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明細書 :血管組織およびその作製方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6241890号 (P6241890)
登録日 平成29年11月17日(2017.11.17)
発行日 平成29年12月6日(2017.12.6)
発明の名称または考案の名称 血管組織およびその作製方法
国際特許分類 C12N   5/071       (2010.01)
A61F   2/06        (2013.01)
C12N  11/10        (2006.01)
FI C12N 5/071
A61F 2/06
C12N 11/10
請求項の数または発明の数 22
全頁数 19
出願番号 特願2014-531532 (P2014-531532)
出願日 平成25年6月20日(2013.6.20)
国際出願番号 PCT/JP2013/066993
国際公開番号 WO2014/030418
国際公開日 平成26年2月27日(2014.2.27)
優先権出願番号 2012181261
優先日 平成24年8月18日(2012.8.18)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成28年6月16日(2016.6.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人 千葉大学
発明者または考案者 【氏名】関 実
【氏名】山田 真澄
【氏名】岩瀬 優輝
審査官 【審査官】濱田 光浩
参考文献・文献 特開2012-120696(JP,A)
特開2013-9598(JP,A)
国際公開第2009/042639(WO,A2)
国際公開第2005/025584(WO,A1)
Bo Yuan et al.,Advanced Materials,2012年 2月14日,Vol. 24, No. 7,p. 890-896
Marina I. Santos et al.,Biomaterials,2008年,Vol. 29, No. 32,p. 4306-4313
Cyrille Norotte et al.,Biomaterials,2009年,Vol. 30, No. 30,p. 5910-5917
N.M.S. Bettahalli et al.,Journal of Membrane Science,2011年,Vol. 371,p. 117-126
Ross J. DeVolder et al.,Biomaterials,2012年 7月26日,Vol. 33, No. 31,p. 7718-7726
長沼洋次他,垂直型マイクロノズルアレイ構造を用いた複合型アルギン酸ファイバーの作製,化学とマイクロ・ナノシステム学会研究会講演要旨集,2011年,Vol. 23,p. 43,PB07
調査した分野 C12N 5/00
C12N 11/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
多価の金属カチオン又は多価の金属カチオンを含む無機塩を含む素材によって構成される流路構造に対し、
細胞を懸濁させた第1のアルギン酸ナトリウム水溶液を導入し、前記流路構造の内壁に細胞を含む第1のアルギン酸ハイドロゲル層を形成した後、
前記流路構造内に残存するゲル化していない前記第1のアルギン酸ナトリウム水溶液を除去する、血管組織の作製方法。
【請求項2】
ゲル化していない前記第1のアルギン酸ナトリウム水溶液を除去した後、
前記流路構造に、細胞を懸濁させた第2のアルギン酸ナトリウム水溶液を導入し、前記第1のアルギン酸ハイドロゲル層の内壁に、細胞を含む第2のアルギン酸ハイドロゲル層を形成した後、
前記流路構造内に残存するゲル化していない前記第2のアルギン酸ナトリウム水溶液を除去する、請求項1に記載の血管組織の作製方法。
【請求項3】
前記第1のアルギン酸ナトリウム水溶液を除去した後、あるいは前記第2のアルギン酸ナトリウム水溶液を除去した後に、前記流路構造に対し、細胞懸濁液を導入する、請求項1乃至2のいずれか1項に記載の血管組織の作製方法。
【請求項4】
前記第1のアルギン酸ナトリウム水溶液を導入する直前に、前記流路構造に対し、多価のカチオンを含まない、あるいは多価のカチオン濃度が十分に低い、バッファー水溶液を導入する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の血管組織の作製方法。
【請求項5】
前記バッファー水溶液は、クエン酸及びエチレンジアミン四酢酸の少なくともいずれかを含む、請求項4に記載の血管組織の作製方法。
【請求項6】
前記第1のアルギン酸ナトリウム水溶液を除去した後、又は、前記第2のアルギン酸ナトリウム水溶液を除去した後に、前記流路構造に対し、多価の金属カチオンを含む水溶液を導入する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の血管組織の作製方法。
【請求項7】
前記流路構造を構成する素材に対し、物理的操作及び化学的処理の少なくともいずれかを施すことにより、前記流路構造の内壁に形成された前記細胞を含むアルギン酸ハイドロゲル層を前記流路構造から分離し回収する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の血管組織の作製方法。
【請求項8】
前記流路構造を構成する素材は、少なくとも部分的にハイドロゲル材料である、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の血管組織の作製方法。
【請求項9】
前記ハイドロゲル材料は、アルギン酸、アガロース、ゼラチン、コラーゲン、及び、ポリエチレングリコールジアクリレートの少なくともいずれかを含んで構成されている、請求項8に記載の血管組織の作製方法。
【請求項10】
前記流路構造を構成する素材は、少なくとも部分的にポリジメチルシロキサンである、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の血管組織の作製方法。
【請求項11】
前記多価の金属カチオンとは、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、及び、バリウムイオンの少なくともいずれかである請求項1乃至10のいずれか1項に記載の血管組織の作製方法。
【請求項12】
前記第1のアルギン酸ナトリウム水溶液および前記第2のアルギン酸ナトリウム水溶液に含まれるアルギン酸ナトリウムの濃度は、それぞれ0.1%(w/v)以上10%(w/v)以下である、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の血管組織の作製方法。
【請求項13】
前記流路構造は、その内壁面が予めポリカチオンによって表面処理されている、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の血管組織の作製方法。
【請求項14】
前記ポリカチオンは、ポリ-L-リジン、キトサン、及び、ポリエチレンイミンの少なくともいずれかを含む、請求項13に記載の血管組織の作製方法。
【請求項15】
前記第1のアルギン酸ナトリウム水溶液および前記第2のアルギン酸ナトリウム水溶液のうちの少なくとも一方には、コラーゲン及びマトリゲルの少なくともいずれかが添加されている、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の血管組織の作製方法。
