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明細書 :義歯床、マウスピース及びそれらの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6821165号 (P6821165)
公開番号 特開2016-180024 (P2016-180024A)
登録日 令和3年1月8日(2021.1.8)
発行日 令和3年1月27日(2021.1.27)
公開日 平成28年10月13日(2016.10.13)
発明の名称または考案の名称 義歯床、マウスピース及びそれらの製造方法
国際特許分類 A61C  13/01        (2006.01)
A61C  13/10        (2006.01)
A61K   6/30        (2020.01)
A61L  27/00        (2006.01)
A61C   7/08        (2006.01)
FI A61C 13/01
A61C 13/10
A61K 6/30
A61L 27/00
A61C 7/08
請求項の数または発明の数 8
全頁数 21
出願番号 特願2015-059676 (P2015-059676)
出願日 平成27年3月23日(2015.3.23)
審査請求日 平成30年1月25日(2018.1.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】田仲 持郎
個別代理人の代理人 【識別番号】110002206、【氏名又は名称】特許業務法人せとうち国際特許事務所
審査官 【審査官】前田 孝泰
参考文献・文献 特開2014-034563(JP,A)
特開2000-001413(JP,A)
特開平04-261110(JP,A)
国際公開第2011/090078(WO,A1)
国際公開第2015/046100(WO,A1)
特開2005-081603(JP,A)
特開2004-277538(JP,A)
特開平10-218721(JP,A)
特開平10-167922(JP,A)
特開平09-087527(JP,A)
特開平07-291817(JP,A)
特表2016-525150(JP,A)
特開昭56-133205(JP,A)
特開昭53-141250(JP,A)
特開平07-188505(JP,A)
特開平02-174842(JP,A)
特開平01-110609(JP,A)
特開平10-273412(JP,A)
特開2007-186538(JP,A)
特開2009-227591(JP,A)
特開2003-226709(JP,A)
調査した分野 C08F 2/00-299/08
C08L 1/00-101/16
A61C 1/00- 19/10
A61K 6/00- 51/12
A61L 2/00- 33/18
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
重合体(A)の粉剤と単量体(B)の液剤とを重合開始剤(C)の存在下で混合してなる組成物を硬化させてなる義歯床又はマウスピースであって;
単量体(B)の液剤に対する重合体(A)の粉剤の混合比(g/ml)が1.5~2.3であり、
重合体(A)が、メチルメタクリレート単位を98質量%以上含有し、
単量体(B)が、メチルメタクリレート(b1)及び炭素数3~10の脂肪族トリオールのトリ(メタ)アクリレート(b2)を含有し、
単量体(B)における、(b1)及び(b2)の合計量が80質量%以上であり、かつ(b1)に対する(b2)の質量比(b2/b1)が30/70~60/40であり、
前記粉剤の平均粒径が50~80μmであることを特徴とする義歯床又はマウスピース
【請求項2】
前記組成物における、重合体(A)、単量体(B)及び重合開始剤(C)の合計量が90質量%以上である請求項1に記載の義歯床又はマウスピース。
【請求項3】
前記組成物が、重合体(A)の粒子に由来する不均一構造を有する請求項1又は2に記載の義歯床又はマウスピース。
【請求項4】
単量体(b2)が1,1,1-トリメチロールプロパントリメタクリレートである請求項1~3のいずれかに記載の義歯床又はマウスピース
【請求項5】
単量体(B)に含まれていた炭素-炭素二重結合の反応率が80%以上である請求項1~4のいずれかに記載の義歯床又はマウスピース
【請求項6】
重合体(A)の粉剤と単量体(B)の液剤とを重合開始剤(C)の存在下で混合して増粘させた後、硬化させることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の義歯床又はマウスピースの製造方法。
【請求項7】
重合体(A)が予め重合開始剤(C)を含有している請求項に記載の義歯床又はマウスピースの製造方法。
【請求項8】
重合体(A)の粉剤と単量体(B)の液剤とからなり、前記粉剤又は前記液剤の少なくとも一方が重合開始剤(C)を含有する、請求項1~5のいずれかに記載の義歯床又はマウスピース用キット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体の粉剤、単量体の液剤及び重合開始剤を含有する組成物及びその製造方法に関する。また、このような組成物からなる医療用組成物、特に歯科用組成物に関する。さらに、前記組成物を硬化させてなる成形品及び前記組成物を製造するためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
重合体、単量体及び重合開始剤を含有する組成物は成形品の材料等として用いられている。このような組成物は、重合体の粉剤と単量体の液剤を混合して製造される場合がある。その場合の成形品の製造方法としては、重合体の粉剤と単量体の液剤を混合して、混合物が餅状になるまで待ってから賦形し、その後重合させて硬化させることによって目的の形状のものを得る方法が知られている。このような製造方法を用いれば、組成物の製造やその後の賦形が簡便な操作で可能である。これまで、このような組成物として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)の粉剤とメチルメタクリレート(MMA)の液剤とを混合して得られるものが知られており、当該組成物は、医療分野等において使用されている。例えば、当該組成物は、歯科分野において、義歯床材、マウスピース材等の材料として使用されているほか、整形外科の分野において、骨セメント材等として使用されている。
【0003】
しかしながら、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート及び重合開始剤を含有する組成物を重合させた硬化物は、機械的特性が不十分である場合があった。したがって、用途によっては使用中の応力や衝撃によって破損するおそれがあり、その改善が求められていた。
【0004】
特許文献1には、不飽和二重結合を持つ重合性モノマーと、ポリアルキル(メタ)アクリレートと、重合触媒とが混合されてなり、前記ポリアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも一部が前記重合性モノマー中に溶解していることを特徴とする義歯床用樹脂材料が記載されている。これにより、予めペースト状となっていて操作が簡略化できるとともに、弾性エネルギーが大きく適度な硬さと粘り強さとを有する硬化体が得られるとされている。実施例には、重合性モノマーとして、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート及びエチレングリコールジメタクリレートを用いた例が記載されているが、その強度は不十分なものであった。
【0005】
特許文献2には、ポリアルキル(メタ)アクリレートの粉剤と、炭素数が6以上のビニルエステル単量体の液剤とを、重合開始剤の存在下で混合して増粘させてから賦形し、その後重合反応を進行させて硬化させる、成形品の製造方法が記載されている。しかしながら、液剤としてビニルエステル単量体を用いたのでは、得られる成形品の弾性率が低くなり、高弾性率が要求される用途に用いるには不十分な場合があった。
【0006】
