態は、高分子基材全体を収容可能なサイズで、密封可能な袋状の形態であればよい。そして、少なくとも一部に被包装物である高分子基材を挿入する挿入口が形成されており、挿入口は、熱融着によるヒートシール法又は接着剤による接着法によって確実に封止できるものが好ましく、例えば、真空包装用に使用されている形態のものが好ましい。密封状態を数時間保持することが可能であれば、挿入口の封止に他の封止方法を用いることも可能で、例えば、取り外し可能な封止具を取り付けたり、公知のジッパーを挿入口に形成することで、包装袋の封止又は開封を適宜行うことができる。

【0025】
ラジカル重合性化合物溶液は、封止した包装袋の一部を切断して形成した開口から注入することができ、開口を挿入口と同様に封止することで包装袋を再度密封状態に設定することができる。この場合、封止した挿入口を開封してラジカル重合性化合物溶液を注入した後再度封止するようにしてもよい。

【0026】
密封工程では、包装袋内の空気は、公知の真空包装機を用いて排気することで減圧状態とすることが可能で、大気圧をゼロとしたゲージ圧で-10kPa以下の減圧状態とすることが好ましい。こうした減圧状態とすることで、包装袋内の空気の酸素による影響を受けることなく処理することができるとともに、高分子基材の形状や特性に合わせて減圧して包装袋が密着した最適な密封状態にすることが可能となる。真空包装機としては、大気圧をゼロとしたゲージ圧で-10kPa以下の減圧状態に設定可能なものであればよく、例えば、真空ポンプを備えた市販の真空包装機が挙げられる。また、注入工程においても密封工程と同様に減圧状態に設定することで、ラジカル重合性化合物溶液を充填した最適な密封状態にすることができる。

【0027】
照射工程における放射線照射は、高分子基材に対して電離作用によりポリマーラジカルを生成するエネルギーを照射可能なものであれば特に限定されず、電離放射線を広く使用することができ、例えば、α線、β線、γ線、電子線、紫外線等を挙げることができる。これらの中でも、高エネルギーであることからγ線、電子線が好ましい。放射線照射時の雰囲気温度は、低い温度の方がポリマーラジカルの生成効率は良好となるが、通常の室温でもよい。電子線の照射条件は、被照射物である高分子基材の特性(密度、厚み等)から勘案して、60キロボルト~10000キロボルト(以下、「kV」と略す。)の加速電圧を有する照射装置から、透過力のある加速電圧を選択すればよい。また、電子線の照射線量は、目的とする性能及び照射によって生ずる高分子基材の物性(強度等)低下を考慮して適宜決定すればよく、通常5キログレイ~300キログレイ(以下、「kGy」と略す。)の範囲に設定するとよい。

【0028】
後重合工程に用いるラジカル重合性化合物溶液は、電子線照射で高分子基材に生成したポリマーラジカルと結合を生じる化合物を含んでおり、こうした化合物は、ポリマーラジカルと結合するものであればよく、特に限定されない。ラジカル重合性化合物の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、メタクリルスルホン酸、スチレンスルホン酸等の酸性基を有する不飽和化合物やこれらのエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド、末端にグリシジル基や水酸基を有する不飽和化合物、ビニルホスホネート等の不飽和有機燐酸エステル、第4級アンモニウム塩、第3級アンモニウム塩等の塩基性を有する(メタ)アクリル酸エステル、フルオロアクリレート、アクリロニトリルといったものが挙げられる。また、これらの化合物は、単独又は2種以上混合して用いることができる。なお、ラジカル重合性化合物は、オリゴマーでもよい。

【0029】
ラジカル重合性化合物の濃度は、1重量%~70重量%に設定することが好ましい。濃度は1重量%より低い場合には、ポリマーラジカルとラジカル重合性化合物との接触確率が低くなり、目標となるグラフト率に到達しにくくなる。また、70重量%より高い場合には、モノマーの利用効率が大きく低下し、経済的に不利となる。

