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明細書 :伸縮性導電膜の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-224477 (P2017-224477A)
公開日 平成29年12月21日(2017.12.21)
発明の名称または考案の名称 伸縮性導電膜の製造方法
国際特許分類 H01B  13/00        (2006.01)
B82Y  30/00        (2011.01)
B82Y  40/00        (2011.01)
H01B   1/04        (2006.01)
H01B   1/24        (2006.01)
H01B   5/14        (2006.01)
G01N  27/04        (2006.01)
FI H01B 13/00 503B
B82Y 30/00
B82Y 40/00
H01B 1/04
H01B 1/24 A
H01B 5/14 A
G01N 27/04 Z
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2016-118697 (P2016-118697)
出願日 平成28年6月15日(2016.6.15)
発明者または考案者 【氏名】金子 克美
【氏名】秋山 慎吾
【氏名】ラドバン クコバット
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 2G060
5G301
5G307
5G323
Fターム 2G060AA09
2G060AF07
2G060EA06
2G060EB03
2G060JA07
2G060JA10
5G301BA01
5G301DA18
5G301DA32
5G301DD01
5G301DE01
5G307FA03
5G307FB04
5G307FC10
5G323BA05
5G323BB06
要約 【課題】 伸張率が100%を超えるようなきわめて大きな伸長度の場合であっても導電性が大きく変動しない伸縮性導電膜を容易に提供する。
【解決手段】 伸縮性を有するベースフィルム26の表面にカーボンナノチューブからなる導電膜が形成された伸縮性導電膜の製造方法であって、転写板22にカーボンナノチューブの分散剤を塗布する工程と、前記分散剤を塗布した後、転写板22にカーボンナノチューブの分散液を塗布する工程と、転写板22からカーボンナノチューブの薄膜24をベースフィルム26に転写する転写工程と、を備えることを特徴とする。
【選択図】 図2
特許請求の範囲 【請求項1】
伸縮性を有するベースフィルムの表面にカーボンナノチューブからなる導電膜が形成された伸縮性導電膜の製造方法であって、
転写板にカーボンナノチューブの分散剤を塗布する工程と、
前記分散剤を塗布した後、前記転写板にカーボンナノチューブの分散液を塗布する工程と、
前記転写板からカーボンナノチューブの薄膜をベースフィルムに転写する転写工程と、
を備えることを特徴とする伸縮性導電膜の製造方法。
【請求項2】
前記転写板にカーボンナノチューブの分散液を塗布する工程の後、酸処理により前記転写板に形成された被膜から前記分散剤を溶出し、次いで水洗浄し、
前記転写板から前記ベースフィルムにカーボンナノチューブの薄膜を転写することを特徴とする請求項1記載の伸縮性導電膜の製造方法。
【請求項3】
前記転写板にカーボンナノチューブの分散剤を塗布する工程と、前記転写板にカーボンナノチューブの分散液を塗布する工程においては、前記転写板を室温以上に加温することを特徴とする請求項1または2記載の伸縮性導電膜の製造方法。
【請求項4】
前記分散剤として、
酢酸亜鉛、酢酸ニッケル、酢酸銅、酢酸銀、及び酢酸パラジウムからなる群から選択される一つと、硝酸アルミニウム、硝酸鉄、硝酸銅、及び硝酸亜鉛からなる群から選択される一つとを含む分散剤を使用することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載の伸縮性導電膜の製造方法。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブの分散剤として、前記カーボンナノチューブの分散液を調製する際に使用する分散剤と同一の分散剤を使用することを特徴とする請求項4記載の伸縮性導電膜の製造方法。
