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明細書 :易分解性リグニン生成剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-008900 (P2018-008900A)
公開日 平成30年1月18日(2018.1.18)
発明の名称または考案の名称 易分解性リグニン生成剤
国際特許分類 C07C 205/37        (2006.01)
C07C 205/56        (2006.01)
C07G   1/00        (2011.01)
FI C07C 205/37 CSP
C07C 205/56
C07G 1/00
請求項の数または発明の数 11
出願形態 OL
全頁数 24
出願番号 特願2016-139321 (P2016-139321)
出願日 平成28年7月14日(2016.7.14)
発明者または考案者 【氏名】萩原 伸也
【氏名】打田 直行
【氏名】鈴木 惇平
【氏名】伊丹 健一郎
出願人 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4H006
4H055
Fターム 4H006AA01
4H006AA03
4H055AA01
4H055AA02
4H055AA05
4H055AB99
4H055AC60
4H055BA30
4H055CA60
要約 【課題】リグニンの構造中に導入でき、かつリグニンを易分解性とすることが可能な化合物を含む易分解性リグニン生成剤を提供する。
【解決手段】一般式(1):
JP2018008900A_000028t.gif
[一般式(1)中、R~Rは同一又は異なって、水素原子、アルコキシ基、又はアルキル基を示し、Rは有機基を示す。nは0~3の整数を示す。]
で表される化合物を含む、易分解性リグニン生成剤。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式(1):
【化1】
JP2018008900A_000026t.gif
[一般式(1)中、R~Rは同一又は異なって、水素原子、アルコキシ基、又はアルキル基を示し、Rは有機基を示す。nは0~3の整数を示す。]
で表される化合物を含む、易分解性リグニン生成剤。
【請求項2】
前記Rが、ヒドロキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、置換若しくは非置換アルコキシカルボニル基、又は置換若しくは非置換アミノカルボニル基である、請求項1に記載の易分解性リグニン生成剤。
【請求項3】
前記Rが、水素原子である、請求項1又は2に記載の易分解性リグニン生成剤。
【請求項4】
前記Rが、水素原子又はアルコキシ基である、請求項1~3のいずれかに記載の易分解性リグニン生成剤。
【請求項5】
前記Rが、水素原子又はアルコキシ基である、請求項1~4のいずれかに記載の易分解性リグニン生成剤。
【請求項6】
前記Rがアルコキシ基であり、かつ前記Rが水素原子又はアルコキシ基である、請求項1~5のいずれかに記載の易分解性リグニン生成剤。
【請求項7】
一般式(2):
【化2】
JP2018008900A_000027t.gif
[一般式(2)中、R~Rは同一又は異なって、水素原子、アルコキシ基、又はアルキル基を示す。mは1~3の整数を示す。]
で表される、化合物。
【請求項8】
請求項1~6のいずれかに記載の易分解性リグニン生成剤又は請求項7に記載の化合物を植物に取り込ませる工程を含む、易分解性リグニンの製造方法。
【請求項9】
前記植物に取り込ませる工程が、請求項1~6のいずれかに記載の易分解性リグニン生成剤又は請求項7に記載の化合物を植物生育環境中に混合又は溶解させる工程である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~6のいずれかに記載の易分解性リグニン生成剤又は請求項7に記載の化合物を植物に取り込ませる工程、及び
紫外線を照射する工程
を含む、リグニンの分解方法。
【請求項11】
前記植物に取り込ませる工程が、請求項1~6のいずれかに記載の易分解性リグニン生成剤又は請求項7に記載の化合物を植物生育環境中に混合又は溶解させる工程である、請求項10に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、易分解性リグニン生成剤に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料は埋蔵量に限度があり、また、地球温暖化の原因の一つとされる大気中の二酸化炭素濃度を上昇させる等の理由から、化石燃料の代替燃料としてバイオマス燃料が注目されている。バイオマス燃料として、砂糖やデンプン等の糖類を原料としたバイオエタノール等の第1世代バイオマス燃料がさかんに開発されているが、バイオエタノールは主にさとうきびや穀物などから生産されることから、食糧との競合が問題視されている。
【0003】
食糧との競合を回避するため、食用とならない植物を利用した第2世代バイオマス燃料が提案されている。しかしながら、植物の細胞壁にはリグニンという難分解性ポリマーが存在することから、第2世代バイオマス燃料の実用化は進んでいない。
【0004】
植物の細胞壁の主成分は、セルロース(約40%)、ヘミセルロース(約30%)、及びリグニン(約25%)から構成されるリグノセルロースである。このうち、バイオマス燃料として使用可能なものはセルロース及びヘミセルロースである。セルロース及びヘミセルロースはリグニンに囲まれているため、セルロース及びヘミセルロースを用いるためには、リグニンを分離する必要がある。
【0005】
リグニンは、複雑な3次元網目構造を疎水性かつ難分解性のフェノール系ポリマーであり、主に、p-ヒドロキシシンナミルアルコール(Sユニット;シリンジルアルコール)、コフェリルアルコール(Gユニット;グアシルアルコール)及びシナピルアルコール(Hユニット)の3種類のリグニンモノマー(モノリグノール)から構成されている。
【0006】
上記の通り、セルロース及びヘミセルロースはリグニンに囲まれているため、セルロース及びヘミセルロースを用いるためには、リグニンを分離する前処理を行う必要がある。
【0007】
前処理としては、例えば、72%硫酸を用いる化学的手法(クレーソン法)(非特許文献1)、リグニン等を分解する微生物や酵素を用いた生物学的手法(非特許文献2)、高温高圧の蒸気を用いる物理化学的手法(水蒸気爆砕法)(非特許文献3)などの手法が知られている。しかしながら、クレーソン法では使用した硫酸の回収に大きなエネルギーが必要であり、生物学的手法では分解速度が非常に遅く、水蒸気爆砕法では高温高圧を生み出すのに多くのエネルギーが必要であるなどの課題を抱えており、低コストで効率良くリグニンを分解する方法が切望されている。
【0008】
一方、リグニンを分解する前処理を工夫するだけではなく、植物に存在するリグニン自体を改変し、易分解性とする技術も報告されている。例えば、リグニンのβ-O-4構造を酵素等で酸化した後、含水ギ酸で処理する方法(非特許文献4)、リグニンモノマーとしてフェルラ酸を用いてリグニンの構造中にフェルラ酸を導入し、酸性条件下で処理する方法(非特許文献5)などが報告されている。しかしながら、上記の通り、リグニンは3次元網目構造をとることから、リグニン構造の外側から逐次的にリグニンを分解するため、効率が悪いという問題が指摘されている。
【先行技術文献】
【0009】

