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Specification :(In Japanese)軸封装置及びシール部材並びに水力発電装置

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P6168615
Date of registration Jul 7, 2017
Date of issue Aug 2, 2017
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)軸封装置及びシール部材並びに水力発電装置
IPC (International Patent Classification) F16J  15/18        (2006.01)
FI (File Index) F16J 15/18 C
Number of claims or invention 7
Total pages 28
Application Number P2014-549864
Date of filing Nov 27, 2013
International application number PCT/JP2013/081899
International publication number WO2014/084257
Date of international publication Jun 5, 2014
Application number of the priority 2012260013
2013154188
Priority date Nov 28, 2012
Jul 25, 2013
Claim of priority (country) (In Japanese)日本国(JP)
日本国(JP)
Date of request for substantive examination Feb 15, 2016
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】中西 義孝
Representative (In Japanese)【識別番号】100080160、【弁理士】、【氏名又は名称】松尾 憲一郎
Examiner (In Japanese)【審査官】谷口 耕之助
Document or reference (In Japanese)特開平07-041784(JP,A)
特開2001-165324(JP,A)
特開平07-165932(JP,A)
特開2009-085337(JP,A)
特開2001-342277(JP,A)
Field of search F16J 15/18
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
回転可能に支持された軸の周囲に配置され、前記軸周りの液密性を確保するためのシール部材を備えた軸封装置において、
前記軸の外周に同軸状に設けられ、当該軸の軸周り方向への回転運動に従動する回転環と、
前記回転環と摺接する状態で前記軸の外周に同軸状に設けられ、前記軸の軸周り方向への回転運動が規制された固定環と、を備え、
前記回転環と前記固定環との摺接部に前記シール部材が設けられており、
前記シール部材は、鎖間が架橋された親水性ポリマー樹脂により形成した多孔質体であり、
同シール部材には、水溶性の増粘剤を添加して調製した剪断力に応じて粘度が変化する非ニュートン性を備えた水性潤滑液を含浸させていることを特徴とする軸封装置。
【請求項2】
回転又は往復可能に支持された軸の周囲に配置され、前記軸周りの液密性を確保するためのシール部材を備えた軸封装置において、
前記軸の外周に取り付けられ、略円筒状でその両端部に内径が拡径されたシール部材収容部が形成された軸収容体と、
前記両シール部材収容部にて前記軸の外周面に摺接する状態で前記軸に対し同軸状に配置され前記軸の軸周りの液密性を確保する複数のシール部材と、
前記軸収容体の両端に配置されるリング状の部材であり、前記シール部材の軸収容体からの脱落を防止するための押さえ部材と、
2つの半割状外筒体で構成され、前記軸収容体や前記押さえ部材、前記軸と共に前記シール部材を交換可能に収容する外筒体と、を備え、
前記外筒体には、水性潤滑液を内部へ供給するための潤滑液供給口が穿設され、更に、前記軸収容体の周面にも外周面から内周面へ貫通させた複数の潤滑液導入路が穿設されており、前記潤滑液供給口より供給された水性潤滑液は、前記潤滑液導入路を介して前記軸収容体の内周面と前記軸の外周面との間に形成される潤滑液貯留空間に至り、前記シール部材に含浸されるよう構成すると共に、
前記シール部材は、鎖間が架橋された親水性ポリマー樹脂により形成した多孔質体であり、
同シール部材には、水溶性の増粘剤を添加して調製した剪断力に応じて粘度が変化する非ニュートン性を備えた水性潤滑液を含浸させていることを特徴とする軸封装置。
【請求項3】
前記軸は、液相領域と気相領域との間に架け渡された軸であり、
前記シール部材は、前記液相領域から前記気相領域への液体の漏出を抑制するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の軸封装置。
【請求項4】
前記軸は、この軸の一端側に存在する第1の液相領域と、この軸の他端側に存在する第2の液相領域との間に架け渡された軸であり、
前記シール部材は、前記第1の液相領域と前記第2の液相領域との間における液の流通を抑制するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の軸封装置。
【請求項5】
前記増粘剤はポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項1~4いずれか1項に記載の軸封装置。
【請求項6】
前記親水性ポリマーは、ポリビニルアルコールの鎖間をホルムアルデヒドで架橋したポリビニルホルマールであることを特徴とする請求項1~5いずれか1項に記載の軸封装置。
【請求項7】
請求項1~6いずれか1項に記載の軸封装置を備えた水力発電装置。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、軸封装置及びシール部材、並びに水力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、さまざまな分野で使用される機構部品には、回転したり往復運動する軸を備えたものがある。具体例を挙げるならば、駆動軸を備えるモータやポンプであったり、ロッドを備えるシリンダなどがそれに該当する。
【0003】
そして、このような機構部品には、軸の周囲から液体が漏れてしまうことを防止するために、オイルシールやメカニカルシールなどの軸封装置が設けられる場合がある。
【0004】
例えば液送ポンプの場合、送出される液体が駆動軸に沿って漏れ出すのを防止するために、駆動軸の軸周りに軸封装置が採用される。
【0005】
また、液圧によって駆動するシリンダの場合には、作動流体がロッドに沿って漏れ出すのを軸封装置が防止している。
【0006】
これら軸封装置は、十分な液密性を保ちながらも、駆動を妨げることが無いよう摩擦抵抗を可及的少ない状態とする必要があり、これまで種々の構成が提案されている。
【0007】
例えば、特許文献1に示す所謂オイルシール型の軸封装置は、軸外周に同軸状に配設したゴム製のシールリップを軸表面に接触させて、軸を摺動可能としつつも液密性を実現している。
【0008】
また、特許文献2に示す所謂メカニカルシール型の軸封装置は、軸と共に回転するスリーブに取り付けられた回転環と、軸に直角な摺動面で前記回転環と摺接する固定環とを備え、前記摺動面で液密性を保ちつつ軸を回転可能としている。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開2012-137192号公報
【特許文献2】特開2011-058644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の軸封装置では、未だ十分に液密性と低摩擦性との両立が成されているとは言い難いものであった。
【0011】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、液密性に優れ、摩擦抵抗が小さく、しかも高い耐摩耗性を有するシール部材を備えた軸封装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記従来の課題を解決するために、本発明は、回転又は往復可能に支持された軸の周囲に配置され、前記軸周りの液密性を確保するためのシール部材を備えた軸封装置において、前記シール部材は、鎖間が架橋された親水性ポリマー樹脂により形成した多孔質体であり、同シール部材には、水溶性の増粘剤を添加して調製した水性潤滑液を含浸させていることを特徴とする軸封装置を提供する。
【0013】
