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明細書 :食道狭窄を治療及び/又は予防するための医薬組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6486627号 (P6486627)
公開番号 特開2016-040238 (P2016-040238A)
登録日 平成31年3月1日(2019.3.1)
発行日 平成31年3月20日(2019.3.20)
公開日 平成28年3月24日(2016.3.24)
発明の名称または考案の名称 食道狭窄を治療及び/又は予防するための医薬組成物
国際特許分類 A61K  38/18        (2006.01)
A61P   1/04        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61L  31/16        (2006.01)
C07K  14/475       (2006.01)
FI A61K 38/18
A61P 1/04
A61P 43/00 111
A61L 31/16
C07K 14/475 ZNA
請求項の数または発明の数 8
全頁数 10
出願番号 特願2014-164429 (P2014-164429)
出願日 平成26年8月12日(2014.8.12)
審査請求日 平成29年8月3日(2017.8.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
発明者または考案者 【氏名】井戸 章雄
【氏名】坪内 博仁
【氏名】小牧 祐雅
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100196966、【弁理士】、【氏名又は名称】植田 渉
審査官 【審査官】春田 由香
参考文献・文献 特開2002-345972(JP,A)
特開2005-168646(JP,A)
高橋 盛男,太田 慎一,食道潰瘍の修復における肝細胞増殖因子(HGF)の役割,医学のあゆみ,1996年 3月30日,第176巻, 第13号,p.852-856
高橋 盛男, 寺野 彰,食道粘膜の損傷修復メカニズム,G.I.Research,1998年,第6巻, 第6号,p.430-436
高橋 盛男 ほか,増殖因子からみた防御機構,G.I.Research,2002年,第10巻, 第4号,p.281-286
幕内 博康 ほか,逆流性食道炎の外科治療,日本外科学会雑誌,2003年,第104巻, 第9号,p.582-586
大木 岳志 ほか,食道再生医療の最前線,医学のあゆみ,2010年 5月22日,第233巻, 第8号,p.613-616
和田 則仁 ほか,上部消化管のステント治療の現状と展望,外科治療,2011年 6月,第104巻,第6号,p.875-880
Jeon SR, et al.,Effect of drug-eluting metal stents in benign esophageal stricture: an in vivo animal study,Endoscopy,2009年,Vol.41, No.5,p.449-456,doi: 10.1055/s-0029-1214607
調査した分野 A61K 38/00-38/58
A61L 31/00-31/18
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CiNii
医中誌WEB
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
肝細胞増殖因子(HGF)タンパク質を有効成分として含有する、食道狭窄を治療及び/又は予防するための医薬組成物。
【請求項2】
食道狭窄が、内視鏡的粘膜下層剥離術後の食道狭窄である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
HGFタンパク質が、ヒトHGFタンパク質である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
HGFタンパク質が、組み換えHGFタンパク質である、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
HGFタンパク質が、
(a)配列番号2で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(b)配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチド、又は
(c)配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド、
のいずれかのポリペプチドである、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
食道狭窄が食道潰瘍に起因する、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
食道潰瘍が修復される、請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物を含む、食道狭窄を治療及び/又は予防するためのステント。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor:HGF)タンパク質を有効成分として含有する、食道狭窄を治療及び/又は予防するための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
