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明細書 :運動動作評価システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-068516 (P2018-068516A)
公開日 平成30年5月10日(2018.5.10)
発明の名称または考案の名称 運動動作評価システム
国際特許分類 A63B  69/00        (2006.01)
A63B  71/06        (2006.01)
G06T   7/00        (2017.01)
G06T   7/20        (2017.01)
FI A63B 69/00 C
A63B 71/06 A
A63B 69/00 A
A63B 69/00 504A
A63B 71/06 T
G06T 7/00 350B
G06T 7/20 300Z
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 19
出願番号 特願2016-210027 (P2016-210027)
出願日 平成28年10月26日(2016.10.26)
発明者または考案者 【氏名】藤井 慶輔
【氏名】山本 裕二
【氏名】河原 吉伸
出願人 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100165663、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 光宏
審査請求 未請求
テーマコード 5L096
Fターム 5L096CA05
5L096FA32
5L096FA66
5L096FA69
5L096FA76
5L096HA02
5L096JA11
5L096KA04
要約 【課題】 運動中の選手のプレーや演技を客観的に評価可能とする。
【解決手段】 運動中の選手の一連の動きを動きデータとして取得する。そして、この中から、選手の位置関係などの条件に基づいて、評価対象となる部分(アクション)を抽出する。その後、抽出されたアクションを対象として分類型機械学習によって、評価対象とされるプレーや演技に該当するものを識別する。次に、識別されたアクションに対して、回帰型機械学習を利用し、プレーまたは演技の完成度を評価する。この過程において、分類型機械学習と回帰型機械学習は、共通の特徴ベクトルを用いる。こうすることにより、プレーや演技を客観的かつ精度良く評価することが可能となる。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
運動中の選手の動きに関し、特定のプレーまたは演技としての完成度を評価する運動動作評価システムであって、
前記選手の動きを表す動作データを読み込む動作データ入力部と、
前記動作データに基づいて、前記プレーまたは演技に対する分類型機械学習によって設定された特徴ベクトルを用いた回帰型機械学習により、前記評価を行う評価部とを備える運動動作評価システム。
【請求項2】
請求項1記載の運動動作評価システムであって、
前記動作データは、評価対象となるプレーまたは演技を含む一連の動きを表すデータであり、
前記評価部による評価に先だって、前記動作データから、前記評価対象となるプレーまたは演技に該当する部分を、分類型機械学習によって切り出すセグメント化部を備える運動動作評価システム。
【請求項3】
請求項2記載の運動動作評価システムであって、
前記セグメント化部は、前記分類型機械学習に先だって、前記動作データから、前記プレーまたは演技に応じて設定された所定の条件を前記選手の動きが満たす区間を抽出し、当該抽出された区間を対象として前記分類型機械学習を適用する運動動作評価システム。
【請求項4】
請求項3記載の運動動作評価システムであって、
前記セグメント化部は、さらに、前記抽出された複数の区間が一連の区間と判断される場合には、当該複数の区間を一つの区間に融合した上で前記分類型機械学習を適用する運動動作評価システム。
【請求項5】
請求項1~4いずれか記載の運動動作評価システムであって、
前記特徴ベクトルは、複数種類の特徴ベクトルおよびその組み合わせに対して、前記分類型機械学習を施し、その結果の評価に基づいて設定されている運動動作評価システム。
【請求項6】
請求項1~5いずれか記載の運動動作評価システムであって、
前記プレーは、バスケットボールにおけるスクリーンプレーであり、
前記特徴ベクトルは、バスケットボールのゴールとの位置関係を考慮せず、該スクリーンプレーに関係する四人の選手の位置関係に基づいて設定されている運動動作評価システム。
【請求項7】
運動中の選手の動きに関し、特定のプレーまたは演技としての完成度をコンピュータによって評価する運動動作評価方法であって、
前記コンピュータが実行するステップとして、
前記選手の動きを表す動作データを読み込む工程と、
前記動作データに基づいて、前記プレーまたは演技に対する分類型機械学習によって設定された特徴ベクトルを用いた回帰型機械学習により、前記評価を行う工程とを備える運動動作評価方法。
【請求項8】
運動中の選手の動きに関し、特定のプレーまたは演技としての完成度をコンピュータによって評価するためのコンピュータプログラムであって、
前記選手の動きを表す動作データを読み込む機能と、
前記動作データに基づいて、前記プレーまたは演技に対する分類型機械学習を行う機能と、
前記分類型機械学習によって設定された特徴ベクトルを用いた回帰型機械学習により、前記評価を行う機能とをコンピュータによって実現するためのコンピュータプログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、運動中の選手の動きに関し、特定のプレーまたは演技としての完成度を評価する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
種々のスポーツにおいて、選手の能力向上を図るためには、練習や試合における選手のプレーを評価し、より良い動きができるよう指導することが求められる。また、フィギュアスケートなど、一部のスポーツにおいては、選手の動き自体が採点の対象となることもある。従来、選手の動きの評価は、コーチや審判が経験に基づいて行っており、十分に客観性が確保されているとは言えなかった。例えば、録画した選手の動きを再生し、その動きを評価する場合、同じ人が同じ動きを評価しているにも関わらず、評価する度に評価結果がばらつくことは通常であった。
