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明細書 :クラッド材製造方法、クラッド材製造装置、およびクラッド材

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-047482 (P2018-047482A)
公開日 平成30年3月29日(2018.3.29)
発明の名称または考案の名称 クラッド材製造方法、クラッド材製造装置、およびクラッド材
国際特許分類 B22D  11/00        (2006.01)
B22D  11/06        (2006.01)
B22D  19/00        (2006.01)
B22D  19/16        (2006.01)
FI B22D 11/00 N
B22D 11/06 330B
B22D 19/00 W
B22D 19/16 B
請求項の数または発明の数 11
出願形態 OL
全頁数 45
出願番号 特願2016-183432 (P2016-183432)
出願日 平成28年9月20日(2016.9.20)
発明者または考案者 【氏名】羽賀 俊雄
出願人 【識別番号】503420833
【氏名又は名称】学校法人常翔学園
個別代理人の代理人 【識別番号】100101454、【弁理士】、【氏名又は名称】山田 卓二
【識別番号】100081422、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 光雄
【識別番号】100132241、【弁理士】、【氏名又は名称】岡部 博史
【識別番号】100183276、【弁理士】、【氏名又は名称】山田 裕三
審査請求 未請求
テーマコード 4E004
Fターム 4E004DA13
4E004NB07
4E004NC06
要約 【課題】双ロールキャスター法にて、低融点金属層が再融解せず、界面が明瞭かつ平坦なクラッド材を製造する。
【解決手段】第1双ロール4を構成する第1冷却ロール4aと第2冷却ロール4bの間に溶融状態の低融点金属を供給し、溶融状態の低融点金属を冷却し凝固させ、板状の低融点金属層を形成するステップと、凝固した板状の低融点金属層を、第1双ロールの下流側にあって第2双ロールを構成する第3冷却ロール6aと第4冷却ロール6bの間において第4冷却ロールの表面に沿わせるように供給するステップと、凝固した板状の低融点金属層と第3冷却ロールとの間において、低融点金属層が第4冷却ロールと接触している冷却区間に溶融状態の第1高融点金属を供給し、第3冷却ロールと低融点金属層の間で第1高融点金属を冷却し凝固させ、板状の第1高融点金属層を低融点金属層に積層して形成するステップとを含むクラッド材の製造方法。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
第1高融点金属層と低融点金属層とが積層されたクラッド材を製造するクラッド材の製造方法であって、
第1双ロールを構成する第1冷却ロールと第2冷却ロールの間に溶融状態の低融点金属を供給することにより、溶融状態の低融点金属を冷却して凝固させ、板状の低融点金属層を形成するステップと、
凝固した板状の低融点金属層を、第1双ロールの下流側にあって第2双ロールを構成する第3冷却ロールと第4冷却ロールの間において、第4冷却ロールの表面に沿わせるように供給するステップと、
凝固した板状の低融点金属層と第3冷却ロールとの間において、低融点金属層が第4冷却ロールと接触している冷却区間に溶融状態の第1高融点金属を供給することにより、第3冷却ロールと低融点金属層の間で第1高融点金属を冷却して凝固させ、凝固した板状の第1高融点金属層を低融点金属層に積層して形成するステップとを含む、クラッド材の製造方法。
【請求項2】
前記冷却区間の第4冷却ロールの周面の弧長が25mm以上である、請求項1に記載のクラッド材の製造方法。
【請求項3】
第2双ロールによって冷却された低融点金属層および第1高融点金属層による板状の積層体を、第2双ロールの下流側にあって第3双ロールを構成する第5冷却ロールと第6冷却ロールの間において、第5冷却ロールの表面に沿わせるように供給するステップと、
板状の積層体と第6冷却ロールとの間において、積層体が第5冷却ロールと接触している冷却区間に溶融状態の第2高融点金属を供給することにより、第6冷却ロールと積層体の間で第2高融点金属を冷却して凝固させ、凝固した板状の第2高融点金属層を積層体に積層するステップと、
を含む、請求項1又は2に記載のクラッド材の製造方法。
【請求項4】
高融点金属層と低融点金属層とが積層されたクラッド材を製造するクラッド材の製造方法であって、
双ロールを構成する第1冷却ロールと第2冷却ロールの間に溶融状態の低融点金属を供給することにより、溶融状態の低融点金属を冷却して凝固させ、板状の低融点金属層を形成するステップと、
凝固した板状の低融点金属層を、第1冷却ロールに沿わせながら、第2冷却ロールの下流において第1冷却ロールとともに双ロールを構成する第3冷却ロールの間に供給するステップと、
第1冷却ロールと接触した状態の板状の低融点金属層と第3冷却ロールの間に溶融状態の高融点金属を供給し、第3冷却ロールと低融点金属層の間で高融点金属を冷却して凝固させ、凝固した板状の高融点金属層を低融点金属層に積層して形成するステップと、
を含む、クラッド材の製造方法。
【請求項5】
第1高融点金属層と低融点金属層とが積層されたクラッド材を製造するクラッド材の製造装置であって、
第1冷却ロールおよび第2冷却ロールを有する第1双ロールと、
第1双ロールの下流側において、第3冷却ロールおよび第4冷却ロールを有する第2双ロールと、
第1冷却ロールと第2冷却ロールの間に溶融状態の低融点金属を供給する低融点金属供給部と、
第1双ロールにより冷却されて板状に凝固されるとともに第3冷却ロールと第4冷却ロールの間において第4冷却ロールに沿うように供給される板状の低融点金属層と、第3冷却ロールとの間において、低融点金属層が第4冷却ロールと接触している冷却区間に溶融状態の第1高融点金属を供給する第1高融点金属供給部と、
を備える、クラッド材の製造装置。
【請求項6】
第1高融点金属層と低融点金属層とが積層されたクラッド材を製造するクラッド材の製造装置であって、
第1冷却ロールおよび第2冷却ロールを有する第1双ロールと、
第1冷却ロールと第2冷却ロールの間に溶融状態の低融点金属を供給する低融点金属供給部と、
第1双ロールの下流側において、第3冷却ロールおよび第4冷却ロールを有する第2双ロールと、
第1双ロールで鋳造された低融点金属の板と第3冷却ロールとの間に溶融状態の第1高融点金属を供給する第1高融点金属供給部とを有し、
第1双ロールの高さ位置は、第2双ロールの高さ位置よりも高く、
第1双ロールの第1冷却ロールの回転軸と第2冷却ロールの回転軸の間の中間位置を含んだ鉛直平面は、第2双ロールの第3冷却ロールの回転軸と第4冷却ロールの回転軸の間の中間位置を含んだ鉛直平面に対して、第4冷却ロールの回転軸側に位置ずれしている、クラッド材の製造装置。

