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明細書 :稚ナマコの中間育成施設及び放流方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6617372号 (P6617372)
公開番号 特開2017-176017 (P2017-176017A)
登録日 令和元年11月22日(2019.11.22)
発行日 令和元年12月11日(2019.12.11)
公開日 平成29年10月5日(2017.10.5)
発明の名称または考案の名称 稚ナマコの中間育成施設及び放流方法
国際特許分類 A01K  61/30        (2017.01)
A01M  29/30        (2011.01)
FI A01K 61/30
A01M 29/30
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願2016-067569 (P2016-067569)
出願日 平成28年3月30日(2016.3.30)
審査請求日 平成30年2月1日(2018.2.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】594066280
【氏名又は名称】株式会社西村組
【識別番号】000125369
【氏名又は名称】学校法人東海大学
発明者または考案者 【氏名】山田 俊郎
【氏名】櫻井 泉
個別代理人の代理人 【識別番号】100095267、【弁理士】、【氏名又は名称】小島 高城郎
【識別番号】100124176、【弁理士】、【氏名又は名称】河合 典子
【識別番号】100202555、【弁理士】、【氏名又は名称】和田 朋子
【識別番号】100095267、【弁理士】、【氏名又は名称】小島 高城郎
審査官 【審査官】川野 汐音
参考文献・文献 特開平08-051883(JP,A)
特開昭62-166826(JP,A)
特開平10-276609(JP,A)
特開平07-079658(JP,A)
特開昭58-190335(JP,A)
特開平10-117628(JP,A)
調査した分野 A01K 61/00-63/10
A01M 1/00-99/00
特許請求の範囲 【請求項1】
稚ナマコの中間育成施設(10A,10B,10C)であって、
少なくとも上面が開放された略角筒状の施設本体(11A,11B,11C)と、
前記施設本体(11A,11B,11C)の底面の位置に敷き詰められた2重の飼育マット(16)と、を備え、
前記施設本体(11A,11B,11C)は、側壁部(12)の片面又は両面から箱状に張り出して下方のみを開放して空気充填空間(15)を形成するポケット部(13)を有し、
前記2重の飼育マット(16)は多孔材であり、放流直後の稚ナマコが住むために所定の目合いを有する下層マット(16b)と、成長した稚ナマコが住むために前記下層マット(16b)よりも大きい目合いを有する上層マット(16a)とからなり、前記上層マット(16a)を前記下層マット(16b)から分離可能であることを特徴とする、
稚ナマコの中間育成施設。
【請求項2】
少なくとも上面が開放された略角筒状の施設本体(11A,11B,11C)と、
前記施設本体の底面の位置に敷き詰められた2重の飼育マット(16)と、を備え、
前記施設本体(11A,11B,11C)は、側壁部(12)の片面又は両面から箱状に張り出して下方のみを開放して空気充填空間(15)を形成するポケット部を有し、
前記2重の飼育マット(16)は多孔材であり、放流直後の稚ナマコが住むために所定の目合いを有する下層マット(16b)と、成長した稚ナマコが住むために前記下層マット(16b)よりも大きい目合いを有する上層マット(16a)とからなる中間育成施設(10A,10B,10C)で育成した稚ナマコの放流方法であって、
前記飼育マット(16)の前記上層マット(16a)のみを移設することを特徴とする、稚ナマコの放流方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ナマコ特に稚ナマコの中間育成施設及び、中間育成施設で育成した稚ナマコの放流方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナマコは高級食材として注目されており、人工的に種苗を生産する方法も確立されたことから、種苗法流による経済効果が期待されている。
【0003】
生産されたナマコの種苗は、ほかの魚介類の養殖と同様に、中間育成することが望ましい。しかし、陸上で中間育成を行うと、食害プランクトンの大量発生による減耗が生じたり、飼育代、光熱費、人件費などの生産コストが増大したりするため効率的でない。そのため、種苗を天然海域で中間育成する取り組みが行われているものの、逸散や減耗により回収率が極めて低く、経済効果が少ないという問題があった。この問題を解決するためには、海中中間育成を行う際の稚ナマコの逸散を防ぎ、かつ生残率を向上させる必要があるが、稚ナマコは成育初期にカニ類、ヒトデ類及び魚類の食害に遭いやすく、成育初期での減耗が多い。そのため、これらの食害に遭わないような海中中間育成方法の確立が必要であった。
【0004】
