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明細書 :ペプチド及びその使用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6828871号 (P6828871)
公開番号 特開2017-210427 (P2017-210427A)
登録日 令和3年1月25日(2021.1.25)
発行日 令和3年2月10日(2021.2.10)
公開日 平成29年11月30日(2017.11.30)
発明の名称または考案の名称 ペプチド及びその使用
国際特許分類 C07K  14/35        (2006.01)
A61K  39/04        (2006.01)
A61P  31/08        (2006.01)
A61P  31/06        (2006.01)
A61P  31/04        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
FI C07K 14/35 ZNA
A61K 39/04
A61P 31/08
A61P 31/06
A61P 31/04
A61P 43/00 121
請求項の数または発明の数 6
全頁数 18
出願番号 特願2016-103744 (P2016-103744)
出願日 平成28年5月24日(2016.5.24)
審査請求日 令和元年5月22日(2019.5.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】相澤 志保子
【氏名】本多 三男
【氏名】早川 智
個別代理人の代理人 【識別番号】100161207、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 和純
【識別番号】100126882、【弁理士】、【氏名又は名称】五十嵐 光永
【識別番号】100175824、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 淳一
【識別番号】100064908、【弁理士】、【氏名又は名称】志賀 正武
審査官 【審査官】松原 寛子
参考文献・文献 国際公開第01/070991(WO,A1)
特開2007-023044(JP,A)
Infection and immunity,2002年,Vol.70,p.1623-1626
調査した分野 C07K 14/35
A61K 39/04
A61P 31/04
A61P 31/06
A61P 31/08
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
配列番号3、4、5、7、8、9又は10に記載のアミノ酸配列からなるペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載のペプチド及び薬学的に許容される担体を含有する、マイコバクテリウム・ツベルクローシス、マイコバクテリウム・カンサシイ又はマイコバクテリウム・レプラエが原因菌である感染症に対するペプチドワクチン組成物。
【請求項3】
配列番号12に記載のアミノ酸配列の、第241~255番目のアミノ酸からなるペプチド、第261~275番目のアミノ酸からなるペプチド、又は、第266~280番目のアミノ酸からなるペプチドを更に含有する、請求項2に記載のペプチドワクチン組成物。
【請求項4】
マイコバクテリウム・ツベルクローシスが原因菌である結核ワクチンである、請求項2又は3に記載のペプチドワクチン組成物。
【請求項5】
マイコバクテリウム・カンサシイが原因菌である非結核性抗酸菌症ワクチンである、請求項2又は3に記載のペプチドワクチン組成物。
【請求項6】
マイコバクテリウム・レプラエが原因菌であるハンセン病ワクチンである、請求項2又は3に記載のペプチドワクチン組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチド及びその使用に関する。より具体的には、ペプチド、抗酸菌症ペプチドワクチン組成物、及びワクチンの評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
結核や非結核性抗酸菌症は、抗酸菌を原因菌とする感染症である。結核は、古代から現代に至るまで人類の健康を脅かしている。また、近年、非結核性抗酸菌症患者が世界的に増加し問題となっている。現在、結核ワクチンとしては、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)ワクチンが広く用いられている。しかしながら、BCGワクチンは、乳幼児結核と結核性髄膜炎の予防効果は認められているものの、成人の肺結核予防効果に関しては否定的な見解が存在する(例えば、非特許文献1を参照)。また、非結核性抗酸菌症を予防する有効なワクチンは存在しないのが実情である。このため、結核をはじめとする抗酸菌症に対するより効果的なワクチンが求められている。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】Andersen P., Tuberculosis vaccines - an update., Nat. Rev. Microbiol., 5(7), 484-7, 2007.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば結核菌のような細胞内寄生菌に対する感染防御には、細胞性免疫が重要である。これに対し、発明者らは、BCGワクチンによる免疫によって活性化される抗原特異的T細胞は、主にCD4陽性T細胞(ヘルパーT細胞)であり、細胞性免疫に重要なCD8陽性T細胞(細胞傷害性T細胞)はほとんど活性化されないことを見出した。
【0005】
そこで、本発明は、病原微生物由来抗原特異的CD8陽性T細胞を活性化することができるペプチドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の通りである。
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列の第61~70番目のアミノ酸を含む9~50アミノ酸からなるペプチド、又は、前記ペプチドにおいて1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、多能性のCD8陽性T細胞の活性化能を有するペプチド。
(2)(1)に記載のペプチド及び薬学的に許容される担体を含有する、抗酸菌症ペプチドワクチン組成物。
(3)抗酸菌に対するCD4陽性T細胞の活性化能を有するペプチドを更に含有する、(2)に記載の抗酸菌症ペプチドワクチン組成物。
(4)抗酸菌に対するCD4陽性T細胞を活性化する前記ペプチドが、配列番号1に記載のアミノ酸配列の第241~255番目のアミノ酸を含む9~50アミノ酸からなるペプチド、又は、前記ペプチドにおいて1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、CD4陽性T細胞の活性化能を有するペプチドである、(3)に記載の抗酸菌症ペプチドワクチン組成物。
(5)結核ワクチンである、(2)~(4)のいずれか一項に記載の抗酸菌症ペプチドワクチン組成物。
(6)非結核性抗酸菌症ワクチンである、(2)~(5)のいずれか一項に記載の抗酸菌症ペプチドワクチン組成物。
(7)ハンセン病ワクチンである、請求項2~6のいずれか一項に記載の抗酸菌症ペプチドワクチン組成物。
(8)MHC遺伝子座がヘテロ接合性である非ヒト動物にワクチンを投与する工程と、前記非ヒト動物におけるCD4陽性T細胞又はCD8陽性T細胞の活性化を評価する工程と、を備える、前記ワクチンの評価方法。
(9)前記非ヒト動物が、C57BL/6マウスとBALB/cマウスとの雑種第1代マウスである、(8)に記載のワクチンの評価方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、病原微生物由来抗原特異的CD8陽性T細胞を活性化することができるペプチドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実験例1におけるフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。
【図2】(a)は、実験例1において、各サイトカインを産生するCD4陽性T細胞の存在割合を示すグラフである。(b)は、実験例1において、各サイトカインを産生するCD8陽性T細胞の存在割合を示すグラフである。
【図3】(a)は、実験例1において、各サイトカインを産生するCD4陽性T細胞を更に詳細に解析した結果を示すグラフである。(b)は、(a)の結果を円グラフにしたものである。
【図4】(a)~(d)は、実験例3におけるフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。
【図5】(a)及び(b)は、実験例4におけるBALB/cマウスのT細胞エピトープマッピングの結果をまとめたグラフである。(c)及び(d)は、実験例4におけるC57BL/6JマウスのT細胞エピトープマッピングの結果をまとめたグラフである。
【図6】実験例4におけるBALB/cマウスのT細胞エピトープマッピングの結果をまとめたグラフである。
【図7】実験例5におけるフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。
【図8】実験例6において、CD8陽性T細胞における多能性のCD8陽性T細胞の割合を示すグラフである。
【図9】実験例7において、多能性のCD8陽性T細胞におけるCD107a/b陽性T細胞の割合を示すグラフである。
【図10】実験例8において、各ペプチドで抗原刺激した脾臓細胞中の、CD8陽性T細胞に対する多能性のCD8陽性T細胞の割合を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[ペプチド]
1実施形態において、本発明は、配列番号1に記載のアミノ酸配列の第61~70番目のアミノ酸を含む9~50アミノ酸からなるペプチド、又は、前記ペプチドにおいて1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、多能性のCD8陽性T細胞の活性化能を有するペプチドを提供する。