食道では、早期食道癌(食道表在癌)に対する内視鏡的粘膜下層剥離術後には高率に狭窄が発生する。このような粘膜下層剥離術後の食道狭窄に対しては内視鏡的バルーン拡張術が用いられるが、嚥下困難などの狭窄症状を改善するには複数回の拡張術を必要とし、またいったん拡張が得られても容易に再発することが多い。
上記のような粘膜下層剥離術後の食道狭窄に対して、内視鏡的バルーン拡張術以外に有効な解決手段はこれまで知られていない。
【0003】
一方、HGFは、1986年に坪内及び合田らによって劇症肝炎患者血漿から単離された、肺再生を強力に促進する増殖因子であり(非特許文献1)、そのヒトcDNAは、1989年にクローニングされた(非特許文献2)。HGFは幹細胞のみならず種々の上皮系細胞、内皮細胞および一部の間葉系細胞に対して細胞増殖等の多彩な作用を発揮する。また、HGFは傷害消化管粘膜においては重要な修復因子で、その傷害粘膜の修復促進作用は、組み換えヒトHGFを用いた実験腸炎モデルにおいて確認されている(非特許文献3~5)。
しかしながら、HGFが消化管狭窄に対して有効であることは、これまで知られていない。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Gohda E, Tsubouchi H, et al., J Clin Invest. 1988;81:414-419
【非特許文献2】Miyazawa K, Tsubouchi H, et al., Biochem Biophys Res Commun. 1989;163:967-973
【非特許文献3】Tahara Y, Ido A, et al., J Pharmacol Exp Ther. 2003;307:146-151
【非特許文献4】Numata M, Ido A, et al., Inflamm Bowel Dis. 2005;11:551-558
【非特許文献5】Setoyama H, et al., Life Sci. 2011;89:269-275
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、食道狭窄を治療及び/又は予防するための医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、食道狭窄を治療及び/又は予防するための薬剤を見出すべく鋭意検討した結果、HGFタンパク質が食道狭窄を抑制又は改善することを見出し、本発明を完成させるに至った。従って、本発明は以下の特徴を包含する。
【0007】
1.肝細胞増殖因子(HGF)タンパク質を有効成分として含有する、食道狭窄を治療及び/又は予防するための医薬組成物。
2.食道狭窄が、内視鏡的粘膜下層剥離術後の食道狭窄である、上記1に記載の医薬組成物。
3.HGFタンパク質が、ヒトHGFタンパク質である、上記1又は2に記載の医薬組成物。
4.HGFタンパク質が、組み換えHGFタンパク質である、上記1~3のいずれかに記載の医薬組成物。
5.HGFタンパク質が、
(a)配列番号2で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(b)配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチド、又は
(c)配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド、
のいずれかのポリペプチドである、上記1~4のいずれかに記載の医薬組成物。
6.食道狭窄が食道潰瘍に起因する、上記1~5のいずれかに記載の医薬組成物。
7.食道潰瘍が修復される、上記1~6のいずれかに記載の医薬組成物。
8.上記1~7のいずれかに記載の医薬組成物を含むステント。
【発明の効果】
【0008】
本発明の組成物は、食道の狭窄に対して改善及び/又は予防効果を有する。従って、本発明の組成物は内視鏡的粘膜下層剥離術に起因する食道狭窄の治療に特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】組み換えヒトHGFの腹腔内投与の、食道潰瘍に対する影響を示す。Controlは、ヒトHGFを投与しない場合を示す。
【図2】組み換えヒトHGFの腹腔内投与の、食道潰瘍面積及び食道の長さに対する影響を示す。Controlは、ヒトHGFを投与しない場合を示す。
【図3】組み換えヒトHGFの腹腔内投与の、食道上皮の粘膜層及び食道粘膜肥厚に対する影響を示す。Controlは、ヒトHGFを投与しない場合を示す。
【図4】組み換えヒトHGFの腹腔内投与の、食道上皮の粘膜層及び食道上皮細胞の増殖に対する影響を示す。Controlは、ヒトHGFを投与しない場合を示す。
【図5】組み換えヒトHGF又はステロイド剤の腹腔内投与の、食道狭窄部径に対する影響を示す。Controlは、ヒトHGF及びステロイド剤を投与しない場合を示す。
【図6】組み換えヒトHGFの腹腔内投与の、食道の線維形成に対する影響を示す。Controlは、ヒトHGFを投与しない場合を示す。
【図7】組み換えヒトHGFの腹腔内投与の、col1α1及びTGF-βのmRNA発現に対する影響を示す。
【図8】組み換えヒトHGFの腹腔内投与の、TIMP1及びTIMP2のmRNA発現に対する影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor:HGF)タンパク質を有効成分として含有する、食道狭窄を治療及び/又は予防するための医薬組成物に関する。

