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明細書 :危険度算出装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6782896号 (P6782896)
公開番号 特開2017-208028 (P2017-208028A)
登録日 令和2年10月23日(2020.10.23)
発行日 令和2年11月11日(2020.11.11)
公開日 平成29年11月24日(2017.11.24)
発明の名称または考案の名称 危険度算出装置
国際特許分類 G08B  25/08        (2006.01)
G08B  25/10        (2006.01)
G08B  21/00        (2006.01)
FI G08B 25/08 A
G08B 25/10 D
G08B 21/00 U
請求項の数または発明の数 9
全頁数 27
出願番号 特願2016-101662 (P2016-101662)
出願日 平成28年5月20日(2016.5.20)
審査請求日 平成31年3月14日(2019.3.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】西本 哲也
個別代理人の代理人 【識別番号】100161207、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 和純
【識別番号】100175824、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 淳一
【識別番号】100126882、【弁理士】、【氏名又は名称】五十嵐 光永
【識別番号】100064908、【弁理士】、【氏名又は名称】志賀 正武
審査官 【審査官】松原 徳久
参考文献・文献 米国特許出願公開第2013/0331055(US,A1)
米国特許出願公開第2012/0146766(US,A1)
特開2015-207049(JP,A)
特開2014-234121(JP,A)
特開2013-166515(JP,A)
調査した分野 B60R21/00-21/13
21/34-21/38
G08B19/00-31/00
特許請求の範囲 【請求項1】
二輪車の衝突時の速度を示す二輪車衝突時速度情報と、衝突の状況に応じた複数段階の危険度が割り当てられている情報であって少なくとも衝突部位を示す情報を含む衝突状況情報とに基づいて、当該二輪車に搭乗する乗員の当該衝突による傷害の危険度を傷害危険度として算出する危険度算出部
を備え、
前記衝突状況情報は、前記乗員が頭部を保護するヘルメットを着用しているか否かを示す情報、又は前記二輪車の排気量を示す情報のいずれか一方を少なくとも含む
危険度算出装置。
【請求項2】
前記危険度算出部は、前記衝突状況情報を取得できない場合には当該衝突状況情報に割り当てられている危険度のうち最も高い段階の危険度に基づいて、前記傷害危険度を算出する
請求項1に記載の危険度算出装置。
【請求項3】
前記二輪車衝突時速度情報とは、当該衝突に応じて出力される情報である
請求項1又は請求項2に記載の危険度算出装置。
【請求項4】
前記危険度算出部が算出する前記傷害危険度と、予め定められた危険度の基準とに基づいて、前記衝突の状況を示す衝突情報を出力するか否かを判定する出力判定部と、
前記出力判定部が判定した結果に基づいて、前記衝突情報を出力する衝突情報出力部と
を更に備える請求項1から請求項のいずれか一項に記載の危険度算出装置。
【請求項5】
前記衝突情報には、前記衝突が生じた位置を示す位置情報と、前記危険度算出部が算出した前記傷害危険度とが含まれる
請求項に記載の危険度算出装置。
【請求項6】
前記危険度算出部は、二輪車に衝突した他の車両の当該衝突時の速度を示す車両衝突時速度情報と、当該二輪車の当該衝突時の速度を示す前記二輪車衝突時速度情報とに基づいて前記傷害危険度を算出する
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の危険度算出装置。
【請求項7】
前記危険度算出部は、前記他の車両の衝突箇所を示す情報に更に基づいて、前記傷害危険度を算出する
請求項に記載の危険度算出装置。
【請求項8】
前記車両衝突時速度情報とは、当該衝突に応じて出力される情報である
請求項又は請求項に記載の危険度算出装置。
【請求項9】
前記二輪車の衝突時の位置を示す情報と、前記他の車両の衝突時の位置を示す情報とに基づいて、前記二輪車衝突時速度情報と前記車両衝突時速度情報とを対応付ける対応付部を更に備え、
前記危険度算出部は、対応付けられた前記二輪車衝突時速度情報と、前記車両衝突時速度情報とに基づいて、前記傷害危険度を算出する
請求項から請求項のいずれか一項に記載の危険度算出装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、危険度算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車乗員用の傷害予測アルゴリズムによって乗員の死亡重傷率を予測し、負傷乗員の早期治療を支援することにより救命率向上を目的とするシステムが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2004-310309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
日本の二輪車事故は、事故全体の16.9%であり、そのうち二輪車対四輪車事故が33%、二輪車単独事故が24%発生している。しかし、二輪車事故に対応した二輪車乗員用の傷害予測アルゴリズムは開発されておらず、二輪車事故を対象とした二輪車乗員用の傷害予測アルゴリズムの開発が必要とされている。
そこで、本発明の課題は、二輪車対車両事故を対象とする二輪車乗員用危険度算出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、二輪車の衝突時の速度を示す二輪車衝突時速度情報と、衝突の状況に応じた複数段階の危険度が割り当てられている情報であって少なくとも衝突部位を示す情報を含む衝突状況情報とに基づいて、当該二輪車に搭乗する乗員の当該衝突による傷害の危険度を傷害危険度として算出する危険度算出部を備え、前記衝突状況情報は、前記乗員が頭部を保護するヘルメットを着用しているか否かを示す情報、又は前記二輪車の排気量を示す情報のいずれか一方を少なくとも含む危険度算出装置である。
【0007】
また、本発明の一容態の危険度算出装置は、前記危険度算出部は、前記衝突状況情報を取得できない場合には当該衝突状況情報に割り当てられている危険度のうち最も高い段階の危険度に基づいて、前記傷害危険度を算出する。
【0008】
また、本発明の一容態の危険度算出装置は、前記二輪車衝突時速度情報とは、当該衝突に応じて出力される情報である。
【0009】
また、本発明の一容態の危険度算出装置は、前記危険度算出部が算出する前記傷害危険度と、予め定められた危険度の基準とに基づいて、前記衝突の状況を示す衝突情報を出力するか否かを判定する出力判定部と、前記出力判定部が判定した結果に基づいて、前記衝突情報を出力する衝突情報出力部とを更に備える。
【0010】
また、本発明の一容態の危険度算出装置は、前記衝突情報には、前記衝突が生じた位置を示す位置情報と、前記危険度算出部が算出した前記傷害危険度とが含まれる。
【0011】
また、本発明の一容態の危険度算出装置は、前記危険度算出部は、二輪車に衝突した他の車両の当該衝突時の速度を示す車両衝突時速度情報と、当該二輪車の当該衝突時の速度を示す前記二輪車衝突時速度情報とに基づいて前記傷害危険度を算出する。
【0012】
また、本発明の一容態の危険度算出装置は、前記危険度算出部は、前記他の車両の衝突箇所を示す情報に更に基づいて、前記傷害危険度を算出する。
【0013】
また、本発明の一容態の危険度算出装置は、前記車両衝突時速度情報とは、当該衝突に応じて出力される情報である。
【0014】
また、本発明の一容態の危険度算出装置は、前記二輪車の衝突時の位置を示す情報と、前記他の車両の衝突時の位置を示す情報とに基づいて、前記二輪車衝突時速度情報と前記車両衝突時速度情報とを対応付ける対応付部を更に備え、前記危険度算出部は、対応付けられた前記二輪車衝突時速度情報と、前記車両衝突時速度情報とに基づいて、前記傷害危険度を算出する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、二輪車対車両事故を対象とする二輪車乗員用危険度算出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】危険度の算出に用いる予測アルゴリズムに用いられるリスクファクタの一例を示す図である。
【図2】二輪車と四輪車の危険認知速度別の事故件数と累積構成率とを示す図である。
【図3】二輪車と四輪車との衝突部位別の件数と構成率との一例を示す図である。
【図4】二輪車対四輪車での傷害予測モデルを構築した結果の一例を示す図である。
【図5】MC Model 1を用いて、重症死亡率を算出した結果の一例を示す図である。
【図6】二輪車の危険認知速度と死亡重症率との関係の一例を示す図である。
【図7】MC Model 2によって算出される、事故構成率が高い衝突部位上位3形態毎の危険認知速度と死亡重症率との関係の一例を示す図である。
【図8】乗員の年齢別の死亡重症率をMC Model 1及びMC Model 2によって算出した一例を示す図である。
【図9】ヘルメット着用の有無別の死亡重症率をMC Model 1及びMC Model 2によって算出した一例を示す図である。
【図10】二輪車の排気量の違いによる死亡重症率をMC Model 1及びMC Model 2によって算出した一例を示す図である。
【図11】評価によって分類される結果を示す図である。
【図12】MC Model 1及びMC Model 2のROC曲線とAUCの一例を示す図である。
【図13】MC Model 1から算出された死亡重症率に基づいて、アンダートリアージ率及びオーバートリアージ率と、閾値との関係を解析した結果の一例を示す図である。
【図14】MC Model 2から算出された死亡重症率に基づいて、アンダートリアージ率及びオーバートリアージ率を解析した結果の一例を示す図である。
【図15】二輪車前面と四輪車前面との衝突状態での、二輪車の危険認知速度と四輪車の危険認知速度とから算出される死亡重症率の一例を示す図である。
【図16】二輪車前面と四輪車側面との衝突状態での、二輪車の危険認知速度と四輪車の危険認知速度とから算出される死亡重症率の一例を示す図である。
【図17】二輪車側面と四輪車前面との衝突状態での、二輪車の危険認知速度と四輪車の危険認知速度とから算出される死亡重症率の一例を示す図である。
【図18】実施形態1に係る危険度算出装置の構成の一例を示す図である。
【図19】実施形態2に係る危険度算出装置の構成の一例を示す図である。
【図20】実施形態3に係る危険度算出装置の構成の一例を示す図である。
【図21】実施形態3に係る危険度算出装置の動作の一例を示す流れ図である。
【図22】実施形態4に係る危険度算出装置の構成の一例を示す図である。
【図23】実施形態4に係る危険度算出装置の動作の一例を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図を参照して、危険度算出装置が、危険度の算出に用いる予測アルゴリズムについて説明する。
危険度の算出に用いる予測アルゴリズムは、交通事故総合分析センター(以下、ITARDAと記載する)の交通事故統合データベースを用いて構築された。危険度算出アルゴリズムには、2通りの予測アルゴリズムがある。予測アルゴリズムのうち、1つはMC Model 1と称する、二輪車対車両事故に対して二輪車から得られる衝突情報のみで、二輪車乗員の重傷度を予測するアルゴリズムである。もう一方はMC Model 2と称する、二輪車と衝突した衝突相手からも衝突情報を得られる場合に、二輪車と衝突相手との双方から得られる衝突情報を用いて、衝突した二輪車乗員の重傷度を予測するアルゴリズムである。
また、これら2つの予測アルゴリズムを用いて、予測アルゴリズムの精度を評価した後に、衝突を自動通報するための閾値を導いた。

