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明細書 :浴槽式心電モニタリングシステム、これを用いる入浴中心電モニタ方法、最適入浴条件設定方法及び、入浴中心電モニタ方法を実行する制御プログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6785500号 (P6785500)
公開番号 特開2018-082893 (P2018-082893A)
登録日 令和2年10月29日(2020.10.29)
発行日 令和2年11月18日(2020.11.18)
公開日 平成30年5月31日(2018.5.31)
発明の名称または考案の名称 浴槽式心電モニタリングシステム、これを用いる入浴中心電モニタ方法、最適入浴条件設定方法及び、入浴中心電モニタ方法を実行する制御プログラム
国際特許分類 A61B   5/0408      (2006.01)
A61B   5/0452      (2006.01)
A61B   5/0472      (2006.01)
A61B   5/04        (2006.01)
FI A61B 5/04 300N
A61B 5/04 312A
A61B 5/04 312U
A61B 5/04 312Q
A61B 5/04 ZDM
請求項の数または発明の数 9
全頁数 24
出願番号 特願2016-227628 (P2016-227628)
出願日 平成28年11月24日(2016.11.24)
審査請求日 令和元年8月30日(2019.8.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】506301140
【氏名又は名称】公立大学法人会津大学
発明者または考案者 【氏名】陳 文西
【氏名】朱 欣
【氏名】田村 俊世
個別代理人の代理人 【識別番号】100094525、【弁理士】、【氏名又は名称】土井 健二
【識別番号】100094514、【弁理士】、【氏名又は名称】林 恒徳
審査官 【審査官】門田 宏
参考文献・文献 特開2015-084813(JP,A)
特開2002-126031(JP,A)
特開2004-267409(JP,A)
特開2004-267495(JP,A)
国際公開第2004/075748(WO,A1)
特開2009-240662(JP,A)
特開平10-174678(JP,A)
調査した分野 A61B 5/04-5/053
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
浴槽式心電モニタリングシステムであって、
処理装置と、
前記処理装置に接続される浴槽と、データベースと、出力装置を有し、
前記浴槽の内壁に、次の位置関係を有する15個の電極であって入浴者の上半身側に13個の電極と足部側に2個の電極を有し、
No. 電極名 位置
1 VLA 左手
2 VRA 右手
3 VLF 左足
4 VRF 右足
5 V 第5肋間水平線と左前腋窩線との交点
6 V 第5肋間水平線と左中腋窩線との交点
7 Vと左後腋窩線との交点
8 Vと左中央肩甲骨線との交点
9 Vの後
10 V10 中央後
11 V5R 第5肋間水平線と右前腋窩線との交点
12 V6R 第5肋間水平線と右中腋窩線との交点
13 V7R6Rと右後腋窩線との交点
14 V8R6Rと右中腋窩線との交点
15 V9R3Rの後
前記処理装置は、
前記データベースに格納される複数人の平均的投影行列と、前記浴槽の内壁に有する15個の電極から入浴時実測可能な17誘導の信号(双極肢誘導[I,II,III], 単極誘導[aVR,aVL,aVF,V,V,V7,V,V,V10,V5R,V6R,V7R,V8R,V9R])とを用いて、実測できない前記入浴者の胸部6誘導信号(単極誘導信号V,V,V,Vと付加誘導信号V3R,V4R)を最小二乗法で求める、
ことを特徴とする浴槽式心電モニタリングシステム。
【請求項2】
請求項1において、
前記平均的投影行列から推定したV,V,V,V5R,V6Rと実測したV,V,V,V5R,V6Rとの差分を修正項として、個人別にチューニングした投影行列と、前記17誘導の信号からV,V,V5R,V6Rを除いた入浴時実測可能な13誘導の信号とを用いて、実測できない前記入浴者の胸部6誘導信号を最小二乗法で求める、
ことを特徴とする浴槽式心電モニタリングシステム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の浴槽式心電モニタリングシステムを用いる入浴中心電モニタ方法であって、
前記処理装置に、
前記浴槽の内壁に有する電極から心電信号を計測する工程と、
前記計測された心電信号に対する前処理を行う工程と、
前記計測された心電信号に対する前処理結果に基づき、心電信号を解析する工程を実行させ、
前記前処理として、
前記心電信号に対する基線動揺とハムノイズを除去する前処理工程と、
当該前処理工程後にQRSを強調して、QRS特徴点を検知する工程を実行させ、更に、
前記心電信号を解析する工程として、
前記QRS特徴点を検知する工程により検知されるQRS特徴点データを心拍毎のデータに分割する工程と、
前記分割する工程で検知されるRRI時系列データに基づき、心拍数異常を検知する工程を実行させる
ことを特徴とする入浴中心電モニタ方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の浴槽式心電モニタリングシステムを用いる入浴中心電モニタ方法であって、
前記処理装置に、
前記浴槽の内壁に有する電極から心電信号を計測する工程と、
前記計測された心電信号に対する前処理を行う工程と、
前記計測された心電信号に対する前処理結果に基づき、心電信号を解析する工程を実行させ、
前記前処理として、
前記心電信号に対する基線動揺とハムノイズを除去する前処理工程と、
当該前処理工程後にQRSを強調して、QRS特徴点を検知する工程を実行させ、更に、
前記心電信号を解析する工程として、
前記QRS特徴点を検知する工程により検知されるQRS特徴点データを心拍毎のデータに分割する工程と、
前記分割する工程で検知されるSTレベルの変動量を監視し、前記STレベルの変動量が所定値を越える時の状態を判定する工程を実行させる
ことを特徴とする入浴中心電モニタ方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載の浴槽式心電モニタリングシステムを用いる最適入浴条件設定方法であって、
前記浴槽の内壁に有する電極から心電信号を計測する工程と、
前記計測された心電信号に対する前処理を行う工程と、
前記計測された心電信号に対する前処理結果に基づき、心拍数変動を解析する工程と、
前記心拍数変動の解析に基づき心拍変動の周波数パラメータを求める工程と、
前記求めた心拍変動の周波数パラメータに基づき快適度を解析する工程と
を有することを特徴とする最適入浴条件設定方法。
【請求項6】
請求項において、
前記心拍変動の周波数パラメータに基づき快適度を解析する工程は、快適度として、浴槽水温を基準に判定する
