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明細書 :高分子粒子およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6836260号 (P6836260)
公開番号 特開2018-030917 (P2018-030917A)
登録日 令和3年2月9日(2021.2.9)
発行日 令和3年2月24日(2021.2.24)
公開日 平成30年3月1日(2018.3.1)
発明の名称または考案の名称 高分子粒子およびその製造方法
国際特許分類 C08F   2/10        (2006.01)
A61L  15/00        (2006.01)
A61L  17/00        (2006.01)
C08F  20/26        (2006.01)
FI C08F 2/10
A61L 15/00
A61L 17/00
C08F 20/26
請求項の数または発明の数 13
全頁数 12
出願番号 特願2016-162554 (P2016-162554)
出願日 平成28年8月23日(2016.8.23)
審査請求日 令和元年8月9日(2019.8.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
発明者または考案者 【氏名】鈴木 大介
【氏名】呉羽 拓真
審査官 【審査官】渡辺 陽子
参考文献・文献 特開2003-231648(JP,A)
特表2012-502924(JP,A)
調査した分野 C08F2,6-246
A61L15,17
特許請求の範囲 【請求項1】
ポリアクリル酸メトキシエチルからなる直径が100nm以上、300nm以下のエラストマー粒子が、ゲル状高分子中に分散している複合粒子。
【請求項2】
前記ゲル状高分子が、メタクリル酸オリゴエチレングリコール類であることを特徴とする請求項記載の複合粒子。
【請求項3】
請求項1または2記載の複合粒子におけるエラストマー粒子の製造方法であって、アクリル酸メトキシエチルと水とを混合し、モノマー水溶液を製造する工程と、前記モノマー水溶液を攪拌しながら加熱する工程と、重合開始剤を添加する工程と、を備えることを特徴とする製造方法。
【請求項4】
前記重合開始剤が、過硫酸カリウム、過酸化水素から選択される開始剤であることを特徴とする請求項記載の製造方法。
【請求項5】
前記攪拌する際の速度が、100-300rpmであることを特徴とする請求項または記載の製造方法。
【請求項6】
前記加熱する際の加熱温度が、摂氏60-80度であることを特徴とする請求項または記載の製造方法。
【請求項7】
前記加熱する工程の前工程において、前記モノマー水溶液中の酸素を窒素バブリングにより除去する工程と、をさらに含むことを特徴とする請求項3-6のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1または2記載の複合粒子の製造方法であって、アクリル酸メトキシエチルとメタクリル酸オリゴエチレングリコールと架橋剤と、水を混合し、混合モノマー水溶液を製造する工程と、前記混合モノマー水溶液を攪拌しながら加熱する工程と、重合開始剤を添加する工程と、を備えることを特徴とする製造方法。
【請求項9】
前記重合開始剤が、過硫酸カリウム、過酸化水素から選択される開始剤であることを特徴とする請求項記載の製造方法。
【請求項10】
前記攪拌する際の速度が、100-300rpmであることを特徴とする請求項または記載の製造方法。
【請求項11】
前記加熱する際の加熱温度が、摂氏60-80度であることを特徴とする請求項または記載の製造方法。
【請求項12】
請求項1、2のいずれか一項記載の複合粒子を含むことを特徴とする液体試料中成分の吸着分離用吸着材。
【請求項13】
前記液体試料が血液であることを特徴とする請求項12記載の吸着分離用吸着材。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子粒子に関し、特に、血液適合性を有する高分子微粒子およびその製造方法、さらに当該粒子と異なる高分子との複合粒子、さらにその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子材料は、古くから様々な用途に利用され、各用途に合わせた新たな材料が開発されている。近年では、人工血管、人工皮膚といった医療材料として利用する合成高分子材料の研究が活発に進められている。これらの材料は、生体内で血液と接触させながらの利用が想定されるため、抗血栓性のような生体適合性(血液適合性)が要求される。
【0003】
ポリアクリル酸メトキシエチル(以下、pMEAという。)は、その表面に特定の構造を有する水分子(中間水)を有することで、血漿タンパク質の吸着・変性を抑制し、血小板の粘着・活性化を抑制することが知られており、生体材料への応用が期待されている(非特許文献1、2)。pMEAの生体材料への適用例として、留置チューブ、人工心肺等の被覆剤等への適用が報告されている(例えば、特許文献1-2)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開平5-309131号公報
【特許文献2】特開2003-111836号公報
【特許文献3】特開2004-174204号公報
【0005】