【0018】
[事故データの集計条件]
予測アルゴリズムは、ITARDAの交通事故統合データベースの事故データを用いて構築された。事故データの集計条件は、2005年から2014年までの10年間とし、二輪車対四輪車(普通乗用車,軽乗用車)事故を用いた。事故データの集計条件に対応する有効事故データの総件数は874,159件であり、交差検証法(クロスバリデーション)を適用するため、事故データを奇数年に発生した457,840件の事故データと、偶数年に発生した417,309件の事故データとに二分割している。交差検証法とは、奇数年に発生した事故のデータによって予測アルゴリズムを構築し、予測アルゴリズムの構築に用いていない偶数年に発生した事故のデータに予測アルゴリズムを適用することにより、精度を検証する手法である。

【0019】
[事故データの集計項目]
交通事故統合データベースの集計項目は図1に示す7項目である。
図1は、危険度の算出に用いる予測アルゴリズムに用いられるリスクファクタの一例を示す図である。リスクファクタには、図1に示す(1)から(7)までのリスクファクタが含まれる。

【0020】
(1)Travel speed(二輪車衝突時速度情報の一例)とは、衝突の大きさを示すリスクファクタである、二輪車MCの危険認知速度である。危険認知速度とは二輪車乗員が四輪車FVを認知し、危険回避措置をとる直前の速度である。予測アルゴリズムでは、二輪車MCの危険認知速度を0(km/h)から60(km/h)までを、10(km/h)間隔の6区分に分けて集計する。集計した各区分の中央値から連続変数として解析を行う。なお、事故データとして、二輪車MCの危険認知速度が61(km/h)以上も集計したが、中央値が導出不可のため、予測アルゴリズムの構築に用いた有効データからは除外した。

【0021】
(2)Crash direction(衝突状況情報の一例)とは、二輪車MCの衝突部位を示すリスクファクタである。二輪車MCの衝突部位は二輪車MCの前面、二輪車MCの側面及び二輪車MCの後面の3区分とした。
(3)Age(衝突状況情報の一例)とは、二輪車乗員の年齢を示すリスクファクタである。二輪車乗員の人体の衝撃耐性の違いを予測アルゴリズムに反映するべく、二輪車乗員の年齢を集計項目とした。年齢の区分は16~54歳以下、55~64歳及び65歳以上の3区分とした。
(4)Helmet use(衝突状況情報の一例)とは、頭部を保護するヘルメットを、二輪車乗員が着用しているか否かを示すリスクファクタである。ヘルメット着用(離脱を含む)及びヘルメット非着用・不明の2区分を集計項目とした。
(5)Displacement(衝突状況情報の一例)とは、二輪車MCの排気量を示すリスクファクタである。二輪車MCの排気量の違いが二輪車乗員の傷害に与える影響を考慮するべく、二輪車MCの排気量を集計項目とした。二輪車MCの排気量の区分は、原動機付自転車50cc以下、第二種原動機付自転車51~125cc、普通自動二輪車126~400cc及び大型自動二輪車401cc以上の4区分とした。

【0022】
(6)Travel speed(車両衝突時速度情報の一例)とは、四輪車FVの危険認知速度を示すリスクファクタである。四輪車FVの危険認知速度は、二輪車MCでの(1)Travel speedの集計区分と同様の6区分で集計した。
(7)Crash direction(他の車両の衝突箇所を示す情報の一例)とは、四輪車FVの衝突部位を示すリスクファクタである。四輪車FVの衝突部位は、二輪車MCでの(2)Crash directionと同様に、四輪車FVの前面、四輪車FVの側面及び四輪車FVの後面の3区分に分けて集計した。

【0023】
[事故データの単純集計]
予測アルゴリズム構築の前解析として事故データの単純集計を行う。これは事故データの傾向を解析することを目的として、リスクファクタの集計項目毎に集計した。
図2は、二輪車MCと四輪車FVの危険認知速度別の事故件数と累積構成率とを示す図である。
二輪車MCの危険認知速度別の事故件数は、グラフB1に示すように、21~30(km/h)が最も多く、32万件(構成率36%)である。一方で、四輪車FVの危険認知速度別の事故件数は、グラフB2に示すように、0~10(km/h)が最も多く43万件(構成率49%)である。二輪車MCと四輪車FVとの事故における危険認知速度の特徴として、四輪車FVよりも二輪車MCの方が、高い速度域で事故が発生している。

【0024】
次に、図3を参照して、二輪車MCと四輪車FVとの衝突部位別の件数と構成率について説明する。
図3は、二輪車MCと四輪車FVとの衝突部位別の件数と構成率との一例を示す図である。
衝突部位の組み合わせ構成が、リスクファクタにおける衝突形態となるものとみなすと、二輪車MC対四輪車FV事故の衝突形態で最も多い形態は、図3に示すように、二輪車前面と四輪車前面との衝突形態である。二輪車前面と四輪車前面との衝突形態は、衝突形態全体の32.8%を構成している。二輪車MC対四輪車FV事故の衝突形態で二番目に多い衝突形態は、二輪車前面と四輪車側面との衝突形態である。二輪車前面と四輪車側面との衝突形態は、衝突形態全体の21.0%を構成している。三番目に多い衝突形態は、二輪車側面と四輪車前面との衝突である。二輪車側面と四輪車前面との衝突形態は、衝突形態全体の18.7%を構成している。上述した、上位3つの衝突形態が、事故全体の71%を構成している。一方で、後面同士や、二輪車後面に四輪車側面が衝突する衝突形態も0.3%存在する。

【0025】
[傷害予測アルゴリズムの構築方法]
二輪車乗員の死亡重傷率を予測するアルゴリズムを式(1)示すロジスティック回帰モデルを用いて構築する。ここで、死亡重症率の「死亡」とは、二輪車乗員が事故発生後24時間以内に死亡することを示す。また、死亡重症率の「重傷」とは二輪車乗員が、事故発生後、30日以上の治療が必要となる傷害を被ることを示す。