【請求項7】
第2双ロールの下流側において、第5冷却ロールおよび第6冷却ロールを有する第3双ロールと、
第2双ロールにより冷却されて板状に凝固されるとともに第5冷却ロールと第6冷却ロールの間において第5冷却ロールに沿うように供給される第1高融点金属層および低融点金属層による板状の積層体と、第6冷却ロールとの間において、積層体が第5冷却ロールと接触している冷却区間に溶融状態の第2高融点金属を供給する第2高融点金属供給部と、
をさらに備える、請求項5又は6に記載のクラッド材の製造装置。
【請求項8】
高融点金属層と低融点金属層とが積層されたクラッド材を製造するクラッド材の製造装置であって、
第1冷却ロールと、
第1冷却ロールとともに双ロールを構成する第2冷却ロールと、
第2冷却ロールの下流側において第1冷却ロールとともに双ロールを構成する第3冷却ロールと、
第1冷却ロールと第2冷却ロールの間に溶融状態の低融点金属を供給する低融点金属供給部と、
第1冷却ロールに沿って搬送される凝固された板状の低融点金属層と第3冷却ロールとの間に、溶融状態の第1高融点金属を供給する高融点金属供給部と、
を備える、クラッド材の製造装置。
【請求項9】
低融点金属層と第1高融点金属層とを積層したクラッド材であって、
低融点金属層は、その断面が両表面からそれぞれの面に対して略垂直方向の冷却速度の低下に応じて晶出した結晶が配列された鋳造まま組織であって、両表面にチル晶を有し、
第1高融点金属層は、その断面が低融点金属層に接する面に反対側の面から、低融点金属層に接する面に向かって低融点金属層に接する面に対して垂直方向の冷却速度の低下に応じて晶出した結晶が配列された鋳造まま組織であって、低融点金属層に接する面と反対側の面にチル晶を有する、クラッド材。
【請求項10】
第1高融点金属層が積層される側とは反対側の低融点金属層の表面上に積層された第2高融点金属層をさらに備え、
第2高融点金属層は、その断面が低融点金属層に接する面に反対側の面から、低融点金属層に接する面に向かって低融点金属層に接する面に対して垂直方向の冷却速度の低下に応じて晶出した結晶が配列された鋳造まま組織であって、低融点金属層に接する面と反対側の面にチル晶を有する、請求項9に記載のクラッド材。
【請求項11】
低融点金属層が積層される側とは反対側の第1高融点金属層の表面上に積層された第2高融点金属層をさらに備え、
第2高融点金属層は、その断面が第1高融点金属層に接する面に反対側の面から、第1高融点金属層に接する面に向かって第1高融点金属層に接する面に対して垂直方向の冷却速度の低下に応じて晶出した結晶が配列された鋳造まま組織であって、第1高融点金属層に接する面と反対側の面にチル晶を有する、請求項9に記載のクラッド材。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッド材製造方法、クラッド材製造装置、およびクラッド材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、軽合金等の金属を積層した積層材としてのクラッド材に対するニーズがある。
【0003】
クラッド材を作成する方法として、異なる種類の金属材料につき、厚みの大きなスラブを圧延を繰り返して徐々に薄くし、互いを加熱圧接してクラッド化するいわゆる「圧延法」がある。しかしながら、圧延法はその工程上製造コストが高い。
【0004】
圧延法とは別に、双ロールにより溶融状態の金属を冷却してクラッド材を鋳造する「双ロールキャスター法」がある。双ロールキャスター法によれば、圧延法に比べてクラッド材の作製にかかるコストを低減できる。このようなメリットを有する双ロールキャスター法に関して各種技術が開発されている(例えば、特許文献1—2、非特許文献1-3)。
【0005】
特許文献1、2には、縦型タンデム双ロールキャスターによるクラッド材の作製方法が開示されている。非特許文献1、2には、メルトドラッグ法をベースとしたロールキャスティング法によるクラッド材の作製方法が開示されている。非特許文献3には、横型タンデム双ロールキャスター法で、母材に融点が低い材料、表材に融点が高い材料を使用した3層クラッド材を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開平4-52052号公報
【特許文献2】特開2008-142763号公報<nplcit num="1"> <text>「メルトドラッグ法によるAl-12mass%Si合金急冷凝固クラッド材の作製」、軽金属、Vol.45(1995)、No.12、P.685-690</text></nplcit><nplcit num="2"> <text>「Casting of Clad Strip Using a Twin Roll Caster」、Proceedings of the 33rd International MATADOR Conference</text></nplcit><nplcit num="3"> <text>「横型タンデム双ロールキャスターによるAl/Mgクラッド材の製造」、日本機械学会論文集A編、Vol.79(2013)、No.804、p.1147-1151</text></nplcit>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示される技術では、母材に対し同じ組成の皮材を両面に積層させるため、2層のクラッド板や異種合金の表材を合わせることができない(図20A-20C)。低融点の母材に、高融点の皮材を積層させようとすると、低融点の母材が半溶融温度まで上昇または一部溶解するため、板厚分布不良やクラックが生じたり、拡散層(一方の層の成分が他層に移動)が生じたりする問題がある。
【0008】
特許文献2に開示される技術では、融点が高い材料の金属溶湯の凝固殻を予め形成しておくことで、融点が高い材料の金属溶湯が、融点が低い材料の金属溶湯および凝固層に接触しないようにする方法が提案されている。このような方法によれば、互いの金属の界面が明瞭ではあるが平坦にはならない。
【0009】
また、非特許文献1、2に開示される技術では、融点が低い材料の母材に融点が高い材料の表材を形成しようとすると、融点が低い材料が溶解して成分が拡散し、界面が明瞭とならない。
【0010】
非特許文献3に開示される技術では、母材のマグネシウムと表材のアルミニウムとの界面には、脆い性質のアルミニウムとマグネシウムの金属間化合物の層が形成される。このためクラッド材の曲げ強度等が低くとどまる。金属間化合物の層が形成されるのは、低融点金属であるマグネシウム層が再融解するためである。
【0011】
このように、特許文献1-2および非特許文献1-2では、低融点金属層が再融解することを防止するために高融点金属を先に冷却して凝固させた後、低融点金属を後で冷却して凝固させて積層する。非特許文献3では、低融点金属を先に凝固させているが、低融点金属層が再融解してしまう。このように、低融点金属を先に凝固させても、低融点金属層が再融解することなく界面が平坦となるクラッド材を製造できる技術は現在確立されていない。例えば3層のクラッド材を製造する際に、中央の層が低融点金属層でその両側が高融点金属層の場合には、少なくとも1つの高融点金属層は低融点金属層の形成後に凝固させて積層する必要があり、このとき低融点金属層が再融解してしまい、界面が平坦なクラッド材を製造することができない。
【0012】
従って、本発明の目的は、双ロールキャスター法において、低融点金属層を先に凝固させた場合でも、低融点金属層が再融解せずに、界面が明瞭かつ平坦なクラッド材を製造することにある。
【0013】
なお、本発明における金属とは、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、チタン(Ti)等の純金属又はその合金であり、ロール鋳造可能な金属であれば金属種は問わない。また、同一元素を主とする純金属と合金、あるいは合金と合金同士が好ましい。凝固温度差が大きくなりにくいからである。なかでも、金属としてはアルミニウム又はマグネシウム等の軽金属が好ましい、高速ロール鋳造性に優れるためである。特にアルミニウムはマグネシウムに比し鋳造時に酸化されにくく、製造性に優れる。純アルミニウム、又はアルミニウム合金とアルミニウム合金との組み合わせがロール鋳造性に優れ、凝固温度差が小さく低融点金属層が再融解しにくく、接合性も優れるため好ましい。
【0014】
「低融点金属」とは、積層される金属の組み合わせにおいて凝固温度範囲が他に対して相対的に低いもの、あるいは、液相線温度が相対的に低い方の金属をいう。低融点金属層とは低融点金属にてなる層をいう。また、「高融点金属」とは、積層される金属の組み合わせにおいて凝固温度範囲が他に対して相対的に高いもの、あるいは、液相線温度が相対的に高い方の金属をいう。「高融点金属層」とは高融点金属にてなる層をいう。
【0015】
本発明において、ロール鋳造とは、高速ロール鋳造法によるものをいう。高速ロール鋳造法においては、鋳造におけるロールの周速は10m/分以上である。高速ロール鋳造法によれば、冷却速度が大きいために組織が微細化し、強度と靱性が高くなる。
【0016】
低融点金属層の厚みは特に限定されないが、高速ロール鋳造法によるロール鋳造にて独立して板が鋳造できるためには1mm~10mm程度が好ましい。低融点金属層に積層される高融点金属層の厚みは特に限定されないが、0.5mm~5mm程度が好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0018】
本発明の一態様によれば、第1高融点金属層と低融点金属層とが積層されたクラッド材を製造するクラッド材の製造方法であって、第1双ロールを構成する第1冷却ロールと第2冷却ロールの間に溶融状態の低融点金属を供給することにより、溶融状態の低融点金属を冷却して凝固させ、板状の低融点金属層を形成するステップと、凝固した板状の低融点金属層を、第1双ロールの下流側にあって第2双ロールを構成する第3冷却ロールと第4冷却ロールの間において第4冷却ロールの表面に沿わせるように供給するステップと、凝固した板状の低融点金属層と第3冷却ロールとの間において、低融点金属層が第4冷却ロールと接触している冷却区間に溶融状態の第1高融点金属を供給することにより、第3冷却ロールと低融点金属層の間で第1高融点金属を冷却して凝固させ、凝固した板状の第1高融点金属層を低融点金属層に積層して形成するステップとを含む、クラッド材製造方法を提供する。
このようなクラッド材製造方法によれば、双ロールキャスター法において、先に低融点金属層を凝固させ、その後高融点金属を凝固させて低融点金属層上に積層した場合でも、低融点金属層が再融解することなく、界面が明瞭で平坦なクラッド材を製造することができる。
ここで、「沿わせる」とは、金属板の一面が冷却ロールに接するようにさせることをいい、可撓性の板状体を円筒側面のような凸曲面に沿わせるには、板状体の前後(機械)方向に引張張力がかかっていることが好ましい。
また、「冷却区間」とは、冷却ロールの周面における金属層との接触を開始する接触開始点からキス部までの区間をいう。「キス部」とは、双ロールを構成する一対の冷却ロール同士が最も接近する点・ラインをいう。
【0019】
更に、前記クラッド材製造方法は前記冷却区間の第4冷却ロールの周面の弧長が25mm以上であってもよい。
第3冷却ロール側から溶融状態の第1高融点金属を供給するには、第1高融点金属供給部へのノズルや樋からの注湯のしやすさや、溶湯液面の高さの安定性を確保するために、第1高融点金属供給部の湯だまりを形作するための堰の内側と、第4冷却ロールに沿わされた低融点金属板との間の距離は(以下「湯だまりの幅」という)一定の大きさ以上である必要がある。一方、製造装置として用いられる冷却ロールの直径は冷却効率上、及び冷却媒体路をロール中に形成する設計及び加工上、通常100mm以上が必要である。
高融点金属供給部の湯だまりの幅を確保するためには、冷却区間の第4冷却ロールの周面における弧長は経験上25mm以上あることが好ましい。冷却区間の第4冷却ロールの周面の弧長が25mm以上であれば低融点金属層の第4冷却ロールに接する面が第4冷却ロールにより冷却され、低融点金属層の厚さ方向に全体が冷却され、低融点金属層の反対側が高融点金属の溶湯と接しても接する面での低融点金属層の再融解を防ぐことができるが、25mm未満では、低融点金属と高融点金属の材料の組み合わせや、ロール鋳造条件によっては、低融点金属層の接する面が再融解することがあるためである。
【0020】
前記クラッド材製造方法は更に、第2双ロールによって冷却された低融点金属層および第1高融点金属層による板状の積層体を、第2双ロールの下流側にあって第3双ロールを構成する第5冷却ロールと第6冷却ロールの間において、第5冷却ロールの表面に沿わせるように供給するステップと、板状の積層体と第6冷却ロールとの間において、積層体が第5冷却ロールと接触している冷却区間に溶融状態の第2高融点金属を供給することにより、第6冷却ロールと積層体の間で第2高融点金属を冷却して凝固させ、凝固した板状の第2高融点金属層を積層体に積層するステップと、を含んでもよい。このようなクラッド材製造方法によれば、3層以上によるクラッド材を、先に低融点金属層を凝固させて製造する場合でも、低融点金属層が再融解することなく、界面が明瞭で平坦なクラッド材として製造することができる。
【0021】
本発明の別の一態様によれば、高融点金属層と低融点金属層とが積層されたクラッド材を製造するクラッド材の製造方法であって、双ロールを構成する第1冷却ロールと第2冷却ロールの間に溶融状態の低融点金属を供給することにより、溶融状態の低融点金属を冷却して凝固させ、板状の低融点金属層を形成するステップと、凝固した板状の低融点金属層を、第1冷却ロールに沿わせながら、第2冷却ロールの下流において第1冷却ロールとともに双ロールを構成する第3冷却ロールの間に供給するステップと、第1冷却ロールと接触した状態の板状の低融点金属層と第3冷却ロールの間に溶融状態の高融点金属を供給し、第3冷却ロールと低融点金属層の間で高融点金属を冷却して凝固させ、凝固した板状の高融点金属層を低融点金属層に積層して形成するステップと、を含む、クラッド材の製造方法を提供する。このようなクラッド材製造方法によれば、双ロールキャスター法において、先に低融点金属層を凝固させ、その後高融点金属層を凝固させて低融点金属層上に積層した場合でも、低融点金属層が再融解することなく、界面が明瞭で平坦なクラッド材を製造することができる。
【0022】
本発明のさらに別の一態様によれば、第1高融点金属層と低融点金属層とが積層されたクラッド材を製造するクラッド材の製造装置であって、第1冷却ロールおよび第2冷却ロールを有する第1双ロールと、第1双ロールの下流側において、第3冷却ロールおよび第4冷却ロールを有する第2双ロールと、第1冷却ロールと第2冷却ロールの間に溶融状態の低融点金属を供給する低融点金属供給部と、第1双ロールにより冷却されて板状に凝固されるとともに第3冷却ロールと第4冷却ロールの間において第4冷却ロールに沿うように供給される板状の低融点金属層と、第3冷却ロールとの間において、低融点金属層が第4冷却ロールと接触している冷却区間に溶融状態の第1高融点金属を供給する第1高融点金属供給部と、を備える、クラッド材の製造装置を提供する。このようなクラッド材製造装置によれば、双ロールキャスター法において、先に低融点金属層を凝固させ、その後高融点金属層を凝固させて低融点金属層上に積層した場合でも、低融点金属層が再融解する
ことなく、界面が明瞭で平坦なクラッド材を製造することができる。
【0023】
本発明の別の一態様によれば、第1高融点金属層と低融点金属層とが積層されたクラッド材を製造するクラッド材の製造装置であって、第1冷却ロールおよび第2冷却ロールを有する第1双ロールと、第1冷却ロールと第2冷却ロールの間に溶融状態の低融点金属を供給する低融点金属供給部と、第1双ロールの下流側において、第3冷却ロールおよび第4冷却ロールを有する第2双ロールと、第1双ロールで鋳造された低融点金属の板と第3冷却ロールとの間に溶融状態の第1高融点金属を供給する第1高融点金属供給部とを有し、第1双ロールの高さ位置は、第2双ロールの高さ位置よりも高く、第1双ロールの第1冷却ロールの回転軸と第2冷却ロールの回転軸の間の中間位置を含む鉛直平面は、第2双ロールの第3冷却ロールの回転軸と第4冷却ロールの回転軸の間の中間位置を含む鉛直平面に対して、第4冷却ロールの回転軸側に位置ずれしている、クラッド材の製造装置を提供する。このようなクラッド材製造装置によれば、双ロールキャスター法において、先に低融点金属層を凝固させ、その後高融点金属層を凝固させて低融点金属層上に積層した場合でも、低融点金属層が再融解することなく、界面が明瞭で平坦なクラッド材を製造することができる。そしてタンデム型縦型双ロールにおいて下段の第2双ロールの位置が一方の第4冷却ロールに低融点金属の板(低融点金属層)を容易に沿わせて冷却できるように、第1双ロールに対して左右方向に第4冷却ロールの回転軸側にずれて配置(シフト)している。
このように上方の第1双ロールで鋳造した低融点金属層の板に下流の下方の第2双ロールで高融点金属を直接積層する場合に、下流の第2双ロールで板を積層する際に冷却のために沿わせる一方の第4冷却ロールの中心軸が上流の第1双ロール間の間隙の真下またはその近傍になるよう水平方向にずれた位置にシフトしている。これにより、板を下流の第2双ロールの一方の第4冷却ロールに沿わせて冷却した状態でもう一方の第3冷却ロールで積層することができる。このため、低融点金属層が再融解することなく、界面が明瞭で平坦なクラッド材を製造することができ、運転時のセッティングが容易で製造しやすい。
【0024】
前記クラッド材製造装置は更に、第2双ロールの下流側において、第5冷却ロールおよび第6冷却ロールを有する第3双ロールと、第2双ロールにより冷却されて板状に凝固されるとともに第5冷却ロールと第6冷却ロールの間において第5冷却ロールに沿うように供給される第1高融点金属層および低融点金属層による板状の積層体と、第6冷却ロールとの間において、積層体が第5冷却ロールと接触している冷却区間に溶融状態の第2高融点金属を供給する第2高融点金属供給部と、をさらに備えてもよい。このような構成によれば、3層以上によるクラッド材を、先に低融点金属層を凝固させて製造する場合でも、低融点金属層が再融解することなく、界面が明瞭で平坦なクラッド材として製造することができる。
【0025】
本発明のさらに別の一態様によれば、高融点金属層と低融点金属層とが積層されたクラッド材を製造するクラッド材の製造装置であって、第1冷却ロールと、第1冷却ロールとともに双ロールを構成する第2冷却ロールと、第2冷却ロールの下流側において第1冷却ロールとともに双ロールを構成する第3冷却ロールと、第1冷却ロールと第2冷却ロールの間に溶融状態の低融点金属を供給する低融点金属供給部と、第1冷却ロールに沿って搬送される凝固された板状の低融点金属層と第3冷却ロールとの間に、溶融状態の第1高融点金属を供給する高融点金属供給部と、を備える、クラッド材の製造装置を提供する。このようなクラッド材製造装置によれば、双ロールキャスター法において、先に低融点金属を凝固させ、その後高融点金属を凝固させて低融点金属層上に積層した場合でも、低融点金属層が再融解することなく、界面が明瞭で平坦なクラッド材を製造することができる。
【0026】
本発明のさらに別の一態様によれば、低融点金属層と第1高融点金属層とを積層したクラッド材であって、低融点金属層は、その断面が両表面からそれぞれの面に対して略垂直方向の冷却速度の低下に応じて晶出した結晶が配列された鋳造まま組織であって、両表面にチル晶を有し、第1高融点金属層は、その断面が低融点金属層に接する面に反対側の面から、低融点金属層に接する面に向かって低融点金属層に接する面に対して垂直方向の冷却速度の低下に応じて晶出した結晶が配列された鋳造まま組織であって、低融点金属層に接する面と反対側の面にチル晶を有する、クラッド材を提供する。このような構成によれば、圧延法により製造されたクラッド材に比べて、組織が微細化されて強度と靱性の高いクラッド材とすることができる。
【0027】
前記クラッド材において更に、第1高融点金属層が積層される側とは反対側の低融点金属層の表面上に積層された第2高融点金属層をさらに備え、第2高融点金属層は、その断面が低融点金属層に接する面に反対側の面から、低融点金属層に接する面に向かって低融点金属層に接する面に対して垂直方向の冷却速度の低下に応じて晶出した結晶が配列された鋳造まま組織であって、低融点金属層に接する面と反対側の面にチル晶を有してもよい。このような構成によれば、3層のクラッド材において、圧延法により製造されたクラッド材に比べて、組織が微細化されて強度と靱性の高いクラッド材とすることができる。
【0028】
前記クラッド材において更に、低融点金属層が積層される側とは反対側の第1高融点金属層の表面上に積層された第2高融点金属層をさらに備え、第2高融点金属層は、その断面が第1高融点金属層に接する面に反対側の面から、第1高融点金属層に接する面に向かって第1高融点金属層に接する面に対して垂直方向の冷却速度の低下に応じて晶出した結晶が配列された鋳造まま組織であって、第1高融点金属層に接する面と反対側の面にチル晶を有してもよい。このような構成によれば、3層のクラッド材に関して、圧延法により製造されたクラッド材に比べて、組織が微細化されて強度と靱性の高いクラッド材とすることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のクラッド材製造方法によれば、双ロールキャスター法において、先に低融点金属層を凝固させて、その後高融点金属を凝固させて低融点金属層上に積層した場合でも、低融点金属層が再融解することなく、界面が明瞭かつ平坦なクラッド材を製造することができる。
また、本発明のクラッド材製造装置によれば、双ロールキャスター法において、先に低融点金属を凝固させて、その後高融点金属を凝固させて低融点金属層上に積層した場合でも、低融点金属層が再融解することなく、界面が明瞭かつ平坦なクラッド材を製造することができる。
また、本発明のクラッド材によれば、従来の圧延法により製造されたクラッド材に比べて、組織が微細化されているため高い強度と靱性を発現することができる。界面が明瞭かつ平坦で、高融点金属/低融点金属/高融点金属のような三層以上の構成のロール鋳造組織にてなるクラッド材のような、従来では得られなかったクラッド構成と組織のクラッド材が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態1に係るクラッド材製造装置の概略構成を示す図
【図2】実施形態2に係るクラッド材製造装置の概略構成を示す図
【図3】実施形態3に係るクラッド材製造装置の概略構成を示す図
【図4】実施形態4に係るクラッド材製造装置の概略構成を示す図
【図5】実施形態5に係るクラッド材製造装置の概略構成を示す図
【図6】参考例1によるクラッド材製造装置の概略構成を示す図
【図7A】参考例2による鋳造装置の概略構成を示す図
【図7B】参考例2による金属板の構造を示す図
【図7C】参考例2による金属板の構造を示す図(偏光モードで撮影した写真)
【図7D】参考例2による金属板の構造を示す図
【図8A】比較例1による鋳造装置の概略構成を示す図
【図8B】比較例1による金属板の構造を示す図
【図8C】比較例1による金属板の構造を示す図
【図8D】比較例1による金属板の構造を示す図
【図8E】比較例1による金属板の構造を示す図
【図8F】比較例1による金属板の構造を示す図
【図8G】比較例1による鋳造装置で製造した金属板の構造を示す図
【図9A】比較例2による鋳造装置の概略構成を示す図
【図9B】比較例2による金属板の構造を示す図
【図9C】比較例2による金属板の構造を示す図
【図10A】実施例1による鋳造装置の概略構成を示す図
【図10B】実施例1による金属板の構造を示す図
【図10C】実施例1による金属板の構造を示す図
【図10D】実施例1による別の金属板の構造を示す図
【図11A】実施例2による金属板の構造を示す図
【図11B】実施例2による金属板の構造を示す図
【図11C】実施例2による金属板の構造を示す図
【図11D】実施例2による金属板の構造を示す図
【図11E】実施例2による金属板の構造を示す図
【図11F】実施例2による金属板の構造を示す図
【図11G】実施例2による金属板の構造を示す図
【図11H】実施例2による金属板の構造を示す図
【図11I】実施例2による金属板の構造を示す図
【図12】高速ロールキャスター法で製造した亜共晶Al-Si合金の断面組織を示す図
【図13】高速ロールキャスター法で製造した過共晶Al-Si合金の断面組織を示す図
【図14A】2層クラッド材の厚み方向の断面組織を示す図
【図14B】2層クラッド材の厚み方向の断面組織を示す図
【図14C】2層クラッド材の厚み方向の断面組織を示す図
【図15A】従来の双ロールキャスターの概略構成を示す図
【図15B】従来の双ロールキャスターで製造した金属板の断面組織を示す図
【図16A】従来の圧延法により製造したクラッド材の厚み方向の断面図
【図16B】従来の圧延法により製造したクラッド材の厚み方向の断面図
【図16C】従来の圧延法により製造したクラッド材の厚み方向の断面図
【図16D】従来の圧延法により製造したクラッド材の厚み方向の断面図
【図17A】図16Aに示したクラッド材をさらに冷間圧延した厚み方向の断面図
【図17B】図16Aに示したクラッド材をさらに冷間圧延した厚み方向の断面図
【図18A】双ロールキャスター法により製造したクラッド材の厚み方向の断面図
【図18B】双ロールキャスター法により製造したクラッド材の厚み方向の断面図
【図18C】双ロールキャスター法により製造したクラッド材の厚み方向の断面図
【図18D】双ロールキャスター法により製造したクラッド材の厚み方向の断面図
【図18E】双ロールキャスター法により製造したクラッド材の厚み方向の断面図
【図18F】双ロールキャスター法により製造したクラッド材の厚み方向の断面図
【図19A】図18Aに示したクラッド材をさらに冷間圧延した厚み方向の断面図
【図19B】図18Aに示したクラッド材をさらに冷間圧延した厚み方向の断面図
【図20A】比較例3による鋳造装置の概略構成を示す図
【図20B】比較例3の方法により製造した3層クラッド材の断面組織を示す図
【図20C】比較例3の方法により製造した3層クラッド材の断面組織を示す図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」および、それらの用語を含む別の用語)を用いる。それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一の部分又は部材を示す。以下で例示する温度や材料等は単なる例示であって、発明の技術的範囲を限定するものではない。

