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明細書 :赤外線放射率測定装置および赤外線放射率測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6485953号 (P6485953)
公開番号 特開2016-180690 (P2016-180690A)
登録日 平成31年3月1日(2019.3.1)
発行日 平成31年3月20日(2019.3.20)
公開日 平成28年10月13日(2016.10.13)
発明の名称または考案の名称 赤外線放射率測定装置および赤外線放射率測定方法
国際特許分類 G01J   5/00        (2006.01)
G01J   5/60        (2006.01)
G01J   5/48        (2006.01)
FI G01J 5/00 B
G01J 5/60 A
G01J 5/00 101A
G01J 5/00 101D
G01J 5/48 D
請求項の数または発明の数 6
全頁数 19
出願番号 特願2015-061134 (P2015-061134)
出願日 平成27年3月24日(2015.3.24)
審査請求日 平成29年12月22日(2017.12.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】大高 雅彦
【氏名】近澤 佳隆
【氏名】加藤 篤志
個別代理人の代理人 【識別番号】110000442、【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
審査官 【審査官】平田 佳規
参考文献・文献 特開2003-194629(JP,A)
欧州特許出願公開第0623811(EP,A1)
調査した分野 G01J 5/00- 5/62
G01J 3/00- 3/52
G01N 21/00- 21/01
G01N 21/17- 21/61
特許請求の範囲 【請求項1】
測定対象物体から放射される赤外線に対して測定する波長が異なる少なくとも第1の赤外線センサ、第2の赤外線センサならびに第3の赤外線センサと、
各種情報などを記憶する記憶部と、
前記第1、第2ならびに第3の赤外線センサの出力信号を処理する演算部を備え、
前記記憶部には、前記第1の赤外線センサと第2の赤外線センサからの波長差に対する赤外線強度の勾配と、前記測定対象物体の表面温度の関係が予め記憶されており、
前記演算部は、
前記第1の赤外線センサと第2の赤外線センサからの波長差に対する赤外線強度の勾配に基づいて、前記記憶部に記憶されている赤外線強度の勾配と測定対象物体の表面温度の関係から当該測定対象物体の表面温度を求め、
前記第3の赤外線センサの出力信号で示される波長λ、前記測定対象物の表面温度T、及び予め決定された定数α、β、γを式(1)に代入して、前記測定対象物体の全放射エネルギーEを演算して、
前記測定対象物体の表面温度から、黒体の全放射エネルギーEbを演算して、
前記測定対象物体の放射率(E/Eb)を演算する構成になっていることを特徴とする赤外線放射率測定装置。
【数1】
JP0006485953B2_000004t.gif

【請求項2】
請求項1に記載の赤外線放射率測定装置において、
前記測定対象物体は、液体金属が付着する物体または金属膜が形成される物体であることを特徴とする赤外線放射率測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の赤外線放射率測定装置において、
前記第1の赤外線センサと第2の赤外線センサと第3の赤外線センサが併設されて1つのマトリクス構成要素となり、そのマトリクス構成要素がX-Y方向に多数並べられてマトリクス状の平面放射率測定装置を構成していることを特徴とする赤外線放射率測定装置。
【請求項4】
テスト用測定対象物体の表面温度毎に、測定する波長が異なる第1の赤外線センサと第2の赤外線センサで前記テスト用測定対象物体から放射される赤外線強度を測定して、前記第1の赤外線センサと第2の赤外線センサからの波長差に対する赤外線強度の勾配と前記テスト用測定対象物体の表面温度の関係をまとめて記憶する第1のステップと、
測定する測定対象物体から放射される赤外線強度を前記第1の赤外線センサと第2の赤外線センサで測定して、前記第1の赤外線センサと第2の赤外線センサからの波長差に対する赤外線強度の勾配を求める第2のステップと、
前記記憶されている赤外線強度の勾配とテスト用測定対象物体の表面温度の関係から、前記求められた勾配に対応する測定対象物体の表面温度を求める第3のステップと、
前記第1の赤外線センサならびに第2の赤外線センサとは異なる第3の赤外線センサの出力信号で示される波長λ、前記測定対象物の表面温度T、及び予め決定された定数α、β、γを式(2)に代入して、前記測定対象物体の全放射エネルギーEを演算する第4のステップと、
前記測定対象物体の表面温度から、黒体の全放射エネルギーEbを演算する第5のステップと、
前記測定対象物体の放射率(E/Eb)を演算する第6のステップを有することを特徴とする赤外線放射率測定方法。
【数2】
JP0006485953B2_000005t.gif

