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長期記憶誘導剤
> 明細書
明細書 :長期記憶誘導剤
発行国
日本国特許庁(JP)
公報種別
公開特許公報(A)
公開番号
特開2016-166197 (P2016-166197A)
公開日
平成28年9月15日(2016.9.15)
発明の名称または考案の名称
長期記憶誘導剤
国際特許分類
A61K 31/137 (2006.01)
A61K 31/165 (2006.01)
A61K 31/167 (2006.01)
A61P 25/28 (2006.01)
A23L 33/10 (2016.01)
FI
A61K 31/137
A61K 31/165
A61K 31/167
A61P 25/28
A23L 33/10
請求項の数または発明の数
16
出願形態
OL
全頁数
61
出願番号
特願2016-042875 (P2016-042875)
出願日
平成28年3月4日(2016.3.4)
優先権出願番号
2015043360
優先日
平成27年3月5日(2015.3.5)
優先権主張国
日本国(JP)
発明者または考案者
【氏名】服部 淳彦
【氏名】松本 幸久
【氏名】影近 弘之
【氏名】増野 弘幸
【氏名】千葉 篤彦
【氏名】岩下 洸
出願人
【識別番号】504179255
【氏名又は名称】国立大学法人 東京医科歯科大学
【識別番号】502350504
【氏名又は名称】学校法人上智学院
個別代理人の代理人
【識別番号】100092783、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 浩
【識別番号】100120134、【弁理士】、【氏名又は名称】大森 規雄
【識別番号】100194423、【弁理士】、【氏名又は名称】植竹 友紀子
【識別番号】100104282、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 康仁
審査請求
未請求
テーマコード
4B018
4C206
Fターム
4B018MD16
4B018ME14
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA10
4C206GA02
4C206GA28
4C206GA31
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA15
4C206ZA16
要約
【課題】長期記憶誘導剤の提供。
【解決手段】式Iで示される化合物、その薬学的に許容される塩、又はこれらの溶媒和物を含む、長期記憶誘導剤。
【選択図】なし
特許請求の範囲
【請求項1】
次式I:
【化1】
(式中、R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
及びR
6
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは非置換のC
1-6
アルキル基、置換若しくは非置換のC
2-6
アルケニル基、置換若しくは非置換のC
2-6
アルキニル基、置換若しくは非置換のC
1-6
アルコキシ基、置換若しくは非置換のC
3-8
シクロアルキル基、置換若しくは非置換のC
6-10
アリール基、置換若しくは非置換のC
2-21
アシル基、置換若しくは非置換のヘテロアリールカルボニル基、置換若しくは非置換のC
2-7
アルコキシカルボニル基、ホルミル基、カルボキシル基又は水酸基を表す。)
で示される化合物、その薬学的に許容される塩、又はこれらの溶媒和物を含む、長期記憶誘導剤。
【請求項2】
R
1
が水素原子、置換若しくは非置換のC
1-6
アルコキシ基及びハロゲン原子からなる群から選択される請求項1に記載の長期記憶誘導剤。
【請求項3】
R
4
及びR
5
の少なくとも一方が置換若しくは非置換のC
2-21
アシル基又は置換若しくは非置換のヘテロアリールカルボニル基である請求項1又は2に記載の長期記憶誘導剤。
【請求項4】
R
2
及びR
3
は、ともに水素原子であるか、あるいは少なくとも一方がホルミル基である、請求項1~3のいずれか一項に記載の長期記憶誘導剤。
【請求項5】
式Iで示される化合物が、下記化合物1~16:
【化2】
のいずれかである請求項1に記載の長期記憶誘導剤。
【請求項6】
次式I:
【化3】
(式中、R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
及びR
6
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは非置換のC
1-6
アルキル基、置換若しくは非置換のC
2-6
アルケニル基、置換若しくは非置換のC
2-6
アルキニル基、置換若しくは非置換のC
1-6
アルコキシ基、置換若しくは非置換のC
3-8
シクロアルキル基、置換若しくは非置換のC
6-10
アリール基、置換若しくは非置換のC
2-21
アシル基、置換若しくは非置換のヘテロアリールカルボニル基、置換若しくは非置換のC
2-7
アルコキシカルボニル基、ホルミル基、カルボキシル基又は水酸基を表す。)
で示される化合物、その薬学的に許容される塩、又はこれらの溶媒和物を含む、記憶障害治療用医薬組成物。
【請求項7】
R
1
が水素原子、置換又は非置換のC
1-6
アルコキシ基及びハロゲン原子からなる群から選択される請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
R
4
及びR
5
の少なくとも一方が置換若しくは非置換のC
2-21
アシル基又は置換若しくは非置換のヘテロアリールカルボニル基である請求項6又は7に記載の医薬
組成物。
【請求項9】
R
2
及びR
3
は、ともに水素原子であるか、あるいは少なくとも一方がホルミル基である、請求項6~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
式Iで示される化合物が、下記化合物1~16:
【化4】
のいずれかである請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項11】
次式I:
【化5】
(式中、R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
及びR
6
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは非置換のC
1-6
アルキル基、置換若しくは非置換のC
2-6
アルケニル基、置換若しくは非置換のC
2-6
アルキニル基、置換若しくは非置換のC
1-6
アルコキシ基、置換若しくは非置換のC
3-8
シクロアルキル基、置換若しくは非置換のC
6-10
アリール基、置換若しくは非置換のC
2-21
アシル基、置換若しくは非置換のヘテロアリールカルボニル基、置換若しくは非置換のC
2-7
アルコキシカルボニル基、ホルミル基、カルボキシル基又は水酸基を表す。)
で示される化合物、その薬学的に許容される塩、又はこれらの溶媒和物を含む、機能性食品。
【請求項12】
R
1
が水素原子、置換若しくは非置換のC
1-6
アルコキシ基及びハロゲン原子からなる群から選択される請求項11に記載の機能性食品。
【請求項13】
R
4
及びR
5
の少なくとも一方が置換若しくは非置換のC
2-21
アシル基又は置換若しくは非置換のヘテロアリールカルボニル基である請求項11又は12に記載の機能性食品。
【請求項14】
R
2
及びR
3
は、ともに水素原子であるか、あるいは少なくとも一方がホルミル基である、請求項11~14のいずれか一項に記載の機能性食品。
【請求項15】
式Iで示される化合物が、下記化合物1~16:
【化6】
のいずれかである請求項11に記載の機能性食品。
【請求項16】
次式I:
【化7】
(式中、R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
及びR
6
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは非置換のC
1-6
アルキル基、置換若しくは非置換のC
2-6
アルケニル基、置換若しくは非置換のC
2-6
アルキニル基、置換若しくは非置換のC
1-6
アルコキシ基、置換若しくは非置換のC
3-8
シクロアルキル基、置換若しくは非置換のC
6-10
アリール基、置換若しくは非置換のC
2-21
アシル基、置換若しくは非置換のヘテロアリールカルボニル基、置換若しくは非置換のC
2-7
アルコキシカルボニル基、ホルミル基、カルボキシル基又は水酸基を表す。)
で示される化合物、その薬学的に許容される塩、又はこれらの溶媒和物;
ただし、以下の化合物を除く:
N-[3-(2-アミノ-5-メトキシフェニル)-3-オキソプロピル]-アセトアミド;
N-[3-(2-ホルミルアミノ-5-メトキシフェニル)-3-オキソプロピル]アセトアミド;
3-[(2-アミノフェニル)カルボニル]-2-アミノプロピオン酸;
3-アミノ-1-(2-アミノフェニル)-1-プロパノン。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期記憶誘導剤、特にメラトニンの代謝産物およびその誘導体を含む長期記憶誘導剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
学習や記憶は、動物が環境に適応するために必要な脳の基本機能である。学習・記憶の神経機構の解明は神経行動学・神経生理学分野における重要課題の一つであり、これまでに様々な動物種を用いた研究が進められている。中でも昆虫は、神経細胞の数が比較的少なく神経系の構造も単純である割に高度な学習能力を有するため、学習・記憶の研究には非常に有用な材料である。
【0003】
本発明者はフタホシコオロギ(Gryllus bimaculatus)(以下、「コオロギ」と呼ぶ)を材料とし、水を報酬刺激とした嗅覚連合学習の系を用いて、学習・記憶の分子メカニズムの研究を行っている。渇水状態のコオロギの成虫に、ある匂い(例えばペパーミント)を嗅がせながら水を与える嗅覚報酬連合条件付けを1回だけ行ったところ、匂いと報酬の連合学習が成立してその匂いをより好むようになる。ただしこの記憶は数時間で消失する短期記憶である。しかし、間隔をあけた3回以上の連合条件付けを行うと、一生忘れない長期記憶が形成される。コオロギの長期記憶は、他の動物種の長期記憶と同様にタンパク質合成に依存する記憶である。またコオロギの長期記憶の形成に重要な役割を示す生体分子は、一酸化窒素(NO)、cGMP, cAMP, PKAなど、多数同定されており、それらの多くはマウスやラットの長期記憶形成過程でも同様に重要であることが示されている。ただしこれらの物質は訓練後の投与では記憶の促進効果が認められていない。訓練前だけでなく訓練後の投与でも記憶の増強作用がある物質の探索は学習障害等の治療に有用であると思われる。
【0004】
近年本発明者は、平均寿命を超えた加齢コオロギでは、短期記憶は正常に形成されるが、長期記憶の形成が著しく低下していることを発見した(加齢性記憶障害)。加齢性記憶障害はラットやマウスなどのげっ歯類だけでなく、ショウジョウバエや線虫などの無脊椎動物でも知られている。加齢性記憶障害の原因には諸説あるが、加齢とともに増える活性酸素が細胞を構成するタンパク質やDNAなどにダメージを与えるという「活性酸素説」が幅広く支持されている。抗酸化物質として知られているメラトニンは、加齢性記憶障害に効果があるとされている。例えばマウス、ショウジョウバエ、コオロギを実験動物に用いた本発明者の先行研究で、メラトニンをエサや水に混ぜて長期間与えてやると加齢性記憶障害が予防できた(文献名:特許第4993900号)。しかしながら、その加齢性記憶障害のメカニズムはまだわかっていない。
【先行技術文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4993900号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、長期記憶誘導剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
単回投与でも加齢性記憶障害の改善効果が認められる物質の探索は、認知症の治療に貢
献できると考えられる。そこで本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、主にメラトニンの代謝産物およびその誘導体が長期記憶の誘導に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0008】
(1) 次式I:
【化1】
(式中、R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
及びR
6
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは非置換のC
1-6
アルキル基、置換若しくは非置換のC
2-6
アルケニル基、置換若しくは非置換のC
2-6
アルキニル基、置換若しくは非置換のC
1-6
アルコキシ基、置換若しくは非置換のC
3-8
シクロアルキル基、置換若しくは非置換のC
6-10
アリール基、置換若しくは非置換のC
2-21
アシル基、置換若しくは非置換のヘテロアリールカルボニル基、置換若しくは非置換のC
2-7
アルコキシカルボニル基、ホルミル基、カルボキシル基、水酸基又はハロゲン原子を表す。)
で示される化合物、その薬学的に許容される塩、又はこれらの溶媒和物を含む、長期記憶誘導剤。
(2) R
1
が水素原子、置換若しくは非置換のC
1-6
アルコキシ基及びハロゲン原子からなる群から選択される(1)に記載の長期記憶誘導剤。
(3) R
4
及びR
5
の少なくとも一方が置換若しくは非置換のC
2-21
アシル基又は置換若しくは非置換のヘテロアリールカルボニル基である(1)又は(2)に記載の長期記憶誘導剤。
(4) R
2
及びR
3
は、ともに水素原子であるか、あるいは少なくとも一方がホルミル基である、(1)~(3)のいずれかに記載の長期記憶誘導剤。
(5) 式Iで示される化合物が、下記化合物1~16:
【化2】
のいずれかである(1)に記載の長期記憶誘導剤。
(6) 次式I:
【化3】
(式中、R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
及びR
6
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは非置換のC
1-6
アルキル基、置換若しくは非置換のC
2-6
アルケニル基、置換若しくは非置換のC
2-6
アルキニル基、置換若しくは非置換のC
1-6
アルコキシ基、置換若しくは非置換のC
3-8
シクロアルキル基、置換若しくは非置換のC
6-10
アリール基、置換若しくは非置換のC
2-21
アシル基、置換若しくは非置換のヘテロアリールカルボニル基、置換若しくは非置換のC
2-7
アルコキシカルボニル基、ホルミル基、カルボキシル基、水酸基、又はハロゲン原子を表す。)
で示される化合物、その薬学的に許容される塩、又はこれらの溶媒和物を含む、記憶障害治療用医薬組成物。
(7) R
1
が水素原子、置換又は非置換のC
1-6
アルコキシ基及びハロゲン原子からなる群から選択される(6)に記載の医薬組成物。
(8) R
4
及びR
5
の少なくとも一方が置換若しくは非置換のC
2-21
アシル基又は置換若しくは非置換のヘテロアリールカルボニル基である(6)又は(7)に記載の医薬組成物。
(9) R
2
及びR
3
は、ともに水素原子であるか、あるいは少なくとも一方がホルミル基である、(6)~(8)のいずれかに記載の医薬組成物。
(10) 式Iで示される化合物が、下記化合物1~16:
【化4】
のいずれかである(6)に記載の医薬組成物。
(11) 次式I:
【化5】
(式中、R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
及びR
6
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは非置換のC
1-6
アルキル基、置換若しくは非置換のC
2-6
アルケニル基、置換若しくは非置換のC
2-6
アルキニル基、置換若しくは非置換のC
1-6
アルコキシ基、置換若しくは非置換のC
3-8
シクロアルキル基、置換若しくは非置換のC
6-10
アリール基、置換若しくは非置換のC
2-21
アシル基、置換若しくは非置換のヘテロアリールカルボニル基、置換若しくは非置換のC
2-7
アルコキシカルボニル基、ホルミル基、カルボキシル基水酸基又はハロゲン原子を表す。)
で示される化合物、その薬学的に許容される塩、又はこれらの溶媒和物を含む、機能性食品。
(12) R
1
が水素原子、置換若しくは非置換のC
1-6
アルコキシ基及びハロゲン原子からなる群から選択される(11)に記載の機能性食品。
(13) R
4
及びR
5
の少なくとも一方が置換若しくは非置換のC
2-21
アシル基又は置換若しくは非置換のヘテロアリールカルボニル基である(11)又は(12)に記載の機能性食品。
(14) R
2
及びR
3
は、ともに水素原子であるか、あるいは少なくとも一方がホルミル基である、(11)~(14)のいずれかに記載の機能性食品。
(15) 式Iで示される化合物が、下記化合物1~16:
【化6】
のいずれかである(11)に記載の機能性食品。
(16) 次式I:
【化7】
(式中、R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
及びR
6
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは非置換のC
1-6
アルキル基、置換若しくは非置換のC
2-6
アルケニル基、置換若しくは非置換のC
2-6
アルキニル基、置換若しくは非置換のC
1-6
アルコキシ基、置換若しくは非置換のC
3-8
シクロアルキル基、置換若しくは非置換のC
6-10
アリール基、置換若しくは非置換のC
2-21
アシル基、置換若しくは非置換のヘテロアリールカルボニル基、置換若しくは非置換のC
2-7
アルコキシカルボニル基、ホルミル基、カルボキシル基又は水酸基を表す。)
で示される化合物、その薬学的に許容される塩、又はこれらの溶媒和物;
ただし、以下の化合物を除く:
N-[3-(2-アミノ-5-メトキシフェニル)-3-オキソプロピル]-アセトアミド;
N-[3-(2-ホルミルアミノ-5-メトキシフェニル)-3-オキソプロピル]アセトアミド;
3-[(2-アミノフェニル)カルボニル]-2-アミノプロピオン酸;
3-アミノ-1-(2-アミノフェニル)-1-プロパノン。
また、本発明の他の一形態は、以下の通りである。
【0009】
(1)次式I:
【化8】
(式中、R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
及びR
6
は、それぞれ独立して、水素原子、置換若しくは非置換のC
1-6
アルキル基、置換若しくは非置換のC
2-6
アルケニル基、置換若しくは非置換のC
