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明細書 :肺がん進行度合いの評価方法,肺がん進行度合い評価装置,肺がん進行度合い評価プログラム,肺がん進行度合い評価システム及び情報通信端末装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6403170号 (P6403170)
公開番号 特開2018-072074 (P2018-072074A)
登録日 平成30年9月21日(2018.9.21)
発行日 平成30年10月10日(2018.10.10)
公開日 平成30年5月10日(2018.5.10)
発明の名称または考案の名称 肺がん進行度合いの評価方法,肺がん進行度合い評価装置,肺がん進行度合い評価プログラム,肺がん進行度合い評価システム及び情報通信端末装置
国際特許分類 G01N  33/50        (2006.01)
G01N  33/68        (2006.01)
FI G01N 33/50 G
G01N 33/68
請求項の数または発明の数 7
全頁数 20
出願番号 特願2016-209657 (P2016-209657)
出願日 平成28年10月26日(2016.10.26)
審査請求日 平成30年2月3日(2018.2.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
発明者または考案者 【氏名】山口 昌樹
【氏名】小泉 知展
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100118706、【弁理士】、【氏名又は名称】青山 陽
審査官 【審査官】磯田 真美
参考文献・文献 国際公開第2008/016111(WO,A1)
WOJCIK, E. et al.,IL-6 and VEGF in Small Cell Lung Cancer Patients,ANTICANCER RESEARCH,2010年,Vol. 30,pp. 1773-1778
河崎雄司ほか,肺癌症例における血清中のGM-CSF値の日内変動,Biotherapy,1998年 9月,Vol. 12, No. 9,pp. 1243-1248
三上真顕ほか,肺癌患者における血清Interleukin-6の日内リズムと病期との関係,米子医学雑誌,1998年,Vol. 49, No. 2,pp. 69-82
XIAO, H. et al.,Proteomic Analysis of Human Saliva From Lung Cancer Patients Using Two-Dimensional Difference Gel El,Molecular & Cellular Proteomics,2012年 2月,Vol. 11, No. 2,pp. 1-12
ZHANG, L. et al.,Development of transcriptomic biomarker signature in human saliva to detect lung cancer,Cellular and Molecular Life Sciences,2012年,Vol. 69, No. 19,pp. 3341-3350
IDRIS, A. et al.,Interleukin 1beta - A Potential Salivary Biomarker for Cancer Progression?,BIOMARKERS IN CANCER,2015年,Vol. 7,pp. 25-29
調査した分野 G01N 33/48 - 33/98
特許請求の範囲 【請求項1】
サイトカインの濃度データの経時的変化に基づき,肺がんの進行度合いを評価するために、評価対象から採取した唾液中の少なくとも2種類のサイトカインの濃度データを経時的に取得する肺がん進行度合いの評価方法。
【請求項2】
前記サイトカインの濃度データにはIP-10,IL-1ra,IL-1β,IL-6,IL-7,IL-8,IL-9,IL-10,IL-12p70,IL-13,G-CSF,TNF-α,MIP-1α,MIP-1β,VEGF,MCP-1,PDGF-BB,IFN-γ及びEotaxinの少なくとも2種のサイトカインの濃度データが含まれていることを特徴とする請求項1に記載の肺がん進行度合いの評価方法。
【請求項3】
評価対象における肺がん進行度を評価する装置であって,
制御部と記憶部とを備え,
前記制御部は,あらかじめ前記記憶部に記憶された唾液中のサイトカインの濃度データの経時的変化と,評価対象の唾液から取得した少なくとも2種類のサイトカインの濃度の経時的変化とを比較することにより肺がんの進行度合いを評価する評価手段を備えることを特徴とする肺がん進行度合い評価装置。
【請求項4】
制御部と記憶部とを備えた情報処理装置において実行させるための評価対象における肺がん進行度を評価する肺がん進行度合い評価プログラムであって,
前記制御部において実行させるための,あらかじめ前記記憶部に記憶された唾液中のサイトカインの濃度データの経時的変化と,評価対象の唾液から取得した少なくとも2種類のサイトカインの濃度の経時的変化とを比較することにより肺がんの進行度合いを評価する評価ステップを含むことを特徴とする肺がん進行度合い評価プログラム。
【請求項5】
制御部と記憶部とを備え,評価対象における肺がん進行度を評価する肺がん進行度合い評価装置と,制御部を備え,唾液中のサイトカインの濃度値に関する前記評価対象のサイトカインの濃度データを提供する情報通信端末装置と,がネットワークを介して通信可能に接続された肺がん進行度合い評価システムであって,
前記情報通信端末装置の前記制御部は,
前記評価対象の少なくとも2種類の前記サイトカインの濃度データを前記肺がん進行度合い評価装置へ送信するサイトカイン濃度データ送信手段と,前記肺がん進行度合い評価装置から送信された評価対象における前記肺がん進行度に関する評価結果を受信する評価結果受信手段と,を備え,
前記肺がん進行度合い評価装置の前記制御部は,前記情報通信端末装置から送信された前記評価対象の少なくとも2種類の前記サイトカインの濃度データを受信するサイトカイン濃度データ受信手段と,前記サイトカイン濃度データ受信手段で受信した前記評価対象の少なくとも2種類の前記サイトカインの濃度データの経時的変化に基づいて前記肺がん進行度を評価する評価手段と,前記評価手段で得られた前記評価結果を前記情報通信端末装置へ送信する評価結果送信手段と,を備えることを特徴とする肺がん進行度合い評価システム。
【請求項6】
評価対象における肺がん進行度を評価する肺がん進行度合い評価装置とネットワークを介して通信可能に接続された制御部とを備え,唾液中のサイトカインの濃度値に関する前記評価対象のサイトカインの濃度データを提供する情報通信端末装置であって,
前記制御部は,前記評価対象の少なくとも2種類の前記サイトカインの濃度データを前記肺がん進行度合い評価装置へ送信するサイトカイン濃度データ送信手段と,
前記肺がん進行度合い評価装置から送信された前記評価対象における前記肺がん進行度に関する評価結果を受信する評価結果受信手段と,を備え,
前記評価結果は,前記肺がん進行度合い評価装置が,前記情報通信端末装置から送信された前記評価対象の少なくとも2種類の前記サイトカインの濃度データを受信し,受信した前記評価対象の少なくとも2種類の前記サイトカイン濃度データの経時的変化に基づき肺がんの進行度合いを評価した結果であることを特徴とする情報通信端末装置。
【請求項7】
唾液中のサイトカインの濃度値に関する評価対象のサイトカインの濃度データを提供する情報通信端末装置とネットワークを介して通信可能に接続された制御部と記憶部とを備え,前記評価対象における肺がん進行度を評価する肺がん進行度合い評価装置であって,
前記制御部は,
前記情報通信端末装置から送信された前記評価対象の少なくとも2種類の前記サイトカインの濃度データを受信するサイトカイン濃度データ受信手段と,
前記サイトカイン濃度データ受信手段で受信した前記評価対象の少なくとも2種類の前記サイトカイン濃度データの経時的変化に基づき肺がんの進行度合いを評価する評価手段と,
前記評価手段で得られた,前記評価対象における前記肺がん進行度に関する評価結果を前記情報通信端末装置へ送信する評価結果手段と,を備えることを特徴とする肺がん進行度合い評価装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は,評価対象から採取されたサイトカインの濃度データの経時的な変化から肺がんの進行度合いの評価を行う肺がん進行度合いの評価方法,並びにそれに用いる評価装置,プログラム,評価システム及び情報通信端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
がん患者の死因の9割はがんの転移によるものであり,がんの転移を制圧するものはがんを制圧するといわれている。しかし,現在臨床で使用されているCTやMRIなどの形態情報に基づく診断機器や,PETなどの機能情報に基づく診断機器では,直径 1 cm 以下のリンパ節転移を正確に検出できるまでの精度を有していない。
【0003】
がん転移はランダムに起こるわけではなく,乳がんは肺へ,大腸がんは肝臓へ等,ある程度の指向性がある。この臓器選択性を制御しているのがケモカインと呼ばれるサイトカインの一群である。ケモカインは細胞遊走を主要な作用としており,どの細胞(リンパ球) がどの臓器に移行するかは,ケモカインとその受容体により厳密に制御されている(非特許文献1)。また,Scopusなどの文献検索エンジンで調査すると,1977年以降,がんとサイトカインに関する21万編に及ぶ英文学術論文が発表されており,がんの発症とサイトカインの種類や濃度との間には,何らかの関連があるのではないかと考えられている。そしてさらには,体液中のサイトカインの濃度データをがん診断等利用する提案もなされている(例えば,特許文献1~4)。
【0004】
また,ステージの進行に伴い濃度が上昇するサイトカインについての先行技術調査を行ったところ,Bodoらは,非特許文献2において,IL-6の濃度がステージとともに上昇したと述べている。さらに,Liuらは,非特許文献3においてcytokine-1 (MIC-1) の濃度がステージとともに上昇したと述べている。しかし,いずれも1種類のサイトカイン濃度のみに着目しており,複数のサイトカインレベルの関係については報告されていない。
一方,ステージの進行に伴い濃度が低下するサイトカインについての先行技術調査を行ったところ,Matanicらは非特許文献4においてFig.2を示し,非小細胞肺がん(NSCLC)の患者において,病気の進行中にサイトカインレベルの若干の低下が観察されたと述べているが,統計学的な解析に基づく有意性は示していない。また,Guadagniらは非特許文献5におけるFig.1において,IL-6のレベルがNSCLCのstage1-3と比較してstage4で低下しているように見えるようなデータを示しているが,統計学的な解析に基づく有意性は示していない。つまり,ステージの進行に伴い濃度が低下するサイトカインは存在するかもしれないが,医学的エビデンスが示されているとは言えない。
【0005】
なお,サイトカインによるがんの評価ではないが,体液中における2種類以上のアミノ酸の濃度データを用いて膵臓がんを評価する提案がなされており,本件発明における評価の解析手法として関連しているため,参照した(特許文献5)。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特表2014-510517号公報
【特許文献2】特開2013-539857号公報
【特許文献3】特開2009-513125号公報
【特許文献4】特開2001-89392号公報
【特許文献5】特開2014-1061147号公報
【0007】