【非特許文献1】Onishio, M.; Shimura, K.; Seita, Y.; Yamashita, S. Design of a New Plasma Separation Membrane by Graft Copolymerization. Radiat. Phys. Chem. 1995, 46, 219-223.
【非特許文献2】Tanaka, M.; Motomura, T.; Ishii, N.; Shimura, K.; Onishi, M.; Mochizuki, A.; Hatakeyama, T.Polym. Int. 2000, 49, 1709-1713.
【非特許文献3】Liu, G.; Qiu, Q.; Shen, W.; An, Z.Aqueous Dispersion Polymerization of 2-Methoxyethyl Acrylate for the Synthesis of Biocompatible Nanoparticles Using a Hydrophilic RAFT Polymer and a Redox Initiator .Macromolecules 2011, 44, 5237-5245.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上記に挙げた報告はいずれも被覆材としての活用例であるが、他の形態、例えば粒子状にして吸着、分離用材料として利用する等、pMEAが有する生体適合性を生かす利用形態の開発が期待される。ただし、pMEAは主鎖が線状に結合する構造を有するため、凝集塊を構成することはあるものの、粒子の製造は困難である。特に、直径の小さい微粒子の取扱いは困難である。
【0007】
また、pMEAの製造方法においても、上記の先行技術をはじめ、従来はラジカル重合やグラフト重合、RAFT重合(非特許文献3)が用いられており、重合過程や製造後の保存においても、例えば1,4-ジオキサンやアセトニトリルのような有機溶媒が必要であった。これは、製造されたpMEAを生体材料、特に血液への接触が予定されるような生体内部で利用する材料に適用する場合に好ましくない。
【0008】
本発明者は、上記課題の解決のため鋭意研究を行い、所定の重合方法により有機溶媒を使用せずにpMEAの粒子が得られること、およびこれを他のポリマーと複合化することで、pMEAの粒子径を小さくし、かつ凝集を抑制し取扱いが容易な複合材料が得られること、さらにこれらの粒子が、特定の官能基を有する化合物を選択的に吸着する吸着能を有することを見出し本発明の完成に至った。即ち本発明は、pMEAを含む材料からなる粒子、および前記粒子がゲル材料と複合化した新規複合材料、およびこれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、請求項1記載の本発明は、ポリアクリル酸メトキシエチルからなる直径が100nm以上、300nm以下のエラストマー粒子が、ゲル状高分子中に分散している複合粒子である。
【0010】
また請求項2記載の本発明は、前記ゲル状高分子が、メタクリル酸オリゴエチレングリコール類であることを特徴とする請求項1記載の複合粒子である。
【0011】
また請求項3記載の本発明は、請求項1または2記載の複合粒子におけるエラストマー粒子の製造方法であって、アクリル酸メトキシエチルと水とを混合し、モノマー水溶液を製造する工程と、前記モノマー水溶液を攪拌しながら加熱する工程と、重合開始剤を添加する工程と、を備えることを特徴とする製造方法である。
【0012】
また請求項4記載の本発明は、前記重合開始剤が、過硫酸カリウム、過酸化水素から選択される開始剤であることを特徴とする請求項3記載の製造方法である。
【0013】
また請求項5 記載の本発明は、前記攪拌する際の速度が、100-300rpmであることを特徴とする請求項3または4記載の製造方法である。
【0014】
また請求項6記載の本発明は、前記加熱する際の加熱温度が、摂氏60-80度であることを特徴とする請求項3または4記載の製造方法である。
【0015】
また請求項7記載の本発明は、前記加熱する工程の前工程において、前記モノマー水溶液中の酸素を窒素バブリングにより除去する工程と、をさらに含むことを特徴とする請求項3-6のいずれか一項記載の製造方法である。
【0017】
また請求項記載の本発明は、請求項1または2記載の複合粒子の製造方法であって、アクリル酸メトキシエチルとメタクリル酸オリゴエチレングリコールと架橋剤と、水を混合し、混合モノマー水溶液を製造する工程と、前記混合モノマー水溶液を攪拌しながら加熱する工程と、重合開始剤を添加する工程と、を備えることを特徴とする製造方法である。
【0018】
また請求項記載の本発明は、前記重合開始剤が、過硫酸カリウム、過酸化水素から選択される開始剤であることを特徴とする請求項記載の製造方法である。
【0019】
また請求項10記載の本発明は、前記攪拌する際の速度が、100-300rpmであることを特徴とする請求項または記載の製造方法である。
【0020】
また請求項11記載の本発明は、前記加熱する際の加熱温度が、摂氏60-80度であることを特徴とする請求項または記載の製造方法である。
【0021】
また請求項12記載の本発明は、請求項1、2のいずれか一項記載の複合粒子を含むことを特徴とする液体試料中成分の吸着分離用吸着材である。
【0022】
また請求項13記載の本発明は、前記液体試料が血液であることを特徴とする請求項12記載の吸着分離用吸着材である。
