【0010】
配列番号1に記載のアミノ酸配列は、抗酸菌の一種であるマイコバクテリウム・カンサシイのAg85Bタンパク質のアミノ酸配列である。実施例において後述するように、本実施形態のペプチドは、T細胞エピトープペプチドであり、抗酸菌由来抗原に対する多能性のCD8陽性T細胞の活性化能を有する。

【0011】
本実施形態のペプチドにおいて、1若しくは数個は、例えば1~4個であってもよく、例えば1~3個であってもよく、例えば1~2個であってもよい。また、本実施形態のペプチドの長さは、9~50アミノ酸であり、9~40アミノ酸であってもよく、9~30アミノ酸であってもよく、9~20アミノ酸であってもよく、9~10アミノ酸であってもよい。本実施形態のペプチドのより具体的な例としては、配列番号3~5、7~10に記載のアミノ酸配列からなるペプチドが挙げられる。実施例において後述するように、これらのペプチドは、多能性のCD8陽性T細胞を誘導することが確認されている。本実施形態のペプチドは、例えば化学合成により合成することができる。

【0012】
本明細書において、多能性(多機能性)のT細胞とは、1個の細胞が複数のサイトカインを産生する能力を有する細胞を意味する。サイトカインとしては、例えば、腫瘍壊死因子(TNF)-α、インターフェロン(IFN)-γ、インターロイキン(IL)-2、マクロファージ炎症性タンパク質(MIP)-1α等が挙げられる。

【0013】
また、本明細書において、多能性のCD8陽性T細胞の活性化能とは、生体に投与した場合、又は生体由来の血球細胞に接触させた場合に、多能性のCD8陽性T細胞を誘導する活性を意味する。多能性のT細胞は感染防御能に優れているため、多能性のCD8陽性T細胞を活性化することにより、高い感染防御能を付与することができる。

【0014】
[抗酸菌症ペプチドワクチン組成物]
1実施形態において、本発明は、上述したペプチド及び薬学的に許容される担体を含有する、抗酸菌症ペプチドワクチン組成物を提供する。

【0015】
薬学的に許容される担体としては、通常ワクチン組成物に添加されるものであれば特に制限されず、例えばアジュバント、注射剤用溶媒、安定剤、pH調整剤等が挙げられる。アジュバントとしては、例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、塩化アルミニウム、乳化した軽質流動パラフィン等が挙げられる。また、注射剤用溶媒としては、例えば、水、エタノール、グリセリン等が挙げられる。また、安定剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラヒドロキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール等のアルコール類;フェノール、クレゾール等のフェノール類が挙げられる。また、pH調整剤としては、例えば、フタル酸、リン酸、クエン酸、コハク酸、酢酸、フマル酸、リンゴ酸、炭酸、又はこれらのカリウム塩、ナトリウム塩若しくはアンモニウム塩;水酸化ナトリウム等が挙げられる。

