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明細書 :蛇毒ロドサイチンの機能を保持した遺伝子組換え体の作製方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6501111号 (P6501111)
公開番号 特開2016-171776 (P2016-171776A)
登録日 平成31年3月29日(2019.3.29)
発行日 平成31年4月17日(2019.4.17)
公開日 平成28年9月29日(2016.9.29)
発明の名称または考案の名称 蛇毒ロドサイチンの機能を保持した遺伝子組換え体の作製方法
国際特許分類 C12N   5/18        (2006.01)
C12N   5/22        (2006.01)
C12N   1/15        (2006.01)
C12N   1/19        (2006.01)
C12N   1/21        (2006.01)
C12N  15/63        (2006.01)
C12P  21/02        (2006.01)
C07K  14/745       (2006.01)
FI C12N 5/18 ZNA
C12N 5/22
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 15/63 Z
C12P 21/02 C
C07K 14/745
請求項の数または発明の数 7
全頁数 20
出願番号 特願2015-053625 (P2015-053625)
出願日 平成27年3月17日(2015.3.17)
審査請求日 平成30年2月2日(2018.2.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
発明者または考案者 【氏名】佐々木 知幸
【氏名】井上 克枝
【氏名】尾崎 由基男
個別代理人の代理人 【識別番号】110001139、【氏名又は名称】SK特許業務法人
【識別番号】100130328、【弁理士】、【氏名又は名称】奥野 彰彦
【識別番号】100130672、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 寛之
審査官 【審査官】関 景輔
参考文献・文献 米国特許出願公開第2002/0161203(US,A1)
CHUNG Ching-Hu et al.,Molecular Cloning and Sequence Analysis of Aggretin, a Collagen-like Platelet Aggregation Inducer,Biochemical and Biophysical Research Communications,1999年,Vol. 263,pp. 723-727
調査した分野 C12N1,5,15
C07K14
C12P21
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
血小板活性化能を有するロドサイチンを生産する組換え細胞であって、
前記組換え細胞は、ロドサイチンαサブユニット遺伝子とロドサイチンβサブユニット遺伝子とが導入された組換え細胞であり、
前記組換え細胞は、
第一の組換え体ベクターと、
第二の組換え体ベクターと、を有し、
前記第一の組換え体ベクターは、前記ロドサイチンαサブユニット遺伝子を有し、
前記第二の組換え体ベクターは、前記ロドサイチンβサブユニット遺伝子を有し、
前記ロドサイチンαサブユニット遺伝子が、配列番号12に示される塩基配列と
1) 95%以上の配列同一性を有する塩基配列である、または、
2) 1または数塩基が欠失、置換、付加されている塩基配列である、または、
3) 相補的な配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列である、
組換え細胞
【請求項2】
前記ロドサイチンβサブユニット遺伝子は、細胞外分泌が可能なシグナル配列を有する、
請求項1に記載の組換え細胞。
【請求項3】
前記ロドサイチンβサブユニット遺伝子が、配列番号16に示される塩基配列と
1) 95%以上の配列同一性を有する塩基配列である、または、
2) 1または数塩基が欠失、置換、付加されている塩基配列である、または、
3) 相補的な配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列である
請求項1または2に記載の組換え細胞。
【請求項4】
請求項1~5のいずれか一つに記載の組換え細胞を培養する工程と、
血小板活性化能を有するロドサイチンを採取する工程と
を含む、ロドサイチンの製造方法。
【請求項5】
配列番号12に示される塩基配列からなるロドサイチンαサブユニット遺伝子を有する組換え体ベクター。
【請求項6】
血小板活性化能を有するロドサイチンを生産する組換え細胞の製造方法であって、
下記の(1)~(2)の組換え体ベクターを宿主細胞に導入し形質転換する工程を含む組換え細胞の製造方法
(1)ロドサイチンαサブユニット遺伝子を有する第一の組換え体ベクター
(2)ロドサイチンβサブユニット遺伝子を有する第二の組換え体ベクター
前記ロドサイチンαサブユニット遺伝子が、配列番号12に示される塩基配列と
1) 95%以上の配列同一性を有する塩基配列である、または、
2) 1または数塩基が欠失、置換、付加されている塩基配列である、または、
3) 相補的な配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列である、
組換え細胞の製造方法。
【請求項7】
前記ロドサイチンβサブユニット遺伝子は、細胞外分泌が可能なシグナル配列を有する、
請求項に記載の組換え細胞の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、血小板活性化能を有するロドサイチンを生産する組換え細胞、その作製方法、および血小板活性化能を有するロドサイチンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロドサイチン(Rhodocytin)[別名アグレチン(Aggretin)]は、マレーマムシ(Calloselasma rhodostoma)の毒腺から単離された、血小板凝集惹起タンパク質である(非特許文献1)。ロドサイチンは、血小板を凝集し血液を凝固する作用があるため、血小板活性化メカニズムを解明するために多くの研究に用いられている。
【0003】
血小板は小さな円板状の血球であり、止血作用および創傷の治癒に欠かせないものである。血小板凝集や血液凝固は、コラーゲンなどが血小板表面のレセプターと結合することでシグナル伝達経路が刺激され起こる。
ロドサイチンは、血小板表面のレセプターの一つであるCLEC-2(C-type lectin-like receptor 2)の発見に大きく寄与している(非特許文献2)。
なお、血小板凝集に関連する疾病の治療に役立つ薬剤を開発するためには、血小板表面のレセプターとそのシグナル伝達経路の反応を阻止するのに有効な薬剤の同定を可能とする方法が求められている。そのため、血小板表面のレセプターを同定する必要がある。従って、血小板表面のレセプターと結合するリガンド(ロドサイチン等)の研究は、上記の血小板凝集に関連する疾病の治療に役立つ薬剤を開発するためには必須である。
【0004】
ロドサイチンは、マレーマムシより単離されたロドサイチンの結晶構造解析によって、ロドサイチンαサブユニットとロドサイチンβサブユニットから構成されるヘテロ四量体の分泌タンパク質である(非特許文献3)。
【0005】
なお、ロドサイチンαサブユニットとロドサイチンβサブユニットは、独立した遺伝子にコードされており、それぞれ、クローニングされたことが報告されている(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】Biochem Biophys Res Commun. 1998 Apr 28;245(3):741-5.
【非特許文献2】Blood. 2006 Jan 15;107(2):542-9. Epub 2005 Sep 20.
【非特許文献3】Biochemistry. 2008 Jul 29;47(30):7831-7. doi: 10.1021/bi800528t. Epub 2008 Jul 3.
【非特許文献4】Biochem Biophys Res Commun. 1999 Oct 5;263(3):723-7.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記文献記載の従来技術は、以下の点で改善の余地を有していた。
ロドサイチンを得るためには、マレーマムシの毒腺が必要であるため、マレーマムシの調達、マレーマムシの輸入手続きが必要であり、また、マレーマムシの毒腺からロドサイチンの抽出・精製が必要であるため、ロドサイチンを取得するまでに多くの時間と手間が必要であった。
また、非特許文献4は、ロドサイチンαサブユニットとロドサイチンβサブユニットのクローニングに成功した報告があるが、これまでに血小板凝集能を有した遺伝子組換えロドサイチンの報告はない。
【0008】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、蛇毒ロドサイチンの機能を保持したロドサイチンを生産する細胞、その作製方法、および血小板活性化能を有するロドサイチンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、血小板活性化能を有するロドサイチンを生産する組換え細胞が提供される。ここで、上記組換え細胞は、ロドサイチンαサブユニット遺伝子とロドサイチンβサブユニット遺伝子とが導入された組換え細胞である。
【0010】
この組換え細胞によれば、血小板活性化能を有するロドサイチンを生産することができる。
【0011】
本発明によれば、上記組換え細胞から得られるロドサイチンが提供される。
【0012】
このロドサイチンは、上記の組換え細胞から得られるので、血小板活性化能を有している。
【0013】
本発明によれば、ロドサイチンの製造方法が提供される。ここで、このロドサイチンの製造方法は、上記組換え細胞を培養する工程と、血小板活性化能を有するロドサイチンを採取する工程とを含む。
【0014】
このロドサイチンの製造方法によれば、より簡便に血小板活性化能を有するロドサイチンを製造することができる。
【0015】
本発明によれば、ロドサイチンαサブユニット遺伝子の上流にロドサイチンβサブユニット遺伝子のシグナル配列が導入された組換え体ベクターが提供される。
【0016】
この組換え体ベクターによれば、ロドサイチンαサブユニットを発現して、ロドサイチンβサブユニットと組み合わせることで、血小板活性化能を有するロドサイチンを得られることができる。
【0017】
本発明によれば、血小板活性化能を有するロドサイチンを生産する組換え細胞の製造方法であって、下記の(1)~(2)の遺伝子を宿主細胞に導入し形質転換する工程を含む組換え細胞の製造方法が提供される。
(1)ロドサイチンαサブユニット遺伝子
(2)ロドサイチンβサブユニット遺伝子
【0018】
この方法によれば、血小板活性化能を有するロドサイチンを生産する組換え細胞を製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、組換え細胞によって、蛇毒ロドサイチンの機能を保持したロドサイチンを製造することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本実施形態におけるロドサイチンαサブユニットとロドサイチンβサブユニットの発現のための設計に関する図である。
【図2】図2は、本実施形態におけるロドサイチンの製造方法および血小板活性化能の確認方法の簡単な流れを示す概略図である。
【図3】図3は、本実験例3におけるウエスタンブロットの結果を示す図である。
【図4】図4は、本実験例3におけるウエスタンブロットの結果を示す図である。
【図5】図5は、本実験例3におけるウエスタンブロットの結果を示す図である。
【図6】図6は、本実験例4における血小板凝集能の確認実験の結果を示す図である。
【図7】図7は、本実験例4における血小板凝集能の確認実験の結果を示す図である。
【図8】図8は、本実験例4における血小板凝集能の確認実験の結果を示す図である。
【図9】図9は、本実験例5におけるヒトCLEC-2との結合の確認実験の結果を示す図である。
【図10】図10は、配列番号12の配列を示す図である。
【図11】図11は、配列番号13の配列を示す図である。
【図12】図12は、配列番号14の配列を示す図である。
【図13】図13は、配列番号15の配列を示す図である。
【図14】図14は、配列番号16の配列を示す図である。
【図15】図15は、配列番号17の配列を示す図である。
【図16】図16は、配列番号18の配列を示す図である。
【図17】図17は、配列番号1と配列番号12との配列を比較した図である。
【図18】図18は、配列番号2と配列番号16との配列を比較した図である。
【図19】図19は、配列番号17と配列番号12との配列を比較した図である。
【図20】図20は、配列番号18と配列番号16との配列を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、例示であって、本発明の範囲は、以下の実施形態で示すものに限定されない。