【0030】
ラジカル重合性化合物溶液は、界面活性剤を水に溶解した乳化液又は水を含む有機溶媒を用いて、ラジカル重合性化合物を溶解して所定濃度になるように希釈することができる。界面活性剤を使用する場合には、非イオン性界面活性剤またはアニオン性界面活性剤のいずれの界面活性剤でもよく、その濃度は、0.01重量%~5.0重量%が好ましい。より好ましくは、0.05重量%~1.0重量%である。濃度が0.01重量%より低い場合には、水溶媒にラジカル重合性化合物を細かく分散できず、ラジカル重合性化合物の分離層が生成し、効率的なグラフト重合が進行しない。また、5.0重量%より高い場合には、界面活性剤の高分子基材に対する吸着量が増加し、ラジカル重合性化合物の高分子基材への吸着・浸透を阻害する。

【0031】
また、ラジカル重合性化合物と界面活性剤の重量比[ラジカル重合性化合物濃度(重量%)/界面活性剤濃度(重量%)]が4~2000であることが好ましい。より好ましくは、重量比を4~400とするとよい。重量比が4より小さい場合には、界面活性剤とラジカル重合性化合物が安定なミセルを形成し、グラフト重合に供されるラジカル重合性化合物分子の供給が遅くなる。また、重量比が2000を超えると、界面活性剤濃度がラジカル重合性化合物に対して相対的に低くなり、ラジカル重合性化合物を細かく分散できない状態となる。また、有機溶媒を用いる場合は、ジメチルスルホキシド等の極性有機溶媒が好ましく、水を1重量%~98重量%混合することが好ましい。

【0032】
また、ラジカル重合性化合物溶液には、予め窒素ガス等の不活性ガスを吹き込むことで、溶存酸素を除去しておくことが望ましい。さらに、放射線照射された高分子基材を収容する包装袋内に投入するラジカル重合性化合物溶液の量は、目標とするグラフト率を勘案して適宜決定すればよく、好ましくは、高分子基材の重量以上の重量のラジカル重合性化合物を含む溶液の量を投入することが好ましい。

【0033】
ラジカル重合性化合物溶液を包装袋内に注入して溶液を充填した密封状態に設定した後、ラジカル重合性化合物を付与した高分子基材を加熱して、グラフト重合を促進する後重合処理を行う。例えば、空気雰囲気の所定温度に設定された後重合槽内で所定の時間加温することでラジカル重合性化合物のグラフト重合を促進させる。その後、洗浄・乾燥することで、グラフト化高分子基材を得ることができる。後重合温度は、好ましくは0℃~100℃、より好ましくは50℃~90℃とすることで、グラフト重合反応は促進される。後重合温度が0℃より低い場合には、反応速度が低下し、目標のグラフト率まで到達しにくい。また、100℃より高い場合には、エネルギーの利用効率が低下する水が気化するため、高圧容器を使用する必要が出てくる。また、後重合時間は、通常1分~600分の範囲に設定することが好ましく、より好ましくは5分~120分である。後重合時間が1分未満の場合には、充分なグラフト重合反応が進行せず、600分を越える場合には、生産性が低いため好ましくない。

【0034】
以上説明した製造方法により得られたグラフト化高分子基材には、ラジカル重合性化合物がグラフト重合したグラフト鎖が形成されており、形成されたグラフト鎖に機能性官能基を導入することで様々な機能性材料を作製することができる。例えば、高分子基材に酸性基や塩基基、さらには金属キレート基を導入した機能性材料、疎水性高分子基材に親水基を導入した機能性材料、親水性高分子基材に疎水性水酸基を導入した機能性材料といったものが挙げられる。
【実施例】
【0035】
次の実施例におけるラジカル重合性化合物のグラフト率は、処理前の高分子基材の乾燥重量(W1)と処理後のグラフト化高分子基材の乾燥重量(W2)から以下のように算出した。
グラフト率=(W2-W1)/W1×100(%)