【請求項16】
前記第1のアルギン酸ナトリウム水溶液および前記第2のアルギン酸ナトリウム水溶液のうちの少なくとも一方には、細胞接着性アルギン酸ナトリウムが添加されている、請求項1乃至15のいずれか1項に記載の血管組織の作製方法。
【請求項17】
前記細胞とは、哺乳動物由来の細胞である、請求項1乃至16のいずれか1項に記載の血管組織の作製方法。
【請求項18】
前記細胞とは、血管平滑筋細胞、血管内皮細胞、及び血管上皮細胞の少なくともいずれかを含む、請求項1乃至17のいずれか1項に記載の血管組織の作製方法。
【請求項19】
前記第1のアルギン酸ナトリウム水溶液および前記第2のアルギン酸ナトリウム水溶液に含まれる細胞の密度は、それぞれ1mL当たり1000万個以上である、請求項1乃至18のいずれか1項に記載の血管組織の作製方法。
【請求項20】
前記第1のアルギン酸ナトリウム水溶液および前記第2のアルギン酸ナトリウム水溶液に、それぞれ含まれる細胞は、その種類、密度、及び、混合比率のうちの少なくともいずれか1つが異なる、請求項2乃至19のいずれか1項に記載の血管組織の作製方法。
【請求項21】
前記第1のアルギン酸ハイドロゲル層および前記第2のアルギン酸ハイドロゲル層は、その厚みがそれぞれ10マイクロメートル以上である、請求項1乃至20のいずれか1項に記載の血管組織の作製方法。
【請求項22】
前記血管組織は、少なくとも部分的に多層状構造、中空構造、および分岐構造を有する、請求項1乃至21のいずれか1項に記載の血管組織の作製方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、血管組織およびその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人工的に構築された血管様の組織や材料は、外科領域における移植用人工血管グラフトとして必須である。また、再生医療を目的として、生体外において比較的大きな組織体を形成するためには、内部の細胞に効率的に酸素や栄養分を供給する必要があり、管腔状の組織を包埋することが望ましい。さらに、生体の構造を模倣した環境において細胞の生理学的評価を行う場合に、血管網を有する組織を作製する必要がある。これらの要求に応えるために、生体外において人工的に機能的な血管組織を作製するための技術開発は、現在世界的にも非常に激しい競争下にある。
【0003】
このような応用を目的として作製される血管組織は、内部に液体を送液することが可能であること、移植操作などに耐えられる強度を有すること、実際の生体内の組織に比較的近い状態であること、等の条件を満たすことが必要である。
【0004】
たとえば通常の人工血管としては、一般的にポリエステルやPTFE等の人工材料、あるいはコラーゲンやゼラチン等の生体材料によって形成されたものが用いられるが、直径が5mm程度以下のものは血小板などによって閉塞されやすいため、医療分野において実用化されている人工血管の直径は、通常は5mm以上である。より生体親和性が高く、また血栓の形成を防止できる人工血管として、少なくとも部分的に細胞によって構成された血管組織を利用することが望ましい。
【0005】
生体内における血管組織は、血管平滑筋細胞の内側に血管内皮細胞が単層状に組織化した多層状構造を形成しており、内部に血液が流通するための中空構造を有し、さらに臓器などの生体組織全体に効率よく栄養素を循環させるために必要に応じて分岐し合流する、といった比較的複雑な組織である。そのため、生体外において機能的な血管組織を作製するためには、これらの構造を簡便かつ正確に再現する手法の開発が必要であり、細胞を3次元的に配置する技術が必要となる。
【0006】
生体外において細胞によって構成された血管組織を構築するために、これまでに様々な技術が開発されてきた。例として、非特許文献1に示されるような温度応答性培養基材を利用した細胞シートの形成と巻き取り、非特許文献2に示されるようなファイバー状ハイドロゲル材料への細胞の包埋、非特許文献3に示されるような中空状ポリマースキャホ-ルド(細胞培養のための足場となる基材)への細胞の播種、非特許文献4に示されるような細胞集塊を単位構造として利用したインクジェットプリンティングの応用などが挙げられる。
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】「アドバンスドマテリアルズ(Advanced Materials)」、2012、24、890-896.
【非特許文献2】「バイオマテリアルズ(Biomaterials)」、2008、29、4306-4313.
【非特許文献3】「ジャーナルオブメンブレンサイエンス(Journal of Membrane Science)」、2011、371、117-126.
【非特許文献4】「バイオマテリアルズ(Biomaterials)」、2009、30、5910-5917.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これまでに開発されてきた血管組織の作製法である、細胞シートの巻き取りによる手法や、ファイバー状のハイドロゲル材料への細胞の包埋による手法では、分岐構造を有する組織を作製することは困難である。
【0009】
非特許文献4に報告されているようなインクジェットプリンティングを用いた手法は、層状構造、中空構造、分岐構造のすべてを有する血管組織の作製を可能とするほぼ唯一の既存の手法である。この手法では、スフェロイドと呼ばれる球形の細胞の塊と、細胞を含まない棒状のアガロースゲルを、それぞれインクジェット技術によって正確に配置し培養する。細胞はアガロースゲルに接着することが出来ないため、スフェロイド同士が接着し、立体的な任意の形状の組織を作製することが可能となる。
【0010】
しかしながら、上記非特許文献4に記載された手法では、細胞の位置を3次元的に制御するための非常に複雑で特殊な装置を必要する、という問題点がある。また、中空構造を作製するためには、アガロースゲルのガイドとスフェロイドを段階的に積み上げる多段階のプロセスが必要となり、さらに、物体の位置を個別に正確に制御するための複雑な駆動機構が必要である。また、インクジェット機構によって細胞塊を吐出するため、細胞に対してダメージを与える可能性がある。
【0011】
さらに、生体外において作製した組織が血管組織として機能するためには、その内部に液体を導入できることが必須であるが、上記非特許文献4に記載された手法によって作製された血管組織は、その内部にガイドとして用いたアガロースゲルが充填されてしまうため、アガロースゲルを加熱処理や酵素処理などで除去するためのプロセスが必要となる。その反面、組織内部に存在するアガロースゲルは、ほぼ全面が細胞集塊によって覆われているため、その除去は非常に困難である。
【0012】
さらに、上記非特許文献4に記載された手法を用いて、異なる細胞によって構成される多層状の血管構造を作製する場合、内側の細胞、外側の細胞、アガロースゲルの3種の物体を順番に配置し積み上げる必要があるため、操作プロセスがさらに複雑となるという問題点があるほか、組織構築に要する時間が増加し細胞機能の低下を招く可能性がある。
【0013】
