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明細書 :炭素繊維ストランドおよびそれを用いた炭素繊維強化複合材料成形体の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-123438 (P2018-123438A)
公開日 平成30年8月9日(2018.8.9)
発明の名称または考案の名称 炭素繊維ストランドおよびそれを用いた炭素繊維強化複合材料成形体の製造方法
国際特許分類 D02G   3/16        (2006.01)
B29B  11/04        (2006.01)
D02G   3/04        (2006.01)
D02G   3/36        (2006.01)
FI D02G 3/16
B29B 11/04
D02G 3/04
D02G 3/36
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2017-014371 (P2017-014371)
出願日 平成29年1月30日(2017.1.30)
発明者または考案者 【氏名】三宅 卓志
出願人 【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100147038、【弁理士】、【氏名又は名称】神谷 英昭
審査請求 未請求
テーマコード 4F201
4L036
Fターム 4F201AA50
4F201AB25
4F201AH47
4F201BA03
4F201BD02
4F201BD04
4F201BM02
4F201BM12
4F201BM14
4L036MA04
4L036MA35
4L036MA39
4L036PA21
4L036RA25
4L036UA07
要約 【課題】リサイクル炭素繊維スライバを、一般的な混練機などで利用可能なストランドとし、このストランドを使用した成形品の製造方法を提供すること。
【解決手段】不連続炭素繊維と合成繊維が一方向に配向された炭素繊維含有スライバを撚り合わせて撚糸とするか、或いは合成樹脂よりなるフィルム又は糸状物を巻き付けるかして、紐状に形成した、不連続炭素繊維の含有率が10~60vol%の範囲である炭素繊維ストランド。
【選択図】図5
特許請求の範囲 【請求項1】
不連続炭素繊維と合成繊維が一方向に配向された炭素繊維含有スライバを撚り合わせて撚糸とするか、或いは合成樹脂よりなるフィルム又は糸状物を巻き付けるかして、紐状に形成した、不連続炭素繊維の含有率が10~60vol%の範囲である炭素繊維ストランド。
【請求項2】
前記合成樹脂が、合成繊維と同じ素材であることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維ストランド。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれかに記載の炭素繊維ストランドを、溶融混練機を用いて溶融する工程、及び射出成形機により射出、又はプレス機によりプレスする成形工程を有する、炭素繊維強化複合材料成形体の製造方法。
【請求項4】
前記炭素繊維強化複合材料成形体が、型枠パネルであることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、不連続炭素繊維を含む炭素繊維ストランドおよびそれを用いて炭素繊維強化複合材料成形体を製造する方法に係わり、具体的には配向された炭素繊維含有スライバを撚糸するか、フィルムなどを強く巻き付けることで成形装置に導入しやすい紐状(ストランド)とし、一般的な成形装置を用いて目的形状に成形する製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維を用いた複合材料は、軽量でありながら強度や耐衝撃性などの力学的特性に優れているため、航空機部材および自動車部材など多くの分野で利用されている。特に軽量で高い力学特性が求められる航空機部材用途としては好適に用いられる。この成形方法としては、主にプリプレグ法が採用されている。
