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明細書 :多関節ロボットアーム及びUAV

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-008320 (P2018-008320A)
公開日 平成30年1月18日(2018.1.18)
発明の名称または考案の名称 多関節ロボットアーム及びUAV
国際特許分類 B25J  13/00        (2006.01)
FI B25J 13/00 Z
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 16
出願番号 特願2016-136605 (P2016-136605)
出願日 平成28年7月11日(2016.7.11)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 刊行物1 平成28年6月8に発行された「ロボティクス・メカトロニクス講演会2016in Yokohama」の講演概要集において公開。 刊行物2 平成28年6月8に発行された「ロボティクス・メカトロニクス講演会2016in Yokohama」の講演論文集(DVD)において公開。 学会発表 平成28年6月8~11日に開催された「ロボティクス・メカトロニクス講演会2016in Yokohama」において9日に発表。
発明者または考案者 【氏名】▲高▼木 健
【氏名】大西 義典
出願人 【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001427、【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 3C707
Fターム 3C707AS14
3C707AS26
3C707AS32
3C707BS10
3C707CS08
3C707CT02
3C707CV08
3C707CW08
3C707CX03
3C707ES03
3C707HT02
3C707HT26
3C707MT05
3C707WA26
要約 【課題】動作によって生じる反動が効果的に抑制でき、UAVに好適な多関節ロボットアームを提供する。
【解決手段】多関節ロボットアームRAである。回動可能な状態で直列に連結された複数のアーム要素A1,A2、その各々を回動させる複数のモータ20,30、制御装置40を備える。制御装置40が、アーム要素A1,A2の変位に伴って移動する多関節ロボットアームRAの水平方向における重心位置の調整を行う重心位置調整部41を有している。
【選択図】図10
特許請求の範囲 【請求項1】
多関節ロボットアームであって、
回動可能な状態で直列に連結された複数のアーム要素と、
前記アーム要素の各々を回動させる複数のモータと、
前記モータの各々を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置が、前記アーム要素の変位に伴って移動する前記多関節ロボットアームの水平方向における重心位置の調整を行う重心位置調整部を有している多関節ロボットアーム。
【請求項2】
請求項1に記載の多関節ロボットアームにおいて、
前記アーム要素の各々が、同一の鉛直面に沿って回動する多関節ロボットアーム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の多関節ロボットアームにおいて、
前記アーム要素の回動に伴って発生するトルクを打ち消す反トルク機構を更に備え、
前記反トルク機構が、前記アーム要素と前記モータとの間に介在して入力側と出力側とで逆方向に回転する連結部を含み、前記入力側で発生する角運動量と前記出力側で発生する角運動量とが等しくなるように構成されている多関節ロボットアーム。
【請求項4】
請求項3に記載の多関節ロボットアームにおいて、
前記連結部に、ハーモニックドライブ(登録商標)が用いられている多関節ロボットアーム。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の多関節ロボットアームにおいて、
前記アーム要素の各々を独立して回動させる要素別回動機構を更に備え、
前記要素別回動機構が、回動対象ではない前記アーム要素の絶対角度を一定に保持しながら、回動対象の前記アーム要素を回動させる多関節ロボットアーム。
【請求項6】
請求項5に記載の多関節ロボットアームにおいて、
前記複数のアーム要素が、水平方向にスライドするスライド部によって支持されている多関節ロボットアーム。
【請求項7】
請求項6に記載の多関節ロボットアームにおいて、
前記要素別回動機構が、
前記スライド部に配置された第1及び第2の前記モータと、
回動軸を中心にして前記スライド部に回動可能に支持された第1の前記アーム要素と、
前記第1のアーム要素に回動可能に連結された第2の前記アーム要素と、
前記回動軸を中心に独立して回転するプーリと、
前記プーリと前記第2のアーム要素の基端部とに架け渡された架設部材と、
を含み、
前記第1のアーム要素は前記第1のモータによって回動され、前記第2のアーム要素は前記プーリ及び前記架設部材を介して前記第2のモータによって回動される多関節ロボットアーム。
