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明細書 :運転時の心理状態解析方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-225647 (P2017-225647A)
公開日 平成29年12月28日(2017.12.28)
発明の名称または考案の名称 運転時の心理状態解析方法
国際特許分類 A61B   5/18        (2006.01)
G08G   1/16        (2006.01)
B60W  50/10        (2012.01)
FI A61B 5/18
G08G 1/16 C
B60W 50/10
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 18
出願番号 特願2016-124111 (P2016-124111)
出願日 平成28年6月23日(2016.6.23)
発明者または考案者 【氏名】金森 亮
【氏名】山本 俊行
【氏名】森川 高行
【氏名】安藤 章
出願人 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100165663、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 光宏
審査請求 未請求
テーマコード 3D241
4C038
5H181
Fターム 3D241AA71
3D241AB01
3D241AC30
3D241BA51
3D241BA70
3D241DD04
3D241DD07
4C038PP03
4C038PQ03
5H181AA01
5H181CC04
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF22
5H181FF25
5H181FF27
5H181FF33
要約 【課題】 車両の運転時の心理状態を解析する。
【解決手段】 車両の運転時の生体反応、および運転者の心理状態に影響を与える外部刺激を逐次取得する。また、運転者による運転中の心理状態についての申告も併せて取得する。外部刺激としては、道路構造に関するもの、他車両や歩行者の動きに関するものなどが挙げられ、これらの外部刺激を時刻と対応づけて整理する。また、運転者の申告を解析し、不快または不安という心理的要素に割り当てて整理する。こうして得られたデータに基づいて、外部刺激と心理的要素、および生体反応と心理的要素のそれぞれについて相関を解析した上で、心理的要素を潜在変数として、外部刺激と生体反応との相関を構造解析する。こうすることによって、運転中に運転者に与えられる不快、不安などの運転ストレスと、その要因としての外部刺激との関係を科学的に把握することが可能となる。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
車両の運転時の心理状態を解析する心理状態解析方法であって、
(a) 前記車両の運転者の前記運転中の生体反応を記録する生体反応記録工程と、
(b) 前記運転中における心理状態についての該運転者の申告を、前記心理状態を表す所定の心理的要素に基づいて分類することにより、前記心理状態を取得する心理状態取得工程と、
(c) 前記申告または前記運転中の周囲の状況に基づいて、前記申告に対応して前記運転中に前記運転者に与えられた外部刺激を特定する外部刺激抽出工程と、
(d) 前記心理的要素に従って、前記生体反応と心理的要素との相関、および前記外部刺激と心理的要素との相関の一方または双方を解析するデータ解析工程と、
を備える心理状態解析方法。
【請求項2】
請求項1記載の心理状態解析方法であって、
前記工程(d)は、前記生体反応と心理的要素との相関、および前記外部刺激と心理的要素との相関に基づいて、前記外部刺激と生体反応との相関を解析する心理状態解析方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の心理状態解析方法であって、
前記心理状態は、該運転者の意図が阻害されていることを表す心理的要素、および該運転者が危険に備える意識を表す心理的要素の少なくとも一方に基づいて表される心理状態解析方法。
【請求項4】
請求項1~3いずれか記載の心理状態解析方法であって、
前記生体反応は、心拍数、呼吸および発汗に関連する情報の少なくとも一部である心理状態解析方法。
【請求項5】
請求項1~4いずれか記載の心理状態解析方法であって、
前記工程(d)は、前記生体反応および心理状態が取得されたときの車両の運転挙動の相違を考慮することなく前記解析を行う心理状態解析方法。
【請求項6】
請求項1~5いずれか記載の心理状態解析方法であって、
前記工程(b)は、前記運転者の申告を、該運転者の自由な表現により取得する工程である心理状態解析方法。
【請求項7】
車両の運転時の心理状態を解析する心理状態解析システムであって、
前記車両の運転者の前記運転中の生体反応を記録する生体反応記録部と、
前記運転中における心理状態についての該運転者の申告を、前記心理状態を表す所定の心理的要素に基づいて分類することにより、前記心理状態を取得する心理状態取得部と、
前記申告または前記運転中の周囲の状況に基づいて、前記申告に対応して前記運転中に前記運転者に与えられた外部刺激を特定する外部刺激抽出部と、
前記心理的要素に従って、前記生体反応と心理的要素との相関、および前記外部刺激と心理的要素との相関の一方または双方を解析するデータ解析部と、
を備える心理状態解析システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転時の心理状態を解析する心理状態解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両を運転する際の運転者のストレスの軽減を図るための技術が、種々検討されている。
例えば、特許文献1は、前方の車両に追従して走行するための制御装置において、運転者の生体情報に基づいて緊張度合を推定し、緊張しているときは加速度を抑える技術を開示している。特許文献2は、種々の運転者の生体情報が基準値を超えた地点をコストに反映させることによって、運転者の苦手な環境を回避した経路探索を実現する技術を開示している。特許文献3は、プローブ端末から生体情報を取得し、これらの生体情報に悪影響を与える可能性が低い経路を選択する技術を開示している。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2004-149035号公報
【特許文献2】特開2007-205765号公報
【特許文献3】特開2014-163793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術は、いずれも生体情報を利用するものであり、種々の生体情報を例示してはいるが、運転者のストレス軽減という観点からどの生体情報が有用なのか、またその生体情報を具体的にどのように活用することができるのか、という点について何ら開示されてはいない。従来技術は、一般的に取得可能な生体情報を列挙したり、一般論としてストレスと関与があると推測されている生体情報を列挙しているに過ぎず、「車両の運転」という場面に特化した状況下で、運転のストレスと密接に結びついた生体情報は何かを全く開示していないのである。かかる状態では、生体情報を運転ストレスの軽減に十分有用に活用することはできない。
本発明は、かかる課題に鑑み、車両の運転に生体情報を活用可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、車両の運転時の心理状態を解析する心理状態解析方法であって、
(a) 前記車両の運転者の前記運転中の生体反応を記録する生体反応記録工程と、
(b) 前記運転中における心理状態についての該運転者の申告を、前記心理状態を表す所定の心理的要素に基づいて分類することにより、前記心理状態を取得する心理状態取得工程と、
(c) 前記申告または前記運転中の周囲の状況に基づいて、前記申告に対応して前記運転中に前記運転者に与えられた外部刺激を特定する外部刺激抽出工程と、
(d) 前記心理的要素に従って、前記生体反応と心理的要素との相関、および前記外部刺激と心理的要素との相関の一方または双方を解析するデータ解析工程と、
を備えるものと構成することができる。
本発明の心理状態解析方法は、全ての工程をコンピュータによって実行するものとしてもよいし、解析者が実行するものとしてもよい。
【0006】
本発明において記録する生体反応としては、例えば、心拍、呼吸、皮膚温、精神性発汗、脳血流、脳波,視点移動量など種々の情報を用いることができる。生体情報は、運転中、連続して記録されることが好ましいが、運転者の所定の運転操作等に連動して間欠的に記録されるようにしてもよい。
心理状態についての運転者の申告とは、運転中に運転者がどのように感じたか、についての申告、即ち運転者の主観的な評価または感想である。運転者が、危ない、怖いなど予め用意された項目から該当するものを選択等する方法で申告してもよいし、「危なかった」、「運転しづらかった」のように言語で申告するようにしてもよい。申告は、運転者の音声を録音する方法、運転者の所定の動作または操作によって記録する方法などによって運転中に取得するようにしてもよい。また、運転を終えた後に、画像の再生などによって運転経路を確認しながら、その地点に応じて申告を取得するようにしてもよい。
本発明では、これらの申告を、所定の心理的要素に分類することで解析可能に指標化する。心理的要素としては、例えば、不安、不快、疲労感、爽快感など任意に設定可能である。心理的要素は、いずれか一つを用いるものとしてもよいが、性質または心理的作用の異なる複数種類を併用することが好ましい。また、心理的要素への分類は、「不安レベル1」「不快レベル5」のように、それぞれの心理的要素の強さを数値で表すようにしてもよいし、単に「不安」「不快」など、それぞれの心理的要素に該当するか否かの分類としてもよい。