2-6
アルキニル基、置換若しくは非置換のC
1-6
アルコキシ基、置換若しくは非置換のC
3-8
シクロアルキル基、置換若しくは非置換のC
6-10
アリール基、置換若しくは非置換のC
2-7
アシル基、置換若しくは非置換のC
2-7
アルコキシカルボニル基、ホルミル基、カルボキシル基又は水酸基を表す。)
で示される化合物、その薬学的に許容される塩、又はこれらの溶媒和物を含む、長期記憶誘導剤。
(2)R
1
が置換又は非置換のC
1-6
アルコキシ基である(1)に記載の長期記憶誘導剤。
(3)R
4
及びR
5
の少なくとも一方がC
2-7
アシル基である(1)又は(2)に記載の長期記憶誘導剤。
(4)式Iで示される化合物が、次式II、III、IV又はV:
【化9】
で示されるものである(1)に記載の長期記憶誘導剤。
(5)次式I:
【化10】
(式中、R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
及びR
6
は、それぞれ独立して、水素原子、置換若しくは非置換のC
1-6
アルキル基、置換若しくは非置換のC
2-6
アルケニル基、置換若しくは非置換のC
2-6
アルキニル基、置換若しくは非置換のC
1-6
アルコキシ基、置換若しくは非置換のC
3-8
シクロアルキル基、置換若しくは非置換のC
6-10
アリール基、置換若しくは非置換のC
2-7
アシル基、置換若しくは非置換のC
2-7
アルコキシカルボニル基、ホルミル基、カルボキシル基又は水酸基を表す。)
で示される化合物、その薬学的に許容される塩、又はこれらの溶媒和物を含む、記憶障害治療用医薬組成物。
(6)R
1
が置換又は非置換のC
1-6
アルコキシ基である(5)に記載の医薬組成物。(7)R
4
及びR
5
の少なくとも一方がC
2-7
アシル基である(5)又は(6)に記載の医薬組成物。
(8)式Iで示される化合物が、次式II、III、IV又はV:
【化11】
で示されるものである(5)に記載の医薬組成物。
(9)次式I:
【化12】
(式中、R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
及びR
6
は、それぞれ独立して、水素原子、置換若しくは非置換のC
1-6
アルキル基、置換若しくは非置換のC
2-6
アルケニル基、置換若しくは非置換のC
2-6
アルキニル基、置換若しくは非置換のC
1-6
アルコキシ基、置換若しくは非置換のC
3-8
シクロアルキル基、置換若しくは非置換のC
6-10
アリール基、置換若しくは非置換のC
2-7
アシル基、置換若しくは非置換のC
2-7
アルコキシカルボニル基、ホルミル基、カルボキシル基又は水酸基を表す。)
で示される化合物、その薬学的に許容される塩、又はこれらの溶媒和物を含む、機能性食品。
(10)R
1
が置換又は非置換のC
1-6
アルコキシ基である(9)に記載の機能性食品。
(11)R
4
及びR
5
の少なくとも一方がC
2-7
アシル基である(9)又は(10)に記載の機能性食品。
(12)式Iで示される化合物が、次式II、III、IV又はV:
【化13】
で示されるものである(9)に記載の機能性食品。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、長期記憶誘導剤が提供される。本発明の長期記憶誘導剤は、訓練を行う前後いずれかに投与することで、記憶を誘導することができる。従って、本発明の長期記憶誘導剤は、記憶障害の治療薬として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】メラトニンの長期記憶誘導効果を示す図である。 1回の嗅覚報酬条件付け訓練の20分前に生理食塩水、メラトニン(5μM)、メラトニンとシクロヘキシミド(10mM)を脳に投与した。訓練前(白のグラフ)と訓練1日後(黒のグラフ)に嗜好性をテストし、ミントに対するPI値を求めた(以下同様)。グラフ下の数字は使用したコオロギの数(以下同様)。検定結果は***:p<0.001, **: p<0.01,*: p<0.05,NS: p>0.05(有意差なし)、で表す(以下同様)。グラフの上のパネルは実験のタイムスケジュールを示す(以下同様)。
【図2A】メラトニン代謝産物の効果を示す図である。 メラトニン代謝産物の投与の効果を見るために、1回の訓練の20分前に薬物を投与し、長期記憶を調べた。投与した薬物は生理食塩水、メラトニン(5μM)、AFMK(5μM)、AMK(5μM)、6-HM(5μM)、8br-cGMP(200μM)であり、コオロギの脳に3μl投与した。
【図2B】メラトニン代謝産物の効果を示す図である。 メラトニン代謝産物の投与の効果を見るために、1回の訓練の20分後に薬物を投与し、長期記憶を調べた。投与した薬物は生理食塩水、メラトニン(5μM)、AFMK(5μM)、AMK(5μM)、6-HM(5μM)、8br-cGMP(200μM)であり、コオロギの脳に3μl投与した。
【図3】キヌラミンとキヌレニンの効果を示す図である。 1回訓練の20分後にキヌラミン(5μM)、キヌレニン(5μM)を脳に投与した。比較のため生理食塩水、AMK(5μM)を投与したコオロギの結果も示している。グラフの左図はキヌラミン、キヌレニンの構造式。
【図4A】メラトニンおよびメラトニン代謝産物の投与濃度の効果を示す図である。 メラトニンの濃度依存的な効果を調べた。薬物は1回の訓練の20分後に投与した。25μM、5μM、1μM、0.2μMの濃度のメラトニンを3μl投与した。
【図4B】メラトニンおよびメラトニン代謝産物の投与濃度の効果を示す図である。AFMKの濃度依存的な効果を調べた。薬物は1回の訓練の20分後に投与した。5μM、1μM、0.2μM、40nMの濃度のAFMKを3μl投与した。
【図4C】メラトニンおよびメラトニン代謝産物の投与濃度の効果を示す図である。AMKの濃度依存的な効果を調べた。薬物は1回の訓練の20分後に投与した。5μM、1μM、0.2μM、40nM、8nMの濃度のAMKを3μl投与した。
【図5A】メラトニンの投与タイミングの効果を示す図である。 メラトニンおよびメラトニン代謝産物の投与タイミングの違いによる記憶の誘導効果を調べた。1回訓練の前後のいろいろなタイミングで5μMの濃度のメラトニンを3μl投与し、訓練1日後の記憶を調べた。グラフの点線の左側は訓練前投与の結果を、右側は訓練後投与の結果を示す。
【図5B】メラトニンおよびメラトニン代謝産物の投与タイミングの効果を示す図である。 AFMKの投与タイミングの違いによる記憶の誘導効果を調べた。1回訓練の前後のいろいろなタイミングで5μMの濃度のAFMKを3μl投与し、訓練1日後の記憶を調べた。グラフの点線の左側は訓練前投与の結果を、右側は訓練後投与の結果を示す。
【図5C】メラトニンおよびメラトニン代謝産物の投与タイミングの効果を示す図である。 AMKの投与タイミングの違いによる記憶の誘導効果を調べた。1回訓練後のいろいろなタイミングで1μMの濃度のAMKを3μl投与し、訓練1日後の記憶を調べた。
【図6】メラトニンまたはAMKの水溶液の経口投与による長期記憶誘導効果を示す図である。 1回の訓練の5分後にメラトニン水溶液(5μM)またはAMK水溶液(5μM)をコオロギの口につけて10μl飲ませ、訓練1日後の記憶を調べた。対照群(DW)は同量の蒸留水を飲ませたものである。
【図7】メラトニン関連物質の訓練前投与による加齢性記憶障害の改善効果を示す図である。成虫脱皮してから3週齢の加齢コオロギに生理食塩水、メラトニン(5μM)、AMK(1μM)、グルタチオン(GSH: 500μM)、またはビタミンC(Vit C: 500μM)を3μl投与し、20分後に4回の訓練を行った。テストは訓練前と1日後に行った。
【図8】メラトニン関連物質の訓練後投与による加齢性記憶障害の改善効果を示す図である。加齢コオロギに4回の訓練を行い、その20分後に生理食塩水、メラトニン(5μM)またはAMK(1μM)を3μl投与した。テストは訓練前と1日後に行った。
【図9】AMK関連の合成化合物の投与による長期記憶誘導効果を示す図である。成虫脱皮1週齢の若齢コオロギに1回の訓練を行い、その20分後にAMK関連の合成化合物を投与し(1μg/mlを3μl投与)、訓練1日後の記憶を調べた。
【図10】AMKの腹腔内投与による脳内濃度の変化を示す図である。若齢マウスに1mg/kg bwのAMKを腹腔内投与し、5、15、30、60、120、240分後に海馬、及び物体認識記憶に関係すると考えられている側頭葉の嗅周囲皮質を含む領域を採取し、高速液体クロマトグラフ質量分析計によりAMKの濃度を測定した。対照群として、無処置の個体におけるAMKの濃度も測定した。
【図11】獲得試行の回数と長期記憶の形成との関係を示す図である。無処置の若齢マウスに対して、1~5回の獲得試行を行い、24時間後にテスト試行を行った。
【図12】AMKの投与のタイミングが長期記憶誘導に与える影響を示す図である。単回の獲得試行前後の様々なタイミングで1mg/ kg bwのAMKを投与し、24時間後にテスト試行を行った。
【図13】AMKの投与濃度の効果を示す図である。AMKの濃度依存的な効果を調べた。単回の獲得試行の15分後に0.001mg/ kg bw、0.01mg/ kg bw、0.1mg/ kg bw、1mg/ kg bwの濃度のAMKを投与し、24時間後にテスト試行を行った。
【図14】AMK投与により誘導された長期記憶の持続性を示す図である。若齢マウスに対して単回の獲得試行の15分後に1mg/ kg bwのAMKまたは生理食塩水を投与し、テスト試行を1、4、7日後に行うことにより、薬物の投与により誘導された長期記憶が24時間以降も持続するかを調べた。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.化合物
本発明において使用される化合物は、一般式Iで示されるものであり、その薬学的に許
容される塩又はこれらの溶媒和物を含む。これらの化合物は長期記憶の誘導効果を有しうる。
【0013】
【化14】
【0014】
上記式I中、R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
及びR
6
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは非置換のC
1-6
アルキル基、置換若しくは非置換のC
2-6
アルケニル基、置換若しくは非置換のC
2-6
アルキニル基、置換若しくは非置換のC
1-6
アルコキシ基、置換若しくは非置換のC
3-8
シクロアルキル基、置換若しくは非置換のC
6-10
アリール基、置換若しくは非置換のC
2-21
アシル基、置換若しくは非置換のヘテロアリールカルボニル基、置換若しくは非置換のC
2-7
アルコキシカルボニル基、ホルミル基、カルボキシル基又は水酸基を表す。
【0015】
本明細書において、「ハロゲン原子」とは、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)又はヨウ素原子(I)を表す。好ましいハロゲン原子は、塩素原子である。
本明細書において、「C
1-6
アルキル基」とは、炭素数が1~6個の直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基を意味し、例えば、メチル基、エチル基、1-プロピル基(n-プロピル基)、2-プロピル基(i-プロピル基)、2-メチル-1-プロピル基(i-ブチル基)、2-メチル-2-プロピル基(t-ブチル基)、1-ブチル基(n-ブチル基)、2-ブチル基(s-ブチル基)、1-ペンチル基、2-ペンチル基、3-ペンチル基、2-メチル-1-ブチル基、3-メチル-1-ブチル基、2-メチル-2-ブチル基、3-メチル-2-ブチル基、2,2-ジメチル-1-プロピル基、1-へキシル基、2-へキシル基、3-へキシル基、2-メチル-1-ペンチル基、3-メチル-1-ペンチル基、4-メチル-1-ペンチル基、2-メチル-2-ペンチル基、3-メチル-2-ペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、2-メチル-3-ペンチル基、3-メチル-3-ペンチル基、2,3-ジメチル-1-ブチル基、3,3-ジメチル-1-ブチル基、2,2-ジメチル-1-ブチル基、2-エチル-1-ブチル基、3,3-ジメチル-2-ブチル基、2,3-ジメチル-2-ブチル基などが挙げられる。
C
1-6
アルキル基の好適な例としては、メチル基、エチル基、1-プロピル基、2-プロピル基、1-ブチル基、2-ブチル基等が挙げられる。
【0016】
本明細書において、「C
2-6
アルケニル基」とは、二重結合を1個有し、炭素数が2~6個の直鎖状又は分枝鎖状のアルケニル基を意味し、例えばエテニル基(ビニル基)、1-プロペニル基、2-プロペニル基(アリル基)、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基などが挙げられる。
【0017】
本明細書において、「C
2-6
アルキニル基」とは、三重結合を1個有し、炭素数が2~6個の直鎖状又は分枝鎖状のアルキニル基を意味し、例えば、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基などが挙げられる。
【0018】
本明細書において、「C
1-6
アルコキシ基」とは、上記C
1-6
アルキル基の末端に酸素原子が結合した基であることを意味し、例えば、メトキシ基、エトキシ基、1-プロポキシ基(n-プロポキシ基)、2-プロポキシ基(i-プロポキシ基)、2-メチル-1-プロポキシ基(i-ブトキシ基)、2-メチル-2-プロポキシ基(t-ブトキシ基)、1-ブトキシ基(n-ブトキシ基)、2-ブトキシ基(s-ブトキシ基)、1-ペンチルオキシ基、2-ペンチルオキシ基、3-ペンチルオキシ基、2-メチル-1-ブトキシ基、3-メチル-1-ブトキシ基、2-メチル-2-ブトキシ基、3-メチル-2-ブトキシ基、2,2-ジメチル-1-プロポキシ基、1-へキシルオキシ基、2-へキシルオキシ基、3-へキシルオキシ基、2-メチル-1-ペンチルオキシ基、3-メチル-1-ペンチルオキシ基、4-メチル-1-ペンチルオキシ基、2-メチル-2-ペンチルオキシ基、3-メチル-2-ペンチルオキシ基、4-メチル-2-ペンチルオキシ基、2-メチル-3-ペンチルオキシ基、3-メチル-3-ペンチルオキシ基、2,3-ジメチル-1-ブトキシ基、3,3-ジメチル-1-ブトキシ基、2,2-ジメチル-1-ブトキシ基、2-エチル-1-ブトキシ基などが挙げられる。
C
1-6
アルコキシ基の好適な例としては、メトキシ基、エトキシ基、1-プロポキシ基、2-プロポキシ基、1-ブトキシ基、2-ブトキシ基を挙げることができる。
【0019】
本明細書において、「C
3-8
シクロアルキル基」とは、炭素数が3~8個の単環又は二環の飽和脂肪族炭化水素基を意味し、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などが挙げられる。
【0020】
本明細書において、「C
6-20
アリール基」とは、炭素数が6~20個の芳香族性の炭化水素環式基を意味し、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、インデニル基、アズレニル基などが挙げられる。
アリール基は好ましくは「C
6-10
アリール基」であり、好適な例としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基を挙げることができる。
【0021】
本明細書において、「C
2-21
アシル基」とは、上記定義の「C
1-6
アルキル基」または「C
6-20
アリール基」が結合したカルボニル基であることを意味し、例えば、アセチル基、プロピオニル基、イソプロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、1-ナフトイル基、2-ナフトイル基などがあげられる。C
2-21
アシル基の好適な例としては、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、2-ナフトイル基を挙げることができる。「C
2-21
アシル基」は、好ましくは「C
2-7
アシル基」であり、具体的には上記の「C
1-6
アルキル基」またはフェニル基が結合したカルボニル基、特に好ましくはアセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基である。
本明細書において、「ヘテロアリールカルボニル基」とは、ヘテロアリール基が結合したカルボニル基であることを意味する。「ヘテロアリール基」は、1個、2個または3個のヘテロ原子(N、OまたはS)および2~5個の炭素原子を含有する5員または6員の芳香族性環式基を意味し、具体例としては、フリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イソキサゾリル基、イソチアゾリル基、オキサジアゾリル基、トリアゾリル基、チアジアゾリル基、ピリジニル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基が挙げられ、中でも窒素原子を含有するヘテロアリール基が好ましい。ヘテロアリールカルボニル基の好ましい具体例としては、ピコリノイル基(ピリジン-2-カルボニル基)、ニコチノイル基(ピリジン-3-カルボニル基)、イソニコチノイル基(ピリジン-4-カルボニル基)、ピラジン-2-カルボニル基があり、中でもピコリノイル基が特に好ましい。
【0022】
本明細書において、「C
2-7
アルコキシカルボニル基」とは、上記定義の「C
1-6
アルコキシ基」が結合したカルボニル基であることを意味し、具体例としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、1-プロピルオキシカルボニル基、2-プロピルオキシカルボニル基、2-メチル-2-プロポキシ基、2-メチル-2-プロポキシカルボニル基などが挙げられる。
【0023】
本明細書において、「置換若しくは非置換の」とは、置換可能な部位に、任意に組み合わせて1又は複数個の置換基を有してもよいことを意味する。
置換基の具体例としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、ニトロ基、シ
アノ基、ホルミル基、カルボキシル基、アミノ基、シリル基、メタンスルホニル基、C
1-6
アルキル基、C
2-6
アルケニル基、C
2-6
アルキニル基、C
3-8
シクロアルキル基、C
6-10
アリール基、C
1-6
アルコキシ基、C
2-7
アシル基またはC
2-7
アルコキシカルボニル基などを挙げることができる。
【0024】
本発明においては、R
1
が水素原子、置換若しくは非置換のC
1-6
アルコキシ基及びハロゲン原子からなる群から選択されることが好ましく、非置換のC
1-3
アルコキシ基(より好ましくはメトキシ基)またはハロゲン原子(より好ましくは塩素原子)であることがさらに好ましい。
また、R
4
及びR
5
の少なくとも一方は、例えば置換若しくは非置換のC
2-21