【0032】
<実施形態1>
実施形態1のクラッド材製造装置2を図1に示す。図1に示すように、クラッド材製造装置2は、第1双ロール4と、第2双ロール6と、誘導ロール8と、低融点金属供給部10と、高融点金属供給部12とを備える。このような構成において、低融点金属供給部10から供給される溶融状態の低融点金属L1を第1双ロール4により冷却して凝固させた後、高融点金属供給部12から供給される高融点金属H1を第2双ロール6により冷却して凝固させ、凝固状態の低融点金属層L2に積層する。これにより、低融点金属層L2と高融点金属層H2とを積層したクラッド材D1が製造される。

【0033】
以下、クラッド材製造装置2の各構成について順に説明する。

【0034】
第1双ロール4は、溶融状態の低融点金属L1を冷却する冷却ロールである。第1双ロール4は、第1冷却ロール4aと、第2冷却ロール4bとを備える。第1冷却ロール4aおよび第2冷却ロール4bは、溶融状態の低融点金属L1を間に挟んで冷却する。第1冷却ロール4aおよび第2冷却ロール4bは、低融点金属L1を下方に搬送するように互いに逆方向に回転する。なお、冷却ロールの速度(ロール周速)は10m/分以上であり例えば30m/分である。

【0035】
第1冷却ロール4aには、第1冷却ロール4aを第2冷却ロール4bに近付ける方向に付勢する付勢手段として、例えばバネ(図示せず)が設けられている。第3冷却ロール6a等にも同様のバネが設けられているが、以降の説明では付勢手段の説明は省略する。なお、双ロールを構成する2つのロールが互いに押付け合う荷重(ロール荷重)は例えば、50N/mmである。

【0036】
第1双ロール4には低融点金属供給部10が設けられている。低融点金属供給部10は、溶融状態の低融点金属L1を第1冷却ロール4aと第2冷却ロール4bの間に供給する。図1の例では、低融点金属供給部10は、溶融状態の低融点金属L1を第1冷却ロール4aと第2冷却ロール4bの間に連続的に供給するように貯留する槽である。溶融状態の低融点金属L1としては例えば、620℃のアルミニウム合金A4045が貯留される。なお、他の実施形態においても「低融点金属」としてアルミニウム合金A4045を用いてもよい。

【0037】
第1双ロール4は、溶融状態の低融点金属L1を冷却して凝固させすることで凝固状態の低融点金属層L2とする。第1双ロール4は、凝固状態の低融点金属層L2を下流側に搬送する。なお、本明細書における凝固状態とは、凝固状態と半凝固状態の両方を含む。

【0038】
第2双ロール6は、溶融状態の高融点金属H1を冷却する冷却ロールである。第2双ロール6は、第1双ロール4の下流側に設けられている。図1の例では、第2双ロール6は、第1双ロール4の略真下に設けられている。

【0039】
第2双ロール6は、第3冷却ロール6aと、第4冷却ロール6bとを備える。第3冷却ロール6aおよび第4冷却ロール6bは、溶融状態の高融点金属H1を間に挟んで冷却する。第3冷却ロール6aおよび第4冷却ロール6bは、高融点金属H1を下方に搬送するように互いに逆方向に回転する。なお、第4冷却ロール6bの周面が第3冷却ロール6aと最も接近する位置をキス部Y1とする。

【0040】
第2双ロール6に隣接する位置には高融点金属供給部12が設けられている。高融点金属供給部12は、溶融状態の高融点金属H1を第3冷却ロール6aと第4冷却ロール6bの間に供給する。図1の例では、高融点金属供給部12は、溶融状態の高融点金属H1を第3冷却ロール6aと第4冷却ロール6bの間に連続的に供給するように貯留する槽である。溶融状態の高融点金属H1としては例えば、680℃のアルミニウム合金A3003が貯留される。なお、他の実施形態においても「高融点金属」としてアルミニウム合金A3003を用いてもよい。

【0041】
第2双ロール6は、溶融状態の高融点金属H1を冷却して凝固することで凝固状態の高融点金属層H2とする。第2双ロール6は、凝固状態の高融点金属H2と凝固状態の低融点金属層L2とが積層されたクラッド材D1を下方に搬送する(矢印B)。

【0042】
誘導ロール8は、第1双ロール4により冷却された凝固状態の低融点金属層L2を下流側の第2双ロールの第4冷却ロール6bに接するように誘導する(矢印A、C)。誘導ロール8は、凝固状態の低融点金属層L2の搬送方向において、第1双ロール4と第2双ロール6の間に配置されている。誘導ロール8は、第1双ロール4および第2双ロール6の中心位置に対して水平方向にオフセットして配置されている(図1では右方向(第4冷却ロール側)にオフセット配置)。このように配置される誘導ロール8は、凝固状態の低融点金属層L2を第2双ロール6における第4冷却ロール6bの表面に沿わせるように誘導する。

【0043】
誘導ロール8を設けることによって、第1双ロール4により冷却して凝固された低融点金属層L2は、第4冷却ロール6b側に斜め下方に向かって搬送される(矢印A)。さらに凝固状態の低融点金属層L2は、誘導ロール8の誘導によって、第4冷却ロール6bに対して、鉛直方向から所定角度θ傾斜して入射するように誘導される(矢印C)。

【0044】
第4冷却ロール6bに沿うように搬送された凝固状態の低融点金属層L2は、図1に示す接触開始点X1から第4冷却ロール6bとの接触を開始する。凝固状態の低融点金属層L2は、接触開始点X1からキス部Y1までの冷却区間C1において第4冷却ロール6bに接触して冷却状態にある。

【0045】
誘導ロール8を設けているため、接触開始点X1は第4冷却ロール6bの上側部分に位置する。これにより、接触開始点X1からキス部Y1までの冷却区間C1の長さをより確実に確保することができる。本実施形態1では、冷却区間C1の長さ、すなわち冷却区間C1の第4冷却ロール6bの周面の弧長を25mm以上に設定している。


【0046】
前述した高融点金属供給部12は、接触開始点X1からキス部Y1までの冷却区間C1における低融点金属層L2の第3冷却ロール6a側の面に、溶融状態の高融点金属H1を供給する。このために、高融点金属供給部12における溶融状態の高融点金属H1の高さ位置(液面13)が制御されている。具体的には、溶融状態の高融点金属H1の液面13が、接触開始点X1よりも低くかつキス部Y1よりも高い位置となるように制御されている。このような高融点金属H1の高さ位置を制御するために、制御部を設けてもよい。例えば、高融点金属H1の供給源(図示せず)から高融点金属供給部12へ供給される高融点金属H1の流量を、冷却ロールの回転速度などに基づいて制御する制御部を設けてもよい。制御部として例えば、レーザ液位計により溶湯の液位を検出し、検出した液位に基づいて、溶湯供給用のポンプの流量を制御してもよい。

【0047】
高融点金属供給部12は、溶融状態の高融点金属H1を第3冷却ロール6aと凝固状態の低融点金属層L2との間に供給し、高融点金属H1は主に第3冷却ロール6a側から冷却される。

【0048】
上述した構成を有するクラッド材製造装置2によるクラッド材の製造方法の一例について、図1を用いて説明する。

【0049】
(工程1:クラッド材製造装置2の準備)
まず、クラッド材製造装置2を準備する。具体的には、第1双ロール4として、第1冷却ロール4aおよび第2冷却ロール4bを設ける。さらに、第1双ロール4の下方において、第2双ロール6として、第3冷却ロール6aおよび第4冷却ロール6bを設ける。図1の例では、第2双ロール6は第1双ロール4の直下に設け、第1双ロール4と左右方向に同じ位置に設ける。さらに、第1双ロール4と第2双ロール6の間に誘導ロール8を設ける。誘導ロール8は、第1双ロール4と第2双ロール6に対して左右方向にオフセットして配置する(図1の例では第2双ロールのうち低融点金属層L2を沿わせる方の第4冷却ロール6bの側に(右方向に)寄せるようにオフセットする)。さらに、第1冷却ロール4aと第2冷却ロール4bの間に低融点金属供給部10を設け、第3冷却ロール6aと第4冷却ロール6bの間に高融点金属供給部12を設ける。

【0050】
(工程2:溶融状態の低融点金属の供給・冷却)
次に、低融点金属供給部10から第1冷却ロール4aと第2冷却ロール4bの間に溶融状態の低融点金属L1を供給する。溶融状態の低融点金属L1は、第1冷却ロール4aと第2冷却ロール4bに接触することで両側から冷却されて凝固する。これにより、凝固した板状の低融点金属層L2が製造される。凝固した板状の低融点金属層L2は、第1双ロール4の回転によって斜め下方に搬送される(矢印A)。

【0051】
(工程3:凝固した低融点金属の誘導)
凝固した板状の低融点金属層L2は第1双ロール4によって下方に搬送され、誘導ロール8に到達する。誘導ロール8は、凝固した板状の低融点金属層L2を第2双ロール6の第4冷却ロール6bに向けて誘導する。

【0052】
凝固状態の低融点金属層L2は、誘導ロール8によって第4冷却ロール6bの表面に沿うように誘導される。誘導ロール8は第1双ロール4および第2双ロール6から左右方向に第4冷却ロール6b側にオフセットして配置されているため、低融点金属層L2を第4冷却ロール6bに対して鉛直方向から傾斜して入射させ、第4冷却ロール6bの表面に確実に沿わせることができる。第1双ロールから誘導ロール8を介して第2双ロールのY1までの間、低融点金属層L2は長さ方向に引張張力がかかった状態で移動させられている。

【0053】
凝固状態の低融点金属層L2は、接触開始点X1から第4冷却ロール6bとの接触を開始する。接触開始点X1からキス部Y1までの冷却区間C1において、凝固状態の低融点金属層L2は第4冷却ロール6bに接触して冷却された状態にある。

【0054】
(工程4:溶融状態の高融点金属の供給・冷却)
高融点金属供給部12から第3冷却ロール6aと低融点金属層L2の間に溶融状態の高融点金属H1を供給する。具体的には、接触開始点X1からキス部Y1までの冷却区間C1における低融点金属層L2の第3冷却ロール6a側の面と第3冷却ロール6aとの間に溶融状態の高融点金属H1を供給する。これにより、高融点金属H1は主に第3冷却ロール6a側から冷却されて凝固し、凝固状態の高融点金属層H2となる。凝固状態の高融点金属層H2は凝固状態の低融点金属層L2の上に積層される。これにより、高融点金属層H2と低融点金属層L2が積層された板状のクラッド材D1が製造される。

【0055】
前述したように、高融点金属供給部12に貯留されている溶融状態の高融点金属H1は、凝固状態の低融点金属層L2に対して冷却区間C1で接触するように供給される。このような供給形態によれば、温度の高い溶融状態の高融点金属H1が温度の低い凝固状態の低融点金属層L2に接触しても、低融点金属層L2は第4冷却ロール6bによって冷却された状態にあるため、高融点金属H1からの熱を受けても溶融しない。これにより、低融点金属層L2の凝固状態を維持しながら、溶融状態の高融点金属H1を冷却して凝固させることができる。低融点金属L1を先に冷却して凝固させた場合であっても、凝固した低融点金属層L2が溶融することなく、低融点金属層L2と高融点金属層H2の界面が明瞭かつ平坦であるため、それぞれの層の厚みが均一となり、装置の搬送(流れ)方向の物性の揺らぎが小さく、実用性の高い実用性の高いクラッド材D1を製造することができる。このため、クラッド材D1の多様な仕様を実現することができ、クラッド材D1の用途を拡大することができる。

【0056】
上述したように、実施形態1のクラッド材製造方法は、高融点金属層H2と低融点金属層L2とが積層されたクラッド材D1を製造するクラッド材の製造方法である。実施形態1のクラッド材製造方法は、第1双ロール4を構成する第1冷却ロール4aと第2冷却ロール4bの間に溶融状態の低融点金属L1を供給することにより、溶融状態の低融点金属L1を冷却して凝固させ、板状の低融点金属層L2を形成するステップを含む。さらに、凝固した板状の低融点金属層L2を、第1双ロール4の下流側にあって第2双ロール6を構成する第3冷却ロール6aと第4冷却ロール6bの間において第4冷却ロール6bの表面に沿わせるように供給するステップを含む。さらに、凝固した板状の低融点金属層L2と第3冷却ロール6aとの間において、低融点金属層L2が第4冷却ロール6bと接触している冷却区間に溶融状態の高融点金属H1を供給することにより、第3冷却ロール6aと低融点金属層L2の間で高融点金属H1を冷却して凝固させ、凝固した板状の高融点金属層H2を低融点金属層L2に積層して形成するステップを含む。

【0057】
このような製造方法によれば、第3冷却ロール6aと低融点金属層L2の間で高融点金属H1を冷却する際に、低融点金属層L2における第4冷却ロール6bと接触している冷却区間C1に溶融状態の高融点金属H1を供給する。これにより、第4冷却ロール6bによって冷却された状態の低融点金属層L2に接触させながら高融点金属H1を冷却することができる。このため、低融点金属層L2が高融点金属H1の熱によって溶融することを防止しながら、高融点金属H1を冷却して凝固させ、凝固状態の高融点金属層H2として低融点金属層L2に積層することができる。このような方法によれば、低融点金属L1を先に冷却して凝固させた場合でも、凝固状態の低融点金属層L2の再融解を防止することで、低融点金属層L2と高融点金属層H2の界面を平坦かつ明瞭にすることができる。また、低融点金属層L2および高融点金属層H2の厚みがばらつくことを抑制することができ、強度を均質なものとすることができる。

