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明細書 :容量型ガスセンサ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6583858号 (P6583858)
公開番号 特開2016-170172 (P2016-170172A)
登録日 令和元年9月13日(2019.9.13)
発行日 令和元年10月2日(2019.10.2)
公開日 平成28年9月23日(2016.9.23)
発明の名称または考案の名称 容量型ガスセンサ
国際特許分類 G01N  27/22        (2006.01)
FI G01N 27/22 A
請求項の数または発明の数 5
全頁数 13
出願番号 特願2016-046713 (P2016-046713)
出願日 平成28年3月10日(2016.3.10)
優先権出願番号 2015046831
優先日 平成27年3月10日(2015.3.10)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成31年1月22日(2019.1.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
発明者または考案者 【氏名】伊東 栄次
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
審査官 【審査官】小澤 瞬
参考文献・文献 特開2015-007618(JP,A)
国際公開第2015/022891(WO,A1)
国際公開第2011/065507(WO,A1)
特開平06-118045(JP,A)
特開平03-118461(JP,A)
特開平06-011474(JP,A)
国際公開第2013/182542(WO,A1)
特開2008-196955(JP,A)
国際公開第2003/021246(WO,A1)
米国特許出願公開第2004/0194546(US,A1)
中国特許出願公開第101363810(CN,A)
国際公開第2014/030129(WO,A1)
調査した分野 G01N 27/22
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
基板上に、第1の電極層と、第1の電極層を被覆する感応膜と、前記第1の電極層対向して前記感応膜の表面に設けられた第2の電極層とを備え、第2の電極層が、ナノカーボン材と樹脂との複合材料からなる容量型ガスセンサであって、
前記基板として、前記第1の電極層を兼ねる導電性を有するシリコン基板が用いられ、
前記感応膜が感光性樹脂からなるとともに、前記シリコン基板の表面を被覆するSiO2膜の上に形成され、
前記第2の電極層が、前記感応膜に用いられている樹脂と同一の樹脂と前記ナノカーボン材とからなる複合電極として形成され、前記ナノカーボン材が互いに絡み合った網目状に形成されることにより導電性と通気性を備え、かつ、前記感応膜と一体的に形成されていることを特徴とする容量型ガスセンサ。
【請求項2】
前記感応膜として、前記感光性樹脂にかえてフッ素化ポリイミドが用いられていることを特徴とする請求項記載の容量型ガスセンサ。
【請求項3】
前記ナノカーボン材として、SWCNT、MWCNT、DWCNT、グラフェンから選ばれる一種、もしくは複数種が用いられていることを特徴とする請求項1または2記載の容量型ガスセンサ。
【請求項4】
前記第2の電極層が、前記感応膜の厚さの数倍程度の厚さに設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載の容量型ガスセンサ。
【請求項5】
前記感応膜の厚さが0.4~1.5μm、前記第2の電極層の厚さが0.75~13μmであることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載の容量型ガスセンサ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、湿度等の計測に用いられる容量型ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
容量型の湿度センサは、水分の吸着によって誘電率が変化する感湿膜(感応膜)の静電容量を計測することにより湿度を検知するものである。容量型の湿度センサには、感湿膜上にくし歯状に電極を配置し、電極間の容量を計測する構成としたもの(引用文献1)や、感湿膜を厚さ方向に挟む電極を配置して感湿膜の容量を計測する構成としたものがある(特許文献2、3)。本発明者は、感応膜の外表面に設ける電極層をナノカーボン材により形成することにより、感応膜へのガス透過性を向上させ、1秒以下の応答特性が得られる容量型ガスセンサを提案している(特許文献4)。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2006-133191号公報
【特許文献2】再表2010/113711号公報
【特許文献3】特開2007-139447号公報
【特許文献4】特開2015-7618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、湿度センサには、エアコンによる空調管理といった一般的な湿度検知の他に、冷蔵庫内での低湿度、高湿度状態を検知する、乾燥機や電子レンジといった高温での湿度状態を検知する、呼気中の湿度を検知するといった、さまざまな用途での使用が求められている。
これらの用途に対応できるようにするには、容量型ガスセンサの感度、応答特性の改善に加えて、測定環境下における安定性、小型化による各種機器との複合利用の可能性を高める必要がある。
本発明は、ガスの検知感度と応答特性に優れ、小型化が可能で、回路部品として容易に搭載可能な容量型ガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る容量型ガスセンサは、基板上に、第1の電極層と、第1の電極層を被覆する感応膜と、前記第1の電極層対向して前記感応膜の表面に設けられた第2の電極層とを備え、第2の電極層が、ナノカーボン材と樹脂との複合材料からなる容量型ガスセンサであって、前記基板として、前記第1の電極層を兼ねる導電性を有するシリコン基板が用いられ、前記感応膜が感光性樹脂からなるとともに、前記シリコン基板の表面を被覆するSiO2膜の上に形成され、前記第2の電極層が、前記感応膜に用いられている樹脂と同一の樹脂と前記ナノカーボン材とからなる複合電極として形成され、前記ナノカーボン材が互いに絡み合った網目状に形成されることにより導電性と通気性を備え、かつ、前記感応膜と一体的に形成されていることを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係る容量型ガスセンサにおいては、前記感応膜として、前記感光性樹脂にかえてフッ素化ポリイミドが好適に用いられる。
【0007】
また、本発明に係る容量型ガスセンサにおいては、前記ナノカーボン材として、SWCNT、MWCNT、DWCNT、グラフェンから選ばれる一種、もしくは複数種が好適に用いられる。
【0008】
本発明に係る容量型ガスセンサにおいては、前記第2の電極層が、前記感応膜の厚さの数倍程度の厚さに設定されていること、また、前記感応膜の厚さが0.4~1.5μm、前記第2の電極層の厚さが0.75~13μmに設けられていることが有効である。
【0009】
本発明に係る容量型ガスセンサは、水分を検知して湿度センサとして使用することができるが、湿度センサとして利用する他に、アルコールやアルデヒド等の有機化合物を検出するセンサとして利用することが可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る容量型ガスセンサは、高感度でかつ応答特性に優れた容量型ガスセンサとして提供することができる。

