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明細書 :蛍光増感型物質によるウイルス、微生物を検出する方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6636704号 (P6636704)
公開番号 特開2016-158587 (P2016-158587A)
登録日 令和元年12月27日(2019.12.27)
発行日 令和2年1月29日(2020.1.29)
公開日 平成28年9月5日(2016.9.5)
発明の名称または考案の名称 蛍光増感型物質によるウイルス、微生物を検出する方法
国際特許分類 C12Q   1/04        (2006.01)
G01N  21/77        (2006.01)
G01N  21/78        (2006.01)
C07K   5/065       (2006.01)
C07K   5/072       (2006.01)
C07K   7/06        (2006.01)
C12Q   1/70        (2006.01)
FI C12Q 1/04
G01N 21/77 ZNAD
G01N 21/78 C
C07K 5/065
C07K 5/072
C07K 7/06
C12Q 1/70
請求項の数または発明の数 6
全頁数 30
出願番号 特願2015-041883 (P2015-041883)
出願日 平成27年3月4日(2015.3.4)
審査請求日 平成30年2月27日(2018.2.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
発明者または考案者 【氏名】幡野 健
【氏名】村松 洋亮
【氏名】古川 剛
【氏名】松岡 浩司
個別代理人の代理人 【識別番号】100137512、【弁理士】、【氏名又は名称】奥原 康司
【識別番号】100178571、【弁理士】、【氏名又は名称】関本 澄人
審査官 【審査官】林 康子
参考文献・文献 特開2010-112777(JP,A)
特開2011-180018(JP,A)
J Am Chem Soc (2012), Vol.134, p.9569-9572
J Med Chem (2010), Vol.53, p.4441-4449
調査した分野 C12Q1/00~3/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
下記式(I)で示される化合物を含む、ウイルスまたは微生物を検出するための試薬。
【化1】
JP0006636704B2_000044t.gif
[式(I)において、RおよびRフェニル基、RおよびRは同一または相異なる炭化水素基、、R、R、R、およびRのうち少なくともいずれか1つが下記の式(II)で示される置換基であり、その他は水素である。
【化2】
JP0006636704B2_000045t.gif
(ただし、式(2)中、RおよびR10は同一または相異なる酸素、窒素、カルボニル基および/またはアミド結合を含んでもよい炭化水素鎖、Xはウイルスもしくは微生物と結合する糖鎖もしくはペプチドである)]
【請求項2】
およびRが炭素数1~6の炭化水素基であり、Rが炭素数1~3の炭化水素鎖、R10がアミド結合を含んでもよい炭素数1~10の直鎖アルキル基、アルキレン基、アルケニレン基またはアルコキシレン基(オキシアルキレン基)である請求項1に記載の試薬。
【請求項3】
Xが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4で示されるペプチドもしくはPhe-Glu、Glu-Pheのいずれか、または下記式( III )~( VI )の糖鎖のいずれかである請求項1または2に記載の試薬。
【化3】
JP0006636704B2_000046t.gif

【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の試薬を含む、ウイルスまたは微生物を検出するためのキット。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の試薬またはキットを使用したウイルスまたは微生物を検出する方法。
【請求項6】
下記式( I )で示される化合物。
【化4】
JP0006636704B2_000047t.gif
[(式(I)において、RおよびRはフェニル基、RおよびRはメチル基、、R、R、R、およびRのうち少なくともいずれか1つが下記の式(II)で示される置換基であり、その他は水素である。
【化5】
JP0006636704B2_000048t.gif
(ただし、式(2)中、Rは-CH-、R10は同一または相異なる酸素、窒素、カルボニル基および/またはアミド結合を含んでもよい炭化水素鎖、Xは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4で示されるペプチドもしくはPhe-Glu、Glu-Pheのいずれか、または下記式( III )~( VI )の糖鎖のいずれかである)]
【化6】
JP0006636704B2_000049t.gif
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光増感型物質を用いたウイルス、微生物の検出方法、並びに該検出方法のための試薬またはキットに関する。
【背景技術】
【0002】
多くのウイルスや細菌による感染症は、重篤な病態を引き起こすことも少なくないため、感染予防や感染後の治療は、常に重要な臨床的課題となっている。感染病原体の中でも、とりわけ危険度の高いインフルエンザウイルス、SARS、ノロウイルス、デングウイルス、病原性大腸菌157などに対する予防及び治療上の対策は、早急に対応すべき重要課題の一つである。
その一方で、どのような微生物感染が生じているのかを早急に突き止めることも、早期治療を行う上では非常に重要なことである。
【0003】
現在、主として行われている感染病原体の検査は、検査対象の病原体に特異的な抗原タンパク質を検出する方法、特定の遺伝子領域を増幅して検出する方法、あるいは、感染病原体を顕微鏡下で直接観察する方法などが行われている。これらの方法のうち、抗原タンパク質や特定遺伝子を同定する方法は、検出感度及び精度の点において優れてはいるものの、やや操作が煩雑であり、迅速な検査結果の取得の点に若干の問題がある。また、顕微鏡を用いて形態学的に感染病原体を特定する方法においては、観察対象の病原体の数がある程度高濃度でなければ検出が難しく、そのための感染病原体の増殖等に多くの時間が必要とされ、検査の迅速性に問題があった。
【0004】
本発明者らは、これまでに、糖鎖の病原体への特異的な接着能とシロールの凝集誘発型発光(Aggregation-induced emission; AIE)を組み合わせ、シロール、カルボシランデンドリマー、糖鎖からなる物質が、ウイルス、微生物の存在を蛍光の消光により迅速、簡便に検出できる化合物であることを報告してきた(特許文献1、特許文献2)。また最近では、糖鎖を模倣したオリゴペプチドを利用し、インフルエンザウイルスの蛍光消光型検出薬の開発にも成功している。
前述の通り蛍光消光型検出薬は、ウイルス等を迅速に検出できる点において、非常に優れた検出手段を提供するものであるが、最近、蛍光増感型の特徴を有する化合物が報告されており(非特許文献1)、蛍光強度の増強を利用したウイルス等の検出手段に対し、期待が寄せられている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2010-112777
【特許文献2】特開2011-180018
【0006】

