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明細書 :水素化触媒、水素化触媒の製造方法、及び水素キャリア物質の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-103158 (P2018-103158A)
公開日 平成30年7月5日(2018.7.5)
発明の名称または考案の名称 水素化触媒、水素化触媒の製造方法、及び水素キャリア物質の製造方法
国際特許分類 B01J  23/46        (2006.01)
B01J  37/04        (2006.01)
B01J  37/02        (2006.01)
B01J  23/89        (2006.01)
B01J  23/60        (2006.01)
C07C  13/18        (2006.01)
C07C   5/10        (2006.01)
C07C  53/02        (2006.01)
C07C  51/00        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI B01J 23/46 301Z
B01J 37/04 102
B01J 37/02 101Z
B01J 23/89 Z
B01J 23/60 Z
C07C 13/18
C07C 5/10
C07C 53/02
C07C 51/00
B01J 23/46 Z
B01J 23/46 311Z
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 12
出願形態 OL
全頁数 20
出願番号 特願2016-255193 (P2016-255193)
出願日 平成28年12月28日(2016.12.28)
発明者または考案者 【氏名】森 浩亮
【氏名】山下 弘巳
出願人 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
個別代理人の代理人 【識別番号】100064908、【弁理士】、【氏名又は名称】志賀 正武
【識別番号】100094400、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 三義
【識別番号】100147267、【弁理士】、【氏名又は名称】大槻 真紀子
審査請求 未請求
テーマコード 4G169
4H006
4H039
Fターム 4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA12C
4G169BA36A
4G169BA47C
4G169BB05A
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4G169BB05C
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4G169BB08B
4G169BB12C
4G169BB16B
4G169BC02C
4G169BC03C
4G169BC08A
4G169BC10A
4G169BC10B
4G169BC15A
4G169BC16A
4G169BC16B
4G169BC22A
4G169BC31A
4G169BC32A
4G169BC33A
4G169BC35A
4G169BC35B
4G169BC36A
4G169BC58A
4G169BC62A
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BC67A
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BC70A
4G169BC70B
4G169BC71A
4G169BC71B
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BC74A
4G169BC74B
4G169BD12A
4G169BD12B
4G169BD13A
4G169BD14A
4G169BD15A
4G169CB02
4G169CB65
4G169CC29
4G169DA05
4G169EA08
4G169EC02Y
4G169EC27
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB05
4G169FB06
4G169FB14
4G169FB27
4G169FB57
4G169FC03
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB80
4H006AC11
4H006BA22
4H006BA23
4H006BA24
4H006BA37
4H006BA55
4H006BB31
4H006BE41
4H006BS10
4H039CA19
4H039CA65
4H039CB10
4H039CB20
要約 【課題】高い触媒活性で水素化反応を行い、ギ酸などの化合物を効率よくかつ低い圧力で製造することが可能な水素化触媒、前記触媒の製造方法、及び前記触媒を用いた水素キャリア物質の製造方法の提供。
【解決手段】層状複水酸化物の表面に、水素解離可能な金属原子が単原子で担持されている水素化触媒。前記水素解離可能な金属原子が、ルテニウム、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ニッケル、金、及び、銀から選択された金属原子であり、水素解離可能な金属原子に水酸基又はハロゲンが結合している水素化触媒。層状複水酸化物を準備する第1工程と、金属原子を含む化合物の水溶液を準備する第2工程と、前記水溶液に前記層状複水酸化物を加える第3工程と、を有する、水素化触媒の製造方法。水素化触媒を用いて、原料ガスまたは原料溶液を水素化して水素キャリア物質を製造する水素キャリア物質の製造方法。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
層状複水酸化物の表面に、水素解離可能な金属原子が単原子で担持されている水素化触媒。
【請求項2】
前記水素解離可能な金属原子が、ルテニウム、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ニッケル、金、及び、銀から群から選択された金属原子である請求項1に記載の水素化触媒。
【請求項3】
前記水素解離可能な金属原子に水酸基又はハロゲンが結合している請求項1又は2のいずれかに記載の水素化触媒。
【請求項4】
前記ハロゲンが、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素からなる群から選択された元素である請求項3に記載の水素化触媒。
【請求項5】
前記層状複水酸化物が、2価の金属イオンと3価の金属イオンとを含み、2価の金属イオンと3価の金属イオンの比率が4:1~6:1の範囲にある請求項1記載の水素化触媒。
【請求項6】
前記2価の金属イオンが、Mg2+、Ni2+、Zn2+、Mn2+、Fe2+、Cu2+、Cd2+、Co2+、Sn、及びアルカリ土類金属の金属イオンから選択され、
前記3価の金属イオンが、Al3+、Fe3+、Cr3+、Co3+、及び周期律表でAlと同族の金属イオンから選択される、請求項5に記載の水素化触媒。
【請求項7】
前記2価の金属イオンがMgイオンであり、3価の金属イオンがAlイオンである請求項5又は6に記載の水素化触媒。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の水素化触媒の製造方法であって、
層状複水酸化物を準備する第1工程と、
金属原子を含む化合物の水溶液を準備する第2工程と、
前記水溶液に前記層状複水酸化物を加える第3工程と、を有する、水素化触媒の製造方法。
【請求項9】
前記第2工程及び第3工程の少なくとも一方の工程において、無機塩基を加える、請求項8に記載の水素化触媒の製造方法。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項に記載の水素化触媒を用いて、原料ガスまたは原料溶液を水素化して水素キャリア物質を製造する水素キャリア物質の製造方法。
【請求項11】
前記原料ガスが二酸化炭素であり、かつ、前記水素キャリア物質がギ酸である請求項10に記載の水素キャリア物質の製造方法。
【請求項12】