また、本発明の更なる具体的態様として、前記軸は、液相領域と気相領域との間に架け渡された軸であり、前記シール部材は、前記液相領域から前記気相領域への液体の漏出を抑制するものであることを特徴としても良い。
【0014】
また、本発明の更なる具体的態様として、前記軸は、この軸の一端側に存在する第1の液相領域と、この軸の他端側に存在する第2の液相領域との間に架け渡された軸であり、前記シール部材は、前記第1の液相領域と前記第2の液相領域との間における液の流通を抑制するものであることを特徴としても良い。
【0016】
また、本発明の更なる具体的態様として、前記増粘剤はポリエチレングリコールであることを特徴としても良い。
【0017】
また、本発明の更なる具体的態様として、前記親水性ポリマーは、ポリビニルアルコールの鎖間をホルムアルデヒドで架橋したポリビニルホルマールであることを特徴としても良い。
【0018】
また、本発明の更なる具体的態様として、前記シール部材は、前記軸の外周面に摺接する状態で前記軸に対し同軸状に設けたことを特徴としても良い。
【0019】
また、本発明の更なる具体的態様として、前記シール部材が複数設けられていることとしても良い。
【0020】
また、本発明の更なる具体的態様として、前記軸の外周に同軸状に設けられ、当該軸の軸周り方向への回転運動に従動する回転環と、前記回転環と摺接する状態で前記軸の外周に同軸状に設けられ、前記軸の軸周り方向への回転運動が規制された固定環と、を備え、前記回転環と前記固定環との摺接部に前記シール部材が設けられていることを特徴としても良い。
【0021】
また、本発明は、更に別の形態として、回転可能に支持された軸の周囲に配置され、前記軸周りの液密性を確保する軸封装置のシール部材において、鎖間が架橋された親水性ポリマー樹脂で多孔質状に形成し、水溶性の増粘剤を添加して調製した水性潤滑液を含浸させたことを特徴とするシール部材を提供する。
【0022】
また、本発明は、更に別の形態として、鎖間が架橋された親水性ポリマー樹脂により形成し、水溶性の増粘剤を添加して調製した水性潤滑液を含浸させた多孔質体を、軸封装置におけるシール部材として使用することを提供する。
【0023】
また、本発明は、上述のシール部材や軸封装置を備えた水力発電装置についても提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る軸封装置によれば、回転又は往復可能に支持された軸の周囲に配置され、前記軸周りの液密性を確保するためのシール部材を備えた軸封装置において、前記シール部材は、鎖間が架橋された親水性ポリマー樹脂により形成した多孔質体であり、同シール部材には、水溶性の増粘剤を添加して調製した水性潤滑液を含浸させていることとしたため、液密性に優れ、摩擦抵抗が小さく、しかも高い耐摩耗性を有するシール部材を備えた軸封装置を提供することができる。また、前記シール部材には、水溶性の増粘剤を添加して調製した水性潤滑液を含浸させていることとすれば、油性潤滑液を使用した場合に比して、潤滑液による水相領域への環境負荷を可及的抑制しつつ、摩擦抵抗をさらに小さくすることができる。
【0025】
また、前記軸は、液相領域と気相領域との間に架け渡された軸であり、前記シール部材は、前記液相領域から前記気相領域への液体の漏出を抑制するものであることとすれば、液密性に優れ、摩擦抵抗が小さく、しかも高い耐摩耗性を有するシール部材を備えた軸封装置を提供することができる。
【0026】
また、前記軸は、この軸の一端側に存在する第1の液相領域と、この軸の他端側に存在する第2の液相領域との間に架け渡された軸であり、前記シール部材は、前記第1の液相領域と前記第2の液相領域との間における液の流通を抑制するものであることとすれば、液密性に優れ、摩擦抵抗が小さく、しかも高い耐摩耗性を有するシール部材を備えた軸封装置を提供することができる。
【0028】
また、前記増粘剤はポリエチレングリコールであることとすれば、潤滑液による水相領域への環境負荷を更に抑制しつつ、摩擦抵抗の低減を図ることができる。
【0029】
また、前記親水性ポリマーは、ポリビニルアルコールの鎖間をホルムアルデヒドで架橋したポリビニルホルマールであることとすれば、液密性、低摩擦抵抗性、耐摩耗性に極めて優れたシール部材を備える軸封装置を提供することができる。
【0030】
また、前記シール部材は、前記軸の外周面に摺接する状態で前記軸に対し同軸状に設けることとすれば、水密性に優れ、摩擦抵抗が小さく、しかも高い耐摩耗性を有するシール部材を備えたオイルシール様の軸封装置を提供することができる。
【0031】
また、前記シール部材が複数設けられていることとすれば、摩擦抵抗を十分抑制しつつも、さらに液密性に優れた軸封装置を提供することができる。
【0032】
また、前記軸の外周に同軸状に設けられ、当該軸の軸周り方向への回転運動に従動する回転環と、前記回転環と摺接する状態で前記軸の外周に同軸状に設けられ、前記軸の軸周り方向への回転運動が規制された固定環と、を備え、前記回転環と前記固定環との摺接部に前記シール部材が設けることとすれば、水密性に優れ、摩擦抵抗が小さく、しかも高い耐摩耗性を有するシール部材を備えたメカニカルシール様の軸封装置を提供することができる。
【0033】
また、本発明によれば、回転可能に支持された軸の周囲に配置され、前記軸周りの液密性を確保する軸封装置のシール部材において、鎖間が架橋された親水性ポリマー樹脂で多孔質状に形成し、水溶性の増粘剤を添加して調製した水性潤滑液を含浸させたことで、水密性に優れ、摩擦抵抗が小さく、しかも高い耐摩耗性を有するシール部材を提供することができる。
【0034】
また、本発明によれば、鎖間が架橋された親水性ポリマー樹脂により形成し、水溶性の増粘剤を添加して調製した水性潤滑液を含浸させた多孔質体を、軸封装置におけるシール部材として使用することにより、軸封装置を、水密性に優れ、摩擦抵抗が小さく、しかも高い耐摩耗性を有するシール部材を備えたものとすることができる。
【0035】
また、本発明によれば、上述の軸封装置を備えた水力発電装置としたため、発電装置内への水の浸入を可及的防止することができ、しかも、摩擦が少なく効率的な発電を行うことのできる水力発電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施形態に係る軸封装置及びシール部材の試験装置の構成を示した説明図である。
【図2】本実施形態に係る軸封装置及びシール部材の試験装置の構成を示した説明図である。
【図3】本実施形態に係る軸封装置及びシール部材の試験装置の構成を示した説明図である。
【図4】摩擦トルクの試験結果を示した説明図である。
【図5】漏水量の試験結果を示した説明図である。
【図6】本実施形態に係る軸封装置及びシール部材の適用例を示した説明図である。
【図7】潮流発電システムの受動機構の構成を示した説明図である。
【図8】本実施形態に係る軸封装置及びシール部材の他の適用例を示した説明図である。
【図9】適用例3に係る発電装置の構成を示した説明図である。
【図10】適用例4に係る発電装置の構成を示した説明図である。
【図11】既存のオイルシールと本適用例4に係る発電システムにて求められるシールとの相違点を示した説明図である。
【図12】適用例4に係る発電システムにおいて開発されたシールシステムの概念を示した説明図である。
【図13】PVFの生成過程を示した説明図である。
【図14】PVFの生成過程を示した説明図である。
【図15】適用例4に係る発電システムの防水システムに採用したPVFシールリップを示した説明図である。
【図16】各潤滑液の性状を示したグラフである。
【図17】トルク摩擦試験装置の要部構成を示した説明図である。
【図18】トルク摩擦試験装置の要部構成を示した説明図である。
【図19】フィールド試験に用いた発電ユニットの外観を示した説明図である。
【図20】各シールシステムにおける摩擦トルクおよび漏水性能の結果を示した説明図である。
【図21】各シールシステムにおける摩擦トルクの時間的推移を示した説明図である。
【図22】フィールド試験の様子を示した説明図である。
【図23A】水中の発電ユニット内から観察した回転円盤の状態を示した説明図である。
【図23B】回転円盤の平均回転数を示した説明図である。
【図24A】水中発電ユニットの構成を示した説明図である。
【図24B】水中発電ユニットの使用状態を示した説明図である。
【図25】浮遊可能な発電装置の外観を示す説明図である。
【図26】浮遊可能な発電装置の一部構成を示した説明図である。
【図27】適用例5に係る発電装置の内部構造の概念図である。
【図28】適用例6に係る発電装置の構成を示した説明図である。
【図29】適用例7に係る発電装置の構成を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本実施形態に係る軸封装置は、回転運動及び/又は往復運動可能に支持された軸の周囲に配置され、前記軸周りの液密性を確保するためのシール部材を備えた軸封装置において、前記シール部材は、鎖間が架橋された親水性ポリマー樹脂により形成した多孔質体であることを特徴とするものである。

