TOP > 国内特許検索 > ナノ粒子の製造方法 > 明細書

明細書 :ナノ粒子の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6762520号 (P6762520)
公開番号 特開2016-204746 (P2016-204746A)
登録日 令和2年9月11日(2020.9.11)
発行日 令和2年9月30日(2020.9.30)
公開日 平成28年12月8日(2016.12.8)
発明の名称または考案の名称 ナノ粒子の製造方法
国際特許分類 B22F   9/14        (2006.01)
B22F   9/00        (2006.01)
B22F   1/00        (2006.01)
B82Y  40/00        (2011.01)
FI B22F 9/14 Z
B22F 9/00 B
B22F 1/00 Z
B22F 1/00 W
B22F 9/14 A
B22F 1/00 C
B22F 1/00 K
B82Y 40/00
請求項の数または発明の数 9
全頁数 32
出願番号 特願2016-000646 (P2016-000646)
出願日 平成28年1月5日(2016.1.5)
優先権出願番号 2015085323
優先日 平成27年4月17日(2015.4.17)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成30年11月20日(2018.11.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
発明者または考案者 【氏名】真下 茂
個別代理人の代理人 【識別番号】110001357、【氏名又は名称】特許業務法人つばさ国際特許事務所
審査官 【審査官】池田 安希子
参考文献・文献 特表2012-515084(JP,A)
特開平11-104486(JP,A)
特開2014-101530(JP,A)
特開平05-209209(JP,A)
国際公開第99/046423(WO,A1)
特開2010-110794(JP,A)
調査した分野 B22F 9/14
B22F 1/00
B22F 9/00
B82Y 40/00
JSTPlus(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
液体材料に浸した2つの電極間で液中繰り返しパルス放電を行うことによりナノ粒子を形成する製造方法であって、
各前記電極は、少なくとも1成分が貴金属元素である2成分以上の元素からなる合金材料もしくは混合材料によって構成されており、
各前記電極を構成する、少なくとも1成分が貴金属元素である2成分以上の前記元素がナノスケールで混ざった合金もしくは化合物の前記ナノ粒子を形成し、
各前記電極に含まれる前記合金材料もしくは前記混合材料は、PdおよびRuによって構成されている
ナノ粒子の製造方法。
【請求項2】
液体材料に浸した2つの電極間で液中繰り返しパルス放電を行うことによりナノ粒子を形成する製造方法であって、
各前記電極は、少なくとも1成分が貴金属元素である2成分以上の元素からなる合金材料もしくは混合材料によって構成されており、
各前記電極を構成する、少なくとも1成分が貴金属元素である2成分以上の前記元素がナノスケールで混ざった合金もしくは化合物の前記ナノ粒子を形成し、
各前記電極に含まれる前記合金材料もしくは前記混合材料は、Pt、PdおよびRhによって構成されている
ナノ粒子の製造方法。
【請求項3】
液体材料に浸した2つの電極間で液中繰り返しパルス放電を行うことによりナノ粒子を形成する製造方法であって、
各前記電極は、少なくとも1成分が貴金属元素である2成分以上の元素からなる合金材料もしくは混合材料によって構成されており、
各前記電極を構成する、少なくとも1成分が貴金属元素である2成分以上の前記元素がナノスケールで混ざった合金もしくは化合物の前記ナノ粒子を形成し、
各前記電極に含まれる前記合金材料もしくは前記混合材料は、FeおよびPtによって構成されている
ナノ粒子の製造方法。
【請求項4】
液体材料に浸した2つの電極間で液中繰り返しパルス放電を行うことによりナノ粒子を形成する製造方法であって、
各前記電極は、少なくとも1成分が貴金属元素である2成分以上の元素からなる合金材料もしくは混合材料によって構成されており、
各前記電極を構成する、少なくとも1成分が貴金属元素である2成分以上の前記元素がナノスケールで混ざった合金もしくは化合物の前記ナノ粒子を形成し、
各前記電極に含まれる前記合金材料もしくは前記混合材料は、AgおよびCuによって構成されている
ナノ粒子の製造方法。
【請求項5】
液体材料に浸した2つの電極間で液中繰り返しパルス放電を行うことによりナノ粒子を形成する製造方法であって、
各前記電極は、少なくとも1成分が貴金属元素である2成分以上の元素からなる合金材料もしくは混合材料によって構成されており、
各前記電極を構成する、少なくとも1成分が貴金属元素である2成分以上の前記元素がナノスケールで混ざった合金もしくは化合物の前記ナノ粒子を形成し、
各前記電極に含まれる前記合金材料もしくは前記混合材料は、貴金属材料と、第一遷移金属材料、第二遷移金属材料および第三遷移金属材料のうち少なくとも1つとによって構成されている
ナノ粒子の製造方法。
【請求項6】
液体材料に浸した2つの電極間で液中繰り返しパルス放電を行うことによりナノ粒子を形成する製造方法であって、
各前記電極は、2成分以上の元素からなる合金材料もしくは混合材料によって構成されており、
各前記電極を構成する2成分以上の前記元素がナノスケールで混ざった合金もしくは化合物の前記ナノ粒子を形成し、
各前記電極を構成する2成分以上の前記元素を含む合金もしくは化合物の固溶体の前記ナノ粒子を形成する
ナノ粒子の製造方法。
【請求項7】
液体材料に浸した2つの電極間で液中繰り返しパルス放電を行うことによりナノ粒子を形成する製造方法であって、
各前記電極は、2成分以上の元素からなる合金材料もしくは混合材料によって構成されており、
各前記電極を構成する2成分以上の前記元素がナノスケールで混ざった合金もしくは化合物の前記ナノ粒子を形成し、
各前記電極に含まれる前記合金材料もしくは前記混合材料は、状態図において常温で分離系の合金もしくは化合物、または、状態図において常温で部分的に分離系の合金もしくは化合物である
ナノ粒子の製造方法。
【請求項8】
液体材料に浸した2つの電極間で液中繰り返しパルス放電を行うことによりナノ粒子を形成する製造方法であって、
各前記電極は、2成分以上の元素からなる合金材料もしくは混合材料によって構成されており、
各前記電極を構成する2成分以上の前記元素がナノスケールで混ざった合金もしくは化合物の前記ナノ粒子を形成し、
各前記電極に含まれる前記合金材料もしくは前記混合材料は、状態図において常温で規則合金系の材料、状態図において常温で金属間化合物系の材料、状態図において常温で固溶体の合金もしくは化合物、または、状態図において常温で部分的に固溶体の合金もしくは化合物である
ナノ粒子の製造方法。
【請求項9】
液体材料に浸した2つの電極間で液中繰り返しパルス放電を行うことによりナノ粒子を形成する製造方法であって、
各前記電極は、2成分以上の元素からなる合金材料もしくは混合材料によって構成されており、
各前記電極を構成する2成分以上の前記元素がナノスケールで混ざった合金もしくは化合物の前記ナノ粒子を形成し、
各前記電極に含まれる前記合金材料もしくは前記混合材料は、状態図において常温でL10型磁性規則合金となり得る2成分以上の材料である
ナノ粒子の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本技術は、液中繰り返しパルス放電により形成された、2成分以上の元素材料を含む合金もしくは化合物のナノ粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属や半導体、化合物のナノ粒子は、触媒、光触媒、磁性材料、電池材料、光電材料、医療材料として、環境、IT、印刷、医療などさまざまな分野で産業化が進められている材料である。金属ナノ粒子は、バルク体、粉体に比べて、表面積、反応性、触媒特性、磁性などに優れている。2成分以上の元素材料を含む金属や半導体、化合物のナノ粒子は単元素からなるナノ粒子と同等又はそれ以上の有用な性質を表すことが期待される。特に、貴金属類は希少かつ高価であるが、触媒や電子材料、医療材料分野で他に替わることができない性質を持つので、その合金系で有用なナノ結晶が製造できれば、付加価値の高いナノ粒子の実用化に繋がる。合金系とは、例えば、固溶体や、分離系、共晶、金属間化合物、規則合金などを含む概念である。固溶体とは、複数の元素が1種類の結晶の中に混在するものを指す。共晶とは、2種類以上の結晶に分離した状態のものを指す。金属間化合物とは、元の金属とは全く異なる結晶構造を持ち、簡単な整数比の組成を持つものである。
【0003】
貴金属元素に分類される金 (Au)、銀 (Ag)、白金 (Pt)、パラジウム (Pd)、ロジウム (Rh)、イリジウム (Ir)、ルテニウム (Ru)、オスミウム (Os)などは触媒として広く利用されている。特に、排ガス触媒としてはPt、PdおよびRuが用いられ、排ガス触媒、燃料電池触媒としてはPtやその合金が用いられ、合成化学では水素反応、酸化反応でもPt、Pd、Rh、Ruなどが用いられる。特にd,fバンドにフェルミレベルが存在するRh、Pt、Irなどが注目されている。しかしながら、例えばNO触媒などに使われるRhは他の貴金属に比べて突出して手に入れることが難しくなっている。従って、これらの貴金属元素からなる合金系の触媒の合成が重要になっている。もし、単体にはない電子構造を持つ固溶体合金で任意の組成を持つナ粒子を合成することができれば高性能で低コストな触媒を開発できる可能性がある。このような観点から、最近、液相還元法によるPd-Ru、Rh-Ag系固溶体ナノ粒子の合成が注目されている。
【0004】
2000年にIBM社が化学反応による合成を発表して以来、L10型強磁性規則合金ナノ粒子は、世界中の研究者に次世代の磁気記録媒体として期待され、様々な開発研究が行われている。ナノ粒子1個を記録に使うことで、テラビットすなわち現在の3桁の容量アップが可能であり、実用化によりこの分野に革新がもたらされると言われている。特に、L10型規則合金のFePtナノ磁性粒子は高価なPtを含むが、107J/m3オーダーの高い磁気異方定数と、化学的不活性、高延性を有し、ミクロ電子・機械システム、腐食性環境における次世代の磁気記録媒体、歯治療用材料などとして期待されている。これまでに化学合成法、真空蒸着法、気相蒸着法、物理蒸着法や溶液法などの方法を用いたナノ磁性粒子の合成が試みられている。しかしながら、すぐれた磁気特性、耐酸性を持つもので、よく分散した均一組成・均一粒子サイズのナノ磁性粒子の製造技術は確立されていない。特にCVD、PVDなどでは、凝集体が生成し、その抑制が困難である。
【0005】
ナノ粒子を作製する従来の技術としては、化学合成法、レーザー蒸発法、アーク放電法、イオン注入法、プラズマ照射法、アトマイズ法、ゾルゲル、射出、メカニカルミルイング、CVD、PVDなどが用いられている。しかし、これらの方法では、ナノ粒子が凝集し易い欠点があった。この問題に対しては、例えば、特許文献1に記載されているような液中放電を用いることが考えられる。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】WO2010/027098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の方法は固溶体の均一性や有機物を出発原料にするために保護材を省く必要があるなどの問題あり、反応の均一性が求められる。また、固溶系であっても酸化還元電位の異なる系では固溶体を形成しにくくなり、特に貴金属-遷移元素系では難しい。また、ナノ粒子ではよく分散した均一組成・均一粒子サイズのナノ粒子が求められるが、アーク放電法、蒸着法(CVD、PVD)などでは凝集体が生成し、その抑制が困難である。以上のことから、合成の容易な2成分以上の元素材料を含む合金もしくは化合物のナノ粒子だけでなく、合成の容易ではない2成分以上の元素材料を含む合金もしくは化合物のナノ粒子についても、製造の可能な方法が求められている。
【0008】
本技術は、合成の容易な2成分以上の元素材料を含む合金もしくは化合物のナノ粒子だけでなく、合成の容易ではない2成分以上の元素材料を含む合金もしくは化合物のナノ粒子についても、製造することの可能なナノ粒子の製造方法、ならびにその製造方法によって製造されたナノ粒子およびナノ粒子溶液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本技術の第1の実施の形態に係るナノ粒子の製造方法は、液体材料に浸した2つの電極間で液中繰り返しパルス放電を行うことによりナノ粒子を形成する製造方法である。この製造方法において、各電極は、少なくとも1成分が貴金属元素である2成分以上の元素からなる合金材料もしくは混合材料によって構成されており、各電極を構成する、少なくとも1成分が貴金属元素である2成分以上の元素がナノスケールで混ざった合金もしくは化合物のナノ粒子を形成する。
【0011】
本技術の第1の実施の形態に係るナノ粒子の製造方法において、各電極に含まれる合金材料もしくは混合材料は、例えば、状態図において常温で分離系の合金、共晶からなる合金、状態図において常温で規則合金系の材料、状態図において常温で金属間化合物系の材料、または、状態図において常温で固溶体の材料である。また、本技術の第1の実施の形態に係るナノ粒子の製造方法において、ナノ粒子全体が均一な完全固溶体となっていない(つまり、不完全な固溶体となっている)場合もある。この場合、1つのナノ粒子において、ナノレベルの粒子が混在した状態となっている。
【0012】
本技術の第1の実施の形態に係るナノ粒子およびその製造方法において、各電極に含まれる合金材料もしくは混合材料は、例えば、Au、Ag、Pt、Pd、Rh、Ir、RuおよびOsのうち、少なくとも2種類以上の合金系の材料である。また、各電極に含まれる合金材料もしくは混合材料は、例えば、PdおよびRuである。また、各電極に含まれる合金材料もしくは混合材料は、例えば、Pt、PdおよびRhである。また、各電極に含まれる合金材料もしくは混合材料は、例えば、FeおよびPtである。また、各電極に含まれる合金材料もしくは混合材料は、例えば、AgおよびCuである。また、各電極に含まれる合金材料もしくは混合材料は、例えば、貴金属材料および第一遷移金属材料である。また、各電極に含まれる合金材料もしくは混合材料は、例えば、Au、Ag、Pt、Pd、Rh、Ir、RuおよびOsのうち少なくとも1種類の元素と、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、NiおよびCuのうち少なくとも1種類の元素との合金系の材料である。また、各電極に含まれる合金材料もしくは混合材料は、例えば、貴金属材料と、第二遷移金属材料もしくは第三遷移金属材料とによって構成されている。
【0013】
本技術の第2の実施の形態に係るナノ粒子の製造方法は、液体材料に浸した2つの電極間で液中繰り返しパルス放電を行うことによりナノ粒子を形成する製造方法である。この製造方法において、各電極は、2成分以上の元素からなる合金材料もしくは混合材料によって構成されており、各電極を構成する2成分以上の元素がナノスケールで混ざった合金もしくは化合物のナノ粒子を形成する。
【0015】
本技術の第2の実施の形態に係るナノ粒子の製造方法において、各電極を構成する、2成分以上の元素からなる合金材料もしくは混合材料は、例えば、状態図において常温で分離系の合金、共晶からなる合金、状態図において常温で規則合金系の材料、状態図において常温で金属間化合物系の材料、または、状態図において常温で固溶体の材料である。また、本技術の第2の実施の形態に係るナノ粒子の製造方法において、ナノ粒子全体が均一な完全固溶体となっていない(つまり、不完全な固溶体となっている)場合もある。この場合、1つのナノ粒子において、ナノレベルの粒子が混在した状態となっている。
【0016】
本技術の第1および第2の実施の形態に係るナノ粒子の製造方法では、2成分以上の元素からなる合金材料もしくは混合材料によって構成された2つの電極間で液中繰り返しパルス放電が行われる。これにより、液中繰り返しパルス放電により、瞬間的に電極材料が蒸発し、短時間のイオン化(プラズマ)状態になり、冷却の際に各元素が凝集し、そのまま常温でナノ粒子が合成される。このとき、電極内で各元素が近くに存在するので、各元素がプラズマ化した時に、異なる元素イオン同士が結合しやすくなる。その結果、短時間のプラズマ状態と、周囲の液体材料による急冷効果も加わって、2成分以上の元素材料を含むナノ粒子を合成することができる。また、この製造方法では、2成分以上の混合材料もしくは合金材料に任意の材料を加えたものを電極材料として用いることができる。また、液体を構成する材料もイオン化され、その材料も冷却の際に電極材料とともに凝集し、そのまま常温で、その材料を含むナノ粒子が合成される場合もある。液体が水、窒素、アンモニアなどの窒素化合物、イオウなどのカルコゲナイド化合物、ハロゲン元素、ハロゲン化合物、またはアルコールの場合、酸化物、窒化物、硫化物、カルコゲナイド化合物、ハロゲン化物、または炭化物のナノ粒子や被膜型ナノ粒子が合成される。従って、多元系で様々な組成のナノ粒子を形成することができる。また、この製造方法では、電極の材料と同一組成の材料によってナノ粒子を形成することができる。また、この製造方法では、電極の材料と同一組成比の材料によってナノ粒子を形成することもできる。従って、電極の材料を変えることにより、任意のナノ粒子を形成することが可能である。なお、製造誤差などの要因により、ナノ粒子の組成比が電極の材料の組成比からわずかにずれる場合もある。また、この製造方法では、放電面積を大きくするだけで、生産量を大きくすることができる。放電面積の増大に技術上の制約は無い。従って、この製造方法は、ナノ粒子の量産に向いている。
【0017】
また、上記技術において得られたナノ粒子をアニールしてもよい。このようにした場合には、ナノ粒子に含まれる元素の規則性が向上したり、ナノ粒子に含まれる規則合金の結晶構造が変化したりする。
【発明の効果】
【0018】
本技術の第1および第2の実施の形態に係るナノ粒子の製造方法によれば、2成分以上の元素からなる合金材料もしくは混合材料によって構成された2つの電極間で液中繰り返しパルス放電を行うようにしたので、非平衡な反応場が生まれ、合成の容易な2成分以上の元素材料を含む合金もしくは化合物のナノ粒子だけでなく、合成の容易ではない2成分以上の元素材料を含む合金もしくは化合物のナノ粒子についても、製造することができる。