【0026】
【数1】
JP0006782896B2_000002t.gif

【0027】
ここで、式(1)中のPとは、死亡又は重傷となる確率を意味する死亡重傷率である。式(1)中のPが、1である場合は、二輪車乗員が死亡又は重症を示す。また、式(1)中のPが、0である場合は、二輪車乗員が軽傷又は無傷を示す。また、式(1)中のZとは、複数のリスクファクタの組み合わせによる、衝突モードの線形結合和であり、式(2)により表される。

【0028】
【数2】
JP0006782896B2_000003t.gif

【0029】
式(2)中のXとは、個々のリスクファクタの区分化された変数群であり、事故の状況を示す。また、式(2)中のβとは、各リスクファクタの偏回帰係数であり、最尤法により推定している。
つまり、死亡重症率Pは、式(1)から算出される。また、式(1)中のZは、式(2)に示すように、MC Model 1及びMC Model 2とそれぞれ対応付けられたリスクファクタ毎に定められた偏回帰係数βと、各リスクファクタに該当する値との積をそれぞれ算出し、算出された結果を加算することによって算出される。

【0030】
[予測アルゴリズムの構築結果]
図4にMC Model 1及びMC Model 2の構築結果を示す。
図4は、二輪車対四輪車での傷害予測モデルを構築した結果の一例を示す図である。
図4には、各リスクファクタの偏回帰係数β(Coefficients:β)、標準誤差(S.E.)及びWald検定によるP値(P-Value)の一覧を示す。構築した予測アルゴリズムの各リスクファクタは、全てP値が0.001よりも小さく、統計的に有意であると認められるP値である0.05よりも小さな値である。つまり、各リスクファクタの偏回帰係数βは、統計学的に有意な変数である。

【0031】
リスクファクタには、”Intercept”と、二輪車の危険認知速度を示す”Travel Speed(Motorcycle)”と、二輪車の衝突部位を示す”Crash direction(Motorcycle)”と、二輪車乗員の年齢を示す”Age”と、頭部を保護するヘルメットを二輪車乗員が着用しているか否かを示す”Helmet use”と、二輪車MCの排気量を示す”Displacement”と、四輪車FVの危険認知速度を示す”Travel speed(Four-wheel vehicle)”と、四輪車FVの衝突部位を示す”Crash direction(Four-wheel vehicle)”とがある。

【0032】
リスクファクタのうち”Intercept”に割り当てられた偏回帰係数βは、MC Model 1の場合には”-2.810”、MC Model 2の場合には”-4.502”である。

【0033】
リスクファクタのうち”Travel Speed(Motorcycle)”の偏回帰係数βは、MC Model 1の場合には”0.035”、MC Model 2の場合には”0.037”である。

【0034】
リスクファクタのうち”Crash direction(Motorcycle)”には、複数段階のリスクファクタが割り当てられている。”Crash direction(Motorcycle)”には、二輪車MCの前面を示す”Frontal”と、二輪車MCの側面を示す”Side”と、二輪車MCの後面を示す”Back”とがある。
衝突部位が二輪車の前面であることを示す”Frontal”に割り当てられた偏回帰係数βは、MC Model 1の場合には”0.380”、MC Model 2の場合には、”0.944”である。
衝突部位が二輪車の側面であることを示す”Side”に割り当てられた偏回帰係数βは、MC Model 1の場合には”0.487”、MC Model 2の場合には、”0.852”である。
衝突部位が二輪車の後面であることを示す”Back”に割り当てられた偏回帰係数βは、MC Model 1、MC Model 2共に”-”であって、二輪車乗員の死亡重症率Pに影響を及ぼさないことを示している。

【0035】
リスクファクタのうち”Age”には、複数段階のリスクファクタが割り当てられている。”Age”には、二輪車乗員の年齢として、16~54歳以下を示す”16-54years”と、55~64歳を示す”55-64years”と、65歳以上を示す”over65years”とがある。
”16-54years”に割り当てられた偏回帰係数βは、MC Model 1、MC Model 2共に”-”であって、二輪車乗員の死亡重症率Pに影響を及ぼさないことを示している。
”55-64years”に割り当てられた偏回帰係数βは、MC Model 1の場合には”0.813”、MC Model 2の場合には”0.778”である。
”over65years”に割り当てられた偏回帰係数βは、MC Model 1の場合には”1.246”、MC Model 2の場合には”1.127”である。

【0036】
リスクファクタのうち”Helmet use”に割り当てられた偏回帰係数βは、MC Model 1の場合には”-0.785”、MC Model 2の場合には”-0.585”である。

【0037】
リスクファクタのうち”Displacement”には、複数段階のリスクファクタが割り当てられている。”Displacement”には、二輪車の排気量として、原動機付自転車50cc以下を示す”Under50cc”と、第二種原動機付自転車51-125ccを示す”15-125cc”と、普通自動二輪車126-400ccを示す”126-400cc”と、大型自動二輪車401cc以上を示す”Over401cc”とがある。
”Under50cc”に割り当てられた偏回帰係数βは、MC Model 1、MC Model 2共に”-”であって、二輪車乗員の重症死亡率に影響を及ぼさないことを示している。
”15-125cc”に割り当てられた偏回帰係数βは、MC Model 1の場合には”-0.095”、MC Model 2の場合には”-0.060”である。
”126-400cc”に割り当てられた偏回帰係数βは、MC Model 1の場合には”-0.146”、MC Model 2の場合には”-0.100”である。
”Over401cc”に割り当てられた偏回帰係数βは、MC Model 1の場合には”0.125”、MC Model 2の場合には”0.154”である。

【0038】
リスクファクタのうち”Travel speed(Four-wheel vehicle)”の偏回帰係数βは、MC Model 2の場合には”0.035”である。MC Model 1の場合には、二輪車MCから得られる衝突情報のみで重症死亡率を算出するために”-”である。

【0039】
リスクファクタのうち”Crash direction(Four-wheel vehicle)”には、複数段階のリスクファクタが割り当てられている。”Crash direction(Four-wheel vehicle)”には、四輪車FVの前面を示す”Frontal”と、四輪車FVの側面を示す”Side”と、四輪車FVの後面を示す”Back”とがある。なお、”Crash direction(Four-wheel vehicle)”は、MC Model 1の場合には二輪車MCから得られる衝突情報のみで重症死亡率を算出するために”-”である。
衝突部位が四輪車の前面であることを示す”Frontal”に割り当てられた偏回帰係数βは、MC Model 2の場合には、”0.629”である。
衝突部位が四輪車の側面であることを示す”Side”に割り当てられた偏回帰係数βは、MC Model 2の場合には、”0.168”である。
衝突部位が四輪車の後面であることを示す”Back”に割り当てられた偏回帰係数βは、MC Model 2の場合には”-”であって、二輪車乗員の重症死亡率に影響を及ぼさないことを示している。

【0040】
死亡重症率Pは、各リスクファクタと対応付けられたMC Model 1及びMC Model 2毎に定められた偏回帰係数βと、該当する項目の積とを加算することにより、Zを算出し、算出したZを式(1)に代入することにより算出する。

【0041】
次に、予測アルゴリズムによる死亡重傷率の算出の一例として、MC Model 1による算出結果の一例を図5に示す。
図5は、MC Model 1を用いて、重症死亡率を算出した結果の一例を示す図である。
図5に示す一例での計算条件は、二輪車の衝突試験法ISO13232に基づき、二輪車MCと四輪車FVとの正面衝突を想定し、二輪車MCの危険認知速度を50(km/h)とした。また、乗員の年齢は16~54歳、ヘルメットは着用しており、二輪車の排気量は126~400ccと仮定した。

