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明細書 :ゲル状組成物及びゲル状組成物の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-016728 (P2018-016728A)
公開日 平成30年2月1日(2018.2.1)
発明の名称または考案の名称 ゲル状組成物及びゲル状組成物の製造方法
国際特許分類 C09K   3/00        (2006.01)
A61K   9/06        (2006.01)
A61K  47/24        (2006.01)
A61K  47/44        (2017.01)
A61K   8/04        (2006.01)
A61K   8/55        (2006.01)
A61K   8/73        (2006.01)
A61K   8/65        (2006.01)
A61Q  19/00        (2006.01)
FI C09K 3/00 103M
C09K 3/00 103L
A61K 9/06 ZNM
A61K 47/24
A61K 47/44
A61K 8/04
A61K 8/55
A61K 8/73
A61K 8/65
A61Q 19/00
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 16
出願番号 特願2016-148418 (P2016-148418)
出願日 平成28年7月28日(2016.7.28)
発明者または考案者 【氏名】橋崎 要
【氏名】藤井 まき子
出願人 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100064908、【弁理士】、【氏名又は名称】志賀 正武
【識別番号】100126882、【弁理士】、【氏名又は名称】五十嵐 光永
【識別番号】100175824、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 淳一
審査請求 未請求
テーマコード 4C076
4C083
Fターム 4C076AA09
4C076AA24
4C076BB31
4C076DD63A
4C076EE52A
4C076GG41
4C083AB051
4C083AC022
4C083AD242
4C083AD332
4C083AD412
4C083AD432
4C083AD571
4C083AD572
4C083CC02
4C083CC07
4C083DD08
要約 【課題】水溶性高分子の経皮吸収が可能な技術を提供する。
【解決手段】(a)レシチンと、(b)オイル成分と、(c)極性物質と、(d)分子量500以上の水溶性分子とを含む、ゲル状組成物。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
(a)レシチンと、(b)オイル成分と、(c)極性物質と、(d)分子量500以上の水溶性分子とを含む、ゲル状組成物。
【請求項2】
前記(d)水溶性分子が、分子量1,000以上の水溶性分子である、請求項1に記載のゲル状組成物。
【請求項3】
逆紐状ミセル構造を含む、請求項1又は2に記載のゲル状組成物。
【請求項4】
前記(a)レシチンの含有量が5~70質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載のゲル状組成物。
【請求項5】
前記(c)極性物質が水である、請求項1~4のいずれか一項に記載のゲル状組成物。
【請求項6】
医薬組成物又は化粧料である、請求項1~5のいずれか一項に記載のゲル状組成物。
【請求項7】
経皮吸収型製剤である、請求項1~6のいずれか一項に記載のゲル状組成物。
【請求項8】
分子量500以上の水溶性分子を極性物質に溶解して水溶性分子溶液を調整し、
前記水溶性分子溶液を、レシチン及びオイル成分と混合することを含む、ゲル状組成物の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル状組成物及びゲル状組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質製剤は経口投与すると消化管粘膜からの吸収が悪く、吸収される前に分解されるため、製剤のほとんどは初回通過効果を受けない注射剤として開発されている。しかしながら、注射剤は、侵襲的であることや投薬者の技術が必要であること、無菌下での調製が必要であること、といったデメリットも多い。
【0003】
初回通過効果を受けない投与経路としては、経皮投与が挙げられる。経皮吸収型製剤は、投与方法が簡便であること、血中濃度の維持が容易であること、投与中断も簡便であること、服薬コンプライアンスを直接確認できること、などのメリットがある。しかしながら、皮膚の最外層の角層は強固なバリアであり、分子量500以上の水溶性物質は皮膚への透過が困難である。そのため、タンパク質製剤などの水溶性高分子を含む製剤は、通常、経皮吸収型製剤として投与することができない。
【0004】
薬物の皮膚への移行を高める方法としては、マイクロニードル法、イオントフォレシスなどの物理的促進手法、ナノ粒子、リポソーム、界面活性剤ベシクル、マイクロエマルションなどが検討されている。マイクロニードル法は、微細な針で皮膚中に直接薬物を送達する方法であるが、注射に比べると痛みは伴わないものの、皮膚を針で通過させるという点では変わらず、無菌性の保証など、実際の使用には問題がある。また、イオントフォレシスは、電気エネルギーを利用して薬物の皮膚からの吸収を促進する方法であるが、専用の装置を必要とし、また高分子への有効性は疑問視されている。ナノ粒子を用いる方法では、ナノ粒子は角層に透過するには大きいため、毛包や汗腺といった付属器官のみがターゲットとなる。リポソームは、効率よく安定的に薬物を内封することが難しく、角層間に透過するような形状変化が可能なものを調製するには、処方に制限がある。界面活性剤ベシクルやマイクロエマルションは、界面活性剤濃度が高かったり、アルコールが必要であったりと安全性に問題が残る。
【0005】
一方、ゲル状製剤は、化粧料、医薬品、食品、塗料、インク、潤滑油等の様々な分野で広く利用されている。ゲル状製剤の調製方法は種々あるが、逆紐状ミセルによるゲル状製剤の調製も報告されている(非特許文献1)。逆紐状ミセルとは、界面活性剤が形成する自己集合体の一種であり、オイル中で網目構造を形成するためにゲル化を引き起こすことが知られている。
【0006】
本発明者らは、これまでに、レシチン/ショ糖脂肪酸エステル(特許文献1)、レシチン/糖類(特許文献2)、レシチン/尿素(特許文献3)、レシチン/ポリグリセリン(特許文献4)、レシチン/アスコルビン酸またはその誘導体(特許文献5)、レシチン/脂肪族カルボン酸(特許文献6)の逆紐状ミセルによるゲル状組成物を開発してきた。また、逆紐状ミセルによるゲル状組成物を用いた疎水性低分子の経皮吸収の試みが報告されている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】国際公開第2010/082487号
【特許文献2】国際公開第2010/122694号
【特許文献3】特開2010-270299号公報
【特許文献4】特開2012-20979号公報
【特許文献5】国際公開第2013/081120号
【特許文献6】国際公開第2013/176243号
【0008】