【0022】
<血小板活性化能を有するロドサイチンを生産する組換え細胞>
本実施形態における血小板活性化能を有するロドサイチンを生産する組換え細胞は、ロドサイチンαサブユニット遺伝子とロドサイチンβサブユニット遺伝子とが導入された組換え細胞である。
ロドサイチンαサブユニット遺伝子とロドサイチンβサブユニット遺伝子の塩基配列は、別名のアグレチンとして非特許文献4に記載されている。なお、配列表に配列番号1と2としてそれぞれ記載した。

【0023】
本実施形態における組換え細胞として、宿主細胞として用いられる細胞は、ロドサイチンαサブユニット遺伝子とロドサイチンβサブユニット遺伝子とが導入され、血小板活性化能を有するロドサイチンを生産することができる細胞であれば特に限定しない。宿主細胞として例えば、微生物細胞、酵母、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞などがあげられる。好ましくは、宿主細胞は動物細胞であり、より好ましくは、チャイニーズハムスター卵巣組織由来のCHO細胞である。CHO細胞は、1957年に樹立された細胞株で、成長が早く遺伝子発現プロファイルが安定しておりタンパク質の生産性が高いことから、研究にも、治療用タンパク質の生産にも利用されている。

【0024】
本実施形態の組換え細胞において、「ロドサイチンαサブユニット遺伝子とロドサイチンβサブユニット遺伝子とが導入された」とは、ロドサイチンαサブユニット遺伝子とロドサイチンβサブユニット遺伝子が宿主細胞内に存在していることである。例えば、組換え細胞の染色体にロドサイチンαサブユニット遺伝子および/またはロドサイチンβサブユニット遺伝子が取り込まれていることや、組換え細胞内に存在するベクター上にロドサイチンαサブユニット遺伝子および/またはロドサイチンβサブユニット遺伝子を有している等が挙げられる。

