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明細書 :金属材の補修リサイクル方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-051578 (P2018-051578A)
公開日 平成30年4月5日(2018.4.5)
発明の名称または考案の名称 金属材の補修リサイクル方法
国際特許分類 B23K  20/12        (2006.01)
B21J   5/02        (2006.01)
B23P   6/04        (2006.01)
B21D  28/24        (2006.01)
FI B23K 20/12 Z
B21J 5/02 B
B23P 6/04
B21D 28/24 Z
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2016-188962 (P2016-188962)
出願日 平成28年9月28日(2016.9.28)
発明者または考案者 【氏名】北澤 君義
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 4E087
4E167
Fターム 4E087BA19
4E087CA17
4E087DB04
4E087DB24
4E167AA01
4E167BF02
要約 【課題】 溶接等の外部加熱を用いず、かつ複雑な加工を施すことなく金属材を再利用可能とする金属材の補修リサイクル方法を提供する。
【解決手段】 本発明に係る金属材の補修リサイクル方法は、被補修材10である金属材の欠陥個所を穴抜きして除去する欠陥個所の除去工程と、欠陥個所の除去工程後、被補修材10と同一の材質の板材からなる補修材12を使用し、摩擦圧接法により被補修材10の穴10aを補修材12により塞ぎながら被補修材10と補修材12とを一体化する摩擦圧接工程と、被補修材10に接合された補修材12を被補修材10の穴抜きした部位に充填する鍛造工程と、前記鍛造工程により生じた余肉部分を切削除去して再生品とする仕上げ工程とを備えることを特徴とする。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
被補修材である金属材の欠陥個所を穴抜きして除去する欠陥個所の除去工程と、
欠陥個所の除去工程後、前記被補修材と同一の材質の板材からなる補修材を使用し、摩擦圧接法により前記被補修材の穴を前記補修材により塞ぎながら被補修材と補修材とを一体化する摩擦圧接工程と、
前記被補修材に接合された補修材を前記被補修材の穴抜きした部位に充填する鍛造工程と、
前記鍛造工程により生じた余肉部分を切削除去して再生品とする仕上げ工程と、
を備えることを特徴とする金属材の補修リサイクル方法。
【請求項2】
前記摩擦圧接工程において、
前記補修材として、前記板材をカップ状に加工した補修材を使用することを特徴とする請求項1記載の金属材の補修リサイクル方法。
【請求項3】
前記補修材として、二重カップ状に加工した補修材を使用することを特徴とする請求項2記載の金属材の補修リサイクル方法。
【請求項4】
前記摩擦圧接工程において、
前記補修材を回転チャックに取り付け、前記回転チャックと前記カップ状に形成した補修材の底部との間に、補修材の底部を押圧する圧子を介装することを特徴とする請求項2または3記載の金属材の補修リサイクル方法。
【請求項5】
前記補修材として、カップ状に加工した補修材の底部と前記圧子との間に、前記被補修材と同一の材質の補助板材を介装することを特徴とする請求項4記載の金属材の補修リサイクル方法。
【請求項6】
前記圧子と前記補修材の底部との接触界面に、前記補修材と前記圧子との間の断熱性または離型性を調節する塗工材を設けることを特徴とする請求項4または5記載の金属材の補修リサイクル方法。
【請求項7】
前記摩擦圧接工程において、
前記被補修板を敷板上に支持し、前記敷板として前記被補修板よりも熱伝導性が良好な板材を使用することを特徴とする請求項1~6のいずれか一項記載の金属材の補修リサイクル方法。
【請求項8】
前記摩擦圧接工程において、
前記被補修板を敷板上に支持し、前記被補修板と前記敷板との間に、前記被補修板と前記敷板との間の断熱性を向上させる塗工材を設けることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項記載の金属材の補修リサイクル方法。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は金属材の補修リサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や家電等の廃棄物には、自動車ボディーパネルや家電筐体といった金属材が多く含まれている。これらの廃棄物に含まれている金属材をリサイクル方法として、従来は精錬技術が用いられている。精錬技術を利用してリサイクルする方法は、純度の高い金属を取り出すことができるという利点がある。しかしながら、精錬技術を利用してリサイクルする方法は、温室効果ガスを大量に排出する、エネルギーを大量に消費する、といった問題があり、また、金属材から不純物を除去して純度の高い金属として再生する処理は必ずしも容易ではないといった問題がある。
【0003】
精錬による方法とは別に、原形が残っている金属材を再生する手法として、金属材を部分的に補修して再生利用する方法もある。たとえば、金属材が損傷した部位に凹部を形成し、凹部に充填物を挿入して溶接する方法(特許文献1)、金属材に生じた亀裂と平行にピーニング加工を施し、あるいは亀裂の直上をピーニング加工し、塑性変形させて補修する方法(特許文献2)、金属材に生じた欠損部を肉盛り加工によって補修する方法(特許文献3、特許文献4)等がある。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特表2016-513018号公報