前記原料溶液がトルエンであり、かつ、前記水素キャリア物質がメチルシクロヘキサンである請求項10に記載の水素キャリア物質の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化触媒、水素化触媒の製造方法、及び水素キャリア物質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素は、様々な分野で使用されている。例えば、石油精製や石油製品の製造、半導体、食品、及び金属加工などの工業用途に加え、燃料電池や車の燃料や電池における使用など、様々な分野で応用が増えている。しかしながら気体であるために、水素の製造場所から、遠く離れた、水素の様々な使用場所に移動させる場合、一度に大量に運ぶことが困難であった。また水素を貯蔵する際に、大量の気体を貯蔵する為には、高圧タンクが必要であった。液体で貯蔵する場合には、超低温に冷却する必要があり大きなエネルギーが必要であった。またパイプラインで輸送する方法も使用されているが、大規模なインフラの製造が必要であった。
【0003】
水素そのものを保存や移動するのではなく、気体である水素から、水素をキャリアする液体や固体の化合物を製造し、これを保存や移動する方法も検討されている。気体や固体へと形体を変える事により、体積を小さくし、移動や、貯蔵を容易にすることができる。水素をキャリアした化合物は、移動先に到着すると、貯蔵用容器に貯蔵をされる、あるいは、適当な時期に水素が取り出され使用される。前記水素をキャリアする化合物から水素を分離する際は、触媒を使用する等の様々な方法が選択される。移動手段としては、車や電車や船等の移動手段やパイプラインなど、必要に応じて様々な設備が使用される。
上記以外にも、化合物の水素化は、様々な分野で応用可能である。水素をキャリアする化合物は上記用途以外にも、薬品分野や繊維分野や食品分野や電気や機械分野等の様々な分野で使用でき、非常に有用である。その為、様々な方法がこれまで提案されてきている。しかしながら、十分開発されつくしたとは言えない。
【0004】
水素をキャリアでき、かつ水素の取り出しが容易な化合物としては、アンモニアボラン(NHBH)、アンモニア(NH)、メチルシクロヘキサン(C11CH)などの有機ハイドライド、及びギ酸(HCOOH)などが知られている。
【0005】
水素をキャリアする化合物を製造する為に、様々な触媒を用いた、水素化反応などの方法が、これまで提供されてきた。例えば、水素から、水素をキャリアする化合物を製造するために使用される触媒としては、主に均一系錯体触媒の開発が行われてきた。均一系錯体触媒は、溶液に溶かして用いられる触媒である。均一系錯体触媒は高活性であるが、操作性や安定性に課題があり、かつ有機溶媒や添加剤の使用が必要であった。
一方で、不均一系錯体触媒の報告例はまだ少ない。これまで報告されてきた不均一系錯体触媒、すなわち固体触媒では、様々な解決すべき課題があった。有機溶媒やトリエチルアミンなどの有機アミン系塩基を必須とする、及び/又は、製造工程において非常に高い圧力や、高い触媒濃度などを必要とし大きな設備投資が必要である例が多かった(例えば、特許文献1~3)。
毒性が無く安価な化合物から、工業的に使用可能な水素をキャリアする化合物を容易に合成する、新しい技術が待ち望まれていた。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2001—288137号公報
【特許文献2】国際公開第2016/024293号
【特許文献3】国際公開第2013/186156号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、水素化触媒、水素化触媒の製造方法、及び前記触媒を用いた水素キャリア物質の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、金属原子を担持した層状複水酸化物である水素化触媒が優れた水素化反応を供することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明の第一の態様は、以下の触媒を提供する。
(1)層状複水酸化物の表面に、水素解離可能な金属原子が単原子で担持されている水素化触媒。
本発明の第一の態様は、以下の特徴を好ましく有する。以下の特徴は組み合わせて使用することも好ましい。
(2)前記水素解離可能な金属原子が、ルテニウム、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ニッケル、金、及び、銀からなる群から選択された金属原子である。
(3)前記水素解離可能な金属原子に水酸基又はハロゲンが結合している。
(4)前記ハロゲンが、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素からなる群から選択された元素である。
(5)前記層状複水酸化物が、2価の金属イオンと3価の金属イオンとを含み、2価の金属イオンと3価の金属イオンの比率が4:1~6:1の範囲にある。
(6)前記2価の金属イオンが、Mg2+、Ni2+、Zn2+、Mn2+、Fe2+、Cu2+、Cd2+、Co2+、Sn、及びアルカリ土類金属の金属イオンから選択され、
前記3価の金属イオンが、Al3+、Fe3+、Cr3+、Co3+、及び周期律表でAlと同族の金属イオンから選択される、請求項5に記載の水素化触媒。
(7)前記2価の金属イオンがMgイオンであり、3価の金属イオンがAlイオンである。
【0010】
本発明の第二の態様は、第一の態様の触媒の製造方法を提供する。
(8)層状複水酸化物を準備する第1工程と、
金属原子を含む化合物の水溶液を準備する第2工程と、
前記水溶液に前記層状複水酸化物を加える第3工程と、を有する、第一の態様の触媒の製造方法。
本発明の第二の態様は、以下の特徴を好ましく有する。
(9)前記第2工程及び第3工程の少なくとも一方の工程において、無機塩基を加える。
本発明の第三の態様は、第一の態様の触媒を用いた、水素キャリア物質の製造方法を提供する。
(10)第一の態様の水素化触媒を用いて、原料ガス又は原料溶液を水素化して水素キャリア物質を製造する水素キャリア物質の製造方法。
本発明の第三の態様は、以下の特徴を好ましく有する。
(11)前記原料ガスが二酸化炭素であり、また、前記水素キャリア物質がギ酸である。
(12)前記原料溶液がトルエンであり、また、前記水素キャリア物質がメチルシクロヘキサンである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、水素化反応を効率よく、かつ低圧で行う事ができる水素化触媒と、水素化触媒の製造方法、及び前記触媒を用いた水素キャリア物質の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の水素化触媒の1例を示す模式図である。
【図2】本発明で使用される層状複水酸化物の1例を示す図である。
【図3】本発明の水素化触媒の1例を製造する方法の例を示す図である。
【図4】本発明の水素化触媒の例を上及び横から観察した模式図である。
【図5】本発明の水素化触媒の1例を用いた、ギ酸の製造の推定反応機構を示す図である。
【図6】本発明の水素化触媒の1例を、HAADF-STEMで観察した図である。
【図7】本発明の水素化触媒の1例及び比較化合物を、RU-K端XAFSスペクトルで観察した図である。
【図8】本発明の水素化触媒の1例を、inverse FT-EXAFSスペクトルを用いて評価した図である。
【図9】本発明の水素化触媒の1例と、Ruをそれぞれ担持させた他の触媒(MgO、Mg(OH)、AlO、AL(OH))との、活性差を表すグラフである。
【図10】本発明の水素化触媒の2例(Ru/LDH、RuCl/LDH)と、Ruをそれぞれ担持させた他の触媒との活性差と、XPS測定結果を示すグラフである。
【図11】本発明の水素化触媒の6例における、構成元素の違いによる触媒の活性差を示すグラフである。
【図12】本発明の水素化触媒の6例の化合物における、構成元素の違いによる、二酸化炭素吸着と触媒活性との比較を示すグラフである。
【図13】本発明の水素化触媒の1例と、前記酸化物の製造に使用されるRuCl溶液との、触媒の活性差を示したグラフである。
【図14】本発明の水素化触媒の、担持金属原子の違いによる、触媒の活性差を示した、グラフである。
【図15】本発明の水素化反応における、添加される塩基の有無や種類の違いによる、触媒の活性差を示すグラフである。
【図16】本発明の水素化反応における、使用される層状複水酸化物や、使用される水酸化ナトリウム溶液の濃度の差による、触媒の活性差を示したグラフである。
【図17】本発明の水素化触媒の一例(Ru/LDH)の、曲線あてはめ結果を表す表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明の好ましい例を詳細に説明する。しかしながら本願発明はこれら例だけに限定されない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、数値や比率や数など、付加、省略、変更、置換等、種々の変更を加えることが可能である。また説明を容易にするために、図に使用された寸法や比率が実際のものとは異なることがある。