ことを特徴とする最適入浴条件設定方法。
【請求項7】
請求項において、
前記心拍変動の周波数パラメータに基づき快適度を解析する工程は、快適度として、入浴時間を基準に判定する
ことを特徴とする最適入浴条件設定方法。
【請求項8】
請求項1または2に記載の浴槽式心電モニタリングシステムを用いる入浴中心電モニタ方法の実行を制御する制御プログラムであって、
前記処理装置に、
前記浴槽の内壁に有する電極から心電信号を計測する工程と、
前記計測された心電信号に対する前処理を行う工程と、
前記計測された心電信号に対する前処理結果に基づき、心電信号を解析する工程を実行させ
前記前処理として、
前記心電信号に対する基線動揺とハムノイズを除去する前処理工程と、
当該前処理工程後にQRSを強調して、QRS特徴点を検知する工程を実行させ、更に、
前記心電信号を解析する工程として、
前記QRS特徴点を検知する工程により検知されるQRS特徴点データを心拍毎のデータに分割する工程と、
前記分割する工程で検知されるRRI時系列データに基づき、心拍数異常を検知する工程とを実行させることを特徴とする制御プログラム。
【請求項9】
請求項1または2に記載の浴槽式心電モニタリングシステムを用いる入浴中心電モニタ方法の実行を制御する制御プログラムであって、
前記処理装置に、
前記浴槽の内壁に有する電極から心電信号を計測する工程と、
前記計測された心電信号に対する前処理を行う工程と、
前記計測された心電信号に対する前処理結果に基づき、心電信号を解析する工程を実行させ
前記前処理として、
前記心電信号に対する基線動揺とハムノイズを除去する前処理工程と、
当該前処理工程後にQRSを強調して、QRS特徴点を検知する工程を実行させ、更に、
前記心電信号を解析する工程として、
前記QRS特徴点を検知する工程により検知されるQRS特徴点データを心拍毎のデータに分割する工程と、
前記分割する工程で検知されるSTレベルの変動量を監視し、前記STレベルの変動量が所定値を越える時の状態を判定する工程と
を実行させることを特徴とする制御プログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽式心電モニタリングシステム、これを用いる入浴中疾患発作の検知方法最適入浴条件設定方法、健康状態解析方法及び、これらを実施するための制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
心電波形を読み取り各種の心臓疾患を検知するための心電図を誘導するために、心電計が用いられている。心電計は、心筋活動電位による細胞外電位を計測するために用いられる。
【0003】
一般に、かかる心電図を誘導するために、10個の電極を使用して標準12誘導波形からなる心電図を検出測定し、必要により記録を行う。
【0004】
すなわち、胸部誘導の測定のために6か所、四肢誘導のために4か所にそれぞれ電極を装着する。心電計によって、これら10個の電極から検出される心電位に基づき、標準12誘導の四肢6誘導信号(I,II,III,aVR,aVL,aVF)及び標準12誘導の胸部6誘導信号(V,V,V,V,V,V)を演算して出力している。
【0005】
かかる標準12誘導心電図を得るための誘導波形と測定部位の心電位との関係は次のようである。
I 誘導: vL-vR
II 誘導: vF-vR
III誘導: vF-vL
aVR誘導: vR-(vL+vF)/2
aVL誘導: vL-(vR+vF)/2
aVF誘導: vF-(vL+vR)/2
誘導: v1-(vR+vL+vF)/3
誘導: v2-(vR+vL+vF)/3
誘導: v3-(vR+vL+vF)/3
誘導: v4-(vR+vL+vF)/3
誘導: v5-(vR+vL+vF)/3
誘導: v6-(vR+vL+vF)/3
ただし、vX(X=L,R,F,1~6)は、それぞれの電極装着位置で検出された電位である。
【0006】
このような多数の電極を使用しての測定は、設備が完備された病院内で患者を安静にしておく状態では可能である。
【0007】
しかし、在宅療養や救急医療を行う場合は、多数の電極を使用し、且つ各電極を生体の体表面上の適正な位置でそれぞれ装着することは困難な場合が多い。
【0008】
一般的には心電図の信号を伝送し得るのは、1チャネル(1誘導)程度である。従って、2~4個の電極を使用して標準12誘導波形内のいくつかの波形からなる心電図を検出測定することによって、心臓疾患に対する診断が行われている。
【0009】
一方、入浴中の心肺停止により亡くなる人は、年間1万7千人と推定されている。かかる点に鑑みて、電極の体表面への装着の煩わしさを回避するとともに、入浴中に心電図を得る方法及び装置として、これまで種々の開発が行われてきた(特許文献1-6, 8及び9)。
【0010】
特許文献1は、浴槽の内壁面に3つの電極をマグネットで貼着、入浴中の心拍数を計測することを開示している。
【0011】
特許文献2は、浴槽の内壁に複数の電極対を張り付け、最も大きい振幅の波形を処理に使い、入浴中の姿勢位置による心電信号振幅への影響を抑えることを示している。
【0012】
特許文献3は、関電極を浴槽水に浸らず、浴槽壁上に両サイド設置し、ステンレス製浴槽全体は無関電極とすることを開示している。さらに、関電極を二つ手で握って、複数人が共浴しても一人だけの心電測定を可能とすることを開示している。
【0013】
特許文献4は、水密閉ケース内に心電増幅回路を収容し、外に3つの電極を張り付ける。ケースを湯面に浮かせ、入浴者が近づくと、自動的に心電図が計測されることを開示する。
【0014】
特許文献5は、3つの電極を浴槽壁に張り付け、入浴中の心電図を計測し、HRVのHFCとLFCのパワーを計算する。計算結果を所定の閾値と比較し、ジェットバス装置、音響装置、調光装置、発香装置、調温装置などの人体刺激発生器の強度と稼働時間を人体の生理的、心理的状態に応じて制御することを開示する。
【0015】
特許文献6は、入浴者の体格や姿勢に合わせ、浴槽の内壁に着脱可能な吸盤に略円錐状の導電帯(アルミニウム)を勘合して、吸盤を浴槽内に任意の位置に取り付けることを開示している。
【0016】
特許文献8は、浴槽水の揺らぎの影響を受けずに安定な心電図を計測できる金属ワイヤ型電極(環状曲げ型、撚り線型)を示し、4つの電極を用いて、6つの肢誘導心電計を導出する(I,II,III,aVR,aVL,aVF)ことを開示する。
【0017】
特許文献9は、3つの検知電極と一つの共通電極を用いて、I,II,III誘導の信号を計測する。1-100Hzのバンドパスフィルタを用いて心電信号を抽出し、0.1-1Hzのバンドパスフィルタを用いて呼吸信号を抽出する。
【0018】
特許文献9は、浴槽の長手方向に2つの電極を張り付け、両者の心電信号振幅により入浴体位を判定する。背中側と足側の体表面温度差を用いて入浴者の「のぼせ」状態を推定する。「のぼせ」状態に合わせて、入浴環境を調整する。排水装置から湯水を排出させ、体表温度を低下させ、「のぼせ」状態からの回復を図ることを開示する。
【先行技術文献】
【0019】