【0042】
図5に示す各リスクファクタに該当する項目Xに該当する条件として、リスクファクタの1つである二輪車MCの危険認知速度を示す項目Xである「Travel speed(Motorcycle[km/h])」には、二輪車MCの危険認知速度である”50”(km/h)を代入する。正面衝突を示す項目Xである「Crash direction」のうちの条件に該当する「Frontal」に”1”を代入する。「Crash direction」のうちの条件に該当しない項目Xには”0”を代入する。また、乗員の年齢である16~54歳を示す「Age」のうちの条件に該当する「16-54years」の項目Xに”1”を代入する。「Age」のうちの条件に該当しない項目Xには”0”を代入する。ヘルメットの着用の有無を示す「Helmet use」の項目Xに”1”を代入する。二輪車MCの排気量を示す項目「Displacement」のうちの、条件に該当する「126-400cc」の項目Xに”1”を代入する。「Displacement」のうちの条件に該当しない項目Xには”0”を代入する。
これら項目Xと、ロジスティック回帰分析によって得られた偏回帰係数βとの積をそれぞれ算出し、算出された結果をそれぞれ加算することにより、Zを算出する。この一例では、Zは”-1.60”である。二輪車乗員の重症死亡率Pは、算出されたZの値”-1.60”を、式(1)に代入することにより算出される。二輪車MCと四輪車FVとの正面衝突を想定し、二輪車MCの危険認知速度を50(km/h)、乗員の年齢は16~54歳、ヘルメットは着用しており、二輪車の排気量は126~400ccと仮定した衝突による二輪車乗員の死亡重傷率Pは、16.8%と算出される。

【0043】
MC Model 2を用いて、死亡重症率Pを算出する場合には、上述したように「Travel speed(Motorcycle[km/h])」の項目Xに二輪車MCの危険認知速度(km/h)の値を代入し、各リスクファクタの当該衝突時点の状態に該当する項目Xに”1”を代入する。更に、四輪車FVの危険認知速度を示す「Travel speed(Four-wheel vehicle)」の項目Xに四輪車FVの危険認知速度(km/h)の値を代入し、四輪車FVの衝突部位を示す「Crash direction(Four-wheel vehicle)」の当該衝突時点の状態に該当する項目Xに”1”を代入する。項目Xに代入したそれぞれの値と、図4に示すようなMC Model 2と対応する偏回帰係数βとの積をそれぞれ算出し、算出された結果をそれぞれ加算することにより、Zを算出する。MC Model 2による二輪車乗員の重症死亡率Pは、算出されたZの値を、式(1)に代入することにより算出される。

【0044】
[リスクカーブ]
次に、構築した2つの予測アルゴリズムについて、各リスクファクタが死亡重症率Pに与える影響を調査するために死亡重症率Pを算出した。以下、図6から図10までに示す死亡重症率Pの一例を算出するための基本条件は、前項と同様にISO13232を基準に、二輪車MCと四輪車FVの正面衝突、二輪車MCの危険認知速度を50(km/h)、四輪車の危険認知速度を25(km/h)、二輪車MCの乗員年齢は16~54歳、ヘルメットは着用した状態、二輪車の排気量を126~400ccである。これら基本条件が変わると、死亡重症率Pも変化する。

【0045】
図6にMC Model 1及びMC Model 2毎に二輪車MCの危険認知速度と死亡重症率Pとの関係を表すリスクカーブを示す。
図6は、二輪車MCの危険認知速度と死亡重症率Pとの関係の一例を示す図である。図6は、横軸に二輪車MCの危険認知速度、縦軸に死亡重症率Pを示している。曲線W1は、MC Model 1によって算出された危険認知速度と死亡重症率Pとの関係の一例である。また、曲線W2は、MC Model 2によって算出された危険認知速度と死亡重症率Pとの関係の一例である。死亡重症率Pは、二輪車MCの危険認知速度の増加に伴い連続的に増加することがわかる。点PT1に示すように、MC Model 1では、二輪車MCの危険認知速度が10(km/h)の場合、死亡重症率Pは4.7%である。また、点PT2に示すように、MC Model 1では、二輪車MCの危険認知速度が50(km/h)の場合、死亡重症率Pは16.8%である。点PT3に示すように、MC Model 2では、二輪車MCの危険認知速度10(km/h)の場合、死亡重症率Pは8.5%である。また、点PT4に示すように、MC Model 2では、二輪車MCの危険認知速度が50(km/h)の場合、29.1%である。つまり、死亡重症率Pは、二輪車MCと四輪車FVとの衝突情報から算出するMC Model 2は、二輪車の衝突情報のみから算出するMC Model 1と比較して、1.3から1.8倍高く算出される。

【0046】
次に危険認知速度以外のリスクファクタが死亡重症率Pに与える影響を調査する。
図7から図10を参照して、衝突部位別、年齢別、ヘルメット着用有無別、排気量別の死亡重症率Pの一例を示す。
図7は、MC Model 2によって算出される、事故構成率が高い衝突部位上位3形態毎の危険認知速度と死亡重症率Pとの関係の一例を示す図である。図7は、横軸に二輪車MCの危険認知速度、縦軸に死亡重症率Pを示している。曲線W3は、二輪車MCの前面と四輪車FVの前面とが衝突する場合の、危険認知速度と死亡重症率Pとの関係の一例である。曲線W4は、二輪車MCの前面と四輪車FVの側面とが衝突する場合の危険認知速度と死亡重症率Pとの関係の一例である。曲線W5は、二輪車MCの側面と四輪車FVの前面とが衝突する場合の危険認知速度と死亡重症率Pとの関係の一例である。

【0047】
衝突部位上位3形態のうち、二輪車MCの前面と四輪車FVの前面とが衝突した事故形態が最も死亡重症率Pが高い。また、二輪車MCの側面と四輪車FVの前面とが衝突する事故形態も同様に高い死亡重症率Pを示した。点PT5に示すように、二輪車MCの危険認知速度50(km/h)で、二輪車MCの前面と四輪車FVの前面とが衝突する事故形態の場合には、死亡重症率Pは29.1%である。点PT6に示すように、二輪車MCの危険認知速度50(km/h)で、二輪車MCの前面と四輪車FVの側面とが衝突する事故形態の場合には、死亡重症率P20.5%である。二輪車MCの前面と四輪車FVの前面とが衝突する事故形態と、二輪車MCの前面と四輪車FVの側面とが衝突する事故形態とを比較すると、死亡重症率Pには8.6%の差が生じた。

【0048】
次に図8を参照して、MC Model 1及びMC Model 2から算出される乗員年齢別の死亡重症率Pの違いについて説明する。
図8は、乗員の年齢別の死亡重症率PをMC Model 1及びMC Model 2によって算出した一例を示す図である。
MC Model 1及びMC Model 2によって算出された死亡重症率Pは、共に乗員の加齢によって増加した。MC Model 1によって算出された、バーB3に示す16~54歳の死亡重症率Pと、バーB4に示す65歳以上の死亡重症率Pとの差は24.5%である。また、MC Model 2によって算出された、バーB5に示す16~54歳の死亡重症率Pと、バーB6に示す65歳以上の死亡重症率Pとの差は26.7%である。つまり、二輪車乗員の年齢が、死亡重症率Pに与える影響が大きいことがわかる。

【0049】
次に、図9を参照して、MC Model 1及びMC Model 2から算出されるヘルメット着用の有無による死亡重症率Pの違いについて説明する。
図9は、ヘルメット着用の有無別の死亡重症率PをMC Model 1及びMC Model 2によって算出した一例を示す図である。
MC Model 1及びMC Model 2によって算出された死亡重症率Pは、共にヘルメット非着用時の死亡重症率Pが高い。MC Model 1によって算出された、バーB7に示すヘルメット着用時の死亡重症率Pと、バーB8に示すヘルメット非着用時の死亡重症率Pとの差が、16.9%である。MC Model 2によって算出された、バーB9に示すヘルメット着用時の死亡重症率Pと、バー10に示すヘルメット非着用時の死亡重症率Pとの差が、13.3%である。

【0050】
次に、図10を参照して、MC Model 1及びMC Model 2から算出される二輪車MCの排気量の違いによる死亡重症率Pの違いについて説明する。
図10は、二輪車MCの排気量の違いによる死亡重症率PをMC Model 1及びMC Model 2によって算出した一例を示す図である。
MC Model 1及びMC Model 2によって算出された死亡重症率Pは、共に排気量401cc以上での死亡重症率Pが最大である。死亡重症率Pは、排気量126~400ccが最低である。MC Model 1によって算出された、バーB11に示す排気量126~400ccでの死亡重症率Pと、バーB12に示す排気量401cc以上での死亡重症率Pとの差は、4.2%である。MC Model 2によって算出された、バーB13に示す排気量126~400ccでの死亡重症率Pと、バーB14に示す排気量401ccでの死亡重症率Pとの差は、5.5%である。以上の事から、二輪車MCの排気量が、死亡重症率Pに及ぼす影響は小さいことがわかる。