【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本技術の一実施の形態に係るナノ粒子の製造方法に用いられるナノ粒子製造装置の概略構成の一例を表す図である。
【図2】電極のEPMA写真である。
【図3】電源から出力されるパルス電流の波形の一例を表す図である。
【図4A】浮遊層から得られたナノ粒子のXRDパターン測定を実施した結果である。
【図4B】沈殿層から得られたナノ粒子のXRDパターン測定を実施した結果である。
【図4C】パラジウム単体のXRDパターン測定を実施した結果である。
【図4D】ルテニウム単体のXRDパターン測定を実施した結果である。
【図5A】浮遊層から得られたナノ粒子のTEM写真である。
【図5B】沈殿層から得られたナノ粒子のTEM写真である。
【図5C】浮遊層から得られたナノ粒子のHRTEM写真である。
【図5D】沈殿層から得られたナノ粒子のHRTEM写真である。
【図6A】浮遊層から得られた1粒のナノ粒子のEDX解析結果である。
【図6B】沈殿層から得られた1粒のナノ粒子のEDX解析結果である。
【図7A】浮遊層から得られたナノ粒子のTEM写真である。
【図7B】浮遊層から得られたナノ粒子のEDX解析結果である。
【図8A】浮遊層および沈殿層から得られたナノ粒子内のパラジウムのXPS測定結果である。
【図8B】浮遊層および沈殿層から得られたナノ粒子内のルテニウムのXPS測定結果である。
【図9A】浮遊層から得られたナノ粒子のXRDパターン測定を実施した結果である。
【図9B】沈殿層から得られたナノ粒子のXRDパターン測定を実施した結果である。
【図10A】浮遊層から得られたナノ粒子のXRDパターン測定を実施した結果である。
【図10B】沈殿層から得られたナノ粒子のXRDパターン測定を実施した結果である。
【図11A】浮遊層から得られたナノ粒子のXRDパターン測定を実施した結果である。
【図11B】沈殿層から得られたナノ粒子のXRDパターン測定を実施した結果である。
【図12A】浮遊層から得られたナノ粒子のXRDパターン測定を実施した結果である。
【図12B】沈殿層から得られたナノ粒子のXRDパターン測定を実施した結果である。
【図13A】浮遊層から得られたナノ粒子のHRTEM写真である。
【図13B】浮遊層から得られた1粒のナノ粒子の径2nm以下の丸領域のEDX解析結果である。
【図14A】沈殿層から得られたナノ粒子のHRTEM写真である。
【図14B】沈殿層から得られた1粒のナノ粒子の径2nm以下の丸領域のEDX解析結果である。
【図15A】浮遊層から得られたナノ粒子のHRTEM写真である。
【図15B】浮遊層から得られた1粒のナノ粒子の径2nm以下の丸領域のEDX解析結果である。
【図16A】沈殿層から得られたナノ粒子のHRTEM写真である。
【図16B】沈殿層から得られた1粒のナノ粒子の径2nm以下の丸領域のEDX解析結果である。
【図17】第3の実験後の液体材料に対し、XRD装置を用いてXRDパターン測定を実施した結果である。
【図18】実施例1の液体材料から取り出したナノ粒子のHRTEM写真である。
【図19】図19の写真を拡大したものである。
【図20】実施例1の液体材料から取り出したナノ粒子のEDS分析結果である。
【図21】電源から出力されるパルス電流の波形の一例を表す図である。
【図22】第4の実験後の液体材料に対してアニールを行った後のXRDパターン測定を実施した結果である。
【図23】実施例3,4の液体材料から取り出したナノ粒子のHRTEM写真である。
【図24A】実施例3,4の液体材料から取り出したナノ粒子のEDS分析結果である。
【図24B】実施例3,4の液体材料から取り出したナノ粒子のEDS分析結果である。
【図25】白金-鉄合金のナノ粒子の磁化曲線である。
【図26】第5の実験後の液体材料に対してアニールを行った後のXRDパターン測定を実施した結果である。
【図27】白金-鉄合金のナノ粒子の磁化曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本技術を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。