【非特許文献1】Rersour Conserv Recy,2010,55,171
【非特許文献2】J.Appl.Polym.Sci.,2010,118,469
【非特許文献3】ウッドケミカルスの最新技術 普及版,CMC出版,2007
【非特許文献4】Nature,2014,515,249
【非特許文献5】Plant J,2008,53,368
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、リグニンの構造中に導入でき、かつリグニンを易分解性とすることが可能な化合物を含む易分解性リグニン生成剤を提供することを目的とする。また、リグニンを低コストで効率良く分解することができるリグニンの分解方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記した目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、驚くべきことに、p-ヒドロキシシンナミルアルコール、コフェリルアルコール及びシナピルアルコール等のリグニンモノマーにおけるベンゼン環のオルト位にニトロ基を導入した化合物が、植物に取り込まれることによりリグニンの構造中に導入され、さらに、外部刺激として紫外線を照射することによりリグニン構造中のβ-O-4構造を分解できることを見出した。さらに、合成した化合物の一部は新規化合物であることが分かった。本発明者らはかかる知見に基づきさらなる研究を重ねることにより本発明を完成させるに至った。
【0012】
即ち、本発明は以下の項に記載の発明を包含する。
項1.
一般式(1):
【0013】
【化1】
JP2018008900A_000002t.gif

【0014】
[一般式(1)中、R~Rは同一又は異なって、水素原子、アルコキシ基、又はアルキル基を示し、Rは有機基を示す。nは0~3の整数を示す。]
で表される化合物を含む、易分解性リグニン生成剤。
項2.
前記Rが、ヒドロキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、置換若しくは非置換アルコキシカルボニル基、又は置換若しくは非置換アミノカルボニル基である、上記項1に記載の易分解性リグニン生成剤。
項3.
前記Rが、水素原子である、上記項1又は2に記載の易分解性リグニン生成剤。
項4.
前記Rが、水素原子又はアルコキシ基である、上記項1~3のいずれかに記載の易分解性リグニン生成剤。
項5.
前記Rが、水素原子又はアルコキシ基である、上記項1~4のいずれかに記載の易分解性リグニン生成剤。
項6.
前記Rがアルコキシ基であり、かつ前記Rが水素原子又はアルコキシ基である、上記項1~5のいずれかに記載の易分解性リグニン生成剤。
項7.
一般式(2):
【0015】
【化2】
JP2018008900A_000003t.gif

【0016】
[一般式(2)中、R~Rは同一又は異なって、水素原子、アルコキシ基、又はアルキル基を示す。mは1~3の整数を示す。]
で表される、化合物。
項8.
前記Rが、水素原子である、上記項7に記載の化合物。
項9.
前記Rが、水素原子又はアルコキシ基である、上記項7又は8に記載の化合物。
項10.
前記Rが、水素原子又はアルコキシ基である、上記項7~9のいずれかに記載の化合物。
項11.
前記Rがアルコキシ基であり、かつ前記Rが水素原子又はアルコキシ基である、上記項7~10のいずれかに記載の化合物。
項12.
上記項1~6のいずれかに記載の易分解性リグニン生成剤又は上記項7~11に記載の化合物を植物に取り込ませる工程を含む、易分解性リグニンの製造方法。
項13.
前記植物に取り込ませる工程が、上記項1~6のいずれかに記載の易分解性リグニン生成剤又は上記項7~11に記載の化合物を植物生育環境中に混合又は溶解させる工程である、上記項12に記載の方法。
項14.
上記項1~6のいずれかに記載の易分解性リグニン生成剤又は上記項7~11に記載の化合物を植物に取り込ませる工程、及び
紫外線を照射する工程
を含む、リグニンの分解方法。
項15.
前記植物に取り込ませる工程が、上記項1~6のいずれかに記載の易分解性リグニン生成剤又は上記項7~11に記載の化合物を植物生育環境中に混合又は溶解させる工程である、上記項14に記載の方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の易分解性リグニン生成剤を植物に取り込ませることにより易分解性リグニンが生成されることから、低コストで効率良くリグニンを分解することができる。その結果、低コストで第2世代バイオマス燃料を生産することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1の結果を示す図である。
【図2】実施例2の結果を示す図である。
【図3】実施例3の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。

【0020】
1.易分解性リグニン生成剤
本発明は、易分解性リグニン生成剤を包含する。本発明の易分解性リグニン生成剤は、下記一般式(1)で表される化合物を含む。

【0021】
【化3】
JP2018008900A_000004t.gif

【0022】
[一般式(1)中、R~Rは同一又は異なって、水素原子、アルコキシ基、又はアルキル基を示し、Rは有機基を示す。nは0~3の整数を示す。]