【特許文献2】特開2010-125534号公報
【特許文献3】特開2010-120104号公報
【特許文献4】特開2003-326387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金属材を補修する場合に、部分的に穴・きず・凹み、腐植といった欠陥がある場合には、欠陥部分を削除して同一の材質の金属材を用いて補修することができれば、品位低下を抑えた金属材として再利用することが可能であると考えられる。
本発明は、溶接等の外部加熱を用いずに、かつ複雑な加工を施すことなく金属材を再利用することを可能とする金属材の補修リサイクル方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る金属材の補修リサイクル方法は、被補修材である金属材の欠陥個所を穴抜きして除去する欠陥個所の除去工程と、欠陥個所の除去工程後、前記被補修材と同一の材質の板材からなる補修材を使用し、摩擦圧接法により前記被補修材の穴を前記補修材により塞ぎながら被補修材と補修材とを一体化する摩擦圧接工程と、前記被補修材に接合された補修材を前記被補修材の穴抜きした部位に充填する鍛造工程と、前記鍛造工程により生じた余肉部分を切削除去して再生品とする仕上げ工程とを備えることを特徴とする。
摩擦圧接法を利用して被補修材の穴を塞ぐとは、補修材を高速回転させながら被補修材の抜き穴位置に圧接することにより、補修材と被補修材とが接触した部位が摩擦熱により補修材と被補修材の再結晶温度以上となり、相互に接合されて穴を塞ぐ作用を意味する。補修材と被補修材は摩擦圧接により一体化する。
穴を塞いで摩擦圧接された部位では余肉が生じるから、鍛造を施した後、仕上げ工程で余肉を除去することにより、原形の金属材と同等の品質を備える再生品として得られる。
【0007】
被補修材を補修する補修材は、被補修材と同一の材質の廃棄物から調達して使用することができる。摩擦圧接法に使用する補修材の形態はとくに限定されるものではないが、被補修材と同一の材質からなる板材をカップ状に加工した補修材を使用すれば、カップ状の底部を被補修材の抜き穴の部位に圧接することで容易に被補修材を補修することができる。
前記摩擦圧接工程において、前記補修材として、前記板材をカップ状に加工した補修材を使用することが有効である。
また、補修材は一重のカップ状に形成したものを使用することもできるし、二重カップ状に加工した補修材を使用することもできる。二重カップ状に加工したものは、被補修材の補修個所を肉厚に補修することができるという利点がある。
【0008】
また、前記摩擦圧接工程において、前記補修材を回転チャックに取り付け、前記回転チャックと前記カップ状に形成した補修材の底部との間に、補修材の底部を押圧する圧子を介装することにより、カップ状の補修材を用いて摩擦圧接する作用をより確実にすることができる。また、補修材の底部と回転チャックとの間に圧子を介装することにより、補修材と回転チャックとの間の断熱特性を圧子を介することで調節することができるという利点もある。
また、前記補修材として、カップ状に加工した補修材の底部と前記圧子との間に、前記被補修材と同一の材質の補助板材を介装する方法も、摩擦圧接法により補修した際に肉厚に補修することができるという利点がある。
また、前記圧子と前記補修材の底部との接触界面に、前記補修材と前記圧子との間の断熱性または離型性を調節する塗工材を設けることにより、摩擦圧接による補修操作をより的確に調節することができる。
【0009】
また、前記摩擦圧接工程において、前記被補修板を敷板上に支持し、前記敷板として前記被補修板よりも熱伝導性が良好な板材を使用することにより、敷板と前記補修板との離型性を良好にしたり、摩擦圧接法による補修操作を的確に行うことができる。
また、前記摩擦圧接工程において、前記被補修板を敷板上に支持し、前記被補修板と前記敷板との間に、前記被補修板と前記敷板との間の断熱性を向上させる塗工材を設けることにより、摩擦圧接法を利用した補修操作を的確に行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る金属材の補修リサイクル方法によれば、摩擦圧接法により被補修材を補修することにより、高温炉を使ったり、大きなエネルギーを使ったりすることなく、部分的に穴やきずといった欠陥がある金属材の品質の低下を抑えて、再利用できる再生品として提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】金属材の補修リサイクル方法の工程を示す図である。
【図2】金属筐体から金属板を補修リサイクルする方法を示す説明図である。
【図3】補修材の加工例と補修方法を示す説明図である。
【図4】補修材の加工例と補修方法を示す説明図である。
【図5】補修材の加工例と補修方法を示す説明図である。
【図6】カップ状にしぼり加工した補修材の外観写真(a)と回転チャックに補修材を取り付けた状態の外観写真(b)である。
【図7】摩擦圧接処理後の被補修板と補修材の断面写真(a)と拡大写真(b)である。
【図8】摩擦圧接処理後の被補修板と補修材の断面写真(a)と拡大写真(b)である。
【図9】摩擦圧接処理後の被補修板と補修材の断面写真(a)と拡大写真(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(補修リサイクル方法)
図1は本発明に係る金属材の補修リサイクル方法を示す。
本発明に係る補修リサイクル方法では、まず。補修対象である板材(被補修材)に生じている、穴、きず、凹み、腐植等の欠陥個所を穴抜きして除去する処理を施す(欠陥個所の除去工程)。
図1(a)は、被補修材10を穴抜きした状態を示す。穴抜きする処理の際には、欠陥領域が完全に削除されるように、欠陥部分よりも大きめに被補修材を穴抜きする。