特許文献3には、ポリメチルメタクリレートの粉剤と、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートの液剤とを重合開始剤の存在下で混合して増粘させてから賦形し、その後重合反応を進行させて硬化させる、成形品の製造方法が記載されている。しかしながら、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートは、ポリメチルメタクリレートの粉剤を膨潤させる速度が遅く、混合操作に24時間あるいはそれ以上の時間を要するので、操作性が不十分となる場合があった。また、用途によっては、強度、弾性率、靭性のバランスが不十分となる場合があった。
【0007】
特許文献4には、メチルメタクリレートにコロイダルシリカを分散させ、さらに重合開始剤、(メタ)アクリレート系(共)重合体を配合した組成物を重合させてなる歯科用複合材料が記載されている。特許文献4の実施例には、(メタ)アクリレート系(共)重合体として、ポリメチルメタクリレート粒子を用いるとともに、メチルメタクリレートに共重合させる多官能不飽和モノマーとしてトリメチロールプロパントリメタクリレートを用いた例が記載されている。しかしながら、特許文献4に記載された材料においては、樹脂自体の機械的特性が十分ではなく、所定の機械的特性を確保するためコロイダルシリカを複合させる必要があった。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2000-254152号公報
【特許文献2】WO2006/077944号
【特許文献3】WO2011/090078号
【特許文献4】特開平7-291817号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、機械的特性に優れる成形品を得ることができる組成物を提供することを目的とするものである。また、そのような組成物を簡便に調製することができる方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、重合体(A)の粉剤と単量体(B)の液剤とを重合開始剤(C)の存在下で混合してなる組成物であって;単量体(B)の液剤に対する重合体(A)の粉剤の混合比(g/ml)が1.5~2.3であり、重合体(A)が、メチルメタクリレート単位を80質量%以上含有し、単量体(B)が、メチルメタクリレート(b1)及び炭素数3~10の脂肪族トリオールのトリ(メタ)アクリレート(b2)を含有し、単量体(B)における、(b1)及び(b2)の合計量が80質量%以上であり、かつ(b1)に対する(b2)の質量比(b2/b1)が3/97~60/40である組成物を提供することによって解決される。
【0011】
このとき、重合体(A)、単量体(B)及び重合開始剤(C)の合計量が90質量%以上であることが好適である。単量体(b2)が1,1,1-トリメチロールプロパントリメタクリレートであることも好適である。前記組成物が、重合体(A)の粒子に由来する不均一構造を有することが好適である。
【0012】
前記組成物からなる医療用組成物が本発明の好適な実施態様であり、当該医療用組成物からなる歯科用組成物がより好適な実施態様である。具体的には、前記医療用組成物からなる骨セメント及び前記歯科用組成物からなる歯科用接着剤が好適な実施態様である。
【0013】
また、前記組成物を硬化させてなる成形品も本発明の好適な実施態様である。このとき、単量体(B)に含まれていた炭素-炭素二重結合の反応率が80%以上であることが好適である。具体的には、前記歯科用組成物を硬化させてなる義歯床又はマウスピースが、好適な実施態様である。
【0014】
また上記課題は、重合体(A)の粉剤と、単量体(B)の液剤とを、重合開始剤(C)の存在下で混合して増粘させることを特徴とする前記組成物の製造方法を提供することによっても解決される。このとき、重合体(A)が予め重合開始剤(C)を含有していることが好適である。
【0015】
さらに上記課題は、重合体(A)の粉剤と単量体(B)の液剤とからなり、重合体(A)が、メチルメタクリレート単位を80質量%以上含有し、単量体(B)が、メチルメタクリレート(b1)及び炭素数3~10の脂肪族トリオールのトリ(メタ)アクリレート(b2)を含有し、単量体(B)における、(b1)及び(b2)の合計量が80質量%以上であり、かつ(b1)に対する(b2)の質量比(b2/b1)が3/97~60/40であり、前記粉剤又は前記液剤の少なくとも一方が重合開始剤(C)を含有する、キットを提供することによっても解決される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の組成物は、簡便に調製できる。また、本発明の組成物を硬化させてなる成形品は、機械的特性に優れる。したがって、当該組成物は、義歯床又はマウスピースなどの製造に好適に用いられるとともに、歯科用接着剤や骨セメントとしても好適に用いられる。さらに、本発明のキットによれば、前記組成物を簡便に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1、7~11及び比較例1、2、9~13において、横軸に単量体(B)の液剤中の1,1,1-トリメチロールプロパントリメタクリレートの含有率(質量%)を、縦軸に重合体(A)の粉剤と単量体(B)の液剤を混合してから混和物が餅状態になるまでの時間をプロットしたグラフである。
【図2】実施例1、7~11及び比較例1、2、9~13において、横軸に単量体(B)の液剤中の1,1,1-トリメチロールプロパントリメタクリレートの含有率(質量%)を、縦軸に得られた試験片の曲げ強さ(MPa)をプロットしたグラフである。
【図3】実施例1、7~11及び比較例1、2、9~13において、横軸に単量体(B)の液剤中の1,1,1-トリメチロールプロパントリメタクリレートの含有率(質量%)を、縦軸に得られた試験片の曲げ弾性係数(GPa)をプロットしたグラフである。
【図4】実施例1、7~11及び比較例1、2、9~13において、横軸に単量体(B)の液剤中の1,1,1-トリメチロールプロパントリメタクリレートの含有率(質量%)を、縦軸に得られた試験片の最大撓み量(mm)をプロットしたグラフである。
【図5】実施例1、7~11及び比較例1、2、9~13において、横軸に単量体(B)の液剤中の1,1,1-トリメチロールプロパントリメタクリレートの含有率(質量%)を、縦軸に得られた試験片の破断エネルギー(KJ/m)をプロットしたグラフである。
【図6】実施例1、12~14、比較例4~6において、横軸に単量体(B)の液剤に対する重合体(A)の粉剤の混合比(g/ml)を、縦軸に重合体(A)の粉剤と単量体(B)の液剤を混合してから混和物が餅状態になるまでの時間をプロットしたグラフである。
【図7】実施例1、12~14、比較例4~6において、横軸に単量体(B)の液剤に対する重合体(A)の粉剤の混合比(g/ml)を、縦軸に得られた試験片の曲げ強さ(MPa)をプロットしたグラフである。
【図8】実施例1、12~14、比較例4~6において、横軸に単量体(B)の液剤に対する重合体(A)の粉剤の混合比(g/ml)を、縦軸に得られた試験片の曲げ弾性係数(GPa)をプロットしたグラフである。
【図9】実施例1、12~14、比較例4~6において、横軸に単量体(B)の液剤に対する重合体(A)の粉剤の混合比(g/ml)を、縦軸に得られた試験片の最大撓み量(mm)をプロットしたグラフである。
【図10】実施例1、12~14、比較例4~6において、横軸に単量体(B)の液剤に対する重合体(A)の粉剤の混合比(g/ml)を、縦軸に得られた試験片の破断エネルギー(KJ/m)をプロットしたグラフである。
【図11】参考例15における成形品の薄切片の顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の組成物は、重合体(A)の粉剤と単量体(B)の液剤とを重合開始剤(C)の存在下で混合してなる組成物であって;単量体(B)の液剤に対する重合体(A)の粉剤の混合比(g/ml)が1.5~2.3であり、重合体(A)が、メチルメタクリレート単位を80質量%以上含有し、単量体(B)が、メチルメタクリレート(b1)及び炭素数3~10の脂肪族トリオールのトリ(メタ)アクリレート(b2)を含有し、単量体(B)における、(b1)及び(b2)の合計量が80質量%以上であり、かつ(b1)に対する(b2)の質量比(b2/b1)が3/97~60/40であるものである。