【請求項8】
鉛直軸回りに回転して揚力を発生させるロータを備えた回転翼型のUAVであって、
請求項1~請求項7のいずれかに記載の多関節ロボットアームを備えたUAV。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle、いわゆるドローン)及びそれに好適な多関節ロボットアームに関し、特に、多関節ロボットアームの低反動化を実現する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
UAVは、地上からの遠隔操作によって安全で手軽に飛行できることから、近年、様々な分野で注目を集めている。UAVの具体例は、特許文献1、2などに認められる。そこには、揚力を発生させる1個又は複数個のロータを備えた回転翼型の飛行体が開示されている。
【0003】
これら飛行体によれば、一般的な固定翼機とは異なり、空中を自在に飛行するだけでなく、上昇や下降、停止飛行(ホバリング)もできるので、飛行の自由度が高い。そのため、この種のUAVでは、カメラを取り付けて空撮することなどが行われているが、ロボットアームを取り付けることができれば、更にその利便性が高まり、様々な用途への利用が期待できる。
【0004】
例えば、火山地帯や原子炉等、人の立ち入りが困難な場所でのサンプリングに利用できる。このような場所でのサンプリングに対しては、無人地上車両(UGV)の利用も考えられるが、UGVの場合、走行に時間を要するうえに、適切な走路が確保できなければ利用できない制約がある。それに対し、ロボットアーム付きUAVであれば、地上の条件に左右されず、短時間でサンプリングすることが可能になる。広域でのサンプリングや、走行できない山岳や水域でのサンプリングにも利用できる。
【0005】
また、災害救助にも利用できる。例えば、ロボットアーム付きUAVで、離れた場所から、溺れている人に浮き輪や縄を渡したり、火災で逃げ遅れた人に縄梯子を渡したりすることなどが可能になる。更には、高所作業をロボットアーム付きUAVに行わせたり、飛行しながら搬送品を受け渡したりすることなども可能になるため、各種産業においても様々な用途が期待できる。
【0006】
しかし、一般的な多関節ロボットアームは、複数のリンク部材と、これらリンク部材を回動する複数のモータなどで構成されていて高重量なため、重量が直接飛行性能に影響するUAVには不向きである。そのため、UAVにロボットアームを取り付ける場合、ロボットアームの軽量化は避けられない。
【0007】
軽量化を図った多関節ロボットアームは、例えば特許文献3、4に開示されている。特許文献3には、閉リンク機構を用いて動力を伝達するロボットアームが開示されており、特許文献4には、ワイヤ駆動式のロボットアームが開示されている。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2011-46355号公報
【特許文献2】特表2013-533823公報
【特許文献3】特開平10-202573号公報
【特許文献4】特開平10-249777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ロボットアームをUAVに取り付ける場合、ロボットアームの軽量化が実現できたとしてもそれだけでは不十分である。すなわち、UAVの場合、空中に浮いた状態でロボットアームを動かす必要があるので、例えば、対象物を掴もうとしてロボットアームを動かすと、その反動で姿勢が崩れてUAVの飛行状態が不安定になり、対象物がうまく掴めないという問題がある。
【0010】
図1Aに、停止飛行中のUAV1を例示する。飛行中のUAV1では、その中央にUAV1全体の重力が作用しており、ロータ全体の揚力Fがその重力Gと上下に釣り合うことで、UAV1は空中で安定した姿勢を保持している。ところが、図1Bに示すように、UAV1の姿勢が傾くと、揚力Fの鉛直方向上向きの成分Fyが小さくなって、水平方向に揚力の成分Fxが加わるため、UAV1が予期せぬ方向へと移動し、その飛行姿勢が不安定になる。
【0011】
ロボットアームの動作の反動により、このように飛行中のUAV1の姿勢を不安定にさせる主な原因としては、「重心の移動」と「反トルク」が挙げられる。
【0012】
前者について詳しく説明すると、図2Aに示すように、例えば仮想線の状態から実線の状態にロボットアームRAが動いた場合、それに伴ってUAV1全体の重心の位置も重心線J1から重心線J2に移動する。その結果、釣り合いがとれていたUAV1全体の重力Gと各ロータの揚力fとのモーメントが崩れ、矢印が示すようにUAV1に回動するトルクが作用し、UAV1の姿勢が傾く。
【0013】
後者について詳しく説明すると、図2Bに示すように、例えば仮想線の状態から実線の状態にロボットアームRAを動的に回動させると、矢印が示すようにUAV1にはその反作用として反トルクが加わる。その結果、UAV1に回動するトルクが作用し、UAV1の姿勢が傾く。
【0014】