【0025】
本実施形態における組換え細胞は、特に限定しないが、第一の組換え体ベクターと、第二の組換え体ベクターと、を有し、第一の組換え体ベクターは、前記ロドサイチンαサブユニット遺伝子を有し、第二の組換え体ベクターは、ロドサイチンβサブユニット遺伝子を有する組換え細胞であることが好ましい。

【0026】
<ロドサイチンαサブユニット遺伝子またはロドサイチンβサブユニット遺伝子>
本実施形態におけるロドサイチンαサブユニット遺伝子またはロドサイチンβサブユニット遺伝子の取得方法は、特に限定しないが、公知の方法を用いることができる。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR法)により、ロドサイチンαサブユニット遺伝子またはロドサイチンβサブユニット遺伝子を有するベクターなどを鋳型として、当該遺伝子部分を増幅して取得することや、当該遺伝子の塩基配列のデータを基にDNAを合成し人工合成遺伝子として得ることが挙げられる。

【0027】
・ロドサイチンαサブユニット遺伝子
ロドサイチンαサブユニット遺伝子とは、ロドサイチンαサブユニットをコードする遺伝子を意味する。なお遺伝子には、ゲノムDNA、cDNA、合成DNA、RNA等が含まれる。
本実施形態におけるロドサイチンαサブユニット遺伝子は、特に限定しないが、例えば、配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5や配列番号6に示される塩基配列等が挙げられる。

【0028】
また、本実施形態におけるロドサイチンαサブユニット遺伝子は、ロドサイチンαサブユニットをコードする塩基配列のみであってもよく、さらに、例えばプロモーター配列、シグナル配列、ターミネーター配列等の遺伝子発現に関係する塩基配列等を含んでいても良い。一例として、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15や配列番号17に示される塩基配列等が挙げられる。好ましくは、細胞外分泌が可能なシグナル配列を含むことである。

【0029】
上記、細胞外分泌が可能なシグナル配列は、特に限定しないが、ロドサイチンβサブユニットのシグナル配列である。一例として、配列番号9、10または11に示すロドサイチンβサブユニットのシグナル配列である。好ましくは、配列番号9に示すロドサイチンβサブユニットのシグナル配列である。より好ましくは、配列番号10に示すロドサイチンβサブユニットのシグナル配列である。

【0030】
細胞外分泌が可能なシグナル配列として、配列番号9、10または11に示すロドサイチンβサブユニットのシグナル配列と、
1)95%以上の配列相同性を有する塩基配列である、または、
2)1または数塩基が欠失、置換、付加されている塩基配列である、または、
3)相補的な配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列であっても良い。

【0031】
なお、本明細書において同一性・相同性を示す値は、BLASTなどの公知のプログラムを利用することにより算出することができる。配列番号に示される塩基配列と配列相同性を有する塩基配列は、95%以上の配列相同性を有していればよく、例えば、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上、99.8%以上であっても良い。

【0032】
本明細書において、「1または数塩基が欠失、置換、付加されている塩基配列」における「数塩基」は、例えば、2~10塩基、2~9塩基、2~8塩基、2~7塩基、2~6塩基、2~5塩基、2~4塩基、2~3塩基、2塩基である。欠失、置換、付加した塩基の数は、一般的に少ないほど好ましい。塩基の欠失、置換、付加のうち2種以上が同時に生じてもよい。なお、塩基の欠失、置換、付加については、公知の技術を用いることができる。

【0033】
本明細書において、「ストリンジェントな条件」とは、例えば以下の(1)(2)などが挙げられる。
(1)イオン強度が低く洗浄温度が高い状態として、たとえば0.015MのNaCl/0.0015Mのクエン酸ナトリウム(チトラート)/0.1%SDSで温度50℃が挙げられる。あるいは
(2)ハイブリッド形成中にホルムアミド等の変性剤を使用して、たとえば、50%(vol/vol)ホルムアミドに、0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%Ficoll/0.1%polyinylpyrrolidone/50mMリン酸ナトリウムバッファpH6.5、750mMNaCl、75mMクエン酸ナトリウムで温度42℃とすることが挙げられる。別の例としては、50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl,0.075Mクエン酸ナトリウム),50mM リン酸ナトリウム(pH6.8), 0.1%ピロリン酸ナトリウム, 5×デンハルト液、超音波処理されたサーモンスパームDNA(50μg/ml),0.1%SDS,10%硫酸デキストラン,温度42度,洗浄温度42℃,0.2×SSC,0.1%SDSが挙げられる。
また、当業者であれば、クリアで検出可能なハイブリダイゼーションシグナルを得るべく、ストリンジェントな条件を適宜変更できることは、明らかである。

【0034】
本実施形態におけるロドサイチンαサブユニット遺伝子は、配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15や配列番号17に示される塩基配列と
1)95%以上の配列相同性を有する塩基配列である、または、
2)1または数塩基が欠失、置換、付加されている塩基配列である、または、
3)相補的な配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列であっても良い。

【0035】
本実施形態におけるロドサイチンαサブユニット遺伝子は、配列番号12に示される塩基配列と
1)95%以上の配列相同性を有する塩基配列である、または、
2)1または数塩基が欠失、置換、付加されている塩基配列である、または、
3)相補的な配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列である、ことが好ましい。

【0036】
・ロドサイチンβサブユニット遺伝子
ロドサイチンβサブユニット遺伝子とは、ロドサイチンβサブユニットをコードする遺伝子を意味する。なお遺伝子には、ゲノムDNA、cDNA、合成DNA、RNA等が含まれる。
本実施形態におけるロドサイチンβサブユニット遺伝子は、特に限定しないが、例えば、配列番号7や配列番号8に示される塩基配列等が挙げられる。

【0037】
また、本実施形態におけるロドサイチンβサブユニット遺伝子は、ロドサイチンβサブユニットをコードする塩基配列のみであってもよく、さらに、例えばプロモーターは配列、シグナル配列、ターミネーター配列等の遺伝子発現に関係する塩基配列を含んでいても良い。一例として、配列番号16や配列番号18に示される塩基配列等が挙げられる。好ましくは、細胞外分泌が可能なシグナル配列を含むことである。