【0011】
HGFは、上記の通り、肝再生を強力に促進する増殖因子として、また、傷害胃および腸管粘膜の重要な修復因子として知られている。本発明において、HGFは、ヒトHGFを含む哺乳動物HGFである。

【0012】
HGFタンパク質の調製は、当業者にとって周知の方法を用いて行うことができ、例えば、HGFタンパク質を生産する初代培養細胞や株化細胞を培養し、培養上清等から分離し、必要に応じて精製して、HGFタンパク質を得ることができる。

【0013】
あるいは、HGFタンパク質は、当業者にとって周知の遺伝子工学的手法を用いて、製造・精製することもできる。例えば、HGFタンパク質をコードするDNA又はその断片を適当なベクターに組込み、このベクターを適当な宿主細胞に導入し、組み換え体として当該タンパク質を発現させることが可能である。なお、遺伝子組換え技術については、特に断りがない場合、公知の方法(例えば、Sambrookら,“Molecular Cloning, A Laboratory Manual”, Cold Spring Harber Laboratory Press, 1989)に従って実施することが可能である。

【0014】
HGFの遺伝子配列及びアミノ酸配列は、当技術分野で公知の任意の方法により、例えば公のデータベース(例えば、NCBI(米国)、DDBJ(日本)、EMBL(欧州))より、入手することができる。HGFタンパク質は、データベースに登録されている配列情報(GenBankアクセッション番号M29145;cDNA配列:配列番号1、アミノ酸配列:配列番号2)に基づいて、当技術分野で公知の方法(例えば遺伝子組み換え法)を用いて作製することができる。従って、本発明で用いるHGFタンパク質は、組み換えHGFタンパク質であってよい。また、本発明で用いるHGFタンパク質は、市販されているものでもよい。市販されているHGFタンパク質として、例えば、SIGMA-Aldrich社から販売されているCHO細胞で発現させた組み換えヒトHGF等が挙げられる。

【0015】
組み換えタンパク質の生産に用い得るベクターとしては、例えばプラスミドベクター又はウイルスベクターが挙げられ、ウイルスベクターとしては、例えばセンダイウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス等が挙げられる。ベクターは、発現されるDNAの他に、例えばプロモーター、エンハンサー、リボソーム結合部位、ターミネーター、及び必要に応じて選択マーカー等を含むことができる。

【0016】
宿主細胞としては、通常使用される公知の微生物、例えば、大腸菌又は酵母、あるいは、公知の培養細胞、例えば、動物細胞(例えば、CHO細胞、HEK-293細胞、又はCOS細胞)又は昆虫細胞(例えば、BmN4細胞又はSF9細胞)等が挙げられる。

【0017】
発現されたポリペプチドは、宿主細胞の培養上清から、タンパク質又はポリペプチド精製に用いられる公知の方法、例えば、硫安塩析、有機溶媒(エタノール、メタノール、アセトン等)による沈殿分離、イオン交換クロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、吸着カラムクロマトグラフィー、基質または抗体等を利用したアフィニティークロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィー、HPLC等のクロマトグラフィー、精密ろ過、限外ろ過、逆浸透ろ過等の濾過処理等、を1以上組み合わせて用いて精製することが可能である。

【0018】
本発明で用いるHGFは、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドに限定されず、食道の狭窄を抑制する作用を有する限り、配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチドであってよい。ここで、「1若しくは数個」の範囲は特には限定されないが、例えば、1から10個、好ましくは1から7個、さらに好ましくは1から5個、特に好ましくは1から3個、あるいは1個または2個である。

【0019】
さらに、本発明で用いるHGFは、食道の狭窄を抑制する作用を有する限り、配列番号2で示されるアミノ酸配列と70%以上の同一性、好ましくは80%以上の同一性、より好ましくは90%以上の同一性、最も好ましくは95%以上の同一性、例えば97%、98%若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドであってよい。同一性の値は、複数のアミノ酸配列間の同一性を演算するソフトウェア(例えば、FASTA、DANASYS、及びBLAST)を用いてデフォルトの設定で算出した値を示す。

【0020】
また、HGFは、食道の狭窄を抑制する作用を有する限り、そのタンパク質断片であってもよい。そのようなタンパク質断片は、上記の塩基配列に基づいて任意のポリペプチドを作製し、そのポリペプチドの食道の狭窄を抑制する作用を確認することにより容易に作製することができる。

【0021】
本発明の好適な実施形態において、HGFタンパク質は、(a)配列番号2で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチド、又は(c)配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドのいずれかのポリペプチドである。また、HGFタンパク質は、糖修飾やピログルタミル化等の翻訳後修飾を受けてもよい。その他、水溶性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)による修飾を受けてもよい。