外部刺激とは、運転中に運転者に与えられ、心理状態に影響を与えたと推測される種々の要因である。もっとも、心理状態との相関は、別途解析するため、外部指摘を特定する際には、必ずしも心理状態との相関は明らかになっていなくてもよい。かかる外部刺激としては、例えば、運転している道路の幅員や信号の有無、車線数、中央分離帯の有無などの道路構造;渋滞や前方車両との間隔などの交通状況;他車両や歩行者・自転車などの動き;天候などが挙げられる。これらの情報を、運転者の申告に含まれる文言などに基づいて取得するようにしてもよい。また、運転中の周囲の状況、例えば、運転中に車両の周囲を撮影した画像の解析や車両の周辺の地図情報などから取得するようにしてもよい。
本発明では、こうして得られた生体反応と心理的要素、および/または外部刺激と心理的要素の相関を解析する。相関の解析は、統計学で知られている種々の方法を適用することができる。運転ストレスの現れとも言うべき生体反応は運転中の心理的要素に起因して生じているはずであるし、こうした心理的要素は外部刺激と因果関係を有するはずであるから、それぞれ心理的要素との相関を精度良く解析することが可能となる。一方、一部の外部刺激と生体反応の間にも、相関は認められ得るが、両者について、心理的要素を介在させた場合ほどの相関は推測しづらいため、十分に信頼性の高い相関を得ることは困難である。このように、本発明では、心理的要素を介在させることによって、生体情報や外部刺激などと運転ストレスとの関係を科学的に把握することが可能となる。
【0007】
本発明の解析結果は、種々の用途に利用することができる。
例えば、生体反応と心理的要素との相関の解析結果を蓄積することによって、生体反応から心理的要素を推測させてもよい。こうすることにより、運転者の申告という主観的な要素を抑制し、運転中の心理状態を科学的に特定することが可能となる。
また、外部刺激と心理的要素との相関に基づいて、道路構造の改善、他の車両、歩行者等の通行指導など、運転ストレスを軽減するための措置を講じるための目安とすることができる。外部刺激と心理的要素との相関は、運転ストレスが軽減される経路の探索などに利用することもできる。例えば、心理的要素との相関が高い外部刺激に直結する道路構造等を有する道路については経路探索のコストを高めたり、経路探索の候補経路から除外すればよいのである。
【0008】
本発明の心理状態解析方法であって、
前記工程(d)は、前記生体反応と心理的要素との相関、および前記外部刺激と心理的要素との相関に基づいて、前記外部刺激と生体反応との相関を解析するものとしてもよい。
このように心理的要素を介在させることによって、外部刺激と生体反応との相関を精度良く求めることが可能となる。こうして得られた情報も、上述の通り、種々の態様で利用することが可能である。
【0009】
本発明の心理状態解析方法において、
前記心理状態は、該運転者の意図が阻害されていることを表す心理的要素、および該運転者が危険に備える意識を表す心理的要素の少なくとも一方に基づいて表されるものとしてもよい。前者は不快などで表現される心理的要素であり、後者は、不安などで表現される心理的要素である。いずれも運転中に運転者がストレスとして感じる心理状態の代表的なものであるため、これらの心理的要素を用いることによって、運転ストレスを適切に解析することが可能となる。
上述の心理的要素は、併せて用いるようにしてもよい。性質の異なる複数の心理的要素を併用することにより、外部刺激や生体反応と心理的要素との相関を、より適切に捉えることが可能となる。解析に用いる心理的要素は、2つまでに限定されるものではなく、3つ以上を用いても構わない。
【0010】
また、本発明の心理状態解析方法において、
前記生体反応は、心拍数、呼吸および発汗に関連する情報の少なくとも一部であるものとしてもよい。
運転者の生体反応としては多種多様なものが存在する。しかし、これらの生体情報の全てが、車両の運転中の心理状態と相関を有する訳ではない。
そこで、発明者が数人の被験者から運転中の生体反応を取得し、心理的要素との相関を解析したところ、心拍数、呼吸および発汗が弱いながらも相関を示すことが確認された。従って、生体反応として、これらの一部または全部を用いることにより、運転中の心理状態を精度良く解析することが可能となる。
上記態様において、解析に用いる生体反応には、心拍数、呼吸および発汗以外を含んでも差し支えないが、これらの一部または全部に限定してもよい。生体反応を、運転中の心理状態の解析に有用と考えられるものに絞り込むことにより、無用な生体反応を扱うことによる煩雑な処理やノイズを回避することが可能となる。
【0011】
また、本発明の心理状態解析方法において、
前記工程(d)は、前記生体反応および心理状態が取得されたときの車両の運転挙動の相違を考慮することなく前記解析を行うものとしてもよい。
一般には、運転者の生体反応および心理状態は、車両の加速、右左折、減速・停止などの運転挙動によっても影響を受けるものと予測されがちである。しかし、発明者が数人の被験者を対象として、種々の運転挙動が生体反応や心理状態に影響を与えるかを実験したところ、ほとんど影響がないことが見いだされた。上記態様は、この実験結果を受け、車両の運転挙動の相違を考慮することなく解析を行う態様である。こうすることにより、解析処理の簡略化を図ることができる。また、車両の運転挙動の相違を考慮すると、相関を解析するためのデータが運転挙動ごとに細分化されることになるが、運転挙動の相違を考慮しなければ、かかる細分化を回避できるため、相関を解析するためのデータ数を増やすことができ、統計的な手法による解析結果の精度向上を図ることができる。
【0012】
また、本発明の心理状態解析方法において、
前記工程(b)は、前記運転者の申告を、該運転者の自由な表現により取得する工程であるものとしてもよい。
自由な表現とは、予め用意された所定の項目から選択したり、そのレベルを指定したりする方法ではなく、「信号待ち長い」などのように制約なく表現する方法である。申告用に、予め項目が用意されている場合、運転者は、自身の心理的状況をいずれかの項目にあてはめようとする余り、かえって真の心理的状況から外れた申告をしてしまう可能性を否定できない。これに対し、自由な表現での申告を行うようにすれば、こうした弊害を回避でき、申告の精度を向上させることができる。
なお、自由な表現により申告を取得した場合、申告に含まれる単語やフレーズに基づいて、心理的要素を解析するようにしてもよい。
【0013】
本発明は、上述した特徴の全てを備えている必要はなく、適宜、その一部を省略したり組み合わせたりして構成してもよい。また、本発明は、上述の心理状態解析方法としての態様だけでなく、かかる解析を実現するためのシステムとして構成することもできる。
【0014】
即ち、車両の運転時の心理状態を解析する心理状態解析システムであって、
前記車両の運転者の前記運転中の生体反応を記録する生体反応記録部と、
前記運転中における心理状態についての該運転者の申告を、前記心理状態を表す所定の心理的要素に基づいて分類することにより、前記心理状態を取得する心理状態取得部と、
前記申告または前記運転中の周囲の状況に基づいて、前記申告に対応して前記運転中に前記運転者に与えられた外部刺激を特定する外部刺激抽出部と、
前記心理的要素に従って、前記生体反応と心理的要素との相関、および前記外部刺激と心理的要素との相関の一方または双方を解析するデータ解析部と、
を備える心理状態解析システムとの構成である。
かかる場合においても、心理状態解析方法において説明した種々の特徴を加えることが可能である。
【0015】
また、本発明の心理状態解析方法をコンピュータによって実現する場合には、それをコンピュータに実現させるためのコンピュータプログラム、およびかかるコンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体などの態様で構成してもよい。かかる記録媒体としては、ハードディスク、DVD、USBメモリなど種々のものを利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例としての心理状態解析システムの構成を示す説明図である。
【図2】生体反応の測定結果を示す説明図である。
【図3】運転挙動と生体反応との関係を示す説明図である。
【図4】全体処理のフローチャートである。
【図5】外部刺激抽出処理のフローチャートである。
【図6】外部刺激の解析例を示す説明図である。
【図7】心理状態取得処理のフローチャートである。
【図8】心理状態の解析結果を例示する説明図である。
【図9】生体反応と主観的申告との実験結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例について、車両の運転中に生体反応等を取得して、運転者の心理状態を解析し、運転中のストレスを軽減するために有用なデータを得るための心理状態解析システムとして構成した場合を例にとって説明する。
A.システム構成:
図1は、実施例としての心理状態解析システムの構成を示す説明図である。心理状態解析システムは、インターネットINTに接続されたサーバ200および車両100から構成されている。車両100は、複数台であってもよい。
車両100の運転者は、脳血流センサ141、マイク111、心拍センサ142、呼吸センサ143、発汗センサ(図示を省略)など種々のセンサを身につけている。測定すべき生体反応や取得する情報に応じて更に多くのセンサを用いても良いし、一部を省略してもよい。また、車両100には、周囲の状況を撮影するためのカメラ121も搭載されている。カメラ121は動画を撮影するものでもよいし、間欠的に静止画を撮影するものであってもよい。
車両には、運転中に取得された種々の情報を記録するための機能ブロックが用意されている。本実施例では、各機能ブロックは、CPU、メモリ等を備えるパーソナルコンピュータを車両に搭載し、これに各機能ブロックの機能を実現するためのコンピュータプログラムをインストールすることによって、ソフトウェア的に構成した。機能ブロックの一部または全部は、ハードウェア的に構成してもよい。また、運転者が装着する各センサ等および車両に搭載されたカメラ121と、記録用のコンピュータとの間の情報の授受は、無線通信であってもよいし、有線で行うようにしてもよい。