こうした選手の動きの評価について、コンピュータを利用しようとする試みもなされている。非特許文献1は、バスケットボールにおいて、攻撃側が用いるスクリーンプレーをコンピュータによって見極める技術を開示している。具体的には、バスケットボールの各選手の位置、動きをデジタルデータ化してコンピュータに読み込み、一連の動きの中からスクリーンプレーを行っている場面を切り出す技術である。この技術では、分類型機械学習を用いて、切り出しを行っている。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】K.Fujii、外5名著、「Resilient help to switch and overlap hierarchical subsystems in a small human group」、Scientific Reports 6, 23911
【非特許文献2】Armand MacQueen 外2名著、「Automatically Recognizing On-Ball Screens」、2014 MIT Sloan Sports Analytics Conference, 2014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
運動中の選手の動きにコンピュータ、特に機械学習を活用する試みは、始まったばかりであり、バスケットボールのスクリーンプレーという限定したプレーを対象としたものでさえ、非特許文献1に開示された先行技術で完成されているとは言えない。例えば、先行技術は、プレー中にボールを保持した選手に関係するスクリーンプレーのみを対象としているが、スクリーンプレーは、ボールを保持していない選手間でも行われるものであるから、かかるプレーの切り出しが行えないという点で不十分である。また、先行技術は、一連の動きからスクリーンプレーを切り出すための技術に過ぎず、それをコンピュータによって評価するには至っていない。かかる課題は、バスケットボールのスクリーンプレーに特有のものではなく、種々のスポーツにおいて選手の動きを評価する際に共通の課題である。
本発明は、これらの課題に鑑み、コンピュータを利用して、運動中の選手の動きを評価する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
運動中の選手の動きに関し、特定のプレーまたは演技としての完成度を評価する運動動作評価システムであって、
前記選手の動きを表す動作データを読み込む動作データ入力部と、
前記動作データに基づいて、前記プレーまたは演技に対する分類型機械学習によって設定された特徴ベクトルを用いた回帰型機械学習により、前記評価を行う評価部とを備える運動動作評価システムとして構成することができる。
【0006】
本発明によれば、回帰型機械学習を利用することにより選手の動きを評価することができるため、客観的な評価が可能となる。一般に回帰型機械学習においては、評価対象となる動きを評価するための特徴ベクトルが必要となるが、本発明では、この特徴ベクトルを分類型機械学習で設定したものを利用する。つまり、選手の多様な動きが、評価対象となる動きに該当するか否かを教師付の分類型機械学習で訓練し、この過程で、この分類に適すると思われる特徴ベクトルを見いだすのである。そして、この特徴ベクトルを用いて、今度は回帰型機械学習の訓練、つまり種々の選手の動きに対して評価点数を教えることを繰り返して実行する。こうして十分に訓練を行うことにより、新たな動きを回帰型機械学習によって評価することが可能となる。
発明者は、種々の特徴ベクトルを用いて分類型機械学習および回帰型機械学習を行わせることにより、それぞれ適した特徴ベクトルを研究したところ、分類型機械学習において好成績が得られる特徴ベクトルを回帰型機械学習にも用いることにより、回帰型機械学習も安定した評価結果を得られるという事実を見いだした。かかる結果が得られる原理は、必ずしも明確にはなっていないが、評価対象となる動きの分類と回帰で、その分析に用いるパラメータを変える必要性はないことが一つの理由として考えられる。
一般に回帰型機械学習は多様な評価点数をとりうるため、特徴ベクトルの良否を判断しづらいのに対し、分類型機械学習は評価対象となる動きに該当するか否かで訓練するため特徴ベクトルの良否を判断しやすいと考えられる。本発明では、このように良否を判断しやすい分類型機械学習で特徴ベクトルを設定するため、回帰型機械学習の精度を容易に向上させることが可能となる利点がある。
【0007】
本発明における評価対象は、特定のプレーや演技の完成度である。前者の例としては、バスケットボールのスクリーンプレーなどチームプレーにおいて複数の選手が連携して行う定型のプレー、柔道や剣道などにおける技などが挙げられる。後者の例としては、フィギュアスケートにおける演技などが挙げられる。
動作データとして読み込むべき動きは、評価対象に応じて決めればよい。例えば、バスケットボールのスクリーンプレーを対象とする場合には、各選手やボールの位置や動きなどを読み込むことになる。柔道等の技やフィギュアスケートにおける演技などを対象とする場合には、選手の位置などに加えて、手足の動きなども読み込むことになる。動きデータをデジタルデータ化する方法には、周知の種々の技術を適用可能である。
本発明は、選手のプレーを評価することで指導に活用する態様、試合において選手の演技を評価することで採点の客観性を向上させる態様、選手の動きに対する審判による評価と本発明による評価とを比較することによって審判の能力判定に利用する態様など、種々の態様で利用することができる。
【0008】
本発明において、
前記動作データは、評価対象となるプレーまたは演技を含む一連の動きを表すデータであり、
前記評価部による評価に先だって、前記動作データから、前記評価対象となるプレーまたは演技に該当する部分を、分類型機械学習によって切り出すセグメント化部を備えるものとしてもよい。
【0009】
かかる態様によれば、評価対象となるプレーまたは演技も、本発明によって容易に切り出すことが可能となり、評価者の負担を軽減することができる。例えば、バスケットボールを例にとれば、一試合の中で、スクリーンプレーは多数行われるものであるため、かかるプレーが行われている部分の動きを切り出す労力は軽くない。しかし、上記態様によれば、かかる作業を本発明によって行うことが可能となるのである。