【0003】
プリプレグ法とは、炭素繊維に、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸させてシート状の中間基材(以下、プリプレグという)を作成し、このプリプレグを所望の形状に裁断、積層し、含浸樹脂を硬化させることにより炭素繊維強化複合材料(以下、CFRPという)を得る手法である。
【0004】
プリプレグ法を使用する製法については、例えば、炭素繊維とガラス転移温度が硬化温度より10℃以上高い液状エポキシ樹脂を用いる製造方法(特許文献1)、炭素繊維が束状で実質的に2次元配向している炭素繊維シート等の成形材料において、特定のエポキシ化合物と特定の3級アミン化合物等を特定比率で含むサイジング剤を炭素繊維に塗布し、マトリックス樹脂と炭素繊維との接着性を高めた方法(特許文献2)の他、非常に多数の提案がある。
【0005】
これらの方法によれば高性能のCFRPを確実に成形できる利点があるものの、一旦プリプレグを製造するという工程が必要であり、生産性における改良の余地があった。
【0006】
そのため、連続炭素繊維と熱可塑性樹脂を成形機に直接投入し従来の射出成形法をそのまま適用しようとする提案がある(例えば、DFFIM Direct-fiber-feeding injection molding や LFT-D Long Fiber Thermoplastic Direct Moldingなど)。但し、連続炭素繊維は予めボビン等に巻き取られているので成形機の可塑化シリンダの後半に設けられたベント部より投入され、通常はペレットである熱可塑性樹脂はホッパー部より投入される(例えば、特許文献3、特許文献4、非特許文献1等参照)。
【0007】
前記成形方法は、ペレットと同程度に連続炭素繊維を混練すると樹脂との均一な混合の点では優れるものの、可塑化シリンダ内で長距離に混練されるので連続炭素繊維が断裂し細片化して成形品に所望の力学的強度を付与できないなどの理由により、それぞれの混練距離等に差異を設けたものである。
【0008】
未使用の連続炭素繊維であればこのようにベントからの投入が可能である。しかし今後CFRPの使用が増大するに伴って、製造工程で排出される端材やリサイクル回収された不連続炭素繊維が増加するため、これらの有効活用が不可欠な技術となる。本発明者らは先にリサイクルに係わる不連続炭素繊維を含むスライバ(特許文献5)に関して提案している。ただし前記スライバの場合は、回収された炭素繊維等が嵩高い状態として供給されるので、ベントからの直接投入は困難であるといわざるをえない。
【0009】
また、未使用の連続炭素繊維の場合には、可塑化シリンダ内への投入がスムーズに行われうるのであるが、リサイクル品の場合には前記の通りの嵩高い上に幾つかの箇所にて既に分断された炭素繊維を含むので、連続的な投入すら難しいのである。ベントからの供給がスムーズに行われないと、いわゆるベントアップの現象が発生し易い。ベントアップとは、ベント部前後で溶融樹脂が押し出される流れの方向にバランスが悪くなり、ベント部から溶融樹脂が吹き出してしまう現象のことである。
【0010】
ベントアップを防止する手段としては、多条射出成形機に関する提案(特許文献6)もある。第一ステージと第二ステージを備えた可塑化ユニットにおいて、第二ステージに3条以上の多条形状としたことを特徴とするものである。この装置を利用すれば、リサイクル品であっても、或いはベントアップを効果的に抑えることができるかも知れない。しかし、構造的な制約から装置が必然的に高額になりやすく、一般的な成形機に比較して初期投資の面で検討が必要になる。
【0011】
さらに、ベントからのスライバ(リサイクル品)の投入では、時間あたりの一定量の投入が正確に行われないと、混合後の製品にリサイクル炭素繊維の含有率のバラツキが大きくなり、当然均一な製品が成形できなくなってしまう。
【先行技術文献】
【0012】