1.実施の形態
2.変形例
3.実施例


【0021】
<1.実施の形態>
図1は、本技術の一実施の形態に係るナノ粒子の製造方法に用いられるナノ粒子製造装置1の概略構成の一例を表したものである。ナノ粒子製造装置1は、例えば、電源装置10、一対の電極20、容器30、液体材料40および振動装置50を備えている。なお、振動装置50については、省略することも可能である。

【0022】
電源装置10は、特に制限されるものではない。電源装置10は、例えば、20Vから500Vの範囲の電圧を出力可能となっている。安全性や、特殊な装置の必要性を考慮して、電源装置10は、例えば、10Vから500Vの範囲で使用され、好ましくは、例えば、30Vから400Vの範囲で使用され、より好ましくは、例えば、50Vから300Vの範囲で使用される。電源装置10は、例えば、0.1から20Aの範囲の電流を出力可能となっている。エネルギー効率を考慮して、電源装置10は、例えば、時間平均で、0.1から10Aの範囲で使用される。このときの電流ピーク値は、例えば、数10A、または、数100Aである。電源装置10は、例えば、50Hz~10kHzの周波数でパルス電流を出力する。また、電源装置10は、パルス電流を出力する際に、パルス電流の立ち上がり期間を、例えば、0.1~数マイクロ秒とする。パルス電流の継続時間は、出力電圧や、パルス電流の電流値によって異なる。電源装置10は、例えば、1から50マイクロ秒のパルス電流を、繰り返し継続して出力する。放電の効率を考慮して、電源装置10は、例えば、2から30マイクロ秒のパルス電流を、繰り返し継続して出力する。

【0023】
容器30は、液体材料40を収容するものである。振動装置50は、電極20に振動を与えるものである。電極20に振動を与えることで、電極20表面に生成される析出物の電極20表面での滞留をなくすことができ、放電を効率的に行うことができる。振動装置50は、電極20に定期的に振動を与えてもよいし、間欠的に振動を与えてもよい。また、常に電極20付近の状態を初期状態に保ち、冷却を効率的に行うために、ナノ粒子製造装置1は、液体材料40を撹拌したり、液体材料40に流れを起こしたりする機構を備えていてもよい。

【0024】
液体材料40は、一対の電極20を用いて後述の液中パルス放電を行うためのものであり、さらに、液中パルス放電による生成物を一時的に貯蔵するためのものである。液体材料40の量は、特に制限されるものではなく、一対の電極20の少なくとも一部が液体材料40中に存在できる程度の量であればよい。液体材料40の量は、後述の液中パルス放電により液体材料40が飛散しない程度の量であればよく、また、液中パルス放電による生成物の濃度によって液体材料40の拡散性が失われない程度の量であればよい。放電時の液体材料40の温度は、特に制限されるものではなく、使用する液体材料40の種類にも依存することは言うまでもない。放電は、通常、室温~300℃の範囲で実施される。ただし、液体材料40の温度が高すぎる場合、液体材料40の蒸気圧が上がり、液体材料40が引火性の液体であるときには放電による引火の可能性がある。他方、液体材料40の温度が低すぎる場合、液体材料40の粘度が上がり、液中パルス放電による生成物の拡散性が損なわれる可能性がある。従って、液体材料40を、これらを考慮した温度にしておくことが好ましい。

【0025】
液体材料40は、特に限定されるものではなく、目的物の生成反応に影響を与えないものであれば、特に制限されない。液体材料40は、2種以上の化合物の混合物でもよい。液体40は、例えば、飽和炭化水素(例えば、ヘキサン、オクタン、デカ ン、シクロヘキサン、シクロオクタンなど)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレンなど)、水、過酸化水素、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、 ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4?ブタンジオールなど)、窒素、アンモニア、油、シリコーン、イオン液体、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、フタル酸ジメチルなど)、または、エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコールなど)である。液体40は、生成する炭素生成物の分散、引火、酸化性を考慮すると、 水、飽和炭化水素、芳香族炭化水素、またはアルコール類であることが好ましく、メタノール、またはエタノールであることがより好ましい。また、高温下で合成を行ったり、引き続いてアニールを行う場合は、液体材料40として、高温で安定な油、シリコーン、または、イオン液体などを用いてもよい。

【0026】
本方法では、電極20を構成する2成分以上の元素と、液体材料40を構成する元素とからなる合金もしくは化合物のナノ粒子を合成できる。この場合、液体材料40も構成物質とした合金ナノ粒子や、酸化物、窒化物、硫化物、カルコゲナイド化合物、炭化物、塩化物、ハロゲン化合物などの化合物のナノ粒子を合成できる。酸化物のナノ粒子を合成する場合は、液体材料40として、例えば、水や過酸化水素水などを用いる。窒化物のナノ粒子を合成する場合は、液体材料40として、例えば、液体窒素や、アンモニアなどの窒素化合物を用いる。硫化物のナノ粒子を合成する場合は、液体材料40として、例えば、溶融イオウを用いる。他のカルコゲナイドナノ粒子を合成する場合は、液体材料40として、例えば、溶融セレニウムやテルルなどのカルコゲナイド化合物を用いる。炭化物のナノ粒子や炭素被膜型ナノ粒子を合成する場合は、液体材料40として、例えば、アルコール類や炭化水素などを用いる。ハロゲン化合物のナノ粒子を合成する場合は、液体材料40として、例えば、臭素、シュウ酸、フッ酸、塩酸、ヨウ素、ハロゲン元素、またはハロゲン化合物などを用いる。液体材料40として、アルカリ元素化合物の塩、または、アルカリ元素化合物を含む酸もしくは塩などを用いることも考えられる。液体材料40として、アルカリ土類化合物の塩、または、アルカリ土類化合物を含む酸などを用いることも考えられる。

【0027】
また、本方法では、上記化合物のナノ粒子を作るだけでなく、ナノ粒子に、液体材料40に含まれる元素(例えば、酸素、窒素、硫黄、セレン、炭素、臭素、フッ素、塩素、または、ヨウ素)をドープすることもできる。また、Na、Mg、K、Caなどのアルカリ金属、アルカリ土金属、他の金属元素もドープすることができる。

【0028】
一対の電極20は、液体材料40中(液中)で繰り返しパルス放電を起こすためのものである。各電極20は、例えば、棒状または針金状となっている。例えば、各電極20の一端が液体材料40に浸っており、各電極20の他端が液体材料40に浸らず、大気中に配置されている。各電極20のうち、液体材料40に浸っている方の端部20Aは、所定の間隙を介して互いに対向配置されている。2本の電極20間に高い電位差が生じると、端部20A同士の間に液中放電が生じる。2本の電極20間に経時的にパルス状の電位差が生じると、端部20A同士の間に液中繰り返しパルス放電が生じる。パルス放電の周波数が50Hz~10kHzとなっている場合、放電の生じている領域の温度は、1000~50000Kとなる。従って、溶融しにくい金属を融かしたり、気化、イオン化(プラズマ化)させたりすることが可能である。また、液中繰り返しパルス放電は、スパーク放電であることから、放電が間欠であり、放電の生じている領域がシャープで局地的である。従って、放電による高温高圧が狭い範囲で集中し、数時間の放電を続けても液体材料40の温度はあまり上昇しない。

【0029】
各電極20は、上記以外の形状となっていてもよく、例えば、板状となっていてもよい。また、双方の電極20の大きさが、互いに等しくなっていてもよいし、互いに異なっていてもよい。また、各電極20が、互いに同じ材料で構成されていてもよいし、互いに異なる材料で構成されていてもよい。

【0030】
合金系のナノ粒子を合成する場合、各電極20は、2成分以上の元素からなる合金材料もしくは混合材料によって構成されている。ここで、2成分以上の混合材料とは、複数種類の元素を含む物を指しており、合金系を含む概念である。各電極20が、互いに共通の材料で構成されていることが好ましい。各電極20が、2成分以上の元素からなる合金もしくは化合物によって構成された電極であることが好ましい。このとき、各電極20の組成比が、互いに等しくなっているか、または、互いに略等しくなっていることが好ましい。各電極20が、2成分以上の元素材料に対して、融解凝固、焼結、または射出成型の処理を行うことにより形成されたバルク体であることが好ましい。各電極20の形成の際には、バルク体の形成には向かないスパッタリング、CVDまたはPVD等を避けるのがベターである。各電極20に含まれる合金材料もしくは混合材料が状態図において常温で分離系の合金もしくは化合物、状態図において常温で部分的に分離系の合金もしくは化合物、または共晶である場合、各元素の結晶のサイズは0.1mm以下となっていることが望ましい。例えば、各電極20が、融解凝固法で作成したパラジウム-ルテニウム電極(パラジウム50%、ルテニウム50%、純度99.95%、直径4mmの棒状)である場合、例えば、図2のEPMA写真で示したように、各元素の結晶のサイズの最大値が、ミリメートルオーダ、またはマイクロメートルオーダとなっている。なお、図2には、電極20のある部分において、サイズが0.05mm以下のルテニウムを囲むようにパラジウムが分布している様子が示されている。状態図において常温で分離系の合金もしくは化合物、状態図において常温で部分的に分離系の合金もしくは化合物、または共晶に対して、融解凝固、焼結、または射出成型の処理を行うことによりバルク状の各電極20を形成した場合、各電極20の結晶のサイズが比較的粗くなり、各元素の結晶のサイズの最大値が、ミリメートルオーダ、またはマイクロメートルオーダとなっている。各電極20が2成分以上の元素からなる合金材料もしくは混合材料によって構成されている場合において、各電極20は、融解凝固、焼結または射出成型によって形成された、ミリオーダまたはマイクロメータオーダの結晶粒が分布したバルク体である。