アシル基又は置換若しくは非置換のヘテロアリールカルボニル基であることが好ましく、C
1-6
アルキルカルボニル基;C
1-6
アルコキシ基で置換された若しくは非置換のC
6-20
アリール(好ましくはC
6-10
アリール)カルボニル基;又は非置換のヘテロアリールカルボニル基であることがより好ましく、アセチル基;プロピオニル基;メトキシ基で置換された若しくは非置換のベンゾイル基、1-ナフトイル基若しくは2-ナフトイル基;またはピコリノイル基であることがさらに好ましい。
さらに、R
2
及びR
3
は、ともに水素原子であるか、あるいは少なくとも一方がホルミル基(アルデヒド)(好ましくは一方がホルミル基であり、他方が水素原子)であることが好ましい。
【0025】
本発明の式Iの化合物は、下記式Iaで示される化合物であることが好ましい。
【化15】
上記式Ia中、R
1
、R
2
、およびR
4
は、上記式Iの定義と同義である。また、これらの好ましい基も上述のとおりである。
【0026】
本発明において好ましく用いられる具体的な化合物を以下に示す。
【0027】
【化16】
【0028】
式II:
【化17】
で示される化合物はAFMK(N(1)-acetyl-N(2)-formyl-5-methoxykynuramine)と呼ばれ、メラトニンの代謝産物の一つである。当該化合物は上記で示す化合物10(N-[3-(2-ホルミルアミノ-5-メトキシフェニル)-3-オキソプロピル]アセトアミド)である。
【0029】
次式III:
【化18】
で示される化合物はAMK(N(1) -acetyl-5-methoxykynuramine)と呼ばれ、メラトニン
の代謝産物の一つである。当該化合物は上記で示す化合物1(N-[3-(2-アミノ-5-メトキシフェニル)-3-オキソプロピル]-アセトアミド)である。
【0030】
AFMKは、脳内におけるメラトニンの代謝(分解)産物であり、AMKは、脳内で
のAFMKの代謝(分解)産物である。AFMK及びAMKは、いずれも市販品を使用することができる(それぞれCayman Chemical社、Toronto Research Chemicals社)。
メラトニンの代謝経路を以下に示す。
【化19】
【0031】
次式IV:
【化20】
で示される化合物はKynuramine(キヌラミン)と呼ばれるものである。当該化合物は上記で示す化合物15(3-アミノ-1-(2-アミノフェニル)-1-プロパノン)である。
【0032】
次式V:
【化21】
で示される化合物はKynurenine(キヌレニン)と呼ばれる。当該化合物は上記で示す化合物16(3-[(2-アミノフェニル)カルボニル]-2-アミノプロピオン酸)である。
中でも、化合物1、化合物2、化合物3、化合物8、化合物9、化合物10、化合物11、化合物12、化合物13、化合物14、化合物15、および化合物16からなる群から選択される化合物が好ましく、長期記憶の誘導効果に優れることから、化合物1~5,7,9,15,16からなる群から選択される化合物がより好ましく、化合物2,3,7,9からなる群から選択される化合物が特に好ましい。
本発明において、式Iで示される化合物は市販品を用いてもよいし、合成したものを用いてもよい。式Iで示される化合物は後述する実施例に記載の方法およびこれを改変した方法により合成することができる。
【0033】
本発明においては、式Iで示される化合物の任意の薬学的に許容可能な塩を使用することが可能である「薬学的に許容可能な塩」としては、特に限定されるものではなく、酸との塩又は塩基との塩などが挙げられる。
【0034】
酸との塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩などの無機酸塩、及びギ酸、酢酸、乳酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、酒石酸、ステアリン酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸塩などを挙げることができる。
また、塩基との塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、ジシクロヘキシルアミン、N, N’-ジベンジルエチレンジアミン、アルギニン、リジンなどの有機塩基塩、アンモニウム塩などを挙げることができる。
【0035】
本発明において式Iで示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩は、無水物であってもよく、水和物などの溶媒和物を形成していてもよい。溶媒和物は水和物、非水和物のいずれであってもよい。非水和物としては、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール)、ジメチルホルムアミドなどを使用することができる。さらに、本発明において、式Iで示される化合物は、結晶でも無結晶でもよく、また、結晶多形が存在する場合には、それらのいずれかの結晶形の単一物であっても混合物であってもよい。
式Iで示される化合物は、公知の化学合成により、あるいは市販品としても得ることができる。
【0036】
2.長期記憶誘導剤、記憶障害治療用医薬組成物及び機能性食品
本発明の長期記憶誘導剤、記憶障害治療用医薬組成物及び機能性食品は、前記式Iで示される化合物、その薬学的に許容される塩、又はこれらの溶媒和物を含むものである。
本発明において、「長期記憶」とは、通常、学習訓練を繰り返し行うことで形成される記憶を意味し、新規のタンパク質の合成がなされたときは、長期記憶が誘導されたものと判断される。
【0037】
他方、「短期記憶」とは、通常、1回の訓練でも形成されるが時間とともに忘却していく記憶であることを意味し、タンパク質合成阻害剤の投与により影響を受けない記憶の場合には短期記憶であると判断される。
【0038】
「記憶障害」とは、自分の体験した出来事や過去に覚えたことを思い出せないこと、また新しいことを覚えられないことなどの記憶に関する障害全般を意味し、記憶障害の態様として、加齢性記憶障害、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症などがある。これらの記憶障害は、神経細胞の脱落、神経細胞及び樹状突起の縮小、並びに神経原線維変化又は老人斑等の変化から選ばれる少なくとも1つの変化の出現により生じる記憶障害であり、認知症や加齢に伴い発症する。一方、慢性疲労症候群をはじめとする様々な疾病に伴い学習・記憶障害が生じることも知られている。
ここで「治療」とは、記憶障害から正常状態に回復させること、記憶力を改善することのいずれをも意味する。
【0039】
本発明の長期記憶誘導剤、記憶障害治療用医薬組成物及び機能性食品は、哺乳動物や昆虫に投与し又は摂食させることができる。例えば、警察犬・盲導犬の訓練時やイルカや愛玩動物の調教時に用いることもできる。投与又は摂食の対象となる哺乳動物としては、例えばヒトのほか、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ等の家畜、イヌ、ネコ等の愛玩動物、マウス、ラット、モルモット、ウサギ等の実験動物が挙げられるが、これらの動物に限定されるものではない。
【0040】
本発明の長期記憶誘導剤、記憶障害治療用医薬組成物及び機能性食品の投与形態は、経口、非経口投与のいずれでも可能である。経口投与の場合は、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤又はシロップ剤等による投与が可能である。非経口投与の場合は、注射剤、座剤、点眼剤、経肺剤型(例えばネフライザーなどを用いたもの)、経鼻投与剤型、経皮投与剤型(例えば軟膏、クリーム剤)等が挙げられる。注射剤型の場合は、例えば点滴等の静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射等により全身又は局部的に投与することができる。これらの製剤は、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤などの医薬上許容される添加剤を用いて周知の方法で製造される。
【0041】
賦形剤としては、例えば、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン等のデンプン、乳糖、結晶セルロース、リン酸水素カルシウム等を挙げることができる。
滑沢剤(コーティング剤)としては、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セラック、タルク、カルナウバロウ、パラフィン等を挙げることができる。
【0042】
結合剤としては、例えばポリビニルピロリドン、マクロゴール及び前記賦形剤と同様の化合物を挙げることができる。
崩壊剤としては、例えば前記賦形剤と同様の化合物及びクロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン等の化学修飾されたデンプン・セルロース類を挙げることができる。
安定剤としては、パラオキシ安息香酸エステル類(例えばメチルパラベン、プロピルパラベン等)、アルコール類(クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等)、塩化ベンザルコニウム、及びフェエノール類(フェノール、クレゾール等)が挙げられる。
矯味矯臭剤としては、例えば通常使用される、甘味料、酸味料、香料等を挙げることができる。
【0043】
また、液剤を製造するための溶媒としては、エタノール、フェノール、クロロクレゾール、精製水、蒸留水等を使用することができる。
界面活性剤又は乳化剤としては、例えば、ポリソルベート80、ステアリン酸ポリオキシル40、ラウロマクロゴール等を挙げることができる。
上記添加物等は、剤型に応じて上記の中から単独で又は適宜組み合わせて選ばれる。例えば、注射用製剤として使用する場合、精製された化合物、その薬学的に許容可能な塩、又はこれらの溶媒和物を溶剤(例えば生理食塩水、緩衝液、ブドウ糖溶液等)に溶解し、これにTween 80、Tween 20、ゼラチン、ヒト血清アルブミン等を加えたものを使用することができる。あるいは、使用前に溶解する剤形とするために凍結乾燥したものであってもよい。凍結乾燥用賦形剤としては、例えば、マンニトール、ブドウ糖等の糖アルコールや糖類を使用することができる。
【0044】
本発明の化合物を長期記憶誘導剤又は記憶障害治療用医薬組成物として使用する場合の投与量は、年齢、性別、症状、投与経路、投与回数、剤型によって異なる。投与方法は、患者の年齢、症状により適宜選択する。有効投与量は、例えばメラトニンの場合、体重約850mgのコオロギが1.16ng/μlの化合物を含む溶液を一日約3μl投与することから類推して、一日につき体重1kgあたり約4.1μg~20.5μgである(5μM~25μMのものを3μl投与した結果より)。一方AMKでは、0.03μg/kg~4.16μg/kgである(40nM~5μMのものを3μl投与した結果より)。但し、これらの投与量に制限されるものではない。
本発明の化合物を機能性食品として使用する場合は、例えば、飲料、乳製品、調味料、麺類、畜肉魚肉加工食品、マーガリン、パン、菓子類などが挙げられる。本発明の食品は極めて多種類の形態にわたり、前記の例示に限定されるものではないが、記憶障害予防又は治療、記憶維持の観点から、栄養補助食品や健康食品の形態であることが好ましい。本発明の化合物を食品中に添加する場合の添加量は特に限定されるものではなく、適宜設定することができるが、例えば、体重1kgあたりの食品1g中、メラトニンでは約11.6μg~で(5μMを10μl摂取させた結果より)、AMKでは約2.32μg~である(1μMを10μl摂取させた結果より)。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0045】
若齢または加齢コオロギの嗅覚連合学習試験
<材料と方法>
1.1. 実験動物
成虫脱皮して約1週齢(若齢)または3週齢(加齢)のコオロギの雄を用いた。実験の3日前からコオロギは1匹ずつ100mlビーカーにいれ、水への欲求を高めるために2~3日間絶水させた。エサとして昆虫用試料を約10粒、ビーカーの中に入れて与えた。
【実施例1】
【0046】
1.2. 嗅覚連合条件付け
匂いと報酬の連合条件付けの学習訓練には1mlの注射器を用いた。注射器には報酬である水が入っており、注射針の先から約1cmのところにろ紙片(3 mm x 3 mm)を刺しており、ペパーミントエッセンスをしみこませた。学習訓練では注射針のろ紙をコオロギの触角に近づけて3秒間匂いを嗅がせたのち、注射針の先から水を1滴出してコオロギの口につけた。4回の連合条件付けを行うときは、条件付け間の間隔を5分間あけた。
【実施例1】
【0047】
1.3. 匂いの嗜好性テスト
匂いの嗜好性はテストアリーナにコオロギを1匹ずつ入れて行った。テストアリーナは「待機室」と「テスト室」からなる。「テスト室」の床には直径4cmの穴が2つ開いており、2つの匂い源とつながっている。匂い源は、プラスチック製の壺に匂いのエッセンス(ペパーミントまたはバニラ)をしみこませたろ紙が入ったものにガーゼで蓋をしている。嗜好性テストではコオロギを1匹ずつテスト室に入れて4分間自由に歩かせ、2つの匂い源を
探索させた。テスト開始2分後に匂い源をのせた回転盤を回し、バニラとペパーミントの匂いの位置を逆にした。テスト中に、コオロギが匂い源のガーゼに口をつけている時間を匂い源の訪問時間として計測し、2種類の匂いの訪問時間の比(PI値:嗜好性指数(preference index))を下記式に従って算出して、ミントの匂いに対する嗜好性を相対的に評価した。
【実施例1】
【0048】
PI値=Tp/(Tp+Tv)×100
Tp: 報酬と連合させた匂い(ペパーミント)に対する探索時間
Tv: 報酬と連合させていない匂い(バニラ)に対する探索時間
【実施例1】
【0049】
もし二つの匂いへの嗜好性が同等であればPIは50であるが、コオロギは生得的にペパーミントの匂いよりもバニラの匂いを好むため、学習訓練前のPIの平均値は通常25-35となる。嗜好性テストを学習訓練の前と後に行い、学習訓練によって匂いの嗜好性が変化するかを調べた。
【実施例1】
【0050】
1.4. 薬物
薬物としてmelatonin, N(1)-acetyl-N(2)-formyl-5-methoxykynuramine (AFMK), N(1)
-acetyl-5-methoxykynuramine (AMK), 6-Hydroxymelatonin (6-HM), L-kynurenine, kynuramine, 8-Bromoguanoine 3’,5’-cyclic monophosphate sodium salt (8br-cGMP), cycloheximide (CHX) を使用した。melatonin, 6-HM, kynurenine, kynuramine, 8br-cGMPはSIGMA Aldrich社から、AFMKはCayman Chemical社から、AMKはToronto Research Chemicals社から、CHXは和光株式会社から購入した。8br-cGMPとCHXを除く薬物はまずエタノールに溶かした後、コオロギの生理食塩水で各濃度に希釈した。投与実験では、予め頭部の単眼に開けた穴から10μlシリンジを用いて3μlを脳に投与した。
【実施例1】
【0051】
1.5. 統計処理
同一グループ間において、訓練前と訓練1日後のPI値をWilcoxon’s-testで検定した。
【実施例1】
【0052】
<結果>
1.1. メラトニンの長期記憶誘導効果
記憶形成におけるメラトニンの効果を調べるために、メラトニンを脳に投与したコオロギに1回の訓練を行い、1日後の長期記憶を調べた(図1)。対照群として脳に生理食塩水を投与したコオロギでは、訓練1日後のペパーミントに対するPI値は訓練前のPI値と比べて有意差がなかったが、メラトニンを投与したコオロギでは訓練1日後のPI値が訓練前と比べて有意に高くなった。すなわち、メラトニンは1回の訓練でも1日後の記憶を形成できるといえる。また、メラトニンとシクロヘキシミドを同時に投与したコオロギでは訓練前と訓練1日後でPI値に有意な差がみられなかったことから、メラトニンにより誘導された記憶はタンパク質合成に依存する長期記憶であるといえる。
【実施例1】
【0053】
1.2. メラトニン代謝産物の効果
長期記憶に対するメラトニン代謝産物の効果を調べた。メラトニンの脳内代謝産物であるAFMKとAMKを、肝臓での代謝産物である6-HMを脳に投与し、投与の20分後に1回の訓練を行ったところ、AFMK投与群とAMK投与群では訓練1日後の長期記憶が形成されたのに対し、6-HM投与群では長期記憶が形成されなかった(図2A)。すなわちAFMKとAMKにはメラトニン同様に長期記憶の誘導効果がみられるが、6-HMには誘導効果がみられなかったといえる。一方、先行研究で報告されている8br-cGMPによる長期記憶の誘導効果が確認できた。次に、メラトニンおよびメラトニン代謝産物の訓練後の投与による効果を調べた(図2B)。
1回訓練の20分後にメラトニン、AFMK、AMK、6-HMを脳に投与したところ、メラトニン投与群、AFMK投与群、AMK投与群では訓練1日後の長期記憶が形成されたのに対し、6-HM投与群では長期記憶が形成されなかった。すなわちメラトニン、AFMK、AMKは、訓練後に投与しても長期記憶の誘導効果があることがわかった。一方、8br-cGMPは、訓練後の投与では長期記憶の誘導効果がみられなかった。
【実施例1】
【0054】
1.3. キヌラミンとキヌレニンの効果
キヌラミン、キヌレニンは構造がAFMK、AMKと似ている。長期記憶に対するキヌラミンとキヌレニンの効果を調べるために、1回訓練の20分後にキヌラミンまたはキヌレニンを脳に投与したところ、両群共に訓練1日後の長期記憶が形成された(図 3)。すなわちキヌラミンとキヌレニンもメラトニン、AFMK、AMKと同様に、訓練後の投与で長期記憶の誘導効果がみられた。
【実施例1】
【0055】
1.4. 投与濃度の効果
長期記憶の形成におけるメラトニンおよびメラトニン代謝産物の濃度依存的な効果を見るために、1回訓練の20分後にいろいろな濃度の薬物を3μl投与し、訓練1日後の記憶を調べた(図4)。メラトニン投与群では、25μM、5μMの濃度では長期記憶が形成されたが、1μM、0.2μMの濃度では形成されなかった(図4A)。AFMK投与群では、5μM、1μMの濃度では長期記憶が形成されたが、0.2μM、40nMの濃度では形成されなかった(図4B)。AMK投与群では、5μM、1μM、0.2μM、40nMの濃度では長期記憶が形成されたが、8nMの濃度では形成されなかった(図4C)。すなわちメラトニン、AFMK、AMKのなかでAMKが最も低濃度で長期記憶を誘導できるといえる。
【実施例1】
【0056】
1.5. 投与タイミングの効果