【0016】
実施例において後述するように、本実施形態の抗酸菌症ペプチドワクチン組成物を生体に投与することにより、多能性のCD8陽性T細胞を誘導し、抗酸菌症の感染を効果的に予防することができる。

【0017】
ヒトにおける抗酸菌症ペプチドワクチン組成物の投与量は、例えば、投与単位形態あたり0.05~0.1mgの有効成分(上述したペプチド)を含有する量であってもよい。また、抗酸菌症ペプチドワクチン組成物は、皮下注射、筋肉注射等により投与されることが好ましい。

【0018】
抗酸菌症としては、抗酸菌が原因菌である感染症が挙げられる。例えば、マイコバクテリウム・ツベルクローシスが原因菌であるヒトの結核、マイコバクテリウム・ボビスが原因菌であるウシの結核、マイコバクテリウム・アビウム、マイコバクテリウム・イントラセルラーエ、マイコバクテリウム・カンサシイ等が原因菌である非結核性抗酸菌症、マイコバクテリウム・レプラエが原因菌であるハンセン病等が挙げられる。本明細書では、マイコバクテリウム・ツベルクローシス及びマイコバクテリウム・レプラエ以外の抗酸菌が原因菌である感染症を総称して非結核性抗酸菌症という場合がある。

【0019】
本実施形態の抗酸菌症ペプチドワクチン組成物は、結核ワクチンであってもよい。あるいは、本実施形態の抗酸菌症ペプチドワクチン組成物は、非結核性抗酸菌症ワクチンであってもよい。あるいは、本実施形態の抗酸菌症ペプチドワクチン組成物は、ハンセン病ワクチンであってもよい。

【0020】
実施例において後述するように、本実施形態の抗酸菌症ペプチドワクチン組成物は、結核菌であるマイコバクテリウム・ツベルクローシスだけでなく、非結核性抗酸菌症の原因菌である、マイコバクテリウム・アビウム、マイコバクテリウム・カンサシイ、ハンセン病の原因菌であるマイコバクテリウム・レプラエ(らい菌)等に対する多能性のCD8陽性T細胞を誘導することができる。

【0021】
本実施形態の抗酸菌症ペプチドワクチン組成物は、抗酸菌に対するCD4陽性T細胞の活性化能を有するペプチドを更に含有していてもよい。

【0022】
実施例において後述するように、上述した多能性のCD8陽性T細胞の活性化能を有するペプチドペプチドに加えて、抗酸菌に対する(抗酸菌由来抗原に対する)CD4陽性T細胞の活性化能を有するペプチドを更に含有するワクチン組成物を生体に投与することにより、抗酸菌に対する多能性のCD8陽性T細胞をより強力に誘導することができる。したがって、このようなワクチン組成物を生体に投与することにより、抗酸菌症の感染を非常に効果的に予防することができる。

【0023】
上記の抗酸菌に対するCD4陽性T細胞を活性化するペプチドは、配列番号1に記載のアミノ酸配列の第241~255番目のアミノ酸を含む15~50アミノ酸からなるペプチド、又は、前記ペプチドにおいて1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、CD4陽性T細胞の活性化能を有するペプチドであってもよい。ここで、1若しくは数個は、例えば1~4個であってもよく、例えば1~3個であってもよく、例えば1~2個であってもよい。また、本実施形態のペプチドの長さは、15~50アミノ酸であってもよく、15~40アミノ酸であってもよく、15~30アミノ酸であってもよく、15~20アミノ酸であってもよく、15アミノ酸であってもよい。

【0024】
抗酸菌に対するCD4陽性T細胞を活性化するペプチドのより具体的な例としては、例えば、配列番号11に記載のアミノ酸配列からなるペプチド等が挙げられる。実施例において後述するように、配列番号11に記載のアミノ酸配列からなるペプチドは、多能性のCD4陽性T細胞を誘導することが確認されている。

【0025】
このようなワクチン組成物、すなわち、病原微生物由来抗原に対するCD4陽性T細胞の活性化能を有するペプチド、及び病原微生物由来抗原に対するCD8陽性T細胞の活性化能を有するペプチドを含有するワクチン組成物は、多能性のCD8陽性T細胞を強力に誘導することができる。これは、抗酸菌に限られず、あらゆる病原微生物にも適用可能である。

【0026】
すなわち、病原微生物由来抗原に対するCD4陽性T細胞の活性化能を有するペプチド、及び病原微生物由来抗原に対するCD8陽性T細胞の活性化能を有するペプチドを含有するワクチン組成物は、病原微生物に対する感染予防効果が非常に高い有効なワクチンとなる。

【0027】
ここで、病原微生物は、効果的なワクチンを得ることが困難とされる病原微生物であってもよく、例えば、ヒトの結核の原因菌であるマイコバクテリウム・ツベルクローシス;非結核性抗酸菌症の原因菌である、マイコバクテリウム・アビウム、マイコバクテリウム・イントラセルラーエ、マイコバクテリウム・カンサシイ;ハンセン病の原因菌であるマイコバクテリウム・レプラエ;エボラ出血熱の原因ウイルスであるエボラ出血熱ウイルス;クリミア・コンゴ熱の原因ウイルスであるクリミア・コンゴウイルス;南米出血熱の原因ウイルスであるフニンウイルス、サビアウイルス、ガナリトウイルス、マチュポウイルス等のアレナウイルス科のウイルス;マールブルグ病の原因ウイルスであるマールブルグウイルス;マラリアの原因微生物であるマラリア原虫、及び、例えば弱毒株等の、上記の病原微生物の類縁微生物等が挙げられる。