【非特許文献1】Shiら, J. Am. Chem. Soc., 2012, 134:9569-9572
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記状況の中、本発明は、蛍光増感型物質を用いた、ウイルスおよび微生物の検出方法、並びに該検出方法に使用される試薬またはキットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、発光が増大する蛍光増感型検出物質を用いて、ウイルスや微生物などを検出する試薬の開発に成功し、本発明を完成させた。
具体的には、発明者らは、ウイルスや微生物と接着した際、発光強度が増大するような分子(下記式( I' )で示される化合物)を設計した。
【化1】
JP0006636704B2_000002t.gif
化合物( I' )は、疎水性となるシロールデンドリマー部分が中央に位置し、その周囲に親水性のオリゴペプチドが配されている。そのため、水溶液中では1分子ミセルを形成することできるが、この場合、フェニル基の回転によるエネルギーの損失が多いため、蛍光は極めて弱くなる。この溶液に、末端のオリゴペプチドが接着するインフルエンザウイルスのヘマグルチニンを添加すると、その蛍光強度が増加した。この現象は、化合物( I' )がヘマグルチニンと強固に結合したことにより、フェニル基の回転が束縛されたことに起因すると考えられる。
【0009】
すなわち、本発明は下記式( I )で示される化合物を含む、ウイルスおよび微生物を検出するための試薬およびキット、並びに、該試薬またはキットを使用したウイルスまたは微生物の検出方法である。
【化2】
JP0006636704B2_000003t.gif
(式( I )において、RおよびRは同一または相異なるアリール基、RおよびRは同一または相異なる炭化水素基、R、R、R、およびRは、同一または相異なる、水素または下記の式( II )で示される置換基である。
【化3】
JP0006636704B2_000004t.gif
(ただし、式( II )中、RおよびR10は同一または相異なる酸素、窒素、カルボニル基および/またはアミド結合を含んでもよい炭化水素鎖、Xはウイルスもしくは微生物と結合する糖鎖もしくはペプチドである)
【発明の効果】
【0010】
本発明のウイルスおよび微生物の検出方法は、検出対象の微生物を簡便かつ迅速に、高精度で定性的および定量的な検出を行うことができる。
【0011】
本発明のウイルスおよび微生物の検出方法によれば、生活用品やベッドなどに付着したウイルスおよび微生物を簡便に検出することができる。
【0012】
特に、本発明は、ウイルスおよび微生物の存在を、発光強度の増加によって検出する方法であるため、発光変化が明瞭であり、検出目的微生物等の存在を容易に視覚的に捉えることが可能である。
【0013】
本発明に係るウイルスおよび微生物の検出試薬またはキットは、煩雑な操作を必要とせず、また、微量に存在する微生物の検出にも適しているため、感染症の危険を迅速に感知することができるため、早急な感染症治療を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、インフルエンザウイルスH1N1株のHAタンパク質を検出した結果を示す。図中にHA(ヘマグルチニン)の濃度を示す。
【図2】図2は、インフルエンザウイルスH3N2株のHAタンパク質を検出した結果である。図中にHAの濃度を示す。
【図3】図3は、インフルエンザウイルスH5N1株のHAタンパク質を検出した結果である。図中にHAの濃度を示す。
【図4】図4は、インフルエンザウイルスH7N7株のHAタンパク質を検出した結果である。図中にHAの濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、下記式( I )で示される化合物を含む、ウイルスまたは微生物を検出するための試薬。
【化4】
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(式( I )において、RおよびRは同一または相異なるアリール基、RおよびRは同一または相異なる炭化水素基、R、R、R、およびRは、同一または相異なる水素または下記の式( II )で示される置換基である。
【化5】
JP0006636704B2_000006t.gif
(ただし、式( II )中、RおよびR10は同一または相異なる、酸素、窒素、カルボニル基および/またはアミド結合を含んでもよい炭化水素鎖、Xはウイルスもしくは微生物と結合する糖鎖もしくはペプチドである)

【0016】
ここで、式( II )中のXは、検出対象のウイルスまたは微生物、あるいは、微生物等が産生する毒素と特異的に結合する糖鎖またはペプチドである。このような糖鎖としては、限定はしないが、例えば、腸管出血性大腸菌O-157が産生するベロ毒素と特異的に結合するグロボ3糖(Gb3、Galα1-4Galβ1-4Glcβ1-)、インフルエンザウイルスのウイルス表面に存在するヘマグルチニン(HA)と特異的に結合するシアリルラクトース、デングウイルスのスパイク糖タンパク質と特異的に結合するラクトネオテトラオース、腐性ブドウ球菌(Staphylocuccus saprophyticus)の細胞表面タンパク質に結合すると考えられるGal(β1-4)GlcNAc(FEBS Lett. 1987 217:145-157)など、本発明で使用可能な糖鎖はこれまでに数多く同定されており、検出対象のウイルスまたは微生物に適した糖鎖を選択することは当業者であれば容易に行うことができる。本発明で使用可能な糖鎖と該糖鎖が認識する微生物の組合せの一例を表1~5に示す。