【0023】
一般式(1)中、R~Rは、同一又は異なって、水素原子、アルコキシ基、又はアルキル基を示す。

【0024】
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~4のアルコキシ基が挙げられる。

【0025】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~4のアルキル基が挙げられる。

【0026】
一般式(1)中、Rは水素原子であることが好ましい。

【0027】
一般式(1)中、Rは水素原子又はアルコキシ基であることが好ましく、アルコキシ基であることがより好ましい。

【0028】
一般式(1)中、Rは水素原子又はアルコキシ基であることが好ましい。

【0029】
一般式(1)中、Rは、有機基を示す。有機基としては特に限定的ではなく、例えば、ヒドロキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、又は置換若しくは非置換アミノカルボニル基などが挙げられる。

【0030】
アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基などの炭素数1~3のアルコキシカルボニル基が挙げられる。

【0031】
アミノカルボニル基の置換基としては、特に限定的ではなく、例えば、ニトロベンゾフラザン、ジメチルアミノクマリンなどの蛍光作用を有する分子が挙げられる。また、アミノカルボニル基は、スペーサーを介して蛍光分子と結合していてもよい。スペーサーとしては、例えば、-(CHNH-などが挙げられる。

【0032】
一般式(1)中、nは0~3の整数、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0~1の整数を示す。なお、Rがヒドロキシ基である場合には、nは1~3の整数、好ましくは1~2の整数、より好ましくは1を示す。

【0033】
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記式(3)で表される化合物(4-(3-ヒドロキシプロパ-1-エン-1-イル)-2-メトキシ-3-ニトロフェノール)、下記式(4)で表される化合物(4-(3-ヒドロキシプロパ-1-エン-1-イル)-3-ニトロフェノール)、下記式(5)で表される化合物(4-(3-ヒドロキシプロパ-1-エン-1-イル)-2、6-ジメトキシ-3-ニトロフェノール)などが挙げられる。なお、下記式(3)~(5)中、Meはメチルを示す。

【0034】
【化4】
JP2018008900A_000005t.gif

【0035】
【化5】
JP2018008900A_000006t.gif

【0036】
【化6】
JP2018008900A_000007t.gif

【0037】
また、Rが蛍光分子で置換されたアミノカルボニル基である場合の一般式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記式(6)で表される化合物((E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-2-ニトロフェニル)-N-(2-((7-ニトロベンゾ[c][1,2,5]オキサジアゾール-4-イル)アミノ)エチル)アクリルアミド)、下記式(7)で表される化合物((E)-3-(4-ヒドロキシ-2-ニトロフェニル)-N-(2-((7-ニトロベンゾ[c][1,2,5]オキサジアゾール-4-イル)アミノ)エチル)アクリルアミド)、及び下記式(8)で表される化合物((E)-3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシ-2-ニトロフェニル)-N-(2-((7-ニトロベンゾ[c][1,2,5]オキサジアゾール-4-イル)アミノ)エチル)アクリルアミド)などが挙げられる。なお、下記式(6)~(8)中、Meはメチルを示す。

【0038】
【化7】
JP2018008900A_000008t.gif

【0039】
【化8】
JP2018008900A_000009t.gif

【0040】
【化9】
JP2018008900A_000010t.gif

【0041】
上記した一般式(1)で表される化合物は、例えば、下記一般式(9)で表される化合物をニトロ化し、次いで、マロン酸等のジカルボン酸とクネーフェナーゲル縮合を行うことにより、一般式(1)におけるRがカルボキシ基である化合物を合成することができる。また、得られた化合物を還元することによって一般式(1)におけるRがホルミル基又はヒドロキシ基である化合物を合成することができる。

【0042】
【化10】
JP2018008900A_000011t.gif

【0043】
[一般式(9)中、R~Rは前記と同一である。]

【0044】
一般式(9)で表される化合物の具体例としては、例えば、バニリンなどが挙げられる。

【0045】
なお、一般式(9)で表される化合物のニトロ化反応、ジカルボン酸とのクネーフェナーゲル縮合反応、及び還元反応の各種反応における溶媒、触媒、反応条件等は特に限定的ではなく、常法に応じて適宜設定することができる。

【0046】
例えば、バニリンをDMAP存在下で無水酢酸と反応させてアセチル保護した後、発煙硝酸によってニトロ化する。続いて、2M水酸化カリウム水溶液中で還流してアセチル基の脱保護を行い、3-メトキシ-2-ニトロ-4-ヒドロキシベンズアルデヒド(化合物1)及びその位置異性体の混合物を得る。当該混合物とマロン酸をピペリジン触媒、ピリジン溶媒中でクネーフェナーゲル縮合反応を行うことで(E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-2-ニトロフェニル)アクリル酸(化合物2)を得る。当該化合物2をメタノール溶媒中、濃硫酸触媒存在下で還流することでカルボン酸をエステルに変換し、DIBAL還元を行うことにより、4-(3-ヒドロキシプロパ-1-エン-1-イル)-2-メトキシ-3-ニトロフェノール(化合物3)を得ることができる。

【0047】
また、一般式(1)におけるRが蛍光分子で置換されたアミノカルボニル基である場合の化合物は、上記した方法によりRが蛍光分子で置換されたアミノカルボニル基でない一般式(1)で表される化合物を合成した後、当該化合物と蛍光分子とを縮合することにより合成することができる。一般式(1)で表される化合物と蛍光分子との縮合反応における溶媒、触媒、反応条件等は特に限定的ではなく、用いる蛍光分子の種類等に応じて適宜設定することができる。

【0048】
例えば、二炭酸ジ-tert-ブチル(BocO)に過剰量のエチレンジアミンを作用させ、エチレンジアミンの一方のアミンをBoc保護した化合物を得る。続いて、4-クロロ-7-ニトロベンゾオキサジアゾールとの芳香族求核置換反応の後、トリフルオロ酢酸によってBocを脱保護し、N-(7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール-4-イル)アミノエチルアミン(化合物5)を得る。続いて、(E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-2-ニトロフェニル)アクリル酸(化合物2)と化合物5とを、結合剤としてEDC・HCl及びDMAPを用いてアミド縮合を行うことにより、(E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-2-ニトロフェニル)-N-(2-((7-ニトロベンゾ[c][1,2,5]オキサジアゾール-4‐イル)アミノ)エチル)アクリルアミド(化合物6)を得ることができる。