本発明は、従来の技術の有する上記したような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、少なくとも部分的に細胞によって構成される血管組織を生体外において作製するための既存の手法において必須であった、複雑な位置制御装置および操作、および、多段階にわたる煩雑なプロセスを必要とせず、簡便な操作によって、層状構造、中空構造、分岐構造のすべての構造を兼ね備えた機能的な血管組織を作製する新規手法を提供するとともに、その新規手法によって得られる血管組織を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の一観点に係る発明は、多価の金属カチオン又は多価の金属カチオンの少なくともいずれかを含む無機塩を含む素材によって構成される流路構造に対し、細胞を懸濁させた第1のアルギン酸ナトリウム水溶液を導入し、前記流路構造の内壁に細胞を含む第1のアルギン酸ハイドロゲル層を形成した後、前記流路構造内に残存するゲル化していない前記第1のアルギン酸ナトリウム水溶液を除去する、血管組織の作製方法である。このような方法を用いることによって、流路構造に対し細胞を懸濁させたアルギン酸ナトリウム水溶液を導入するだけで、流路構造を構成する素材から供給される多価の金属カチオンによってアルギン酸が架橋され、流路構造の内壁に細胞を含むアルギン酸ハイドロゲル層が形成されるため、非常に簡便な操作によって、流路構造の形状に依存した任意の形態の、中空状の血管組織を作製することが可能となる。
【0015】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、ゲル化していない前記第1のアルギン酸ナトリウム水溶液を除去した後、前記流路構造に、細胞を懸濁させた第2のアルギン酸ナトリウム水溶液を導入し、前記第1のアルギン酸ハイドロゲル層の内壁に、細胞を含む第2のアルギン酸ハイドロゲル層を形成した後、前記流路構造内に残存するゲル化していない前記第2のアルギン酸ナトリウム水溶液を除去することが好ましい。このようにすることで、非常に簡便に内層および外層からなる多層状の血管組織構造を作製することが可能となり、実際の血管構造をより高度に模倣した3次元的な組織体を得ることが可能となる。
【0016】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記第1のアルギン酸ナトリウム水溶液又は前記第2のアルギン酸ナトリウム水溶液を除去した後に、前記流路構造に対し、細胞懸濁液を導入することも可能である。このようにすることで、細胞を含むアルギン酸ハイドロゲル層の内壁面に、更に細胞を接着させることが可能となるため、実際の血管組織と同様に、内壁面に細胞が単層に組織化された血管組織を作製することが可能となる。
【0017】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記第1のアルギン酸ナトリウム水溶液を導入する直前に、前記流路構造に対し、多価のカチオンを含まない、又は、多価のカチオン濃度が十分に低い、バッファー水溶液を導入することが好ましい。このようにすることで、流路構造近傍に存在する多価の金属カチオンを適度に除去することが可能となるため、アルギン酸のゲル化速度を調節することが可能となるほか、作製される血管組織の厚みを容易かつ正確に制御することが可能となる。
【0018】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記バッファー水溶液は、クエン酸及びエチレンジアミン四酢酸の少なくともいずれかを含んでいても良い。このようにすることによって、流路構造を構成する素材中に存在する多価の金属カチオンを、より効率的に除去することが可能となるため、より正確にアルギン酸のゲル化速度を調節することが可能となる。
【0019】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記第1のアルギン酸ナトリウム水溶液を除去した後、又は、前記第2のアルギン酸ナトリウム水溶液を除去した後に、前記流路構造に対し、多価の金属カチオンを含む水溶液を導入することが好ましい。このようにすることによって、流路構造の内壁に形成されたアルギン酸ハイドロゲル層を内側から完全にゲル化することが可能となり、より強度の高い血管組織を作製することが可能となる。
【0020】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記流路構造を構成する素材に対し、物理的操作及び化学的処理の少なくともいずれかを施すことにより、前記流路構造の内壁に形成された前記細胞を含むアルギン酸ハイドロゲル層を前記流路構造から分離し回収することも可能である。このようにすることによって、流路内において形成された血管組織を回収することが可能となるため、例えば、血管移植治療のために使用可能な血管組織を提供することが可能となるほか、比較的大きな細胞組織を構築するために有用な単位構造としての血管組織を提供することが可能となる。
【0021】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記流路構造を構成する素材は、少なくとも部分的にハイドロゲル材料であることが好ましい。このようにすることによって、アルギン酸をゲル化するために必要となる多価の金属カチオンを効率的に流路構造内部に存在するアルギン酸ナトリウム水溶液に供給することが可能となるほか、細胞を培養する場合に流路構造を構成する素材からも酸素や栄養分を供給することが可能となる。
【0022】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記ハイドロゲル材料は、アルギン酸、アガロース、ゼラチン、コラーゲン、及び、ポリエチレングリコールジアクリレート、の少なくともいずれかを含んで構成されていることが好ましい。このようにすることで、生体適合性があり、細胞に対する毒性が低く、物理的強度が比較的高く、保水性が高く、さらに細胞組織への栄養素や酸素の効率的な供給を可能とする、流路構造を作製することが可能である。
【0023】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記流路構造を構成する素材は、少なくとも部分的にポリジメチルシロキサンであってもよい。このようにすることで、生体適合性が高く、微細な流路構造を、正確かつ簡便に作製することが可能となるため、血管組織をより簡便に作製することが可能となる。
【0024】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記多価の金属カチオンは、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、及びバリウムイオンの少なくともいずれかであることが好ましい。このようにすることで、アルギン酸のゲル化時に、細胞に対する毒性を低くすることが可能となるほか、強度の高い血管組織を作製することが可能となる。
【0025】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記第1のアルギン酸ナトリウム水溶液および前記第2のアルギン酸ナトリウム水溶液に含まれるアルギン酸ナトリウムの濃度は、それぞれ0.1%(w/v)以上10%(w/v)以下であることが好ましい。このようにすることによって、流路構造の内壁において比較的強度の高いアルギン酸ハイドロゲル層を形成することが可能となる。
【0026】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記流路構造は、その内壁面が予めポリカチオンによって表面処理されていることが好ましい。このようにすることによって、負電荷を有するアルギン酸ハイドロゲルを流路構造の内壁面により強固に接着させることが可能となるため、より安定にアルギン酸ハイドロゲル層を形成することが可能となる。