【0018】
車両100の機能ブロックについて説明する。
音声記録部110は、マイク111から入力される音声を記録する。本実施例では、運転中における運転者の申告、例えば、「今、危なかった」、「信号待ち長いなぁ」などのように運転者の心理状態を表す言葉が主要な記録対象となる。この他、敢えて「〇〇の交差点を右折します」のように、運転者に運転操作を話させ、これを記録するようにしてもよい。
画像記録部120は、カメラ121で撮影された画像を記録する。
生体反応記録部140は、運転者が装着する各種センサの出力を記録する。これらの出力自体を記録するようにしてもよいし、所定の演算を施して生体反応を表す指標化した上で記録するようにしてもよい。
位置情報記録部150は、車両の走行軌跡を記録する。位置情報は、GPS(Global Positioning System)等を用いて検出することができる。
運転履歴記録部160は、車両の運転中の速度、加速度、進行方向、角速度、角加速度、およびアクセル・ブレーキ・ハンドルの操作量などを記録する。
送受信部130は、記録された情報を、インターネットINTを介してサーバ200に送信する機能を奏する。データの送信は、例えば、所定の時間間隔、車両が停止したタイミング、エンジンをかけたタイミングなど、種々のタイミングで行えばよい。また運転者の操作によって強制的にアップリンク可能としてもよい。サーバ200に送信されるデータには、運転者および車両100を特定するための識別情報を付しても良い。