【0038】
上記、細胞外分泌が可能なシグナル配列は、特に限定しないが、ロドサイチンβサブユニットのシグナル配列である。一例として、配列番号9、10または11に示すドサイチンβサブユニットのシグナル配列である。好ましくは、配列番号9に示すロドサイチンβサブユニットのシグナル配列である。より好ましくは、配列番号10に示すロドサイチンβサブユニットのシグナル配列である。
また、細胞外分泌が可能なシグナル配列として、配列番号9、10または11に示すロドサイチンβサブユニットのシグナル配列と、
1)95%以上の配列相同性を有する塩基配列である、または、
2)1または数塩基が欠失、置換、付加されている塩基配列である、または、
3)相補的な配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列であっても良い。

【0039】
本実施形態におけるロドサイチンβサブユニット遺伝子は、配列番号7、配列番号8、配列番号16や配列番号18に示される塩基配列と
1)95%以上の配列相同性を有する塩基配列である、または、
2)1または数塩基が欠失、置換、付加されている塩基配列である、または、
3)相補的な配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列であっても良い。

【0040】
本実施形態におけるロドサイチンβサブユニット遺伝子は、配列番号16に示される塩基配列と
1)95%以上の配列相同性を有する塩基配列である、または、
2)1または数塩基が欠失、置換、付加されている塩基配列である、または、
3)相補的な配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列である、ことが好ましい。

【0041】
<組換え体ベクター>
本実施形態における組換え体ベクターは、クローニングベクターに、所望するポリヌクレオチドを挿入等することで作成することができる。
上記のクローニングベクターとしては、例えば、プラスミド、ファージ、ファージミド、コスミド、フォスミドまたは、人工染色体などがあげられる。具体的には大腸菌由来のプラスミド(例えばpBR322、pBR325、pUC12、pUC13)、酵母由来プラスミド(例えばpSH19、pSH15)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB110、pTP5、pC194)、動物細胞発現プラスミド(例えばpA1-11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neo)、λファージなどのバクテリオファージ、HIV、アデノウイルス、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルスなどのウイルス由来のベクターや人工染色体などを用いることができる。これらのベクターは、プロモーター、複製開始点、または抗生物質耐性遺伝子など、蛋白質発現に必要な構成要素を含んでいてもよい。

【0042】
本実施形態における組換え体ベクターは、ロドサイチンαサブユニット遺伝子および/またはロドサイチンβサブユニット遺伝子を有していれば特に限定しない。つまり、同一組換え体ベクター上に、ロドサイチンαサブユニット遺伝子およびロドサイチンβサブユニット遺伝子を有していても良い。また、本実施形態における組換え体ベクターは、第一の組換え体ベクターとして、ロドサイチンαサブユニット遺伝子を有し、第二の組換え体ベクターとして、ロドサイチンβサブユニット遺伝子を有していてもよい。
本実施形態における組換え体ベクターは、ロドサイチンαサブユニット遺伝子の上流にロドサイチンβサブユニット遺伝子のシグナル配列が導入された組換え体ベクターが好ましい。

【0043】
<血小板活性化能を有するロドサイチンを生産する組換え細胞の製造方法>
本実施形態における血小板活性化能を有するロドサイチンを生産する組換え細胞の製造方法は、下記の(1)~(2)の遺伝子を宿主細胞に導入し形質転換する工程を含む組換え細胞の製造方法である。
(1)ロドサイチンαサブユニット遺伝子
(2)ロドサイチンβサブユニット遺伝子

【0044】
本実施形態の組換え細胞の製造方法における遺伝子を導入し形質転換する工程は、既製の遺伝子を導入Kitや公知の方法を用いることができる。なお、ロドサイチンαサブユニット遺伝子とロドサイチンβサブユニット遺伝子は、同時に宿主細胞に導入してもよく、別々に導入してもよい。

【0045】
なお、本明細書において、分子生物学の手法(例えば、クローニング、プラスミド抽出、DNA断片の切断、連結、ハイブリダイゼーション、部位特異的変異導入法、PCR法、ウエスタンブロット法等々の手法)は、当業者によく知られている通常の方法を採用することができる。これらの方法は、 Sambrook, J., Fritsch, E. F., and Maniatis, T., "Molecular Cloning A Laboratory Manual, Second Edition",Cold Spring Harbor Laboratory Press, (1989)等を参照することができる。

【0046】
上記(1)ロドサイチンαサブユニット遺伝子または、(2)ロドサイチンβサブユニット遺伝子は、宿主細胞に導入され、宿主細胞が形質転換できるのであれば、特に限定しない。好ましくは、上記ロドサイチンαサブユニット遺伝子は、細胞外分泌が可能なシグナル配列を有し、上記ロドサイチンβサブユニット遺伝子は、細胞外分泌が可能なシグナル配列を有する、組換え細胞の製造方法である。

【0047】
また、上記(1)ロドサイチンαサブユニット遺伝子または、(2)ロドサイチンβサブユニット遺伝子は、組換え体ベクターを含んでいても良い。好ましくは、上記ロドサイチンαサブユニット遺伝子は、第一の組換え体ベクターを含み、上記ロドサイチンβサブユニット遺伝子は、第二の組換え体ベクターを含む、組換え細胞の製造方法である。
・本実施形態における組換え体ベクターの方法は、従来の方法を用いることができる。例えば、クローニングベクターに、所望するポリヌクレオチドを挿入等することで作成することできる。クローニング方法は、特に限定しないが、既製のKitや公知の方法が用いることができる。

【0048】
<ロドサイチンの製造方法>
本実施形態におけるロドサイチンの製造方法は、本実施形態における組換え細胞を培養する工程と、血小板活性化能を有するロドサイチンを採取する工程とを含む、ロドサイチンの製造方法である。

【0049】
本実施形態のロドサイチンの製造方法における組換え細胞を培養する工程は、本実施形態の組換え細胞が培養できれば特に限定しない。例えば、公知の方法を用いることができる。
本実施形態のロドサイチンの製造方法における血小板活性化能を有するロドサイチンを採取する工程は、血小板活性化能を有するロドサイチンを組換え細胞から得ることができれば、特に限定しない。例えば、公知の方法を用いることができる。一例として、スポイト等によって組換え細胞の培養液を取得する方法や、遠心分離によって、組換え細胞の培養上清を得る方法や組換え細胞を細胞溶解液や超音波等によって破壊して、ロドサイチンを得る方法が挙げられる。また、血小板活性化能を有するロドサイチンを精製してもよい。

