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明細書 :ロボティックウエアを用いた片麻痺者の歩行アシスト方法、歩行アシスト用コンピュータプログラム、およびロボティックウエア

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6781452号 (P6781452)
公開番号 特開2017-047209 (P2017-047209A)
登録日 令和2年10月20日(2020.10.20)
発行日 令和2年11月4日(2020.11.4)
公開日 平成29年3月9日(2017.3.9)
発明の名称または考案の名称 ロボティックウエアを用いた片麻痺者の歩行アシスト方法、歩行アシスト用コンピュータプログラム、およびロボティックウエア
国際特許分類 A61H   3/00        (2006.01)
B25J  11/00        (2006.01)
FI A61H 3/00 B
B25J 11/00 Z
請求項の数または発明の数 16
全頁数 22
出願番号 特願2016-171103 (P2016-171103)
出願日 平成28年9月1日(2016.9.1)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 平成27年5月16日一般社団法人日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会2015講演論文集にて公開
優先権出願番号 2015173332
優先日 平成27年9月2日(2015.9.2)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 令和元年7月10日(2019.7.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
発明者または考案者 【氏名】橋本 稔
【氏名】竹内 志津江
個別代理人の代理人 【識別番号】100090170、【弁理士】、【氏名又は名称】横沢 志郎
審査官 【審査官】段 吉享
参考文献・文献 特開2012-066375(JP,A)
調査した分野 A61H 3/00
B25J 11/00
特許請求の範囲 【請求項1】
片麻痺者の左右の股関節部および左右の膝関節部のうちの一方の左右の関節部における健足側関節部に歩行アシスト力を伝えるための健足側関節アームおよび前記歩行アシスト力を発生する健足側関節アクチュエータと、前記左右の関節部における患足側関節部に歩行アシスト力を伝えるための患足側関節アームおよび前記歩行アシスト力を発生する患足側関節アクチュエータと、前記健足側関節アクチュエータおよび前記患足側関節アクチュエータの駆動を制御する制御装置とが備わっているロボティックウエアを用いて、片麻痺者の歩行運動をアシストするために、
前記健足側関節部の歩行運動に合わせて、前記健足側関節アクチュエータの出力回転軸に取り付けた前記健足側関節アームを、当該出力回転軸を中心として所定の振幅、周期で回転させる健足側歩行アシスト運動を制御し、前記患足側関節部の歩行運動に合わせて、前記患足側関節アクチュエータの出力回転軸に取り付けた前記患足側関節アームを、当該出力回転軸を中心として所定の振幅、周期で回転させる患足側歩行アシスト運動を制御するロボティックウエアを用いた歩行アシスト方法であって、
前記制御装置は、前記健足側関節部と前記健足側関節アクチュエータとの間に生じる健足側相互作用力、および、前記患足側関節部と前記患足側関節アクチュエータとの間に生じる患足側相互作用力を所定のサンプリング周期で検出し、
前記歩行アシスト力が加わらない状態で事前に測定された前記片麻痺者の歩行運動の健足側歩行周期、前記健足側関節部の振幅、患足側歩行周期および前記患足側関節部の振幅を、それぞれ、初期健足側歩行周期、初期健足側関節振幅、初期患足側歩行周期および初期患足側関節振幅とすると、
前記制御装置は、前記初期健足側関節振幅に基づき設定した基本関節振幅と、前記初期健足側歩行周期に基づき設定した基本歩行周期と、前記健足側相互作用力とに基づき、神経振動子を用いて、前記健足側関節部の歩行運動に対して、前記健足側歩行アシスト運動が同調した動きとなるように、前記健足側関節アクチュエータを制御し
前記制御装置は、前記基本関節振幅と、前記基本歩行周期と、前記患足側相互作用力とに基づき、神経振動子を用いて、前記患足側関節部の歩行運動に対して、前記患足側歩行アシスト運動が同調した動きとなるように、前記患足側関節アクチュエータを制御し
前記制御装置は、前記健足側歩行アシスト運動と前記患足側歩行アシスト運動とを相互に逆位相の状態に維持することを特徴とするロボティックウエアを用いた片麻痺者の歩行アシスト方法。
【請求項2】
請求項1において、
片麻痺者の健足側歩行運動に対する前記健足側歩行アシスト運動の同調の度合いを健足側同調性と呼び、片麻痺者の患足側歩行運動に対する前記患足側歩行アシスト運動の同調の度合いを患足側同調性と呼ぶものとすると、
前記患足側同調性前記健足側同調性よりも低いロボティックウエアを用いた片麻痺者の歩行アシスト方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記初期健足側関節振幅が前記初期患足側関節振幅よりも小さい場合には、
前記制御装置は、前記初期健足側関節振幅の代わりに前記初期患足側関節振幅に基づき前記基本関節振幅を設定し、前記初期健足側歩行周期の代わりに前記初期患足側歩行周期に基づき前記基本歩行周期を設定するロボティックウエアを用いた片麻痺者の歩行アシスト方法。
【請求項4】
請求項1において、
前記ロボティックウエアは、
前記健足側関節アームおよび前記健足側関節アクチュエータとして、片麻痺者の左右の股関節部における前記健足側関節部である健足側股関節部の歩行アシスト運動を行う健足側股関節アームおよび健足側股関節アクチュエータと、片麻痺者の左右の膝関節部における前記健足側関節部である健足側膝関節部の歩行アシスト運動を行う健足側膝関節アームおよび健足側膝関節アクチュエータとを備えており、
前記患足側関節アームおよび前記患足側関節アクチュエータとして、片麻痺者の左右の股関節部における前記患足側関節部である患足側股関節部の歩行アシスト運動を行う患足側股関節アームおよび患足側股関節アクチュエータと、片麻痺者の左右の膝関節部における前記患足側関節部である患足側膝関節部の歩行アシスト運動を行う患足側膝関節アームおよび患足側膝関節アクチュエータとを備えているロボティックウエアを用いた片麻痺者の歩行アシスト方法。
【請求項5】
請求項4において、
片麻痺者の健足側歩行運動に対する前記健足側股関節アクチュエータによる健足側股関節歩行アシスト運動の同調の度合いを健足側股関節同調性と呼び、健足側歩行運動に対する前記健足側膝関節アクチュエータによる健足側膝関節歩行アシスト動作の同調の度合いを健足側膝関節同調性と呼び、