【0019】
重合体(A)はメチルメタクリレート単位を80質量%以上含有する重合体である。メチルメタクリレート単位を80質量%以上含有することで、高強度及び高弾性率を有する成形品を得ることができる。したがって、このような成形品は、所定の強度や弾性率が求められる、義歯床用材料やマウスピース用材料などとして好適に用いられる。また、メチルメタクリレート単位を80質量%以上含有する重合体(A)は、ハロゲン原子を含む重合体や芳香環を含む重合体に比べて生体適合性が高い。さらに、重合体(A)は比較的ガラス転移温度の高い非晶性の重合体であり、懸濁重合などによって本発明の実施に好適な粒径の粉剤を容易に得ることが可能である。重合体(A)は、メチルメタクリレートの単独重合体であってもよいし、メチルメタクリレートとその他の単量体との共重合体であっても構わない。重合体(A)のメチルメタクリレート単位の含有率は、90質量%以上が好適であり、95質量%以上がより好適であり、98質量%以上がさらに好適である。メチルメタクリレート単位が80質量%未満の場合には、得られる成形品の機械的特性が不十分になる。

【0020】
重合体(A)が共重合体である場合にメチルメタクリレートと共重合させる単量体は、メチルメタクリレートと共重合可能な単量体であれば特に制限されない。例えば、メチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート又はt-ブチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;エチレン、プロピレンなどのオレフィン;酢酸ビニルなどのカルボン酸ビニル;無水マレイン酸;アクリロニトリル;スチレン;塩化ビニルなどが挙げられる。これらの単量体は1種類でも使用可能であるし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。重合性の観点からは、アルキル(メタ)アクリレートが好適である。そして、重合体(A)の粉剤と単量体(B)の液剤を用いて組成物を製造する場合における、重合体(A)の膨潤のし易さの観点からは、エチルメタクリレートが好適である。これらの単量体の含有率は、20質量%以下であり、10質量%以下が好適であり、5質量%以下がより好適であり、2質量%以下がさらに好適である。

【0021】
重合体(A)の分子量は特に制限されないが、通常5,000~2,000,000の重量平均分子量を有するものが使用される。分子量が5,000より低い場合には、得られる成形品の強度が不十分になるおそれがある。分子量は200,000以上がより好適であり、300,000以上がさらに好適である。重合体(A)の分子量は1,500,000以下がより好適であり、1,000,000以下がさらに好適である。上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定することができる。

【0022】
重合体(A)の粉剤の平均粒径は、特に制限されないが、2~200μmであることが好適である。平均粒径が2μmより小さい場合には、重合体(A)の粉剤と単量体(B)の液剤とを混合する際に、粉剤が均一に分散しないおそれがある。平均粒径は10μm以上がより好適であり、20μm以上がさらに好適である。また、重合体(A)の平均粒径が200μmより大きい場合には、粉剤の膨潤速度が遅くなりすぎるおそれがある。平均粒径は150μm以下がより好適であり、100μm以下がさらに好適である。

【0023】
単量体(B)の液剤に含有される炭素数3~10の脂肪族トリオールのトリ(メタ)アクリレート(b2)は、3つの重合性基(メタクリロイル基又はアクリロイル基)を有する架橋性の単量体であり、当該重合性基は、脂肪族トリオールによって連結されていている。単量体(B)の液剤が、このようなトリ(メタ)アクリレート(b2)を含有することが本発明の最大の特徴である。当該トリ(メタ)アクリレート(b2)が含有されることにより得られる成形品の機械的特性が向上する。また、前記トリ(メタ)アクリレート(b2)は、メチルメタクリレート(b1)による重合体(A)の膨潤を阻害しにくいため、本発明の組成物は生産性が良好である。さらに、メチルメタクリレート(b1)及びトリ(メタ)アクリレート(b2)はいずれも、ハロゲン元素や芳香環を含まないので、本発明の組成物は生体適合性が高いと考えられる。

【0024】
トリ(メタ)アクリレート(b2)に含有されるメタクリロイル基及びアクリロイル基はいずれも重合反応性が高い。得られる成形品の吸水率が低下する点や安全性が高い点から、前記トリ(メタ)アクリレート(b2)中の重合性基がメタクリロイル基であること、すなわち、前記トリ(メタ)アクリレート(b2)が、炭素数3~10の脂肪族トリオールのトリメタクリレートであることが好適である。

【0025】
前記トリ(メタ)アクリレート(b2)を構成する脂肪族トリオールの炭素数が3~10である必要がある。重合性基がさらに反応し易くなる点や重合収縮率がさらに小さくなる点からは、脂肪族トリオールの炭素数が4以上であることが好適である。一方、前記炭素数が10を超える場合には、得られる成形品の強度や弾性率が低下する上に、重合体(A)の膨潤速度も低下してしまう。脂肪族トリオールの炭素数が8以下であることが好適である。

【0026】
炭素数3~10の脂肪族トリオールのトリ(メタ)アクリレート(b2)として、具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート等のトリメチロールアルカントリ(メタ)アクリレート;グリセロールトリ(メタ)アクリレートが挙げられ、中でもトリメチロールアルカントリ(メタ)アクリレートが好適であり、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートがより好適である。トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートとしては、1,1,1-トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが好適である。