【実施例】
【0036】
[実施例1]
高分子基材として、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維より織成されたタフタをヒートカッタで所定の形状に切断した布帛(一般社団法人日本規格協会製;サイズ10cm×8cm、経糸方向:84デシテックス/36f、107本/インチ、緯糸方向:84デシテックス/36f、96本/インチ)を用いた。
包装袋として、外層がポリエステルフィルム(厚み15μm)で内層がポリエチレンフィルム(厚み40μm)の2層からなるラミネートフィルムにより形成された包装袋(アズワン株式会社製;商品名冷凍・耐湯バック)を用いた。
【実施例】
【0037】
<ラジカル重合性化合物溶液の調製>
0.3gの界面活性剤ソルビタンモノラウラート(和光純薬工業株式会社製;以下、「Span20相当品」と略す。)にグリシジルメタクリレート(東京化成工業株式会社製;以下、「GMA」と略す。)を20g混合し、純水79.7gを加えた溶液に、窒素ガスを15分間通気した後、密閉ポリプロピレン容器内で磁気回転子により1時間以上撹拌することで、ラジカル重合性化合物溶液を調製した。調製した溶液のGMAの濃度は20重量%であり、Span20相当品の濃度は0.3重量%であった。
【実施例】
【0038】
<照射工程>
包装袋に布帛を挿入し、真空包装機(株式会社石崎電機製作所製;NL-240V)を用いて包装袋内を吸気して真空ゲージ圧が-80kPa以下の減圧状態に設定し、挿入口をヒートシールにより封止した。包装袋が布帛に密着した密封状態で、布帛に対して包装袋の外側から、電子線照射装置(株式会社NHVコーポレーション製)により電子線を加速電圧250kV、照射線量300kGyの条件で照射した。
【実施例】
【0039】
<後重合工程>
電子線の照射後、包装袋の一端を切断して形成された開口からラジカル重合性化合物溶液6gを30秒以内で注入し、開口から包装袋内を真空包装機により再度吸気して、真空ゲージ圧が-80kPa以下の減圧状態に設定した後、開口をヒートシールにより封止した。密封状態となった包装袋を95℃の加熱温度に設定した乾燥機内に設置し、2時間加熱して後重合処理を行った。後重合処理した後、包装袋から布帛を取り出し、メタノール及びテトラヒドロフランで順次洗浄処理し、洗浄した布帛を80℃で真空乾燥した。
【実施例】
【0040】
<評価>
電子線照射前の布帛の乾燥重量(W1)と後重合処理後の布帛の乾燥重量(W2)から、グラフト率を算出した。グラフト率は、38.1%であった。
【実施例】
【0041】
[実施例2]
実施例1で用いた包装袋の代りに、厚さ50μmのPETフィルム(東レ株式会社製;商品名ルミラー)からなる包装袋を作成し、それ以外は、実施例1と同様に、照射工程及び後重合工程を行った。
【実施例】
【0042】
<評価>
電子線照射前の布帛の乾燥重量(W1)と後重合処理後の布帛の乾燥重量(W2)から、グラフト率を算出した。グラフト率は、90%であった。
【実施例】
【0043】
[比較例1]
厚さ40μmのPPフィルムからなる包装袋(アズワン株式会社製;商品名ミニグリップ)を用いて、実施例1と同じ布帛を挿入し、実施例1と同様に真空包装機を用いて、ヒートシールにより封止した。包装袋内に密封された布帛に対して実施例1と同様に電子線を照射した。その後、電子線照射された布帛を包装袋から取り出し、蓋のあるPP製容器(旭化成株式会社製;商品名ジップロックコンテナー)に収容して、実施例1と同様のラジカル重合性化合物溶液30gを容器内に投入した。そして、容器内の窒素置換を15分間行った後、実施例1と同様に、後重合処理、洗浄処理及び乾燥処理を順次行った。
【実施例】
【0044】
<評価>
電子線照射前の布帛の乾燥重量(W1)と後重合処理後の布帛の乾燥重量(W2)から、グラフト率を算出した。グラフト率は、2.3%であった。
【実施例】
【0045】
