TOP > 国内特許検索 > RNA干渉剤、その製造方法及びその利用 > 明細書

明細書 :RNA干渉剤、その製造方法及びその利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6346568号 (P6346568)
登録日 平成30年6月1日(2018.6.1)
発行日 平成30年6月20日(2018.6.20)
発明の名称または考案の名称 RNA干渉剤、その製造方法及びその利用
国際特許分類 A61K  31/7088      (2006.01)
A61K  31/7125      (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
C12Q   1/68        (2018.01)
C12N  15/113       (2010.01)
FI A61K 31/7088
A61K 31/7125
A61P 43/00 105
A61P 43/00 111
C12Q 1/68 100Z
C12N 15/113 Z
請求項の数または発明の数 11
全頁数 31
出願番号 特願2014-549919 (P2014-549919)
出願日 平成25年11月29日(2013.11.29)
国際出願番号 PCT/JP2013/082179
国際公開番号 WO2014/084354
国際公開日 平成26年6月5日(2014.6.5)
優先権出願番号 2012261730
優先日 平成24年11月29日(2012.11.29)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成28年10月6日(2016.10.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
発明者または考案者 【氏名】北出 幸夫
【氏名】中島 礼美
個別代理人の代理人 【識別番号】110000110、【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
審査官 【審査官】原口 美和
参考文献・文献 国際公開第2011/085056(WO,A1)
国際公開第2011/119887(WO,A1)
特表2012-509688(JP,A)
特表2001-519642(JP,A)
国際公開第2007/094135(WO,A1)
Nucleic Acids Research,2009年,Vol. 37, No. 9,pp. 2867-2881
Chem Eur J,2011年,Vol. 17,pp. 1519-1528
Chem Commun,2010年,Vol. 46,pp. 4270-4272
調査した分野 A61K 31/7088
A61K 31/7125
A61P 43/00
C12N 15/113
C12Q 1/68
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
Science Direct
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
3’末端にPAZドメイン高親和性ユニットを備え、標的遺伝子の所定の塩基配列に対するアンチセンス部位を有するガイド鎖オリゴヌクレオチドと、
3’末端に、以下の式(1)で表されるPAZドメイン低親和性ユニットを備え、前記アンチセンス部位に特異的にハイブリダイズするパッセンジャー鎖オリゴヌクレオチドと、
を備える、RNA干渉剤。
【化1】
JP0006346568B2_000025t.gif
(ただし、Xは、酸性基又は塩基性基又はこれらを有する連結基であり、Yは、炭素数が2又は3のアルキレン基を表し、nは2以上の整数を表す。)
【請求項2】
前記式(1)は、以下の式で表される、請求項1に記載のRNA干渉剤。
【化2】
JP0006346568B2_000026t.gif

【請求項3】
前記式(1)において、nは2である、請求項1又は2に記載のRNA干渉剤。
【請求項4】
前記式(1)において、Yが炭素数2のアルキレン基である、請求項3に記載のRNA干渉剤。
【請求項5】
前記PAZドメイン高親和性ユニットは、以下の式で表される、請求項1~4のいずれかに記載のRNA干渉剤。
【化3】
JP0006346568B2_000027t.gif
[式中、Aは独立して以下のいずれかの式を表し、mは1又は2以上の整数を表す。]
【化4】
JP0006346568B2_000028t.gif

【請求項6】
前記PAZドメイン高親和性ユニットは、TTと同等あるいはそれ以上PAZドメインより親和性が高く、前記PAZドメイン低親和性ユニットは、TTよりもPAZドメイン親和性が低い、請求項1~5のいずれかに記載のRNA干渉剤。
【請求項7】
標的遺伝子の所定の塩基配列に対するアンチセンス部位を有し、3’末端に、PAZドメイン高親和性ユニットを有するガイド鎖オリゴヌクレオチドと、
前記アンチセンス部位に特異的にハイブリダイズし、3’末端にPAZドメイン低親和性ユニットを1又は2以上有するパッセンジャー鎖オリゴヌクレオチドと、
を備え、
前記PAZドメイン高親和性ユニットは、TTと同等あるいはそれ以上PAZドメインより親和性が高く、前記PAZドメイン低親和性ユニットは、TTよりもPAZドメイン親和性が低く、
前記PAZドメイン低親和性ユニットは酸性基、塩基性基、水酸基、エーテル結合から選択される極性基を含み、前記PAZドメイン高親和性ユニットよりも極性が高い、RNA干渉剤。
【請求項8】
前記酸性基は、カルボキシ基及びリン酸基から選択され、前記塩基性基は、アミノ基から選択される、請求項7に記載のRNA干渉剤。
【請求項9】
RNA干渉剤の製造方法であって、
標的遺伝子の所定の塩基配列に対するアンチセンス部位を有し、3’末端に、PAZドメイン高親和性ユニットを有するガイド鎖オリゴヌクレオチドと、前記アンチセンス部位に特異的にハイブリダイズし、3’末端に、以下の式(1)で表されるPAZドメイン低親和性ユニットを1又は2以上をパッセンジャー鎖オリゴヌクレオチドと、を準備し、ハイブリダイゼーションにより二重鎖RNAを形成する工程、
を備える、方法。
【化5】
JP0006346568B2_000029t.gif
(ただし、Xは、酸性基又は塩基性基又はこれらを有する連結基であり、Yは、炭素数が2又は3のアルキレン基を表し、nは2以上の整数を表す。)
【請求項10】
遺伝子の機能の評価方法であって、
前記遺伝子を標的遺伝子として、請求項1~8のいずれかに記載のRNA干渉剤を準備する工程と、
前記遺伝子を保持する細胞に前記RNA干渉剤を導入して、前記細胞における変化を評価する工程、
を備える、評価方法。
【請求項11】
RNA干渉剤のスクリーニング方法であって、
標的遺伝子の1又は2以上の異なる所定の塩基配列に対するアンチセンス部位候補をそれぞれ有する1又は2以上の請求項1~8のいずれかに記載のRNA干渉剤を準備する工程と、
前記1又は2以上のRNA干渉剤を前記標的遺伝子を保持する細胞に導入して前記細胞における前記標的遺伝子の発現状態を評価する工程と、
を備える、スクリーニング方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本明細書は、RNA干渉(以下、単に、RNAiともいう。)剤、その製造方法及びその利用等に関する。
【背景技術】
【0002】
RNAiは、配列特異的にmRNAの分解を生じさせ、ターゲットとなる遺伝子の発現を抑制することができる。RNAiを引き起こすsiRNAやmiRNAは、技術としての簡便性及びその高い遺伝子抑制効果の観点から、遺伝子の機能解析や臨床応用が期待されている。
【0003】
RNAi経路では、通常、細胞内で二本鎖siRNA又はmiRNAがRISCと呼ばれるタンパク質複合体に取り込まれ、一本鎖に解離する。そのままRISC中に残されて遺伝子発現に関与する鎖をガイド鎖(アンチセンス鎖)といい、他方、RISCから放出される他方の鎖をパッセンジャー鎖(センス鎖)という。siRNAの場合には、ガイド鎖が正しくRISCに取り込まれると、ガイド鎖を含むRISC複合体は、ガイド鎖と相補的な配列を有するターゲットmRNAを認識し、ago2のスライサー活性によって標的mRNAを切断する。また、miRNAの場合には、標的mRNAを認識し、翻訳過程を抑制する。こうした結果、ターゲット遺伝子の発現が抑制されると考えられている。
【0004】
RISCがこれら二本鎖のうちどのような機構で一方の鎖をガイド鎖として認識するかについては、二本鎖両末端の熱力学的安定性に起因すると推測されている。
【0005】
ここで、パッセンジャー鎖があたかもガイド鎖のように取り込まれうる場合もある。こうした場合には、いわゆるオフ・ターゲット効果が生じてしまう。オフ・ターゲット効果とは、ターゲット遺伝子以外の本来意図していない他の遺伝子を抑制してしまう現象をいう。RNAiにおいては、パッセンジャー鎖がRISCに取り込まれることで、パッセンジャー鎖の有する塩基配列(ガイド鎖と相補的である)が本来のターゲット遺伝子でない他の遺伝子のmRNAに対して作用して、その発現を抑制してしまうことが生じうる。
【0006】
こうしたオフ・ターゲット効果を抑制するための試みとして、パッセンジャー鎖に修飾ヌクレオチドを導入することが開示されている(特許文献1)。また、パッセンジャー鎖に不連続部位を設けることが開示されている(特許文献2)。さらに、センス鎖(パッセンジャー鎖)の一又は両方の末端のヌクレオチドの2’位の水酸基にメチル基等で修飾することで、アンチセンス鎖(ガイド鎖)の取り込をRISCへの取り込みを促進することなどが開示されている(特許文献3)。
【0007】
また、RISCのPAZ(Piwi/Argonaute/Zwille)ドメインは、普遍的に疎水性ポケットを有することがわかっており、この疎水性ポケットにガイド鎖の3’-末端が相互作用することでガイド鎖-RISC複合体が形成されることがわかっている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特表2010-538677号公報
【特許文献2】特表2009-530319号公報
【特許文献3】特表2011-511636号公報
【0009】