【0027】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記ポリカチオンとは、ポリ-L-リジン、キトサン、及び、ポリエチレンイミンの少なくともいずれかであることが好ましい。このようにすることによって、アルギン酸ハイドロゲル層を流路構造の内壁面に強固に接着させることが可能となる。
【0028】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記第1のアルギン酸ナトリウム水溶液および前記第2のアルギン酸ナトリウム水溶液のうちの少なくとも一方には、コラーゲン及びマトリゲルの少なくともいずれかが添加されていても良い。このようにすることによって、前記第1のアルギン酸ハイドロゲル層あるいは前記第2のアルギン酸ハイドロゲル層内に包埋された細胞の機能維持が可能となるほか、形成されたアルギン酸ハイドロゲル層の内部に導入した細胞の接着および増殖を促進することが可能となるため、より効率的に単層の細胞内層を形成することが可能となる。
【0029】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記第1のアルギン酸ナトリウム水溶液および前記第2のアルギン酸ナトリウム水溶液のうちの少なくとも一方には、細胞接着性アルギン酸ナトリウムが添加されていても良い。このようにすることによって、形成されたアルギン酸ハイドロゲル層の内部に導入した細胞の接着および増殖を促進することが可能となるため、より効率的に単層の細胞内層を形成することが可能となる。
【0030】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記細胞とは、哺乳動物由来の細胞であることが好ましい。このようにすることによって、哺乳動物由来の細胞を含む血管組織を構築することが可能となり、移植医療や組織工学において有用な材料の提供が可能となる。
【0031】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記細胞とは、血管平滑筋細胞、血管内皮細胞、血管上皮細胞、あるいはそれらの混合物であることが好ましい。このようにすることによって、より生体の組織に近い血管組織を作製することが可能となる。
【0032】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記第1のアルギン酸ナトリウム水溶液および前記第2のアルギン酸ナトリウム水溶液に含まれる細胞の密度は、それぞれ1mL当たり1000万個以上であることが好ましい。このようにすることによって、形成するアルギン酸ハイドロゲル層の内部に細胞を密に包埋することが可能となり、細胞同士の接着が促進され、機能的な血管組織を効率的に形成することが可能となるほか、細胞の生理機能を高く維持することが可能である。
【0033】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記第1のアルギン酸ナトリウム水溶液および前記第2のアルギン酸ナトリウム水溶液に、それぞれ含まれる細胞は、その種類、密度、混合比率のうちの少なくともいずれか1つが異なることが好ましい。このようにすることによって、異なる細胞組成を有する多層構造によって構成された実際の生体の血管組織により近い組織を作製することが可能である。
【0034】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記第1のアルギン酸ハイドロゲル層および前記第2のアルギン酸ハイドロゲル層は、その厚みがそれぞれ10マイクロメートル以上であることが好ましい。このようにすることによって、細胞を効率的にアルギン酸ハイドロゲル層に包埋することが可能となるほか、強度の高い血管組織を作製することが可能となる。
【0035】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記血管組織は、少なくとも部分的に多層状構造、中空構造、および分岐構造を有することが好ましい。このようにすることによって、より生体の組織に近い血管組織を提供することが可能となる。
【0036】
また、本発明の他の一観点に係る発明は、請求項1乃至21のいずれか一項に記載の血管組織の作製方法を用いて作製された、血管組織である。このような血管組織は、移植材料としての利用、組織工学における管腔構造としての利用、生体構造を高度に模倣した構造における細胞機能の評価を可能とするため、これらの医療応用、産業応用、あるいは学術応用を行う上で非常に有用な材料を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0037】
本発明は、以上に述べられたように構成されているため、細胞を3次元的に配置するための従来の手法において必要であった特殊な装置を必要とせず、流路構造に細胞を懸濁させたアルギン酸水溶液を導入するという非常に簡便な操作によって、効率的、簡便、かつ正確に血管組織を作製することを可能とする、という優れた効果を発揮する。
【0038】
また本発明は、以上に述べられたように構成されているため、これまでにごく少数の報告例があるのみであった、多層構造、中空構造、分岐構造のすべてを同時に有する機能的な血管組織を、簡便に作製することを可能とするため、生体内の血管組織を高度に模倣した材料を安価かつ大量に提供することが可能となる。
【0039】
さらにまた、本発明は以上に述べられたように構成されているため、本発明を用いて得られる血管組織は機械的強度に優れ、操作性が高い。そのため、例えば他の比較的大きな組織の内部に埋め込むことによって、管腔構造を組み込んだ3次元的な組織を作製する、といった、組織工学や再生医療などへの応用において、非常に有用な材料を提供することが可能となる。
【0040】
さらにまた、本発明は以上に述べられたように構成されているため、流路の形状を任意に設計することによって、任意の形状を有する血管組織を作製することが可能となり、さらに、アルギン酸ナトリウム水溶液の組成や送液時間を制御することにより、血管組織の厚みおよび中空部分の幅を任意に制御することが可能となる。そのため、用途に応じて様々な形態を有する血管組織を作製することが可能となる。
【0041】
さらにまた、本発明は以上に述べられたように構成されているため、例えば、様々な形状を有する多層状の血管組織内における血栓形成挙動あるいは血管新生挙動、血管内における癌細胞の転移あるいは浸潤挙動など、血管組織内で生じる種々の生体現象を解析、分析、評価するための、非常に有用な材料を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施形態に係る、血管組織作製のための最も基本的な流路構造および、細胞を含むアルギン酸ハイドロゲル層の形成プロセスを示した概略図である。図1(a)および図1(b)は、流路構造を有するデバイスの構造を示した図であり、図1(a)は図1(b)におけるB矢視図であり、図1(b)は図1(a)におけるA0-A1線における流路構造の断面図である。図(c)は、図1(a)における部分Cの拡大図および、細胞を含むアルギン酸ハイドロゲル層の形成プロセスを示した概略図である。
【図2】実施形態に係る、2種類の細胞を含む多層状のアルギン酸ハイドロゲル層を形成するプロセスを示した概略図である。
【図3】実施形態に係る、異なる種類の細胞を含む多層状のアルギン酸ハイドロゲル層の内側に細胞を単層状に組織化する様子を示した概略図である。