【0038】
ここではまず、本発明の理解を容易とするために、本発明を完成するに至った経緯について言及する。

【0039】
前述したように、軸周りの液密性を確保するための軸封装置は従来より種々提案されているが、液密性と低摩擦抵抗性(円滑性)との両立に関しては、未だ改良の余地が残されていた。

【0040】
すなわち、駆動軸に対してリップ部を緊密に接触させたり、駆動軸と共に回転する回転環に対して固定環を緊密に接触させれば、液密性は向上するものの摩擦抵抗が増大してしまう。またその反面、接触を緩めにすれば摩擦抵抗は低減するものの液密性が低下してしまうという問題が存在する。

【0041】
それゆえ、これら相反する液密性と低摩擦抵抗性との両立を更に改善すべく、新たな技術が求められているのが実情である。

【0042】
一方、本発明者は、人工関節や髄内釘などの医療器具について、工学的観点から長年に亘って研究を続けている。

【0043】
これら研究のなかで、本発明者は、人体の関節部における円滑な動きを生み出すメカニズムが、軸封装置における液密性と低摩擦抵抗性との両立に大きく寄与するのではないかとの着想を得た。

【0044】
そして、その後の鋭意研究のなかで、架橋が施された親水性ポリマー樹脂によって多孔質体を形成し、この多孔質体をシール部材として使用することにより、液密性に優れ、しかも摩擦抵抗の少ない軸封装置を実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。

【0045】
すなわち本発明は、生物が持つ優れた機能に着想を得て、人工の物質やそれらの組み合わせで実現された、言うならばバイオミメティックシールをシール部材として備える軸封装置に関するものとも言える。

【0046】
ここで、本発明の構成要件の一つであるシール部材とは、軸封装置において液密性を確保する部材のことである。従来の軸封装置を例に挙げて説明すると、例えばオイルシールの場合はゴムなどによって形成されたリップ部に相当し、メカニカルシールの場合は固定環と回転環との摺動部位を構成する部材に相当する。

【0047】
本実施形態に係る軸封装置では、このシール部材として、鎖間が架橋された親水性ポリマー樹脂により形成した多孔質体を使用している。

【0048】
多孔質体の形成は、樹脂を多孔質化する際に一般的に適用される方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、所定の発泡剤を混入させて発泡させる方法や、微細な気泡を混入させる方法等を挙げることができる。

【0049】
また、多孔質体の孔径は特に限定されるものではないが、例えば、1000μm~0.1μm、好ましくは700μm~1μm程度とすることができる。孔径が1000μmを上回ると多孔質体の強度が低下するため好ましくない。また、孔径が0.1μmを下回ると、液密性を保つための液体の含浸や、後述する潤滑液の含浸が十分に行われないおそれがあるため好ましくない。孔径を1000μm~0.1μm、好ましくは700μm~1μm程度とすることにより、十分な強度を備えながらも、含浸性に優れた多孔質体とすることができる。

【0050】
また、多孔質体の形成に用いられる親水性ポリマーは、特に限定されるものではなく、例えば、ポリビニルアルコールや、親水化またはかつ多孔質化したポリエチレン、ゴム、ポリスチレン、塩化ビニール、オレフィン系樹脂、ウレタン樹脂等を使用することができる。

【0051】
なかでも、ポリビニルアルコールは、優れた低摩擦抵抗性を有しており、軸の運動を阻害してしまうことを可及的に防止することができるため好ましい。

【0052】
また、多孔質体の形成に際しては、親水性ポリマーが架橋された樹脂を使用することとしている。これにより、多孔質体の強度や耐摩耗性を向上させることができ、安定した液密性を実現することができる。

【0053】
具体的には、親水性ポリマーとしてポリビニルアルコールを採用する場合には、多孔質体の形成に際し、ポリビニルアルコールをホルムアルデヒドでホルマール化して得られるポリビニルホルマールを使用する。

【0054】
特にポリビニルホルマールにて形成された多孔質体は、優れた低摩擦抵抗性や耐摩耗性、強度を有しており、シール部材の形成に有用である。

【0055】
また、このときの架橋割合は、1~87%、更に限定的には20~80%であるのが好ましい。架橋割合が20%を下回ると、使用可能であるものの形成される多孔質体の強度や耐摩耗性が低下し、1%を下回ると、耐摩耗性の著しい低下を来して実用性に乏しくなるため好ましくない。また、架橋割合が80%を上回った場合、使用可能であるものの形成される多孔質体の柔軟性が損なわれ、87%を上回ると実用性に乏しいほど柔軟性が失われ、多孔質体が摺接する対象の部材(以下、対摺接部材ともいう。)への追従性が低下するため好ましくない。架橋割合を1~87%、更に好ましくは20~80%とすることにより、優れた強度と対摺接部材への追従性を備えた多孔質体を形成することができる。

【0056】
また、回転又は往復運動可能に支持された軸は、液相領域と気相領域との間に架け渡された軸であり、前記シール部材は、前記液相領域から前記気相領域への液体の漏出を抑制するものであることとしても良い。なお、前述の「回転」は、軸の軸周り方向への回転を意味し、「往復運動」は、軸の軸線方向への運動を意味する。

【0057】
また、特に限定的には、回転又は往復運動可能に支持された軸は、水相領域と気相領域との間に架け渡された軸であり、前記シール部材は、前記水相領域から前記気相領域への液体状の水分の漏出を抑制するものであることとしても良い。

【0058】
このような構成とすることにより、例えば、水中や油中などの液相に没して使用する機構部品、より具体的な例を挙げれば、水中回転翼を備える機構部品などにおいて、機械部分などが収容されている気相領域への液体の滲入、例えば浸水を効果的に防止しつつ、摩擦抵抗の少ない軸封装置とすることができる。

【0059】
また、回転又は往復運動可能に支持された軸は、この軸の一端側に存在する第1の液相領域と、この軸の他端側に存在する第2の液相領域との間に架け渡された軸であり、前記シール部材は、前記第1の液相領域と前記第2の液相領域との間における液の流通を抑制するものであることとしても良い。

【0060】
このような構成とすることにより、第1の液相の液体が第2の液相に滲入することや、第2の液相の液体が第1の液相に滲入することを効果的に防止しつつ、摩擦抵抗の少ない軸封装置とすることができる。なお、第1及び第2の液相領域を構成する液体は、例えば水や油等と理解することができる。

【0061】
また、シール部材には、水性溶媒に水溶性の増粘剤を添加して調製した水性潤滑液を含浸させるようにしても良い。

【0062】
このようにして調製する水性潤滑液の粘度は、例えば、0.001~1000Pa・s、より限定的には0.002~100Pa・sとすることができる。粘度が1000Pa・sを上回るとシール部材の摩擦抵抗が高くなるため好ましくない。また、粘度が0.001Pa・sを下回った場合には、摩擦面間の潤滑液膜の形成が不十分となるため好ましくない。粘度を0.001~1000Pa・s、より好ましくは0.002~100Pa・sとすることにより、液密性と低摩擦抵抗性に優れた軸封装置とすることができる。

【0063】
また、上述の粘度範囲に合致しても良く、逸脱しても良いのであるが、水性潤滑液は、剪断力に応じて粘度が変化する非ニュートン性を備えたものとしても良い。非ニュートン性を備えた水性潤滑液を用いることとすれば、軸の動きが緩慢な場合には粘度が高く軸の始動時の摩擦抵抗の低減に有用であり、軸の動きが速い場合には粘度が低くなって高速稼働時の軸に対する潤滑液由来の抵抗を低減することができるため有用である。敢えてこのような非ニュートン性を有する水性潤滑剤の粘度を明示するならば、例えば粘度が0.001~1000Pa・sの範囲内にて変化するような水性潤滑剤を使用することができる。