【0014】
<水素化触媒>
本発明の水素化触媒は、層状複水酸化物の表面に、水素解離可能な金属原子が単原子で担持されている。なお本発明において、「水素化触媒」とは、水素ガスを還元剤として化合物に対して水素原子を付加する還元反応である水素化に用いることができる触媒を意味する。
(層状複水酸化物(Layered Double Hydroxide))
図2に、本発明で好ましく使用される層状複水酸化物の例を示す。本発明の層状複水酸化物は、これに限定されず、一般的に層状の複水酸化物として知られている化合物を使用することができる。本発明で使用される層状の複水酸化物は、以下の式(1)で表されることも好ましい。
[M2+1-x3+(OH)][An-X/n・mHO] (1)
(M2+は2価の金属カチオン、M3+は3価の金属カチオン、An はCO2-などのアニオンを表す。Xは0.1≦X≦0.35、nは1~2までの整数、mは0以上の数字を表す。)

【0015】
層状複水酸化物は、2価の金属酸化物に、3価の金属イオンが固溶した、複水酸化物である。2つ以上の基体層(ホスト層9)を有する。ホスト層の数は任意に選択できるが、3~200が好ましく、50~200がより好ましく、50~100も好ましい。3~100や50~100などであっても良い。基体層は3価の金属イオンと、2価の金属イオンを含む。層状複水酸化物は、複数の基体層の層間に、負に帯電する陰イオン(An-)及び水分子の層(ゲスト層9)を、それぞれ挟んだ、積層構造を有する。
前記3価の金属イオンとしては、Al3+、Fe3+、Cr3+、又はCo3+などが挙げられる。なお層状複水酸化物の3価の金属イオンはこれらに限定されず、3価の金属イオンであれば、任意に選択及び使用できる。周期律表に記載されている、如何なる金属のイオンも使用してよい。例えば、周期律表でAlと同族の金属イオンの、例えば、ガリウムやインジウム又はタリウムの、3価のイオンも挙げることができる。
前記2価の金属イオンとしては、Mg2+、Ni2+、Zn2+、Mn2+、Fe2+、Cu2+、Cd2+、Co2+、又は、Snなどが挙げられる。なお層状複水酸化物の2価の金属イオンはこれらに限定されず、2価の金属イオンであれば、任意に選択及び使用できる。周期律表に記載されている、如何なる金属のイオンも使用してよい。例えば、アルカリ土類金属の金属イオンの、例えば、ベリリウム、カルシウム、ストロンチウム、又はバリウムの、2価のイオンなども挙げることができる。
前記陰イオンは任意に選択できるが、CO2-や、Clや、NO3-、OH、F-、Br、SO2-、CHCOOが挙げられる。
3価の金属イオンと2価の金属イオンの組み合わせは任意に選択できる。例えば、Mg2+とAl3+、Ni2+とAl3+、Mg2+とFe3+、及びZn2+とAl3+の組合わせが挙げられる。これらを用いると、金属原子を担持させた場合、CO、H、または酸性有機物質などの化合物に対して、強い濃縮効果を有するので、優れた水素化触媒活性が得られる。なかでも、Mg2+とAl3+を使用すると、特に優れた水素化触媒活性が得られる。Mg2+とAl3+を使用した例として図2が参照される。

【0016】
2価の金属イオンと、3価の金属イオンの比率(M2+/M3+)は、任意に選択できる。2価の金属イオンと3価の金属イオンの比率が、2:1~8:1にあることが一般的であり、4:1~6:1の範囲にあることが好ましい。具体的には、例えば、4:1、5:1、及び6:1、7:1、8:1などが好ましく挙げられる。2価の金属イオンと3価の金属イオンの比率は、5:1が触媒活性を高める点から特に好ましい。Mg2+/Al3+が5:1の割合で使用されることが最も好ましい。Mg2+とAl3+の組み合わせを、5:1の割合で使用すると、特に優れた効果が得られ好ましい。二酸化炭素吸着が大きいという優れた触媒活性が優れる(図12参照)。本発明で使用される層状複水酸化物は、表面に規則的、かつ、豊富な塩基性の水酸基を有するため、高いCO吸着特性を得る点から好ましい。
本明細書では、図2に示されるような、Mg2+/Al3+が5:1の割合の層状複水酸化物を、LDHと記載することがある。

【0017】
(水素化触媒)
図1及び4に、本発明の金属原子を担持した層状複水酸化物(水素化触媒)の例の模式図を示す。
図1の水素化触媒において、Xは金属原子を表し、Yは水酸基又はハロゲンを表す。Zは金属原子を担持した層状複水酸化物(水素化触媒)を示す。金属原子Xは、ルテニウム、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ニッケル、金、及び銀、から選択される少なくとも1つの金属原子である事が好ましい。Yは水酸基、またはハロゲン原子のいずれであっても良い。二酸化炭素を水素化する場合などは、Yが水酸基である方が、高い触媒活性が得られるので好ましい。
本発明の水素化触媒は、担持金属触媒として使用でき、さらに固体触媒として使用できる。本発明は、層状複水酸化物の電子供与性の水酸基に着目した発明である。本発明では、層状複水酸化物の表面にある、塩基性の水酸基を配位子とし、複数の水酸基の上に、電子リッチな1つの金属原子を設けている。これより、優れた触媒特性を得ることができる。豊富な塩基性の水酸基を有することから、気相中のCOを吸着及び濃縮するので、効率よく触媒反応が行われる。