【0049】
本発明の易分解性リグニン生成剤は、後述するように、植物に取り込ませることにより、当該剤に含まれる上記一般式(1)で表される化合物が植物に吸収され、植物中でリグニンの生合成において使用される。その結果、リグニンの構造中に上記一般式(1)で表される化合物が導入される。

【0050】
上記一般式(1)で表される化合物がリグニンの構造中に取り込まれると、下記で示されるように、リグニンのβ-O-4構造中に2-o-(ニトロフェニル)エチル構造が形成される。2-o-(ニトロフェニル)エチル構造は光分解性であることから、光による分解が可能な易分解性リグニンを生成することができる。なお、下記の構造式中、Meはメチルを示す。

【0051】
【化11】
JP2018008900A_000012t.gif

【0052】
本発明の易分解性リグニン生成剤に含まれる一般式(1)で表される化合物の含有量としては、植物が易分解性リグニンを形成することが可能な範囲であれば特に限定的ではなく、対象となる植物の成長段階などに応じて適宜決定することができる。

【0053】
本発明の易分解性リグニン生成剤は、上記した一般式(1)で表される化合物の他、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、肥料などが挙げられる。

【0054】
2.化合物(リグニンモノマー)
本発明は、さらに、新規の化合物(リグニンモノマー)を包含する。本発明の化合物は、下記一般式(2)で表される化合物である。

【0055】
【化12】
JP2018008900A_000013t.gif

【0056】
[式中、R~Rは同一又は異なって、水素原子、アルコキシ基、又はアルキル基を示す。mは1~3の整数を示す。]

【0057】
一般式(2)中、R~Rは、同一又は異なって、水素原子、アルコキシ基、又はアルキル基を示す。

【0058】
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~4のアルコキシ基が挙げられる。

【0059】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~4のアルキル基が挙げられる。

【0060】
一般式(2)中、Rは水素原子であることが好ましい。

【0061】
一般式(2)中、Rは水素原子又はアルコキシ基であることが好ましく、アルコキシ基であることがより好ましい。

【0062】
一般式(2)中、Rは水素原子又はアルコキシ基であることが好ましい。

【0063】
一般式(2)中、mは1~3の整数、好ましくは1~2の整数、より好ましくは1を示す。

【0064】
一般式(2)で表される化合物の具体例としては、例えば、上記式(3)で表される化合物(4-(3-ヒドロキシプロパ-1-エン-1-イル)-2-メトキシ-3-ニトロフェノール)、上記式(4)で表される化合物(4-(3-ヒドロキシプロパ-1-エン-1-イル)-3-ニトロフェノール)、上記式(5)で表される化合物(4-(3-ヒドロキシプロパ-1-エン-1-イル)-2、6-ジメトキシ-3-ニトロフェノール)などが挙げられる。

【0065】
上記した本発明の化合物は、例えば、上記一般式(9)で表される化合物をニトロ化し、次いで、マロン酸等のジカルボン酸とクネーフェナーゲル縮合を行うことにより得られた化合物を還元することによって合成することができる。

【0066】
なお、上記一般式(9)で表される化合物のニトロ化反応、ジカルボン酸とのクネーフェナーゲル縮合反応、及び還元反応の各種反応における溶媒、触媒、反応条件等は特に限定的ではなく、常法に応じて適宜設定することができる。

【0067】
例えば、バニリンをDMAP存在下で無水酢酸と反応させてアセチル保護した後、発煙硝酸によってニトロ化する。続いて、2M水酸化カリウム水溶液中で還流してアセチル基の脱保護を行い、3-メトキシ-2-ニトロ-4-ヒドロキシベンズアルデヒド(化合物1)及びその位置異性体の混合物を得る。当該混合物とマロン酸をピペリジン触媒、ピリジン溶媒中でクネーフェナーゲル縮合反応を行うことで(E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-2-ニトロフェニル)アクリル酸(化合物2)を得る。当該化合物2をメタノール溶媒中、濃硫酸触媒存在下で還流することでカルボン酸をエステルに変換し、DIBAL還元を行うことにより、4-(3-ヒドロキシプロパ-1-エン-1-イル)-2-メトキシ-3-ニトロフェノール(化合物3)を得ることができる。

【0068】
3.易分解性リグニンの製造方法
本発明は、さらに、易分解性リグニンの製造方法を包含する。本発明の易分解性リグニンの製造方法は、上記した易分解性リグニン生成剤又は上記した一般式(2)で表される化合物を植物に取り込ませる工程を含む。

【0069】
本発明の易分解性リグニンの製造方法では、上述の通り、上記した易分解性リグニン生成剤又は上記した一般式(2)で表される化合物を植物に取り込ませることにより、易分解性リグニン生成剤に含まれる一般式(1)で表される化合物、又は一般式(2)で表される化合物が植物に吸収され、植物中でリグニンの生合成において使用される。その結果、リグニンの構造中に上記一般式(1)で表される化合物又は一般式(2)で表される化合物が導入される。また、一般式(1)で表される化合物又は一般式(2)で表される化合物がリグニンの構造中に取り込まれると、上記の構造式で示されるように、リグニンのβ-O-4構造中に2-o-(ニトロフェニル)エチル構造が形成される。2-o-(ニトロフェニル)エチル構造は光分解性であることから、光による分解が可能な易分解性リグニンを生成することができる。

【0070】
本発明の易分解性リグニンの製造方法における投与対象となる植物としては、リグニンを生合成し得る植物であれば特に限定されない。例えば、第2世代バイオマス燃料として利用が期待されている植物などが挙げられる。