【特許文献1】特開2003-26820号公報
【特許文献2】特開2013-117003号公報
【特許文献3】特開2016-16582号公報
【特許文献4】特開平11-138530号公報
【特許文献5】特開2016-108679号公報
【特許文献6】特開2014-100845号公報
【0013】

【非特許文献1】LFT-D:materials tailored for new applications, REINFORCED plastics, January 2006, 30-35
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記従来技術の課題に鑑みてなされたもので、リサイクル炭素繊維スライバを、一般的な混練機などで利用可能なストランドとし、このストランドを使用した成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
すなわち、リサイクル炭素繊維スライバを、未使用の連続炭素繊維と同様な取扱いが可能なものにすると共に、成形品においてリサイクル炭素繊維が均一に分散した状態で得られる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するために、本発明のストランドは、不連続炭素繊維と合成繊維が一方向に配向された炭素繊維含有スライバを撚り合わせて撚糸とするか、或いは合成樹脂よりなるフィルム又は糸状物を巻き付けるかして、紐状に形成した、不連続炭素繊維の含有率が10~60vol%の範囲であることを特徴とする炭素繊維ストランドである。
【0017】
先に本発明者らが提案している「炭素繊維スライバの製造方法」によって、端材や使用済みの製品からリサイクル回収された不連続炭素繊維は予め合成繊維混合され、炭素繊維が配向された状態でスライバとして供給される。これを撚り合わせて撚糸とするか、合成繊維と同じ樹脂よりなるフィルム又は糸状物を巻き付けるかして、紐状(ストランド)に形成することで、連続炭素繊維と同様な取扱いが可能になる。同時に、ストランド中に含まれる不連続炭素繊維の量を製品中に占める量と同程度に調整することで、従来の製法で行われていた樹脂ペレットとの溶融混合工程を省略することができるのである。
【0018】
前記フィルム又は糸状物の合成樹脂の素材は、スライバを製造する際に使用する合成繊維と同一もしくはポリマーアロイとなる相溶性の素材であることが好ましい。異種の素材を適用することも可能であるが、後の成形品を製造する際に、不連続炭素繊維、合成繊維、合成樹脂からなる3種を均一に分散して溶融状態としたものとして得るためには、合成繊維と合成樹脂の素材が同一であることが最適だからである。
【0019】
また、本発明の炭素繊維強化複合材料成形体の製造方法は、前記炭素繊維ストランドを、溶融混練機を用いて溶融する工程の後、射出成形機により射出するか、又はプレス機によりプレスする成形工程を有することを特徴とする。
【0020】
従来技術(特許文献3等)に使用される射出成形機に本発明の炭素繊維ストランドを適用すれば、ホッパー部からの樹脂を供給することなく、ベントから前記炭素繊維ストランドを供給するだけでよい。言ってみれば、一般的な射出成形機のホッパー部から前記炭素繊維ストランドを直接供給し、成形型に充填可能な状態まで溶融すれば良いのである。
【0021】
本発明の前記製造方法が適用される好適な成形体としては型枠パネルなどを例示することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の炭素繊維ストランドは、未使用の連続炭素繊維と同等の取扱い性を有しているので、端材や使用済み製品からリサイクル回収された不連続炭素繊維であっても有効にかつ、従来の製品と同等以上の機械的特性を有する製品に活用することができる。
【0023】
また、本発明の炭素繊維強化複合材料成形体の製造方法によれば、従来の連続炭素繊維を利用した製造方法よりも簡単な構造の装置を適用することができ、得られた製品内における炭素繊維の分散性・均一性も極めて高いものが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、従来技術により製造された不連続炭素繊維を含むスライバの一例を示す図である。
【図2】図2は、図1に示すスライバを撚糸状に撚り合わせた例を示す図である。
【図3】図3は、図1に示すスライバに合成樹脂のフィルムを巻き付けて紐状にした例を示す図である。
【図4】図4は、従来技術(特許第5649244号など)に開示されるベントからの長繊維投入装置の一例を示す図である。
【図5】図5は、本発明の炭素繊維ストランドを図4に示す装置に適用した例を示す図である。
【図6】図6は、本発明例と従来例で製造した混練物中に占める炭素繊維の繊維長別に出現頻度と出現本数(本)をグラフとして示した図である。
【図7】図7は、本発明例と従来例で製造した成形品の引張弾性率(GPa)と引張強度(MPa)を示す図である。
【図8】図8は、本発明例と従来例で製造した混練物表面の光学顕微鏡写真を示す図で、左側が本発明のストランドをベントから投入した場合、右側が従来の連続炭素繊維をベントから投入した場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の炭素繊維ストランドは、例えば先に提案している本発明者らの特許文献5に記載の工程を経て製造される。すなわち、不連続炭素繊維および合成繊維を含む炭素繊維ストランドの製造方法としては、前記炭素繊維が、短繊維状に切断されてランダムな方向に開繊された綿状繊維であり、前記合成繊維は、短繊維状に形成されて略同一方向に配列された捲縮可能な綿状繊維であること、前記合成繊維の捲縮方向と送り方向とを略合致させ、所定の厚さに積層した前記合成繊維の上方に、前記炭素繊維を層状に重ね合わせる第一工程と、前記第一工程で重ね合わせた前記炭素繊維と前記合成繊維とを、送り方向前方に配置されたフロントローラと、送り方向後方に配置されたバックローラとによって挟み込み、繊維にドラフトを掛けながら前記フロントローラと前記バックローラとの中間部に配置されたギル機にて前記送り方向に繊維を梳ってフリース状のウェブを形成する第二工程と、前記フロントローラから送り出される前記フリース状のウェブが、上方の炭素繊維を下方の合成繊維によって両側から包み込まれながら束状に集束して連続した炭素繊維スライバとして形成される第三工程と、前記炭素繊維スライバを撚り合わせて撚糸とするか、或いは合成繊維と同じ樹脂素材よりなるフィルム又は糸状物を巻き付けて炭素繊維ストランドに形成する第四工程とを備え、不連続炭素繊維の含有率が10~60vol%の範囲であることを特徴としている。