そこで本発明の主たる目的は、動作によって生じる反動が効果的に抑制でき、UAVに好適な多関節ロボットアームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る多関節ロボットアームは、回動可能な状態で直列に連結された複数のアーム要素と、前記アーム要素の各々を回動させる複数のモータと、前記モータの各々を制御する制御装置と、を備える。そして、前記制御装置が、前記アーム要素の変位に伴って移動する前記多関節ロボットアームの水平方向における重心位置の調整を行う重心位置調整部を有している。
【0016】
すなわち、この多関節ロボットアームによれば、ロボットアームを操作してアーム要素が変位しても、その変位に伴って移動するロボットアームの水平方向における重心位置を、制御装置の重心位置調整部により、一定に保持されるように調整することができる。従って、「重心の移動」の問題を解消することができる。
【0017】
具体的には、前記アーム要素の各々が、同一の鉛直面に沿って回動するようにするとよい。
【0018】
すなわち、各アーム要素が動作する領域を2次元空間に限定することで、ロボットアームの構造が簡素になって軽量化が図れるうえに、重心位置の調整や反トルクの制御が容易になるため、処理負担も軽減できる。
【0019】
より具体的には、前記アーム要素の回動に伴って発生するトルクを打ち消す反トルク機構を更に備え、前記反トルク機構が、前記アーム要素と前記モータとの間に介在して入力側と出力側とで逆方向に回転する連結部を含み、前記入力側で発生する角運動量と前記出力側で発生する角運動量とが等しくなるように構成するのが好ましい。
【0020】
そうすれば、簡単な構成により、「反トルク」の問題を解消することができる。
【0021】
この場合、前記連結部には、ハーモニックドライブ(登録商標)を用いるのが好ましい。
【0022】
ハーモニックドライブであれば、高トルクな逆回転力が得られるため、低出力の小型モータが使用可能になってロボットアームの軽量化が図れる。
【0023】
更には、前記アーム要素の各々を独立して回動させる要素別回動機構を備え、前記要素別回動機構が、回動対象ではない前記アーム要素の絶対角度を一定に保持しながら、回動対象の前記アーム要素を回動させるようにするのが好ましい。
【0024】
そうすれば、反トルクの制御が容易に行える。
【0025】
その場合、前記複数のアーム要素が、水平方向にスライドするスライド部によって支持されているようにするとよい。
【0026】
そうすれば、ロボットアームの構造の簡素化や軽量化等が実現できる。
【0027】
更にこの場合、前記要素別回動機構が、前記スライド部に配置された第1及び第2の前記モータと、回動軸を中心にして前記スライド部に回動可能に支持された第1の前記アーム要素と、前記第1のアーム要素に回動可能に連結された第2の前記アーム要素と、前記回動軸を中心に独立して回転するプーリと、前記プーリと前記第2のアーム要素の基端部とに架け渡された架設部材と、を含み、前記第1のアーム要素は前記第1のモータによって回動され、前記第2のアーム要素は前記プーリ及び前記架設部材を介して前記第2のモータによって回動されるようにするとよい。
【0028】
そうすれば、スライド部に、第1アーム要素及び第2アーム要素の各要素別回動機構が集約して配置されるため、コンパクト化が図れ、スライド部に質量を集中できるので、重心位置の調整に必要なスライド部の変位量を小さくできる。
【0029】
このようなロボットアームであれば、鉛直軸回りに回転して揚力を発生させるロータを備えた回転翼型のUAVに装備して安定して使用することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の多関節ロボットアームによれば、動作によって生じる反動を効果的に抑制できるので、UAVに取り付けて適切に利用でき、様々な分野での活用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1A】停止飛行中のUAVの飛行姿勢を説明する図である。
【図1B】停止飛行中のUAVが傾いた時の飛行姿勢を説明する図である。
【図2A】ロボットアーム付きUAVにおける「重心の移動」の問題を説明する図である。
【図2B】ロボットアーム付きUAVにおける「反トルク」の問題を説明する図である。
【図3A】ロボットアームの重心位置調整機構を説明する図である。
【図3B】別形態のロボットアームの重心位置調整機構を説明する図である。
【図4】反トルク機構を説明する図である。
【図5】反トルク機構の具体的な一例を説明する図である。
【図6】ハーモニックドライブの構造を説明する概略断面図である。
【図7A】要素別回動機構を説明する図である(要素別回動機構が無い場合を表している)。
【図7B】要素別回動機構を説明する図である(要素別回動機構が有る場合を表している)。
【図8】本実施形態におけるロボットアーム付きUAVの具体例を示す概略斜視図である。
【図9】ロボットアームの概略側面図である。
【図10】ロボットアームの要部を表した概略断面図である。
【図11】実験結果を示すグラフである。
【図12】要素別回動機構の別形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。