【0028】
標的とする病原微生物由来抗原に対するCD4陽性T細胞の活性化能を有するペプチド、及び標的とする病原微生物由来抗原に対するCD8陽性T細胞の活性化能を有するペプチドを含有するワクチン組成物により、標的とする病原微生物由来抗原に対する多能性のCD8陽性T細胞を強力に誘導し、感染症の予防効果を発揮することができる。

【0029】
ワクチン組成物はペプチドワクチン組成物であってもよく、抗原提示細胞におけるプロセッシングにより上記のペプチドを生成するタンパク質を含有するワクチン組成物であってもよい。

【0030】
[ワクチンの評価方法]
1実施形態において、本発明は、MHC遺伝子座がヘテロ接合性である非ヒト動物にワクチンを投与する工程と、前記非ヒト動物におけるCD4陽性T細胞又はCD8陽性T細胞の活性化を評価する工程と、を備える、前記ワクチンの評価方法を提供する。

【0031】
CD4陽性T細胞又はCD8陽性T細胞の活性化を評価する工程は、例えば、ワクチンを投与した非ヒト動物からリンパ球を採取し、当該リンパ球にワクチン(抗原)を再び接触させ、CD4陽性T細胞又はCD8陽性T細胞の増殖を測定すること等により評価することができる。ここで、例えば、CD4陽性T細胞又はCD8陽性T細胞が産生するサイトカインを測定し、多能性のT細胞の割合を測定してもよい。

【0032】
マウス等の実験動物は遺伝的に純化されているため、MHC遺伝子座はホモ接合性であることが一般的である。しかしながら、ヒトのMHC(HLA)はヘテロ接合性であることが通常である。したがって、MHC遺伝子座がヘテロ接合性である非ヒト動物を用いてワクチンの評価を行うことにより、よりヒトに投与した場合の結果に近いワクチンの評価結果を得ることができる。