【非特許文献1】P. L. Luisi et al. Colloid & Polymer Science, vol.268, p.356-374(1990)
【非特許文献2】M. Imai et al. Biol. Pharm. Bull. Vol.39, p.532-539(2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、水溶性高分子の経皮吸収は、現在、有効な手段が存在しない。逆紐状ミセルを用いた方法では、疎水性低分子の経皮吸収を試みた例はあるが、水溶性高分子の経皮吸収については報告されていない。
【0010】
そこで、本発明は、水溶性高分子の経皮吸収が可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は以下の通りである。
(1)(a)レシチンと、(b)オイル成分と、(c)極性物質と、(d)分子量500以上の水溶性分子とを含む、ゲル状組成物。
(2)前記(d)水溶性分子が、分子量1,000以上の水溶性分子である、請求項1に記載のゲル状組成物。
(3)逆紐状ミセル構造を含む、(1)又は(2)に記載のゲル状組成物。
(4)前記(a)レシチンの含有量が5~70質量%である、(1)~(3)のいずれか一項に記載のゲル状組成物。
(5)前記(c)極性物質が水である、(1)~(4)のいずれか一項に記載のゲル状組成物。
(6)医薬組成物又は化粧料である、(1)~(5)のいずれか一項に記載のゲル状組成物。
(7)経皮吸収型製剤である、(1)~(6)のいずれか一項に記載のゲル状組成物。
(8)分子量500以上の水溶性分子を極性物質に溶解して水溶性分子溶液を調製し、前記水溶性分子溶液を、レシチン及びオイル成分と混合することを含む、ゲル状組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水溶性高分子の経皮吸収が可能な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】逆紐状ミセルの構造を示す模式図である。
【図2】本発明の1実施形態にかかるゲル状組成物の外観を示す。(a)は水溶性高分子としてデキストランを含むゲル状組成物(レシチン/デキストラン水溶液/流動パラフィン=30/0.75/69.25(質量%))であり、(b)は水溶性高分子としてニワトリ卵白由来アルブミン(OVA)を含むゲル状組成物(レシチン/OVA水溶液/流動パラフィン=30/0.75/69.25(質量%))である。
【図3】本発明の1実施形態にかかるゲル状組成物の偏光像を示す。(a)は水溶性高分子としてデキストランを含むゲル状組成物(レシチン/デキストラン水溶液/流動パラフィン=30/0.75/69.25(質量%))であり、(b)は水溶性高分子としてOVAを含むゲル状組成物(レシチン/OVA水溶液/流動パラフィン=30/0.75/69.25(質量%))である。
【図4】本発明の1実施形態にかかるゲル状組成物(レシチン/OVA水溶液/流動パラフィン=30/0.75/69.25(質量%))の小角X線散乱(SAXS)測定の結果を示す。
【図5】本発明の1実施形態にかかるゲル状組成物(レシチン/OVA水溶液/流動パラフィン=30/0.75/69.25(質量%))の動的粘弾性測定の結果を示す。
【図6】0.01質量% フルオレセインイソチオシアナート-デキストラン(FD4)水溶液をユカタンミニブタ(YMP)皮膚に塗布した場合の皮膚切片画像を示す。左図は蛍光画像であり、右図はMerge画像である。
【図7】本発明の1実施形態にかかるゲル状組成物(レシチン/FD4水溶液/流動パラフィン=30/0.75/69.25(質量%))をYMP皮膚に塗布した場合の皮膚切片画像を示す。左図は蛍光画像であり、右図はMerge画像である。
【図8】0.01質量% オボアルブミンフルオレセイン結合体(FITC-OVA)水溶液をユカタンミニブタ(YMP)皮膚に塗布した場合の皮膚切片画像を示す。左図は蛍光画像であり、右図はMerge画像である。
【図9】本発明の1実施形態にかかるゲル状組成物(レシチン/FITC-OVA水溶液/流動パラフィン=30/0.75/69.25(質量%))をYMP皮膚に塗布した場合の皮膚切片画像を示す。左図は蛍光画像であり、右図はMerge画像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[ゲル状組成物]
1実施形態において、本発明は、(a)レシチンと、(b)オイル成分と、(c)極性物質と、(d)分子量500以上の水溶性分子とを含む、ゲル状組成物を提供する。

