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明細書 :腫瘍細胞の生存を低下させるYB-1アンチセンスオリゴヌクレオチド

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6752495号 (P6752495)
公開番号 特開2016-192963 (P2016-192963A)
登録日 令和2年8月21日(2020.8.21)
発行日 令和2年9月9日(2020.9.9)
公開日 平成28年11月17日(2016.11.17)
発明の名称または考案の名称 腫瘍細胞の生存を低下させるYB-1アンチセンスオリゴヌクレオチド
国際特許分類 C12N  15/113       (2010.01)
A61K  31/711       (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61K  48/00        (2006.01)
FI C12N 15/113 110Z
A61K 31/711 ZNA
A61P 35/00
A61P 43/00 105
A61K 48/00
請求項の数または発明の数 13
全頁数 25
出願番号 特願2016-074719 (P2016-074719)
出願日 平成28年4月1日(2016.4.1)
優先権出願番号 2015075292
優先日 平成27年4月1日(2015.4.1)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成31年4月1日(2019.4.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】506087705
【氏名又は名称】学校法人産業医科大学
発明者または考案者 【氏名】和泉 弘人
個別代理人の代理人 【識別番号】100080791、【弁理士】、【氏名又は名称】高島 一
【識別番号】100125070、【弁理士】、【氏名又は名称】土井 京子
【識別番号】100136629、【弁理士】、【氏名又は名称】鎌田 光宜
【識別番号】100121212、【弁理士】、【氏名又は名称】田村 弥栄子
【識別番号】100117743、【弁理士】、【氏名又は名称】村田 美由紀
【識別番号】100163658、【弁理士】、【氏名又は名称】小池 順造
【識別番号】100174296、【弁理士】、【氏名又は名称】當麻 博文
審査官 【審査官】松浦 安紀子
参考文献・文献 Cancer Res, 2008, Vol.68, pp.98-105
Int. J. Cancer, 1999, Vol.83, pp.732-737
調査した分野 C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(A)~(D)のいずれかのヌクレオチド配列を含み、且つヒトYB-1翻訳阻害活性を有する、50ヌクレオチド長以下の核酸:
(A)配列番号2で表されるヌクレオチド配列;
(B)配列番号2で表されるヌクレオチド配列において、1個又は2個の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加されたヌクレオチド配列;
(C)配列番号2で表されるヌクレオチド配列と90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列;及び
(D)(A)~(C)から選択されるいずれかのヌクレオチド配列に含まれる、少なくとも16ヌクレオチド長の連続する部分配列。
【請求項2】
配列番号2で表されるヌクレオチド配列からなる、請求項1記載の核酸。
【請求項3】
請求項1又は2記載の核酸を発現する発現ベクター。
【請求項4】
請求項1又は2記載の核酸、或いは請求項3記載の発現ベクターを含む、医薬組成物。
【請求項5】
癌の治療用又は予防用である、請求項4記載の医薬組成物。
【請求項6】
癌細胞死誘導用である、請求項4記載の医薬組成物。
【請求項7】
癌がヒトYB-1を発現する、請求項5又は6記載の医薬組成物。
【請求項8】
癌が、肺癌である、請求項5~7のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項9】
肺癌が非小細胞性肺癌である、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項10】
血管新生阻害用である、請求項4記載の医薬組成物。
【請求項11】
腫瘍血管の血管新生阻害用である、請求項10記載の医薬組成物。
【請求項12】
腫瘍細胞及び腫瘍血管血管内皮細胞の増殖阻害用である、請求項4記載の医薬組成物。
【請求項13】
腫瘍が、肺癌である、請求項12記載の医薬組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、Yボックス結合タンパク1(YB-1)の発現を特異的且つ効果的に抑制する核酸、及び当該核酸を含む、癌細胞死誘導用、癌の治療・予防用、血管新生(特に腫瘍血管新生)の阻害用、腫瘍細胞及び腫瘍血管血管内皮細胞の増殖阻害用の医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
YB-1はYB-1(YBX1)遺伝子にコードされ、転写、翻訳、複製に関わる多機能タンパク質である(非特許文献1)。YB-1はコールドショックドメインを有し、ヒト癌細胞の核内と細胞質に局在する。P-糖タンパク質(MDR1、ABCB1)などのABCトランスポーターやDNA修復関連酵素の発現を上昇させ、広く薬剤耐性の獲得について重要な鍵を握ると考えられる。さまざまな癌種において、YB-1の核内局在や発現レベルはP-糖タンパク質依存性また非依存性の薬剤耐性や予後不良と有意な相関を示すことが報告されている(非特許文献2)。YB-1については、九州大学や産業医科大学の研究グループが、卵巣癌、乳癌、骨肉腫などの多くのヒト癌種と関連することを報告している(特許文献1)。彼らは、EGFRなどの増殖因子や細胞周期関連遺伝子の発現をYB-1が制御していることも明らかにしてきている(非特許文献3)。例えば、EGFRをはじめ、いくつかの増殖関連遺伝子のプロモーター領域付近に転写因子YB-1の結合部位であるY-ボックスの存在が確認されている。
【0003】
本発明者らは、YB-1の発現をsiRNAで抑制すると、癌細胞の増殖が著しく抑制され、その後細胞死が誘導されることを見出した(非特許文献4)。また、その機序としてDNAの複製の初期において必須なCDC6の発現をYB-1が正に制御していることを報告した(非特許文献5)。さらに、YB-1は腫瘍内の血管内皮細胞で発現が高く、既存の血管内皮細胞では発現が低いことを見出した(非特許文献6)。以上の成果は、YB-1を分子標的とする癌治療法は、癌細胞の増殖を抑制するだけでなく、癌間質にある血管新生を抑制することで相乗的な抗癌作用が期待できることを意味する(特許文献2、非特許文献7、8)。しかしながら、YB-1は多機能タンパク質であるため、機能阻害剤の開発は難しいと推測された。
【0004】
YB-1を標的とした核酸医薬の開発が、特許文献2及び3に報告されている。特許文献2には、YB-1をコードする核酸を標的とする25塩基のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む腫瘍血管新生阻害剤が開示されている。治療対象として、膠芽腫、食道癌、胃癌、大腸癌及び肺癌が例示されている。YB-1を標的とする二本鎖RNA(siRNA)の、血管内皮細胞(HUVEC)増殖阻害活性が評価されている。
特許文献3には、YB-1(YBX1)遺伝子の発現を抑制する核酸医薬(siRNA、miRNA、アンチセンス核酸)が開示され、HUVEC細胞増殖阻害作用を示し、アポトーシス誘導作用を持つ抗癌剤が記載されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開平9-95499号公報
【特許文献2】特開2011-088876号公報
【特許文献3】特開2013-216627号公報
【0006】