メラトニンおよびメラトニン代謝産物の投与タイミングの違いによる記憶の誘導効果を調べるために、1回訓練の前後のいろいろなタイミングで薬物を投与し、訓練1日後の記憶を調べた(図5)。メラトニン投与群(図5A)とAFMK投与群(図5B)では、訓練20分前から訓練20分後までの投与では長期記憶が形成されたが、訓練40分後、60分後の投与では形成されなかった。一方AMK投与群では、訓練20分後から80分後までの投与で長期記憶が形成されたが、訓練100分後の投与では形成されなかった(図5C)。すなわちメラトニン、AFMK、AMKのなかでAMKが訓練後から最も長い時間経過後の投与でも長期記憶を誘導できるといえる。
【実施例1】
【0057】
1.6. 経口投与による長期記憶誘導効果
1回の訓練後に経口投与してもAMKには長期記憶の誘導作用があるかどうか確かめるために、メラトニン水溶液(5μM)またはAMK水溶液(5μM)を1回の訓練の5分後にコオロギに10μl飲ませ、訓練1日後の記憶を調べた(図6)。蒸留水を飲ませた対照群では長期記憶が形成されなかったのに対し、メラトニン水またはAMK水を飲ませたコオロギでは長期記憶が形成された。すなわち、メラトニンとAMKは経口投与でも長期記憶誘導効果があるといえる。
【実施例1】
【0058】
1.7. 加齢性記憶障害に対するメラトニンとAMKの改善効果
メラトニンとAMKが加齢性記憶障害を改善できるかどうかを調べるために、成虫脱皮してから3週齢の加齢コオロギにメラトニンまたはAMKを投与した後に4回の訓練を行い、1日後の記憶をテストした(図7)。対照群として生理食塩水を投与したコオロギでは4回訓練の1日後の記憶が見られなかった。すなわち加齢コオロギでは長期記憶が形成されないといえる(加齢性記憶障害)。一方、メラトニンやAMKを投与したコオロギでは長期記憶が形成された。これらの結果はメラトニンやAMKが加齢性記憶障害を改善させたことを示している。また、抗酸化剤として知られているグルタチオンやビタミンCでは加齢性記憶障害の改善効果がみられなかった。これらの結果から、メラトニンおよびAMKによる加齢性記憶障害改善効果は、メラトニンやAMKの抗酸化作用とは別の機能によるものであると考えられる。
また、薬物の投与タイミングを変えたときの効果の違いを確認するために、別のコオロギで訓練20分後にメラトニンまたはAMKの投与を行ったところ、訓練前投与群と同様に加齢性記憶障害の改善効果がみられた(図8)。
【実施例1】
【0059】
<考察>
本実施例は、メラトニンとその代謝産物のAFMKとAMK、中でもAMKが長期記憶の形成に重要であることを示した。AMKが記憶の形成に関与すること、また外部から投与したAMKが記憶を増強するという事実は全ての動物種の学習・記憶の実験系において初めての結果である。
本実施例において、成虫脱皮1週齢のコオロギにメラトニンを訓練前に投与すると、1回の学習訓練でもタンパク質合成依存の長期記憶が形成できた。また同様の長期記憶誘導効果はメラトニン代謝産物のAFMK, AMKでもみられた。さらにメラトニンとAFMK, AMKによる長期記憶誘導効果は1回訓練の後の投与でも見られた。
【実施例1】
【0060】
本発明者は、先行研究で、学習訓練前に投与することで長期記憶の誘導効果がある薬物
をいくつか報告した(文献名:Learning and Memory, 2006)。それらは一酸化窒素(NO
)-cGMPシグナル伝達系やcAMPシグナル伝達系に促進作用がある薬物で、具体的には今回用いた8br-cGMPの他に、NOドナーのSNAPとNOR-3、cAMPアナログの8br-cAMP、カルシウムイオノフォア、アデニル酸シクラーゼ活性剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤などである。
【実施例1】
【0061】
しかしながら、薬物を学習訓練後に投与しても長期記憶の形成を促進する効果があると
いうのは今回のメラトニン、AFMK, AMKが初めてである。学習訓練後の投与で記憶の増強作用があるということは、有望な薬になり得る。
【実施例1】
【0062】
生体内において、メラトニンの一部は脳内でAFMKやAMKに代謝されるが、メラトニンの大部分は肝臓で6-ハイドロキシメラトニン(6-HM)に代謝されることが知られている。今回の実験で6-HMには長期記憶誘導効果がみられなかった。一方で、メラトニンの代謝産物ではないがAFMKやAMKと似た構造を持つキヌレニンとキヌラミンも訓練後の投与で長期記憶誘導効果がみられた。長期記憶の形成過程において、メラトニンが直接作用するのではなく、メラトニンが脳内で代謝され、その代謝産物、特にAMKが直接作用するのが重要であると考えられる。
【実施例1】
【0063】
長期記憶誘導を起こす薬物の濃度を調べる実験結果からも、メラトニンやAFMKよりもAMKが重要であることが示された。本実施例では、長期記憶を形成するのに十分な投与濃度は、メラトニンでは5μM、AFMKでは1μMであったのに対し、AMKでは40nM(メラトニンの125分の1の濃度)であった。また投与タイミングの実験から、長期記憶を形成するのに十分な投与タイミングがメラトニンとAFMKでは訓練20分後までであったのに対し、AMKでは訓練80分後までとなった。すなわちAMKは訓練後から長い時間が経っても作用できるといえる。
【実施例1】
【0064】
本実施例において、訓練80分後の投与でも長期記憶を誘導できたという結果が得られた
が、この結果は驚くべきことである。コオロギの平均寿命は成虫脱皮後約2週間であるから、これをヒトに換算すると、コオロギにとって80分という時間はヒトの数時間から数日にあたるといえる。
本実施例において、メラトニンとAMKは共に、経口投与でも長期記憶の誘導効果がみられた。従って、メラトニン及びAMKは、いずれもサプリメントとして有用である。
【実施例1】
【0065】
加齢コオロギにおいても訓練前にメラトニンやAMKを、また訓練後にAMKを1回投与すると長期記憶が形成された。本発明者の先行研究から、加齢コオロギでは短期記憶の形成と長期記憶の読み出しは若いコオロギと同レベルであるが、長期記憶の形成は全くできなくなることがわかっている。
今回のように加齢個体にメラトニンを単回投与することで加齢性記憶障害を改善したと
いう効果はこれまで報告されていない。またAMKに加齢性記憶障害の回復効果があるという報告はこれまでない。加齢性記憶障害に対するメラトニンの効果は、従来考えられている抗酸化作用による生体の細胞・分子レベルの防御効果によるものではなく、加齢に伴い低下する記憶形成機構を正常化する効果によるものと考えられる。今回の結果は、メラトニンやAMKを投与することで一時的に加齢脳にAMKが供給された結果、長期記憶形成能が回復した、と解釈できる。
【実施例2】
【0066】
メラトニンの代謝産物の誘導体の合成
メラトニンの代謝産物の誘導体として、下記の化合物1~14を以下に示すスキームに従って合成した。
【実施例2】
【0067】
(化合物1~14)
【化22】
【実施例2】
【0068】
(化合物の合成スキーム)
【化23】
【実施例2】
【0069】
[合成例A-1]
化合物a1: 1-メトキシ-3-[-(メトキシメトキシ)-2-プロペン-1-イル]-4-ニトロベンゼン
【実施例2】
【0070】
【化24】
塩化ビニルマグネシウム溶液(THF中1M,5.9mL)を-78℃でTHF(9mL)中の2-ニトロ-5-メトキシベンズアルデヒド(890mg,4.91mmol)の溶液に滴下し、得られた溶液を2.5時間その温度で撹拌した。反応混合物を、0.02M HCl水溶液でクエンチした。混合物を2M HCl水溶液で酸性化し、エーテルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥した。乾燥剤を除去した後、溶媒を蒸発させた。得られた粗アルコールをCH2Cl210mLで溶解した。ジイソプロピルエチルアミン(2.5mL,14.7mmol)およびクロロメチルメチルエーテル(740μL,9.8mmol)をその溶液に加え、13時間室温で撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を反応混合物に加え、CH2Cl2で抽出した。有機層を水洗し、Na2SO4で乾燥した。乾燥剤を除去した後、溶媒を蒸発させた。残留物をシリカゲル(10%-40%のAcOEt/ヘキサン)上でのクロマトグラフィーにかけ、740mgの(60%)のメトキシメチルエーテルおよび277mgの(27%)の第2級アルコール(標題化合物)を得た。
薄黄色油。
1
H-NMR (400 MHz, CDCl
3
, δ) 3.35 (3 H, s), 3.90 (3 H, s), 4.62 (1 H, d, J=6.7 Hz), 4.75 (1 H, d, J=6.6 Hz), 5.21-5.23 (1 H, m), 5.34-5.38 (1 H, m), 5.92-5.99 (2 H, m), 6.87 (1 H, dd, J=2.7 Hz, 9.1 Hz), 7.27 (1 H, d, J=2.9 Hz), 8.05 (1 H, d, J=9.1 Hz).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl
3
, δ) 55.8, 55.9, 73.3, 94.6, 113.0, 113.2, 117.0, 127.4, 136.5, 140.0, 141.1, 163.6. HRMS (ESI) calcd for C
12
H
15
NNaO
5
+
([M+Na]
+
): 276.0842, found: 276.0836.
【実施例2】
【0071】
[合成例A-2]
化合物a2: 5-クロロ-1-[(メトキシメトキシ)-2プロペン-1-イル]-2-ニトロベンゼン
【実施例2】
【0072】
【化25】
5-クロロ-2-ニトロベンズアルデヒド(1.04g,5.6mmol)のTHF溶液(10mL)および臭化ビニルマグネシウム溶液(THF中1M,6.7ml)、次いでCH
2
Cl
2
(10mL)中のジイソプロピルエチルアミン(2.9mL,16.8mmol)およびクロロメチルメチルエーテル(845μL,11.2mmol)を、メトキシ生成物と同様に適用した。得られた粗生成物をシリカゲル(5%-40%のAcOEt/ヘキサン)上でのクロマトグラフィーにかけ、329mg(21%)メトキシメチルエーテル及び628mg(52%)の第2級アルコール(標題化合物)を得た。
褐色油。
1
H-NMR (400 MHz, CDCl
3
, δ) 4.61 (1 H, d, J=6.7 Hz), 4.76 (1 H, d, J=6.7 Hz), 5.26 (1 H, td, J=1.2 Hz, 10.3 Hz), 5.39 (1 H, td, J=1.2 Hz, 17.1 Hz), 5.80 (1 H, d, J=6.2 Hz), 5.91 (1 H, ddd, J=6.1 Hz, 10.4 Hz, 17.0 Hz), 7.39 (1 H, dd, J=2.4 Hz, 8.7 Hz), 7.78 (1 H, d, J=2.3 Hz), 7.90 (1 H, d, J=8.7 Hz).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl3, δ) 55.9, 73.0, 94.6, 117.9, 126.0, 128.4, 128.8, 135.8, 138.7, 140.0, 146.3. HRMS (ESI) calcd for C
11
H
12
ClNNaO
4
+
([M+Na]
+
): 280.0347, found: 280.0347.
【実施例2】
【0073】
[合成例B-1]
化合物b1: 3-(2-ニトロ-5-メトキシフェニル)-3-メトキシメチルプロパノール
【実施例2】
【0074】
【化26】
MOMエーテル(化合物a1)(605mg,2.39mmol)のTHF(6mL)中溶液に9-BBN溶液(THF中0.5M,7.2mL)を0℃で滴下した。得られた溶液を2.5時間撹拌した。3M NaOH水溶液(5mL)および30%H
2
O
2
水溶液(5mL)を0℃で反応混合物に添加し、室温で4時間撹拌した。反応混合物に水を添加し、AcOEtで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、Na
2
SO
4
で乾燥した。Na
2
SO
4
を除去した後、溶媒を減圧除去した。残留物をシリカゲル(30%-50%のAcOEt/ヘキサン)上でのクロマトグラフィーにかけ、548mg(85%)のアルコール(標題化合物)を得た。生成物をトルエン及びヘキサンから再結晶化した。
淡黄色粉末。mp 83.5-84.5℃.
1
H-NMR (400 MHz, CDCl
3
, δ) 1.95 (1 H, ddt, J=5.4 Hz, 9.2 Hz, 14.6 Hz), 2.17 (1 H, ddt, J=3.1 Hz, 6.2 Hz, 14.7 Hz), 3.38 (3 H, s), 3.88 (2H, dd, J=5.3 Hz, 6.2 Hz), 3.91 (3 H, s), 4.49 (1 H, d, J=6.7 Hz), 4.61 (1H, d, J=6.6 Hz), 5.59 (1 H, dd, J=3.1 Hz, 9.1 Hz), 6.88 (1 H, dd, J=2.9 Hz, 9.1 Hz), 7.25 (1 H, d, J=2.8 Hz), 8.1 (1 H, d, J=9.1 Hz).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl
3
, δ) 9.9, 55.9, 56.0, 56.2, 60.6, 73.0, 73.0, 95.4, 112.8, 113.2, 127.7, 140.9, 141.7, 163.8. HRMS (ESI) calcd for C
12
H
17
NNaO
6
+
([M+Na]
+
): 294.0948, found: 294.0942.
【実施例2】
【0075】
[合成例B-2]
化合物b2:3-(5-クロロ-2-ニトロフェニル)-3-メトキシメチルプロパノール
【実施例2】
【0076】
【化27】
9-BBNの溶液(THF中0.5M,7.6mL)、THF(5mL)中のMOMエーテル(化合物a2)(650mg,2.53mmol)、3M NaOH水溶液(5mL)及び30%H
2
O
2
水溶液をメトキシ化合物と同様に処理した。粗生成物をシリカゲル(30%-40%のAcOEt/ヘキサン)上でのクロマトグラフィーにかけ、417mg(60%)の目的とするアルコール(標題化合物)を得た。生成物をトルエン及びヘキサンから再結晶化した。
黄色粉末。mp 58.5-60.5℃.
1
H-NMR (400 MHz, CDCl
3
,δ)1.96 (1 H, tdd, J=5.2 Hz, 9.3 Hz, 14.5 Hz), 2.14 (1 H, dddd, J=3.3 Hz, 5.7 Hz, 6.9 Hz, 14.5 Hz), 3.36 (3 H, s), 3.85-3.88(2 H, m), 4.49 (1 H, d, J=6.8 Hz), 4.62 (1 H, d, J=6.8 Hz), 5.45 (1 H, dd, J=3.2 Hz, 9.2 Hz), 7.40 (1 H, dd, J=2.3 Hz, 8.7 Hz), 7.77 (1 H, d, J=2.4 Hz), 7.94 (1 H, d, J=8.7 Hz).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl
3
, δ) 39.9, 56.2, 60.2, 72.4, 95.6, 126.2, 128.5, 128.6, 140.3, 140.6, 146.2. HRMS (ESI) calcd for C
11
H
14
ClNNaO
5
+
([M+Na]
+
): 298.0453, found: 298.0445.
【実施例2】
【0077】
[合成例C-1]
化合物c1: N-[3-(2-ニトロ-5-メトキシフェニル)-3-メトキシメチルプロピル]フタルイミド
【実施例2】
【0078】
【化28】
アゾジカルボン酸ジエチル溶液(40%,トルエン中ca.2.2M,1.0mL)を、トルエン(6mL)中のトリフェニルホスフィン(620mg,2.37mmol)、フタルイミド(341mg,2.32mmol)及びアルコールである化合物b1(422mg,1.56mmol)の溶液に添加し、室温で4時間撹拌した。反応混合物に水を添加し、AcOEtで抽出した。有機層を水洗してブラインで洗浄し、Na
2
SO
4
で乾燥した。Na
2
SO
4
を除去した後、溶媒を減圧除去した。残留物をシリカゲル(30%AcOEt/ヘキサン)上でのクロマトグラフィーにかけ、321mg(51%)のフタルイミド誘導体(標題化合物)を得た。この生成物をEtOHから再結晶化した。
淡黄色針状物。mp 138.0-139.0℃.
1
H-NMR (400 MHz, CDCl
3
, δ) 2.03 (1 H, dddd, J=5.5 Hz, 5.7 Hz, 8.7 Hz, 14.4 Hz), 2.26 (1 H, dddd, J=2.2 Hz, 6.3 Hz, 8.4 Hz, 14.5 Hz), 3.37 (3 H, s), 3.87 (1 H, ddd, J=5.4 Hz, 6.1 Hz, 13.4 Hz), 3.9 (3 H, s), 4.1 (1 H, ddd, J=5.9 Hz, 8.2 Hz, 14.0 Hz), 4.58 (1 H, d, J=6.6 Hz), 4.70 (1 H, d, J=6.6 Hz), 5.33 (1 H, dd, J=2.3 Hz, 9.0 Hz), 6.83 (1 H, dd, J=2.9 Hz, 9.1 Hz), 7.28 (1 H, d, J=2.8 Hz), 7.71 (2 H, dd, J=3.0 Hz, 5.4 Hz), 7.85 (2 H, dd, J=3.0, 5.5 Hz), 8.04 (1 H, d, J=9.1 Hz).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl
3
, δ) 35.0, 36.5, 55.9, 56.5, 72.8, 96.5, 112.5, 113.3, 123.2, 127.7, 132.2, 133.9, 140.4, 142.1, 163.7, 168.5. HRMS (ESI) calcd for C
20
H
20
N
2
NaO
7
+
([M+Na]
+
): 423.1163, found: 423.1158.
【実施例2】
【0079】
[合成例C-2]
化合物c2: N-[3-(5-クロロ-2-ニトロフェニル)-3-メトキシメチルプロピル]フタルイミド
【実施例2】
【0080】
【化29】
トルエン(4mL)中のアゾジカルボン酸ジエチル溶液(40%,トルエン中ca.2.2M,390μLの)、トリフェニルホスフィン(235mg,0.90mmol)、フタルイミド(132mg,0.50mmol)、及びアルコールである化合物b2(121mg,0.44mmol)をメトキシ化合物と同様に処理した。粗生成物をシリカゲル(20%AcOEt/ヘキサン)上でのクロマトグラフィーにかけ、178mg(quant.)フタルイミド誘導体(標題化合物)を得た。この生成物をEtOHから再結晶した。
淡黄色粉末。mp 108.0-110.0℃.