【0033】
本実施形態のワクチンの評価方法において、上記の非ヒト動物は、C57BL/6マウスとBALB/cマウスとの雑種第1代マウス(以下、「CB6F1マウス」という場合がある。)であってもよい。実施例において後述するように、CB6F1マウスを用いてワクチンの評価を行うことにより、C57BL/6マウスともBALB/cマウスとも異なる結果が得られることが明らかとなった。
【実施例】
【0034】
次に実験例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
[実験例1]
マウスをBCG菌で免疫し、抗原特異的なCD8陽性T細胞が誘導されるか否かを検討した。
【実施例】
【0036】
(免疫)
C57BL/6Jマウス(日本チャールス・リバー社)に、2×10CFU/匹のBCG菌を皮内投与した。免疫から3週間後に解剖して検討を行った。
【実施例】
【0037】
(細胞内サイトカイン解析)
上記の免疫マウスから脾臓細胞を分離し、ウシ胎児血清10v/v%、2-メルカプトエタノール、DNase 1U/mL、ペニシリン及びストレプトマイシンを添加したRPMI-1640培地中で6時間抗原刺激した。抗原としては、10μg/mLのPPD(purified protein derivative、ツベルクリン液)を使用した。
【実施例】
【0038】
続いて細胞を回収し、APC標識抗CD3抗体(BD biociences社)、PE-cy7標識抗CD4抗体(BioLegend社)、PerCP cy5.5標識抗CD8抗体(BD biociences社)で細胞表面を染色した。更に、BD Cytofix/Cytoperm Fixation/Permeabilization Solution Kit (BD biociences)を用いて細胞を処理し、Alexa Fluor 488標識抗TNF-α抗体(BD biociences社)、PE標識抗インターフェロン-γ抗体(BD biociences社)、APC-Cy7標識抗インターロイキン-2抗体(BD biociences社)、V500標識抗MIP-1α抗体(BD biociences社)で細胞内サイトカインを染色した。染色した細胞はFACSverseソフトウエア(BD biociences社)及びFlowJoソフトウエア(TreeStar社)を用いて解析した。
【実施例】
【0039】
図1は、フローサイトメトリーの結果を示すグラフである。その結果、BCG菌でマウスを免疫することにより、多能性のCD4陽性T細胞を誘導することができることが明らかとなった。しかしながら、BCG菌によるマウスの免疫では、多能性のCD8陽性T細胞はほとんど誘導されないことが明らかとなった。
【実施例】
【0040】
図2(a)は、各サイトカインを産生するCD4陽性T細胞の存在割合を示すグラフである。PPDの代わりにリン酸緩衝液(PBS)で刺激した細胞を陰性対照として使用した。その結果、BCG菌による免疫によって、各サイトカインを産生するCD4陽性T細胞が誘導されたことが明らかとなった。
【実施例】
【0041】
図2(b)は、各サイトカインを産生するCD8陽性T細胞の存在割合を示すグラフである。PPDの代わりにリン酸緩衝液(PBS)で刺激した細胞を陰性対照として使用した。その結果、BCG菌による免疫では、各サイトカインを産生するCD8陽性T細胞はほとんど誘導されないことが明らかとなった。
【実施例】
【0042】
図3(a)は、各サイトカインを産生するCD4陽性T細胞を更に詳細に解析した結果を示すグラフである。図中、Lはインターロイキン-2を表し、Gはインターフェロン-γを表し、MはMIP-1αを表し、TはTNF-αを表す。また、「+」は陽性であることを表し、「-」は陰性であることを表す。また、図3(b)は、図3(a)の結果を円グラフにしたものである。その結果、1個のCD4陽性T細胞が、1~4種類のサイトカインを産生していることが明らかとなった。すなわち、BCG菌による免疫によって多能性のCD4陽性T細胞が誘導されたことが明らかとなった。
【実施例】
【0043】
以上の結果から、BCG菌による免疫によって、CD4陽性T細胞が誘導されるものの、CD8陽性T細胞はほとんど誘導されないことが明らかとなった。また、誘導されたCD4陽性T細胞は多能性であることが明らかとなった。
【実施例】
【0044】
[実験例2]
マイコバクテリウム・カンサシイのAg85Bタンパク質(配列番号1にアミノ酸配列を示す。)の発現ベクターを作製した。また、マイコバクテリウム・カンサシイのAg85Bタンパク質を発現する組換えBCG菌を作製した。
【実施例】
【0045】
(p3HA85Bベクター)
BCG菌及び哺乳動物細胞の双方でAg85Bタンパク質を発現することが可能な発現ベクターであるp3HA85Bを作製した。p3HA85Bは、マイコバクテリウム・カンサシイのAg85Bタンパク質をコードする遺伝子(配列番号2)の上流に、BCG菌で作動可能であるpAL5000プロモーターを有しており、pAL5000プロモーターの上流に、哺乳動物細胞で作動可能であるサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターとHTLV-1プロモーターを有していた。
【実施例】
【0046】
(組換えBCG菌の作製)
発現ベクターp3HA85BをBCG菌に導入し、マイコバクテリウム・カンサシイのAg85Bタンパク質を発現させた組換えBCG菌を作製した。また、ウエスタンブロッティングにより組換えBCG菌がAg85Bタンパク質を発現することを確認した。
【実施例】
【0047】
(pDNA85Bベクター)
哺乳動物細胞でマイコバクテリウム・カンサシイのAg85Bタンパク質を発現することが可能な発現ベクターである、pDNA85Bを作製した。pDNA85Bは、Ag85Bタンパク質をコードする遺伝子(配列番号2)の上流に、哺乳動物細胞で作動可能であるサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを有していた。発現ベクターpDNA85Bを、ヒト胎児由来腎臓上皮細胞である293T細胞に導入し、ウエスタンブロッティングにより、Ag85Bタンパク質が発現されることを確認した。