【0051】
以上説明したように、二輪車MCの危険認知速度、二輪車乗員の年齢、ヘルメットの着用の有無が、二輪車乗員の死亡重症率Pに大きな影響を与えるリスクファクタである。一方で、他のリスクファクタと比較すると、二輪車MCの排気量のリスクファクタは、乗員の死亡重症率Pに与える影響は小さい。

【0052】
[予測アルゴリズムの評価方法]
次に、図11を参照して予測アルゴリズムの精度差を定量的に評価する。
図11は、評価によって分類される結果を示す図である。
予測アルゴリズムであるMC Model 1及びMC Model 2は、奇数年に発生した事故のデータにより構築される。構築されたMC Model 1及びMC Model 2に、偶数年に発生した事故のデータに適用してROC(Receiver Operating Characteristic)解析をおこなうことにより、予測アルゴリズムを評価する。事故データから得られる実際の事故によって生じた二輪車乗員の傷害状況と、予測アルゴリズムによって算出された死亡重症率Pの算出結果とを比較することにより、予測アルゴリズムの評価を行う。

【0053】
図11に示すように、死亡又は重傷した乗員を、死亡重傷(Serious injury)と正しく判定したTP、死亡重傷者を軽傷と誤判定(False Negative(Undertriage);アンダートリアージ)したFN、軽傷者(Minor injury)を死亡重傷と誤判定(False Positive(Overtriage);オーバートリアージ)したFP、軽傷者を軽傷と正しく判定したTN(True Negative)の4区分に分類する。ROC曲線とは、縦軸に「感度(Sensitivity)」、横軸に「1-特異度(Specificity)」とした曲線である。「感度」、「特異度」及び「1-特異度」は、TP、FN、FP、TNによって以下の通り定義される。
感度は、式(3)から算出される。

【0054】
【数3】
JP0006782896B2_000004t.gif

【0055】
特異度は、式(4)から算出される。

【0056】
【数4】
JP0006782896B2_000005t.gif

【0057】
1-特異度は、式(5)から算出される。

【0058】
【数5】
JP0006782896B2_000006t.gif

【0059】
ROC曲線の曲線下面積はAUC(Area Under Curve)と称される。AUCとは、予測アルゴリズムの精度が高いほど大きい値を示す指標である。AUCを比較することにより、予測アルゴリズムの精度を評価する。

【0060】
[AUCによる評価結果]
構築した二つの予測アルゴリズムのROC曲線とAUCとの解析結果について、図12を参照して説明する。
図12は、MC Model 1及びMC Model 2のROC曲線とAUCの一例を示す図である。
曲線W6は、MC Model 1のROC曲線を示す。曲線W7は、MC Model 2のROC曲線を示す。MC Model 1のAUCは0.668である。MC Model 2のAUCは0.710である。AUCによる評価指標は、AUCが0.5~0.7を低精度の予測モデル、AUCが0.7~0.9を中程度な予測モデル、AUCが0.9以上を高精度な予測モデルであることを示す。つまり、衝突した二輪車MCのリスクファクタに加え、四輪車FVの危険認知速度と衝突によって破損した部位の2つの情報が、予測アルゴリズムの精度に影響を及ぼしていることがわかる。そのため、MC Model 1と比較すると、MC Model 2の方が、二輪乗員の死亡重症率を精度よく算出できる予測アルゴリズムである。

【0061】
[自動通報のための通報閾値について]
予測アルゴリズムを用いて、事故が発生したことを自動通報する場合には、重傷軽傷の判定をするための閾値が必要である。事故によって二輪車乗員に生じる実際の傷害の程度と、予測アルゴリズムが算出した死亡重症率Pとの差異により、アンダートリアージ(UT)又はオーバートリアージ(OT)の誤判定が生じる。これらを比率で表したアンダートリアージ率(Undertriage rate)と、オーバートリアージ率(Overtriage rate)とが、式(6)及び式(7)によって定義できる。なお、式(6)及び式(7)中のTP、FN、FP、TNとは、図11にて示したものと同一である。

【0062】
【数6】
JP0006782896B2_000007t.gif

【0063】
式(6)から、アンダートリアージ率が算出できる。

【0064】
【数7】
JP0006782896B2_000008t.gif

【0065】
式(7)からオーバートリアージ率が算出できる。

【0066】
アンダートリアージ率とオーバートリアージ率とはトレードオフの関係にある。そのため、アンダートリアージ率とオーバートリアージ率との双方を満足する閾値を設定することは困難である。そこで、閾値の設定基準にはドイツの救命ガイドラインを引用し、アンダートリアージ率を10%以下に抑える閾値を通報閾値とする。アンダートリアージ率を10%以下に抑える閾値とは、例えば10人中9人は死亡重傷傷害を予測でも重傷と判定するが、1人は死亡重傷を軽症と誤判定することを容認する閾値である。閾値の算出には上述したROC解析と同様に、予測アルゴリズムの構築に用いていない偶数年の事故データを用いた。

【0067】
[通報閾値の決定]
図13から図14を参照して、アンダートリアージ率及びオーバートリアージ率と、閾値との関係について説明する。
図13は、MC Model 1から算出された死亡重症率Pに基づいて、アンダートリアージ率及びオーバートリアージ率と、閾値との関係を解析した結果の一例を示す図である。曲線W8は、MC Model 1から算出された死亡重症率Pのアンダートリアージ率と閾値(Threshold)との関係を示している。曲線W9は、MC Model 1から算出された死亡重症率Pのオーバートリアージ率と閾値との関係を示している。MC Model 1において、アンダートリアージ率を10%以下に抑える閾値は7.0%である。閾値が7.0%の場合、MC Model 1が算出する死亡重症率Pのアンダートリアージ率は9.9%、オーバートリアージ率は76.1%である。

【0068】
図14は、MC Model 2から算出された死亡重症率Pに基づいて、アンダートリアージ率及びオーバートリアージ率を解析した結果の一例を示す図である。曲線W10は、MC Model 2から算出された死亡重症率Pのアンダートリアージ率と閾値(Threshold)との関係を示している。曲線W11は、MC Model 2から算出された死亡重症率Pのオーバートリアージ率と閾値との関係を示している。MC Model 2において、アンダートリアージ率を10%以下に抑える閾値は6.4%である。閾値が6.4%の場合、MC Model 2が算出する死亡重症率Pのアンダートリアージ率は9.7%、オーバートリアージ率は69.3%である。
ここで、MC Model 2は、MC Model 1と比較して軽傷事故を重傷と誤判定するオーバートリアージ率が6.8%低い結果を示した。つまり、MC Model 2は、重傷者を10人中9人以上重傷と予測しつつ、MC Model 1よりも軽傷者を軽傷と予測できる死亡重症率Pを算出できる。

【0069】
[二輪車と四輪車との危険認知速度に基づく通報判定]
次に、図15から図17を参照して、二輪車MCの危険認知速度と四輪車FVの危険認知速度とに基づく、通報判定について説明する。
以下の説明では、二輪車MC及び四輪車FVの危険認知速度とMC Model 2に基づいて算出される死亡重症率Pとの関係について説明する。また、以下の説明では、二輪車MCの乗員年齢が16~54歳、ヘルメットは着用した状態及び二輪車MCの排気量を126~400ccを共通のリスクファクタとする。

【0070】
図15は、二輪車MC前面と四輪車FV前面との衝突状態での、二輪車MCの危険認知速度と四輪車FVの危険認知速度とから算出される死亡重症率Pの一例を示す図である。図15には、横軸に二輪車MCの危険認知速度と、縦軸に四輪車FVの危険認知速度とをもつグラフである。式(8)に、死亡重症率Pを代入することによって、死亡重症率Pを表す直線を算出できる。

【0071】
【数8】
JP0006782896B2_000009t.gif

【0072】
MC Model 2のアンダートリアージ10%の閾値は6.4%であるため、図15に示す二輪車MC前面と四輪車FV前面との衝突形態では、二輪車MCの危険認知速度25(km/h)と、四輪車FVの危険認知速度27(km/h)とを結ぶ線L1を越える領域SA1に該当する衝突情報が出力される。出力された衝突情報を、救命指令センター等で受信し、受信した衝突情報に基づいて救命活動を実行すればよい。