【0050】
<分析方法>
・ロドサイチンαサブユニットタンパク質およびロドサイチンβサブユニットタンパク質の発現
本実施形態におけるロドサイチンαサブユニットタンパク質およびロドサイチンβサブユニットタンパク質の発現の確認方法は、特に限定しないが、公知の方法を用いることができる。例えば、ウエスタンブロット法が挙げられる。例えば、遺伝子導入後に得られた細胞を培養し培養液あるいは細胞溶解液中に含有するタンパク質を確認することができる。なお、ウエスタンブロット法は、市販の実験書等を参考にした標準的なウエスタンブロット法を行うことができる。
なお、ロドサイチンに対してSDS-PAGEを用いてウエスタンブロット法を行った場合は、ロドサイチンαサブユニットタンパク質、ロドサイチンβサブユニットタンパク質の2つのバンドが確認される。ロドサイチンは、ロドサイチンαサブユニットとロドサイチンβサブユニットから構成されるヘテロ四量体のタンパク質である。従って、還元剤(例えば、メルカプトエタノールやジチオトレイトールなど)入りのSDSサンプルバッファーによって、ロドサイチンαサブユニットタンパク質とロドサイチンβサブユニットタンパク質間のジスルフィド結合が切れ、2つのバンドが確認される。

【0051】
・ 血小板活性化能の測定
本実施形態における血小板活性化能の測定方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、血小板凝集能は、血小板凝集能測定装置を用いて測定することができる。調製したマウスの洗浄血小板またはヒトの洗浄血小板を使用し、試料と混合し凝集率を一定時間継時的に測定する。

【0052】
本実施形態における組換え細胞から得られたロドサイチンは、血小板活性化能を有している。従って、マレーマムシからロドサイチンを得ることより、より簡便に血小板活性化能を有するロドサイチンを得ることできる。
また、本実施形態における組換え細胞から得られたロドサイチンは、血小板活性化能を有しているので、血小板凝集に関連する疾病の治療に役立つ薬剤を開発するための血小板表面のレセプターの探索用マーカーや、そのシグナル伝達経路の反応を阻止するのに有効な薬剤の同定をするための実験試薬として用いることができる。