【請求項6】
前記転写板に形成されたカーボンナノチューブの薄膜を、前記転写板からベースフィルムに転写する転写工程を複数回繰り返し、カーボンナノチューブの薄膜が複数層に積層された導電膜を備える伸縮性導電膜を製造することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項記載の伸縮性導電膜の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は伸縮性導電膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の医療では予防医学という概念が強く民間にも定着しつつある。その背景には人口の高齢化に伴った健康志向が挙げられる。老後も自立して健やかに過ごすことは多くの人々が望むものである。そこで注目されているのがウェアラブルデバイスである。しかしながら、身に着けるという観点から、ウェアラブルデバイスには多くの課題がある。例えば、身体は可動域が大きいことから、より柔軟性・伸縮性がある材料を使うことが必要不可欠であり、あらゆるデバイスに用いられる電極(導電膜)に伸縮性を付与するという課題がある。
【0003】
柔軟性、可撓性を備える導電材料には、柔軟性を有する高分子材料にカーボンブラックやカーボンナノチューブを含有させたものや、導電性プラスチックのような基材そのものが導電性を有するものからなるもの等がある。
しかしながら、従来の導電性材料とくに電子デバイスに用いられる電極、導電膜は、伸張させたときの導電性が十分ではない。そこで、伸張時にも電気抵抗が増加しにくい導電膜として、小径の繊維状炭素材料に加えて、所定の大きさの薄片状炭素材料を配合した導電性組成物(特許文献1)、比較的大径の繊維状炭素材料にカーボンブラックを配合した導電性組成物(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】WO2013/146254
【特許文献2】WO2013/146262
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで伸縮性を有する導電材料では、伸縮させたときの導電性の変動が問題であり、ウェアラブルデバイスに用いる導電材料では伸縮率が200~300%といった大きな伸長率の条件下においても導電性を確保することができる導電材料が求められる。
本発明に係る伸縮性導電膜の製造方法は、伸張率が100%を超えるようなきわめて大きな伸長度の場合であっても導電性が大きく変動しない伸縮性導電膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る伸縮性導電膜の製造方法は、伸縮性を有するベースフィルムの表面にカーボンナノチューブからなる導電膜が形成された伸縮性導電膜の製造方法であって、転写板にカーボンナノチューブの分散剤を塗布する工程と、前記分散剤を塗布した後、前記転写板にカーボンナノチューブの分散液を塗布する工程と、前記転写板からカーボンナノチューブの薄膜をベースフィルムに転写する転写工程と、を備えることを特徴とする。転写板にカーボンナノチューブの分散液を塗布した後、酸処理と水洗浄を行うことにより、より確実に転写板からカーボンナノチューブの薄膜を転写することができる。
また、前記転写板にカーボンナノチューブの分散剤を塗布する工程と、前記転写板にカーボンナノチューブの分散液を塗布する工程においては、前記転写板を室温以上に加温することにより、転写板上に形成された被膜から効果的に水分を除去し、効率的な処理が可能になる。
【0007】
前記転写板にあらかじめ塗布する分散剤は、カーボンナノチューブの分散液を調製する際に用いる分散剤である。転写板に塗布する分散剤はカーボンナノチューブの分散液を塗布する工程で使用するカーボンナノチューブの分散液の調製に使用した分散剤と同一の分散剤であってもよいし、異なる分散剤であってもよい。同一の分散剤を使用すれば処理工程が容易になる。
前記分散剤としては、酢酸亜鉛、酢酸ニッケル、酢酸銅、酢酸銀、及び酢酸パラジウムからなる群から選択される一つと、硝酸アルミニウム、硝酸鉄、硝酸銅、及び硝酸亜鉛からなる群から選択される一つとを含む分散剤が好適に使用される。