特許文献1では、匍匐性動物の移動制御施設用部材及びこれを用いた移動制御施設が提案されている。鉛直方向に立設された障壁部と、障壁部の片面または両面から箱状に張り出したポケット部とを有し、ポケット部が下面のみが開放された空気充填空間を形成し、空気充填空間を複数の小空間に仕切るべくポケット部のスパン方向に対して垂直な1または複数の仕切り壁を空気充填空間内に設けたことを特徴とする移動制御施設用部材及び、これを連設することにより構築した移動制御施設である。
【0005】
これは、匍匐性動物が空気を忌避する性質を利用したものであり、ポケット部の空気充填空間を匍匐性動物が忌避することにより移動を制御することができる。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2008-5716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の発明をナマコの中間育成施設として応用すると、稚ナマコの逸散を防止できるとともに、匍匐性の食害生物であるヒトデの侵入を防止することができる。しかし、上面からの魚類の侵入を許容してしまうという問題がある。特許文献1で対象としているウニの場合は魚類の食害に遭わないため問題とならないが、稚ナマコは魚類に食害されるおそれがある。
【0008】
そのため、育成施設の上部にネットを張るなどの対応が考えられる。しかし、大きな育成施設にネットを張るのは手間がかかるだけでなく、ネットの破損があった場合には魚類の侵入を許容してしまう。さらに、施設内の海水交流が阻害され、ナマコ生息環境及び餌料環境を悪化させかねないという問題があった。
【0009】
また、中間育成後の稚ナマコの放流時には、育成施設から一旦ナマコだけを取り上げ、小容器に収納し、運搬移動した後、放流海域の海底に再放出しなければならず、その際のハンドリングの影響で減耗しやすい。そのため、せっかく中間育成に成功しても、放流時の減耗により経済効果が少ないという問題があった。
【0010】
本発明の目的は、天然海域において、ナマコを逸散させることなく中間育成し、かつヒトデ、カニ類及び魚類の侵入を許容しない中間育成施設及び、当該中間育成施設で育成した稚ナマコの減耗が少ない放流方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明は以下の構成を有する。なお、括弧内の数字は、後述する図面中の符号であり、参考のために付するものである。
【0012】
本発明の第1の態様は、稚ナマコの中間育成施設(10A,10B,10C)であって、
少なくとも上面が開放された略角筒状の施設本体(11A,11B,11C)と、
前記施設本体(11A,11B,11C)の底面の位置に敷き詰められた2重の飼育マット(16)と、を備え、
前記施設本体(11A,11B,11C)は、側壁部(12)の片面又は両面から箱状に張り出して下方のみを開放して空気充填空間(15)を形成するポケット部(13)を有し、
前記2重の飼育マット(16)は多孔材であり、放流直後の稚ナマコが住むために所定の目合いを有する下層マット(16b)と、成長した稚ナマコが住むために前記下層マット(16b)よりも大きい目合いを有する上層マット(16a)とからなり、前記上層マット(16a)を前記下層マット(16b)から分離可能であることを特徴とする。
【0014】
本発明の第2の態様は、少なくとも上面が開放された略角筒状の施設本体(11A,11B,11C)と、
前記施設本体の底面の位置に敷き詰められた2重の飼育マット(16)と、を備え、
前記施設本体(11A,11B,11C)は、側壁部(12)の片面又は両面から箱状に張り出して下方のみを開放して空気充填空間(15)を形成するポケット部を有し、
前記2重の飼育マット(16)は多孔材であり、放流直後の稚ナマコが住むために所定の目合いを有する下層マット(16b)と、成長した稚ナマコが住むために前記下層マット(16b)よりも大きい目合いを有する上層マット(16a)とからなる中間育成施設(10A,10B,10C)で育成した稚ナマコの放流方法であって、
前記飼育マット(16)の前記上層マット(16a)のみを移設することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の中間育成施設によれば、魚類の侵入を許容しないため、ネット等を張らなくても魚類等による食害を防ぐことができる。
【0018】
本発明の稚ナマコの放流方法によれば、生分解性の飼育マットごと放流するため、ハンドリングによる稚ナマコの減耗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1(a)(b)は、本発明による稚ナマコの中間育成施設の構成例を模式的に表した全体斜視図及びI-I断面図である。
【図2】図2(a)(b)は、本発明による中間育成施設の別の構成例を模式的に表した全体斜視図及びII-II断面図である。
【図3】図3は、本発明による中間育成施設の変形例を模式的に表した全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参考にしつつ、本発明による稚ナマコの中間育成施設及び育成した稚ナマコの放流方法について詳細に説明する。なお、各図面において共通又は類似する構成要素については、同じ符号を付している。