【実施例】
【0048】
[実験例3]
発現ベクターp3HA85Bを導入したBCG菌で初回免疫を行い、pDNA85Bベクター(DNAワクチン)で追加免疫を行うプライムブーストワクチンにより、C57BL/6Jマウス及びBALB/cマウスを免疫し、多機能性のCD4陽性T細胞及び多能性のCD8陽性T細胞の誘導を検討した。
【実施例】
【0049】
(免疫)
C57BL/6Jマウス(日本チャールス・リバー社)及びBALB/cマウス(日本チャールス・リバー社)に、発現ベクターp3HA85Bを導入したBCG菌を、それぞれ1頭あたり2×10CFUずつ皮内投与して初回免疫を行った。続いて、3週間後にpDNA85Bベクターを1頭あたり100μgずつ筋肉注射して1回目の追加免疫を行い、更に3週間後にpDNA85Bベクターを1頭あたり100μgずつ筋肉注射して2回目の追加免疫を行い、更に2週間後にpDNA85Bベクターを1頭あたり100μgずつ筋肉注射して3回目の追加免疫を行った。3回目の追加免疫から2週間後に解剖して検討を行った。
【実施例】
【0050】
(細胞内サイトカイン解析)
上記の免疫マウスから脾臓細胞を分離し、ウシ胎児血清10v/v%、2-メルカプトエタノール、DNase 1U/mL、ペニシリン及びストレプトマイシンを添加したRPMI-1640培地中で6時間抗原刺激した。抗原としては、下記表1に示す、マイコバクテリウム・ツベルクローシスのAg85Bタンパク質(配列番号12にアミノ酸配列を示す。)の15merずつのペプチドからなるプールペプチド(プール1~プール6)をそれぞれ使用した。抗原刺激にあたり、プールペプチドは2.5μg/mLの濃度で使用した。また、陰性対照として、抗原刺激を行わない細胞を使用した。
【実施例】
【0051】
【表1】
JP0006828871B2_000002t.gif
【実施例】
【0052】
続いて細胞を回収し、APC標識抗CD3抗体(BD biociences社)、PE-cy7標識抗CD4抗体(BioLegend社)、PerCP cy5.5標識抗CD8抗体(BD biociences社)で細胞表面を染色した。更に、BD Cytofix/Cytoperm Fixation/Permeabilization Solution Kit (BD biociences)を用いて細胞を処理し、Alexa Fluor 488標識抗TNF-α抗体(BD biociences社)及びPE標識抗インターフェロン-γ抗体(BD biociences社)で細胞内サイトカインを染色した。染色した細胞はFACSverseソフトウエア(BD biociences社)及びFlowJoソフトウエア(TreeStar社)を用いて解析した。
【実施例】
【0053】
図4(a)~(d)は、フローサイトメトリーの代表的な結果を示すグラフである。図4(a)は、上記表1に示すペプチドプール5で刺激したC57BL/6Jマウスの脾臓細胞中のCD4陽性T細胞の結果を示し、図4(b)は、上記表1に示すペプチドプール2で刺激したC57BL/6Jマウスの脾臓細胞中のCD8陽性T細胞の結果を示す。フローサイトメトリー解析の結果、プライムブーストワクチンでC57BL/6Jマウスを免疫することにより、多能性のCD4陽性T細胞を誘導することができることが明らかとなった。しかしながら、多能性のCD8陽性T細胞はほとんど誘導されないことが明らかとなった。
【実施例】
【0054】
また、図4(c)は、上記表1に示すペプチドプール5で刺激したBALB/cマウスの脾臓細胞中のCD4陽性T細胞の結果を示し、図4(d)は、上記表1に示すペプチドプール2で刺激したBALB/cマウスの脾臓細胞中のCD8陽性T細胞の結果を示す。フローサイトメトリー解析の結果、プライムブーストワクチンでBALB/cマウスを免疫することにより、多能性のCD8陽性T細胞を誘導することができることが明らかとなった。しかしながら、多能性のCD4陽性T細胞はほとんど誘導されないことが明らかとなった。
【実施例】
【0055】
C57BL/6JマウスのクラスI MHC遺伝子座のハプロタイプはH-2K、H-2D、H-2Lnullである。また、BALB/cマウスのクラスI MHC遺伝子座のハプロタイプはH-2K、H-2D、H-2Lである。マウスの系統により、誘導される多能性のCD4陽性T細胞及び多能性のCD8陽性T細胞のパターンが異なるのは、MHC遺伝子座のハプロタイプの違いによるものである可能性が考えられた。
【実施例】
【0056】
[実験例4]
実験例3と同様にして、C57BL/6Jマウス及びBALB/cマウスをプライムブーストワクチンで免疫した。続いて、C57BL/6Jマウスの多能性のCD4陽性T細胞のT細胞エピトープ及びBALB/cマウスの多能性のCD8陽性T細胞のT細胞エピトープをエピトープマッピングにより特定した。
【実施例】
【0057】
具体的には、各免疫マウスから脾臓細胞を分離し、ウシ胎児血清10v/v%、2-メルカプトエタノール、DNase 1U/mL、ペニシリン及びストレプトマイシンを添加したRPMI-1640培地中で24時間抗原刺激した。抗原としては、まず、上記表1に示すプールペプチド(プール1~プール6)をそれぞれ使用した。抗原刺激にあたり、プールペプチドは2.5μg/mLの濃度で使用した。また、陰性対照として、抗原刺激を行わない細胞を使用した。続いて細胞を回収し、実験例3と同様にしてフローサイトメトリーにより細胞内サイトカイン解析を行った。
【実施例】
【0058】