【0071】
上記した易分解性リグニン生成剤又は上記した一般式(2)で表される化合物を植物に取り込ませる方法としては、植物が上記した易分解性リグニン生成剤又は上記した一般式(2)で表される化合物を取り込むことができる方法であれば特に限定的ではなく、例えば、植物生育環境(例えば、土壌、水、固体培地、液体培地など)中に混合又は溶解させる方法、空中散布などが挙げられる。

【0072】
上記した易分解性リグニン生成剤又は上記した一般式(2)で表される化合物を植物に取り込ませる時期としては特に限定的ではなく、植物の種類、成長段階などに応じて適宜決定することができる。なお、植物の成長段階の初期に取り込ませると植物体中の易分解性リグニンの含有量が多くなることから、成長段階の早い時期に取り込ませることが好ましい。

【0073】
上記した易分解性リグニン生成剤又は上記した一般式(2)で表される化合物を植物に投与する間隔としては特に限定的ではなく、植物の種類、成長段階などに応じて適宜決定することができる。

【0074】
4.リグニンの分解方法
本発明は、さらに、リグニンの分解方法を包含する。本発明のリグニンの分解方法は、上記した易分解性リグニン生成剤又は上記した一般式(2)で表される化合物を植物に取り込ませる工程、及び紫外線を照射する工程を含む。

【0075】
上記した易分解性リグニン生成剤又は上記した一般式(2)で表される化合物を植物に取り込ませる工程は、上記した本発明の易分解性リグニンの製造方法における方法と同一である。

【0076】
本発明のリグニンの分解方法における紫外線を照射する工程において、照射する紫外線の波長としては特に限定的ではなく、例えば、300~365nm程度とすることができる。また、紫外線の光源についても特に限定的ではなく、公知の光源を用いることができる。紫外線の照射量、照射時間等の各種条件についても特に限定的ではなく適宜設定することができる。