【特許文献1】特開平5-95921号公報
【特許文献2】特開平5-95923号公報
【特許文献3】特開平5-103766号公報
【特許文献4】特開平5-111470号公報
【特許文献5】特許第2594217号公報
【特許文献6】特開平10-155757号公報
【特許文献7】特許第4587008号公報
【特許文献8】特開2008-93100号公報
【特許文献9】特許第5048568号公報
【特許文献10】特開2008-100080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上記の特許文献に示される従来の入浴中に心電図を得る方法及び、装置においては、次のような特徴を有するものである。
【0021】
基本的に3つの電極を用いるものである。それより多い複数の電極を使用する場合であっても、良好な信号を出力する電極を探り、この電極からの出力を使用するというものである。複数誘導を利用するという思想は示されていない。
【0022】
また、上記入浴中に心電図を得る技術を開示する特許文献では、心電図の計測のみであって、データ解析とそれに基づく利用についてのシナリオは示されていない。
【0023】
さらに、心電図の異常診断に関する解析と利用についてのシナリオも示されていない。
【0024】
特許文献10に開示の発明は、特許文献7に開示の標準12誘導心電図の構築方法及び装置に関する発明の改良である。すなわち、特許文献7に開示の発明によって、高精度の標準12誘導心電図を得ることが出来るが、例えば心筋梗塞のうち、心筋に血液を送る冠状動脈の狭窄が心筋の後壁で生じた時には、電極の装着部位が後壁から遠いために、心電図波形の感度が低く、冠状動脈の狭窄による心電波形への影響が反映しにくい。
【0025】
このため、胸部誘導の延長線上にある電極装着部位で測定されるV,V,V誘導や、胸部誘導の電極部位と対象的な位置にある電極部位によりV3R,V4R,V5R,V6R誘導から付加誘導心電図を得ることが行われている。
【0026】
ここで、V,V,V誘導の付加誘導心電図を得るためには、付加誘導測定用の電極装着を患者の背中等の位置に行うことが必要である。かかる点から、特許文献10は、12誘導において用いる電極に対して更に電極を装着することなく、簡易に付加誘導を得ることを開示している。
【0027】
しかし、特許文献7及び10では、入力中における心電図測定について、何ら開示はされていない。
【0028】
ここで、浴槽に電極を配置する場合、前壁の単極胸部6誘導誘導(V~V,V3R,V4R)が実測不能である。したがって、上記の従来技術に対し、本発明の目的は、前記単極胸部6誘導誘導(V~V,V3R,V4R)を実測可能な17誘導から推定する方法を提案することにある。
【0029】
さらに、入浴中にリアルタイムに計測した心電信号から心拍数、呼吸数を求める方法、又、心拍数変動の解析から身体状態を推定し、圧、音、光、温度、香の入力と関連するが外部環境要素を制御する技術を提示する。さらに、長期にわたって日頃入浴時のデータ蓄積とその活用を可能にする浴槽式心電モニタリングシステム、これを用いる入浴中疾患発作の検知方法、最適入浴条件設定方法及び、これを実施するためのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上記目的を達成する本発明に従う第1の側面は、浴槽式心電モニタリングシステムであって、処理装置と、前記処理装置に接続される浴槽と、データベースと、出力装置を有し、前記浴槽の内壁に、次の位置関係を有する15個の電極であって入浴者の上半身側に13個の電極と足部側に2個の電極を有し、
No. 電極名 位置
1 VLA 左手
2 VRA 右手
3 VLF 左足
4 VRF 右足
5 V第5肋間水平線と左前腋窩線との交点
6 V第5肋間水平線と左中腋窩線との交点
7 Vと左後腋窩線との交点
8 Vと左中央肩甲骨線との交点
9 Vの後
10 V10 中央後
11 V5R 第5肋間水平線と右前腋窩線との交点
12 V6R 第5肋間水平線と右中腋窩線との交点
13 V7R 6Rと右後腋窩線との交点
14 V8R 6Rと右中腋窩線との交点
15 V9R 3Rの後
前記処理装置は、前記データベースに格納される複数人の平均的投影行列と、前記浴槽の内壁に有する15個の電極から入浴時実測可能な17誘導の信号(双極肢誘導[I,II,III], 単極肢誘導[aVR,aVL,aVF,V,V,V7,V,V,V10,V5R,V6R,V7R,V8R,V9R])とを用いて、最小二乗法で電極を有しない前記入浴者の胸側の6誘導信号(単極肢誘導信号V,V,V,Vと付加誘導V3R,V4R)を求めることを特徴とする。
【0031】
上記目的を達成する本発明に従う第1の側面における、第1の形態は、前記平均的投影行列から推定したV,V,V,V5R,V6Rと実測したV,V,V,V5R,V6Rとの差分を修正項として、個人別にチューニングした投影行列と、前記17誘導の信号からV,V,V5R,V6Rを除いた入浴時実測可能な13誘導の信号とを用いて、最小二乗法で電極を有しない前記入浴者の胸側の前記6誘導信号を求めることを特徴とする。
【0032】
