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明細書 :白金族系物質の分離回収方法及びその分離回収装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6532051号 (P6532051)
公開番号 特開2016-109468 (P2016-109468A)
登録日 令和元年5月31日(2019.5.31)
発行日 令和元年6月19日(2019.6.19)
公開日 平成28年6月20日(2016.6.20)
発明の名称または考案の名称 白金族系物質の分離回収方法及びその分離回収装置
国際特許分類 G21F   9/12        (2006.01)
G21F   9/10        (2006.01)
C02F   1/28        (2006.01)
B01D  21/00        (2006.01)
B01D  21/02        (2006.01)
B01D  21/24        (2006.01)
C02F   1/62        (2006.01)
B01J  20/08        (2006.01)
B01J  20/16        (2006.01)
B01J  20/06        (2006.01)
B01J  20/34        (2006.01)
B01J  20/10        (2006.01)
G21F   9/16        (2006.01)
FI G21F 9/12 501J
G21F 9/12 501D
G21F 9/12 501B
G21F 9/12 501K
G21F 9/10 E
C02F 1/28 E
C02F 1/28 B
B01D 21/00 B
B01D 21/02 N
B01D 21/24 U
B01D 21/24 G
B01D 21/24 M
B01D 21/24 W
C02F 1/62 Z
B01J 20/08 A
B01J 20/16
B01J 20/06 A
B01J 20/34 G
B01J 20/08 C
B01J 20/10 A
B01J 20/10 C
G21F 9/16 541B
請求項の数または発明の数 17
全頁数 19
出願番号 特願2014-244589 (P2014-244589)
出願日 平成26年12月3日(2014.12.3)
審査請求日 平成29年11月15日(2017.11.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】天本 一平
【氏名】小林 秀和
個別代理人の代理人 【識別番号】100176164、【弁理士】、【氏名又は名称】江口 州志
審査官 【審査官】岡▲崎▼ 輝雄
参考文献・文献 特開2014-055331(JP,A)
特開2013-000639(JP,A)
特表2005-517521(JP,A)
特開平08-269585(JP,A)
特開2007-212316(JP,A)
特表2014-516943(JP,A)
特開2011-231378(JP,A)
特開2005-194546(JP,A)
特開2004-020546(JP,A)
特開平10-263529(JP,A)
特開平05-019096(JP,A)
特開平04-078438(JP,A)
特開平06-123796(JP,A)
特開平04-315999(JP,A)
特開昭61-187939(JP,A)
特開昭58-095299(JP,A)
米国特許出願公開第2008/0071129(US,A1)
米国特許出願公開第2006/0091067(US,A1)
調査した分野 G21F 9/12
B01D 21/00
B01D 21/02
B01D 21/24
B01J 20/06
B01J 20/08
B01J 20/10
B01J 20/16
B01J 20/34
C02F 1/28
C02F 1/62
G21F 9/10
G21F 9/16
特許請求の範囲 【請求項1】
パラジウム、ロジウム及びルテニウムの少なくとも何れか一つからなる白金族元素及びその化合物を含む酸性溶液から前記白金族元素及びその化合物を分離回収する方法であって、
前記酸性溶液を、ゾルーゲル法で製造した酸化物系の酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン及びアルミナケイ酸塩化合物系の少なくとも何れか一つからなる無機高分子を前駆体とする多孔質材料又はそれらの多孔質材料の組合せが、有機物吸着剤を含まない形態で分離材として充填されたカラムの2以上を直列的に連結した分離ユニットに送入し、前記分離ユニットのカラム内を通過させることによって、前記酸性溶液から前記白金族元素及びその化合物を分離する分離工程を含むことを特徴とする白金族系物質の分離回収方法。
【請求項2】
前記分離工程によって分離された白金族元素及びその化合物を含む前記分離材を逆洗することにより、前記分離材から前記白金族元素及びその化合物を離脱させ、回収する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の白金族系物質の分離回収方法。
【請求項3】
前記無機高分子を前駆体とする多孔質材料が、アナターゼ型又は一部ルチル型を含むアナターゼ型の結晶構造を有する酸化チタンからなる無機高分子を前駆体とする多孔質材料を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の白金族系物質の分離回収方法。
【請求項4】
前記分離ユニットは、2以上の前記カラムがそれぞれ独立で、又は所望の段数をまとめて一体で取付け及び取外しができるカートリッジ構造を有することを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の白金族系物質の分離回収方法。
【請求項5】
前記白金族元素及びその化合物を含む酸性溶液を静置する工程及び前記酸性溶液に沈殿材を添加する工程の少なくとも何れかの工程により前記白金族元素及びその化合物を凝集沈殿させる凝集沈殿工程と、この工程に続いて行う前記分離工程とを含むことを特徴とする請求項1~4に記載の白金族系物質の分離回収方法。
【請求項6】
前記凝集沈殿工程で沈降させた浮遊物質及び沈殿物を沈殿物回収工程に送る工程と、前記凝集沈殿工程で浮遊物質及び沈殿物が除かれた上澄み採取液を前記分離工程に送る工程とを、さらに含む請求項5に記載の白金族系物質の分離回収方法。
【請求項7】
前記白金族元素及びその化合物を含む酸性溶液が、高レベル放射性廃液であることを特徴とする請求項1~6の何れかに記載の白金族系物質の分離回収方法。
【請求項8】
パラジウム、ロジウム及びルテニウムの少なくとも何れか一つからなる白金族元素及びその化合物を含む酸性溶液から前記白金族元素及びその化合物を分離回収する装置であって、少なくとも
ゾルーゲル法で製造した酸化物系の酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン及びアルミナケイ酸塩化合物系の少なくとも何れか一つからなる無機高分子を前駆体とする多孔質材料又はそれらの多孔質材料の組合せが、有機物吸着剤を含まない形態で分離材として充填されたカラムの2以上を直列的に連結した分離ユニットと、
前記酸性溶液を前記分離ユニットに送入し、前記分離ユニットのカラム内を通過させる手段と、を有する白金族系物質の分離回収装置。
【請求項9】
前記無機高分子を前駆体とする多孔質材料が、アナターゼ型又は一部ルチル型を含むアナターゼ型の結晶構造を有する酸化チタンからなる無機高分子を前駆体とする多孔質材料を含むことを特徴とする請求項8に記載の白金族系物質の分離回収装置。
【請求項10】
前記分離ユニットが、2以上の前記カラムをそれぞれ独立で、又は所望の段数をまとめて一体で取付け及び取外しができるカートリッジ構造を有することを特徴とする請求項8又は9に記載の白金族系物質の分離回収装置。
【請求項11】
請求項8~10の何れかに記載の分離回収装置が、さらに、前記酸性溶液を供給するための供給口と、前記酸性溶液に含まれる前記白金族元素及びその化合物を凝集沈殿させるために沈殿材を外部から投入する場合には、前記沈殿材を投入するための添加口とを備える廃液貯蔵槽を有することを特徴とする白金族系物質の分離回収装置。
【請求項12】
前記廃液貯蔵槽は、前記酸性溶液に含まれる白金族元素及びその化合物を凝集沈殿させるために使用する凝集沈殿室と、該凝集沈殿室で浮遊物質及び沈殿物が除かれた上澄み液を選択的に採取し、前記分離ユニットへ送入するための清澄液送液室とからなり、前記凝集沈殿室と清澄液送液室との間には、前記上澄み液を前記清澄液送液室へ送る際に液面を調整するための液面調整孔が設けられていることを特徴とする請求項11に記載の白金族系物質の分離回収装置。
【請求項13】
前記液面調整孔は可動式のものであることを特徴とする請求項12に記載の白金族系物質の分離回収装置。
【請求項14】
前記凝集沈殿室は、該凝集沈殿室で凝集沈殿させた浮遊物質及び沈殿物を沈殿物回収工程に送るためのスラリーポンプを備えることを特徴とする請求項12又は13に記載の白金族系物質の分離回収装置。
【請求項15】
前記浮遊物質及び沈殿物の沈殿物回収工程への移送を容易にするため、前記スラリーポンプの吸引口部分が位置する前記凝集沈殿室の底部に、送液用枡として機能する凹部を設けることを特徴とする請求項14に記載の白金族系物質の分離回収装置。
【請求項16】
前記凝集沈殿室と、前記清澄液送液室から前記上澄み液を前記分離ユニットに送入させる手段を介して前記分離ユニットに接続する配管とは、前記上澄み液を前記分離ユニットに送入するときの送入量を調製するための液量調節バルブと前記上澄み液を凝集沈殿室に戻すための配管とを備える上澄み液戻しラインによって接続されていることを特徴とする請求項12~15の何れかに記載の白金族系物質の分離回収装置。
【請求項17】
前記白金族元素及びその化合物を含む酸性溶液が、高レベル放射性廃液であることを特徴とする請求項8~16の何れかに記載の白金族系物質の分離回収装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高レベル放射性廃液等の酸性溶液に含まれる白金族元素及びその化合物等の白金族系物質を、効率的に、且つ、確実に分離回収するための白金族系物質の分離回収方法及びその分離回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、日本においては、原発の使用済み核燃料の再処理施設で発生する高レベル放射性廃液(HLLW)の安定化処理方法として、HLLWとホウケイ酸塩ガラスフリットを混合して昇温することによりHLLW中の硝酸分を分解・揮散させた後、残留する放射性酸化物を溶融ガラス中に含有させることを行っている。この処理において大部分の酸化物はガラスの骨格構造中に入り込むが、一部の物質はガラスに溶け込むことなく分離して溶融炉の底部に蓄積するため、当該溶融炉底部の溶融ガラスの粘度が高くなり、溶融ガラスの取り出しに支障をきたす等、ガラス固化体の製造に様々な悪影響を及ぼす。このような物質としては白金族系物質が挙げられる。HLLW中に含まれる白金族系物質は、ガラスに対する溶解度が低く、ガラスよりも密度が大きいことから、ガラスを溶融する際に溶融炉底部に沈降し堆積する。また、白金族系物質はガラスよりも抵抗値が低いため、直接通電によるガラス溶融時に電流が白金族系物質に回り込むようになり、ガラス通電による溶融が十分に行うことができないという問題もある。
【0003】
現状は、溶融炉の形状や運転方法等で悪影響の低減を改善しているが、HLLW中に含まれる白金族系物質量の低減に対しては有効な対策がほとんどなされておらず、ガラス固化固定において解決すべき重要な技術課題となっている。そこで、この技術課題を解決するため、いくつかの方法が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、白金族系物質が含まれる放射性廃液に還元剤を添加した後に含浸体に含浸させて加熱処理し、前記含浸体を溶融炉で溶融した後に固化させる放射性廃液の処理方法が開示されている。ここで、前記還元剤としてはギ酸やカーボンブラックを、また、前記含浸体としてはガラスカートリッジを使用することが記載されている。