【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】容量型ガスセンサの構成例を示す断面図である。
【図2】容量型ガスセンサの製造工程(感応膜を形成した状態)を示す説明図である。
【図3】容量型ガスセンサの製造工程(転写する状態)を示す説明図である。
【図4】感応膜にポリイミド系の感光性樹脂を使用したときの相対湿度と静電容量との相関関係を測定した結果を示すグラフである。
【図5】感応膜をポリイミド(Kapton:登録商標)としたときの相対湿度と静電容量との相関関係を測定した結果を示すグラフである。
【図6】感応膜に感光性樹脂(PPI)、フッ素化ポリイミド(FPI)、ポリイミド(KPI)を使用した場合の加湿時の電気容量の変化を測定した結果を示すグラフである。
【図7】感応膜に感光性樹脂(PPI)、フッ素化ポリイミド(FPI)、ポリイミド(KPI)を使用した場合の除湿時の電気容量の変化を測定した結果を示すグラフである。
【図8】シリコン基板を基板として用いた容量型ガスセンサの構成を示す断面図である。
【図9】シリコン基板を用いた容量型ガスセンサと従来型の容量型ガスセンサの感度を比較して示すグラフである。
【図10】第2の電極層を形成する操作として、転写操作を15回行ったセンサの断面SEM像である。
【図11】第2の電極層を形成する操作として、転写操作を30回行ったセンサの断面SEM像である。
【図12】第2の電極層の膜厚を変えたときの応答時間を測定した結果を示すグラフである。
【図13】本発明に係る容量型ガスセンサと従来品の性能指数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(容量型ガスセンサの構成例)
図1は、感応膜に感光性樹脂を使用した容量型ガスセンサ10の断面図である。この容量型ガスセンサ10は、基板12上に、第1の電極層14と感応膜16と第2の電極層18とを、この順に積層した構成を備える。基板12には、第1の電極層14と第2の電極層18と容量計とを接続する接続パッド(不図示)を、それぞれ第1の電極層14と第2の電極層18に個別に接続して設ける。