【図4】実施形態に係る、分岐を有する血管組織を作製するための流路構造の概略図である。図4(a)は、図4(b)乃至(d)におけるB矢視図であり、図4(b)乃至(d)はそれぞれ、図4(a)におけるA0-A1線、A2-A3線、A4-A5線における、流路構造の断面図を示している。
【図5】実施例に係る、流路構造の概略図例および、流路構造の内壁において形成した多層状のアルギン酸ハイドロゲル層の顕微鏡写真であり、図5(a)は、流路構造の全体図を示しており、図5(b)乃至(e)は、図5(a)における部分Bに相当する位置の顕微鏡写真である。図5(b)は、蛍光粒子を含む第1のアルギン酸ハイドロゲル層が形成された様子を示した蛍光顕微鏡写真であり、図5(c)は、第2のアルギン酸ナトリウム水溶液が導入された直後の様子を示した蛍光顕微鏡写真であり、図5(d)は、第2のアルギン酸ハイドロゲル層が形成された後に緑色蛍光粒子を含むバッファー水溶液がアルギン酸ハイドロゲル層の内部を流れる様子を示した蛍光顕微鏡写真であり、図5(e)は形成されたアルギン酸ハイドロゲル層の位相差顕微鏡写真である。
【図6】実施例に係る、流路構造の他の概略図例および、流路構造の内壁において形成された、異なる蛍光色素によって染色された2種類の細胞を包埋する、多層状のアルギン酸ハイドロゲル層の顕微鏡写真であり、図6(a)は流路構造の全体図を示しており、図6(b)および(c)はそれぞれ、図6(a)における部分Bに相当する位置の位相差顕微鏡写真および蛍光顕微鏡写真である。
【図7】実施例に係る、流路構造を構成する素材に対し化学的処理を施すことによって分離された、異なる細胞を含む多層状のアルギン酸ハイドロゲル層の顕微鏡写真であり、図7(a)および(b)はそれぞれ位相差顕微鏡写真および蛍光顕微鏡写真である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明に係る血管組織の作製方法および血管組織の最良の形態を詳細に説明するものとする。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例の例示にのみ限定されるものではない。
【0044】
図1は、血管組織作製のための最も基本的な流路構造および、細胞を含むアルギン酸ハイドロゲル層の形成プロセスを示した概略図である。図1(a)および図1(b)は、流路構造を有するデバイスの構造を示した図であり、図1(a)は図1(b)におけるB矢視図であり、図1(b)は図1(a)におけるA0-A1線における流路構造の断面図である。図(c)は、図1(a)における部分Cの拡大図および、細胞を含むアルギン酸ハイドロゲル層の形成プロセスを示した概略図である。
【0045】
流路構造を構成する素材としては、形成された流路構造を維持できる物理的強度があり、細胞に対する毒性が低く、素材内部に含まれる多価の金属カチオンが流路構造内部に導入したアルギン酸ナトリウム水溶液へと拡散するものであれば、どのような材料であっても用いることが可能であり、種々のハイドロゲル材料やポリマー素材を用いることが可能である。ただし、操作性の観点から、ある程度強度が高く、予め滅菌可能であり、また、細胞の機能維持を補佐するために、培地成分が素材内部に浸透することが好ましい。そのため、ハイドロゲルのような保水性の高い材料は好適である。流路構造を構成するための代表的なハイドロゲル素材としては、アルギン酸、アガロース、ゼラチン、コラーゲン、ポリエチレングリコールジアクリレート等が挙げられる。
【0046】
一方、ポリジメチルシロキサンのようなシリコーンポリマー材料は、流路構造を加工しやすいという利点があり、多価カチオンによって構成される無機塩を予め混合することが可能であること、さらにアルギン酸ナトリウム水溶液を流路構造内部に導入する際に、それらの塩から多価カチオンが溶出することによってアルギン酸ハイドロゲル層が形成されること、等の特徴があるため、そのようなポリマー材料によって形成された流路構造を用いることも可能である。
【0047】
図1に示された流路構造は、溝構造を有する平板状の基板と、溝構造を有さない平板状の基板を上下にはり合わせることによって形成されている。溝構造を有する平板状の基板は、たとえば鋳型を用いたモールディングによって形成することが可能である。
【0048】
図1(c)に示されるように、本発明では、多価の金属カチオン又は多価の金属カチオンを含む無機塩を含む素材によって構成された流路構造に対し、細胞を懸濁させたアルギン酸ナトリウム水溶液を導入すると、流路構造を構成する素材から供給される多価の金属カチオンによってアルギン酸が架橋され、流路の内壁に細胞を含むアルギン酸ハイドロゲル層が形成されるため、流路構造の形状に依存した、中空構造かつ層状構造を有する血管組織を作製することが可能である。
【0049】
多価の金属カチオンを流路を構成する素材に含ませるためには、流路を構成する素材がハイドロゲル材料である場合は、ハイドロゲルを形成する前のゾル溶液に、予め多価の金属カチオンを含む水溶液又は多価の金属カチオンを含む無機塩を混合させた後、ゲル化させ、流路構造を作製することが可能であり、このようにすることによって、ハイドロゲル内に均一に多価の金属カチオンを含ませることが可能である。また、作製した流路構造全体を、多価の金属カチオンを含む水溶液に一定時間浸すことによって、多価の金属カチオンを流路構造を構成する素材に含ませることも可能である。一方、流路構造を構成する素材としてポリジメチルシロキサンを用いる場合は、ポリジメチルシロキサンのプレポリマーに対し予め多価の金属カチオンを含む無機塩を混合した後に、モールディングによって流路構造を作製することが好ましい。
【0050】
流路構造の大きさは、作製対象とする血管組織の構造に応じて、深さおよび幅がそれぞれ50マイクロメートル以上10ミリメートル以下の任意の値となるように設定することが可能である。
【0051】
流路構造の断面は、矩形、円形、あるいはその他の任意の形状のものを用いることが可能である。ただし、矩形の断面のものは、モールディングによる作製プロセスによって形成しやすい、という利点があり、円形のものは、より生体構造に近い血管組織を形成しやすい、という利点がある。
【0052】
流路構造を構成する素材に含まれる多価の金属カチオンとしては、アルギン酸をゲル化することのできる多価の金属イオンであれば、任意の物を用いることが可能である。ただし、細胞への毒性の少なさ、コスト等の観点から、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、及びバリウムイオンの少なくともいずれかであることが好ましい。より具体的には、流路構造を構成する素材がハイドロゲル材料である場合は、これらの塩化物を予めゾル溶液に溶解させることが好ましく、ポリジメチルシロキサンを素材として用いる場合は、これらの塩化物、硫酸塩、炭酸塩を使用することが好ましい。
【0053】
流路構造を構成する素材に含まれる多価の金属カチオンの濃度は、アルギン酸のゲル化を可能とし、また細胞に毒性のない範囲であれば、どのような値であっても構わないが10mM以上100mM以下であることが好ましい。なお、多価の金属カチオンの濃度が高いほど、アルギン酸のゲル化に要する時間は短くなるため、使用する流路構造の大きさに応じて、この濃度を最適化することが好ましい。
【0054】
アルギン酸ナトリウム水溶液には細胞を懸濁させる必要がある。そのため、予めアルギン酸ナトリウム水溶液のイオン強度は適切に調節されている必要があり、また、細胞を懸濁させる前にアルギン酸ナトリウム水溶液が滅菌されていることが好ましい。
【0055】