【0019】
次にサーバ200の構成について説明する。本実施例では、図中の機能ブロックは、サーバにそれぞれの機能を実現するためのコンピュータプログラムをインストールすることによってソフトウェア的に構成したが、少なくとも一部をハードウェア的に構成することもできる。
送受信部210は、インターネットINTを介して車両100からの各種データを受け取り、運転情報データベース221に格納する機能を奏する。
運転情報データベース221は、車両100から受信した各種のデータを格納するデータベースである。格納されるデータとしては、運転者の音声を記録した音声データ、生体反応を記録した生体反応データ、画像を記録した画像データ、位置情報を記録した経路データ、運転履歴を記録した運転履歴データなどが挙げられる。このほか、運転者の氏名、性別、年齢、運転経歴などの情報や、車両100の名称、メーカ名、寸法などの情報を格納してもよい。運転情報データベース221には、運転時に取得したデータのみならず、運転を終了した後に、運転した経路や画像等をレビューしながら運転者が申告した心理状態などを併せて格納するようにしてもよい。
地図データベース222は、地図情報を格納している。本実施例では、2次元の道路地図を利用するものとしたが、建物の形状等を3次元モデルとして格納する3次元地図データを利用してもよい。
解析参照データベース223は、後述する解析の際に参照されるデータを格納したデータベースである。例えば、画像データから、歩行者、中央分離帯などを解析で発見する場合に、これらの代表的な形状をテンプレートとして格納しておいてもよい。また、運転者の音声の意味を解析するためのキーワードなどを格納しておいてもよい。後述する外部刺激、即ち運転中に運転者の心理状態に影響を与える要素の例を格納しておいてもよい。
外部刺激抽出部230は、各データベース221~223を参照しながら、運転中の外部刺激を抽出する。例えば、運転情報データベース221に格納された運転者の音声に「歩行者が…」というメッセージが含まれていることが解析されれば、「歩行者」が外部刺激となり得る。同じく画像データに周囲の車両が写っていれば、それらの車両も外部刺激となり得る。また、地図データベース222を参照することで、走行した経路の車線数が減少していることが確認されたり、カーブの曲率半径が確認できれば、それらも外部刺激となり得る。さらに、道路の渋滞状況や、天候なども外部刺激となり得る。
心理状態取得部240は、運転中の運転者の心理状態を取得する。本実施例では、心理状態を、「不快」「不安」という2つの心理的要素に分類して取得するものとしている。「不快」とは運転者自身の意図が阻害されている心理状態を表しており、「不安」とは運転者が危険に備える意識を表している。心理状態は、例えば、運転者からの音声に含まれる「危ない」などのキーワードに基づいて、いずれかの心理状態に割り当てる方法をとることができる。解析参照データベース223には、かかる解析に用いるデータとして、心理状態を表すキーワードと、心理状態とを対応づけて格納しておけばよい。また、運転者が、運転結果をレビューしながら、自身で不快、不安などの心理状態を直接、申告するようにしてもよい。この場合は、心理状態取得部240は、単に運転者が指定した結果を抽出するだけの機能となる。さらに、解析者が、運転者の申告に含まれる内容を判断し、不快または不安に割り当てるようにしてもよい。
解析結果記憶部250は、外部刺激抽出部230および心理状態取得部240で得られた解析結果を一時的に記憶するバッファである。本実施例では、時系列に、運転経路等と対応づけて記憶するものとした。解析結果記憶部250には、運転者の生体反応を記憶させてもよい。
データ解析部260は、解析結果記憶部250を参照しながら、運転者の生体反応、外部刺激、心理状態の相関を解析する。本実施例では、まず、生体反応と不快、不安という心理的要素の相関、および外部刺激と心理的要素の相関をそれぞれ解析し、この結果を踏まえて、外部刺激→心理的要素→生体反応という構造を解析するものとしている。このように、心理的要素を介在させることにより、外部刺激と生体反応との相関も、安定して精度良く解析することが可能となるのである。