【0033】
<ロボットアームの主要な機構>
本発明の多関節ロボットアームRA(単に「ロボットアームRA」ともいう)は、例えば図2Aに示したように、回動可能な状態で直列に連結された複数のアーム要素A(図2AではA1及びA2)を含んで構成されていて、本実施形態ではUAV1に設置されている。ロボットアームRAの先端にはロボットハンドRHが取り付けられていて、これらロボットアームRA及びロボットハンドRHは、UAV1と同様に、無線による遠隔操作によって自在に動かせるように構成されている。

【0034】
上述したように、UAV1にロボットアームRAを取り付けた場合、「重心の移動」と「反トルク」に起因して、飛行中のUAV1の姿勢が不安定になるという問題がある。そこで、本発明のロボットアームRAには、前者の問題を解消するために、重心位置調整機構が組み込まれており、後者の問題を解消するために、反トルク機構が組み込まれている。更に、反トルク機構を補助し、かつ、構造の簡素化及び軽量化を実現するために、本発明のロボットアームRAには、要素別回動機構も組み込まれている。最初に、これら各機構について説明する。

【0035】
(重心位置調整機構)
重心位置調整機構は、ロボットアームRAの水平方向における重心位置の調整を行うものであり、UAV1の飛行姿勢を安定させるために、ロボットアームRAの先端を自在に動かしても、ロボットアームRA(ロボットハンドRHを含む)の水平方向の重心位置が、一定に保たれるように調整する。

【0036】
図3Aに、ロボットアームRAの一例を示す。このロボットアームRAは、3自由度を有するロボットアームRAであり、3つのアーム要素A1,A2、A3が回動可能な3つの関節で直列に連結されている。重心位置調整機構は、各アーム要素A1,A2、A3の回動角度を高精度に制御しながら回動させることができるサーボモータや、そのサーボモータを制御する制御装置などで構成されており、制御装置には、これらサーボモータを制御して、アーム要素A1,A2、A3の変位に伴って移動するロボットアームRAの水平方向における重心位置が常に一定に保たれるように調整を行う制御プログラムが実装されている(具体例は後述)。

【0037】
本実施形態のロボットアームRAでは、各アーム要素A1,A2、A3が、同一の鉛直面に沿って回動し、2次元空間を動作するように構成されている。

【0038】
各アーム要素A1,A2、A3は、三次元空間を動作するように構成してもよいが、そのように構成すると、ロボットアームRAの構造が複雑になり、重心位置調整機構や反トルク機構の制御も著しく高度化、複雑化する。一方、各アーム要素A1,A2、A3が動作する領域を2次元空間に限定すれば、ロボットアームRAの構造が簡素になって軽量化が図れるうえに、重心位置調整機構や反トルク機構の制御も容易になり、処理負担も軽減できる。

【0039】
そして、UAV1は3次元空間を自在に移動できることから、ロボットアームRAの動作範囲を2次元空間に限定しても、UAV1の動作との組み合わせにより、3次空間におけるロボットアームRAの自在な動作を補完することができる。

【0040】
図3Aに示すロボットアームRAの場合、実線や仮想線で示すように、ロボットアームRAの先端は、X-Y平面からなる所定の鉛直面に沿った任意の位置に移動可能であり、ロボットアームRAの先端がいずれの位置にあっても、重心位置調整部が各アーム要素A1,A2、A3の角度を制御することにより、ロボットアームRAの水平方向の重心位置が重心線J上に位置するように設計されている。

【0041】
このようなロボットアームRAは、ロボットアームRAの先端位置(x,y)とロボットアームRAの水平方向の重心位置(x)からなる3変数を制御できればよいため、3自由度以上あれば実現できる。従って、アーム要素Aは4つ以上でもよいが、軽量化や簡素化の観点からは3自由度のロボットアームRAが好ましい。

