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明細書 :栽培容器保持トレイ及び栽培システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-216897 (P2017-216897A)
公開日 平成29年12月14日(2017.12.14)
発明の名称または考案の名称 栽培容器保持トレイ及び栽培システム
国際特許分類 A01G   9/02        (2006.01)
A01G   7/00        (2006.01)
FI A01G 9/02 101W
A01G 7/00 601Z
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2016-111867 (P2016-111867)
出願日 平成28年6月3日(2016.6.3)
発明者または考案者 【氏名】窪田 聡
出願人 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100064908、【弁理士】、【氏名又は名称】志賀 正武
【識別番号】100126882、【弁理士】、【氏名又は名称】五十嵐 光永
【識別番号】100175824、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 淳一
審査請求 未請求
テーマコード 2B022
2B327
Fターム 2B022DA17
2B327NC01
2B327NC55
2B327ND01
2B327NE01
2B327TA02
2B327TA24
2B327TA28
2B327UB09
2B327UB16
2B327VA05
要約 【課題】温調床部を用いて根域温度の調整を行うに当たり、栽培容器への熱伝達率を向上させる。
【解決手段】栽培容器保持トレイ1であって、鉢Xの底部を露出状態で保持可能である貫通孔2aを有する断熱パネル2と、断熱パネル2の底面2dから貫通孔2aの鉢Xの周面X2と当接する当接面2bに至って形成される金属箔3とを有する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
栽培容器の底部を露出状態で保持可能である保持部を有する断熱パネルと、
前記断熱パネルの底面から前記保持部の前記栽培容器の側面と当接する当接面に至って形成される熱伝導部と
を有することを特徴とする栽培容器保持トレイ。
【請求項2】
前記熱伝導部は、前記断熱パネルの底面から前記保持部の当接面に至る全域にて前記断熱パネルの表面に沿って形成されていることを特徴とする請求項1記載の栽培容器保持トレイ。
【請求項3】
前記保持部は、前記断熱パネルの上面から前記底面に貫通すると共に、前記断熱パネルの上面から前記底面に向けて縮径することにより前記当接面がテーパ面とされた貫通孔であることを特徴とする請求項1または2記載の栽培容器保持トレイ。
【請求項4】
前記断熱パネルは、前記保持部を複数有することを特徴とする請求項1~3いずれか一項に記載の栽培容器保持トレイ。
【請求項5】
請求項1~4いずれか一項に記載の栽培容器保持トレイと、
前記栽培容器保持トレイの下方に配置されると共に温度調整可能な温調床部と
を有することを特徴とする栽培システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培容器保持トレイ及び栽培システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物の根の部分(以下、根域と称する)の温度を調整することにより、植物の地上部の生育や開花を制御可能であることが知られている。根域温度の調整装置としては、例えば、特許文献1に開示されている。このような特許文献1に開示された根域温度の調整装置は、土壌を詰めた鉢(栽培容器)を恒温水槽内に浸漬させることにより、根域の温度調整を行っている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】実開昭62-105511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された装置では、鉢を単独で恒温水槽に浸漬する方法を採用しているため、同時に多数の鉢を収容したり運搬したりすることができない。また、特許文献1に開示された鉢を恒温水槽に浸漬し、恒温水槽から鉢に灌水を行う構成となっている。この場合、灌水と根域の温度調整とを別個に制御することができない。さらに、一般的な植物栽培施設では、頭上から鉢に対して灌水する構成を採用していることから、特許文献1に開示された装置は、既存の植物栽培施設で導入し難い。