【0020】
B.解析に用いるべき生体反応:
図2は、生体反応の測定結果を示す説明図である。A~Cの3人の被験者に対して、タイピング、オーケストラの鑑賞、計算、車両の走行1、車両の走行2という5種類の挙動を行い、それぞれ生体反応を計測した結果を示している。車両の走行1、走行2は、他車両と歩行者等が存在しないテストコースにて車両で走行する経路の違いである。それぞれ5分程度の作業時間となっている。
取得した生体反応は、左側に示す通りRRI(心拍間隔)、Sdnn(心拍間隔の標準偏差)、Rmssd(隣会う心拍間格差のRMS)、Relative LF(=LF[ms2]=total power [ms2]×100%)、Normalized LF(=LF[ms2]=(total power[ms2]-VLF[ms2]))、LF/HF(LFとHFの比率)、Oxy Hb(酸素化ヘモグロビン量)、Total Hb(酸素化ヘモグロビン量と脱酸素化ヘモグロビン量の和)、Skin temp(皮膚温)、Resp(呼吸曲線)、Resp timing(呼吸タイミング)、SPR all(SPR総反応量)、SPR index(SPR基準化指標)である。安静にしているときと、それぞれの挙動を行った時の差分を計測した結果を示してある。

【0021】
これらの生体反応について、被験者ごとに作業による変動を確認する。つまり、被験者Aについて、5つの作業に対し、上述の生体反応がどの程度の変動を示すかを求め、被験者B、Cについても同様に変動を求めるのである。それぞれの生体反応については、生理学的な見地から、ストレスを受けている場合に期待される変化、逆にリラックスしている場合に期待される変化がある。
例えば、RRIは、ストレスを受けると負値となり、リラックスしていると正値となることが期待される指標である。図2の実験結果では、オーケストラを聴き、リラックスしているはずの被験者A、Cの値が期待に反して負値となっているものの、その他のケースでは、全て期待通りの反応を示している。即ち、オーケストラを聴いている被験者Bは正値を示しているし、オーケストラ以外の4つのストレスを感じるはずの作業については被験者A~Cのいずれもが負値を示しているのである。従って、RRIは、ストレスの程度が比較的安定して反映される指標であると判断することができる。
他の生体反応についても、同様に、期待される反応をどの程度の割合で示しているかを検討したところ、Resp timing、SPR allが比較的安定した指標であることが見いだされた。
即ち、図2の実験結果の範囲内では、RRI、Resp timing、SPR allの生体反応は、被験者間で比較すると数値に個人差がみられ、また同じ被験者でも挙動による差違も見られるものの、少なくとも被験者がストレスを受けているか否かを定性的に安定して示す指標であると判断することができた。

【0022】
従って、本実施例では、生体反応として、少なくともこれらの3つの指標を用いるものとした。ここで、各指標の内容を具体的に説明する。
RRIは、心拍間隔と呼ばれる指標であり、心拍波形のピーク間の時間間隔である。ただし心拍間隔は、種々の要因で変動するため、本実施例では、5秒ごとに過去2分間の平均値を求め、これをその時点のRRIとして用いるものとした。RRIを求めるタイミングや、平均値を求める時間幅は、任意に設定可能である。RRIは、被験者がストレスを受けた状態では、低下する傾向にある。

【0023】
Resp Timingは、呼吸タイミングであり、吸気時間/呼吸時間で求められる。一般に、呼吸は、吸気を行った後、呼気を行い、呼気後に若干のポーズ時間を経た後、また吸気を開始する。この吸気開始から次の吸気開始までの時間が呼吸時間であり、吸気を行っている時間が吸気時間である。そして、呼吸タイミングは、両者の割合である。呼吸タイミングも、種々の要因で変動するため、本実施例では、RRIと同様、5秒ごとに過去2分間の平均値を求め、これを呼吸タイミングとして用いるものとした。呼吸タイミングは、被験者がストレスを受けた状態では、低下する傾向にある。

【0024】
SPR allは、SPR総反応量と言い、精神性発汗の量である。本実施例では、左足裏を計測し、5秒間の反応量の積分値をSPR総反応量とした。以下は、SPR総反応量を単に精神性発汗と呼ぶこともある。精神性発汗は、一般にストレス時には上昇する傾向にある。

【0025】
C.運転挙動との関係:
図3は、運転挙動と生体反応との関係を示す説明図である。被験者A~Cの3人が共通のテストコースを走行し、その間のRRI(心拍間隔)が、運転挙動に応じて、どのように変化するかを計測した結果である。計測は、次の方法で行った。RRIは、運転開始から5秒ごとに過去2分間の平均値を求めることで指標化していく。一方、運転挙動は、運転開始から5秒ごとに区切り、その5秒間で最も時間的に占める割合の高い運転挙動を選出するのである。例えば、ある5秒間は右折をしているところであれば、当該時間の運転挙動は「右折」と指標化されることになる。右折が2秒間、直進が3秒間あれば、その時間における挙動は「直進」と指標化されることになる。
そして、運転挙動ごとにRRIの平均値を求める。

【0026】
こうして求められた平均値が図3に示されているのである。白抜きの矩形が被験者Aの結果、ハッチングを施したものが被験者Bの結果、クロスハッチを施したものが被験者Cの結果である。
図3の各運転挙動の結果を被験者ごとに比較すると、いずれの被験者についても、運転挙動によるRRIのバラツキは、さほど大きくは現れていないことが分かる。一方、被験者A,Bと被験者Cとの間では、大きな開きがある。従って、運転中のストレスには、被験者間の個人差はあるものの、運転挙動による差違は、有意差は見られないと考えられる。本実施例では、この結果を受け、後述する解析においても、運転中の運転挙動の差違は、考慮しないものとした。
こうすることによって、解析処理の簡略化を図ることができる。また、運転挙動を考慮するとすれば、右折ごと、左折ごと、というように運転挙動ごとに心理状態などのデータを収集する必要があり、データ数を十分に獲得することができなくなるおそれもあるが、全挙動をひとまとめにして解析できるとすれば、解析に用いるデータ量が細分化されないため、多量のデータを用いて精度良い結果を得ることが可能となる利点もある。