【0026】
前記第一工程において、合成繊維の捲縮方向と送り方向とを略合致させているので、合成繊維は送り方向に引き延ばすと繊維同士が近接して交絡し、繊維間の連結強度が増加する。また、合成繊維の上に、不連続炭素繊維を重ね合わせるので、不連続であっても炭素繊維を支持しつつ送ることができる。

【0027】
前記第二工程では、フロントローラとバックローラとの中間部に配置されたギル機にて送り方向に繊維を梳くので、重ね合わせた不連続炭素繊維を合成繊維とが互いに近接させた状態で、一方向に整列させることができる。回収された不連続炭素繊維はバラバラな方向を向いているので、一定の方向付けをすることによって、ストランドとした時の引張り方向の機械的な強度付与を最大限にすることができるのである。また、下方に合成繊維を敷いているので、装置から炭素繊維がこぼれ落ちることを防止できる。

【0028】
前記第三工程では、不連続であった炭素繊維を連続する合成繊維と集束して全体として連続した炭素繊維スライバが形成される。こうして回収された炭素繊維スライバは例えば図1に示すように、未使用の連続炭素繊維とは異なり全体としては未だ嵩高い状態である。

【0029】
そして前記第四工程で、炭素繊維スライバを撚り合わせて撚糸とするか、好ましくは合成繊維と同じ材質の樹脂製フィルムまたは糸状物を炭素繊維スライバの周囲に巻き付けるかして、紐状に形成したものが、本発明の炭素繊維ストランドである。このときの不連続炭素繊維の含有率は10~60vol%となっている。具体的な例として撚糸とした例が図2に、樹脂製糸状物を巻き付けた例が図3に示されている。図示されているように、外観上は炭素繊維を含む部分と合成樹脂のみの部分とが相分離しているが、成形前の可塑化工程により、全体的に炭素繊維が分散された状態にすることができる。

【0030】
本発明の製造方法では、従来技術(ホッパーから合成樹脂を、ベントから連続炭素繊維をそれぞれ個別に供給する技術)に開示された成形法ではなく、成形時には新たな合成樹脂を添加しないで、前記炭素繊維ストランドのみを混練、溶融して成形型に充填する。そのため炭素繊維ストランドに含まれる不連続炭素繊維を10~60vol%に設定した。より好ましくは10~30vol%である。すなわち合成樹脂を溶融させた状態で不連続炭素繊維を混合するのではなく、不連続炭素繊維に合成樹脂の繊維を絡ませたストランドを予め形成させておき、成形時には前記ストランドを一体的に混練・溶融するのである。これによって、可塑化シリンダ内における不連続炭素繊維の混練時間および距離の短縮が図られるのである。従って炭素繊維のさらなる分断細片化を防止すると共に、均一な分散性を有する成形体を製造することができる。

【0031】
ストランド内に含まれる炭素繊維の含有率は10vol%より小さいと、成形品への強度付与が不十分となり、60vol%より大きいと、合成繊維や合成樹脂とのなじみが悪くなって炭素繊維と分離した状態になりやすく、またスクリュー内や型などへの充填時における溶融状態での流動性が低下するので好ましくない。

【0032】
次に、本発明の炭素繊維強化複合材料成形体の製造方法について、図を参考にしつつ説明する。

【0033】
図4には比較として従来技術に関する樹脂ペレット(4)と連続繊維(6)を混練する可塑化シリンダ(1)の断面図が示されている。この図には、右側のホッパー(2)から樹脂ペレット(4)が投入されシリンダ内で加熱・溶融されつつ左方向へ樹脂が移動し、ベント(3)から連続炭素繊維(6)がボビン(5)から供給されて、樹脂と混合された後、射出(図中の太矢印)される様子が模式的に描かれている。