【0005】
このような特許文献1に開示された装置の問題点を解決する方法としては、断熱材により形成されると共に多数の鉢を保持可能なトレイを配置し、このトレイの下方に温調床部を設置する構成が考えられる。このような構成によれば、トレイが複数の鉢を保持可能とされているため、トレイにより多数の鉢を収容でき、かつ、トレイを移動させることにより多数の鉢を同時に移動させることができる。また、トレイが断熱材により形成されていることから鉢が外気温の影響を受けにくく、根域の温度を正確に調整しやすい。さらに、温調床部により根域の温度調整を行うため、鉢への灌水作業は温度調整とは別に頭上から行うことが可能となる。
【0006】
ただし、このような温調床部を用いる構成では、温調床部と鉢との間の熱移動を鉢の底部のみから行うことになる。このため、熱の伝達効率が悪く、根域の温度調整に多くのエネルギが必要となる。近年の環境意識の高まりから、エネルギ消費量を可能な限り抑えることが望ましく、温調床部を採用する栽培システムにおいて、熱伝達率を向上させる必要がある。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、温調床部を用いて根域温度の調整を行うに当たり、栽培容器への熱伝達率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0009】
第1の発明は、栽培容器保持トレイであって、栽培容器の底部を露出状態で保持可能である保持部を有する断熱パネルと、上記断熱パネルの底面から上記保持部の上記栽培容器の側面と当接する当接面に至って形成される熱伝導部とを有するという構成を採用する。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記熱伝導部が、上記断熱パネルの底面から上記保持部の当接面に至る全域にて上記断熱パネルの表面に沿って形成されているという構成を採用する。
【0011】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記保持部が、上記断熱パネルの上面から上記底面に貫通すると共に、上記断熱パネルの上面から上記底面に向けて縮径することにより上記当接面がテーパ面とされた貫通孔であるという構成を採用する。
【0012】
第4の発明は、上記第1~第3いずれかの発明において、上記断熱パネルが、上記保持部を複数有するという構成を採用する。
【0013】
第5の発明は、栽培システムであって、上記第1~第4いずれかの栽培容器保持トレイと、上記栽培容器保持トレイの下方に配置されると共に温度調整可能な温調床部とを有するという構成を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の栽培容器保持トレイは、栽培容器の底部を露出状態で保持する断熱パネルの底面から栽培容器の側面と当接する当接面に至る熱伝導部を備えている。このため、熱伝導部によって、断熱パネルの底面と栽培容器の側面との間において伝達される単位時間当たりの熱量を増加させることができる。したがって、本発明の栽培容器保持トレイを温調床部の上方に配置した場合には、熱伝導部により温調床部と栽培容器との間において伝達される単位時間当たりの熱量を増加させることができる。よって、本発明によれば、温調床部を用いて根域温度の調整を行うに当たり、栽培容器への熱伝達率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態における栽培容器保持トレイの斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態における栽培容器保持トレイの縦断面図である。
【図3】本発明の一実施形態における栽培容器保持トレイを備える栽培システムの概略構成を示す模式図である。
【図4】冬場において、室内と根域との設定温度の条件を変更した場合における、経過時間と実際の根域温度との関係を示すグラフである。
【図5】夏場において、根域の設定温度の条件を変更した場合における、経過時間と実際の根域温度との関係を示すグラフである。
【図6】夏場の根域の設定温度の条件を変更した場合における、プリムラの開花率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る栽培容器保持トレイ及び栽培システムの一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。