【0005】
さらに、特許文献2には、放射性廃液から白金族元素を回収するため、金属ファロシアン化物と、金属フェロシアン化合物を包み込む袋状部材とを備える回収部材による回収方法が開示されている。ここで、袋状部材は、貫通孔が形成された樹脂フィルムと前記樹脂フィルムを接着するシール材とから構成されている。
【0006】
また、特許文献3には、放射性溶液の除染方法として、水銀陰極電位を保持するために溶液に予め沈殿剤を添加することにより鉄、クロム、マンガン等の遷移金属元素を沈殿除去する工程と、液体金属電極により電解還元して放射性廃液の白金族元素量を減少させる工程とからなる除染方法が提案されている。
【0007】
一方、白金族系物質としては、前記放射性廃液に含まれるものだけではなく、鉱・工業廃水等の酸性溶液に溶存するものについても様々な選択回収方法が提案されている。例えば、特許文献4及び5には、少なくともアミン化合物を含有する選択沈殿剤又は白金族金属分離剤を用いる方法が開示されている。また、特許文献6には、RuやIr等の白金族系物質を回収する方法としてイオン交換樹脂や溶剤抽出剤を用いる方法、Ruを陰イオン状態にし、活性炭に吸着させることにより溶液からRuを分離回収する方法、又は共存イオンの影響を除くため、RuやIrを活性炭に吸着させる前に硫化剤等を添加し、生成した沈殿物を濾過除去する方法等が開示されている。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2010-169415号公報
【特許文献2】特開2014-77162号公報
【特許文献3】特開平5-19096号公報
【特許文献4】特開2005-194546号公報
【特許文献5】特開2012-25994号公報
【特許文献6】特開2010-174336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記HLLWを含め、白金族系物質が含まれる酸性溶液から白金族物質を分離回収する方法としては、白金族系物質の確実な分離回収だけでなく、分離回収処理を簡便に、且つ、できるだけ短時間に行うことが求められる。さらに、白金族系物質を選択回収するために使用される吸着剤や抽出剤は、高濃度放射線が含まれる酸性溶液中で分解することがなく耐久性に優れるとともに、回収及び廃棄が容易で、且つ、安全であることが望まれる。使用後の吸着剤や抽出剤は、適当な再処理方法によって再利用できるものであれば、より好ましい。
【0010】
しかしながら、前記特許文献1に記載の処理方法は、還元剤として使用するカーボンブラックをマイクロ波照射によって加熱処理を行う工程が必要であり、工程中の温度管理等を考慮すると必ずしも簡便な処理方法とは言えない。加えて、前記カーボンブラック及び含浸体であるガラスカートリッジを消耗品として使い捨てする必要がある。また、1回の処理でカーボンブラックに固定できる白金族元素(ルテニウム)の割合が高くないため、放射性廃液に含まれる白金族物質量の低減にはある程度の効果があるものの、より効率的な処理が求められている。
【0011】
前記特許文献2に記載の処理方法は、回収部材として金属フェロシアン化物を使用するため放射性廃液に含まれる白金族系物質の吸着率が高く、優れた回収能を有するものの、前記金属フェロシアン化物を抱合する袋状部材が多孔質の樹脂フィルムであるため、耐久性が十分でない。さらに、白金族物質の回収能は処理直後では高いものの、長期間放置すると回収能の低下が避けられず、金属フェロシアン化物の交換を頻繁に行う必要がある。このように処理方法は簡単であるが、回収能を維持していくための管理が煩雑であるという問題がある。
【0012】
前記特許文献3に記載の放射性溶液の除染方法は、除染効率が高いものの、白金族系物質を回収するために電解還元を行っており、電解槽の維持及び保守の管理に十分な注意を払う必要があること等を考慮すると、電解還元以外のより簡便な方法による白金族系物質の分離回収が望まれている。
【0013】
前記特許文献4及び5に記載の白金族金属の選択回収方法及び分離回収方法は、回収剤及び分離剤が少なくとも有機のアミン化合物で構成されるため、分解が起こりやすく、特に高濃度放射性廃液で使用する場合はこれが大きな問題となる。そのため、この方法は適用分野が制限される場合がある。
【0014】
また、前記特許文献6に記載されているイオン交換樹脂や溶剤抽出剤又は活性炭を回収剤として使用する場合は、処理コストが高くなったり、共存イオン等の影響により回収効率の点でバラツキが生じることがある。そのため、安定した回収率を有する回収剤の探索とともに、より効率的な回収を行うことができる回収方法の構築が強く求められている。
【0015】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、高レベル放射性廃液等の酸性溶液に含まれる白金族元素及びその化合物等の白金族系物質を、効率的に、且つ、確実に分離回収できるだけでなく、高い分離回収効率を長期間に亘って安定的に維持できる白金族系物質の分離回収方法及びその分離回収装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、白金族系物質が含まれる酸性溶液から白金族系物質の分離回収を簡便に、且つ、効率的に長期間安定して行うため、前記酸性溶液を、無機高分子を前駆体とする多孔質材料が分離材として充填されたカラム(分離筒)の2以上を直列的に連結した分離ユニットに送入し、前記分離ユニットのカラム内を通過させることによって上記の課題を解決できることを見出して本発明に到った。
【0017】
すなわち、本発明の構成は以下の通りである。
[1]本発明は、パラジウム、ロジウム及びルテニウムの少なくとも何れか一つからなる白金族元素及びその化合物を含む酸性溶液から前記白金族元素及びその化合物を分離回収する方法であって、前記酸性溶液を、ゾルーゲル法で製造した酸化物系の酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン及びアルミナケイ酸塩化合物系の少なくとも何れか一つからなる無機高分子を前駆体とする多孔質材料又はそれらの多孔質材料の組合せが、有機物吸着剤を含まない形態で分離材として充填されたカラムの2以上を直列的に連結した分離ユニットに送入し、前記分離ユニットのカラム内を通過させることによって、前記酸性溶液から前記白金族元素及びその化合物を分離する分離工程を含むことを特徴とする白金族系物質の分離回収方法を提供する。
[2]本発明は、前記分離工程によって分離された白金族元素及びその化合物を含む前記分離材を逆洗することにより、前記分離材から前記白金族元素及びその化合物を離脱させ、回収する工程を含むことを特徴とする前記[1]に記載の白金族系物質の分離回収方法を提供する。
[3]本発明は、前記無機高分子を前駆体とする多孔質材料が、アナターゼ型又は一部ルチル型を含むアナターゼ型の結晶構造を有する酸化チタンからなる無機高分子を前駆体とする多孔質材料を含むことを特徴とする前記[1]又は[2]に記載の白金族系物質の分離回収方法を提供する。
[4]本発明は、前記分離ユニットが、2以上の前記カラムがそれぞれ独立で、又は所望の段数をまとめて一体で取付け及び取外しができるカートリッジ構造を有することを特徴とする前記[1]~[3]の何れかに記載の白金族系物質の分離回収方法を提供する。
[5]本発明は、前記白金族元素及びその化合物を含む酸性溶液を静置する工程及び前記酸性溶液に沈殿材を添加する工程の少なくとも何れかの工程により前記白金族元素及びその化合物を凝集沈殿させる凝集沈殿工程と、この工程に続いて行う前記分離工程とを含むことを特徴とする前記[1]~[4]に記載の白金族系物質の分離回収方法を提供する。
[6]本発明は、前記凝集沈殿工程で沈降させた浮遊物質及び沈殿物を沈殿物回収工程に送る工程と、前記凝集沈殿工程で浮遊物質及び沈殿物が除かれた上澄み採取液を前記分離工程に送る工程とを、さらに含む前記[5]に記載の白金族系物質の分離回収方法を提供する。
[7]本発明は、前記白金族元素及びその化合物を含む酸性溶液が、高レベル放射性廃液であることを特徴とする前記[1]~[6]の何れかに記載の白金族系物質の分離回収方法を提供する。
[8]本発明は、パラジウム、ロジウム及びルテニウムの少なくとも何れか一つからなる白金族元素及びその化合物を含む酸性溶液から前記白金族元素及びその化合物を分離回収する装置であって、少なくともゾルーゲル法で製造した酸化物系の酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン及びアルミナケイ酸塩化合物系の少なくとも何れか一つからなる無機高分子を前駆体とする多孔質材料又はそれらの多孔質材料の組合せが、有機物吸着剤を含まない形態で分離材として充填されたカラムの2以上を直列的に連結した分離ユニットと、前記酸性溶液を前記分離ユニットに送入し、前記分離ユニットのカラム内を通過させる手段と、を有する白金族系物質の分離回収装置を提供する。
[9]本発明は、前記無機高分子を前駆体とする多孔質材料が、アナターゼ型又は一部ルチル型を含むアナターゼ型の結晶構造を有する酸化チタンからなる無機高分子を前駆体とする多孔質材料を含むことを特徴とする前記[8]に記載の白金族系物質の分離回収装置を提供する。
[10]本発明は、前記分離ユニットが、2以上の前記カラムをそれぞれ独立で、又は所望の段数をまとめて一体で取付け及び取外しができるカートリッジ構造を有することを特徴とする前記[8]又は[9]に記載の白金族系物質の分離回収装置を提供する。
[11]本発明は、前記[8]~[10]の何れかに記載の分離回収装置が、さらに、前記酸性溶液を供給するための供給口と、前記酸性溶液に含まれる前記白金族元素及びその化合物を凝集沈殿させるために沈殿材を外部から投入する場合には、前記沈殿材を投入するための添加口とを備える廃液貯蔵槽を有することを特徴とする白金族系物質の分離回収装置を提供する。
[12]本発明は、前記廃液貯蔵槽が、前記酸性溶液に含まれる白金族元素及びその化合物を凝集沈殿させるために使用する凝集沈殿室と、該凝集沈殿室で浮遊物質及び沈殿物が除かれた上澄み液を選択的に採取し、前記分離ユニットへ送入するための清澄液送液室とからなり、前記凝集沈殿室と清澄液送液室との間には、前記上澄み液を前記清澄液送液室へ送る際に液面を調整するための液面調整孔が設けられていることを特徴とする前記[11]に記載の白金族系物質の分離回収装置を提供する。
[13]本発明は、前記液面調整孔は可動式のものであることを特徴とする前記[12]に記載の白金族系物質の分離回収装置を提供する。
[14]本発明は、前記凝集沈殿室が、該凝集沈殿室で凝集沈殿させた浮遊物質及び沈殿物を沈殿物回収工程に送るためのスラリーポンプを備えることを特徴とする前記[12]又は[13]に記載の白金族系物質の分離回収装置を提供する。
[15]本発明は、前記浮遊物質及び沈殿物の沈殿物回収工程への移送を容易にするため、前記スラリーポンプの吸引口部分が位置する前記凝集沈殿室の底部に、送液用枡として機能する凹部を設けることを特徴とする前記[14]に記載の白金族系物質の分離回収装置を提供する。
[16]本発明は、前記凝集沈殿室と、前記清澄液送液室から前記上澄み液を前記分離ユニットに送入させる手段を介して前記分離ユニットに接続する配管とは、前記上澄み液を前記分離ユニットに送入するときの送入量を調製するための液量調節バルブと前記上澄み液を凝集沈殿室に戻すための配管とを備える上澄み液戻しラインによって接続されていることを特徴とする前記[12]~[15]の何れかに記載の白金族系物質の分離回収装置を提供する。
[17]本発明は、前記白金族元素及びその化合物を含む酸性溶液が、高レベル放射性廃液であることを特徴とする前記[8]~[16]の何れかに記載の白金族系物質の分離回収装置を提供する。
[発明の効果]