【0013】
被補修材10を穴抜きした後、被補修材と同一の材質の板材からなる補修材12を使用して摩擦圧接法により被補修材10の穴10aを、補修材により塞ぎながら被補修材10と補修材12とを一体化する(摩擦圧接工程)。
図1(b)は、被補修材10に形成された穴10aの上方から補修材12を被補修材10に向けて回転させながら圧接させる操作(摩擦圧接)を示している。摩擦圧接操作の際には、ベース材14に被補修材10をのせ、被補修材10と補修材12との間で圧接力と摩擦力が効果的に作用するようにする。

【0014】
補修材12を高速で回転させながら被補修材10に圧接させると、補修材12と被補修材10とが接触する部位で摩擦熱が生じ、補修材12と被補修材10とが再結晶温度以上の摩擦圧接可能な温度状態に到達し、補修材12と被補修材10とが溶着し、補修材12により穴10aが塞がれる。この摩擦圧接工程は、図1(b)に示すように、補修材12を被補修材10の表面の穴10aの周縁部に溶着させて接合させる操作である。

【0015】
補修材12を被補修材10の穴10aの周縁部に溶着した後、板鍛造処理により補修材12を穴10aに圧入する(鍛造工程)。
図1(c)に鍛造工程を示す。ダイ15aにより被補修材10を支持し、ダイ15aとパンチ15bにより補修材12をパンチし、被補修材10の穴10aであった部位を補修材12で完全に充填する。

【0016】
図1(d)は、鍛造工程後に、鍛造によって生じた余肉部分を切削除去し(仕上げ工程)、被補修品10を補修修理して得られた再生品16を示す。被補修品10の板厚に合わせて余肉部分を削除して仕上げることにより、欠陥部分のない金属材と同等の再生品として得ることができる。

【0017】
上述した摩擦圧接工程は、補修材12と被補修材10とが接触する部位を再結晶温度以上の摩擦圧接温度状態にして一体化し、かつ穴上面の板厚を増肉化させる処理であり、鍛造工程は、被補修材10に形成された穴10aを補修材12により充填するとともに、余肉の切削ライン(図1(c))の内側に補修材12を充填させる処理である。
摩擦圧接工程により被補修材10の穴10aを補修材12により塞ぐとともに、被補修材10と補修材12とを一体化することにより、後工程の鍛造工程で被補修材10の穴10aを補修材12によって完全に充填することができ、かつ補修材12と被補修材10とを堅固に一体化することができる。

【0018】
本発明における摩擦圧接工程においては、被補修材10と補修材12との間においては接触部分で相互に接合し、ベース材14と被補修材10及び補修材12との間においては接合(溶着)が生じないように部材間の熱伝導条件を調節する。
たとえば、被補修材10と補修材12との間では、補修材12を支持する回転チャック側に熱が逃げないようにして、被補修材10と補修材12とが的確に接合できるようにし、ベース材14と被補修材10との間では補修材12側よりも伝熱性を良好にして、ベース材14側に熱を放散させ、被補修材10とベース材14とが接合しないように設定するのがよい。もちろん、ベース材14と被補修材10との伝熱性を高くし過ぎて、被補修材10と補修材12との摩擦圧接接合が阻害されることは回避する必要がある。