【0013】
基板12は容量型ガスセンサの素子を支持する支持部材であり、基板12には、ガラス基板や樹脂基板、フレキシブル基板、シリコン基板を用いることができる。透明電極(ITO)付きガラス基板を用いれば、透明電極を第1の電極層14としてセンサを構築することができる。樹脂基板やシリコン基板を使用すれば、回路基板やシリコンチップに回路部品として搭載することができ、フレキシブル基板を使用することで各種基板と組み合わせて使用することができる。

【0014】
第1の電極層14は、第2の電極層18とで感応膜16を厚さ方向に挟む配置とすることでキャパシタを構成する。第1の電極層14は電極として作用するものであればその材質は限定されるものではなく、透明電極(ITO)、あるいはCu、Al、Au等の導体金属、Agナノ粒子等のナノ金属粒子等が利用できる。第1の電極層14を形成する方法も、塗布法、スパッタリング法、めっき法等の適宜成膜方法が利用できる。

【0015】
感応膜16は、電気容量変化を検知するためのキャパシタを構成する誘電体となるものであり、適宜誘電材料によって形成される。誘電材料としては、非導電性高分子が利用できる。とくにフッ素化ポリイミド(FPI)は、ポリイミドの有する親水性とフッ素の有する疎水性を備えることから、応答特性に優れ感応膜として好適に利用できる。

【0016】
フッ素化ポリイミドの他に感光性樹脂を使用することもできる。感光性樹脂は露光及び現像操作によって所定パターンに形成できることから、回路基板等の製造工程において広く用いられている。感応膜16に感光性樹脂を用いることができれば、センサの大きさや形状、センサを配置する位置をパターニングにより任意に設定することができ、基板に容易に作り込むことができ、小型化が容易に可能になるという利点がある。

【0017】
第2の電極層18は、樹脂とカーボンナノチューブとの複合材料から形成される。この第2の電極層18は、カーボンナノチューブが互いに絡み合った網目状に形成され、所要の導電性と通気性(ガス透過性)を備える。カーボンナノチューブが網目状に形成されることにより、第2の電極層18には、10nm~数百nmの開口部(ガスが通過する部分)がいたるところに形成され、開口部を介して第2の電極層18の厚さ方向に、ガス(水分子)が簡単に移動可能となる。こうして、第2の電極層18は、キャパシタを構成する電極としての作用と、ガス(水分子)の流通を妨げずに、感応膜16にガス(水分子)を透過させ、感応膜16から離脱するガス(水分子)を放出する作用をなす。

【0018】
なお、第2の電極層18には、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、二層カーボンナノチューブ(DWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)、グラフェン等のナノカーボン材を用いることができる。ナノカーボン材は樹脂と複合化することにより、ナノカーボン材が絡み合って網目状となって、ガスが通過する開口部が形成される素材であれば適宜素材を使用することができ、複数のナノカーボン材を組み合わせて使用することができる。

【0019】
(容量型ガスセンサの製造例)
図2及び図3は、図1に示す容量型ガスセンサ10の製造例を示す。この容量型ガスセンサ10はITO付きのガラス基板を用い、感応膜16としてポリイミド系の感光性樹脂を使用し、第2の電極層18を構成するナノカーボン材として多層カーボンナノチューブを使用した例である。
まず、透明電極付きのガラス基板を混酸によりエッチングし、第1の電極層14をパターン形成する。第1の電極層14をパターン形成する際に、容量計と接続するための接続パターンと接続パッドを形成する。

【0020】
次いで、第1の電極層14を形成した基板12上に感応膜16を形成する。基板12と感応膜16との密着性を向上させるため、感応膜16を形成する前に、基板12表面に紫外線照射し、シランカップリング剤を用いて表面処理した。
本実施形態では、感光性樹脂(溶液)を、第1の電極層14を形成した基板12上にスピンコートし(700rpm、10s 1000rpm、30s)、プリベーク処理(70℃、2min 120℃、10min)を施し、露光及び現像処理により、第1の電極層14の平面配置位置に合わせて、第1の電極層14を被覆するように感応膜16をパターン形成した(パターニング工程)。
次いで、洗浄処理、加熱キュア(140℃、30min 350℃、1h、N2ガス中)を施して感応膜16とした。なお、実施形態で使用した感光性樹脂は、ポリイミド系の感光性樹脂(フォトニース:登録商標)である。