アルギン酸ナトリウム水溶液に懸濁させる細胞として、血管平滑筋細胞、血管内皮細胞、血管上皮細胞等を用いることによって、実際の血管組織に近い多層状の血管組織を作製することができる。ただしその他にも、必要に応じて、繊維芽細胞、筋芽細胞、肝細胞、神経細胞、心筋細胞、等の細胞を用いることによって、個別の組織や臓器における複合的な血管構造を構築することも可能である。
【0056】
アルギン酸ナトリウム水溶液に懸濁させる細胞の密度は、1mL当たり1000万個以上であることが好ましい。このように細胞を高密度に懸濁させることで、形成するアルギン酸ハイドロゲル層の内部に細胞が密に包埋されるため、細胞同士の接着が促進され、機能的な血管組織を効率的に形成することが可能となるほか、細胞の生理機能を高く維持することが可能である。
【0057】
アルギン酸ナトリウム水溶液には、予めコラーゲンやマトリゲル等を添加することが可能である。このようにすることによって、アルギン酸ナトリウム水溶液に包埋された細胞の機能維持を補助することが可能となるとともに、形成するアルギン酸ハイドロゲル層に対し細胞が接着可能となるため、アルギン酸ハイドロゲル層の内側に細胞を導入することで、内側の細胞が単層に組織化された血管組織を形成させることが可能となり、実際の血管組織により近い形態の組織を構築することが可能である。
【0058】
また、アルギン酸ナトリウム水溶液には、細胞接着性アルギン酸ナトリウムが添加されていても良い。このようにすることによって、形成されるアルギン酸ハイドロゲル層に対し、細胞接着性を付与することが可能となり、アルギン酸ハイドロゲル層の内側に細胞を導入することによって、内側の細胞が単層に組織化した形態の血管組織を作製することが可能となる。たとえば、RDGペプチドやコラーゲンが共有結合されたアルギン酸ナトリウムを用いることができる。
【0059】
アルギン酸ハイドロゲル層を流路構造の内壁に安定的に形成させるために、予め流路構造の内壁面がポリカチオンによって修飾されていることが望ましい。たとえばポリカチオン水溶液を導入することによって、流路構造の内壁面を修飾することが可能である。
【0060】
ポリカチオン水溶液に含まれるポリカチオンとしては、ポリ-L-リジン、キトサン、及び、ポリエチレンイミンの少なくともいずれかを用いることが可能である。なお、これらのポリカチオンの分子量が高くなるほど、アルギン酸ハイドロゲル層と流路構造の内壁面との接着強度が高まる傾向にあるため、平均分子量が10万以上のものを用いることが好ましい。また、ポリカチオン水溶液の濃度および導入液量については、どのような値であっても良いが、流路構造の内壁面を十分にコートする量のポリカチオン分子が存在するように配慮する必要がある。さらにまた、ポリカチオン水溶液を導入することで、流路構造を構成する素材に含まれる多価の金属カチオンが部分的に除去されてしまう可能性があるため、ポリカチオン水溶液には必要に応じて予め多価の金属カチオンが添加されていても良い。
【0061】
アルギン酸のゲル化速度を制御するために、必要に応じてアルギン酸ナトリウム水溶液を導入する直前に多価の金属カチオンを含まない、あるいはその濃度が十分に低い、バッファー水溶液を導入することが可能である。この操作は、特に、ハイドロゲルによって構成された、直径数ミリメートル以下の細い流路構造を用いる場合に、アルギン酸のゲル化速度を制御する上で効果的である。また、バッファー水溶液にクエン酸あるいはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)等の、金属カチオンに対しキレート効果のある物質を溶解することによって、短時間でより効率的に金属カチオンを除去することが可能となる。なお、バッファー水溶液中のクエン酸あるいはEDTA等の濃度が高くなるほど、あるいはバッファー水溶液の送液時間が長くなるほど、アルギン酸のゲル化は遅くなるため、これらの値は、アルギン酸ハイドロゲル層を形成しやすくなるように予め最適化されていることが好ましい。
【0062】
アルギン酸ハイドロゲル層が形成された後に、流路構造に対し多価の金属カチオンを含む水溶液を導入し、内側からアルギン酸ハイドロゲル層を完全にゲル化させることが好ましい。このようにすることで、アルギン酸ハイドロゲル層の内側を流れる溶液のせん断力によって、アルギン酸ハイドロゲル層およびその内部に包埋された細胞が除去されてしまうことを防ぐことが可能である。また、導入する多価の金属カチオンは、流路構造を構成する素材に含まれるものと同じものであっても、異なるものであっても構わないが、細胞に対し毒性が少ないものであることが好ましく、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムイオンの少なくともいずれかであることが好ましい。
【0063】
細胞を含むアルギン酸ハイドロゲル層を形成した後、必要に応じて培養操作を行うことによって、血管組織を効率的に形成することが可能となる。なお、培養時には、流路構造に対し液体培地を導入することが好ましい。このようにすることによって、細胞に効率的に酸素や栄養素を供給することが可能である。また、流路構造を構成する素材にハイドロゲル材料を用いた場合は、予めデバイス全体を液体培地に浸し、培地成分を素材内部に浸透させておくことで、さらに効率的に流路内の細胞に対し酸素や栄養素を供給することが可能である。なお、予め多価の金属カチオンを添加した培地を用いることで、アルギン酸ハイドロゲル層の機械的強度を損なうことなく、培養操作を行うことが可能である。
【0064】
図2には、2種類の細胞を含む多層状のアルギン酸ハイドロゲル層を形成するプロセスを示した概略図が示されている。
【0065】
図2に示すように、多価の金属カチオンを含む素材によって構成される流路構造に対し、細胞Aを含む第1のアルギン酸ナトリウム水溶液を導入し、細胞Aを含む第1のアルギン酸ハイドロゲル層が形成された後に、細胞Bを含む第2のアルギン酸ナトリウム水溶液を導入する。細胞Aを含む第1のアルギン酸ハイドロゲル層の内側に細胞Bを含む第2のアルギン酸ハイドロゲル層が形成された後に、多価の金属カチオンを含む水溶液を導入しアルギン酸ハイドロゲル層を完全にゲル化することで、流路構造の内壁において2種の細胞を外層、内層にそれぞれ含む多層状のアルギン酸ハイドロゲル層を形成することが可能である。
【0066】
図2では、2段階でアルギン酸ナトリウム水溶液を導入することによって、2層のアルギン酸ハイドロゲル層を形成しているが、この導入操作を繰り返すことで、3層以上のアルギン酸ハイドロゲル層を作製することも可能である。また、それぞれ異なる種類の細胞を懸濁させた複数種のアルギン酸ナトリウム水溶液を段階的に導入することによって、各層に異なる細胞が配置された3層以上の血管組織を構築することも可能である。
【0067】
図3には、異なる種類の細胞を含む多層状のアルギン酸ハイドロゲル層の内側に細胞を単層状に組織化する様子を示した概略図が示されている。
【0068】
図3に示すように、外層に細胞Aを含み、内層に細胞Bを含む多層状のアルギン酸ハイドロゲル層が形成された後、細胞Cを懸濁させた水溶液を導入し、細胞Cがアルギン酸ハイドロゲル層の内壁面に接着した状態において、培養操作を行い必要に応じて細胞を増殖させることによって、異なる細胞を含む多層状のアルギン酸ハイドロゲル層の内側に、さらに異なる細胞が単層に組織化した組織構造を得ることが可能である。なお、増殖しない、あるいは増殖速度の低い細胞を用いる場合には、必要に応じて予め細胞Aおよび細胞Bを高密度でアルギン酸ハイドロゲル層に包埋することが好ましく、また、細胞Cを複数回導入することも可能である。