【発明の効果】
【0018】
本発明による分離回収のための方法及びその装置は、無機高分子を前駆体とする多孔質材料を分離材として使用し、前記分離材を充填したカラムの2以上を直列的に連結した分離ユニットに、白金族系物質が含まれる酸性溶液を通過させるだけの簡便な方法で、白金族系物質の分離回収を効率的に行うことができる。白金族系物質の分離は前記多孔質材料からなる分離材の性能から算出した分配比によって決まるため、この分配比に応じてカラムを多段に連結した分離ユニットを使用することによって分離回収率を高くし、白金族系物質を確実に回収することが可能になる。ここで、前記カラムの取外しが可能なカートリッジ構造とすることによって、白金族物質が多く吸着されたカラムだけの交換が可能となるため、分離回収装置の組み立て及びそのメンテナンスの作業が容易になり、より効率的な分離回収を行うことができる。
【0019】
また、前記の多孔質材料は無機高分子を前駆体とするため、酸性溶液において安定性が高く、耐熱性の点でも優れるため、高レベル放射性廃液の処理に適し、長期間の使用に耐え得る。本発明においては、無機高分子として、ゾルーゲル法で製造した特定の酸化物系化合物を使用することによって高い分離回収能が得られる。前記分離材を用いて白金族系物質を分離処理した後は、分離材を破砕し、逆洗することにより白金族物質を脱離させ、再生、再利用を行うことができる。また、破砕した分離材をガラスフリットと混合、溶融し、ガラス結合廃棄物として安定化を図り、安全に廃棄処理することが可能となる。
【0020】
さらに、本発明は、前記分離ユニットによる白金族系物質の分離工程の前に、あらかじめ白金族系物質を凝集沈殿させる工程(凝集沈殿工程)を経由することによって、白金族系物質が多量に含まれる酸性溶液に対して、より効率的な分離回収を行うための方法及びその装置を提供することができる。前記凝集沈殿工程後の酸性溶液には微量の白金族系物質が存在するが、前記凝集沈殿工程の後に行われる分離工程によって微量の白金族系物質が確実に分離回収され、白金族系物質をほとんど含まない酸性溶液まで転換することができる。また、前記凝集沈殿工程を採用することによって、次の分離工程で使用する分離ユニットのカラム本数を少なくできるという効果も得られる。
【0021】
本発明の分離回収方法及びその装置は、鉱・工業廃水等の酸性溶液の処理にも適用が可能であるが、特に、高レベル放射性廃液の酸性溶液の処理に適用する場合に、長期間に亘って高い分離回収性能を維持することができ、ガラス廃棄体製造上の課題となっている白金族系物質の悪影響を大幅に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による白金族系物質の分離回収装置の一例を示す断面図である。
【図2】本発明による白金族系物質の分離回収装置の別の例を示す断面図である。
【図3】本発明による白金族系物質の凝集沈殿工程及び分離工程を行うための分離回収装置の例を示す図である。
【図4】本発明による白金族系物質の凝集沈殿工程及び分離工程を行うための分離回収装置の変形例を示す断面図である。
【図5】図4に示す本発明の分離回収装置において、凝集沈殿室と清澄液送液室との間に設ける液面調製孔の変形例を示す断面図である。
【図6】実施例1において、無機高分子を前駆体とする多孔質材料による白金族元素の吸着機能とその作用を示す図である。
【図7】実施例2において、酸化チタン系の無機高分子を前駆体とする多孔質材料の焼成温度による白金族元素の吸着性能の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の分離回収方法は、白金族系物質が含まれる酸性溶液から白金族系物質を分離回収するため無機高分子を前駆体とする多孔質材料を分離材として使用し、前記多孔質材料が充填されたカラム(分離筒)の2以上を直列的に連結した分離ユニットに前記酸性溶液を送入し、前記分離ユニットのカラム内を通過させることによって、白金族元素及びその化合物からなる白金族物質を分離する工程(分離工程)を含むことを特徴とする。本発明において、分離する白金族物質の形態は、錯イオンを含むイオン、原子、錯塩を含む分子及びそれらの会合体や凝集体の少なくとも何れかを含む。