【0022】
本発明において、HGFタンパク質は、その由来を問わない。すなわち、HGFタンパク質は、例えば、ヒトHGF、マウスHGF(GenBankアクセッション番号NM_010427.4;cDNA配列:配列番号3、アミノ酸配列:配列番号4)、ラットHGF(GenBankアクセッション番号NM_017017.2;cDNA配列:配列番号5、アミノ酸配列:配列番号6)、ネコHGF(GenBankアクセッション番号AB080187.1;cDNA配列:配列番号7、アミノ酸配列:配列番号8)、イヌHGF(GenBankアクセッション番号AB090353.1;cDNA配列:配列番号9、アミノ酸配列:配列番号10)、ウシHGF(GenBankアクセッション番号AB110822.1;cDNA配列:配列番号11、アミノ酸配列:配列番号12)等の哺乳動物HGFを包含する。HGFの由来は、適用種に応じて任意に選択することができ、例えばヒトに対して適用される場合には、ヒトHGFを用いることが好ましい。HGFタンパク質は、一般に、重鎖と軽鎖からなる一本の前駆体として合成され、プロセシング及びグリコシル化されて成熟型HGFとなる。ヒトHGFでは、重鎖は463アミノ酸、軽鎖は234アミノ酸からなる(坪内博仁及び大工原恭、タンパク質核酸酵素、Vol. 37, No.12, 1992, pp. 2135-2143)。

【0023】
本明細書において「食道狭窄」とは、食道の管部分の内腔が狭くなり、飲食物等が通過しにくくなる状態を意味する。
本明細書において、「内視鏡的粘膜下層剥離術後の食道狭窄」とは、内視鏡的に切除された食道粘膜が線維組織によって置き換わり、狭窄をきたした状態を意味する。本発明の食道狭窄は、早期食道癌(食道表在癌)の内視鏡粘膜下層剥離術(ESD)に起因し得る。

【0024】
本発明の医薬組成物は、経口投与又は非経口投与(例えば、静脈注射、筋肉注射、皮下投与、腹腔内投与、直腸投与、経粘膜投与等)で、投与することができる。また、本発明の医薬組成物は、投与経路に応じて適当な剤形とすることができる。具体的には顆粒剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、静脈注射、動脈注射、若しくは筋肉注射用の注射剤、点滴剤、外用剤、坐剤等の各種製剤形態に調製することができる。

【0025】
本発明の医薬組成物は、上記の医薬組成物を含むステントの形態で投与することもできる。ステントは、例えば内視鏡的に留置可能なステント(可溶性又は着脱式)とすることが可能であり、ステントから、有効成分のHGFを溶出又は徐放化させることができる。従って、一態様において本発明はそのようなステントに関する。
投与方法及び剤型は、患者の性別、年齢、体重、症状等により適宜選択することができる。

【0026】
本発明のHGFタンパク質を有効成分として含有する医薬組成物は、常法に従って製剤化することができ(例えば、Remington's Pharmaceutical Science, latest edition, Mark Publishing Company, Easton,米国を参照されたい)、医薬的に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよい。

【0027】
このような担体及び医薬添加物の例としては、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤等が挙げられる。

【0028】
実際の添加物は、本発明の医薬組成物の剤型に応じて上記の中から単独で又は適宜組み合わせて選ばれるが、これらに限定するものではない。例えば、注射用製剤として使用する場合、精製されたHGFタンパク質を溶剤、例えば生理食塩水、緩衝液、ブドウ糖溶液等に溶解し、これに容器吸着防止剤、例えばTween 80、Tween 20、ゼラチン、ヒト血清アルブミン等を加えたものを使用することができる。あるいは、使用前に溶解再構成する剤形とするために凍結乾燥したものであってもよく、凍結乾燥のため安定化剤としては、例えば、マンニトール、ブドウ糖等の糖アルコールや糖類を使用することができる。

【0029】
本発明の治療剤の有効投与量は、例えば、一回につき体重1kgあたり0.001mgから1000mgの範囲で選ばれる。しかしながら、本発明のHGFタンパク質を含有する医薬組成物の投与量は、これらに制限されるものではなく、患者の性別、年齢、体重、症状等に応じて適宜選択することができる。