【0027】
D.解析処理概要:
以下、本実施例におけるデータ解析処理の概要について説明する。本実施例では、オペレータの指示等に従ってサーバ200が実行する処理として説明するが、以下で説明する処理の一部または全部を、解析者が行うものとしてもよい。
D1.全体処理:
図4は、全体処理のフローチャートである。まず、サーバ200は運転情報データベース221(図1参照)等から運転情報を取得する(ステップS10)。取得する運転情報としては、車両が走行した経路や速度等の走行履歴、車両に搭載したカメラで撮影された周辺画像、運転者の生体反応、運転者による申告等が挙げられる。
そして、サーバ200は、外部刺激抽出処理を実行する(ステップS11)。この処理内容は後述するが、道路の構造や他車両の動き等に基づいて、運転中の運転者の心理状態に影響を与える要素、即ち外部刺激を特定する処理である。
サーバ200は、続けて心理状態取得処理を実行する(ステップS12)。この処理内容も後述するが、運転者の申告等に基づいて、運転者の心理状態を不快または不安という心理要素に分類して取得する処理である。
こうして得られた結果に基づき、サーバ200は、データ解析処理を実行する(ステップS13)。データ解析処理は、外部刺激、不快または不安という心理状態、および生体反応の関係性を求める処理である。

【0028】
データ解析は、種々の統計学的手法を用いて行うことができるが、外部刺激と生体反応との間の直接の関係性を求めるのではなく、不快、不安等の心理状態を介して関係性を定量的に分析することを目的とする解析である。本実施例では、以下の手順を用いるものとした。
まず、運転時の心理的要素、即ち運転ストレスである不快、不安を潜在的変数と考える。そして、道路状況などの外部刺激を表す観測変数によって運転ストレスが規定され、さらに生体反応と主観的申告に影響を及ぼすと仮定する。このように仮定した上で、構造方程式モデルの多指標多因子モデル、いわゆるMIMIC(Multiple Indicator Multiple Cause)モデルを適用する。この場合、MIMICモデルは、次式で表すことができる。
=Bs+ζ
Y=Λw+ε
ここで、
Y:生体反応と主観的申告値(計測データ);
s:外部刺激(観測データ);
:運転ストレス(潜在変数);
Β,Λ:未知パラメータ行列;
ζ,ε:それぞれ多変量正規分布MVN(0,Ψ),MVN(0,Θ)に従う誤差項ベクトル
を表す。
また、潜在変数である運転ストレスは、推定されたパラメータにて以下の式にて計算できる。
=Bs+ΨΛ’(ΛΨΛ’+Θ)(Y—ΛBs)
これにより、外部刺激と生体反応から運転ストレスを定量化することができ、運転ストレスは個人や交通状況によって異なるものの、経路案内などにおいて利用者が直観的に理解可能な指標を算出することができる。
例えば、個人毎に運転ストレス値の大小を比較することにより、相対的に運転ストレスの大きな道路区間を特定することができ、経路探索などに活用することが可能となる。また、運転ストレスの大きな道路区間を複数の個人間で情報共有すれば、いわゆる集合知的に運転ストレスの高い道路区間を特定することができ、道路改良などの優先順位を決定する時の参考値とすることもできる。
本実施例では、MIMICモデルを用いたが、この他、外部刺激と不快、不安との相関および生体反応と不快、不安との関係性をそれぞれ求める方法をとってもよい。この解析については、例えば、ロジスティック回帰モデルを用いることができる。こうすることにより、ある特定の外部刺激が不快に与える影響、不安に与える影響を数値化して評価することができる。同様に生体反応と不快、不安との相関に基づいて、運転者が不快に感じているときに、その心理状態が特定の生体反応に与える影響や、不安に感じているときに与える影響を数値化して評価することができる。

【0029】
D2.外部刺激抽出処理:
図5は、外部刺激抽出処理のフローチャートである。全体処理(図4)のステップS11に相当する処理である。
サーバ200は、地図データベース222(図1参照)を参照し、経路、道路構造に基づく外部刺激を抽出する(ステップS20)。例えば、車線数、中央分離帯の有無、歩道区分の有無、右左折箇所、登り坂/下り坂などの区別およびその傾斜、道路の幅員、信号の有無、速度規制、通行規制などが外部刺激となり得る。
サーバ200は、また交通情報による外部刺激を抽出する(ステップS21)。例えば、渋滞の有無、工事中、通行止めや速度制限などの通行規制の有無などが挙げられる。交通情報は、解析時点の情報を取得するのではなく、走行時の情報を取得する必要がある。

【0030】
次に、サーバ200は、画像解析による外部刺激の抽出を行う(ステップS22)。走行時に撮影された動画像または静止画像に基づいて抽出される外部刺激としては、例えば、車両の有無、車間、割り込みの有無などの他車両の動き;歩行者や自転車の有無、数、動き;路上駐車や工事車両などの障害物の存在および数;道路の見通しの程度、草木などの障害物の有無;逆光の有無などが挙げられる。
以下、具体例に基づいて説明する。