【非特許文献1】Bioessays. 2003;25(7):691-698
【非特許文献2】Molecular Cancer Therapeutics, vol.3, pp.1485-1492, 2004
【非特許文献3】「日経メディカル」2009/6/19 森下紀代美 第49 回日本呼吸器学会シンポジウム(久留米大 東公一氏2009/6/12-14)の記事http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/sp/jrs2009/200906/511211.html
【非特許文献4】Cancer Res. 2008;68(1):98-105
【非特許文献5】Eur J Cancer. 2010;46(5):954-965
【非特許文献6】Cancer Sci. 2010;101(6):1367-1373
【非特許文献7】Cancer Sci. 2003;94(1):9-14
【非特許文献8】Curr Med Chem Anticancer Agents. 2005;5(1):15-27
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
癌の治療・予防により有効な医薬組成物を開発するために、癌細胞中のYB-1遺伝子発現をこれまで以上に強力に抑制することのできる核酸の探索が望まれている。
【0008】
そこで、本発明は、YB-1の発現をより効果的に抑制する核酸、及び当該核酸を含む、癌細胞死誘導用、癌の治療・予防用等の医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、YB-1(YBX1)遺伝子mRNAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを網羅的に作製し、それぞれを肺癌細胞に導入した。そして、複数の特定のアンチセンスオリゴヌクレオチドによってYB-1の発現が顕著に減少し、肺癌細胞の生存率が顕著に低下することを見出し、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明は以下に関する。
[1] 以下の(A)~(D)のいずれかのヌクレオチド配列を含み、且つヒトYB-1翻訳阻害活性を有する、50ヌクレオチド長以下の核酸:
(A)配列番号2~5のいずれかで表されるヌクレオチド配列;
(B)配列番号2~5のいずれかで表されるヌクレオチド配列において、1個又は2個の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加されたヌクレオチド配列;
(C)配列番号2~5のいずれかで表されるヌクレオチド配列と90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列;及び
(D)(A)~(C)から選択されるいずれかのヌクレオチド配列に含まれる、少なくとも16ヌクレオチド長の連続する部分配列。
[2] 配列番号2~5のいずれかで表されるヌクレオチド配列からなる、[1]記載の核酸。
[3] [1]又は[2]記載の核酸を発現する発現ベクター。
[4] [1]又は[2]記載の核酸、或いは[3]記載の発現ベクターを含む、医薬組成物。
[5] 癌の治療用又は予防用である、[4]記載の医薬組成物。
[6] 癌細胞死誘導用である、[4]記載の医薬組成物。
[7] 癌がヒトYB-1を発現する、[5]又は[6]記載の医薬組成物。
[8] 癌が、肺癌である、[5]~[7]のいずれか1項記載の医薬組成物。
[9] 肺癌が非小細胞性肺癌である、[8]記載の医薬組成物。
[10] 血管新生阻害用である、[4]記載の医薬組成物。
[11] 腫瘍血管の血管新生阻害用である、[10]記載の医薬組成物。
[12] 腫瘍細胞及び腫瘍血管血管内皮細胞の増殖阻害用である、[4]記載の医薬組成物。
[13] 腫瘍が、肺癌である、[12]記載の医薬組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の核酸によって、YB-1の発現を特異的且つ効果的に抑制することができる。癌細胞中のYB-1発現を抑制させることにより、癌細胞死を誘導できることから、本発明の核酸を含む医薬組成物は、癌細胞死誘導用及び癌の治療・予防用として有用である。
【0012】
YB-1は腫瘍新生血管に特異的に発現し、血管内皮細胞の増殖因子依存的な増殖に寄与するので(特開2011-088876号公報)、本発明の医薬組成物は、血管新生阻害用としても有用である。
【0013】
更に、YB-1は腫瘍新生血管の血管内皮細胞に特異的に発現し、正常組織や炎症組織の血管内皮細胞には全く又は殆ど発現しないので(特開2011-088876号公報)、本発明の医薬組成物は、特に腫瘍組織における血管新生を選択的に阻害するのに有用である。また、YB-1は、腫瘍細胞の薬剤耐性や増殖に関連することが知られているので、本発明の医薬組成物は、結果として腫瘍細胞と腫瘍血管血管内皮細胞の双方の増殖を同時に抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】YBX1アンチセンスDNAオリゴヌクレオチドのデザインを示した模式図。YBX1mRNAのヌクレオチド配列に基づいて、25ヌクレオチドの一本鎖DNAアンチセンスオリゴヌクレオチドを作製した。各一本鎖DNAアンチセンスオリゴヌクレオチドは、隣り合うDNAオリゴヌクレオチドが15塩基重複するように作製した。
【図2】YBX1アンチセンスDNAオリゴヌクレオチドの細胞生存率への影響。肺癌細胞(PC9細胞)に各DNAオリゴヌクレオチドをトランスフェクションし、WST8アッセイを行った。コントロールDNAオリゴヌクレオチドの細胞生存率を1として、153種類の各YBX1アンチセンスDNAオリゴヌクレオチド(横軸)を導入した細胞の平均の生存率(横軸)を示す。
【図3】YBX1アンチセンスDNAオリゴヌクレオチドによるYB-1の発現抑制。表示された各YBX1アンチセンスDNAオリゴヌクレオチドをトランスフェクションした肺癌細胞(PC9細胞)に対し、抗YB-1抗体及び抗β-アクチン抗体を用いてウェスタンブロットを行った。上パネルは該ウェスタンブロットの画像を、下パネルはYB-1の相対的発現レベルを定量した結果のグラフを示す。
【図4】シゾフィラン(SPG)の構造を示す図である。
【図5】YB-1 mRNAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチド(AS-ODN)配列の候補を示す図である。
【図6】最も効果の高いアンチセンスDNA配列のスクリーニングを表す図である。
【図7】UNAfoldにより作成されたYB-1mRNAのバルジ/ループ構造、及び選択された4つのAS-ODNの結合部位を示す図である。
【図8】アンチセンスDNAによるYB-1タンパク質発現のサイレンシングを、(A)ウェスタンブロット解析、及び(B)そのシグナル強度をβアクチンについてのシグナル強度で正規化したグラフ、により示した図である。
【図9】dA40/SPG複合体及びAS014-dA40/SPG(以下、AS014/SPGと略記する場合がある)複合体の形成をゲル電気泳動により示した図である。
【図10】AS014/SPG複合体による処理後の12株の肺癌細胞株の細胞生存率を示す図である。(A)はWST-8アッセイによる各細胞株の生存率を、(B)はウェスタンブロットによるPC9及びA549のYB-1発現を示す。
【図11】FITC標識SPG及びAlexa546標識dA40/SPG複合体の取り込みを示す図である。(A)はB203L、PC9、A549、PC1の各細胞によるFITC標識SPGの取り込みを、(B)はPC9細胞によるAlexa546標識dA40/SPG複合体の取り込みを、(C)は、未標識dA40/SPG複合体存在下又は非存在下でのPC9細胞によるAlexa546標識dA40/SPG複合体の取り込みを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.核酸
本発明は、ヒトYB-1遺伝子に対するアンチセンス核酸を提供する。「アンチセンス核酸」とは、標的mRNA(成熟mRNA又は初期転写産物)を発現する細胞の生理的条件下で該標的mRNAと特異的にハイブリダイズし得るヌクレオチド配列を含み、該標的mRNAにコードされるポリペプチドの翻訳を阻害し得る核酸をいう。即ち、本発明の核酸は、ヒトYB-1遺伝子のmRNA(成熟mRNA又は初期転写産物)に、当該mRNAを発現する細胞(例えば、ヒト細胞)内の生理的条件下(好ましくは、当該細胞の細胞質内)で特異的にハイブリダイズし、当該mRNAにコードされたヒトYB-1ポリペプチドの翻訳を阻害する活性を有する。当該活性を、以下「ヒトYB-1翻訳阻害活性」と称する。