【0058】
さらに実施形態1のクラッド材製造方法によれば、冷却区間C1の第4冷却ロール6bの周面の弧長が25mm以上である。第3冷却ロール6a側から溶融状態の第1高融点金属H1を供給するには、高融点金属供給部12へのノズルや樋からの注湯のしやすさや、溶湯液面13の高さの安定性を確保するために、高融点金属供給部12の湯だまりを形作するための堰の内側と、第4冷却ロール6bに沿わされた低融点金属層L2との間の距離、すなわち「湯だまりの幅」は一定の大きさ以上である必要がある。特に、第3冷却ロール6aと第4冷却ロール6bが縦型水平双ロールを構成する場合に上記スペース制約が大きい。
一方、製造装置としての冷却ロールは主に熱伝導率上の理由から銅が用いられるが、銅製冷却ロール6a、6bの直径は、冷却効率と、内部に中空の冷媒通路をロール中に形成するために、通常100mm以上である。このため、溶湯状態の高融点金属H1を供給するには、上記湯だまりの幅を確保するというスペース制約上、冷却区間C1の第4冷却ロール6bの周面における弧長が25mm以上となる。なお、上記湯だまりの幅を確保するためには、冷却ロールの直径が200mmの場合は40mm以上の弧長、冷却ロールの直径が300mmの場合は60mm以上の弧長が好ましい。

【0059】
更に、冷却区間C1の第4冷却ロール6bの周面の弧長が25mm以上であれば、低融点金属層L2の第4冷却ロール6bに接する面が第4冷却ロール6bにより冷却され、低融点金属層L2の厚さ方向全体が冷却され、低融点金属層L2の反対側が高融点金属の溶湯と接しても、接する面での低融点金属層L2の再融解を防ぐことができるが、25mm未満では、低融点金属と高融点金属の材料の組み合わせや、ロール鋳造条件によっては、低融点金属層L2の接する面が再融解することがある。

【0060】
また、実施形態1のクラッド材製造方法によれば、凝固した板状の低融点金属層L2を第4冷却ロール6bの表面に沿わせるように供給するステップは、第4冷却ロール6bに対して鉛直方向から傾斜した角度で板状の低融点金属層L2を入射させるステップを含む。
すなわち、下流側の冷却ロール(今の場合第4冷却ロール6b)に低融点金属層又は積層された層(今の場合L2)を沿わせるには、下流側の双ロール(今の場合第3冷却ロール6aと第4冷却ロール6b)の両回転軸を含む平面に垂直、かつ、下流側の双ロールの低融点金属層又は積層された層を沿わせる方の冷却ロール(今の場合第4冷却ロール6b)のキス部を含む平面に対し、低融点金属層又は積層された層を沿わせる方の冷却ロール(今の場合第4冷却ロール6b)の回転軸に近い空間から前記キス部に近付くように、低融点金属層又は積層された層((今の場合L2)を、沿わせる方の冷却ロール(今の場合第4冷却ロール6b)の回転軸に垂直な平面に平行な進行方向で、好ましくは低融点金属層又は積層された層(今の場合L2)の幅の中央部分と、沿わせる方の冷却ロール(今の場合第4冷却ロール6b)のロール幅の中央の周とが同一平面上にあるようにして、低融点金属層又は積層された層を沿わせる方の冷却ロール(今の場合第4冷却ロール6b)の周面に近付け接するように導入するステップを含む。

【0061】
このような製造方法によれば、低融点金属層L2を第4冷却ロール6bに対して鉛直方向に入射させた場合に比べて、低融点金属層L2を第4冷却ロール6bにより確実に接触させることができる。これにより、冷却区間C1の長さを確実に確保することができ、低融点金属層L2の再融解を精度良く防止することができる。

【0062】
また、上述した実施形態1のクラッド材製造装置2は、高融点金属層H2と低融点金属層L2とが積層されたクラッド材D1を製造するクラッド材の製造装置2である。クラッド材製造装置2は、第1双ロール4と、第2双ロール6と、低融点金属供給部10と、高融点金属供給部12とを備える。第1双ロール4は、第1冷却ロール4aおよび第2冷却ロール4bを有する。第2双ロール6は、第1双ロール4の下流側において、第3冷却ロール6aおよび第4冷却ロール6bを有する。低融点金属供給部10は、第1冷却ロール4aと第2冷却ロール4bの間に溶融状態の低融点金属L1を供給する。高融点金属供給部12は、第1双ロール4により冷却されて板状に凝固されるとともに第3冷却ロール6aと第4冷却ロール6bの間において第4冷却ロール6bに沿うように供給される板状の低融点金属層L2と、第3冷却ロール6aとの間において、低融点金属層L2が第4冷却ロール6bと接触している冷却区間C1に溶融状態の第1高融点金属H1を供給する。

【0063】
このような構成によれば、第3冷却ロール6aと低融点金属層L2の間で高融点金属H1を冷却する際に、低融点金属層L2における第4冷却ロール6bと接触している冷却区間C1に溶融状態の高融点金属H1を供給する。これにより、第4冷却ロール6bによって冷却された状態の低融点金属層L2に接触させながら高融点金属H1を冷却することができる。このため、低融点金属層L2が高融点金属H1の熱によって溶融することを防止しながら、高融点金属H1を冷却して凝固させ、凝固状態の高融点金属層H2として低融点金属層L2に積層することができる。このような構成によれば、低融点金属L1を先に冷却して凝固させた場合でも、凝固状態の低融点金属層L2の再融解を防止することで、低融点金属層L2と高融点金属層H2の界面を明瞭かつ平坦にすることができる。

【0064】
実施形態1のクラッド材製造装置2によれば、第2双ロール6は、第1双ロール4の下方に配置されており、第1双ロール4によって冷却して凝固された板状の低融点金属層L2を、第4冷却ロール6bに対して鉛直方向から傾斜した角度で入射させる誘導ロール8をさらに備える。

【0065】
このような構成によれば、低融点金属層L2を第4冷却ロール6bに対して鉛直方向に入射させた場合に比べて、低融点金属層L2を第4冷却ロール6bにより確実に接触させることができる。これにより、冷却区間C1の長さを確実に確保することができる。

【0066】
<実施形態2>
次に、実施形態2にかかるクラッド材製造装置について、図2を用いて説明する。ここでは、主に実施形態1と異なる点について説明する。また、実施形態1と重複する記載は省略する。

【0067】
実施形態1では、第1双ロール4および第2双ロール6を上下に配置し、クラッド材D1を上下に搬送したが、本変形例では2つの双ロールを水平方向に並べて配置し、クラッド材を水平方向に搬送する。

【0068】
図2に示すように、実施形態2にかかるクラッド材製造装置20は、第1双ロール22と、第2双ロール24と、低融点金属供給部26と、高融点金属供給部28とを備える。第1双ロール22と第2双ロール24は水平方向に並べて配置されており、互いの上下位置は略同じ位置に設定されている。

【0069】
第1双ロール22は、溶融状態の低融点金属L3を冷却する冷却ロールである。第1双ロール22を構成する第1冷却ロール22aと第2冷却ロール22bは、上下および左右に互いにオフセットして配置されている。第2双ロール24は、溶融状態の高融点金属H3を冷却する冷却ロールである。第2双ロール24を構成する第3冷却ロール24aと第4冷却ロール24bは、上下および左右に互いにオフセットして配置されている。第4冷却ロール24bの周面において第3冷却ロール24aと最も接近する位置をキス部Y2とする。

【0070】
低融点金属供給部26は、溶融状態の低融点金属L3を第1冷却ロール22aと第2冷却ロール22bの間に供給する。高融点金属供給部28は、溶融状態の高融点金属H3を第3冷却ロール24aと第4冷却ロール24bの間に供給する。

【0071】
溶融状態の低融点金属L3は、第1冷却ロール22aおよび第2冷却ロール22bによって冷却されることで、凝固状態の板状の低融点金属層L4となる。凝固状態の低融点金属層L4は、第2双ロール24に向けて下流側に搬送される(矢印A)。

【0072】
凝固状態の低融点金属層L4は、第2双ロール24における下方側の第4冷却ロール24bに向けて送られ、低融点金属層L4の重力により第1双ロールと第2双ロールに張力がかかった状態で、第4冷却ロール24bの表面に沿って搬送される。凝固状態の低融点金属層L4は、図2に示す接触開始点X2からキス部Y2まで第4冷却ロール24bと接触して冷却される。

【0073】
溶融状態の高融点金属H3は、第3冷却ロール24aと第4冷却ロール24bの間に供給される。より具体的には、溶融状態の高融点金属H3は、第4冷却ロール24bと接触している凝固状態の低融点金属層L4と第3冷却ロール24aとの間に供給される。溶融状態の高融点金属H3は、主に第3冷却ロール24a側から冷却されて凝固し、凝固状態の高融点金属H4となる。凝固状態の高融点金属H4は凝固状態の低融点金属層L4の上に積層され、クラッド材D2が製造される。

【0074】
前述したように、高融点金属供給部28は、凝固状態の低融点金属層L4に対して溶融状態の高融点金属H3を冷却区間C2で接触するように供給する。このような構成によれば、温度の高い溶融状態の高融点金属H3が温度の低い凝固状態の低融点金属層L4に接触しても、低融点金属層L4は第4冷却ロール24bによって冷却された状態にあるため、高融点金属H3からの熱を受けても溶融しない。これにより、低融点金属層L4の凝固状態を維持しながら、溶融状態の高融点金属H3を冷却して凝固させることができる。低融点金属L3を先に冷却して凝固させた場合であっても、凝固した低融点金属層L4が溶融することなく、界面が平坦かつ明瞭で、実用性の高いクラッド材D2を製造することができる。

【0075】
また、第1双ロール22および第2双ロール24を水平配置(横型配置)することにより、装置のレイアウト自由度が高まる。また、新たな双ロールを更に水平配置すれば、3層以上のクラッド材を製造することができるため、クラッド材の多層化を容易に行うことができる。さらに、図1に示すような縦型配置に比べて、凝固させた低融点金属層を次の双ロールに供給する際に容易に供給(挿入)することができ、そのセッティングも容易である。さらに、速度調整も容易に行うことができ、縦型配置に比べて作業性を向上させることができる。

【0076】
また、第1双ロール22に対し第2双ロール24を水平に配置することにより、凝固状態の低融点金属層L4を第2双ロール24の第4冷却ロール24bに対して沿わせる際に、低融点金属層L4を重力により下方の第4冷却ロール24bの周面に押し付けることができる。これにより、凝固状態の低融点金属層L4を第4冷却ロール24bに対してより確実に沿わせることができ、所定長さの冷却区間C2を確保することができる。すなわち、冷却区間C2を(冷却区間C1と比較して)長くすることができる。

【0077】
<実施形態3>
次に、実施形態3のクラッド材製造装置30について図3を用いて説明する。実施形態3では、主に実施形態1と異なる点について説明する。また実施形態3では、実施形態1と重複する記載は省略する。

【0078】
図3は、実施形態3のクラッド材製造装置30の概略構成を示す図である。タンデム式縦型双ロールにおいて、上流の双ロールの中間位置に対し、下流の双ロールにおける冷却のため板の片面を沿わせる冷却ロールが略その下方に位置している。

【0079】
実施形態1では、低融点金属層L2と高融点金属層H2を1層ずつ積層した2層のクラッド材D1を製造したが、実施形態3では、低融点金属を1層、高融点金属をその両側に積層した合計3層のクラッド材D3を製造する。

【0080】
図3に示すように、クラッド材製造装置30は、同径縦型水平双ロールである第1双ロール32と、同径縦型水平双ロールである第2双ロール34と、同径縦型水平双ロールである第3双ロール36と、低融点金属供給部37と、第1高融点金属供給部38と、第2高融点金属供給部39とを備える。

【0081】
第1双ロール32は、溶融状態の低融点金属L5をロール鋳造する冷却ロールであり、第1冷却ロール32aと、第2冷却ロール32bとを備える。第1冷却ロール32aの回転軸31aと第2冷却ロール32bの回転軸31bは平行に延びており、かつ同じ高さ位置にある。すなわち水平な同一平面上にある。回転軸31aと回転軸31bの中間地点を、中間位置31cとする。

【0082】
第1双ロール32には低融点金属供給部37が設けられている。低融点金属供給部37は、溶融状態の低融点金属L5として例えば、実施形態1と同様に、620℃のアルミニウム合金A4045を貯留する。

【0083】
第2双ロール34は、第1双ロール32の下流側に設けられた双ロールであり、第3冷却ロール34aと、第4冷却ロール34bとを備える。第3冷却ロール34aおよび第4冷却ロール34bは、溶融状態の第1高融点金属H5を冷却する。第4冷却ロール34bの周面において第3冷却ロール34aと最も接近する位置をキス部Y3とする。第3冷却ロール34aの回転軸33aと第4冷却ロール34bの回転軸33bは平行に延びており、かつ同じ高さ位置にある。すなわち両回転軸を含む平面は水平をなしている。回転軸33aと回転軸33bの中間地点を、仮想中心軸としての中間位置33cとする。

【0084】
第2双ロール34は、第1双ロール32の下方に設けられており、第1双ロール32に対して左右方向にオフセットして配置されている(図3の例では第4冷却ロール34b上に第1双ロール32のロール軸の中間位置31cがくるように、第2双ロール34を左方向にオフセット配置)。すなわち、中間位置31cを含む鉛直平面が、中間位置33cを含む鉛直平面に対して、第4冷却ロール34bの回転軸33b側に位置ずれしている。このようなオフセット配置により、第1双ロール32から搬送される凝固状態の低融点金属層L6は、第4冷却ロール34bに対して、鉛直方向から傾斜した角度にて入射し、第4冷却ロール34bの上側部分の表面に沿うように搬送される。
すなわち、下流側の第4冷却ロール34bに低融点金属層L6を沿わせるには、下流側の双ロールの第3冷却ロール34aと第4冷却ロール34bの両回転軸33aと33bを含む平面に垂直、かつ、下流側の低融点金属層L6を沿わせる第4冷却ロール34bのキス部Y3を含む平面に対し、低融点金属層L6を、沿わせる冷却ロールである第4冷却ロール34bに近い空間からキス部Y3に近付く方向、かつ、沿わせる方の冷却ロールである第4冷却ロール34bの回転軸に垂直な平面に平行に、かつ、低融点金属層L6の幅の中央部分と、沿わせる方の冷却ロールである第4冷却ロール34bのロール幅の中央の周とが同一平面上にある方向にて、沿わせる方の冷却ロールである第4冷却ロール34bの周面に近付け接するように導入する。

【0085】
第2双ロール34には第1高融点金属供給部38が設けられている。第1高融点金属供給部38は、第4冷却ロール34bに対する低融点金属層L6の接触開始点X3からキス部Y3までの冷却区間C3において、第3冷却ロール34aと低融点金属層L6の間に溶融状態の高融点金属H5を供給する。