上記分散剤は、バーコート法あるいはプリント法によりカーボンナノチューブを基板へ塗布する操作に適するカーボンナノチューブの分散液(カーボンナノチューブインク)の調製に適している。バーコート法あるいはプリント法によりカーボンナノチューブを塗布する際にはカーボンナノチューブインクが水よりも大きな粘度を持つことが必要である。上記分散剤はこのようなカーボンナノチューブインクの粘度調製に適している。例えば、カーボンナノチューブの濃度を5wt.%にすると粘度は500 mPasを超え、水の500倍になる。
本発明においてカーボンナノチューブの分散液を塗布するとは、スプレー法、バーコート法、プリント法等によりベースフィルムにカーボンナノチューブの分散液を供給することを意味する。
【0008】
本発明に係る伸縮性導電膜の製造方法により得られる伸縮性導電膜はカーボンナノチューブの配列として等方性と異方性の制御が可能であり、バーコート法あるいはプリント法を利用することにより、大面積でフレキシブル性を備える導電膜を容易に得ることができ、曲面全体にわたって高感度で変形計測することができるという利点がある。また、ベースフィルムを衣料として、衣料へ塗布することにより伸縮性導電膜(伸縮性電極)とすることができ、ウェアラブルデバイスに伸縮性導電膜を利用することが容易に可能になる。
【0009】
また、前記転写工程は、繰り返して行うことが可能であり、前記転写板に形成されたカーボンナノチューブの薄膜を、前記転写板からベースフィルムに転写する転写工程を、同一のベースフィルムに対して複数回繰り返し、カーボンナノチューブの薄膜が複数層に積層された導電膜を備える伸縮性導電膜を製造することができる。カーボンナノチューブの薄膜を複数層に積層することにより導電膜の導電性を向上させることができる利点がある。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る伸縮性導電膜の製造方法によれば、伸縮性導電膜を100%以上に伸縮させた場合でも、導電膜の導電性が大きく変動することがない伸縮性導電膜を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】カーボンナノチューブの分散液を作成する工程を示す説明図である。
【図2】伸縮性導電膜を作成する工程を示す説明図である。
【図3】転写板にCNTの分散剤を塗布し、次いでCNTの分散液を塗布する方法により転写されるメカニズムを示す説明図である。
【図4】伸縮性導電膜の抵抗測定方法を示す説明図である。
【図5】単層のCNTの薄膜の場合について、ストレッチ比を変えたときの抵抗の測定結果を示すグラフである。
【図6】伸縮操作1回目、50回目、100回目における抵抗の変化率を示すグラフである。
【図7】伸縮操作50回目、100回目における抵抗の変化率を拡大して示すグラフである。
【図8】二層のCNTの薄膜の場合について、ストレッチ比を変えたときの抵抗の測定結果を示すグラフである。
【図9】伸縮操作1回目、50回目、100回目における抵抗の変化率を示すグラフである。
【図10】伸縮操作50回目、100回目における抵抗の変化率を拡大して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(伸縮性導電膜の製造方法)
<カーボンナノチューブの分散液の作成>
本発明に係る伸縮性導電膜の製造方法においては、導電材料としてカーボンナノチューブ(CNT)を使用する。伸縮性導電膜の製造にあたっては、CNTを水に分散させた分散液を使用する。はじめに、CNTの分散液の作成方法について説明する。
図1はCNTの分散液を作成する工程を示す。
まず、プラスチック製の容器10に、純水と、CNTと、分散剤として酢酸亜鉛及び硝酸アルミニウム(Zn/Al)とを入れ(図1(a))、超音波ホモジナイザー12を用いてCNTを分散させる(図1(b))。
実験では、容量30mLのプラスチック容器を使用し、純水20mLに、CNT(SWCNT:名城ナノカーボン製、e-Dips、直径2.0nm)を5mg、Zn/Alを100mg添加した。超音波ホモジナイザーにはSONICS製VCX500を使用した。超音波は20kHz、振幅20%、1秒間隔で3分間超音波を作用させた。