【0064】
このような水性潤滑液としては、例えば、増粘剤としてポリエチレングリコールを添加して調製したものを用いることができる。

【0065】
ポリエチレングリコールは生分解性であることから、万一自然界に漏出した場合であっても、例えば油性の潤滑液に比して環境負荷を小さく留めることができる。

【0066】
また、水性溶媒に添加するポリエチレングリコールは、単一の分子量のものを使用しても良く、また、複数の異なる分子量のものを使用しても良い。

【0067】
すなわち、ポリエチレングリコールを使用した水性潤滑液中のポリエチレングリコール分子の分子量分布が、1つの主なピークで構成されていても良く、また、2つ以上の主なピークで構成されていても良い。なお、ここで主なピークとは、潤滑液としての機能に顕著な影響を及ぼすピークを意図したものであり、例えば、分子鎖がちぎれて生じた小さなピークなどは、そのピークが潤滑液としての機能に顕著な影響を及ぼさない限り含まれない。

【0068】
例えば、ポリエチレングリコールの分子量分布が2つ以上の主なピークで構成されるような場合、シール部材(多孔質体)に含浸されやすく、しかも、軸の運動時にでも十分な粘度が発揮できるような水性潤滑液とすることができる。より具体的に例示するならば、例えば、平均分子量2万のポリエチレングリコールと、平均分子量50万のポリエチレングリコールとを用いて水性潤滑液を調製しても良い。

【0069】
また、前述のポリビニルホルマールにて形成した多孔質体は、形成された孔が互いに連通し、くびれを持った連通孔の状態となっており、この連通孔の内部に上述の潤滑液が浸潤することで、適度な流動抵抗を生起して潤滑液の流失を抑制しつつ、低摩擦抵抗性を維持することができる。

【0070】
また、シール部材は、従来のオイルシールの如く、軸の外周面に摺接する状態で軸に対して同軸状に設けるようにしても良い。

【0071】
すなわち、従来のオイルシールのリップ部材の代替として、多孔質体を備えるシール部材を採用することにより、摩擦抵抗が少なく、しかも、液密性に優れたオイルシール様の軸封装置とすることができる。

【0072】
また、シール部材は、軸の外周面に摺接する状態で軸に対して同軸状に複数設けても良い。このような構成とすることにより、更に液密性に優れたオイルシール様の軸封装置とすることができる。

【0073】
また、シール部材は、従来のメカニカルシールの摺動部に適用しても良い。

【0074】
すなわち、前記軸の外周に同軸状に設けられ、当該軸の軸周り方向への回転運動に従動する回転環と、前記回転環と摺接する状態で前記軸の外周に同軸状に設けられ、前記軸の軸周り方向への回転運動が規制された固定環と、を備え、前記回転環と前記固定環との摺接部に前記シール部材を設けても良い。

【0075】
このような構成とすることにより、摩擦抵抗が少なく、しかも、液密性に優れたメカニカルシール様の軸封装置とすることができる。

【0076】
ところで、本実施形態に係る軸封装置やシール部材は、駆動軸を備えるような種々の分野の機構部品に適用可能であるのは前述の通りであるが、本発明者は、特に有用な場面の一例として、川や海、湖などの水の流れで行う発電の分野を想定している。なお、以下の説明では、このような水流による発電の代表として潮流発電を例に説明する。

【0077】
潮流発電は、海流や潮汐力による潮汐流が存在する海面下の領域(海中)に、回転翼を備えた受動機構を配設し、潮流で回転翼を駆動させて発電を行うものである。

【0078】
従来より潮流発電自体は試みられているものの、水深などによっては水相領域である海中と、気相領域である受動機構内部との間で長期間に亘り水密性を保つのが難しい場合があり、未だ重要な課題となっている。

【0079】
それゆえ、水没に備えて発電機は受動機構の内部に備えられない場合が多い。

【0080】
したがって、この場合には、潮流によって回転する回転翼の駆動軸の他端部にかさ歯車などの歯車機構を設置し、この歯車機構を介して海上方向へ伸延する動力伝達軸を設け、海上に設置した発電機を駆動させることにより発電を行う。

【0081】
しかしながら、このような動力伝達方式は、水深とほぼ同じ長さの動力伝達軸を駆動させる必要があり、また、歯車機構での摩擦による動力伝達ロスも大きく、少しでも大きな電力を生じさせたい発電の分野にあっては、非効率的と言わざるを得ない。

【0082】
このような状況において、本実施形態に係る軸封装置を受動機構に備えれば、高い水密性と低摩擦抵抗性を実現することができ、受動機構に発電機を備えることも可能となって、潮流発電を極めて効率的に行うことが可能となる。

【0083】
また、前述したポリエチレングリコールのように、生分解性を有する(環境負荷の少ない)水溶性の増粘剤を用いた水性潤滑液を使用することとすれば、軸封装置における高い水密性と低摩擦抵抗性とを実現しながらも、万が一潤滑液が水相領域に漏出した場合であっても、油性潤滑液を使用する軸封装置を備えた受動機構に比して環境に対するダメージをできるだけ少なくすることができる。

【0084】
以下、本実施形態に係る軸封装置やシール部材について、更に詳説する。

【0085】
〔1.シール部材の作成〕
まず、シール部材の作成について説明する。なお、本実施形態では、シール部材をポリビニルホルマールにて形成する場合について説明するが、シール部材の素材はこれに限定されないのは前述の通りである。

【0086】
シール部材の作成を行うにあたって始めに、ケン化度86~90%、平均重合度1000のポリビニルアルコールを10~15重量%となるように水に溶解しポリビニルアルコール水溶液の調製を行った。なお、このとき必要に応じて、溶解を容易とするために、55℃程度まで加温しながら溶解を行っても良い。

【0087】
次に、得られたポリビニルアルコール水溶液を24時間程度静置又は真空環境下で静置した。これにより、ポリビニルアルコール水溶液中の大きな気泡を除去することができ、均一な大きさの空孔を有する多孔質体を形成することができる。

【0088】
次に、静置したポリビニルアルコール水溶液100重量%に対して、架橋剤としてのホルムアルデヒドを20~100重量%、架橋を促進する触媒としての硫酸を20~100重量%添加し、全体が均一となるように5分間撹拌を行った。なおこのとき、起泡剤や可溶性物質を適宜添加すると、後に空孔径の大きな多孔質体を得ることができる。起泡剤としては例えばサポニンを用いることができ、また、可溶性物質としては例えばデンプンを用いることができる。

【0089】
そして、混合した溶液を型枠内に流し込み、室温~60℃の範囲内で、24~72時間かけて架橋反応を行わせ固化を行った。

【0090】
このようにして、外径50mm、内径30mm、長さ30mmの円筒状で多孔質のシール部材Aを得た。このシール部材を検鏡した結果、孔の直径は700μm、空隙率は90%であった。

【0091】
また、同様の方法により、外径40mm、内径30mm、長さ15mmの円筒状で、孔の径は80μm、空隙率は89%であるシール部材Bも形成した。

【0092】
〔2.水性潤滑液の調製〕
次に、水溶性潤滑液の調製を行った。ここでは、水溶性の増粘剤として、ポリエチレングリコールを用いることとした。具体的には、水溶性潤滑液は、ポリエチレングリコールを3重量%となるように水に溶解することで調製した。なお、ポリエチレングリコールの水への溶解にあたっては、室温~60℃程度まで加温しながら、ミキサーまたはシェイキング装置で撹拌を行っても良い。

【0093】
また、水性潤滑液は、ポリエチレングリコールの分子量を違えて、下記の2種類調製した。
水性潤滑液X:平均分子量2万のポリエチレングリコールと、平均分子量50万のポリエチレングリコールとを重量比1:1で使用し、終濃度が3%となるように調製した。
水性潤滑液Y:平均分子量200万のポリエチレングリコールを使用し、終濃度が3%となるように調製した。

【0094】
〔3.摩擦トルク測定試験〕
次に、〔1.シール部材の作成〕で作成したシール部材と、〔2.水性潤滑液の調製〕で調製した水性潤滑液とを使用して、オイルシール様の軸封装置を構成し、摩擦トルクについて、従来のゴムを使用したオイルシール様の軸封装置との比較を行った。