【0027】
単量体(B)における、メチルメタクリレート(b1)に対する炭素数3~10の脂肪族トリオールのトリ(メタ)アクリレート(b2)の質量比(b2/b1)が3/97~60/40である必要がある。質量比(b2/b1)が3/97未満である場合には、トリ(メタ)アクリレート(b2)を添加することによる効果が得られない。質量比(b2/b1)は8/92以上が好適である。得られる成形品の強度及び弾性率と、靭性とがバランス良く向上する点からは、質量比(b2/b1)は15/85以上が好適である。得られる成形品の強度及び弾性率が特に向上する点からは、質量比(b2/b1)は20/80以上が好適であり、30/70以上がより好適である。一方、質量比(b2/b1)が60/40を超える場合には、得られる成形品の機械的特性が不十分になるおそれがある。質量比(b2/b1)は55/45以下が好適である。得られる成形品の強度及び弾性率と、靭性とがバランス良く向上する点からは、質量比(b2/b1)は50/50以下が好適であり、45/55以下がより好適である。得られる成形品の靭性が特に向上する点からは、質量比(b2/b1)は30/70以下が好適であり、25/75以下がより好適である。

【0028】
単量体(B)における、メチルメタクリレート(b1)及び炭素数3~10の脂肪族トリオールのトリ(メタ)アクリレート(b2)の合計量が80質量%以上である必要がある。(b1)及び(b2)の合計量が80質量%未満である場合には、得られる成形品の機械的特性が不十分になるおそれがある。(b1)及び(b2)の合計量が90質量%以上であることが好適であり、95質量%以上であることがより好適であり、98質量%以上であることがさらに好適である。

【0029】
単量体(B)は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、メチルメタクリレート(b1)及び炭素数3~10の脂肪族トリオールのトリ(メタ)アクリレート(b2)以外の単量体を含有してもよい。このときの単量体としては、(b1)及び(b2)と共重合可能なものであれば特に制限されない。例えば、メチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、4-メタクリロキシエチルトリメリット酸無水物(4-META)、4-アクリロキシエチルトリメティック酸(4-AET)、4-メタクリロキシエチルトリメリティック酸(4-MET)、2-メタクリロイルオキシエチルフェニルヒドロジェンホスフェート(Phenyl-P)などの単官能(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2-[10-(メタクリロイルオキシ)デシル]マロン酸(MAC-10)、10-メタクリロイルオキシデシルジヒドロジェンホスフェート(MDP)などの多官能(メタ)アクリレート;酢酸ビニルなどのカルボン酸ビニル;無水マレイン酸;アクリロニトリル;オレフィンなどが挙げられる。単量体(B)中の、(b1)及び(b2)以外の単量体の含有率は、通常20質量%以下であり、10質量%以下が好適であり、5質量%以下がより好適であり、2質量%以下がさらに好適である。

【0030】
本発明の組成物に含有される重合開始剤(C)は、単量体(B)を重合させることのできるものであれば特に限定されず、ラジカル重合開始剤や光重合開始剤などが使用される。ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物や有機アゾ化合物が好適に使用される。これらのラジカル重合開始剤は加熱することによってラジカルを発生させるものであっても構わないし、アミンなどの還元剤などと混合することによって常温でラジカルを発生させるものであっても構わない。また、光重合開始剤を使用する場合には増感剤と還元剤の組み合わせなどが採用される。

【0031】
加熱することによってラジカルを発生させる重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロルベンゾイルパーオキサイド、m-トリルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ[(o-ベンゾイル)ベンゾイルパーオキシ]ヘキサン、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート又はt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどが例示される。

【0032】
過酸化物と還元剤を組み合わせた、常温でラジカルを発生させるものとしては、過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロルベンゾイルパーオキシド、m-トリルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ[(o-ベンゾイル)ベンゾイルパーオキシ]ヘキサン、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート又はt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどが例示され、還元剤としては、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチル-m-トルイジン,N,N-ジエチル-p-トルイジン、N,N-ジメチル-3,5-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-3,4-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-4-エチルアニリン、N,N-ジメチル-4-i-プロピルアニリン、N,N-ジメチル-4-t-プロピルアニリン、N,N-ジメチル-3,5-ジ-t-ブチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,5-ジメチルアニリン、N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,4-ジメチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-4-i-プロピルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-4-t-プロピルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,5-ジ-i-プロピルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,5-ジ-t-プロピルアニリン、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸n-ブトキシエチル又は4-ジメチルアミノ安息香酸(2-メタクリロイルオキシ)エチル等の芳香族第3級アミンやトリメチルアミン、トリエチルアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-n-ブチルジエタノールアミン、N-ラウリルジエタノールアミン、p-トリルジエタノールアミン、(2-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N-メチルジエタノールアミンジメタクリレート、N-エチルジエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリレート、トリエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミントリメタクリレート等の脂肪族第3級アミンやベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸カリウム、ベンゼンスルフィン酸カルシウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、トルエンスルフィン酸、トルエンスルフィン酸ナトリウム、トルエンスルフィン酸カリウム、トルエンスルフィン酸カルシウム、トルエンスルフィン酸リチウム、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6-i-プロピルベンゼンスルフィン酸、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カルシウムなどのスルフィン酸またはその塩などが例示される。

【0033】
常温でラジカルを発生させる重合開始剤として、トリブチルボラン(TBB)やそれを部分酸化させたトリブチルボラン酸化物(TBBO)等も好適に使用される。

【0034】
また、光重合開始剤の場合の増感剤と還元剤としては、カンファーキノン、ベンジル、ジアセチル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルジ(2-メトキシエチル)ケタール、4,4’-ジメチルベンジル-ジメチルケタール、アントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-クロロアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、1-ヒドロキシアントラキノン、1-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、1-ブロモアントラキノン、チオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-ニトロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-クロロ-7-トリフルオロメチルチオキサントン、チオキサントン-10,10-ジオキシド、チオキサントン-10-オキサイド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド,2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド,2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド,2,3,5,6-テトラメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイド,ベンゾイルジ-(2,6-ジメチルフェニル)ホスホネート,2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキサイド,3,3’-カルボニルビス(7-ジエチルアミノ)クマリン,3-(4-メトキシベンゾイル)クマリン,2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-s-トリアジン,2,4,6-トリス(トリブロモメチル)-s-トリアジン又は2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジンなどの増感剤や4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、2-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ビス{(メタ)アクリロイルオキシエチル}-N-メチルアミン、N-メチルジエタノールアミン、4-ジメチルアミノベンゾフェノンなどの3級アミンやジメチルアミノベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒドなどのアルデヒド類や2-メルカプトベンゾオキサゾール、デカンチオール、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、チオ安息香酸などのチオール基を有する化合物やベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸カリウム、ベンゼンスルフィン酸カルシウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、トルエンスルフィン酸、トルエンスルフィン酸ナトリウム、トルエンスルフィン酸カリウム、トルエンスルフィン酸カルシウム、トルエンスルフィン酸リチウム、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6-i-プロピルベンゼンスルフィン酸、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カルシウムなどのスルフィン酸またはその塩などの還元剤が例示される。