[比較例2]
比較例1と同じ包装袋を用いて、実施例1と同じ布帛を挿入し、実施例1と同様に真空包装機を用いて、ヒートシールにより封止した。包装袋内に密封された布帛に対して実施例1と同様に電子線を照射した。その後、電子線照射された布帛を包装袋から取り出し、厚さ50μmのポリエステルフィルム2枚(東レ株式会社製;商品名ルミラー)の間に挿入して配置し、実施例1と同様のラジカル重合性化合物溶液6gをポリエステルフィルムの間に充填することで2枚のポリエステルフィルムを密着状態とした。この密着状態で、実施例1と同様に、後重合処理、洗浄処理及び乾燥処理を順次行った。
【実施例】
【0046】
<評価>
電子線照射前の布帛の乾燥重量(W1)と後重合処理後の布帛の乾燥重量(W2)から、グラフト率を算出した。グラフト率は、7.8%であった。
【実施例】
【0047】
[比較例3]
高分子基材は、実施例1と同様の布帛を用い、包装袋として、比較例2と同様のものを用いた。
【実施例】
【0048】
<ラジカル重合性化合物溶液の調製>
1,4-ジオキサン(和光純薬工業株式会社製)と1-プロピルアルコール(和光純薬工業株式会社製)を体積比6:4で混合した溶媒80gにGMAを20g混合し、混合液に窒素ガスを15分間通気した後、密閉状態のPP製容器内で磁気回転子により1時間以上撹拌することで、ラジカル重合性化合物溶液を調製した。調製した溶液のGMAの濃度は20重量%であった。
【実施例】
【0049】
<処理工程>
比較例1と同じ包装袋を用いて、実施例1と同じ布帛を挿入し、実施例1と同様に真空包装機を用いて、ヒートシールにより封止した。包装袋内に密封された布帛に対して、実施例1と同様に電子線を照射した。その後、電子線照射された布帛を包装袋から取り出し、比較例2と同様のポリエステルフィルム2枚の間に挿入して配置し、調製したラジカル重合性化合物溶液6gをポリエステルフィルムの間に充填することで2枚のポリエステルフィルムを密着状態とした。この密着状態で、実施例1と同様に、後重合処理、洗浄処理及び乾燥処理を順次行った。
【実施例】
【0050】
<評価>
電子線照射前の布帛の乾燥重量(W1)と後重合処理後の布帛の乾燥重量(W2)から、グラフト率を算出した。グラフト率は、0.3%であった。
【実施例】
【0051】
以上説明した実施例1~2及び比較例1~3のグラフト化高分子基材の製造条件と算出結果を図1に示す。算出結果をみると、布帛を包装袋に収容して減圧状態に設定した密封状態で照射工程及び後重合工程を行うことで、容器やフィルムを用いる従来の方法に比べて格段にグラフト率が向上していることがわかる。
【実施例】
【0052】
[実施例3-1~3-5]
実施例2と同様の包装袋を用い、ラジカル重合性化合物溶液は、Span20相当品の配合量のみを変化させて複数種類の溶液を実施例1と同様に調製し、それ以外は、実施例1と同様に、照射工程及び後重合工程を行った。Span20相当品の配合量については、0.05g、0.30g、1.0g、5.0g、10g、0gの6種類に設定して調製した。調製した溶液のGMA及びSpan20の濃度は、0.05gの場合に20重量%及び0.05重量%(重量比400)、0.30gの場合に20重量%及び0.3重量%(重量比67)、1.0gの場合に20重量%及び1重量%(重量比20)、5.0gの場合に20重量%及び5重量%(重量比4)、10gの場合に20重量%及び10重量%(重量比2)であった。
【実施例】
【0053】
<評価>
電子線照射前の布帛の乾燥重量(W1)と後重合処理後の布帛の乾燥重量(W2)から、グラフト率を算出した。算出されたグラフト率を図2に示す。
【実施例】
【0054】
[実施例3-6]