【非特許文献1】小泉 望,長島 幸広,生化学 第85巻 第12号 2013年12月1099-1101.
【非特許文献2】Bodo E. Lippitz and Robert A. Harris: Cytokine patterns in cancer patients: A review of the correlation between interleukin 6 and prognosis, Oncoimmunology, 5(5), 12 pages (2016)
【非特許文献3】Yu-Ning Liu, et.al.: Macrophage Inhibitory Cytokine-1 as a Novel Diagnostic and Prognostic Biomarker in Stage I and II Nonsmall Cell Lung, Chinese Medical Journal, 129 (17) 2026-2032 (2016)
【非特許文献4】D. Matanic et.al.: Cytokines in Patients with Lung Cancer, Blackwell Publishing Ltd..Scandinavian journal of Immunology 57, 173-178 (2003)
【非特許文献5】F. Guadagni et.al.: Correlation between tumor necrosis factor-alpha and D-dimer levels in non-small cell lung cancer patients, Lung Cancer, 44, 303-310 (2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
生体内での情報伝達を担うサイトカインのネットワークは極めて複雑であり,サイトカインの濃度データから,肺がん進行度合いを判断することは未だ確立されていない。
【0009】
本発明は,上記従来の実情に鑑みてなされたものであり,サイトカインの濃度データの経時的な変化から,肺がん進行度合いを判断できる評価方法,並びに,それに用いる評価装置,プログラム,評価システム及び情報通信端末装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは,肺がんと体液中のサイトカインの濃度について調べた結果,両者の間には高い相関関係があり,サイトカインの濃度値から肺がんにある可能性の程度を評価できることを見出し,すでに特許出願を行っている(特願2016-145095)。
その後,さらに研究を進めた結果,サイトカインの濃度を経時的に測定した場合,サイトカインの種類によってその挙動は異なり,肺がんの進行度合いが進むにつれて濃度が上昇するサイトカインや,これとは逆に,肺がんのステージ末期になって低下傾向となるサイトカインもあるという意外な結果を発見した。そして,さらには,サイトカイン濃度の経時的な変化から肺がん進行度合いが評価できるということを見出し,本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち,本発明の肺がん進行度合いの評価方法は,評価対象から採取したサンプル中のサイトカインの濃度データを経時的に取得するデータ取得ステップと,
該サイトカイン濃度データの経時的変化に基づき,肺がんの進行度合いを評価する評価ステップと,を備える肺がん進行度合いの評価方法であって,
前記データ取得ステップでは,少なくとも2種類のサイトカインの濃度データを経時的に取得し,
前記評価ステップでは,該データ取得ステップで経時的に取得した少なくとも2種類のサイトカインの濃度データに基づき,肺がんの進行度合いを評価する,ことを特徴とする。
【0012】
本発明では,評価対象から採取したサンプルから取得した少なくとも2種類のサイトカインの濃度データを経時的に取得する。ここで,濃度データを経時的に取得するとは,濃度データを間欠的に採取したり(例えば,定期的に唾液や頬粘膜や血液等のサンプルを採取し,その中のサイトカインの濃度を調べる),センサを使って濃度データを連続的に取得したりすることをいう。こうして得られた少なくとも2種類のサイトカインの濃度データを経時的変化(例えば,時間とサイトカイン濃度の関係を示すグラフの接線の傾きや,肺がんのステージの進行とサイトカインの濃度の関係を示すグラフの接線の傾き等)を調べることによって,評価対象における肺がん進行度合いを評価する。発明者らの調査結果によれば,これにより,肺がん進行度合いを知る上で参考となり得る信頼性の高い情報を提供することができる。
【0013】
また,本発明の肺がん進行度合いの評価方法では,データ取得ステップでは,少なくとも2種類のサイトカインの濃度データを経時的に取得し,評価ステップでは,該データ取得ステップで経時的に取得した少なくとも2種類のサイトカインの濃度データに基づき,肺がんの進行度合いを評価するため,単一のサイトカインの濃度データの経時変化に基づいて肺がんの進行度合いを求める場合よりも,評価の信頼性が高くなる。
【0014】
サイトカインの濃度の経時変化は,サイトカインの種類によってその挙動が異なる。発明者らの研究結果によれば,多くの種類のあるサイトカインの中でもIP-10,IL-1ra,IL-1β,IL-5,IL-6,IL-7,IL-8,IL-9,IL-10,IL-12p70,IL-13,G-CSF,TNF-α,MIP-1α,MIP-1β,VEGF,MCP-1,PDGF-BB,IFN-γ,FGF及びEotaxinについては,濃度データの経時変化と肺がんの進行度合いとの間に高い相関性が認められた。このため,本発明の肺がん進行度合いの評価方法において,これらのサイトカインの濃度データを経時的に取得することが好ましい。
【0015】
本発明の肺がん進行度合いの評価方法において,評価対象から採取するサンプルとしては,唾液や血液や頬粘膜からの抽出液等の体液が挙げられる。その中でも,唾液は採取が容易であり,より非侵襲的であるという観点から好ましい。
【0016】
また,本発明の肺がん進行度合い評価装置は,評価対象における肺がん進行度を評価する装置であって,
制御部と記憶部とを備え,
前記制御部は,あらかじめ前記記憶部に記憶されたサイトカイン濃度データの経時的変化と,評価対象から取得した少なくとも2種類のサイトカインの濃度の経時的変化とを比較することにより肺がんの進行度合いを評価する評価手段を備えることを特徴とする。
【0017】