【非特許文献1】J.B. Ma, K. Ye, D. J. Patel, Structural basis for overhang-specific small interfering RNA recognition by the PAZ domain. Nature 429, 318-320 (2004)
【発明の概要】
【0010】
しかしながら、パッセンジャー鎖への修飾ヌクレオチドの導入は通常煩雑であった。また、RNAiによるターゲット遺伝子の抑制効果及びオフ・ターゲット効果の抑制効果の双方が十分に確保されているとはいえなかった。
【0011】
そこで、本明細書の開示は、簡易な構成でオフ・ターゲット効果抑制効果が得られるRNA干渉剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、RNA干渉において、本来ターゲット遺伝子でない他の遺伝子の発現を抑制してしまうオフ・ターゲット効果を抑制するには、パッセンジャー鎖(センス鎖)の3’末端のPAZドメインへの取り込みを抑制することが有効であるという推論を立てた。そこで、RNA二重鎖のガイド鎖及び/又はパッセンジャー鎖の3’末端に極性基を導入して、オフ・ターゲット効果の抑制について評価した。その結果、3’末端に極性基を導入した一本鎖RNAは、結果としてRNAi効果を発揮しえないことがわかった。こうした知見に基づき、本明細書の開示は、以下の手段を提供する。
【0013】
本明細書の開示によれば、3’末端にPAZドメイン低親和性ユニットを1又は2以上を備える、一本鎖オリゴヌクレオチドが提供される。前記PAZドメイン低親和性ユニットは、以下の式で表されていてもよい。
【0014】
【化1】
JP0006346568B2_000002t.gif
(ただし、Xは、連結基であり、Yは、炭素数が2以上の基を表し、nは1以上の整数を表す。)Yは炭素数が2の基を表していてもよい。
【0015】
PAZドメイン低親和性ユニットは、例えば、以下の式で表されるユニットであってもよい。
【0016】
【化2】
JP0006346568B2_000003t.gif
前記3’末端には、PAZドメイン低親和性ユニットを2個備えることが好ましい。
【0017】
本明細書の開示によれば、標的遺伝子の所定の塩基配列に対するアンチセンス部位を有するガイド鎖オリゴヌクレオチドと、本明細書に開示される一本鎖オリゴヌクレオチドであって前記アンチセンス部位に特異的にハイブリダイズするパッセンジャー鎖オリゴヌクレオチドと、を備える、RNA干渉剤が提供される。前記ガイド鎖オリゴヌクレオチドの3’末端には、PAZドメイン高親和性ユニットを備えていてもよい。
【0018】
さらに、前記PAZドメイン高親和性ユニットは、以下の式で表されるものでもあってよい。
【0019】
【化3】
JP0006346568B2_000004t.gif
[式中、Aは独立して以下のいずれかの式を表し、mは1又は2以上の整数を表す。]
【化4】
JP0006346568B2_000005t.gif

【0020】
本明細書の開示によれば、3’末端にPAZドメイン低親和性ユニットを1又は2以上を備える、一本鎖オリゴヌクレオチドであるパッセンジャー鎖とガイド鎖とを準備し、ハイブリダイゼーションにより二重鎖RNAを形成する工程、を備える、RNA干渉剤の製造方法が提供される。
【0021】
本明細書の開示によれば、以下の式で表される、オリゴヌクレオチド合成試薬が提供される。
【0022】
【化5】
JP0006346568B2_000006t.gif
(式中、Yは、炭素数が1以上4以下のアルキレン基を表し、W1は、水素原子又はヒドロキシル保護基を表し、W2は、水素原子、ホスホロアミダイト基又は固相担体に結合される若しくは結合された連結基を表す。)
【0023】
本明細書の開示によれば、遺伝子の機能の評価方法であって、前記遺伝子を標的遺伝子として、本明細書に開示されるRNA干渉剤を準備する工程と、前記遺伝子を保持する細胞に前記RNA干渉剤を導入して、前記細胞における変化を評価する工程、を備える、評価方法が提供される。
【0024】
本明細書の開示によれば、RNA干渉剤のスクリーニング方法であって、標的遺伝子の1又は2以上の異なる所定の塩基配列に対するアンチセンス部位候補をそれぞれ有する1又は2以上の本明細書に開示されるRNA干渉剤を準備する工程と、前記1又は2以上のRNA干渉剤を前記標的遺伝子を保持する細胞に導入して前記細胞における前記標的遺伝子の発現状態を評価する工程と、を備える、スクリーニング方法が提供される。
【0025】
本明細書の開示によれば、RNA干渉剤のスクリーニング方法であって、標的遺伝子の所定の塩基配列に対するアンチセンス部位を有するガイド鎖と、3’末端に1又は2以上のPAZドメイン低親和性ユニット候補を有するパッセンジャー鎖と、を有する1又は2以上のRNA干渉剤を準備する工程と、前記1又は2以上のRNA干渉剤を前記標的遺伝子を保持する細胞に導入して前記細胞における変化を評価する工程と、を備える、スクリーニング方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本明細書に開示される一本鎖RNAの一例を示す図である。
【図2】本明細書に開示されるRNA干渉剤の例を示す図である。
【図3】本明細書に開示されるRNA干渉剤の作用の概要を示す図である。
【図4】実施例で作製したRNA干渉剤を示す図である。
【図5】RNA干渉剤の評価結果を示す図である。
【図6】RNA干渉剤の評価結果を示す図である。
【図7】マイクロアレイ解析における各アレイ(A、B、C)間における相関の評価結果を示す図である。
【図8】フィルタリング指定地を1.15としたときのマイクロアレイ解析結果を示す図である。
【図9】フィルタリング指定地を1としたときのマイクロアレイ解析結果を示す図である。
【図10】RNA干渉剤のセンス鎖によるオフ・ターゲット効果の抑制をアレイ上の9スポットについて評価した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書の開示は、RNA干渉に用いられるRNA干渉剤、その製造方法並びにRNA干渉剤の利用等に関する。本明細書に開示される一本鎖オリゴヌクレオチドをRNA干渉剤のパッセンジャー鎖として用いることで、パッセンジャー鎖によるオフ・ターゲット効果を抑制できる。