【0053】
<試薬、診断薬、キット>
本実施形態に係るロドサイチン、またはロドサイチンをコードするポリヌクレオチドもしくはベクターは、それらを含む試薬、診断薬、またはキットとして使用、生産、または販売することができる。これらの試薬、診断薬、またはキットは、例えば、血小板表面のレセプターの探索用マーカーや、血小板凝集に関するシグナル伝達経路の反応の抑制剤探索実験試薬等に用いることができる。これらの場合、上記試薬、診断薬、またはキットは、組換え細胞からロドサイチンを得ることができるため、マレーマムシから得るロドサイチンの天然物に比べ、安定性、供給面、またはコスト面で優れている。
なお上記キットは、本実施形態に係るロドサイチン等の使用方法もしくは使用例を記載した指示書、その指示書の所在を記載した文面、本実施形態に係るロドサイチンを認識する抗体、または種々のバッファーを含んでいてもよい。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実験例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0055】
実験例1
<ロドサイチンのαおよびβサブユニット遺伝子を含む遺伝子組換えベクターの作成>
非特許文献4に記載されたロドサイチンのαおよびβサブユニットの遺伝子配列情報を基として塩基配列を設計した。表1に示す。設計した塩基配列は、GENEWIZ日本支社にポリヌクレオチド合成および、合成されたポリヌクレオチドを、pUC57-Ampベクター(GENEWIZ社)(配列番号26)に導入することを委託した。得られた組換えベクターは、表2に示す。
【実施例】
【0056】
【表1】
JP0006501111B2_000002t.gif
【実施例】
【0057】
【表2】
JP0006501111B2_000003t.gif
【実施例】
【0058】
上記組換え体ベクターおよびpCMVベクター(Stratagene社)を用いて、表3に記載する組換え体ベクターを作製した。なお、Overlap extension PCR cloning法(Biotechniques. 2010 June ; 48(6): 463-465.)を参考にして実験を行った。
上記組換え体ベクターおよびpCMVベクター(Stratagene社)を鋳型にして、表3に記載するプライマーを用いて、PCR法によってPCR産物を得た。PCR法は、Q5 High-Fidelity DNA polymerase(New Englind Biolab社)を用いて、PCR反応「98℃で30秒、55℃で30秒、72℃で3分」のサイクルを25回繰り返して反応をサーマルサイクラーVeriti 200(Applied Biosystems社)を用いて行った。
それぞれ得られた、組換え体ベクターを鋳型にしたPCR産物5μLとpCMVベクターを鋳型にしたPCR産物1μLを、混合した。その混合液を100μLのコンピテントセルEscherichia coli DH5αにヒートショック法を用いて形質導入し,100μg/mLAmpicillin含有LB寒天培地に播種した。
また、ヒートショック法およびコンピテントセルの作成は、Sambrook, J., Fritsch, E. F., and Maniatis, T., "Molecular Cloning A Laboratory Manual, Second Edition",Cold Spring Harbor Laboratory Press, (1989)を基にして行った。形質転換された大腸菌からQIAGEN Plasmid Maxi Kit(QIAGEN社)を用いて、組換え体ベクターを得た。
また、表3に記載した組換え体ベクターを用いて、表4に記載する組換え体ベクターを作製した。表3に記載した組換え体ベクターを鋳型として、表4に記載するプライマーを用いて、インバースPCR法によってPCR産物を得た。なおインバースPCR法の条件は上記PCR法と同じである。それぞれ得られたPCR産物6μLを100μLのコンピテントセルE.coli DH5αにヒートショック法を用いて形質導入し,100μg/mLAmpicillin含有LB寒天培地に播種した。形質転換された大腸菌からQIAGEN Plasmid Maxi Kit(QIAGEN社)を用いて、組換え体ベクターを得た。
なお、組換え体ベクターにおけるロドサイチンのαまたはβサブユニット遺伝子のシークエンスは、受注シークエンスサービス(マクロジェンジャパン社)に委託し、上記設計した塩基配列と比較し、欠損、置換、付加等がないことを確認した。
【実施例】
【0059】
【表3】
JP0006501111B2_000004t.gif
【実施例】
【0060】
【表4】
JP0006501111B2_000005t.gif
【実施例】
【0061】
実験例2
<宿主細胞をCHO細胞としたロドサイチンのαおよびβサブユニット遺伝子を含む組換え細胞の作成>
・培養条件
タンパク質発現用細胞としてCHO細胞を用いた。培養条件については、直径15cm 培養皿を用い、25mLの血清DMEM培地(ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Life Technologies社)、10%ウシ胎児血清(FBS、Life Technologies社)、1%P/S溶液(10,000units/mLペニシリンG,10,000μg/mLストレプトマイシン硫酸塩)を加えた培養液にCHO細胞を播種し、直径15cm培養皿に対してCHO細胞が100%占有率になるまで、37℃、5%CO2条件下で培養した。なお、遺伝子導入後のCHO細胞の培養条件も上記と同じである。
【実施例】
【0062】
・エレクトロポレーションによるCHO細胞への遺伝子導入
コンピテントセルの作成
直径15cm培養皿に対して100%占有率となったCHO細胞の培養液を捨て、培養皿1枚に対して15mLの1×PBSで1回細胞を洗浄した。培養皿1枚に対して2mlのトリプシン-EDTA-Na溶液(0.25w/v%トリプシン溶液と1mM EDTA-Na溶液との混合液)を加え、培養皿全体に行き渡らせた後、トリプシン-EDTA-Na溶液を回収して、培養皿を37℃で2分インキュベートした。
インキュベート後、20mLのDMEM培地と0.2mL P/S溶液とを加えた溶液にてCHO細胞を懸濁し、50mLファルコンチューブに回収し,1,000rpm,5分間,室温(約25℃)で遠心分離し、上清を捨てた後、0.3mLのCytomix溶液(120mM KCl,0.15mM CaCl2,10mM K2HPO4,10mM KH2PO4, 25mM HEPES, 2mM EGTA, 5mM MgCl2, 2mM ATP, 5mM glutathione)を加えて、CHO細胞を再浮遊させた。この状態におけるCHO細胞を計数し、 CHO細胞数が2.5x107cell/mlになるようにCytomix溶液を加えて調整した。(目安として、通常で15cmの培養皿から得られる容量は0.5-0.6mLとなる)。
エレクトロポレーション
エレクトロポレーション用キュベット(Cell Projects社,EP-104,GAP:4mm)に、表3または表4に示す組換え体ベクター40μgを添加し、さらに、2.5x107cell/mlに調整したCHO細胞懸濁液400μLを添加し、キュベットの蓋をして転倒混和した後,10分間、室温でインキュベートした。エレクトロポレーションシステムはBIO-RAD GENE PULSER(R)II Electroporation System(BIO-RAD社)を使用した。なお、遺伝子導入の条件として250mV, 950μFにて設定し、エレクトロポレーションを行った。エレクトロポレーション後、氷上で10分間インキュベートした。次に、10cm培養皿に13mL血清DMEMを準備し、ここにエレクトロポレーションを行ったCHO細胞を播種し、一昼夜培養した。培養液を除き、培養皿1枚に対して15mLの1×PBSで一回洗浄した後、13mL Opti-MEM培地(Life Technologies社)を添加して、培養を継続した。なお、得られた組換え細胞を表5に示す。