【0021】
図1(a)(b)は、本発明による稚ナマコの中間育成施設の構成例を模式的に表した全体斜視図及びI-I断面図である。
中間育成施設10Aは、施設本体11Aと、施設本体の底面の位置に敷き詰められた2重の飼育マット16からなる。

【0022】
図1(a)(b)に示すように、施設本体11Aは上面及び底面が解放された略角筒形状であり、側壁部12、ポケット部13及び脚部14を有する。

【0023】
側壁部12の両面の上部からは、箱状にポケット部13が張り出しており、ポケット部13は下方のみが開放されている。側壁部12の内面側及び外面側にはそれぞれ1つずつ、
側壁部12及びポケット部13に囲まれた空間である空気充填空間15が形成される。内面側の空気充填空間15は側壁部12の内周に沿って形成され、外面側の空気充填空間15は側壁部12の外周に沿って形成される。

【0024】
稚ナマコや、稚ナマコの外敵であるヒトデは、空気層を越えることができない。そのため、外部からヒトデが育成施設内10Aに入ろうとしても外面側の空気充填空間15に遮断され、侵入することができないので、ヒトデ類による食害から稚ナマコを保護することができる。また、内面側の空気充填空間15の存在により、育成施設内部10Aから稚ナマコが外部に移動することができない。

【0025】
施設本体11Aは、従来の育成施設と同様に錆止め加工を施した鉄板で構成しても良いし、コンクリートブロック等を連結して構成してもよく、素材は特に限定しない。但し、ブロック等を使用した場合にはポケット部の連続した気密性を確保する必要がある。なお、ブロックを使用した場合には、施設本体11Aの一部が破損した場合にも部材の交換が容易である。

【0026】
施設本体11Aの大きさは、例えば5m×5mや2.4m×2.4m等であるが、大きさは特に限定しない。設置場所や使用者が希望する規模等に応じて適宜変更できる。外郭の形状は正方形であってもよいし、長方形であってもよい。

【0027】
図1(b)に示すように、施設本体11Aの底部の位置に2重の飼育マット16が敷き詰められている。2重の飼育マットは多孔材を用いる。材質や形状は特に限定しないが、例えばプラスチック等で、細い糸状の部材を変形されて立体形状にしたもの等を用いる。土木工事で一般的に使用される排水材(ドレーン材又は透水材ともいう)を用いてもよい。上層マット16aには比較的大きな目合いのものを、下層マット16bには比較的目合いの小さいものを用いる。目合いの違いにより、上層16aには成長した稚ナマコが、下層16bには放流直後の稚ナマコが住むようになる。魚類等に食害される放流直後の小さな稚ナマコは下層16bにいるため、育成施設の上部にネット等を張らなくても、魚類等による食害から保護することができる。ネットを張る手間が省けるだけでなく、ネットが破損した際に稚ナマコが食害されるリスクを回避することができる。

【0028】
さらに、飼育マット16としてこのような2重構造の多孔材を用いることで、育成施設10A内にナマコの餌料となる浮泥が過剰に堆積しても、下層マット16bの下面まで沈降するので、稚ナマコの成育には影響しない。