【0016】
アンチセンス核酸による翻訳の阻害の機構としては、限定されないが、アンチセンス核酸が標的mRNAにハイブリダイズすることによって形成された二本鎖部分が、立体障害となって該mRNA上でのリボソームの進行が阻害され、翻訳が阻害される機構、アンチセンス核酸がDNA等の場合、該DNAが標的mRNAにハイブリダイズすることによって形成された二本鎖部分を、細胞内RNaseHが認識して切断し、標的mRNAが分解されることにより、翻訳が阻害される機構が挙げられる。

【0017】
本発明の核酸は、好ましくは、ヒトYB-1の翻訳を特異的に阻害する。「特異的阻害」とは、標的とする遺伝子の翻訳を、それ以外の遺伝子の翻訳よりも強く抑制することを意味する。

【0018】
YB-1(Yボックス・バインディング・プロテイン1)はコールドショックドメインを有し、癌細胞の薬物耐性の獲得や増殖に寄与する公知のポリペプチドである(Molecular Cancer Therapeutics 2004;3:1485-1492)。

【0019】
ヒトYB-1のヌクレオチド配列やアミノ酸配列は公知である。ヒトYB-1の代表的なヌクレオチド配列が、NCBIに以下の通りに登録されている。
ヌクレオチド配列(mRNA又はcDNA配列):アクセッション番号 NM_004559(バージョンNM_004559.3)(配列番号1)
即ち、ヒトYB-1遺伝子のmRNAは、例えば、配列番号1で表されるヌクレオチド配列を含むRNAである。

【0020】
なお、本明細書においてヌクレオチド配列は、特にことわりのない限りDNAの配列として記載するが、ポリヌクレオチドがRNAである場合は、チミン(T)をウラシル(U)に適宜読み替えるものとする。

【0021】
核酸のヒトYB-1翻訳阻害活性は、評価対象の核酸をヒトYB-1 mRNAを発現する細胞(好ましくは、ヒト細胞)内に導入し、当該細胞内のヒトYB-1の翻訳産物(即ち、ポリペプチド)の発現量を、核酸を導入しないネガティブコントロールと比較することにより評価することが出来る。ヒトYB-1の翻訳産物の発現量は、ヒトYB-1の翻訳産物を特異的に認識する抗体を用いて、公知の免疫学的手法により該翻訳産物を検出することにより評価することができる。免疫学的手法としては、フローサイトメトリー解析、放射性同位元素免疫測定法(RIA法)、ELISA法(Methods in Enzymol. 70: 419-439 (1980))、ウェスタンブロッティング、免疫組織染色等を挙げることができる。

【0022】
本発明の核酸は、ヒトYB-1翻訳阻害活性を有し、且つ以下のいずれかのヌクレオチド配列を含む:
(A)配列番号2~5のいずれかで表されるヌクレオチド配列;
(B)配列番号2~5のいずれかで表されるヌクレオチド配列において、1個又は2個の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加されたヌクレオチド配列;
(C)配列番号2~5のいずれかで表されるヌクレオチド配列と90%以上の同一性を有するヌクレオチド配列;及び
(D)(A)~(C)から選択されるいずれかのヌクレオチド配列に含まれる、少なくとも16ヌクレオチド長の連続する部分配列。

【0023】
上記の配列番号2~5で表されるヌクレオチド配列は、具体的には以下の通りである。
配列番号2 ACTGGGGCCGGCTGCGGCAGCTGCG
配列番号3 TGCCCGTAGTGCCGGGCTTGGTGTC
配列番号4 AAGTTGCGGCGGTACCGACGTTGAG
配列番号5 GGCAGGCGCCGCCGATGTGAGGCCG

【0024】
配列番号2~5で表されるヌクレオチド配列は、配列番号1で表されるヒトYB-1遺伝子mRNAヌクレオチド配列中、それぞれ以下の部分に相補的である。
配列番号2:ヌクレオチド番号131~155
配列番号3:ヌクレオチド番号241~265
配列番号4:ヌクレオチド番号1001~1025
配列番号5:ヌクレオチド番号291~315

【0025】
上記(B)のヌクレオチド配列において、欠失、置換、挿入、若しくは付加されるヌクレオチドの数は、結果として得られる核酸が、ヒトYB-1翻訳阻害活性を有する限り、特に限定されないが、通常1個又は2個、好ましくは1個である。

【0026】
上記(C)のヌクレオチド配列において、配列同一性の程度は、結果として得られる核酸が、ヒトYB-1翻訳阻害活性を有する限り、特に限定されないが、通常90%以上、好ましくは約95%以上である。

【0027】
ヌクレオチド配列同一性は自体公知の方法により決定できる。例えば、当該分野で慣用のプログラム(例えば、BLAST、FASTA等)を初期設定で用いて決定することができる。例えば、NCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップコスト=Linear;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=-2)にて計算することができる。別の局面では、同一性(%)は、当該分野で公知の任意のアルゴリズム、例えば、Needlemanら(1970) (J. Mol. Biol. 48: 444-453)、Myers及びMiller (CABIOS, 1988, 4: 11-17)のアルゴリズム等を使用して決定することができる。Needlemanらのアルゴリズムは、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムに組み込まれており、同一性(%)は、例えば、BLOSUM 62 matrix又はPAM250 matrix、並びにgap weight: 16、14、12、10、8、6若しくは4、及びlength weight: 1、2、3、4、5若しくは6のいずれかを使用することによって決定することができる。また、Myers及びMillerのアルゴリズムは、GCG配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラムに組み込まれている。ヌクレオチド配列を比較するためにALIGNプログラムを利用する場合、例えば、PAM120 weight residue table、gap length penalty 12、gap penalty 4を用いることができる。ヌクレオチド配列同一性の算出については、上記の方法のなかで最も低い値を示す方法を採用してもよい。

【0028】
上記(D)のヌクレオチド配列に含まれる部分配列の長さは、16、17、18、19、20、21、22、23又は24ヌクレオチド長であり、標的とするmRNAに対するハイブリダイゼーションの特異性を高める観点から、長ければ長い程よい。好ましくは20ヌクレオチド長以上(20、21、22、23又は24)、より好ましくは23ヌクレオチド長以上(23又は24)、最も好ましくは24ヌクレオチド長である。