【0031】
図6は、外部刺激の解析例を示す説明図である。図6(a)は街中の路地を走行している際の車両の前方画像である。領域a1の画像から、歩行者が車両の左側を歩行していることが解る。領域a2の画像からは、走行中の道路が中央分離帯も車道中央線も存在しないことが解る。領域a3の画像からは、車両の右側に見通しの悪い交差道路があることが解る。
図6(b)は郊外の山道を走行している際の車両の前方画像である。領域b1および領域b2の画像から、この道路には、両側に歩道が設けられていないことが解る。また領域b3の画像から、この道路が前方で右側に曲がるとともに、その見通しが比較的悪いことが解る。
図6(c)は街中の幹線道路を走行している際の車両の前方画像である。領域c1の画像から、信号の状態を認識することができる。領域c2の画像から、車両が、4車線あるうちの右から2番目の車線を走行中であることが解る。領域c3の画像から、走行中の車線は右折専用の車線であることが解る。領域c4の画像から、走行中の車線の右側に、バス専用の直進車線が設けられていることが解り、地域の特殊性になじんでいない運転者の場合には、不可解な状況と判断されるおそれがあることが解る。領域c5の画像から、前方車両との車間が解る。
上述の各外部刺激は、画像処理によって抽出することが可能である。例えば、歩行者(領域a1)や前方車両(領域c5)については、歩行者や車両を表すテンプレート画像を用意しておき、そのマッチングによって抽出することができる。歩道(領域b1、b2)、車道中央線(領域a2)、通行帯区分線(領域c2)などは、例えば、白線または黄線の直線を抽出すればよい。その他の箇所も、抽出すべき外部刺激に応じた画像処理を適用することが可能である。また、これらの外部刺激をディープラーニングその他の人工知能技術によって抽出するようにしてもよい。

【0032】
図6(a)~図6(c)に、外部刺激となり得るものを例示したが、これらに例示したもの以外を外部刺激として抽出してもよい。また、ここに例示したものについても、具体的な状況に応じて外部刺激から除外することも可能である。例えば、領域a1の歩行者について、車両からの距離が十分に遠方にあると判断される場合や、歩行者が車道から外れる方向に歩いていると判断される場合などには、外部刺激から除外するようにしてもよい。

【0033】
図5に戻り外部刺激抽出処理について説明する。画像解析による抽出を終えると、サーバ200は、音声解析・構文解析によう外部刺激抽出を行う(ステップS23)。この処理の解析対象は、主として運転者による申告となる。図中に解析の一例を示した。この解析では、図示する解析キーワードを、解析参照データベース223(図1参照)に用意しておき、これらのキーワードを含む申告を抽出するのである。こうすることで、「信号待ち長いなぁ」、「あの歩行者、危ない」、「道が狭くて、こすりそう」などの申告を抽出することができる。構文解析によって申告内容の意味を解析し、キーワードが、真に外部刺激になっているか否かを判断するようにしてもよいが、運転者の申告の中に現れるキーワードは、何らかの形で心理状態に影響している可能性が高いと考えられるため、意味の解析を行わずに、抽出された申告およびそこに含まれるキーワードを外部刺激と認定してもよい。

【0034】
次にサーバ200は、気象、時刻による外部刺激を抽出する(ステップS24)。気象による外部刺激としては、晴天、雨天、降雪などの天候が挙げられる。時刻による外部刺激としては、日中、夕方、夜間など視界の明るさに関係する内容や、日差しの方向に関係する内容などが挙げられる。

【0035】
以上で説明した各種の外部刺激の抽出(ステップS20~S24)を実行する順序は、任意に変更可能であり、また一部を省略等しても差し支えない。サーバ200は、以上で抽出したそれぞれの外部刺激を時刻ごとに整理して、外部刺激マップを作成する(ステップS25)。図中に外部刺激マップの一例を示した。それぞれのマークの意味は、右:右折、左:左折、分:分離帯無し、歩:歩道あり、停:停止車両あり、割:割り込み、人:歩行者あり、変:車線変更、減:車線減少、横:横からの進入を意味する。こうして時刻と外部刺激とを対応づけることにより、後の相関の解析に活用することが可能となる。
図中では、視覚的に認識可能なマップの例を示したが、外部刺激マップは、時刻と外部刺激とを対応づけた形で記録するものであれば、その形式は問わない。例えば、抽出されたそれぞれの外部刺激に対して、時刻を関連づけたデータとして記録するだけでもよい。

【0036】
D3.心理状態取得処理:
図7は、心理状態取得処理のフローチャートである。全体処理(図4)のステップS12に相当する処理である。
サーバ200は、運転情報データベース221(図1参照)を参照し、心理状態にういての申告を読み込む(ステップS30)。そして、解析参照データベース223(図1参照)を参照し、申告を不快、不安という心理的要素に割り当てる(ステップS31)。
図の右側に分類の例を示した。解析参照データベース223には、予め図示するように、不快、不安のそれぞれに対して、それに該当する原因、理由を対応づけたデータベースが用意されている。本実施例では、さらに不快、不安の程度を表す「強度」も設定してあるが、これを省略しても差し支えない。サーバ200は、運転者の申告が、これらの理由のいずれかに該当するときは、その申告を不快または不安に割り当てることになる。
また、申告が、直接、不快または不安という心理的要素と対応づけて記録されている場合には、ステップS31の処理では、不快、不安のそれぞれに該当する申告を検索するだけで済ませることもできる。

【0037】
例えば、運転者の申告として、「割り込むなよ」という怒りの文言が記録されている場合、「割り込」みというキーワードで解析参照データベース223を検索し、不快/他車両の動きに対応づけられている「両サイドからの割り込み」、「強引な割り込み」、「併走車の割り込み」などを抽出する。そして、申告には、「強引」というキーワードまでは含まれていないため、「両サイドからの割り込み」または「併走車の割り込み」があったものと判断し、いずれにしても強度1の「不快/他車両の動き」があったと分類する。心理的要素への割り当ては、申告の意味内容の解析だけでなく、申告の音声に含まれる語調なども踏まえて判断するようにしてもよい。
また、本実施例では、サーバ200がこれらの割り当てを行うものとしたが、解析者が判断するようにしてもよい。ただし、解析者が判断する場合でも、恣意的な評価を回避するため、解析参照データベース223のようなデータベースを参照することが好ましい。