【0019】
(金属筐体の補修リサイクル方法)
図2は、廃棄物として大量に排出される金属筐体から平板状の金属板を補修リサイクルする例である。
図2は、廃棄された金属筐体の側面を切り開いて展開した状態である。金属筐体の底面に欠陥部分があったとし、欠陥部分を補修して、底面部を金属板として再利用する。この場合、底面部が上述した被補修材に相当する。補修材は再利用しない金属筐体の側面部から調達すればよい。図2では被補修材を被移植板、補修材を自己移植板としている。
底面部に生じていた欠陥部分を円形に穴抜きし、金属筐体の側面部から得た補修材を摩擦圧接法により底面部の穴を塞いで底面部と一体化した後、鍛造工程と余肉分を削除する仕上げ工程により、金属筐体の底面部を金属板として再利用することができる。

【0020】
この補修リサイクル方法の場合は、補修材を金属筐体から調達することで、被補修材と完全に同一の材質の補修材が使用できるという利点がある。被補修材と補修材に同一の材質の部材を利用することにより、もとの素材の品質をできるだけ低下させずに再生品として提供することが可能になる。もちろん、図2に示すような、同一の金属筐体から補修材を調達せず、同一の材質のスクラップ材から補修材を調達して被補修材を補修することも可能である。

【0021】
なお、図2では、被補修材の欠陥部分を円形に穴抜きしている。被補修材の欠陥部分を穴抜きする場合の穴形状については、欠陥部分の形状により適宜選択することが可能であり、抜き穴の形状は円形に限るものではない。ただし、補修材は高速で回転させながら摩擦圧接方法により被補修材と一体化させるから、通常は、抜き穴形状を円形としておくことで問題なく補修ができる。

【0022】
(補修材の作製例と摩擦圧接処理)
補修材は回転チャックに取り付けて、回転させながら被補修材に圧接させ、摩擦圧接方法によって抜き穴を補修する。したがって、補修材は回転チャックに取り付けて被補修材に対して圧接できる形態として使用する。
図3、4、5は、補修材を加工して補修用に使用できるように作製した補修材の作製例と補修例を示す。いずれの補修材もスクラップ材等から調達した板材をカップ状にしぼり加工したものである。

【0023】
図3に示す補修材12aは、補修に用いる板材をカップ状にしぼり加工し、カップの開口部から外方に延出片12bを延出させたものである。
補修材12aは、延出片12bを回転チャック20にねじ止めして固定する。
補修材12aを回転チャック20に固定する際に、回転チャック20の押圧部20aとカップの底部との間に圧子24を挿入する。圧子24は補修材12aの底部に当接する面(押圧面)を平坦面状とし、カップの底部を面的に押圧する形態とする。圧子24は、被補修材10に対して補修材12aの底部を押圧する作用が確実に及ぶようにするためのものである。

【0024】
なお、圧子24は回転チャック20からの加圧力を被補修材10に確実に作用させることに加えて、摩擦圧接作用により補修材12aと被補修材10との間で生じる摩擦熱が回転チャック20側に逃げないように補修材12aと回転チャック20との間の熱伝導性を調節する作用も有する。圧子24に使用する金属を選択する際に金属の熱伝導率を考慮することで適当な圧子24を使用することができる。
圧子24の材質を選択することに加えて、圧子24と補修材12aの底部との接触界面に、断熱性を調節したり、補修後の補修材と圧子24との離型性を向上させたりすることを目的とする断熱材や離型材等の塗工材を付与する方法も有効である。

【0025】
摩擦圧接工程では、回転チャック20にカップ状に加工した補修材12aを取り付ける一方、ベース30上に敷板32を敷き、その上に被補修板10を配置し、クランプ板34により被補修板10をクランプして補修処理する。
敷板32は、被補修材10を保護する作用と、摩擦圧接工程で補修材12aと被補修材10との間で生じる摩擦熱を敷板32側に伝導させることにより、被補修材10と敷板32との接合を避けながら、被補修材10と補修材12との間の的確な再結晶以上の加熱作用と一体化作用が生じるようにする目的で使用する。
敷板32の材質や厚さは補修対象である被補修板10の材質や厚さに応じて適宜使用すればよい。
また、圧子24と補修材12aとの接触界面に断熱性や離型性を調節する塗工材を設けた方法と同様に、被補修材10と敷板32との接触界面に断熱性や離型性を調節する塗工材を設けることもできる。