上記目的を達成する本発明に従う第2の側面は、前記浴槽式心電モニタリングシステムを用いる入浴中疾患発作検知方法であって、前記浴槽の内壁に有する電極から心電信号を計測する工程と、前記計測された心電信号に対する前処理を行う工程と、前記計測された心電信号に対する前処理結果に基づき、心電信号を解析する工程と、前記心電信号の解析に基づき、不整脈または心筋梗塞の異常イベントを検知する工程を有することを特徴とする。
【0033】
上記目的を達成する本発明に従う第2の側面の第1の形態は、前記前処理として、前記心電信号を計測する工程により計測された心電信号から心電解析結果を得る工程と、前記心電信号における基線動揺とハムを除去する前処理工程と、前記前処理後にQRSを強調して、QRS特徴点を検知する工程と、を有することを特徴とする。
【0034】
上記目的を達成する本発明に従う第2の側面の第2の形態は、前記QRS特徴点を検知する工程により検知されるQRS特徴点データを心拍数毎のデータに分割する工程と、前記分割する工程で検知されるRRI時系列データに基づき、心拍数異常を検知する工程と、前記工程により心拍数異常を検知するとき、不整脈に起因する病状を判定する工程を有することを特徴とする。
【0035】
上記目的を達成する本発明に従う第2の側面の第3の形態は、前記QRS特徴点を検知する工程により検知されるQRS特徴点データを心拍数毎のデータに分割する工程と、前記分割する工程で検知されるSTレベルの変動量に対応して、心筋梗塞の状態を判定する工程とを有することを特徴とする。
【0036】
上記目的を達成する本発明に従う第3の側面は、前記浴槽式心電モニタリングシステムを用いる最適入浴条件設定方法であって、前記浴槽の内壁に有する電極から心電信号を計測する工程と、前記計測された心電信号に対する前処理を行う工程と、前記計測された心電信号に対する前処理結果に基づき、心拍数変動を解析する工程と、前記心拍数変動の解析に基づき心拍変動の周波数パラメータを求める工程と、前記求めた心拍変動の周波数パラメータに基づき快適度を解析する工程とを有することを特徴とする。
【0037】
上記目的を達成する本発明に従う第3の側面の第1の形態は、前記心拍変動の周波数パラメータに基づき快適度を解析する工程は、快適度として、浴槽水温を基準に判定することを特徴とする。
【0038】
上記目的を達成する本発明に従う第3の側面の第2の形態は、前記心拍変動の周波数パラメータに基づき快適度を解析する工程は、快適度として、入浴時間を基準に判定することを特徴とする。
【0039】
上記目的を達成する本発明に従う第4の側面は、前記浴槽式心電モニタリングシステムを用いる健康状態解析方法であって、前記浴槽の内壁に有する電極から心電信号を計測する工程と、前記計測された心電信号に対する前処理を行う工程と、前記計測された心電信号に対する前処理結果に基づき、心拍数変動を解析する工程と、前記心拍数変動の解析データを所定期間ごとに解析を行う工程と、前記所定期間ごとの解析に基づき、所定の健康状態のパラメータの検出を行う工程を有することを特徴とする。
【0040】
上記目的を達成する本発明に従う第5の側面は、浴槽式心電モニタリングシステムを用いる入浴中疾患発作検知方法の実行を制御する制御プログラムであって、前記処理装置に、前記浴槽の内壁に有する電極から心電信号を計測する工程と、前記計測された心電信号に対する前処理を行う工程と、前記計測された心電信号に対する前処理結果に基づき、心電信号を解析する工程と、前記心電信号の解析に基づき、不整脈または心筋梗塞の異常イベントを検知する工程とを実行させることを特徴とする。
【0041】
上記目的を達成する本発明に従う第5の側面における第1の形態は、前記処理装置に、前記浴槽の内壁に有する電極から心電信号を計測する工程と、前記計測された心電信号に対する前処理を行う工程と、前記計測された心電信号に対する前処理結果に基づき、心拍数変動を解析する工程と、前記心拍数変動の解析データを所定期間ごとに解析を行う工程と 前記所定期間ごとの解析に基づき、所定の健康状態のパラメータの検出を行う工程とを実行させることを特徴とする制御プログラム。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に従う浴槽式心電モニタリングシステムの一構成例である。
【図2】本発明に従う心電モニタリングに用いる浴槽1に設置される電極位置を説明する図である。
【図3】理解容易のため、浴槽の電極配置を拡大して示す図である
【図4】本発明に従うデータ解析フローを示す図である。
【図5】一般的心電信号の波形を示す図である。
【図6】心電信号前処理のフロー図である。
【図7】心電信号の特徴解析を行うときの処理フローを示す図である。
【図8】異常イベントの検知(不整脈)を検知する処理フローを示す図である。
【図9】異常イベントの検知(心筋梗塞)を検知する処理フローを示す図である。
【図10】心拍数変動解析の処理フローを示す図である。
【図11】最適入浴条件設定(浴槽水温)を行うときの処理フローを示す図である。
【図12】最適入浴条件設定(入浴時間)を行うときの処理フローを示す図である。
【図13】健康状態変動解析を行うときの処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下に、本発明の実施例を添付の図面に従い説明する。これらの実施例は本発明の理解を容易とするためのものであり、本発明の適用は、これら実施例に限定されるものではない。また、本発明の保護の範囲は、特許請求の範囲と同一又は類似の範囲にも及ぶ。