【0095】
(試験装置の構成)
図1~図3に、本摩擦トルク測定試験にて使用した試験装置の構成を示す。図1は、試験装置10の全体構成を示す説明図であり、図2は動力伝達部11及び試験部12近傍を示した断面斜視図であり、図3は試験部12に配設するテストユニット13の構成を示す説明図である。

【0096】
図1に示すように試験装置10は、駆動モータ14を備える駆動部15と、駆動部15にて生起した動力を伝達する動力伝達部11と、動力伝達部11により伝達された動力でテストユニット13を駆動させる試験部12とで構成している。

【0097】
そしてこの試験装置10は、動力伝達部11の中途から下方を水中に沈めた状態で駆動モータ14を駆動させ、テストユニット13に配設した後述する軸封装置Fの摩擦トルクを測定するものである。

【0098】
具体的な構成について説明すると、駆動部15は、電力の供給によって駆動する駆動モータ14が外観視略箱型のケーシング16の上方に備えられており、駆動モータ14のモータ軸14aには、動力伝達部11の垂直伝達軸17が、トルクメータ18を介して取り付けられている。

【0099】
トルクメータ18は、例えばコンピュータ等の図示しない処理装置に電気的に接続されており、トルクに応じた信号を出力する。

【0100】
動力伝達部11は、試験部12へ動力を伝達する垂直伝達軸17と、同垂直伝達軸17の外周に配置された伝達軸外筒19とで構成している。伝達軸外筒19は、その内方に水が浸入するのを防止するための部材であり、動力伝達部11を水中に沈めた状態においても、垂直伝達軸17は気相中に配置される。

【0101】
試験部12は、図2にも示すように、試験対象となる軸封装置Fを備えたテストユニット13と、同テストユニット13へ動力伝達部11からの動力を伝達するギア部20とで構成している。

【0102】
ギア部20は、水密状に形成された水密ケーシング21と、垂直伝達軸17の下端に取り付けられた駆動笠歯車22と、駆動笠歯車22に噛合する従動笠歯車23と、従動笠歯車23により駆動される水平伝達軸24とを備えている。水平伝達軸24の先端部に位置する水密ケーシング21には、水密性を確保しつつテストユニット13を取付可能としたユニット装着部25が形成されている。

【0103】
テストユニット13は、図3に示すように、駆動軸30と、軸封装置Fとで構成している。軸封装置Fは、外筒体26と、軸収容体27と、シール部材28と、押さえ部材29とを備えている。

【0104】
外筒体26は、テストユニット13の外形を構成する部材であり、図3(b)の分解図にも示すように、2つの半割状外筒体26a,26bで構成し、軸収容体27やシール部材28、押さえ部材29、駆動軸30を収容しつつ、シール部材28を交換可能としている。

【0105】
軸収容体27は、駆動軸30の外周に取り付けられる周方向外面に段差を備えた略円筒状の部材であり、その両端部には内径が拡径されたシール部材収容部27aが形成されている。

【0106】
シール部材28は、駆動軸30の軸周りの液密性(水密性)を確保するための部材である。本試験では、このシール部材28の種類を変えたり、従来のものを装着することで試験を行う。

【0107】
押さえ部材29は、軸収容体27の両端面に配置されるリング状の部材であり、シール部材28の軸収容体27からの脱落を防止するためのものである。

【0108】
また、外筒体26には、水性潤滑液をテストユニット13の内部へ供給するための潤滑液供給口26cが穿設されている。また、軸収容体27の周面にも外周面から内周面へ貫通させた複数の潤滑液導入路27bが穿設されており、潤滑液供給口26cより供給された水性潤滑液は、潤滑液導入路27bを介して軸収容体27の内周面と駆動軸30の外周面との間に形成される潤滑液貯留空間31に至り、シール部材28に含浸されるよう構成している。

【0109】
(試験方法及び結果)
上述した試験装置10を用いて、シール部材28や水性潤滑液の組成を違えた時に、従来のゴム製シール部材に比して、摩擦トルクや水漏れ量がどのように変化するかについて検討を行った。

【0110】
使用したシール部材は、前述の〔1.シール部材の作成〕にて形成したシール部材A及びシール部材Bの2種を使用した。また、比較対照としてNOK株式会社製オイルシール(型番:AC/AE1709A)を使用した。

【0111】
なお、シール部材と軸の接触状態は密であったほうが、漏れ量が少ない。ただし、密過ぎると摩擦力が増加し、好ましくない。PVFを外形50mm、内径30mm、幅30mmに成型して形成したシール部材Aは、内径50mm、幅30mmのホルダに配置後、直径30mmの軸を挿入した。また、PVFを外形40mm、内径30mm、幅15mmに成型して形成したシール部材Bは、内径37.5mm、幅15mmのホルダに配置後、直径30mmの軸を挿入した。

【0112】
また、シール部材Aやシール部材Bを用いて試験を行う際には、〔2.水性潤滑液の調製〕にて調製した水性潤滑液X又は水性潤滑液Yを供給して潤滑を行った。各シール部材や水性潤滑液の具体的な仕様を表1に示す。
【表1】
JP0006168615B2_000002t.gif

【0113】
また、試験は、水深1mとなるように水を収容した水槽内に試験部12及び動力伝達部11の中途部まで浸漬して行うこととし、摩擦トルクは、テストユニット13を装着した時にトルクメータ18にて計測されるトルクから、テストユニット13を装着していない時に計測されるトルクを差し引くことで算出した。

【0114】
このようにして試験を行った結果を図4及び図5に示す。図4は摩擦トルクを示したグラフであり、図5はシールの漏水量を示したグラフである。図4からも分かるように、従来のゴム製の比較シール部材における摩擦トルクは0.0259N・mであったのに対し、シール部材A及びシール部材Bのいずれも比較シール部材の摩擦トルクを下回る結果が得られた。すなわち、鎖間が架橋された親水性ポリマー樹脂により形成した多孔質体で形成したシール部材を備える本実施形態に係る軸封装置は、従来のシール部材を備える軸封装置に比して、良好な低摩擦抵抗性を示すことが示された。

【0115】
特に、シール部材Aの摩擦トルクは0.0233N・mであったのに対し、シール部材Bの摩擦トルクは0.0179N・mであり、シール部材Bは更に低摩擦抵抗性に優れていることが示された。

【0116】
また、図5からも分かるように、比較シール部材における漏水量は442ml/hであったのに対し、シール部材A及びシール部材Bのいずれも比較シール部材の漏水量を下回る結果が得られた。すなわち、鎖間が架橋された親水性ポリマー樹脂により形成した多孔質体で形成したシール部材を備える本実施形態に係る軸封装置は、従来のシール部材を備える軸封装置に比して、良好な水密性(液密性)を示すことが示された。

【0117】
特に、シール部材Aの漏水量は388ml/hであったのに対し、シール部材Bの漏水量は13.2ml/hと大幅に低く、図4にて示した摩擦トルクの結果を加味して勘案すると、従来に比して低摩擦抵抗性を示しながらも極めて高性能な液密性を実現するという、互いに相反する要件を両立可能なシール部材及び軸封装置であると言える。

【0118】
〔4.適用例1〕
次に、本実施形態に係るシール部材や軸封装置の具体的な適用例について、図面を参照しながら更に説明する。

【0119】
図6は、潮流Tが存在する海中Sに設置された潮流発電システムTsの受動機構Tg部分を示した説明図である。受動機構Tgは、海上の構造物(図示せず)より海中へ向けて垂設された支持部40の下端に配設されており、潮流Tを集中させつつ整流する略円筒状の胴部41の中空内部に、本体支持部42を介して本体部43が備えられている。

【0120】
また、本体部43の先端には潮流Tを受けて回転する回転翼44が配設されており、この回転翼44にて得られた回転力は本体部43に伝えられ、発電が行われるように構成している。