【0018】
より具体的に説明すれば、図4(4Aと4B)に示されるように、本発明の水素化触媒には、層状複水酸化物の表面にある複数の水酸基のうち、隣り合う、言い換えると互いの距離が最も近い、3つの水酸基に、1つの金属原子7が担持されている。金属原子7には、上に更に水酸基が結合している。金属原子は、層状複水酸化物上に3点で担持される。このように1つの金属原子には、層状複水酸化物状の3つの水酸基が結合する。層状複水酸化物の表面上に担持される金属原子の数は、製造条件や材料の種類や条件をコントロールすることで、任意に選択できる。ホスト層とゲスト層の厚さは任意であるが、図4Bに示される例では、ホスト層が0.46nm程度であり、ゲスト層が0.33nm程度である。
また本発明の水素化触媒は、微粒子や微粒子が凝集した凝集粒子であってもよい。本発明の水素化触媒の形状は任意に選択できるが、例と挙げれば、平均粒子径が0.1~ 100μmの粒子や凝集粒子であってもよく、これらは0.5~30μmであることがより好ましく、1~10μmであることがさらに好ましい。これら測定は電子顕微鏡などによって行う事ができる。その他、ロッド状、針状、板状などの形状を有しても良い。

【0019】
本発明の水素化触媒を使用した場合では、電子リッチな金属イオンと、層状複水酸化物状に存在する多くの水酸基と、の組み合わせの効果により、二酸化炭素等の水素化反応が効率よく進む。これは、供される二酸化炭素等の化合物の圧力が弱い場合でも、前記化合物の集まりが促進され、二酸化炭素の水素化が効率よく進むためと考えられる。
詳しく説明すると、本発明の水素化触媒では、圧力を固定し水素の圧力を変えた場合と、水素の圧力を固定して二酸化炭素の圧力を変えた場合とを比較すると、二酸化炭素を変えた方が、触媒活性の変化率が少ないことが、発明者により確認されている。これは本願の水素化触媒が二酸化炭素の吸着特性を有していることを示す。すなわち、二酸化炭素の圧力が変動しても、二酸化炭素の吸着特性により、その変化を受けにくいという優れた効果を意味する。

【0020】
本明細書において、金属原子が「単原子で担持されている」とは、EXAFSあるいはSTEM等の表面解析手法によって、層状複水酸化物の表面において水素解離可能な金属原子が単原子ごとに孤立して担持されていることが確認できることを意味する。従って、水素解離可能な金属原子のすべてが単原子で担持されていない場合であっても、表面解析手法によって単原子で担持されていることが確認できる場合には、本発明の範囲に含まれる。また本明細書において「水素解離可能な」とは、金属原子が水素分子を解離吸着し、解離水素によって、化合物の水素化反応を引き起こすことが可能であることを意味する。
図6、7、8及び17に、OHが結合したRu金属原子が担持されたLDHの分析結果を示す。図6において、輪で囲まれた白い点が、Ru原子を示す。

【0021】
図10に、OHが結合したRu金属原子が担持されたLDHと、Clが結合したRu金属原子が担持されたLDHと、一般的に使用される触媒(Ru添加したもの)の、ルテニウム原子状態と触媒活性の関係を示す。図10のグラフでは、横軸がルテニウム原子状態を示し、値が小さいほど電子リッチである。縦軸は触媒活性を示す。Ru3p結合エネルギーが小さくなるほど、すなわち、この数字が大きくなるほど、TONの値が大きくなる。また図10から分かるように、Ru金属原子にOHが結合している方が、Clが結合しているよりも、触媒活性が良い。このことから、層状複水酸化物表面上に順序良くならんだ、多くの水酸基の配置が、金属原子の触媒活性の為に、有益な台座を形成していると予測される。順序良く並んだ水酸基の配置が、表面の電気陰性度を高め、COの吸着を補助する。規則的に並んだ、かつ豊富に存在する塩基性水酸基が、COの高い吸着性に貢献する。
なお本明細書の図において、OHが結合しているRuの記載が、図中においてRuと省略して記載されることがある。また図中のMgOなどの他の触媒において、Ruの記載は省略されている。

【0022】
<水素化触媒の製造方法>
本発明の水素化触媒の製造方法は、上述した水素化触媒の製造方法であって、前記層状複水酸化物を準備する第1工程と、前記金属原子を含む化合物の水溶液を準備する第2工程と、前記水溶液に前記層状複水酸化物を加える第3工程と、を有する。
図3に、本発明の水素化触媒の製造例を示す。
本発明の水素化触媒は、原料としての層状複水酸化物を製造した後、これを、例えば、金属原子を含む化合物の水溶液、例を挙げれば、塩化ルテニウムの水溶液など、を用意し、混合する等の方法で、製造することができる。ただし上記方法に限定されない。また金属原子を含む化合物も塩化ルテニウムに限定されず任意に選択してよい。例えばRuBr、RuI、Ru(NO)Cl、Ru(CO)などを好ましく挙げることができる。 金属原子を含む化合物の水溶液が酸性に傾いており、かつ、層状複水酸化物が酸性条件に弱い場合、層状複水酸化物の一部が、溶解する可能性がある。その為、金属原子を含む化合物の水溶液には、予め、無機塩基などの他の化合物を加えても良い。無機塩基の例としては、KOH、NaOH、NaHCO、KCOなどが挙げられる。具体例を挙げれば、NaOH水溶液などのアルカリ性水溶液を、金属原子を含む化合物の水溶液に、予め加えることも好ましい。アルカリ性水溶液は、任意に選択でき、水酸化ナトリウム水溶液や、水酸化カリウム水溶液や、炭酸ナトリウム水溶液などが例として挙げられる。しかしながらこれら水溶液に限定されない。
使用するアルカリ性水溶液の濃度は任意に選択できるが、pH8~13位が一般的であり、pH9~10が好ましい。使用するアルカリ性水溶液の濃度は、層状複水酸化物の量や、金属原子を含む化合物の量に応じて選択しても良い。
上記調整により、層状複水酸化物の一部が溶解することを防止できる。またアルカリ性水溶液の使用により、より高い活性を有する層状複水酸化物を得ることができる。

【0023】
本発明の水素化触媒は、具体例を挙げれば、以下のようにして製造することができる。層状複水酸化物として、例えば、Mg10Al(OH)24COを用意する(便宜上、以下、Mg10Al(OH)24COをLDHと表すことがある)。これを、塩化ルテニウム(III)n水和物(RuCl・nHO)を溶かした水溶液に、0.2Mの水酸化ナトリウム水溶液に加えた混合液に、室温で混合する。その結果、灰色の紛体が得られる。

【0024】
製造された本発明の担持後の層状複水酸化物と、担持前の層状複水酸化物とを、X線回析すると、担持した後でも、d001のピークシフトも見られない。この事から、層状複水酸化物上に担持された金属(例えばRu)種は、層状複水酸化物の内側の空間を保ちつつ、分離も剥離もなく、維持されたことが分かる。