【0031】
各電極20が、状態図において常温で分離系もしくは共晶系の材料によって構成されていてもよい。このとき、各電極20の組成比が、互いに等しくなっているか、または、互いに略等しくなっていることが好ましい。各電極20が、状態図において常温で分離系もしくは共晶系の材料に対して、融解凝固、焼結、または射出成型の処理を行うことにより形成されたバルク体であってもよい。

【0032】
各電極20が、2成分以上の合金材料もしくは混合材料によって構成されている場合に、各電極20に含まれる2成分以上の元素からなる合金材料もしくは混合材料は、貴金属材料(例えば、Au、Ag、Pt、Pd、Rh、Ir、RuまたはOsなど)であってもよい。また、各電極20が、2成分以上の合金材料もしくは混合材料によって構成されている場合に、各電極20に含まれる2成分以上の元素からなる合金材料もしくは混合材料は、第一遷移金属材料(例えば、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、NiまたはCuなど)、第二遷移元素(希土類元素)(例えば、Rb、Sr、Y、Zr、NbまたはMoなど)、もしくは、第三遷移元素(希土類元素)(例えば、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybなど)であってもよい。また、各電極20が、2成分以上の合金材料もしくは混合材料によって構成されている場合に、各電極20に含まれる2成分以上の元素からなる合金材料もしくは混合材料は、上記貴金属材料および上記第一遷移金属材料によって構成されていてもよい。また、各電極20が、2成分以上の合金材料もしくは混合材料によって構成されている場合に、各電極20に含まれる2成分以上の元素からなる合金材料もしくは混合材料は、上記貴金属材料と、上記第二遷移元素または上記第三遷移元素とによって構成されていてもよい。また、各電極20が、2成分以上の合金材料もしくは混合材料によって構成されている場合に、各電極20に含まれる2成分以上の元素からなる合金材料もしくは混合材料は、上記貴金属材料、上記第一遷移金属材料、上記第二遷移元素および上記第三遷移元素によって構成されていてもよい。

【0033】
各電極20が、状態図において常温で分離系もしくは共晶系の材料によって構成されている場合に、各電極20に含まれる、状態図において常温で分離系の2成分以上の合金は、例えば、以下の(A1)~(A13)のいずれかに記載の材料であってもよい。
(A1)Auと、Si、Ge、Mo、RuもしくはRhとを含む材料
(A2)Ptと、Zrとを含む材料
(A3)Pdと、Ru、Rh、ReもしくはSbとを含む材料
(A4)Ruと、Ag、ReもしくはSbとを含む材料
(A5)Rhと、Agとを含む材料
(A6)Agと、Cu、Fe、Co、Ni、Si、Se、Mn、PbもしくはWとを含む材料
(A7)Feと、CuもしくはPbとを含む材料
(A8)Coと、Cu、Ga、PbもしくはZrとを含む材料
(A9)Niと、Pr、Zr、Sn、TaもしくはZrとを含む材料
(A10)Niと、Sb、Si、V、WもしくはZnとを含む材料
(A11)Cuと、Cr、Fe、Mo、PbもしくはWとを含む材料
(A12)Crと、PbもしくはSnとを含む材料
(A13)Mnと、MoもしくはPbとを含む材料

【0034】
各電極20が、状態図において常温で部分的に分離系の材料、もしくは状態図において常温で部分的に共晶系の材料によって構成されていてもよい。このとき、各電極20の組成比が、互いに等しくなっているか、または、互いに略等しくなっていることが好ましい。各電極20が、状態図において常温で部分的に分離系や共晶系の材料を融解凝固、焼結、または射出成型することにより形成されたバルク体であってもよい。

【0035】
各電極20が、状態図において常温で規則合金系の材料によって構成されていてもよい。このとき、各電極20の組成比が、互いに等しくなっているか、または、互いに略等しくなっていることが好ましい。各電極20が、状態図において常温で規則合金系の材料を融解凝固、焼結、または射出成型することにより形成されたバルク体であってもよい。

【0036】
各電極20が、状態図において常温で規則合金系の材料によって構成されている場合に、各電極20に含まれる、状態図において常温で規則合金系の材料は、例えば、以下の(B1)~(B10)のいずれかに記載の材料であってもよい。
(B1)Auと、Cu、Ag、NiもしくはPtとを含む材料
(B2)Ptと、Fe、Co、Mn、NiもしくはAuとを含む材料
(B3)Pdと、Fe、Co、Ni、PtもしくはSbとを含む材料
(B4)Rhと、CoもしくはNiとを含む材料
(B5)Feと、NiもしくはPdとを含む材料
(B6)Coと、Ni、Pd、FeもしくはRhとを含む材料
(B7)Niと、Ir、PdもしくはRhとを含む材料
(B8)Mnと、Ni、Ir、PtもしくはRhとを含む材料
(B9)Crと、FeもしくはNiとを含む材料
(B10)Cuと、Auとを含む材料

【0037】
各電極20が、状態図において常温でL10型磁性規則合金となり得る2成分以上の材料によって構成されている場合に、各電極20に含まれる、状態図において常温でL10型磁性規則合金となり得る2成分以上の材料は、例えば、以下の(C1)~(C4)のいずれかに記載の材料であってもよい。各電極20が、状態図において常温でL10型磁性規則合金となり得る2成分以上の材料によって構成されている場合に、各電極20に含まれる、状態図において常温でL10型磁性規則合金となり得る2成分以上の元素材料が、Fe、Pt、Coを含む材料であってもよい。
(C1)Feと、Pt、Pd、NiもしくはIrとを含む材料
(C2)Coと、Pt、Pd、Ni、Ir、FeもしくはRhとを含む材料
(C3)Niと、Pt、Pd、IrもしくはRhとを含む材料
(C4)Mnと、Pt、Pd、Ni、Ir、FeもしくはRhとを含む材料

【0038】
各電極20が、状態図において常温で金属間化合物系の材料によって構成されていてもよい。このとき、各電極20の組成比が、互いに等しくなっているか、または、互いに略等しくなっていることが好ましい。各電極20が、状態図において常温で金属間化合物系の材料を融解凝固、焼結、または射出成型することにより形成されたバルク体であってもよい。

【0039】
各電極20が、状態図において常温で固溶体の2成分以上の材料によって構成されていてもよい。このとき、各電極20の組成比が、互いに等しくなっているか、または、互いに略等しくなっていることが好ましい。各電極20が、状態図において常温で固溶体の2成分以上の材料を融解凝固、焼結、または射出成型することにより形成されたバルク体であってもよい。

【0040】
各電極20が、状態図において常温で固溶体の2成分以上の材料によって構成されていている場合に、各電極20に含まれる、状態図において常温で固溶体の2成分以上の材料として、例えば、2成分以上の固溶体半導体と、化合物半導体が挙げられる。固溶体半導体には、例えば、III族半導体、IV族半導体、V族半導体、VI族半導体、B、Ga、In、C、Si、Ge、Sn、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、SiおよびGeなどから選択される2つ以上の固溶体がある。化合物半導体には、例えば、III-V族化合物半導体、またはII-VI族化合物半導体などがある。III-V族化合物半導体には、例えば、BN、AlN、GaN、InN、BP、AlP、GaP、InP、AlAs、GaAs、InAs、InSb、GaSb、AlSb、InGaAs、GaInNAsなどがある。II-VI族化合物半導体には、例えば、ZnO、CdO、ZnS、CdS、ZnSe、CdSe、ZnTe、CdTe、CdZnTe、CdSSe、CdMnTeなどがある。

【0041】
各電極20が、状態図において常温で非固溶系の材料によって構成されていてもよい。

【0042】
次に、ナノ粒子製造装置1を用いたナノ粒子の製造方法の一例と、その製造方法の効果について説明する。

【0043】
まず、一対の電極20を用意する。次に、例えば、液体材料40を容器30に充填したのち、各端部20Aを液体材料40に浸すとともに、所定の間隙を介して互いに対向配置する。なお、各端部20Aを、所定の間隙を介して互いに対向配置したのち、液体材料40を容器30に充填する過程で、各端部20Aが液体材料40に浸るようにしてもよい。次に、電源装置10からパルス電流10Aを出力し、パルス放電を、液体材料40中の端部20A同士の間隙で発生させる。

【0044】
ここで、液中パルス放電を行う各電極20の材料として、2成分以上の元素からなる合金材料もしくは混合材料が用いられる。各電極20の材料として、例えば、上述したように、(a1)状態図において常温で分離系の2成分以上の合金、(a2)状態図において常温で部分的に分離系の2成分以上の合金、(a3)状態図において常温で規則合金系の2成分以上の材料、(a4)状態図において常温で金属間化合物系の2成分以上の材料、(a5)状態図において常温で固溶体の2成分以上の材料、または(a6)状態図において常温で部分的に固溶体の2成分以上の材料が用いられる。より詳細には、各電極20の材料として、例えば、上述したように、(a7)2成分以上の貴金属材料、(a8)Au、Ag、Pt、Pd、Rh、Ir、RuおよびOsのうち、少なくとも2種類以上の合金系の材料、(a9)PdおよびRu、(a10)Pt、PdおよびRh、(a11)FeおよびPt、(a12)AgおよびCu、(a12)2成分以上の遷移金属材料、(a13)貴金属材料および第一遷移金属材料、(a14)Au、Ag、Pt、Pd、Rh、Ir、RuおよびOsのうち少なくとも1種類の元素と、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、NiおよびCuのうち少なくとも1種類の元素との合金系の材料、(a15)2成分以上の希土類材料、(a16)貴金属材料と、第二遷移金属材料または第三遷移金属材料とを含む材料、または(a17)貴金属材料、上記第一遷移金属材料、第二遷移金属材料および第三遷移金属材料が用いられる。