【発明の効果】
【0023】
本発明に係る粒子によれば、良好な生体適合性を有しながら、特異吸着能を有し、生体サンプル、血液等において所望の物質を分離し、かつこれを遠心分離等で回収可能な、高分子粒子を提供することができる。また、本発明の別形態に係る粒子の製造方法によれば、前記粒子を水系重合によって効率的に製造することができる。
【0024】
また、本発明の別形態に係る複合粒子によれば、粒径の小さいpMEA粒子によって、高い比表面積を確保しながら、前記粒子が周囲のゲル状高分子に包埋、分散されていることで、凝集を抑制することが可能な複合粒子を提供することができる。また、本発明の別形態に係る複合粒子の製造方法によれば、前記複合粒子を水系重合によって効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】pMEAの構造式である。
【図2】本発明の一例に係る粒子製造方法のフローチャートである。
【図3】pMEA粒子の原子間力顕微鏡(AFM)写真である(モノマー濃度100 mM)。
【図4】pMEA粒子の原子間力顕微鏡(AFM)写真である(モノマー濃度500 mM)。
【図5】pMEA粒子の原子間力顕微鏡(AFM)写真である(モノマー濃度1000 mM)。
【図6】pMEA粒子をヒト血液由来タンパク質に吸着させた結果のグラフである。
【図7】pMEA粒子のハロゲン化合物の単位表面積あたりの吸着量のグラフである。
【図8】pMEA粒子の非ハロゲン化合物の単位表面積あたりの吸着量のグラフである。
【図9】pMEA-ゲル状高分子複合粒子の原子間力顕微鏡(AFM)写真である。
【図10】複合粒子をヒト血液由来タンパク質に吸着させた結果のグラフである。
【図11】複合粒子のハロゲン化合物の単位表面積あたりの吸着量のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る粒子およびその製造方法の実施の形態について説明する。

【0027】
本発明の一形態は、少なくとも表面がpMEAで構成されている微粒子を提供する。図1に、pMEAの構造式を示す。pMEAは、高い血液適合性を示すことで知られる難水溶性エラストマーである。これにより、本発明に係る粒子は、生体材料として好適であり、特に、血液中の成分の吸着分離に利用可能である。

【0028】
本発明の一形態に係る粒子は、その直径に制限はなく、いわゆる当業者が客観的に粒子と認められる状態であれば良いが、本発明が吸着用、薬剤徐放用の担体として利用されるためには、いわゆるサブミクロンオーダー、具体的には、50nmから1000nmの範囲が望ましく、特に100nmから300nmの範囲であると、吸着、担持、回収の際に扱いやすく好適である。

【0029】
本発明の一形態に係る粒子および複合粒子は、所定の置換基を有する物質を選択的に吸着することが可能である。所定の置換基とは例えばハロゲン基であり、ハロゲン基を有する物質の例としては、トレラグリプリン、クアゼパム、アトルバスタチン、臭化カリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、リオチロニンナトリウム、レボチロキシンナトリウム等が挙げられる。また、本発明の一形態に係る粒子は、吸着後の物質を、温度制御によって脱着することが可能である。これにより、所定の薬剤を吸着させて徐放する材料として利用することが可能となる。