【0077】
紫外線を照射する対象は特に限定的ではなく、例えば、植物の生体、植物の加工等の際に発生する残材、植物から分離されたリグノセルロースなどが挙げられる。また、植物の生体、植物の加工等の際に発生する残材を必要に応じて粉砕した粉砕物(チップ)なども挙げられる。粉砕の方法は特に限定的ではなく、公知の方法を採用することができる。また、粉砕物のサイズは特に限定的ではなく、例えば、ミリメートルオーダーの大きさとすることができ、1~50mm程度とすることが好ましい。なお、残材や植物から分離されたリグノセルロースを対象とする場合には、一般式(1)で表される化合物又は易分解性リグニン生成剤を植物に取り込ませる工程と、紫外線を照射する工程との間に、必要に応じて、植物を加工する工程、植物からリグノセルロースを分離する工程等の各種工程を含むことができる。
【実施例】
【0078】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【実施例】
【0079】
製造例1:リグニンモノマーの合成
本製造例1では、リグニンモノマーとして、以下の手順に従って、4-(3-ヒドロキシプロパ-1-エン-1-イル)-2-メトキシ-3-ニトロフェノール(化合物3)及び(E)-3-(4-ヒドロキシ-3—メトキシ-2-ニトロフェニル)アクリル酸メチル(化合物4)の合成を行った。
【実施例】
【0080】
(1)3-メトキシ-2-ニトロ-4-ヒドロキシベンズアルデヒド(化合物1)の合成
3-メトキシ-4-ヒドロキシベンズアルデヒド(10g、66mmol)の無水THF溶液(200mL)に、無水酢酸(7.5mL、79mmol)、トリエチルアミン(14mL、100mmol)、及びN,N-ジメチルアミノピリジン(25mg、0.21mmol)を加え、室温で4時間撹拌した後、蒸発乾固した。残渣をジクロロメタン(100mL)に溶解し、1M HCl溶液(100mL)を加えた後、混合物をジクロロメタンで抽出した。一体化された有機層を塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥した後、蒸発乾固することにより白色の酢酸塩を得た。
【実施例】
【0081】
発煙硝酸(50mL)を-20℃で冷却した後、上記で得られた酢酸塩を少量ずつ加えた。次いで、混合物を-10~0℃で3時間撹拌した後、氷冷水(~200mL)に注ぎ、10分間撹拌した。混合物を酢酸エチルで抽出し、一体化された有機層を塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥した後、蒸発乾固して粗生成物を得た。
【実施例】
【0082】
上記で得られた粗生成物を2M KOH溶液(200mL)に加え、15分間還流加熱を行った。室温まで冷却した後、0℃で濃塩酸をゆっくりと添加して反応を停止した。固形物を濾過した後、冷水で洗浄し、真空乾燥することにより、茶色固体の化合物1とその位置異性体の混合物を得た(7.6g、62%)。
【実施例】
【0083】
H-NMR(CDCl,400MHz)δ9.81(s,1H),7.65(d,J=8.6Hz,1H),7.21(d,J=8,6Hz,1H),3.98(s,3H)
【実施例】
【0084】
なお、上記した合成スキームを下記に示す。
【実施例】
【0085】
【化13】
JP2018008900A_000014t.gif
【実施例】
【0086】
(2)(E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-2-ニトロフェニル)アクリル酸(化合物2)の合成
上記(1)で得られた化合物1とその位置異性体との混合物(2.00g、9.0mmol)の無水ピリジン溶液(2.0mL)に、マロン酸(1.41g、14mmol)及びピペリジン(0.15mL、1.5mmol)を加えた。次いで、混合物を90℃で19時間加熱した後、室温まで冷却し、蒸発乾固した。2M HCl溶液を加え、混合物を酢酸エチルで抽出した。一体化された有機層を無水NaSOで乾燥して、蒸発乾固した。残渣を酢酸エチルに溶解し、飽和NaHCO溶液で抽出した。0℃で水層に2M HCl溶液を固体が形成されるまで加えた。その後、濾過することにより、黄色固体の化合物2の沈殿物を得た(1.33g、62%)。
【実施例】
【0087】
H-NMR(CDOD,400MHz)δ7.47(d,J=9.2Hz,1H),7.34(d,J=15.9Hz,1H), 7.04(d,J=8.6Hz,1H),6.40(d,J=15.9Hz,1H),3.90(s,3H)
【実施例】
【0088】
なお、上記した合成スキームを下記に示す。
【実施例】
【0089】
【化14】
JP2018008900A_000015t.gif
【実施例】
【0090】
(3)4-(3-ヒドロキシプロパ-1-エン-1-イル)-2-メトキシ-3-ニトロフェノール(化合物3)の合成
上記(2)で得られた化合物2(1.0g、4.2mmol)のメタノール溶液(15mL)に、濃硫酸を3滴添加した。混合物を17.5時間還流加熱(92℃)し、室温まで冷却した後、蒸発乾固した。残渣を水に溶解し、酢酸エチルで抽出した後、飽和NaHCO溶液及び塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥して、真空乾燥することにより、粗生成物(1.03g)を得た。
【実施例】
【0091】
上記で得られた粗生成物(953mg、2.8mmol)の無水トルエン溶液(12mL)に、水素化ジイソブチルアルミニウム(1M トルエン中;8.0mL、8.0mmol)を0℃で30分間にわたって添加し、さらに30分間撹拌した。次いで、0℃でエタノール(2.5mL)、水(~5mL)、2M HCl溶液及び酢酸エチルを添加することにより反応を停止した。混合物を酢酸エチルで抽出し、一体化された有機層を塩水で洗浄し、NaSOで乾燥して、蒸発乾固した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:2)により精製して、黄色固体の化合物3(685mg、80%)を得た。
【実施例】
【0092】
H-NMR(CDCl,400MHz)δ7.23(d,J=8.6Hz,1H),7.03(d,J=8.6Hz,1H),6.43(d,J=15.9Hz,1H),6.28(d,J=15.6,5.6Hz,1H),6.12(br,1H),4.30(t,2H),3.92(s,3H)
【実施例】
【0093】
なお、上記した合成スキームを下記に示す。
【実施例】
【0094】
【化15】
JP2018008900A_000016t.gif
【実施例】
【0095】
(4)(E)-3-(4-ヒドロキシ-3—メトキシ-2-ニトロフェニル)アクリル酸メチル(化合物4)の合成
上記(1)で得られた化合物1とその位置異性体との混合物(456mg、3.0mmol)の無水ジクロロメタン溶液(9.0mL)に、(トリフェニルホスホラニリデン)酢酸メチル(1.2g、3.6mmol)を加えて2時間撹拌した後、混合物をジクロロメタンで希釈して蒸発乾固した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)により精製して、黄色固体の化合物4(494mg、79%)を得た。
【実施例】
【0096】
H-NMR(CDCl,400MHz)δ7.47(d,J=15.9Hz,1H),7.36(d,J=8.6Hz,1H),7.11(d,J=8.6Hz,1H),6.35(d,J=15.3Hz,1H),6.17(br,1H),3.94(s,3H),3.80(s,3H)
【実施例】
【0097】
なお、上記した合成スキームを下記に示す。
【実施例】
【0098】
【化16】
JP2018008900A_000017t.gif