【0044】
図1は、本発明に従う浴槽式心電モニタリングシステムの一構成例である。パーソナルコンピュータ等の処理装置2を中心に、浴槽1、データベース3及び出力装置4が接続される。

【0045】
処理装置2は、格納されるプログラムの実行により入浴中の浴槽1の壁に張られた電極の電位を検出して、本発明に従う心電モニタリングを行う。

【0046】
後に説明する前壁の単極胸部6誘導(V~V,V3R,V4R)を実測可能な17誘導から推定する際に使用する投影行列は、電極の配置、電極と入浴者との相対位置、入浴者のサイズ等と関係する。実際入浴時に、個々人の投影行列を求めることは困難である。したがって、投影行列は、複数の人の23誘導の実測信号を事前に求め、データベース3に保存しておき、これを利用する。

【0047】
図2は、本発明に従う心電モニタリングに用いる浴槽1に設置される電極位置を説明する図である。図2の上方向に浴槽1の平面図における電極配置を、下方向に入浴者の側面の概略と電極の高さ位置を示している。入浴時に頭側に対応する領域に、13個の電極を、足部側に2個の計15個の電極が浴槽1の壁に設けられる。点Cの位置が心臓の位置である。

【0048】
図3は、理解容易のため、浴槽1の電極配置を拡大して示す図である。図3に拡大して示すように浴槽1にあっては、前壁のV~Vの位置に電極を設けることが出来ない。

【0049】
図2の例は、Simonsonの発表した胸部誘導軸を用いて示しているが、同様な原理は、Chou配置や他の配置にも適用可能である。かかる15個の電極の設置位置は、次のとおりの対応位置である。

【0050】
No. 電極名 位置
1 VLA 左手
2 VRA 右手
3 VLF 左足
4 VRF 右足
5 V第5肋間水平線と左前腋窩線との交点
6 V第5肋間水平線と左中腋窩線との交点
7 Vと左後腋窩線との交点
8 Vと左中央肩甲骨線との交点
9 Vの後
10 V10 中央後
11 V5R 第5肋間水平線と右前腋窩線との交点
12 V6R 第5肋間水平線と右中腋窩線との交点
13 V7R 6Rと右後腋窩線との交点
14 V8R 6Rと右中腋窩線との交点
15 V9R 3Rの後

【0051】
図2において、単極胸部誘導の誘導軸は、心臓の電気的中心Cと胸部周囲の15個の電極装着部位を結んだ線である。誘導軸の極性は、電極装着部位が(+)、心臓の電気的中心が(-)となる。Vが前方、Vが左方から起電力ベクトルを眺める誘導である。

【0052】
かかる図2に示す電極配置から入浴中に23誘導の心電図をモニタリングする。

【0053】
23誘導心電図は、標準12誘導(8実測信号+4導出信号)と付加11誘導(9実測信号+2導出信号)で取得可能である。

【0054】
標準12誘導の8実測信号は、次により求められる。

【0055】
8実測信号=3つの双極誘導(I,II,III)+3つの単極肢誘導(aVR,aVL,aVF)+2つの単極胸部誘導(V,V)である。

【0056】
付加11誘導の9実測信号は、次により求められる。

【0057】
9実測信号=付加単極胸部9誘導、即ちV,V,V,V10,V5R,V6R,V7R,V8R,V9R

【0058】
6つの導出信号(6導出信号)は、次のようである。

【0059】
6導出信号=標準12誘導中の4つの単極胸部誘導(V,V,V,V)+2つの付加誘導(V3R,V4R

【0060】
すなわち、本発明は、浴槽1に配置された電極から電極が配置されない胸部側の電位(6導出信号)を演算により導出することに特徴を有する。

【0061】
ここで、双極誘導とは、2個の電極間の電位差を計測し、心電図を得る方法である。例えば、標準肢誘導(I,II,III誘導)である。一方、単極誘導は、計測電極と「不関電極」と呼ばれる電位基点間の電位差を計測し,心電図を得る方法である。

【0062】
さらに、上記の導出方法は、リードベクトル原理による最小二乗法を用いる。

【0063】
平均投影行列と実測信号17誘導、即ち(I,II,III,aVR,aVL,aVF,V,V,V,V,V,V10,V5R,V6R,V7R,V8R,V9R)を用いる。

【0064】
後に、この導出演算手順を説明するが、理解容易のために、概略を先に説明する。

【0065】
17誘導(入浴時実測可能な誘導の数)の信号を用いて、最小二乗法で前壁の単極胸部6誘導を推定する、データベース3から最適な平均的投影行列を求める。被測定者である入浴者は皆、この平均的な投影行列と入浴時に実測される17誘導の信号を用いて、前壁の単極胸部6誘導を推定する。

【0066】
また、別の方法として、13誘導(V,V,V5R,V6Rを除いた入浴時実測可能な誘導の数)の信号を用いて、最小二乗法で前壁の単極胸部6誘導を推定する、データベース3から最適な平均的投影行列を求める。個人別投影行列の修正項は、上記平均的投影行列より推定したV,V,V5R,V6R誘導と実測したV,V,V5R,V6R誘導の差から求める。上記最適な平均的投影行列と個人別投影行列の修正項を用いて個人別にチューニングした投影行列を構成する。入浴被測定者は、個人別にチューニングした投影行列と入浴時に実測した13誘導(V,V,V5R,V6Rを除いた入浴時実測可能な誘導の数)の信号を用いて、前壁の単極胸部6誘導を推定する。

【0067】
次に、上記導出の演算過程を説明する。

【0068】
体表の心電位vは、リードベクトル(lead vector)l上心臓ベクトル(heart vector)hの投影である。

【0069】
【数1】
JP0006785500B2_000002t.gif

【0070】
ただし、lは、電極位置に依存する。

【0071】
3つの独立誘導Lで3つの心電位Vを計測すれば、hを計算可能である。

【0072】
【数2】
JP0006785500B2_000003t.gif

【0073】
式(2)を式(1)に代入して、
【数3】
JP0006785500B2_000004t.gif

【0074】
【数4】
JP0006785500B2_000005t.gif

【0075】
すなわち、誘導理論によると、任意リードベクトルl上の心電位vは式(3)で計算可能であり、計測した3つの心電位Vの線形組み合わせで任意誘導(位置)の心電位を導出可能である。