【0026】
図4に示す補修材12cも、図3に示した補修材12aと同様に、補修用の板材をカップ状にしぼり加工したものである。図3の補修材12aと異なるのは、補修用の板材を2枚使用して、二重カップ状とした点である。
補修用の板材をしぼり加工する際に、板材を二枚重ねにしてしぼり加工したり、カップを2個重ねて決め押しして重ね合わせすることにより、図4に示すような二重カップ状の補修材12cを得ることができる。
補修材12cを回転チャック20に取り付ける方法も補修材12aと同様であり、被補修材10をベース30上で支持する方法、摩擦圧接方法により被補修材10被補修材10に設けた穴10a部分を補修する操作方法も図3に示した例と同様である。

【0027】
図4に示すように補修材を二重カップ状に形成することによる利点は、被補修材10の穴10aの上部を補修材12bによって塞ぐ際に、一重カップ状とした補修材と比較して肉厚に形成することができるという点である。被補修材10の抜き穴が比較的大径であったりするような場合には、後工程の鍛造工程と余肉を切削除去する仕上げ工程で補修材から供給する補修材の量が不足することが起こり得る。このような場合には、補修材を二重カップ状とすることにより十分な量の補修材を供給することができる。
なお、被補修材10の材質や厚さによって、補修材を二重カップ状としても補修部分の肉厚が不足するような場合には三重カップ以上の重ねカップ状とすることも可能である。

【0028】
図5は、カップ状に加工した補修材を使用する例である。この例では、補修材12dのカップの底に、補修材と同一の材質の補助板材12eを1枚介装させ、補助板材12eを介して圧子24により補修材12dを圧接する構成としたものである。補助板材12eは補修材12dと同厚のものであってもよいし、同一の材質のものであれば、厚さが異なるものであってもよい。補助板材12eの平面形状はとくには限定しないが、通常は円形状のものを使用すればよい。

【0029】
図5に示す、補助板材12eを介装した補修材を使用する方法も、図4に示す二重カップ状の補修材12cを使用する例と同様に、補修材12dから供給する補修材の供給量が不足しないようにすることを目的としている。補助板材12eを用いれば、一重カップの補修材12dと補助板材12eの双方から補修材が供給されることで、摩擦圧接後の鍛造工程とこれに続く余肉切削除去(仕上げ工程)により均一な板厚の板に戻すのに十分な量の補修材を供給することができる。また、補助板材12eも1枚に限らず、2枚、3枚と使うことも可能である。また、補助板材12eは一重カップ状に加工した補修材に適用する場合に限らず、二重カップ状等の複数のカップを組み合わせた補修材に適用してもよい。

【0030】
なお、図4、5に示した形態の補修材を使用する場合も、被補修材10の材質等に応じて、前述したと同様に、圧子24と補修材の底部との接触界面に断熱材や離型材等の塗工材を設けるといったことが可能であり、敷板32と被補修材10との接触界面に、断熱材や離型材等の塗工材を設けることも可能である。
また、図3、4、5では、敷板32上に被補修板10をのせて補修する例を示しているが、敷板32は被補修板10とベース30との間の伝熱性を調整する作用を兼ねて使用するものであり、必ず使用しなければならないものではない。

【0031】
(摩擦圧接実験)
以下、補修材を用いて被補修材(被補修板)を摩擦圧接方法により補修する処理について実験した結果について説明する。
実験に使用した金属材(板材)は、板厚1.0mmの市販の鋼板(SPCC-SD)である。
150mm×70mmの被補修板(被補修材)の中央にプレス抜き、レーザー抜き、ドリル穴あけにより、穴径6mm、10mm、20mmの3条件で穴あけした。
一方、被補修材として使用した鋼板と同一の材質の鋼鈑から正方形の板材を切り出し、カップ状にしぼり加工して補修材を作成した。補修材には40mm×40mmの板材を使用した。

【0032】
図6(a)に、カップ状にしぼり加工した補修材の外観写真を示す。図6(b)は回転チャックに補修材を取り付けた状態の外観写真である。正方形の板材からしぼり加工して補修材を作成すると、カップの開口部から四方に延出片が延出するから、各片を回転チャックにねじ止めすることで、補修材を堅固に回転チャックに取り付けることができる。もちろん、補修材を加工する板材の形状は正方形に限らず円形等の適宜形状に板取りしてかまわない。
摩擦圧接処理は旋盤タイプの装置を自作して実験した。回転チャックに補修材を取り付け1600rpmで回転させ、旋盤の刃物台側に取り付けられたホルダーベースに敷板を介して被補修板を取り付け、補修材に向けて押し込む操作により行った。