また,本発明の肺がん進行度合いの評価方法は,
制御部と記憶部とを備えた情報処理装置において実行される,評価対象における肺がん進行度合いの評価方法であって,
前記制御部において実行される,あらかじめ前記記憶部に記憶されたサイトカイン濃度データの経時的変化と,評価対象から取得した少なくとも2種類のサイトカインの濃度の経時的変化とを比較することにより肺がんの進行度合いを評価する評価ステップを含むことを特徴とする。
【0018】
また,本発明の肺がん進行度合い評価プログラムは,
制御部と記憶部とを備えた情報処理装置において実行させるための評価対象における肺がん進行度を評価する肺がん進行度合い評価プログラムであって,
前記制御部において実行させるための,あらかじめ前記記憶部に記憶されたサイトカイン濃度データの経時的変化と,評価対象から取得した少なくとも2種類のサイトカインの濃度の経時的変化とを比較することにより肺がんの進行度合いを評価する評価ステップを含むことを特徴とする。
【0019】
また,本発明の肺がん進行度合い評価システムは,
制御部と記憶部とを備え,評価対象における肺がん進行度を評価する肺がん進行度合い評価装置と,制御部を備え,サイトカインの濃度値に関する前記評価対象のサイトカイン濃度データを提供する情報通信端末装置と,がネットワークを介して通信可能に接続された肺がん進行度合い評価システムであって,
前記情報通信端末装置の前記制御部は,
前記評価対象の少なくとも2種類の前記サイトカイン濃度データを前記肺がん進行度合い評価装置へ送信するサイトカイン濃度データ送信手段と,前記肺がん進行度合い評価装置から送信された評価対象における前記肺がん進行度に関する評価結果を受信する評価結果受信手段と,を備え,
前記肺がん進行度合い評価装置の前記制御部は,前記情報通信端末装置から送信された前記評価対象の少なくとも2種類の前記サイトカイン濃度データを受信するサイトカイン濃度データ受信手段と,前記サイトカイン濃度データ受信手段で受信した前記評価対象の少なくとも2種類の前記サイトカイン濃度データの経時的変化に基づいて前記肺がん進行度を評価する評価手段と,前記評価手段で得られた前記評価結果を前記情報通信端末装置へ送信する評価結果送信手段と,を備えることを特徴とする。
【0020】
また,本発明の情報通信端末装置は,
評価対象における肺がん進行度を評価する肺がん進行度合い評価装置とネットワークを介して通信可能に接続された制御部とを備え,サイトカインの濃度値に関する前記評価対象のサイトカイン濃度データを提供する情報通信端末装置であって,
前記制御部は,前記評価対象の少なくとも2種類の前記サイトカイン濃度データを前記肺がん進行度合い評価装置へ送信するサイトカイン濃度データ送信手段と,
前記肺がん進行度合い評価装置から送信された前記評価対象における前記肺がん進行度に関する評価結果を受信する評価結果受信手段と,を備え,
前記評価結果は,前記肺がん進行度合い評価装置が,前記情報通信端末装置から送信された前記表記評価対象の少なくとも2種類の前記サイトカイン濃度データを受信し,受信した前記評価対象の少なくとも2種類の前記サイトカイン濃度データの経時的変化に基づき肺がんの進行度合いを評価した結果であることを特徴とする。
【0021】
また,本発明の肺がん進行度合い評価装置は,
サイトカインの濃度値に関する評価対象のサイトカイン濃度データを提供する情報通信端末装置とネットワークを介して通信可能に接続された制御部と記憶部とを備え,前記評価対象における肺がん進行度を評価する肺がん進行度合い評価装置であって,
前記制御部は,
前記情報通信端末装置から送信された前記評価対象の少なくとも2種類の前記サイトカイン濃度データを受信するサイトカイン濃度データ受信手段と,
前記サイトカイン濃度データ受信手段で受信した前記評価対象の少なくとも2種類の前記サイトカイン濃度データの経時的変化に基づき肺がんの進行度合いを評価する価手段と,
前記評価手段で得られた,前記評価対象における前記肺がん進行度に関する評価結果を前記情報通信端末装置へ送信する評価結果手段と,を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態1の基本原理を示す図である。
【図2】実施例1における検体採取のタイムスケジュールを示す図である。
【図3】経時的に変化する肺がんのステージの数値と体液中のサイトカインの濃度との関係を示すグラフの例である。
【図4】血液検体中における27種類のサイトカインの濃度を分析した結果を濃度別に分類し,肺がんステージとの関係を示したグラフである。
【図5】血液検体中において,ステージの進行とともに上昇傾向となったサイトカインを分類し,値を正規化したグラフである。
【図6】血液検体中において,ステージの進行とともに一時は上昇したが,末期になるにつれ低下傾向となったサイトカインを分類し,値を正規化したグラフである。
【図7】唾液検体中における27種類のサイトカインの濃度を分析した結果を濃度別に分類し,肺がんステージとの関係を示したグラフである。
【図8】唾液検体において,ステージの進行とともに上昇傾向となったサイトカインを分類し,値を正規化したグラフである。
【図9】唾液検体において,ステージの進行とともに一時は上昇したが,末期になるにつれ低下傾向となったサイトカインを分類し,値を正規化したグラフである。
【図10】頬粘膜検体における27種類のサイトカインの濃度を分析した結果を濃度別に分類し,肺がんステージとの関係を示したグラフである。
【図11】頬粘膜検体において,ステージの進行とともに上昇傾向となったサイトカインを分類し,値を正規化したグラフである。
【図12】頬粘膜検体において,ステージの進行とともに一時は上昇したが,末期になるにつれ低下傾向となったサイトカインを分類し,値を正規化したグラフである。
【図13】実施形態1にかかる肺がん進行度合いの評価方法の一例を示すフローチャートである。
【図14】本システムの全体構成の一例を示す図である。
【図15】本システムの肺がん進行度合い評価装置100の構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下,本発明を具体化した実施形態について説明する。ただし,この発明はこの実施形態及び以下に示す実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲を逸脱せず,当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。