【0013】
超音波ホモジナイザー12を用いてCNTを分散させるとCNTは水中で分散し、容器10に収容されている液の外観色は黒色になる(図1(c))。
次に、CNTを分散させた分散液を遠沈管14に入れ替え(図1(d))、遠心分離機で遠心分離する(10000rpm、10分)。
図1(e)は、CNTの分散液を遠心分離した後の状態を示す。遠心分離により、大きなCNT片が沈殿する。この遠沈管14で沈殿したCNT片は、完全に分散しきれなかったCNTである。遠心分離した後の遠沈管14内の上澄み液をスポイトで採取し、伸縮性導電膜の製造に使用するCNTの分散液とする。

【0014】
<伸縮性導電膜の作成>
本発明に係る伸縮性導電膜の製造方法では転写法を利用して伸縮性導電膜を製造する。すなわち、転写板上にカーボンナノチューブの薄膜を形成し、次いで、伸縮性を有するベースフィルムにカーボンナノチューブの薄膜を転写する方法を利用して伸縮性導電膜を作成する。

【0015】
図2は、CNTの分散液を用いて伸縮性導電膜を作成する工程を示す。
図2(a)は、転写板にCNTの分散液を塗布する工程を示す。
ホットマグネットスタイラー20に転写板としてスライドガラス22をのせ、エアブラシを用いて前述した方法で調製したCNTの分散液を塗布する。本実施形態では、ホットマグネットスタイラー20を140℃に加熱し、スライドガラス22に塗布したCNTの分散液から水分が短時間で蒸発されるようにした。
図2(b)は酸処理工程を示す。酸処理工程は、CNTの薄膜24に残留した分散剤(酢酸亜鉛及び硝酸アルミニウム)を除去するための処理である。実施形態では、濃度3molのHNO3の水溶液に、CNTの薄膜24を形成したスライドガラス22を5分間浸漬して行った。

【0016】
酸処理後、酸処理液からスライドガラス22を取り出し、純水にスライドガラス22を浸漬し酸を洗い流す(水処理工程)(図2(c))。
次に、水処理後のスライドガラス22からCNTの薄膜24をポリウレタンフィルム26に転写する(転写工程)。CNTの薄膜24が上向きになるようにスライドガラス22を置き、スライドガラス22の上方からベースフィルムとしてポリウレタンフィルム26を被せる(図2(d))。図2(e)は、スライドガラス22の上面に被せたポリウレタンフィルム26を軽く押さえた後、ポリウレタンフィルム26を引き剥がすことで、ポリウレタンフィルム26にCNTの薄膜24を転写する操作を示す。
図2(f)は、ポリウレタンフィルム26の表面にCNTの薄膜24が転写された伸縮性導電膜の写真である。

【0017】
<CNTの薄膜を転写する方法>
本発明に係る伸縮性導電膜の製造方法において図2に示す伸縮性導電膜の工程において特徴とする操作は、転写板のスライドガラス22から伸縮性を有するベースフィルムであるポリウレタンフィルム26にCNTの薄膜24を転写する操作を利用して伸縮性導電膜を作成する処理を行う点である。
ベースフィルムの表面にCNTの薄膜が被着された伸縮性導電膜を形成する方法としては、ベースフィルムに直接CNTの分散液を塗布し、水分を蒸発させベースフィルム上にCNTの薄膜を形成する方法もある。ただし、この方法においても、酸処理によりCNTの薄膜に残留する分散剤を除去する必要がある。しかしながら、ベースフィルムにCNTの薄膜が被着した状態で酸処理すると、ベースフィルム(ポリウレタンフィルム)の機械的強度が損なわれ伸縮性が劣化するという問題が生じる。上述した転写法を利用する方法は、ベースフィルムが酸処理を受けることがなく、ベースフィルムの特性が劣化しないという利点がある。

【0018】
しかしながら、転写法を利用して伸縮性導電膜を作成する方法においては、転写板(スライドガラス)からベースフィルム(ポリウレタンフィルム)にCNTの薄膜を転写する際にCNTの薄膜が剥落したりしないように、確実に転写させなければならない。
スライドガラスからポリウレタンフィルムにCNTの薄膜を転写する方法について実験したところ、スライドガラス表面のCNTの薄膜にポリウレタンフィルムを接触させ、軽く押さえて転写させる方法では、確実にCNTの薄膜を転写することができないことが分かった。
そこで、本発明では、CNTの薄膜の転写性を良くするため、CNTの分散に用いる酢酸亜鉛と硝酸アルミニウムをスライドガラスの表面にあらかじめ塗布し、その後にCNTの分散液を塗布する方法を採用した。