【0029】
本発明の核酸の長さは、通常、16ヌクレオチド以上、好ましくは20ヌクレオチド以上、より好ましくは23ヌクレオチド以上、更に好ましくは24ヌクレオチド以上、更により好ましくは25ヌクレオチド以上である。本発明の核酸の長さは、合成の容易さや抗原性の問題等から、通常200ヌクレオチド以下、好ましくは50ヌクレオチド以下、より好ましくは30ヌクレオチド以下(例、29ヌクレオチド以下、28ヌクレオチド以下、27ヌクレオチド、26ヌクレオチド以下)である。最も好ましくは、本発明の核酸の長さは25ヌクレオチドである。

【0030】
本発明の核酸は、最も好ましくは、配列番号2~5のいずれかで表されるヌクレオチド配列からなる。

【0031】
本発明の核酸は、DNA、RNA、RNAとDNAのキメラ核酸(以下、キメラ核酸と称する)又はハイブリッド核酸である。ここにおいて、キメラ核酸とは、一本鎖又は二本鎖の核酸において一本の核酸の中にRNAとDNAを含むことをいい、ハイブリッド核酸とは、二本鎖において、一方の鎖がRNA又はキメラ核酸でもう一方の鎖がDNA又はキメラ核酸である核酸をいう。本発明の核酸は、好ましくはDNAである。

【0032】
本発明の核酸は、一本鎖又は二本鎖である。二本鎖の態様には、二本鎖DNA、二本鎖RNA、二本鎖キメラ核酸、RNA/DNAハイブリッド、RNA/キメラ核酸ハイブリッド、キメラ核酸/キメラ核酸ハイブリッド及びキメラ核酸/DNAハイブリッドが含まれる。本発明の核酸は、好ましくは一本鎖(一本鎖DNA、一本鎖RNA又は一本鎖キメラ核酸)であり、より好ましくは一本鎖DNAである。

【0033】
尚、アンチセンス核酸は、ヒトYB-1遺伝子のmRNAとハイブリダイズして翻訳を阻害するだけでなく、二本鎖DNAであるYB-1遺伝子と結合して三重鎖(トリプレックス)を形成し、mRNAへの転写を阻害し得るものであってもよい。

【0034】
本発明の核酸は、2-デオキシ-D-リボースを含有しているポリデオキシリボヌクレオチド、D-リボースを含有しているポリリボヌクレオチド、プリン又はピリミジン塩基のN-グリコシドであるその他のタイプのポリヌクレオチド、非ヌクレオチド骨格を有するその他のポリマー(例えば、市販のタンパク質核酸及び合成配列特異的な核酸ポリマー)又は特殊な結合を含有するその他のポリマー(但し、該ポリマーはDNAやRNA中に見出されるような塩基のペアリングや塩基の付着を許容する配置をもつヌクレオチドを含有する)などであり得る。それらは、二本鎖DNA、一本鎖DNA、二本鎖RNA、一本鎖RNA、DNA:RNAハイブリッドであってもよく、さらに非修飾ポリヌクレオチド(又は非修飾オリゴヌクレオチド)、公知の修飾の付加されたもの、例えば当該分野で知られた標識のあるもの、キャップの付いたもの、メチル化されたもの、1個以上の天然のヌクレオチドを類縁物で置換したもの、分子内ヌクレオチド修飾のされたもの、例えば非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)を持つもの、電荷を有する結合又は硫黄含有結合(例、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を持つもの、例えばタンパク質(例、ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ・インヒビター、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リジンなど)や糖(例、モノサッカライドなど)などの側鎖基を有しているもの、インターカレント化合物(例、アクリジン、ソラレンなど)を持つもの、キレート化合物(例えば、金属、放射活性をもつ金属、ホウ素、酸化性の金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された結合を持つもの(例えば、αアノマー型の核酸など)であってもよい。ここで「ヌクレオシド」、「ヌクレオチド」及び「核酸」とは、プリン及びピリミジン塩基を含有するのみでなく、修飾されたその他の複素環型塩基をもつようなものを含んでいて良い。このような修飾物は、メチル化されたプリン及びピリミジン、アシル化されたプリン及びピリミジン、或いはその他の複素環を含むものであってよい。修飾されたヌクレオシド及び修飾されたヌクレオチドはまた糖部分が修飾されていてよく、例えば、1個以上の水酸基がハロゲンとか、脂肪族基などで置換されていたり、又はエーテル、アミンなどの官能基に変換されていたりしてよい。

【0035】
本発明の核酸を構成するヌクレオチド分子は、天然型のDNA若しくはRNAでもよいが、安定性(化学的及び/又は対酵素)や比活性(RNAとの親和性)を向上させるために、種々の化学修飾を含むことができる。例えば、ヌクレアーゼなどの加水分解酵素による分解を防ぐために、核酸を構成する各ヌクレオチドのリン酸残基(ホスフェート)を、例えば、ホスホロチオエート(PS)、メチルホスホネート、ホスホロジチオネートなどの化学修飾リン酸残基に置換することができる。また、各ヌクレオチドの糖(リボース)の2’位の水酸基を、-OR(R=CH3(2’-O-Me)、CH2CH2OCH3(2’-O-MOE)、CH2CH2NHC(NH)NH2、CH2CONHCH3、CH2CH2CN等)に置換してもよい。さらに、塩基部分(ピリミジン、プリン)に化学修飾を施してもよく、例えば、ピリミジン塩基の5位へのメチル基やカチオン性官能基の導入、或いは2位のカルボニル基のチオカルボニルへの置換などが挙げられる。

【0036】
RNAの糖部のコンフォーメーションはC2’-endo(S型)とC3’-endo(N型)の2つが支配的であり、一本鎖RNAではこの両者の平衡として存在するが、二本鎖を形成するとN型に固定される。したがって、標的RNAに対して強い結合能を付与するために、2’酸素と4’炭素を架橋することにより、糖部のコンフォーメーションをN型に固定したRNA誘導体であるBNA(LNA)(Imanishi, T. et al., Chem. Commun., 1653-9, 2002; Jepsen, J.S. et al., Oligonucleotides, 14, 130-46, 2004)やENA(Morita, K. et al., Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids, 22, 1619-21, 2003)もまた、好ましく用いられ得る。

【0037】
本発明の核酸は、好ましくは単離されている。「単離」とは、目的とする成分以外の因子を除去する操作がなされ、天然に存在する状態を脱していることを意味する。「単離された核酸」の純度(評価対象物の総重量に占める目的とする核酸重量の百分率)は、通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは99%以上である。

【0038】
アンチセンス核酸の設計に重要な他の要素として、水溶性及び細胞膜透過性を高めること等が挙げられるが、これらはリポソームやマイクロスフェアを使用するなどの剤形の工夫によっても克服することができる。