【0025】
なお上述したように、上記のような製造方法において、塩化ルテニウムに、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ溶液を加えることも、好ましく使用される。この理由は、塩基性の層状複水酸化物が溶解してしまうことを防止できる上に、[Ru(OH)3-のような,電子リッチなルテニウム水酸化物前駆体が製造できるためである。
塩化ルテニウム(III)n水和物の水溶液に、水酸化ナトリウム水溶液を加えたところ、400nmあたりに、添加前にはなかった、Ru-OH 結合を示すピークが発生したことが、紫外可視分光法(UV-vis spectrum)の評価によって、発明者により観察されている。

【0026】
また塩化ルテニウム(III)n水和物の水溶液の、RU-K端XAFSスペクトルにおいても、水酸化ナトリウム水溶液を添加することで、従来の結合から変化が生じていること、すなわち、RuとOHの結合が生じていることが、発明者により確認されている。
また塩化ルテニウム(III)n水和物の水溶液に、水酸化ナトリウム水溶液を加え、RU-K端XAFSスペクトルのフーリエ変換で観察したところ、以下の結果が発明者により確認されている。すなわち、1.9ÅあたりにみられるRu-Cl結合のピークが消え、Ru-Oのピークが新たに1.6Åあたりに発生したことが、確認されている。

【0027】
<水素キャリア物質の製造方法>
本発明の水素キャリア物質の製造方法は、本発明の水素化触媒を用いて、原料ガスや原料溶液を水素化して水素キャリア物質を製造するものである。
図5に、本発明の水素化触媒を使用する、水素化触媒反応の好ましい例を示す。本発明の水素化触媒に、水素を加え、次に二酸化炭素を加えることで、水素化反応が進み、ギ酸を製造される。この反応サイクルでは、水酸基が結合したRu原子が、LDHに担持されており、サイクルは液相で行われる。ギ酸を製造した後には、水酸基が結合したRu原子が、当初の層状複水酸化物に戻る。この反応サイクルにおいて、速度式は以下の式で表される。
速度式: v= k PH21.95CO21.71
この反応サイクルでは、まず、Ru原子が担持したLDHへの水素の添加によって(ステップ1)、Ruヒドリド種が形成される。この時、塩基性の水酸基は、Ru付近に吸着されたHのヘテロリシス解離を助ける(ステップ2)。次に、二酸化炭素を加えることにより(ステップ3)、異性化に続き、η1-ギ酸Ru中間体が形成される(ステップ4)。続いて、ギ酸が製造され、当初の活性種のある状態に戻る(ステップ5)。このサイクルでは、H-H結合解離(ステップ1)あるいはヒドリドの形成(ステップ2)が律速する。
本発明では、この工程1~5を繰りかえすことで、連続して水素化反応を行い、目的の化合物を製造することができる。従って、連続して、触媒反応を行い、ギ酸の製造を繰り返し行う事が可能である。なおアレニウスプロットにより得られた、Ru/LDHの二酸化炭素の水素化反応における活性エネルギー(Ea)は54.3kJmol-1であった。なお“Ru/LDH”は、水酸基が結合したRuを担持したれLDHを示す。

【0028】
本発明の水素化触媒反応において、使用される水素化触媒の種類は、図5に記載されたものに限定されない。本発明の範囲から、適宜選択して使用できる。また水素化反応に使用される原料ガスや原料溶液も、二酸化炭素のみに限定されず、本発明の水素化触媒を用いて水素化反応を行うものであれば、如何なる化合物を使用しても良い。原料の例としては、例えば、 トルエン、スチレンなどを挙げることができる。製造される水素キャリア物質もギ酸に限定されず、前述で挙げた化合物の水素化反応から製造される化合物を得ることができる。例えば、メチルシクロヘキサン、エチルベンゼンなどを挙げることができる。
なお本発明の水素化触媒反応においては、原料ガスや原料溶液を先に触媒に加えて後から水素を加えても良いし、水素を先に加えてから原料ガスや原料溶液を後で加えても良い。いずれの順番でも、触媒上で反応が行われれば良い。

【0029】
本発明の水素化触媒反応では、温度や圧力は任意で選択できる。
水素化触媒反応の温度は60~200℃が好ましく、80~120℃がより好ましい。この温度範囲であると、反応の効率化と触媒耐久性の向上という効果が得られる。
水素化触媒反応の水素を加えられた時の、容器内の圧力は、1~50気圧(atm)であることが好ましく、3~35気圧がより好ましく、3~28気圧が更に好ましく、5~20気圧が特に好ましい(1atm=101325Pa)。この圧力範囲であると、反応の効率化と触媒耐久性の向上という効果が得られる。
水素化触媒反応の二酸化炭素などの化合物を加えられた時の、容器内の圧力は、1~50気圧であることが好ましく、3~35気圧がより好ましく、3~28気圧が更に好ましく、5~20気圧がより好ましい。この圧力範囲であると、反応の効率化と触媒耐久性の向上という効果が得られる。
二酸化炭素などの化合物を加えた後に水素を加える際に、密閉された容器内の圧力は上昇しても良い。その上昇の程度も任意に選択できる。例を挙げれば、1~30気圧変化しても良く、5~20気圧変化しても良く、5~15気圧変化しても良い。
水素化触媒反応の反応時間も任意で選択できるが、水素を加えてから、二酸化炭素などの化合物を加えるまでの時間は、0.01~10時間が好ましく、0.05~6時間がより好ましく、0.1~2時間が更に好ましい。加える順番が逆である場合も前記時間が好ましく使用できる。この時間範囲であると、反応の効率化という効果が得られる。水素を加えてから、水素キャリア化合物を得るまでの時間も任意に選択できる。例を挙げると、1~100時間であり、好ましくは1~50時間であり、より好ましくは2~35時間でありさらに、特に好ましくは10~30時間である。

【0030】
本発明の水素化反応の方法において、使用される溶媒は任意に選択されるが、例を挙げれば、水、エタノール 、アセトニトリル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。これらは単独で使用されても、2種以上を組み合わせて使用しても良い。安価で取扱いが容易なことから、水が好ましく使用される。
本発明の水素化反応の方法は、塩基の存在下で行う事が好ましい。
使用される塩基の例としては、水酸化ナトリウムや、炭酸水素ナトリウムや、水酸化カリウムや、トリエチルアミンなどを使用することができる。水酸化ナトリウムや、炭酸水素ナトリウムや、水酸化カリウムが、生成したギ酸の分離の点から好ましく使用される。これら塩基が使用される濃度は任意であるが、0.005~2mol/Lなどが一般的であり、0.01~2mol/Lなどが好ましく、0.01~1.5mol/Lがより好ましく、0.1~1mol/Lが更に好ましい。0.005~0.5mol/Lなども好ましく使用される。
本発明の反応では、一般的な水素化触媒での触媒反応に使用されるトリエチルアミン等の有機アミン化合物を使用しなくても、水素化反応を行う事が出来る。他の触媒では、高い活性を得るためにはトリエチルアミンが使用される傾向がある。しかしながら、発明では水や塩基とも組み合わせで、十分な反応活性をえることができる。トリエチルアミン等の有機アミン化合物の使用は、生成したギ酸などの化合物と複合材を形成する可能性があり、ギ酸を取り出すための分離作業が必要となり、好ましくない。
以上に説明したように、本発明の方法では、有機溶媒を使用しなくてもギ酸等の化合物の製造を行うことができる。また高圧条件や高温条件を必要とせず、トリエチルアミン等のアミン系塩基の使用も必要ない。