【0024】
前記無機高分子を前駆体とする多孔質材料は、従来から有機金属化合物を触媒として使用するときにその触媒の担持体として周知のものであるが、本発明者等の検討によって白金族系物質の吸着分離材として十分に機能することを見出した。無機高分子は酸性の高レベル放射性廃液中でも化学的に安定した性状と特性を示し、耐熱性も良好であることから、それを多孔質材料とすることによって耐久性に優れる白金族物質の吸着分離剤として利用することができる。加えて、使用後の最終的な処理を行うため、ガラス固化処理時に細かく粉砕してからホウケイ酸塩等のガラスフリットに混合し、溶融することによってガラス結合廃棄物の形で安定化して廃棄することができる。それだけでなく、白金族物質を吸着した前記分離材は、逆洗することにより白金族系物質を脱離させれば、再生及び再利用が可能となる。このように、無機高分子を前駆体とする多孔質材料からなる分離材は、従来から分離材として使用されているイオン交換性樹脂、活性炭又は有機物吸着剤には無い利点を有する。

【0025】
本発明において使用する無機高分子を前駆体とする多孔質材料は、白金族系物質の吸着分離機能を有するものの、白金族系物質の分離が前記多孔質材料の性能から算出した分配比によって決まるため、十分な分離を行うためには白金族系物質が含まれる酸性溶液と前記多孔質材料との接触時間を長くするか、又は接触回数を増やす必要がある。本発明においては、分離回収装置をコンパクトにでき、分離回収効率を高くできる等の点を考慮し、接触回数を増やすために前記多孔質材料からなる分離材として充填されたカラム(分離塔)の2以上を直列的に連結して、図1に示すような分離ユニットを構築して使用する。図1は、本発明による白金族系物質の分離回収装置の一例を示す断面図であり、直列的に連結するカラムの数が4である分離ユニット1を有する。

【0026】
図1に示す分離回収装置において、分離ユニット1を構成するU字型のカラム2のそれぞれの底部には無機高分子を前駆体とする多孔質材料3が充填される。白金族系物質が含まれる酸性溶液4は、廃液供給口5を上部に設けた廃液貯蔵槽6から送液ポンプ(P)7を用いて所定の圧力で注入口8から送入され、分離ユニット1のカラム2内を通過させる。ここで、送液ポンプ(P)7は、酸性溶液4を分離ユニット1に送入し、各カラム2の内部を通過させる手段として機能する。また、廃液供給口5を設ける位置は、廃液貯蔵槽6の上部に限定されず、任意の位置に設けることができる。途中に注入弁を設けることによって廃液貯蔵槽6の底部に設けても良い。このとき、白金族系物質が含まれる酸性溶液4の流れを阻害しないようにすることが必要であり、多孔質材料3は充填長さ及び充填密度をそれぞれ調製してカラム2の底部に充填するようにする。それと同時に、前記酸性溶液の注入圧力を最適化するために圧力調整を行う。仮に、前記酸性溶液の流れがスムーズにいかない場合や逆流する等の最悪の場合には、送液ポンプ(P)7と分離ユニット1とを繋ぐ配管の間に接続した酸性溶液戻しライン用配管9をバイパス用として使用し、分離ユニット1に送入しきれない酸性溶液を廃液貯蔵槽6に戻すことができる。配管9の途中には、酸性溶液の液量調製バルブ10を設ける。分離ユニット2内の4本のカラム内を通過した酸性溶液は、白金族系物質が多孔質材料3の分配比でそれぞれ吸着され、後段のカラムに移るほど白金族物質の濃度が低下し、最終的には白金族系物質がほとんど含まれない酸性溶液に転換された後、排出口11から排出されガラス固化工程に移される。