【0021】
図2は、ITO付きのガラス基板を用いて基板12上に第1の電極層14を形成し、第1の電極層14を覆うように感光性樹脂からなる感応膜16を形成した状態である。容量計に接続される接続パッド(不図示)は感応膜16の平面領域よりも外側に引き出して形成する。

【0022】
次に、感応膜16の表面に第2の電極層18を形成する。本実施形態では、スタンパを利用して転写する方法により第2の電極層18を形成した。
図3(a)は、スタンパ20のスタンプ面に、第2の電極層18となるナノカーボン材を含む電極材料24を供給した状態を示す。電極材料24はスタンパ20のスタンプ面(凸版)の全面に供給する。
スタンパ20は基板21の表面に柔軟性のあるPDMS(ポリジメチルシロキサン)を凸版状に被着形成したものである。PDMSは離型性が良く、スタンパの凸版材料として好適に使用することができる。スタンパ20には感応膜16の平面形状に合わせて凸版22が形成されている。実施形態では、感応膜16の平面領域よりも若干広い平面領域を被覆するように凸版を形成した。

【0023】
スタンパ20のスタンプ面に、電極材料24を供給する操作は、次のようにして行った。まず、MWCNTをイソプロピルアルコールに分散させた分散液をスタンパ20上にスピンコートし(4000rpm、30s)、次いで、SWCNTをイソプロピルアルコールに分散させた分散液をディップコート(2mm/s)した後、さらに、スタンプ面に感光性樹脂の前駆体であるポリアミド酸の樹脂(溶液)をスピンコートし(700rpm、10s 4000rpm、30s)、60℃で乾燥させ、溶剤を散逸させた。感光性樹脂は感応膜16に用いた感光性樹脂と同一のものである。

【0024】
スタンパ20に電極材料24を供給する操作として、まずカーボンナノチューブの分散液を供給する操作を行う理由は、ナノカーボン材(カーボンナノチューブ)をはじめに供給することで、スタンパ面にナノカーボン材を接触させるようにし、ナノカーボン材の離型性の良さを利用して電極材料24が容易に転写されるようにするためである。
ナノカーボン材の分散液を供給した後に感光性樹脂の前駆体となる樹脂(溶液)を供給するのは、感応膜16を構成する感光性樹脂と電極材料24とをなじませ、感応膜16と電極材料24(第2の電極層18)との密着性を向上させるためである。

【0025】
図3(b)は、スタンパ20から基板12に電極材料24を転写する操作を行っている状態を示す。スタンパ面を基板12上の感応膜16の平面配置位置に合わせてスタンパ20をプレスすることにより。スタンパ20から感応膜16に電極材料24が転写される。実施形態では、感応膜16の平面領域よりもスタンパ20のスタンプ面をやや広くとり、感応膜16の側面にも電極材料24が転写されるようにしている。
転写操作は150℃、加圧力2.7MPaで5分間で行った。転写後、加熱キュア操作(140℃、30min 350℃、1h、N2ガス中)により第2の電極層18を形成した。

【0026】
図1が、上述した操作によって作製した容量型ガスセンサ10である。第2の電極層18が感光性樹脂からなる感応膜16の側面を含む露出面を被覆している。なお、容量計に接続される接続パッドのうち第2の電極層18に接続するものは第2の電極層18の側面から引き出され、第1の電極層14に接続するものは第2の電極層18と短絡しない配置として引き出される。