【0031】
(ギ酸)
水素キャリア物質の一例であるギ酸は、アンモニアボランやアンモニアや有機ハイドライドなどと比べると、安全性が高く、脱水素に要するエネルギーも低い。ギ酸は、添加助剤や、加工助剤や溶剤等として、用途も広い。さらに、低温でこれの脱水素を行い、水素を製造することが可能である。また室温で液体であることから使いが容易である。またギ酸の体積貯蔵密度や質量貯蔵密度(重量貯蔵密度:wt%)も、扱いが容易な範囲に収まる。ギ酸は、毒性が低く、安定な化合物であり、水素含有量が高い(4.4重量%)。脱水素エネルギーも、アンモニアやメチルシクロヘキサンなどの有機ハイドライドと比べて低い。室温から100℃の比較的低温で、ギ酸から水素を取り出すことが可能である。
本発明の水素キャリア物質では、二酸化炭素からギ酸を好ましく製造することができる。ギ酸は室温で液体であり、4.4重量%の水素を含む。本発明の層状複水酸化物を用いて、二酸化炭素などの水素化処理を行う事により、ギ酸を、高い触媒活性で、製造することが可能である。
【実施例】
【0032】
以下、実施例を参照して、本発明の好ましい例を詳細に説明する。なお本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0033】
実施例1
(層状複水酸化物の製造)
層状複水酸化物の1例である、Mg10Al2(OH)24CO(水は記載を省略。以下LDHということがある。)を製造した。
Al(NO・9HO(0.01mol)、及びMg(NO)・6HO (0.05mol)を、脱イオン水100mlに溶かした。別途、NaCO (0.03mol)及びNaOH(0.07mol)を含む、60mlの第二の溶液を用意した。
第一の溶液を、第二の溶液へと、混合しながら徐々に加えた。この後、得られた混合液は、撹拌しながら、18時間、65℃で加熱された。白いスラリーが得られ、このスラリーは室温まで冷却された。その後、ろ過、及び大量の脱イオン水を用いて洗浄され、110℃で一晩かけて乾燥された。このようにして、金属イオンとしてMgイオンとAlイオンを含む、層状複水酸化物(LDH)を得た。
【実施例】
【0034】
(水素化触媒の製造)
塩化ルテニウム(III)n水和物(RuCl・nHO)6.80mgを、200mlのフラスコに入れ、85mLの脱イオン水を加えて溶解した。さらに0.2Mの水酸化ナトリウム水溶液10mLを加え、混合した。前記混合溶液に、0.5gの層状複水酸化物を加え、50℃で8時間撹拌を行った。得られたスラリーは、遠心分離、脱イオン水による洗浄、及び減圧下で一晩放置した。このようにして、水酸基が結合したRuがLDHに担持されている、灰色の紛体(Ru/LDH)を得た。誘導結合プラズマ(ICP)分析測定によるRu含量は0.36重量%であった。なお表1中では、記載を分かりやすくする為に、金属原子に結合した水酸基が省略されて記載されるものがある。
【実施例】
【0035】
(水素化触媒の確認1)
製造された化合物Ru/LDHについて、FT-EXAFSスペクトルを用いて、評価を行った。その結果、Ru-Ru結合のピーク(2.5Å)や、Ru-O-Ruのピーク(3.3Å)は観察されなかった(図7参照)。これら結果により、単金属原子が、LDH上にそれぞれ担持されていることが確認された。また2.0Åに現れるRu-Cl結合のピークも観察されなかった。
なお比較の為に、RuClとRuOとRu金属ホイルの評価を行った。
【実施例】
【0036】
(水素化触媒の確認2)
製造されたRu/LDHについて、inverse FT-EXAFSスペクトルを用いて、評価を行った。k=7Å-1あたりに最大値が観察された(図8参照)。比較の為に、Ru金属ホイル、RuO2、RuCLも測定が行われ、Ru金属ホイルの11Å-1や、RuOの9Å-1やRuCLの8Å-1などが得られた(図示せず)。このように低いk=7Å-1という値は、Ru/LDHの軽い原子を有する、第二のシェル相互作用(second shell interaction)を示唆する。inverse FT-EXAFSスペクトルの結果は、図17に示す、3つの長いRu-O結合(2.04Å)と、1つの短いRu-O結合(1.81Å)という、シェルパラメーターと、よく一致する。
【実施例】
【0037】
(水素化触媒の確認3)
HAADF-STEM(高角散乱環状暗視野走査透過顕微鏡(High-angle Annular Dark Field Scanning TEM)を用いて、製造されたRu/LDHの評価を行った。撮影された画像には、白い小さな点が多数確認された。これは金属(ここではRu原子)が、大きな凝集を形成することなく、1つの原子毎に分散して担持されている様子を示す。
これらのことから、1つの水酸基を有し、かつ、4面体状の配位構造をもつ、1つの金属原子種(ここではRu)が、層状複水酸化物の表面にある水酸基に起因する3つの酸素原子にグラフトされている、すなわち結合していることが分かる。(図4の4Aと4B参照)図6に示すHAAFD-STEMには、分かりやすくする為に記載された輪で囲まれた、白い点が写っているが、これはRu原子を示す。非常に小さいことから原子であることが理解される。
【実施例】
【0038】
(水素キャリア物質の製造方法)
以下の方法により、上記で製造されたRu/LDHを用いた、水素化反応を行った。
0.1gのRu/LDHを、10mLのNaHCO水溶液(0.01mol/L)と共に、圧力計及び温度計を具備した30mLのオートクレーブに入れ密閉した。その後、二酸化炭素を1.0MPaになるまで加えた。その後、水素を加えることで、2.0MPaまで、容器の内圧を上昇させた。撹拌を行いながら加熱し、100℃で、24時間の反応を行った。圧力は保持された。加える水素(H)と二酸化炭素(CO)の比は、1:1とした。
収量は、Aminex HPX-87Hイオン交換カラム及びAminerganic分析カラム(BIO-rad社製)を備えた、島津製作所製の、高速液体クロマトグラフ(HPLC)装置を用いた、液体クロマトグラフによって求められた。ギ酸の収量は1.6 mmolであった。
得られたギ酸収量mol/反応に使用したRu量mol=ターンオーバー数(TON)として、ターンオーバー数を表1、及び図9に記載した。合わせて、水素化反応前のLDHのBET比表面積も測定した窒素の吸着と脱着を用いたBET表面積測定では、担持前の層状複水酸化物では、81.6m・g-1であり、担持後の層状複水酸化物では、84.3m・g-1であった。
【実施例】
【0039】
実施例2(entry 8)
金属が担持された層状複水酸化物の製造において、塩化ルテニウム(III)n水和物を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして、合成、反応、及び評価を行った。