【0015】
本実施形態のゲル状組成物は、(a)成分として、レシチンを含む。レシチンは、ホスファチジルコリンを主成分とする脂質製品であり、天然の動物、植物、微生物など生体に広く分布し、肝臓、卵黄、大豆、酵母等に多く含まれることが知られている。代表的なレシチンとしては、卵黄レシチン、大豆レシチンなどが挙げられる。

【0016】
ホスファチジルコリンは、グリセロールを少なくとも1つの不飽和脂肪酸及びリン酸と反応させることにより得られるエステルを意味し、該リン酸のプロトンはアミン官能基としてのコリンで置換されている。本明細書では、不飽和結合に水素添加されたホスファチジルコリンも「ホスファチジルコリン」に包含されるが、本実施形態においては水素添加されていないことが好ましい。

【0017】
ホスファチジルコリンの具体例としては、下記一般式(I)で表される化合物を挙げることができる。

【0018】
【化1】
JP2018016728A_000002t.gif

【0019】
上記一般式(I)において、R及びRは、互いに独立して、炭素数4~24の飽和又は不飽和の脂肪酸に由来する(対応する)脂肪族炭化水素基(すなわち、炭素数3~23の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基)を示す。前記脂肪族炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれであってもよく、1以上のヒドロキシル官能基及び/又はアミン官能基で置換されていてもよい。Xはコリン残基を示す。本実施形態において、レシチンの主成分として含まれるホスファチジルコリンは、式(I)で表される化合物のうちの1種であってもよく、2種以上の混合物であってもよい。

【0020】
上記一般式(I)において、R及びRに対応する脂肪酸(R1COOH、R2COOH)は、例えば、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、カプロレイン酸、ラウリン酸、ラウロレイン酸、ミリスチン酸、チリストレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、イソステアリン酸、ジヒドロキステアリン酸、及びリシノール酸から選択されるものであってもよい。

【0021】
天然のホスファチジルコリンは、L-α型のみであるが、本実施形態で使用するレシチンはそれ以外のものを含んでいてもよい。

【0022】
レシチンは、ホスファチジルコリンを主体としたものが好ましく、ホスファチジルコリンの含有量が55~99質量%程度のものを用いることが好ましい。この範囲であると、ゲル化が良好である。ホスファチジルコリンの含有量は70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。

【0023】
本実施形態において、レシチンは、天然のものであっても合成のものであってもよい。

【0024】
天然のレシチンは、動物源又は植物源からの抽出により得ることができる。例えば、動物源としては卵等、植物源としては大豆、ヒマワリ等を挙げることができる。天然物から、例えば大豆から得られた水素化されていないホスファチジルコリンは、一般的にグリセロールをエステル化する脂肪酸として、パルミチン酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、及びおそらく炭素数20~22の脂肪酸を含む。

【0025】
天然のレシチンは酸化されやすく、不安定であるので、使用に際しては、公知の方法により水素添加してもよい。本明細書では、そのような水素添加されたレシチンも「レシチン」に包含されるが、本実施形態においては、水素添加されていないレシチンを使用することが好ましい。

【0026】
レシチンは、複数の製品が市販されているため、市販のものを用いることができる。

【0027】
本実施形態のゲル状組成物において、レシチンの含有量は、5~70質量%程度とすることができる。この範囲であると、皮膚への透過性が良好である。レシチンの含有量は、好ましくは10~60質量%程度であり、より好ましくは15~50質量%であり、さらに好ましくは20~50質量%である。

【0028】
本実施形態のゲル状組成物は、(b)成分として、オイル成分を含む。本実施形態で用いるオイル成分は、特に限定されず、動植物油類、鉱物油類、炭化水素類、脂肪酸エステル類等のオイルを使用することができる。また、極性油のみ、非極性油のみ、あるいは極性油と非極性油の混合物であってもよい。具体的には、魚油、肝油、鯨油、ヘッド、ラード、馬油、羊油等の魚油等の動物油、ヤシ油、パーム油、カカオバター、オリーブ油、菜種油、あまに油等の植物油などの動植物油類;流動パラフィン、イソパラフィン、灯油、重油、イソオクタン、n-ヘプタン、n-デカン、シクロヘキサン等の炭化水素類;ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、べヘン酸等の高級脂肪酸類、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル等の脂肪酸エステル類等を挙げることができる。オイル成分は、単独のオイルであっても2種以上の混合物であってもよい。

【0029】
本実施形態のゲル状組成物において、オイル成分の含有量は、20~90質量%とすることができる。この範囲であると、ゲル化が良好である。オイル成分の含有量は、好ましくは30~85質量%、より好ましくは40~80質量%、さらに好ましくは50~75質量%である。