【0069】
図3に示したように、異なる種類の細胞を含む多層状のアルギン酸ハイドロゲル層の内側に、さらに異なる細胞を単層に組織化させることで、実際の血管組織における内膜、中膜、外膜、といった多層状の形態を高度に模倣した血管組織を作製することが可能である。
【0070】
図4には、分岐を有する血管組織を作製するための流路構造の概略図が示されており、図4(a)は、図4(b)乃至(d)におけるB矢視図であり、図4(b)乃至(d)はそれぞれ、図4(a)におけるA0-A1線、A2-A3線、A4-A5線における、流路構造の断面図を示している。
【0071】
図4に示すように、入口に接続された流路が複数の流路へと分岐し、最終的に1つの流路に収束し出口に接続される、といった流路構造を用いることによって、複雑に分岐し合流する血管組織を作製することが可能である。このような形状を有する組織は、実際の血管組織の構造を高度に模倣しているため、血管組織内における細胞の生理的挙動の解析を行う際に有用である他、生体外で比較的大きな組織を形成するための材料としても非常に有用である。なお、複雑な血管組織を作製する場合には、複数の入口および出口を有する流路構造を用いても良く、上下方向に分岐する流路構造を用いても良く、太さが部分的に、あるいは段階的に異なる流路構造を用いても良い。
【0072】
流路構造の内壁に細胞を含むアルギン酸ハイドロゲル層を形成し、必要に応じて培養操作を行った後に、流路構造を構成する素材に対し、物理的操作、化学的処理、あるいはその両者を施すことによって、形成した血管組織を流路構造から分離することが可能である。
【0073】
例えば、流路構造を構成する素材として酵素によって分解可能なハイドロゲル材料を用いた場合、流路構造を含むデバイス全体を酵素を含む水溶液に浸すことによってハイドロゲルを化学的に分解することが可能であり、また、温度変化、水素イオン濃度変化、あるいは光照射によって分解あるいは溶解されるハイドロゲル材料を用いて流路構造が構成されている場合、それらの操作を行うことによってハイドロゲルを分解し、血管組織を流路構造から分離することが可能である。また、2枚の平板状基板によって構成された流路構造の場合には、それらの基板を物理的に剥離する、といった物理的操作を行うことも可能である。ただし、いずれの方法を用いる場合であっても、細胞へのダメージが少ない条件下において、形成された血管組織を分離することが好ましい。
【実施例】
【0074】
以下、上記実施形態に係る血管組織の作製方法を実際に行うことで、本発明の効果を確認した。以下説明する。
【0075】
図5には、流路構造の概略図例および、流路構造の内壁において形成した多層状のアルギン酸ハイドロゲル層の顕微鏡写真が示されており、図5(a)は、流路構造の全体図であり、図5(b)乃至(e)は、図5(a)における部分Bに相当する位置の顕微鏡写真である。図5(b)は、蛍光粒子を含む第1のアルギン酸ハイドロゲル層が形成された様子を示した蛍光顕微鏡写真であり、図5(c)は、第2のアルギン酸ナトリウム水溶液が導入された直後の様子を示した蛍光顕微鏡写真であり、図5(d)は、第2のアルギン酸ハイドロゲル層が形成された後に緑色蛍光粒子を含むバッファー水溶液がアルギン酸ハイドロゲル層の内部を流れる様子を示した蛍光顕微鏡写真であり、図5(e)は形成されたアルギン酸ハイドロゲル層の位相差顕微鏡写真である。
【0076】
図5(a)に示した流路構造は、塩化カルシウムを含むアガロース水溶液を用いて作製されたアガロースハイドロゲルによって構成されている。この流路構造は、鋳型を利用したモールディングによって微細な溝構造を有するアガロースハイドロゲルを作製し、平板状のアガロースハイドロゲルと重ね合わせボンディングすることにより形成されたものである。
【0077】
流路構造を形成するために用いたアガロース水溶液中のアガロース濃度は5%(w/v)であった。また、アルギン酸ナトリウムのゲル化剤として、10mMの塩化カルシウムを予め混合した。なお、アガロースの濃度は、アガロースハイドロゲル形成時に、流路構造を作製するためのモールディング操作等を行うことが可能な強度であれば、任意の値であって構わない。
【0078】
本実施例では、流路構造を正確に作製するために、まずフォトリソグラフィーによって、シリコン基板上にSU-8フォトレジストによって構成された微細構造を有する鋳型を作製し、その鋳型を用いモールディングを行った。そのため、流路構造の断面形状は矩形であり、その幅および深さはそれぞれ500マイクロメートルであった。なお、作製対象とする血管組織の構造に応じて、これらの値は、50マイクロメートル以上10ミリメートル以下の任意の値に設定することが可能であり、また、円形、楕円形、その他複雑な断面形状を有する流路構造を利用することも可能である。また、流路構造の形状は、作製対象とする血管組織の構造に応じて、任意の形状を用いることが可能である。
【0079】
流路構造内に溶液を導入するために、流路構造の入口および出口にはそれぞれシリコンチューブを接続した。本実施例では、入口に接続されたチューブの末端を、導入する水溶液の入った容器に浸し、出口に接続されたチューブの末端からシリンジポンプを用いて吸引することによって、流路構造内に水溶液を導入した。このように吸引による送液を行い、入口に接続されたシリコンチューブの末端を導入する水溶液の入った個別の容器に順番に浸していくことで、異なる種類の水溶液を流路構造内へと段階的に、かつ効率的に導入することが可能である。なお、吸引による送液でなくとも、流路構造内に対し順番に水溶液を送液でき、かつ水溶液の切り替えを短時間に可能とする送液方法であれば、どのような方法を用いてもよい。例えば、キャピラリーチューブ内に、導入する水溶液を予め順番に充填した後、チューブの末端を流路構造の入口に接続し、末端から圧力を印可して送液する、といった操作を行うことも可能である。
【0080】
以上のように構成される流路構造および送液システムを用い、まず、細胞を用いずに、アルギン酸ハイドロゲル層の形成が可能であるかについて検証を行った。その作製方法を説明する。
【0081】
図5(a)に示された、10mM塩化カルシウムを含むアガロースハイドロゲルによって構成された流路構造に対し、まず10mM 塩化カルシウムを含む0.05%(w/v)ポリ-L-リジン水溶液を1分間送液し、流路構造の内壁面をポリカチオンによってコーティングした。次に、10mM クエン酸ナトリウム水溶液を30秒間送液した後、赤色の蛍光粒子を含む濃度0.5%(w/v)の第1のアルギン酸ナトリウム水溶液を送液した。これらの水溶液の流速は、一例として毎分100μLであった。なお、ポリ-L-リジンおよびクエン酸水溶液の濃度、流速、および送液時間は、十分に流路構造の内壁面がコーティングされ、かつ、アガロースハイドロゲルに含まれるカルシウムイオンを適度に除去できる条件であれば、任意の値とすることができる。
【0082】
上記の条件では、1分間程度のアルギン酸ナトリウム水溶液の送液によって、100マイクロメートル程度の厚みを有するアルギン酸ハイドロゲル層が形成された。なお、アルギン酸ハイドロゲル層の厚みは、アルギン酸ナトリウム水溶液の流速、あるいは送液時間を変化させることによって制御することが可能である。また、アルギン酸ナトリウム水溶液の濃度を変化させることによって、形成されるアルギン酸ハイドロゲル層の強度を調節することも可能である。
【0083】