【0028】
RNA干渉剤のオフ・ターゲット効果が抑制されることで、遺伝子の機能解析や薬剤スクリーニングを高い信頼性を行うことができる。また、遺伝子治療も高い安全性で行うことができる。

【0029】
また、RNA干渉剤のオフ・ターゲット効果が抑制されることで、ガイド鎖におけるアンチセンス部位の選択の自由度を高めることができ、よりRNA干渉効果を高めることができる。

【0030】
以下、本明細書の開示を、図1~図3を適宜参照しながら詳細に説明する。

【0031】
(一本鎖オリゴヌクレオチド)
本明細書に開示される一本鎖オリゴヌクレオチドの一例を図1に示す。図1に示すように、本明細書に開示される一本鎖オリゴヌクレオチドは、3’末端にPAZドメイン低親和性ユニットを1又は2以上を備えることができる。なお、図1においてはPAZドメイン低親和性ユニットを2個備えているが、典型例として示すものであり、これに限定する趣旨ではない。

【0032】
本明細書に開示されるこの一本鎖オリゴヌクレオチドは、図2に示すように、RNA干渉剤のパッセンジャー鎖として用いられるものである。以下、本明細書に開示される一本鎖オリゴヌクレオチドを、パッセンジャーオリゴヌクレオチドともいう。

【0033】
本明細書の開示は、RNAi経路において、RISC中のPAZドメイン構造に着目している。PAZドメインはsiRNAの3’末端2塩基突出部位を認識する。PAZドメインは疎水性ポケットを有している。PAZドメイン低親和性ユニットは、例えば、従来のsiRNAの3’末端を構成しているTTなどに比較して、このポケットとの相互作用が弱まる構造を有するものであればよい。

【0034】
PAZドメイン低親和性ユニットは、RNA鎖の3’末端に2単位備えられたとき、RISCのPAZドメインに対して、3’末端にTTを備える場合よりもRNA鎖を結合しにくくするユニットを意味している。PAZドメイン低親和性ユニットは、例えば、以下のようにして取得できる。各一本鎖RNAの3’末端がそれぞれ2単位突出している二重鎖RNAのガイド鎖及びパッセンジャー鎖の各3’末端をTTとした二重鎖RNAを対照RNA二重鎖として準備する。また、ガイド鎖の3’末端に2単位のPAZドメイン低親和性ユニット候補を導入したこと以外は対照の二重鎖RNAとは同一の被験二重鎖RNAを準備する。そして、対照二重鎖RNAと被験二重鎖RNAを同等の条件で発現抑制の標的となる遺伝子を保持する細胞に導入したとき、対照二重鎖RNAよりも標的遺伝子の発現抑制効果が低くなるような被験二重鎖RNAの3’末端の候補をPAZドメイン低親和性ユニットということができる。より具体的には、被験二重鎖RNAの導入量を高めても発現抑制効果が向上しないようなユニットをいう。

【0035】
なお、上記細胞は、ヒト細胞であってもよく、非ヒト動物細胞であってもよく、さらに、他の細胞であってもよい。

【0036】
こうしたPAZドメイン低親和性ユニットは、極性基を含んでいることが好ましい。PAZドメインには、疎水性の高いユニットが高い親和性を有することが一般的に知られているからである。PAZドメインは、siRNAのガイド鎖の3’末端の2塩基突出部位を認識する。RISCのPAZドメインは、芳香環を有する疎水性残基が密集した疎水性ポケットを有しており、疎水性相互作用によりsiRNAのガイド鎖の2塩基突出部位を認識すると考えられている。このため、パッセンジャー鎖の3’末端が、ガイド鎖の3’末端よりも疎水性ポケットとの相互作用を弱めるような構造をPAZドメイン低親和性ユニットを備えるようにすればよい。こうした、構造としては、特に限定されないが、例えば、細胞内において、酸性を呈するカルボキシル基(-COOH)、リン酸基(-PO3H、-PO3H-)などの酸性基や、細胞内において塩基性を呈するアミノ基(-NH2、—NH-)などの塩基性基が挙げられる。また、水酸基(-OH)やエーテル結合(-O-)などであってもよい。

【0037】
好ましくは、PAZドメイン低親和性ユニットは、例えば、以下の式(1)で表される。PAZドメイン低親和性ユニットが3’末端の端末にあるとき、以下の式の右端は、水素又はリン酸基である。

【0038】
【化6】
JP0006346568B2_000007t.gif

【0039】
上記式(1)において、Xは、連結基であり、Yは、炭素数が2以上の基である。また、上記式(1)においてnはPAZドメイン低親和性ユニットの個数を表し、1又は2以上の整数を表している。nが2以上のとき、PAZドメイン低親和性ユニットは、連続して備えられる。こうしたPAZドメイン低親和性ユニットによれば、簡易に合成できるとともに、効果的にパッセンジャーオリゴヌクレオチドのPAZドメインへの結合を抑制できる。

【0040】
連結基Xを含むPAZドメイン低親和性ユニットとしては、例えば、以下に記載の二価の基が挙げられる。以下の式においてRは、アルキル基やアシル基等の置換基を表し、好ましくは炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のアルキル基を備えるアシル基を表す。
【化7】
JP0006346568B2_000008t.gif

【0041】
Yは、炭素数が2以上の基であればよいが、好ましくは、炭素数が1以上4以下のアルキレン基を表している。アルキレン基であることが好ましい。直鎖状であっても分岐状であってもよい。アルキレン基は、好ましくは、炭素数が1~3個であり、より好ましくは、2個又は3個であり、一層好ましくは2個である。アルキレン基の水素原子は、置換されていてもよいが、置換されていないことが好ましい。

【0042】
好ましいPAZドメイン低親和性ユニットは、以下の式で表される。以下の式において、Y及びnは、式(1)と同義であるが、Yは炭素数が1~3個の無置換の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である。より好ましくは炭素数が2個のエチレン基である。

【0043】
【化8】
JP0006346568B2_000009t.gif

【0044】
PAZドメイン低親和性ユニットは、パッセンジャーオリゴヌクレオチドの3’末端に1又は2個以上備えることができる。好ましくは、2個以上を備えることができる。PAZドメイン低親和性ユニットは、複数個備えるとき、連続して備えることが好ましい。また、PAZドメイン低親和性ユニットは、4個以下であることが好ましく、より好ましくは3個以下であり、さらに好ましくは2個である。なお、3’末端には、PAZドメイン低親和性ユニットでないオリゴヌクレオチドを備えていてもよい。好ましくは、3’末端の端末から連続してPAZドメイン低親和性ユニット備えている。

【0045】
パッセンジャーオリゴヌクレオチドは、こうした3’末端を備えることを特徴とする以外は、通常のパッセンジャーオリゴヌクレオチドとしての要素を備えることができる。すなわち、組み合わされるガイド鎖のアンチセンス部位と特異的にハイブリダイズするセンス部位を備えている。センス部位は、好ましくは、アンチセンス部位と完全に相補的なRNA塩基(A、G、C及びU)からなる塩基配列である。センス部位等においては、RNA干渉剤としての安定性を高めることなどを目的として適宜修飾塩基のほか、ヌクレオシド誘導体などを用いることができる。

【0046】
パッセンジャーオリゴヌクレオチドの長さは限定しないが、PAZドメイン低親和性ユニットを含み、当該1ユニットを1ヌクレオチドとしたとき、19以上49以下のヌクレオチドであることが好ましく、より好ましくは19以上30以下であり、さらに好ましくは19以上24以下であり、一層好ましくは19以上22以下である。最も好ましくは21ヌクレオチドである。