【0045】
これにより、液中繰り返しパルス放電により、瞬間的に電極材料が蒸発し、短時間のイオン化(プラズマ)状態になり、冷却の際に各元素が凝集し、そのまま常温でナノ粒子が合成される。このとき、電極20内で各元素が近くに存在するので、各元素がプラズマ化した時に、異なる元素イオン同士が結合しやすくなる。その結果、短時間のプラズマ状態と、周囲の液体材料40による急冷効果も加わって、2成分以上の元素材料を含むナノ粒子が合成される。具体的には、各電極20を構成する、2成分以上の元素がナノスケールで混ざった合金もしくは化合物のナノ粒子が合成される。例えば、各電極20を構成する、上記(a1)、(a2)、(a3)、(a4)、(a5)、(a6)、(a7)、(a8)、(a9)、(a10)、(a11)、(a12)、(a13)、(a14)、(a15)、(a16)または(a17)に記載の元素がナノスケールで混ざった合金もしくは化合物のナノ粒子が合成される。

【0046】
ナノ粒子が、各電極20に含まれる、上記(a1)、(a2)、(a3)、(a4)、(a5)、(a6)、(a7)、(a8)、(a9)、(a10)、(a11)、(a12)、(a13)、(a14)、(a15)、(a16)または(a17)に記載の材料によって合成されている場合、ナノ粒子は電極20の組成比に応じた組成比となっており、具体的には、電極20の組成比と同じもしくは略同じ組成比となっている。しかしながら、液体材料40の元素材料を含む合金系のナノ粒子の場合には、ナノ粒子の組成のコントロールが難しい場合がある。酸化物、窒化物、硫化物、カルコゲナイド化合物、炭化物、塩化物、ハロゲン化合物など化合物は電極20の材料の組成でコントロールが可能である。一方、液体材料40に含まれる元素材料(以下、「元素A:と称する)がナノ粒子にドープされる場合、ナノ粒子に含まれる元素Aの濃度は不純物レベルとなる。従って、本技術を不純物の添加方法として用いることもできる。

【0047】
また、この製造方法では、各電極20の材料として、状態図において常温で分離系の2成分以上の合金に任意の材料を加えた混合物を用いることができる。従って、多元系で様々な組成のナノ粒子を形成することができる。また、この製造方法では、各電極20の材料として、状態図において常温で規則合金系の2成分以上の材料、もしくは、状態図において常温で金属間化合物系の2成分以上の材料に任意の材料を加えた混合物を用いることができる。従って、多元系で様々な組成のナノ粒子を形成することができる。また、この製造方法では、各電極20の材料として、状態図において常温で固溶体の2成分以上の材料に任意の材料を加えた混合物を用いることができる。従って、多元系で様々な組成のナノ粒子を形成することができる。

【0048】
また、この製造方法において、各電極20として、2成分以上の元素材料に対して、融解凝固、焼結、または射出成型の処理を行うことにより形成されたバルク体を用いた場合、各電極20における各元素の結晶のサイズの最大値がミリメートルオーダ、またはマイクロメートルオーダとなっており、比較的粗くなり易い。しかし、各電極20における各元素の結晶のサイズが上記のような粗さとなっている場合であっても、各電極20を構成する2成分以上の元素を含む合金もしくは化合物のナノ粒子を形成することができる。従って、スパッタリング、CVDまたはPVD等を用いて各電極20を形成した場合と比べて、安価なナノ粒子を製造することができる。

【0049】
また、この製造方法では、放電面積を大きくするだけで、生産量を大きくすることができる。放電面積の増大に技術上の制約は無い。従って、この製造方法は、ナノ粒子の量産に向いている。

【0050】
以上のことから、本実施の形態のナノ粒子の製造方法では、各電極20に含まれる2成分以上の混合材料もしくは合金材料によって、2成分以上の元素材料を含む合金もしくは化合物のナノ粒子を大量に作ることができる。

【0051】
また、本実施の形態の液中パルス放電では、液中でナノ粒子が合成され、合成されたナノ粒子がブラウン粒子の場合、合成されたナノ粒子が液中に浮遊しやすいので、ナノ粒子の凝集を防ぐことができる。なお、合成されたナノ粒子は液中に沈殿することもあるが、このときもナノ粒子の凝集は起こりにくい。ここで、凝集とは、ナノ粒子同士が互いに結合し合い、撹拌によって分離し難くなっていることを指す概念である。このように、本実施の形態では、従来の方法で問題となっていたナノ粒子の凝集が生じにくい。従って、ナノ粒子を液体材料40中に分散させた状態で使用することができる。なお、上述の製造方法によって形成されたナノ粒子が液体材料40に分散された状態の溶液を、ナノ粒子の製品(ナノ粒子溶液)としてもよい。また、液体材料40中でナノ粒子を沈降させ、沈降したナノ粒子の塊をろ過したものを、ナノ粒子の製品としてもよい。液体材料40中でナノ粒子を沈降させる方法としては、例えば、遠心分離が挙げられる。また、溶液中に浮遊するナノ粒子が自然に沈降し、容器30内に沈殿層が形成されたときに溶液に生じる上澄み液(溶液の上澄み液)を容器30から取り出し、取り出した上澄み液を、ナノ粒子の製品(ナノ粒子溶液)としてもよい。

【0052】
また、本実施の形態では、従来から研究されている直流のアーク放電を用いる方法とは異なり、液体中での繰り返しパルス放電が用いられる。これにより、瞬間的なプラズマ状態と急冷効果により、ナノ結晶のナノ粒子を合成することができる。また、電極20や液体材料40を替えることで、様々な組み合わせの合金、化合物の合成が可能であり、粒径を10nm以下にもすることも可能である。特に、本実施の形態において、金属または合金のナノ粒子を製造する際には、粒径が20~30nm以下、もしくは10nm以下のナノ粒子が安定して生成される。例えば、液体材料40中の沈殿層内では、粒径が20~30nm以下のナノ粒子が分布し、液体材料40中の上澄み層内では、粒径が10nm以下のナノ粒子が分布する。なお、実験条件によって、沈殿層内の粒径や、上澄み層内の粒径には、上記の範囲を超えるばらつきや分布が生じ得る。また、低電気エネルギーで、高真空や高圧電源を必要としない、低コストな製造方法であることから、この製造方法は、高品質なナノ機能物質の大量製造方法に発展する可能性がある。

【0053】
また、本実施の形態において、液体材料40が、飽和炭化水素、芳香族炭化水素またはアルコール類となっている場合、ナノ粒子の表面を被覆する炭素被膜を形成することができる。ナノ粒子の表面を炭素被膜で被覆した場合、ナノ粒子が非毒性となり、生体適合性に優れたナノ粒子を形成することができる。従って、ナノ粒子の表面を炭素被膜で被覆したものが、医療分野(例えば、がん治療分野)で実用化される可能性がある。

【0054】
また、上記製造方法を用いて形成したナノ粒子に対して、アニールを行ってもよい。例えば、上記製造方法を用いて形成したナノ粒子を、沸点の高い液体(例えば、油、シリコーン、イオン液体など)中に分散させた状態で、または、上記製造方法を用いて形成したナノ粒子を液体材料40からろ過した状態(すなわち、大気中、アルゴン中、窒素ガス中、または、真空中など)で、アニールを行ってもよい。このようにした場合には、ナノ粒子に含まれる元素の規則性が向上したり、ナノ粒子に含まれる規則合金の結晶構造が変化したりする。

【0055】
また、本実施の形態において、各電極20に含まれる、状態図において常温で規則合金系の材料が、上記の(C1)~(C4)のいずれかに記載の材料(例えば、FeおよびPtを含む材料、FeおよびPdを含む材料、または、CoおよびPtを含む材料)であった場合、生成されたナノ粒子の規則合金は、L10型磁性規則合金である。または、ナノ粒子が合成された時は、ナノ粒子は規則合金であるが、アニールによりL10型磁性規則合金になる。またこの時、アニールしなくてもL10型磁性規則合金になる場合も考えられる。また、状態図において常温で分離系の2成分以上の材料のうち1つの材料が、遷移金属材料であった場合、生成されたナノ粒子の固溶体は、磁性材料である。従って、これらの場合、ナノ粒子の規則合金、またはナノ粒子の固溶体が、磁性材料として電子材料分野や医療分野(例えば、がん治療分野)で実用化される可能性がある。

【0056】
また、本実施の形態において、各電極20に含まれる2成分以上の合金材料もしくは混合材料のうち少なくとも1つの材料が、貴金属材料であった場合、生成されたナノ粒子の固溶体は、触媒となり得る。従って、この場合、ナノ粒子の固溶体が、触媒またはインク材料の分野で実用化される可能性がある。

【0057】
また、上記製造方法を用いて形成したナノ粒子が、強磁性でありながら、粒子径が小さくなると常磁性的な性質を示す磁性材料(超常磁性材料)で形成されている場合、そのナノ粒子に対してアニールを行うと、ナノ粒子同士が結合したり、ナノ粒子の表面に結晶成長が生じたりする。その結果、磁性を回復させることができる。

【0058】
<2.変形例>
次に、上記実施の形態に係るナノ粒子の製造方法の種々の変形例について説明する。

【0059】
上記実施の形態では、2つの電極20が用いられていたが、3つ以上の電極20が用いられてもよい。この場合、各電極20の材料として、上記(a1)、(a2)、(a3)、(a4)、(a5)、(a6)、(a7)、(a8)、(a9)、(a10)、(a11)、(a12)、(a13)、(a14)、(a15)、(a16)または(a17)に記載の材料が用いられる。このとき、各電極20の組成比が、互いに等しくなっているか、または、互いに略等しくなっていることが好ましい。

【0060】
上記実施の形態およびその変形例において、各電極20が、化合物(例えば、酸化物、硫化物、窒化物、または、炭化物)によって構成されていてもよい。

【0061】
<3.実施例>
次に、本技術の具体的な実施例について詳細に説明する。なお、本技術は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。