【0017】
【表1】
JP0006636704B2_000007t.gif
【表2】
JP0006636704B2_000008t.gif
【表3】
JP0006636704B2_000009t.gif
【表4】
JP0006636704B2_000010t.gif
【表5】
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Xが糖鎖の場合、R10の炭化水素鎖と結合させるには、当業者が選択し得るいずれの方法を用いても良いが、例えば、グリコシド結合などによって結合させても良い。
ここで、ウイルスまたは微生物の検出のためにXとして使用し得る糖鎖としては、限定はしないが、例えば、Xが下記の式( III )の糖鎖の場合ベロ毒素を、式( IV )の糖鎖の場合インフルエンザウイルスを、式( V )の糖鎖の場合デングウイルスを、式( VI )の糖鎖の場合腐性ブドウ球菌(Staphylocuccus saprophyticus)を検出するために使用することができる。

【0018】
【化6】
JP0006636704B2_000012t.gif

【0019】
また、検出対象がインフルエンザウイルスの場合、トリインフルエンザウィルスのヘマグルチニンが認識する糖鎖構造であるシアリルα(2→3)ラクトース(又はガラクトース)などを本発明の糖鎖として使用すればトリインフルエンザウィルスを特異的に検出することができ(例えば、WO02/002588を参照のこと)、ヒトインフルエンザウィルスのヘマグルチニンが認識する糖鎖構造であるシアリルα(2→6)ラクトース(又はガラクトース)などを本発明の糖鎖として使用すればヒトインフルエンザウィルスを特異的に検出することができる(例えば、特開2008-31156を参照のこと)。

【0020】
Xは、検出対象のウイルスまたは微生物、あるいは、微生物が産生する毒素と特異的に結合するペプチドであってもよい。
例えば、検出対象がインフルエンザウイルスの場合には下記に示す配列番号1または配列番号2のペプチドを、検出対象がデングウイルスの場合には下記に示すPhe-GluもしくはGlu-Pheのジペプチドを、また、検出対象がノロウイルスの場合には下記に示す配列番号3または配列番号4のペプチドをXとして使用することができる。Xがペプチドの場合、R10の炭化水素鎖と結合させるには、当業者が選択し得るいずれの方法を用いても良いが、例えば、ペプチドのC末端またはN末端、あるいは、ペプチド側鎖のアミノ基(人工的に結合させたアミノ基でもよい)など介して、Rの炭化水素鎖とペプチド結合などによって結合させても良い。さらに、Xとして使用するペプチドは、天然には存在しないアミノ酸を含んでいてもよく、また、ペプチドミメティック(ペプチド結合等価体)でもよい。
インフルエンザウイルス:Ala-Arg-Leu-Pro-Arg(配列番号1)
またはArg-Pro-Leu-Arg-Ala(配列番号2)
デングウイルス:Phe-Glu
またはGlu-Phe
ノロウイルス:Gln-Leu-Gln-Phe-Glu(配列番号3)
またはGlu-Phe-Gln-Leu-Gln(配列番号4)

【0021】
式( I )中のXは、1分子の式( I )の化合物中の全てのXの位置が、検出対象のウイルスまたは微生物と特異的に結合するペプチドまたは糖鎖であることが望ましいが、必ずしも、全てのXが上記ペプチドまたは糖鎖である必要はなく、例えば、水素、C=C二重結合、水酸基などであってもよく、当該技術分野における通常の合成方法(ペプチドまたは糖鎖を結合させることを含む合成方法)により、Xの位置に結合し得ると当業者が予測可能な如何なる置換基が含まれていてもよい。

【0022】
式( II )中、RおよびRは、同一または相異なるアリール基であり、例えば、p-((CHN)C、p-CHOC、p-CH、C、p-FCC、p-(NO)C、m-CH、m-FC、m-FCC、1-ナフチル、2-スチリル、ビフェニル、2-チエニル、ビチエニル、2-チアゾール、2-ピリジル、3-ピリジル、N-メチル-2-ピロリル、2,4,6-トリメチルフェニル(Mes)、2,4,6-トリイソプロピルフェニル(Tip)などを使用することができる。好ましくは、RおよびRは、C(フェニル基)である(特許第5137081号などを参照のこと)。

【0023】
また、式( I )中、RおよびRは同一または相異なる炭化水素基であり、好ましくは、炭素数1~10の炭化水素基、特に好ましくは、メチル基である。
、R、RおよびRは、同一または相異なる、水素または下記の式( II )で示される置換基であって、式( II )中、Rは酸素、窒素、カルボニル基および/またはアミド結合を含んでもよい炭化水素鎖であり、好ましくは、炭素数1~15、より好ましくは、炭素数1~6の直鎖アルキル基、アルキレン基、アルケニレン基又はアルコキシレン基(オキシアルキレン基)であり、カルボニル基および/またはアミド結合を含んでもよい。R10は酸素、窒素、カルボニル基および/またはアミド結合を含んでもよい炭化水素鎖であり、好ましくは、炭素数1~15、より好ましくは、炭素数1~10の直鎖アルキル基、アルキレン基、アルケニレン基又はアルコキシレン基(オキシアルキレン基)であり、カルボニル基および/またはアミド結合を含んでもよい。