【0047】
図1に示すように、パッセンジャーオリゴヌクレオチドは、PAZドメイン低親和性ユニットをその3’末端に有しているため、パッセンジャーオリゴヌクレオチドの3’末端はPAZドメインと結合しにくい。その結果、図2及び図3に示すように、パッセンジャーオリゴヌクレオチドをパッセンジャー鎖としてガイド鎖とともにRNA干渉剤を構成したとき、このパッセンジャー鎖は、RISCから選択的に放出されることになる。したがって、意図しない一本鎖(パッセンジャー鎖)-RISCが形成されない。このため、標的遺伝子以外の他の遺伝子の発現を抑制することがない。すなわち、パッセンジャーオリゴヌクレオチドによるターゲット効果(オフ・ターゲット効果)を抑制できる。

【0048】
さらに、パッセンジャーオリゴヌクレオチドは、極性基を含む簡易な単位であるため、合成コストを低減できる。さらにまた、パッセンジャーオリゴヌクレオチドは3’末端のみに簡易な極性単位を備えることで、オフ・ターゲット効果を抑制できる。

【0049】
こうしたパッセンジャーオリゴヌクレオチドの合成方法は、後段にて詳述する。

【0050】
(RNA干渉剤)
本明細書に開示されるRNA干渉剤は、標的遺伝子の所定の塩基配列に対するアンチセンス部位を有するガイド鎖オリゴヌクレオチドと、パッセンジャーオリゴヌクレオチドと、を備えることができる。図2には、RNA干渉剤の一例を示す。図2(a)及び(b)は、それぞれガイド鎖の3’末端にPAZドメイン高親和性ユニットを備えない形態及び当該ユニットを備える形態を示す。

【0051】
本明細書に開示されるRNA干渉剤によれば、パッセンジャーオリゴヌクレオチドをパッセンジャー鎖として備えているため、パッセンジャー鎖との意図しないRISC複合体の形成が抑制される(図3参照)。この結果、オフ・ターゲット効果が抑制される。結果として、高い選択性で標的遺伝子の発現を抑制できる。

【0052】
RNA干渉剤のガイド鎖は、標的遺伝子の所定の塩基配列(センス配列)と特異的にハイブリダイズするアンチセンス部位を有している。ここでアンチセンス部位は標的遺伝子の塩基配列と好ましくは完全に相補的なRNA塩基(A、G、C及びU)からなる塩基配列を有している。ガイド鎖のアンチセンス部位等においては、RNA干渉剤としての安定性を高めることなどを目的として適宜修飾塩基のほか、ヌクレオシド誘導体などを用いることができる。

【0053】
ガイド鎖は、典型的には、パッセンジャー鎖とハイブリダイズ時においてパッセンジャー鎖の5’末端から1塩基又は2塩基以上(好ましくは2塩基)突出するダングリング末端を3’末端に備えている。ガイド鎖は、従来公知のsiRNAと同様、その3’末端には、UUないしTTなどのヌクレオチドを備えることができる。ガイド鎖の3’末端は、U、T、又はその他の塩基を1又は2以上組み合わせて備えることができる。

【0054】
RNA干渉剤のガイド鎖は、3’末端にPAZドメイン高親和性ユニットを備えることができる。PAZドメイン高親和性ユニットは、RNA鎖の3’末端に2単位備えられたとき、RISCのPAZドメインに対して、3’末端にTTを備える場合よりも結合しやすいユニットを意味している。PAZドメイン高親和性ユニットは、例えば、以下のようにして取得できる。各一本鎖RNAの3’末端がそれぞれ2単位突出している二重鎖RNAを構成するガイド鎖(所定の遺伝子のセンス鎖に対して相補的なRNA塩基配列を有する)及びパッセンジャー鎖の各3’末端をTTとした二重鎖RNAを対照RNA二重鎖として準備する。また、ガイド鎖の3’末端に2単位のPAZドメイン高親和性ユニット候補を導入したこと以外は対照の重鎖RNAとは同一の被験二重鎖RNAを準備する。そして、対照二重鎖RNAと被験二重鎖RNAを同様の条件で発現抑制の標的となる遺伝子を保持する細胞に導入したとき、対照二重鎖RNAよりも標的遺伝子の発現抑制効果が高くなるような被験二重鎖RNAの3’末端を構成するユニットをいう。より具体的には、被験二重鎖RNAの導入量を高めたら発現抑制効果も向上するようなユニットをいう。

【0055】
PAZドメイン高親和性ユニットは、PAZドメイン低親和性ユニットよりも発現抑制効果が高いということもできる。また、PAZドメイン高親和性ユニットは、PAZドメイン低親和性ユニットよりも極性が低い(疎水性が高い)ユニットであるということもできる。

【0056】
また、PAZドメイン高親和性ユニットは、そのバックボーンとして天然型ヌクレオチドの糖-リン酸骨格であってもよいし、その他の非天然骨格であってもよい。そして、当該ユニットは、天然型のヌクレオチドであってもよいし、修飾型ヌクレオチドであってもよいし、非ヌクレオチド化合物であってもよい。

【0057】
こうしたPAZドメイン高親和性ユニットは、ベンゼン様骨格を有する単位を好ましく用いることができる。PAZドメイン高親和性ユニットは、例えば以下の式(2)で表される。PAZドメイン高親和性ユニットが3’末端の端末にあるとき、以下の式の右端は、水素又はリン酸基である。式(2)においてmはPAZドメイン高親和性ユニットの個数を表し、1又は2以上の整数を表している。mが2以上のとき、PAZドメイン高親和性ユニットは、連続して備えられる。

【0058】
【化9】
JP0006346568B2_000010t.gif
[式中、Aは独立して以下のいずれかの式を表し、mは1又は2以上の整数を表す。]

【0059】
【化10】
JP0006346568B2_000011t.gif

【0060】
こうしたベンゼン様骨格を有する単位は、例えば、国際公開第WO2007/094135号等にその詳細が記載されており、当業者であれば、こうした単位をPAZドメイン高親和性ユニットとして付与することができる。

【0061】
PAZドメイン高親和性ユニットは、パッセンジャーオリゴヌクレオチドの3’末端に1又は2単位以上備えることができる。好ましくは、2個以上を備えることができる。PAZドメイン高親和性ユニットは、複数個備えるとき、連続して備えることが好ましい。また、PAZドメイン高親和性ユニットは、4個以下であることが好ましく、より好ましくは3個以下であり、さらに好ましくは2個である。

【0062】
(RNA干渉剤の製造方法)
本明細書に開示されるRNA干渉剤の製造方法は、パッセンジャーオリゴヌクレオチドと、ガイド鎖とを準備し、ハイブリダイゼーションにより二重鎖RNAを形成する工程を備えることができる。この製造方法によれば、オフ・ターゲット効果が抑制されたRNA干渉剤を簡易に製造することができる。

【0063】
パッセンジャーオリゴヌクレオチドは、その3’末端の合成時に、PAZドメイン低親和性ユニットを付与するためのホスホアミダイト体やCPG試薬を用いることで、公知のホスホアミダイト法により合成することができる。

【0064】
PAZドメイン低親和性ユニット付与のためのホスホアミダイト体やCPG試薬などのオリゴヌクレオチド合成用試薬としては、例えば以下の式で表される化合物を用いることができる。

【0065】
【化11】
JP0006346568B2_000012t.gif

【0066】
上記式において、Wは水素原子又は水酸基保護基を表すことができる。水酸基保護基としては、水酸基を意図しない反応から保護する基であればよい。こうした水酸基保護基としては、特に限定しないで従来公知の各種の水酸基保護基を用いることができる。本発明の好ましい保護基は、フルオレニルメトキシカルボニル基(FMOC基)、ジメトキシトリチル基(DMT基)、四級ブチルジメチルシリル基(TBDMS基)、モノメトキシトリチル基、トリフルオロアセチル基、レブリニル基、またはシリル基である。好ましい保護基は、トリチル基であり、例えば、ジメトキシトリチル(DMT)及び四級ブチルジメチルシリル基(TBDMS基)から選択される。