【0086】
第3双ロール36は、第2双ロール34の下流側に設けられた縦型水平双ロールであり、第5冷却ロール36aと、第6冷却ロール36bとを備える。第5冷却ロール36aおよび第6冷却ロール36bは、溶融状態の第2高融点金属H7を冷却する。

【0087】
第3双ロール36は、第2双ロール34の下方に設けられており、第2双ロール34に対して左右方向にオフセットして配置されている(図3の例では第5冷却ロール36a上に第2双ロール34のロール軸の中間位置33cがくるように第3双ロール36を右方向にオフセット配置)。すなわち、中間位置33cを含む鉛直平面が、中間位置35cを含む鉛直平面に対して、第5冷却ロール36aの回転軸35a側に位置ずれしている。このようなオフセット配置により、第2双ロール34から搬送される凝固状態の低融点金属層L6および第1高融点金属層H6は、第5冷却ロール36aに沿うように搬送される。

【0088】
第3双ロール36に隣接する位置には第2高融点金属供給部39が設けられている。第2高融点金属供給部39は、第5冷却ロール36aと第6冷却ロール36bの間において、接触開始点X4からキス部Y4までの冷却区間C4における低融点金属層L6と接触させるように、溶融状態の高融点金属H7を供給する。

【0089】
すなわち上述の装置は以下の様に表現できる。
実施形態3のクラッド材製造装置は、第1高融点金属層H6と低融点金属層L6とが積層されたクラッド材D3を製造するクラッド材の製造装置であって、第1冷却ロール32aおよび第2冷却ロール32bを有する第1双ロール32と、第1冷却ロール32aと第2冷却ロール32bの間に溶融状態の低融点金属L5を供給する低融点金属供給部37と、第1双ロール32の下流側において、第3冷却ロール34aおよび第4冷却ロール34bを有する第2双ロール34と、第1双ロール32で鋳造された低融点金属層L6と第3冷却ロール34aとの間に溶融状態の第1高融点金属H5を供給する第1高融点金属供給部38とを有し、第1双ロール32の高さ位置は、第2双ロール34の高さ位置よりも高く、第1双ロール32の第1冷却ロール32aの回転軸31aと第2冷却ロール32bの回転軸31bの間の中間位置31cを含む鉛直平面は、第2双ロール34の第3冷却ロール34aの回転軸33aと第4冷却ロール34bの回転軸33bの間の中間位置33cを含む鉛直平面に対して、第4冷却ロール34bの回転軸33b側に位置ずれしている、クラッド材の製造装置である。

【0090】
更に、実施形態3のクラッド材製造装置は、タンデム型三層双ロールであって、第5冷却ロール36aと第6冷却ロール36bにてなる第3双ロール36を第2双ロール34の下方に設け、第2双ロール34で第1高融点金属層H6が積層された低融点金属層L6との間に溶融状態の第2高融点金属H7を供給する第2高融点金属供給部39を有し、第2双ロール34の第3冷却ロール34aの回転軸33aと第4冷却ロール34bの回転軸33bの間の中間位置33cを含む鉛直平面は、第3双ロール36の第5冷却ロール36aの回転軸35aと第6冷却ロール36bの回転軸35bの中間位置35cを含む鉛直平面に対し、第5冷却ロール36a側に位置ずれしている。

【0091】
このようなクラッド材製造装置によれば、双ロールキャスター法において、先に低融点金属層L6を凝固させ、その後に高融点金属層H6を凝固させて低融点金属層L6上に積層した場合でも、低融点金属層L6が再融解することなく、界面が平坦なクラッド材D3を製造することができる。そして、タンデム型縦型双ロールにおいて、下段の双ロールの位置が一方の冷却ロールに金属板を容易に沿わせて冷却できるように、上段の双ロールに対して左右方向に第4冷却ロール34b側にずれて配置(シフト)している。このように、上方の第1双ロール32で鋳造した低融点金属層L6の板に下流の下方の第2双ロール34で高融点金属層H6を直接積層する場合に、下流の第2双ロール34で板を積層する際に、冷却のために沿わせる一方の第4冷却ロール34bの中心軸(中心位置33b)が上流の第1双ロール32間の間隙の真下またはその近傍になるよう水平方向にずれた位置にシフトしている。これにより、低融点金属層L6の板を下流の第2双ロール34の一方の第4冷却ロール34bに沿わせて冷却した状態でもう一方の第3冷却ロール34aで積層することができる。このため、低融点金属層L6が再融解することなく、界面が明瞭で平坦なクラッド材D3を製造することができ、運転開始時のセッティングが容易で製造しやすい。

【0092】
上述した構成を有するクラッド材製造装置30によるクラッド材の製造方法の一例について、図3を用いて説明する。

【0093】
(工程1:クラッド材製造装置30の準備)
まず、クラッド材製造装置30を準備する。具体的には、図3に示したクラッド材製造装置30を設ける。

【0094】
(工程2:溶融状態の低融点金属の供給・冷却)
次に、低融点金属供給部37から第1冷却ロール32aと第2冷却ロール32bの間に溶融状態の低融点金属L5を供給する。溶融状態の低融点金属L5は、第1冷却ロール32aと第2冷却ロール32bに接触することで両側から冷却されて凝固する。凝固した板状の低融点金属層L6が製造される。凝固した板状の低融点金属層L6は、第1双ロール32の回転によって斜め下方に搬送される。

【0095】
凝固状態の板状の低融点金属層L6は、第4冷却ロール34bの表面に沿うように搬送される。第2双ロール34は第1双ロール32に対して左右方向にオフセットして配置されているため、低融点金属層L6を第4冷却ロール34bの表面に確実に沿わせることができる。

【0096】
凝固状態の低融点金属層L6は、接触開始点X3から第4冷却ロール34bとの接触を開始する。接触開始点X3からキス部Y3までの冷却区間C3において、凝固状態の低融点金属層L6は第4冷却ロール34bによって冷却された状態にある。

【0097】
(工程3:溶融状態の第1高融点金属の供給・冷却)
第1高融点金属供給部38から第3冷却ロール34aと低融点金属層L6の間に溶融状態の第1高融点金属H5を供給する。具体的には、接触開始点X3からキス部Y3までの冷却区間C3における低融点金属層L6と第3冷却ロール34aとに接触するように、溶融状態の高融点金属H5を供給する。これにより、高融点金属H5は主に第3冷却ロール34a側から冷却されて凝固し、凝固状態の高融点金属層H6となる。凝固状態の高融点金属層H6は凝固状態の低融点金属層L6の上に積層される。これにより、高融点金属層H6と低融点金属層L6が積層された板状の積層体P1が製造される。

【0098】
前述したように、第1高融点金属供給部38に貯留されている溶融状態の高融点金属H5は、凝固状態の低融点金属層L6に対して冷却区間C3で接触する。これにより、温度の高い溶融状態の高融点金属H5が温度の低い凝固状態の低融点金属層L6に接触しても、低融点金属層L6は第4冷却ロール34bによって冷却された状態にあるため、高融点金属H5からの熱を受けても溶融しない。このため、低融点金属層L6の凝固状態を維持しながら、溶融状態の高融点金属H5を冷却して凝固させることができる。低融点金属L5を先に冷却して凝固させた場合であっても、凝固した低融点金属層L6が溶融することなく、界面が明瞭かつ平坦で、実用性の高い実用性の高い積層体P1を製造することができる。

【0099】
さらに、凝固した板状の低融点金属層L6および第1高融点金属層H6を含む積層体P1は、第2双ロール34の回転によって斜め下方に搬送される。

【0100】
積層体P1は、第5冷却ロール36aの表面に沿うように搬送される。第3双ロール36は第2双ロール34に対して左右方向にオフセットして配置されているため、積層体P1は第5冷却ロール36aの表面に確実に沿うように搬送される。

【0101】
積層体P1における凝固状態の第1高融点金属層H6は、接触開始点X4から第5冷却ロール36aとの接触を開始する。接触開始点X4からキス部Y4までの冷却区間C4において、積層体P1は第5冷却ロール36aによって冷却された状態にある。

【0102】
(工程4:溶融状態の第2高融点金属の供給・冷却)
第2高融点金属供給部39から、積層体P1と第6冷却ロール36bの間に溶融状態の第2高融点金属H7を供給する。具体的には、接触開始点X4からキス部Y4までの冷却区間C4における積層体P1と第6冷却ロール36bとに接触するように、溶融状態の第2高融点金属H7を供給する。これにより、第2高融点金属H7は主に第6冷却ロール36b側から冷却されて凝固し、凝固状態の第2高融点金属H8となる。凝固状態の第2高融点金属H8は凝固状態の低融点金属層L6の上に積層される。これにより、第1高融点金属層H6と低融点金属層L6と第2高融点金属H8が順に積層された板状のクラッド材D3が製造される。

【0103】
第1高融点金属供給部38と同様に、第2高融点金属供給部39に貯留されている溶融状態の第2高融点金属H7は、凝固状態の積層体P1の低融点金属層L6に対して冷却区間C4で接触する。このような構成によれば、温度の高い溶融状態の第2高融点金属H7が温度の低い凝固状態の低融点金属層L6に接触しても、低融点金属層L6は第5冷却ロール36aによって冷却された状態にあるため、第2高融点金属H7からの熱を受けても溶融しない。これにより、低融点金属層L6の凝固状態を維持しながら、溶融状態の第2高融点金属H7を冷却して凝固させることができる。低融点金属L5を先に冷却して凝固させた場合であっても、凝固した低融点金属層L6が溶融することなく、界面が平坦かつ明瞭で、実用性の高いクラッド材D3を製造することができる。

【0104】
上述したように、実施形態3のクラッド材製造方法は、第2双ロール34によって冷却された低融点金属層L6および第1高融点金属層H6による板状の積層体P1を、第2双ロール34の下流側にあって第3双ロール36を構成する第5冷却ロール36aと第6冷却ロール36bの間において第5冷却ロール36aの表面に沿わせるように供給するステップを含む。当該製造方法はさらに、板状の積層体P1と第6冷却ロール36bとの間において、積層体P1が第5冷却ロール36aと接触している冷却区間C4に溶融状態の第2高融点金属H7を供給することにより、第6冷却ロール36bと積層体P1の間で第2高融点金属H7を冷却して凝固させ、凝固した板状の第2高融点金属層H6を積層体P1に積層するステップを含む。

【0105】
上述した実施形態3のクラッド材製造装置30は、第3双ロール36と、第2高融点金属供給部39とを備える。第3双ロール36は、第2双ロール34の下流側において、第5冷却ロール36aおよび第6冷却ロール36bを有する。第2高融点金属供給部39は、第2双ロール34により冷却されて板状に凝固されるとともに第5冷却ロール36aと第6冷却ロール36bの間において第5冷却ロール36aに沿うように供給される第1高融点金属層H6および低融点金属層L6による板状の積層体P1と、第6冷却ロール36bとの間において、積層体P1が第5冷却ロール36aと接触している冷却区間C4に溶融状態の第2高融点金属H7を供給する。

【0106】
上記実施形態3の製造方法および製造装置によれば、実施形態1の製造方法による効果に加えて以下の効果を奏する。すなわち、低融点金属層L6が第2高融点金属H7の熱によって溶融することを防止しながら、第2高融点金属H7を冷却して積層体P1の上に第2高融点金属層H8を積層することができる。このように、低融点金属層L6を中央に配置し、その両側に第1高融点金属層H6および第2高融点金属層H8を配置した3層のクラッド材D3を製造した場合であっても、低融点金属層L6を再融解させることなく、第1高融点金属層H6および第2高融点金属層H8との界面が明瞭で平坦なクラッド材D3を製造することができる。

【0107】
<実施形態4>
次に、実施形態4にかかるクラッド材製造装置40について、図4を用いて説明する。ここでは、主に実施形態3と異なる点について説明する。また、実施形態3と重複する記載は省略する。

【0108】
実施形態3では、第1双ロール32、第2双ロール34および第3双ロール36を上下に配置し、クラッド材D3を上下に搬送したが、実施形態4では3つの双ロールを水平に並べて配置し、クラッド材を水平に搬送する。

【0109】
図4に示すように、実施形態4にかかるクラッド材製造装置40は、第1双ロール42と、第2双ロール44と、第3双ロール46と、低融点金属供給部47と、第1高融点金属供給部48と、第2高融点金属供給部49とを備える。第1双ロール42、第2双ロール44および第3双ロール46の各縦型双ロールは略同じ高さにこの順に並べて配置されている。

【0110】
図4では図示を省略したが、低融点金属層L8や積層体P2は、曲がり部に設けたガイドロールやピンチロール等により、搬送方向を変えて下流側に搬送される。こうすることにより、運転開始のセッティングが容易でかつ、双ロール間に適当な時間差を持たせることができるので、運転の調整も容易となる。

【0111】
第1双ロール42は、溶融状態の低融点金属L7を冷却する冷却ロールであり、第1冷却ロール42aと、第2冷却ロール42bとを備える。第1冷却ロール42aおよび第2冷却ロール42bは互いに水平に並べて配置されている。第2双ロール44は、溶融状態の第1高融点金属H9を冷却する冷却ロールであり、第3冷却ロール44aと、第4冷却ロール44bとを備える。第3冷却ロール44aおよび第4冷却ロール44bは互いに水平に並べて配置されている。第3双ロール46は、溶融状態の第2高融点金属H11を冷却する冷却ロールであり、第5冷却ロール46aと、第6冷却ロール46bとを備える。第5冷却ロール46aおよび第6冷却ロール46bは互いに水平に並べて配置されている。

【0112】
低融点金属供給部47は、溶融状態の低融点金属L7を第1冷却ロール42aと第2冷却ロール42bの間に供給する。第1高融点金属供給部48は、溶融状態の高融点金属H9を第3冷却ロール44aと第4冷却ロール44bの間に供給する。第2高融点金属供給部49は、溶融状態の高融点金属H11を第5冷却ロール46aと第6冷却ロール46bの間に供給する。

【0113】
ここで、溶融状態の低融点金属L7は、第1冷却ロール42aおよび第2冷却ロール42bによって冷却されることで凝固され、凝固状態の板状の低融点金属層L8となる。凝固状態の低融点金属層L8は、第2双ロール44に向けて下流側に搬送される。

【0114】
凝固状態の低融点金属層L8は、第2双ロール44における第4冷却ロール44bの表面に沿うように搬送される。凝固状態の低融点金属層L8は、図4に示す接触開始点X5から第4冷却ロール44bとの接触を開始する。

【0115】
溶融状態の第1高融点金属H9は、第3冷却ロール44aと第4冷却ロール44bの間に供給される。より具体的には、第4冷却ロール44bと接触している凝固状態の低融点金属層L8と、第3冷却ロール44aとの間に供給される。

【0116】
第1高融点金属H9は主に第3冷却ロール44a側から冷却されて凝固し、凝固状態の第1高融点金属層H10となる。凝固状態の第1高融点金属層H10は凝固状態の低融点金属層L8の上に積層される。これにより、第1高融点金属層H10と低融点金属層L8が積層された凝固状態の板状の積層体P2が製造される。凝固状態の積層体P2は、第3双ロール46に向けて下流側に搬送される。