片麻痺者の患足側歩行運動に対する前記患足側股関節アクチュエータによる患足側股関節歩行アシスト運動の同調の度合いを患足側股関節同調性と呼び、患足側歩行運動に対する前記患足側膝関節アクチュエータによる患足側膝関節歩行アシスト動作の同調の度合いを患足側膝関節同調性と呼ぶものとすると、
前記健足側膝関節同調性は、前記健足側股関節同調性よりも高く、
前記患足側膝関節同調性は、前記患足側股関節同調性よりも高いロボティックウエアを用いた片麻痺者の歩行アシスト方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記健足側股関節同調性、前記健足側膝関節同調性、前記患足側股関節同調性および前記患足側膝関節同調性のそれぞれの高低を同調ゲインC(0≦C≦1)で表し、同調ゲインCの値が高いほど同調の度合いが高いものとすると、
前記健足側股関節同調性および前記患足側股関節同調性共に、同調ゲインC=0.3であり
前記健足側膝関節同調性および前記患足側膝関節同調性共に、同調ゲインC=0.4であるロボティックウエアを用いた片麻痺者の歩行アシスト方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のうちのいずれかの項に記載の方法により前記ロボティックウエアの前記健足側関節アクチュエータおよび前記患足側関節アクチュエータを制御するロボティックウエアを用いた片麻者の歩行アシスト用コンピュータプログラムであって、
前記健足側関節部と前記健足側関節アクチュエータとの間に生じる健足側相互作用力、および、前記患足側関節部と前記患足側関節アクチュエータとの間に生じる患足側相互作用力を所定のサンプリング周期で取り込む機能と、
前記基本関節振幅と、前記基本歩行周期と、前記健足側相互作用力とに基づき、神経振動子を用いて、前記健足側関節部の歩行運動に対して、前記健足側関節アクチュエータによる前記健足側歩行アシスト運動が同調した動きとなるように、前記健足側関節アクチュエータを制御する健足側同調制御機能と、
前記基本関節振幅と、前記基本歩行周期と、前記患足側相互作用力とに基づき、神経振動子を用いて、前記患足側関節部の歩行運動に対して、前記患足側関節アクチュエータによる前記患足側歩行アシスト運動が同調した動きとなるように、前記患足側関節アクチュエータを制御する患足側同調制御機能と、
前記健足側歩行アシスト運動に対して前記患足側歩行アシスト運動を逆位相の状態に維持するように、前記健足側同調制御機能および前記患足側同調制御機能を協調動作させる機能と
をコンピュータに実行させることを特徴とするロボティックウエアを用いた片麻痺者の歩行アシスト用コンピュータプログラム。
【請求項8】
請求項7において、
前記健足側同調制御機能は、
前記健足側相互作用力に基づき、片麻痺者の健足側歩行運動に対する健足側関節アクチュエータの健足側歩行アシスト運動の同調の度合いを調整する健足側調整機能、
前記基本関節振幅および前記基本歩行周期に基づき自励振動を行う神経振動子を用いて、前記健足側調整機能によって調整された入力に同調する出力を算出する健足側解析機能、および、
当該健足側解析機能によって得られる出力に基づき前記健足側関節アクチュエータの健足側歩行アシスト運動をフィードバック制御する健足側制御機能を含み、
前記患足側同調制御機能は、
前記患足側相互作用力に基づき、片麻痺者の患足側歩行運動に対する患足側関節アクチュエータの患足側歩行アシスト運動の同調の度合いを調整する患足側調整機能、
前記基本関節振幅および前記基本歩行周期に基づき自励振動を行う神経振動子を用いて、前記患足側調整機能によって調整された入力に同調する出力を算出する患足側解析機能、および、
当該患足側解析機能によって得られる出力に基づき前記患足側関節アクチュエータの患足側歩行アシスト運動をフィードバック制御する患足側制御機能を含む
ロボティックウエアを用いた片麻痺者の歩行アシスト用コンピュータプログラム。
【請求項9】
請求項8において、
前記神経振動子は、以下の三式で示す非線形1階連立微分方程式で表され、
JP0006781452B2_000004t.gif
ここで、
xi:i番目の神経素子の内部状態を示す係数
g(xi):i番目の神経素子の出力
fi:i番目の神経素子の疲労状態を表す係数
Si:i番目の神経素子への定常入力
bi:i番目の神経素子の疲労係数
aij:i番目の神経素子からj番目の神経素子への結合係数
Ta,Tr:時定数
Input:外部入力
であり、
前記健足側相互作用力あるいは前記患足側相互作用力を相互作用トルクτ_mutualとし、健足側同調性あるいは患足側同調性を調整するゲインを同調ゲインCとすると、前記神経振動子の前記外部入力Inputは、前記相互作用トルクτ_mutualと前記同調ゲインCを用いて、
Input=C*τ_mutual
ただし、0≦ C ≦ 1
で表されるロボティックウエアを用いた片麻痺者の歩行アシスト用コンピュータプログラム。
【請求項10】
片麻痺者の左右の股関節部および左右の膝関節部のうちの一方の左右の関節部における健足側関節部に歩行アシスト力を伝えるための健足側関節アームおよび前記歩行アシスト力を発生する健足側関節アクチュエータと、
前記左右の関節部における患足側関節部に歩行アシスト力を伝えるための患足側関節アームおよび前記歩行アシスト力を発生する患足側関節アクチュエータと、
前記健足側関節アクチュエータの出力回転軸に取り付けた前記健足側関節アームを、当該出力回転軸を中心として所定の振幅、周期で回転させる健足側歩行アシスト運動を制御する健足側制御ユニットと、
前記患足側関節アクチュエータの出力回転軸に取り付けた前記患足側関節アームを、当該出力回転軸を中心として所定の振幅、周期で回転させる患足側歩行アシスト運動を制御する患足側制御ユニットと、
前記健足側関節部と前記健足側関節アクチュエータとの間の相互作用力を検出する健足側検出部と、
前記患足側関節部と前記患足側関節アクチュエータとの間の相互作用力を検出する患足側検出部と、
を有しており、
前記健足側制御ユニットは、基本関節振幅と、基本歩行周期と、健足側相互作用力とに基づき、神経振動子を用いて、前記健足側関節部の歩行運動に対して、前記健足側関節アクチュエータによる前記健足側歩行アシスト運動が同調した動きとなるように、前記健足側関節アクチュエータを制御し、
前記患足側制御ユニットは、前記基本関節振幅と、前記基本歩行周期と、患足側相互作用力とに基づき、前記神経振動子を用いて、前記患足側関節部の歩行運動に対して、前記患足側関節アクチュエータによる前記患足側歩行アシスト運動が同調した動きとなるように、前記患足側関節アクチュエータを制御し、
前記健足側歩行アシスト運動に対して前記患足側歩行アシスト運動が逆位相の状態を維持するように、前記健足側制御ユニットおよび前記患足側制御ユニットの神経振動子の間に入れた抑制結合部を備えており、