【0076】
目的として実測信号17誘導を用いて、胸部6誘導を導出する。

【0077】
【数5】
JP0006785500B2_000006t.gif

【0078】
投影行列A={aij}を求めるために、データベース3(図1)にあるデータを用いて最小二乗法で投影行列Aを求める。

【0079】
このように求めた投影行列Aは平均的な容積導体(average volume conductor model)を反映する。

【0080】
式(5)を行列式に書き直す。

【0081】
【数6】
JP0006785500B2_000007t.gif

【0082】
vjは時間に伴い変化するので、最適なAを求める際に、少なくとも一心拍分以上のデータを含む。

【0083】
したがって、
【数7】
JP0006785500B2_000008t.gif

【0084】
式(7)を行列式に書き直す。

【0085】
【数8】
JP0006785500B2_000009t.gif

【0086】
ここで、
【数9】
JP0006785500B2_000010t.gif

【0087】
【数10】
JP0006785500B2_000011t.gif

【0088】
【数11】
JP0006785500B2_000012t.gif

【0089】
式(8)を再掲すると、
【数12】
JP0006785500B2_000013t.gif

【0090】
推定値
JP0006785500B2_000014t.gifと実測値uiとの差を最小化する。

【0091】
【数13】
JP0006785500B2_000015t.gif

【0092】
eiは17計測誘導vjとそれぞれ直交時、最小になる。すなわち、
【数14】
JP0006785500B2_000016t.gif

【0093】
式(14)を全部展開すると、
【数15】
JP0006785500B2_000017t.gif

【0094】
これを整理すると、
【数16】
JP0006785500B2_000018t.gif

【0095】
したがって、
【数17】
JP0006785500B2_000019t.gif

【0096】
ここで、aiは、誘導iを導出するための投影行列(17×1)である。vは計測した17誘導の心電図(ECG:Electrocardiogram)信号(式(10))、uiは導出誘導(i=1,2,3,4,3R,4R)の基準となる実測信号(N×1)である。

【0097】
viを導出するのに、上記式(12)を使う。
JP0006785500B2_000020t.gifは、導出した誘導iの信号ベクトル(時系列データN×1)である。

【0098】
データベース3の全23誘導ECG信号を用いて、17誘導の実測信号より6誘導(v1~v4,v3R,v4R)の信号を導出するため6つの平均投影行列ai(a1~a4, a3R, a4R)を求める。

【0099】
入浴時、直接計測できる17誘導の信号と上記平均投影行列ai(a1~a4, a3R, a4R)を用いて、v1~v4,v3R,v4Rの6誘導のECG信号を導出する。

【0100】
さらに、精度を高める場合は、上記平均投影行列ai(a1~a4, a3R, a4R)を個人別にチューニングする方法を用いる。チューニングは以下の手順で行う。

【0101】
データベース3の全誘導ECGデータを用いて、13誘導の実測信号(上記17誘導中更にv5, v6, v5R, v6Rを除く)から、平均投影行列(a5, a6, a5R, a6R)を求める(リードベクトルによる最小二乗法を用いる)。

【0102】
入浴時、17誘導の計測信号から13誘導の信号(v5, v6, v5R, v6R以外)を用いて、個人別投影行列a5t, a6t, a5Rt, a6Rtを求める(リードベクトル原理による最小二乗法を用いる)。

【0103】
4つの平均投影行列(a5, a6, a5R, a6R)と4つの個人別投影行列(a5t, a6t, a5Rt, a6Rt)の差Δa5, Δa6, Δa5R, Δa6Rを求める。

【0104】
【数18】
JP0006785500B2_000021t.gif

【0105】
次いで、差Δa5, Δa6, Δa5R, Δa6Rの平均
JP0006785500B2_000022t.gifを求める。

【0106】
【数19】
JP0006785500B2_000023t.gif

【0107】
6つの平均投影行列(a1, a2, a3, a4, a3R, a4R)から6つの個人別投影行列(a1t, a2t, a3t, a4t, a3Rt, a4Rt)を下記の式で求める。

【0108】
【数20】
JP0006785500B2_000024t.gif

【0109】
これにより、上記6つ個人別投影行列を用いて、個人別チューニングした6誘導(v1~v4,v3R,v4R)の信号を導出する。なお、αiは±1.0の間にある小数を経験的に決めれば良い。

【0110】
上記方法により得られる電極配置された位置に対応する心電信号と、導出される6つの誘導信号(v1~v4,v3R,v4R)により、次のような効果が期待できる。

【0111】
第1に、心電信号のリアルタイム解析により、入浴中疾患発作の即時検知と安全確保が可能である。

【0112】
入浴中の心肺停止により亡くなる人は年間約1万7千人と推定されている。不整脈、伝導障害、急性心筋梗塞(特に普段検出感度の低い右心室と後壁)などの心機能の異常イベントの即時検知、排水処理と警報発信などにより、入浴中疾患発作により危険を回避することが可能である。

【0113】
第2に、個人別入浴環境の最適化が可能である。このために、証拠に基づき快適度の評価、あるいは快適度を常時追跡し、最高な快適度を達成することが可能である。

【0114】
第3に、日常健康管理と疾患の早期スクリーニング用が可能である。すなわち、長期健康変化のモニタリング、日頃入浴中の心電信号を長期に亘って蓄積すると、健康状態変化を推定することにより、最適な入浴環境構築、発病の早期予知と日常の健康管理に役立つ。

【0115】
以降にかかる心電信号のリアルタイム解析により得られる上記効果を得るための具体的方法・システムについて、説明する。

【0116】
図4は、本発明に従うデータ解析フローを示す図である。以降のフローに従う処理は、図1の処理装置2において、実行される。

【0117】
ここで、以降の説明のため、一般的心電信号の波形を図5に示す。心電信号は、P波、Q波、R波、S波、T波の順に周期的に表れる。Q波、R波、S波でQRS複合波を構成する。

【0118】
[心電信号前処理]
図4において、初期処理として心電信号前処理が行われる(ステップS0)。図6は、この心電信号前処理のフロー図である。

【0119】
図6において、入浴中に浴槽1から得られる心電信号を計測する(ステップS10)。計測される信号が良好でなければ(ステップS11,N)、10秒程度時間をおいて再度信号を計測する(ステップS12)。

【0120】
良好な計測信号に基づき心電データとする(ステップS11,Y,ステップ13)。

【0121】
この心電データに対して前処理として基線動揺やハム雑音を除去する(ステップS14)。次いで、整合フィルタによりQRS複合波を強調し(ステップS15)、ピークサーチによりQRS複合波を検出する(ステップS16)。

【0122】
図4に戻り、検出されたQRS複合波に基づき、心電信号の特徴解析を行う(ステップS1)。この心電信号の特徴解析は、図7に示すフローにより行われる。

【0123】
[心電信号の特徴解析]
図7において、図6のステップS13,14でノイズ処理された心電信号と、図6のステップS16で検知されたQRSの特徴点データに基づいて、心拍ごとのデータを分割する(ステップS20)。