【0062】
[第1の実験]
貴金属について
貴金属は他の金属と比べて希少価値が高い。貴金属は、一般的に、Au、Ag、Pt、Pd、Rh、Ir、RuおよびOsの8つの元素を指す。これらは周期表上で遷移元素に属している。様々な化学的性質に富む遷移金属元素の中でも貴金属は触媒作用や磁性や水素貯蔵性等の性質を示すので、貴金属元素についての研究は大変有益でありこれからの科学技術の発展にとって非常に重要である。

【0063】
触媒としての研究
貴金属の性質の中でも触媒としての性質は非常に重要である。とりわけ車の排ガスに含まれる有害成分を酸化、還元し浄化するために用いられる白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)は三元触媒の排ガス触媒として広く利用されており、私たちの生活に欠かすことのできないものとなっている。しかし、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)には問題がいくつかあり、その中の一つとして、これらが高価な貴金属であるという問題がある。貴金属は希少価値が高いので、貴金属と同等の働きを担う物質をより安価に製造する方法の確立が今後の重要な課題の一つである。特に、ロジウム(Rh)はレアメタルの一種であり非常に貴重で最も高価な金属の一種である。最近、周期表上でロジウム(Rh)に隣接するルテニウム (Ru)とパラジウム (Pd)の固溶ナノ粒子合金がロジウム(Rh)と大変よく似た性質を示すことが発見され、注目を集めている。

【0064】
Pd-Ru合金について
ルテニウム (Ru)、ロジウム (Rh)、パラジウム (Pd)は周期表上で第二遷移金属に属しており、これらの原子番号はそれぞれ44、45、46である。その中でも、ルテニウム (Ru)とパラジウム (Pd)は常温相では合金を作らない非固溶系である。しかし、合成された固溶Pd-Ru合金は、ロジウム (Rh)と似たような性質を示すという報告がなされている。ロジウム (Rh)は周期表上で45番目の原子であり、現在では排ガス中の有毒ガスを処理する触媒として自動車に用いられる三元触媒を始め、広く私たちの身の回りで使用されている。しかし、ロジウム (Rh)は最も高価な貴金属の一つであり、近年の発展途上国を始めとする世界各国での自動車保有台数の増加に伴ってその需要は更に高まると予想される。このような背景の中で、より安価なルテニウム (Ru)とパラジウム (Pd)を用いて、ロジウム (Rh)と同じような性質を持つPd-Ru合金を作ることができれば、それは非常に有用なことである。Pd-Ru合金の、COに対する酸化作用は、従来使用されていたロジウム (Rh)のそれよりも高い性質を有するという報告もある。そのため、Pd-Ru合金は、環境面においても優れた触媒として期待されている。そこで、第1の実験において、液中パルス放電を用いて、Pd-Ru合金のナノ粒子を作ることにした。以下では、第1の実験の方法と、第1の実験によって得られたナノ粒子の特性について説明する。

【0065】
融解凝固法で作成したパラジウム-ルテニウム電極(パラジウム50%、ルテニウム50%、純度99.95%、直径4mmの棒状)を、双方の電極20として用いて液中パルス放電を行った。液体材料40として、200mlのエタノールを用い、電源装置10の条件を、300Hz、60.5V、平均1.4A、1パルス10μsとして、60分、液中パルス放電を行った。このときの電源装置10からの出力電流波形に含まれるパルスは、図3のようになっていた。実験後の液体材料40を、ナノ粒子が容器30の底に自重で沈殿している沈殿層と、ナノ粒子が沈殿層上に浮遊している浮遊層とに分離した。その後、分離した沈殿層および浮遊層を、電気炉の中で4時間程度、乾燥させ、沈殿層および浮遊層から、ナノ粒子の粉末を得た。

【0066】
まず、沈殿層および浮遊層から得られたナノ粒子の粉末に対して、X線回折(XRD)パターン測定を実施した。図4Aに、浮遊層から得られたナノ粒子のXRDパターン測定を実施した結果を示し、図4Bに、沈殿層から得られたナノ粒子のXRDパターン測定を実施した結果を示した。図4Cには、比較として、パラジウム単体のXRDパターン測定を実施した結果を示し、図4Dには、比較として、ルテニウム単体のXRDパターン測定を実施した結果を示した。

【0067】
浮遊層から得られたナノ粒子のXRDパターンは、図4Aに示したように、パラジウム単体のXRDパターンに似たパターンとなっていた。一方、沈殿層から得られたナノ粒子のXRDパターンには、図4Bに示したように、ルテニウム単体のXRDパターンにおけるピークが見られた。これらのことから、浮遊層において、パラジウムとルテニウムを含む固溶体のナノ粒子が形成され、パラジウム相主体の固溶体のナノ粒子の形成に寄与しなかったルテニウムを多く含むルテニウム相主体の固溶体ナノ粒子が、パラジウム相主体の固溶体ナノ粒子とともに沈殿層に沈殿したものと考えられる。

【0068】
次に、図5Aに、浮遊層から得られたナノ粒子のTEM写真を示し、図5Bに、沈殿層から得られたナノ粒子のTEM写真を示した。図5Bから、沈殿層から得られたナノ粒子の直径が20~30nm以下となっていることがわかった。図5Aからは、浮遊層から得られたナノ粒子が凝集していることがわかった。そこで、さらに、浮遊層から得られたナノ粒子をより詳細に調べるために、浮遊層から得られたナノ粒子のHRTEM写真を撮影した。図5C、図5Dに、浮遊層から得られたナノ粒子のHRTEM写真を示した。図5Cからは、浮遊層から得られたナノ粒子の直径が、数nm程度、または、10nm以下となっていることがわかった。また、図5Dから、浮遊層から得られたナノ粒子の結晶格子を確認することができた。

【0069】
次に、HRTEMの測定に伴ってEDXの測定を行った。図6Aに、浮遊層から得られた1粒のナノ粒子のEDX解析結果を示し、図6Bに、沈殿層から得られた1粒のナノ粒子のEDX解析結果を示した。図6A,図6Bから、1粒のナノ粒子の中に、パラジウムとルテニウムが共存していることが確認できた。

【0070】
次に、図7Aに、浮遊層から得られたナノ粒子のTEM写真を示し、図7Bに、浮遊層から得られたナノ粒子のEDX分析結果を示した。図7A,図7Bから、浮遊層から得られたナノ粒子は、10nm以下の直径を有しており、さらに、その1つのナノ粒子の中に、パラジウムおよびルテニウムを観察することができ、ナノ粒子がパラジウムおよびルテニウムを含む固溶体となっていることが確認できた。

【0071】
次に、さらに、ナノ粒子内の各元素の結合状態や、ナノ粒子内の各元素やその周りの状態を、X線光電子分光(XPS)を用いて調査した。図8Aに、浮遊層および沈殿層から得られたナノ粒子内のパラジウムのXPS測定結果を示し、図8Bに、浮遊層および沈殿層から得られたナノ粒子内のルテニウムのXPS測定結果を示した。図8Aから、336eVにおいて、パラジウムの結合エネルギーのピークが存在していることが確認できた。また、図8Bから、284.4eV付近において、ルテニウムの結合エネルギーのピークが存在していることが確認できた。なお、284eV付近においては、不純物の炭素の結合エネルギーのピークが影響を与えている可能性がある。このように、図8A,図8Bから、パラジウムおよびルテニウムの双方の結合エネルギーを確認することができたことから、浮遊層および沈殿層から得られたナノ粒子が、パラジウムおよびルテニウムを含む固溶体となっていると判断することができる。

【0072】
なお、40°、70°付近のピーク位置において、浮遊層から得られたナノ粒子のピークが、パラジウム単体のピーク位置よりも若干、高角側に位置していたことから、浮遊層から得られたナノ粒子において、面間隔や格子定数の変化を含む何らかの結晶構造の変化があったと思われる。しかしながら、この時点でパラジウムナノ粒子の合成とXRD回折実験を行っていないので、固溶体ナノ粒子の格子定数の議論はここではできない。後で議論する。しかしながら、パラジウムの結晶構造は面心立方晶系であり、ルテニウムの結晶構造は六方晶系である。浮遊層から得られたナノ粒子のXRDパターンにおいて、ルテニウム単体のXRDパターンにおけるピークがほとんど見られず、パラジウム単体のXRDパターンにおけるピークに非常に似ているピークが存在していたことから、浮遊層から得られたナノ粒子が、パラジウムの結晶構造において、一定量のルテニウムがパラジウムと置換し置換型固溶体を形成しているのではないかと考えられる。

【0073】
また、EDXの結果から、浮遊層から得られたナノ粒子内には、パラジウムおよびルテニウムが共存していると考えられることから、浮遊層から得られたナノ粒子が、パラジウムおよびルテニウムを含む固溶体を形成している判断することができる。また、TEM、HRTEMの観察結果から、浮遊層から得られたナノ粒子がナノサイズであると確認することができる。また、XPS解析結果から、パラジウムおよびルテニウムの双方の結合エネルギーを確認することができたことからも、浮遊層および沈殿層から得られたナノ粒子が、パラジウムおよびルテニウムを含む固溶体を形成している判断することができる。

【0074】
[第2の実験]
Pd-Ru合金の追加実験
融解凝固法で作成したパラジウム単体の電極(純度99.95%、直径4mmの棒状)を、双方の電極20として用いて液中パルス放電を行った。液体材料40として、200mlのエタノールを用い、電源装置10の条件を、300Hz、60.5V、平均1.4A、1パルス10μsとして、60分、液中パルス放電を行った。実験後の液体材料40を、ナノ粒子が容器30の底に自重で沈殿している沈殿層と、ナノ粒子が沈殿層上に浮遊している浮遊層とに分離した。その後、分離した沈殿層および浮遊層を、電気炉の中で4時間程度、乾燥させ、沈殿層および浮遊層から、ナノ粒子の粉末を得た。本件のようなナノ粒子材料の研究では、ナノ粒子が普通の粉体より格子定数が大きいので、単体のパラジウムのナノ粒子のデータを比較基準データとして用いる。

【0075】
沈殿層および浮遊層から得られたナノ粒子の粉末に対して、X線回折(XRD)パターン測定を実施した。先ず、図9A、図9Bには、比較基準として、パラジウム単体の浮遊層と沈殿層から得られたナノ粒子のXRDパターン測定を実施した結果をそれぞれ示した。パラジウム単体の試料では、浮遊層の各ピークは沈殿層のものに比べてブロードになっており、浮遊層のナノ粒子の方が沈殿槽に比べて小さいことを示唆している。浮遊層、沈殿槽の面心立方格子の格子定数はそれぞれ、3.9708A,3.9548Aであった。