本発明では、上述の切り出し、即ちセグメント化に分類型機械学習を利用する。この機械学習に利用される特徴ベクトルは、動きの評価に用いられるものと同じであるため、本発明では、新たに特徴ベクトルを用意するまでもなく、分類型機械学習を適用可能となる利点がある。
【0010】
また、前記セグメント化部は、前記分類型機械学習に先だって、前記動作データから、前記プレーまたは演技に応じて設定された所定の条件を前記選手の動きが満たす区間を抽出し、当該抽出された区間を対象として前記分類型機械学習を適用するものとしてもよい。
【0011】
上述の態様は、分類型機械学習を適用する前に、評価対象となるプレーまたは演技に相当する区間を簡易に抽出するのである。事前の抽出には、機械学習を利用しないため、比較的軽い負荷で処理することが可能である。このように、機械学習を用いない抽出処理と、分類型機械学習との併用により、一連の動作全体に分類型機械学習を適用するよりも、効果的にセグメント化を行うことができる。
抽出に用いる所定の条件は、評価対象となるプレーまたは演技に応じて設定することができる。例えば、バスケットボールのスクリーンプレーであれば、選手間の距離が所定距離内に接近することなどのように条件を設定すればよい。またフィギュアスケートにおけるジャンプであれば、両足が氷から離れていること、などのように条件を設定することができる。抽出のための条件は、一つに限る必要はなく2以上の条件を用いることができる。
【0012】
前記セグメント化部は、さらに、前記抽出された複数の区間が一連の区間と判断される場合には、当該複数の区間を一つの区間に融合した上で前記分類型機械学習を適用するものとしてもよい。
選手の動きデータから所定の条件による抽出を行う場合、動きデータに含まれるノイズや、選手の動きが条件を満たすか否かの境界付近にあるときなど、本来は、一連の動きがいくつかに分断される事態が生じる可能性がある。かかる場合に、分断された区間に対して分類型機械学習を適用すると、評価対象となるプレーまたは演技が精度良く判断されない場合も生じ得る。
上記態様は、このように分断された区間を一つの区間に融合する処理を施すことにより、分類型機械学習によるセグメント化の効率および精度を向上させることができる。融合するための条件は、例えば、分断された区間同士の時間間隔などに基づいて任意に設定可能である。
【0013】
セグメント化部を設けるか否かに関わらず、本発明においては、
前記特徴ベクトルは、複数種類の特徴ベクトルおよびその組み合わせに対して、前記分類型機械学習を施し、その結果の評価に基づいて設定されているものとしてもよい。
こうすることにより、複数種類の特徴ベクトルおよびその組み合わせから、評価結果の良いものを選択し得るため、分類型機械学習の精度、ひいては回帰型機械学習の評価精度を向上させることが可能となる。
【0014】
本発明は、種々の運動に適用可能であり、例えば、
前記プレーは、バスケットボールにおけるスクリーンプレーであり、
前記特徴ベクトルは、バスケットボールのゴールとの位置関係を考慮せず、該スクリーンプレーに関係する四人の選手の位置関係に基づいて設定されているものとしてもよい。
発明者は、このような特徴ベクトルを用いることにより、バスケットボールにおいて、ボールやゴールの位置に無関係に随所で行われるスクリーンプレーを抽出し評価することが可能となることを見いだした。従って、かかる特徴ベクトルを用いることにより、バスケットボールのスクリーンプレーの抽出や評価における本発明の利用価値を大きく向上することができる。
【0015】
本発明は、上述の種々の特徴を、必ずしも全て備えている必要はなく、適宜、その一部を省略したり組み合わせたりして構成してもよい。
本発明は、上述した運動動作評価システムとしての態様に限らず、コンピュータによって運動動作の評価を行う運動動作評価方法として構成することもできる。また、かかる評価をコンピュータに行わせるためのコンピュータプログラム、およびかかるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成することもできる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体としては、フラッシュメモリ、ハードディスク、光ディスクなど種々の媒体を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】運動動作評価システムの構成を示す説明図である。
【図2】アクション抽出処理のフローチャートである。
【図3】アクション抽出の処理例を示す説明図である。
【図4】プレー識別処理のフローチャートである。
【図5】プレー評価処理のフローチャートである。
【図6】機械学習訓練処理のフローチャートである。
【図7】制限パラメータの評価例を示す説明図である。
【図8】回帰結果の評価例を示す説明図である。
【図9】第2実施例における審判能力評価システムの構成を示す説明図である。
【図10】審判能力評価処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】【実施例1】
【0017】
以下、バスケットボールのスクリーンプレーを評価するシステムとして構成した場合を例にとって運動動作評価システムの実施例を説明する。即ち、実施例の運動動作評価システムは、バスケットボールをプレーする選手の動きをデジタルデータとして入力し、一連の動きの中からスクリーンプレーと呼ばれるプレーに該当する箇所を抽出し、スクリーンプレーとしての完成度を評価するシステムである。
ここで、簡単にスクリーンプレーについて説明する。バスケットボールでは、攻撃選手に対して守備選手が1対1で対応することが多い。このような場合に、攻撃選手の1人(この選手を「スクリーナ」と呼ぶ)が、他の攻撃選手(この選手を「ユーザ」と呼ぶ)に接近し、ユーザについている守備選手(この選手を「ユーザディフェンス」と呼ぶ)の動きをブロックするのである。こうすることで、ユーザは、スクリーナを利用してユーザディフェンスをかわし、フリーでプレーすることができるようになる。かかるプレーは、ボールを所持している攻撃選手をユーザとして行うこともあれば、ボールを所持していない選手をユーザとして、ユーザがパスを受け取りやすくするために行うこともある。実際の各選手の動きは、プレーの中の位置関係により変動するが、スクリーナがユーザに接近し、ユーザディフェンスの動きをブロックする点で共通しているという意味で、スクリーンプレーは、バスケットボールにおける定型プレーの一つである。