【請求項5】
請求項4に記載の赤外線放射率測定方法において、
前記測定対象物体は、液体金属が付着する物体または金属膜が形成される物体であることを特徴とする赤外線放射率測定方法。
【請求項6】
請求項4に記載の赤外線放射率測定方法において、
前記第1の赤外線センサと第2の赤外線センサと第3の赤外線センサが併設されて1つのマトリクス構成要素となり、そのマトリクス構成要素がX-Y方向に多数並べられてマトリクス状の平面放射率測定装置を構成していることを特徴とする赤外線放射率測定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線放射率(以下、単に放射率と略記する場合もある)測定装置および赤外線放射率測定方法に係り、特に測定対象物体自体が高温で、かつその測定対象物体が高温雰囲気内にあるような条件において使用するのに適した非接触による赤外線放射率測定装置および赤外線放射率測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナトリウム冷却高速炉の液体ナトリウムを収容したプラント機器類でカバーガス中にある機器内表面は、プラント運転中にはナトリウム蒸気が付着・堆積して、ほぼ未酸化で鏡面の溶融ナトリウムで覆われる状態になる。
【0003】
このような機器類、特に安全上重要な機器類の熱設計をする場合、機器類が接する雰囲気の対流熱伝達による熱の授受のほか、輻射による放熱や入熱も計算で考慮する必要が有り、そのためには物性値として放射率が必要となる。
【0004】
一般に放射率は物質の表面性状(例えば金属では酸化の程度など)に影響されるため、液体ナトリウム表面のように雰囲気条件で酸化状態が影響を受ける場合、プラント運転条件と同等な雰囲気条件で(例えば数%以下の酸素濃度の不活性雰囲気)で、放射率を測定する必要がある。
【0005】
このためには、可能な限りプラント運転状態を模擬した不活性雰囲気中でナトリウムの表面状態を模擬して放射率を測定する装置が必要となる。
【0006】
従来の測定方法では、試料作成のため所望の条件でナトリウム蒸気に暴露させたのち、測定のため窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気の容器内に一旦入れて封止する。
【0007】
そして、放射率を測定する機器類(赤外線測定器や赤外線分光器)を設置している試料室内を不活性ガス雰囲気にし、その試料室内に試料をセットして測定する必要があった。
【0008】
この場合、試料の作成から測定までに要する時間内に、試料に付着したナトリウムは若干ながら生じる雰囲気の変化により性状が変化(温度変化による凝固や微量な酸素による酸化)して、所望の条件における放射率の測定が困難であった。
【0009】
これを解消するため、従来の測定装置では試料性状の変化を避けるのに、試料作成と同じ不活性ガス雰囲気内で測定を行っていた。
【0010】
具体的には、赤外線の光路を切り替えるための赤外線導入装置と、黒体炉と、雰囲気管理用のグローブボックス(G.B.)と、赤外分光光度計が用いられ、前述の赤外線導入装置と黒体炉がG.B.の内部に設置され、前述の赤外分光光度計がG.B.の外部に設置されている。
【0011】
G.B.内にある赤外線導入装置ならびに黒体炉とG.B.外にある赤外分光光度計は、G.B.の周壁部を貫通する信号線束により接続されている。また、G.B.の外部には、G.B.内のガスの状態を管理するためのG.B.管理操作部が設置されている。
【0012】
そして、不活性ガス雰囲気状態が管理されたG.B.内の試料台に試料をセットして、放射率の測定を行っていた。
【0013】
この種技術に関する先行技術文献としては、例えば特開平6-137953号公報(特許文献1)などを挙げることができる。
【0014】
この特許文献1に記載の赤外線センサによる温度測定方法は、温度Tの物体から放射される赤外線のうち、異なった波長λ1、λ2におけるそれぞれの放射エネルギーE(λ1)、E(λ2)の比であるE(λ1)/E(λ2)は、温度Tに対して単調減少関数となるという考えに基づいたものである。
【0015】
具体的には、次の手順で測定対象物体の温度Tを求めるものである。
(手順1):測定対象の物体から放射される赤外線のうち、異なった波長λ1、λ2におけるそれぞれの放射エネルギーE(λ1)、E(λ2)を測定する。
(手順2):その測定結果に基づいて、放射エネルギー比であるE(λ1)/E(λ2)を算出する。
(手順3):算出した放射エネルギー比の値を、予め算出して記憶している放射エネルギー比の値と温度Tの対応関係に当てはめて、測定対象の温度Tを求めるものである。
【先行技術文献】
【0016】