【0017】
図1は、本実施形態の栽培容器保持トレイ1の斜視図である。また、図2は、本実施形態の栽培容器保持トレイ1の縦断面図である。なお、図2は、図1に示すA-A線で切断した断面図である。本実施形態の栽培容器保持トレイ1は、複数の鉢X(栽培容器)を保持するものであり、図1及び図2に示すように、断熱パネル2と、金属箔3(熱伝導部)とを備えている。

【0018】
断熱パネル2は、断熱材から形成されるブロック状の部材である。この断熱パネル2の厚さ寸法hは、保持する鉢Xの高さ寸法に応じて設定されている。本実施形態においては、断熱パネルの厚さ寸法hは、鉢Xの高さ寸法と一致するように設定されている。また、断熱パネル2の幅寸法w及び奥行寸法dは、断熱パネル2の幅方向及び奥行方向に配列される鉢Xの数に応じて設定されている。本実施形態においては、断熱パネル2の幅方向に3つの鉢Xが配列されるため、断熱パネル2の幅寸法wは、鉢Xが3つ配列可能な寸法に設定されている。また、本実施形態においては、断熱パネル2の奥行方向に5つの鉢Xが配列されるため、断熱パネル2の奥行寸法dは、鉢Xが5つ配列可能な寸法に設定されている。

【0019】
この断熱パネル2は、各々が鉢Xを収容かつ保持可能な貫通孔2a(保持部)を複数有している。各々の貫通孔2aは、断熱パネル2を上下に貫通しており、下端開口が上端開口よりも小径とされている。このような貫通孔2aの内壁面は、上端開口から下端開口に向けて窄まるテーパ面とされている。つまり、本実施形態において貫通孔2aは、下方に向けて窄まる略円錐形状とされている。

【0020】
貫通孔2aの内壁面の鉛直軸に対する傾斜角度は、鉢Xの周面の鉛直軸に対する傾斜角度と略一致されている。また、貫通孔2aの上端開口の径は、鉢Xの上端縁の外径と略一致されている。また、貫通孔2aの下端開口の径は、鉢Xの下端縁の外径と略一致されている。このような貫通孔2aは、断熱パネル2の幅方向と奥行方向とに等間隔で配列されている。本実施形態においては、幅方向に3つ、奥行方向に5つの貫通孔が配置されている。すなわち、本実施形態においては、断熱パネル2は、合計で15個の貫通孔2aを有している。

【0021】
各々の貫通孔2aに鉢Xが収容されると、鉢Xの底部X1が貫通孔2aの下端開口により露出された状態となる。また、貫通孔2aの内壁面(テーパ面)は、鉢Xの周面X2(側面)に当接される。すなわち、本実施形態においては、貫通孔2aの内壁面が鉢Xの周面X2との当接面2bとされている。

【0022】
このような断熱パネル2は、ポリスチレンフォーム(すなわち発泡スチロール)によって形成されている。なお、断熱パネル2の形成材料は、断熱パネル2に限られるものではなく、耐水性が高く、複数の鉢Xを保持可能な強度を有する発泡プラスチックを好適に用いることができる。例えば、硬質ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム等を断熱パネル2の形成材料として用いることも可能である。

【0023】
このように、本実施形態の栽培容器保持トレイ1は、断熱パネル2の上面2cから底面2dに貫通すると共に、断熱パネル2の上面2cから底面2dに向けて縮径することにより当接面2bがテーパ面とされた貫通孔2aを複数有している。このような貫通孔2aに鉢Xを収容することにより、本実施形態の栽培容器保持トレイ1は、鉢Xを保持する。

【0024】
金属箔3は、図2に示すように、断熱パネル2の底面2dから当接面2bに至って断熱パネル2の表面に沿って貼付された金属製の箔である。この金属箔3は、断熱パネル2よりも熱伝導率が高く、断熱パネル2の当接面2bと底面2dとの間での熱量の伝導速度を増加させる。このため、栽培容器保持トレイ1の下方に温調床部13を設置した場合には、金属箔3を通じて、温調床部13と鉢Xとの間の熱伝達率を向上させることができる。例えば、鉢Xの温度が温調床部13の温度よりも低い場合には、温調床部13から熱量が金属箔3を通じて鉢Xの周面X2に伝達される。一方、鉢Xの温度が温調床部13よりも高い場合には、鉢Xから熱量が金属箔3を通じて温調床部13に伝達される。

【0025】
このような金属箔3は、アルミニウム箔により形成されている。なお、金属箔3は、アルミ箔に限られるものではない。例えば、スズ箔や銅箔を金属箔3として用いることも可能である。また、金属箔3の厚さ寸法は特に限定されるものではないが、断熱パネル2の貫通孔2aによる鉢Xの保持に影響(ガタツキ等)を与えない程度の寸法であることが好ましい。例えば、金属箔3の厚さ寸法は0.2mm以下であることが好ましい。