【0039】
本発明のアンチセンス核酸は、本願明細書に開示された配列情報に基づいて、例えば、市販のDNA/RNA自動合成機(アプライド・バイオシステムズ社、ベックマン社等)を用いて、合成することができる。

【0040】
2.発現ベクター
本発明は、上記本発明の核酸を発現し得る(コードする)発現ベクターをも提供する。当該発現ベクターにおいては、上述の本発明の核酸又はそれをコードする核酸(好ましくはDNA)が、投与対象であるヒト細胞(例えば、癌細胞、血管内皮細胞等)内でプロモーター活性を発揮し得るプロモーターに機能的に連結されている。

【0041】
使用されるプロモーターは、投与対象であるヒト細胞内で機能し得るものであれば特に制限はない。プロモーターとしては、polI系プロモーター、polII系プロモーター、polIII系プロモーター等を使用することができる。具体的には、SV40由来初期プロモーター、サイトメガロウイルスLTR等のウイルスプロモーター、β-アクチン遺伝子プロモーター等の哺乳動物の構成タンパク質遺伝子プロモーター、並びにtRNAプロモーター等のRNAプロモーター等が用いられる。

【0042】
RNAの発現を意図する場合には、プロモーターとしてpolIII系プロモーターを使用することが好ましい。polIII系プロモーターとしては、例えば、U6プロモーター、H1プロモーター、tRNAプロモーター等を挙げることができる。

【0043】
上記発現ベクターは、好ましくは本発明の核酸又はそれをコードする核酸の下流に転写終結シグナル、すなわちターミネーター領域を含有する。さらに、形質転換細胞選択のための選択マーカー遺伝子(テトラサイクリン、アンピシリン、カナマイシン等の薬剤に対する抵抗性を付与する遺伝子、栄養要求性変異を相補する遺伝子等)をさらに含有することもできる。

【0044】
本発明において発現ベクターに使用されるベクターの種類は特に制限されないが、ヒトへの投与に好適なベクターとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス等のウイルスベクター、プラスミドベクター等が挙げられる。このうち、アデノウイルスは、遺伝子導入効率が極めて高く、非分裂細胞にも導入可能である等の利点を有する。但し、導入遺伝子の宿主染色体への組込みは極めて稀であるので、遺伝子発現は一過性で通常約4週間程度しか持続しない。治療効果の持続性を考慮すれば、比較的遺伝子導入効率が高く、非分裂細胞にも導入可能で、且つ逆位末端繰り返し配列(ITR)を介して染色体に組み込まれ得るアデノ随伴ウイルスの使用もまた好ましい。

【0045】
3.医薬組成物
本発明は、本発明の核酸又は発現ベクターを含む医薬組成物を提供する。

【0046】
本発明の医薬組成物は、本発明の核酸又は発現ベクターに加え、任意の担体、例えば医薬上許容される担体を含むことができる。

【0047】
医薬上許容され得る担体としては、例えば、ショ糖、デンプン、マンニット、ソルビット、乳糖、グルコース、セルロース、タルク、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の賦形剤、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリプロピルピロリドン、ゼラチン、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、ショ糖、デンプン等の結合剤、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ナトリウム-グリコール-スターチ、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム、クエン酸カルシウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、エアロジル、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム等の滑剤、クエン酸、メントール、グリチルリチン・アンモニウム塩、グリシン、オレンジ粉等の芳香剤、安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン等の保存剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸等の安定剤、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸アルミニウム等の懸濁剤、界面活性剤等の分散剤、水、生理食塩水、オレンジジュース等の希釈剤、カカオ脂、ポリエチレングリコール、白灯油等のベースワックスなどが挙げられるが、それらに限定されるものではない。

【0048】
本発明の核酸又は発現ベクターの細胞内への導入を促進するために、本発明の医薬組成物は更に核酸導入用試薬を含むことができる。また、核酸導入試薬としては、リポフェクチン、リポフェクタミン(lipofectamine)、DOGS(トランスフェクタム)、DOPE、DOTAP、DDAB、DHDEAB、HDEAB、ポリブレン、若しくはポリ(エチレンイミン)(PEI)等の陽イオン性脂質又はシゾフィラン(SPG)等の多糖類を用いることが出来る。また、発現ベクターとしてレトロウイルスを用いる場合には、導入試薬としてレトロネクチン、ファイブロネクチン、ポリブレン等を用いることができる。

【0049】
シゾフィランを使用する場合、標的となる細胞がDectin-1を発現していることが好ましい。シゾフィラン/核酸複合体がDectin-1によって取り込まれるからである(Gene Ther., 22:217-26 (2015); Bioconjugate Chem. 22:9-15 (2011))。Dectin-1の発現は、Dectin-1を特異的に認識する抗体により、ウェスタンブロッティング、フローサイトメトリー、免疫組織染色等の免疫学的手法により確認することができる。

【0050】
本発明の医薬組成物の投与単位形態としては、液剤、錠剤、丸剤、飲用液剤、散剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、エキス剤、細粒剤、シロップ剤、浸剤、煎剤、点眼剤、トローチ剤、パップ剤、リニメント剤、ローション剤、眼軟膏剤、硬膏剤、カプセル剤、坐剤、浣腸剤、注射剤(液剤、懸濁剤など)、貼付剤、軟膏剤、ゼリー剤、パスタ剤、吸入剤、クリーム剤、スプレー剤、点鼻剤、エアゾール剤などが例示される。

【0051】
医薬組成物中の本発明の核酸又は発現ベクターの含有量は、特に限定されず広範囲に適宜選択されるが、例えば、医薬組成物全体の約0.01ないし100重量%である。

【0052】
医薬組成物中の本発明の核酸又は発現ベクターの含有濃度は、特に限定されず広範囲に適宜選択されるが、例えば、医薬組成物全体の約0.01nMないし1Mであり、好ましくは0.1nMないし10mMであり、より好ましくは1nMないし100nMである。

【0053】
本発明の医薬組成物は、その使用に際し各種形態に応じた方法で投与される。例えば、外用剤の場合には、皮膚ないしは粘膜などの所要部位に直接噴霧、貼付又は塗布され、錠剤、丸剤、飲用液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤及びカプセル剤の場合には経口投与され、注射剤の場合には静脈内、筋肉内、皮内、皮下、関節腔内、腹腔内若しくは腫瘍組織内に投与され、坐剤の場合には直腸内投与される。

【0054】
本発明の医薬組成物の投与量は、有効成分の活性や種類、投与様式(例、経口、非経口)、病気の重篤度、投与対象となる動物種、投与対象の薬物受容性、体重、年齢等によって異なり一概に云えないが、通常、成人1日あたり有効成分量として約0.001mg~約2.0gである。

【0055】
本発明の医薬組成物は、通常、本発明の核酸又は発現ベクターが、標的とする細胞(例、癌細胞、新生血管の内皮細胞(例えば、腫瘍新生血管血管内皮細胞))に送達されるように、ヒトに対して安全に投与される。