【0030】
本実施形態のゲル状組成物は、(c)成分として、極性物質を含む。本実施形態で用いる極性物質は、特に限定されない。極性物質としては、例えば、水、ポリグリセリン又はポリグリセリン脂肪酸エステル、尿素、糖類、ショ糖脂肪酸エステル、アスコルビン酸又はアスコルビン酸誘導体、カルボン酸等を挙げることができる。

【0031】
(c)成分としてのポリグリセリンは、特に限定されないが、例えば、2~20の重合度のもの等を用いることができる。ポリグリセリンは、単独あるいは異なる重合度のものを組み合わせて使用することもできる。(c)成分としてのポリグリセリン脂肪酸エステルは、特に限定されないが、例えば、炭素数6~14程度の脂肪酸残基を有するものを用いることができる。ポリグリセリン酸脂肪酸エステルの肪酸酸残基は、直鎖状でも分岐鎖状であってもよいが、直鎖状であることが好ましい。また、脂肪酸残基に対応する脂肪酸は、飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸であってもよいが、飽和脂肪酸であることが好ましい。脂肪酸残基に対応する脂肪酸の具体例としては、例えば、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸等が挙げられる。ポリグリセリン脂肪酸エステルは、これらの脂肪酸残基を1又は2以上有していてもよい。脂肪酸残基が2以上の場合は、これらの脂肪酸残基は同一であっても、異なっていてもよい。また、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリン単位の重合度が8~40程度のものを用いることができる。

【0032】
(c)成分としての糖類は、単糖類、オリゴ糖、多糖類のいずれであってもよい。単糖類としては、グリセルアルデヒド、エリスロース、キシリトール、D-キシロース、D-リボース、D-ガラクトース、D-グルコース、D-ソルビトース、フルクトース等を例示することができる。オリゴ糖としては、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース等を例示することができる。多糖類としては、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、デキストラン等を例示することができる。また、糖類は、アルコール性水酸基が水素により置換されたデオキシ糖であってもよい。

【0033】
また、(c)成分としてのショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖の水酸基に食用油脂由来の脂肪酸をエステル結合して得られる非イオン性界面活性剤である。脂肪酸としての炭素数の下限値は6以上、好ましくは10以上であり、炭素数の上限値は24以下、好ましくは18以下、より好ましくは16以下である。またこれらの脂肪酸は単独で用いるだけでなく2種以上を併用してもよい。また、ショ糖脂肪酸エステルは、HLBが5以上18以下のものであって、好ましくは9以上17以下、より好ましくは11以上16以下である。エステルを形成する脂肪酸としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、2-エチルヘキサン酸、カプリン酸、ラウリン酸、イソトリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルトレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、ベヘン酸、エルカ酸、リシノール酸、ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。

【0034】
また、(c)成分としてのアスコルビン酸又はアスコルビン酸誘導体において、アスコルビン酸誘導体としては、アスコルビン酸アルキルエーテル、アスコルビン酸アルキルエステル、アスコルビン酸グルコシド、エリソルビン酸などのアスコルビン酸の異性体及びその誘導体等を挙げることができる。アスコルビン酸アルキルエーテルとしては、3-O-アルキルアスコルビン酸を挙げることができる。3-O-アルキルアスコルビン酸としては、例えば、アルキル基の炭素数が1~22の3-O-アルキルアスコルビン酸等を好適に用いることができる。前記3-O-アスコルビン酸アルキルエーテルにおいて、炭素数1~22のアルキル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、その例としてはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ベヘニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられる。

【0035】
また、(c)成分としてのカルボン酸としては、カルボキシル基が1~3、およびヒドロキシ基が0~2のいずれか1つのカルボン酸を用いることができる。例えば、分子量が350以下、好ましくは、300以下、より好ましくは250以下のものを用いることができる。カルボン酸としては、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸を例示できるが、脂肪族カルボン酸を用いることが好ましい。具体的には、酢酸(分子量:60.05、以下同様)、プロピオン酸(74.08)、ピルビン酸(88.06)、安息香酸(122.12)等のモノカルボン酸、シュウ酸(126.07)、マロン酸(104.1)、コハク酸(118.09)、フマル酸(116.07)、マレイン酸(116.1)、フタル酸(166.14)等のジカルボン酸、アコニット酸(174.11)、1,2,3-プロパントリカルボン酸(176.12)、トリメリト酸(210.14)、トリメシン酸(210.14)等のトリカルボン酸、グリコール酸(76.05)、乳酸(90.08)、グリセリン酸(106.08)、サリチル酸(138.12)、3,4-ジヒドロキシ安息香酸(154.12)等のヒドロキシモノカルボン酸、L(+)-酒石酸(150.09)、L(-)-リンゴ酸(134.09)、シトラマル酸(148.11)、ヒドロキシフタル酸(182.13)等のヒドロキシジカルボン酸、クエン酸(192.12)、イソクエン酸(192.12)等のヒドロキシトリカルボン酸等を例示することができる。好ましくは、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アコニット酸、1,2,3-プロパントリカルボン酸、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、L(+)-酒石酸、L(-)-リンゴ酸、クエン酸、イソクエン酸等を用いることができる。