前記歩行アシスト力が加わらない状態で事前に測定された前記片麻痺者の歩行運動の健足側歩行周期、前記健足側関節部の振幅、患足側歩行周期および前記患足側関節部の振幅を、それぞれ、初期健足側歩行周期、初期健足側関節振幅、初期患足側歩行周期および初期患足側関節振幅と呼ぶものとすると、
前記基本関節振幅は、前記初期健足側関節振幅に基づき設定されており、
前記基本歩行周期は、前記初期健足側歩行周期に基づき設定されていることを特徴とする片麻痺者の歩行をアシストするロボティックウエア。
【請求項11】
請求項10において、
前記健足側制御ユニットによる片麻痺者の健足側歩行運動に対する前記健足側歩行アシスト運動の同調の度合いを健足側同調性と呼び、前記患足側制御ユニットによる片麻痺者の患足側歩行運動に対する前記患足側歩行アシスト運動の同調の度合いを患足側同調性と呼ぶものとすると、
前記患足側同調性は前記健足側同調性よりも低ロボティックウエア。
【請求項12】
請求項10において、
前記初期健足側関節振幅が前記初期患足側関節振幅よりも小さい場合には、
前記初期健足側関節振幅の代わりに前記初期患足側関節振幅に基づき前記基本関節振幅が設定されており、前記初期健足側歩行周期の代わりに前記初期患足側歩行周期に基づき前記基本歩行周期が設定されているロボティックウエア。
【請求項13】
請求項10において、
前記健足側関節アームおよび前記健足側関節アクチュエータとして、片麻痺者の左右の股関節部における前記健足側関節部である健足側股関節部の歩行アシスト運動を行う健足側股関節アームおよび健足側股関節アクチュエータと、片麻痺者の左右の膝関節部における前記健足側関節部である健足側膝関節部の歩行アシスト運動を行う健足側膝関節アームおよび健足側膝関節アクチュエータとを備えており、
前記患足側関節アームおよび前記患足側関節アクチュエータとして、片麻痺者の左右の股関節部における前記患足側関節部である患足側股関節部の歩行アシスト運動を行う患足側股関節アームおよび患足側股関節アクチュエータと、片麻痺者の左右の膝関節部における前記患足側関節部である患足側膝関節部の歩行アシスト運動を行う患足側膝関節アームおよび患足側膝関節アクチュエータとを備えているロボティックウエア。
【請求項14】
請求項13において、
片麻痺者の健足側歩行運動に対する前記健足側股関節アクチュエータによる健足側股関節歩行アシスト運動の同調の度合いを健足側股関節同調性と呼び、健足側歩行運動に対する前記健足側膝関節アクチュエータによる健足側膝関節歩行アシスト動作の同調の度合いを健足側膝関節同調性と呼び、
片麻痺者の患足側歩行運動に対する前記患足側股関節アクチュエータによる患足側股関節歩行アシスト運動の同調の度合いを患足側股関節同調性と呼び、患足側歩行運動に対する前記患足側膝関節アクチュエータによる患足側膝関節歩行アシスト動作の同調の度合いを患足側膝関節同調性と呼ぶものとすると、
前記健足側膝関節同調性は、前記健足側股関節同調性よりも高
前記患足側膝関節同調性は、前記患足側股関節同調性よりも高ロボティックウエア。
【請求項15】
請求項11において、
前記健足側制御ユニットは、
前記健足側相互作用力に基づき、片麻痺者の健足側歩行運動に対する健足側関節アクチュエータの健足側歩行アシスト運動の同調の度合いを調整する健足側調整部、
前記基本関節振幅および前記基本歩行周期に基づき自励振動を行う神経振動子を用いて、前記健足側調整部によって調整された入力に同調する出力を算出する健足側解析部、および、
当該健足側解析部によって得られる出力に基づき前記健足側関節アクチュエータの健足側歩行アシスト運動をフィードバック制御する健足側制御部を含み、
前記患足側制御ユニットは、
前記患足側相互作用力に基づき、片麻痺者の患足側歩行運動に対する患足側関節アクチュエータの患足側歩行アシスト運動の同調の度合いを調整する患足側調整部、
前記基本関節振幅および前記基本歩行周期に基づき自励振動を行う神経振動子を用いて、前記患足側調整部によって調整された入力に同調する出力を算出する患足側解析部、および、
当該患足側解析部によって得られる出力に基づき前記患足側関節アクチュエータの患足側歩行アシスト運動をフィードバック制御する患足側制御部を含むロボティックウエア。
【請求項16】
請求項15において、
前記健足側制御ユニットおよび前記患足側制御ユニットにおける前記神経振動子は、以下の三式で示す非線形1階連立微分方程式で表され、
JP0006781452B2_000005t.gif
ここで、
xi:i番目の神経素子の内部状態を示す係数
g(xi):i番目の神経素子の出力
fi:i番目の神経素子の疲労状態を表す係数
Si:i番目の神経素子への定常入力
bi:i番目の神経素子の疲労係数
aij:i番目の神経素子からj番目の神経素子への結合係数
Ta,Tr:時定数
Input:外部入力
であり、
前記健足側相互作用力あるいは前記患足側相互作用力を相互作用トルクτ_mutualとし、前記健足側同調性あるいは前記患足側同調性の度合いを同調ゲインCとして表すものとすると、前記神経振動子の前記外部入力Inputは、前記相互作用トルクτ_mutualは、
Input=C*τ_mutual
ただし、 0 ≦ C ≦ 1
で表されるロボティックウエア。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、同調制御を用いて歩行アシストを行うロボティックウエアに関し、特に、片麻痺者の歩行アシストに適したロボティックウエアを用いた歩行アシスト方法、歩行アシスト用コンピュータプログラム、およびロボティックウエアに関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者支援、介護支援などの様々な動作を補助するロボットの開発が進められている(非特許文献1)。本発明者等は、これまで神経振動子を用いて装着者の歩行動作に同調した補助動作を行うことのできるロボティックウエアを開発してきた(非特許文献2、3、特許文献1、2)。また、軽量で装着性に優れた非外骨格型のロボティックウエアを開発してきた(特許文献3)。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】山海嘉之、「人体密着型ロボットスーツ「HAL」」、日本機械学会No.09-17、第14回動力・エネルギー技術シンポジウム講演論文集(2009)
【非特許文献2】Xia Zhang and Minoru Hashimoto, “SBC for Motion Assist Using Neural Oscillator” IEEE International Conference on Robotic and Automation 2009
【非特許文献3】竹内志津江、パタキ トッド、橋本稔、「同調制御を用いた下肢ロボティックウエアの歩行動作への影響」、第15回システムインテグレーション部門講演会(2014)
【0004】