【特許文献1】特開平6-137953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかし、従来の測定装置は、内部に赤外線導入装置、黒体炉ならびに試料台などが設置されるためにある程度の大きさを有するG.B.が用いられ、そのG.B.の外部には赤外分光光度計とG.B.管理操作部が設置されている。
【0018】
従来の測定装置全体の大きさは.G.B.管理操作部を含まなくても約1m×2m×1.5m程度である。このようなことか測定装置全体が大型でかつ重量が重く、構造が複雑化して、コストが高く、また、大きな設置スペースが必要であるなどの課題がある。
【0019】
また、前記特許文献1に記載の赤外線センサによる温度測定方法では、温度測定を実施しようとしている現実の物体においては複雑なプロファイルとなる場合が有り、温度測定への適用が困難な場合があるなどの課題を有している。
【0020】
本発明の目的は、このような従来技術の課題を解消し、構造が簡単で、小型、軽量で取扱い性が良好で、設置スペースも狭くなり、安価で、しかも簡単にかつ確実に赤外線の放射率測定が可能な赤外線放射率測定装置および赤外線放射率測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記目的を達成するため、本発明の第1の手段は、
測定対象物体から放射される赤外線に対して測定する波長が異なる少なくとも第1の赤外線センサ、第2の赤外線センサならびに第3の赤外線センサと、
各種情報などを記憶する記憶部と、
前記第1、第2ならびに第3の赤外線センサの出力信号を処理する演算部を備え、
前記記憶部には、前記第1の赤外線センサと第2の赤外線センサからの波長差に対する赤外線強度の勾配と、前記測定対象物体の表面温度の関係が予め記憶されており、
前記演算部は、
前記第1の赤外線センサと第2の赤外線センサからの波長差に対する赤外線強度の勾配に基づいて、前記記憶部に記憶されている赤外線強度の勾配と測定対象物体の表面温度の関係から当該測定対象物体の表面温度を求め、
前記第3の赤外線センサの出力信号で示される波長λ、前記測定対象物の表面温度T、及び予め決定された定数α、β、γを式(2)に代入して、前記測定対象物体の全放射エネルギーEを演算して、
前記測定対象物体の表面温度から、黒体の全放射エネルギーEbを演算して、
前記測定対象物体の放射率(E/Eb)を演算する構成になっていることを特徴とするものである。
【0022】
本発明の第2の手段は前記第1の手段において、
前記測定対象物体は、例えば鉛-ビスマス、リチウム、リチウム-鉛、ナトリウム、スズなど液体金属が付着する物体、または例えばスバッタリングなどによって金属膜が形成される物体であることを特徴とするものである。
【0023】
本発明の第3の手段は前記第1の手段において、
前記第1の赤外線センサと第2の赤外線センサと第3の赤外線センサが併設されて1つのマトリクス構成要素となり、そのマトリクス構成要素がX-Y方向に多数並べられてマトリクス状の平面放射率測定装置を構成していることを特徴とするものである。
【0024】
本発明の第4の手段は、
テスト用測定対象物体の表面温度毎に、測定する波長が異なる第1の赤外線センサと第2の赤外線センサで前記テスト用測定対象物体から放射される赤外線強度を測定して、前記第1の赤外線センサと第2の赤外線センサからの波長差に対する赤外線強度の勾配と前記テスト用測定対象物体の表面温度の関係をまとめて記憶する第1のステップと、
測定する測定対象物体から放射される赤外線強度を前記第1の赤外線センサと第2の赤外線センサで測定して、前記第1の赤外線センサと第2の赤外線センサからの波長差に対する赤外線強度の勾配を求める第2のステップと、
前記記憶されている赤外線強度の勾配とテスト用測定対象物体の表面温度の関係から、前記求められた勾配に対応する測定対象物体の表面温度を求める第3のステップと、
前記第1の赤外線センサならびに第2の赤外線センサとは異なる第3の赤外線センサの出力信号で示される波長λ、前記測定対象物の表面温度T、及び予め決定された定数α、β、γを式(2)に代入して、前記測定対象物体の全放射エネルギーEを演算する第4のステップと、
前記測定対象物体の表面温度から、黒体の全放射エネルギーEbを演算する第5のステップと、
前記測定対象物体の放射率(E/Eb)を演算する第6のステップを有することを特徴とするものである。
【0025】
本発明の第5の手段は前記第4の手段において、
前記測定対象物体は、例えば鉛-ビスマス、リチウム、リチウム-鉛、ナトリウム、スズなど液体金属が付着する物体または例えばスバッタリングなどによって金属膜が形成される物体であることを特徴とするものである。
【0026】
本発明の第6の手段は前記第4の手段において、
前記第1の赤外線センサと第2の赤外線センサと第3の赤外線センサが併設されて1つのマトリクス構成要素となり、そのマトリクス構成要素がX-Y方向に多数並べられてマトリクス状の平面放射率測定装置を構成していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明は前述のような構成になっており、構造が簡単で、小型、軽量で取扱い性が良好で、設置スペースも狭くなり、安価で、しかも簡単にかつ確実に赤外線の放射率測定が可能な赤外線放射率測定装置および赤外線放射率測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係る温度・放射率測定装置の全体の構成を示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るセンサヘッドを図4において矢印A方向から視た矢視構成図である。
【図3】そのセンサヘッドを図4において矢印B方向から視た矢視構成図である。
【図4】そのセンサヘッドを図2において矢印C方向から視た矢視構成図である。
【図5】本発明の実施形態に係る赤外線センサを赤外線入射側から視た側面図である。
【図6】その赤外線センサの断面図である。
【図7】赤外線分光特性図で、(a)は黒体の赤外線分光特性図、(b)は測定対象物体の赤外線分光特性図である。
【図8】(a)、(b)は測定対象物体における赤外線分光特性の内外挿方法を説明するための図である。
【図9】黒体での各温度における波長と分光放射発散度との関係を示す特性図である。
【図10】本実施形態に係る温度・放射率測定装置での処理手順を説明するフローチャートである。
【図11】本発明の適用例1に係る機器状態監視装置の概略構成図である。
【図12】本発明の適用例2に係る板ガラスの製造に用いるフロートバス内放射率測定装置の概略構成を示す縦断面図である。
【図13】このフロートバス内放射率測定装置の概略構成を示す横断面図である。
【図14】本発明の適用例3に係る膜厚モニタ装置を備えた成膜装置の概略構成図である。
【図15】本発明の適用例4に係る温度測定・表示装置の概略構成図である。
【図16】その温度測定・表示装置に用いる温度測定用マトリクスセンサ部の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に本発明の実施形態を図面とともに説明する。図1は、本発明の実施形態に係る温度・放射率測定装置100の全体の構成を示す概略構成図である。