【0035】
重合開始剤(C)の含有率は、単量体(B)100質量部に対して通常0.01~10質量部である。重合開始剤(C)の含有率が、単量体(B)100質量部に対して0.01質量部未満の場合には、重合反応を促進する効果が十分でなくなるおそれがある。好適には0.1質量部以上である。一方、重合開始剤(C)の含有率が、単量体(B)100質量部に対して10質量部を超える場合には、重合反応を促進する効果が頭打ちになるとともに、重合開始剤(C)に由来する溶出成分が増加するおそれもある。好適には5質量部以下である。

【0036】
本発明の組成物における、重合体(A)、単量体(B)及び重合開始剤(C)の合計量は通常、60質量%以上であり、90質量%以上であることが好適であり、95質量%以上であることがより好適である。(A)、(B)及び(C)の合計量が60質量%未満の場合には、得られる成形品の機械的特性が不十分になるおそれがある。

【0037】
本発明の組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、重合体(A)、単量体(B)及び重合開始剤(C)以外の成分を含有しても構わない。例えば、フィラー、着色料、抗菌剤、香料などを用途に応じて配合することができる。本発明の組成物中の前記フィラーの含有率は、通常、40質量%以下である。賦形する際の操作性をより向上させる点や成形品の軽量化の点からは、前記フィラーの含有率は、10質量%以下が好適であり、5質量%以下がより好適である。本発明の組成物を用いて得られる成形品は、フィラーを含有しない場合でも、優れた機械的特性を有する。一方、重合体(A)、単量体(B)、重合開始剤(C)およびフィラー以外の成分の含有率は、20質量%以下であることが好適であり、10質量%以下がより好適であり、5質量%以下がさらに好適である。

【0038】
本発明の組成物は、重合体(A)の粉剤と単量体(B)の液剤とを重合開始剤(C)の存在下で混合することにより得られる。上述したとおり、トリ(メタ)アクリレート(b2)を含有する単量体(B)の液剤を使用することによって、得られる成形品の機械的特性が向上する。このときのメカニズムについての詳細は明らかになっていないが、次のようなことが推測される。

【0039】
重合体(A)の粉剤と単量体(B)の液剤とを混合すると、単量体(B)が重合体(A)の分子鎖の間に入り込んで重合体(A)が膨潤する。その後、単量体(B)を重合すると、重合体(A)の分子鎖と、単量体(B)中の2種類の単量体から構成される重合体とが相互に絡み合った、いわゆる「セミ相互侵入網目構造」が形成されると推定される。ところで、単量体(B)に含有されるメチルメタクリレート(b1)は、重合体(A)を膨潤させることができて、重合体(A)の分子鎖の間に容易に入り込む。一方、トリ(メタ)アクリレート(b2)は、単独では重合体(A)を膨潤させることができず、重合体(A)の分子鎖の間に中に入り込みにくい。本発明では、トリ(メタ)アクリレート(b2)とともにメチルメタクリレート(b1)が重合体(A)に対して混合されることによって、トリ(メタ)アクリレート(b2)が重合体(A)の分子鎖の間に入り込むものと考えられる。このとき、重合体(A)の分子鎖の間に入り込むトリ(メタ)アクリレート(b2)の濃度は、重合体(A)の粒子の表面近傍において最も高く、中心に向かって連続的に低下しているものと考えられる。このような組成物を重合した場合、得られる成形品において、架橋密度に傾斜が生じているものと考えられる。このように、成形品において架橋密度の傾斜が生じていることが、強度及び弾性率と、靭性とが両立される一因であると考えられる。

【0040】
一方、単量体(B)に含有されるトリ(メタ)アクリレート(b2)は、重合反応性が高いメタクリロイル基又はアクリロイル基を3つ有して、それらが所定の炭素数を有する脂肪族トリオールによって、反応し易い距離で連結されている。このようなトリ(メタ)アクリレート(b2)を重合させた場合、(b2)中の3つの重合性基が高い割合で反応して架橋密度が向上するため、得られる成形品の機械的特性、特に強度が著しく向上するものと考えられる。

【0041】
本発明の組成物の好適な製造方法は、重合体(A)の粉剤と、単量体(B)の液剤とを、重合開始剤(C)の存在下で混合して増粘させる方法である。粉剤と液剤とを混合すると、液剤によって粉剤が膨潤される。このとき、混合物の性状は、ペースト状から餅状を経て、ゴム状へと、すなわち、粘性体から弾性体へと変化する。ここで、餅状とは、粘性と流動性とを併せ持った状態である。餅状の組成物は、操作性が良いため、賦形する作業等を簡便に行える。生産性がより向上する点から、重合体(A)の粉剤と、単量体(B)の液剤とを混合してから140分以内に混合物が餅状になることが好適であり、100分以内に餅状になることがより好適である。粉剤と液剤の混合させた後、混合物が増粘するまで、当該混合物を静置してもよいし、粉剤の分散状態等に応じて適宜震盪等を行ってもよい。

【0042】
重合体(A)の粉剤と単量体(B)の液剤とを混合すると、粉剤を構成する重合体(A)の粒子中に単量体(B)が徐々に含浸することにより当該粒子が膨潤する。組成物が餅状になったときには、単量体(B)が含浸した前記粒子は、成形時の応力によって容易に変形する程に軟化している。このとき、上述したとおり、トリ(メタ)アクリレート(b2)は重合体(A)中に入り込みにくいため、その濃度は、重合体(A)の粒子の表面において最も高く、中心に向かって連続的に低下しているものと考えられる。このようにして重合体(A)の粒子が単量体(B)により膨潤していると考えられる。

【0043】
一方、重合体(A)の粉剤と単量体(B)の液剤とを混合すると、重合体(A)の粉剤の隙間が単量体(B)の液剤で埋められる。組成物が餅状になったときには、前記単量体(B)中に重合体(A)の一部が溶解していると考えられる。

【0044】
重合体(A)の粉剤と単量体(B)の液剤とを混合して得られる餅状の組成物は、上述のように、単量体(B)が含浸して膨潤した重合体(A)の粒子と、当該粒子間の隙間を埋める形で存在する、重合体(A)が溶解した単量体(B)の溶液からなる。

【0045】
このような餅状の組成物を重合させた場合には、重合体(A)の粒子に由来する部分において、重合体(A)の粒子に含浸した単量体(B)中の(b1)及び(b2)が共重合することにより、上述したセミ相互侵入網目構造が形成されているものと推定される。ここで、架橋密度は、重合体(A)の粒子に由来する部分の表面近傍において最も高く、中心に向かって連続的に低下しているものと考えられる。このような架橋密度の傾斜が生じることにより、強度及び弾性率と、靭性とが両立されるものと考えられる。