【0026】
以上のような本実施形態の栽培容器保持トレイ1によれば、鉢Xの底部X1を露出状態で保持する断熱パネル2の底面2dから鉢Xの周面X2と当接する当接面2bに至る金属箔3を備えている。このため、金属箔3によって、断熱パネル2の底面2dと鉢Xの周面X2との間において伝達される単位時間当たりの熱量を増加させることができる。したがって、本実施形態の栽培容器保持トレイ1を温調床部13の上方に配置した場合には、金属箔3により温調床部13と鉢Xとの間において伝達される単位時間当たりの熱量を増加させることができる。よって、本実施形態の栽培容器保持トレイ1によれば、温調床部13を用いて根域温度の調整を行うに当たり、鉢Xへの熱伝達率を向上させることが可能となる。

【0027】
また、本実施形態の栽培容器保持トレイ1においては、金属箔3は、断熱パネル2の底面2dから貫通孔2aの当接面2bに至る全域にて断熱パネル2の表面に沿って形成されている。このため、本実施形態の栽培容器保持トレイ1によれば、断熱パネル2の表面に金属箔3を貼付するのみで製造することができる。

【0028】
また、本実施形態の栽培容器保持トレイ1においては、鉢Xを保持する保持部として、断熱パネル2の上面2cから底面2dに貫通すると共に、断熱パネル2の上面2cから底面2dに向けて縮径することにより当接面2bがテーパ面とされた貫通孔2aを有している。このような構成の本実施形態の栽培容器保持トレイ1によれば、貫通孔2aに鉢Xを収容することにより、テーパ面である当接面2bが鉢Xの周面X2に当接され、鉢Xを保持することができる。したがって、本実施形態の栽培容器保持トレイ1によれば、簡易な構造で鉢Xを保持することが可能となる。

【0029】
また、本実施形態の栽培容器保持トレイ1においては、断熱パネル2が複数の貫通孔2aを有している。このため、1つの栽培容器保持トレイ1によって複数の鉢Xを保持することができる。したがって、栽培容器保持トレイ1を移動させることによって、容易に複数の鉢Xを移動させることができる。

【0030】
続いて、本実施形態の栽培容器保持トレイ1を備える栽培システム10について、図3を参照して説明する。

【0031】
図3は、栽培システム10の概略構成を示す模式図である。この図に示すように、栽培システム10は、ベンチ11と、断熱支持板12と、温調床部13と、温調水生成装置14と、複数の栽培容器保持トレイ1とを有している。

【0032】
ベンチ11は、断熱支持板12、温調床部13及び栽培容器保持トレイ1を直接あるいは間接的に支持する基台である。このベンチ11は、断熱支持板12が載置される平面視が矩形状の底部11aと、底部11aの縁部に立設される側壁11bとを有している。側壁11bは、矩形状の底部11aの四辺の全てに形成されており、図3に示すように、温調床部13や栽培容器保持トレイ1の下部を側方から囲う高さを有している。

【0033】
このベンチ11は、栽培容器保持トレイ1の断熱パネル2と同様に、断熱材により形成されている。例えば、ベンチ11は、ポリスチレンフォーム、硬質ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム等の発泡プラスチックにより形成することができる。このようなベンチ11は、側壁11bにより囲まれた空間が外気温の影響を受けることを防止する。

【0034】
断熱支持板12は、ベンチ11の底部11a上に載置されており、温調床部13を下方から支持する。この断熱支持板12は、温調床部13の高さ位置を調整している。このため、温調床部13の高さ位置を調整する必要がない場合には、省略することも可能である。このような断熱支持板12は、ベンチ11と同様に、ポリスチレンフォーム、硬質ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム等の発泡プラスチックにより形成することができる。