【0027】
(容量型ガスセンサの特性)
図4は、上述した方法によって作製した容量型ガスセンサ(感応膜16として感光性樹脂を使用している)の相対湿度と静電容量との相関関係を測定した結果を示すグラフである。図4では、30℃、50℃、70℃でそれぞれ加湿したとき、除湿したときの静電容量値を示す。この測定結果をみると、0%~90%の広い湿度範囲で静電容量が高精度に線形応答していることがわかる。また、温度を変えたときの静電容量値の変化量が僅かであり、温度に対して安定した特性を有することがわかる。

【0028】
図5は、比較例として、図1と同一の構成を有する容量型ガスセンサにおいて、感応膜16を代表的なポリイミドであるKapton(登録商標)型ポリイミドにより形成したセンサについて、相対湿度と静電容量との相関関係を測定した結果を示す。この場合は、相対湿度と静電容量との間に一定の線形応答特性は見られるものの、温度を変えた場合に、静電容量値が大きく変動する結果となった。したがって、温度安定性の面から見ると、このタイプの容量型ガスセンサは適していないといえる。

【0029】
図6、7は、図1と同一の構成を有する容量型ガスセンサにおいて、感応膜16に感光性樹脂(PPI:Photosensitive Polyimide)、フッ素化ポリイミド(FPI)、ポリイミド(KPI Kapton:登録商標)を使用した場合について、応答時間を測定したグラフである。図6は加湿時(立ち上がり)、図7は除湿時(立下り)の静電容量値の測定結果を示す。
図6、7において特徴的な点は、感応膜16としてFPI、KPIを使用した場合と比較してPPIを使用した場合は、湿度の変化に対する静電容量値の変化量が大きいということである。静電容量値の変化量が大きいということはPPIはFPIやKPIと比較して湿度の感度が優れていることを示す。

【0030】
表1に、3種類の感応膜について、加湿時と除湿時の応答時間をまとめた。立ち上がりの応答時間は、静電容量の初期値と飽和値の静電容量値の差の90%まで静電容量値が増加するまでの時間、立下りの応答時間は、静電容量の初期値(飽和値)と終値(最小値)の静電容量値の差の90%まで静電容量値が減少するまでの時間とした。
【表1】
JP0006583858B2_000002t.gif

【0031】
表1から、感応膜に感光性樹脂(PPI)を使用した場合は、フッ素化ポリイミド(FPI)を使用した場合と比較して応答時間はやや劣るものの、KPIと比較すると明確に応答時間が短くなる。これまでの実験から、容量型ガスセンサの応答時間は、感応膜の膜厚の2乗に比例することが分かっている。したがって、感光性樹脂(PPI)を使用した場合に応答時間を短縮するには膜厚を薄くすればよい。たとえば、PPIの厚さを2μmから0.5μmにしたとすると、応答時間は0.5秒になる。

【0032】
なお、応答特性の試験は、恒温恒湿槽内に、開閉扉を取り付けたチャンバー(内容積:約110cm3)を設置し、チャンバー内に測定対象である容量型センサをセットし、チャンバーに乾燥空気を流入させチャンバー内を乾燥状態(湿度0~2%RH)とした後、恒温恒湿槽内を測定しようとする湿度に設定し、チャンバーの開閉扉を開き(加湿)、容量計(LCRメータ)でサンプルの静電容量の変化を計測し、開閉扉を開いてから所定時間後(100秒後)に開閉扉を閉じ、チャンバー内に乾燥空気を流入させ、除湿時の静電容量の変化を計測する方法で行った。

【0033】
本実施形態の容量型ガスセンサは感応膜を感光性樹脂によって形成するから、感応膜は露光及び現像操作により、任意の大きさ(平面領域)に形成することができ、5mm径程度の大きさに形成することも容易である。
また、第1の電極層は、回路基板の製作で一般的に利用されている、塗布法、めっき法、スパッタリング法等の成膜方法が利用でき、感光性樹脂は回路基板のパターニングに利用されているから、回路基板の製造工程に本発明に係る容量型ガスセンサを作り込む工程を組み込むことは容易に可能であり、容量型ガスセンサを組み込んだ回路基板(樹脂基板、フレキシブル基板)として提供することができる。