【0030】
本発明の実施形態に係る温度・放射率測定装置100は、測定対象物体200(測定対象物体200の具体例については、後述の適用例で説明する)から放射される赤外線の放射エネルギーを測定する測定部1と、各種データ、プログラム、演算結果などを記憶する記憶部15と、演算部16から主に構成されている。

【0031】
測定部1は、赤外線センサ2を内蔵したセンサヘッド3と、それと信号線4で接続されたデータ収録が可能な後段信号処理部5から主に構成されている。図中の符号7は測定対象物体200から放射される赤外線であり、それの放射エネルギーが測定部1によって測定される。

【0032】
実際に作製した測定部1のサイズは、横、高さとも数十cm以内であり、前述した従来のG.B.を備えた放射率測定装置に比べると格段に小型化して、設置スペースの狭小化が図れる。

【0033】
図2~図4はセンサヘッド3の構成を説明するための図で、図2はセンサヘッド3を図4において矢印A方向から視た矢視構成図、図3はセンサヘッド3を図4において矢印B方向から視た矢視構成図、図4はセンサヘッド3を図2において矢印C方向から視た矢視構成図である。

【0034】
図2~図4に示されているように、センサヘッド3は、耐環境性のために設けられた導光管8と、導光管8の後端部に取り付けられた赤外線センサ2と、導光管8の先端部近くに取り付けられた赤外線光路変更光学系9と、赤外線光路変更光学系9と対応する導光管8の上面(図2参照)と端面(図4参照)にそれぞれ設けられた赤外線透過部10と、赤外線センサ2の受光面側に設けられた集光レンズ11から構成されている。

【0035】
導光管8は、赤外線7を赤外線透過部10から入射して赤外線センサ2に導く機能を有している。

【0036】
導光管8の周囲の温度が測定の妨げにならないように、導光管8の内部は断熱のために真空状態に維持されている。また、導光管8の内面は迷光排除のために黒体に近い材料で構成するか、黒色塗料がコーティングされている。なお、使用環境などにより、導光管8の代わりに光ファイバーを使用することもできる。

【0037】
赤外線透過部10は、赤外線の透過に適した例えばCaF2やBaF2などで構成されている。

【0038】
図3に示すように、導光管8に対する赤外線7の入射方向が赤外線センサ2のセンサ面に対して垂直でない場合には、光路を変更するための赤外線光路変更光学系9が導光管8内に設置されている。赤外線光路変更光学系9は、例えば赤外線スプリッタやミラーなどから構成されている。

【0039】
図5は赤外線センサ2を赤外線入射側から視た側面図、図6は赤外線センサ2の断面図である。本実施形態の場合は図5に示すように、S1,S2,S3,S4の4個のセンサ素子12が上下方向ならびに左右方向に対称に設置されている。

【0040】
センサ材料には、例えばSi,Ge,InGaAs,PbS,PbSeなどの半導体、焦電素子、サーモパイルなどが用いられ、測定波長や感度に応じて適切な材料を選択することができる。

【0041】
図5に示す点線の円は、赤外線センサ2上での赤外線7の入射範囲を示しており、測定対象物体200からの赤外線7がS1,S2,S3,S4の各センサ素子12に均等に入射されるように、各センサ素子12の位置が設定されている。各センサ素子12の役割などについては、後で説明する。

【0042】
図6に示すように各センサ素子12の受光面側には、センサ素子12への入射光適正化および測定波長透過用フィルタの機能を有するセンサ前光学系13が設置されている。

【0043】
また、各センサ素子12の背面側には、センサ素子12の出力を増幅するためのプリアンプなどの初段信号処理部14が接続されている。S1,S2,S3,S4の各センサ素子12からの検出信号は夫々の初段信号処理部14で処理された後、信号線4を通って図1に示す後段信号処理部5に入力される。

【0044】
本発明の放射率測定装置は前述のような構成になっており、構造が簡単で、小型、軽量で取扱い性が良好で、設置スペースも狭くなり、安価である。

【0045】
図7は赤外線分光特性図で、(a)は黒体の赤外線分光特性図、(b)は測定対象物体200の赤外線分光特性図である。また、図8(a)、(b)は、測定対象物体200における赤外線分光特性の内外挿方法を説明するための図である。

【0046】
赤外線センサ2に内装されているセンサ素子12の設置数は、次の考えに基づいて設定されている。測定対象物体200の温度測定には最低2個のセンサ素子12が必要である。

【0047】
2色温度計は、2つの異なる波長の波長差Δλに対する赤外線強度の勾配は温度依存性を有していることを利用して温度を測定するものである。本実施形態はこの2色温度計の測定原理を応用して、測定対象物体200の温度測定を行っている。高精度な測定を行うため、3個以上のセンサ素子12を用いて温度を測定してもよい。

【0048】
その後、温度測定用センサ素子12のうち何れかのセンサ素子12で予め求めておいた測定値-温度-放射率の関係から、放射率を逆算する。

【0049】
なお、放射率測定のためのセンサ素子12を別途設けてもよい。単一波長における放射率のみの測定であれば、所望の波長におけるセンサ素子12を1個用いればよい。複数波長における放射率が必要な場合には、必要数のセンサ素子12を用いることになる。