【0067】
また、Wは、水酸基保護基、ホスホルアミダイト基又は固相担体に結合される若しくは結合された連結基を表す。Wがホスホルアミダイト基である化合物(アミダイト化合物)は、ホスホルアミダイト法によるホスホルアミダイト試薬として用いて、オリゴヌクレオチドを合成するのに用いることができる。なお、本発明において、ホスホルアミダイト基は、以下の式で表すことができる。

【0068】
【化12】
JP0006346568B2_000013t.gif
(式中、各Yは独立して、同一であっても異なっていてもよく、分枝状又は直鎖状の炭素数1~5個のアルキル基を表し、Yは、分枝状又は直鎖状の炭素数1~5個のアルキル基又は置換されていてもよいアルコキシル基を表す。)

【0069】
上記式において、Yは、特に限定しないがイソプロピル基が好ましいものとして挙げられ、また、Yとしては、-OCH、-OCH2CH2ECN、-OCHCHCH等が挙げられる。

【0070】
また、W2がCPGなどの固相担体に結合される連結基である化合物は、当該連結基とアミノ基など固相担体上の所定の官能基とを結合させることにより、固相担体に保持される。そして、上記式において、Wが固相担体に結合された連結基である化合物は、PAZドメイン低親和性ユニットの-OYO-部分が所定の固相用連結基を介して固相担体に結合されているため、この試薬をパッセンジャーオリゴヌクレオチドの核酸固相合成法の出発材料として用いることができる。この試薬に対して-OYO-部分を有するホスホアミダイト試薬でホスホアミダイト法等でPAZドメイン低親和性ユニットを複数個連結していくことができる。

【0071】
さらに、適数個のPAZドメイン低親和性ユニットを付与したら、一般的に用いられるリボヌクレオチドのホスホアミダイト試薬を用いてセンス部位を含む所定長のオリゴヌクレオチドを合成することができる。

【0072】
ここで、固相担体とは、一般に高分子担体が用いられ、例えば、CPG(controlled pored glass)やHCP(highly cross-linked polystyrene)、ある種のゲルなどが挙げられる。また、固相担体には適切なスペーサーを有していてもよい。連結基は、固相担体と本化合物とを連結するリンカーである。こうした連結基としては、公知のコハク酸エステルリンカー、シュウ酸エステルリンカー、シランジイルリンカー、シリルリンカーなどを用いることができる。

【0073】
このような式で表される試薬は既知の方法を組み合わせて合成される。例えば、以下のスキームで合成できる。

【0074】
【化13】
JP0006346568B2_000014t.gif

【0075】
ガイド鎖における3’末端にPAZドメイン高親和性ユニットを導入する場合には、既に説明したように公知の方法によりベンゼン様骨格単位を導入することができる。ガイド鎖におけるアンチセンス部は、標的とする遺伝子の塩基配列から適宜選択される。

【0076】
(遺伝子の機能の評価方法)
本明細書に開示される遺伝子の機能解析方法は、前記遺伝子を標的遺伝子として、本明細書に開示されるRNA干渉剤を準備する工程と、前記遺伝子を保持する細胞に前記RNA干渉剤を導入して、前記細胞における変化を評価する工程と、を備えることができる。本評価方法によれば、オフ・ターゲット効果が抑制されているので、標的遺伝子のみの発現を高い選択性で抑制できる。この結果、遺伝子の評価を的確に行うことができる。

【0077】
RNA干渉剤を細胞に導入するのにあたっては、既に知られている一般的な方法を採用できる。細胞としては、生体外におけるヒト細胞あるいは非ヒト動物細胞を含む各種細胞が挙げられる。また、細胞は、非ヒト動物の生体内にある細胞であってもよい。

【0078】
細胞における変化を評価する工程における評価項目や評価方法は、標的遺伝子の種類等に応じて当業者が適宜決定することができる。例えば、細胞における標的遺伝子の発現状態(発現が抑制されたか否か、その程度など)を評価することのほか、細胞における想定されうる生物学的、化学的及び/又は物理的な変化を検出することが挙げられる。細胞として生体内細胞を用いる場合には、当該細胞が存在する非ヒト動物における生物学的、化学的及び/又は物理的な変化を検出することが挙げられる。

【0079】
(RNA干渉剤のスクリーニング方法)
本明細書に開示されるRNA干渉制御剤のスクリーニング方法は、標的遺伝子の1又は2以上の異なる所定の塩基配列に対するアンチセンス部位候補をそれぞれ有する1又は2以上の本明細書に開示されるRNA干渉剤を準備する工程と、前記1又は2以上のRNA干渉剤を前記標的遺伝子を保持する細胞に導入して前記細胞における前記標的遺伝子の発現状態を評価する工程と、を備えることができる。このスクリーニング方法によると、オフ・ターゲット効果が抑制されており、アンチセンス部位候補を備えるRNA干渉剤の標的遺伝子の発現抑制効果を的確に評価することができる。このため、RNA干渉剤として有効なアンチセンス部位を効率的にスクリーニングできる。また、オフ・ターゲット効果が抑制され、かつ有効なアンチセンス部位を有するRNA干渉剤をスクリーニングできる。

【0080】
RNA干渉剤のパッセンジャー鎖としては、既に説明した各種態様のパッセンジャーオリゴヌクレオチドを用いることができる。ガイド鎖についても、同様である。アンチセンス部位は、ガイド鎖に備えられる。

【0081】
RNA干渉剤を導入する細胞は、生体外におけるヒト細胞あるいは非ヒト動物細胞を含む各種細胞が挙げられる。また、細胞は、非ヒト動物の生体内にある細胞であってもよい。

【0082】
RNA干渉剤を細胞に導入する方法及び標的遺伝子の発現状態の評価は、当業者において周知であり、当業者であれば、標的遺伝子の種類やRNA干渉剤を導入する細胞の態様において適宜選択することができる。典型的には、実施例に示すようなルシフェラーゼアッセイ等を採用できる。

【0083】
(RNA干渉剤のスクリーニング方法)
本明細書に開示されるRNA干渉剤のスクリーニング方法は、標的遺伝子の所定の塩基配列に対するアンチセンス部位を有するガイド鎖と、3’末端に1又は2以上のPAZドメイン低親和性ユニット候補を有するパッセンジャー鎖と、を有する1又は2以上のRNA干渉剤を準備する工程と、前記1又は2以上のRNA干渉剤を前記標的遺伝子を保持する細胞に導入して前記細胞における変化を評価する工程と、を備えることができる。このスクリーニング方法によれば、オフ・ターゲット効果の抑制に効果的なPAZドメイン低親和性ユニット候補をスクリーニングすることができ、オフ・ターゲット効果が抑制されたRNA干渉剤を得ることができる。典型的には、実施例に示すようなルシフェラーゼアッセイ等を採用できる。

【0084】
PAZドメイン低親和性ユニット候補としては、酸性基や塩基性基など極性を有するあるいは極性の高い基を含むユニットとすることができる。PAZドメイン低親和性ユニット候補は、既に説明したPAZドメイン低親和性ユニットの各種態様を適用してもよい。これにより、遺伝子の種類や細胞の種類に応じた最も効果的なPAZドメイン低親和性ユニットをスクリーニングできる。