【0024】
<実施形態1>
実施形態1の基本原理について,図1を参照して説明する。図1は実施形態1の基本原理を示す原理構成図である。

【0025】
まず,評価対象(動物やヒト)から定期的にサンプル(例えば血液,唾液,頬粘膜,血漿,血清,汗,尿等)を取得し,各サンプル中の少なくとも2種類以上のサイトカインの濃度を経時的に複数回測定する(ステップS11)。

【0026】
なお,ステップS11では,例えば,サイトカインの濃度測定を行う企業等が測定したサイトカイン濃度データを取得してもよく,また,評価対象から採取した血液や唾液や頬粘膜から測定サンプルを採取し,測定してもよい。サイトカイン濃度データの単位については特に限定はなく,例えばモル濃度や重量濃度,これらの濃度に任意の定数を加減乗除することで得られるものでもよい。

【0027】
次に,ステップS11で経時的に取得した少なくとも2種類のサイトカイン濃度データの経時変化に基づき,評価対象における肺がん進行度合いを評価する(ステップS12)。具体的には,サイトカインの種類別に,その濃度が肺がんの進行度合いとどのような相関関係があるかをあらかじめ調べておき,それらとの比較から肺がん度合いを評価する。肺がんの進行度合いが進むにつれて濃度が上昇するサイトカインとしては,例えば,IP-10,IL-8,TNF-α等が挙げられる。また,これとは逆に,肺がんのステージ末期になって低下傾向となるサイトカインとして, VEGF,IL-1ra,PDGF-BB等が挙げられる。このようなサイトカインの濃度がステージ末期になって低下傾向となる現象を引き起こす一つの可能性として,がんが末期になり全身状態が悪くなると,白血球も減少し炎症反応自体が起きにくくなることがあるので,それに伴いサイトカインも少なくなるということが考えられる。いずれのサイトカインを選ぶにしても,肺がん進行度合いとサイトカインの濃度変化の相関性が高いものを選ぶことが好ましい。また,測定するサイトカインは2種類以上であるので,肺がんの評価度合いの評価の信頼性が高くなる。

【0028】
実施形態1の評価方法によれば,複数のサイトカイン濃度データの経時変化から,肺がん進行度合いを知る上で参考となり得る信頼性の高い情報を提供することができる。

【0029】
肺がん進行度合いは少なくとも2種類のサイトカイン濃度データの経時的変化に基づき肺がんの進行度合いを評価する。このような評価方法としては,例えば,あらかじめ求めておいた肺がんのステージの数値と体液中のサイトカインの濃度との関係を示すグラフと,評価時点におけるサイトカインの濃度との比較をし,肺がんの進行度合いをステージの数値で評価する方法が挙げられる。ただし,サイトカインの種類によっては,ステージの数値が大きくなるにつれて,いったん上昇したサイトカインの濃度が再び減ずる方向に向かうものもあるため,サイトカインの濃度の経時的な変化がどのように推移してきたかを考慮しなければならない。

【0030】
また,肺がん進行度合いを評価するための評価式としては,経時的に変化する肺がんのステージの数値と体液中のサイトカインの濃度との関係を示すグラフの接線の傾きを求める評価式が挙げられる。肺がんのステージの段階は時間と共に進行するため,例えば,肺がんの進行度合いが進むにつれて濃度の上昇率が大きくなるサイトカインであれば,経時的にグラフの接線の傾きが大きくなる(図3左側グラフ参照)。一方,肺がんのステージ末期になって上昇傾向から低下傾向となるサイトカインでは,グラフの接線の傾きが経時的に小さくなり,さらにはマイナスとなる(図3右側グラフ参照)。このため,肺がん進行度合いの評価を具体的なグラフの接線の傾きという数値で定量化することができる。

【0031】
また,評価式は,ロジスティック回帰式,分数式,線形判別式,重回帰式,サポートベクターマシンで作成された式,マハラノビス距離法で作成された式,正準判別分析で作成された式,決定木で作成された式のいずれか1つでもよい。これにより,肺がんの状態を知る上で参考となり得る情報の更なる信頼性向上を実現することができる。

【0032】
また,評価式としては,一般に多変量解析で用いられる式の形式を意味するものであり,例えば分数式,重回帰式,多重ロジスティック回帰式,線形判別関数,マハラノビス距離,正準判別関数,サポートベクターマシン,決定木,異なる形式の式の和で示されるような式,などが挙げられる。ここで,重回帰式,多重ロジスティック回帰式,正準判別関数においては各変数に係数および定数項が付加されるが,この係数および定数項は,好ましくは実数であれば構わず,より好ましくは,データから前記の各種分類を行うために得られた係数および定数項の99%信頼区間の範囲に属する値であれば構わず,さらに好ましくは,データから前記の各種分類を行うために得られた係数および定数項の95%信頼区間の範囲に属する値であれば構わない。また,各係数の値及びその信頼区間は,それを実数倍したものでもよく,定数項の値及びその信頼区間は,それに任意の実定数を加減乗除したものでもよい。ロジスティック回帰,線形判別,重回帰分析などの表示式を評価式として用いる場合,表示式の線形変換(定数の加算,定数倍)及び単調増加(減少)の変換(例えばlogit変換など)は評価性能を変えるものではなく変換前と同等であるので,この表示式には,これらの変換が行われた後のものも含まれる。