実施例3(entry9)
塩化ルテニウム(III)n水和物のかわりに、ロジウムを含む化合物、具体的にはRhClを10.8mg使用した以外は、実施例1と同様にして、合成、反応、及び評価を行った。
実施例4(entry10)
塩化ルテニウム(III)n水和物のかわりに、イリジウムを含む化合物、具体的にはIrClを12.6mg使用した以外は、実施例1と同様にして、合成、反応、及び評価を行った。
【実施例】
【0040】
実施例5(entry11)
水素化反応において、塩基として水酸化ナトリウムを使用した以外は、実施例1と同様にして、合成、反応、及び評価を行った。
実施例6(entry12)
水素化反応において、塩基として水酸化カリウムを使用した以外は、実施例1と同様にして、合成、反応、及び評価を行った。
実施例7(entry13)
水素化反応において、塩基を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして、合成、反応、及び評価を行った。
【実施例】
【0041】
比較例1(entry2)
金属原子を担持しないLDHを用いた以外は、実施例1と同様にして、合成、反応、及び評価を行った。
比較例2(entry3)
触媒として、塩化ルテニウム(III)n水和物1.0mgを用いた以外は、実施例1と同様に反応、及び評価を行った。
比較例3(entry4)
触媒として、Ru/MgO(和光純薬社製)を用いた以外は、実施例1と同様に反応、及び評価を行った。
【実施例】
【0042】
比較例4(entry5)
触媒として、Ru/Mg(OH)(ナカライテスク社製)を用いた以外は、実施例1と同様に反応、及び評価を行った。
比較例5(entry6)
触媒として、Ru/Al(商品名:STREM CHEMICALS社製)を用いた以外は、実施例1と同様に反応、及び評価を行った。
比較例6(entry7)
Ru/Al(OH)(商品名:ナカライテスク社製)を用いた以外は、実施例1と同様に反応、及び評価を行った。
【実施例】
【0043】
【表1】
JP2018103158A_000003t.gif
【実施例】
【0044】
表1中、“-”は添加が無い、あるいは、測定を行わなかったことを示す。
実施例1の化合物である、Ru/LDH(Mg2+/Al3+=5)は、461というターンオーバー数(TON)、すなわち代謝回転数をもって、99%以上の選択性をもつ、効果的な水素化触媒であることが判明した。
一方、比較例1の金属を担持しないLDHでは、触媒反応は観察されなかった。比較例2の塩化ルテニウム水溶液は、触媒活性を示したが、実施例1の化合物のような高い触媒活性は観察されなかった。また比較例3~6に示される、Ru/MgOや、Ru/Mg(OH)R、u/Alのような触媒や、使用する塩基の組み合わせでは、実施例1のような優れた触媒活性は見られなかった。なお比較例3~6では、本発明と異なり金属原子が単原子で担持されているわけではない。
【実施例】
【0045】
実施例2~7に示される、本発明の水素化触媒も、触媒活性を示した。実施例3は、製造時に、水酸化ナトリウム水溶液を使用せずに金属を担持させたために、金属元素の上に水酸基ではなく、塩素が配置している。実施例1の化合物ほどは活性が挙がらず、水酸化ナトリウム水溶液の使用が好ましいことが示される。
実施例3と4の化合物は、担持金属原子の種類が異なる以外は、実施例1と同様に製造された化合物である。活性は示されたが、実施例1の化合物と同等の活性は得られなかった。実施例5~7では、塩基を変えたり、あるいは、塩基を使用しない条件下で、酸化反応が行われた。実施例1よりは劣るが、活性は得られる事が示された。
【実施例】
【0046】
(水素化反応によるRu/LDHの影響の確認1)
実施例1の化合物Ru/LDHについて、二酸化炭素と反応する前と完了した後での、RU-K端XAFSスペクトル観察を行った。その結果、Ru/LDH上のRu原子触媒部分に、構造の変化がないことが観察された。
(水素化反応によるRu/LDHの影響の確認2)
また実施例1の化合物Ru/LDHについて、ろ液について、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP)を行ったところ、Ruの量が非常にわずかであり、そのことから、水素化反応はLDHの表面で起こっていると考えられた。
【実施例】
【0047】
(層状複水酸化物の確認)
層状複水酸化物、または水素化触媒は、以下の方法で評価及び確認を行った。
【実施例】
【0048】
(触媒活性の測定)
以下の式より、触媒回転数を計算した。
得られたギ酸収量mol / 反応に使用したRu量mol = ターンオーバー数(TON)
(BET表面積の測定)
BET表面積測定は、窒素吸着及び脱着型測定装置(商品名:BELSORP-max、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて、77K(-196℃)で評価が行われた。評価されるサンプルは、データ測定が行われる前に、24時間、80℃で、減圧下で前処理された。
【実施例】
【0049】
(ICP-OESの測定)
誘導結合プラズマ発光分光分析(Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectrometry:ICP-OES)を行うにあたっては、分析装置として、ICAP-575 (型式:日本ジャーレル・アッシュ社製)を使用した。
【実施例】
【0050】
(TEMによる画像撮影)
TEM写真の撮影には、200kVで操作されるエネルギー分散型X線分析装置(Kevex社製)を備えた、電界放射型透過電子顕微鏡(HF-2000(商品名)、日立社製)を用いた。
(HAADF-STEMによる画像撮影)
高角散乱環状暗視野走査透過顕微鏡(High-angle Annular Dark Field Scanning TEM)の画像撮影には、電子顕微鏡(JEM-2100F:商品名、JEOL社製)を使用した。
【実施例】
【0051】
(XPSスペクトルによる測定)
XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)スペクトルは、X線光電子分光装置(AXIS-ULTRA DLD(商品名)、島津製作所製)を用いて測定を行った。
【実施例】
【0052】
(RU-K端XAFSスペクトル)
RU-K端XAFSスペクトルは、Si(311)モノクロメーターを有するビームライン01B1により、蛍光収量法により、測定した。