【特許文献1】特開2012-66375号公報
【特許文献2】特開2015-44240号公報
【特許文献3】特開2015-2970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、片麻痺者の歩行を適切にアシストすることのできるロボティックウエアを用いた同調制御による片麻痺者の歩行アシスト方法、歩行アシスト用コンピュータプログラム、および当該歩行支援方法により片麻痺者の歩行アシストを行うロボティックウエアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、下肢用のロボティックウエアを用いて片麻痺者の歩行をアシストすることを目的として、同調制御を用いてロボティックウエアを駆動制御する実験を行い、ロボティックウエアを装着した片麻痺者の歩幅、歩行周期、相互作用トルクなどの計測を行った。これにより得られた知見に基づき本発明を想到するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
片麻痺者の左右の股関節部および左右の膝関節部のうちの一方の左右の関節部における健足側関節部に歩行アシスト力を伝えるための健足側関節アームおよび前記歩行アシスト力を発生する健足側関節アクチュエータと、前記左右の関節部における患足側関節部に歩行アシスト力を伝えるための患足側関節アームおよび前記歩行アシスト力を発生する患足側関節アクチュエータと、前記健足側関節アクチュエータおよび前記患足側関節アクチュエータの駆動を制御する制御装置とが備わっているロボティックウエアを用いて、片麻痺者の歩行運動をアシストするために、
前記健足側関節部の歩行運動に合わせて、前記健足側関節アクチュエータの出力回転軸に取り付けた前記健足側関節アームを、当該出力回転軸を中心として所定の振幅、周期で回転させる健足側歩行アシスト運動を制御し、前記患足側関節部の歩行運動に合わせて、前記患足側関節アクチュエータの出力回転軸に取り付けた前記患足側関節アームを、当該出力回転軸を中心として所定の振幅、周期で回転させる患足側歩行アシスト運動を制御するロボティックウエアを用いた歩行アシスト方法であって、
前記制御装置は、前記健足側関節部と前記健足側関節アクチュエータとの間に生じる健足側相互作用力、および、前記患足側関節部と前記患足側関節アクチュエータとの間に生じる患足側相互作用力を所定のサンプリング周期で検出し、
前記歩行アシスト力が加わらない状態で事前に測定された前記片麻痺者の歩行運動の健足側歩行周期、前記健足側関節部の振幅、患足側歩行周期および前記患足側関節部の振幅を、それぞれ、初期健足側歩行周期、初期健足側関節振幅、初期患足側歩行周期および初期患足側関節振幅とすると、
前記制御装置は、前記初期健足側関節振幅に基づき設定した基本関節振幅と、前記初期健足側歩行周期に基づき設定した基本歩行周期と、前記健足側相互作用力とに基づき、神経振動子を用いて、前記健足側関節部の歩行運動に対して、前記健足側歩行アシスト運動が同調した動きとなるように、前記健足側関節アクチュエータを制御し
前記制御装置は、前記基本関節振幅と、前記基本歩行周期と、前記患足側相互作用力とに基づき、神経振動子を用いて、前記患足側関節部の歩行運動に対して、前記患足側歩行アシスト運動が同調した動きとなるように、前記患足側関節アクチュエータを制御し
前記制御装置は、前記健足側歩行アシスト運動と前記患足側歩行アシスト運動とを相互に逆位相の状態に維持することを特徴としている。
【0008】
例えば、基本関節振幅を初期健足側関節振幅と同一とし、患足側関節振幅を、基本関節振幅の0%~200%の範囲内の値、例えば、60%~100%の範囲内の値に設定することができる。
【0009】
片麻痺者の健足側歩行運動に対する前記健足側歩行アシスト運動の同調の度合いを健足側同調性と呼び、片麻痺者の患足側歩行運動に対する患足側歩行アシスト運動の同調の度合いを患足側同調性と呼ぶものとすると、患足側同調性を健足側同調性よりも低くなるように設定することができる。例えば、健足側同調性を高程度とした場合には、患足側同調性をそれよりも低い中程度とする。
【0010】
ここで、ロボティックウエア非装着状態における片麻痺者の健足側関節振幅の方が患足側関節振幅よりも小さい場合がある。この場合には、患足側関節振幅に基づき基本関節振幅を設定し、患足側歩行周期に基づき基本歩行周期を設定することができる。
【0011】
本発明において、ロボティックウエアとして、片麻痺者の健足側股関節部に歩行アシスト力を伝える健足側股関節アクチュエータおよび健足側膝関節部に歩行アシスト力を伝える健足側膝関節アクチュエータと、片麻痺者の患足側股関節部に歩行アシスト力を伝える患足側股関節アクチュエータおよび患足側膝関節部に歩行アシスト力を伝える患足側膝関節アクチュエータとを備えたものを使用することができる。
【0012】
この場合には、健足側および患足側のいずれにおいても、同調制御における同調の度合いを、股関節に比べて膝関節の方を大きくすることが望ましい。例えば、患足側股関節同調性および患足側膝関節同調性の高低を同調ゲインC(0≦C≦1)で表し、同調ゲインCの値が高いほど同調の度合いが高いものとすると、患足側股関節同調性を、中程度の同調ゲイン、例えばC=0.3に設定し、患足側膝関節同調性も中程度の同調ゲインであって、股関節側よりも大きな値、例えば、C=0.4に設定する。このように同調ゲインを設定することにより、片麻痺者の歩行時間を短縮することが可能である。
【0013】
次に、本発明は上記の方法によりロボティックウエアの健足側関節アクチュエータおよび患足側関節アクチュエータを制御するロボティックウエアを用いた片麻痺者の歩行アシスト用コンピュータプログラムであって、
前記健足側関節部と前記健足側関節アクチュエータとの間に生じる健足側相互作用力、および、前記患足側関節部と前記患足側関節アクチュエータとの間に生じる患足側相互作用力を所定のサンプリング周期で取り込む機能と、
前記基本関節振幅と、前記基本歩行周期と、前記健足側相互作用力とに基づき、神経振動子を用いて、前記健足側関節部の歩行運動に対して、前記健足側関節アクチュエータによる前記健足側歩行アシスト運動が同調した動きとなるように、前記健足側関節アクチュエータを制御する健足側同調制御機能と、
前記基本関節振幅と、前記基本歩行周期と、前記患足側相互作用力とに基づき、神経振動子を用いて、前記患足側関節部の歩行運動に対して、前記患足側関節アクチュエータによる前記患足側歩行アシスト運動が同調した動きとなるように、前記患足側関節アクチュエータを制御する患足側同調制御機能と、
前記健足側歩行アシスト運動に対して前記患足側歩行アシスト運動を逆位相の状態に維持するように、前記健足側同調制御機能および前記患足側同調制御機能を協調動作させる機能と
をコンピュータに実行させることを特徴としている。
【0014】
ここで、健足側同調制御機能には、健足側相互作用力に基づき、片麻痺者の健足側歩行運動に対する健足側関節アクチュエータの健足側歩行アシスト運動の同調の度合いを調整する健足側調整機能、設定健足側関節振幅および設定健足側歩行周期に基づき自励振動を行う神経振動子を用いて、健足側調整機能によって調整された入力に同調する出力を算出する健足側解析機能、および、当該健足側解析機能によって得られる出力に基づき健足側関節アクチュエータの健足側歩行アシスト運動をフィードバック制御する健足側制御機能が含まれる。
【0015】
同様に、患足側同調制御機能には、患足側相互作用力に基づき、片麻痺者の患足側歩行運動に対する患足側関節アクチュエータの患足側歩行アシスト運動の同調の度合いを調整する患足側調整機能、設定患足側関節振幅および設定健足側歩行周期に基づき自励振動を行う神経振動子を用いて、患足側調整機能によって調整された入力に同調する出力を算出する患足側解析機能、および、当該患足側解析機能によって得られる出力に基づき前記患足側関節アクチュエータの患足側歩行アシスト運動をフィードバック制御する患足側制御機能が含まれる。
【0016】
一方、本発明は、上記のアシスト方法により片麻痺者の歩行アシストを行うロボティックウエアであって、
片麻痺者の左右の股関節部および左右の膝関節部のうちの一方の左右の関節部における健足側関節部に歩行アシスト力を伝えるための健足側関節アームおよび前記歩行アシスト力を発生する健足側関節アクチュエータと、
前記左右の関節部における患足側関節部に歩行アシスト力を伝えるための患足側関節アームおよび前記歩行アシスト力を発生する患足側関節アクチュエータと、
前記健足側関節アクチュエータの出力回転軸に取り付けた前記健足側関節アームを、当該出力回転軸を中心として所定の振幅、周期で回転させる健足側歩行アシスト運動を制御する健足側制御ユニットと、
前記患足側関節アクチュエータの出力回転軸に取り付けた前記患足側関節アームを、当該出力回転軸を中心として所定の振幅、周期で回転させる患足側歩行アシスト運動を制御する患足側制御ユニットと、
前記健足側関節部と前記健足側関節アクチュエータとの間の相互作用力を検出する健足側検出部と、
前記患足側関節部と前記患足側関節アクチュエータとの間の相互作用力を検出する患足側検出部と
を有しており、
前記健足側制御ユニットは、基本関節振幅と、基本歩行周期と、健足側相互作用力とに基づき、神経振動子を用いて、前記健足側関節部の歩行運動に対して、前記健足側関節アクチュエータによる前記健足側歩行アシスト運動が同調した動きとなるように、前記健足側関節アクチュエータを制御し、
前記患足側制御ユニットは、前記基本関節振幅と、前記基本歩行周期と、患足側相互作用力とに基づき、前記神経振動子を用いて、前記患足側関節部の歩行運動に対して、前記患足側関節アクチュエータによる前記患足側歩行アシスト運動が同調した動きとなるように、前記患足側関節アクチュエータを制御し、
前記健足側歩行アシスト運動に対して前記患足側歩行アシスト運動が逆位相の状態を維持するように、前記健足側制御ユニットおよび前記患足側制御ユニットの神経振動子の間に入れた抑制結合部を備えており、
前記歩行アシスト力が加わらない状態で事前に測定された前記片麻痺者の歩行運動の健足側歩行周期、前記健足側関節部の振幅、患足側歩行周期および前記患足側関節部の振幅を、それぞれ、初期健足側歩行周期、初期健足側関節振幅、初期患足側歩行周期および初期患足側関節振幅と呼ぶものとすると、
前記基本関節振幅は、前記初期健足側関節振幅に基づき設定されており、
前記基本歩行周期は、前記初期健足側歩行周期に基づき設定されていることを特徴としている。
【0017】
ここで、ロボティックウエア非装着状態における片麻痺者の健足側関節振幅の方が患足側関節振幅よりも小さい場合がある。この場合には、患足側関節振幅に基づき基本関節振幅を設定し、患足側歩行周期に基づき基本歩行周期を設定することができる。
【0018】
健足側制御ユニットは、健足側相互作用力に基づき、片麻痺者の健足側歩行運動に対する健足側関節アクチュエータの健足側歩行アシスト運動の同調の度合いを調整する健足側調整部、前記基本関節振幅および前記基本歩行周期に基づき自励振動を行う神経振動子を用いて、健足側調整部によって調整された入力に同調する出力を算出する健足側解析部、および、当該健足側解析部によって得られる出力に基づき健足側関節アクチュエータの健足側歩行アシスト運動をフィードバック制御する健足側制御部を備えた構成とすることができる。
【0019】
同様に、患足側同調制御部は、患足側相互作用力に基づき、片麻痺者の患足側歩行運動に対する患足側関節アクチュエータの患足側歩行アシスト運動の同調の度合いを調整する患足側調整部、前記基本関節振幅および前記基本歩行周期に基づき自励振動を行う神経振動子を用いて、患足側調整部によって調整された入力に同調する出力を算出する患足側解析部、および、患足側解析部によって得られる出力に基づき患足側関節アクチュエータの患足側歩行アシスト運動をフィードバック制御する患足側制御部を備えた構成とすることができる。
【0020】
本発明において、健足側制御ユニットおよび患足側制御ユニットにおける神経振動子は、以下の三式で示す非線形1階連立微分方程式で表される松岡モデルを用いることができる。
【0021】
【数1】
JP0006781452B2_000002t.gif