【0030】
本発明の一形態に係る粒子を製造する際に、同時に他のモノマー、特にメタクリル酸オリゴエチレングリコールOligo(ethylene glycol)methacrylate、および架橋剤を添加して、共重合することで、本発明に係るpMEA粒子とゲル状高分子の複合粒子を製造することが可能となる。pMEAをゲル状高分子と複合し複合粒子とすることで、pMEA粒子の粒径をより小さくし、比表面積を大きくすることが可能となると同時に、粒子表面の電荷密度を小さくすることができ、より血液適合性を向上させることが可能となる。

【0031】
図2に、本発明の一形態に係る粒子を製造する製造方法のフローチャートを示す。以下フローチャートに従って、本発明の一形態に係る粒子の製造方法について説明する。

【0032】
ステップS100では、本発明の一形態に係る粒子の材料となるアクリル酸メトキシエチル(MEA)の水溶液を製造する。使用するMEAの種類に特に制限はなく、いわゆる当業者が公知のものから任意に選択可能である。また、溶媒に使用する水については、特に制限はなく、いわゆる当業者が公知のものから任意に選択可能であるが、反応の精度を確保するためにはイオン交換水であると望ましい。

【0033】
本発明の一形態に係る粒子を製造する際には、重合の前工程として、水溶液中の酸素を除去するステップS110を行うことも可能である。本発明の一形態に係る粒子の製造にあたり、溶液中の酸素が反応を阻害するのを防止するためである。酸素の除去方法は当業者が公知の技術から任意の方法を選択することが可能であるが、例えば、溶液中に多量の窒素をバブリングする方法が望ましい。

【0034】
ステップS120では、ステップS100で作製したモノマー水溶液を重合するため、加熱と攪拌を行う。加熱温度は、使用する熱重合開始剤の10時間半減期温度またはその周辺温度まで加熱する必要があり、例えば開始剤に過硫酸カリウムを使用した場合であれば、摂氏60度から80度の範囲であると望ましい。攪拌速度は、特に制限はなく、重合され、製造されたポリマー粒子の凝集を防止することができる範囲の速度であれば良い。具体的な速度の例としては、100rpmから300rpmの範囲であると望ましい。

【0035】
ステップS130では、ステップS100で作製したモノマー水溶液に重合開始剤を添加し、重合反応を促す。使用する重合開始剤は、水系重合に使用する熱重合開始剤であれば特に制限はなく、いわゆる当業者が公知の開始剤から任意のものを選択することが可能である。使用する開始剤の例としては、過硫酸カリウム、過酸化水素が好適に適用される。