実施例では、評価の対象をスクリーンプレーに限定しているが、本発明は、この他にも種々の競技、種々のプレーや演技に適用可能である。
【実施例1】
【0018】
A.システム構成:
図1は、運動動作評価システムの構成を示す説明図である。実施例の運動動作評価システムは、図1に示す各機能を実現するためのコンピュータプログラムを、CPU、RAM、ROMなどを備えたコンピュータにインストールことによってソフトウェア的に構成されている。図示した機能の一部または全部をハードウェア的に構成することも可能である。
また、実施例では、スタンドアロンで稼働するコンピュータによってシステムが実現される例を示すが、ネットワークで接続された複数のコンピュータやサーバによって構成されるシステムとしてもよい。
以下、図中の各機能について説明する。
【実施例1】
【0019】
動きデータ入力部11は、バスケットボールをプレーする選手やボールの動きをデジタルデータ(以下、「動きデータ」と称する)として入力する機能を奏する。入力する動きデータとしては、例えば、選手の位置、移動方向、移動速度、ボールの位置、ゴールの位置などが挙げられる。かかるデータは、プレー中の選手をコート周辺の複数のカメラで撮影して、各選手やボールの位置を特定する方法などによって生成することができる。コートを真上から見下ろすカメラを設置し、2次元的に選手の位置を把握するようにしてもよい。選手の動き等をデジタルデータとして取得する方法は、既に確立された周知の技術が存在するため、詳細な説明は省略する。
本実施例では、スクリーンプレーを評価するが、入力する動きデータは、スクリーンプレーが行われている場面だけでなく、バスケットボールの競技中の一連の動きを表すものである。
【実施例1】
【0020】
本実施例では、選手の位置等を動きデータとして入力するが、柔道や剣道の技やスケートの演技などを評価する場合には、選手の位置等に加えて選手の手足の動きなどを動きデータとして入力するようにしてもよい。このように入力すべき動きデータは、評価対象となるプレーや演技に応じて適宜、設定することができる。
【実施例1】
【0021】
動きデータ記憶部12は、入力された動きデータを格納する。ハードディスクや大容量のメモリなどによって構成することができる。
アクション抽出部13は、動きデータ記憶部12に格納された動きデータから、動作の評価対象であるスクリーンプレーが行われている場面のみを抽出する。抽出された一つ一つの場面を、アクションと呼ぶこともある。
アクションデータ記憶部14は、アクション抽出部13によって抽出されたアクションを格納する。
【実施例1】
【0022】
識別処理部15は、抽出されたアクションに対して、分類型機械学習を用いて、スクリーンプレーに該当する場面をさらに絞り込み、その結果に基づき、アクションデータ記憶部14の内容を更新する。本実施例では教師付機械学習の一つであるサポートベクターマシンを用いている。
特徴ベクトル記憶部16は、識別処理部15の分類型機械学習で用いられる特徴ベクトルを記憶する。特徴ベクトル記憶部16は、識別処理部15と別の構成として図示しているが、必ずしも識別処理部15と別個のデータベースを構築する必要はなく、識別処理部15に組み込む形で用意するようにしてもよい。
評価処理部17は、アクションデータ記憶部14に格納されたスクリーンプレーのアクションに対して回帰型機械学習により評価を行う。本実施例では、教師付機械学習の一つであるサポートベクター回帰を用いている。本実施例では、回帰型機械学習において用いる特徴ベクトルは、識別処理部15が用いるものと共通にしており、いずれも特徴ベクトル記憶部16に記憶されている。識別処理部15と同様、特徴ベクトル記憶部16は、評価処理部17に組み込む形で用意するようにしてもよい。
【実施例1】
【0023】
上述の通り、本実施例では、識別処理部15、評価処理部17において、機械学習を適用する。機械学習においては、十分な精度を実現するために、予めシステムにスクリーンプレーの識別やその評価について学習させる必要がある。この点で、本実施例では、教師付の機械学習、特にサポートベクターマシンおよびサポートベクター回帰を利用していることになる。
【実施例1】
【0024】
上述の学習、即ち訓練を行わせる機能を奏するのが、訓練部20である。訓練部20において、教師データ設定部23は、アクションデータ記憶部14に格納された訓練用のアクションに対する教師データを設定し、これを教師データ記憶部22に記憶する。
教師データとは、例えば、スクリーンプレーを識別するための分類型機械学習であれば、アクションがスクリーンプレーか否かという「正解」を表すデータとなる。教師データは、アクションをオペレータに再生表示し、オペレータが各アクションに対する「正解」を入力することによって生成することができる。
教師データは、回帰型機械学習の場合には、アクションに対して、スクリーンプレーとしての完成度を表すデータとなる。このデータも、アクションを再生表示し、オペレータが、評価値を入力することによって生成することができる。
【実施例1】
【0025】
機械学習訓練処理部21は、教師データを用いて、識別処理部15および評価処理部17の訓練を行う。つまり、アクションデータ記憶部14に記憶されたアクションに対して、識別処理部15にスクリーンプレーか否かの識別を行わせ、また評価処理部17にその評価を行わせた上、教師データ記憶部22に用意された教師データを参照して、「正解」を提供するという処理を繰り返し実行するのである。
【実施例1】
【0026】
図1の例では、訓練部20を備えるシステム構成を示したが、識別処理部15および評価処理部17の訓練が完了した後は、訓練部20を省略した構成をとることもできる。即ち、訓練によって新たな動きデータについて十分な精度で評価可能な識別処理部15および評価処理部17が得られた後は、これを移植する方法で、訓練部20を省略したシステムを製造するようにしてもよい。
【実施例1】
【0027】
B.アクション抽出処理:
図2は、アクション抽出処理のフローチャートである。これは、運動動作評価システム10に記憶された動きデータ記憶部12から評価対象となるプレー、即ち本実施例ではスクリーンプレーを抽出する処理であり、図1におけるアクション抽出部13が実行する処理に該当する。抽出は、機械学習ではなく、選手の動きが所定の条件(以下、「クライテリア」と呼ぶこともある)を満たすか否かによって行う。つまり、ここで行うアクション抽出処理は、後に機械学習によってスクリーンプレーを切り出す処理を実行するための前処理に相当するものである。
この処理は、全動きデータを所定の時間間隔で区切った場面ごとの処理を繰り返し実行することで、動きデータの全体について行われるものである。場面を区切る時間間隔は、任意に設定可能であるが、本実施例では、1秒以下の区切りとし、25~100Hzの周波数で処理が行われる間隔、つまり0.01~0.04秒間隔とした。
【実施例1】
【0028】
処理を開始すると、運動動作評価システム10は、動きデータ記憶部12から動きデータを入力する(ステップS10)。そして、シュートを行っている箇所を抽出する(ステップS11)。シュートを行っているか否かは、ボールが選手を離れてゴールに向かって移動しているかなど、ボールの動きに着目することにより、比較的容易に特定することができる。
【実施例1】
【0029】
次に、運動動作評価システム10は、スクリーナ(図中等で「S」と略記することがある)候補を選択する(ステップS12)。そして、ユーザ(図中等で「U」と略記することがある)およびユーザディフェンス(図中等で「UD」と略記することがある)の各候補を選択する(ステップS13)。本実施例では、ユーザ候補としてスクリーナに近い攻撃選手2人を選択し、ユーザディフェンス候補としてスクリーナに近い守備選手3人を選択するものとした。ユーザおよびユーザディフェンスの候補は、かかる条件に限らず、種々の条件に基づいて選択することができる。スクリーナ以外の全選手をユーザ候補とし、全守備選手をユーザディフェンス候補としても差し支えない。
【実施例1】
【0030】
運動動作評価システム10は、これらの3選手の位置関係等を用いたクライテリアに基づいてシグナルを判定する(ステップS14)。判定中の場面が3つの条件を全て満たす場合には、スクリーンプレーに該当するものと判断してシグナルをオンとし、そうでない場合にはシグナルをオフとする。判断するための3条件は、次の通りである。
条件(1)「スクリーナ(S)とユーザディフェンス(UD)との距離≦1.2m」であること。スクリーンプレーの特徴的な位置関係である、スクリーナがユーザディフェンスに接近していることを表している。
条件(2)「ユーザディフェンス(UD)がユーザ(U)にとって最も近い」こと。スクリーナの近くにいる自身の守備選手がユーザディフェンス候補として選択されている場合に、スクリーンプレーに無関係に条件(1)を満たす可能性があることから、スクリーナが自身の守備ではなくユーザディフェンスに接近しているという形でスクリーンプレーの特徴的な位置関係を条件(2)としたものである。
条件(3)「シュートされていない」ことである。スクリーンプレーは、シュートしていない場面で利用されるものだからである。
【実施例1】
【0031】
ここで、理解を助けるために、シグナルの判定処理例を示す。
図3は、アクション抽出の処理例を示す説明図である。上段に、攻撃選手を丸、守備選手を三角で各場面の位置関係を模式的に示した。上段左側は、スクリーナ(S)が、矢印s1方向に移動し、ユーザディフェンス(UD)に接近しようとしている場面を表している。中央は、ユーザ(U)が矢印u1方向に移動しているが、スクリーナ(S)がユーザディフェンス(UD)の動きをブロックしているため、ユーザディフェンス(UD)は矢印ud1のように回り込んでユーザ(U)についていかざるを得なくなっている場面を表している。右側は、ユーザ(U)、ユーザディフェンス(UD)がスクリーナ(S)から離れ、それぞれ矢印u2、ud2のように移動している場面を表している。ユーザディフェンス(UD)の軌跡は破線dのように迂回した軌跡となっており、この結果、ユーザ(U)を後ろから追いかける状態、即ちスクリーンプレーが成功した状態を表している。
【実施例1】
【0032】
上から2段目に、シグナルの判定結果を示した。上段に示した各場面について、図2のステップS14で説明した3つの条件を判断することにより、シグナルのオン・オフを決定することができる。図3中には、シグナルオンの場面、即ち3条件を全て満たす場面に〇、そうでない場面に×を示した。
最上段左側のスクリーンプレー開始前の場面では、概ねシグナルオフ(×)が続き、スクリーンプレー中の中央の場面では、概ねシグナルオン(〇)が続き、スクリーンプレー後の右側の場面では、概ねシグナルオフ(×)の場面が続く結果となる。ただし、図中のスクリーンプレー開始前の場面では、「××〇×・・・」というように、シグナルオフ(×)が続きながらも、1カ所だけシグナルオン(〇)が現れている。このように、動きデータに含まれる選手の位置関係等には、誤差やノイズが含まれるため、それぞれの場面で、ごく短期間、前後の場面とは異なるシグナル判定がなされることも生じ得る。
【実施例1】
【0033】
図2に戻り、次の処理を説明する。シグナル判定を終えると、運動動作評価システム10は、ノイズ除去処理を実行する(ステップS15)。シグナルオンとされたもののうち次のいずれかの条件を満たすものを、不適切として除外する処理である。
条件(1)「シグナル長さ≦0.1秒」であること。極端に短いシグナルは、ノイズと判断されるからである。
条件(2)「遠回り距離=0m」であること。遠回り距離とは、ユーザディフェンス(UD)が、スクリーナ(S)の動きによって迂回させられた移動距離のことを言う。遠回り距離が0mということは、スクリーンプレーを行ったとは判断できないため、かかる条件に該当するものを除外するのである。
【実施例1】
【0034】
図3で、ノイズ除去処理について説明する。上から3段目に、ノイズ除去処理の結果を示した。各場面の間が時間間隔0.1秒程度であるとすれば、先に行ったシグナル判定(上から2段目)において、シグナルオン(〇)が2つ以上続いていない部分が条件(1)を満たす部分と判断される。この結果、2段目の最初の方にある「××〇×」の部分、および最後の方にある「×××〇××」の部分におけるシグナルオン「〇」が、それぞれノイズと判断され、シグナルオフ「×」に置換される。条件(1)の判断基準となる時間間隔は、任意に設定可能である。