【0036】
極性物質は、単独であっても2種以上の混合物であってもよい。好ましくは、極性物質は、水単独、又は水と他の極性物質との混合物である。

【0037】
本実施形態のゲル状組成物において、極性物質の含有量は、0.01~15質量%とすることができる。この範囲であると、ゲル化が良好である。極性成分の含有量は、好ましくは0.1~12質量%、より好ましくは0.3~10質量%、さらに好ましくは0.5~7質量%である。

【0038】
本実施形態のゲル状組成物は、(d)成分として、分子量500以上の水溶性分子を含む。従来、分子量500以上の物質は、皮膚の角層を透過することが困難であり、経皮吸収型製剤とすることが難しい。しかしながら、本実施形態のゲル状組成物では、分子量500以上の水溶性分子であっても、角層を透過させることができる。

【0039】
本実施形態で使用可能な水溶性分子は、特に限定されない。例えば、ペプチド、タンパク質、DNA及びRNA等の核酸、多糖類等を挙げることができる。具体的には、医薬品の有効成分として使用されるペプチドホルモン、サイトカイン、酵素、抗原、抗体等のペプチド又はタンパク質、siRNA、miRNA、アンチセンスRNA、ベクター等の核酸、コンドロイチン等の多糖類等を挙げることができる。また、化粧料の保湿成分として使用されるヒアルロン酸等の多糖類やコラーゲン等のタンパク質を挙げることができる。本実施形態で使用可能な水溶性分子の分子量は、500以上であれば特に限定されないが、例えば、分子量1,000以上、分子量1,500以上、分子量2,000以上、分子量3,000以上、分子量4,000以上のもの等を用いることができる。水溶性分子の分子量の上限は特に限定されないが、例えば、分子量100,000以下、分子量60,000以下、分子量50,000以下、分子量45,000以下のもの等を用いることができる。

【0040】
本実施形態のゲル状組成物において、水溶性分子の含有量は、特に限定されない。例えば、使用する極性物質の量に応じて、極性物質に溶解可能な最大限の含有量とすることができる。水溶性分子の含有量としては、0.005~5質量%等を例示することができる。

【0041】
本実施形態のゲル状組成物は、上記(a)~(d)の成分のほかに、他の成分を含有してもよい。他の成分は、特に限定されず、用途に応じて、適宜選択することができる。例えば、本実施形態のゲル状組成物を医薬品用途に用いる場合には、他の成分として、香料、色素、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤、抗炎症剤、溶解補助剤、(d)成分以外の薬効成分等を挙げることができる。また、化粧料用途に用いる場合には、他の成分として、香料、色素、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤、抗炎症剤、溶解補助剤、紫外線吸収剤、紫外線反射材、(d)成分以外の美容成分等を挙げることができる。これらの他の成分は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。

【0042】
上記のような成分を含む本実施形態のゲル状組成物は、ゲル状を呈する。本実施形態のゲル状組成物は、例えば、5gを28mL容バイアルに入れ、バイアルを逆さまにしたときに、バイアル底面に留まることができる。このように本実施形態のゲル状組成物はゲル化しているが、スプレー等で散布することが可能である。

【0043】
本実施形態のゲル状組成物のレオロジー測定で得られる粘度曲線から求められるゼロシア粘度は、以下のように定義される。すなわち、せん断速度が限りなくゼロに近い領域においては非ニュートン流体であっても、ニュートン流体に近似できる領域があり、その領域における粘度は変動がなく、ある一定の値を示す。このときの粘度ηを、レオロジー測定で得られる粘度曲線から求められるゼロシア粘度とする。該ゼロシア粘度は、特に制限されないが、ゲル安定性、ゲルの触感、使用感、取扱性等の観点から、50Pa・s以上が好ましく、特に100Pa・s以上であるものが好ましい。該ゼロシア粘度の上限は特になく、また用途によっても異なるが、例えば2000Pa・s、好ましくは1000Pa・sである。

【0044】
本実施形態のゲル状組成物は、好ましくは、逆紐状ミセル構造を含む。逆紐状ミセル(Reverse worm-like micelle)は、界面活性剤が形成する自己集合体の一種である。界面活性剤は分子中に親水基と疎水基とを有する両親媒性物質であり、親水基と疎水基とのバランスに応じて水、油中で自己集合体を形成する。逆球状ミセルが円筒状に成長した逆紐状ミセルは、一時的なネットワーク構造を形成し、高粘弾性のゲルを形成する(図1参照)。逆紐状ミセルは、その内部に親水的な環境を有しており、水溶性分子を内包することができる。

【0045】
ゲル状組成物が逆紐状ミセルを形成しているか否かは、偏光顕微鏡による偏光像を観察することにより確認することができる。逆紐状ミセルでは、結晶構造を有さず、光学的には等方性であり、偏光像として特徴的なパターンは現れない。そのため、ゲル状組成物を偏光顕微鏡で観察し、偏光顕微鏡による偏光像に特徴的なパターンが現れない場合には、ゲル状組成物は逆紐状ミセルを形成しているといえる。