実験においては、ペレット状のサンプルを、in-situ XAFS測定セルに入れられた。
XAFSデータは、REX2000(XAFS解析ソフト、Rigaku社製)を使用して分析された。
【実施例】
【0053】
(CO吸着容量の測定)
CO吸着は、熱重量・示差熱同時測定 (TG-DTA)により、示差熱天秤(Thermo Plus EVO II、Rigaku社製)を用いて行われた。サンプルを110℃まで加熱し、この温度で3時間、窒素を流しながら(100ml/分)維持し、物理的に吸着されている水を除去した。その後サンプルは30℃まで冷却され、サンプルの重さと温度を安定させる為に、その温度のまま60分維持した。吸着されたCO2の量は、二酸化炭素(10mL/min)及び窒素(90 mL/min)を流しながら、13時間モニターされた。この吸着時間は、偽平衡容量における吸着されたCOの量を考慮するのに、十分な時間である。
【実施例】
【0054】
実施例7
実施例1で製造したRu/LDHを使用して、圧力を固定し水素の圧力を変えていった場合の触媒活性と、水素の圧力を固定して、二酸化炭素の圧力を変えた場合の、ギ酸の製造を行った場合の触媒活性を調べた。その結果、二酸化炭素を変えた実験の方が、変化率が少なかった。これは本願の金属原子が担持した層状複水酸化物が二酸化炭素の吸着特性を有していることから、二酸化炭素の圧力が変動しても、その変化を受けにくいという優れた効果を示すことが分かった。
【実施例】
【0055】
実施例8
材料として、Ni(NO)2・6HO(0.01mol)、及びAl(NO)・9HO (0.05mol)を使用した以外は、実施例1とほぼ同様にして、Ni2+とAl3+を金属として含み、これらの比率が5:1であるRu原子を担持した層状複水酸化物を製造した。この層状複水酸化物のサイクルの触媒活性を実施例1と同様に測定し、ターンオーバー数(TON)として、実施例1の結果と共に、図11に示した。
実施例9
材料として、Mg(NO)・6HO(0.01mol)、及び Fe(NO)・9HO (0.05mol)を使用した以外は、実施例1とほぼ同様にして、Mg2+とFe3+を金属として含み、これらの比率が5:1であるRu原子を担持した層状複水酸化物製造した。この層状複水酸化物のサイクルの触媒活性を、実施例8と同様に測定し、図11に示した。
【実施例】
【0056】
実施例10
材料として、Zn(NO)・6HO(0.01mol)、及びAl(NO)・9HO(0.05mol)を使用した以外は、実施例1とほぼ同様にして、Zn2+とAl3+を金属として含み、これらの比率が5:1であるRu原子を担持した層状複水酸化物製造した。この層状複水酸化物のサイクルの触媒活性を、実施例8と同様に測定し、図11に示した。
【実施例】
【0057】
実施例11
Al(NO・9HOと、Mg(NO)・6HOのモル比を1:4に変えた以外は、実施例1と同様にして、Ru原子を担持した層状複水酸化物を製造した。この層状複水酸化物のサイクルの触媒活性を、実施例8と同様に測定し、図11に示した。
実施例12
Al(NO・9HOと、Mg(NO)・6HOのモル比を1:6に変えた以外は、実施例1と同様にして、Ru原子を担持した層状複水酸化物を製造した。この層状複水酸化物のサイクルの触媒活性を、実施例8と同様に測定し、図11に示した。
実施例13
塩化ルテニウム(III)n水和物のかわりに、パラジウムを含む化合物、具体的にはNaPdClを12.5mg使用した以外は、実施例1と同様にして、合成、反応、及び評価を行った。結果を、実施例1、3及び4の結果と共に、表14に示した。
【実施例】
【0058】
図11に示す結果から、Mg2+とAl3+を金属として含む場合、特に触媒活性が高いことが分かった。
図14に示す結果から、LDHとRu原子の組み合わせが、特に触媒活性が高いことが分かった。
【実施例】
【0059】
実施例14
COの水素化反応における塩基の添加効果を調べるために、塩基を添加しない又は塩基の種類及び濃度をかえた以外は、実施例1と同様にして水酸化反応を行い、触媒活性を調べた。結果を図15示す。塩基としては、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、及び水酸化カリウムが、それぞれ使用された。水酸化ナトリウムの使用により、特に触媒活性が高いことが分かった。
また比較の為に、図13に、NaOHを1mol/Lの濃度で使用した以外は、塩化ルテニウム(III)n水和物1.0mgを用いた比較例2と同様にして製造及び測定した結果を示した。比較の為に同じ塩基の条件下で得られた本発明の触媒の結果も示した(図13と図15の左端のカラムは同じ条件から得た同じデータである)。
実施例15
Ru/LDHを製造する際の、アルカリ性水溶液の添加濃度による効果を調べるために、濃度を変えて実験を行った。具体的には、水酸化ナトリウムの水溶液の濃度を、なし、0.01M、0.02M、及び0.2Mと変更し、評価を行った。結果を図16に示す。0.2Mで最も高い触媒活性が得られる事が分かった。
実施例16
水素キャリア物質の製造方法において、二酸化炭素のかわりに、トルエンを使用し、以外を変更した以外は、実施例1と同様にして、水素化反応を行った。溶媒として塩基性の水溶液は使用せず、トルエンを溶媒かつ反応物(原料溶液)とした。具体的には、0.1gのRu/LDHを、10mLのトルエンと共に、圧力計及び温度計を具備した30mLのオートクレーブに入れ密閉した。その後、水素を加えることで、0.5MPaまで、容器の内圧を上昇させた。撹拌を行いながら加熱し、100℃で、4時間の反応を行った。その結果、トルエンの水素化反応により、メチルシクロヘキサンが生成することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によれば、水素化触媒、水素化触媒の製造方法、及び水素キャリア物質の製造方法が得られる。本発明によれば、高い触媒活性で、水素化反応を行い、ギ酸などの化合物を効率よく、かつ低い圧量で、製造することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 Mg2+
2 Al3+
3 OH-
4 H
5 CO2-
6 1つのRu原子
7 層状複水酸化物
8 ホスト層
9 ゲスト層
X 1つの金属原子
Y 水酸基またはハロゲン
Z 水素化触媒
L 層状複水酸化物の基体層の厚さ
M 層状複水酸化物のゲスト層の厚さ
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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