【0050】
全放射率測定の必要がある場合には、本来、フーリェ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用い、図8(a)に示すように赤外線の全波長帯域にわたって放射エネルギーを測定して、放射率を算出する必要があり、作業が煩雑であった。

【0051】
ところが本発明では、複数波長の放射率の測定結果から全放射率を内外挿方法により求めることができる。次にこの方法について説明する。

【0052】
ある温度における黒体の放射エネルギーはPlanckの黒体輻射の下式(1)で示され、赤外線波長領域にわたり概略図7(a)のような波長特性になるとする。また、測定対象物体200については、同じ温度における放射エネルギーが概略図7(b)のような波長特性になるとする。

【0053】
【数1】
JP0006485953B2_000002t.gif
E(λ,T):波長λで絶対温度Tでの黒体の放射エネルギー[W/m2μm]
λ:測定する波長[μm]
T:絶対温度[K]
1:定数で3.743×108[Wμm4/m2
2:定数で1.439×104[μmK]
それぞれ赤外線波長領域にわたり積分した放射エネルギーをEb(図7(a)参照)、E(図7(b)参照)とすれば、測定対象物体200の全放射率は(E/Eb)で表される。

【0054】
予め、測定対象物体200からの波長特性(赤外線分光特性)を把握しておくことにより(その波長特性を整理して図1の記憶部15に記憶しておくことにより)、図8(b)に示すように、数点(この例では3点)の波長を測定するのみで、元の波長特性((図8(b)に示す実線の特性曲線)を再現することができる。

【0055】
その際、波長測定に要求される精度、コストなどを踏まえて測定点数を決定する。なお、図8(a),(b)の横軸上に示されている黒点は、それぞれ測定する波長を示している。

【0056】
ここでは一例として、測定対象物体200の波長特性(赤外線分光特性)も概ね前記式1に従うものとして、下式2で内外挿をする方法を示した。フィッティングする関数は元の波長特性の再現に適していればよく、任意の関数でよい。

【0057】
【数2】
JP0006485953B2_000003t.gif
E(λ,T):波長λで絶対温度Tでの測定対象物体の放射エネルギー[W/m2μm]
λ:測定する波長[μm]
T:絶対温度[K]
α、β、γ:係数
本実施形態の場合、各センサ素子12(S1,S2,S3,S4)の役割は、
S1,S2:測定対象物体200の表面の温度測定用
S3,S4:波長Aおよび波長Bにおける放射率測定用
となっている。

【0058】
図9は、黒体での温度と分光放射発散度との関係を示す特性図である。横軸に赤外線の波長を、縦軸に分光放射発散度をとっており、温度毎の波長-分光放射発散度の関係を示している。なお、分光放射発散度は、単位面積当たりに放出する放射束のことである。

【0059】
例えば図5に示すS1のセンサ素子12は波長1μmの赤外線を透過するセンサ前光学系13を、S2のセンサ素子12は波長6μmの赤外線を透過するセンサ前光学系13を、それぞれ用いて赤外線センサ2を構成しているとする。

【0060】
図9に示すように、
温度5500℃の特性曲線上での波長1μmにおける赤外線強度測定点Aと波長6μmにおける赤外線強度測定点Bを直線で結んだ波長差Δλに対する赤外線強度の勾配Xと、
温度2500℃の特性曲線上での波長1μmにおける赤外線強度測定点Cと波長6μmにおける赤外線強度測定点Dを直線で結んだ波長差Δλに対する赤外線強度の勾配Yと、
温度1000℃の特性曲線上での波長1μmにおける赤外線強度測定点Eと波長6μmにおける赤外線強度測定点Fを直線で結んだ波長差Δλに対する赤外線強度の勾配Zは、それぞれ異なっている。

【0061】
すなわち、赤外線強度の勾配がXであれば測定対象物体200の表面温度は5500℃、勾配がYであれば表面温度は2500℃、勾配がZであれば表面温度は1000℃・・・と特定できるから、赤外線強度の勾配と測定対象物体200の表面温度は相関関係がある。この赤外線強度の勾配と測定対象物体200の表面温度との関係を実験で予め詳細に求めておき、その結果をテーブルとして記憶部15(図1参照)に記憶しておく。

【0062】
そして測定する波長が異なるS1とS2の2個のセンサ素子12からの出力値を用いて、そのS1とS2の波長差Δλに対する赤外線強度の勾配を演算して、その演算結果から測定対象物体200の表面温度値を求めることができる。

【0063】
図10は、本実施形態に係る温度・放射率測定装置での処理手順を説明するフローチャートである。

【0064】
測定前の前提条件として、予め測定対象物体200における放射エネルギーの波長依存性を把握しておき、図8(b)に示すように測定波長帯域および放射エネルギーを測定する測定点数を決定して、要求に見合う赤外線センサヘッドであるものとする。なお、この前提条件は、全放射率測定が必要な場合の前提条件である。

【0065】
(手順1):測定する波長が異なるS1とS2の2個のセンサ素子12からの出力値を用いて、そのS1とS2の波長差Δλに対する赤外線強度の勾配を求め、さらにその勾配から測定対象物体200の表面温度を求める。