条件(2)は、上段右側に示したユーザディフェンス(UD)の軌跡dに基づいて判断できる。スクリーナ(S)が不在の状態で、ユーザ(U)に追随するようにユーザディフェンス(UD)が移動する軌跡に対して、スクリーナ(S)が存在する状態でどれだけユーザディフェンス(UD)が遠回りしたかを判断すればよい。条件(2)の判断も任意の方法で行うことができる。例えば、ユーザディフェンス(UD)の移動距離ではなく、スクリーナ(S)の有無で移動軌跡の変形の程度などに基づいて遠回りか否かを判定しても良い。また、条件(2)は、ノイズ除去処理から除外しても差し支えない。
【実施例1】
【0035】
図2に戻り、次の処理を説明する。ノイズ除去処理を終えると、運動動作評価システム10は、融合処理を実行する(ステップS16)。融合処理は、シグナルオンとされた場面のうち、分断されているものを一連のプレーとして融合する処理である。本実施例では、次の3条件を満たすもの同士を融合するものとした。
条件(1)「スクリーナ(S)、ユーザ(U)、ユーザディフェンス(UD)が同一」であること。スクリーンプレーに関わる選手が異なる場合には、別のプレーと判断されるからである。
条件(2)「セグメント間の間隔≦3秒」であること。セグメントとは、シグナルオンが一定期間連続したひとまとまりの区間を言う。セグメント間の間隔が大きい場合には、別のプレーと判断されるため、3秒以下の場合に限って融合対象とした。判断基準となる「3秒」という間隔については、任意に設定可能である。
条件(3)「シュートを挟んでいない」ことである。シュートの前後に行われたプレーは、別のプレーと考えられるからである。
【実施例1】
【0036】
図3で、融合処理について説明する。ノイズ除去の結果、図中に示すようにシグナルオンが連続するセグメント1、セグメント2が見いだされている。セグメント1、2の間は、図中では、「××」となっており、非常に短期間であることが分かる。従って、条件(2)を満たしている。そこで、セグメント1、2のスクリーナ(S)、ユーザ(U)、ユーザディフェンス(UD)が同一(条件(1))、シュートを挟んでいない(条件(3))を満たす場合には、セグメント1、2を融合し、一つのセグメント3とするのである。
【実施例1】
【0037】
図2に戻り、次の処理を説明する。融合処理を終えると、運動動作評価システム10は、アクション開始、終了時刻を決定する(ステップS17)。融合処理(ステップS16)までの処理で得られるセグメントは、シグナルオン、即ちステップS14で説明した条件を満たす場面のみを抽出したものである。しかし、スクリーンプレーに該当するか否かの判断や、プレーの完成度の評価を行うには、ステップS14で示した位置関係を満たす場面だけでなく、その前後の動きも含めて判断するする必要がある。そこで、ステップS17の処理では、セグメントの前後に、スクリーンプレー開始前後の一定期間を追加し、この一連の区間をスクリーンプレーの評価対象となる一定の期間とするものとした。この一定の期間をアクションと呼ぶものとする。
即ち、本実施例では、シグナル開始の0.5秒前をアクションの開始時刻とし、シグナル終了の3.0秒後をアクションの終了時刻と設定するものとしている(ステップS17)。
【実施例1】
【0038】
図3で、アクション開始、終了時刻の決定処理について説明する。融合処理によって、セグメント3が特定されているものとする。運動動作評価システム10は、セグメント3の最も早い場面を特定し、その0.5秒前をアクション開始時刻とするのである。また、セグメント3の最も遅い場面を特定し、その3.0秒後をアクション終了時刻とするのである。この結果、セグメント3の前後に、シグナルオフ(×)の期間を含むアクションが設定される。
【実施例1】
【0039】
図2に戻り、次の処理を説明する。運動動作評価システム10は、以上の処理を全スクリーナ候補について終了するまで繰り返し実行する(ステップS18)。以上の処理によって、全プレーの中から、スクリーンプレーに該当すると考えられるアクションが特定される。
図2で説明したアクション抽出処理は、所定のクライテリアを満たす場面を抽出する処理であるため、後述する機械学習を利用した識別処理よりも容易に判定できる利点がある。本実施例では、機械学習による処理の前に、このようなアクション抽出処理を実行することにより、スクリーンプレーを効率的に識別することが可能となる利点がある。
本実施例では、人間の目視でスクリーンプレーと判断される144のプレーのうち、140がアクションとして抽出された。つまり、本実施例の処理は、97.2%(140/144)の精度であることが確認された。本実施例で用いた条件は、任意に設定可能であり、図2で説明した以外の条件を用いるものとしてもよい。
【実施例1】
【0040】
C.プレー識別処理:
次にプレー識別処理について説明する。この処理は、分類型機械学習を利用してスクリーンプレーか否かを識別する処理であり、図1における識別処理部15が実行する処理である。本実施例では、機械学習として、サポートベクターマシンを用いる。
図4は、プレー識別処理のフローチャートである。処理を開始すると、運動動作評価システム10は、アクション抽出処理の結果を読み込む(ステップS30)。
そして、読み込んだ中から、識別の対象となるアクションを選択し(ステップS31)、これについて機械学習による識別に用いるための特徴量を抽出する(ステップS32)。そして、機械学習によるプレー識別を実行するのである(ステップS33)。運動動作評価システム10は、これらの処理を全アクションについて終了するまで実行し(ステップS34)、スクリーンプレーに該当するアクションを出力する(ステップS35)。
【実施例1】
【0041】
上述の処理で用いる特徴ベクトルは、任意に設定可能であるが、本実施例では、次の5種類の変数を候補とした。
(1)アクション開始時刻からアクション終了時刻までの距離の最小値(「最小距離」と言う);
(2)アクション開始時刻の距離と最小距離との差違;
(3)アクション開始時刻の距離から最小距離に至るまでの距離の平均値;
(4)最小距離とアクション終了時刻における距離との差違;
(5)最小距離とアクション終了時刻の距離に至るまでの距離の平均値;
それぞれの距離は、スクリーナ(S)、ユーザ(U)候補(2人)、ユーザディフェンス(UD)の間で算出する。スクリーンプレーは、ボールおよびゴールと無関係の場所で行われることもあるため、特徴ベクトルにおいてボールおよびゴールとの距離は考慮しないものとした。