【0121】
図7は、受動機構Tgの断面を示した模式図である。なお、図7では胴部41は省略している。図7に示すように、受動機構Tgは、回転翼44と、回転翼44により回転させられる受動軸50と、同受動軸50の軸周りに配設された軸封装置Cと、受動軸50の回転速度を変速する変速機51と、変速機により変速された軸の回転運動を電力に変換する発電機52とを備えている。

【0122】
そして、潮流Tにより回転翼44が回転させられると、その回転力は受動軸50により連結部54aを介して発電機収容部56内に配設された変速機51の変速入力軸51aに伝達され、例えば増速されて変速出力軸51bより連結部54bを介して発電機軸52aに伝達され、発電機52にて発電が行われることとなる。発電機52にて発電された電力は、本体支持部42内に敷設された送電ケーブル55を介して、地上部の受電設備(図示せず)に供給される。

【0123】
ここで受動軸50の周囲に配置された軸封装置Cは、水相領域である海中Sから気相領域である発電機収容部56へ、受動軸50に沿って水が浸入(漏水)するのを抑制するために設けられたものであり、前述の〔3.摩擦トルク測定試験〕にて使用したテストユニット13の軸封装置Fと略同様の構成を備えている。

【0124】
また、その内部には、鎖間が架橋された親水性ポリマー樹脂により形成した多孔質体である環状のシール部材53が、受動軸50の外周面に摺接する状態で、受動軸50に対し同軸状に設けられている。

【0125】
このシール部材53は、軸封装置Cの外周面に穿設された潤滑液供給口57より供給される水性潤滑液が含浸されており、高い液密性を確保しながらも、極めて優れた低摩擦抵抗性を実現するようにしている。なお、潤滑液供給口57に供給される水性潤滑液は、本体支持部42に配設されている水性潤滑液供給管58を介して地上部より供給するように構成している。

【0126】
特に本実施形態では、増粘剤としてポリエチレングリコールを使用した非ニュートン性を示す水性潤滑液を使用しているため、万が一この水性潤滑液が海中Sに漏出したとしても、油性潤滑液に比して環境負荷が極めて少なくなるよう構成している。

【0127】
このように、本実施形態に係る軸封装置Cを備える潮流発電システムTsの受動機構Tgによれば、高い液密性を実現することができるため、海中Sに配置される本体部43内に発電機52を配設することが可能となり、地上部まで動力を伝達する機構が不要であることから、その間に生じる動力ロスを削減することができ、効率の良い発電を行うことができる。

【0128】
しかも、極めて優れた低摩擦抵抗性を有するため、従来の軸封装置に比して摩擦による動力ロスを低減することができ、発電の効率化を助長することができる。

【0129】
〔5.適用例2〕
次に、本実施形態に係るシール部材や軸封装置の他の具体的な適用例について、図面を参照しながら説明する。

【0130】
図8は、回転軸60を備える機構部品に配設された軸封装置としてのメカニカルシール61を示す一部切欠した説明図である。

【0131】
図8(a)に示すように、メカニカルシール61は、回転軸60の外周に同軸状に設けられ、回転軸60の軸周り方向への回転運動に従動する回転環62と、同回転環62と摺接する状態で回転軸60の外周に同軸状に設けられ、回転軸60の軸周り方向への回転運動が規制された固定環63とを備えている。

【0132】
また、回転環62と固定環63との摺接部64は、図8(b)に示すように、回転環62側の摺接面と、固定環63側の摺接面とで構成されており、ここで流体の漏れを抑制すべく構成している。

【0133】
そして、本適用例に特徴的には、固定環63側の摺接面の少なくとも一部を、本実施形態に係るシール部材65にて構成している。

【0134】
また、このシール部材65には、図8(a)に示す水性潤滑液供給路66より供給される水性潤滑液を含浸させている。

【0135】
このように、本実施形態に係る軸封装置としてのメカニカルシール61によれば、従来のメカニカルシールに比して、高い液密性と極めて優れた低摩擦抵抗性を実現することができる。

【0136】
〔6.適用例3(マイクロパワージェネレーションユニットと、同マイクロパワージェネレーションユニットを用いたクラスター型発電)〕
次に、本実施形態に係るシール部材や軸封装置の更なる適用例について説明する。この適用例は河川流発電に係るものであり、生体関節潤滑システムを模倣した上述のシール部材や軸封装置による防水システムを利用した例である。

【0137】
近年、再生可能エネルギーの利用が促進されている。しかし、発電効率や環境への悪影響が懸念される事例も散見される。

【0138】
本発明者は、河川流・潮流エネルギーを周辺環境への影響を僅少にしつつ、かつ、高効率に回収するための仕組みについて鋭意研究を進め、この過程で生体関節の潤滑システムに学び、低摩擦・低環境負荷を飛躍的に高めた防水システムの開発に成功した。

【0139】
この防水システムは、前述のシール部材や軸封装置を用いたものであり、従来のオイルシール部品のシールリップ部の材料に親水性多孔質材料(PVF)を導入し、非ニュートン性水溶液(PEG)にて潤滑する構造となっている。

【0140】
そして、この防水システムを搭載した発電システムの実証試験において、このシールシステムが有効に機能することが確認できたため、以下に説明する。なお、以下の説明する発電システムは、水の流れを利用して発電するものであり、その代表例として河川流を用いた発電を示すが、水の流れは河川流に限定されるものではない。例えば、海の潮流などで行うようにしても良いのは勿論である。

【0141】
先に言及したように、生体関節は広範な変動荷重・滑り速度にさらされているにも関わらず優れた低摩擦・低摩耗特性を発現する優れた潤滑システムとなっている。この潤滑システムは、低弾性率で親水性・多孔質である軸受材料(軟骨)と、非ニュートン性の水系潤滑液(関節液)にて構成されている。

【0142】
本適用例3に示す発電システムは、この優れた潤滑システムを工学的に再現し、河川流発電や潮流発電用潤滑部品に適用してなされたものである。

【0143】
河川流や潮流はある程度安定しているとはいえ、速度の増減が絶えず起こる。また、潤滑液の漏れは河川や海洋の汚染につながるため、オイルフリーで毒性の小さいものを使う必要がある。

【0144】
本発明者は、以上のことを鑑み、生体のしくみに学び、低摩擦・低環境負荷を飛躍的に高めた軸受システム、すなわち、本実施形態に係るシール部材や軸封装置を発明した。なお、本発明者らは、バイオミメティックシールとも言える本実施形態に係るシール部材や軸封装置について、関節軟骨の優れた潤滑機能を模倣した潤滑システムを応用したものであるから、Biomimetic System for Tidal power generation learned from Articular caltilageの頭文字をとって、“Bio-Star”と称している。

【0145】
まず、本実施形態に係るシール部材や軸封装置を搭載したマイクロパワージェネレーションユニットとクラスター型発電のイメージを図9に示す。図9(a)はマイクロパワージェネレーションユニットの構成を示した外観斜視図であり、図9(b)はマイクロパワージェネレーションユニットを複数用いたクラスター型発電の様子を示したイメージ図である。

【0146】
図9(a)に示すように、本実施形態に係る軸封装置やシール部材は、水車を支える軸受部2ヵ所に搭載されている。なお、図9(a)では、上部開口を水密閉蓋するドーム状のカバーを省略して示しているが、略ボート状のユニット内部は水分を嫌う発電機等が配設されており、上記シール部材や軸封装置によって軸受部の水密性が保たれている。ユニット内に搭載された増速機と発電機より得られた電力は、係留用ロープにつるされた電源ケーブルから陸上部に取り出せるようになっている。図9(b)に示すクラスター型発電において、1つの発電ユニットは1.2m×1.2m、20kg以下と非常に小さく、これを複数同時設置して発電する形態を提案している。

【0147】
この形態の特徴として、1)ダム・周辺道路の整備などの付帯インフラ整備が不要で、流れがあるところであればどこでも設置が可能点や、2)豪雨などが予想される場合は撤去が簡単である点、3)一つのユニットに不具合が発生しても全体の発電への影響が小さい点などがあげられる。