【0042】
図3Bに示すように、自由度は、スライド機構SMでも実現できる。すなわち、スライダーSを取付ける場合は、スライダーSの自由度を考慮し回転関節数を2以上にすればよく、より簡略には、スライダーSと2つの回転関節をもつロボットアームRAを考える。図3Bに示すロボットアームRAは、水平方向にスライドするスライダーSと、そのスライダーSに回動可能に連結された2つのアーム要素A1,A2と、で構成されている。なお、3つの回転関節を持つロボットアームにRAにスライダーSを取付けると、より広い範囲で重心の位置を調節することができる。

【0043】
図3Bに示すロボットアームRAの場合も、実線や仮想線で示すように、ロボットアームRAの先端は、X-Y平面からなる所定の鉛直面に沿った任意の位置に移動可能であり、ロボットアームRAの先端がいずれの位置にあっても、重心位置調整部が各アーム要素A1,A2の角度とスライダーSの位置を制御することにより、ロボットアームRAの水平方向の重心位置が重心線J上に位置するように設計されている。このようにロボットアームRAの基端部をスライド機構SMで構成することで、構造の簡素化や軽量化等が実現できる(詳細は後述)。

【0044】
(反トルク機構)
反トルク機構は、アーム要素Aの回動に伴って発生するトルクを打ち消すものである。一般的なロボットアームRAでは、基端側のアーム要素A1を回動させた場合に、そのアーム要素A1よりも先端側のアーム要素A2も共に回動する。この場合、基端側のアーム要素A1の回動に伴って発生するトルクはロボットアームRAの姿勢によって異なる。要素別回動機構を用いると、それぞれのアーム要素A1,A2を別々に独立して回動することができ、ロボットアームRAがどのような姿勢であっても他のアーム要素Aからの影響を受けない。ゆえに、ロボットアームRAの姿勢に依存することなく反トルクを打ち消すためには、各アーム要素Aを独立して回動させる要素別回動機構と組み合わせて用いることが望ましい。

【0045】
従って、ここでの反トルク機構は、各アーム要素Aを独立して回動させる要素別回動機構に組み込まれている。反トルク機構は、各アーム要素Aと、そのアーム要素Aを回動するサーボモータ110との間に、入力側と出力側とで逆方向に回転する連結部Cを含む(具体例は後述)。

【0046】
そして、図4に示すように、その連結部Cを境界にして、各アーム要素Aの回動によって発生する出力側の角運動量の総和(アーム要素AやプーリP等の各角運動量の総和)と、その回動力を発生させる入力側の角運動量の総和(サーボモータ110やプーリPの各角運動量の総和)とが、等しくなるように設計されている。そうすることにより、各アーム要素Aの回動によって発生するトルクを、駆動側の機構で発生するトルク(反トルク)で打ち消すことが可能になっている。

【0047】
反トルク機構について、図5を参照しながら具体的に説明する。図5は、アーム要素114の1つを回転駆動する経路を模式的に表している。サーボモータ110の駆動軸に第1プーリP1が固定されており、その第1プーリP1は無端ベルト111を介して、連結部Cの入力軸112に固定された第2プーリP2と連結されている。連結部Cの出力軸113は、アーム要素114の基部に固定されている。

【0048】
~I及びω~ωは、サーボモータ110、第1プーリP1、第2プーリP2、連結部Cの入力軸112、連結部Cの出力軸113、及びアーム要素114の各々の、慣性モーメント及び角速度である。そして、連結部Cの減速比をr、第1プーリP1及び第2プーリP2の減速比をr、UAV1の角速度及び慣性モーメントを、それぞれω及びIとする。

【0049】
ここで、ω~ωとωとの間には、ω=ω=-r・r・ω、ω=ω=-r・ω、ω=ωの関係があることから、これら駆動系における角速度と慣性モーメントとの間には、次の式(1)が成立する。

【0050】
【数1】
JP2018008320A_000003t.gif

【0051】
そして、UAV1が傾かないためにはωが0となればよいことから、第1プーリP1及び第2プーリP2の減速比rは、次の式(2)となる。

【0052】
【数2】
JP2018008320A_000004t.gif

【0053】
式(2)の値を満たすように、第1プーリP1及び第2プーリP2の減速比rを設計することで、反トルク機構が構成されている。アーム要素A全ての駆動系に対し、これと同様に反トルク機構が設計されている。

【0054】
連結部Cは、入力側と出力側とで逆方向に回転するものであればよく、特に減速できるものが好ましいため、例えば、遊星歯車などを連結部Cに用いることができる。その中でも特に、ハーモニックドライブ(登録商標)を連結部Cに用いるのが好ましい。