【実施例1】
【0042】
本実施例では、上述の5つの変数のあらゆる組み合わせ、即ち(2-1)通りの組み合わせで機械学習を行い、その成績を評価した。成績の評価方法については後述する。そして、その成績が最も良かった変数(1)(3)(4)の組み合わせを選択した。
また、更に
(6)アクションの開始時刻から終了時刻までの移動距離;
を変数として追加した。
以上の結果、本実施例では、変数(1)(3)(4)(6)を特徴ベクトルとして用いるものとした。
本実施例では、以上で説明した特徴ベクトルに基づく機械学習を用いることにより、スクリーンプレーを精度良く識別することが可能となった。
【実施例1】
【0043】
D.プレー評価処理:
次にプレー評価処理について説明する。この処理は、図4までのスクリーン識別処理によってスクリーンプレーと識別されたアクションについて、スクリーンプレーとしての完成度を評価する処理であり、図1における評価処理部17が実行する処理である。本実施例の評価には、回帰型機械学習を用いており、本実施例では、その一つであるサポートベクター回帰を利用する。即ち、予めいくつかのスクリーンプレーに対して評価結果を教師データとして与えることにより、運動動作評価システム10を訓練し、その訓練結果に基づいて、新たなスクリーンプレーに対して完成度を点数等で評価するのである。
【実施例1】
【0044】
図5は、プレー評価処理のフローチャートである。処理を開始すると、運動動作評価システム10は、スクリーンプレーであると識別されたアクションを読み込み(ステップS40)、特徴量を算出する(ステップS41)。ここで用いる特徴量は、任意に設定可能であるが、本実施例では、スクリーン識別処理(図4)で用いるものと同じものとした。運動動作評価システム10は、この特徴量に基づいて、機械学習を用いたプレー評価を行い(ステップS42)、その結果を出力する(ステップS43)。
このように本実施例のプレー評価処理によれば、サポートベクター回帰を利用することによりスクリーンプレーを客観的に評価することができる。本実施例では、上述の通り、分類型機械学習においてスクリーンプレーの識別に適した特徴ベクトルを見いだし、この特徴ベクトルを回帰型機械学習でも共通して利用する。こうすることにより、回帰型機械学習も安定した評価結果を得られるという事実が見いだされたからである。かかる結果が得られる原理は、必ずしも明確にはなっていないが、評価対象となる動きの分類と回帰で、その分析に用いるパラメータを変える必要性はないことが一つの理由として考えられる。また、このように良否を判断しやすい分類型機械学習で特徴ベクトルを設定することにより、回帰型機械学習の精度を容易に向上させることが可能となる利点がある。
【実施例1】
【0045】
E.機械学習訓練処理:
以上で説明した通り、本実施例では、分類型機械学習であるサポートベクターマシン、および回帰型機械学習であるサポートベクター回帰で共通の特徴ベクトルを用いるが、いずれにおいても、教師付機械学習であるため、訓練が必要である。以下では、その訓練処理について説明する。
図6は、機械学習訓練処理のフローチャートである。運動動作評価システム10の識別処理部15、評価処理部17を訓練するための処理であり、図1における機械学習訓練処理部21が実行する処理に相当する。
処理を開始すると、運動動作評価システム10は、アクションデータを読み込む(ステップS51)。ここで読み込むのは、訓練用に用意されたアクションデータである。運動動作評価システム10は、併せて教師データを読み込む(ステップS52)。教師データとは、アクションデータのそれぞれについての回答を記録したデータである。分類型機械学習の教師データは、図中に示すように、それぞれのアクションに対して、スクリーンプレーに該当するか否かを記録したデータとなる。回帰型機械学習の教師データは、それぞれのアクションに対して、スクリーンプレーの完成度を点数等で評価した結果を格納したデータとなる。
【実施例1】
【0046】
そして、運動動作評価システム10は、それぞれのアクションについて特徴量を抽出する(ステップS53)。特徴ベクトルは、プレー識別処理(図4)、プレー評価処理(図5)で用いたものと同じである。機械学習の成績に基づいて特徴ベクトルを設定する場合には、種々の特徴ベクトルを対象として繰り返し機械学習訓練処理(図6)を実行することになるので、ステップS53では、実行の時に評価対象として設定された特徴ベクトルに基づいて抽出すればよい。
【実施例1】
【0047】
次に、運動動作評価システム10は、交差検定法と呼ばれる手法を用いて訓練および評価を行うため、アクションをK通りに分割する。Kは任意に設定可能であり、例えば、10分割とすることができる。分割とは、複数存在するアクションをグループ分けすることを意味し、一つのアクションを時間間隔で分断するという意味ではない。また、分割された一つ一つのグループに含まれるアクションの数は、厳密に一致している必要はない。
【実施例1】
【0048】
アクションの分割を終えると、運動動作評価システム10は、交差検定スコアを算出する(ステップS55)。
図示するように、まず、分割したグループ1をテストデータとして用い、グループ2以降の残りを訓練データとして用いる。そして、訓練データに含まれるアクションデータ及び教師データを用いて機械学習の訓練を実行する。分類型機械学習の場合は、アクションデータに対して、それがスクリーンプレーに該当するか否かを教師データによって教えるのである。訓練が完了すると、運動動作評価システム10は、テストデータとして用意してあるグループ1に対してスクリーンプレーか否かの識別を実施し、この結果と、グループ1に対する教師データとを対比して、その正解率をスコアとして算出する。図の例では、0.856がスコアとして算出されている。
同様の処理を、次は、グループ2をテストデータとして実行する。このようにテストデータを、順にグループ1からグループKまで、順次入れ換えながらスコアを算出するのである。そして、グループ1~グループKのスコアの平均値を交差検定のスコアとする。
【実施例1】
【0049】
上述した交差検定のスコアは、機械学習において特徴ベクトルに応じて判断結果を得る関係の複雑さを規定する制限パラメータCの値によっても変化する。