【0046】
本発明の組成物においては、組成物全体が均一ではなく、重合体(A)の粒子に由来する不均一構造を有することが好ましい。本発明の組成物は、重合体(A)の粉剤と、単量体(B)の液剤とを、重合開始剤(C)の存在下で混合してなるものである。このとき、重合体(A)の粒子は完全に溶解することなく残存し、粒子中心部では単量体(B)の含有率が少なく、粒子間では単量体(B)の含有率が多いという不均質構造が形成される。このような不均質な構造を有する組成物を硬化させることで、得られる成形品の機械的特性がさらに向上するものと考えられる。

【0047】
本発明の組成物において、単量体(B)の液剤に対する重合体(A)の粉剤の混合比(g/ml)が1.5~2.3である必要がある。本発明において、単量体(B)の液剤に対する重合体(A)の粉剤の混合比(g/ml)とは、重合体(A)の粉剤の重量(g)と単量体(B)の液剤の体積(ml)の比(g/ml)である。ここで、単量体(B)の液剤の体積は、温度23℃、湿度50%の大気中(1気圧)で測定する。前記混合比(g/ml)が1.5未満の場合には、得られる成形品の機械的特性が低下するおそれや重合収縮率が高くなるおそれがある。また、前記混合比(g/ml)が1.5未満の場合には、重合体(A)の粉剤と単量体(B)の液剤を混合して増粘させる際に、餅状になるまでの時間が長くなり過ぎるおそれもある。前記混合比(g/ml)は、1.6以上が好適である。前記混合比(g/ml)が2.3を超える場合には、本発明の組成物を、重合体(A)の粉剤と単量体(B)の液剤とを用いて調製する場合に、単量体(B)の液剤が十分に行きわたらずに重合体(A)の粉剤が均質に膨潤しないおそれがある。前記混合比(g/ml)は、2.1以下が好適である。得られる成形品の重合収縮軽減の観点からは、重合体(A)の比率は、重合体(A)が均質に膨潤する範囲内において、高いほうが好ましい。

【0048】
重合開始剤(C)を混合する方法は特に制限されない。重合開始剤(C)を予め重合体(A)の粉剤又は単量体(B)の液剤の少なくとも一方に含有させておいてもよいし、組成物の調製時に混合してもよい。重合開始剤(C)を重合体(A)の粉剤又は単量体(B)の液剤の少なくとも一方に予め含有させておくことが、操作を簡便にできて好ましい。

【0049】
重合体(A)が予め重合開始剤(C)を含有していることが好ましい。すなわち、粉剤を構成する重合体(A)の粒子が重合開始剤(C)を含有していることが好ましい。このような場合には、懸濁重合などによって重合体(A)を製造するときに加えられた重合開始剤をそのまま使用することができる。また、重合開始剤(C)が複数種類の化合物を混合してラジカルを発生させるものである場合には、その一方を重合体(A)に、他方を単量体(B)に、予め含有させておくこともできる。

【0050】
重合体(A)の粉剤と単量体(B)の液剤とを混合することによって、重合体(A)の中に単量体(B)が浸透し、重合体(A)が膨潤して徐々に粘度が上昇して餅状に至る。このようにして増粘させた後に賦形して成形品を製造することが好ましい。賦形する際の組成物は、十分に粘度が上昇していながらも流動性を保った餅状であることが好ましい。賦形は、型に充填したり、押し付けることによって、あるいは、手で形を整えたりすることなどにより行われる。

【0051】
重合体(A)の粉剤と、単量体(B)の液剤とを、重合開始剤(C)の存在下で混合した後、組成物が餅状を維持する時間は、特に制限されないが、組成物を賦形したりする作業に必要な時間は維持されることが好ましい。液剤として、本発明の単量体(B)を用いた場合には、作業するのに十分な時間、組成物が餅状を維持する。

【0052】
本発明の組成物を、賦形した後、重合反応を行うことで、硬化した成形品が得られる。室温で重合反応が進行するような重合開始剤(C)を使用する場合には、混合しただけでも増粘と同時に重合反応が進行するが、熱や光を用いて重合反応を進行させる場合には、熱や光で処理するまでは実質的に重合反応は進行しない場合が多い。加熱することや、光照射することによって、賦形した後で重合反応を進行させることができるが、作業性を考慮すれば加熱する方法が好適である。例えば、温水に浸漬するだけでも簡単に重合反応を進行させることができる。重合する際に温度などの重合条件や重合時間などの調整により重合度を変えることによって、組成物の硬さを上昇させることもできるから、用途に応じて、所望の硬さを有する成形品を容易に得ることができる。

【0053】
重合体(A)の粉剤と、単量体(B)の液剤とを、重合開始剤(C)の存在下で混合して得られる、餅状になった組成物は、単量体(B)が含浸して膨潤した重合体(A)の粒子と、当該粒子間の隙間を埋める形で存在する、重合体(A)が溶解した単量体(B)の溶液からなる。このような餅状の組成物を重合した場合には、重合体(A)の粉末を構成する粒子は、重合した後も概ねその形状を維持する。このような重合体(A)の粒子に由来する粒子形状の部分の隙間は、単量体(B)が重合により硬化したものにより埋められる。このように、重合して得られる成形品が、重合体(A)の粒子に由来する粒子形状の部分とその隙間を埋める単量体(B)に由来する部分からなることが好適である。これにより、成形品の機械的特性がさらに向上する。成形品における、重合体(A)の粒子に由来する部分の粒子形状は、球に近い形状であってもよいし、歪んだ形状であっても構わない。成形時の圧力により、重合体(A)の粒子に由来する部分の形状が歪む場合がある。

【0054】
このとき、成形品における、重合体(A)の粒子に由来する部分において、架橋密度に傾斜があることが好適である。これにより成形品の強度、弾性率と、靭性とのバランスがさら向上する。また、成形品における、重合体(A)の粒子に由来する部分の比率ができるだけ大きいことが好ましい。そうすることにより、「セミ相互侵入網目構造」が形成されていると推定される重合体(A)の粒子に由来する部分同士が接近した構造をとることができる。これにより成形品の強度、弾性率及び靭性のバランスがさらに向上する。重合体(A)の粒子に由来する部分と単量体(B)の液剤に由来する部分からなる成形品の構造は、成形品を薄くスライスして得られる薄切片を光学顕微鏡により観察することなどにより確認することができる。