【実施例】
【0099】
製造例2:蛍光修飾リグニンモノマーの合成
本製造例2では、蛍光修飾リグニンモノマーとして、以下の手順に従って、(E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-2-ニトロフェニル)-N-(2-((7-ニトロベンゾ[c][1,2,5]オキサジアゾール-4‐イル)アミノ)エチル)アクリルアミド(化合物6)の合成を行った。
【実施例】
【0100】
(1)N-(7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール-4-イル)アミノエチルアミン(化合物5)の合成
エチレンジアミン(1.0mL、15mmol)のジクロロメタン溶液(10mL)に、二炭酸ジ-tert-ブチル(BocO)(580μL、2.5mmol)のジクロロメタン溶液(10mL)を激しく撹拌しながら3時間にわたってゆっくりと添加して、さらに15.5時間撹拌を行った。蒸発乾固して20%NaCO水溶液(3mL)を加えた後、ジクロロメタンで抽出し、無水NaSOで乾燥し、蒸発乾固し、真空乾燥を行い、無色油状の生成物を得た。
【実施例】
【0101】
上記で得られた生成物(201mg、1.3mmol)及びN,N-ジイソプピルエチルアミン(DIPEA)(440μL、2.8mmol)のジクロロメタン溶液(10mL)に、4-クロロ-7-ニトロベンゾフラザン(250mg、1.3mmol)を加えた。7時間後、混合物をジクロロメタン(10mL)で希釈し、有機層を10mL飽和NaHCO溶液で3回洗浄し、10mL蒸留水で2回洗浄した後、NaSOで乾燥して蒸発乾固した。得られた残渣をジクロロメタン(5mL)に溶解し、5mLのトリフルオロ酢酸を滴下し、混合物を室温で60分間撹拌した。60mLのジエチルエーテルを加え、吸引濾過により沈殿物を回収し、ジエチルエーテルで洗浄して真空乾燥することにより、茶色固体の化合物5を得た(278mg、80%)。
【実施例】
【0102】
H-NMR(DMSO-d,400MHz)δ8.58(d,J=9.2Hz,1H),6.47(d,J=9.2Hz,1H),3.85-3.73(m,2H),3.18-3.11(m,2H)
【実施例】
【0103】
なお、上記した合成スキームを下記に示す。
【実施例】
【0104】
【化17】
JP2018008900A_000018t.gif
【実施例】
【0105】
(2)(E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-2-ニトロフェニル)-N-(2-((7-ニトロベンゾ[c][1,2,5]オキサジアゾール-4‐イル)アミノ)エチル)アクリルアミド(化合物6)の合成
製造例1(2)で得られた化合物2(59mg、0.25mmol)、上記(1)で得られた化合物5(67mg、0.30mmol)、及び1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)(59.6mg、0.31mmol)の無水DMF溶液(1.5mL)に、N,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(15mg、0.13mmol)を加えた。室温で14.5時間撹拌し、0℃で0.1M HCl溶液を加え、室温で10分間撹拌した後、酢酸エチルで抽出した。一体化された有機層を飽和NaHCO溶液で洗浄し、NaSOで乾燥し、蒸発乾固した。得られた粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=10:1)で精製し、橙色固体の化合物6を得た(11.5mg、10%)。
【実施例】
【0106】
H-NMR(CDOD,400MHz)δ8.53(d,J=8.6Hz,1H),7.35(d,J=9.2Hz,1H),7.26(d,J=15.9Hz,1H),7.00(d,J=8.6Hz,1H),6.48-6.38(m,2H),3.89(s,3H),3.81-3.58(m,4H)
【実施例】
【0107】
なお、上記した合成スキームを下記に示す。
【実施例】
【0108】
【化18】
JP2018008900A_000019t.gif
【実施例】
【0109】
製造例3:β-O-4構造を有するリグニンモデル化合物の合成
本製造例3では、β-O-4構造を有するリグニンモデル化合物として、以下の手順に従って、1-(3,4-ジメトキシ-2-ニトロフェニル)-2-フェノキシプロパン-1,3-ジオール(化合物11)の合成を行った。
【実施例】
【0110】
(1)3,4-ジメトキシ-2-ニトロベンズアルデヒド(化合物7)の合成
上記製造例1(1)で得られた化合物1とその位置異性体との混合物(3.94g、20mmol)、炭酸カリウム(3.32g、24mmol)、及びヨウ化メチル(3.75mL、60mmol)の無水DMF溶液(20mL)を50℃で一晩加熱した。混合物を室温まで冷却した後、ジエチルエーテルで抽出した。一体化された有機層を塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥した後、蒸発乾固した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:2)で精製し、黄色固体の化合物7を得た(3.12g、74%)。
【実施例】
【0111】
H-NMR(CDCl,400MHz)δ9.78(s,1H),7.65(d,J=8.6Hz,1H),7.11(d,J=8.6Hz),4.01(s,3H),3.94(s,3H)
【実施例】
【0112】
なお、上記した合成スキームを下記に示す。
【実施例】
【0113】
【化19】
JP2018008900A_000020t.gif
【実施例】
【0114】
(2)(E)-(3,4-ジメトキシ-2-ニトロフェニル)アクリル酸メチル(化合物8)の合成
上記(1)で得られた化合物7(568mg、2.7mmol)及び(トリフェニルホスホラニリデン)酢酸メチル(1.08g、3.2mmol)の無水ジクロロメタン溶液(8.5mL)を室温で14.5時間撹拌した。溶媒を蒸発させた後、得られた粗生成物をカラムクトマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製し、黄色固体の化合物8を得た(547mg、76%)。
【実施例】
【0115】
H-NMR(CDCl,400MHz)δ7.45(d,J=15.9Hz,1H),7.38(d,J=9.2Hz,1H),7.03(d,J=9.2Hz,1H),6.34(d,J=15.9Hz),3.95(s,3H),3.94(s,3H),3.79(s,3H)
【実施例】
【0116】
なお、上記した合成スキームを下記に示す。
【実施例】
【0117】
【化20】
JP2018008900A_000021t.gif
【実施例】
【0118】
(3)(E)-3-(3,4-ジメトキシ-2-ニトロフェニル)プロパ-2-エン-1-オール(化合物9)の合成
上記(2)で得られた化合物8(232mg、0.87mmol)の無水トルエン溶液(3.0mL)に、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)(1M トルエン中;3.0mL、3.0mmol)を0℃で3.5時間にわたって滴下した。エタノール(~1mL)、水、及び1M HClを加え、反応を停止した。混合物をエーテルで抽出した後、一体化された有機層を塩水で洗浄し、無水MgSOで乾燥し、蒸発乾固した。得られた粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:2)で精製し、黄色油状の化合物9を得た(87mg、42%)。
【実施例】
【0119】