【0038】
サーバ200は、得られた心理状態を時刻ごとに整理して、心理状態マップを作成する(ステップS32)。図中に心理状態マップの一例を示した。マークが付された時刻で、不快または不安が生じたことを表している。こうして時刻と外部刺激とを対応づけることにより、後の相関の解析に活用することが可能となる。図中では、視覚的に認識可能なマップの例を示したが、心理状態マップは、時刻と外部刺激とを対応づけた形で記録するものであれば、その形式は問わない。

【0039】
D4.心理状態の解析結果:
図8は、心理状態の解析結果を例示する説明図である。全体処理(図4)のステップS13の解析によって得られる結果を例示したものである。図中の左側には、外部刺激を列挙した。この中で、車両操作量1は、加減速に関する操作を表しており、車両操作量2は、ハンドル操作など操舵に関する操作を表している。外部刺激と不快、不安との間の矢印は、両者の相関を表している。解析の結果、それぞれの外部刺激と不快、不安との関係性の強さに応じた数値が得られることになるのである。
一方、図の右側には、生体反応を列挙した。この中に示されている主観的評価という項目は、解析の際に便宜上設けるダミーの要素に過ぎない。先に図2で示した通り、RRI、呼吸および精神性発汗が比較的安定した傾向を示す。脳血流も 生体反応に加えて解析してみたところ、一応、不安との間の関係性は認められてはいる。

【0040】
図9は、生体反応と主観的申告との実験結果を示す説明図である。所定の経路を、生体反応を計測しながら走行するとともに、運転ストレスを感じた区間(ストレス区間ということもある)を申告した結果を分析したものである。
図9(a)には、解析結果を数値で表した。相関係数とは、ストレス区間を1、その他の区間を0として、左欄の生体反応を示す各指標との相関の強さを表す数値である。95%タイル値の欄には、生体反応の各指標が、運転ストレス下で生理的に期待される反応傾向への95%タイル値とストレス区間との適合率を表している。

【0041】
図9(b)には、指標Oxy-Hbを例にとって、適合率を図示した結果を示した。走行経路は、黒の実践で示してある。幅広のグレーの部分は、運転ストレス下で生理的に期待される反応傾向への95%タイル値に達した区間を表している。言い換えれば、もし生体反応が、運転ストレスを精度良く表すものと仮定すれば、グレーで表した区間で、運転者はストレスを感じていると判断することができることになる。一方、幅広の黒の部分は、運転者が運転ストレスを感じたものとして自己申告したストレス区間を表している。図示する通り、両者は重なる部分、ずれている部分が数多くあることが解る。このことは、指標Oxy-Hb単独では、運転ストレスを感じているか否かを精度良く判別することはできないことを意味している。

【0042】
また、図9(c)には、RRIを例にとって、5%タイル値、即ち運転ストレスを感じていないと判断される区間を示した。グレーの部分が、5%タイル値に相当する区間であり、生体反応が運転ストレスを精度良く表すものと仮定すれば、この区間では、運転ストレスを感じていないと判断される区間である。一方、幅広の黒の部分はストレス区間である。これらを見ると、ストレス区間にも、少なからず5%タイル値に相当する区間が重なっていることが解る。

【0043】
以上より、生体反応を表す指標単体では、運転ストレスがかかっているであろう区間(図9(b))を特定することも、運転ストレスがかかっていないであろう区間(図9(c))を特定することも困難であると言える。従って、運転ストレスを評価するために、複数の生体反応を用いる本実施例の方法は有用であると言える。


【0044】
本実施例において行った限定的な解析の結果ではあるが、不快はRRIと相関が強い一方、不安はRRIの他、脳血流や呼吸、発汗などの複数の生体反応で測定できる可能性があることが示されている。

【0045】
以上で説明した実施例の心理状態解析システムによれば、心理的要素を介在させることによって、生体情報や外部刺激などと運転ストレスとの関係を科学的に把握することが可能となる。即ち、運転ストレスの現れとも言うべき生体反応は運転中の心理的要素に起因して生じているはずであるし、こうした心理的要素は外部刺激と因果関係を有するはずであるから、それぞれ心理的要素との相関を精度良く解析することが可能となるのである。一方、一部の外部刺激と生体反応の間にも、相関は認められ得るが、両者の相関を直接に解析したとしても、心理的要素を介在させた場合ほどの相関は推測しづらいため、十分に信頼性の高い相関を得ることは困難である。このように、本実施例では、不快、不安という心理的要素を介在させることによって、従来、漠然と認識されていた運転ストレスを科学的に精度良く把握することが可能となるのである。

【0046】
本発明は、実施例で述べた種々の特徴を必ずしも全て備えている必要はなく、適宜、その一部を省略したり組み合わせたりして構成することも可能である。また、本発明については、実施例に限らず、種々の変形例を構成することも可能である。
例えば、データ解析に用いる心理的要素は、不快、不安に限定されるものではない。また、データ解析に用いる手法もMIMICモデルに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、車両の運転時の心理状態の解析に利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
100…車両
110…音声記録部
111…マイク
120…画像記録部
121…カメラ
130…送受信部
140…生体反応記録部
141…脳血流センサ
142…心拍センサ
143…呼吸センサ
150…位置情報記録部
160…運転履歴記録部
200…サーバ
210…送受信部
221…運転情報データベース
222…地図データベース
223…解析参照データベース
230…外部刺激抽出部
240…心理状態取得部
250…解析結果記憶部
260…データ解析部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8