【0034】
一方、本発明の製造方法では、図5に示すようにホッパー部(2)からの樹脂ペレットの投入はなく、ボビン(7)から供給される前記炭素繊維ストランド(8)が、ベントから投入される様子が描かれている。この図に示すように、溶融混練機(図では可塑化シリンダ(1)として示されている)を用いて溶融する工程を経たのち、成形型に射出成形するか、またはプレス加工により所望の形状へと成形されるのである。

【0035】
もちろん、ホッパーから樹脂ペレットが投入されても構わないが、炭素繊維ストランドを製造する際に、投入する予定の樹脂ペレットに相当する量を炭素繊維スライバに巻き付ける樹脂フィルムとして添加しておけば、効率よく製造することができるため、この段階で敢えて樹脂ペレットを追加投入すると、本発明の炭素繊維スライバを形成するメリットを充分に生かすことができなくなってしまう。

【0036】
本発明のストランドおよびそれを用いた製造方法を使用して得られる成形体としては、従来のCFRPの製品例えば、ゴルフクラブのシャフトや釣り竿、自動車用のフレーム、建築資材、橋梁の耐震補強などに使用することができる。特に、コンクリートを打設したときに利用される型枠パネルに好適に使用することができる。

【0037】
通常の型枠パネルは木材製の板材を組み合わせて使用することが多いが、使用後に廃棄処分となるため、金属製のパネルを繰り返して使用されるようになってきている。本発明の成形体は、強度的には代用可能なレベルにあると思われ、これに利用することによって軽量化が可能なので、従来品よりも取扱い性能にすぐれた製品を提供することが可能となるのである。また、リサイクル繊維など廉価な炭素繊維を使用することができるので、パネルの価格を抑えコストの点でも有利である。

【0038】
次に実施例により、本発明の製造方法を使用して得られる成形品の物性を評価した結果を以下に説明する。

【0039】
(実施例)
図4に示すように、未使用の連続炭素繊維(6)(PAN系炭素繊維:トレカT700SC-12K-60E(東レ(株)製))を用いて混練溶融した物と、図5に示すように本発明の不連続炭素繊維を含むストランド(8)を用いて混練溶融した物を、以下のようにしてそれぞれ製造した。

【0040】
本発明例では、リサイクルで回収された不連続炭素繊維を模して、連続炭素繊維(PAN系炭素繊維:トレカT700SC-12K-60E(東レ(株)製))を長さ200mmになるように切断したものを使用した。またスライバ製造時の合成繊維として5.6dtex×76mmのポリプロピレン(PP)綿材(PZダイワボウポリテック(株)製)を使用した。前記炭素繊維をPP綿材と混合して一方向に梳くようにして延伸し連続した炭素繊維スライバとした。

【0041】
次に、前記スライバに軽く撚りをかけた後、PPフィルムを巻き付け加圧して、減容した状態で熱により仮止めし図3に示すような直径約6mmの紐状のストランドとした。このときの炭素繊維の体積含有率は25vol%である。

【0042】
前記ストランドを用いて図5に示すように可塑化シリンダ内で混練した。混練は、スクリュー径D=20mm、一軸押出機(ラボプラストミルD2025 (株)東洋精機製作所)を用いて行った。混練距離を変化させるため、ホッパーとベントから材料を供給した。混練距離Lは、ホッパー投入時はL/D=25であり、ベントから投入する場合は、L/D=10となる。スクリュー回転数は50rpmで一定とした。ストランドをこの回転数で供給した際の押出量は、5g/minである。また、加熱温度は183℃とした。

【0043】
比較として図4に示す連続炭素繊維を用いた場合には、ホッパーから供給するPP樹脂ペレットは、樹脂の影響を取除くため、スライバに用いたPP綿をペレット化したものを用いた。

【0044】
それぞれ、ダイは使用せず、ダイ取付口からそのまま押出して混練溶融物を得た。

【0045】
(繊維長の評価方法)
混練溶融物をガスバナーで燃やし、残った繊維束をエタノール中で単繊維に分散させたものを、顕微鏡観察することにより、混練後の繊維長を測定した。倍率2.5倍の対物レンズを用いて撮影した写真を複数枚合成し、繊維全体が観察可能とした後、画像処理ソフト(imageJ)により繊維長を評価した。繊維長評価は、ランダムに選んだ30本の繊維で行った。