【0148】
〔7.適用例4(発電装置への防水システムとしての適用)〕
図9にて示したユニットは、非常に浅い河川での発電が可能な反面、水車を利用しているため、河川流のパワーを必ずしも効率的に回収できない場合も考えられる。

【0149】
そこで本発明者は、図10に示すようなタービン(プロペラ)が完全に水没する発電システムの開発をおこなった。図10(a)はその発電システムの外観斜視図であり、図10(b)は同発電システムの発電機構部分の構成を示した説明図である。

【0150】
本適用例4に係る発電システムの特徴的な構成の一つは、歯車などの動力伝達系による機械的ロスを減少させるために、タービン → 増速機 → 発電機、すべてを水中で直線的に配置するレイアウト構造にある。

【0151】
ここで問題となるのが防水用シールである。回転するタービンとそれにつながるシャフトが水中に曝されているにもかかわらず、シャフトより電力を取り出す発電機およびその周辺機器は防水する必要があるという点である。

【0152】
前述したように、防水の役割を果たす部品はオイルシールやメカニカルシールと呼ばれ、さまざまな分野における機械の密封装置として欠かすことができない製品となっている。

【0153】
図11に既存のオイルシールと本適用例4に係る発電システムにて求められるシールとの相違点を示す。図11中左側に示す既存のオイルシールは、シールリップ部にゴム系材料が用いられており、気相と油層を分離する役割を果たしている。油層の成分を利用し、シールリップとシャフトの接触部分を潤滑する一方、油層から気相への漏れを防ぐために、気相から油層への漏れが許容されている。

【0154】
一方、本適用例4に係る発電システムに求められるシールは、潤滑油の漏れによる環境汚染を防ぐためにも、低環境負荷の水溶性潤滑液を使うべきであり、この場合、水層(河川水または海水)と水層(潤滑液)を分離しなければならない。

【0155】
また、防水の観点から水層(河川水または海水)から水層(潤滑液)への漏れが許容できない。つまり、本適用例4に係る発電システムに求められるシールは、従来型のシールとは異なる機能を有するシールでなければならないことは明白である。

【0156】
そこで次に、この適用例4に係る発電システムに用いられるシールリップ及び潤滑液について言及する。

【0157】
本適用例4に係る発電システムにおいて開発されたシールシステムの概念図を図12に示す。このシールシステムでは、水層(河川水または海水)/水層(潤滑液)/気相(発電装置内)を分離するために、シールリップを2つ配置し、シールリップ間に潤滑液を貯留する構造を有している。

【0158】
また、シールリップにあたる材料は、従来のゴム系材料ではなく、生体関節軟骨を模倣した材料、すなわち、本実施形態に係るシール部材を用いている。

【0159】
関節軟骨は、コラーゲン繊維でできた低弾性率の連続多孔質体であり、その内部には潤滑液成分であるプロテオグリカン(糖タンパク複合体)が存在している。また、軟骨同士が直接接触した場合、軟骨の変形と同時に潤滑液成分の滲出が発生し、直接接触状態を緩和している。

【0160】
これらの軟骨機能を再現する物質として、前述のホルマール化したポリビニルアルコール(ポリビニルホルマール:PVF)を使用した本実施形態に係るシール部材を用いている。

【0161】
PVFの生成過程を図13及び図14に示す。ポリビニルアルコールを硫酸(H2SO4)などの酸性触媒とともにホルムアルデヒド(HCHO)でホルマール化すると、耐水性が付与され、機械的性質、耐薬品性にも優れた物質へと変化する。実際のホルマール化では分子間で反応する分子間ホルマールと、1分子内の1-3 グリコールや、1-2 グリコール間で反応する分子内ホルマールが混在して起こる。ゆえに、ここで得られる物質はアルコール性水酸基、アセチル基、ホルマール基が混在した共重合物質となっている(図13参照。)。

【0162】
水に溶解されたポリビニルアルコールは分子間のホルマール化が進行するにつれ、高分子主鎖間の架橋部分が増加する(図14参照。)。さらに1分子内のホルマール化も進行するため、高分子主鎖は水に不溶な物質に変化していく。しかし、反応に関与しないアルコール性水酸基が残存しているため親水性は保持されている。この過程ではポリビニルアルコールの溶媒であった水の排除が進むので、主鎖が分子間力などにより凝集し、梁と気孔が現れる。このような過程を経て生成される物質は親水性で、かつ多孔質・連続気孔体の構造を有しているため、関節軟骨と同じ特性が発現しやすい。シールリップの材料特性や潤滑特性は図14で示した梁と気孔の状態の相互関係により決定される。

【0163】
本適用例4に係る発電システムの防水システム(軸封装置やシール部材)に採用したPVFシールリップを図15に示す。化学反応開始直後の流動性を有する反応液をPTFE製鋳型に流し込み、反応完了後に取り出して作成した。PVF気孔径に5μmを採用し、外径40mm、内径30mm、厚さ5mmのシールリップを作成した。

【0164】
また、潤滑液は、人体の関節液を模倣するため、ポリエチレングリコール(PEG)水溶液を潤滑液として採用した(図16参照。)。PEG水溶液は関節液と同様、せん断速度の増加に伴い粘度が低下する非ニュートン流体である。

【0165】
前述の適用例3にて示したマイクロパワージェネレーションユニット(図9参照。)に搭載した軸封装置では、起動摩擦および定常摩擦の特性を向上させるため、分子量2万と50万の混合PEG水溶液(重量比1:1、3.0wt%)を潤滑液として使用した。しかし、防水機能を強化するためには、潤滑液の高粘性によるせん断抵抗を受けても、高粘度によるシール性を優先したほうが良いことが本発明者らの予備試験で明らかとなったため、本適用例4に係る発電システムの軸封装置では、分子量200万の3.0wt%水溶液を潤滑液として使用した。

【0166】
そして、これらの構成を備えた軸封装置を有する発電システムについて、トルク摩擦試験及びフィールド試験を行った。

【0167】
トルク摩擦試験は、上述の軸封装置を先に図1~3に示した試験装置と略同様の構成を有するトルク摩擦試験装置(図17及び図18参照)に装着することで行った。

【0168】
また、フィールド試験は、先に図10に示した説明図を元に作成した発電ユニットにより行った。図19にフィールド試験に用いた発電ユニットの外観を示す。なお、この発電ユニットでは、シールシステムの摩擦トルクと防水性能の評価を優先させているため、発電機類は後に組み込むことができるように設計されている。また、2台の発電ユニットのうち、1台に開発したシールシステムを、もう1台に既存のオイルシール(AE1709A、NOK製)を搭載した。回転軸の端点に回転円盤を取り付け、回転軸の回転状態をビデオカメラで陸上から観察・記録できるようにした。

【0169】
また、実証試験の場所として、一級水系白川(熊本県熊本市)を選定し、実際の河川流における回転軸の回転状態および防水性能を評価した。

【0170】
まず、トルク摩擦試験にて得られた各シールシステムにおける摩擦トルクおよび漏水性能の結果を図20に示す。本適用例4にて使用したシール部材及び軸封装置は、既存のオイルシールよりも25%以上摩擦トルクが小さい状態でシャフトを回転させることができることが証明された。

【0171】
また、漏水量は検出限界以下(0.01mL/h以下)となり、既存のオイルシールよりも優れた防水性があることが証明された。この時の潤滑液リザーバーは水面と同じレベルに設置することで、最も潤滑液の消費が少なくなることが確認された。