【0019】
実験では、140℃に加熱したホットマグネットスタイラー20にスライドガラス22をのせ、あらかじめ1g酢酸亜鉛と1g硝酸アルミニウムを50gのエタノール中で溶解して作製したZn/Al分散剤溶液でカーボンナノチューブを分散させて作成したカーボンナノチューブインクをエアブラシでスプレーコートし、次いで、CNTの分散液をスプレーコートした後、水分を蒸発させ、前述した酸処理・水処理後、ポリウレタンフィルムにCNTの薄膜を転写した。
この方法によれば、スライドガラスからポリウレタンフィルムへのCNTの薄膜の転写性が良好となり、確実にCNTの薄膜を転写することが可能になる。なお、ポリウレタンフィルムにCNTの薄膜を転写する操作は、スライドガラスを水から取り出した後、CNTの薄膜が乾燥する前に処理する必要がある。CNTの薄膜が乾燥してしまうと、スライドガラスからCNTの薄膜が剥離しにくくなり、ポリウレタンフィルムに転写されなくなる。

【0020】
図3は、スライドガラス(転写板)に、CNTの分散剤である酢酸亜鉛と硝酸アルミニウムの溶液を塗布することによりスライドガラスからCNTの薄膜が転写されるメカニズムを示す。
図3(a)はスライドガラス22に酢酸亜鉛と硝酸アルミニウム(Zn/Al)を塗布し、さらにCNTを塗布した状態である。この操作により、スライドガラス22の表面に、CNTとZn/Alとが混在する層が形成される。
図3(b)は上記処理後のスライドガラスを酸処理した状態である。酸処理によりZn/Alが除去され、Zn/Alが存在していた部位が空間になる。
図3(c)は、図3(b)の後、水処理した状態を示す。CNTの間に形成されていた空間に水分子が入り込む。
このようにCNTの薄膜24の空間に水分子が入り込んだ状態で転写操作を行うと、スライドガラス22から容易にCNTの薄膜24が剥離し、ポイウレタンフィルムに確実にCNTの薄膜が転写される。

【0021】
図3(d)は上述した転写方法を説明的に示したものである。
すなわち、スライドガラス22に分散剤(Zn/Al)を塗布すること(転写板に分散剤を塗布する工程)により分散剤の層28が形成され、さらにCNTの分散液を塗布すること(CNTの分散液を塗布する工程)によりCNTの層(薄膜)24が形成され、次いで、酸処理・水処理を行うことにより、スライドガラス22上に水の層30とCNTの層24が形成され、スライドガラス22からCNTの薄膜24が剥離しやすくなる。

【0022】
このように転写板からベースフィルムにCNTの薄膜を転写する方法を利用すれば、転写板からベースフィルムにCNTの薄膜を転写する操作を繰り返すことにより、ベースフィルム上にCNTの薄膜を複数層に積層して形成することができ、CNTの薄膜が複数層に積層された伸縮性導電膜を得ることができる。CNTの薄膜を転写する操作を繰り返す場合も、転写板(スライドガラス)にあらかじめ分散剤(Zn/Al)を塗布した後、CNTの分散液を塗布する操作を行うことで、ベースフィルムに確実にCNTの薄膜を転写することができる。

【0023】
(伸縮性導電膜の抵抗測定)
上述した方法により作成した伸縮性導電膜について、伸縮性導電膜をストレッチさせたときの電気抵抗を測定した。
伸縮性導電膜の抵抗値は四端子法抵抗測定装置を使用し、伸縮性導電膜のサンプルをストレッチさせ、ストレッチ量を変えながら繰り返し表面抵抗を測定する方法で行った。
図4に抵抗測定方法を示す。
伸縮性導電膜のサンプルのストレッチ量を規定するため、サンプルの裏面に10mm四方の検査領域を設定し、十字形の5点位置にストレッチ位置を示すマーキングを施した。ポリウレタンフィルムにCNTの薄膜からなる導電膜を形成した伸縮性導電膜は透明であり、サンプルの表面側からマーキング位置を視認してサンプルのストレッチ量を確認することができる。