【0073】
図16は、二輪車MC前面と四輪車FV側面との衝突状態での、二輪車MCの危険認知速度と四輪車FVの危険認知速度とから算出される死亡重症率Pの一例を示す図である。
図16には、横軸に二輪車MCの危険認知速度と、縦軸に四輪車FVの危険認知速度とをもつグラフである。式(9)に、死亡重症率Pを代入することによって、死亡重症率Pを表す直線を算出できる。

【0074】
【数9】
JP0006782896B2_000010t.gif

【0075】
MC Model 2のアンダートリアージ10%の閾値は6.4%であるため、図16に示す、二輪車MC前面と四輪車FV側面との衝突形態では、二輪車MCの危険認知速度38(km/h)と、四輪車FVの危険認知速度40(km/h)とを結ぶ線L2を超える領域SA2に該当する衝突情報が出力される。

【0076】
図17は、二輪車MC側面と四輪車FV前面との衝突状態での、二輪車MCの危険認知速度と四輪車FVの危険認知速度とから算出される死亡重症率Pの一例を示す図である。
図17には、横軸に二輪車MCの危険認知速度と、縦軸に四輪車FVの危険認知速度とをもつグラフである。式(10)に、死亡重症率Pを代入することによって、死亡重症率Pを表す直線を算出できる。

【0077】
【数10】
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【0078】
MC Model 2のアンダートリアージ10%の閾値は6.4%であるため、図17に示す、二輪車MC側面と四輪車FV前面との衝突形態では、二輪車MCの危険認知速度29(km/h)と、四輪車FVの危険認知速度30(km/h)とを結ぶ線L3を超える領域SA3に該当する衝突情報が出力される。

【0079】
上述した説明と同様に、危険認知速度以外の他のリスクファクタの適用項目を変えた式から、二輪車MCの危険認知速度と、四輪車FVの危険認知速度とに基づく死亡重症率Pを示すグラフを作成できる。危険認知速度以外の他のリスクファクタに応じた、二輪車MCの危険認知速度と、四輪車FVの危険認知速度とに基づく死亡重症率Pを示すグラフを複数用意すればよい。もしくは、危険認知速度以外のリスクファクタのうち、危険認知速度以外の不明な情報がある場合には、死亡重症率Pが最も高く算出されるような他のリスクファクタの適用項目を設定した式を用いればよい。具体的には、二輪車MCの危険認知速度以外のリスクファクタが不明な場合には、二輪車MCの衝突形態を前面の衝突、乗員の年齢を65歳以上の年齢、ヘルメットは不使用、二輪車MCの排気量を401cc以上、四輪車FVの衝突部位を前面と設定した式に、二輪車MCの危険認知速度と、四輪車FVの危険認知速度とを代入し、死亡重症率Pを算出すればよい。

【0080】
また、MC Model 1の場合も、同様に危険認知速度に基づいて通報判定をすることができる。この場合は、上述した説明と同様に、予め二輪車MCの危険認知速度以外のリスクファクタを算出した式を作っておき、算出した式に衝突した二輪車MCの危険認知速度を当てはめればよい。

【0081】
以上、二輪車MCと四輪車FVと衝突時に得られる各リスクファクタの情報に基づいて、当該二輪車MCに搭乗する乗員の当該衝突による傷害の危険度を算出する傷害予測アルゴリズムの構築方法と、構築した傷害予測アルゴリズムの検証方法及び傷害予測アルゴリズムから算出される死亡重症率Pに基づいて通報する通報閾値の決定方法について説明した。二輪車MCと四輪車FV以外の種類の車両についても、上述した説明と同様の方法で傷害予測アルゴリズムを構築し、構築した傷害予測アルゴリズムの検証及び傷害予測アルゴリズムから算出される死亡重症率Pに基づいて通報する通報閾値を決定することができる。

【0082】
[実施形態1の構成]
ここまでは、傷害予測アルゴリズムの構築方法、検証方法及び通報閾値の決定方法について説明した。次に、図18を参照して、上述した傷害予測アルゴリズムを、実施するための構成の一例について説明する。
図18は、実施形態1に係る危険度算出装置1の構成の一例を示す図である。

【0083】
二輪車MCは、二輪車衝突時速度情報MIを出力する。なお、二輪車衝突時速度情報MIは、当該衝突に応じて出力される情報であってもよい。二輪車衝突時速度情報MIとは、二輪車MCが備えるドライブレコーダーなどが記録する二輪車MCの速度情報である。二輪車MCは、二輪車衝突時速度情報MIを、二輪車MCの車両が備える通信機器や、二輪車MCの乗員が所持する携帯電話などの通信機器を介し、危険度算出装置1に対して出力する。二輪車衝突時速度情報MIには、二輪車MCが衝突を検出した時点よりも前の速度情報が含まれていてもよい。二輪車衝突時速度情報MIは、二輪車MCが衝突を検出した時点の二輪車MCの速度や、二輪車MCに搭乗する乗員が、衝突を回避しようと衝突回避行動を取りはじめた時点の二輪車MCの速度である。なお、二輪車衝突時速度情報MIは、道路の道路状況を監視するカメラやレーダーなどを備える電柱などに備えられる監視装置(不図示)が監視する監視領域中での二輪車MCの衝突を検出した場合に、二輪車MCの速度情報を出力するようにしてもよい。

【0084】
危険度算出装置1は、危険度算出部10を備える。
危険度算出部10は、二輪車MCの衝突時の速度を示す二輪車衝突時速度情報MIに基づいて、当該二輪車MCに搭乗する乗員の当該衝突による傷害の危険度(死亡重症率P)SPを算出する。具体的には、危険度算出部10は、二輪車衝突時速度情報MIを危険認知速度として、MC Model 1に基づいて、乗員の危険度SPを算出する。危険度算出装置1は、消防署、医療機関、救急車、警察署、事故情報研究機関などの事故に対応する機関に設置される。危険度算出装置1は、危険度算出装置1は、危険度算出部10が算出する危険度SPを、表示部2に対して出力する。
表示部2は、危険度算出装置1から危険度SPを取得し、危険度SPを表示する。

【0085】
[実施形態1に係る危険度算出装置1の動作の概要]
次に、実施形態1に係る危険度算出装置1の動作の一例について説明する。
二輪車衝突時速度情報MIを取得した危険度算出部10は、傷害予測アルゴリズムMC Model 1に基づく危険認知速度による危険度SPを算出する。危険度算出部10は、二輪車衝突時速度情報MIを出力した二輪車MCに搭乗する乗員の危険度SPを算出する。具体的には、MC Model 1の速度以外の各リスクファクタのうち不明な情報は、危険度SPが他のリスクファクタよりも高く算出されるリスクファクタとして、又は過去の事故事例での頻度が最も高い頻度で発生した条件をリスクファクタとして適用させて算出する。算出危険度算出部10は、算出した危険度SPを表示部2に対して出力し表示させる。

【0086】
以上説明したように、危険度算出装置1は、危険度算出部10を備える。危険度算出部10は、衝突を検出した二輪車MCから出力される二輪車衝突時速度情報MIを取得する。これにより、危険度算出装置1は、取得した二輪車衝突時速度情報MIを、MC Model 1に適用することにより、衝突した二輪車MCの乗員の傷害の危険度SPを算出することができる。なお、二輪車衝突時速度情報MIが、当該衝突に応じて出力される情報でない場合には、危険度算出装置1が算出する危険度SPは、過去の事故事例の解析や検証などに使用することができる。

【0087】
[実施形態2に係る構成の一例]
次に、図19を参照して実施形態2に係る危険度算出装置1aの構成の一例について説明する。なお、実施形態1と同様の構成及び動作については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図19は、実施形態2に係る危険度算出装置1aの構成の一例を示す図である。