1
H-NMR (400 MHz, CDCl
3
, δ) 2.04 (1 H, dddd, J=5.2 Hz, 5.8 Hz, 9.2 Hz, 14.4 Hz), 2.24 (1 H, dddd, J=2.3 Hz, 6.2 Hz, 8.4 Hz, 14.5 Hz), 3.32 (3 H, s), 3.87 (1 H, ddd, J=5.1 Hz, 6.4 Hz, 13.8 Hz), 4.04 (1 H, ddd, J=5.8 Hz, 8.3 Hz, 14.0 Hz), 4.58 (1 H, d, J=6.8 Hz), 4.72 (1 H, d, J=6.8 Hz), 5.19 (1 H, dd, J=2.2 Hz, 9.3 Hz), 7.35 (1 H, dd, J=2.3 Hz, 8.8 Hz), 7.72 (2 H, dd, J=3.0 Hz, 5.4 Hz), 7.80 (1 H, d, J=2.4 Hz), 7.86 (2 H, dd, J=3.0, 5.4 Hz), 7.92 (1 H, d, J=8.8 Hz).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl
3
, δ) 34.9, 36.5, 56.5, 72.7, 96.8, 123.3, 123.6, 126.3, 128.3, 128.5, 132.1, 134.0, 134.3, 140.3, 141.2, 145.5, 168.5. HRMS (ESI) calcd for C
19
H
17
ClN
2
NaO
6
+
([M+Na]
+
): 427.0667. found: 427.0655.
【実施例2】
【0081】
[合成例D-1]
化合物d1: N-[3-(2-ニトロ-5-メトキシフェニル)-3-メトキシメチルプロピル]アセトアミド
【実施例2】
【0082】
【化30】
ヒドラジン一水和物(0.1mL)をEtOH(2.5mL)中のフタルイミド誘導体である化合物c1(236mg,0.59mmol)の溶液に添加し、該溶液を室温で20.5時間撹拌し、次いで30分間加熱還流した。該溶液を冷却し、2N HCl水溶液で酸性化した。この溶液をセライトパッドで濾過した。濾液をヘキサン洗浄し、次いで水層を固体KOHでアルカリ性にした。水層をAcOEtで抽出した。有機層をNa
2
SO
4
で洗浄した。Na
2
SO
4
を除去した後、溶媒を減圧除去した。得られた粗アミンをCH
2
Cl
2
(1.2mL)及びトリエチルアミン(0.3mL)に溶解した。塩化アセチル(210μL)を0℃で粗アミンの溶液に添加し、次いで2.5時間室温で撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を反応混合物に添加し、CH
2
Cl
2
で抽出した。有機層を水洗し、Na
2
SO
4
で乾燥し、濾過し、溶媒を減圧除去した。残留物をシリカゲル(1%-2%のEtOH/CH
2
Cl
2
)上でのクロマトグラフィーにかけ、75mg(39%)のN-アセチル化生成物(標題化合物)を得た。
【実施例2】
【0083】
[合成例D-2]
化合物d2: N-[3-(2-ニトロ-5-メトキシフェニル)-3-メトキシメチルプロピル]プロピオンアミド
【実施例2】
【0084】
【化31】
ヒドラジン一水和物(0.05mL)をEtOH(1mL)中のフタルイミド誘導体である化合物c1(75mg,0.19mmol)の溶液に添加し、該溶液を13.5時間室温で撹拌した。反応混合物をアセチル化合物と同様に後処理した。得られたアミンをCH
2
Cl
2
(0.8mL)、トリエチルアミン(0.2mL)及び塩化プロピオニル(80μL,0.92mmol)で同様に処理し、プロピオニルアミドを得た。粗アミドをシリカゲル(50%-70%のAcOEt/ヘキサン)上でのクロマトグラフィーにかけ、38mg(62%)のプロピオンアミド(標題化合物)を得た。
黄褐色油。
1
H-NMR (400 MHz, CDCl
3
,δ) 1.19 (3 H, t, J=7.6 Hz), 1.88 (1 H, tdd, J=5.0 Hz, 9.5 Hz, 14.2 Hz), 2.04 (1 H, dddd, J=2.7 Hz, 5.3 Hz, 9.2 Hz, 14.5 Hz), 2.26 (2 H, q, J=7.6 Hz), 3.36 (3 H, s), 3.45 (1 H, dq, J=5.2 Hz, 13.6 Hz), 3.59 (1 H, dddd, J= 4.9 Hz, 5.7 Hz, 9.0 Hz, 13.9 Hz), 3.91 (3 H, s), 4.49 (1 H, d, J=6.7 Hz), 4.59 (1 H, d, J=6.7 Hz), 5.43 (1 H, dd, J=2.6 Hz, 9.2 Hz), 5.92 (1 H, bs), 6.88 (1 H, dd, J=2.8 Hz, 9.1 Hz), 7.24 (1 H, d, J=2.8 Hz), 8.1 (1 H, d, J=9.1 Hz).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl
3
, δ) 9.9, 29.8, 36.5, 37.0, 55.9, 56.3, 72.2, 95.6, 112.7, 113.3, 127.9, 140.6, 142.1, 164.0, 173.9. HRMS (ESI) calcd for C
15
H
22
N
2
NaO
6
+
([M+Na]
+
): 349.1370, found: 349.1368.
【実施例2】
【0085】
[合成例D-3]
化合物d3: N-[3-(2-ニトロ-5-メトキシフェニル)-3-メトキシメチルプロピル]ベンズアミド
【実施例2】
【0086】
【化32】
ヒドラジン一水和物(0.05mL)をEtOH(1mL)中のフタルイミド誘導体である化合物c1(73mg,0.18mmol)の溶液に添加し、該溶液を室温で4時間撹拌した。反応混合物をアセチル化合物と同様に後処理した。得られたアミンをCH
2
Cl
2
(0.8mL)、トリエチルアミン(0.2mL)及び塩化ベンゾイル(0.1mL)で同様に処理した。粗アミドをシリカゲル(30%-40%のAcOEt/ヘキサン)上でのクロマトグラフィーにかけ、48mg(71%)のベンズアミド(標題化合物)を得た。
黄褐色油。
1
H-NMR (400 MHz, CDCl
3
, δ) 2.01 (1 H, ddt, J=4.8 Hz, 9.7 Hz, 14.4 Hz), 2.19 (1 H, dddd, J=2.7 Hz, 5.1 Hz, 9.4 Hz, 14.5 Hz), 3.36 (3 H, s), 3.64 (1 H, ddd, J=5.1 Hz, 10.1 Hz, 13.7 Hz), 3.83 (1 H, dddd, J=4.6 Hz, 5.9 Hz, 9.3 Hz, 13.8 Hz), 3.91 (3 H, s), 4.51 (1 H, d, J=6.6 Hz), 4.62 (1 H, d, J=6.6 Hz), 5.55 (1 H, dd, J=2.6 Hz, 9.1 Hz), 6.74 (1 H, bs), 6.89 (1 H, dd, J=2.8 Hz, 9.1 Hz), 7.27 (1 H, d, J=2.8 Hz), 7.45-7.51 (3 H, m), 7.84-7.85 (1 H, m) 8.12 (1 H, d, J=9.1 Hz).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl
3
, δ) 36.8, 37.1, 56.0, 56.3, 72.4, 95.6, 100.0, 112.7, 113.4, 126.8, 126.9, 128.0, 128.6, 131.4, 134.6, 140.7, 141.9, 164.0, 167.5. HRMS (ESI) calcd for C
19
H
22
N
2
NaO
6
+
([M+Na]
+
): 397.1370, found: 397.1359.
【実施例2】
【0087】
[合成例D-4]
化合物d4: N-[3-(2-ニトロ-5-メトキシフェニル)-3-メトキシメチルプロピル]4-メトキシベンズアミド
【実施例2】
【0088】
【化33】
ヒドラジン一水和物(0.05mL)をEtOH(1mL)中のフタルイミド誘導体である化合物c1(84mg,0.21mmol)の溶液に添加し、該溶液を30分間加熱還流した。反応混合物をアセチル化合物と同様に後処理した。得られた粗アミンをCH
2
Cl
2
(0.8mL)、トリエチルアミン(0.2mL)及び4-トキシベンゾイルクロリド(110mg,0.64mmol)で同様に処理し、4-メトキシベンズアミドを得た。粗アミドをシリカゲル(50%-60%のAcOEt/ヘキサン)上でのクロマトグラフィーにかけ、64mg(75%)の4-メトキシベンズアミド(標題化合物)を得た。
褐色固体。
1
H-NMR (500 MHz, CDCl
3
, δ) 2.01 (1 H, dddd, J=14.5 Hz, 4.7 Hz, 9.6 Hz, 14.5 Hz), 2.17 (1 H, dddd, J=2.6 Hz, 5.1 Hz, 9.5 Hz, 14.5 Hz), 3.35 (3 H, s), 3.61 (1 H, ddd, J=5.1 Hz, 10.0 Hz, 13.8 Hz), 3.78-3.84 (1 H, m), 3.86 (3 H, s), 3.91 (3 H, s), 4.51 (1 H, d, J=6.7 Hz), 4.61 (1 H, d, J=6.7 Hz), 5.54 (1 H, dd, J=2.5 Hz, 9.2 Hz), 6.65 (1 H, br s), 6.88 (1 H, dd, J=2.9 Hz, 9.1 Hz), 6.95 (2 H, d, J=8.9 Hz), 7.27 (1 H, d, J=2.8 Hz), 7.81 (2 H, d, J=8.8 Hz), 8.12 (1 H, d, J=9.10 Hz).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl
3
, δ) 36.9, 36.9, 37.0, 55.4, 56.0, 56.2, 72.4, 95.6, 112.7, 113.4, 113.8, 126.9, 128.0, 128.7, 140.7, 142.0, 162.1, 164.0, 167.0. HRMS (ESI) calcd for C
20
H
24
N
2
NaO
7
+
([M+Na]
+
): 427.1476, found: 427.1473.
【実施例2】
【0089】
[合成例D-5]
化合物d5:N-[3-(2-ニトロ-5-メトキシフェニル)-3-メトキシメチルプロピル]2-メトキシベンズアミド
【実施例2】
【0090】
【化34】
ヒドラジン一水和物(0.05mL)をEtOH(1.5mL)中のフタルイミド誘導体である化合物c1(90mg,0.23mmol)の溶液に添加し、該溶液を30分間加熱還流した。反応混合物をアセチル化合物と同様に後処理した。得られた粗アミンをCH
2
Cl
2
(0.8mL)、トリエチルアミン(0.2mL)及び2-メトキシベンゾイルクロリド(117mg,0.69mmol)で同様に処理し、2-メトキシベンズアミドを得た。粗アミドをシリカゲル(40%-60%のAcOEt/ヘキサン)上でのクロマトグラフィーにかけ、91mg(99%)の2-メトキシベンズアミド(標題化合物)を得た。
無色油。
1
H-NMR (500 MHz, CDCl
3
,δ) 2.00 (1 H, dd, J=5.0 Hz, 14.5 Hz), 2.21 (1 H, dddd, J=3.0 Hz, 5.8 Hz, 9.0 Hz, 14.6 Hz), 3.34 (3 H, s), 3.67-3.71 (1 H, m), 3.75-3.79 (1 H, m) 3.90 (3 H, s), 4.02 (3 H, s), 4.51 (1 H, d, J=6.9 Hz), 4.60 (1 H, d, J=6.9 Hz), 5.53 (1 H, dd, J=2.8 Hz, 9.4 Hz), 6.86 (1 H, dd, J=2.9 Hz, 9.1 Hz), 6.99 (1 H, d, J=8.3 Hz), 7.1 (1 H, ddd, J=0.7 Hz, 7.2 Hz, 7.9 Hz), 7.28 (1 H, d, J=2.8 Hz), 7.44 (1 H, ddd, J=1.7 Hz, 7.3 Hz, 8.3 Hz), 8.08 (1 H, d, J=9.1 Hz), 8.21 (1 H, s), 8.22 (1 H, dd, Hz =1.8 Hz, 7.8 Hz).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl
3
, δ) 36.7, 36.8, 55.8, 55.9, 56.1, 71.8, 95.4, 110.9, 112.7, 113.3, 121.5, 127.7, 132.2, 132.6, 140.8, 142.2, 157.7, 163.9, 165.4. HRMS (ESI) calcd for C
20
H
24
N
2
NaO
7
+
([M+Na]
+
): 427.1476, found: 427.1466.
【実施例2】
【0091】
[合成例D-6]
化合物d6: N-[3-(2-ニトロ-5-メトキシフェニル)-3-メトキシメチルプロピル]2-ナフトアミド
【実施例2】
【0092】
【化35】
ヒドラジン一水和物(0.05mL)をEtOH(1mL)中のフタルイミド誘導体である化合物c1(85mg,0.21mmol)の溶液に添加し、該溶液を30分間加熱還流した。反応混合物をアセチル化合物と同様に後処理した。得られた粗アミンをCH
2
Cl
2
(0.8mL)、トリエチルアミン(0.2mL)及び2-ナフトイルクロリド(137mg,0.72mmol)で同様に処理し、2-ナフトアミドを得た。粗アミドをシリカゲル(40%-60%のAcOEt/ヘキサン)上でのクロマトグラフィーにかけ、81mg(89%)の2-ナフトアミド(標題化合物)を得た。
薄褐色油。
1
H-NMR (500 MHz, CDCl
3
,δ) 2.06 (1 H, ddd, J=14.5 Hz, 5.1 Hz, 9.3 Hz), 2.23 (1 H, dddd, J=2.7 Hz, 5.2 Hz, 9.3 Hz, 14.5 Hz), 3.38 (3 H, d, J=0.7 Hz), 3.70 (1 H, ddd, J=5.1 Hz, 10.1 Hz, 13.6 Hz), 3.85-3.89 (1 H, m), 3.91 (3 H, s), 4.53 (1 H, d, J=6.7 Hz), 4.64 (1.0H, d, J=6.7 Hz), 5.60 (1 H, dd, J=2.5 Hz, 9.1 Hz), 6.89 (1 H, dd, J=2.9 Hz, 9.2 Hz), 6.92 (1 H, br s), 7.29 (1 H, d, J=2.9 Hz), 8.12 (1 H, d, J=9.2 Hz),7.52-7.58 (2 H, m), 7.87-7.94 (4 H, m), 8.38 (1 H, s).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl
3
, δ) 36.8, 37.3, 56.0, 56.3, 72.5, 95.6, 112.7, 113.4, 123.5, 126.6, 127.4, 127.5, 127.7, 128.0, 128.4, 129.0, 131.8, 132.7, 134.7, 140.7, 141.9, 164.0, 167.5. HRMS (ESI) calcd for C
23
H
24
N
2
NaO
6
+
([M+Na]
+
): 447.1527, found: 447.1526.
【実施例2】
【0093】
[合成例D-7]
化合物d7: N-[3-(2-ニトロ-5-メトキシフェニル)-3-メトキシメチルプロピル]2-ピコリンアミド
【実施例2】
【0094】
【化36】
ヒドラジン一水和物(0.05mL)をEtOH(1.5mL)中のフタルイミド誘導体である化合物c1(86mg,0.21mmol)の溶液に添加し、該溶液を30分間加熱還流した。反応混合物をアセチル化合物と同様に後処理した。得られた粗アミンをCH
2
Cl
2
(0.8mL)、トリエチルアミン(0.2mL)及びピコリノイルクロリド(111mg,0.63mmol)で同様に処理し、ピコリンアミドを得た。粗アミドをシリカゲル(30%-50%のAcOEt/ヘキサン)上でのクロマトグラフィーにかけ、69mg(86%)のピコリンアミド(標題化合物)を得た。
薄褐色固体。
1
H-NMR (500 MHz, CDCl
3
,δ) 2.02 (1 H, ddt, J=6.0 Hz, 8.6 Hz, 14.5 Hz), 2.25 (1 H, ddt, J=2.9 Hz, 7.2 Hz, 14.3 Hz), 3.38 (3 H, s), 3.72-3.78 (2 H, m), 3.89 (3 H, s), 4.53 (1 H, d, J=6.8 Hz), 4.64 (1 H, d, J=6.8 Hz), 5.52 (1 H, dd, J=2.8, 8.9 Hz), 6.86 (1 H, dd, J=2.9 Hz, 9.2 Hz), 7.28 (1 H, d, J=2.9 Hz), 7.41 (1 H, ddd, J=1.1 Hz, 4.8 Hz, 7.6 Hz), 7.84 (1 H, dt, J=1.7, 7.7 Hz), 8.08 (1 H, d, J=9.1 Hz), 8.19 (1 H, d, J=7.8 Hz), 8.42 (1 H, br s), 8.56 (1 H, ddd, J=0.8, 1.5, 4.9 Hz).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl
3
, δ) 36.7, 37.0, 55.9, 56.3, 72.7, 95.5, 112.7, 113.3, 122.1, 126.0, 127.8, 137.3, 140.8, 141.9, 148.1, 150.0, 163.8, 164.4. HRMS (ESI) calcd for C
18
H
21
N
3
NaO
6
+
([M+Na]
+
): 398.1323, found: 398.1320.