【0076】
次に、融解凝固法で新たに作成した3種類のパラジウム-ルテニウム電極(パラジウム50%?ルテニウム50%、パラジウム75%?ルテニウム25%、パラジウム25%?ルテニウム75%、純度99.95%、直径4mmの棒状)を、双方の電極20として用いて液中パルス放電を行った。液体材料40として、200mlのエタノールを用い、電源装置10の条件を、300Hz、60.5V、平均1.4A、1パルス10μsとして、60分、液中パルス放電を行った。凝固法で作製した電極に使う分離系合金中のPd粒子およびRu粒子の大きさは10~100ミクロンメータ程度である。このときの電源装置10からの出力電流波形に含まれるパルスは、図3のようになっていた。実験後の液体材料40を、ナノ粒子が容器30の底に自重で沈殿している沈殿層と、ナノ粒子が沈殿層上に浮遊している浮遊層とに分離した。その後、分離した沈殿層および浮遊層を、電気炉の中で4時間程度、乾燥させ、沈殿層および浮遊層から、ナノ粒子の粉末を得た。

【0077】
パラジウム50%、ルテニウム50%で得られた試料で、図10A、図10Bに、浮遊層と沈殿槽それぞれから得られたナノ粒子のXRDパターンとピーク角度、面間隔、および格子定数など測定結果を示した。パラジウム50%、ルテニウム50%で得られた試料では、第一回の実験と同様に、浮遊層から得られたナノ粒子のXRDパターンは、図10Aに示したように、パラジウム単体の面心立方構造のXRDパターンに似たパターンとなっていた。一方、沈殿層から得られたナノ粒子のXRDパターンには、図10Bに示したように、ルテニウム単体の六方最密構造のXRDパターンにおけるピークが見られた。これらのことから、浮遊層において、パラジウムとルテニウムを含む固溶体のナノ粒子が形成され、パラジウム相主体の固溶体のナノ粒子の形成に寄与しなかったルテニウムを多く含むルテニウム相主体の固溶体ナノ粒子が、パラジウム相主体の固溶体ナノ粒子とともに沈殿層に沈殿したものと考えられる。また、浮遊層の各ピークは沈殿層のものに比べてブロードになっており、浮遊層のナノ粒子の方が沈殿槽に比べて小さいことを示唆している。

【0078】
図10A、図10Bから、面心立方構造の40°、46°、68°、82°付近のピーク位置において、浮遊層および沈殿層から得られたナノ粒子のピークが、パラジウム単体のピーク位置よりも若干、高角側に位置していることがわかった。これはパラジウムの原子容(8.9cm3/mol)がルテニウムの原子容(8.3cm3/mol)に比べて大きく、ルテニウムがパラジウム相の面心立方格子に固溶したために格子が縮小したためと考えられる。XRDパターンの解析の結果、浮遊層、沈殿槽のパラジウム相の格子定数はそれぞれ、3.8915A,3.8870Aで、パラジウム単体の3.9708A,3.9548Aに比べて小さく、ルテニウム原子がパラジウム相の面心立方格子に固溶したために格子が縮小したことがわかる。また、沈殿層の六方最密構造の44°付近のピークはルテニウム単体のものに比べて低角側に位置している。これは原子容の大きなパラジウムがルテニウムの六方最密格子に固溶したために格子が膨張したためと考えられる。また、浮遊層のほうが沈殿槽より格子定数が大きい.これは粒径が浮遊層のほうが沈殿槽に比べて小さいからと考えられる。

【0079】
パラジウム75%、ルテニウム25%で得られた試料で、図11A、図11Bに、浮遊層と沈殿槽それぞれから得られたナノ粒子のXRDパターンとピーク角度、面間隔、および格子定数など測定結果を示した。パラジウム75%、ルテニウム25%で得られた試料では、浮遊層から得られたナノ粒子と沈殿層から得られたナノ粒子のXRDパターンは、どちらも、図11Aに示したように、ルテニウム相主体の六方最密格子のパターンは見られず、パラジウム単体のXRDパターンに似たパターンとなっていた。パラジウム75%、ルテニウム25%では、パラジウムが多く、パラジウム50%、ルテニウム50%の場合と違って、ルテニウムはほとんどすべてパラジウム相に固溶したものと考えられる。また、浮遊層の各ピークは沈殿層のものに比べてブロードになっており、浮遊層のナノ粒子の方が沈殿槽に比べて小さいことを示唆している。

【0080】
図11A、図11Bから、面心立方構造の40°、46°、68°、82°付近のピーク位置において、浮遊層および沈殿層から得られたナノ粒子のピークが、パラジウム50%、ルテニウム50%で得られた試料のピーク位置よりも若干、低角側に位置していることがわかった。パラジウム相の中に固溶するルテニウムが少なくなったためと考えられる。XRDパターンの解析の結果、浮遊層、沈殿槽のパラジウム相の格子定数はそれぞれ、3.9483A,3.9220Aで、パラジウム単体の3.9708A,3.9548Aに比べて小さく、ルテニウム原子がパラジウム相の面心立方格子に固溶したために格子が縮小したことがわかるが、パラジウム50%、ルテニウム50%で得られた試料よりは縮小は小さい。これはパラジウム50%、ルテニウム50%よりルテニウムの組成が少ないからと考えられる。また、浮遊層のほうが沈殿槽より格子定数が大きい。これは粒径が浮遊層のほうが沈殿槽に比べて小さいからと考えられる。

【0081】
パラジウム25%、ルテニウム75%で得られた試料で、図12A、図12Bに、浮遊層と沈殿槽それぞれから得られたナノ粒子のXRDパターンとピーク角度、面間隔、および格子定数など測定結果を示した。パラジウム25%、ルテニウム75%で得られた試料では、浮遊層、沈殿層どちらから得られたナノ粒子のXRDパターンは、図12Aに示したように、パラジウム相の面心立方構造のXRDパターンとルテニウム相主体の六方最密構造のXRDパターンが混ざったパターンとなっていた。44°付近のルテニウム単体のピークは沈殿層の方が浮遊層の方に比べて大きく、ルテニウム相の固溶体ナノ粒子が多く存在するためと考えられる。また、浮遊層の各ピークは沈殿層のものに比べてブロードになっており、浮遊層のナノ粒子の方が沈殿槽に比べて小さいことを示唆している。

【0082】
図12A、図12Bから、面心立方構造の40°、46°、68°付近のピーク位置において、浮遊層および沈殿層から得られたナノ粒子のピークが、パラジウム50%、ルテニウム50%で得られた試料のピーク位置より若干高角側に位置していることがわかった。XRDパターンの解析の結果、浮遊層、沈殿槽のパラジウム相の格子定数はそれぞれ、3.8843A,3.8819Aで、パラジウム単体の3.9708A,3.9548Aに比べて格段に小さく、ルテニウムがパラジウムの面心立方格子に多く固溶したために格子が縮小したことを示しているが、パラジウム50%、ルテニウム50%で得られた試料よりは縮小は大きい。縮小の程度はPd:Ru=3:1,1:1,1:3の順に大きくなっており、パラジウムにルテニウムがこの順に多く固溶していることを示している。また、パラジウム25%、ルテニウム75%では、パラジウム50%、ルテニウム50%の場合と同様に、沈殿層の六方最密構造の44°付近のピークはルテニウム単体のものに比べてさらに低角側に位置している。これは原子容の大きなパラジウム原子がルテニウム相の六方最密格子に固溶したために格子が膨張したためと考えられる。ルテニウムのピークは沈殿層の方が高く、また、ピークも多くなっており、量が多いと考えられる。また、浮遊層のほうが沈殿槽より格子定数が大きい。これは粒径が浮遊層のほうが沈殿槽に比べて小さいからと考えられる。

【0083】
次に、HRTEMの測定に伴ってEDXの測定を行った。図13Aに、パラジウム50%、ルテニウム50%で得られた試料で、浮遊層から得られたナノ粒子のHRTEM写真を示し、図13Bに浮遊層から得られた1粒のナノ粒子の径2nm以下の丸領域のEDX解析結果を示した。HRTEM写真から、ナノ粒子の粒径は数nmから10nm以下であることがわかる。また、1粒のEDXの結果から、粒のナノ粒子の中に、パラジウムとルテニウムが共存し、Pd:Ru=7.26:6.97で、ほぼ1:1の組成になっていることが確かめられた。

【0084】
図14Aに、パラジウム50%、ルテニウム50%で得られた試料で、沈殿層から得られたナノ粒子のHRTEM写真を示し、図14Bにパラジウム50%、ルテニウム50%で得られた試料で、沈殿層から得られた1粒のナノ粒子の径2nm以下の丸領域のEDX解析結果を示した。HRTEM写真から、ナノ粒子の粒径は数nmから20nm以下であることがわかる。また、1粒のEDXの結果から、粒のナノ粒子の中に、パラジウムとルテニウムが共存し、Pd:Ru=7.64:9.53で、ほぼ1:1の組成になっていることが確かめられた。

【0085】
図15Aに、パラジウム25%、ルテニウム75%で得られた試料で、浮遊層から得られたナノ粒子のHRTEM写真を示し、図15Bに浮遊層から得られた1粒のナノ粒子の径2nm以下の丸領域のEDX解析結果を示した。HRTEM写真から、ナノ粒子の粒径は数nmから10nm以下であることがわかる。また、1粒のEDXの結果から、粒のナノ粒子の中に、パラジウムとルテニウムが共存し、Pd:Ru=10.37:36.93でほぼ1:3に近い組成になっていることが確かめられた。

【0086】
図16Aに、パラジウム25%、ルテニウム75%で得られた試料で、沈殿層から得られたナノ粒子のHRTEM写真を示し、図16Bにパラジウム25%、ルテニウム75%で得られた試料で、沈殿層から得られた1粒のナノ粒子の径2nm以下の赤丸領域のEDX解析結果を示した。HRTEM写真から、ナノ粒子の粒径は数nmから20nm以下であることがわかる。また、1粒のEDXの結果から、粒のナノ粒子の中に、パラジウムとルテニウムが共存し、Pd:Ru=15.32:40.67でほぼ1:3に近い組成になっていることが確かめられた。