【0055】
図6に、ハーモニックドライブの構造を模式的に示す。ハーモニックドライブは、内周面に多数の凹凸歯が形成された円環状の外輪120と、外輪120より少数の凹凸歯が外周面に形成されていて出力軸に連結された変形可能な内輪121と、入力軸に連結された楕円形断面を有する軸部122と、ボールベアリングを介して軸部122の外側に装着された変形可能なリング体123とで構成されている。

【0056】
外輪120を固定した状態で軸部122を回転させることにより、内輪121と外輪120の凹凸歯との噛み合いにより、内輪121は高い減速比で逆向きに回転する。従って、ハーモニックドライブであれば、高トルクな逆回転力が得られるため、低出力の小型モータが使用可能になってロボットアームRAの軽量化が図れる。

【0057】
(要素別回動機構)
要素別回動機構は、アーム要素Aの各々を独立して回動させるものであり、回動対象ではないアーム要素Aの絶対角度を一定に保持しながら、回動対象のアーム要素Aのみを回動できるように構成されている。

【0058】
例えば、図7Aに示すように、第1アーム要素A1に対して第2アーム要素A2を所定の角度で保持した状態で第1アーム要素A1を回動させた場合、第2アーム要素A2の絶対角度θ1,θ2,θ3(ここでは水平方向に対する角度とする)は、第1アーム要素A1の回動に伴って連続的に変化するため、第2アーム要素A2の角運動量も連続的に変化する。

【0059】
従って、この場合、第1アーム要素A1の回動に伴う角運動量は、第2アーム要素A2の角度に応じて連続的に変化するので、その角運動量を相殺するには、連続的に変化する第2アーム要素A2の角度に応じた角運動量を算出し、それと等しい角運動量を駆動側で発生させる必要があり、反トルク機構を実現するのは容易でない。

【0060】
それに対し、例えば、図7Bに示すように、第2アーム要素A2の絶対角度θ1,θ2,θ3を一定に保持しながら第1アーム要素A1が回動するようにすると、第1アーム要素A1が回動しても第2アーム要素A2の角運動量は変化しないため、第1アーム要素A1の回動に伴う角運動量は、第1アーム要素A1の角運動量のみに依存することになる。

【0061】
従って、この場合には、第1アーム要素A1の角運動量の変化のみを考慮して、第1アーム要素A1の回動に伴う角運動量を相殺することができる。すなわち、アーム要素Aごとに角運動量を相殺すればよいため、反トルク機構が容易に実現できる。

【0062】
<UAV1、ロボットアームRAの具体例>
図8に、本発明を適用したロボットアーム付きUAV1の一例を示す。このUAV1は、無線通信によって遠隔操作が可能な公知の回転翼型の無人飛行体であり、UAV本体2や、脚部を有するガード3、鉛直軸回りに回転して揚力を発生させる複数のロータ4などで構成されている。UAV本体2には、ロータ4の回転を制御するUAV制御装置や無線通信装置、バッテリーなどが搭載されている(図示せず)。ロータ4の回転制御により、UAV1は、水平飛行だけでなく、上昇や下降、停止飛行もできるようになっている。

【0063】
UAV本体2の下側に、先端にロボットハンドRHを備えたロボットアームRAが設置されている。これらロボットハンドRH及びロボットアームRAは、UAV1と同様に、無線通信による遠隔操作が可能となっており、UAV1に搭載されたバッテリーを利用して駆動する。

【0064】
図9及び図10に、ロボットアームRAの詳細を示す。ロボットアームRAは、第1アーム要素A1、第2アーム要素A2、スライド機構SMなどで構成されており、スライド機構SMがUAV1に組み付けられている。

【0065】
スライド機構SMは、スライド枠10、スライド軸11、スライド部12、スライドモータ13(サーボモータ)などで構成されている。スライド枠10は、離れて対向する一対の支持板10a,10aを有し、これら支持板10a,10aの間に、スライド軸11が回転可能に軸支されている。スライド機構SMは、水平姿勢のUAV1に対してスライド軸11が水平方向に延びて、基準状態にあるロボットアームRAの重心がUAV1の重心と一致するようにUAV1に配置されている。支持板10aの一方には、正回転及び逆回転の制御が可能なスライドモータ13が設置されている。