【0055】
本発明の組成物を硬化させて得られる成形品において、単量体(B)に含まれていた炭素-炭素二重結合の反応率が80%以上であることが好適である。ここで、単量体(B)に含まれていた炭素-炭素二重結合とは、原料として使用された単量体(B)において、メチルメタクリレート(b1)のメタクリロイル基やトリ(メタ)アクリレート(b2)の3つのメタクリロイル基又はアクリロイル基を構成していたものであり、前記反応率は架橋密度の指標となる。前記反応率が80%未満である場合、架橋密度が低く、成形品の機械的特性が不十分になるおそれがある。前記反応率は85%以上がより好適である。前記反応率は、重合前の組成物と、重合して得られた組成物の近赤外吸収スペクトルをそれぞれ測定することにより求められる。例えば、トリ(メタ)アクリレート(b2)が脂肪族トリオールのトリメタクリレートである場合、以下のとおり求められる。(b1)及び(b2)は、いずれも、メタクリロイル基に含まれる末端メチレン基(CH=)に由来する吸収ピークを6167cm-1付近に有し、当該吸収ピークの面積は末端メチレン基の数に比例する。したがって、重合前の組成物における末端メチレン基に由来する吸収ピークの面積と、重合して得られた成形品における末端メチレン基に由来する吸収ピークの面積から下記式により求められる。

反応率(%)=[(面積A-面積B)/面積A]×100

面積A:重合前の組成物における末端メチレン基に由来する吸収ピークの面積
面積B:重合後の成形品における末端メチレン基に由来する吸収ピークの面積


【0056】
前述のとおり、重合体(A)及び単量体(B)は安全性が高いと考えられる。また、上述した、重合体(A)の粉剤と単量体(B)の液剤を用いる本発明の組成物の製造方法によれば、容易に組成物を作製できるうえに、得られた組成物を用いて成形品を作製することも容易である。したがって、本発明の組成物は、医療用組成物として好適に用いられる。当該医療用組成物の好適な実施態様は骨セメントである。

【0057】
前記医療用組成物は、歯科用組成物として好適に用いられる。具体的には、歯科用接着剤として好適に用いることができる。歯科用接着剤は、エナメル質や象牙質などの歯質と、歯科用金属、歯科用レジン、歯科用陶材などとを接着させるものである。

【0058】
前記歯科用組成物を硬化させてなる義歯床又はマウスピースも好適な実施態様である。通常、義歯の作製は、患者の口腔内の印象を採取して石膏模型を作製した後、石膏模型上でワックスを用いて義歯床部を形成し、これに人工歯を配列して作製したロウ義歯を埋没材を用いてフラスコ内に埋没してロウ義歯の型を取った後、熱湯等でワックスを流して義歯床部分の空洞を埋没材中に形成させる。この空洞に餅状の組成物を填入して重合、硬化させた後、埋没材から取り出して、最終段階の形態修正や研磨が施されて完成する。また、マウスピースの作製方法は、人口歯を配列する点を除けば、義歯の作製方法とほぼ同じである。本発明の組成物を用いて作製した義歯床やマウスピースは、高い強度及び高い弾性率を有するうえに、優れた靭性をも有することから、肉厚が薄くても十分な強度を有し、しかも、咬合圧や衝撃等による破損を抑制することができる。

【0059】
重合体(A)の粉剤と単量体(B)の液剤とからなり、重合体(A)が、メチルメタクリレート単位を80質量%以上含有し、単量体(B)が、メチルメタクリレート(b1)及び炭素数3~10の脂肪族トリオールのトリ(メタ)アクリレート(b2)を含有し、単量体(B)における、(b1)及び(b2)の合計量が80質量%以上であり、かつ(b1)に対する(b2)の質量比(b2/b1)が3/97~60/40であり、前記粉剤又は前記液剤の少なくとも一方が重合開始剤(C)を含有するキットも本発明の好適な実施態様である。

【0060】
このようなキットは、該粉剤及び該液剤の2成分を混合するのみの容易な操作で組成物を調製することができる。キットの用途は特に限定されるものではないが、医療用キットが好適であり、中でも骨セメント用キットが好適な実施態様である。また、歯科用キットも好適であり、中でも、義歯床用キット、歯科用接着剤キット又はマウスピース用キットが好適な実施態様である。このようなキットを用いて、粉剤又は液剤に重合開始剤(C)を含有させる方法としては、組成物の製造方法のところで説明した方法を採用できる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例を用いて本発明を説明する。実施例における試験片の作製や測定は、23℃、湿度50%の実験室にて実施した。本実施例で用いた単量体は以下のとおりである。
【実施例】
【0062】
[単量体]
(b1)メチルメタクリレート(MMA)
25℃における比重:0.943g/ml
(b2)1,1,1-トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)
25℃における比重:1.06g/ml
【実施例】
【0063】
実施例1
懸濁重合によって製造された、ポリメチルメタクリレート(PMMAと略記することがある)である重合体(A)の粉剤(根上工業株式会社製「ハイパールD-100M」:重量平均分子量500,000、平均粒径約50~80μm、ベンゾイルパーオキサイド0.5~1.0質量%含有)4.0gと、メチルメタクリレート(以下、MMAと略記することがある)及び1,1,1-トリメチロールプロパントリメタクリレート(以下、TMPTMAと略記することがある)を混合した単量体(B)の液剤[MMA:57.16質量%、TMPTMA:42.84質量%]2.0mlとを混和し、混和物が餅状態になるまで静置した。単量体(B)の液剤に対する重合体(A)の粉剤の混合比(粉液比)は、2.0g/mlとした。餅状態となった混和物を、2mm×2mm×25mmの試験片が成形できるテフロン(登録商標)型に填入してクランプし、恒温チャンバー(エスペック社製「ST-101B1」)内にて65℃で60min、続いて100℃で90min加熱して重合を進行させた。自然放冷後、テフロン(登録商標)型から取り出した試験片を空気中に一日放置した後、三点曲げ試験に供した。
【実施例】
【0064】
三点曲げ試験には、万能試験機(インストロン5544)を用いた。支点間距離:20mm、クロスヘッドスピード:0.5mm/minに設定し、曲げ弾性係数、曲げ強さ、最大撓み量および破断エネルギーをそれぞれ測定した。各測定につき5点の試料を測定した。重合体(PMMA)の粉剤と単量体(MMA及びTMPTMA)の液剤を混合してから混和物が餅状態になるまでの時間を表1及び図1に示す。また、4種の曲げ特性測定の結果を表1及び図2~5に示す。
【実施例】
【0065】
三点曲げ試験用の試験片の作製で使用したものと同様の餅状態の混和物を2mm×25mmの貫通孔が形成された厚み2mmのステンレス板の型枠に充填した後、上下からスライドガラスを押し当ててクランプし、株式会社パーキンエルマージャパン製フーリエ変換近赤外分光分析器「Spectrum 2000」(InSb検出器、光路長:2mm)を用いて7500cm-1~4000cm-1の吸収スペクトルを測定した。また、前記混和物を三点曲げ試験用の試験片を作製した際の条件で重合した後、得られた試験片の吸収スペクトル測定を上記と同様にして行った。MMAの1つの末端メチレン基(CH=)と、TMPTMAの3つの末端メチレン基は6167cm-1付近に吸収を有する。当該吸収ピークの面積は末端メチレン基の数に比例する。そこで、重合前の混和物と重合後の試験片の吸収ピークの面積から単量体(MMA及びTMPTMA)に含まれていた炭素-炭素二重結合の反応率を下記式により算出した。このときの反応率を表1に示す。