【0027】
図1に示すカラム2の材質としては、ガラス、プラスチック、セラミック又は金属等が使用できるが、充填量及び酸性溶液の流れを外部から目視で監視できるようにするため、透明又は半透明の部分を有するカラムを使用することが実用的である。例えば、カラム2として透明又は半透明のガラス、セラミック又はプラスチックで作製したものを使用するか、若しくは縦方向の一部又は全体に透視用のスリットを設けた金属製の管の内部に透明又は半透明の管を挿入して抱合させたものをカラムとして使用することができる。また、多孔質材料3が充填された部分の両端面には、カラム2に充填される多孔質材料3の移動を防止するため脱脂綿やガラスウールを挿入してもよい。

【0028】
本発明において多段で連結するカラムの数は、前記多孔質材用の吸着分離性能及び白金族物質の分離回収の程度によって決めることができるが、2~30の数が実用的であり、より好ましくは2~20の数である。カラムの数が20以上で白金族物質の分離回収効率の上昇が緩やかになり、30を超えると分離回収効果が飽和し、逆に、装置のサイズが大きくなりすぎ、装置コストの点でも不利である。

【0029】
本発明において、分離ユニット1を構成するカラム2は水平方向に多段で配列するだけでなく、垂直方向又は斜め方向に多段で配列してもよい。また、水平、斜め、垂直の各方向を組み合わせることによって、分離ユニット1の配置スペースを小さくすることもできる。さらに、カラム2の形状としては、図1に示すU字型に限定されず、円筒型やリング状の筒型等の他の形状を採用してもよい。

【0030】
図1には分離ユニット1を構成するカラム2のそれぞれが一体化されている装置の例を示しているが、本発明においては、図2に示すように、カラム2をそれぞれ分離し、各カラム2の入口及び出口をジョイントカップラー12を用いて互いに接続するカートリッジ構造を有する分離ユニット1を使用することが好ましい。また、所望の段数をまとめて一体で取付け及び取外しができるようなカートリッジ構造としても良い。取付け及び取外しが可能なカートリッジ構造を有する分離ユニット1とすることによってカラムの交換が容易になる。例えば、送入口8の側に配置されたカラムは、分離ユニット1の排出口11の側のカラムに比べて白金族系物質の吸着量が相対的に多くなるため、安定した吸着分離機能を維持するには交換を頻繁に行う必要がある。その場合には送入口8の側に配置されたカラムだけを交換することが可能となる。また、排出口11の側に配置されたカラムを送入口8の側に配置変えするとともに、排出口11の側には新しいカラム又は逆洗によって再利用可能としたカラムを設置して、カラムの有効活用を行うことができる。状況によっては、交換が必要となるカラムの数本をまとめて取外し、新しいカラムと交換することも可能である。図2に示す装置の例は、これらの要求に対して、容易且つ迅速に対応できる構成と機能を有するものである。

【0031】
本発明の分離回収方法は、さらに、上記分離工程によって分離された白金族元素及びその化合物を含む分離材を逆洗することにより、前記分離材から前記白金族元素及びその化合物を離脱させ、回収する工程を含むことが好ましい。白金族元素及びその化合物の回収を行うことによって、白金族元素を触媒や合金の成分として別の用途に利用することが可能となる。また、白金族系物質が離脱した分離材は吸着分離機能が回復するため、本発明で使用するカラムに充填し、再利用することができる。

【0032】
本発明で行う逆洗は、例えば、以下の公知の方法で行うことができる。まず、カラム2を分離ユニット1から取り外した後、カラム2の内部に塩酸溶液と水とを流し、白金族物質を吸着した後の多孔質材料3と順次接触させて、多孔質材料3を洗浄処理する。次いで、塩酸イオン濃度が所定の値よりも低くなったことを確認した後、白金族物質を脱着させるための脱着剤を含有する水溶液を接触させ、最後に、塩酸を前記多孔質材料と接触させる。ここで、脱着剤としては、例えば、チオ尿素やアミン系化合物又はそれらを担持した高分子等を使用することができる。酸性溶液に含まれていた白金族系物質は脱着剤に吸着しているため、高温焼成や化学処理を行うことによって前記脱着剤から白金族物質の回収を行うことができる。

【0033】
また、特表2006-508250号公報に示す公知の方法に従って、前記多孔質材料を塩酸、硫酸又は硝酸等の無機酸を用いて高温で洗浄した後、洗浄後の無機酸溶液のpHを順次高めることによって白金族物質の沈殿物が得られるため、この方法によって白金族物質の回収を行っても良い。

【0034】
本発明において使用する前記無機高分子を前駆体とする多孔質材料としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン及びアルミナケイ酸塩化合物系の通常の無機酸化物を使用することができるが、これらの酸化物系をゾル—ゲル法によって作製したときに、特に優れた白金族系物質の吸着分離性能を有することが分かった。高レベル放射性廃液(HLLW)を含む各種の酸性溶液には、白金族元素のイオンや化合物としてだけでなく、それらの会合体や微小凝集体として含まれる場合がある。ゾルーゲル法で製造した酸化物系は、白金族元素のイオンや化合物を吸着するだけでなく、それらの会合体や微小凝集体を材料内部に存在する孔内に取り込むという性質を有するため、様々な形態を有する白金族物質を幅広く分離できるという特徴を有する。したがって、本発明においては、多孔質材料として、ゾルーゲル法で製造した酸化物系の酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン及びアルミナケイ酸塩化合物系の少なくとも何れか一つからなる無機高分子を前駆体とする多孔質材料又はそれらの多孔質材料の組合せであることが好ましい。それらの中で、酸化ケイ素又は酸化アルミニウムからなる分離材は、白金族系物質の分離回収後に行われるガラス固化においてガラス成分の一部として使用できることから有用である。

【0035】
前記ゾルーゲル法で製造した酸化物系は、金属アルコキシド等の有機金属塩の溶液を出発溶液とし、この溶液を加水分解及び縮重合反応によりコロイド溶液(ゾル)とし、さらに反応を進めることにより流動性を失った固体(ゲル)を形成させて得られるものであり、公知の方法で作製することができる。

【0036】
例えば、酸化ケイ素系の無機高分子による多孔質材料は、次のようにして得られる。Si(OC又はSi(OCHを秤量しプラスチック製ビーカに入れ、次いでメタノール等のアルコールを加え、撹拌することによって完全に混合させた後、水を加えてさらに撹拌を行う。この溶液に所定量の触媒を添加し、加熱しながらゲル化するまで撹拌してSiOの膨潤ゲルを作製する。ここで、触媒としては、塩酸等の酸触媒、水酸化アンモニウム等の塩基触媒、又は塩酸と硝酸コバルトとの併用等による酸塩基触媒が使用される。最終的に、前記膨潤ゲルを乾燥し、所定の温度(600℃程度)で加熱処理を行うことで酸化ケイ素系の無機高分子による多孔質材料が得られる。ここで、金属アルコキシドとしてSi(OC又はSi(OCH等の代わりに、Al、Zr、Ti等を含む金属アルコキシドの少なくとも1種を使用すれば、酸化ケイ素系の場合と基本的に同じようなゾルーゲル法によって、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン及びアルミナケイ酸塩化合物系の少なくとも何れか一つからなる無機高分子を前駆体とする多孔質材料を得ることができる。ここで、添加するアルコールと触媒の種類及び加熱処理の条件等は、目的とする酸化物系に応じて変えられる。本発明においては、ゾルーゲル法で製造した酸化物系の酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン及びアルミナケイ酸塩化合物系の少なくとも何れか一つからなる無機高分子を前駆体とする多孔質材料を単独で、またはそれらの多孔質材料の組合せで使用することができる。