【0172】
図21は各シールシステムにおける摩擦トルクの時間的推移である。メカニカルシールは摩擦トルクの変動が小さいが、摩擦トルクの値は大きく、トルクメータの測定限界値(300mN・m)を越えていた。オイルシールの摩擦トルクはメカニカルシールよりも小さいが、トルクの変動が大きく、水潤滑によるゴムと金属のスティック・スリップが発生していると考えられた。本適用例4にて使用したシール部材及び軸封装置の摩擦トルクの変動は、メカニカルシールと同じように小さく、かつその値はオイルシールよりも小さいことが明らかとなった。

【0173】
次に、フィールド試験の様子を図22に、水中の発電ユニット内から観察した回転円盤の状態を図23Aに示す。また、図23Bに実証試験中の回転円盤の平均回転数を示す。本適用例4にて使用したシール部材及び軸封装置の摩擦トルクは実際の河川利用においても非常に低く、オイルシールの約3.3倍の回転数を得ることができることが確認された。

【0174】
このように、本適用例4に係る発電システムによれば、水中においても水の浸入を可及的防止することができ、しかも効率の良い発電を行うことができる。

【0175】
なお、水中に配設する水中発電ユニットとしては、例えば、図24Aのような構成としても良い。すなわち、本実施形態に係る軸封装置を介して水密状とした円筒体の後方に配設されたタービンを、図24Aに示す如く水棲生物の形態を応用して形成した形状としても良い。

【0176】
また、このように形成した水中発電ユニットは、図24Bに示すように係留状態で流し、係留ロープに沿って配設した通電ケーブルを介して水中発電ユニットから得られた電力を例えば蓄電池に集めるようにすることもできる。

【0177】
〔8.適用例5(浮遊可能な発電装置への適用)〕
まず、本適用例5に係る浮遊可能な発電装置の外観を図25及び図26に示す。図25は本適用例5に係る浮遊可能な発電装置の外観を示す説明図であり、図26は同発電装置の一部構成を示した説明図である。

【0178】
図25及び図26に示すように、本適用例5に係る発電装置は、円筒体に複数のフィンが存在し、円筒体自らが浮体となって、その回転力にて発電を行う発電装置である。

【0179】
この発電装置では、円筒体の内部に増速機や発電機が設置され、円筒体を支える中空軸を介して、河川・潮流に係留し、電力を取出し可能に構成している。なお、この適用例5に係る発電装置の構造体を実現するために、上述してきた本実施形態に係るシール部材や軸封装置が適用されている。

【0180】
本発明者により河川流/潮流発電に関する精力的な研究の結果、より実用的な発電装置を実現するための重要なポイントが更に明確になった。事故や故障を防止するためには、電力を取り出す発電機およびその周辺機器に防水対策を行うことが重要であり、この部分の設計(部品)により、エネルギー回収ロスが発生するという点が挙げられる。

【0181】
本実施形態に係る低エネルギーロスの軸封装置及びシール部材により、先に説明したように本発明者は、河川流/潮流でもエネルギー回収が可能な水車型マイクロ&クラスター発電システム(図9及び適用例3を参照。)や、オールインワン発電ユニット(図19等及び適用例4を参照。)への適用と実証試験を行った。

【0182】
しかし、適用例3にて言及した水車型マイクロ発電システムにおいては、舟形浮体部分が受ける流体抵抗は係留ロープの負荷に繋がり、かつ、この部分のエネルギーの回収を行うことはできない。また、適用例4にて言及したオールインワン発電ユニットにおいては、ある程度の水深がないと発電できないものであった。

【0183】
図25及び図26に示す本適用例5に係る発電装置は、これらのことを鑑みて開発されたものである。本実施形態に係るシール部材や軸封装置によって、円筒体の内部に増速機や発電機を組み込むことが可能となり、付帯工事も不要で、かつ係留ロープを兼ねた電力線よりエネルギーを回収することができる自立型装置となっていることが特徴である。

【0184】
図27に本適用例5に係る発電装置の内部構造の概念図を示す。図27(a)は、発電装置の軸と直交する方向の断面を示した説明図であり、図27(b)は軸方向の断面を示した説明図である。図27からも分かるように、本適用例5に係る発電装置は、外部円筒体の対向する一対の平面の略中央部間に中空状の固定軸を挿通して形成しており、前記平面の固定軸の挿通部分には、図27(b)に示すように本実施形態に係る軸封装置を配設して円筒体内への水の浸入を防止すべく構成している。

【0185】
また、円筒体内部には、同円筒体の内部周壁に接触しつつ回転して発電する発電機を3つ備えている。この発電機は、略三角形の支持プレートを介して固定軸に連結されており、図25及び図26に示したように、円筒体外部に配設した水流捕捉用のフィンに水流があたり、固定軸に対して円筒体が回転することにより、固定軸に支持プレートを介して配設された発電機に備えられている摺接ローラが回転し、同発電機によって発電された電力が電力取出し線を介して取り出されるように構成している。

【0186】
このように、本実施形態に係る軸封装置やシール部材によれば、本適用例5に係るような浮遊式の発電装置を実現させることが可能となる。

【0187】
〔9.適用例6(浮遊可能な発電装置への適用)〕
次に、適用例5にて説明した発電装置の変形例を適用例6として説明する。この適用例6に係る発電装置の構成を図28に示す。

【0188】
適用例6に係る発電装置は、前述の適用例5に係る発電装置を2台備えており、この2台の発電装置の固定軸間に2本のフレームを架設した構成を備えている。このような適用例6に係る発電装置は、自らが浮体となる自立型装置という特徴を利用した派生形態発電装置であるとも言える。

【0189】
〔10.適用例7(水面水流と水中水流とで発電可能な発電装置への適用)〕
次に、適用例6にて説明した発電装置の更なる変形例を適用例7として説明する。この適用例7に係る発電装置の構成を図29に示す。

【0190】
適用例7に係る発電装置は、前述の適用例6に係る発電装置の下部に、適用例4の図24A等にて示した本実施形態に係る水力発電装置としての水中発電ユニットを備えた構成としている。

【0191】
このような構成とすることによっても、自らが浮体となる自立型装置という特徴を利用した派生形態発電装置を実現することができる。

【0192】
上述してきたように、本実施形態に係る軸封装置によれば、回転又は往復可能に支持された軸の周囲に配置され、前記軸周りの液密性を確保するためのシール部材を備えた軸封装置において、前記シール部材は、鎖間が架橋された親水性ポリマー樹脂により形成した多孔質体であることとしたため、液密性に優れ、摩擦抵抗が小さく、しかも高い耐摩耗性を有するシール部材を備えた軸封装置を提供することができる。

【0193】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0194】
28 シール部材
30 駆動軸
50 受動軸
53 シール部材
56 発電機収容部
57 潤滑液供給口
58 水性潤滑液供給管
60 回転軸
61 メカニカルシール
62 回転環
63 固定環
64 摺接部
65 シール部材
66 水性潤滑液供給路
A シール部材
B シール部材
C 軸封装置
F 軸封装置
X 水性潤滑液
Y 水性潤滑液
Drawing
(In Japanese)【図1】
0
(In Japanese)【図2】
1
(In Japanese)【図3】
2
(In Japanese)【図4】
3
(In Japanese)【図5】
4
(In Japanese)【図6】
5
(In Japanese)【図7】
6
(In Japanese)【図8】
7
(In Japanese)【図9】
8
(In Japanese)【図10】
9
(In Japanese)【図11】
10
(In Japanese)【図12】
11
(In Japanese)【図13】
12
(In Japanese)【図14】
13
(In Japanese)【図15】
14
(In Japanese)【図16】
15
(In Japanese)【図17】
16
(In Japanese)【図18】
17
(In Japanese)【図19】
18
(In Japanese)【図20】
19
(In Japanese)【図21】
20
(In Japanese)【図22】
21
(In Japanese)【図23A】
22
(In Japanese)【図23B】
23
(In Japanese)【図24A】
24
(In Japanese)【図24B】
25
(In Japanese)【図25】
26
(In Japanese)【図26】
27
(In Japanese)【図27】
28
(In Japanese)【図28】
29
(In Japanese)【図29】
30