【0024】
【化7】
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【0025】
本発明で使用される式( I )で示される化合物として、例えば、前掲の化合物( I’)を使用することができ、化合物( I’)の合成スキーム(スキーム1およびスキーム2)を下記に例示するが、式( I )に示される化合物の合成方法は、この方法に限定されるものではなく、当業者において選択可能な他の方法によっても製造することができる。
【化8】
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フェニルアセチレンをリチオ化した後、ジクロロジメチルシランを作用させ、化合物(1)(ジメチルビス(フェニルエチニル)シラン)を合成する。次いで、3-ブロモベンジルボロミドに対してアジ化ナトリウムを作用させ、化合物(2)を合成する。
化合物(1)に対してリチウムナフタレニドを作用させることによりシロール環を形成させた後、塩化亜鉛の存在下、2,5-位亜鉛体のシロール誘導体を生成させ、塩化パラジウム触媒存在下、化合物(2)を作用させることにより、化合物(3)([TPS(2,5)-N3])を得ることができる。

【0026】
化合物(3)に配列番号1などの所望のペプチドを導入するには、適当なリンカーを介して、-Nの部分と反応させることでペプチドを化合物(3)に導入することができる。リンカーとしては、例えば、下記のようなアルキンリンカーを使用することができる。
【化9】
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アルキンリンカーはこれに限定されるものではなく、所望の炭素数を有するものを目的に応じて使用することができる。
配列番号1のペプチドに、アルキンリンカーを導入した場合を、化合物(8)として下記に例示する。
【化10】
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【化11】
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適当なリンカーを結合させた配列番号1のペプチドを化合物(3)の-N部分に導入することで、目的の化合物( I’ )を得ることができる。

【0027】
本発明の試薬は、式( I )で示される化合物以外にも、当業者においてウイルスまたは微生物の検出において必要と思われる物質、または、当該検出に対し効果的に作用する物質など、他の物質を含んでもよい。このような添加物質としては、限定はしないが、例えば、界面活性剤、安定化剤、防腐剤、キレート剤などを使用することができる。また、本発明の検出試薬は、式( I )で示される化合物を適当な溶媒、例えば、水溶液、有機溶媒等に溶解させた状態で提供することもできる。適切な溶媒は、当業者において容易に選択可能である。

【0028】
本発明の試薬は、式( I )で示される化合物をキットの形態で、適当な容器又はパック中に使用説明書と共に含めて提供することもできる。本発明に係る試薬がキットとして供給される場合、該試薬の構成成分を、活性構成成分の機能を低下することを回避するなどの必要に応じて、各構成成分を別々に包装してもよい。キット中に含まれる試薬は、構成成分が活性を長期間有効に持続し、構成成分を吸着せず、また、変質させない材質の容器中に供給される。また、キットに使用説明書が添付される場合、その使用説明は、紙または他の材質上に印刷されて供給されてもよく、フロッピー(登録商標)ディスク、CD-ROM、DVD-ROMなどの媒体に記録して供給されてもよい。

【0029】
本発明の他の実施形態は、式( I )で示される化合物を含んだ試薬またはキットを使用した、ウイルスまたは微生物の検出方法である。
式( I )で示される化合物によるAIE効果に関し、該化合物の構造に適した溶媒環境において、発光強度が変化する。従って、使用する式( I )の化合物の構造に適した溶媒環境においてウイルスまたは微生物の検出を行うことが望ましい。このような、検出環境に最も適する溶媒環境の選択は、当業者において通常の試行錯誤の範囲内の予備実験等で容易に設定することができる。
具体的には、例えば、本発明の式( I )で示される化合物を適当な水溶性の溶媒に添加し、この溶液を試験サンプルと混合し、混合した溶液に紫外線を照射して発せられる発光の強度変化を検出する。ウイルスや微生物が家具やベッド等に付着している可能性がある場合には、式( I )の化合物を含む溶媒を、検出部分にスプレーしてもよい。発光の強度変化の検出は、分光光度計などによって蛍光スペクトルの変化を検出してもよく、また、家具等にスプレーする場合には、ハンディタイプの紫外線装置により紫外線を照射し、発光が生じていることを視覚的に検出してもよい。