【0056】
後述の実施例に示すように、癌細胞におけるYB-1の発現を本発明の核酸により抑制すると、癌細胞の生存率が低下する。従って、本発明の医薬組成物は、癌細胞死誘導用医薬組成物として有用である。本発明の核酸又は発現ベクターの有効量を対象ヒトに投与することにより、当該ヒトにおける癌細胞の細胞死を誘導することができる。癌細胞に細胞死が誘導できれば、癌組織の形成を阻止することができ、また、既成の癌組織を縮退/消滅させることができる。本発明の癌細胞死誘導用医薬組成物を用いることにより、癌を治療・予防することができる。従って、本発明の医薬組成物は、癌の治療・予防に有用である。本発明の核酸又は発現ベクターの有効量を対象ヒトに投与することにより、当該ヒトにおける癌を治療又は予防することができる。

【0057】
また、特開2011-088876号公報に記載されているように、YB-1の発現を抑制すると、血管内皮細胞の増殖(特に、血管内皮細胞増殖因子依存的な増殖)が阻害される。更に、YB-1は、腫瘍新生血管血管内皮細胞において特異的に発現している。従って、本発明の医薬組成物は、血管新生阻害用医薬組成物(又は血管内皮細胞増殖阻害用医薬組成物)、特に腫瘍血管の血管新生阻害用(又は血管内皮細胞増殖阻害用医薬組成物)として有用である。本発明の核酸又は発現ベクターの有効量を対象ヒトに投与することにより、当該ヒトにおける血管新生(例えば、腫瘍血管の血管新生)を阻害したり、血管内皮細胞(例えば、腫瘍血管の血管内皮細胞)の細胞増殖を阻害することができる。YB-1は腫瘍細胞においても発現し、腫瘍細胞の薬剤耐性や増殖に関与し、YB-1の発現を抑制すると、腫瘍細胞の増殖が阻害されることが知られている。従って、本発明の剤は、腫瘍細胞及び腫瘍血管血管内皮細胞の増殖阻害用医薬組成物(好ましくは腫瘍細胞及び腫瘍新生血管血管内皮細胞の増殖阻害用医薬組成物)としても有用である。本発明の核酸又は発現ベクターの有効量を対象ヒトへ投与し、腫瘍細胞及び腫瘍血管血管内皮細胞におけるYB-1の発現を抑制することにより、腫瘍細胞と腫瘍血管血管内皮細胞(好ましくは腫瘍新生血管血管内皮細胞)の双方の増殖を阻害することが出来る。

【0058】
本発明の核酸又は発現ベクター、或いは医薬組成物を適用する細胞(例、癌細胞、血管内皮細胞)は、ヒトYB-1を発現する細胞である。

【0059】
「腫瘍血管」とは、腫瘍組織内に存在する血管を意味する。「腫瘍新生血管」とは、腫瘍組織内に存在する血管であって、既存の血管系から分岐して新生することにより形成された血管を意味する。

【0060】
本発明の医薬組成物が適用可能な腫瘍の種類は、固形腫瘍である限り特に限定されない。腫瘍としては、例えば、膠芽腫、食道癌(好ましくは、食道扁平上皮癌)、胃癌(好ましくは、胃腺癌)、結腸癌(好ましくは、結腸腺癌)、肺癌(好ましくは非小細胞肺癌、更に好ましくは肺腺癌)、腎癌、甲状腺癌、耳下腺癌、頭頚部癌、骨・軟部肉腫、尿管癌、膀胱癌、子宮癌、肝癌、乳癌、卵巣癌、卵管癌等を挙げることが出来る。腫瘍は、好ましくは、膠芽腫、食道癌(好ましくは、食道扁平上皮癌)、胃癌(好ましくは、胃腺癌)、結腸癌(好ましくは、結腸腺癌)又は肺癌(好ましくは非小細胞肺癌、更に好ましくは肺腺癌)である。最も好ましくは、肺癌(好ましくは非小細胞肺癌、更に好ましくは肺腺癌)である。

【0061】
本明細書中で挙げられた特許及び特許出願明細書を含む全ての刊行物に記載された内容は、本明細書での引用により、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。