【0033】
実施形態1では,肺がん進行度合いを評価する際,濃度データを測定するサイトカインとして,前記サイトカイン濃度データには,IP-10,IL-1ra,IL-1β,IL-5,IL-6,IL-7,IL-8,IL-9,IL-10,IL-12p70,IL-13,G-CSF,TNF-α,MIP-1α,MIP-1β,VEGF,MCP-1,PDGF-BB,IFN-γ,FGF及びEotaxinの少なくとも1種のサイトカインの濃度データが含まれていることが好ましい。本発明者らの試験結果によれば,多くの種類があるサイトカインの中でもIP-10,IL-1ra,IL-1β,IL-5,IL-6,IL-7,IL-8,IL-9,IL-10,IL-12p70,IL-13,G-CSF,TNF-α,MIP-1α,MIP-1β,VEGF,MCP-1,PDGF-BB,IFN-γ,FGF及びEotaxinが特に肺がん進行度合いとの相関性が高い。このため,これらのサイトカイン濃度データの経時変化から,肺がん進行度合いを評価することにより,肺がんの進行度合いをさらに高い信頼性で評価することができる。

【0034】
(実施例1)
肺がん患者男女20名,及び健常者23名の血液,唾液及び頬粘膜抽出液を採取し,そこに含まれるサイトカイン(27種)の同時分析を行った。検体の採取は,朝(7時~9時),昼(11時~13時)及び夕(15時~17時)に時間を分け,血液は昼のみ,唾液は朝,昼,夕,頬粘膜は昼と夕に採取した(図2及び表1参照)。また,検体採取前の予備検査として唾液潜血試験を実施した(図2参照)。
【表1】
JP0006403170B2_000002t.gif

【0035】
検体収集機関,分析装置,サイトカイン分析キット,分析を行ったサイトカインの種類及び検査方法の詳細を以下に示す。
・検体収集機関:信州大学医学部附属病院
・分析装置:Bio-Plex (バイオ・ラッドラボラトリーズ(株))
・サイトカイン分析キット:Bio-Plex Pro Human Cytokine 27-Plex
(バイオ・ラッドラボラトリーズ(株)),
・検査項目:IL-1β,IL-1ra, IL-2,IL-4,IL-5,IL-6,IL-7,IL-8,IL-9,IL-10,
IL-12 p70,IL-13,IL-15,IL-17A,FGF-2,Eotaxin,G-CSF,GM-CSF,
IFN-γ,IP-10,MCP-1,MIP-1α,PDGF-BB,MIP-1β,RANTES,
TNF-α,VEGF
・分析手順
(1)唾液からの測定サンプルの採取方法
1)採取カップ (日本メディカル:型番MS-50) を2つ用意し,IDを記入する(2つの採取カップのIDは同一とする)。
2)採取カップに採取量 150μL のラインを入れる。
3)2つのカップに必要量(およそ150μL)の唾液を入れ,採取後2時間以内に-80℃で凍結保存する。
(2)頬粘膜からの測定サンプルの採取方法
1)頬粘膜抽出液採取キット (Intercept, Oral fluid drug test, OraSure Technologies, Inc) から採取パッドを取り出す(この際,採取パッド部分には触れず,柄の部分を持つ)。
2)採取パッドを下の歯肉と頬粘膜の間に置き,パッドが湿るまで歯肉に沿って慎重に前後に動かす。
3)採取パッドが湿ったら,歯肉と頬粘膜の間に置いたまま5分間待つ。
4)5分後,青い液体の入った容器の蓋を慎重に開け,液体の中に採取パッドを入れる。
5)容器から飛び出ている柄の部分を切れ目のところで折り,蓋を閉める。
6)検体を回収後,保存のため採取された抽出液をマイクロチューブ (BIO-BIK:型番LT-0200) に移し変え,採取パッドに浸透している抽出液も管壁に押しつけて搾り出し,残りの抽出液も全てマイクロチューブに移す。
7)予備検体用にマイクロチューブをもう1つ用意し,半量を小分けにする。
8)マイクロチューブにID等を記入し,2時間以内に-80℃で凍結保存する。
(3)血液からの測定サンプルの採取方法
1)採血管により規定量の血液を採取する(3.2%クエン酸ナトリウム採血管(容量2.7ml))。
2)遠心分離を行い,上清を分離する。上清が溶血していないことを肉眼により判断し,溶血していると判断した場合は採血をやり直す。
3)分離された上清をマイクロチューブに200μLずつ分注し,3つに小分けにする。
4)小分けしたマイクロチューブにID等を記入し,唾液分と一緒に一80℃で凍結保存する。

【0036】
以上のようにして採取したサンプルについて,バイオマーカー分析装置:Bio-Plex (バイオ・ラッドラボラトリーズ(株))及びサイトカイン分析キット:Bio-Plex Pro Human Cytokine 27-Plex (バイオ・ラッドラボラトリーズ(株))を用いて27種類のサイトカインの濃度を測定した。さらに,こうして得られた分析結果について,統計分析ソフト (IBM SPSS Statistics,日本アイ・ビー・エム(株)) を使用してMann-Whitney test を行った。

【0037】
<結 果>
(Mann-Whitney testの結果について)
Mann-Whitney testによる統計分析を行った結果を表2及び表3に示す。これらの結果から,健常者と肺がん患者との間でサイトカインの濃度に有意差があるか否かは,サイトカインの種類によって異なることが分かった。

【0038】
【表2】
JP0006403170B2_000003t.gif

【0039】
【表3】
JP0006403170B2_000004t.gif

【0040】
(血液から分析したサイトカイン)
血液から採取した検体について,27種類のサイトカインを分析した結果を濃度別に分類し,グラフ化したものを図4に示す。さらに,図5に,ステージの進行とともに上昇傾向のあるサイトカインを分類し,値を正規化(肺がんの全体平均値を1として正規化)した後にグラフ化したものを示す。また,図6には,ステージの進行とともに一時は上昇するが,末期になるにつれて低下傾向のあるサイトカインを分類し,正規化したグラフを示す。

【0041】
以上の結果から,血液から採取した検体中のサイトカインの濃度は,サイトカインの種類によってその動向は異なり,ステージの進行とともに上昇傾向のあるサイトカイン(RANTES, IL-12 p70)や,ステージの進行とともに一時は上昇するが,末期になって濃度が低下するサイトカイン(IL-1ra,IL-5,IL-9,Eotaxin)があることが分かった。このため,それらのサイトカインの種類ごとの動向をあらかじめ調べておき,評価対象のサイトカインの経時的変化と比較することにより,肺がんの進行度合いを評価できることが分かった。