【実施例】
【0063】
【表5】
JP0006501111B2_000006t.gif
【実施例】
【0064】
実験例3
<ウエスタンブロット法によるタンパク質の発現確認>
上記組換え細胞におけるロドサイチンの発現の確認をするために、ウエスタンブロット法を用いた。
・組換え細胞の培養液の調製
実験例2にて得られた組換え細胞において、Opti-MEM培地にて72時間培養後、培養液を回収し、3,000rpm,30分間の遠心分離を行い浮遊した細胞等を除いた。なお、必要に応じて培養液を-80℃で保存した。
上記組換え細胞の培養液は、15,000rpm, 30分間, 4℃で遠心分離後、培養液を回収した。
・組換え細胞の細胞溶解液の調製
培養液回収後の組換え細胞に氷冷1×PBSにて2回洗浄し、細胞溶解バッファー(1% NP40,150 mM NaCl,10 mM Tris,1mM Na3VO3,1mM EGTA, 1mM EDTA,1μg/mL leupeptin,1μg/mL aprotinin,1μg/mL pepstatin,1mM PMSF,pH7.5)を添加し、細胞溶解液を得た。なお、必要に応じて細胞溶解バッファーを加えて細胞溶解液を希釈した。
・ウエスタンブロット法
組換え細胞の培養液は、必要に応じてOpti-MEM培地を加えて培養液を希釈した。
蛇毒精製ロドサイチン(非特許文献1)または、上記調製した組換え細胞の培養液20μLあるいは上記細胞溶解液20μLにSDSサンプルバッファーを加えて、SDS-PAGEで電気泳動後、PVDF膜に転写し、一次抗体に抗ロドサイチン抗体(ウサギポリクローナル抗体)、二次抗体にHRP標識ウサギIgGを用い、ECL Prime Western Blottin Detection System(GE Healthcare Life Science)て検出した。画像撮影には,ImageQuant LAS 4000 mini(GE Healthcare Life Science)を使用し、High Resolutionモードで撮影した。なお、図4および図5におけるLow exposureで撮影されたバンドは、露光時間2分で撮影した。また、High exposureは、露光時間10分で撮影をした。
上記組換え細胞の培養液あるいは細胞溶解液を使用して、ロドサイチンαサブユニットおよびロドサイチンβサブユニットタンパク質の発現を確認した。結果を図3、4、5に示す。
【実施例】
【0065】
<結果の考察>
図3について、
組換え細胞の培養液および細胞溶解液は、希釈せずに用いた。
No.2については、ロドサイチンαサブユニット、ロドサイチンβサブユニットの2つのバンドが確認された。従って、No.2の組換え細胞は、ロドサイチンを生産することがわかる。なお、No.5、No.6,No.7の組換え細胞は、図4および図5から、ロドサイチンを生産することがわかる。
【実施例】
【0066】
図3から、No.2の組換え細胞の培養液中に、ロドサイチンαサブユニットおよびロドサイチンβサブユニットタンパク質のバンドが確認することができた。一方、No.4の組換え細胞の培養液中に、ロドサイチンβサブユニットタンパク質のバンドが現れず、細胞溶解液中のロドサイチンβサブユニットタンパク質のバンドが現れた。つまり、No.4の組換え細胞において、ロドサイチンβサブユニットタンパク質が細胞外に分泌されていないことがわかる。
No.3の組換え細胞について、培養液中のロドサイチンαサブユニットのバンドと細胞溶解液中のロドサイチンαサブユニットタンパク質のバンドと比べると、細胞溶解液中のバンドの方が濃いことがわかる。
これら実験結果から、同一細胞にロドサイチンαサブユニット遺伝子およびロドサイチンβサブユニット遺伝子を導入する方が、細胞外へタンパク質を分泌しやすい傾向がみられた。
【実施例】
【0067】
図4について、
それぞれ、100nM、50nM、25nMの蛇毒精製ロドサイチンをウエスタンブロットに供した。100nMの蛇毒精製ロドサイチンにおけるロドサイチンαサブユニットおよびロドサイチンβサブユニットタンパク質のバンド強度と、No.2およびNo.5の組換え細胞の4倍希釈培養液におけるロドサイチンαサブユニットおよびロドサイチンβサブユニットタンパク質のバンド強度が近いことがわかる。
また、No.2およびNo.5の組換え細胞の4倍希釈培養液におけるロドサイチンαサブユニットおよびロドサイチンβサブユニットタンパク質のバンド強度を比べると、No.5の組換え細胞の方が、バンド強度の方が強いことが分かる。すなわち、No.5の組換え細胞の方が、No.2の組換え細胞よりロドサイチン生産能が高いと判断できる。
【実施例】
【0068】
図5について、
No.6およびNo.7の組換え細胞の4倍希釈培養液におけるロドサイチンαサブユニットおよびロドサイチンβサブユニットタンパク質のバンド強度を比べると、No.6のバンド強度の方が強いことが分かる。すなわち、No.6の組換え細胞の方が、No.7の組換え細胞よりロドサイチン生産能が高いと判断できる。
【実施例】
【0069】
実験例4
<血小板凝集能の確認>
・マウスの洗浄血小板の調整
6-8週齢のC57BL/6(野生型)または6-8週齢のC57BL/6(Clec1b(fl/fl)PF4-Cre(血小板CLEC-2ノックアウトマウス)(J Biol Chem. 2012 Jun 22;287(26):22241-22252.))マウスをジエチルエーテル吸入により全身麻酔し、開腹した。腹部後大静脈より、1mLシリンジ(25G針を付けた1mLシリンジに予め100μLのACD溶液(acid citrate dextrose solution:2.5%クエン酸ナトリウム,1.5%クエン酸,2%グルコース)を抗凝固剤として充填しておく)で900μLの採血を行った。
採血した血液を2mLチューブに移し、あらかじめ37℃に温めておいた900μL CFT溶液(Calcium-freen modified Tyrode buffer:137mM NaCl,11.9mM NaHCO3, 0.4mM NaH2PO4, 2.7mM KCl, 1.1mM MgCl2, 5.6mM glucose, pH 7.4)および100μL ACD溶液を、上記チューブに加え、転倒混和した。次にアングルローター式遠心機で100G,10分間,室温で遠心分離した。上清を別の2mLチューブに移し回収した。
再度上清が回収された2mLチューブを室温で遠心分離した。その上清を回収し、上清が入っている2mLチューブに移した。その次に上清が入っている2mLチューブに1μg/μL PGI2(Prostaglandin I2)溶液2μLを加え、転倒混和し、スイングローター式遠心機で、2,300rpm,10分間,室温で遠心分離した。
上清を除き、沈降した血小板のペレットに215μL CFT溶液を加えて再浮遊させた。そのうちの15μLを採取し後、135μL CFT溶液で10倍希釈し、多項目自動血球分析装置XE-2100(シスメックス株式会社)により血小板数を計数した。得られた血小板数に従い、20×104 PLT/μLになるようにCFT溶液で希釈し調製した。これを血小板凝集能測定に使用した。
なお、多項目自動血球分析装置XE-2100は、ヒト用に設定された血球分析装置である。計数は光学方式(PLT-O)とインピーダンス方式(PLT-I)があるが、マウス血小板はヒト血小板よりも小さいため、今回マウス血小板の計数にはPLT-Oを採用した。
【実施例】
【0070】
・ヒトの洗浄血小板の調整