【0022】
ここで、
xi:i番目の神経素子の内部状態を示す係数
g(xi):i番目の神経素子の出力
fi:i番目の神経素子の疲労状態を表す係数
Si:i番目の神経素子への定常入力
bi:i番目の神経素子の疲労係数
aij:i番目の神経素子からj番目の神経素子への結合係数
Ta,Tr:時定数
Input:外部入力
であり、
健足側相互作用力あるいは患足側相互作用力を相互作用トルクτ_mutualとし、健足側同調性あるいは患足側同調性の高低を調整するゲインを同調ゲインCとすると、神経振動子の外部入力Inputは、相互作用トルクτ_mutualと同調ゲインCを用いて、
Input=C*τ_mutual
ただし、0 ≦ C ≦ 1
で表される。
【発明の効果】
【0023】
本発明者等は、片麻痺者に本発明による健足側関節アクチュエータおよび患足側関節アクチュエータを備えたロボティックウエアを装着させて歩行実験を行った。実験では、健足側の股関節ユニットと患足側の股関節ユニットの同調性を変えて、片麻痺者の歩行動作への影響を検証した。また、患足側関節アクチュエータにおける1周期分の歩行アシスト運動の振幅を、健足側の股関節の振幅を基準にして変化させて効果を検証した。さらに、歩行安定性の指標となる足圧を計測した。これらの実験から、片麻痺者の歩行安定性を維持しつつ、歩行時間短縮効果(歩行振幅の増加、歩行周期の短縮化)が得られることを確認した。
【0024】
また、本発明者等は、ロボティックウエアとして、片麻痺者の健足側股関節部に歩行アシスト力を伝える健足側股関節アクチュエータおよび健足側膝関節部に歩行アシスト力を伝える健足側膝関節アクチュエータと、片麻痺者の患足側股関節部に歩行アシスト力を伝える患足側股関節アクチュエータおよび患足側膝関節部に歩行アシスト力を伝える患足側膝関節アクチュエータとを備えたロボティックウエアを片麻痺者に装着させて歩行実験を行た。実験では、制御条件(股関節の振幅、歩行周期、同調ゲイン)を変えて、歩行時間の短縮効果を検証した。これらの実験から、股関節アクチュエータおよび膝関節アクチュエータの制御条件を適切に設定することにより、特に、それらの同調ゲインを適切に設定することにより、歩行運動の時間短縮効果が得られることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明を適用可能な非外骨格型の下肢用のロボティックウエアの一例を示す正面図および側面図である。
【図2】左側の股関節ユニットを示す分解斜視図およびアクチュエータを示す説明図である。
【図3】ロボティックウエアの制御装置を示すブロック図である。
【図4】同調制御の処理の流れを示す説明図である。
【図5】神経振動子モデルを示す説明図である。
【図6】ロボティックウエア装着歩行実験(その1)における装着者の歩行状態を示す図面代用写真である。
【図7】試験条件の一覧表である。
【図8】試験条件A1において計測された被験者の股関節の振幅の変化を示すグラフである。
【図9】試験条件B1において計測された被験者の股関節の振幅の変化を示すグラフである。
【図10】試験条件B2において計測された被験者の股関節の振幅の変化を示すグラフである。
【図11】足圧測定器で計測した患足側の一歩行周期の足底圧の変化を示すグラフである。
【図12】各試験条件での歩行速度を示すグラフである。
【図13】ロボティックウエア装着歩行実験(その2)におけるアクチュエータの制御条件を示す一覧表である。
【図14】実験により計測された2名の被験者の歩行時間を示すグラフである。
【図15】実験により計測された2名の被験者の股関節角度の振幅・周期の変化率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、図面を参照して本発明の同調制御を用いたロボティックウエアの駆動制御方法および駆動制御装置について説明する。