【0066】
スライド軸11は、スライドモータ13によって回転駆動される。スライド部12には、貫通孔14が形成されており、その貫通孔14にスライド軸11が挿通されることでスライド部12はスライド軸11に支持されている。スライド軸11の外面には雄ネジが形成されており、スライド孔の内面には、その雄ネジに噛み合う雌ネジが形成されている。スライド軸11の回転に伴ってスライド部12は水平方向にスライドし、その回転数により、スライド部12は、高度な位置決め制御が可能になっている。

【0067】
スライド部12には、第1アーム要素A1及び第2アーム要素A2の各々を独立して回動させる要素別回動機構が組み込まれている。なお、スライド部12には、ロボットハンドRHを駆動制御する機構も組み込まれているが、ここでは省略する。

【0068】
第1アーム要素A1の要素別回動機構は、第1モータ20(サーボモータ)、第1プーリP1、第2プーリP2、第1ハーモニックドライブ21、第1シャフト22などで構成されている。第2アーム要素A2の要素別回動機構は、第2モータ30(サーボモータ)、第3プーリP3、第4プーリP4、第2ハーモニックドライブ31、第2シャフト32、第5プーリP5、第6プーリP6、無端ベルト33(架設部材の一例)などで構成されている。

【0069】
第1アーム要素A1及び第2アーム要素A2の各要素別回動機構は、スライド部12の支持中心(貫通孔14)に対して左右対称状に配置されており、これらの間の貫通孔14の下方に第1アーム要素A1が配置されている。貫通孔14の上方には、第1モータ20及び第2モータ30を制御する制御装置40が配置されている。制御装置40には、重心位置調整部41が含まれている。

【0070】
スライド部12に、第1アーム要素A1及び第2アーム要素A2の各要素別回動機構が集約してバランス良く配置されているため、コンパクト化が図れ、スライド部12に質量を集中できるので、重心位置の調整に必要なスライド部12の変位量を小さくできる。

【0071】
第1モータ20の駆動軸には第1プーリP1が固定されており、その第1プーリP1は無端ベルトを介して、第1ハーモニックドライブ21の入力側の軸21aに固定された第2プーリP2と連結されている。第1プーリP1及び第2プーリP2は、反トルク機構を構成する所定の減速比に設定されている。第1ハーモニックドライブ21の出力側には、回動軸Kを中心に回動する第1シャフト22が連結されている。第1アーム要素A1の基端部は、その第1シャフト22に固定されている。

【0072】
第1アーム要素A1は、第1シャフト22に直交して延びる細長い支柱状の部材からなり、その長さや構造は仕様に応じて適宜設定できる。第1アーム要素A1の先端部には、第3シャフト23を介して第2アーム要素A2の基端部が回動可能に連結されている。第2アーム要素A2も、第1アーム要素A1と同様の部材である。第2アーム要素A2の先端には、遠隔制御によって作動する把持可能なロボットハンドRHが設置されている。

【0073】
第2モータ30の駆動軸には第3プーリP3が固定されており、その第3プーリP3は無端ベルトを介して、第2ハーモニックドライブ31の入力側の軸31aに固定された第4プーリP4と連結されている。第3プーリP3及び第4プーリP4は、反トルク機構を構成する所定の減速比に設定されている。

【0074】
第2ハーモニックドライブ31の出力側には、回動軸Kを中心に回動する第2シャフト32が連結されている。第2シャフト32は、第1シャフト22を回転自在な状態で収容する中空シャフトであり、この第2シャフト32に第5プーリP5が固定されている。それにより、第1シャフト22と、第2シャフト32及び第5プーリP5とは、各々独立して回転自在となっている。

【0075】
第5プーリP5は、無端ベルト33を介して、第3シャフト23に固定された第6プーリP6と連結されている。第5プーリP5及び第6プーリP6は同径のプーリであり、その減速比は1:1に設定されている。

【0076】
従って、第1モータ20が回転すると、そのトルクは、第1プーリP1及び第2プーリP2で減速され、更に第1ハーモニックドライブ21で回転方向を逆にして減速された後、第1シャフト22を介して第1アーム要素A1に伝達される。それにより、第1アーム要素A1が回動する。第1シャフト22は第2シャフト32から独立して回転するため、第1アーム要素A1が回動しても第2アーム要素A2は回動せず、その絶対角度は保持される。