【0035】
温調床部13は、断熱支持板12上に載置されており、栽培容器保持トレイ1を下方から支持する。つまり、栽培システム10においては、栽培容器保持トレイ1の下方に温調床部13が配置されている。この温調床部13は、温調水生成装置14から供給される温調水Yの温度を変更することによって温度調整可能とされており、栽培容器保持トレイ1で保持された鉢X(すなわち根域)の温度調整を行う。このような温調床部13は、不図示の水管を有している。この水管に供給された温調水Yと栽培容器保持トレイ1に支持された鉢Xとが非接触にて熱交換されることによって、鉢Xの温度が調整される。例えば、冬場においては、温調床部13に温水が温調水Yとして供給されることによって、鉢Xが加温される。また、夏場においては、温調床部13に冷水が温調水Yとして供給されることによって、鉢Xが冷却される。

【0036】
温調水生成装置14は、温調床部13と接続されており、温調床部13から回収した温調水Yの温度を調整し、再び温調床部13に供給する。例えば、冬場であれば、温調水生成装置14は、鉢Xを加温することによって冷却された温調水Yを温調床部13から回収して加熱した後、再び温調床部13に供給する。また、夏場であれば、温調水生成装置14は、鉢Xを冷却することによって加熱された温調水Yを温調床部13から回収して冷却した後、再び温調床部13に供給する。

【0037】
栽培容器保持トレイ1は、温調床部13上に載置されている。例えば、栽培容器保持トレイ1は、温調床部13上に縦横に隣接配置されて合計15個敷き詰められる。これらの栽培容器保持トレイ1は、図3に示すように少なくとも、植物の根の領域(根域)がベンチ11の側壁11bで囲まれた空間に収容されるように、下側半分が側壁11bの上端よりも下方となるように配置されている。なお、図3に示す栽培システム10においては、栽培容器保持トレイ1が温調床部13に直接的に載置されているが、栽培容器保持トレイ1と温調床部13との間に隙間を設けるようにしても良い。

【0038】
なお、図3においては示されていないが、栽培システム10は、栽培容器保持トレイ1の上方に、鉢Xに対して灌水を行う給水設備を設けるようにしても良い。このような給水設備を設けることによって、多数の鉢Xに対する灌水作業を容易に行うことが可能となる。

【0039】
このような栽培システム10では、栽培容器保持トレイ1の断熱パネル2により、鉢Xが外部の温度の影響を受けない。一方で、鉢Xの下部は、温調床部13と直接あるいは金属箔3を通じて熱交換することにより、温調床部13の設定温度に応じた温度となる。したがって、栽培システム10によれば、鉢Xで育てられる植物の根域を栽培に適した温度に調節することが可能となる。

【0040】
さらに、栽培システム10では、鉢Xを恒温水槽に浸漬することなく、植物の根域の温度調整を行うことができる。このため、鉢Xに対する灌水を根域の温度調整と別に行うことができる。したがって、栽培システム10によれば、植物の育成に適した灌水作業を根域の温度調整に影響を受けることなく行うことが可能となる。

【0041】
また、栽培システム10によれば、温度調整を行うのは根域のみであることから、植物を栽培する室内の全体を温度調整する場合と比較して、温度調整に必要となる消費エネルギを極めて低減させることが可能となる。

【0042】
続いて、図4~図6を参照して、本実施形態の栽培容器保持トレイ1を用いた栽培システム10によって、植物を実際に育てた場合の実施例について説明する。なお、本実施例では、プリムラを育成した。

【0043】
図4は、冬場において、室内と根域との設定温度の条件を変更した場合における、経過時間と実際の根域温度との関係を示すグラフである。図4において、グラフAは、室内温度を無加温とし、栽培システム10により根域温度を25℃に設定した場合の結果を示している。また、グラフBは、室内温度を12℃に設定して、栽培システム10により根域温度を24℃に設定した場合の結果を示している。また、グラフCは、栽培容器保持トレイ1及び栽培システム10を使用せずに、室内温度を15℃に設定した場合の結果を示している。なお、図4において、横軸が経過時間を示しており、横軸の一目盛りは1日に相当する。