【0117】
凝固状態の積層体P2は、第3双ロール46における第5冷却ロール46aの表面に沿うように搬送される。凝固状態の積層体P2は、図4に示す接触開始点X6から第5冷却ロール46aとの接触を開始する。

【0118】
溶融状態の第2高融点金属H11は、第5冷却ロール46aと第6冷却ロール46bの間に供給される。より具体的には、第5冷却ロール46aと接触している凝固状態の積層体P2における低融点金属層L8と、第6冷却ロール46bとの間に供給される。

【0119】
第2高融点金属H11は主に第6冷却ロール46b側から冷却されて凝固し、凝固状態の第2高融点金属層H12となる。凝固状態の第2高融点金属層H12は凝固状態の積層体P2における低融点金属層L8の上に積層される。これにより、第1高融点金属層H10と低融点金属層L8と第2高融点金属層H12とが積層された板状のクラッド材D4が製造される。

【0120】
実施形態3と同様に、第1高融点金属供給部48は、溶融状態の第1高融点金属H9を凝固状態の低融点金属層L8に対して冷却区間C5で接触するように供給する。また、第2高融点金属供給部49は、溶融状態の第2高融点金属H11を凝固状態の低融点金属層L8に対して冷却区間C6で接触するように供給する。このような構成によれば、温度の高い溶融状態の高融点金属H9、H11が、温度の低い凝固状態の低融点金属層L8に接触しても、低融点金属層L8は第4冷却ロール44b、第5冷却ロール46aによって冷却された状態にあるため、高融点金属H9、H11からの熱を受けても溶融しない。これにより、低融点金属層L8の凝固状態を維持しながら、溶融状態の高融点金属H9、H11を冷却して凝固させることができる。低融点金属L7を先に冷却して凝固させた場合でも、界面が平坦かつ明瞭で、実用性の高いクラッド材D4を製造することができる。

【0121】
また、複数の双ロールを横型配置することにより、実施形態2と同様の横型配置による効果すなわち、レイアウト自由度が高まる。また、新たな双ロールを水平配置すれば、4層以上のクラッド材を製造する装置として組立可能であるため、クラッド材の多層化を容易に行うことができる。さらに、図1に示すような縦型配置に比べて、凝固させた低融点金属層を次の双ロールに供給する際に容易に供給(挿入)することができ、そのセッティングも容易である。さらに、速度調整も容易に行うことができ、縦型配置に比べて作業性を向上させることができる。

【0122】
また、いくつかの双ロールを基台にのせて、取付け、取り外し並びに水平方向への移動を容易にすれば、製品仕様に応じて製造ラインを容易に変更できるため、クラッド層数を増やしたり変更することが容易になる

【0123】
(実施形態5)
実施形態5のクラッド材製造装置について説明する。実施形態5は、主に実施形態1と異なる点について説明する。また実施形態5では、実施形態1と重複する記載は省略する。

【0124】
図5は、実施形態5のクラッド材製造装置50の概略構成を示す図である。

【0125】
実施形態1では、2つの双ロールを設け、合計4つの冷却ロールにより冷却を行ったが、実施形態5では、合計3つの冷却ロールによって2つの双ロールを構成して冷却を行う。

【0126】
図5に示すように、クラッド材製造装置50は、第1双ロール52と、第2双ロール54と、低融点金属供給部55と、高融点金属供給部56とを備える。

【0127】
第1双ロール52は、溶融状態の低融点金属L9を冷却する冷却ロールであり、第1冷却ロール57と、第2冷却ロール58とを備える。第2双ロール54は、溶融状態の高融点金属H13を冷却する冷却ロールであり、第1冷却ロール57と、第3冷却ロール59とを備える。

【0128】
第1冷却ロール57は、第1双ロール52と第2双ロール54の両方を構成する冷却ロールである。すなわち、第1冷却ロール57は、第1双ロール52と第2双ロール54の両方を兼ねる。第1冷却ロール57の径は、第2冷却ロール58および第3冷却ロール59の径よりも大きく設定されている。このように、実施形態5のクラッド材製造装置50として、いわゆる異径ロール方式のクラッド材製造装置が採用されている。

【0129】
第1双ロール52に隣接する位置には低融点金属供給部55が設けられている。低融点金属供給部55は、第1冷却ロール57と第2冷却ロール58の間に溶融状態の低融点金属L9を供給する。

【0130】
第2双ロール54に隣接する位置には高融点金属供給部56が設けられている。高融点金属供給部56は、第1冷却ロール57と第3冷却ロール59の間に溶融状態の高融点金属H13を供給する。

【0131】
上述した構成を有するクラッド材製造装置50によるクラッド材の製造方法の一例について、図5を用いて説明する。

【0132】
(工程1:クラッド材製造装置50の準備)
まず、クラッド材製造装置50を準備する。具体的には、図5に示したクラッド材製造装置50を設ける。

【0133】
(工程2:溶融状態の低融点金属の供給・冷却)
次に、低融点金属供給部55から第1冷却ロール57と第2冷却ロール58の間に溶融状態の低融点金属L9を供給する。溶融状態の低融点金属L9は、第1冷却ロール57と第2冷却ロール58に接触することで両側(主に第1冷却ロール57側)から冷却されて凝固する。凝固した板状の低融点金属層L10が製造される。凝固した板状の低融点金属層L10は、第1冷却ロール57の表面に沿って第1冷却ロール57に密着しながら下流側に搬送される。

【0134】
凝固状態の低融点金属層L10は、第1冷却ロール57に接触した状態において、第1冷却ロール57によって冷却された状態にある(特に冷却区間C7において)。

【0135】
(工程3:溶融状態の高融点金属の供給・冷却)
高融点金属供給部56から第3冷却ロール59と低融点金属層L10の間に溶融状態の高融点金属H13を供給する。これにより、溶融状態の高融点金属H13は主に第3冷却ロール59側から冷却されて凝固し、凝固状態の高融点金属H14となる。凝固状態の高融点金属H14は凝固状態の低融点金属層L10の上に積層される。これにより、低融点金属層L10と高融点金属H14が積層された板状のクラッド材D5が製造される。

【0136】
凝固状態の低融点金属層L10は、溶融状態の高融点金属H13と接触する際にも、常に第1冷却ロール57によって冷却された状態にある(特に冷却区間C7において)。このような構成によれば、温度の高い溶融状態の高融点金属H13が温度の低い凝固状態の低融点金属層L10に接触しても、低融点金属層L10は第1冷却ロール57によって冷却された状態にあるため、高融点金属H13からの熱を受けても溶融しない。これにより、低融点金属層L10の凝固状態を維持しながら、溶融状態の高融点金属H13を冷却して凝固させることができる。低融点金属L9を先に冷却して凝固させた場合でも、界面が平坦かつ明瞭で、実用性の高いクラッド材D5を製造することができる。

【0137】
上述したように、実施形態5のクラッド材製造方法は、高融点金属層H14と低融点金属層L10とが積層されたクラッド材D5を製造するクラッド材製造方法である。当該製造方法は、双ロールを構成する第1冷却ロール57と第2冷却ロール58の間に溶融状態の低融点金属L9を供給することにより、第1冷却ロール57および第2冷却ロール58により冷却して凝固させ、板状の低融点金属層L10を形成するステップを含む。当該製造方法はさらに、凝固した板状の低融点金属層L10を、第1冷却ロール57に沿わせながら、第2冷却ロール58の下流において第1冷却ロール57とともに双ロールを構成する第3冷却ロール59の間に供給するステップを含む。当該製造方法はさらに、第1冷却ロール57と接触した状態の板状の低融点金属層L10と第3冷却ロール59の間に溶融状態の高融点金属H13を供給し、第3冷却ロール59と低融点金属層L10の間で高融点金属H13を冷却して凝固させ、凝固した板状の高融点金属層H14を低融点金属層L10に積層して形成するステップを含む。

【0138】
また、実施形態5のクラッド材製造装置50は、高融点金属層H14と低融点金属層L10とが積層されたクラッド材D5を製造するクラッド材の製造装置である。クラッド材製造装置50は、第1冷却ロール57を備える。クラッド材製造装置50はさらに、第1冷却ロール57とともに双ロールを構成する第2冷却ロール58を備える。クラッド材製造装置50はさらに、第2冷却ロール58の下流側において第1冷却ロール57とともに双ロールを構成する第3冷却ロール59を備える。クラッド材製造装置50はさらに、第1冷却ロール57と第2冷却ロール58の間に溶融状態の低融点金属L9を供給する低融点金属供給部55を備える。クラッド材製造装置50はさらに、第1冷却ロール57に沿って搬送される凝固された板状の低融点金属層L10と第3冷却ロール59との間に、溶融状態の高融点金属H13を供給する高融点金属供給部56を備える。

【0139】
このような製造装置および製造方法によれば、第3冷却ロール59と低融点金属層L10の間で高融点金属H13を冷却する際に、第1冷却ロール57に接触した状態の低融点金属層L10に対して溶融状態の高融点金属H13を供給することにより、第1冷却ロール57によって冷却された状態の低融点金属層L10に接触させながら高融点金属H13を冷却している。これにより、低融点金属層L10が高融点金属H13の熱によって溶融することを防止しながら、高融点金属H13を冷却して低融点金属層L10に積層することができる。低融点金属L9を先に冷却して凝固させた場合でも、界面が平坦かつ明瞭で、実用性の高いクラッド材D5を製造することができる。

【0140】
また、本異径ロール方式によれば、冷却力に優れるとともに、冷却ロールのレイアウトを調整しやすい。また、鋳造装置として安価に構成することができる。さらに、低融点金属層L10を第1冷却ロール57に終始沿わせながら搬送することができるため、他の実施形態の構成に比べて低融点金属層L10の搬送および次の双ロールへの挿入を容易に行うことができる。

【0141】
<参考例1>
次に、参考例1によるクラッド材製造装置について、図6を用いて説明する。

【0142】
図6に示すように、参考例1によるクラッド材製造装置60は、第1双ロール62と、第2双ロール64と、高融点金属供給部66と、低融点金属供給部68とを備える。

【0143】
第1双ロール62は、溶融状態の高融点金属H15を冷却する冷却ロールであり、第1冷却ロール62aと、第2冷却ロール62bとを備える。第2双ロール64は、溶融状態の低融点金属L11を冷却する冷却ロールであり、第3冷却ロール64aと、第4冷却ロール64bとを備える。

【0144】
高融点金属供給部66は、溶融状態の高融点金属H15を第1冷却ロール62aと第2冷却ロール62bの間に供給する。低融点金属供給部68は、溶融状態の低融点金属L11を第3冷却ロール64aと第4冷却ロール64bの間に供給する。

【0145】
溶融状態の高融点金属H15は、第1冷却ロール62aおよび第2冷却ロール62bによって冷却されることで、凝固状態の板状の高融点金属層H16となる。凝固状態の高融点金属層H16は、第2双ロール64における第3冷却ロール64aと第2冷却ロール64bの間に搬送される。

【0146】
溶融状態の低融点金属L11は、第3冷却ロール64aと第4冷却ロール64bの間において、凝固状態の高融点金属層H16を挟むように供給される。溶融状態の低融点金属L11は、第3冷却ロール64aと第4冷却ロール64bによって両側から冷却されて凝固し、凝固状態の低融点金属層L12となる。凝固状態の低融点金属層L12は凝固状態の高融点金属層H16の上に積層される。これにより、低融点金属層L12と高融点金属層H16が積層された板状のクラッド材が製造される。なお、上記では高融点金属を先に凝固させて低融点金属を後で凝固させる場合について説明したが、これに限らず、低融点金属を先に凝固させて高融点金属を後で凝固させてもよい。ただしこの場合は低融点金属層の表面が再融解するため、界面が不安定で平坦にはならない。

【0147】
また、複数の双ロールを横型配置することにより、実施形態2と同様の横型配置による効果すなわち、レイアウト自由度が高まる。また、新たな双ロールを水平配置すれば、4層以上のクラッド材を製造する装置として組立可能であるため、クラッド材の多層化を容易に行うことができる。さらに、図1に示すような縦型配置に比べて、凝固させた高融点金属層を次の双ロールに供給する際に容易に供給(挿入)することができ、そのセッティングも容易である。さらに、速度調整も容易に行うことができ、縦型配置に比べて作業性を向上させることができる。
更に、いくつかの双ロールを基台にのせ、取付け、取り外し並びに水平方向への移動を容易にすれば、製品仕様に応じて製造ラインを容易に変更できるため、クラッド層数を増やしたり変更することが容易になる。

【0148】
また、複数の双ロールにおける冷却ロールを同径のロールで構成しておけば、ライン速度の調整や、部品の交換等のメンテナンスも効率化できる。

【0149】
<クラッド材>
次に、上述したクラッド材製造装置およびクラッド材製造方法により製造したクラッド材に関連する実施例と、その他の装置・方法により製造されるクラッド材に関連する比較例及び参考例について、図7A-図11Cを用いて説明する。

【0150】
(参考例2)
図7Aは、金属単板を鋳造する鋳造装置(双ロールキャスター)70の一例を示す。図7B-7Dはそれぞれ、図7Aに示す鋳造装置70により冷却して製造した金属単板の構造を示す。
参考例2における金属単板の製造条件は以下の通りである。
・冷却ロールの材質:銅
・冷却ロールの周速:30m/min
・冷却ロールのロール圧:50N/mm
・金属の材質:アルミニウム合金

【0151】
図7Aに示す鋳造装置70は、双ロールを構成する第1冷却ロール72および第2冷却ロール74と、金属供給部76とを備える。第1冷却ロール72および第2冷却ロール74は、金属供給部76から供給される溶融状態の金属77を冷却する。金属供給部76は、第1冷却ロール72と第2冷却ロール74の間に溶融状態の金属77を供給する。

【0152】
溶融状態の金属77は第1冷却ロール72および第2冷却ロール74によって両側から冷却されて凝固し、凝固状態の板状の金属層78となる。

【0153】
図7Bは、図7AのA部における金属層78の表面の外観(C方向から見た場合)を示し、図7Cは、図7AのB部における金属層78の厚み方向の断面組織を示す(偏光モードで撮影した写真)。図7Dは、図7Cの断面組織を模式化した図である。

【0154】
図7Bに示すように、第1冷却ロール72および第2冷却ロール74によって両側から冷却された金属層78の表面は概ね平坦であることがわかる。

【0155】
図7C、7Dに示すように、金属層78の厚み方向の断面組織は、厚み方向における最外層にチル晶を有し、その内側に等軸晶を有し、中央に粒状晶を有していることがわかる。金属77を第1冷却ロール72と第2冷却ロール74により両側から急冷することにより、このような断面組織が形成される。すなわち、金属層78は、その断面が両表面から反対側の表面に向かって冷却速度の低下に応じて晶出した結晶が配列された「鋳造まま組織」である。「鋳造まま組織」とは、鋳造(冷却を含む)工程のみで形成された組織をいい、鋳造後に圧延等の後工程がなされたものは含まない。また「チル晶」とは、金属板表面及び近傍に形成される急冷による小径の結晶組織をいう。