図5(b)および(c)に示されるように、第1のアルギン酸ハイドロゲル層が形成された後、青色の蛍光粒子を含む第2のアルギン酸ハイドロゲル水溶液を導入したところ、第1のアルギン酸ハイドロゲル層の内側に第2のアルギン酸ハイドロゲル層が形成され、多層状のアルギン酸ハイドロゲル層が形成されることが確認された。また図5(d)に示されるように、形成された多層状のアルギン酸ハイドロゲル層の内側に、緑色の蛍光粒子を含む10mM塩化カルシウム水溶液をゲル化剤水溶液として導入したところ、形成されたアルギン酸ハイドロゲル層の内部に緑色の蛍光粒子が流れる様子が観察され、流路形状に依存した、中空構造を有する多層状のアルギン酸ハイドロゲル層が形成されたことが確認された。
【0084】
次に、細胞を懸濁させたアルギン酸ナトリウム水溶液を用い、血管組織の構築を行った。その作製方法を説明する。
【0085】
図6には、流路構造の他の概略図例および、流路構造の内壁において形成された、異なる蛍光色素によって染色された2種類の細胞を包埋する、多層状のアルギン酸ハイドロゲル層の顕微鏡写真が示されており、図6(a)は流路構造の全体図であり、図6(b)および(c)はそれぞれ、図6(a)における部分Bに相当する位置の位相差顕微鏡写真および蛍光顕微鏡写真である。
【0086】
細胞を懸濁させたアルギン酸ナトリウム溶液としては、0.5%(w/v)アルギン酸ナトリウム、0.9%(w/v)塩化ナトリウム、0.1%(w/v)コラーゲンを含む10mM HEPES緩衝液を用いた。
【0087】
図6(a)に示す流路構造は、10mM塩化カルシウム、0.8%(w/v)塩化ナトリウムを含む、5%(w/v)アガロースを用いて、モールディングによって作製した。なお、このようにハイドロゲルを用いて流路構造を作製する場合には、流路構造を構成する素材に含まれる溶液のイオン強度が、細胞に影響を与えないよう予め調節されていることが好ましい。
【0088】
流路構造を構成するハイドロゲル素材全体を、予め10mM塩化カルシウムを含む液体培地に24時間浸すことによって、ハイドロゲル素材中に栄養分を浸透させた。
【0089】
細胞としては、第1のアルギン酸ナトリウム水溶液に含まれる細胞Aとして、繊維芽細胞を、第2のアルギン酸ナトリウム水溶液に含まれる細胞Bとして、筋芽細胞をそれぞれ用いた。これらの濃度は、それぞれ4x10個/mLおよび7x10個/mLであった。
【0090】
図6(b)および(c)に示されるように、塩化カルシウムを含むアガロースハイドロゲルによって構成された流路構造に対し、細胞Aを含む第1のアルギン酸ナトリウム水溶液を導入し、細胞Aを含む第1のアルギン酸ハイドロゲル層が形成された後、細胞Bを含む第2のアルギン酸ナトリウム水溶液を導入することで、細胞Aを含む第1のアルギン酸ハイドロゲル層の内側に細胞Bを含む第2のアルギン酸ハイドロゲル層が形成されることが確認された。さらに、形成された多層状のアルギン酸ハイドロゲル層の内側に、緑色の蛍光粒子を含む10mM塩化カルシウム水溶液をゲル化剤水溶液として導入したところ、形成されたアルギン酸ハイドロゲル層の内部に緑色の蛍光粒子が流れる様子が観察され、このような操作によって、異なる細胞を含み、中空構造を有する多層状のアルギン酸ハイドロゲル層が形成されたことが確認された。
【0091】
なお、細胞Aおよび細胞Bとして、ヒト由来の血管平滑筋細胞および血管内皮細胞を用いた場合であっても、同様に血管組織を作製することが可能であった。また、分岐を有する流路構造の内部においても、同様に血管組織を作製することが可能であった。
【0092】
図7には、流路構造を構成する素材に対し化学的処理を施すことによって分離された、異なる細胞を含む多層状のアルギン酸ハイドロゲル層の顕微鏡写真が示されており、図7(a)および(b)はそれぞれ位相差顕微鏡写真および蛍光顕微鏡写真である。
【0093】
図7に示されるように、流路構造の内壁において細胞を含むアルギン酸ハイドロゲル層が形成された後、アガロースハイドロゲルによって構成されたデバイス全体を、アガラーゼを含むリン酸緩衝液中に浸す、という操作を行うことにより、酵素反応によってアガロースハイドロゲルを溶解することが可能であり、流路構造から血管組織を分離することが可能であった。
【0094】
また、図7に示されるように、流路構造から分離され回収された血管組織は、分離された後も多層構造を保つことが確認された。さらに、ピンセット等による操作を可能とする程度の高い機械的強度を保っていることが確認された。なお、アルギン酸ナトリウム水溶液の濃度を変化させることで、形成される組織の機械的強度を制御することが可能であった。
【0095】
さらに、回収した血管組織は内部に液体を流通させることが可能であることが確認され、本手法を用いて作製された血管組織は、外科領域における移植用人工血管グラフトとして、あるいは、管腔構造を組み込んだ比較的大きな3次元的組織構築のための単位構造として利用可能であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、以上説明したように構成されているため、これまでにほとんど報告されていなかった、多層構造、中空構造、分岐構造のすべてを同時に兼ね備えた、本来の血管組織の形態を高度に模倣した組織体を、特殊な装置や複雑なプロセスを必要とせず、簡便に作製することを可能とするため、医療分野や生化学研究分野において有用な技術を提供することが可能となる。
【0097】
また、本発明は、以上説明したように構成されているため、これまでにほとんど実用化されていなかった、細胞によって構成された、直径5mm程度以下の微細な人工血管グラフトの作製および提供を可能とするため、外科医療分野における幅広い応用が期待される。
【0098】
また、本発明は、以上説明したように構成されているため、使用する流路構造の形状およびアルギン酸ナトリウム水溶液の送液時間を、作製する血管組織の構造に応じて適切に設定することで、任意の形状および厚みを有する血管組織を簡便に作製することが可能であり、用途に応じて種々の形態を有する血管組織の構築が可能である。そのため、たとえば血管移植のために必須な、強度の高い様々な形態の人工血管グラフトを作製するための新規技術を提供することが可能である。
【0099】
また、本発明は、以上説明したように構成されているため、たとえば血管平滑筋細胞を含むアルギン酸ハイドロゲル層の内壁面に、血管内皮細胞を単層に組織化した組織体を作製することが可能であり、実際の血管組織の形態を正確に再現することが可能である。そのため、本発明を用いて作製した血管組織は、血液中を移動する癌細胞の転移挙動および浸潤挙動の評価、または、血栓形成および血管新生などの細胞の生理学的な挙動解析のためのツールとして、医学、生化学の分野における幅広い利用が期待される。
【0100】
さらにまた、本発明を用いた場合、作製した血管組織は流路構造から分離し回収することが可能であり、かつ強度の観点からも高い操作性を有している。そこで、例えば、回収した血管組織を他の細胞組織内に埋め込み、管腔構造を有する組織体を形成することで、組織内部の細胞に効率的に酸素や栄養素を供給することが可能な比較的大きな3次元組織を構築することが可能となり、組織工学、再生医学の分野における幅広い応用が期待される。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
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【図5】
4
【図6】
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【図7】
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