【0066】
前述のように、S1とS2の波長差Δλに対する赤外線強度の勾配と、測定対象物体200の表面温度は図9に示すような関係にあり、両者の関係が予めテーブルとして記憶部15(図1参照)に記憶されているから、そのテーブルを用いて測定対象物体200の表面温度を換算する。

【0067】
(手順2):S1とS2のセンサ素子12以外のS3のセンサ素子12の出力値と、前記式2から測定対象物体200の放射エネルギーの波長依存性を推定し、測定対象物体200の全放射エネルギーEを演算する。

【0068】
(手順3):手順1で得た表面温度を用いて、下記式3から黒体の全放射エネルギーEbを演算する。

【0069】
数3
Eb=σT4
Eb:黒体の全放射エネルギー
σ:Stefan-Boltzmann定数(5.670373×10-8Wm-2 K-4
T:表面温度[K]
(手順4):手順2で得た測定対象物体200の全放射エネルギーEと、手順3で得た黒体の全放射エネルギーEbから、測定対象物体200の放射率(E/Eb)を演算する。

【0070】
手順1での測定対象物体200の表面温度の換算、手順2での測定対象物体200の全放射エネルギーEの演算、手順3での黒体の全放射エネルギーEbの演算、ならびに手順4での測定対象物体200の放射率の演算は、図1に示す演算部16によって行われる。また、前記式2ならびに式3の演算式は、図1に示す記憶部15に記憶されている。

【0071】
このようにして、測定対象物体200の表面温度と放射率の2つを同時に得ることができる。

【0072】
前記手順1から手順4までをもう少し分けて具体的に説明すると、次のようなステップで構成されていることになる。

【0073】
テスト用測定対象物体の表面温度毎に、測定する波長が異なる第1の赤外線センサと第2の赤外線センサで前記テスト用測定対象物体から放射される赤外線強度を測定して、前記第1の赤外線センサと第2の赤外線センサからの波長差に対する赤外線強度の勾配と前記テスト用測定対象物体の表面温度の関係をまとめて記憶する第1のステップ。

【0074】
測定する測定対象物体から放射される赤外線強度を前記第1の赤外線センサと第2の赤外線センサで測定して、前記第1の赤外線センサと第2の赤外線センサからの波長差に対する赤外線強度の勾配を求める第2のステップ。

【0075】
前記記憶されている赤外線強度の勾配とテスト用測定対象物体の表面温度の関係から、前記求められた勾配に対応する測定対象物体の表面温度を求める第3のステップ。

【0076】
前記第1の赤外線センサならびに第2の赤外線センサとは異なる第3の赤外線センサの出力信号から、前記測定対象物体の全放射エネルギーEを演算する第4のステップ。

【0077】
前記測定対象物体の表面温度から、黒体の全放射エネルギーEbを演算する第5のステップ。

【0078】
前記測定対象物体の放射率(E/Eb)を演算する第6のステップ。

【0079】
次に、本実施形態の温度・放射率測定装置の適用例について具体的に説明する。

【0080】
(適用例1)
適用例1は、液体金属(例えば鉛-ビスマス、リチウム、リチウム-鉛、ナトリウムなど)を冷却材として使用するプラント機器類の表面に冷却材が付着したか否かをプラント機器類(測定対象物体)の放射率を測定して判断し、機器類の状態を監視する機器類状態監視装置への適用例である。

【0081】
液体金属を収容する機器類(液体金属べーパーを含むカバーガスに接触する機器類表面)には、経年に伴い液体金属べーパーが付着することにより機器類の放射率が変化する。これが機器類の伝熱特性や周囲のカバーガス領域の熱流動場にも影響を与え、この影響により機器類の健全性を損なう可能性がある。

【0082】
図11は、適用例1に係る機器状態監視装置の概略構成図である。

【0083】
この例では、容器21内に例えば鉛-ビスマス、リチウム、リチウム-鉛、ナトリウムなど液体金属からなる冷却材22が収容され、容器21の上端開口部は蓋体23で密閉されている。

【0084】
蓋体23の下面には所定の機器類24や配線、配管(いずれも図示せず)などが取り付けられている。また、冷却材22と蓋体23の間には例えばアルゴンガスなどの不活性ガスが充満されて、カバーガス空間部25を形成している。

【0085】
赤外線センサ2ならびに導光管8を有するセンサヘッド3の下端部が蓋体23から抜き差し可能に挿入され、機器類24の近くに設置されている。本適用例1では、センサヘッド3の下端部に金からなる赤外線反射鏡26が設置されている。

【0086】
容器21内には液体金属からなる冷却材22が収容されて、蓋体23で密閉されていることから、経年に伴い液体金属べーパーがカバーガス空間部25と接する容器21の内面、蓋体23の下面ならびに機器類24には液体金属べーパーが付着することがある。

【0087】
この液体金属の付着量が増すと、容器21の内面、蓋体23の下面ならびに機器類24から赤外線7が放射される。放射された赤外線7を赤外線反射鏡26により導光管8内に導き、赤外線センサ2で受光して後段信号処理部5で信号処理を行い、機器類24などの表面温度と放射率を測定して、測定結果を記録する。

【0088】
この機器状態監視装置は例えば機器類24の定期検査時などに使用され、定期的に機器類24などからの放射率の変化を把握することにより、機器類の健全性を監視することができる。この適用例1で機器状態監視装置を使用しない場合は、センサヘッド3を蓋体23から抜き出しておくとよい。