【0062】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0063】
[実施例1]
(材料及び方法)
YBX1アンチセンスDNAオリゴヌクレオチドのデザイン
YBX1mRNAのヌクレオチド配列に基づいて、25塩基の一本鎖DNAアンチセンスオリゴヌクレオチドを153種類作製した(表1-1~表1-6)。
【実施例】
【0064】
【表1-1】
JP0006752495B2_000002t.gif
【実施例】
【0065】
【表1-2】
JP0006752495B2_000003t.gif
【実施例】
【0066】
【表1-3】
JP0006752495B2_000004t.gif
【実施例】
【0067】
【表1-4】
JP0006752495B2_000005t.gif
【実施例】
【0068】
【表1-5】
JP0006752495B2_000006t.gif
【実施例】
【0069】
【表1-6】
JP0006752495B2_000007t.gif
【実施例】
【0070】
該153種類の一本鎖DNAアンチセンスオリゴヌクレオチドは、隣り合うDNAオリゴヌクレオチドが15塩基重複するように作製した(図1)。
【実施例】
【0071】
肺癌細胞PC9細胞を96ウエルプレートに1,000細胞ずつ播いた。24時間後、3ウエルに各DNAオリゴヌクレオチドをトランスフェクションした。各ウエルにYBX1アンチセンスDNAオリゴヌクレオチドを50 nM、トランスフェクション試薬(RNAiMAX)(Life Technologies)を0.4 μL、培地を120 μL加えた。72時間後にCell Counting Kit 8 (Dojindo, Tokyo, Japan)を10 μL加えWST8 アッセイを行った。コントロールDNAオリゴヌクレオチドの細胞生存率を1として、各YBX1アンチセンスDNAオリゴヌクレオチドの平均と標準偏差を数値化した。
【実施例】
【0072】
100,000個の上記PC9細胞を、50 mM Tris/HCl (pH 8.0) 、1 mM EDTA、120 mM NaCl、0.5% Nonidet P-40、及び1 mM PMSFを含むライシスバッファーで可溶化した。ライセートを、21,000 g、4℃にて10分間遠心分離し、上清(25μg)を10% (w/v) SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離し、PVDF微小多孔性膜(Millipore, Bedford, MA, U.S.A.)へトランスファーした。その膜を、抗YB-1抗体(Cancer Research 1999;59:342-346) 1:10,000又は抗βアクチン抗体(A5441, Sigma Aldrich, MO, USA) 1:10,000で1時間イムノブロットし、HRP結合抗ウサギIg抗体又は抗マウスIg抗体で40分間インキュベートした。増強されたケミルミネッセンス(Amersham, Piscataway, NJ, USA)を用いて検出を行った。タンパク質発現レベルは、Multi Gauge Version 3.0 (Fujifilm, Tokyo, Japan)を用いて数値的に評価された(図3)。
【実施例】
【0073】
結果
各YBX1アンチセンスDNAオリゴヌクレオチドに対する細胞生存率を表2に示す。4種類のYBX1アンチセンスDNAオリゴヌクレオチド(AS014、AS025、AS101、AS030)は、細胞生存率を1/3以下に低下させた(図2、表2)。図2、表2においては、コントロールオリゴヌクレオチド(Ctrl)を導入した場合の細胞生存率を1としている。
【実施例】
【0074】
【表2】
JP0006752495B2_000008t.gif
【実施例】
【0075】
4種類のYBX1アンチセンスDNAオリゴヌクレオチド(AS014、AS025、AS101、AS030)はYB-1の発現量を50%から20%に低下させた(図3)。
【実施例】
【0076】
考察
YB-1の発現量を抑制し、癌細胞の生存率を1/3以下に低下させるYBX1アンチセンスDNAオリゴヌクレオチドを4つ同定した。多くの癌細胞ではYB-1の発現が高く、正常細胞では発現が低いこと、YB-1の発現を抑制すると癌細胞の増殖が抑制され、その後細胞死が誘導されることから、これらのYBX1アンチセンスDNAオリゴヌクレオチドは、癌治療に有効であると考えられる。
【実施例】
【0077】
[実施例2]
2.1. YB-1のためのアンチセンス・オリゴヌクレオチド配列の準備
1561塩基長からなるYB-1 mRNA(NM_004559.3)は、NCBIデータベースより得た。アンチセンス効果が高い配列を同定するために、25塩基長のオリゴヌクレオチドを153種類(AS001-AS153)作製した。AS001の5’端を10塩基下流にずらした塩基がAS002の5’端になるように設計し、すべての配列は図5に示した。
【実施例】
【0078】
2.2. SPGと複合体形成
SPG(平均分子量、4.5×105)は、Mitsui Sugar Co., Ltd(Tokyo, Japan)より提供された。これは、他のDDS研究において使われるSPGと同じである。我々は、SPGと3’端に(dA)40を付加した、YB-1についてのホスホロチオネートAS-ODNsを使ってAS-ODNs/SPG複合体を調製した。AS-ODNsとAlexa546を付加したdA40ヌクレオチドを含むすべてのホスホロチオネート・オリゴヌクレオチドは、GeneDesignCo., Ltd(Osaka,Japan)で合成され、高性能液体クロマトグラフィーによって精製された。SPGは、三重らせん体を解離して単鎖にするために、0.25N NaOH(aq)の溶液に2-5日間浸した。SPG溶液、H2O内のAS-ODNsとリン酸緩衝生理食塩水(330 mMのNaH2PO4、pH4.7)を混合し、その後、混合液(60 μM AS-ODNs、pH7.4)を4℃で一晩保存した。
【実施例】
【0079】
2.3. 肺癌細胞株
以下の12の肺癌細胞株が使われた:B203L、PC9、A110L、A549、H1299、QG56、SQ1、B1203L、PC10、904L、PC1、A529L。これらの細胞の特徴は、既に報告されている。すべての細胞株はRPMI1640培養液で培養されて、37℃で5%のCO2環境で維持された。
【実施例】
【0080】
2.4. 水溶性のテトラゾリウム塩-8(WST-8)分析による細胞生存能力の評価
細胞生存能力分析は、過去の論文に記述されている。簡潔に記述すると、PC9細胞、(1×103)を96穴プレートにまいて、24時間後にAS-ODNsを0.4 μlのRNAiMaxを使って細胞に一過性に導入した。AS-ODNsの最終濃度は、培養液120 μl内で50 nMであった。AS-ODNs/SPG複合体に対しては、これらを直接培地に加えた。96hの後、生き残っている細胞は、メーカーの説明書に従って37℃で2-3時間かけてTetraColor ONEで染色され、450 nmの吸収度で測定された。
【実施例】
【0081】
2.5. FITC付加SPGとAlexa546付加dA40ヌクレオチド/SPG複合体の取り込み
細胞(2.5×104)を24穴プレートにまいて、5%のCO2の下で37℃で培養した。細胞は、10%FBSと100 U/mlペニシリン、0.1 mg/mlストレプトマイシンを含んでいるRPMI-1640で培養した。24時間後に、血清存在下に、0.1 μMのFITC付加SPG(FITC-SPG)又は0.5 μMのSPGとAlexa546付加dA40ヌクレオチドの複合体(A546-dA40/SPG)を細胞に添加した。8時間後、FITC-SPGで処理された細胞は、PBSで2回洗浄したあと、EVOS(登録商標)FL画像処理システムで観察された。競争分析では、蛍光を付けていない10 μMのdA40ヌクレオチドとSPGの複合体(dA40/SPG複合体で20倍過剰)を0.5 μMのA546-dA40/SPGと同時に投与した6時間後、細胞はPBSで2回洗浄したあと、EVOS(登録商標)FL画像処理システムで観察された。
【実施例】
【0082】
2.6. ウェスタンブロット解析
PC9細胞は10 mM Tris-HCl(pH7.9)、150 mM NaCl、0.5%NP40、1 mM PMSFからなる溶解バッファに懸濁されて、超音波破砕機で10秒間処理された。全細胞抽出物(2.5、5、10 μg)は、10%のSDS-PAGEゲルで分離され、PVDF膜に転写された。転写膜は1:10,000に希釈された抗YB-1抗体及び1:10,000に希釈された抗β-アクチン抗体(A5441;シグマアルドリッチ)で1時間免疫ブロットされた。次に、HRP抱合型抗ウサギIgG又は抗マウスIgGで40分間処理された。シグナルは、化学ルミネセンス(GE healthcare, Tokyo, Japan)で検出し、発現量の解析は、Multi Gauge Version 3.0 (Fujifilm, Tokyo, Japan)で行った。