【実施例2】
【0095】
[合成例D-8]
化合物d8: N-[3-(5-クロロ-2-ニトロフェニル)-3-メトキシメチルプロピル]アセトアミド
【実施例2】
【0096】
【化37】
ヒドラジン一水和物(0.1mL)をEtOH(1mL)中のフタルイミド誘導体である化合物c2(66mg,0.16mmol)の溶液に添加し、該溶液を30分間加熱還流した。反応混合物をメトキシ化合物と同様に後処理した。得られた粗アミン、CH
2
Cl
2
(0.8mL)、トリエチルアミン(0.2mL)及び塩化アセチル(70μL)をメトキシ生成物と同様に処理した。粗アミドをシリカゲル(1%-2%のEtOH/CH
2
Cl
2
)上でのクロマトグラフィーにかけ、50mg(quant.)のN-アセチル化生成物(標題化合物)を得た。
無色油。
1
H-NMR (400 MHz, CDCl
3
, δ) 1.89 (1 H, ddt, J=5.2 Hz, 9.3 Hz, 14.5 Hz), 2.01-2.08 (1 H, m), 2.03 (3 H, s), 3.34 (3 H, s), 3.44 (1 H, ddt, J=5.4 Hz, 10.7 Hz, 13.7 Hz), 3.57 (1 H, dddd, J=5.1 Hz, 6.2 Hz, 8.8 Hz, 13.7 Hz), 4.48 (1 H, d, J=6.8 Hz), 4.61 (1 H, d, J=6.8 Hz), 5.28 (1 H, dd, J=2.7 Hz, 9.3 Hz), 5.86 (1 H, s), 7.40 (1 H, dd, J=2.4 Hz, 8.8 Hz), 7.76 (1 H, d, J=2.3 Hz), 7.96 (1 H, d, J=8.8 Hz).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl
3
, δ) 23.3, 36.5, 37.1, 56.2, 72.1, 95.9, 126.3, 128.5, 128.5, 140.5, 140.8, 145.8, 170.2. HRMS (ESI) calcd for C
13
H
17
ClN
2
NaO
5
+
([M+Na]
+
): 339.0718. found: 339.0711.
【実施例2】
【0097】
[合成例E-1]
化合物e1: N-[3-(2-ニトロ-5-メトキシフェニル)-3-オキソプロピル]アセトアミド
【実施例2】
【0098】
【化38】
p-トルエンスルホン酸一水和物(19mg)をメタノール(1mL)中のメトキシメチルエーテルである化合物d1(67.5mg,0.22mmol)の溶液に添加し、該溶液を4.5時間加熱還流した。反応混合物を0℃で冷却し、炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、AcOEtで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、Na
2
SO
4
で乾燥し、蒸発させた。残留物をアセトン(2mL)に溶解し、ジョーンズ試薬(0.15mL)を添加した。この溶液を室温で1時間撹拌した。反応混合物を氷に注ぎ、Na
2
SO
3
水溶液を添加し、AcOEtで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、Na
2
SO
4
で乾燥し、蒸発させた。残留物をシリカゲル(1%-2%のEtOH/CH
2
Cl
2
)上でのクロマトグラフィーにかけ、37mg(54%)のケトン(標題化合物)を得た。生成物をトルエン-ヘキサンから再結晶化した。
白色粉末。mp 102.5-104.0 ℃
1
H-NMR (500 MHz, CDCl
3
, δ)2.02 (3 H, s), 2.97 (2 H, t, J=5.6 Hz), 3.69 (2 H, q, J=5.8 Hz), 3.92 (3 H, s), 6.18 (1 H, bs), 6.73 (1 H, d, J=2.7 Hz), 7.01 (1 H, dd, J=2.7 Hz, 9.2 Hz), 8.16 (1 H, d, J=9.2 Hz).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl
3
, δ) 23.3, 34.1, 42.6, 56.3, 111.8, 115.0, 127.3, 137.9, 140.3, 164.4, 170.4, 202.0. HRMS (ESI) calcd for C
12
H
14
N
2
NaO
5
+
([M+Na]
+
): 289.0795, found: 289.0788.
【実施例2】
【0099】
[合成例E-2]
化合物e2: N-[3-(2-ニトロ-5-メトキシフェニル)-3-オキソプロピル]プロピオンアミド
【実施例2】
【0100】
【化39】
アセトアミドの場合に前述した手順に従って、メトキシメチルエーテルである化合物d2(38mg,0.12mmol)をメタノール(1mL)中のp-トルエンスルホン酸一水和物(16.1mg)で処理し、次いでアセトン(1mL)中のジョーンズ試薬(100μL)で処理し、24mg(75%)のケトン(標題化合物)を得た。生成物をクロロホルム-ヘキサンから再結晶化した。
白色粉末。mp 92.0-93.5 ℃
1
H-NMR (500 MHz, CDCl
3
, δ)1.17 (3 H, t, J=7.6 Hz), 2.25 (2 H, q, J=7.6 Hz), 2.98 (2 H, t, J=5.5 Hz), 3.71 (2 H, q, J=5.8 Hz), 3.92 (3 H, s), 6.14 (1 H, bs), 6.73 (1 H, d, J=2.8 Hz), 7.01 (1 H, dd, J=2. 8, 9.2 Hz), 8.16 (1 H, d, J=9.2 Hz).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl
3
, δ) 9.7, 29.7, 34.0, 42.6, 56.3, 111.8, 115.0, 127.3, 138.0, 140.4, 164.4, 174.1, 202.0. HRMS (ESI) calcd for C
13
H
16
N
2
NaO
5
+
([M+Na]
+
): 303.0951, found: 303.0944.
【実施例2】
【0101】
[合成例E-3]
化合物e3: N-[3-(2-ニトロ-5-メトキシフェニル)-3-オキソプロピル]ベンズアミド
【実施例2】
【0102】
【化40】
アセトアミドの場合に前述した手順に従って、メトキシメチルエーテルである化合物d3(43mg,0.12mmol)をp-トルエンスルホン酸一水和物(13mg)およびジョーンズ試薬(100μL)で処理し、30mg(80%)のケトン(標題化合物)を得た。生成物をクロロホルム-ヘキサンから再結晶化した。
白色粉末。mp 130.5-132.0 ℃
1
H-NMR (500 MHz, CDCl
3
, δ)3.10 (2 H, t, J=5.6 Hz), 3.90 (3 H, s), 3.93 (2 H, q, J=5.8 Hz), 6.74 (1 H, d, J=2.7 Hz), 6.90 (1 H, bs), 7.01 (1 H, dd, J=2.8 Hz, 9.2 Hz), 7.43-7.46 (2 H, m), 7.49-7.52 (1 H, m), 7.81-7.83 (2 H, m), 8.17 (1 H, d, J=9.2 Hz).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl
3
, δ) 34.7, 42.6, 56.3, 111.8, 115.2, 127.0, 127.3, 128.6, 131.5, 134.4, 138.0, 140.3, 164.5, 167.6, 202.1. HRMS (ESI) calcd for C
17
H
16
N
2
NaO
5
+
([M+Na]
+
): 351.0951, found: 351.0942.
【実施例2】
【0103】
[合成例E-4]
化合物e4: N-[3-(2-ニトロ-5-メトキシフェニル)-3-オキソプロピル]-4-メトキシベンズアミド
【実施例2】
【0104】
【化41】
アセトアミドの場合に前述した手順に従って、メトキシメチルエーテルである化合物d4(55mg,0.14mmol)をp-トルエンスルホン酸一水和物(17mg)およびジョーンズ試薬(100μL)で処理し、34mg(70%)のケトン(標題化合物)を得た。生成物を酢酸エチル-ヘキサンから再結晶化した。
白色粉末。mp 131.5-132.5℃.
1
H-NMR (500 MHz, CDCl
3
, δ)3.09 (2 H, t, J=5.6 Hz), 3.85 (3 H, s), 3.91 (3 H, s), 3.91 (2 H, q, J=5.7 Hz), 6.74 (1 H, d, J=2.7 Hz), 6.78 (1 H, br s), 6.94 (2 H, d, J=8.9 Hz), 7.01 (1 H, dd, J=2.7 Hz, 9.2 Hz), 7.79 (2 H, d, J=8.9 Hz), 8.17 (1 H, d, J=9.20 Hz).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl
3
, δ) 34.6, 42.7, 55.4, 56.3, 111.8, 113.8, 115.2, 126.7, 127.3, 128.8, 138.0, 140.4, 162.2, 164.5, 167.1, 202.2. HRMS (ESI) calcd for C
18
H
18
N
2
NaO
6
+
([M+Na]
+
): 381.1057, found: 381.1056.
【実施例2】
【0105】
[合成例E-5]
化合物e5: N-[3-(2-ニトロ-5-メトキシフェニル)-3-オキソプロピル]-2-メトキシベンズアミド
【実施例2】
【0106】
【化42】
アセトアミドの場合に前述した手順に従って、メトキシメチルエーテルである化合物d5(94mg,0.22mmol)をp-トルエンスルホン酸一水和物(22mg)およびジョーンズ試薬(100μL)で処理し、48mg(60%)のケトン(標題化合物)を得た。生成物をトルエン-シクロヘキサンから再結晶化した。
白色粉末。mp 117.0-118.0℃.
1
H-NMR (500 MHz, CDCl
3
, δ)3.12 (2 H, t, J=5.8 Hz), 3.88 (3 H, s), 3.91 (2 H, q, J=5.9 Hz), 3.99 (3 H, s), 6.75 (1 H, d, J=2.7 Hz), 7.07 (1 H, dt, J=1.0 Hz, 7.7 Hz), 7.45 (1 H, ddd, J=1.8 Hz, 7.3 Hz, 8.3 Hz), 8.15 (1 H, d, J=9.2 Hz), 8.20 (1 H, dd, J=1.9, 7.8 Hz), 8.5 (1 H, s).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl
3
, δ) 34.5, 42.7, 55.9, 56.3, 111.3, 111.8, 115.1, 121.1, 121.3, 127.1, 132.1, 132.8, 138.0, 140.6, 157.7, 164.4, 165.4, 202.0. HRMS (ESI) calcd for C
18
H
18
N
2
NaO
6
+
([M+Na]
+
): 381.1057, found: 381.1056.
【実施例2】
【0107】
[合成例E-6]
化合物e6: N-[3-(2-ニトロ-5-メトキシフェニル)-3-オキソプロピル]-2-ナフトアミド
【実施例2】
【0108】
【化43】
アセトアミドの場合に前述した手順に従って、メトキシメチルエーテルである化合物d6(72mg,0.17mmol)をp-トルエンスルホン酸一水和物(30mg)およびジョーンズ試薬(75μL)で処理し、43mg(67%)のケトン(標題化合物)を得た。生成物を酢酸エチル-ヘキサンから再結晶化した。
淡黄色粉末。mp 164.0-165.0℃.
1
H-NMR (500 MHz, CDCl
3
, δ) 3.14 (2 H, t, J=5.6 Hz), 3.90 (3 H, s), 3.99 (2 H, q, J=5.7 Hz), 6.8 (1 H, d, J=2.8 Hz), 7.01 (1 H, dd, J=2.7 Hz, 9.2 Hz), 7.04 (1 H, br s), 7.52-7.58 (2 H, m), 7.87-7.96 (4 H, m), 8.17 (1 H, d, J=9.2 Hz), 8.35 (1 H, s).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl
3
,δ) 34.8, 42.7, 56.3, 111.8, 115.2, 123.6, 126.7, 127.3, 127.5, 127.6, 127.7, 128.5, 129.0, 131.6, 132.6, 134.8, 138.0, 140.3, 164.5, 167.6, 202.2. HRMS (ESI) calcd for C
21
H
18
N
2
NaO
5
+
([M+Na]
+
): 401.1108 found: 401.1100.
【実施例2】
【0109】
[合成例E-7]
化合物e7: N-[3-(2-ニトロ-5-メトキシフェニル)-3-オキソプロピル]-2-ピコリンベンズアミド
【実施例2】
【0110】
【化44】
アセトアミドの場合に前述した手順に従って、メトキシメチルエーテルである化合物d7(57mg,0.15mmol)をp-トルエンスルホン酸一水和物(43mg,0.25mmol)およびジョーンズ試薬(75μL)で処理し、26mg(53%)のケトン(標題化合物)を得た。生成物をトルエン-シクロヘキサンから再結晶化した。
白色粉末。mp 117.0-117.5℃.
1
H-NMR (500 MHz, CDCl
3
,δ) 3.12 (2 H, t, J=6.0 Hz), 3.88 (3 H, s), 3.93 (2 H, q, J=6.2 Hz), 6.76 (1 H, d, J=2.8 Hz), 6.99 (1 H, dd, J=2.7 Hz, 9.2 Hz), 7.43 (1 H, ddd, J=1.2 Hz, 4.8 Hz, 7.6 Hz), 7.84 (1 H, dt, J=1.7 Hz, 7.7 Hz), 8.15 (1 H, d, J=9.2 Hz), 8.18 (1 H, td, J=1.0 Hz, 7.7 Hz), 8.55 (1 H, br s), 8.6 (1.2H, ddd, J=0.9 Hz, 1.7 Hz, 4.7 Hz).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl
3
, δ) 34.5, 42.7, 56.3, 111.8, 115.3, 122.1, 126.2, 127.1, 137.3, 138.0, 140.5, 148.2, 149.7, 164.4, 164.6, 201.4. HRMS (ESI) calcd for C
16
H15N
3
NaO
5
+
([M+Na]
+
): 352.0904, found: 352.0903.
【実施例2】
【0111】
[合成例E-8]
化合物e8: N-[3-(5-クロロ-2-ニトロフェニル)-3-オキソプロピル]-アセトアミド
【実施例2】
【0112】
【化45】
アセトアミドの場合に前述した手順に従って、メトキシメチルエーテルである化合物d8(67mg,0.22mmol)をp-トルエンスルホン酸一水和物(17mg)およびジョーンズ試薬(100μL)で処理し、48mg(60%)のケトン(標題化合物)を得た。生成物をトルエン-シクロヘキサンから再結晶化した。
白色粉末。mp 122.5-124.5 ℃
1
H-NMR (400 MHz, CDCl
3
,δ)2.02 (3 H, s), 3.02 (2 H, t, J=5.5 Hz), 3.69 (2 H, q, J=5.8 Hz), 6.12 (1 H, bs), 7.34 (1 H, d, J=2.2 Hz), 7.58 (1 H, dd, J=2.2 Hz, 8.8 Hz), 8.11 (1 H, d, J=8.8 Hz).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl
3
, δ) 23.3, 29.7, 34.0, 42.5, 126.1, 127.2, 130.7, 138.8, 141.5, 143.6, 170.5, 200.4. HRMS (ESI) calcd for C
11
H
11
ClN
2
NaO
4
+
([M+Na]
+
): 293.0300, found: 293.0293.
【実施例2】
【0113】
[合成例F-1]
化合物1: N-[3-(2-アミノ-5-メトキシフェニル)-3-オキソプロピル]-アセトアミド
【実施例2】
【0114】
【化46】
ニトロベンゼン誘導体である化合物e1(33mg,0.13mmol)および炭素(12mg)上10%パラジウムのエタノール中懸濁液を水素雰囲気下で30分間室温で撹拌した。混合物をセライトパッドで濾過した。濾液を減圧濃縮した。残留物をトルエンから再結晶化し、17mg(58%)のアニリン誘導体(標題化合物)を得た。
黄褐色固体。
1
H-NMR (500 MHz, CDCl
3
, δ) 1.95 (3 H, s), 3.17 (2 H, t, J=5.5 Hz), 3.65 (2 H, q, J=5.8 Hz), 3.77 (3 H, s), 5.99 (2 H, bs), 6.17 (1 H, bs), 6.64 (1 H, d, J=9.0 Hz), 6.98 (1 H, dd, J=8.9 Hz, 2.9 Hz), 7.14 (1 H, d, J=2.9 Hz).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl3, δ) 23.4, 34.5, 38.8, 56.0, 112.9, 117.3, 118.8, 124.0, 145.1, 150.2, 170.1, 200.9. HRMS (ESI) calcd for C
12
H
16
N
2
NaO
3
+
([M+Na]
+
): 259.1053, found: 259.1052.
【実施例2】
【0115】
[合成例F-2、合成例G-2]
化合物2: N-[3-(2-アミノ-5-メトキシフェニル)-3-オキソプロピル]-プロピオンアミド;及び
化合物11: N-[3-(2-ホルミルアミノ-5-メトキシフェニル)-3-オキソプロピル]-プロピオンアミド
【実施例2】
【0116】
【化47】
アセトアミドの場合に前述した手順に従って、ニトロベンゼン誘導体である化合物e2(22mg,0.079mmol)をEtOH(1mL)中の炭素(4mg)上10%パラジウムで処理し、粗アミンを得た。残留物を酢酸エチルおよびヘキサンから再結晶化し、9mg(44%)のアニリン誘導体(標題の化合物2)を得た。残留する粗アミンをギ酸に溶解し、5時間加熱還流した。反応混合物を氷に注ぎ、クロロホルムで抽出した。有機層を水および炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、Na
2
SO
4
で乾燥し、蒸発させた。残留物をシリカゲル(1%-3%のEtOH/CH
2
Cl
2
)上でのクロマトグラフィーにかけ、6mg(53%)のホルムアミド(標題の化合物11)を得た。ホルミアミドを酢酸エチルから再結晶化した。
(アニリン誘導体)黄色粉末。mp 79-81℃.
1
H-NMR (500 MHz, CDCl
3
, δ)1.13 (3 H, t, J=7.60 Hz), 2.18 (2 H, q, J=7.6 Hz), 3.17 (2 H, t, J=5.6 Hz), 3.66 (2 H, q, J=5.8 Hz), 3.77 (3 H, bs), 6.65 (1 H, d, J=8.95 Hz), 6.98 (1 H, dd, J=9.0 Hz, 2.9 Hz), 7.15 (1 H, d, J=2.9 Hz).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl
3
, δ) 9.8, 29.8, 34.4, 38.8, 56.0, 113.0, 117.5, 118.9, 124.0, 144.9, 150.3, 173.8, 201.1. HRMS (ESI) calcd for C
13
H
18
N
2
NaO
3
+
([M+Na]
+
): 273.1210, found: 273.1205.