実施例2と同じ包装袋を用いて、実施例1と同じ布帛を挿入し、実施例1と同様に真空包装機を用いて、ヒートシールにより封止した。包装袋内に密封された布帛に対して実施例1と同様に電子線を照射した。電子線の照射後、包装袋の一端を切断して形成された開口から窒素ガスを15分間通気したGMA20gと純水80gの混合溶液6gを30秒以内で注入し、開口から包装袋内を真空包装機により再度吸気して、真空ゲージ圧が-80kPa以下の減圧状態に設定した後、開口をヒートシールにより封止した。密封状態となった包装袋を95℃の加熱温度に設定した乾燥機内に設置し、2時間加熱して後重合処理を行った。その後,実施例1と同様に、洗浄処理及び乾燥処理を順次行った。
【実施例】
【0055】
<評価>
電子線照射前の布帛の乾燥重量(W1)と後重合処理後の布帛の乾燥重量(W2)から、グラフト率を算出した。算出されたグラフト率を図2に示す。
【実施例】
【0056】
図2に示す算出結果をみると、界面活性剤であるSpan20相当品の濃度が低くなるに従い、グラフト率が高くなることがわかる。しかし、界面活性剤を配合していない実施例3-6では、グラフト率は12.4%であり、界面活性剤の配合がグラフト率の向上に寄与していることがわかる。
【実施例】
【0057】
[実施例4-1~4-3]
実施例1と同様の包装袋及び布帛を用い、ラジカル重合性化合物溶液は、実施例1と同様に調製したものを用いた。照射工程では、布帛の枚数を1枚、3枚、7枚の3種類に変更し、3枚及び7枚についてはそれぞれ重ねて包装袋に収容した。実施例1と同様に各包装袋を密封状態に設定した後、各包装袋に対して、電子線照射装置(IBA社製;ロードトロンTT220)により加速電圧10000kV、照射線量30kGyの条件で7回照射した。照射した3種類の包装袋に対して、ラジカル重合性化合物溶液を、3枚の包装袋には16g、7枚の包装袋には36g注入した他は、実施例1と同様の後重合工程を行った。
【実施例】
【0058】
<評価>
電子線照射前の布帛の乾燥重量(W1;複数枚の場合には平均値とする)と後重合処理後の布帛の乾燥重量(W2;複数枚の場合には平均値とする)から、グラフト率を算出した。算出されたグラフト率を図3に示す。
【実施例】
【0059】
[実施例5-1~5-2]
実施例2と同様の包装袋及び実施例1と同様の布帛を用い、ラジカル重合性化合物溶液は、実施例1と同様に調製したものを用いた。照射工程では、布帛の枚数を1枚及び4枚の2種類に変更し、4枚については重ねて包装袋に収容した。そして、布帛を収容した各包装袋について、それぞれ実施例1と同様の照射工程を行った。その後、ラジカル重合性化合物溶液を4枚の包装袋に21g注入した他は、実施例1と同様の後重合工程を行った。
【実施例】
【0060】
<評価>
電子線照射前の布帛の乾燥重量(W1;複数枚の場合には平均値とする)と後重合処理後の布帛の乾燥重量(W2;複数枚の場合には平均値とする)から、グラフト率を算出した。算出されたグラフト率を図3に示す。
【実施例】
【0061】
図3に示す算出結果をみると、重ねた布帛の枚数が増加するに従って、グラフト率が高くなっていることがわかる。
【実施例】
【0062】
[実施例6]
実施例1で用いた包装袋内に、実施例1と同様の布帛及び実施例1と同様に調製したラジカル重合性化合物溶液6gを収容した後、実施例1と同様の真空包装機を用いてヒートシールにより封止し、布帛をラジカル重合性化合物溶液で充填した密封状態に設定した。包装袋内に密封された布帛に対して、実施例1と同様に電子線を照射した。その後、実施例1と同様に、後重合処理、洗浄処理及び乾燥処理を順次行った。
【実施例】
【0063】
<評価>
電子線照射前の布帛の乾燥重量(W1;複数枚の場合には平均値とする)と後重合処理後の布帛の乾燥重量(W2;複数枚の場合には平均値とする)から、グラフト率を算出した。算出されたグラフト率を図4に示す。
【実施例】
【0064】
[比較例4]
厚さ50μmのポリエステルフィルム2枚(東レ株式会社製;商品名ルミラー)の間に、実施例6と同様の布帛及び実施例6と同様に調製したラジカル重合性化合物溶液6gを収容した後、実施例6と同様に電子線を照射した。その後,実施例6と同様に、後重合処理、洗浄処理及び乾燥処理を順次行った。