【0030】
以下の実施例は、あくまでも例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0031】
1.インフルエンザウイルス検出薬に含まれる有効成分である化合物の合成
1-1.合成
1-1-1.シロール骨格の合成
1-1-1-1.ジメチルビス(フェニルエチニル)シランの合成
アルゴン風船、同圧滴下漏斗、セプタムを装着した2口ナス型フラスコの系内をアルゴン置換した。フェニルアセチレン(1.48 mL, 13.6 mmol)を入れ、Dry-ジエチルエーテル20 mLに溶解した。氷浴下、ブチルリチウム(8.75 mL, 13.6 mmol)を滴下し、1時間攪拌した。さらに、氷浴下でDry-ジエチルエーテル10 mLに溶解したジクロロジメチルシラン(0.654 mL, 5.42 mmol)を滴下し、室温で16.5時間攪拌した。1規定塩酸8.0 mLと水8.0 mLを氷浴下で滴下することにより反応を終了させた。酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、エタノールを用いた再結晶によって精製し、目的化合物(1)を白色針状結晶として収率78%で1.38 g得た。
【化12】
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1-1-1-2.3-ブロモベンジルアジドの合成
アルゴン風船、蛇管、セプタムを装着した2口ナス型フラスコに3-ブロモベンジルブロマイド(2.0 g, 8.0 mmol)とアジ化ナトリウム(2.1 g, 32 mmol)を入れて系内をアルゴン置換した。DMSO 32 mLを加えた後、70で17.5時間加熱還流し、水40 mL加えることによって反応を終了させた。ジクロロメタンで抽出し、水、飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル= 9:1)を用いて精製することによって、目的化合物(2)を透明液体として収率87%で1.48 g得た。
【化13】
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【実施例】
【0032】
1-1-1-3.シロール環形成反応 [TPS(2,5)-N3]
アルゴン風船、セプタムを装着したナス型フラスコにナフタレン(984 mg, 7.68 mmol)を入れて系内をアルゴン置換した。細かく切ったリチウム(53 mg, 7.68 mmol)を加えて再度アルゴン置換した後、Dry-THF 8.0 mLを加えて1.5分間超音波処理した。室温で3時間攪拌した後、アルゴン風船、同圧滴下ロート、セプタムを装着した3口ナス型フラスコに移した。そこにDry-THF 5.0 mLに溶解した化合物(1)(500 mg, 1.92 mmol)を滴下し、室温で1時間攪拌した。氷浴下、Dry-THF 25 mLとTMEDA亜鉛錯体(1.94 g, 7.68 mmol)を加えて室温まで自然昇温させた後、1時間攪拌した。塩化パラジウム触媒(67 mg, 0.10 mmol)とDry-THF 25 mLに溶解した化合物(2) (855 mg, 4.0 mmol)を滴下し、65で14.5時間加熱還流した。氷浴下で1規定塩酸 90 mLを加えることによって反応を終了させた。ジクロロメタンで抽出し、水、飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を留去し、ショートシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル= 10:1)で粗精製し、得られた結晶をヘキサンで洗浄することによって、目的化合物(3)を黄色結晶として収率55%で558 mg得た。
【化14】
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【実施例】
【0033】
1-1-2.ヘマグルチニン(HA)結合性ペプチド誘導体の合成
s2ペプチド保護体(配列番号1のペプチドの保護体)を以下に示す経路で合成した(スキーム3)
【化15】
JP0006636704B2_000021t.gif
Fmoc固相合成法を用いて、s2ペプチド保護体(Fmoc-Ala-Arg(Pmc)-Leu-Pro-Arg(Pmc)-OH)(4)の合成を実施した。
【実施例】
【0034】
初めに、樹脂への第1アミノ酸の導入を行なった。2-クロロトリチルクロリド樹脂(125 mg, 0.15 mmol)をPD-10カラムに入れた。このカラムを3本用意した。Dry-DCM 3 mLを加えて1時間静置し、樹脂を膨潤させた。そのDry-DCMを吸引した後、直ちに次の操作を行った。Fmoc-Arg(Pmc)-OH (150 mg, 0.225 mmol)とDIEA (131, 0.75 mmol)のDry-DCM 1.25 mL溶液をカラムに加え、室温で2時間軽く揺らしながら反応させ、DCM 3 mLで3回洗浄した。樹脂の未反応残基をつぶすために、DCM : MeOH : DIEA (17:2:1 (v/v/v) 5 mL)で3回洗浄した後、DCM 5 mL, DMF 5 mL, DCM 5 mL, tBuOMe 5 mL, DCM 5 mLを用いて順次3回ずつ洗浄した。その後、真空乾燥させることによってArg残基の導入率(56%)を算出した。
【実施例】
【0035】
次に、伸長反応を行なった。カラム中のFmoc-Arg(Pmc)-resinをDry-DCM 3 mLで10分間静置し、樹脂を膨潤させた。そのDCMを吸引して、さらにDry-DMF 3 mLで洗浄した。Fmoc基の脱保護を行なうため、20% PIP/DMF溶液 3 mLを加え1分間静置し、吸引除去した後、さらに20% PIP/ DMF溶液 3 mLを加え、室温で15分間撹拌した。この溶液を吸引した後、Dry-DMF 3 mLで5回洗浄した。Fmoc-Pro-OH (152 mg, 0.45 mmol), HBTU (171 mg, 0.45 mmol), HOBt (69 mg, 0.45 mmol), DIEA (157, 0.9 mmol)のdry-DMF 4.5 mL溶液を加え、室温で90分間撹拌して反応させた。DMF 3.0 mLで5回洗浄した後、未反応アミノ基の有無を確認するためにKaiser testを行なった。Kaiser testは、ニンヒドリン-エタノール溶液、フェノール-エタノール溶液、シアン化カリウム-ピリジン溶液をそれぞれ20ずつガラスチューブに入れ、微量の樹脂を加えてドライヤーを用いて約1分間加熱した。溶液が濃赤-濃青色に変化した場合は、もう一度縮合反応を行い、溶液の色が変化しない場合は次のアミノ酸の伸長反応を行った。
なお、この操作を残り3つのアミノ酸で繰り返した。
【実施例】
【0036】
Kaiser test後、20% PIP/DMF溶液3 mLを加え1分間静置し、吸引除去した後、さらに20% PIP/ DMF溶液3 mLを加え、室温で15分間撹拌した。この溶液を吸引した後、DMF 3 mLで5回洗浄した。Fmoc-Leu-OH (160 mg, 0.45 mmol), HBTU (171 mg, 0.45 mmol), HOBt (69 mg, 0.45 mmol), DIEA (157, 0.9 mmol)のDry-DMF 4.5 mL溶液を加え、室温で90分間撹拌して反応させた。DMF 3.0 mLで5回洗浄した後、Kaiser testを行なった。
Kaiser test後、20% PIP/DMF溶液3 mLで1分間静置し、吸引除去した後、さらに20% PIP/DMF溶液3 mLを加え、室温で15分間撹拌した。この溶液を吸引した後、DMF 3 mLで5回洗浄した。Fmoc-Arg(Pmc)-OH (300 mg, 0.45 mmol), HBTU (171 mg, 0.45 mmol), HOBt (69 mg, 0.45 mmol), DIEA (157, 0.9 mmol)のDry-DMF 5.0 mL溶液を加え、室温で90分間撹拌して反応させた。DMF 3.0 mLで5回洗浄した後、Kaiser testを行なった。