(ホルムアミド)淡黄色粉末。mp 131-134℃.
1
H-NMR (500 MHz, CDCl
3
,δ)1.14 (3 H, t, J=7.6 Hz), 2.19 (2 H, q, J=7.6 Hz), 3.28 (2 H, t, J=5.7 Hz), 3.66 (2 H, q, J=5.8 Hz), 3.84 (3 H, s), 6.02 (1 H, bs, J=6.8 Hz), 7.14 (1 H, dd, J=9.2 Hz, 2.9 Hz), 7.38 (1 H, d, J=3.0 Hz), 8.45 (1 H, d, J=1.9 Hz), 8.68 (1 H, d, J=9.2 Hz), 11.22 (1 H, bs).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl
3
, δ): 9.7, 29.7, 34.3, 39.7, 55.7, 115.6, 120.8, 122.6, 123.2, 133.3, 154.9, 159.4, 173.9, 203.5. HRMS (ESI) calcd for C
14
H
18
N
2
NaO
4
+
([M+Na]
+
): 301.1159, found: 301.1158.
【実施例2】
【0117】
[合成例F-3]
化合物3: N-[3-(2-アミノ-5-メトキシフェニル)-3-オキソプロピル]-ベンズアミド
【実施例2】
【0118】
【化48】
アセトアミドの場合に前述した手順に従って、ニトロベンゼン誘導体である化合物e3(23mg,0.071mmol)をEtOH(1mL)中の炭素(3mg)上10%パラジウムで処理し、粗アミンを得た。残留物をシリカゲル(40%-70%のAcOEt/ヘキサン)上でのクロマトグラフィーにかけ、21mg(86%)のアニリン誘導体(標題化合物)を得た。
黄褐色固体。
1
H-NMR (500 MHz, CDCl
3
, δ) 3.29 (2 H, t, J=5.5 Hz), 3.77 (3 H, s), 3.87 (2 H, q, J=5.8 Hz), 6.67 (1 H, d, J=9.0 Hz), 6.98 (1 H, dd, J=9.0 Hz, 2.9 Hz), 7.17 (1 H, d, J=2.8 Hz), 7.43-7.41 (1 H, m), 7.47-7.46 (2 H, m), 7.77-7.75 (2 H, m).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl
3
, δ) 35.0, 38.8, 56.0, 113.0, 117.6, 119.1, 124.0, 126.9, 128.5, 131.4, 134.5, 144.6, 150.4, 167.4, 201.2. HRMS (ESI) calcd for C
17
H
18
N
2
NaO
3
+
([M+Na]
+
): 321.1210, found: 321.1202.
【実施例2】
【0119】
[合成例F-4]
化合物4: N-[3-(2-アミノ-5-メトキシフェニル)-3-オキソプロピル]-4-メトキシベンズアミド
【実施例2】
【0120】
【化49】
アセトアミドの場合に前述した手順に従って、ニトロベンゼン誘導体である化合物e4(23mg,0.064mmol)をEtOH(1mL)中の炭素(22mg)上10%パラジウムで処理し、粗アミンを得た。残留物をシリカゲル(40%-50%のAcOEt/ヘキサン)上でのクロマトグラフィーにかけ、14mg(65%)のアニリン誘導体(標題化合物)を得た。生成物を酢酸エチルおよびヘキサンから再結晶化した。
黄色粉末。150-151℃.
1
H-NMR (500 MHz, CDCl
3
, δ) 3.28 (2 H, t, J=5.5 Hz), 3.86 (2 H, q, J=5.7 Hz), 3.76 (3 H, s), 3.84 (s, 3 H), 6.65 (1 H, d, J=9.0 Hz), 6.90 (2 H, d, J=8.9 Hz), 6.84 (1 H, br s), 6.98 (1 H, dd J=2.9 Hz, 9.0Hz), 7.17 (1 H, d, J=2.9), 7.72 (2 H, d, J=8.9 Hz).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl
3
, δ) 35.0, 38.9, 55.4, 56.0, 113.0, 113.7, 117.6, 119.0, 124.0, 126.8, 128.7, 144.7, 150.4, 162.1, 166.9, 201.3. HRMS (ESI) calcd for C
18
H
20
N
2
NaO
4
+
([M+Na]
+
): 351.1315, found: 351.1311.
【実施例2】
【0121】
[合成例F-5]
化合物5: N-[3-(2-アミノ-5-メトキシフェニル)-3-オキソプロピル]-2-メトキシベンズアミド
【実施例2】
【0122】
【化50】
アセトアミドの場合に前述した手順に従って、ニトロベンゼン誘導体である化合物e5(21mg,0.060mmol)をEtOH(1mL)中の炭素(8mg)上10%パラジウムで処理し、粗アミンを得た。残留物をシリカゲル(40%-50%のAcOEt/ヘキサン)上でのクロマトグラフィーにかけ、13mg(65%)のアニリン誘導体(標題化合物)を得た。生成物をトルエンおよびヘキサンから再結晶化した。
黄色粉末。mp. 134.5-136.0
℃.
1
H-NMR (500 MHz, CDCl
3
, δ) 3.29 (2 H, t, J=5.8 Hz), 3.8 (3 H, s), 3.87 (2 H, q, J=5.9 Hz), 3.94 (3 H, s), 6.6 (1 H, d, J=8.9 Hz), 6.94 (1 H, d, J=8.3 Hz), 6.97 (1 H, dd, J=2.9 Hz, 8.9 Hz), 7.06 (1 H, ddd, J=0.9 Hz, 7.5 Hz, 7. 7 Hz), 7.20 (1 H, d, J=2.9 Hz), 7.42 (1 H, ddd, J=1.8 Hz, 8.3 Hz, 7.3 Hz), 8.18 (1 H, dd, J=1.9, 7.8 Hz), 8.47 (1 H, br s).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl
3
, δ) 34.7, 39.1, 55.8, 56.0, 111.3, 113.1, 117.7, 118.8, 121.1, 121.6, 123.8, 132.1, 132.6, 144.8, 150.3, 157.5, 165.3, 201.0. HRMS (ESI) calcd for C
18
H
20
N
2
NaO
4
+
([M+Na]
+
): 351.1315, found: 351.1312.
【実施例2】
【0123】
[合成例F-6]
化合物6: N-[3-(2-アミノ-5-メトキシフェニル)-3-オキソプロピル]-2-ナフトアミド
【実施例2】
【0124】
【化51】
アセトアミドの場合に前述した手順に従って、ニトロベンゼン誘導体である化合物e6(22mg,0.058mmol)をEtOH(1mL)中の炭素(3mg)上10%パラジウムで処理し、粗アミンを得た。残留物をシリカゲル(40%-60%のAcOEt/ヘキサン)上でのクロマトグラフィーにかけ、18mg(89%)のアニリン誘導体(標題化合物)を得た。生成物をトルエンから再結晶化した。
黄色粉末。mp 113.5-114.5℃.
1
H-NMR (500 MHz, CDCl
3
, δ) 3.34 (2 H, t, J=5.5 Hz), 3.77 (3 H, s), 3.93 (2 H, q, J=5.8 Hz), 6.66 (1 H, d, J=9.0 Hz), 6.98 (1 H, dd, J=2.9 Hz, 9.0 Hz), 7.09 (1 H, br s), 7.19 (1 H, d, J=2.9 Hz), 7.51-7.57 (2 H, m), 7.81-7.93 (4 H, m), 8.28 (1 H, s).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl
3
, δ) 35.1, 38.8, 56.0, 113.0, 117.6, 119.0, 123.6, 124.0, 126.7, 127.4, 127.6, 127.7, 128.4, 128.9, 131.7, 132.6, 134.7, 144.8, 150.4, 167.4, 201.2. HRMS (ESI) calcd for C
21
H
20
N
2
NaO
3
+
([M+Na]
+
): 371.1366, found: 371.1365.
【実施例2】
【0125】
[合成例F-7]
化合物7: N-[3-(2-アミノ-5-メトキシフェニル)-3-オキソプロピル]-2-ピコリンアミド
【実施例2】
【0126】
【化52】
アセトアミドの場合に前述した手順に従って、ニトロベンゼン誘導体である化合物e7(22mg,0.067mmol)をEtOH(1mL)中の炭素(8mg)上10%パラジウムで処理し、粗アミンを得た。残留物をシリカゲル(40%-50%のAcOEt/ヘキサン)上でのクロマトグラフィーにかけ、11mg(53%)のアニリン誘導体(標題化合物)を得た。
黄色粉末。mp 114.0-115.5
℃.
1
H-NMR (500 MHz, CDCl
3
, δ) 3.30 (2 H, t, J=5.9 Hz), 3.76 (3 H, s), 3.90 (2 H, q, J=6.1 Hz), 6.64 (1 H, d, J=9.0 Hz), 6.97 (1 H, dd, J=2.9 Hz , 9.0 Hz), 7.18 (1 H, d, J=2.8 Hz), 7.40 (1 H, ddd, J=1.2 Hz, 4.7 Hz, 7.6 Hz), 7.83 (1 H, dt, J=1.7 Hz, 7.7 Hz), 8.18 (1 H, td, J=1.0, 7.8 Hz), 8.52 (1 H, br s), 8.55 (1 H, ddd, J=0.8 Hz, 1.7 Hz, 4.8 Hz).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl
3
, δ) 34.5, 38.9, 56.0, 113.1, 117.6, 118.9, 122.1, 123.8, 126.1, 137.2, 144.9, 148.1, 149.9, 150.2, 164.4, 200.3. HRMS (ESI) calcd for C
16
H
17
N
3
NaO
3
+
([M+Na]
+
): 322.1162, found: 322.1157.
【実施例2】
【0127】
[合成例F-8]
化合物8: N-[3-(2-アミノ-5-クロロフェニル)-3-オキソプロピル]-アセトアミド
【実施例2】
【0128】
【化53】
塩化スズ(II)二水和物(72mg,0.32mmol)をTHF(0.5mL)及びエタノール中のニトロベンゼン誘導体である化合物e8(17mg)の溶液(0.5mL)に添加し、該溶液を25時間室温で攪拌した。2M NaOH水溶液を反応混合物に添加し、1時間撹拌した。得られた溶液をAcOEtで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、Na
2
SO
4
で乾燥し、蒸発させた。残留物をPLC(20%iPrOH,ヘキサン)に適用し、3mg(23%)の目的とするアニリン誘導体(標題化合物)を得た。生成物をトルエン及びヘキサンから再結晶化した。
黄色粉末。mp 121-122℃.
1
H-NMR (500 MHz, CDCl
3
,δ) 1.96 (3 H, s), 3.16 (2 H, t, J=5.6 Hz), 3.64 (2 H, q, J=5.8 Hz), 6.12 (1 H, bs), 6.62 (1 H, d, J=8.80 Hz), 7.22 (1 H, dd, J=8.8 Hz, 2.4 Hz), 7.65 (1 H, d, J=2.4 Hz).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl3, δ) 23.4, 34.4, 38.7, 76.7, 77.0, 77.3, 118.1, 118.8, 120.4, 130.2, 134.7, 148.7, 170.1, 200.5. HRMS (ESI) calcd for C
11
H
13
ClN
2
NaO
2
+
([M+Na]
+
): 263.0558. found: 263.0551.
【実施例2】
【0129】
[合成例E-9]
化合物e9: N-[3-(2-ニトロフェニル)-3-オキソプロピル]-アセトアミド
【実施例2】
【0130】
ステップ1
【化54】
メタノール中のナトリウムメトキシド(2mg/mL)の溶液(0.8mL)をDMSO(1mL)中のエノン(59mg,0.33mmol)およびフタルイミド(52mg,0.35mmol)の溶液に添加し、溶液を25℃で3時間撹拌した。水を反応混合物に添加し、得られた沈殿物を回収した。沈殿物をメタノールから再結晶化し、73mg(68%)のフタルイミド誘導体を得た。
白色粉末。
1
H-NMR (400 MHz, CDCl
3
,δ) 3.24 (2 H, t, J=7.0 Hz), 4.2 (2 H, t, J=7.0 Hz), 7.46 (1 H, dd, J=1.3 Hz, 7.5 Hz), 7.61 (1 H, ddd, J=1.5 Hz, 7.5 Hz, 8.3 Hz), 7.71-7.73 (3 H, m), 7.86 (2 H, dd, J=3.1 Hz, 5.5 Hz), 8.1 (1 H, dd, J=1.0 Hz, 8.2 Hz).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl
3
, δ) 33.1, 40.8, 123.3, 124.5, 127.5, 130.7, 132.0, 134.0, 134.4, 137.3, 145.6, 168.1, 199.5. HRMS (ESI) calcd for C
17
H
12
N
2
NaO
5
+
([M+Na]
+
): 347.0638. found: 347.0635.
【実施例2】
【0131】
ステップ2
【化55】
上記ステップ1で得たフタルイミド誘導体(72mg,0.22mmol)のトルエン(1.8mL)およびエチレングリコール(0.4mL)中の溶液にp-トルエンスルホン酸一水和物(18mg)を添加し、溶液を21時間加熱還流した。混合物を氷に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、Na
2
SO
4
で乾燥し、蒸発させた。残留物をシリカゲル(20%-30%のAcOEt/ヘキサン)上でのクロマトグラフィーにかけ、73mg(89%)の環状アセタールを得た。
無色固体。
1
H-NMR (500 MHz, CDCl
3
, δ) 2.61 (2 H, t, J=6.5 Hz), 3.61-3.64 (2 H, m), 3.93 (2 H, t, J=6.6 Hz), 4.02-4.04 (2 H, m), 7.39-7.40 (2 H, m), 7.48 (1 H, ddd, J=3.6 Hz 5.2 Hz, 7.9 Hz), 7.61 (1 H, d, J=7.7 Hz), 7.70 (2 H, dd, J=3.0 Hz, 5.5 Hz), 7.84 (2 H, dd, J=3.1 Hz, 5.4 Hz).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl
3
, δ) 32.7, 36.8, 64.9, 108.3, 123.1, 123.1, 128.4, 129.4, 131.1, 132.3, 133.8, 135.1, 149.5, 168.3. HRMS (ESI) calcd for C
19
H
16
N
2
NaO
6
+
([M+Na]
+
): 391.0901. found: 391.0900.
【実施例2】
【0132】
ステップ3
【化56】
上記ステップ2で得た環状アセタール(フタルイミド誘導体)(67mg,0.18mmol)のEtOH(2mL)中溶液にヒドラジン一水和物(0.1mL)を添加し、溶液を30分間加熱還流した。溶液を冷却し、2N HCl水溶液で酸性化した。この溶液をセライトパッドで濾過した。濾液をヘキサンで洗浄し、水層を固体KOHでアルカリ性にした。水層をAcOEtで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、Na
2
SO
4
で乾燥し、蒸発させた。残留物をAl
2
O
3
(1%-5%のMeOH/CH
2
Cl
2
)上でのクロマトグラフィーにかけ、アミン含有混合物を得た。混合物をCH
2
Cl
2
(0.8mL)およびEt
3
N(0.2mL)中に溶解した。塩化アセチル(0.1mL)を混合物の溶液に0℃で添加し、次いで12時間室温で撹拌した。炭酸水素ナトリウム水溶液を反応混合物に添加し、CH
2
Cl
2
で抽出した。有機層を水で洗浄し、Na
2
SO
4
で乾燥し、蒸発させた。残留物をAl
2
O
3
(1%-2%のEtOH/CH
2
Cl
2
)上でのクロマトグラフィーにかけ、11mg(39%)の粗アミドを得た。粗アミドをTHF(1mL)および1%HCl水溶液(0.3mL)中に溶解し、溶液を26時間加熱還流した。反応混合物を炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、AcOEtで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、Na
2
SO
4
で乾燥し、蒸発させた。残留物にPLC(2%MeOH/ヘキサン)を適用して3.8mg(9%)の生成物(標題化合物)を得た。
1
H-NMR (400 MHz, CDCl
3
, δ) 2.02 (3 H, s), 3.04 (2 H, t, J=5.5 Hz), 3.70 (2 H, q, J=5.8 Hz), 6.13 (1 H, bs), 7.39 (1 H, dd, J=1.3 Hz, 7.6 Hz), 7.63 (1 H, ddd, J=1.5 Hz, 8.3 Hz, 7.5 Hz), 7.74 (1 H, dt, J=1.2 Hz, 7.5 Hz), 8.13 (1 H, dd, J=1.0 Hz, 8.2 Hz).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl
3
,δ) 23.3, 34.1, 42.4, 124.6, 127.0, 130.8, 134.4, 137.3, 145.5, 145.5, 170.4, 202.0. HRMS (ESI) calcd for C
11
H
12
N
2
NaO
4
+
([M+Na]
+
): 259.0689, found: 259.0683.
【実施例2】
【0133】
[合成例F-9]
化合物9: N-[3-(2-アミノフェニル)-3-オキソプロピル]-アセトアミド
【実施例2】
【0134】
【化57】
メトキシフェニル誘導体の場合に前述した手順に従って、ニトロベンゼン誘導体である化合物e9(5mg,0.022mmol)をEtOH(1mL)中の炭素(4mg)上10%パラジウムで処理し、粗アミンを得た。残留物をトルエンおよびヘキサンから再結晶化し、4mg(80%)のアニリン誘導体(標題化合物)を得た。
無色油。
1
H-NMR (500 MHz, CDCl
3
,δ) 1.95 (3 H, s), 3.19 (2 H, t, J=5.6 Hz), 3.65 (2 H, q, J=5.8 Hz), 6.16 (1 H, bs), 6.27 (2 H, bs), 6.64-6.67 (2 H, m), 7.28 (2 H, dt, J=7.8 Hz, 1.6 Hz), 7.69 (1 H, dd, J=8.5 Hz, 1.3 Hz).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl
3
, δ) 23.4, 34.5, 38.6, 116.1, 117.4, 117.6, 131.1, 134.7, 150.3, 170.0, 201.5. HRMS (ESI) calcd for C
11
H
14
N
2
NaO
2
+
([M+Na]
+
): 229.0947. found: 229.0941.