【0085】
このスクリーニング方法においても、RNA干渉剤を導入する細胞は、生体外におけるヒト細胞あるいは非ヒト動物細胞を含む各種細胞が挙げられる。また、細胞は、非ヒト動物の生体内にある細胞であってもよい。また、このスクリーニング方法においても、RNA干渉剤を細胞に導入する方法及び標的遺伝子の発現状態の評価は、当業者において周知であり、当業者であれば、標的遺伝子の種類やRNA干渉剤を導入する細胞の態様において適宜選択することができる。
なお、以下の項目は、本願に対応する国際出願の国際出願時における請求の範囲に記載の要素である。
(項目1)
3’末端にPAZドメイン低親和性ユニットを1又は2以上を備える、一本鎖オリゴヌクレオチド。
(項目2)
前記PAZドメイン低親和性ユニットは、以下の式(1)で表される、項目1に記載の一本鎖オリゴヌクレオチド。
(化16)
JP0006346568B2_000015t.gif(ただし、Xは、酸性基又は塩基性基又はこれらを有する連結基であり、Yは、炭素数が2以上の基を表し、nは1又は2以上の整数を表す。)
(項目3)
Yは炭素数が2の基を表す、項目2に記載の一本鎖オリゴヌクレオチド。
(項目4)
前記式(1)は、以下の式で表される、項目2又は3に記載の一本鎖オリゴヌクレオチド。
(化17)
JP0006346568B2_000016t.gif(項目5)
前記PAZドメイン低親和性ユニットを2個備える、項目1~4のいずれかに記載の一本鎖オリゴヌクレオチド。
(項目6)
標的遺伝子の所定の塩基配列に対するアンチセンス部位を有するガイド鎖オリゴヌクレオチドと、
項目1~5のいずれかに記載の一本鎖オリゴヌクレオチドであって前記アンチセンス部位に特異的にハイブリダイズするパッセンジャー鎖オリゴヌクレオチドと、
を備える、RNA干渉剤。
(項目7)
前記ガイド鎖オリゴヌクレオチドの3’末端には、PAZドメイン高親和性ユニットを備える、項目6に記載のRNA干渉剤。
(項目8)
前記PAZドメイン高親和性ユニットは、以下の式で表される、項目7に記載のRNA干渉剤。
(化18)
JP0006346568B2_000017t.gif[式中、Aは独立して以下のいずれかの式を表し、mは1又は2以上の整数を表す。]
(化19)
JP0006346568B2_000018t.gif(項目9)
RNA干渉剤の製造方法であって、
3’末端にPAZドメイン低親和性ユニットを1又は2以上を備える、一本鎖オリゴヌクレオチドであるパッセンジャー鎖とガイド鎖とを準備し、ハイブリダイゼーションにより二重鎖RNAを形成する工程、
を備える、製造方法。
(項目10)
以下の式で表される、オリゴヌクレオチド合成試薬。
(化20)
JP0006346568B2_000019t.gif(式中、Yは、炭素数が1以上4以下のアルキレン基を表し、W1は、水素原子又はヒドロキシル保護基を表し、W2は、水素原子、ホスホルアミダイト基又は固相担体に結合される若しくは結合された連結基を表す。)
(項目11)
遺伝子の機能の評価方法であって、
前記遺伝子を標的遺伝子として、項目6~8のいずれかに記載のRNA干渉剤を準備する工程と、
前記遺伝子を保持する細胞に前記RNA干渉剤を導入して、前記細胞における変化を評価する工程、
を備える、評価方法。
(項目12)
RNA干渉剤のスクリーニング方法であって、
標的遺伝子の1又は2以上の異なる所定の塩基配列に対するアンチセンス部位候補をそれぞれ有する1又は2以上の項目6~8のいずれかに記載のRNA干渉剤を準備する工程と、
前記1又は2以上のRNA干渉剤を前記標的遺伝子を保持する細胞に導入して前記細胞における前記標的遺伝子の発現状態を評価する工程と、
を備える、スクリーニング方法。
(項目13)
RNA干渉剤のスクリーニング方法であって、
標的遺伝子の所定の塩基配列に対するアンチセンス部位を有するガイド鎖と、3’末端に1又は2以上のPAZドメイン低親和性ユニット候補を有するパッセンジャー鎖と、を有する1又は2以上のRNA干渉剤を準備する工程と、
前記1又は2以上のRNA干渉剤を前記標的遺伝子を保持する細胞に導入して前記細胞における変化を評価する工程と、
を備える、スクリーニング方法。
【実施例】
【0086】
以下、本明細書の開示を、具体例を挙げて説明する。
【実施例1】
【0087】
(PAZドメイン低親和性ユニットのための試薬合成)
PAZドメイン低親和性ユニットのための、トリチル体(化合物6~10)アミダイト体(化合物11~15)及びCPG試薬(化合物16~20)を以下に示すスキームで合成した。
【実施例1】
【0088】
【化14】
JP0006346568B2_000020t.gif
【実施例1】
【0089】
<化合物6~10の合成>
スキームに示す化合物1~5を出発原料とし、DMTrClにて片方の水酸基のトリチル保護を行い、トリチル体6~10を得た。以下に、その詳細を説明する。なお、それぞれの反応は化合物別に行ったものである。
【実施例1】
【0090】
良く乾燥したDMTrCl 1.00gにdry pyridine 30mLを加えて溶かし、そこに各々3当量分のエチレングリコール(化合物1、0.49mL)、プロパンジオール(化合物2、0.64mL)、ブタンジオール(化合物3、0.79mL)、ペンタンジオール(化合物4、0.93mL)、ヘキサンジオール(化合物5、1.05g)を加え、室温で3時間攪拌した。その後、酢酸エチルと蒸留水で分液し、有機層を飽和NaHCO3 aq.、飽和NaCl aq.で洗浄し、無水Na2SO4を加え乾燥した。溶媒を減圧留去後、中性シリカゲルクロマトグラフィー(Hex:EtOAc=3:1)にて単離精製し、目的化合物6(0.82g、76%)、7(0.67g、62%)、8(0.90g、77%)、9(0.71g、60%)、10(1.09g、88%)をそれぞれ得た。
【実施例1】
【0091】
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ [ppm] ;
(化合物6) : 7.45~7.20 ( 9H, m ), 6.83 ( 4H, d, J = 8.8 Hz ) , 3.79 ( 6H, s) , 3.73 ( 2H, m) , 3.26 ( 2H, t, J= 4.8 Hz )
(化合物7) : 7.43~7.20 ( 9H, m), 6.83 ( 4H, d, J = 8.4 Hz ) , 3.79 ( 6H, s) , 3.76 ( 2H, t, J = 5.8 Hz) , 3.28 ( 2H, t, J= 5.8 Hz ) , 1.85 ( 2H, q, J = 5.8 Hz )
(化合物8) : 7.44~7.20 ( 9H, m ), 6.82 ( 4H, d, J = 7.6 Hz ) , 3.79 ( 6H, s ) , 3.64 ( 2H, s ) , 3.11 ( 2H, s ) , 1.68 ( 4H, s )
(化合物9) : 7.44~7.20 ( 9H, m ), 6.82 ( 4H, d, J = 8.8 Hz) , 3.79 ( 6H, s ) , 3.63 ( 2H, q, J = 6.1 Hz ) , 3.06 ( 2H, t, J = 6.4 Hz ) , 1.66~1.17 ( 6H, m )
(化合物10) : 7.43~7.18 ( 9H, m ), 6.82 ( 4H, d, J = 8.4 Hz ) , 3.79 ( 6H, s ) , 3.62 ( 2H, q, J = 5.6 Hz ) , 3.05 ( 2H, t, J = 6.0 Hz ) , 1.66~1.16 ( 8H, m )
【実施例1】
【0092】
<化合物11~15の合成>
トリチル体6~10の残った片方の水酸基を亜リン酸化しアミダイト体11~15を得た。以下、詳細を説明する。なお、以下の反応は化合物別に行ったものである。また、グローブバック中、完全無水条件下で操作を行った。
【実施例1】
【0093】