H-NMR(CDCl,400MHz)δ7.26(d,J=8.6Hz,1H),6.98(d,J=9.2Hz,1H),6.42(d,J=15.9Hz,1H),6.29(dt,J=15.2,5.6Hz,1H),4.29(t,2H),3.92(s,3H)
【実施例】
【0120】
なお、上記した合成スキームを下記に示す。
【実施例】
【0121】
【化21】
JP2018008900A_000022t.gif
【実施例】
【0122】
(4)(3-(3,4-ジメトキシ-2-ニトロフェニル)オキシラン-2-イル)メタノール(化合物10)の合成
上記(3)で得られた化合物9(88mg、0.37mmol)及び炭酸ナトリウム(58mg、0.55mmol)の無水ジクロロメタン溶液(2.0mL)に、0℃でm-クロロペルオキシ安息香酸(mCPBA)(108mg、0.44mmol)の無水ジクロロメタン溶液(2.0mL)を滴下した。次いで、混合物を室温まで加温し、6時間撹拌した。蒸留水を加え、混合物をジクロロメタンで抽出した。一体化された有機層を塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、蒸発乾固した。得られた粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:2)で精製し、淡黄色固体の化合物9を得た(68mg、72%)。
【実施例】
【0123】
H-NMR(CDCl,400MHz)δ7.07(d,J=8.6Hz,1H),7.02(d,J=9.2Hz,1H),3.99(dd,J=12.8,2.4Hz,1H),3.95(s,3H),3.91(s,3H),3.86(d,J=2.4Hz,1H),3.77(dd,J=12.8,3.1Hz,1H),3.10(m,1H)
【実施例】
【0124】
なお、上記した合成スキームを下記に示す。
【実施例】
【0125】
【化22】
JP2018008900A_000023t.gif
【実施例】
【0126】
(5)1-(3,4-ジメトキシ-2-ニトロフェニル)-2-フェノキシプロパン-1,3-ジオール(化合物11)の合成
上記(4)で得られた化合物10(25mg、0.10mmol)の無水DMF溶液(0.25mL)に、0℃でフェノール(14mg、0.15mmol)及び水素化ナトリウム(60%鉱油分散物;6.4mg、0.16mmol)の無水DMF溶液(0.25mL)を滴下した。次いで、混合物を室温まで加温し、4.5時間撹拌した。その後、5時間80℃に加熱して、室温にまで冷却し、蒸留水を加え反応を停止した。混合物をジクロロメタンで抽出し、一体化された有機層を塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、蒸発乾固した。得られた粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:2→1:1)で精製し、黄色油状の化合物11を得た(8.3mg、24%)。
【実施例】
【0127】
H-NMR(CDOD,400MHz)δ7.28(d,J=8.6Hz,1H),7.17(m,3H),6.88(m,3H),5.21(d,J=6.7Hz,1H),3.89(m,4H),3.87(s,3H),3.78(dd,J=11.6,3.1Hz,1H),3.70(dd,J=10.8,5.2Hz,1H)
【実施例】
【0128】
なお、上記した合成スキームを下記に示す。
【実施例】
【0129】
【化23】
JP2018008900A_000024t.gif
【実施例】
【0130】
実施例1:リグニンモノマーの植物への取り込みの評価
本実施例1では、リグニンモノマーを植物に取り込ませることにより、リグニンモノマーがリグニンの構造中に取り込まれるか否かについて検討を行った。
【実施例】
【0131】
植物としてシロイヌナズナのcol-0系統を用いた。なお、col-0はシロイヌナズナの野生型種でモデル植物として広く利用されている。滅菌処理を行ったcol-0の種子を1/2 MS 0.5% Suc.培地で3日間生育した。次いで、培地における化合物の濃度が100μMとなるように、上記製造例2で合成した化合物6のDMSO溶液(実施例1-1)を添加し、さらに育成した。3日後、蛍光顕微鏡で観察を行った。また、対照として、DMSO溶液(比較例1-1)、及び既に報告されている蛍光修飾リグニンモノマー(2-((3-(4-ヒドロキシフェニル)アリル)オキシ)-N-(2-((7-ニトロベンゾ[c][1,2,5]オキサジアゾール-4-イル)アミノ)エチル)アセトアミド)のDMSO溶液(比較例1-2)についても同様の実験を行った。結果を図1に示す。
【実施例】
【0132】
図1から明らかなように、比較例1-1では紫外線照射時に蛍光が観察されなかったのに対して、実施例1-1及び比較例1-2では紫外線照射時に細胞壁から蛍光が観察された。実施例1-1と比較例1-2とでは蛍光強度に顕著な違いが観察されなかったことから、化合物6はリグニンに取り込まれることが分かった。
【実施例】
【0133】
実施例2:易分解性リグニンの光分解性の検討
本実施例2では、リグニンモノマーの二量体をモデル化合物として用いて、リグニンモノマーが取り込まれたリグニンが光(紫外線)の照射によって分解するか否かを検討した。なお、β-O-4構造を有するリグニンモデル化合物として上記製造例3で合成した化合物11を用いた。
【実施例】
【0134】
重メタノール中で化合物11に対して365nmの紫外線を照射し、H-NMRを測定した。結果を図2に示す。なお、図2では、紫外線照射前(0h)、1.5時間紫外線照射後(1.5h)、及び12時間紫外線照射後(12h)のデータに加え、フェノールに12時間紫外線を照射した際のデータを併せて示している。また、化合物11に紫外線を照射することにより想定される光分解の反応機構を下記に示す。
【実施例】
【0135】
【化24】
JP2018008900A_000025t.gif
【実施例】
【0136】
図2から明らかなように、6.8ppm付近の化合物11の芳香族性のプロトンの消失に伴い、6.75ppm付近に新たなピークが生成されることが確認された。紫外線照射後に形成されたピークの一部はフェノールにおけるピークと一致していることから、紫外線照射によってフェノールが脱離していると考えられる。さらに、化合物11のベンジル位のプロトン由来の5.2ppmのピークは紫外線の照射時間に応じて減少しており、化合物11の光分解反応が進行しているものと考えられる。また、フェノール以外の芳香族領域のプロトンが減少していることから、化合物11の光分解反応によって生成されたニトロ基を含む化合物はさらに光分解を起こしていることが分かった。
【実施例】
【0137】
実施例3:易分解性リグニンの分解速度の検討
本実施例3では、リグニンモノマーの二量体をモデル化合物として用いて、リグニンモノマーが取り込まれたリグニンが光(紫外線)の照射によって分解される速度を検討した。なお、β-O-4構造を有するリグニンモデル化合物として上記製造例3で合成した化合物11を用いた。
【実施例】
【0138】
7.3mgの化合物11及び内部標準として1.6mgのテトラクロロエタンを重メタノールに溶解した。この溶液から0.5mlをNMRチューブに移し302nmの紫外線を照射後、化合物11のベンジル位のプロトン由来の5.2ppmのピークの積分値を定量した。時間ごとの化合物11の残存量を図3に示す。
【実施例】
【0139】
図3から明らかなように、化合物11は光照射により消失し、その半減期は約17分であった。また、現れたフェノール由来の6.75ppmのピークの積分値から、生成したフェノールの収率は78%であった。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2