【0124】
すなわち、分割データは、P波、QRS複合波、T波のそれぞれの識別を可能にする(ステップS21,S23,S27)。

【0125】
P波識別(ステップS21)によりPQ間隔を求める(ステップS22)。QRS複合波識別(ステップS23)により、R波識別(ステップS24)、QRS幅検知(ステップS25)、Q波識別(ステップS26)を行う。

【0126】
さらに、T波識別(ステップS27)によりQT間隔の識別(ステップS28)及びSTレベル変動の検知(ステップS29)を行う。

【0127】
図4に戻り、心電信号特徴解析(図7)の結果に基づき、異常イベントの検知(不整脈)(ステップS2)と、異常イベントの検知(心筋梗塞)(ステップS3)を行う。

【0128】
異常イベントの検知(不整脈)(ステップS2)は、図8に示す処理フローに従い行われる。一方、異常イベントの検知(心筋梗塞)(ステップS3)は、図9に示す処理フローに従い行われる。次にこれらの異常イベントの検知処理について、順次に説明する。

【0129】
[異常イベントの検知(不整脈)]
図8において、図6の電信号前処理で得られたQRSの特徴点データに基づきRRI時系列データを計算する(ステップS30)。

【0130】
RRI時系列とは、心拍間隔(RRI)を時間軸上に並べたものである。QRSの特徴点データからR-R間隔をプロットして生成する。RRIデータは時間間隔が一様ではないため、周波数領域での解析の前に等間隔で再サンプリングする必要がある。

【0131】
得られたRRI時系列データに基づき、心拍数異常と判断される場合(ステップS31,Y)、徐脈であるか(ステップS32)、心室期外収縮であるか(ステップS33)、心房期外収縮であるか(ステップS34)を判定し、いずれかであれば、警報を発信する(ステップS40)。

【0132】
この警報の発信は、図1のシステムにおける適宜の出力装置4によって、音、光等の表示により行われる。あるいは、通信により適宜の場所に送信表示することでもよい。

【0133】
図8に戻り、心拍数異常が、徐脈、心室期外収縮、心房期外収縮のいずれでもない場合は、頻脈であるか(ステップS35)を判定する。

【0134】
頻脈である場合(ステップS35、Y)、狭いQRSであれば(ステップS36、Y)、規則性の有無を判定する(ステップS37A)。

【0135】
頻脈に規則性があれば(ステップS37A,Y)、「洞頻脈、房室結節リエントランス頻拍、心房粗動、心房性頻脈、WPW症候群」と判断する(ステップ38A)。

【0136】
一方、頻脈に規則性がなければ(ステップS37A,N)、「心房細動、心房粗動、心房性頻脈、多源性心房頻拍」と判断する(ステップ38B)。いずれの場合も、警報を発信する(ステップS40)。

【0137】
さらに、上記狭いQRSでなければ(ステップS36、N)、頻脈の規則性を判定する(ステップS37B)。規則性があれば(ステップS37B,Y)、「心室頻拍、上質性頻拍症、WPW症候群」と判定して(ステップS39A)、警報を発信する(ステップS40)。規則性がなければ(ステップS37B,N)、「心房細動、振動粗動」として(ステップS39B)、警報を発信する(ステップS40)。

【0138】
[異常イベントの検知(心筋梗塞)]
異常イベントの検知(心筋梗塞)の処理フローを示す図9において、図7の心電信号特徴解析で得られるSTレベル変動を監視し、STレベル変動が上昇する場合(ステップS41,Y)、2誘導(II,III,aVF)以上が0.1mVを超えるとき(ステップS42,Y)、急性下壁心筋梗塞と判定し(ステップ42A)、警報を発信する(ステップS46)。

【0139】
また、連続した前胸部2誘導以上が0.2mVを超えるとき(ステップS43,Y)、急性前壁心筋梗塞と判定し(ステップ43A)、警報を発信する(ステップS46)。

【0140】
さらに、連続した後壁部2誘導以上が0.1mVをこえるとき(ステップS44,Y)、急性後壁心筋梗塞と判定し(ステップ44A)、警報を発信する(ステップS46)。

【0141】
一方、STレベル変動が上昇しない場合(ステップS41,N)、2誘導以上が0.1mVを超えるとき(ステップS47、Y)、血清CK-MB値又はトロポニン(TnT)陽性であるとき(S48,Y)、非ST上昇変動心筋梗塞(ステップS49A),血清CK-MB値又はトロポニン(TnT)陽性でないとき(S48,N),心筋虚血(ステップS49B)として、それぞれ警告発信を行う(ステップS46)。

【0142】
[心拍数変動解析]
図4に戻り、心電信号前処理(ステップS0,図6)の後に、心拍数変動解析を行う(ステップS4)。

【0143】
図10は、この心拍数変動解析の処理フローである。なお、図10は、HRV解析パラメータの一部の例のみを示す。他に多数項目があり、全部列挙を省略している。

【0144】
図10において、心電信号前処理で得られタQRSの特徴点データ(ステップS16,図6)に基づき、RRI時系列データを計算する(ステップS50)。

【0145】
計算結果に対し、異常値とノイズを除去し(ステップS51)、非線形解析(ステップS52A)と線形解析(ステップS52B)を行う。

【0146】
非線形解析(ステップS52A)では、位相空間解析(ステップS511)、カオス解析(ステップS512)、複雑性解析(ステップS513)を行う。そして、 それぞれの解析に対応して、それぞれパラメータ511A,512A,513Aを得る。

【0147】
一方、線形解析(ステップS52B)では、時間域解析(ステップS521)、周波数域解析(ステップS522)を行う。そして、 それぞれの解析に対応して、それぞれパラメータ521A,522Aを得る。

【0148】
これらパラメータを心拍数変動(HRV)解析の結果としてデータベース3に蓄積する。

【0149】
つぎに、図4に戻り、心拍数変動解析(ステップS4)の結果に基づき、最適入浴条件として浴槽水温設定(ステップS5),入浴時間設定(ステップS6)、更に健康状態変動解析(ステップ7)を行う。

【0150】
以下にそれぞれのステップの処理を説明する。

【0151】
[最適入浴条件設定(浴槽水温)]
図11は、浴槽水温の設定を行う処理フローである。図11において、初日に(ステップS60,Y)、入浴者による初期浴槽水温をT=Tとして入力する(ステップS61)。