【0034】
(シリコン基板を用いた容量型ガスセンサの構成例)
図8は、基板31に導電性を有するn型シリコンを用いて容量型ガスセンサ30を構成した例である。この容量型ガスセンサ30は、基板31上に、感応膜32と、感応膜32を厚さ方向に挟む配置に第2の電極層34が形成され、基板31と容量計とを接続する接続パッド36が形成されたものである。n型シリコンからなる基板31が第1の電極層に相当し、基板31と感応膜32と第2の電極層34とで静電容量を検知するキャパシタが構成される。

【0035】
本実施形態では、感応膜32と接続パッド36を所定パターンで形成するため、基板31の表面に感光性樹脂38をコーティングし、露光及び現像操作により、基板31上に感応膜32となる部位と接続パッド36となる部位を露出させた。
感応膜32にはフッ素化ポリイミドを使用し、フッ素化ポリイミドを感応膜32となる部位の凹部を充填するように基板31の表面に塗布し、加熱キュアにより感応膜32とした。
第2の電極層34は、前述したナノカーボン材(カーボンナノチューブ)を含む電極材料を転写する方法によって形成した。
接続パッド36は、基板31に導通させて設けたアルミニウム電極36aの表面にAgナノ粒子36bを塗布して形成した。

【0036】
図9は、本実施形態のシリコン基板を使用した容量型ガスセンサ30と、感応膜をフッ素化ポリイミドとし、第1の電極層をAgナノ粒子を塗布して形成した従来型の容量型ガスセンサ(図1と同様の構成を備える)の感度を比較して示したものである。
図9は、シリコン基板を使用した容量型ガスセンサの感度が、従来型の容量型ガスセンサと比較して若干劣っていることを示す。この理由は、比較対象として従来型の容量型ガスセンサはセンサの検知部の実効面積が16mm2であるのに対して、図8のシリコン基板を用いた容量型ガスセンサでは、電極面積のうち感光性樹脂38からなる絶縁層を介さない部分に相当する実効面積が9.6mm2で、第2の電極層34直下の絶縁層(感光性樹脂)の部分の面積が容量値変化に寄与しないことと、水蒸気の出入りにより感応膜32直下のシリコン基板表面のSiO2膜の容量値が変化しないことによるものである。

【0037】
本実施形態の容量型ガスセンサ30は、感光性樹脂38を利用してセンサの検知部分をパターニングして形成するから、センサを容易に小型化することができるという利点がある。また、本実施形態では、感応膜32としてフッ素化ポリイミドを使用したが、前述したように感光性樹脂そのものを感応膜として利用することもできる。その場合は、センサの検知部分として感光性樹脂をパターニングし、パターニングした感光性樹脂に合わせて第2の電極層を形成すればよい。
また、第1の電極層を兼ねて導電性のシリコン基板31を使用することで、容量型ガスセンサのチップ部品として構築することができ、回路基板への搭載用部品として利用することも可能となる。また、シリコン基板に静電容量値を検知する検知用回路を組み込むことにより、さらに汎用的に利用できるチップ部品として構築することも可能である。

【0038】
(第2の電極層による作用)
前述したように、本発明に係る容量型ガスセンサでは、静電容量値を検知するキャパシタの第2の電極層(感応膜にガスが出入りする露出面側の電極層)として、ナノカーボン材を含む複合電極を用いる。ナノカーボン材を用いるのは、第2の電極層を網目状の電極としてガス(水分等)が容易に透過できるようにするためである。
容量型ガスセンサの応答特性に第2の電極層がどのように作用するかを調べるため、第2の電極層の厚さを変えたときの応答特性について調べた。