【0046】
また、ゲル状組成物が逆紐状ミセルを形成しているか否かは、小角X線散乱(SAXS)測定による散乱曲線に基づいて確認することもできる。ゲル状組成物を流動パラフィン等で希釈し、SAXS測定を行う。測定結果を、図4に示すように、散乱強度(I(q))と散乱ベクトル(q)とで対数プロットし、散乱曲線を作成する。ここで、q=(4π/λ)sinθであり、θは散乱角、λはX線の波長である。前記散乱曲線において、Guinier領域とPorod領域の間にある中間領域の傾きが-1である場合には、逆紐状ミセルが存在しているといえる。

【0047】
[ゲル状組成物の製造方法]
本実施形態のゲル状組成物は、(a)レシチンと、(b)オイル成分と、(c)極性物質と、(d)分子量500以上の水溶性分子と、必要に応じて他の成分とを混合することにより製造することができる。各成分を混合する順番は特に限定されないが、最初に、水溶性分子を極性物質に溶解して水溶性分子溶液を調製し、次いで、該水溶性分子溶液を、レシチンおよびオイル成分と混合することが好ましい。したがって、1実施形態において、本発明は、水溶性分子を極性物質に溶解して水溶性分子溶液を調製し、前記水溶性分子溶液を、レシチン及びオイル成分と混合することを含む、ゲル状組成物の製造方法を提供する。

【0048】
なお、本実施形態のゲル状組成物に、(a)~(d)成分以外の他の成分を添加する場合には、上記のようにゲル状組成物を調製した後、他の成分を添加するようにしてもよい。また、他の成分が水溶性成分である場合、該他の成分は、(d)水溶性分子とともに(c)極性物質に溶解してもよい。

【0049】
各成分を混合した後は、適宜撹拌することが好ましい。撹拌方法は、特に限定されないが、シェーカーやマグネチックスターラー等の一般的に撹拌に用いられる装置等を用いることができる。

【0050】
[医薬組成物]
1実施形態において、本発明は、上記実施形態のゲル状組成物を含む医薬組成物を提供する。

【0051】
上記実施形態のゲル状組成物は、分子量500以上の水溶性分子を含有させることができるため、タンパク質、核酸、多糖類等の水溶性高分子を有効成分として含む医薬組成物に適用することができる。本実施形態の医薬組成物は、上記実施形態のゲル状組成物に、適宜、医薬品に一般的に使用される添加物を添加して、常法により製造することができる。

【0052】
本実施形態の医薬組成物は、非経口投与製剤であることが好ましい。上記実施形態のゲル状組成物を用いれば、通常は経皮吸収されない分子量500以上の水溶性分子であっても、経皮吸収させることができる。そのため、本実施形態の医薬組成物は、経皮吸収型製剤に適している。したがって、経皮吸収型製剤は、本実施形態の医薬組成物の好ましい態様として例示される。なお、経皮吸収性型製剤の具体例としては、経皮吸収型ワクチン等が挙げられる。

【0053】
本実施形態の医薬組成物が経皮吸収型製剤である場合、剤型は、ゲル状塗布剤、貼付剤、噴霧剤などとすることができる。上記実施形態のゲル状組成物は、ゲル状であるが、スプレー等により噴霧することが可能である。そのため、噴霧剤は、本実施形態の医薬組成物の好ましい態様として例示される。また、本実施形態の医薬組成物を噴霧剤とした場合、皮膚に噴霧された医薬組成物は、皮膚上でゲル状となる。そのため、液体のように流出することがなく、皮膚上に留まることができる。このような点からも、本実施形態の医薬組成物は、経皮吸収型製剤に適している。

【0054】
なお、本実施形態の医薬組成物は、局所投与用であっても全身投与用であってもよいが、有効成分としての水溶性分子の含有量の観点から、局所投与用であることが好ましい。

【0055】
[化粧料]
1実施形態において、本発明は、上記実施形態のゲル状組成物を含む化粧料を提供する。

【0056】
上記実施形態のゲル状組成物は、分子量500以上の水溶性分子を含有させることができるため、ヒアルロン酸やコラーゲン等の水溶性高分子を美容成分として含む化粧料に適用することができる。本実施形態の化粧料は、上記実施形態のゲル状組成物に、適宜、化粧料に一般的に使用される添加物を添加して、常法により製造することができる。

【0057】
上記実施形態のゲル状組成物を用いれば、通常は経皮吸収されない分子量500以上の水溶性分子であっても、経皮吸収させることができる。そのため、本実施形態の化粧料は、水溶性高分子である美容成分を経皮吸収させるための経皮吸収型製剤に適している。