【0027】
[非外骨格型の下肢用のロボティックウエア]
図1(a)、(b)は本発明を適用可能な非外骨格型の下肢用のロボティックウエアの一例を示す正面図および側面図である。ロボティックウエア1は、装着者(片麻痺者)Pの左右の股関節に対応する左右の側部に装着される左右一対の股関節ユニット2L、2Rと左右一対の膝関節ユニット3L、3Rを備えている。また、各ユニット2L、2R、3L、3Rによる歩行アシスト運動を制御する制御装置(図3参照)が備わっている。

【0028】
左右の股関節ユニット2L、2Rは左右対称に配置された同一構造のものであり、アクチュエータ4L、4Rと、この回転出力軸であるウエア関節軸11L、11R(図2参照)を中心として旋回する上アーム5L、5Rおよび下アーム6L、6Rとを備えている。上アーム5L、5Rの上端部は装着者Pの腰に固定したウエストバンド7に連結され、下アーム6L、6Rの下端部は装着者Pの大腿部に固定した大腿部バンド8L、8Rに連結されている。

【0029】
各股関節ユニット2L、2Rのウエア股関節軸が装着者Pの左右の股関節に対応する位置となるように、ロボティックウエア1が装着者Pに装着される。左右の股関節ユニット2L、2Rの上アーム5L、5R、下アーム6L、6Rは、歩行運動に合わせてウエア関節軸を中心として所定の振幅、周期で相対回転して(歩行アシスト運動を行って)、左右の股関節を中心とする歩行アシスト力(トルク)を装着者Pに伝える。

【0030】
左右の膝関節ユニット3L、3Rも基本的に左右の股関節ユニット2L、2Rと同様に構成されている。

【0031】
図2(a)は左側の股関節ユニット2Lを示す分解斜視図であり、図2(b)はアクチュエータ4Lを示す説明図である。

【0032】
これらの図に示すように、股関節ユニット2Lのアクチュエータ4Lの回転出力は、股関節を中心とするアシスト力として装着者Pの大腿部に直接伝達される。アクチュエータ4Lの減速機10Lの回転出力軸(ウエア関節軸11L)には、その出力側に加わる負荷トルクを検出するためのトルクセンサ12Lが配置されている。関節軸11Lの回転位置は、例えばモータ9Lに内蔵のエンコーダ(図示せず)によって検出される。

【0033】
トルクセンサ12Lにより、股関節ユニット2Lと装着者Pとの間に生じる相互作用力がトルクとして検出される。検出されたトルクに基づいて、以下に述べる制御装置により、各股関節ユニット2L、2Rの歩行アシスト運動(上アーム5、下アーム6の開閉運動)が制御され、装着者2の歩行運動がアシストされる。

【0034】
膝関節ユニット3L、3Rも同様に構成されており、それぞれ、装着者Pの左右の膝関節を中心とするアシスト力を装着者Pに伝える。

【0035】
ロボティックウエア1の股関節ユニット2L、2Rおよび膝関節ユニット3L、3Rの制御系は、以下に述べるように、コンピュータを中心に構成される。

【0036】
[制御装置]
図3はロボティックウエア1の制御装置を示すブロック図である。この制御装置20は、制御用PC21によってロボティックウエア1の左右の股関節ユニット2L、2R、膝関節ユニット3L、3R(図示せず)の駆動を制御するものである。図においては左右の股関節ユニット2L、2Rを制御する左制御ユニット20Lおよび右制御ユニット20Rのみを示してある。

【0037】
制御用PC21は、同調制御用のコンピュータプログラムを実行することにより、同調制御のためのゲイン調整部22L、22R、解析部23L、23RおよびPID制御部24L、24Rとして機能する。装着者とロボティックウエア1の各関節ユニットの間の相互作用力がトルクセンサ12L、12Rにより検出される。検出された相互作用トルクは、装着者とロボティックウエア1との同調の度合いを調整するゲイン調整部22L、22Rを介して、解析部23L、23Rに入力される。解析部23L、23Rでは、神経振動子モデルにより解析して左右の股関節の目標角度を求め、各股関節における現在角度と目標角度との差をPID制御部24L、24Rに出力する。

【0038】
PID制御部24L、24Rは、左右の股関節ユニット2L、2Rのモータ9L、9RをPID制御するものであり、モータ9L、9Rを駆動した結果得られる相互作用力をトルクセンサ12L、12Rによって再度検知し、解析部23L、23Rによって新たに目標角度を設定して、再度モータ9L、9Rを駆動制御する。モータ9L、9Rの駆動を補正制御する操作を繰り返し行うことによって同調制御が行われる。

【0039】
なお、左右の股関節ユニット2L、2Rのトルクセンサ12L、12Rによって検出される相互作用トルクは、アンプ25L、25Rを介して増幅され、AD変換器26L、26Rによってデジタル信号に変換された後に、I/Oインターフェース27を介して制御用PC21に取り込まれる。また、制御用PC21は、PID制御部24L、24Rから出力される指令電圧をD/A変換器28L、28Rを介してモータドライバ29L、29Rに供給し、指令電圧に基づきモータドライバ29L、29Rによりモータ9L、9Rを駆動する。