【実施例】
【0083】
結果と考察
3.1. アンチセンス配列の選択
PC9細胞にトランスフェクションしたすべてのAS-ODNsの細胞生存能力に対する効果を図6に示す。これは、細胞生存能力を評価するin vitroのスクリーンである。我々は細胞への導入にRNAiMax試薬(Lipofectamineトランスフェクション試薬)を使った。RNAiMax試薬は、陽イオン・リポソーム製剤であり、負に荷電するDNA又はsiRNAと複合体を形成する。そのような複合体は、結合したDNA又はsiRNAを細胞質内へ侵入させることができる。YB-1は、PC9細胞で過剰発現しており、細胞生存能力の低下は、AS-ODNsによるYB-1サイレンシングが原因と考えられる。さらに、各々細胞生存能力の違いは、個々のAS-ODNsのサイレンシング効果と関連している。最も効果的な5つのシーケンスは矢印で示した。AS101以外の4種類のAS-ODNs(AS010、AS014、AS025とAS030)は細胞生存率を3分の1以下に低下させ、開始コドンの近くにあった(図7;位置をAS014、AS025、AS030、AS101について示す)。
【実施例】
【0084】
RNaseH1のアンチセンスDNA/mRNAデュプレックスへの動員は、タンパク質サイレンシングの鍵となるステップであると広く考えられている。アンチセンスDNAの結合を容易にするためには、mRNAの結合部位は単鎖であること、結合部位は外側を向いていることが求められるが、そのような部位はmRNA上にほとんどない。YB-1 mRNAのバルジループ構造は、UNAfoldを使って推定された。結果を図7に示す。4つのAS-ODNsの結合部位を実線で示した。すべてのAS-ODNs結合部位は、ループ構造を含んでいる。したがって、これらのループは、YB-1サイレンシングに対して重要であると考えられる。したがって、DNA鎖とmRNA鎖が結合した二本鎖にRNaseH1が動員され、mRNAを切断することが予想される。
【実施例】
【0085】
細胞生存能力を強く抑制した5つのAS-ODNsに対するYB-1の発現抑制効果を比較検討した。ウェスタンブロット解析の結果を図8Aに示す。4つのAS-ODNs(AS10、AS14、AS25とAS30)は、コントロールの50%以下まで、YB-1の発現を減少させた(図8B)。これらの結果から細胞生存能力の低下はトランスフェクションによるYB-1サイレンシングが原因であると確証できる。ウェスタンブロット解析結果から、AS-ODNsの中でもAS014とAS025が非常に効率的にYB-1の発現を抑制することを示している。AS014が開始コドン領域に最も近く、両方の分析においてかなり良い効果を示したので、この後の解析ではAS014を使った。
【実施例】
【0086】
3.2. SPGと複合体を形成したAS-ODNの標的への送達
SPGは、poly(C)やploy(dA)などの特定のホモ・ヌクレオチドと化学量論的複合体を形成する。複合体形成は、水素結合と疎水的相互作用の組合せを介して行われる。我々の先行研究に基づいて、効果的な遺伝子サイレンシングをもたらすため、dA40をAS-ODNに付加してSPGと複合化した。dAを付加する位置がAS-ODNsの3’末端の場合、ホスホロチオネートの連鎖はリン酸ジエステルのものより安定複合体を形成する。したがって、我々は、SPGで複合体を形成するために、ホスホロチオネートdA40をAS014の3’末端に付加した。正確な化学量論的構成は、[mG]:[dA]=2:1(mGが主鎖ブドウ糖)である。しかし、実際には、SPGをそれより多くした比率構成で複合体を調製している。今回の分析で使用したAS014-dA40/SPG複合体は、[mG]:[dA]=4:1で調製した。このとき、AS014-dA40のみのシグナルは、ゲル電気泳動(図9)で観察されなかった。
【実施例】
【0087】
我々は、複合体が免疫細胞に発現しているDectin-1によって取り込まれることを以前報告した。最近、水晶振動子マイクロバランスを用いてマウスDectin-1の細胞外領域のタンパク質とSPG/DNA複合体の間で結合親和性解析を行った。ホスホロチオネートdA40は、リン酸ジエステルと比較して劇的にDectin-1との結合親和性を増強した。また、3'末端のエクソン内にあるTrp221とHis223残基をアラニンに置換したDectin-1変異体は異なった結合親和性を示した。SPGと同じ部位及びリン酸アニオン特異的静電相互作用が主に関与していた追加の部位により複数の結合部位があるように思われた。ホスホロチオネートDNA/SPG複合体の増強された親和性は、この実験での使用を促すもう一つの理由である。
【実施例】
【0088】
図10に、0.4又は1.0 μMのAS014/SPG複合体をいろいろな肺癌細胞に処理して細胞生存率を評価した結果を示す。小細胞肺癌から非小細胞肺癌まで、200以上の既知の肺癌細胞株があり、他の共通の上皮癌の数を超えている。我々は、それらの中で利用できる12種類の肺癌細胞株を選んだ。AS014/SPG複合体の投与による細胞生存能力率の低下は不定であった。これらすべての細胞はYB-1を高発現しており今回の研究でも再検した(データ非表示)。細胞生存能力の低下は、細胞内に取り込まれ、YB-1に結合したAS014分子の数に起因している。しかし、細胞生存能力が低下した細胞がDectin-1を発現しているか不明である。この問題は、現在解析を進めている。細胞生存能力が最も大きく低下した細胞は、B203L細胞、PC9細胞、B1203L細胞とPC10細胞であった(図10A)。AS014/SPG複合体は、PC9細胞でYB-1の発現を約40%減少させたが、A549細胞では減少しなった(図10B)。この結果は、細胞生存能力評価(図10A)と一致している。我々はAS014/SPG複合体で細胞生存能力が低下したB203L細胞とPC9細胞、及び低下しなかったA549細胞とPC1細胞にFITCを付加したSPGを添加して蛍光顕微鏡観察を行った。SPGはB203L細胞とPC9細胞に積極的に取り込まれたが、A549細胞又はPC1細胞では取り込まれなかった(図11A)。これらの結果は細胞生存能力の結果と合致している。即ち、細胞株の違いによるアンチセンスDNAの効果の差は、細胞株の違いによるアンチセンスDNA/SPG複合体の取り込みの差が反映されているといえる。さらに、A546-dA40/SPGもPC9細胞に取り込まれることを観察した(図11B)。この取り込みは、非蛍光dA40/SPG複合体の投与によって、部分的に廃止された(図11C)。前述のように、これらの細胞におけるDectin-1の発現は現在解析中である。Dectin-1の発現は未解決であるが、B203L細胞とPC9細胞はAS014を取り込むと結論づけることは可能である。すなわち、Dectin-1がAS014/SPG複合体の認識を容易にしている。さらにまた、これらの結果はAS014がYB-1の発現を抑制し、その結果、細胞生存能力が低下したことを示唆している。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明により、YB-1の発現を特異的且つ効果的に抑制できる核酸、及び該核酸を含む医薬組成物が提供される。YB-1発現の抑制によって癌細胞死を誘導することができるので、本発明の医薬組成物は癌細胞死誘導用、ひいては癌の治療・予防用として有用である。また、YB-1は腫瘍新生血管の血管内皮細胞に特異的に発現し、正常組織や炎症組織の血管内皮細胞には全く又は殆ど発現しないので、本発明の医薬組成物は、血管新生阻害用、特に腫瘍組織における血管新生の選択的な阻害用に有用である。また、YB-1は、腫瘍細胞の薬剤耐性や増殖に関連することが知られているので、本発明の血管新生阻害剤は、結果として腫瘍細胞と腫瘍血管血管内皮細胞の双方を同時に増殖抑制することが可能であり、優れた抗腫瘍薬として有用である。
【0090】
本発明は、2015年4月1日出願の日本国特許出願、特願2015-075292を基礎としており、その内容は全て本明細書に包含される。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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