【0058】
本実施形態の化粧料は、ゲル状化粧料、パック剤、噴霧剤などとすることができる。
【実施例】
【0059】
以下、実験例により本発明を説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
【実施例】
【0060】
[ゲル状組成物の調製]
水溶性高分子として、デキストラン(平均分子量:6,000、SIGMA-ALDRICH.Co)、フルオレセインイソチオシアナート-デキストラン(FD4)(平均分子量:4,000、SIGMA-ALDRICH.Co)、ニワトリ卵白由来アルブミン(OVA)(平均分子量:45,000、SIGMA-ALDRICH.Co)及びオボアルブミンのフルオレセイン結合体(FITC-OVA)(平均分子量:45,000、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社)を用いた。前記水溶性高分子をそれぞれ水に溶解し、水溶性高分子水溶液(20mg/mL)を作成した。なお、FD4及びFITC-OVAは、皮膚移行試験において、共焦点レーザー顕微鏡による蛍光画像を取得するために用いた。
【実施例】
【0061】
ゲル状組成物の調製には、大豆レシチン(ホスファチジルコリン含量95%、H.Holstein GmbH & Co.)及び流動パラフィン(カネダ株式会社)を使用した。大豆レシチン、上記水溶性高分子水溶液及び流動パラフィンをバイアルに封入し、マグネチックスターラーを用いて十分に撹拌した。なお、各成分の配合比は、レシチン/水溶性高分子水溶液/流動パラフィン=30/0.75/69.25(質量%)とした。
【実施例】
【0062】
[ゲル状組成物の相状態の観察]
図2に、上記で調製したゲル状組成物の外観を示す。(a)は水溶性高分子としてデキストランを用いた場合であり、(b)は水溶性高分子としてOVAを用いた場合である。図2に示すように、(a)及び(b)のいずれも、バイアルを逆さまにしてもバイアル底面に留まっており、ゲル状組成物が得られたことが確認できた。また、図2に示すように、得られたゲル状組成物は透明であった。
【実施例】
【0063】
次に、得られたゲル状組成物の偏光像を、偏光顕微鏡(ECLIPSE E600W POL、株式会社ニコン、東京)を用いて観察した。図3に、ゲル状組成物の偏光顕微鏡像を示す。(a)は水溶性高分子としてデキストランを用いた場合であり、(b)は水溶性高分子としてOVAを用いた場合である。図3に示すように、(a)及び(b)のいずれにおいても、液晶に特徴的な偏光像は観察されなかったことから、(a)及び(b)のゲル状組成物は逆紐状ミセルを形成していることが確認された。
【実施例】
【0064】
さらに、ゲル状組成物の内部構造を詳細に検討するために小角X線散乱(SAXS)測定を行った。SAXS測定は、SPring-8のBL40B2ビームラインを用いて行った。SAXS測定用サンプルは、上記ゲル状組成物を流動パラフィンで15倍希釈したものを使用した。このように調製したサンプルを、直径2mmの石英ガラスキャピラリーに充填して測定を行った。X線の波長は0.1nm、カメラ長は4000mmとし、検出器にはイメージングプレート(30cm角)を用いた。なお、測定温度は25℃とした。
【実施例】
【0065】
図4に、水溶性高分子としてOVAを用いた場合のサンプルの散乱強度(I(q))と散乱ベクトル(q)との関係を示す。ここでq=(4π/λ)sinθであり、θは散乱角、λはX線の波長である。Guinier領域とPorod領域の間にある中間領域からは、散乱体の形状に依存した散乱を見ることができる。図4に示すように、中間領域の傾きが-1であったことから、サンプル溶液中には棒状の粒子すなわち逆紐状ミセルが存在することが明らかになった。また、水溶性高分子としてデキストランを使用した場合も同様に、サンプルの散乱強度(I(q))と散乱ベクトル(q)との関係をプロットしたところ、中間領域の傾きは-1であった(図示せず)。このことから、サンプル溶液中に逆紐状ミセルが存在することが明らかになった。
【実施例】
【0066】
[ゲル状組成物のレオロジー特性]
ゲル状組成物のレオロジー測定は、ペルチェ温度コントローラを装着したストレス制御式レオメーター(HAAKE RS600, Thermo Fischer Scientific Inc., MA, USA)を使用し、パラレルプレートセンサー(直径35mm)及び溝付きパラレルプレートセンサー(直径20mm)を用いて行った。動的粘弾性測定は、試料に振動ひずみを与えて、周波数(ω)に対する貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G’’)の変化を求めることにより行った。ここで、G’は弾性すなわち固体としての性質を反映しており、G’’は粘性すなわち液体としての性質を反映している。
【実施例】
【0067】
図5に、水溶性高分子としてOVAを用いた場合の動的粘弾性測定の結果を示す。図5に示すように、G’とG’’はある周波数で交点を示し、交点よりも低周波数側では粘性成分であるG’’が優位であり、交点よりも高周波数側では弾性成分であるG’が優位であった。この挙動は、粘弾性体の基本モデルであるMaxwellモデルに類似しており、逆紐状ミセルに特徴的なものである。また、水溶性高分子としてデキストランを使用した場合も動的粘弾性測定を行ったところ、OVAを用いた場合と同様の結果が得られた(図示せず)。