一晩真空乾燥した化合物6(0.294g)、同7(0.g)、同8(0.g)、同9(0.172g)、同10(0.g)をdry THFに溶解させ、各々DIPEA(3当量分)と亜リン酸化試薬(1.5当量分)を加えた。その後、グローブバックから取り出し、室温で0.5~1時間攪拌した。TLC(Hex:EtOAc=2:1)により原料の消失を確認した。その後CHCl3と飽和NaHCO3 aqで抽出し、有機層を飽和NaCl aqで洗浄し、無水Na2SO4を加え乾燥した。溶媒を減圧留去後、中性シリカゲルクロマトグラフィー(Hex:EtOAc=3:1)にて単離精製し、目的化合物11(0.82g、76%)、12(0.67g、62%)、13(0.90g、77%)、14(0.71g、60%)、15(1.09g、88%)を得た。
31P NMR(160MHz、CDCl3)[ppm] : 149.21(化合物11)、149.13(化合物12)、147.92(化合物13)、147.90(化合物14)、147.76(化合物15)
【実施例1】
【0094】
<CPG担体16~20の作成>
トリチル体6~10からそれぞれスクシニル化を経てCPG樹脂に結合させることで、CPG試薬16~20を得た。以下、詳細を説明する。
【実施例1】
【0095】
一晩真空乾燥した化合物6(0.29g)、化合物7(0.30g)、化合物8(0.24g)、化合物9(0.09g)、化合物10(0.08g)をdry DMF (0.1Msolution) に溶解し、そこに0.5当量分のDMAPと3当量分の無水コハク酸を加えAr雰囲気下、室温で48~72攪拌した。TLC(Hex:EtOAc=2:1)にて原料の消失を確認した。その後、EtOAcと飽和NaHCO3 aqで抽出し、有機層を飽和NaCl aqで洗浄し、無水Na2SO4で乾燥した。溶媒を減圧留去し、それぞれのスクシニル体化合物を得た。
【実施例1】
【0096】
次いで、一晩真空乾燥したスクシニル体(上記のスクシニル化反応が100%の収率だったと仮定)をdry DMF(CPGに対して0.02M solution)に溶解し、CPG樹脂(76~103μmol/g, 原料の1/4当量)を加えて溶液となじませた。この溶液にWSC(CPGに対して4eq)を加え、室温で72~120h振とうした。この樹脂をpyridineで洗浄し、0.1M DMAP溶液(pyridine:無水酢酸=9:1)を15mL加え、室温で48h振とうした。さらに樹脂をpyridine、EtOH、acetonitrileで洗浄し、デシケーター中で一晩真空乾燥した。得られたCPG試薬16~20の活性を測定した。活性値はCPG樹脂16:56.6 μmol/ g、同17:52.2 μmol/ g、同18:23.2 μmol/ g、同19:29.4 μmol/ g、同20:53.1 μmol/ gであった。
【実施例1】
【0097】
なお、活性は以下の方法で測定した。すなわち、乾燥したCPG樹脂を6mgをガラスフィルターにのせ、HClO4 : EtOH=3 : 2の溶液を流し込み、そのろ液のUV498nmの波長(DMTr基の波長)の吸光度を求め、以下の式に代入することにより算出した。
【実施例1】
【0098】
【数1】
JP0006346568B2_000021t.gif
【実施例2】
【0099】
(オリゴヌクレオチドの合成及びRNA干渉剤の作製)
所定の3’末端ダングリングエンドを有するオリゴヌクレオチドを固相ホスホロアミダイト法に従って核酸自動合成機によって合成した。以下の表に示す3’ダングリング末端を有するガイド鎖(アンチセンス鎖)及びパッセンジャー鎖(センス鎖)をそれぞれ合成した。ガイド鎖及びパッセンジャー鎖の各3’ダングリング末端以外の塩基配列を以下に示す。このRNA干渉剤は、ウミシイタケの蛍光タンパク質であるRenilla Luciferaseをコードする遺伝子の発現抑制を意図したものとなっている。
【実施例2】
【0100】
また、3’末端に以下に示すPBを有するセンス鎖及びアンチセンス鎖もWO2007/094135号パンフレットの記載に従い合成した。
【実施例2】
【0101】
【化15】
JP0006346568B2_000022t.gif
【実施例2】
【0102】
こうして合成したアンチセンス鎖及びガイド鎖をそれぞれ等モル量ずつ合わせ、図4に示すように、各種態様のガイド鎖及びパッセンジャー鎖の組み合わせでアニーリングすることにより、実施例及び比較例のRNA干渉剤を作製した。
【実施例2】
【0103】
ガイド鎖:5’-gua gga gua gug aaa ggc c-3’(配列番号1)
パッセンジャー鎖:5’-ggc cuu uca cua cuc cua c-3’(配列番号2)
【実施例2】
【0104】
なお、核酸の固相合成は、ホスホロアミダイト法に準じて行い、その後CPG樹脂からの切り出し及び保護基の除去を行い精製後(PAGEまたはHPLC)、MALDI-TOF/MSにて目的オリゴヌクレオチドの分子量を確認した。表1に、精製後のオリゴヌクレオチドの収量及び収率を以下に示す、
【実施例2】
【0105】
【表1】
JP0006346568B2_000023t.gif
【実施例3】
【0106】
(評価)
実施例2で作製したRNA干渉剤の評価を以下のようにして行った。すなわち実施例及び比較例のRNA干渉剤を用い、HeLa細胞を用いたDual Luciferase repoter assayを行い、ノックダウン効果を評価した。合成したsiRNAはRenilla Luciferaseをターゲットにしており、この遺伝子とコントロール遺伝子(firefly Luciferase)を発現するベクターとsiRNAを同時にHeLa細胞にトランスフェクションすることで、そのノックダウン効果を測定した。なお、具体的操作及び試薬を以下に示す。また、結果を図5及び図6に示す。
【実施例3】
【0107】
(操作)
細胞をプレートに播種し(4~5×103 cells/ well)、24時間培養後、OPTI-MEMとtransfastを用いて各量のsiRNAとvectorをトランスフェクションした。トランスフェクション時間は、1時間で行った。24時間培養後、培地を吸引し、その後、細胞を一晩 -80℃で保存した。翌日、評価を行った。評価は、プロメガ社のプロトコールに従って行った。
【実施例3】
【0108】
(試薬等)
細胞:HeLa細胞
プレート:96ウェルプレート(BD falcon)
培地:D-MEM(Wako)+10%BS(SIGMA) or OPTI-MEM (Invitrogen)
トランスフェクション試薬: transfastTM(0.1mM concentration, 0.3μL/ well)
siRNA : Renilla遺伝子を標的とするsiRNA(図示する各濃度)
ベクター: psiCHECKTM-2 Vectors (promega, 20ng/ well)
アッセイキット: Dual-GloTMLuciferase Assay System (promega)
【実施例3】
【0109】
図5及び図6に示すように、オリゴヌクレオチドの3’末端に極性の高いユニットを導入すると、当該オリゴヌクレオチドがガイド鎖として作用することが抑制されることがわかった。したがって、こうしたユニットをパッセンジャー鎖の3’末端に導入しておくことで、パッセンジャー鎖によるオフ・ターゲット効果が抑制されることがわかった。
【実施例4】
【0110】
本実施例では、マイクロアレイ解析を用いて、パッセンジャー鎖の3’末端への極性の高いパズドメイン低親和性ユニットを導入することによるパッセンジャーによるオフ・ターゲット効果の抑制効果を確認した。操作としては、細胞に本開示に係るRNA干渉剤(siRNA、実施例2及び3と同様にウミシイタケの蛍光タンパク質であるRenilla Luciferaseをコードする遺伝子の発現抑制を意図したもの)とコントロールsiRNAを導入したのち、全RNAを抽出し、cDNAを調製してマイクロアレイで遺伝子発現を確認することにより行った。