【0029】
飼育マット16として使用する多孔材は、生分解性の多孔材であるのが好適である。生分解性の多孔材の場合には、中間育成後の放流の際に、稚ナマコを飼育マット16ごと放流できるため、ハンドリングによる稚ナマコの減耗やストレスを抑制することができる。

【0030】
また、種苗放流後の稚ナマコは成長速度に個体差がある。下層マット16aの目合いが小さいため、稚ナマコはある程度大きくなると窮屈になり、目合いの大きい上層マット16bに移動する。そのため、放流の際には上層マット16aだけを移設すれば、一定の大きさ以上成長した稚ナマコだけを放流することができる。さらに、下層マット16aに取り残された小さい稚ナマコも、大きく成長した稚ナマコと分離することで成長速度が速まるという相乗効果が得られる。

【0031】
飼育マット16ごと放流すると、飼育マット16が波に流されてしまうおそれがある。そのため、放流箇所にアンカーブロックを設置してアンカーブロックには飼育マットを固定できるようにしておき、それに飼育マット16を固定する方法が好適である。例えば、アンカーブロックの天端に複数のボルトを設ける。又は、海底地盤が岩盤の場合には、削孔してアンカーボルトを固定しても良い。さらに、ナマコは垂直な壁などを好むという性質を利用し、波当たりの弱い漁港の外郭施設にボルトを取り付けて、飼育マット16を取り付けても良い。

【0032】
飼育マット16として使用する多孔材の種類は特に限定しないが、例えば、下層にはヘチマロン50mm厚を使用し、上層にはそれより目合いの大きいものを使用する。これらは、施設内で中間育成するナマコの大きさを考慮して選定する。但し、下層に目合いの小さすぎるものを使用すると、堆積物が溜まるおそれがある。

【0033】
図2(a)(b)は、本発明による中間育成施設の別の構成例を模式的に表した全体斜視図及びII-II断面図である
中間育成施設10Bは、施設本体11Bと、施設本体の底面の位置に敷き詰められた2重の飼育マット16からなる。

【0034】
図2(a)(b)に示すように、施設本体11Bは上面及び底面が解放された略角筒形状であり、側壁部12、ポケット部13及び脚部14を有する。施設本体12の内周側にポケット部13を有する施設と、外周側にポケット部13を有する施設を結合して形成される。

【0035】
側壁部12の両面の上部からは、箱状にポケット部13が張り出しており、ポケット部13は下方のみが開放されている。側壁部12の内面側及び外面側にはそれぞれ1つずつ、
側壁部12及びポケット部13に囲まれた空間である空気充填空間15が形成される。内面側の空気充填空間15は側壁部12の内周に沿って形成され、外面側の空気充填空間15は側壁部12の外周に沿って形成される。

【0036】
図3は、本発明による中間育成施設の変形例を模式的に表した全体斜視図である。図3に示す中間育成施設10Cは、正方形状の育成施設を4個連結した形状のものである。

【0037】
複数の育成施設を連結した形状のものでは、外部からのヒトデ類やカニ類・魚類等による食害を防ぐことができるだけでなく、各育成施設間での稚ナマコの出入りが制限される。そのため、例えば、それぞれの育成施設で異なる条件で育成したり、年別の稚ナマコを中間育成したり、傷ついたナマコを一定期間蓄養し出荷するなど、多様な用途が考えられる。

【0038】
また、複数の育成施設を連結した形状のものでは、それぞれの育成施設間で施設本体を構成する部材を共有することになるため、別個に設置するのと比べて経済的である。

【0039】
以上に述べた本発明の実施形態は一例を示したものであり、これら以外にも種々の公知技術を適用した多様な変形形態が可能であり、それらについても本発明に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0040】
10A、10B、10C:中間育成施設
11A、11B、11C:施設本体
12:側壁部
13:ポケット部
14:脚部
15:空気充填空間
16:飼育マット
16a:上層マット
16b:下層マット
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2