【0039】
第2の電極層は転写操作を繰り返すことによりより厚く形成することができる。また、転写に用いるナノカーボン材の分散液の濃度を変えたり、電極層と複合化して用いる樹脂の前駆体の溶液の量(厚さ)を変えることによって厚さを調節することができる。
図10、11は、転写操作を繰り返して第2の電極層を厚く形成した例を示す。図10は転写操作を15回行った場合、図11は転写操作を30回行った場合のセンサの断面SEM像である。図10、11において、A部分がガラス基板上のITO電極(第1の電極層)で、図10では厚さ167nm、図11では厚さ165nmである。B部分が感応膜のフッ素化ポリイミド層で、図10、11ともに、厚さ350nmである。C部分が第2の電極層で図10では厚さ750nm、図11では1200nmである。D部分は第2の電極層の表面位置を知るために設けたAu層(25nm)である。
上記サンプルは、スタンパにMWCNTをスピンコートし、SWCNTをディップコート、さらにフッ素化ポリイミド(FPI)をスピンコートして転写したものである。

【0040】
このように転写操作を繰り返すことにより、第2の電極層を厚く形成することができる。
図12に第2の電極層の厚さを変えた容量型ガスセンサについて応答時間を測定した結果を示す。表2に、第2の電極層の膜厚に対する応答時間を示す。測定したガスセンサは図1と同様の構成を備えるセンサで、フッ素化ポリイミドを感応膜とし、第2の電極層をカーボンナノチューブとフッ素化ポリイミドの複合電極としたものである。
【表2】
JP0006583858B2_000003t.gif

【0041】
表2に示す測定結果は、第2の電極層の厚さを数μm程度まで厚くしても、応答時間は1秒程度であり、応答時間の特性の劣化を大きくは招かないことを意味する。すなわち、ナノカーボン材と樹脂との複合電極構造とした第2の電極層は優れたガス透過性を備えていることがわかる。
容量型のガスセンサの応答特性(応答時間)は、感応膜の膜厚を薄くすることにより向上することが分かっている。第2の電極層は感応膜の外面を被覆するように設けるから、第2の電極層の厚さをある程度厚くして感応膜を保護するようにすることで、感度及び応答特性にすぐれ、安定性、耐久性を備えた容量型ガスセンサとすることができる。

【0042】
(第2の電極層の他の形成方法)
上記例においては第2の電極層を形成する方法として転写法を利用したが、第2の電極層を形成する方法は転写法に限られるものではなく、塗布法を利用することも可能である。塗布法による場合は、基板上に感応膜を形成した後、ナノカーボン材料の分散液を塗布して第2の電極層とする。この場合は、感応膜を加熱キュアする前にナノカーボン材の分散液を塗布してから、加熱キュア工程を行って感応膜を形成するとともに第2の電極層を形成するとよい。

【0043】
第2の電極層を形成するさらに他の方法として、ナノリットル単位で塗布量を制御して所定のパターンで描画することができる超微量ディスペンサを用いて第2の電極層を形成することができる。
超微量ディスペンサを用いれば、カーボンナノチューブを分散液に分散させたカーボンナノチューブの分散液や、感光性樹脂(ポリイミド)の前駆体と分散液の混合液あるいは感光性樹脂の前駆体にカーボンナノチューブを分散させた分散液を用いて線描画することにより、きわめて細線のパターンを形成することができる。
前述したように第1の電極層の上に感応膜をコーティングした後、カーボンナノチューブの分散液を超微量ディスペンサを用いて、微細間隔の平行線状あるいは微細格子状に描画することにより、前述したスタンパを用いて網目状に形成した第2の電極層と同様の機能を備える第2の電極層を形成することができる。

【0044】
カーボンナノチューブの分散液を用いて超微細間隔のカーボンナノチューブによる導体パターンを形成した後、導体パターンを被覆するように感光性樹脂の前駆体をコーティングし、次いで、加熱キュア処理を施すことにより、感応膜からカーボンナノチューブが剥離することを防止することができ、ガスセンサの耐久性を向上させることができる。カーボンナノチューブの分散液として感光性樹脂の前駆体を混合した液を使用すれば、下地の感応膜とカーボンナノチューブのパターンとの密着性を向上させることができる。

【0045】
超微量ディスペンサを用いてカーボンナノチューブの分散液を線描画する方法を利用して第2の電極層を形成する方法は、スタンパを用いる転写法と比べて操作が容易であり、任意のパターンに第2の電極層を形成することができるという利点がある。たとえば、ディスペンサを制御することにより、ガスの透過性を考慮した線間隔でカーボンナノチューブのパターンを形成することができる。また、回路基板にガスセンサを組み込む場合も、ディスペンサを用いてカーボンナノチューブの分散液や前駆体を供給する工程であれば、回路基板の製造工程中に組み込むことが容易であるという利点もある。