【0088】
二輪車MCaは、衝突に応じて二輪車衝突時速度情報MIと衝突状況情報CIとを出力する。衝突状況情報CIとは、衝突の状況を示し当該状況に応じた複数段階の危険度が割り当てられた、二輪車衝突時速度情報MI以外の各リスクファクタのことである。各リスクファクタとは、衝突形態を示す情報、二輪車MCaに搭乗する乗員の年齢を示す情報、二輪車MCaに搭乗する乗員がヘルメットを着用しているか否かを示す情報及び二輪車MCaの排気量を示す情報である。情報衝突状況情報CIは、二輪車MCaが備えるドライブレコーダーなどに予め設定されていてもよく、二輪車MCaが検出した情報を衝突状況情報CIとしてもよい。具体的には、二輪車MCaの衝突形態を示す情報は、二輪車MCaが二輪車MCaの前面、側面及び後面にそれぞれ備える衝撃検出センサー(不図示)などが衝突を検出した箇所を衝突形態の情報としてもよい。また、衝突時の状態を撮影した画像などから、二輪車MCaの衝突形態を解析し、衝突形態を示す情報としてもよい。
二輪車MCaは、二輪車衝突時速度情報MI及び衝突状況情報CIを、二輪車MCaの車両が備える通信機器や、二輪車MCaの乗員が携帯する携帯電話などの通信機器を介して、二輪車衝突時速度情報MIを危険度算出装置1に対して出力する。なお、衝突状況情報CIは、道路の道路状況を監視するカメラやレーダーなどを備える電柱などに備えられる監視装置(不図示)が監視する監視領域中での二輪車MCaの衝突を検出した場合に、得られたカメラやレーダーからの情報を解析し、解析によって得られた情報を衝突状況情報CIとしてもよい。
危険度算出装置1aは危険度算出部10aを備える。
危険度算出部10aは、衝突状況情報CIに更に基づいて危険度SPを算出する。なお、危険度算出部10aは、衝突状況情報CIを取得できない場合には当該衝突状況情報CIに割り当てられている危険度のうち最も高い段階の危険度を、当該衝突状況情報CIに基づいて算出される危険度として算出してもよい。

【0089】
[実施形態2に係る危険度算出装置1aの動作の概要]
次に、実施形態2に係る危険度算出装置1aの動作の一例について説明する。
二輪車衝突時速度情報MI及び衝突状況情報CIを取得した危険度算出部10aは、傷害予測アルゴリズムMC Model 1を用いて、二輪車衝突時速度情報MI及び他のリスクファクタに基づく危険度SPを算出する。危険度算出部10aは、衝突状況情報CIを取得できない場合には当該衝突状況情報CIに割り当てられている危険度のうち最も高い段階の危険度を、当該衝突状況情報CIに基づいて算出される危険度として算出してもよい。算出危険度算出部10aは、算出した危険度SPを表示部2に対して出力し表示させる。

【0090】
以上説明したように、危険度算出装置1aは、危険度算出部10aを備える。危険度算出部10aは、衝突を検出した二輪車MCaから出力される二輪車衝突時速度情報MI及び衝突の状況を示し当該状況に応じた複数段階の危険度が割り当てられている衝突状況情報CIを取得する。これにより、危険度算出装置1aは、取得した二輪車衝突時速度情報MIと衝突状況情報CIとを、MC Model 1に適用することにより、衝突した二輪車MCの乗員の傷害の危険度SPを、実施形態1と比べてより正確に算出することができる。また、危険度算出部10aは、衝突状況情報CIを取得できない場合には当該衝突状況情報CIに割り当てられている危険度のうち最も高い段階の危険度を、当該衝突状況情報CIに基づいて算出される危険度として算出する。これにより、危険度算出装置1aは、衝突状況情報CIのうち不明な情報がある場合には、危険度SPを高く算出することができ、二輪車MCaに搭乗する乗員の救命率を高めることができる。

【0091】
[実施形態3に係る構成の一例]
次に、図20を参照して、実施形態3に係る危険度算出装置1bの構成の一例について説明する。なお、実施形態1及び実施形態2と同様の構成及び動作については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図20は、実施形態3に係る危険度算出装置1bの構成の一例を示す図である。

【0092】
二輪車MCbは、二輪車衝突時速度情報MIと衝突状況情報CIとを出力する。二輪車MCbは、更に、位置情報PIを出力する。位置情報PIとは、二輪車MCbが衝突を検出した時点の位置の情報を示す情報である。位置情報PIは、二輪車衝突時速度情報MI又は衝突状況情報CIを出力する装置の位置を示す位置情報であってもよい。具体的には、位置情報PIは、二輪車MCbが備えるGPS(Global Positioning System)などから得られる位置の情報である。

【0093】
危険度算出装置1bは危険度算出部10bと、出力判定部11と、衝突情報出力部12とを備える。
危険度算出部10bは、二輪車衝突時速度情報MIに基づいて危険度SPを算出する。危険度算出部10bは、衝突状況情報CIに更に基づいて危険度SPを算出してもよい。危険度算出部10bは、算出した危険度SPを出力する。

【0094】
出力判定部11は、危険度算出部10bが算出する危険度SPと、予め定められた危険度の基準とに基づいて、衝突の状況を示す衝突情報MCIを出力するか否かを判定する。出力判定部11は、判定した結果を出力する。衝突情報MCIとは、危険度SPと位置情報PIとが含まれた情報である。予め定められた危険度の基準とは、通報するか否かを判定する基準である。具体的には、危険度の基準とは、アンダートリアージ率を10%以下に抑える通報閾値のことである。より具体的には、危険度算出部がMC Model 1を適用して危険度SPを算出する場合には、危険度の基準は7.0である。つまり、MC Model 1を適用した結果、算出される危険度SPが7.0以上の場合、出力判定部11は衝突情報MCIを出力すると判定する。危険度算出部がMC Model 2を適用して危険度SPを算出する場合には、危険度の基準は6.4である。つまり、MC Model 2を適用した結果、算出される危険度SPが6.4以上の場合、出力判定部11は衝突情報MCIを出力すると判定する。

【0095】
衝突情報出力部12は、出力判定部11が判定した結果に基づいて、衝突情報MCIを出力する。
消防署・病院PFは、衝突情報MCIを取得する。消防署・病院PFは、危険度算出装置1bから出力される衝突情報MCIに基づいて、衝突した二輪車MCbに搭乗する乗員の救助に向かう。なお、危険度SPの程度に応じた、乗員の傷害に対応できる病院を変えてもよい。なお、消防署・病院PFは一例であって、衝突情報MCIを取得する機関はこれに限られない。

【0096】
[実施形態3に係る危険度算出装置1bの動作の概要]
次に、図21を参照して、実施形態3に係る危険度算出装置1bの動作の一例について説明する。
図21は、実施形態3に係る危険度算出装置1bの動作の一例を示す流れ図である。
危険度算出装置1bは、二輪車衝突時速度情報MI及び衝突状況情報CIと、位置情報PIとを取得する(ステップS110)。危険度算出部10bは、傷害予測アルゴリズムMC Model 1を用いて、二輪車衝突時速度情報MI及び衝突状況情報CIに含まれる他のリスクファクタに基づく危険度SPを算出する。危険度算出部10bは、算出した危険度SPを出力する(ステップS120)。出力判定部11は、危険度算出部10bから危険度SPを取得する。出力判定部11は、取得した危険度SPと、予め定められた基準とを比較する(ステップS130)。危険度算出装置1bは、危険度SPが予め定められた基準よりも大きい場合(ステップS130;YES)には、衝突情報出力部12から衝突情報MCIを出力する(ステップS140)。危険度算出装置1bは、危険度SPが予め定められた基準よりも小さい場合(ステップS130;NO)には、衝突情報MCIを出力せず処理を終了する。

【0097】
以上説明したように、危険度算出装置1bは、危険度算出部10bと、出力判定部11と、衝突情報出力部12とを備える。危険度算出装置1bは、衝突を検出した二輪車MCbから出力される二輪車衝突時速度情報MIと、衝突状況情報CIと、位置情報PIとを取得する。危険度算出部10bは、二輪車衝突時速度情報MIと衝突状況情報CIとに基づいて、危険度SPを算出する。出力判定部11は、危険度SPを取得する。出力判定部11は、取得した危険度SPと、予め定められた基準とを比較し、衝突情報MCIを出力するか否かを判定する。衝突情報出力部12は、出力判定部11が判定した結果に基づいて、衝突情報MCIを出力する。これにより、危険度算出装置1bは、算出された危険度SPの程度に応じて衝突情報MCIを出力するか否かを判断することができ、二輪車MCbに搭乗する乗員の救助に必要な情報を適切に出力することができる。消防署・病院PFなどの、乗員の救助にあたる機関は、位置情報PIに基づいて救助する場所を知ることができ、また、危険度SPに基づいて対応に必要な施設を有する病院の判断基準とすることができる。