【0042】
(唾液から分析したサイトカイン)
唾液から採取した検体について,27種類のサイトカインを分析した結果を肺がんのステージ別に表2に示す。また,その結果を濃度別に分類し,グラフ化したものを図7に示す。さらに,図8に,ステージの進行とともに上昇傾向のあるサイトカインを分類し,値を正規化(肺がんの全体平均値を1として正規化)した後にグラフ化したものを示す。また,図9には,ステージの進行とともに一時は上昇するが,末期になるにつれて低下傾向のあるサイトカインを分類し,正規化したグラフを示す。

【0043】
以上の結果から,唾液から採取した検体中のサイトカインの濃度は,サイトカインの種類によってその動向は異なり,ステージの進行とともに上昇傾向のあるサイトカイン(IP-10,IL-7, IL-8, MIP-1α, MIP-1β,TNF-α)や,ステージの進行とともに一時は上昇するが,末期になって濃度が低下するサイトカイン(IL-1ra, IL-10, IL-β,IL-12 p70,MCP-1,Eotaxin,VEGF)があることが分かった。このため,それらのサイトカインの種類ごとの動向をあらかじめ調べておき,評価対象のサイトカインの経時的変化と比較することにより,肺がんの進行度合いを評価できることが分かった。

【0044】
(頬粘膜から分析したサイトカイン)
頬粘膜から採取した検体について,27種類のサイトカインを分析した結果を肺がんのステージ別に表3に示す。また,その結果を濃度別に分類し,グラフ化したものを図10に示す。さらに,図11には,ステージの進行とともに上昇傾向のあるサイトカインを分類し,値を正規化(肺がんの全体平均値を1として正規化)した後にグラフ化したものを示す。また,図12には,ステージの進行とともに一時は上昇するが,末期になるにつれ低下傾向のあるサイトカインを分類し,正規化したグラフを示す。

【0045】
以上の結果から,頬粘膜から採取した検体中のサイトカインの濃度についても,サイトカインの種類によってその動向は異なり,ステージの進行とともに上昇傾向のあるサイトカイン(IL-8, IL-1β, G-CSF, MIP-1β,MIP-1α)や,ステージの進行とともに一時は上昇するが,末期になって濃度が低下するサイトカイン(IL-1ra,IL-6,IL-10,VEGF,MCP-1)があることが分かった。このため,それらのサイトカインの種類ごとの動向をあらかじめ調べておき,評価対象のサイトカインの経時的変化と比較することにより,肺がんの進行度合いを評価できることが分かった。

【0046】
<実施形態2>
実施形態2の概要について,図13を参照して説明する。図13は実施形態2の基本原理を示す原理構成図である。
制御部は,少なくとも2種類の評価対象のサイトカインの経時的変化と,該少なくとも2種類のサイトカインの濃度値の経時変化に関する予め取得した蓄積データと,を比較することにより,評価対象における肺がん進行度合いを評価する。

【0047】
次に,実施形態2にかかる肺がん進行度合い評価システムの構成について説明する。まず,本システムの全体構成について図14を参照して説明する。本システムは,図14に示すように,評価対象である個体における肺がん進行度合いを評価する肺がん進行度合い評価装置100と,評価対象者のサイトカインの濃度値の経時変化に関するデータを提供するクライアント装置200(本発明の情報通信端末装置に相当)とを,ネットワーク300を介して通信可能に接続して構成されている。さらに,本システムは,肺がん進行度合い評価装置100やクライアント装置200の他に,肺がん進行度合い評価装置100で評価する際に用いる,サイトカインの濃度値の経時変化に関する過去の蓄積データ(以下「肺がん進行度合い情報」という)を格納したデータベース装置400を,ネットワーク300を介して通信可能に接続して構成されている。これにより,ネットワーク300を介して,肺がん進行度合い評価装置100からクライアント装置200やデータベース装置400へ,あるいはクライアント装置200やデータベース装置400から肺がん進行度合い評価装置100へ,肺がん進行度合いを知る上で参考となる情報などが提供される。ここで,肺がん進行度合いを知る上で参考となる情報とは,ヒトを含む生物の肺がん進行度合いに関する特定の項目について測定した値に関する情報である。また,肺がん進行度合いを知る上で参考となる情報は,肺がん進行度合い評価装置100やクライアント装置200や他の装置(例えば各種の計測装置等)で生成され,主にデータベース装置400に蓄積される。

【0048】
つぎに,本システムの肺がん進行度合い評価装置100の構成について説明する。図15は,本システムの肺がん進行度合い評価装置100の構成の一例を示すブロック図であり,該構成のうち本発明に関係する部分のみを概念的に示している。

【0049】
肺がん進行度合い評価装置100は,当該肺がん進行度合い評価装置を統括的に制御するCPU等の制御部102と,ルータ等の通信装置および専用線等の通信回線を介して当該肺がん進行度合い評価装置をネットワーク300に通信可能に接続する通信インターフェース部104と,各種のデータベースやテーブルやファイルなどを格納する記憶部106と,入力装置112や出力装置114に接続する入出力インターフェース部108と,で構成されており,これら各部は任意の通信路を介して通信可能に接続されている。ここで,肺がん進行度合い評価装置100は,各種の分析装置と同一筐体で構成されてもよい。

【0050】
記憶部106は,ストレージ手段であり,OS(Operating System)と協働してCPUに命令を与え各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。記憶部106は,利用者情報ファイル106aと,サイトカイン濃度データファイル106bと,肺がん進行度合い情報ファイル106cと,指定肺がん進行度合い情報ファイル106dと,評価式関連情報データベース106eと,評価結果ファイル106fと,を格納する。

【0051】
利用者情報ファイル106aは,利用者に関する利用者情報を格納する。
サイトカイン濃度データファイル106bは,サイトカインの濃度値に関するサイトカイン濃度データを格納する。
肺がん進行度合い情報ファイル106cは,あらかじめ調べられたサイトカインンの濃度の経時変化と肺がん進行度合いと,評価対象のサイトカインの濃度の経時変化とを比較する際に用いる肺がん進行度合い情報を格納する。

【0052】
指定肺がん進行度合い情報ファイル106dは,後述する肺がん進行度合い情報指定部102gで指定した肺がん進行度合い情報を格納する。
評価式関連情報データベース106eは,後述する候補式作成部102h1で作成した候補式を格納する候補式ファイル106e1と,後述する候補式検証部102h2での検証結果を格納する検証結果ファイル106e2と,後述する変数選択部102h3で選択したサイトカイン濃度データの組み合わせを含む肺がん進行度合い情報を格納する選択肺がん進行度合い情報ファイル106e3と,後述する評価式作成部102hで作成した評価式を格納する評価式ファイル106e4と,で構成される。