【0037】
本発明において多孔質材料として酸化チタン系を使用する場合は、例えば、チタンアルコキシドあるいはチタンアルコキシドとβ-ジケトンを原料として得られた無機高分子を酸化分解することによって合成することができる。チタンアルコキシドとしてはチタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ-n-ブトキシドが好適である。これらアルコキシドをエタノール、イソプロピルアルコール等に溶解し、さらに必要によりエチルアセトアセテートなどβ-ジケトンを加え、その後塩酸とエタノールの混合溶液を加え濃縮して含浸、加水分解することにより無機高分子とした後、溶媒を必要により加え所定濃度の溶液とすることができる。基材に含浸した後乾燥して大気中で焼成するが、必要であれば上記含浸操作を数回繰り返してもよい。

【0038】
また、上記無機高分子を含浸する代わりにチタンアルコキシドをヘキサン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフランなどの有機溶媒に溶解しTiO換算で10~50mol%の濃度に調整した後、基材に含浸し乾燥しながら基材中の微量水分あるいは大気中の水蒸気により加水分解し、必要によりこれを繰り返すことにより製造してもよい。

【0039】
こうしてTiO前駆体を含浸した基材を大気中あるいは酸素雰囲気中で350以上で焼成してチタニア球状多孔質体を得ることができる。350℃未満ではアナターゼの結晶化が充分進行せず、900℃を超えるとアナターゼからルチルへの結晶転移が起きるが、ルチル型の結晶は白金族物質の吸着回収機能が低下するので好ましくない。したがって、本発明おいて酸化チタン系多孔質材料を分離材として使用するときは、少なくともアナターゼ型の結晶構造を有する酸化チタンからなる無機高分子を前駆体とする多孔質材料を含むことが好ましい。アナターゼ型の結晶構造を含むものであれば、ルチル型の結晶構造との混合であっても良いが、アナターゼ型の結晶構造は全チタニア多孔質体に対する含有比率が50モル%を超えることが実用的である。

【0040】
ゾルーゲル法で製造した各分離材は、上記の方法で表面活性基として残存している水素基を脱離させ、加えて所望の細孔径となるように適切な条件で焼成することが必要である。さらに、本発明で使用する多孔質材料からなる分離材は、形状が紛体又は紛体の焼結体であることが好ましい。形状が紛体又は紛体の焼結体であれば分離材としての実効表面積が大きくなり、白金族系物質の分離回収効率を高めることができる。また、紛体又は紛体の焼結体は、分離ユニット1に備わるカラム2への挿入及びカラム2からの取り出しが容易にできるという利点を有する。

【0041】
本発明においては、前記多孔質材料として、特開平2002-205064号公報に記載されている公知の方法に従って、上記の方法で得られた無機高分子を有機高分子球状多孔質体の基材に含浸させ、それを高温で酸化分解することによって球状多孔質体とした形態で用いてもよい。ここで含浸する基材として使用する有機高分子球状多孔質体は、有機溶媒に溶けない架橋ポリマーからなり、架橋した網目による0.05~10μm程度のミクロゲル間に0.01~10μm程度のマクロポアが形成されているものが好適であり、例えばスチレンを架橋剤であるジビニルベンゼンと共重合させて合成したビーズ状のポリスチレンや、フェノール樹脂系の重縮合タイプのゲルがあり、これらはすでに工業的に確立された方法により大量に製造されている。このようにして製造される本発明のチタニア球状多孔質体は直径が30~1000μmであり、空隙率が5~85%、比表面積が5~100m2/gの範囲である。

【0042】
上記で説明した白金族系物質の分離回収方法は、酸性溶液に含まれる白金族系物質の濃度が高くない場合には確実に分離回収できる有効な方法である。しかしながら、白金族系物質の濃度が高い場合には、図1又は図2に示す装置においてカラムの連結段数を多くする必要があり、処理時間が長くなり迅速な処理が行えなくなることがある。また、白金族系物質の凝集による浮遊物等が存在する場合には、カラム内での詰まり等によるトラブル発生や白金族系物質の確実な分離回収が行うことができなくなる。さらに、白金族系物質の中で選択的にある種の白金族元素又はそのイオンだけを予め分離回収する必要が生じることがある。これらの課題を解決し、効率的な白金族系物質の分離回収を行うために、本発明においては、上記で説明した分離工程の前に、白金族元素及びその化合物を含む酸性溶液を静置する工程及び前記酸性溶液に沈殿材を添加する工程の少なくとも何れかの工程により前記白金族元素及びその化合物を凝集沈殿させる工程(凝集沈殿工程)を行うことが好ましい。

【0043】
前記酸性溶液に浮遊物等が存在する場合、前記酸性溶液を所定時間静置することにより前記浮遊物が沈降する。静置する時間は少なくとも1時間以上が必要であり、時間が長いほど沈降が進み浮遊物の除去を進めることができるため、次のカラムによる分離回収操作が容易になる。しかしながら、処理効率及び安全上の点から分離回収操作はできるだけ迅速に行う必要があり、分離回収処理を急ぐ場合には、白金族元素及びその化合物を含む酸性溶液に沈殿材を添加することが好ましい。本発明においては、前記酸性溶液を所定時間静置する工程の後に沈殿材を添加する工程、逆に、前記酸性溶液に沈殿材を添加した後に所定時間静置する工程、のどちらの工程を採用してもよい。さらに、両者の工程のどちらかの工程だけを行うこともできる。

【0044】
前記白金族元素及びその化合物を凝集沈殿させるために使用する試薬としては、例えば、ファロシアン化アンモニウム等の不溶性フェロシアン化物を添加することにより、パラジウム(Pd)を選択的に沈殿させることができる(三村、平成17年度~平成19年度化学研究費補助金(木版研究(B))研究成果報告書「ハイブリッドマイクロカプセルによるパラジウムの選択的分離及び回収」、2008年を参照)。また、前記特許文献2に記載されている公知の金属フェロシアン化物を使用しても良い。酸性溶液に含まれる各種の白金族元素の中から、凝集沈殿工程によって先にパラジウムだけを選択的に分離回収し、次に行われる分離工程においてパラジウム以外の白金族元素を分離回収すれば、白金族元素をそれぞれ分別して分離回収することが可能になる。それによって白金族元素の利用がし易くなるという利点がある。前記フェロシアン化物を含め、白金族系物質を凝集沈殿させる機能を有する凝集剤を使用する場合は、白金族系物質の濃度が高い酸性溶液であっても短時間で濃度の低減を行うことができる。また、浮遊物が存在する酸性溶液からは短時間で前記浮遊物を凝集沈殿物として沈降させることができる。したがって、次に行われる分離回収工程において分離回収の効果が高めることができ、白金族系物質の分離回収をより確実に行うことができる。また、分離回収工程において使用する分離ユニットのカラム本数を少なくできるという効果も得られる。