【0089】
この適用例1ではセンサヘッド3を蓋体23に対して抜き差し可能に設けたが、センサヘッド3を容器21に対して抜き差し可能に設けることも可能である。

【0090】
また、機器類24の外周あるいは(ならびに)容器21の内周に沿ってセンサヘッド3を移動可能に設けて、機器類24あるいは(ならびに)容器21での液体金属べーパーの付着分布を監視することも可能である。

【0091】
(適用例2)
フロート板ガラスは、フロートバスと呼ばれる炉の中で溶融スズ(液体金属)の上に溶かしたガラスを流し込み、板状に成形して製造される。板ガラスの成形過程で、溶融ガラスは表面張力と重力とのバランスで平衡厚さになるまで広がる。そのた後、フロートバスの出口に向かって牽引されながら冷却され、固化する際にローラで延伸されて所望の厚さに成形される。

【0092】
この過程において、ガラスの粘性は成形状態に影響を与える一つの要因となるが、温度に対して非常に敏感であるため、温度分布を詳細に把握する必要がある。

【0093】
フロートバス内は、溶融スズの酸化を防止するため、還元ガス(通常は、窒素と水素の混合ガス)が主にフロートバスの上部から導入されており、ガス中にはスズ、酸素およびイオウなどの不純物質が相状態や化合状態を変化させながら存在し、フロートバス上部の耐火壁や機器類などに付着、堆積する。

【0094】
通常、フロートバス内は600℃以上に維持されているので、温度場は輻射熱伝達により支配される(伊藤肇 上堀徹 ガラスの溶解・成形シミュレーション技術の展望、Res.Reports Asahi Glass Co.,Ltd.,57(2007)参照)。

【0095】
フロートバス内の機器類に付着、堆積した堆積物が放射率に影響するため、放射率の監視も製造プロセス上重要である。

【0096】
図12はこの適用例2に係る板ガラスの製造に用いるフロートバス内放射率測定装置の概略構成を示す縦断面図、図13はこのフロートバス内放射率測定装置の概略構成を示す横断面図である。

【0097】
これらの図に示されているように、炉形式のフロートバス31内には溶融スズ32の層が広い面積で形成され、フロートバス31内は600℃以上の高温に維持されている。

【0098】
溶融ガラス33は溶融ガラス注入口34から溶融スズ32の上に流し込まれて、溶融ガラス33の表面張力と重力とのバランスで平衡厚さになるまで広がった後、フロートバス31の出口に向かって牽引されながら冷却され、固化する際に複数本のトップローラ35と焼きなましローラ36で延伸されて所望の厚さに成形される。

【0099】
フロートバス31内では、溶融ガラス33の移動に伴い溶融スズ32も流動する。この溶融スズ32の酸化を防止するため、窒素と水素の混合ガスからなる還元ガス37が耐火性の上カバー38を通して、フロートバス31の上部空間39に導入されている。

【0100】
図12において符号40は、上部空間39内に設置されたヒータで、ガラスの移動方向に沿って複数本設けられている。また符号41は、上カバー38を支持する耐火壁である。従って、フロートバス31の上方は、主に上カバー38と耐火壁41によって覆われている。

【0101】
前述のように上部空間39のガス中にはスズ、酸素およびイオウなどの不純物質が相状態や化合状態を変化させながら存在し、フロートバス31の上方にある上カバー38、耐火壁41ならびに機器類(図示せず)などに付着、堆積する。

【0102】
そのため適用例2では、カバー38を通して適用例1と同様のセンサヘッド3が上部空間39に露呈している耐火壁41の近くに、抜き差し可能に挿入されている。このセンサヘッド3により、放射率の変化の監視がなされている。

【0103】
この適用例2ではセンサヘッド3を上部空間39に露呈している耐火壁41の近くに設けたが、センサヘッド3を上部空間39に露呈しているカバー38の近くに設けることも可能である。

【0104】
(適用例3)
スパッタリングなどで絶縁基板の表面に薄膜あるいは厚膜などの膜を形成する場合、膜厚制御のために膜厚モニタ装置が必要である。現在、水晶振動子を利用して、絶縁基板上の膜厚変化(重量変化)による共振周波数の変化を測定して、膜厚を制御する膜厚モニタ装置がある。

【0105】
この方法は、直径が約1cm、厚さが約0.5mmの円盤状の水晶振動子を用いて、絶縁基板上に形成した膜の平均膜厚をモニタリングするものであるが、この膜厚モニタ装置ではより微小な領域での膜厚分布の測定は困難である。

【0106】
そこで絶縁基板と成膜材料の放射率の差を利用して、絶縁基板上の膜厚モニタ装置の適用例を図14に示す。この図は、適用例3に係る膜厚モニタ装置を備えた成膜装置の概略構成図である。

【0107】
成膜装置(例えばスパッタリング装置)のケーシング51の内部には、スパッタ粒子52を放出するためのターゲット53と絶縁基板54が所定の間隔をおいて対峙されている。また、ターゲット53の内側には、磁石55が設置されている。

【0108】
前記ターゲット53と絶縁基板54には、数百ボルトの直流電源56が接続されている。さらにケーシング51には吸引穴57が形成され、吸引穴57を通してロータリーポンプ(図示せず)によりケーシング51内が所定の値に減圧されている。