【実施例2】
【0135】
[合成例G-1]
化合物10: N-[3-(2-ホルミルアミノ-5-メトキシフェニル)-3-オキソプロピル]アセトアミド
【実施例2】
【0136】
【化58】
ニトロベンゼン誘導体である化合物e1(17mg,0.64mmol)および炭素(13mg)上10%パラジウムのエタノール中懸濁液を水素雰囲気下で2時間室温で撹拌した。混合物をセライトパッドで濾過した。濾液を減圧濃縮した。得られた粗アミンをギ酸に溶解し、該溶液を3時間加熱還流した。反応混合物をCHCl
3
-メタノールで抽出した。有機層を炭酸水素ナトリウム水溶液およびブラインで洗浄し、Na
2
SO
4
で乾燥し、蒸発させた。残留物をシリカゲル(1%-5%のEtOH/CH
2
Cl
2
)上でのクロマトグラフィーにかけ、8mg(48%)のホルムアミド(標題化合物)を得た。生成物をトルエンおよびヘキサンから再結晶化した。
淡黄色粉末。mp 85-87℃.
1
H-NMR (500 MHz, CDCl
3
, δ) 3.40 (2 H, t, J=5.67 Hz), 3.84 (3 H, s), 3.87 (3 H, q, J=5.8 Hz), 6.77 (1 H, bs), 7.14 (1 H, dd, J=9.2 Hz, 2.9 Hz), 7.52-7.40 (5 H, m), 7.76-7.75 (1 H, m), 8.45 (1 H, d, J=1.8 Hz), 8.68 (1 H, d, J=9.2 Hz), 11.23 (1 H, s).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl
3
, δ)34.9, 39.6, 55.7, 115.5, 121.0, 122.6, 123.2, 126.9, 128.6, 131.6, 133.3, 134.2, 154.9, 159.4, 167.5, 203.6. HRMS (ESI) calcd for C
18
H
18
N
2
NaO
4
+
([M+Na]
+
): 349.1159. found: 349.1149.
【実施例2】
【0137】
[合成例G-3]
化合物12: N-[3-(2-ホルミルアミノ-5-メトキシフェニル)-3-オキソプロピル]ベンズアミド
【実施例2】
【0138】
【化59】
ギ酸(1mL)中のアニリン誘導体である化合物3(18mg,0.059mmol)の溶液を、12時間加熱還流した。反応混合物をCHCl
3
で抽出した。有機層をブラインで洗浄し、Na
2
SO
4
で乾燥し、蒸発させた。残留物を、シリカゲル(40%-80%のAcOEt/ヘキサン)上でのクロマトグラフィーにかけ、4mg(18%)のホルムアミド(標題化合物)を得た。生成物をAcOEt及びヘキサンから再結晶化した。
淡黄色粉末。mp 131-134℃.
1
H-NMR (500 MHz, CDCl
3
, δ)1.14 (3 H, t, J=7.6 Hz), 2.19 (2 H, q, J=7.6 Hz), 3.28 (2 H, t, J=5.7 Hz), 3.66 (2 H, q, J=5.8 Hz), 3.84 (3 H, s), 6.02 (1 H, bs, J=6.8 Hz), 7.14 (1 H, dd, J=9.2 Hz, 2.9 Hz), 7.38 (1 H, d, J=3.0 Hz), 8.45 (1 H, d, J=1.9 Hz), 8.68 (1 H, d, J=9.2 Hz), 11.22 (1 H, bs).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl
3
, δ): 9.7, 29.7, 34.3, 39.7, 55.7, 115.6, 120.8, 122.6, 123.2, 133.3, 154.9, 159.4, 173.9, 203.5. HRMS (ESI) calcd for C
14
H
18
N
2
NaO
4
+
([M+Na]
+
): 301.1159, found: 301.1158.
【実施例2】
【0139】
[合成例G-4]
化合物13: N-[3-(2-アセチルアミノ-5-メトキシフェニル)-3-オキソプロピル]アセトアミド
【実施例2】
【0140】
【化60】
塩化アセチル(0.01mL)をCH
2
Cl
2
(0.5mL)及びトリエチルアミン(0.05mL)中のアニリン誘導体である化合物1(3mg,0.12mmol)の溶液に添加し、室温で2時間撹拌した。反応混合物をCH
2
Cl
2
で抽出した。有機層を水洗し、Na
2
SO
4
で乾燥し、蒸発させた。残留物をシリカゲル(1%-5%のEtOH/CH
2
Cl
2
)上でのクロマトグラフィーにかけ、1.4mg(43%)のアセトアニリド誘導体(標題化合物)を得た。生成物をCH
2
Cl
2
-ヘキサンから再結晶化した。
黄褐色粉末。mp 143-145℃.
1
H-NMR (500 MHz, CDCl
3
, δ) 1.98 (3 H, s), 2.23 (3 H, s), 3.27 (2 H, t, J=5.5 Hz), 3.65 (2 H, q, J=5.8 Hz), 6.05 (1 H, bs), 7.14 (1 H, dd, J= 9.2 Hz, 3.0 Hz), 7.35 (1 H, d, J=3.0 Hz), 8.66 (1 H, d, J=9.2 Hz), 11.29 (1 H, bs).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl
3
, δ) 23.4, 25.4, 29.7, 34.4, 39.6, 55.7, 115.2, 121.1, 122.2, 122.5, 134.6, 154.4, 169.0, 170.2, 203.4. HRMS (ESI) calcd for C
14
H
18
N
2
NaO
4
+
([M+Na]
+
): 301.1159. found: 301.1158.
【実施例2】
【0141】
[合成例G-5]
化合物14: N-[3-(5-クロロ-2-ホルミルアミノフェニル)-3-オキソプロピル]アセトアミド
【実施例2】
【0142】
【化61】
ギ酸(1mL)中のアニリン誘導体である化合物8(3mg,0.012mmol)の溶液を、3時間加熱還流した。反応混合物をCHCl
3
で抽出した。有機層をブラインで洗浄し、Na
2
SO
4
で乾燥し、蒸発させた。残留物を、シリカゲル(1%-4%のEtOH/CH
2
Cl
2
)上でのクロマトグラフィーにかけ、2mg(64%)のホルムアミド(標題化合物)を得た。生成物をトルエンから再結晶化した。
白色粉末。mp 169-171℃.
1
H-NMR (500 MHz, CDCl
3
, δ) 1.97 (3 H, s), 3.29 (2 H, t, J=5.7 Hz), 3.65 (2 H, q, J=5.9 Hz), 5.99 (1 H, bs), 7.53 (1 H, dd, J= 9.0 Hz, 2.3 Hz), 7.87 (1 H, d, J=2.5 Hz), 8.50 (1 H, s), 8.75 (1 H, d, J=9.0 Hz), 11.43 (1 H, bs).
13
C-NMR (125 MHz, CDCl
3
, δ) 14.1, 22.7, 23.3, 29.7, 34.3, 39.6, 122.5, 123.1, 128.4, 130.5, 135.2, 138.4, 159.6, 170.2, 202.7. HRMS (ESI) calcd for C
12
H
13
ClN
2
NaO
3
+
([M+Na]
+
): 291.0507, found: 291.0502.
【実施例3】
【0143】
コオロギにおけるAMK関連合成化合物の長期記憶誘導効果
<材料と方法>
3.1. 実験動物
成虫脱皮して約1週齢(若齢)のコオロギの雄を用いた。実験の3日前からコオロギは1匹ずつ100mlビーカーにいれ、水への欲求を高めるために2~3日間絶水させた。エサとして昆虫用試料を約10粒、ビーカーの中に入れて与えた。
【実施例3】
【0144】
3.2. 嗅覚連合条件付け
実施例1の1.2. 嗅覚連合条件付けの方法と同様にして匂いと報酬の連合条件付けの学習訓練を行った。
【実施例3】
【0145】
3.3. 匂いの嗜好性テスト
実施例1における1.3. 匂いの嗜好性テストと同様に匂いの嗜好性テストを行った。
【実施例3】
【0146】
3.4. 薬物
薬物として上記実施例2で合成したAMK関連の合成化合物(化合物1-10)を用いた。いずれの薬物も、まずは薬物1mgを100μlのDMSOに溶かした後、10000倍量のコオロギの生理食塩水で希釈した(最終濃度1μg/ml)。投与実験では、予め頭部の単眼に開けた穴から10μlシリンジを用いて3μlを脳に投与した。
【実施例3】
【0147】
3.5. 統計処理
実施例1における1.5. 統計処理と同様に処理した。
【実施例3】
【0148】
<結果>
AMK関連合成化合物の長期記憶誘導効果
長期記憶形成におけるAMK関連化合物の効果を調べるために、コオロギに1回の訓練を行い、その20分後に化合物1-10をそれぞれ投与し(1μg/mlを3μl投与)、1日後の長期記憶を調べた。化合物1-5, 7, 9では長期記憶の有意な誘導効果がみられた(図9)。AMKよりも効果が高い化合物は、化合物2、化合物3、化合物7、化合物9であった。一方、化合物6、化合物8、化合物10は、今回使用した個体数では有意な差は出なかったが、長期記憶の誘導傾向は認められた。
【実施例3】
【0149】
<考察>
実施例1において、AMKを中心に生体内のメラトニン代謝産物について長期記憶誘導効果が見出されたが、実施例3において、様々なAMK関連合成化合物においてもその効果が認められた。
【実施例3】
【0150】
長期記憶の増強作用が期待されるAMKの効果を、AMK関連合成化合物においても検証することは、臨床応用に向けて大変意義がある。
【実施例3】
【0151】
本実施例では、長期記憶を形成する効果は、AMKよりも、化合物2、化合物3、化合物7、化合物9の方が強いことが示された。これらの誘導体あるいはさらに展開した関連化合物は、長期記憶誘導剤として、慢性疲労症候群をはじめとする様々な疾病に伴う「学習・記憶障害」の改善やアルツハイマー病を代表とする認知症の「学習・記憶障害(記銘・固定力障害)」の改善に期待される。一方、これらの薬物は、警察犬・盲導犬の訓練時の学習や動物の調教時の学習(イルカ・ペットなど)についても有効な物質になりえると考える。
【実施例4】
【0152】
若齢マウスの物体認識試験(ORT)
<材料と方法>
4.1. 実験動物
生後8週齢の雄のICRマウスを購入し、各実験個体は個別のケージに飼育し、飼育環境に少なくとも1週間慣らしてから用いた。飼育室は22度、12時間明期/12時間暗期とし、餌と飲み水は自由に摂取できるように与えた。全ての実験は明期の後半6時間のうちに行った。
【実施例4】
【0153】
4.2. 薬物
薬物としてN(1)-acetyl-5-methoxykynuramine (AMK)を使用した。AMKは生理食塩水に希釈した。投与実験では、0.001mg~1mg/3.65ml/kg bwの投与量で腹腔内投与した。
【実施例4】
【0154】
4.3. AMKの脳内濃度測定
1mg/kg bwのAMKを腹腔内投与し、5、15、30、60、120、240分後に海馬、及び物体認識記憶に関係すると考えられている側頭葉の嗅周囲皮質を含む領域を採取し、高速液体クロマトグラフ質量分析計によりAMKの濃度を測定した。対照群として、無処置の個体におけるAMKの濃度も測定した。
【実施例4】
【0155】
4.4. 物体認識試験
物体認識試験には、2種類の物体を各2個(高さ6 cm x 直径 4cm、高さ7 cm x 直径7 cm)と観察箱(高さ 30 cm x 幅 40 cm x 奥行 30 cm)を用いた。この試験は獲得試行とテスト試行からなり、実験個体を観察箱に慣らすため、実験直前の3日間に1日5分間、観察箱を探索させた。獲得試行では同一の2つの物体を観察箱に提示し、1分間探索させた。獲得試行を複数回行うときは、獲得試行の間隔を1時間あけた。最後の獲得試行から24時間、または4、7日後にテスト試行を行った。テスト試行では獲得試行で提示した2つの同一物体のうちの1つを異なる物体(新規の物体)に入れ替え、5分間探索させた。テスト試行中、マウスがそれぞれの物体を探索した時間を測定し、2種の物体の探索時間の比(DI値:discrimination index)を下記の式に従って算出し、新規の物体に対する認識度を相対的に調べた。
【実施例4】
【0156】
DI値(%)=T
n
×100/(T
f
+T
n
)
T
f
:獲得試行で提示した物体に対する探索時間
T
n
: テスト試行で新規物体として提示した物体に対する探索時間
【実施例4】
【0157】
物体認識試験は、マウスの新奇性を好む性質を利用した学習記憶機能の評価方法である。もしマウスが獲得試行時に提示された物体を記憶し、その記憶がテスト試行時に保持していれば、テスト試行時に提示された新規の物体の方をより長く探索し、DI値は50%より有意に高くなる。逆に、獲得試行時に提示された物体に対する記憶をテスト試行時に保持していなければ、マウスはテスト試行時に提示された二つの物体のどちらに対しても新規に提示されたものとして探索するため、DI値は50%に近い値となる。
【実施例4】
【0158】
4.5. 統計処理
DI値を期待値50%と比較する際にはOne-sample t-testを用いた。各実験において個体群間の比較が必要な際には、2群間の比較にはunpaired t-testを、3群以上の比較に一元配置分散分析の後、Bonferroni testを用いて多重比較検定を行った。
【実施例4】
【0159】
<結果>
4.1. AMKの腹腔内投与による脳内濃度の変化
AMKが血液脳関門を通過するのか、また、腹腔内投与してから脳内に届くまでにかかる時間を調べた。AMKを腹腔内投与すると、海馬でも嗅周囲皮質でも5分後には対照群と比較して有意にAMKの濃度が上昇し、その後、時間経過とともに有意に濃度が減少した(図10)。このことからAMKは血液脳関門を通過することが示されたとともに、腹腔内投与から5分程度と比較的短時間で脳内に到達し、作用することが明らかとなった。
【実施例4】
【0160】
5.2. AMKの長期記憶誘導効果
本実施例において、物体認識試験では無処置の個体では獲得試行を3回以上行うと、24時間後のテスト試行でDI値が有意に50%より高くなり、長期記憶が形成されることが確認された(図11)。AMKによる長期記憶誘導効果を調べるため、通常では長期記憶の形成が確認できない単回の獲得試行を用いた条件において、獲得試行前後の様々なタイミングで1mg/ kg bwのAMKを投与し、24時間後にテスト試行を行った(図12)。AMKを投与した群では、少なくとも獲得試行の60分前から獲得試行の120分後までの投与で長期記憶が形成された。このことから、AMKは単回投与でも長期記憶を誘導できること、また、投与のタイミングは、記憶獲得の前でも、後でも有効であることが分かった。
【実施例4】
【0161】
4.3. 投与濃度の効果
長期記憶の形成におけるAMKの濃度依存的な効果を見るために、単回の獲得試行の15分後に様々な濃度のAMKを投与し、24時間後にテスト試行を行った(図13)。0.01mg、0.1mg、1mg/ kg bwの濃度で長期記憶が形成されたが、0.001mg/ kg bwの濃度では長期記憶が形成されなかった。このことから少なくともAMKは0.01mg/ kgの濃度まで長期記憶を誘導できるといえる。
【実施例4】
【0162】
4.4. 誘導された長期記憶の持続性
AMKの投与により誘導された長期記憶が24時間以降も持続することを確認するため、単回の獲得試行の15分後に1mg/ kg bwのAMKを投与し、テスト試行を1、4、7日後に行った(図14)。その結果、獲得試行から4日後、7日後であっても、ともに長期記憶が保持されていた。このことからAMK投与により誘導された記憶は確かに長期記憶であることが確認されたとともに、この長期記憶は少なくとも7日間は持続することが明らかとなった。
【実施例4】
【0163】
<考察>
コオロギを用いた実施例1において、AMKの長期記憶誘導効果が見出されているが、マウスを用いた実施例4においてもその効果が確認された。
【実施例4】
【0164】
記憶の増強作用が期待されるAMKの効果を、人への応用を視野に、哺乳類であるマウスを用いて検証することは、臨床応用に向けて大変意義がある。
【実施例4】
【0165】
本実施例では、長期記憶を形成するのに十分な投与濃度は、0.01mg/ kg bwであり、これをヒト(60kg)に換算すると約0.6mgとなり、薬として対応可能な量である。
【実施例4】
【0166】
本実施例において、少なくとも獲得試行の120分後の投与でも長期記憶を誘導できた。マウスにとって120分をヒトに換算すると約3日間にあたるため、AMKは臨床応用において優れた利点を持つといえる。
【実施例4】
【0167】
本実施例においてAMKの単回投与の長期記憶誘導効果は、記憶の獲得前に投与しても、記憶の獲得後に投与しても有効であった。また、記憶の獲得後に投与することで長期記憶を誘導する薬物は他に例がなく、様々な疾患に伴う学習・記憶障害や認知症に伴う学習・記憶障害の治療において有望な薬になることが期待される。
図面
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】