【0045】
図3は、白金族系化合物の凝集沈殿工程及び分離工程を行うための分離回収装置の例を示す図であり、(a)及び(b)はそれぞれ上面図及び平面断面図である。図3において、廃液貯蔵槽6は、廃液供給口5に加えて試薬添加口13を有する。試薬投入口13からは、迅速に白金族元素及びその化合物を凝集沈殿させるため、前記フェロシアン化物等の試薬が酸性溶液4の中に投入される。試薬添加口13を設ける位置は、廃液貯蔵タンク6の上部に限定されず、試薬投入を行いやすい場所に設置することができる。所定時間静置することによって沈降する凝集沈殿物14、又は試薬添加口13から投入した試薬によって生成する凝集沈殿物14は徐々に廃液貯蔵槽6の底部に沈降してくるため、スラリーポンプ(P)15によって凝集沈殿物排出用配管16を通して沈殿物回収工程へ移送される。図3に示す廃液貯蔵槽6には、沈殿材による白金族系化合物の凝集沈殿を促進させるため撹拌装置を備えることもできる。

【0046】
他方、廃液貯蔵槽6に貯蔵された酸性溶液4はポンプ(P)7を用いて所定の圧力下で送入口8から送入され、分離ユニット1に備えるそれぞれのカラム2を通過することによって白金族系物質の分離回収が行われる。図3に示す分離回収装置においては、凝集沈殿工程において試薬の投入後に所定時間静置してから、送液ポンプ(P)7を可動し、酸性溶液を分離ユニット1へ送入する方法を採用することが好ましい。試薬を投入してから凝集沈殿物が生成するまでの時間、及び生成した凝集沈殿物が廃液貯蔵タンク6の底部に沈降するまでの時間を考慮する必要があるためである。また、図3に示す廃液貯蔵タンク6の内部には、酸性溶液4を分離ユニット1へ送入するときに凝集沈殿工程で生成した凝集沈殿物が分離ユニットへ移送しないように、中間位置又は送入口8の近くにフィルターを設けても良い。フィルターは交換可能なものとし、フィルターに堆積した凝集沈殿物は別工程である沈殿物回収固定で回収することができる。

【0047】
本発明においては、凝集沈殿工程とカラムによる分離回収工程をスムーズに行うために、特に、図4に示す構造を有する分離回収装置を使用することが好ましい。図4は、本発明による白金族系物質の凝集沈殿工程及び分離工程を行うための分離回収装置の変形例を示す断面図である。図4に示す装置は、廃液貯蔵槽6が仕切壁19によって仕切られ、凝集沈殿室17と清澄液送液室18とに分けられており、仕切壁19には液面調整孔20が設けられた構造を有する。図4において、(a)は凝集沈殿室17に入れられる酸性溶液4が液面調整孔20の位置より低い状態で貯蔵された状態を示す図であり、(b)は凝集沈殿室17に入れられる酸性溶液4の量が増えて、酸性溶液4が液面調整孔20の位置を超え、清澄液送液室18まで流入し、凝集沈殿室17及び清澄液送液室18の両者に酸性溶液4が貯蔵される状態を示す図である。このように、図4に示す装置は、凝集沈殿室17及び清澄液送液室18で構成される廃液貯蔵槽6が酸性溶液4の清澄槽として機能し、清澄液送液室18には仕切壁19に設けた液面調整孔20を介して酸性溶液4から浮遊物質及び沈殿物が除かれた上澄み採取液21が供給される。なお、図4に示す装置において符号22で示す配管は、図2及び図3に示す酸性溶液戻しライン用配管9とは異なり、上澄み液採取液戻しライン用配管として使用される。

【0048】
図4の(a)に示すように、凝集沈殿室17に供給された酸性溶液4が液面調整孔20の位置に満ちてくる時間まで前記酸性溶液の静置を行うことができ、その間に浮遊物の沈降が進み、凝集沈殿物14として凝集沈殿室17の底部に沈降する。また、酸性溶液4を供給した後に凝集沈殿のための試薬を投入する場合は、白金族系物質の凝集沈殿が促進し、凝集沈殿物14が凝集沈殿室17の底部に沈降するまでの時間として考えることができる。次いで、図4の(b)に示すように、酸性溶液4が液面調整孔20の位置を超えると上澄み採取液21として清澄液送液室18に流入する。流入した酸性溶液4は、白金族系物質の一部が凝集沈殿室17の底部に凝集沈殿物14として沈降するため、初期のものと比べてその濃度が低減するだけでなく、清澄液送液室18の内部において会合体や凝集物による浮遊体がほとんど見られない透明若しくは透明に近い溶液となっている。その後、この酸性溶液4は、ポンプ(P1)7を用いて分離ユニット1の複数のカラム2へ移送され、再度の分離回収を行うことによって酸性溶液4に含まれる白金族系物質の濃度が一層低減される。このように、図4に示す分離回収装置を使用することにより、図3に示す装置に比べて、より効率的で、且つ、確実な白金族系物質の分離回収を行うことができる。

【0049】
図4に示す装置において、液面調整孔20を設ける位置は仕切壁19の中間に限定されない。前記で述べたように、凝集沈殿室17に供給された酸性溶液4が液面調整孔20の位置に満ちてくる時間に応じて液面調整孔20を設ける位置が決められるが、凝集沈殿物14が凝集沈殿室17の底部に沈降する時間を十分に確保するため、仕切壁19において底部から1/3以上の高さに設けることが好ましい。液面調整孔20の位置は、廃液供給口5からの酸性溶液4の供給に差し支えない程度の位置であれば仕切壁19のより上部に設けることができ、仕切壁19の最上部であっても良い。また、液面調整孔20の形状及び大きさは、清澄液送液室18に流入する酸性溶液4の量に応じて選ぶことができる。液面調整孔20を仕切壁19の上部の位置に設ける場合は、矩形状で巾広く形成し、開口高さは10~100mmが実用的である。他方、液面調整孔20を壁の下部に近い位置に設ける場合は、清澄液送液室18に流入する酸性溶液4の量を少なくする方向で調製する必要があり、円形や楕円形の孔又は矩形スリット形状を有する孔を横一列に複数個設けることが好ましい。それらの形状を有する孔は、径又は巾及び高さが1~50mmの範囲であることが実用的である。

【0050】
また、液面調整孔20は、仕切壁19の所定の位置に固定して設けるものに限定されず、可動式のものであっても良い。可動式の液面調整孔を使用することによって、凝集沈殿室17から清澄液送液室18に供給される酸性溶液、すなわち凝集沈殿物が除かれた上澄み採取液21を所望の液量に調製することが容易になる。それによって、清澄液送液室18から分離ユニット1に送液する上澄み採取液21の量を、仕切壁19の取外し及び新たな取付けを行わないで液面調整孔の位置の移動だけで短時間に調整することができる。可動式の液面調整孔としては、例えば、図5の(a)及び(b)に示すように、仕切壁19を2層(19aと19b)で構成し、そのうちの1層の仕切壁19bをスライド式とし、仕切壁19bを上下方向に可動させることによって液面調整孔20の位置を容易に変えることができる。図5において、(a)は仕切壁19aが清澄液送液室18の底部に固定して設置されるものであり、(b)は仕切壁19aが清澄液送液室18の底部及び天井部の両者に固定され、その間に仕切壁19bが設置されるものである。可動式液面調整孔の駆動方法としては、手動式及び電動等による自動式のどちらの方式を用いてもよい。