Kaiser test後、20% PIP/DMF溶液3 mLで1分間静置し、吸引除去した後、さらに20% PIP/DMF溶液3 mLを加え、室温で15分間撹拌した。この溶液を吸引した後、DMF 3 mLで5回洗浄した。Fmoc-Ala-OH (141 mg, 0.45 mmol), HBTU (171 mg, 0.45 mmol), HOBt (69 mg, 0.45 mmol), DIEA (157, 0.9 mmol)のDry-DMF 4.0 mL溶液を加え、室温で90分間撹拌して反応させた。DMF 3.0 mLで5回洗浄した後、Kaiser testを行なった。
【実施例】
【0037】
次に、樹脂からのペプチド切り出しを行なった。ペプチドが連結した樹脂1本のカラムにまとめ、DCM 5 mLで3回洗浄した。10% Pyridine/MeOH 1 mLを加えた試験管を10本用意した。1% TFA/DCM 5 mLをカラムに加えて1分間静置した後、試験管内に流して中和した。この操作を10回繰り返した。
10本のフラクションをナス型フラスコに回収し、溶媒を留去した。ピリジンを除くために酢酸エチルと水を加えて有機層を分取した。水層を酢酸エチルで抽出し、有機層と合わせて飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで脱水乾燥させた。溶媒を留去し、HPLCを用いて分析・精製することによって目的化合物(4)を白色粉末として収率98%で343 mg得た。
【実施例】
【0038】
1-1-3.アルキンリンカー保護体の合成
s2ペプチドとシロール骨格を連結するためのHuisgen反応を行うにあたって、s2ペプチドにアルキン官能基を有するリンカーを修飾した。
【化16】
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アルゴン風船、セプタムを装着した2口ナス型フラスコにBoc-Ahx-OH (350 mg, 1.51 mmol), HBTU (857 mg, 2.26 mmol), HOBt (346 mg, 2.26 mmol)を入れ、系内をアルゴンで置換した。Dry-DMF 40 mLを加えてしばらく攪拌した後、DIEA (0.78 mL, 4.53 mmol), プロパルギルアミン(145L, 2.26 mmol)を加えて室温で2日間攪拌した。冷水を加えることによって反応を終了させ、析出物を濾取した。そのまま真空乾燥させることにより、目的化合物(5)(BOC-Ahx-propargy)を白色固体として収率98%で397 mg得た。
【実施例】
【0039】
1-1-4.アルキンリンカーの脱保護
次に、化合物(5)のN末端Boc保護基の除去操作を実施した。
【化17】
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ナス型フラスコに化合物(5)(300 mg, 1.12 mmol)を入れ、TFA (1.6 mL, 20 mmol)を加えて室温で2時間攪拌した。溶媒を留去した後、氷浴下でジエチルエーテル50 mLを加えて析出物を濾取することによって目的化合物(6)を白色粉末として収率98%で311 mg得た。
【実施例】
【0040】
1-1-5.s2ペプチド保護体へのリンカー導入
合成したs2ペプチド保護体(4)に対してアルキンリンカー(6)を縮合反応させることにより、反応生成物を得た。
【化18】
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アルゴン風船、セプタムを装着したナス型フラスコに化合物(4)(430 mg, 0.315 mmol)と化合物(6)(133 mg, 0.472 mmol)を入れて系内をアルゴン置換した。Dry-DMF 25 mLに溶解させたHBTU (179 mg, 0.472 mmol), HOBt (72 mg, 0.472 mmol), DIEA (244L, 1.42 mmol)を氷浴下で加えて、室温で3日間攪拌した。冷水100 mLを加えることにより反応を終了させ、析出物を濾取した。凍結乾燥した後、HPLCを用いて分析・精製することによって目的化合物(7)(Fmoc-Ala-Arg(Pmc)-Leu-Pro-Arg(Pmc)-Ahx-propargyl)を白色粉末として収率89%で423 mg得た。
【実施例】
【0041】
1-1-6.アルキンリンカー含有s2ペプチドの脱保護 [s2 peptide-Ahx-propargyl]
化合物(7)のN末端Fmoc基を除去するためにピペリジンを作用させた。
【化19】
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ナス型フラスコに化合物(7)(418 mg, 0.276 mmol)を入れ、20% PIP/DMF 10 mL加えて室温で2時間攪拌した。溶媒を留去した後、脱保護カクテル7 mLを加えてさらに室温で6時間攪拌した。溶媒を留去し、凍結乾燥した後、冷ジエチルエーテル60 mLを加えて析出物を濾取した。HPLCを用いて分析・精製することによって目的化合物(8)を白色粉末として収率89%で272 mg得た。
【実施例】
【0042】
1-1-7.シロール骨格へのペプチド導入 [TPS(2,5)-s2]
シロール誘導体(3)のアジド基とs2ペプチド誘導体(8)のアルキン官能基をHuisgen反応させることによって、s2ペプチド修飾型シロール誘導体(9)の合成を行った。
【化20】
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アルゴン風船、蛇管、セプタムを装着した2口ナス型フラスコに化合物(3)(20 mg, 38.1 mol)と化合物(8)(93 mg, 84 mol)を入れDMF 12 mLに溶解させた。水12 mLに溶解した硫酸銅五水和物(9.5 mg, 38.1 mol)とアスコルビン酸ナトリウム(17 mg, 84 mol)を加えて40-45 で45時間攪拌した。溶媒を留去し、凍結乾燥させた後、HPLCを用いて分析・精製することによって目的化合物(9)を黄色粉末として収率58%で60 mg得た。
【実施例】
【0043】
1-2.検出試験
1-1で合成した化合物(9)を用いて、異なる複数のインフルエンザウイルス株(H1N1、H3N2、H5N1、H7N7)のHAタンパク質との接着による蛍光強度の変化
化合物(9)に対して、HA(H1N1、H3N2、H5N1またはH7N7)タンパク質溶液を加えて、室温にて5分間静置させた後、PBS buffer を用いて計100μLまで希釈したサンプルをPL(フォトルミネッセンス)測定(励起波長:365nm)を行った。
図1は、インフルエンザウイルスH1N1株のHAタンパク質を検出した結果である。150μM
の化合物(9)2.5μLに、5.0μMのHAタンパク質を1.0、3.25、7.5、15、30、60μL加えて、PBS buffer を用いて計100 μLとして測定した。
図2は、インフルエンザウイルスH3N2株のHAタンパク質を検出した結果である。150μM
の化合物(9)5.0μLに、5.0μMのHAタンパク質を3.0、6.25、12.5、25、50μL加えて、PBS buffer を用いて計100 μLとして測定した。
図3は、インフルエンザウイルスH5N1株のHAタンパク質を検出した結果である。150μM
の化合物(9)5.0μLに、5.0μMのHAタンパク質を1.0、3.75、7.5、15、30、60μL加えて、PBS buffer を用いて計100 μLとして測定した。
図4は、インフルエンザウイルスH7N7株のHAタンパク質を検出した結果である。150μM
の化合物(9)5.0μLに、5.0μMのHAタンパク質を1.0、3.75、7.5、15、30、60μL加えて、PBS buffer を用いて計100 μLとして測定した。
【実施例】
【0044】
いずれの株のHAを加えた場合においても、HAの量が増加するにつれて、蛍光強度が強くなることが確認された。
すなわち、インフルエンザウイルスのHAと特異的に結合するペプチド(配列番号1)を有する化合物(9)は、インフルエンザウイルスHAと結合することで、蛍光を発し、HAの量が増加するにつれて、その蛍光強度が増大することが明かとなった。
【実施例】
【0045】