健常人ドナーの肘正中皮静脈より採血し、血液9容に3.8%クエン酸ナトリウム1容を混合して凝固を防いだ。この血液検体を、スイングローター式遠心機で1,100rpm,10分間,室温で遠心して、赤血球および白血球を沈殿させた。上清を回収して多血小板血漿(platelet-rich plasma; PRP)を得た。
さらにPRPに終濃度が15%ACD、1μM PGI2になるよう加え、スイングローター式遠心機で2,500rpm,10分間,室温で遠心して血小板を沈降させた。
上清を捨て、5mL CFT溶液と750μL ACD溶液を混合した液を加えてペレットを浮遊させ、さらに20mL CFT,3mL ACD溶液,10μL 1μg/μL PGI2溶液を加え、スイングローター式遠心機で2,500rpm,10分,室温で遠心した。
上清を捨て、沈降した血小板にCFT溶液を加えて再浮遊させ、多項目自動血球分析装置XE-2100(シスメックス株式会社)により血小板数を計数した。なお、計数は光学方式(PLT-O)を用いた。
得られた血小板数に従い、20×104 PLT/μLになるようにCFT溶液で希釈し調製した。これを血小板凝集能測定に使用した。
【実施例】
【0071】
組換え細胞の培養液の調製
実験例3にて調製した組換え細胞の培養液を血小板凝集能試験に用いた。なお必要に応じて、Opti-MEM培地を用いて、1倍、2倍、4倍、8倍、16倍希釈した培養液を調製した。
【実施例】
【0072】
・血小板凝集能の測定
血小板凝集能は、血小板凝集能測定装置ヘマトレーサー712(MCM HEMA TRACER 712, LMS株式会社)を用いた。調整したマウスの洗浄血小板またはヒトの洗浄血小板100μLを使用し、No.6またはNo.7の組換え細胞の培養液11.1μLを加え、凝集率を10分間、継時的に測定した。またコントロールとして、No.6またはNo.7の組換え細胞の培養液の変わりに、CFT溶液、終濃度が2μg/mlコラーゲンまたは所望する蛇毒精製ロドサイチンの濃度となるように調整した溶液を、洗浄血小板に加えた。結果を図6、図7、図8に示す。
【実施例】
【0073】
<結果の考察>
図6について、
組換え細胞の培養液は、希釈せずに用いた。
C57BL/6(野生型)のマウスの血小板に、No.6またはNo.7の組換え細胞の培養液を加えたものは、血小板凝集が現れた。一方、CLEC-2ノックアウトマウスの血小板にNo.6またはNo.7の組換え細胞の培養液を加えたものは、血小板凝集が現れなかった。
なお、コラーゲンは、CLEC-2と異なる血小板表面のレセプターと結合することでシグナル伝達経路を刺激し血小板凝集を起すことが既に報告されている。
No.6またはNo.7の組換え細胞の培養液は、C57BL/6(野生型)のマウスの血小板に対して、血小板凝集能を有し、CLEC-2ノックアウトマウスの血小板に対して、血小板凝集能を示さなかった。つまり、No.6またはNo.7の組換え細胞は、血小板活性化能を有するロドサイチンを生産することが分かる。
なお、図示はしていないが、No.2およびNo.5の組換え細胞の培養液についても、同様に血小板凝集能の測定を行い、血小板凝集能を確認した。
【実施例】
【0074】
図7について、
No.6またはNo.7の組換え細胞の培養液について、それぞれ1倍、2倍、4倍、8倍、16倍希釈した培養液を用いた。No.6またはNo.7の組換え細胞の8倍希釈培養液の血小板凝集能を比べると、No.6の組換え細胞の方が短い時間で高い血小板凝集を示すことがわかった。この結果と実験例3におけるウエスタンブロット法の結果と合わせて、No.7の組換え細胞と比べてNo.6の組換え細胞の方が、ロドサイチン生産能が高いと判断できる。
【実施例】
【0075】
図8について、
ヒトの血小板に、No.2の組換え細胞の培養液を添加したものは、血小板凝集が現れた。つまり、No.2の組換え細胞は、血小板活性化能を有するロドサイチンを生産することが分かる。なお、図示はしていないが、No.5~No.7の組換え細胞の1倍希釈培養液についても、同様に血小板凝集能の測定を行い、血小板凝集能を確認した。つまり、No.5~No.7の組換え細胞は、血小板活性化能を有するロドサイチンを生産することが分かる。
【実施例】
【0076】
実験例5
<フローサイトメーターによるヒトCLEC-2との結合の確認>
ヒトCLEC-2発現細胞として,ドキシサイクリン(Dox)による発現誘導が可能なT-REx ヒトCLEC-2発現293細胞(J Biol Chem. 2007 Sep 7;282(36):25993-26001)を使用した。
T-REx ヒトCLEC-2発現293細胞は、終濃度10μg/μLドキシサイクリンを含む血清DMEM培地を用いて直径15cm培養皿に対して100%占有率になるまで培養した。培養液を捨て1×PBSで1回細胞を洗浄した。培養皿1枚に対して2mlのトリプシン-EDTA-Na溶液を加え、培養皿全体に行き渡らせた後、トリプシン-EDTA-Na溶液を回収して、培養皿を37℃で2分インキュベートした。インキュベート後、20mLのDMEMと0.2mL P/S溶液とを加えた溶液にてCHO細胞を懸濁し、50mLファルコンチューブに回収し,1,000rpm,5分間,室温で遠心分離し、上清を捨てた後、血清DMEMにてT-REx ヒトCLEC-2発現293細胞を5×106cells/mLに調整した。
No.2の組換え細胞の培養液は、実験例3にて調製したものを用いた。なお、培養液は希釈せずに用いた。
T-RExヒトCLEC-2発現293細胞の浮遊液50μLにNo.2の培養液50μLおよび1mg/mL抗ロドサイチン抗体1μLまたは、コントロールウサギIgGを混合し、室温で30分間インキュベートした後、洗浄するために400μLの1×PBSを加え、3,000rpm、5分間、室温で遠心分離し、上清を捨て、T-RExヒトCLEC-2発現293細胞を回収した。回収されたT-RExヒトCLEC-2発現293細胞に、さらに二次抗体としてanti-Rabbit Alexa 488(Molecular Probes社)を加え、室温で30分間インキュベートし、サンプルとした。検出にはAccuri C6 Flow Cytometer(Becton, Dickinson and Company社)を使用した。
またコントロール1として、T-RExヒトCLEC-2発現細胞の浮遊液50μLにCFT溶液50μLおよび、抗CLEC-2抗体または、コントロールマウスIgGを混合した以外は、上記と同様の方法でヒトCLEC-2との結合の確認を行った。
またコントロール2として、T-RExヒトCLEC-2発現細胞の浮遊液50μLmlにCFT溶液50μLmlおよび、抗ロドサイチン抗体またはコントロールウサギIgGを混合したものを、上記と同様の方法でヒトCLEC-2との結合の確認を行った。結果を図9に示す。
【実施例】
【0077】
<結果の考察>
図9について、
コントロール1について、CLEC-2抗体のグラフは、発現されたヒトCLEC-2に抗CLEC-2抗体が結合するため、コントロールマウスIgGのグラフから右にシフトしている。
コントロール2について、発現されたヒトCLEC-2に抗ロドサイチン抗体が結合しないため、コントロールマウスIgGのグラフと抗ロドサイチン抗体のグラフがほぼ同じになる。
No.2の培養液の結果ついて、コントロールマウスIgGのグラフから、右へシフトしていることがわかる。従って、No.2の組換え細胞の培養液に含まれるロドサイチンは、ヒトCLEC-2に結合することがわかる。なお、図示はしていないが、No.5~No.7の組換え細胞の培養液についても、同様にヒトCLEC-2との結合の確認を行い、No.5~No.7の組換え細胞から生産されるロドサイチンについて、ヒトCLEC-2結合能を確認した。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
19