【0033】
(実験結果:1)
図7は、二重カップ状に加工した補修材を使用して被補修板を補修した例を示す。図7(a)は補修処理後の被補修板と補修材の断面写真であり、図7(b)は接合部の拡大写真である。摩擦圧接処理を施した状態で、被補修板と補修材が摩擦発熱部を介して連結している。
被補修板は穴径6mmの円形に穴抜きしたものである。
実験では、ステンレス製の圧子を使用し、補修材と圧子との接触界面に速乾性セメントを薄く塗布し断熱性と離型性を高めるようにした。
この実験では敷板を使用せず被補修板とベースとの接触界面に速乾性セメントを塗布した。速乾性セメントは補修板とベースとの間の断熱性を高めるために使用した。
使用した補修材の最外径は24mm、カップ部分の高さは17mmである。

【0034】
上記実験によって得られた補修品の接合部分を観察すると、図7(b)に示すように、セメントとの接触部が昇温して半溶融状態(固液二相状態)に到達したために生じた不規則なうねり状の表面状態に至るとともに、補修材と被補修板の接合部分に、被補修板を厚さ方向に貫通するねじり破壊が生じている。
これは、被補修材と敷板との接触界面に速乾性セメントを塗布して断熱性を高くし過ぎたため、被補修板に摩擦熱が集中してその変形抵抗が補修板側よりも低下したためと考えられる。

【0035】
(実験結果:2)
実験結果1では、被補修板と敷板との間の断熱性が高過ぎたと考えられることから、敷板として、板厚0.6mmのチタン板を使用し、敷板と被補修板との接触界面には速乾性セメントを塗布せずに、実験結果1と同一の条件で摩擦圧接実験を行った。チタン板を敷板に使用した理由は、金属の中で比較的熱伝導性の低いチタンを使用することにより、ある程度の断熱性を確保する意図である。
図8に摩擦圧接処理後の補修材と被補修板の断面写真を示す。図8(b)から、敷板に使用したチタン板と被補修材とが相互に結合した状態になっていること、被補修板を厚さ方向に貫通するねじり破壊が生じていることが分かる。

【0036】
チタン板と被補修材との接合は、界面が波打ち状となる摩擦攪拌接合によるものである。敷板のチタン板と被補修材とが相互に接合してしまう理由としては、敷板として使用したチタン板の断熱性が高く、敷板からの熱の放散が不十分であったために相互に再結晶温度以上の摩擦圧接可能状態に到達したことが考えられる。
被補修板を厚さ方向に貫通するねじり破壊が生じたのは、被補修板側で摩擦熱が逃げにくいために、補修板側よりも温度上昇し、補修板側よりも変形抵抗が低下したためであると考えられる。

【0037】
(実験結果:3)
実験結果2では敷板にチタン板を使用したことで、敷板と被補修板とが相互に接合してしまったことから、チタン板よりも熱伝導性の高い銅板(板厚1mm)を敷板に使用し、二重カップの補修材を使用して補修する実験を行った。
図9に実験結果を示す。この実験では、図9に示すように、摩擦圧接処理を行った結果、摩擦発熱で再結晶温度以上の状態に加熱された補修材の底部と被補修材の上面部が一体化し、かつ、底部の周縁部にねじり破壊が発生して、摩擦圧接部分から補修材が分離した。また、被補修板についてみると、抜き穴部分を覆うように増肉した摩擦圧接部が形成された。
この実験結果は、敷板として被補修材(鋼板)よりも熱伝導性が良好な銅板を使用したことにより、摩擦熱が敷板側から放散され、敷板と被補修材とが接合することが回避されたことを示す。
また、摩擦圧接方法により補修材と被補修材とが相互に接合して一体化し、増肉できたことから、敷板と被補修材との断熱性等と適宜調節することにより、被補修板の穴を補修し、再生品としてリサイクルできる可能性を示すものである。
【符号の説明】
【0038】
10 被補修板
12、12a、12c、12d 補修材
12b 延出片
12e 補助板材
14 ベース材
16 再生品
20 回転チャック
24 圧子
30 ベース
32 敷板
34 クランプ板
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
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