【0109】
図14はスパッタリングしている途中の状態を示しており、図中の●印はターゲット53から放出されたスパッタ粒子52を、○印は残留ガス分子58を、太線矢印はイオンの衝突59を、それぞれ示している。

【0110】
このスパッタリング装置により、絶縁基板54の上にスパッタ粒子52が付着、堆積して金属薄膜60が形成される。この金属薄膜60などの薄膜形成の大半は、薄膜物質がクラスター状を形成して核となり、その核どうしが合体して島を作り、さらにその島が合体しながら連続した膜を形成する核成長型であり、このように連続膜に至るまでの遷移過程が重要である(岩田伸、佐藤壽、他、スパッタリングによる薄膜面生成過程の特性と加振による平坦化、Dynamics and Design Conference :機械力学・計測制御講演論文集,:D&D2001,234(2001)参照)。

【0111】
本適用例3では、このスパッタリング装置において、絶縁基板54(金属薄膜60)側から放出される赤外線7がセンサヘッド3に導入できるように、センサヘッド3が例えばケーシング51の蓋体61などに取り付けられている。

【0112】
センサヘッド3の光学系において、mmオーダーの測定スポットで絶縁基板54(金属薄膜60)の表面の放射率を測定することにより、金属薄膜60の形成過程における膜厚の変化が把握できる。

【0113】
さらに、センサヘッド3の光学系により測定スポットを移動することで、金属薄膜60の膜厚分布を把握することも可能である。金属薄膜60が十分な厚さをもって均一に成膜された場合には、センサヘッド3によって測定される放射率は一定となるため、均一な膜厚分布を有する金属薄膜60が形成される過程を、このセンサヘッド3によりモニタリングすることができる。

【0114】
この適用例3では膜形成時のモニタリングについて説明したが、基板に対する液体金属の濡れ状態をモニタリングするために本発明の赤外線放射率測定装置を使用することも可能である。

【0115】
(適用例4)
前記適用例1~3では、測定手段として1個のセンサヘッド3を用いて測定対象物体の表面温度、放射率を測定したが、この適用例4は、測定手段として多数個のセンサヘッドを併設して測定対象物体の広い面積での表面温度、放射率ならびにそれらの分布状態を測定する温度・放射率測定装置である。

【0116】
例えば飛行場の搭降口付近などに設置されて、測定対象物体である搭降者の例えば頭部や顔付近の熱画像が得られる従来のサーモグラフィは、表示画面上にマトリクス状にカラーや白黒の濃淡差で視野内の温度分布を表示することはできるが、熱画像上の個々の部分での表面温度の測定ならびにその表示はできない。

【0117】
すなわち、例えば皮膚、頭髪、服地など物質により赤外線の放射率が異なるため、前述した個々の物質に対して放射率の情報を与えない限り、熱画像の個々の部分での表面温度の測定はできない。

【0118】
この適用例4はこのような課題を解決したものであり、図15および図16を用いて説明する。図15は適用例4に係る温度測定・表示装置300の概略構成図、図16はその温度測定・表示装置300に用いる温度測定用マトリクスセンサ部71の概略構成図である。

【0119】
熱画像を出力することのできる温度測定・表示装置300は図15に示すように、温度測定用マトリクスセンサ部71と、記憶部72と、熱画像を出力する例えば液晶画面などの表示部73から主に構成され、各部は図に示すような接続関係になっている。

【0120】
温度測定用マトリクスセンサ部71は図16に示しているように、S1,S2,S3,S4の4個のセンサ素子12を組み合わせた赤外線センサ2(図5参照)からなるマトリクス構成要素74を、X-Y方向にN×N個マトリクス状に配置して構成したものである。

【0121】
温度測定用マトリクスセンサ部71内における各マトリクス構成要素74でのS1,S2,S3,S4の配置状態は同じである。赤外線センサ2の構成ならびに機能などについては、図1ないし図9を用いて説明したので、重複する説明は省略する。

【0122】
この温度測定・表示装置300は飛行場の搭降口付近などに設置されて、搭降者の頭部や顔付近からの赤外線(熱線)の放射エネルギーはマトリクス構成要素74によって個々に測定される。

【0123】
測定により得られた個々のデータは、記憶部72に格納されているプログラムに基づいて信号処理された後、表示部73に送られてマトリクス状にカラーや白黒の濃淡差で搭降者の頭部や顔付近の温度分布が表示される。また、必要に応じて、熱画像の個々の部分での温度表示もできるようになっている。
【符号の説明】
【0124】
1:測定部
2:赤外線センサ
3:センサヘッド
5:後段信号処理部
7:赤外線
8:導光管
12:センサ素子
13:センサ前光学系
15:記憶部
16:演算部
21:容器
22:冷却材
24:機器類
25:カバーガス空間部
31:フロートバス
32:溶融スズ
33:溶融ガラス
39:上部空間
41:耐火壁
51:ケーシング
52:スパッタ粒子
54:絶縁基板
60:金属薄膜
71:温度測定用マトリクスセンサ部
72:記憶部
73:表示部
74:マトリクス構成要素
100:温度・放射率測定装置
200:測定対象物体
300:温度測定・表示装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15