【0077】
一方、第2モータ30が回転すると、そのトルクは、第3プーリP3及び第4プーリP4で減速され、更に第2ハーモニックドライブ31で回転方向を逆にして減速された後、第2シャフト32、第5プーリP5、第6プーリP6を介して第2アーム要素A2に伝達される。それにより、第2アーム要素A2が回動する。第2シャフト32も第1シャフト22から独立して回転するため、第2アーム要素A2が回動しても第1アーム要素A1は回動せず、その絶対角度は保持される。

【0078】
第1アーム要素A1及び第2アーム要素A2の各々の絶対角度、並びにスライド部12の位置は、制御装置40の重心位置調整部41が、第1モータ20、第2モータ30、及びスライドモータ13を制御することによって総合的に調整され、ロボットアームRAの水平方向における重心位置は常に一定に保たれるようになっている。

【0079】
従って、このUAV1によれば、ロボットアームRAが軽量でコンパクトに構成されているうえに、ロボットアームRAが動作しても重心の移動及び反トルクの問題が生じないように構成されているので、安定した姿勢でUAV1を飛行させながらロボットアームRAを動かすことができる。

【0080】
<実施例>
図9及び図10に示した構造を有するロボットアームRAの実験機を作製し、その効果を確認する実験を行った。実験では、ロボットアームRAの動作の影響でロボットアームRA全体がどの程度傾くかを確認するため、スライド機構SMを、各アーム要素Aと同様に回動自在に支持した。その状態で、第2アーム要素A2の先端が、2秒間隔で直径15cmの円を描くように、スライド機構SM、第1アーム要素A1、第2アーム要素A2の各々の動きを制御し、その時のスライド機構SMの傾き(ロボットアームRA全体の傾きに相当)を、ジャイロセンサを用いて計測した。

【0081】
図11に、その結果を示す(実線)。縦軸はスライド機構SMの傾き(°)を表している。破線は、スライド部12をスライド不能に設定し、重心位置調整部41が適切に機能しない、つまり水平方向の重心位置が変化する場合での計測結果を表している(比較例)。

【0082】
図11から明らかなように、比較例では、スライド機構SMの傾き(最大値)が3.3°であったのに対し、実験機のスライド機構SMの傾きは最大で1.7°となり、ロボットアームRAに本発明を適用することで、その動作によって生じる反動を効果的に抑制できることが確認された。

【0083】
なお、本発明にかかる多関節ロボットアームは、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。

【0084】
例えば、要素別回動機構は、図12に示すような平行リンク機構であってもよい。支持されている第1リンクアームL1の基端部をモータで回動し、第2リンクアームL2の基端部をモータで回動することで、第1アーム要素A1と第2アーム要素A2とを独立して回動させることができる。

【0085】
ロボットアームRAの先端に設置するのは、ロボットハンドRHに限らない。例えば、物品を引っ掛けることができるフックや、物品を収容できるバケット、電磁石など、用途に応じた作業ツールを取り付けることができる。架設部材は、無端ベルト33に限らず、ワイヤ等であってもよい。

【0086】
ロボットアーム及びロボットハンドは、UAVの脚としても利用できる。例えば、鳥のように、ロボットアーム及びロボットハンドを操作して高所の枝やケーブルなどに捕まった状態で、UAVを所定位置に保持することができる。そうすれば、バッテリーの使用を抑制できるので、高所での長時間撮影等が簡単にできるようになる。

【0087】
その際、重心位置調整部によるUAVの位置調整によって、UAVの停止位置や停止姿勢を変えることができるので、利便性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の多関節ロボットアームによれば、その動作による反動を効果的に抑制できるので、UAVに限らず、姿勢を維持するのが難しい水中や水上、宇宙空間等でロボットアームRAを操作する無人作業機などにも好適に利用できる。
【符号の説明】
【0089】
1 UAV
12 スライド部
20 第1モータ
21 第1ハーモニックドライブ
30 第2モータ
31 第2ハーモニックドライブ
P1~P6 第1~第6プーリ
A アーム要素
RA ロボットアーム
RH ロボットハンド
図面
【図1A】
0
【図1B】
1
【図2A】
2
【図2B】
3
【図3A】
4
【図3B】
5
【図4】
6
【図5】
7
【図6】
8
【図7A】
9
【図7B】
10
【図8】
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【図9】
12
【図10】
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【図11】
14
【図12】
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