図5(a)は、BALB/cマウスの解析結果をまとめたグラフである。その結果、免疫したBALB/cマウスの脾臓細胞において、ペプチドプール2で抗原刺激を行った場合に、多能性のCD8陽性T細胞が誘導されることが明らかとなった。この結果は、ペプチドプール2の中に、多能性のCD8陽性T細胞のT細胞エピトープが含まれていることを示す。
【実施例】
【0059】
また、図5(c)は、C57BL/6Jマウスの解析結果をまとめたグラフである。その結果、免疫したC57BL/6Jマウスの脾臓細胞において、ペプチドプール2、5、6で抗原刺激を行った場合に、多能性のCD4陽性T細胞が誘導されることが明らかとなった。この結果から、ペプチドプール2、5、6の中に、多能性のCD4陽性T細胞のT細胞エピトープが含まれていることが明らかとなった。
【実施例】
【0060】
続いて、免疫したBALB/cマウスの脾臓細胞において、抗原刺激に用いるペプチドを、ペプチドプール2を構成するH111~H120ペプチドに変更した点以外は上記と同様のアッセイを行なった。図5(b)は、解析結果をまとめたグラフである。その結果、免疫したBALB/cマウスの脾臓細胞において、H112、H113、H114ペプチドで抗原刺激を行った場合に、多能性のCD8陽性T細胞が誘導されることが明らかとなった。この結果から、H112、H113、H114ペプチドの中に、多能性のCD8陽性T細胞のT細胞エピトープが含まれていることが明らかとなった。
【実施例】
【0061】
また、免疫したC57BL/6Jマウスの脾臓細胞において、抗原刺激に用いるペプチドを、ペプチドプール5、6を構成するH143~H154ペプチドに変更した点以外は上記と同様のアッセイを行なった。図5(d)は、解析結果をまとめたグラフである。その結果、免疫したC57BL/6Jマウスの脾臓細胞において、H149、H153、H154ペプチドで抗原刺激を行った場合に、多能性のCD4陽性T細胞が誘導されることが明らかとなった。この結果から、H149、H153、H154ペプチドの中に、多能性のCD4陽性T細胞のT細胞エピトープが含まれていることが明らかとなった。
【実施例】
【0062】
続いて、免疫したBALB/cマウスの脾臓細胞において、抗原刺激に用いるペプチドを、下記表2に示す9merずつのペプチド(P1~P25ペプチド)に変更した点以外は上記と同様のアッセイを行ない、多能性のCD8陽性T細胞の誘導を検討した。
【実施例】
【0063】
図6は、解析結果をまとめたグラフである。その結果、免疫したBALB/cマウスの脾臓細胞において、P8、P9ペプチドで抗原刺激を行った場合に、多能性のCD8陽性T細胞が誘導されることが明らかとなった。この結果から、P8、P9ペプチドが、多能性のCD8陽性T細胞のT細胞エピトープであることが明らかとなった。
【実施例】
【0064】
【表2】
JP0006828871B2_000003t.gif
【実施例】
【0065】
[実験例5]
MHC遺伝子座がヘテロ接合性であるマウスを用いて、組換えBCG菌によるワクチンの効果を検討した。具体的には、C57BL/6Jマウス及びBALB/cマウスを交配して得られる雑種第1代マウス(以下、「CB6F1マウス」という場合がある。)(日本エスエルシー社)を用いて実験を行った。CB6F1マウスのクラスI MHC遺伝子座のハプロタイプはH-2Kb/d、H-2Db/d、H-2Lnull/dである。
【実施例】
【0066】
続いて、実験例3と同様にして、C57BL/6Jマウス、BALB/cマウス及びCB6F1マウスをプライムブーストワクチンで免疫した。続いて、各免疫マウスから脾臓細胞を分離し、ウシ胎児血清10v/v%、2-メルカプトエタノール、DNase 1U/mL、ペニシリン及びストレプトマイシンを添加したRPMI-1640培地中で24時間抗原刺激した。抗原としては、上記表1に示すH149ペプチド又は上記表2に示すP9ペプチドを2.5μg/mLの濃度で使用した。なお、実験例4における検討により、H149ペプチドが多能性のCD4陽性T細胞のT細胞エピトープを含むことが明らかとなっている。また、P8ペプチド及びP9ペプチドが、多能性のCD8陽性T細胞のT細胞エピトープであることが明らかとなっている。続いて、細胞を回収し、実験例3と同様にしてフローサイトメトリーにより細胞内サイトカイン解析を行った。
【実施例】
【0067】
図7は、フローサイトメトリーの結果を示すグラフである。その結果、プライムブーストワクチンでC57BL/6Jマウスを免疫することにより、多能性のCD4陽性T細胞を誘導することができることが明らかとなった。しかしながら、多能性のCD8陽性T細胞はほとんど誘導されないことが明らかとなった。
【実施例】
【0068】
また、プライムブーストワクチンでBALB/cマウスを免疫することにより、多能性のCD4陽性T細胞を誘導することができることが明らかとなった。しかしながら、多能性のCD8陽性T細胞はほとんど誘導されないことが明らかとなった。
【実施例】
【0069】
また、プライムブーストワクチンでCB6F1マウスを免疫することにより、多能性のCD8陽性T細胞を顕著に誘導することができることが明らかとなった。CB6F1マウスにおいて誘導された多能性のCD8陽性T細胞の割合は非常に高く、驚くべき結果であった。また、プライムブーストワクチンでCB6F1マウスを免疫することにより、多能性のCD4陽性T細胞も誘導されることが明らかとなった。
【実施例】
【0070】
また、以上の結果から、多能性のCD4陽性T細胞のT細胞エピトープペプチドを含むペプチドワクチン又は多能性のCD8陽性T細胞のT細胞エピトープペプチドを含むペプチドワクチンのいずれか単独を投与するのではなく、多能性のCD4陽性T細胞のT細胞エピトープペプチド及び多能性のCD8陽性T細胞のT細胞エピトープペプチドの双方を含むペプチドワクチンを投与することによって(多能性のCD4陽性T細胞のT細胞エピトープペプチド及び多能性のCD8陽性T細胞のT細胞エピトープペプチドの双方で同時に免疫することによって)、多能性のCD8陽性T細胞をより強力に活性化できることが明らかとなった。
【実施例】