【0156】
なお、以下の実施例および比較例における共通の製造条件は、特記しない限り、以下の通りである。
冷却ロールの材質:銅
冷却ロールの周速:30m/min
冷却ロールのロール圧:50N/mm
低融点金属の材質:アルミニウム合金A4045
低融点金属の注湯温度(溶融状態):620℃
(アルミニウム合金A4045の融点:液相線温度:595℃、固相線温度:575℃)
第1、第2高融点金属の材質:アルミニウム合金A3003
第1、第2高融点金属の注湯温度(溶融状態):680℃
(アルミニウム合金A3003の融点:液相線温度:655℃、固相線温度:628℃)
比較例3においては、
低融点金属の材質:アルミニウム合金AC4C
低融点金属の注湯温度(溶融状態):640℃
(アルミニウム合金AC4Cの融点:液相線温度:610℃、固相線温度:575℃)

【0157】
(比較例1)
図8Aは、比較例1によるクラッド材製造装置90の一例を示し、図8Aでは、1層の金属層を冷却する状態が示される。図8Bは、図8AのA部における金属板の表面の外観(D方向から見た場合)を示し、図8Cは、図8BのB部における拡大斜視図を示す。図8Dは、図8Aと同じクラッド材製造装置90を用いて3層のクラッド材D7を製造する状態を示す。図8Eは、図8DのC部におけるクラッド材D7の厚み方向の断面組織を示し、図8Fは、図8EのD部におけるクラッド材D7の拡大図を示し、図8Gは、図8Eのクラッド材D7の断面組織を示す模式図である。

【0158】
図8A、8Dに示すクラッド材製造装置90は、第1双ロール92としての第1冷却ロール92aおよび第2冷却ロール92bと、第3冷却ロール94と、第4冷却ロール96と、低融点金属供給部98と、第1高融点金属供給部100と、第2高融点金属供給部102と、第1スクレイパー104と、第2スクレイパー106とを備える。
スクレイパーとは、元端が回転自在に固定され、他端が、ロール上に形成された凝固層又は半凝固層に一定の力で当たるよう賦勢(付勢)されているものをいう。他端は通常、無機繊維製不織布等で覆われている。

【0159】
第1双ロール92は、図8Dに示すように、第1冷却ロール92aおよび第2冷却ロール92bにより、低融点金属供給部98から供給される溶融状態の低融点金属L30を冷却する。

【0160】
第3冷却ロール94は、図8A、8Dに示すように、第1高融点金属供給部100から供給される溶融状態の第1高融点金属H17を冷却する。溶融状態の第1高融点金属H17は冷却されることで凝固し、凝固状態の第1高融点金属層H18となる。第1スクレイパー104は、第1高融点金属供給部100に貯留されている溶融状態の高融点金属H17が下流側に流れないように仕切る。第1スクレイパー104の先端は、凝固状態の第1高融点金属層H18の上に位置する半凝固状態の固相率の低い金属層およびその上の溶融状態の金属層を掻き取るように、第1高融点金属層H18の表面に接触する。

【0161】
第4冷却ロール96は、図8Dに示すように、第2高融点金属供給部102から供給される溶融状態の第2高融点金属H19を冷却する。溶融状態の第2高融点金属H19は冷却されることで凝固し、凝固状態の第2高融点金属層H20となる。第2スクレイパー106は、第1スクレイパー104と同様に機能するものである。

【0162】
図8B、8Cに示すように、第3冷却ロール94によって冷却された凝固状態の第1高融点金属層H18の表面は平坦ではなく、複数の凹凸が形成されていることがわかる。これらの凹凸は、第1スクレイパー104との接触によって形成されるものである。

【0163】
図8Eに示すように、第1高融点金属層H18、低融点金属層L17および第2高融点金属層H20によるクラッド材D7において、低融点金属層L17と、高融点金属層H18、H20との界面I1、I2は明瞭だが平坦でなく大きく波打っていることがわかる。これは、高融点金属層H18、H20のそれぞれにスクレイパー104、106が接触することによって生じるものである。

【0164】
図8Fの写真に示すように、低融点金属層L17と第2高融点金属層H20の境界部において、低融点金属層L17に針状または棒状(粒状ではない)長さが5μm以上の共晶Siが存在していることが分かる。第3冷却ロール94、第4冷却ロール96に直接接していないため、直接接触して冷却される場合に比べて、冷却速度が遅かったためである。

【0165】
図8Gの模式図に示すように、第1高融点金属層H18と低融点金属層L17の界面I1において、第1高融点金属層H18は外側(第3冷却ロール94と接触する側)から順にチル晶、等軸晶、粒状晶が存在していることが分かる。また、低融点金属層L17は外側から順に粒状晶、等軸晶が存在していることが分かる。このように、比較例1によるクラッド材D7では、第1高融点金属層H18と低融点金属層L17の界面I1において、第1高融点金属層H18と低融点金属層L17のいずれにもチル晶が存在していない。これは、界面I1における第1高融点金属層H18と低融点金属層L17の面がともに冷却ロールによって急冷されていないためである。

【0166】
(比較例2)
図9Aは、比較例2によるクラッド材製造装置110の一例を示す。図9Bは、図9Aに示すクラッド材製造装置110により製造したクラッド材D8の厚み方向の断面組織を示す拡大図であり、図9Cは、同クラッド材D8の厚み方向の断面組織を示す模式図である。

【0167】
図9Aに示すクラッド材装置110は、双ロールを構成する第1冷却ロール112aおよび第2冷却ロール112bと、高融点金属供給部114と、スクレイパー116と、低融点金属供給部118とを備える。

【0168】
第1冷却ロール112aは、高融点金属供給部114から供給される溶融状態の高融点金属H21を冷却する。高融点金属供給部114は、第1冷却ロール112aの上に溶融状態の高融点金属H21を供給する。溶融状態の高融点金属H21は第1冷却ロール112aによって片側から冷却されて凝固し、凝固状態の板状の高融点金属層H22となる。比較例1と同様に、スクレイパー116が設けられている。

【0169】
第2冷却ロール112bは、低融点金属供給部118に貯留されている溶融状態の低融点金属層L18を冷却する。低融点金属供給部118は、第1冷却ロール112aと第2冷却ロール112bの間に溶融状態の低融点金属層L18を供給する。

【0170】
溶融状態の低融点金属層L18は、凝固状態の高融点金属層H22と第2冷却ロール112b(主に第2冷却ロール112b)によって冷却されて凝固し、凝固状態の低融点金属層L19となる。凝固状態の低融点金属層L19は凝固状態の高融点金属層H22の上に積層されることにより、クラッド材D8が製造される。

【0171】
図9Bに示すように、クラッド材D8における高融点金属層H22と低融点金属層L19の界面I5は明瞭だがギザギザ状になっており平坦でないことがわかる。これは主に、高融点金属層H22の表面にスクレイパー116が接触することによるものである。

【0172】
図9Cに示すように、高融点金属層H22の厚み方向の断面組織は、外側(第1冷却ロール112aによって冷却される側)から順にチル晶、等軸晶、粒状晶であることがわかる。また、低融点金属層L19の厚み方向の断面組織は、外側(第2冷却ロール112bによって冷却される側)から順にチル晶、等軸晶、粒状晶であることがわかる。すなわち、高融点金属層H22は、その断面がチル晶を有する面(外側)から反対側の面(内側)に向かって冷却速度の低下に応じて晶出した結晶(チル晶、等軸晶、粒状晶)が配列されている。また、低融点金属層L19は、その断面がチル晶を有する面(外側)から反対側の面(内側)に向かって冷却速度の低下に応じて晶出した結晶(チル晶、等軸晶、粒状晶)が配列されている。

【0173】
(比較例3)
図20Aは、比較例3によるクラッド材製造装置200の一例を示し、この方法により製造した3層クラッド材の断面組織の例を図20B、20Cに示す。比較例3では、上段の双ロールにより低融点金属(アルミニウム合金AC4C又はアルミニウム合金A4045)を先に冷却して凝固させて低融点金属層(板)にし、下段の双ロールにより高融点金属(アルミニウム合金A3003)溶湯を接触させて冷却して凝固させて、低融点金属層の両面に積層している。図20B、20Cに示すように、低融点金属層(アルミニウム合金AC4C、アルミニウム合金A4045)が再融解しているため、高融点金属層(アルミニウム合金A3003)との界面は明瞭だが曲線状に波打っており平坦ではなく、各層の厚みも不均一であった。

【0174】
(実施例1)
図10Aは、実施例1によるクラッド材製造装置120を示す。図10Bは、図10Aに示すクラッド材製造装置120により製造したクラッド材D9の厚み方向の断面組織を示す写真であり、図10Cは、同クラッド材D9の厚み方向の断面組織を示す模式図である。図10Dは、クラッド材製造装置120により製造した別のクラッド材D10の厚み方向の断面組織を示す模式図である。なお、第1冷却ロール122a、第2冷却ロール122bのロール径は200mmであり、第3冷却ロール124a、第4冷却ロール124bのロール径は300mmであった。

【0175】
図10Aに示すクラッド材装置120は、第1双ロール122と、第2双ロール124と、低融点金属供給部126と、高融点金属供給部128とを備える。

【0176】
第1双ロール122を構成する第1冷却ロール122aおよび第2冷却ロール122bは、低融点金属供給部126から供給される溶融状態の低融点金属層L20を冷却する。溶融状態の低融点金属層L20は第1冷却ロール122aおよび第2冷却ロール122bによって両側から冷却されて凝固し、凝固状態の板状の低融点金属層L21となる。

【0177】
第2双ロール124を構成する第3冷却ロール124aおよび第4冷却ロール124bは、高融点金属供給部128に貯留されている溶融状態の高融点金属H23を冷却する。高融点金属供給部128は、第3冷却ロール124aと、第4冷却ロール124bに接触している状態の低融点金属層L21(接触開始点X7~キス部Y7)との間に溶融状態の高融点金属H23を供給する。溶融状態の高融点金属H23は、凝固状態の低融点金属層L21と第3冷却ロール124a(主に第3冷却ロール124a)によって冷却されて凝固し、凝固状態の高融点金属層H24となる。凝固状態の高融点金属層H24は凝固状態の低融点金属層L21の上に積層されることにより、クラッド材D9が製造される。接触開始点X7からキス部Y7の間の弧長は120mmであった。

【0178】
図10Bに示すように、クラッド材D9における高融点金属層H24と低融点金属層L21の界面I6は明瞭で直線状であって平坦であることがわかる。これは、クラッド材製造装置120にスクレイパーを設けていないことと、溶融状態の高融点金属H23が、第4冷却ロール124bによって冷却されている状態の低融点金属層L21と接触しながら冷却されることにより、低融点金属層L21が高融点金属H23の熱を受けても溶融しないことによるものである。

【0179】
図10Cに示すように、高融点金属層H24の厚み方向の断面組織は、外側(第3冷却ロール124aによって冷却される側)から順に、チル晶P、等軸晶Q、粒状晶R、チル晶Pであることがわかる。すなわち、クラッド材D9において、高融点金属層H24は、その断面がチル晶を有する面(外側)から反対側の面(内側)に向かって冷却速度の低下に応じて晶出した結晶(チル晶P、等軸晶Q、粒状晶R)が配列された鋳造まま組織である。また、低融点金属層L21の厚み方向の断面組織は、外側から順に、チル晶P、等軸晶Q、粒状晶R、等軸晶Q、チル晶Pであることがわかる。すなわち、クラッド材D9において、低融点金属層L21は、その断面が両表面から対向するそれぞれの面に向かって(それぞれの面に対して略垂直方向の)冷却速度の低下に応じて晶出した結晶(チル晶P、等軸晶Q、粒状晶R)が配列された鋳造まま組織である。

【0180】
このように、高融点金属層H24と低融点金属層L21の界面I6において、低融点金属層L21側にチル晶Pが存在することがわかる。さらに、界面I6において低融点金属層L21は第1冷却ロール122aによって急冷されており、また高融点金属層H24は低融点金属層L21と接触することで、低融点金属層L21を介して第4冷却ロール124bによって急冷されているため、図10Cに示すように界面I6において、高融点金属層H24側にチル晶Pが存在する場合もある。このように、一方の金属層がもう一方の金属層を介して冷却ロールによって冷却される場合には、急冷されるかどうか、すなわちチル晶が形成されるかどうかは、その時の条件によって変わるものである。

【0181】
上述したように、クラッド材D9は、低融点金属層L21と高融点金属層H24とを積層したクラッド材である。低融点金属層L21は、その断面が両表面からそれぞれの面に対して略垂直方向の冷却速度の低下に応じて晶出した結晶が配列された鋳造まま組織である。低融点金属層L21はまた、両表面にチル晶Pを有する。高融点金属層H24は、その断面が低融点金属層L21に接する面に反対側の面から、低融点金属層L21に接する面に向かって低融点金属層L21に接する面に対して垂直方向の冷却速度の低下に応じて晶出した結晶が配列された鋳造まま組織である。高融点金属層H24はまた、低融点金属層L21に接する面と反対側の面にチル晶Pを有する。

【0182】
このような構成によれば、低融点金属層L21が先に冷却して凝固された構造であっても、界面が明瞭かつ平坦であり、実用性の高いクラッド材D9とすることができる。また、双ロールキャスターではなく、従来の圧延法によって同じ層構成のクラッド材を製造した場合に比べて、クラッド材D9の組織が微細化されるため、強度及び靱性に優れている。

【0183】
図10Cに示した実施例1によるクラッド材D9は、前述した実施形態1のクラッド材製造装置2によるクラッド材D1の製造方法と同様の方法により製造されるため、クラッド材D1と同様の断面組織を有する。具体的には、低融点金属層L21と高融点金属層H24とを積層したクラッド材D9において、低融点金属層L21は、厚み方向における中央に粒状晶R、その両側に等軸晶Q、その両側である最も外側にチル晶Pを有する。このように、厚み方向に対称的な組織構造を有する。また、高融点金属層H24は、低融点金属層L21との接合界面の反対側の面からチル晶P、等軸晶Q、粒状晶R、チル晶Pを順に有する。このように、厚み方向に非対称的な組織構造を有する。

【0184】
このような構成によれば、クラッド材D1と同様に、高融点金属層H24よりも先に低融点金属層L21が冷却されて製造されるため、低融点金属層L21を厚くしながらも、界面I6が平坦であり明瞭なクラッド材D9とすることができる。これにより、実用性の高いクラッド材D9を製造することができる。

【0185】
なお、図10Cでは、高融点金属層H24における低融点金属層L21と接触する側の面にチル晶Pが存在する場合について説明したが、この位置にチル晶Pが存在するかどうかはその時の製造条件によって異なる。具体的には、図10Dに示すようなクラッド材D10が鋳造される場合もある。図10Dに示すクラッド材D10は、図10Cに示すクラッド材D9と比較して、高融点金属層H24における低融点金属層L21と接触する側の面にチル晶Pが形成されていない点のみが異なる。