この検出試験は、インフルエンザウイルスのHAに特異的なペプチドを有する式( I )の化合物を用いたが、ペプチド部分を、種々のウイルスまたは微生物が有するタンパク質等に特異的に結合するペプチド、あるいは、糖鎖を使用することで、式( I )の化合物により、対象のウイルスまたは微生物を検出することが可能であることを示すものである。
検出対象の量依存的に蛍光が増大することから、定量的にウイルスまたは微生物を検出することも可能である。
【実施例】
【0046】
2.デングウイルス検出薬に含まれる有効成分である化合物の合成
2-1.合成
シロール骨格の合成については、上記「1-1-1.シロール骨格の合成」を参照のこと。
【実施例】
【0047】
2-1-1.デングウイルスンのエンベロープタンパク質に結合するペプチド誘導体の合成
EFペプチド(デングウイルスエンベロープタンパク質結合性ペプチド)(Glu-Phe)誘導体を以下に示す経路で合成した(スキーム4)。
【化21】
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s2ペプチド誘導体の合成法と同様に、Fmoc固相合成法を利用してEFペプチド誘導体(10)の合成を実施した。
2-chlorotritylchloride resinに対して第1アミノ酸であるFmoc-Phe-OHを導入し、Fmoc基を除去した。その後、第2アミノ酸であるFmoc-Glu(OtBu)-OHをカップリングさせ、Fmoc基を除去した。続いて、アルキンリンカーである5-Hexynoic acidをカップリングさせた後、脱樹脂反応を行った。得られた生成物を抽出して凍結乾燥し、HPLCを用いて分析、精製することによって、収率95%で目的化合物(10)を白色粉末として得た(スキーム4)。
【実施例】
【0048】
次に、Glu側鎖のtBuエステル基の脱保護反応を実施した。得られたEFペプチド保護体(10)に対して、TFAを作用させることにより、tBu基を除去し、収率78%で目的化合物(11)を白色粉末として得た。
【化22】
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【実施例】
【0049】
2-1-2.シロール骨格へのペプチド導入 [TPS(2,5)-EF]
シロール誘導体(3)とEFペプチド誘導体(11)をDMF/H2O混合溶媒に溶解し、別途調製した触媒水溶液を加えて反応を開始させた。室温で4時間撹拌した後、反応溶液を凍結乾燥して得られた生成物をHPLCにより分析、精製することによって収率96%で目的化合物(12)を薄黄色粉末として得た。
【化23】
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【実施例】
【0050】
3.腐性ブドウ球菌検出薬に含まれる有効成分である化合物の合成
3-1.合成
3-1-1.シロール骨格の合成
1-ブロモ-3,5-ビス(ブロモメチル)ベンゼンに対して、アジ化ナトリウムをDMSO中70℃で14時間作用させることで反応生成物を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで目的化合物(23)を収率97%で得た。
【化24】
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【実施例】
【0051】
次に、2,5-位にアジド基を2つ有するテトラフェニルシロール誘導体の合成を実施した。
化合物(1)に対してリチウムナフタレニドを作用させることによりシロール環を形成させた後、塩化亜鉛を加えることにより2,5-位亜鉛体のシロール誘導体とした。そこに、塩化パラジウム触媒存在下、化合物(23)を作用させることによって反応生成物を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィーと再結晶によって精製し、目的化合物(24)を収率44%で得た。
【化25】
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【実施例】
【0052】
3-1-2.腐性ブドウ球菌に結合する糖鎖(N-アセチルラクトサミン誘導体)の合成
腐性ブドウ球菌に結合する糖鎖(N-アセチルラクトサミン誘導体)を8段階の反応を経て合成した。まず、ラクトース完全アセチル体(13)を臭化水素 (30% 酢酸溶液) を作用させ、残渣にジエチルエーテルを加えて、不純物を溶解させることで精製し、目的化合物(14)を収率 91 % で得た。
【化26】
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次に、 亜鉛、酢酸ナトリウム、硫酸銅五水和物を水中で懸濁し、その系中に化合物(14)の酢酸溶液を滴下した。3時間撹拌した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し目的化合物(15)を収率53 %で得た。
【化27】
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【実施例】
【0053】
化合物(15)にCAN(硝酸セリウムアンモニウム)とアジ化ナトリウムを作用させることで反応生成物を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、目的化合物(16)を収率67%で得た。
【化28】
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【実施例】
【0054】
化合物(16)に塩化テトラエチルアンモニウムを作用させ、反応生成物を得た。残渣にジエチルエーテルを加えて、不純物を溶解させることで目的化合物(17)を収率 79 % で得た。
【化29】
JP0006636704B2_000035t.gif
【実施例】
【0055】
化合物(17)をチオ酢酸と作用させ、反応生成物を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、目的化合物(18)を収率63 %で得た。
【化30】
JP0006636704B2_000036t.gif
【実施例】
【0056】
化合物(18)にN -ヨードスクシンイミド とトリフルオロメタンスルホン酸を作用させて反応生成物を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、目的化合物(19)を収率80 %で得た。
【化31】
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【実施例】
【0057】
化合物(19)にプロパルギルアルコールとCSA を作用させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、目的化合物(20)を収率 73 % で得た。
【化32】
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【実施例】
【0058】
化合物(20)をメタノール中で、ナトリウムメトキシド、水酸化ナトリウム水溶液と作させ反応生成物を得た。陽イオン交換樹脂でろ過し、凍結乾燥して目的化合物(21)を収率89% で得た。
【化33】
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【実施例】
【0059】
3-1-3.シロール骨格への糖鎖導入
シロール誘導体(24)のアジド基とN -アセチルラクトサミン誘導体(21)のアルキン官能基をHuisgen反応させることによって、LacNAc修飾型シロール誘導体(25)の合成を行った。
シロール誘導体(24)と 化合物(21)をDMSO、水の混合溶媒に溶解し、しばらく撹拌した。硫酸銅五水和物、アスコルビン酸ナトリウムを溶解させた水を加えて50℃で19時間反応させた。TLCにおいて出発物である化合物(24)由来のスポットがほとんど消失したことを確認して溶媒を留去した後、凍結乾燥させた。HPLCを用いて精製することにより収率7%で目的化合物を得た。
【化34】
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【実施例】
【0060】
4.ノロウイルス検出薬に含まれる有効成分である化合物の合成
4-1.合成
シロール骨格の合成については、上記「3-1-1.シロール骨格の合成」を参照のこと。