【0087】
XRDの結果とHRTEMのEDX解析結果は、格子定数と組成の関係がベガード則をほぼ満たしていることを示しており信頼できる。パラジウム:ルテニウムが75:25、50:50、25:75の電極20で合成されたナノ粒子の組成は電極20の組成と近い組成になっており、電極20の組成によって得られるナノ粒子の組成を制御できることを示している。

【0088】
[第3の実験]
実施例1では、融解凝固法で作製した銀-銅電極(銀50%、銅50%、純度99.99%、直径5mmの棒状)を、双方の電極20として用いた。そこで、実施例2では、一方の電極20を銀電極とし、他方の電極20を銅電極とした。実施例1,2では、液体材料40としてキシレン200mlを用い、電源装置10の条件を、60Hz、100V、1パルス20μsとして、1時間、液中繰り返しパルス放電を行った。このときの電源装置10からの出力電流波形に含まれるパルスは、図3のようになっていた。実験後の液体材料40に対し、XRD装置を用いてXRDパターン測定を実施した。その結果を図17に示した。図17において、最上段のグラフが、上記の実験を行った後の実施例1の液体材料40に対してXRDパターン測定を行った結果である。中段のグラフは、上記の実験を行った後の実施例2の液体材料40に対してXRDパターン測定を行った結果である。図17において、最下段のグラフは、融解凝固法で作製した銀-銅電極に対してXRDパターン測定を行った結果である。

【0089】
最下段の電極のXRDパターンは銀と銅のピークからなり固溶体は存在していないことを示している。これは銀と銅は常温付近で完全分離系を示すからだと考えられる。中段の銀電極と銅電極を用いて得られた試料のXRDパターンでは、最下段と同じく、銀と銅のピークだけで、双方のグラフに大きな差異はなく、固溶体は存在していないことを示している。最上段の銀-銅の合金電極を用いて得られた試料のXRDパターンでは、銀-銅固溶体のピークが観察されるだけで、銀と銅のピークはなかった。このことから、実施例1の試料には、銀-銅固溶体合金のナノ粒子だけが存在しており、銀のナノ粒子や、銅のナノ粒子といった不純物が存在していないことがわかった。一方、実施例2の試料には、銀のナノ粒子や、銅のナノ粒子だけが存在していることがわかった。従って純銀と純銅の電極を用いた場合は銀?銅固溶体ナノ粒子の合成はほとんど不可能であるが、銀?銅合金の電極を用いた場合、銀?銅固溶体ナノ粒子を合成できることがわかる。

【0090】
次に、図18、図19に、実施例1にかかる液体材料40から取り出したナノ粒子のHRTEM写真を示した。図19には、図6の拡大写真を示した。図18、図19から、実施例1では、粒径が10nm以下(5nmほど)の一様なサイズの銀-銅固溶体合金ナノ結晶ができていることがわかった。図20に、実施例1にかかる液体材料40から取り出したナノ粒子のEDS分析結果を示した。図20から、銀と銅の存在が確認でき、原子数割合が大体1:1で、酸素は無視できるほどの量しか存在していないことがわかった。

【0091】
[第4の実験]
実施例3,4では、融解凝固法で作製した白金-鉄電極(白金50%、鉄50%、直径6mmの棒状)を、双方の電極20として用いた。実施例3では、液体材料40としてキシレン200mlを用い、電源装置10の条件を、60Hz、100V、1パルス10μsとして、1時間、液中繰り返しパルス放電を行った。実施例4では、液体材料40としてエタノール200mlを用い、電源装置10の条件を、60Hz、100V、1パルス10μsとして、1時間、液中繰り返しパルス放電を行った。実施例3,4において、電源装置10からの出力電流波形に含まれるパルスは、図21のようになっていた。実験後の液体材料40に対し、XRDスペクトル装置を用いてXRDパターン測定を実施した。その結果を図22に示した。図21において、最上段のグラフは、キシレン200mlを用いて上記の実験を行った後の実施例3の液体材料40に対してXRDパターン測定を行った結果である。なお、図22において、上から3段目のグラフは、エタノール200mlを用いて上記の実験を行った後の実施例4の液体材料40に対してXRDパターン測定を行った結果である。また、図22において、上から2段目のグラフは、一方の電極20を白金電極とし、他方の電極20を鉄電極とした上で、キシレン200mlを用いて液中繰り返しパルス放電を行った後の実施例5の液体材料40に対してXRDパターン測定を行った結果である。また、図22において、最下段のグラフは、一方の電極20を白金電極とし、他方の電極20を鉄電極とした上で、エタノール200mlを用いて液中繰り返しパルス放電を行った後の実施例6の液体材料40に対してXRDパターン測定を行った結果である。

【0092】
最下段のグラフでは、鋭くはないがピークが得られた。また、上から2段目のグラフでは、白金-鉄合金のピークの他に、白金と鉄のピークがあった。一方、最上段および上から3段目のグラフでは、白金-鉄合金のピークがある一方で、白金と鉄のピークはなかった。このピークは面心立方晶FePtのものである。このことから、実施例3,4の液体材料40には、白金-鉄合金のナノ粒子だけが存在しており、白金のナノ粒子や、鉄のナノ粒子といった不純物が存在していないことがわかった。一方、実施例5,6の液体材料40には、白金-鉄合金のナノ粒子の他に、白金のナノ粒子や、鉄のナノ粒子といった不純物も存在していることがわかった。

【0093】
次に、図23に、実施例3,4の液体材料40から取り出したナノ粒子のHRTEM写真を示した。図23から、10nm以下の一様なサイズの白金-鉄合金のナノ結晶が合成できていることがわかった。このナノ粒子には、カーボンのコーティングが見られなかった。図24A,図24Bに、実施例3,4の液体材料40から取り出したナノ粒子のEDS分析結果を示した。図24A,図24Bから、白金と鉄の存在が確認でき、原子数割合が大体1:1で、酸素は無視できるほどの量しか存在していないことがわかった。なお、図24A,図24Bにおいて、炭素と銅は、TEM用試料グリッドの材料である。

【0094】
図25に、磁化曲線を示した。振動試料型磁力測定(VSM)を用いて磁力を測定することにより磁化曲線を得た。図25において、白金-鉄電極(白金50%、鉄50%、直径6mmの棒状)を、双方の電極20として用いて作成したナノ粒子の方が、一方の電極20を白金電極とし、他方の電極20を鉄電極として作成したナノ粒子よりも、格段に高い磁気特性を持っていることが示唆されている。

【0095】
[第5の実験]
実施例7,8では、融解凝固法で作製した白金-鉄電極(白金45%、鉄55%、直径6mmの棒状)を、双方の電極20として用いた。実施例7では、液体材料40として、キシレン200mlを用い、電源装置10の条件を、60Hz、100V、1パルス10μsとして、1時間、液中繰り返しパルス放電を行った。実施例8では、液体材料40として、エタノール200mlを用い、電源装置10の条件を、60Hz、100V、1パルス10μsとして、1時間、液中繰り返しパルス放電を行った。実施例7,8において、電源装置10からの出力電流波形に含まれるパルスは、図21のようになっていた。実験後の液体材料40に対し、XRDスペクトル装置を用いてXRDパターン測定を実施した。その結果を図26に示した。図26において、上段のグラフは、上記の実験を行った後の実施例3の液体材料40に対してXRDパターン測定を行った結果である。図26において、下段のグラフは、実施例3の液体材料40に対してアニールを行った後のXRDパターンの結果である。

【0096】
上段のグラフでは、白金-鉄合金のピークがある一方で、白金と鉄のピークはなかった。このピークは面心立方晶FePtのものである。このことから、実施例3,4の液体材料40には、白金-鉄合金のナノ粒子だけが存在しており、白金のナノ粒子や、鉄のナノ粒子といった不純物が存在していないことがわかった。

【0097】
磁性を向上させるために、合成した試料FePtナノ結晶にアニールを行った。アニール処理をすることにより、保持力が向上するのか、実験条件について述べる。

【0098】
(分析・観察)
図26の下段に、400℃の温度条件でアニールした試料のXRDパターンを上段のアニール前の試料のXRDパターンとともに示した。アニール前の試料では、結晶構造が面心立方晶のFePtとなっていたが、アニール後の試料では、正方晶のFePt(P4/mmm)となっていた。すなわち、アニールにより、結晶構造が面心立方晶のFePtから、規則合金の正方晶FePt(P4/mmm)に変化したことがわかった。

【0099】
図27にVSMaによる白金45%、鉄55%の磁化曲線を白金50%、鉄50%のものの結果とともに示した。どちらも400℃でアニールした試料の方が,保持力が格段に向上しているのが分かった。400℃でアニールした試料では、アニール処理されていない試料に比べて、磁化が30~40%程度下がるが、白金50%、鉄50%で、4.6倍、白金45%、鉄55%で6.6倍程度上昇した。これは、アニールによりL10正方晶に相転移したためと考えられる。また、アニールした試料は白金45%の方が50%よりも1.3倍程度高い値を示した。この系で最大の磁気特性は白金45%のところだといわれており、本結果は矛盾しない。上記の結果は液中パルスプラズマ法によって、電極20の組成を替えることにより、組成を制御し、磁性を向上させることができることを示している。
【符号の説明】
【0100】
1…ナノ粒子製造装置、10…電源装置、10A…パルス電流、20…電極、20A…端部、30…容器、40…液体材料、50…振動装置。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4A】
3
【図4B】
4
【図4C】
5
【図4D】
6
【図5A】
7
【図5B】
8
【図5C】
9
【図5D】
10
【図6A】
11
【図6B】
12
【図7A】
13
【図7B】
14
【図8A】
15
【図8B】
16
【図9A】
17
【図9B】
18
【図10A】
19
【図10B】
20
【図11A】
21
【図11B】
22
【図12A】
23
【図12B】
24
【図13A】
25
【図13B】
26
【図14A】
27
【図14B】
28
【図15A】
29
【図15B】
30
【図16A】
31
【図16B】
32
【図17】
33
【図18】
34
【図19】
35
【図20】
36
【図21】
37
【図22】
38
【図23】
39
【図24A】
40
【図24B】
41
【図25】
42
【図26】
43
【図27】
44