【0030】
本発明の治療剤を投与する対象となる疾患は、食道狭窄、特に内視鏡的粘膜下層剥離術後の食道狭窄であるが、当該疾患には他の疾患に合併あるいは併発されたものも含まれる。
本発明の治療剤を投与する時期は、上記疾患の臨床症状が生ずる前後を問わず、予防的投与であっても維持的投与であってもよい。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0031】
実施例1:組み換えヒトHGFの食道潰瘍に及ぼす影響
6週齢のSDラットを開腹し、100%酢酸(30μg/匹)を単回、下部食道の漿膜下に注入して食道の粘膜を欠損させ、リン酸緩衝液(PBS)又は組み換えヒトHGF(5mg/mL)を含有した浸透圧ポンプを腹腔内に留置して閉腹した。この浸透圧ポンプでは、組み換えヒトHGFは200mg/日で持続的に放出される。HGFの投与7日後に、食道潰瘍面積及び食道の長さを検査した。その結果、組み換えヒトHGFは食道潰瘍を有意に縮小させ(図1及び図2左)、また食道の短縮を顕著に抑制した(図2右)。また、食道潰瘍辺縁の粘膜を厚くし(図3)、食道上皮細胞の増殖を有意に促進した(図4)。
【実施例】
【0032】
実施例2:組み換えヒトHGFの食道狭窄に及ぼす影響
6週齢のSDラットを開腹し、100%酢酸(30μg/匹)を単回、下部食道の漿膜下に注入して食道の粘膜を欠損させ、リン酸緩衝液(PBS)、組換えヒトHGF(5mg/mL)、又はメチルプレドニゾロン(250mg/mL)を含有した浸透圧ポンプを腹腔内に留置して閉腹した。この浸透圧ポンプでは組換えヒトHGFは200μg/日で、メチルプレドニゾロンは10mg/日で持続的に放出される。組換えヒトHGFまたはメチルプレドニゾロン投与7日後に、食道狭窄の程度を検査した。また、以下の方法を用いて、real-time PCRによりCol1α1、TGF-β、TIMP1、TIMP2 の発現解析を行った。
【実施例】
【0033】
すなわち、最初に、PureLink(登録商標)RNA Mini Kit(Life technologies)を用いてtotal RNAを抽出し、NanoDrop(Thermoscientific)を用いて濃度測定し、RNase Free dH2Oを適宜加えて、各検体のtotal RNA濃度を200ng/μlに調節した。続いて、total RNA 0.5μg (500ng)をテンプレートとし、ランダムプライマーを用いて37℃、15分で逆転写し、cDNAを合成した。その後、85℃、5秒間で失活させた。次に、cDNA 0.0005μg (0.5ng) をテンプレートとし、以下の表1のプライマーを用いて、95℃で5秒、60℃で34秒、40サイクルでreal-timePCRを行った。TaqポリメラーゼはTakara Ex Taq(登録商標)(タカラバイオ)を用いた。
【実施例】
【0034】
【表1】
JP0006486627B2_000002t.gif
【実施例】
【0035】
その結果、PBSおよびステロイド剤であるメチルプレドニゾロンは食道狭窄に影響を及ぼさなかったが、組み換えヒトHGFは有意に食道狭窄を抑制した(図5)。また、HGF投与によって食道の線維形成が有意に抑制されると共に(図6)、線維化に関連する分子であるCol1α1、TGF-β、TIMP1及びTIMP2の発現が抑制された(図7及び図8)。
【実施例】
【0036】
以上の結果から、HGFは狭窄(収縮)を抑制することにより、食道の狭窄に対して改善又は予防効果を有することが示唆された。従って、HGFを有効成分として含有する本発明の組成物は、特に内視鏡的粘膜下層剥離術によって粘膜欠損した食道の狭窄の治療及び/又は予防に有効であると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の組成物は、食道の狭窄に対して改善及び/又は予防効果を有する。従って、本発明の組成物は、特に内視鏡的粘膜下層剥離術後の食道狭窄の治療/又は予防に有効である。
【配列表フリ-テキスト】
【0038】
配列番号13~22 プライマー
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7