【0024】
抵抗測定は、図4(b)に示す左端位置マーキングAの線上、中央位置のマーキングBの線上、右端位置のマーキングCの線上のそれぞれで、複数点位置で四端子法抵抗測定装置を用いて測定した。サンプルの抵抗の測定値には、これら複数点位置での測定値を平均したものを用いた。
サンプルのストレッチ量は、サンプルをストレッチしていない状態(1倍)から、検査領域を左右に5mm間隔ずつ伸ばし、ストレッチ量(Stretch ratio)1.5倍、2.0倍、2.5倍、3.0倍まで、段階的に設定した。図4(c)は、検査領域を左右10mmから左右20mmmまでストレッチした状態(ストレッチ比2.0)である。

【0025】
(測定例1)
表1に、CNTの薄膜を単層で形成した、透明度80%の伸縮性導電膜のサンプルについて、ストレッチ比を変えたときの抵抗値の測定結果と、抵抗の変化率を示す。抵抗の変化率は、ストレッチ比が1.0のときの抵抗値Rと、ストレッチさせたときの抵抗値の変化量ΔRとの比である。
【表1】
JP2017224477A_000003t.gif

【0026】
表1で1回目とあるのは、サンプルを伸縮操作する初回時の測定値である。各々の抵抗の測定値は、サンプルを引き伸ばしながら、ストレッチ比1.0、1.5、2.0、2.5、3.0として、それぞれで測定した結果である。なお、ストレッチ比1.0はサンプルを引き伸ばさない状態である。
表1で50回目、100回目とあるのは、サンプルをストレッチ比3.0まで引き伸ばし、元の長さに戻す伸縮操作をそれぞれ50回、100回行った後に抵抗を測定した結果である。

【0027】
図5は1回目、50回目、100回目について、ストレッチ比を変えたときの抵抗の測定結果をグラフに示したものである。
図6は1回目、50回目、100回目における抵抗の変化率を示すグラフである。図7は、50回目と100回目について、縦軸のスケールを拡大した抵抗の変化率のグラフである。
図6、7からサンプルを50回、100回と伸縮させる操作を行うと、ストレッチ比を変えたときの抵抗値の変化が抑えられることが分かる。

【0028】
(測定例2)
表2に、CNTの薄膜をポリウレタンフィルムに2回転写して、CNTの薄膜を二層に積層し、伸縮性導電膜のサンプル(透明度73%)について、サンプルをストレッチしたときの抵抗値の側的結果と、抵抗の変化率を示す。それぞれ、サンプルを引き伸ばす初回操作のとき(1回目)、サンプルを50回伸縮させた後、100回伸縮させた後での結果を示す。
【表2】
JP2017224477A_000004t.gif

【0029】
図8に抵抗値の測定結果、図9に抵抗の変化率、図10に50回目、100回目での抵抗の変化率を示す。図9、図10から、CNTの薄膜を二層とした伸縮性導電膜の場合は、50回、100回とストレッチした後の抵抗の変化率がストレッチ比2.0の場合で5%未満、ストレッチ比3.0の場合でも10%未満と、抵抗の変化率が効果的に抑制されている。
また、CNTの薄膜を二層としたことにより抵抗値そのものも単層のサンプルと比較して大きく低下している。本発明方法に係る伸縮性導電膜の製造方法によれば、CNTの薄膜を繰り返し積層して導電膜とすることが可能であり、CNTの薄膜の積層数を増やすことにより導電膜の抵抗値を低減させ、導電性を向上させることができる。

【0030】
上記実験結果は、転写法により伸縮性導電膜を形成する際に、Zn/Alをコートする方法がベースフィルムの表面にCNTの薄膜からなる導電膜を形成する方法として有効であること、上記方法によって得られた伸縮性導電膜は、ストレッチ比3.0(300%)という従来の伸縮性導電膜では見られないきわめて大きな変形(伸び)を与えた場合でも、抵抗の変化率を10%以下程度にまで抑えることを可能にするという優れた特性を備えるという特徴を有する。
【符号の説明】
【0031】
12 超音波ホモジナイザー
20 ホットマグネットスタイラー
22 スライドガラス
24 CNTの薄膜
26 ポリウレタンフィルム
28 分散剤の層
30 水の層
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9