【0040】
(同調制御方法)
図4は、制御装置20において行われる一方の股関節ユニットに対する同調制御の処理の流れを示す説明図である。神経振動子を用いた同調制御方法は生物が脊髄にもつ神経振動子というリズム生成器を数学的にモデル化したものを用いており、人とロボットが同調して動くことを実現している。このような同調制御については前述の特許文献1、2において提案されている。

【0041】
同調制御においては、装着者Pと、ロボティックウエア1の例えば左側の股関節ユニット2Lとの間の動きの違いによって生じる相互作用力を神経振動子モデルの入力信号として与える。この神経振動子モデルの計算を解くことによって、入力信号の波形に同調した波形が神経振動子モデルから出力される。その出力波形を目標角度とし、PID制御を用いて股関節ユニット2Lの新たな軌道を生み出す。所定のサンプリング周期で、相互作用力を計測して、装着者Pの左足の歩行運動と股関節ユニット2Lの歩行アシスト運動との同調した動きを実現する。

【0042】
(神経振動子モデル)
神経振動子の数学モデルには様々なものがあるが、本例では松岡モデルを用いた。松岡モデルは以下の3式に示すように、非線形1階連立微分方程式で表すことができる。

【0043】
【数1】
JP0006781452B2_000003t.gif

【0044】
ここで、
xi:i番目の神経素子の内部状態を示す係数
g(xi):i番目の神経素子の出力
fi:i番目の神経素子の疲労状態を表す係数
Si:i番目の神経素子への定常入力
bi:i番目の神経素子の疲労係数
aij:i番目の神経素子からj番目の神経素子への結合係数(神経素子間の重み係数)Ta,Tr:時定数
Input:外部入力

【0045】
図5(a)に神経振動子の入出力を示す。神経振動子モデルは、図5(b)に示すような2つのニューロンにより構成される。この神経振動子モデルの出力を、g(x1)-g(x2)とすることで、正弦波のような周期的な信号波形が得られる。x1、x2、a12、a21、b1、b2、S1、S2、Ta、Tr、Inputなどを任意に定めることにより、神経振動子モデルの出力波形を変化させることができる。

【0046】
ここで、外部入力Inputは周波数の同調のためのものである。相互作用力により発生する関節トルク(相互作用トルク)をτ_mutualとし、入力信号を増幅することで神経振動子モデルの自励振動が入力信号に同調する度合いである同調性を調節するゲインを同調ゲインCとすると、神経振動子モデルの外部入力Inputと相互作用トルクτ_mutualには次の関係にある。
Input=C*τ_mutual
ただし、0 ≦ C ≦ 1

【0047】
Cの値が0の場合には、外部情報をフィードバックせず、自分自身の特性(振幅や周波数など)に基づく神経振動子モデルの出力が得られる。いいかえれば、同調しない制御となる。Cが正の値の場合には、外部情報をフィードバックし、入力信号に引き込まれた(相互作用を取り入れた)神経振動子モデルの出力が得られ同調制御が実現される。同調ゲインCを調整することによって、望みの同調性を実現することができる。

【0048】
(左右の股関節ユニットの協調動作)
本例の同調制御においては、左右の股関節ユニット2L、2Rを有するロボティックウエア1が発生するアシスト力によって装着者Pの歩行の安定性を確保するために、左右の股関節ユニット2L、2R間の協調動作を考慮する。左右の股関節ユニット2L、2R間の協調動作を考慮するために、左右の股関節ユニット2L、2Rの神経振動子間に抑制結合を加えて制御する。

【0049】
具体的には、左右の股関節ユニット2L、2Rの周期運動(歩行アシスト運動)に半周期の位相差を付ける。また、健足側の股関節の動きに合わせて患足側のモータを容易に制御できるように、左右の股関節ユニット2L、2Rの神経振動子間に抑制結合を入れた神経振動子モデルを用いている。

【0050】
制御装置20の制御用PC21によって実現される解析部23L、23Rにおいては、図5(c)に示すように、左右の神経振動子間に抑制結合を加えた神経振動子モデルを採用し、その出力として、神経振動子間の抑制結合を加えた解析に基づいた出力が得られるように設定されている。神経振動子の出力をg(xi)-g(xi+1)(i=1,3)とすると、神経振動子の初期状態を定めることにより、左右の股関節ユニット2L、2Rの神経振動子モデルの間で逆位相となる周期的な信号が得られる。

【0051】
ここで、人との相互作用に加えて神経振動子間の相互作用を考慮すると、神経振動子からの出力が不安定になるが、神経振動子間の抑制結合係数を、ロボティックウエアと人との同調性が優先されるような小さな値に設定すると、左右の神経振動子の出力には、位相が反転した信号が現れ、人との相互作用を取り入れながら、左右の股関節ユニット間の協調動作によって歩行安定性を確保することが可能である。

【0052】
[ロボティックウエア装着歩行実験その1]
(予備実験方法)
各被験者の基本歩行データを基に本実験での設定値を算出するために、予備実験を行って基本歩行データを採取した。歩数、所要時間を計測し、歩行周期(一回の歩行サイクル所要時間)、歩行1ステップの股関節の歩行振幅等を算出した。算出された値を、設定値として、ロボティックウエア1の制御装置20に設定した。なお、被験者は右片麻痺患者1名を対象とした。

【0053】
予備実験においては、左右の股関節ユニット2L、2Rを備えたロボティックウエア1を右片麻痺患者に装着してもらい、各モータの発生トルクをゼロに制御して歩行実験を行った。したがって、左側の股関節ユニット2Lが健足側股関節ユニットであり、そのアクチュエータ4Lが健足側股関節アクチュエータとなり、左側の股関節ユニット2Rが患足側股関節ユニットであり、そのアクチュエータ4Rが患足側股関節アクチュエータとなる。被験者の股関節の角度はモータ9L、9Rに内蔵のエンコーダで計測した。また、足圧測定器(Pedar)を被験者に装着し、歩行時の足圧の計測も行った。直線10mの距離を往復歩行して計測を行った。図6は実験時における装着者の歩行状態を示す図面代用写真である。

【0054】
(本実験方法)
予備実験により得た被験者の歩行周期、股関節の振幅を用いて、図7に示す条件で本実験を行った。被験者は予備実験に参加した右片麻痺患者1名を対象とした。

【0055】
図7において、条件A1は予備実験の条件と同一である。条件B1およびB2では、ロボティックウエア1の右股関節(患足側)のモータ9Rの振幅(歩行アシスト運動の振幅)を、左股関節(健足側)のモータ9Lの振幅の60%および100%の値にそれぞれ設定し、歩行周期同調性を中程度に設定した(例えば、同調ゲインC=0.3)。左股関節(健足側)の同調性は、条件A1、B1、B2のいずれの場合においても高程度(例えば、同調ゲインC=0.5)とした。このように条件を設定して、右股関節(患足側)の振幅および足圧が、基本歩行時に比べて、健足側に近い状態になるのかを調べた。