【0053】
候補式ファイル106e1は,後述する候補式作成部102h1で作成した候補式を格納する。
検証結果ファイル106e2は,後述する候補式検証部102h2での検証結果を格納する。検証結果ファイル106e2に格納される情報は,ランクと,候補式と,各候補式の検証結果(例えば各候補式の評価値)と,を相互に関連付けて構成されている。

【0054】
選択肺がん進行度合い情報ファイル106e3は,後述する変数選択部102h3で選択した変数に対応するサイトカイン濃度データの組み合わせを含む肺がん進行度合い情報を格納する。選択肺がん進行度合い情報ファイル106e3に格納される情報は,個体番号と,後述する肺がん進行度合い情報指定部102gで指定した肺がん進行度合い指標データと,後述する変数選択部102h3で選択したサイトカイン濃度データと,を相互に関連付けて構成されている。

【0055】
評価式ファイル106e4は,後述する評価式作成部102hで作成した評価式を格納する。評価結果ファイル106fは,後述する評価部102iで得られた評価結果を格納する。

【0056】
記憶部106には,上述した情報以外にその他情報として,Webサイトをクライアント装置200に提供するための各種のWebデータや,CGIプログラム等が記録されている。

【0057】
通信インターフェース部104は,肺がん進行度合い評価装置100とネットワーク300(またはルータ等の通信装置)との間における通信を媒介する。すなわち,通信インターフェース部104は,他の端末と通信回線を介してデータを通信する機能を有する。

【0058】
入出力インターフェース部108は,入力装置112や出力装置114に接続する(なお,以下では,出力装置114をモニタ114として記載する場合がある。)。

【0059】
制御部102は,OS(Operating System)等の制御プログラム・各種の処理手順等を規定したプログラム・所要データなどを格納するための内部メモリを有し,これらのプログラムに基づいて種々の情報処理を実行する。

【0060】
要求解釈部102aは,クライアント装置200やデータベース装置400からの要求内容を解釈し,その解釈結果に応じて制御部102の各部に処理を受け渡す。閲覧処理部102bは,クライアント装置200からの各種画面の閲覧要求を受けて,これら画面のWebデータの生成や送信を行なう。認証処理部102cは,クライアント装置200やデータベース装置400からの認証要求を受けて,認証判断を行う。電子メール生成部102dは,各種の情報を含んだ電子メールを生成する。Webページ生成部102eは,利用者がクライアント装置200で閲覧するWebページを生成する。

【0061】
受信部102fは,クライアント装置200やデータベース装置400から送信された情報(具体的には,サイトカイン濃度データや肺がん進行度合い情報,評価式など)を,ネットワーク300を介して受信する。肺がん進行度合い情報指定部102gは,評価式を作成するにあたり,対象とする肺がん進行度合い指標データおよびサイトカイン濃度データを指定する。

【0062】
評価式作成部102hは,受信部102fで受信した肺がん進行度合い情報や肺がん進行度合い情報指定部102gで指定した肺がん進行度合い情報に基づいて評価式を作成する。具体的には,評価式作成部102hは,肺がん進行度合い情報から,候補式作成部102h1,候補式検証部102h2および変数選択部102h3を繰り返し実行させることにより蓄積された検証結果に基づいて,複数の候補式の中から評価式として採用する候補式を選出することで,評価式を作成する。

【0063】
評価部102iは,事前に得られた式(例えば,評価式作成部102hで作成した評価式,又は,受信部102fで受信した評価式など)及び受信部102fで受信した個体のサイトカイン濃度データを用いて,評価式の値を算出することで,個体における肺がん進行度合いを評価する。

【0064】
結果出力部102iは,制御部102の各処理部での処理結果(評価部102iで得られた評価結果を含む)等を出力装置114に出力する。

【0065】
送信部102kは,評価対象のサイトカイン濃度データの送信元のクライアント装置200に対して評価結果を送信したり,データベース装置400に対して,肺がん進行度合い評価装置100で作成した評価式や評価結果を送信したりする。

【0066】
つぎに,本システムのクライアント装置200の構成について説明する。
このクライアント装置200は,制御部とROMとHDとRAMと入力装置と出力装置と入出力と通信IFとで構成されており,これら各部は任意の通信路を介して通信可能に接続されている。

【0067】
制御部は,Webブラウザ,電子メーラ,受信部,送信部を備えている。Webブラウザは,Webデータを解釈し,解釈したWebデータをモニタに表示するブラウズ処理を行う。電子メーラは,所定の通信規約に従って電子メールの送受信を行う。受信部は,通信を介して,肺がん進行度合い評価装置100から送信された評価結果などの各種情報を受信する。送信部は,通信IFを介して,個体のサイトカイン濃度データなどの各種情報を肺がん進行度合い評価装置100へ送信する。

【0068】
通信IFは,クライアント装置200とネットワーク300(またはルータ等の通信装置)とを通信可能に接続する。換言すると,クライアント装置200は,モデムやTAやルータなどの通信装置および電話回線を介して,または専用線を介してネットワーク300に接続される。これにより,クライアント装置200は,所定の通信規約に従って肺がん進行度合い評価装置100にアクセスすることができる。

【0069】
つぎに,本システムのネットワーク300について図14を参照して説明する。ネットワーク300は,肺がん進行度合い評価装置100とクライアント装置200とデータベース装置400とを相互に通信可能に接続する機能を有し,例えばインターネットやイントラネットやLAN(有線/無線の双方を含む)等である。なお,ネットワーク300は,VANや,パソコン通信網や,公衆電話網(アナログ/デジタルの双方を含む)や,専用回線網(アナログ/デジタルの双方を含む)や,CATV網や,携帯回線交換網または携帯パケット交換網(IMT2000方式,GSM(登録商標)方式またはPDC/PDC-P方式等を含む)や,無線呼出網や,Bluetooth(登録商標)等の局所無線網や,PHS網や,衛星通信網(CS,BSまたはISDB等を含む)等でもよい。

【0070】
つぎに,本システムのデータベース装置400の構成について説明する。
このデータベース装置400は,肺がん進行度合い評価装置100または当該データベース装置400で評価式を作成する際に用いる肺がん進行度合い情報や,肺がん進行度合い評価装置100で作成した評価式,肺がん進行度合い評価装置100での評価結果などを格納する機能を有する。データベース装置400は,当該データベース装置400を統括的に制御するCPU等の制御部と,ルータ等の通信装置および専用線等の有線または無線の通信回路を介して当該データベース装置400をネットワークに通信可能に接続する通信インターフェース部と,各種のデータベースやテーブルやファイルなどを格納する記憶部と,入力装置や出力装置に接続する入出力インターフェース部と,で構成されており,これら各部は任意の通信路を介して通信可能に接続されている。