【実施例】
【0061】
4-1-1.ノロウイルスの3Cプロテアーゼに結合するペプチド誘導体の合成
Fmoc固相合成法を用いて、ノロウイルスの3Cプロテアーゼに特異的に接着するEFQLQペプチド(配列番号6)の保護体(26)の合成を行った(スキーム5)。詳細については、「1-1-2.ヘマグルチニン(HA)結合性ペプチド誘導体の合成」を参照のこと。
【化35】
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【実施例】
【0062】
次に、保護ペプチド(26)にTFAとTISを加え、室温下で1時間反応させた。Dry-ジエチルエーテルで複数回洗浄して凍結乾燥した後、HPLCを用いて精製することによって目的化合物(27)を収率60%で得た。
【化36】
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【実施例】
【0063】
4-1-2.シロール骨格へのペプチド導入
シロール誘導体(24)のアジド基とEFQLQペプチド誘導体(27)のアルキン官能基をHuisgen反応させることによって、s2ペプチド修飾型シロール誘導体(28)の合成を行った。
【化37】
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シロール誘導体(24)とペプチド誘導体(27)をDMFに溶解させたのち、硫酸銅五水和物、アスコルビン酸ナトリウムを溶解させた水を加えて40で4時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を一晩凍結乾燥させた。HLPCを用いて精製することによって目的化合物(28)収率36%で得た。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、ウイルスや微生物を迅速かつ簡便に検出することを可能にするものであり、病原ウイルスや病原細菌等の検出技術の向上に貢献するものである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3