【実施例4】
【0111】
(トランスフェクション)
10%BS含有細胞培養液(D-MEM、Wako)で継代培養を行っているHeLa細胞を用いた。トランスフェクション前日に24ウェルプレートに5000cells/wellになるように播種した。翌日、A:plasmid only(ネガティブコントロール)、B:plasmid + TT:TT siRNA(100nM)(ポジティブコントロール)、C:plasmid + TT:EE siRNA(100nM)(本開示のRNA干渉剤)の3つの条件でOPTI-MEM (Invitrogen) を用いてトランスフェクションを行った。なお、CのプラスミドにおけるTT:EEのEEは、エチレングリコールを2個連結していることを意味している。
【実施例4】
【0112】
トランスフェクションしたプラスミドはプロメガ社のpsi-check-2 vectorであり、用いたsiRNAの配列はアンチセンス鎖:5’- guaggaguagugaaaggcc -3’(配列番号1)、センス鎖:5’- ggccuuucacuacuccuac -3’(配列番号2)であった。1時間後に血清入りメディウム(500μl /well)を追加した。24時間経過後に細胞をトリプシン-EDTA溶液(Invitrogen)を用いて回収した。
【実施例4】
【0113】
(RNA抽出)
Qiagen社のRNeasy mini kitを用いて、推奨プロトコルを参考に回収した細胞からtotal RNAを抽出した。得られたtotal RNA溶液の吸光度を測定したところ、A:792.4ng/μl、B:941.6 ng/μl、C:642.8 ng/μlであった。
【実施例4】
【0114】
(マイクロアレイ解析)
細胞から抽出したtotal RNAをドライアイス入りの冷凍便で北海道システムサイエンス株式会社へ郵送し、マイクロアレイ解析(Agilent Techologies社のSurePrint G3 Human GE Ver. 2.0 8x60K 1color)を依頼した。この依頼解析にはtotal RNAの品質検査、total RNAからのcDNAの合成、cRNAのラベル(Cy3)化と増幅、ハイブリダイズ、スキャン作業は含まれていた。納品された生データをマイクロアレイデータ解析ソフトであるGeneSpring 12.5を用いて詳細解析した。まず、すべてのraw dataを75%tileでノーマライズ(チップ間補正)した。その後発現量でのフィルタリング(20-100%tile)を行った。
【実施例4】
【0115】
(ハウスキーピング遺伝子発現量の比較)
Agilent Techologies社のDNAマイクロアレイ上のスキーピング遺伝子は同一遺伝子であってもプローブ配列が違うチップが数箇所存在していたため、用いるアレイデータの信頼性の担保として比較を行った。その結果、条件Aを1とした場合、すべてのチップで比較発現量の値が0.85から1.15の幅であった。よって以後、この間の発現量の振れ幅は差がないものとして扱うこととした。逆に述べると、0.85倍以下もしくは1.15倍以上に発現量に増減があった遺伝子について、差があるものとして扱うこととした。
【実施例4】
【0116】
(マイクロアレイ解析結果とリアルタイムRT-PCRでの遺伝子発現相対定量結果の比較)
既述のA、B、Cの条件でトランスフェクションを行ったそれぞれの細胞からtotal RNAを抽出し、GAPDH遺伝子とNCF1遺伝子についてリアルタイムRT-PCR法を用いてCt値からの相対定量を行った。リアルタイムRT-PCR についてはTaKaRa社のOne Step SYBR PrimeScript PLUS RT-PCR Kit (SYBR Green I検出系) を用い、推奨プロトコル通りにPCR反応を行った。その結果、GAPDH遺伝子をコントロールとした場合でNCF1遺伝子は図7の通り相関が見られることが確認できた。2つの遺伝子について、PCR反応に用いたプライマー配列は以下の通りである。
GAPDH-For TATAAATTGAGCCCGCAGCC(配列番号3)
GAPDH-Rev CCATGGTGTCTGAGCGATGT(配列番号4)
NCF1-For GAAGGTGTCCCCCATGACTG(配列番号5)
NCF1-Rev TCCAGTGCATTTAAGGCGCA(配列番号6)
【実施例4】
【0117】
(マイクロアレイデータ解析による数的解釈1)
上述でフィルタリングをかけて得られたマイクロアレイデータから、fold change解析を行った。fold changeフィルタリング時の指定値は、ハウスキーピング遺伝子の発現量の比較結果から、1.15とした。結果を図8に示す。
【実施例4】
【0118】
その結果、A(ネガティブコントロール) vs B(ポジティブコントロール)(以下、A/B)で発現量の差が認められた遺伝子は19955個であり、この内AよりBで発現量が減少した遺伝子(図中A/B up)は11658個、増加したもの(図中A/B down)は8297個であった。またA/C(本開示のRNA干渉剤)で発現量の差が認められた遺伝子数は19814であり、この内AよりCで発現量が減少した遺伝子(図中A/C up)は11631個、増加したもの図中A/C down)は8183個であった。この数値の相違がすべてセンス鎖によるオフ・ターゲット効果とその抑制結果に起因するとは言えない(アンチセンス鎖によるオフ・ターゲット効果も存在するため)が、コントロールをAとした場合、CよりBで発現抑制的に働く遺伝子が27個存在することが判明し、本開示のRNA干渉剤によるオフ・ターゲット効果の抑制を確認できた。
【実施例4】
【0119】
(マイクロアレイデータ解析による数的解釈2)
また、図9のようにfold changeフィルタリングの指定値を1とした場合、総数44428遺伝子の内、AよりBで減少した遺伝子(図中A/B up)は26436、増加した遺伝子(図中A/B down)は17992であり、AよりCで減少した遺伝子(図中A/C up)は21476、増加した遺伝子(図中A/C down)は22952となった。既述の通りこの数値がすべてセンス鎖によるオフ・ターゲット効果とその抑制結果に起因するとは言えないが、コントロールをAとした場合、CよりBで発現抑制的に働く遺伝子が4960個存在することが判明し、本開示のRNA干渉剤によるオフ・ターゲット効果の抑制を確認できた。
【実施例4】
【0120】
(マイクロアレイデータ解析による特定遺伝子についての発現量の比較)
本開示のRNA干渉剤(C)のセンス鎖配列を用いたBLAST検索より、ターゲットとなり得る可能性の高い特定の遺伝子を同定した。それぞれの遺伝子についてマイクロアレイデータから発現量の比較を行った。1本鎖化されたsiRNAがターゲットmRNAを認識し切断する部位は、5’側から数えて10番目と11番目の間であることが既に分かっている。その部位とシード領域(2~8番目)を含めた相補配列が一致する遺伝子4種類についてA~C条件における発現強度を比較した(Aを基準とした)。結果を図10に示す。
【実施例4】
【0121】
図10に示すように、上記遺伝子4種類に対応するマイクロアレイ上の9スポットに関し、Bのアレイ解析では蛍光強度が低かったのがCのアレイ解析においては蛍光強度が増大し、A(ネガティブコントロール)のアレイ解析結果に近づいた。これらの結果から、Cのマイクロアレイにおいてオフ・ターゲット効果の回避が確認された。マイクロアレイ上の各遺伝子検出用のプローブ配列(60mer(配列番号7~12)を以下に示す。

【実施例4】
【0122】
【表2】
JP0006346568B2_000024t.gif

【配列表フリ-テキスト】
【0123】
配列番号1、2:siRNA
配列番号3~6:プライマー
配列番号7~12:プローブ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9