【0044】
グラフCから明らかなように、栽培システム10を用いずに、根域温度の調整を行わない場合には、室内温度の調整を行っていても、根域温度が1日の間に大きく変動する。一方で、グラフAとグラフBとから明らかなように、栽培システム10を用いることによって、1日の間において根域温度が変動することを防止することができる。さらに、グラフAとグラフBとの比較から分かるように、栽培システム10を用いることで、室内温度の調整を行わなくても根域温度の変動を防止できることが分かる。このように、栽培システム10を用いることにより、室内温度の温度調整を行わずに根域温度を一定に保つことが可能であることが確認できた。

【0045】
図5は、夏場において、根域の設定温度の条件を変更した場合における、経過時間と実際の根域温度との関係を示すグラフである。図5において、グラフDは、栽培システム10によって根域温度を20℃に設定した場合の結果を示している。また、グラフEは、栽培システム10によって根域温度を23℃に設定した場合の結果を示している。また、グラフFは、栽培システム10によって根域温度を26℃に設定した場合の結果を示している。また、グラフGは、栽培容器保持トレイ1及び栽培システム10を使用しない場合の結果を示している。なお、図4において、横軸が経過時間を示しており、横軸の一目盛りは1日に相当する。

【0046】
グラフGから明らかなように、栽培システム10を用いずに、根域温度の調整を行わない場合には、根域温度が1日の間に大きく変動する。一方で、グラフD~Fから明らかなように、栽培システム10を用いた場合には、根域温度を設定温度の付近で安定させることができる。このように、栽培システム10を用いることにより、夏場であっても、根域温度を一定の温度に保つことが可能となる。

【0047】
図6は、夏場の根域の設定温度の条件を変更した場合における、プリムラの開花率を示すグラフである。図6において、グラフHは、栽培システム10によって夏場の根域温度を20℃に設定した場合の結果を示している。また、グラフIは、栽培システム10によって夏場の根域温度を23℃に設定した場合の結果を示している。また、グラフJは、夏場に栽培容器保持トレイ1及び栽培システム10を使用しなかった場合の結果を示している。なお、図6において、横軸が経過時間を示しており、横軸の一目盛りは1週間に相当する。

【0048】
グラフH~Jから明らかなように、夏場に栽培システム10によって根域温度の温度を一定に保持した場合には、栽培システム10を用いない場合と比較して開花率が非常に高くなることが確認された。さらに、グラフHとグラフIとから明らかなように、夏場における根域温度を低く保つことにより、開花率がより高くなることが分かった。

【0049】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。

【0050】
例えば、上記実施形態においては、本発明の熱伝導部として金属箔3を用いる構成を採用した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、金属箔3よりも厚さ寸法が大きな金属板や金属ブロックを熱伝導部として備える構成を採用することも可能である。

【0051】
また、上記実施形態においては、本発明の熱伝導部である金属箔3が断熱パネル2の表面に貼付された構成を採用した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、熱伝導部が断熱パネル2の内部を貫通して断熱パネル2の底面2dから当接面2bに至るように形成された構成を採用することも可能である。

【0052】
また、上記実施形態においては、温調床部13が温調水Yにより温度調整を行う構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、温調ガスにより温調床部13が温度調整を行う構成を採用することも可能である。

【0053】
また、上記実施形態においては、本発明の保持部が貫通孔2aからなる構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、断熱パネル2がアーム部等を設け、当該アーム部を本発明の保持部として用いることも可能である。
【符号の説明】
【0054】
1……栽培容器保持トレイ、2……断熱パネル、2a……貫通孔(保持部)、2b……当接面、2c……上面、2d……底面、3……金属箔(熱伝導部)、10……栽培システム、13……温調床部、X……鉢(栽培容器)、X1……底部、X2……周面(側面)、Y……温調水
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5