【0036】
本発明の一形態に係る粒子を製造する際には、重合の後工程として、重合され、製造された粒子を回収する工程ステップS140を行うことも可能である。回収方法は特に制限はないが、例えば遠心分離してから透析処理が好適である。
【実施例】
【0037】
(pMEA粒子の製造)
本発明の一形態に係るpMEA粒子の作製を行った。作製に使用したモノマー2-methoxyethyl acrylate(MEA、purity 98%)、および重合開始剤potassium peroxodisulfate (KPS、95%)は、和光純薬工業株式会社より購入した。また、モノマー水溶液を作成する際に使用した水は、イオン交換水(EYELA、SA-2100E1)を用いた。
【実施例】
【0038】
pMEA微粒子は沈殿重合法、およびソープフリー乳化重合法を適用し合成した。これにより、作製された粒子表面が他の高分子、界面活性剤等で被覆されることを防止する。
【実施例】
【0039】
まず、モノマー水溶液を作成する。モノマーであるMEAを95 mLの水に混合した。この際、製造される粒子の直径を変えるため、モノマー濃度を100 mM (1.301 g)、 500 mM (6.510 g)、 1000 mM (13.014 g) と変化させた。
【実施例】
【0040】
次に、作製したモノマー水溶液をスターラ—を取り付けた四つ口フラスコ(300mL)に入れ、溶存酸素を取り除くため窒素ガスによりバブリングを行った。これと同時に、当該モノマー水溶液を、250 rpmの撹拌速度で混合しながら70 °Cに加熱した。 温度が平衡になるまで30分置き、その後、5 mLの水に溶かしたKPS (0.054 g) をフラスコ内に添加した。
【実施例】
【0041】
24時間後、得られたpMEA微粒子分散液を回収し、室温まで冷却した。精製は、遠心分離(20000 g, 15 °C)、デカンテーション、純水による再分散の一連の操作を2回した後、透析を1週間行った。この時、各pMEA粒子の遠心時間は、3 min (100 mM)、 1 min (500 mM)、 30 sec (1000 mM)で行った。
【実施例】
【0042】
図3から図5に作成したpMEA粒子の原子間力顕微鏡(AFM)写真を示す。図から作製されたpMEA粒子が凝集せずに分散している様子が認められる。また、作製された粒子の直径等について測定した結果を表1に示す。図3、図4、および表から作成された粒子の直径が100nmから1000nmまでの範囲であることが認められる。
【実施例】
【0043】
【表1】
JP0006836260B2_000002t.gif
【実施例】
【0044】
また、pMEA粒子の製造と同時に、比較用として、pMEAとは異なる種類のモノマーを使用して、粒子を作成した。使用したモノマーは、ポリスチレン (pSt)、ポリメタクリル酸メチル(pMMA)、ポリエステルアミド(pEA)、ポリブチルアクリレート(pBA)の4種類であり、作成方法は上記pMEA粒子と同様である。
【実施例】
【0045】
(pMEA粒子の血液適合性評価)
本実施で製造されたpMEA粒子の血液適合性を評価するため、ヒト血液由来タンパク質への吸着実験を行った。実験は、作製したpMEA粒子をヒト血清由来アルブミン(HSA)およびカチオン性免疫グロブリンG(IgG)溶液に分散させ、攪拌、一定時間静置した後、回収し、そのタンパク質の量を測定した。測定にはBCA法を用いた。また、pMEA粒子に対する比較用として、pSt粒子を用いて同様の実験を行った。
【実施例】
【0046】
図6は、本実施例で作製した粒子をヒト血液由来タンパク質に吸着させた結果のグラフを示す。図中、縦軸がタンパク質の吸着量である。図から、本実施例に係るpMEA粒子は比較用のpSt粒子に対して大幅に少なく、血液適合性が高いことが認められる。
【実施例】
【0047】
(pMEA粒子のハロゲン吸着能評価)
本実施例で作製したpMEA粒子のハロゲン吸着能を評価するため吸着実験を行った。作製したpMEA粒子溶液(濃度0.1wt.%)を各種のハロゲン原子を持つ2価のアニオン性染料(0.1mM)の溶液と合計で3mLとなるよう混合し、これらを1時間攪拌しながら吸着させた。その後、粒子を遠心分離し、紫外・可視分光光度計により吸光度を測定した。使用した染料は、エオシン(EoY)、フロキシンB(phB)、エリスロシン(Ery)、ローズベンガル(RoseB)の4種類であり、また、pMEA粒子に対する比較用にpSt、pMMA、pEA、pBAの4種類の粒子についても同様の実験を行った。
【実施例】
【0048】
図7は、本実施例で作製した粒子の単位表面積あたりの吸着量のグラフを示す。図中、縦軸は吸着量を示しており、また凡例として、実験に使用した染料の構造式を示す。図から、本実施例に係るpMEA粒子の吸着量が、4種いずれの染料に関しても他のポリマー粒子に対して有意に吸着量が多いことが認められる。
【実施例】
【0049】
(比較例 pMEA粒子の非ハロゲン吸着実験)