【0186】
また、前述した図10Cのクラッド材D9に示すような、高融点金属層H24における低融点金属層L21と接触する側の面に存在するチル晶Pは、図10Aに示すスクレイパー116を用いた方式(スクレイパー方式)では形成されることはない(図10C参照)。図10Cに示すように高融点金属層H24における低融点金属層L21と接触する側の面にチル晶Pが形成され、界面が明瞭且つ平坦であれば、そのクラッド材D9がスクレイパー方式で製造されたものではなく、図1、図2、図3、図4、図5、図10Aに示すような製造方法によって製造されたものと推定することができる。

【0187】
(実施例2)
図11Aは、図3に示した実施形態3のクラッド材製造装置30により製造したクラッド材D3のE部(図3)における凝固状態の低融点金属層L6の表面の外観(F方向から見た場合)を示し、図11Bは、図3のG部におけるクラッド材D3の厚み方向の断面組織を示す。図11Cは、図11BのA部の拡大図を示し、図11Dは、図11BのB部の拡大図を示し、図11Eは、図11Bのさらなる拡大図を示し、図11Fは、図11BのC部の拡大図を示し、図11Gは、図11BのD部の拡大図を示す。図11Hは、実施形態3のクラッド材製造装置30により製造したクラッド材D3の厚み方向の断面組織を示す模式図であり、図11Iは、実施形態3のクラッド材製造装置30により製造した別のクラッド材D12の厚み方向の断面組織を示す模式図である。なお、第1冷却ロール32a、冷却ロール32bのロール径は200mm、第3冷却ロール34a、第4冷却ロール34bのロール径は300mm、第5冷却ロール36a、第6冷却ロール36bのロール径は300mm、C3の弧長は120mm、C4の弧長は120mmであった。

【0188】
図11Aに示すように、第1双ロール32により冷却された凝固状態の低融点金属層L6の表面外観は筋等が入っておらず概ね平坦であることがわかる。これは、双ロールのみでスクレイパーを設けておらず、冷却ロールにのみ接触させて冷却しているためである。

【0189】
図11Bに示すように、クラッド材D3の厚み方向の断面組織において、低融点金属層L6と、高融点金属層H6、H8との界面I3、I4は、明瞭であり、直線状であって平坦であった。これは、低融点金属層L6の表面が再融解していないためである。

【0190】
図11Eに示すように、クラッド材D3における第1高融点金属層H6と低融点金属層L6の境界部において、図8Fに示すような共晶Siが存在していないことがわかる。

【0191】
図11Hに示すように、クラッド材D3の第1高融点金属層H6および低融点金属層L6は、図10Cに示した高融点金属層H24および低融点金属層L21と同配列の断面組織を有する。図11Hに示すクラッド材D3はさらに、第1高融点金属層H6が積層される側とは反対側の低融点金属層L6の表面上に積層された第2高融点金属層H8をさらに備える。第2高融点金属層H8は、その断面が低融点金属層L6に接する面に反対側の面から、低融点金属層L6に接する面に向かって冷却速度の低下に応じて晶出した結晶(チル晶P、等軸晶Q、粒状晶R)が配列された鋳造まま組織である。

【0192】
このような構成によれば、3層のクラッド材D3においても、2層のクラッド材D9と同様の効果を奏することができる。すなわち、圧延法により製造されたクラッド材に比べて、組織が微細化されて強度の高いクラッド材D3とすることができる。

【0193】
図11Hに示すクラッド材D3において、高融点金属層H6、H8が低融点金属層L6と接する面にチル晶を有さない場合もある(図11Iのクラッド材D12参照)。

【0194】
図11H、11Iでは、第2高融点金属層H8が、低融点金属層L6の外側に接合されているが、このような場合に限らず、低融点金属層L6に対して反対側、すなわち第1高融点金属層H6の外側に接合されてもよい。このような場合であっても、第2高融点金属層H8は、第1高融点金属層H6との接合界面の反対側の面から順に、チル晶P、等軸晶Q、粒状晶R(およびチル晶P)を有し、厚み方向に非対称な組織構造を有する。このような構造でも、上記クラッド材D3、D12と同様の効果を奏することができる。

【0195】
図7A-図11Iに示したクラッド材の構造は亜共晶合金の場合であり、過共晶合金の場合は異なる。亜共晶の場合には、ロール接触面から板厚の中央に向かいチル晶、柱状晶、等軸晶、粒状晶(または粒状晶と共晶の混在)と変わる。ただし、上記の結晶が全て存在するわけではなく、また境界が明確に存在しない場合もある。また、各結晶の存在する厚さに関しては、板厚方向で対称になるとは限らない。しかし、チル晶、柱状晶、等軸晶、粒状晶(または粒状晶と共晶の混在)のうち、どれかが無く場合はあるが、その順番が変わることは無い。

【0196】
すなわち、亜共晶の場合には、低融点金属層L21は、両側にチル晶を有するが、チル晶の内側には柱状晶、等軸晶、粒状晶のうちの少なくとも1つを外側から順に有する。また、高融点金属層H24は、少なくとも低融点金属層L21との接合界面とは反対側の面にチル晶を有するが、チル晶の内側には柱状晶、等軸晶、粒状晶のうちの少なくとも1つを外側から順に有する。このような場合であっても、上記クラッド材D9と同様の効果を奏することができる。

【0197】
一方で、過共晶の場合には、例えばAl—Si合金であれば、ロール接触面近傍に微細なα—Al領域、粒状の初晶Siと共晶Siが存在し、次に共晶中にα—Alと初晶Siが混在した状態となる。α—Al、初晶Si、共晶Siはロール面から離れるに従い寸法が大きくなっていく。共晶Siはロールから離れるに従い粗大になるだけではなく針状になる場合もある。

【0198】
次に、図12-15Bに、クラッド材の断面組織図を示す。

【0199】
図12は、10m/分以上の高速ロールキャスター法で鋳造した亜共晶Al-3%Si合金の断面組織図を示す。図12に示すように、チル晶、(柱状晶)、等軸晶、粒状晶、等軸晶、(柱状晶)、チル晶の順に並んでいることが分かる。

【0200】
図13は、10m/分以上の高速ロールキャスター法で鋳造した過共晶Al—20%Si合金の断面組織図を示す。図13に示すように、α—Al,初晶Si,共晶Siはロール面から離れるに従い寸法は大きくなっていくことが分かる。

【0201】
図14Aは、実施形態1のクラッド材製造装置2により製造した2層のクラッド材D1の厚み方向の断面組織図を示す(写真は、左右が逆に写っている)。図14Aに示す例では、クラッド材D1の外側にさらに層を設けている(最外層Rとする)。図14Bは、図14AのA部の拡大図を示し、図14Cは、図14AのB部の拡大図を示す。

【0202】
図14A-14Cの例では、低融点金属層L2がアルミニウム合金A4045であり、高融点金属層H2がアルミニウム合金AC4Cである。

【0203】
図14A、図14Bに示すように、低融点金属層L2と、高融点金属層H2との界面I7は概ね平坦であり、明瞭であることがわかる。図14A、図14Cに示すように、高融点金属層H2と最外層Rの界面は概ね明瞭かつ平坦であることが分かる。

【0204】
次に、図15Aは、従来の鋳造装置(横型双ロールキャスター)130を示す。図15Bは、図15Aの鋳造装置130により冷却した凝固状態の金属板Q2の断面組織図を示す。

【0205】
図15Aに示すように、鋳造装置130は、双ロール132を構成する第1冷却ロール132aおよび第2冷却ロール132bと、金属供給部134とを備える。金属供給部134は、第1冷却ロール132aと第2冷却ロール132bの間に溶融状態の金属Q1を供給する。溶融状態の金属Q1は第1冷却ロール132aおよび第2冷却ロール132bによって上下両側から冷却されることにより凝固し、凝固状態の金属板Q2となる。

【0206】
図15Bに示すように、凝固状態の金属板Q2は、厚み方向において最も外側がチル晶で形成され、その内側が傾斜した柱状晶で形成されていることが分かる。図15Bに示す傾斜した柱状晶の外観から分かるとおり、例えば図14Aに示す実施例に基づく金属板とは大きく構造が異なっていることが分かる。

【0207】
次に、従来の圧延法により製造したクラッド材と双ロールキャスターにより製造したクラッド材について、図16A-19Bを用いて説明する。

【0208】
図16Aは、従来の圧延法により製造したクラッド材の厚み方向の断面図である。図16Bは、図16AのA部の拡大図であり、図16Cは、図16AのB部の拡大図であり、図16Dは、図16AのC部の拡大図である。

【0209】
図16A-16Dに示すクラッド材は、厚み方向の中央がアルミニウム合金A3003、その両側がアルミニウム合金A4045で形成されており、全体の厚みが6mmである。

【0210】
図17A、17Bは、図16A-16Dに示したクラッド材を6mmから0.17mmの厚みまで冷間圧延した場合の拡大断面図である。冷間圧延しても、図15Bに示すような傾斜した柱状晶とはなっていないことがわかる。

【0211】
図18Aは、双ロールキャスター法により製造したクラッド材の厚み方向の断面図である。図18Bは、図18AのA部の拡大図であり、図18Cは、図18AのB部の拡大図であり、図18Dは、図18AのC部の拡大図であり、図18Eは、図18AのD部の拡大図であり、図18Fは、図18AのE部の拡大図である。

【0212】
図18A-18Fに示すクラッド材は、厚み方向の中央がアルミニウム合金A3003、その両側がアルミニウム合金A4045で形成されており、全体の厚みが6mmである。

【0213】
図19A、19Bは、図18A-18Fに示したクラッド材を6mmから0.17mmの厚みまで冷間圧延した場合の拡大断面図である。冷間圧延しても、図15Bに示すような傾斜した柱状晶とはなっていないことがわかる。

【0214】
図17A、17Bは、図16A-16Dに示したクラッド材を6mmから0.17mmの厚みまで冷間圧延した場合の拡大断面図である。

【0215】
図18Aは、双ロールキャスター法により製造したクラッド材の厚み方向の断面図である。図18Bは、図18AのA部の拡大図であり、図18Cは、図18AのB部の拡大図であり、図18Dは、図18AのC部の拡大図であり、図18Eは、図18AのD部の拡大図であり、図18Fは、図18AのE部の拡大図である。

【0216】
図18A-18Fに示すクラッド材は、厚み方向の中央がアルミニウム合金A3003、その両側がアルミニウム合金A4045で形成されており、全体の厚みが6mmである。

【0217】
図19A、19Bは、図18A-18Fに示したクラッド材を6mmから0.17mmの厚みまで冷間圧延した場合の拡大断面図である。

【0218】
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では、低融点金属としてアルミニウム合金A4045を用い、高融点金属としてアルミニウム合金A3003を用いる場合について説明したが、このような場合に限らず、その他の種類の純アルミニウム又はアルミニウム合金を用いてもよい。本発明のクラッド材の鋳造においては、アルミニウム、マグネシウム、などの軽合金同士の組み合わせが好ましく特に、同一元素を主とする合金等の組み合わせが好ましい。

【0219】
また上記実施形態では、2層あるいは3層のクラッド材を製造する場合について説明したが、4層以上のクラッド材を製造する場合にも適用可能である。また、3層のクラッド材を製造する場合において、第1高融点金属層と第2高融点金属層を同じ種類の材料(アルミニウム合金A3003)とする場合について説明したが、このような場合に限らず、低融点金属層よりも融点が低ければ、異なる種類の材料を用いてもよい。すなわち、3層以上のクラッド材を製造する場合において、全ての層の金属の種類を変えてもよい。

【0220】
また上記実施形態では、低融点金属を先に冷却する場合について説明したが、本実施形態のクラッド材製造装置によれば、従来のように高融点金属を先に鋳造してクラッド材を製造する場合でも、凝固状態の高融点金属層が再融解することがなく、界面が平坦なクラッド材を製造することができる。例えば、実施形態3のクラッド材製造装置30の場合、第1双ロール32により高融点材料を冷却させて芯材とし、第2双ロール34により低融点材料を冷却させて犠牲材とし、第3双ロール36により、更に融点の低い低融点材料を冷却させてろう材として積層した3層クラッド材を製造することができる。このような3層クラッド材はブレージングシート等に使用可能である。

【0221】
すなわち、上記実施形態によるクラッド材製造装置は、低融点金属を先に冷却してクラッド材を製造するという新たな方式に適用できるだけでなく、高融点金属を先に冷却してクラッド材を製造するという従来の方式にも適用可能であり、有用性が高い。

【0222】
ブレージングシート等に使用する金属板の融点は、心材>犠牲材>ろう材の関係となっているため、従来の方法で、心材、ろう材、犠牲材の順で注湯しクラッド材を製造すると、犠牲材を注湯するときの熱でろう材が再融解することがある。実施形態3のクラッド製造装置30では、冷却ロールに沿わせ冷却するため、ろう材が再融解せずクラッド材を製造することが出来るため、多彩な組み合わせのクラッド材を製造することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0223】
本発明は、クラッド材製造方法、クラッド材製造装置およびクラッド材であれば適用可能である。特に、金属板を素材とする自動車部品、航空機部品などに好適に利用できる。従来、高速双ロールキャスター法では鋳造できなかった構成のクラッド材が提供でき、さらに多彩な組み合わせのクラッド材を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0224】
2、20、30、40、50、60、90、110、120 クラッド材製造装置
4、22、32、42、52、62、72、92、112、122、132 第1双ロール
6、24、34、44、54、64、94、124 第2双ロール
4a、22a、32a、42a、52a、62a、92a、112a、122a、132a 第1冷却ロール
4b、22b、32b、42b、52b、62b、92b、112b、122b、132b 第2冷却ロール
6a、24a、34a、44a、54a、64a、94a、114a、124a 第3冷却ロール
6b、24b、34b、44b、54b、64b、94b、114b、124b 第4冷却ロール
8 誘導ロール
10、26、37、47、55、68、98、118、126 低融点金属供給部
12、28、38、48、56、66、100、114、128 (第1)高融点金属供給部
13 液面
31a、31b、33a、33b、35a、35b 回転軸(ロール軸)
31c、33c、35c 中間位置
36、46 第3双ロール
36a、46a 第5冷却ロール
36b、46b 第6冷却ロール
39、49、102 (第2)高融点金属供給部
70、130 鋳造装置(双ロールキャスター)
76、84、134 金属供給部
P チル晶
Q 等軸昌
R 粒状晶
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7A】
6
【図7B】
7
【図7C】
8
【図7D】
9
【図8A】
10
【図8B】
11
【図8C】
12
【図8D】
13
【図8E】
14
【図8F】
15
【図8G】
16
【図9A】
17
【図9B】
18
【図9C】
19
【図10A】
20
【図10B】
21
【図10C】
22
【図10D】
23
【図11A】
24
【図11B】
25
【図11C】
26
【図11D】
27
【図11E】
28
【図11F】
29
【図11G】
30
【図11H】
31
【図11I】
32
【図12】
33
【図13】
34
【図14A】
35
【図14B】
36
【図14C】
37
【図15A】
38
【図15B】
39
【図16A】
40
【図16B】
41
【図16C】
42
【図16D】
43
【図17A】
44
【図17B】
45
【図18A】
46
【図18B】
47
【図18C】
48
【図18D】
49
【図18E】
50
【図18F】
51
【図19A】
52
【図19B】
53
【図20A】
54
【図20B】
55
【図20C】
56