【0098】
[実施形態4に係る構成の一例]
ここまでは、危険度算出装置1(危険度算出装置1a,危険度算出装置1b)が二輪車MC(二輪車MCa,二輪車MCb)から出力される情報に基づいて、危険度SPを算出する構成について説明した。
次に、図22を参照して、実施形態4に係る危険度算出装置1cの構成の一例について説明する。なお、実施形態1、実施形態2及び実施形態3と同様の構成及び動作については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図22は、実施形態4に係る危険度算出装置1cの構成の一例を示す図である。

【0099】
車両VCは、車両衝突時速度情報VIと車両衝突状況情報VCIとを出力する。車両衝突時速度情報VIとは、車両VCが備えるドライブレコーダーなどが記録する車両VCの速度情報である。検出車両衝突時速度情報VIは、車両VCと他の車両との衝突に応じて出力される情報であってもよい。車両衝突状況情報VCIとは、車両VCのリスクファクタである。具体的には、車両衝突状況情報VCIとは、車両VCが衝突した衝突形態を示す情報である。より具体的には、車両VCの衝突形態を示す情報とは、車両VCが前面、側面及び後面にそれぞれ備える衝撃検出センサー(不図示)などが衝突を検出した箇所を衝突形態とする情報である。また、車両衝突状況情報VCIは、二輪車MCbと車両VCとの衝突時の状態を撮影した画像などから車両VCの衝突形態を解析し、解析した結果を、衝突形態を示す情報としてもよい。
また、車両VCは、衝突を検出した位置を示す情報を、位置情報PI2として更に出力する。位置情報PI2は、車両VCが衝突を検出した時点の位置の情報を示す情報である。位置情報PI2は、車両衝突時速度情報VI又は衝突情報MCIを出力する装置の位置を示す位置情報であってもよい。具体的には、位置情報PI2は、車両VCが備えるGPS(Global Positioning System)などから得られる位置の情報である。
車両VCは、車両衝突時速度情報VI、車両衝突状況情報VCI及び位置情報PI2を、車両VCが備える通信機器や、車両VCの乗員が所持する携帯電話などの通信機器を介し、危険度算出装置1cに対して出力する。以下の説明では、車両VCを、四輪車FVとして説明する。

【0100】
危険度算出装置1cは、危険度算出部10cと、出力判定部11と、衝突情報出力部12と、対応付部13とを備える。
対応付部13は、二輪車MCbの衝突時の位置を示す情報と、他の車両の衝突時の位置を示す情報とに基づいて、二輪車衝突時速度情報MIと車両衝突時速度情報VIとを対応付けて出力する。具体的には、対応付部13は、二輪車衝突時速度情報MIと、衝突状況情報CIと、位置情報PIと、車両衝突時速度情報VIと、車両衝突状況情報VCIと、位置情報PI2とを取得する。対応付部13は、位置情報PIと、位置情報PI2と、位置情報PIを取得した時刻の情報と、位置情報PI2を取得した時刻の情報とに基づいて、二輪車衝突時速度情報MI及び衝突状況情報CIと、車両衝突時速度情報VI及び車両衝突状況情報VCIとを対応付ける。対応付部13は、対応付けた二輪車衝突時速度情報MI及び衝突状況情報CIと、車両衝突時速度情報VI及び車両衝突状況情報VCIとを出力する。なお、時刻の情報は、衝突時の時刻が判ればよく、二輪車MCb及び車両VCから衝突時の時刻の情報が出力されてもよい。なお、対応付部13は、二輪車衝突時速度情報MIと対応付けられる車両衝突時速度情報VIがない場合には、二輪車衝突時速度情報MIのみを出力する。この場合、危険度算出部10cは、MC Model 1を適用して危険度SPを算出する。

【0101】
危険度算出部10cは、対応付けられた二輪車衝突時速度情報MIと、車両衝突時速度情報VI(車両の危険認知速度)とを取得する。危険度算出部10cは、対応付けられた二輪車衝突時速度情報MIと、車両衝突時速度情報VIとに基づいて、危険度SPを算出する。危険度算出部10cは、更に、対応付けられた衝突状況情報CIと、車両衝突状況情報VCIとに基づいて、危険度SPを算出してもよい。つまり、危険度算出部10cは、他の車両の衝突箇所を示す情報に更に基づいて、危険度を算出する。具体的には、危険度算出部10cは、対応付けられた二輪車衝突時速度情報MIと、車両衝突時速度情報VIとを、MC Model 2に適用することによって、危険度SPを算出する。危険度算出部10cは、衝突状況情報CI及び車両衝突状況情報VCIに含まれるリスクファクタのうち不足したリスクファクタについて、危険度SPが高くなるように補ってもよい。また、危険度算出部10cは、不足したリスクファクタについて、頻度が高い事例に基づいて補ってもよい。

【0102】
[実施形態4に係る危険度算出装置1cの動作の概要]
次に、図23を参照して、実施形態4に係る危険度算出装置1cの動作の一例について説明する。
図23は、実施形態4に係る危険度算出装置1cの動作の一例を示す流れ図である。
危険度算出装置1cは、二輪車衝突時速度情報MI及び衝突状況情報CIと、位置情報PIとを取得する(ステップS210)。危険度算出装置1cは、車両衝突時速度情報VI及び車両衝突状況情報VCIと、位置情報PI2とを取得する(ステップS220)。対応付部13は、取得した位置情報PIと位置情報PI2と、これらの情報を取得した時刻の情報とに基づいて、二輪車衝突時速度情報MIと車両衝突時速度情報VIとを対応付ける。対応付部13は、更に、衝突状況情報CIと車両衝突状況情報VCIとを対応付けてもよい(ステップS230)。危険度算出部10cは、傷害予測アルゴリズムMC Model 2を用いて、二輪車衝突時速度情報MI及び衝突状況情報CIと、車両衝突時速度情報VI及び車両衝突状況情報VCIとに基づいて危険度SPを算出する。危険度算出部10bは、算出した危険度SPを出力する(ステップS240)。出力判定部11は、危険度算出部10cから危険度SPを取得する。出力判定部11は、取得した危険度SPと、予め定められた基準とを比較する(ステップS250)。危険度算出装置1cは、危険度SPが予め定められた基準よりも大きい場合(ステップS250;YES)には、衝突情報出力部12から衝突情報MCIを出力する(ステップS260)。危険度算出装置1bは、危険度SPが予め定められた基準よりも小さい場合(ステップS250;NO)には、衝突情報MCIを出力せず処理を終了する。

【0103】
以上説明したように、危険度算出装置1cは、対応付部13を備える。危険度算出装置1cは、二輪車衝突時速度情報MI及び衝突状況情報CIと、車両衝突時速度情報VI及び車両衝突状況情報VCIと、位置情報PI及び位置情報PI2とを取得する。これにより、危険度算出装置1cは、位置情報PIと位置情報PI2と、これらの情報を取得した時刻の情報とに基づいて、衝突した二輪車MCbと、車両VCとから出力される二輪車衝突時速度情報MI及び衝突状況情報CIと、車両衝突時速度情報VI及び車両衝突状況情報VCIとを対応付けることができる。危険度算出装置1cは、危険度算出部10cを備える。これにより、危険度算出装置1cは、MC Model 2を適用し、MC Model 1よりも精度の高い危険度SPを算出することができる。また、危険度算出装置1cは、出力判定部11と衝突情報出力部12とを備える。これにより、危険度算出装置1cは、MC Model 2を適用して算出された精度の高い危険度SPに基づいて、衝突した二輪車MCbに搭乗する乗員の傷害を予測し、予測結果に基づいて、乗員を救助する機関などに通報し、乗員の救助を求めることが出来る。

【0104】
以上、本発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。

【0105】
なお、以上に説明した危険度算出装置1(危険度算出装置1a,危険度算出装置1b,危険度算出装置1c)における任意の構成部の機能を実現するためのプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体(記憶媒体)に記録(記憶)し、そのプログラムをコンピュータシステムに読み込ませて実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、オペレーティングシステム(OS:Operating System)あるいは周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、CD(Compact Disc)-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークあるいは電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバーやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリー(RAM:Random Access Memory)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。

【0106】
また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)あるいは電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0107】
1,1a,1b,1c…危険度算出装置、2…表示部、10,10a,10b,10c…危険度算出部、11…出力判定部、12…衝突情報出力部、13…対応付部、MC,MCa,MCb…二輪車、FV…四輪車、VC…車両
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
19
【図21】
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【図22】
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【図23】
22