本実施例で作製したpMEA粒子のハロゲンに対する特異的吸着能を評価するため、ハロゲン原子を有さない物質への吸着実験を行った。使用した粒子はpMEA粒子の他、比較用にpSt, pMMA, pEA、pBAの4種類を使用し、ハロゲン原子を有さないアニオン性染料として、オレンジ2、タートラジン、コンゴレッドを使用した。その他の実験方法は上記のハロゲン原子を有する染料の吸着実験と同様である。
【実施例】
【0050】
図8は、本実施例で作製した粒子の単位表面積あたりの吸着量のグラフを示す。図の見方、凡例の記載方法はハロゲン原子を有する染料の吸着実験と同様である。図から、各種染料の吸着量は、いずれもハロゲン含有染料の吸着量より少ないことが認められる。
【実施例】
【0051】
(pMEAゲル複合粒子の製造)
pMEAとゲル状高分子との複合粒子(P(MEA-co-OEGMA)粒子)は、沈殿共重合法により合成した。全モノマー濃度を100 mMに固定し、MEAとOEGMAのモノマー比を変えることで、得られる微粒子内のpMEAナノ粒子サイズ、量を調整した。この時、架橋剤EGDMAは1 mol.% (0.020 g)に統一した。MEA、OEGMA、EGDMAモノマーを95 mLの水に溶解させ、300mLの四ツ口フラスコにスターラーを取り付け、モノマー溶液を入れた後、溶存酸素を取り除くため窒素ガスによりバブリングを行った。この溶液を窒素ガス注入下、250 rpmの撹拌速度で混合しながら摂氏70度に加熱した。 温度が平衡になるまで30分置き、その後、5 mLの水に溶かしたKPS (0.054 g) をフラスコ内に注入した。24時間後、得られた微粒子分散液を回収し、室温まで冷却した。精製は、遠心分離(20000g、摂氏15 度、 10 min)、デカンテーション、再分散の一連の操作を2回した後、透析を1週間行った。
【実施例】
【0052】
また、複合粒子の製造と同時に、比較用として、OEGMAモノマーのみを使用して、OEGMA粒子を作製した。作製方法は上記pMEA粒子と同様である。
【実施例】
【0053】
図9は、本実施例で作成した複合粒子の原子間力顕微鏡(AFM)写真を示す。図中、粒子中に白く斑点状に分布している点がpMEAである。図から作成された複合粒子が凝集せずに分散している様子が認められる。また、作製された粒子の直径等について測定した結果を表2に示す。図9および表から作製された粒子の直径が100nmから1000nm程度の範囲であることが認められる。
【実施例】
【0054】
【表2】
JP0006836260B2_000003t.gif
【実施例】
【0055】
(pMEAゲル複合粒子の血液適合性評価)
本実施で製造された複合粒子の血液適合性を評価するため、ヒト血液由来タンパク質への吸着実験を行った。実験に使用したタンパク質はヒト血清由来アルブミン(HSA)およびカチオン性免疫グロブリンG(IgG)であり、その他の実験方法は上記pMEA粒子の実験と同様である。また、複合粒子に対する比較用として、pSt粒子、pMEA粒子を用いて同様の実験を行った。
【実施例】
【0056】
図10は、本実施例で作製した複合粒子をヒト血液由来タンパク質に吸着させた結果のグラフを示す。図中、縦軸がタンパク質の吸着量である。図から、本実施例に係る複合粒子は比較用のpSt粒子に対して大幅に少なく、pMEA粒子と同等に血液適合性が高いことが認められる。
【実施例】
【0057】
(pMEAゲル複合粒子の吸着能評価)
本実施例で作製した複合粒子のハロゲン吸着能を評価するため吸着実験を行った。実験は上記実施例と同様、ハロゲン原子を持つ2価のアニオン性染料を作製した粒子に吸着させ、そのタンパク質量を測定した。実験方法、使用した染料は上記pMEA粒子で行った方法と同様である。また、複合粒子に対する比較用にpMEA、OEGMAの粒子についても同様の実験を行った。
【実施例】
【0058】
図11は、本実施例で作製した複合粒子の単位表面積あたりの吸着量のグラフを示す。図中、縦軸は単位重量当たりの吸着量を示している。図から、本実施例に係る複合粒子の吸着量が、比較用のpSt粒子に対して有意に吸着量が多く、pMEA粒子と同等であることが認められる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係る粒子を使用することで、例えば、血液中から所望の成分を分離し、これを回収する分離粒子として利用することができる。また、ハロゲン化合物を吸着した粒子から所定の作業で脱着することが可能であるため、これを利用して、薬剤の徐放材料として利用することが可能となる。また、薬剤を放出するタイミングを制御することで、ドラッグデリバリーシステムに利用することが可能となる。

図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
4
【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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