【0046】
(繊維の分散の評価方法)
繊維分散の評価は、マクロとミクロの2通り行った。マクロな評価は、炭素繊維含有率の箇所によるばらつきに注目して行った。すなわち、プレス成形した板材から切出した5本の引張試験片(幅10mm×100mm×1.5mm)の炭素繊維含有率Vfを、水浸法により測定し、試験片間の変動を評価した。また、ミクロな評価は、顕微鏡により、繊維束が凝集したまま残存しているかどうか観察することにより行った。

【0047】
(力学特性試験)
混練溶融物を、125×125×1.5mmの板材に熱プレス成形し、この板材からプレス方向を考慮して幅10mm、長さ100mmの短冊状の試験片を切り出した。この試験片を用い、引張りにより力学特性を評価した。熱プレスでは、型を200℃に加熱した後、押出材を設置し10min予熱した。その後、2MPaで加圧して10min保持して、板材を成形した。引張試験は、万能試験機(5958型 インストロン社)を用い、チャック間距離80mm、引張速度1mm/minで行った。弾性率は、ゲージ長50mmの接触式変位計(2639-111型 インストロン社)を用いて測定した変位から求めた。

【0048】
図6に前記各混練物中の炭素繊維の繊維長を測定した結果を示す。図より、本発明のストランドを用いた方が、従来の連続炭素繊維を用いた場合よりも長い繊維長のものを残存できていることが確認できた。混練距離は両者とも同じであるが、連続炭素繊維の方はスクリューに巻き込まれて開繊されるため、最初からバラバラの炭素繊維ストランド(本発明)の状態の方が、切断される率が低下することが考えられる。なお、参考までに本発明の炭素繊維ストランドをベントではなく、ホッパー部から投入すると繊維長のより短いものの出現頻度が高くなっていることも示された。

【0049】
繊維径により異なるが、一般に炭素繊維の長さが1mm以上になると引張弾性強度が向上し、10mm以上になると引張強度が、次いで、25mm以上では耐衝撃性・耐クリープ性の向上に有効とされている。本発明の場合には図6に示すように、25mm以上の残存している炭素繊維の数も従来法よりも多くなっており、成形品に高い力学特性を発揮させることが可能となる。

【0050】
図8には前記本発明のストランドを用いた混練物と、従来例の連続炭素繊維を用いた混練物の各表面を、光学顕微鏡により写真撮影した結果を示している。この写真からは両者の混合状態が目視によって確認できる程度に分散性に差異があることが分かる。

【0051】
また、引張特性を測定した結果を図7に示す。図7の棒グラフについて左から順に、従来の連続炭素繊維をベントから投入した混練物、本発明の炭素繊維ストランドをベントから投入した混練物、本発明のストランドをホッパー位置から投入した混練物の、各引張弾性率(棒グラフ)と引張強度(折れ線グラフ)を示している。

【0052】
図7に示す結果から、本発明の炭素繊維ストランドを用いれば、従来の連続炭素繊維を用いた場合と同等以上の物性値を示すことが分かる。これは、本発明のストランドを用いたことにより図6に示したように混練物中の繊維長の長い炭素繊維が多く残存することに加えて、繊維がより均一に分散できているためと推測される。

【0053】
なお、比較として本発明のストランドをホッパーから投入してみた所、図7の右側に示すように、混練距離が長くなった結果、炭素繊維の鎖長が短くなり特に引張強度が低下する原因となりうることが示された。このことから、混練距離の最適化を検討すれば、より高強度の成形品が得られることが示唆される。

【0054】
以上説明したように本発明の不連続炭素繊維ストランドは、従来の連続炭素繊維を用いたものと同等以上の物性を有する成形品が得られ、炭素繊維のリサイクルという点で新たな事業分野の創生が可能となった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
前記の通りCFRPを使用した製品の増加と共に増大する回収炭素繊維を、次の製品へと生まれ変わらせることができるので、リサイクル技術として確立されれば今後ますますCFRPを安価に利用可能となっていくことが期待される。
【符号の説明】
【0056】
1 可塑化シリンダ
2 ホッパー
3 ベント
4 樹脂ペレット
6 連続炭素繊維
8 不連続炭素繊維を含むストランド
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7