【実施例】
【0065】
<評価>
電子線照射前の布帛の乾燥重量(W1;複数枚の場合には平均値とする)と後重合処理後の布帛の乾燥重量(W2;複数枚の場合には平均値とする)から、グラフト率を算出した。算出されたグラフト率を図4に示す。
【実施例】
【0066】
図4に示す算出結果をみると、予め高分子基材をラジカル重合性化合物溶液で充填した密封状態に設定して電子線を照射し、後重合処理を行う方法においても、PETフィルムの間に収容した場合に比べ、グラフト率が高くなっていることがわかる。
【実施例】
【0067】
[実施例7]
実施例1と同様の包装袋を用い、高分子基材として、ポリプロピレン(PP)製不織布(株式会社カネカ製;サイズ20cm×14cm、目付40g/m2)を用いた。
【実施例】
【0068】
<ラジカル重合性化合物溶液の調製>
n-イソプロピルアクリルアミド(東京化成工業株式会社製;以下、「NIPAM」と略す。)21.5gとGMA1.5gをエタノール(和光純薬工業株式会社製)23gと純水54gを混合した溶液に溶解し、窒素ガスを15分間通気した。
【実施例】
【0069】
<照射工程及び後重合工程>
実施例1で用いた包装袋内に,不織布及びラジカル重合性化合物溶液10gを収容した後,実施例1と同様の真空包装機を用いてヒートシールにより封止し、不織布をラジカル重合性化合物溶液で充填した密封状態に設定した。包装袋内に密封された不織布に対して、実施例1と同様の電子線照射装置を用いて、加速電圧250kV、照射線量100kGyの条件で照射した。
【実施例】
【0070】
電子線の照射後、包装袋を50℃の加熱温度に設定した乾燥機内に設置し、30分加熱して後重合処理を行った。後重合処理した後、包装袋から不織布を取り出し、熱水及びテトラヒドロフランで順次洗浄処理し、洗浄した不織布を80℃で真空乾燥した。
【実施例】
【0071】
<評価>
電子線照射前の布帛の乾燥重量(W1;複数枚の場合には平均値とする)と後重合処理後の布帛の乾燥重量(W2;複数枚の場合には平均値とする)から、グラフト率を算出した。算出されたグラフト率を図5に示す。
【実施例】
【0072】
[比較例5]
厚さ50μmのポリエステルフィルム2枚(東レ株式会社製;商品名ルミラー)の間に、実施例7と同様の不織布及び実施例7と同様に調製したラジカル重合性化合物溶液10gを収容した後、ポリエステルフィルム上から、実施例7と同様の電子線照射装置を用いて加速電圧250kV、照射線量100kGyの条件で、電子線を照射した。その後、実施例7と同様に、後重合処理、洗浄処理及び乾燥処理を順次行った。
【実施例】
【0073】
<評価>
電子線照射前の布帛の乾燥重量(W1;複数枚の場合には平均値とする)と後重合処理後の布帛の乾燥重量(W2;複数枚の場合には平均値とする)から、グラフト率を算出した。算出されたグラフト率を図5に示す。
【実施例】
【0074】
図5に示す算出結果をみると、予め高分子基材をラジカル重合性化合物溶液で充填した密封状態に設定して電子線を照射し、後重合処理を行う方法を用いると、PP製不織布においても、PETフィルムの間に収容した場合に比べ、グラフト率が高くなっていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に係る製造方法により得られたグラフト化高分子基材は、グラフト重合したラジカル重合性化合物からなるグラフト鎖の存在およびその後の化学修飾により、親水性、疎水性、吸放湿性、静電防止性、難燃性、接着性、抗菌性、温度応答性、物質吸着性等の各種機能が高耐久性で付与されており、付与された機能に応じて、例えば、吸湿性繊維、難燃繊維、金属回収フィルターといった各種用途に有用に適用されうる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4