反応率(%)=[(面積A-面積B)/面積A]×100

面積A:重合前の混和物における、6167cm-1の吸収ピーク面積
面積B:重合後の試験片における、6167cm-1の吸収ピーク面積

【実施例】
【0066】
実施例~11、比較例1、2、9~13
単量体の液剤中の、MMAとTMPTMAの質量比を表1に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様に試験片を作製して三点曲げ試験を行うとともに、一部の例[比較例1、2、12]について、吸収スペクトルを測定して、単量体に含まれていた炭素-炭素二重結合の反応率を算出した。粉剤と液剤を混合してから混和物が餅状態になるまでの時間及び4種の曲げ特性測定の結果を表1及び図1~5に示す。また、炭素-炭素二重結合の反応率を表1に示す。
【実施例】
【0067】
比較例3
市販のアクリル系義歯床用レジンである「アクロン」(株式会社ジーシー製)を用いて、その取扱説明書に指示された方法により2mm×2mm×25mmの大きさの試験片を作製して、万能試験機にて試験片の三点曲げ試験を行った。また、実施例1と同様の方法で重合前の混和物と重合後の試験片の吸収スペクトルを測定して、単量体に含まれていた炭素-炭素二重結合の反応率を算出した。4種の曲げ特性測定の結果を表1に示すとともに、比較データとして、各測定値を図2~5、~10にも示す。炭素-炭素二重結合の反応率を表1に示す。
【実施例】
【0068】
【表1】
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【実施例】
【0069】
実施例12~14、比較例4~6
単量体(B)の液剤の使用量を変更して、単量体(B)の液剤に対する重合体(A)の粉剤の混合比(粉液比)を表に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様に試験片を作製して三点曲げ試験を行った。粉剤と液剤を混合してから混和物が餅状態になるまでの時間及び4種の曲げ特性測定の結果を表2及び図6~10に示す。参考のため、実施例1の結果も表2及び図6~10に示す。
【実施例】
【0070】
【表2】
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【実施例】
【0071】
比較例7
PMMAの粉剤の代わりに、懸濁重合によって製造された、ポリエチルメタクリレート(PEMA)の粉剤(根上工業株式会社製「ハイパールD-100E」:重量平均分子量500,000、平均粒径約50~80μm、ベンゾイルパーオキサイド0.5~1.0質量%含有)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてPEMAの粉剤と単量体の液剤とを混和した。混和直後に餅状態となり、均一な混和物が得られなかったため、工程を中止した。
【実施例】
【0072】
比較例8
PMMAの粉剤の代わりに、懸濁重合によって製造された、メチルメタクリレートとエチルメタクリレートとの等モル共重合体[Poly(MMA-co-EMA(0.5))]の粉剤(根上工業株式会社製「ハイパールD-200」:重量平均分子量500,000、平均粒径約70~90μm、ベンゾイルパーオキサイド0.5~1.0重量%含有)を用いたこと以外は、実施例1と同様に試験片を作製して三点曲げ試験を行った。粉剤と液剤を混合してから混和物が餅状態になるまでの時間及び4種の曲げ特性測定の結果を表3に示す。
【実施例】
【0073】
【表3】
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【実施例】
【0074】
図1~5は、実施例1、7~11、比較例1~2、9~13において作製した試験片について、横軸に単量体(B)の液剤中の1,1,1-トリメチロールプロパントリメタクリレートの含有率(質量%)を、縦軸に混和物が餅状態になるまでの時間(図1)、曲げ強さ(図2)、曲げ弾性係数(図3)、最大撓み量(図4)及び破断エネルギー(図5)を、それぞれプロットしたグラフである。

【実施例】
【0075】
図6~10は、実施例1、12~14、比較例4~6において作製した試験片について、横軸に単量体(B)の液剤(ml)に対する重合体(A)の粉剤(g)の混合比(g/ml、以下、粉液比と略記する場合がある)を、縦軸に混和物が餅状態になるまでの時間(図6)、曲げ強さ(図7)、曲げ弾性係数(図8)、最大撓み量(図9)及び破断エネルギー(図10)を、それぞれプロットしたグラフである。
【実施例】
【0076】
参考例15
本発明の組成物を重合させた成形品の組織構造を観察した。粉剤としてPMMA粒子中に顔料(ダークピンク)を含む粉剤[株式会社ジーシー製「アクロン」の粉剤(該当規格:JIS T6501「義歯床用アクリル系レジン(第一種)」)]を用いたこと以外は、実施例1と同様にして試験片を作製した。試験片を2mm×2mm×10mmに切断し、ミクロトーム用シリコン包埋板に入れてエポキシ樹脂(エポフィックス冷間埋込樹脂、ストルアス社製)で包埋し、24時間かけて硬化させた。エポキシ樹脂に包埋された試験片はミクロトーム(ULTRACUT E、Leica社製)を用いて硝子ナイフ(45°)で切削し、厚さ約5μmの薄切片を得た。薄切片試料は光学顕微鏡(オリンパス株式会社製、「BX51」)を用いて透過光にて200倍(対物レンズ20倍、接眼レンズ10倍)の条件下で観察し、接眼レンズに取り付けたデジタルカメラ(Canon PowerShot S95)で薄切片を撮影した。薄切片の顕微鏡画像を図11に示す。
【実施例】
【0077】
図11において、複数の黒い円が見られる。当該円が黒いのは、PMMAに含有されている顔料によるものであり、これにより、当該円がPMMAの粒子に由来する部分であることが分かる。一方、当該円の隙間の部分は白く、光が透過している。したがって、当該部分は顔料を含まない液剤(MMAとTMPTMAの混合物)に由来する部分であることが分かる。
【実施例】
【0078】
図11において、黒いポリメチルメタクリレートの粒子に由来する部分同士がほぼ接する状態となり、液剤(MMAとTMPTMAの混合物)に由来する光が透過した部分の面積が非常に小さくなっていた。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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