【0071】
[実験例6]
実験例4における検討により、P8ペプチド及びP9ペプチドが、多能性のCD8陽性T細胞のT細胞エピトープであることが明らかとなった。そこで、P8ペプチド及びP9ペプチドのMHCへの親和性を検討した。具体的には、まず、実験例3と同様にして、BALB/cマウスをプライムブーストワクチンで免疫した。続いて、免疫マウスから脾臓細胞を分離し、ウシ胎児血清10v/v%、2-メルカプトエタノール、DNase 1U/mL、ペニシリン及びストレプトマイシンを添加したRPMI-1640培地中で24時間抗原刺激した。抗原としては、上記表2に示すP8ペプチド又はP9ペプチドを段階希釈して使用した。続いて、細胞を回収し、実験例3と同様にしてフローサイトメトリーにより細胞内サイトカイン解析を行った。
【実施例】
【0072】
図8は、CD8陽性T細胞における多能性のCD8陽性T細胞の割合を示すグラフである。その結果、P8ペプチドの50%刺激濃度は4×10-9M以下であり、P9ペプチドの50%刺激濃度は4×10-7Mであることが明らかとなった。
【実施例】
【0073】
[実験例7]
多能性のCD8陽性T細胞における、細胞傷害活性を検討した。具体的には、まず、実験例3と同様にして、BALB/cマウスをプライムブーストワクチンで免疫した。続いて、免疫マウスから脾臓細胞を分離し、ウシ胎児血清10v/v%、2-メルカプトエタノール、DNase 1U/mL、ペニシリン及びストレプトマイシンを添加したRPMI-1640培地中で24時間抗原刺激した。抗原としては、上記表2に示すP9ペプチドを2.5μg/mLの濃度で使用した。また、対照として、抗原の代わりにホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA)(25ng/mL)及びイオノマイシン(1μg/mL)を混合したもので刺激した細胞を用いた。続いて、細胞を回収し、フローサイトメトリーにより解析した。CD8陽性T細胞の細胞傷害活性は、CD107a/bの発現により評価した。また、CD8陽性T細胞の多能性(複数のサイトカインの産生)は、実験例3と同様にして解析した。
【実施例】
【0074】
図9は、多能性のCD8陽性T細胞におけるCD107a/b陽性T細胞及びCD107a/b陰性T細胞の割合を示すグラフである。その結果、P9ペプチド刺激により、細胞傷害活性を有する多能性のCD8陽性T細胞が誘導されることが確認された。一方、PMA(25ng/mL)及びイオノマイシン(1μg/mL)による刺激では、細胞傷害活性を有する多能性のCD8陽性T細胞はほとんど誘導されないことが明らかとなった。
【実施例】
【0075】
[実験例8]
実験例3と同様にして免疫したBALB/cマウス又はCB6F1マウス由来の脾臓細胞を、様々な抗酸菌に由来するペプチドで抗原刺激し、多能性のCD8陽性T細胞の誘導を検討した。抗酸菌由来のペプチドとしては、下記表3に示すものを使用した。
【実施例】
【0076】
表3中、P8ペプチド及びP9ペプチドは、上記表2に記載のペプチドと同一であり、マイコバクテリウム・ツベルクローシスのAg85Bタンパク質由来のペプチドである。また、表3中、「Mtb85A(P8)」は、マイコバクテリウム・ツベルクローシスのAg85Aタンパク質由来のP8ペプチドに対応するペプチドであることを意味する。また、「Mtb85A(P9)」は、マイコバクテリウム・ツベルクローシスのAg85Aタンパク質由来のP9ペプチドに対応するペプチドであることを意味する。また、「Mkan85B(P8)」は、マイコバクテリウム・カンサシイのAg85Bタンパク質由来のP8ペプチドに対応するペプチドであることを意味する。また、「Mkan85B(P9)」は、マイコバクテリウム・カンサシイのAg85Bタンパク質由来のP9ペプチドに対応するペプチドであることを意味する。また、「Mle85B(P8)」は、マイコバクテリウム・レプラエのAg85Bタンパク質由来のP8ペプチドに対応するペプチドであることを意味する。また、「Mle85B(P9)」は、マイコバクテリウム・レプラエのAg85Bタンパク質由来のP9ペプチドに対応するペプチドであることを意味する。
【実施例】
【0077】
【表3】
JP0006828871B2_000004t.gif
【実施例】
【0078】
多能性のCD8陽性T細胞の誘導は、実験例3と同様にしてフローサイトメトリーにより解析した。図10は、各ペプチドで抗原刺激した脾臓細胞中の、CD8陽性T細胞に対する多能性のCD8陽性T細胞の割合を示すグラフである。その結果、表3に示すペプチドのうち、配列番号6のペプチド以外のペプチドでは、多能性のCD8陽性T細胞が誘導されることが明らかとなった。
【実施例】
【0079】
この結果から、マイコバクテリウム・カンサシイのAg85Bタンパク質を発現させた組換えBCG菌で免疫することにより、結核菌であるマイコバクテリウム・ツベルクローシスだけでなく、非結核性抗酸菌症の原因菌であるマイコバクテリウム・カンサシイ、ハンセン病の原因菌であるマイコバクテリウム・レプラエ(らい菌)等に対する多能性のCD8陽性T細胞も誘導できることが明らかとなった。すなわち、本実験例で使用したワクチンは、結核ワクチンとして有効であるだけでなく、非結核性抗酸菌症ワクチン及びハンセン病ワクチンとしても有効であることが明らかとなった。
【実施例】
【0080】
また、配列番号6のペプチドの結果から、P9ペプチドの第1番目の「Y(チロシン)」を「D(アスパラギン酸)」に変異させることにより、多能性のCD8陽性T細胞を誘導する活性が特異的に消失することが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明によれば、病原微生物由来抗原特異的CD8陽性T細胞を活性化することができるペプチドを提供することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9