【0051】
図4及び図5に示す分離回収装置において、凝集沈殿室17に蓄積した凝集沈殿物14をスラリーポンプ15によって沈殿物回収工程に送液するとき、スラリーポンプ15の使い勝手が良くなるように、スラリーポンプ15の吸引口部分の近くの凝集沈殿室17の底部に送液用枡23となる凹部を設けることが好ましい。送液用枡23は、凝集沈殿物14の溜まり場として利用することにより凝集沈殿物14を送液するときにスラリーポンプ15の詰まりを防止することができるため、凝集沈殿物14の移送が容易になるという効果が得られる。

【0052】
以上のように、本発明は白金族系物質が含まれる酸性溶液から白金族系物質の分離回収を効率的に、且つ、確実に行うことができ、高レベル放射性廃液の酸性溶液や鉱・工業廃水等の酸性溶液の処理に適用することが可能である。その中で、特に、高レベル放射性廃液の酸性溶液の処理に適用する場合に、長期間に亘って高い分離回収性能を維持することができ、ガラス廃棄体製造上の課題となっている白金族系物質の悪影響を大幅に低減できる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の分離回収方法について具体的な実施例を用いて説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0054】
<実施例1>
本発明の分離回収方法の基礎検討として、無機高分子を前駆体とする多孔質材料について、硝酸溶液中に所定の濃度で含まれる白金族元素[パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)及びルテニウム(Ru)]に対する吸着効果を評価し、分離材としての性能を確認した。無機高分子としてSiO、Al1.9Si0.052.95、Al、TiO及びZrOについて、これら無機高分子を前駆体とする多孔質材料をそれぞれゾルーゲル法によって製造したものを使用した。白金族元素の吸着は室温で行い、前記の各多孔質材料を前記白金族元素が2M(モル)の濃度で含まれる硝酸得溶液中に振とうさせながら1日放置した後の各白金元素の濃度を高周波誘導プラズマ発光分析装置(ICP-AES)を用いて測定した。上記の各無機高分子を前駆体とする多孔質材料による各白金族元素の吸着率は、各無機高分子の1モルに対して各白金族元素が吸着したモル数、すなわち(mol/mol)で表し、次の式(1)で求めた。

吸着率=(初期酸性溶液中の濃度-放置後酸性溶液中の濃度)/(初期酸性溶液中の濃度)
(1)
【実施例】
【0055】
上記の各無機高分子を前駆体とする多孔質材料の吸着率の測定結果を図6に示す。図6から、上記の各無機高分子を前駆体とする多孔質材料は白金族元素を吸着する機能と作用を有することが分かる。図6に示す5種類の無機高分子材料の中で、酸化ジルコニウム(ZrO)系及び酸化アルミニウム(Al)系は、特にルテニウム(Ru)に対する吸着作用が高い。図6に示すように、これらの材料は酸性溶液中に含まれる白金族系物質の分離材として使用できることが確認できた。
【実施例】
【0056】
<実施例2>
無機高分子を前駆体とする多孔質材料として酸化チタン系に用いたときの各白金族元素の吸着率を評価した。各白金族元素の吸着率は、実施例1と同じ方法で測定した。酸化チタン系の焼成温度を500~1000℃まで変えたときの各白金族元素の吸着率の違いを図7に示す。
【実施例】
【0057】
図7に示すように、酸化チタン系による分離材は焼成温度を900℃程度までとしたときには焼成温度が高くなるほど、吸着の機能作用が高くなる。さらに、酸化チタン系による分離材は、白金族元素の中でパラジウムに対する吸着選択性が高いことが分かる。一方、焼成温度が900℃を超えると、逆に吸着機能は低下した。これは、酸化チタン系分離材は、結晶構造が焼成温度により影響を受けており、900℃を超える温度では結晶構造がアナターゼ型からルチル型に変化するためである。このように、ルチル型の結晶構造を有する酸化チタン系は分離材として適していない。したがって、分離材として酸化チタン系を使用する場合は、アナターゼ型又は一部ルチル型を含むアナターゼ型の結晶構造を有する酸化チタンからなる無機高分子を用いることが好ましい。
【実施例】
【0058】
<実施例3>
実施例1及び2に使用した白金族元素[パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)及びルテニウム(Ru)]の2M硝酸溶液を用いて、図3及び図4にそれぞれ示す分離回収装置による白金族系物質の分離回収実験を予備的に行った。カラム2の内部に充填する多孔質材料は、図6に示す酸化ジルコニウム(ZrO)系を使用し、4本のカラム2の内部にそれぞれ等量で充填した。また、図4に示す装置では、沈殿材としてフェロシアン化物を使用した。白金族元素の吸着は室温で行い、図3及び図4に示す排出口11から排出される白金族系物質の濃度を実施例1及び2と同じように、高周波誘導プラズマ発光分析装置(ICP-AES)を用いて測定した。
【実施例】
【0059】
排出口11から排出される酸性溶液中の白金族系物質の濃度を図3及び図4に示すそれぞれの装置に間で比較すると、図4に示す装置は図3に示す装置と比べて、白金族系物質の濃を1/2以下に低減できることが分かった。このように、図4に示す装置を使用することによって、より効率的で、且つ、確実な白金族系物質の分離回収を行うことができる。図3及び図4に示す装置は、さらに、分離ユニット1に備えるカラム2の数を増やすことによって酸性溶液中の白金族系物質の濃度のより一層の低減が期待される。
【実施例】
【0060】
以上のように、本発明による白金族系物質の分離回収のための方法及びその装置は、無機高分子を前駆体とする多孔質材料、特にゾルーゲル法で製造した多孔質材料を分離材として使用し、前記分離材を充填したカラムの2以上を直列的に連結した分離ユニットに、白金族系物質が含まれる酸性溶液を通過させるだけの簡便な方法で、白金族系物質の分離回収を効率的に行うことができる。また、前記の多孔質材料は無機高分子を前駆体としており、酸性溶液において安定性が高く、耐熱性の点でも優れるため、高レベル放射性廃液の処理に適し、長期間の使用に耐え得る。したがって、高レベル放射性廃液のガラス廃棄体製造上の課題となっている白金族系物質の悪影響を大幅に低減できる。加えて、前記分離材を用いて白金族系物質を分離処理した後は、分離材を破砕し、逆洗することにより白金族物質を脱離させ、再生、再利用を行うことができる。また、破砕した分離材をガラスフリットと混合、溶融し、ガラス結合廃棄物として安定化を図り、安全に廃棄処理することが可能となる。
【実施例】
【0061】
さらに、本発明は、前記分離ユニットによる白金族系物質の分離工程の前に、あらかじめ白金族系物質を凝集沈殿させる工程(凝集沈殿工程)を経由することによって、白金族系物質が多量に含まれる酸性溶液に対して、より効率的な分離回収を行うための方法及びその装置を提供することができる。本発明による白金族系物質の分離回収のための方法及びその装置は、高レベル放射性廃液の酸性溶液だけでなく、鉱・工業廃水等の酸性溶液にも適用が可能であり、その有用性は極めて高い。
【符号の説明】
【0062】
1・・・分離ユニット、2・・・カラム、3・・・多孔質材料、4・・・酸性溶液、5・・・廃液供給口、6・・・廃液貯蔵槽、7・・・送液ポンプ、8・・・注入口、9・・・酸性溶液戻しライン用配管、10・・・液量調製バルブ、11・・・排出口、12・・・ジョイントカップラー、13・・・試薬添加口、14・・・凝集沈殿物、15・・・スラリーポンプ、16・・・凝集沈殿物排出用配管、17・・・凝集沈殿室、18・・・清澄液送液室、19・・・仕切壁、20・・・液面調整孔、21・・・上澄み採取液、22・・・上澄み液採取液戻しライン用配管、23・・・送液用枡。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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