【0071】
記憶部は,ストレージ手段であり,例えば,RAM・ROM等のメモリ装置や,ハードディスクのような固定ディスク装置や,フレキシブルディスクや,光ディスク等を用いることができる。記憶部には,各種処理に用いる各種プログラム等を格納する。通信インターフェース部は,データベース装置400とネットワークとの間における通信を媒介する。すなわち,通信インターフェース部は,他の端末と通信回線を介してデータを通信する機能を有する。入出力インターフェース部は,入力装置や出力装置に接続する。

【0072】
制御部は,OS(Operating System)等の制御プログラム・各種の処理手順等を規定したプログラム・所要データなどを格納するための内部メモリを有し,これらのプログラムに基づいて種々の情報処理を実行する。制御部は,大別して,要求解釈部と閲覧処理部と認証処理部と電子メール生成部とWebページ生成部と送信部とを備えている。

【0073】
要求解釈部は,肺がん進行度合い評価装置100からの要求内容を解釈し,その解釈結果に応じて制御部の各部に処理を受け渡す。閲覧処理部は,肺がん進行度合い評価装置100からの各種画面の閲覧要求を受けて,これら画面のWebデータの生成や送信を行う。認証処理部は,肺がん進行度合い評価装置100からの認証要求を受けて,認証判断を行う。電子メール生成部は,各種の情報を含んだ電子メールを生成する。Webページ生成部は,利用者がクライアント装置200で閲覧するWebページを生成する。送信部は,肺がん進行度合い情報や評価式などの各種情報を,肺がん進行度合い評価装置100へ送信する。

【0074】
最後に,肺がん進行度合い評価装置100で行う評価式作成処理の一例について説明する。なお,当該評価式作成処理は,肺がん進行度合い情報を管理するデータベース装置で行ってもよい。

【0075】
なお,本説明では,肺がん進行度合い評価装置100は,データベース装置400から事前に取得した肺がん進行度合い情報を,肺がん進行度合い情報ファイル106cの所定の記憶領域に格納しているものとする。また,肺がん進行度合い評価装置100は,肺がん進行度合い情報指定部102gで事前に指定した肺がん進行度合い指標データおよびサイトカイン濃度データを含む肺がん進行度合い情報を,指定肺がん進行度合い情報ファイル106dの所定の記憶領域に格納しているものとする。

【0076】
まず,評価式作成部102hは,候補式作成部102h1で,指定肺がん進行度合い情報ファイル106dの所定の記憶領域に格納されている肺がん進行度合い情報から所定の式作成手法に基づいて候補式を作成し,作成した候補式を候補式ファイル106e1の所定の記憶領域に格納する。つぎに,評価式作成部102hは,候補式作成部102h1で,膵臓癌進行度合い情報に基づいて,選択した式選択手法に対応する種々(例えば平均や分散など)の計算を実行する。つぎに,評価式作成部102hは,候補式作成部102h1で,計算結果および決定した候補式のパラメータを決定する。これにより,選択した式作成手法に基づいて候補式が作成される。なお,複数の異なる式作成手法を併用して候補式を同時並行(並列)的に作成する場合は,選択した式作成手法ごとに上記の処理を並行して実行すればよい。また,複数の異なる式作成手法を併用して候補式を直列的に作成する場合は,例えば,主成分分析を行って作成した候補式を利用して肺がん進行度合い情報を変換し,変換した肺がん進行度合い情報に対して判別分析を行うことで候補式を作成してもよい。

【0077】
つぎに,評価式作成部102hは,候補式検証部102h2で作成した候補式を所定の検証手法に基づいて検証(相互検証)し,検証結果を検証結果ファイル106e2の所定の記憶領域に格納する。具体的には,評価式作成部102hは,候補式検証部102h2で,指定肺がん進行度合い情報ファイル106dの所定の記憶領域に格納されている肺がん進行度合い情報に基づいて候補式を検証する際に用いる検証用データを作成し,作成した検証用データに基づいて候補式を検証する。

【0078】
つぎに,評価式作成部102hは,変数選択部102h3で,所定の変数選択手法に基づいて,候補式の変数を選択することで,候補式を作成する際に用いる肺がん進行度合い情報に含まれるサイトカイン濃度データの組み合わせを選択し,選択したサイトカイン濃度データの組み合わせを含む肺がん進行度合い情報を選択肺がん進行度合い情報ファイル106e3の所定の記憶領域に格納する。

【0079】
つぎに,評価式作成部102hは,指定肺がん進行度合い情報ファイル106dの所定の記憶領域に格納されている肺がん進行度合い情報に含まれるサイトカイン濃度データの全ての組み合わせが終了したか否かを判定し,判定結果が「終了」であった場合には次のステップへ進み,判定結果が「終了」でなかった場合にはもとのステップへ戻る。なお,評価式作成部102hは,予め設定した回数が終了したか否かを判定し,判定結果が「終了」であった場合には次のステップへ進み,判定結果が「終了」でなかった場合にはもとのステップへ戻ってもよい。

【0080】
つぎに,評価式作成部102hは,検証結果に基づいて,複数の候補式の中から評価式として採用する候補式を選出することで評価式を決定し,決定した評価式(選出した候補式)を評価式ファイル106e4の所定の記憶領域に格納する。

【0081】
この発明は上記発明の実施の態様及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲を逸脱せず,当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
S11…データ取得ステップ,S12…評価ステップ,
100…肺がん進行度合い評価装置
102…制御部(102a…要求解釈部,102b…閲覧処理部,102c…認証処理部,102d…電子メール生成部,102e…Webページ生成部,102f…受信部,102g…肺がん進行度合い情報指定部,102h…評価式作成部,102h1…候補式作成部,102h2…候補式検証部,102h3…変数選択部,102i…評価部,102i1…算出部,102i2…変換部,102i3…生成部,102i4…分類部,102j…結果出力部,102k…送信部)
104…通信インターフェース部
106…記憶部(106a…利用者情報ファイル,106b…サイトカイン濃度データファイル,106c…肺がん進行度合い情報ファイル,106d…指定肺がん進行度合い情報ファイル,106e…評価式関連情報データベース,106e1…候補式ファイル,106e2…検証結果ファイル,106e3…選択肺がん進行度合い情報ファイル,106e4…評価式ファイル,106f…評価結果ファイル)
108…入出力インターフェース部
112…入力装置
114…出力装置
200…クライアント装置(情報通信端末装置)
300…ネットワーク
400…データベース装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14