【実施例】
【0068】
[水溶性高分子の皮膚移行試験]
<ユカタンミニブタ(YMP)の皮膚処理>
ゲル状組成物に含まれる水溶性高分子の皮膚移行性の評価には、ユカタンミニブタ(YMP)皮膚の脇腹側を使用した。YMP皮膚は、5か月齢の雌性YMPから採取された後に-80℃で凍結保存されたSkin set(日本チャールスリバー、神奈川)を用いた。凍結保存された皮膚を、室温にて自然解凍後、皮下脂肪を手術用ハサミを用いて除去し、試験用皮膚とした。
【実施例】
【0069】
<皮膚移行試験の方法>
皮膚移行試験は、フランツ型拡散セル(Hanson research Co., CA, USA)(有効面積:1.74cm)を用いて行った。レセプター溶液にはカナマイシン硫酸塩(SIGMA-ALDRICH.Co)を0.001%添加したリン酸緩衝液(pH7.0)を用いた。試験中、レセプター溶液は、マグネチックスターラーで撹拌(550rpm)し、フランツ型拡散セル内は32℃に保った。なお、pH7.0リン酸緩衝液は、リン酸二水素ナトリウム(無水)及びリン酸水素二ナトリウム・12水和物(特級品、関東化学株式会社)を用いて調製した。フランツ型拡散セルのレセプターのトップに、3cm×3cmのYMP皮膚を装着し、試料を0.1g/cmとなるようにYMP皮膚に塗布した。YMP皮膚は、24時間経過後に回収した。皮膚回収後、YMP皮膚表面に残った試料をキムワイプで除去した後、テープストリッピングを1回行った。なお、試料には、0.01質量% FD-4溶液、FD-4を含むゲル状組成物、0.01質量% FITC-OVA溶液、及びFITC-OVAを含むゲル状組成物を使用した。
【実施例】
【0070】
<水溶性高分子の皮膚移行性の評価方法>
皮膚移行試験終了後のYMP皮膚を、約5mm×5mm角に切断した後、凍結包埋コンパウンド(ティシュー・テックO.C.T.コンパウンド、サクラファインテックジャパン株式会社、東京)を用いて包埋皿(ティッシューテッククライオクリオモルド、サクラファインテックジャパン株式会社、東京)に包埋し、凍結した。凍結皮膚サンプルは、クリオスタット(ティシュー・テック クライオ 3、サクラファインテックジャパン株式会社、東京)を用いて、-40℃で20μmの厚さに切断し、スライドガラス(MAS-GP TypeA、松浪硝子工業株式会社、大阪)上に貼り付け、共焦点レーザー顕微鏡(LSM710、カールツァイスマイクロスコピー株式会社、ドイツ)で観察した。なお、蛍光画像は、アルゴンレーザー(488nm)を用いてフルオレセインの緑色蛍光を検出することにより取得した。蛍光色素の皮膚への移行度は、1視野中の8点の深さを測定し、それを重ねることにより、Merge画像を得て評価した。
【実施例】
【0071】
<結果>
図6~図9に、皮膚移行試験後の皮膚切片画像を示す。左図は蛍光画像であり、右図はMerge画像である。図6は0.01質量% FD-4水溶液を塗布したもの、図7は水溶性高分子としてFD-4を含むゲル状組成物を塗布したもの、図8は0.01質量% FITC-OVAを塗布したもの、図9はFITC-OVAを含むゲル状組成物を塗布したものである。
【実施例】
【0072】
FD-4水溶液を塗布した皮膚切片画像(図6)では、毛包にFD-4が入り込んでいる箇所が観察されたが、表皮までの移行は観察されなかった。一方、FD-4を含むゲル状組成物を塗布した皮膚切片画像(図7)では、FD-4は角層だけでなく表皮にまで移行している様子が確認された。特に、毛包などの組織の密集している場所では、皮膚移行性が大きかった。
【実施例】
【0073】
FITC-OVA水溶液を塗布した皮膚切片画像(図8)では、角層の表面や毛包にFITC-OVAが入り込んでいるところが観察されたが、表皮までの移行は観察されなかった。一方、FITC-OVAを含むゲル状組成物を塗布した皮膚切片画像(図9)では、FITC-OVAが角層に入り込み、場所によっては表皮にまで移行していることが確認された。FD-4を含むゲル状組成物と同様に、特に、毛包付近では皮膚移行性が大きかった。
【実施例】
【0074】
以上の皮膚移行試験の結果を表1にまとめた。
【表1】
JP2018016728A_000003t.gif
【実施例】
【0075】
以上より、ゲル状組成物においては、FD-4及びFITC-OVAのいずれにおいても、角層を透過し表皮まで移行することが確認された。この結果は、本実施形態のゲル状組成物を用いれば、平均分子量が45,000(FITC-OVAの場合)の水溶性高分子であっても、表皮まで移行させることができることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明によれば、水溶性高分子の経皮吸収可能な技術が提供される。本発明のゲル状組成物は、医薬組成物や化粧料に適用することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8