【0012】 本実施形態に係る電力素子30は、窒素を高濃度で含み半絶縁性のn-ダイヤモンド層(以下、単にn-層とも称する)2上にアンドープダイヤモンド層4が形成されたダイヤモンド基板6を備えている。なお、窒素を高濃度で含むダイヤモンドは、Ib型と称されている。アンドープダイヤモンド層4は、マイクロ波励起プラズマを用いた化学気相堆積法(plasma-enhanced chemical vapor deposition:PECVD)により、n-層2上にエピタキシャル成長させて形成されている。
【0021】 さらに、O2プラズマを用いた誘導結合型反応性イオンエッチング(Inductively Coupled Plasma Reactive Ion Etching:ICP-RIE)によりダイヤモンド基板6の表面を加工して図2Cに示すように凹部10を形成する。その後、金エッチング液(関東化学(株):AURUMシリーズ)を用いて図3Aに示すように金属マスク8を除去する。ダイヤモンド基板6に形成される凹部10の寸法は、適宜設定することができる。例えば、凹部10の深さd1は、0.1~10μm程度、好ましくは1.2~2.4μm程度とすることができる。凹部10の幅w1は、1~50μm程度、好ましくは5~20μm程度とすることができる。凹部10のアスペクト比(d1/w1)は、少なくとも0.1以上であることが好ましい。これは、基板上における少ない面積でチャネル長を十分に確保して、絶縁耐圧の向上を図るためである。凹部10の底面とn-層2の表面との距離d0は、特に限定されない。場合によっては、凹部10がn-層2に達していてもよい。
【0022】 凹部10が形成されたダイヤモンド基板6の全面には、図3Bに示すようにプラズマCVD法によりダイヤモンド膜14をエピタキシャル成長させた後、ダイヤモンド膜14の表面に水素化層16を形成する。ダイヤモンド膜14の厚さは、50~1000nm程度とすることが好ましい。また、ダイヤモンド膜14においては、窒素濃度をボロン濃度より低くすることが望ましい。ダイヤモンド膜14における窒素濃度がボロン濃度より低いことは、後程で行う水素化処理により水素化層16を形成し、その直下に二次正孔層を誘起するのに有利となる。水素化層16は、400~700℃(ここでは600℃)に加熱しながら水素プラズマを照射することによって、ダイヤモンド膜14の表面に形成される。なお、ダイヤモンド基板6上にエピタキシャル成長させたダイヤモンド膜14は、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)観察により確認することができる。
【0029】 以上の工程により、図5Bに示すような第1実施形態の電力素子30が得られる。電力素子30は、水素化層16直下に誘起された二次元正孔層をチャネル層としたMISFET(Metal-Insulator-Semiconductor Field Effect Transistor)である。この電力素子30においては、ダイヤモンド膜14を覆うゲート長LGは、例えば1~20μm程度とすることができる。また、電極間距離LS-Dは、例えば10~50μm程度とすることができる。上述したとおり、凹部10の深さd1は、例えば0.1~10μm程度とすることができる。