【0152】
一方、入浴が初日でなければ(ステップS60,N)、浴槽水温をT=T0+ΔTに設定する(ステップS61A)。ここで、ΔTの範囲は、±5℃で、変化ステップを0.5℃とする。このような温度で、浴槽水温を設定する(ステップS62)。

【0153】
ついで、心電信号を計測する(ステップS63)。計測される心電信号の品質が良好でなければ10秒程度の時間をおいて再度計測を行う(ステップS64N,63A))。

【0154】
得られた心電信号をもとに、心拍数変動を解析する(ステップS65)。この心拍数変動解析は、先に、図10で説明した処理と同じで、最終的に得られる自律神経機能のバランスを計測するストレス指標である心拍変動の周波数パラメータLF(低周波),HF(高周波),LF/HF(ステップ66、図10,522A))に基づき、快適度解析を行う(ステップS67)。

【0155】
呼吸変動を反映するHF成分は、副交感神経が緊張(活性化)している場合にのみ心拍変動に現れる。一方、LF成分は、交感神経が緊張しているときも、副交感神経が緊張しているときも心拍変動に現れる。快適度解析(ステップS67)では、従って、高周波変動成分(HF成分)と低周波成分(LF成分)を抽出し、両者の大きさを比較することにより、快適度を分析する。

【0156】
その結果を、データとしてデータベース3に蓄積する(ステップS68)。この蓄積されたデータをもとに、快適度曲線を構成し(ステップS68A),逐次、快適度曲線を更新する。このように得られた快適度の水温に対する変化をグラフに表し(ステップS69)、快適度が最適になる浴槽水温を求め、最適浴槽水温を特定する(ステップS69A)。

【0157】
ここで、図11における最適浴槽水温設定を個人別に行う場合は、操作パネル、体重計、顔認識カメラ、入浴後の心電図等を用いて、入浴者を識別する。データ蓄積(ステップS68、図11)で、個人ごとに区別してデータを蓄積するようにする。

【0158】
したがって、個人ごとにデータ蓄積された個人別データに基づいて、浴槽水温設定(ステップS62,図11)を行うことが出来る。

【0159】
図4に戻り、心拍数変動解析(ステップS4)に基づき、最適入浴条件設定(入浴時間)を行う場合の処理フローを図12に示す。

【0160】
図12における処理の流れは基本的に図11に述べた処理と同様である。異なるのは、快適度解析(ステップS76)に基づいて、水温変化に代えて、時間経過を軸に快適度の変化をデータとして残すことである(ステップS77,S78)。

【0161】
図12では個人別に入浴時間を設定するために、データベース3に蓄積した個人別の快適度のデータを用いる。

【0162】
操作パネル、体重計、顔認識カメラ、入浴後心電図等を利用して入浴者を識別する(ステップS70,70A)。識別された入浴者に対応する最適浴槽水温Toptをデータベース3から特定して設定する(ステップS71)。

【0163】
入浴中の心電信号を計測する(ステップ72)。計測される心電信号の品質が良好でなければ10秒程度の時間をおいて再度計測を行う(ステップS73N,72A)。

【0164】
得られた心電信号をもとに、心拍数変動を解析する(ステップS74)。この心拍数変動解析は、先に、図10で説明した処理と同じで、最終的に得られる自律神経機能のバランスを計測するストレス指標である心拍変動の周波数パラメータLF(低周波),HF(高周波),LF/HF(ステップS75、図10,522A))に基づき、快適度解析を行う(ステップS76)。

【0165】
快適度解析の結果を、データベース3に蓄積する(ステップS77)。この蓄積されたデータをもとに、時間を横軸にして、快適度曲線を更新する。このように得られた快適度の入浴時間に対する変化をグラフに表し(ステップS77A)、快適度が変化する変曲点を検出するまで、心電信号計測(ステップS72)からの処理を繰り返す(ステップS78,N)。

【0166】
そして、時間経過で、浴槽水温が上昇していき快適度が変化する変曲点を検知する(ステップS78、Y)と、最適入浴時間に到達したことを示す信号を発信する(ステップS79)。これにより入浴者に浴槽1から出ることを促すことが出来る。

【0167】
さらに、図4に戻り、本発明で得られる心電信号で得られるデータにより健康状態変動を把握する(ステップS7)ことが可能である。

【0168】
図13は、かかる健康状態変動解析のフロー図である。図10の心拍数変動(HRV)解析結果データ蓄積(ステップ53)によりデータベース3に蓄積格納されているHRV解析結果データを取得し(ステップS80)、前処理として異常値を除去する(ステップS81)。さらに、前処理として欠損データを補間処理により連続変化のデータとして補完する(ステップS82)。

【0169】
このように保管されたHRVデータについて、日毎(ステップS83A)、週毎(ステップS83B)、月毎(ステップS83C)、季節毎(ステップS83DC)、更に年毎(ステップS83E)に連続変化のデータを解析する。

【0170】
これらの解析結果に基づき、入浴者のバイオリズム解析(ステップS84A)、生理周期推定(ステップS84B)、体調変化検出(ステップS84C)、更にライフスタイル変化検出(ステップS84D)を行うことが可能である。

【0171】
[リアルタイム処理]
さらに、本発明の拡張として、リアルタイム信号処理により、浴槽水位と心電信号の自動検知により、データ計測の自動開始、自動終了を行うことが可能である。

【0172】
すなわち、入浴前の基礎水位を検知する。

【0173】
入浴者が浴槽に入ることにより水位の変化と心電信号の出現を検知し、データ計測を自動的に開始する。

【0174】
入浴者が浴槽を出ることにより水位の変化と心電信号の消失を検知し、データ計測を自動的に終了する。

【0175】
また、自動排水と警報発信により安全を確保することが可能である。不整脈、伝導障害、急性心筋梗塞(特に普段検出感度の低い右心室と後壁)などの心機能の異常イベントの即時検知により、自動排水処理と警報発信処理を行うように構成することが可能である。
【符号の説明】
【0176】
1 浴槽
2 処理装置
3 データベース
4 出力装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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