【0046】
(容量型ガスセンサの性能指数)
図13は本発明に係る容量型ガスセンサと従来品との特性を評価するためセンサの特性を性能指数(Figure of Merit:FoM)として示したものである。ガスセンサの性能指数FoMを次の(3)式によって規定した。
FoM=感度[pF/%RH]/(面積[cm2])×(応答時間[s])・・・(3)
図13のグラフでは、より右側で、より上方にあるものほど、性能指数が高いことを示す。

【0047】
図13において、Si/SiO2/FPI/CNT複合電極とあるのは、図8に示す構成を備える容量型ガスセンサで、感応膜FPIの膜厚が0.4μm、第2の電極層であるCNT複合電極の膜厚が4.4μm[A]、6.0μm[B]、13μm[C]のものである。これら3種の性能指数はCNT複合電極の膜厚がかなり相違しているが近似している。
また、ITO/FPI/CNT複合電極とあるのは、図1に示す構成を備える容量型ガスセンサで、感応膜FPIの膜厚が8.9μm[a]、5.2μm[b]、3.2μm[c]、1.5μm[d]、1.3μm[e]、0.4μm[f]の性能指数である。
また、ITO/FPI/SWCNTとあるのは、図1に示す容量型ガスセンサと同様の構成を備え、第2の電極層を塗布法(SWCNTの分散液)により形成した例である。
また、ITO/FPI/Au(20nm)とあるのは、図1に示す容量型ガスセンサと類似の構成を備えるもので、FPIを感応膜とし、第2の電極層を20nmの厚さのAu薄膜により形成したものである。

【0048】
図13において、[I]~[V]は市販品の性能指数である。[I]:Innovative Sensor Technology (P14 Rapid SMD)、[II]:Smartec (HS08A)、[III]:VISHAY (2381 691 90001 HUMIDITY-SENS-E)、[IV]:Innovative Sensor Technology (MK33-W)、[V]:Smartec (HS07)、の各製品についての性能指数である。
また、[23]、[61]~[63]は文献に基づく性能指数である。[23]:Kuroiwa, T. Miyagishi, A. Ito, M. Matsuguchi, Y. Sadaoka, Y. Sakai: Sensors and Actuators B 24-25(1995)692-695、[61]:E. Zampetti, S. Pantalei, A. Pecora, A. Valletta, L. Maiolo, A. Minotti, A. Macagnano, G. Fortunato, A. Bearzotti: Sensors and Actuators B 143(2009)302-307、[62]:M. J. Lee, H. P. Hong, K. H. Kwon, C. W. Park, N. K. Min: Sensors and Actuators B 185(2009)97-104、[63]:J. H. Kim, S. M. Hong, B. M. Moon, K. Kim: Microsyst Technol 16(2010)2017-2021、にそれぞれ基づく。

【0049】
図13から、本発明に係るシリコン基板上に形成した容量型ガスセンサはきわめてすぐれた性能指数を備えており従来品と比較して十分に特性上の利点を備えているいることがわかる。第2の電極層の膜厚をかなり厚く設定しても、性能指数がさほど変わらない点も特徴的である。
また、図1に示すタイプの容量型センサでは、FPIを感応膜とし、感応膜の膜厚を0.4μmとしたものが従来品と比較して高い性能指数を示す。本発明に係る容量型センサにおいても、FPIと同等の感光性樹脂を感応膜に使用することにより、従来品にくらべてはるかに特性の優れた容量型ガスセンサを提供することが可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 容量型ガスセンサ
12 基板
14 第1の電極層
16 感応膜
18 第2の電極層
20 スタンパ
24 電極材料
30 容量型ガスセンサ
31 シリコン基板
32 感応膜
34 第2の電極層
36 接続パッド
36a アルミニウム電極
38 感光性樹脂


図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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