【0056】
本実験においても、予備実験同様に、被験者は同一のロボティックウエア1を装着して、試験条件A1、B1、B2ごとに直路10mの距離を往復歩行して計測を行った。なお、被験者に対しては歩行速度や歩幅の要求はせずに、本人の通常歩行で歩くように伝えた。

【0057】
(実験結果)
図8、図9、図10は、基本歩行の試験条件A1、B1、B2において計測された被験
者の股関節の振幅の変化を示すグラフである。

【0058】
股関節の振幅は、基本歩行の条件A1では、患足側の右股関節の振幅(測定患足側関節振幅)が健足側の左股関節の振幅(測定健足側関節振幅)に比べて小さく、周期軌道が乱れている。条件B1およびB2の場合、すなわち、ロボティックウエアの患足側の右股関節ユニットの振幅(設定患足側関節振幅)を、健足側の左股関節ユニットの60%、100%にそれぞれ設定し、患足側歩行周期を健足側方向周期と同一に設定した場合では、それぞれ、患足側の右股関節の振幅が設定値に近い値になっていることがわかる。また、歩行周期は短くなり安定した軌道が得られていることがわかる。

【0059】
図11は、足圧測定器で計測した患足側の一歩行周期の足底圧の変化を示すグラフである。足圧については、健常者の一般的な足圧の変化形状は緩やかなM字形になっている。基本歩行の試験条件A1に比べ、振幅を健足側の左股関節の100%に設定した条件B2では足圧の変化形状がM字形に近づいていることがわかる。

【0060】
図12は各条件での歩行速度を示すグラフである。足圧については、基本歩行の条件A1と比べ、振幅60%(条件B1)、100%(条件B2)で徐々に歩行速度が速くなっていることがわかる。これは、歩幅が広がり、同時間内の歩行周期が短くなっていることでも確認できる。

【0061】
(実験結果について考察)
片麻痺者の歩行アシストを目的として、ロボティックウエアを用いた制御方法を提案して、その有用性を検証した。その結果、歩行運動における振幅の大きい健足側の股関節の動きに合わせて、振幅の小さな患足側の股関節のモータを制御することにより、患足の歩行運動の歩幅が拡がり、歩行速度を増すことができることがわかった。

【0062】
[ロボティックウエア装着歩行実験その2]
上記の実験その1は、ロボティックウエアの股関節ユニットのみを用いて同調制御を行っている。股関節ユニットおよび膝関節ユニットの双方を用い、双方について同調制御を行って、片麻痺者の歩行支援を行う場合もある。

【0063】
上記の実験その1と同様に、股関節ユニットおよび膝関節ユニットの双方を備えたロボティックウエアを被験者に装着させ、歩行実験(本実験)を行い、制御効果の有無(歩行時間短縮効果)を検証した。また、いずれの制御条件(関節振幅、歩行周期、同調ゲイン)において時間短縮効果がみられるのかを検証した。被験者は左片麻痺患者9名を対象とし、実験その1と同様に、予備実験を行い、各被験者の基本歩行データを採取した。

【0064】
予備実験により得た被験者の歩行周期、股関節の振幅を用いて、各被験者について、同調制御の制御条件(基本設定、同調ゲイン)を変えて本実験を行った。制御条件として、健足の股関節の振幅および周期を基本設定(基本関節振幅、基本歩行周期)とした場合、健足側股関節および患足側股関節のうち関節振幅の大きい方の脚の振幅・周期を基本設定とした場合、健常者の振幅・周期を基本設定とした場合のそれぞれについて、股関節側の同調ゲインと膝関節側の同調ゲインを変更したものを用いた。また、これらの条件に加えて、ロボティックウエアの非装着状態(nocrr1)、および、同調制御無しの場合(ccr_TFB:同調ゲインC=0)について、各被験者のそれぞれについて実験を行った。

【0065】
図13には、各種の制御条件のうち、以下に述べるように好適な結果が得られた制御条件群(条件No1~No5)の一例を示す。図示の制御条件群において、設定された歩行周期および関節振幅の値(%)は、ロボティックウエアを未装着状態で計測された被験者の健足側および患足側の股関節の振幅のうち大きい方の脚の周期および振幅をそれぞれ基
準(100%)とした場合の値である。股関節および膝関節の同調ゲインについては、それぞれ、健足側および患足側の双方について同一の値とした。

【0066】
(実験結果)
図14、図15には、図13に示す制御条件による実験結果を示す。図14(a)、(b)は、被験者のうちの2名の被験者(L012、L014)についての各制御条件下での歩行時間の計測結果を示すグラフである。図15(a)、(b)は、2名の被験者(L012、L014)について、制御条件No1~No5の下で得られた患足側股関節振幅の変化率(L_Hip rate)、健足側股関節振幅の変化率(R_Hip rate)、患足側膝関節振幅の変化率(L_Knee rate)、健足側膝関節振幅の変化率(R_Knee rate)、患足側歩行周期の変化率(L_cyc rate)、および、健足側歩行周期の変化率(R_cyc rate)を、制御条件No1~No5のそれぞれについて、この順番で示したグラフである。

【0067】
(実験結果についての考察)
これらの結果から分かるように、歩行時間短縮効果に有意差があること(p値で5%未満)が確認された。また、同調ゲインを、股関節アクチュエータについてはC=0.3、膝関節アクチュエータについてはC=0.4に設定することにより、歩行時間短縮効果(股関節振幅増加・周期減少の効果)が得られることが確認された。さらに、実験結果から、同調ゲインについては、股関節側および膝関節側の双方共に中程度に設定し、股関節側に比べて膝関節側を大きな値にする(アクチュエータの同調の度合いを高く設定する)ことが望ましいと考えられる。

【0068】
[その他の実施の形態]
上記の例は本発明を非外骨格型のロボティックウエアに適用した場合であるが、本発明は外骨格型のロボティックウエアに対しても同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 ロボティックウエア
2L 左側の股関節ユニット
2R 右側の股関節ユニット
3L、3R 膝関節ユニット
4L 左側のアクチュエータ
4R 右側のアクチュエータ
5L、5R 上アーム
6L、6R 下アーム
7 ウエストバンド
8L、8R 大腿部バンド
9L、9R モータ
10L、10R 減速機
11L、11R 関節軸
12L、12R トルクセンサ
20 制御装置
20L、20R 制御ユニット
21 制御用PC
22L、22R ゲイン調整部
23L、23R 解析部
24L、24R PID制御部
25L、25R アンプ
26L、26R AD変換器
27 I/Oインターフェース
28L、28R D/A変換器
29L、29R モータドライバ
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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