そこで、本実施例では、運動動作評価システム10は、交差検定スコアが最適値を得られるまで(ステップS56)、制限パラメータCの値を変更しながら、交差検定スコアの算出を繰り返す。
【実施例1】
【0050】
図7は、制限パラメータの評価例を示す説明図である。横軸に制限パラメータCの値をとり、縦軸に誤り率をとってグラフ化したものである。特徴ベクトルは一定の状態で、制限パラメータによる影響を表している。図示する通り、制限パラメータが10となるときに、誤り率が最小となっており、この値が最適の制限パラメータであることが分かる。また、この制限パラメータのときに得られる交差検定スコアが、用いられている特徴ベクトルにおける成績となる。
【実施例1】
【0051】
以上の機械学習訓練処理を、種々の特徴ベクトルに対して繰り返し実行すれば、それぞれの特徴ベクトルに対する成績を得ることができる。そして、その中から、最も成績の良いものを選択すれば、最適の特徴ベクトルを設定することができる。
本実施例では、かかる処理を経て、分類型機械学習における特徴ベクトルを、図4で説明した内容に決定した。
【実施例1】
【0052】
図6の機械学習訓練処理は、必ずしも常に全ての処理を実行しなくてはならないものではない。最適と考えられる特徴ベクトルが既に求められている場合には、その特徴ベクトルに基づいて行えば足りる。また、特徴ベクトルについて制限パラメータCの最適値も得られている場合には、当該制限パラメータCを用いてステップS55の交差検定スコア算出についての処理、またはこれに代えて全グループを訓練データとして用いた訓練処理を行うようにしてもよい。
さらに、訓練も完了した状態の識別処理部15、特徴ベクトル記憶部16、評価処理部17を移植可能であれば、図1における訓練部20を省略し、図6の機械学習訓練処理を省略して運動動作評価システム10を構築してもよい。
【実施例1】
【0053】
図8は、回帰結果の評価例を示す説明図である。図8(a)は、スクリーンプレーに対するコーチ1の評価をもとに回帰型機械学習の教師データを生成して、機械学習の訓練を行った上で、新たなスクリーンプレーに対する機械学習による評価(縦軸)とコーチ1による評価(横軸)との関係をグラフ化したものである。図中に示した「C=10」は、制限パラメータの値を表している。また、「R=0.99」は、決定係数であり、値1に近いほど両者の一致度が高いことを表している。つまり、図8(a)は、スクリーンプレーに対して、運動動作評価システム10が、コーチ1と同様の評価を精度良く再現していることを表している。
図8(b)~図8(d)は、それぞれ異なるコーチ2~4に対して同様に訓練および評価を行った結果である。コーチが異なれば回帰型機械学習に用いる教師データが異なるため、最適値となる制限パラメータも、それぞれ異なる値となる。つまり、運動動作評価システム10は、それぞれのコーチの個性を反映して訓練されたことになる。しかし、いずれにおいても決定係数はほぼ1に近い値を示しており、運動動作評価システム10は、非常に高い精度で各コーチの評価を再現していることが分かる。
【実施例1】
【0054】
このように、本実施例によれば、各コーチの個性を反映して、精度良い評価を実現することが可能となるのである。実施例では、バスケットボールのスクリーンプレーを対象としたが、本実施例は、種々の競技および種々のプレーや演技の評価に適用することが出来る。また利用する場面としては、練習中における選手の強化・指導だけではなく、例えば、フィギュアスケートのように演技が採点対象となる競技において、その演技の評価に利用する場面も考えられる。
【実施例2】
【0055】
次に、本発明の第2実施例について説明する。第2実施例では、選手の強化・指導としてのシステムではなく、審判の評価等のための審判能力評価システムとしての構成例を示す。審判能力評価システムは、プレーや演技に対する審判による評価と、機械学習による評価とを比較し、機械学習による評価が正答であるとの前提で審判の能力を評価するシステムである。審判の教育・訓練や、ある審判が国際試合の判定を行うことができる実力を備えているか否かといった実力評価などに用いることができる。
図9は、第2実施例における審判能力評価システム10Aの構成を示す説明図である。審判能力評価システム10Aも、第1実施例と同様、図示する各機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることによってソフトウェア的に構成することができる。もちろん、一部または全部の機能をハードウェア的に構成しても差し支えない。
【実施例2】
【0056】
図中に示す機能のうち、動きデータ入力部11、動きデータ記憶部12、アクション抽出部13、アクションデータ記憶部14、識別処理部15、特徴ベクトル記憶部16、評価処理部17は、それぞれ第1実施例と同様である。
アクションデータ再生部30は、アクションデータ記憶部14に記憶されたアクションを動画で再生し、パソコンのディスプレイDなどに表示する機能を奏する。
回答入力部31は、パソコンのキーボードK、マウスMなどを用いて審判の回答を入力する。
そして、合否判定部32は、アクションに対する機械学習による評価結果と、審判の回答とを比較して、合否判定を行う。
【実施例2】
【0057】
図10は、審判能力評価処理のフローチャートである。この処理を開始すると、審判能力評価システム10Aは、アクションを読み込む(ステップS60)。ここで用いるアクションは、予め審判の訓練用に用意されたアクションであってもよいし、新たに選手のプレーや演技から切り出したものであってもよい。アクションの切り出しは、第1実施例と同様の方法で行うことができる。
審判能力評価システム10Aは、読み込んだアクションをコンピュータのディスプレイ等に再生し(ステップS61)、アクションに対する回答を入力する(ステップS62)。回答は、審判がそのアクションを評価した結果である。
【実施例2】
【0058】
一方、審判能力評価システム10Aは、アクションに対する特徴量を抽出し(ステップS63)、機械学習を用いて基準回答を求める(ステップS64)。これらの処理は、プレー評価処理(図5)と同じである。即ち、サポートベクター回帰によってアクションの評価結果を得るのである。
ただし、第1実施例において図8で示した通り、サポートベクター回帰を利用した機械学習による評価の場合、その教師データを作成したコーチの個性が反映されてしまうようでは、基準回答とすることはできない。そこで、第2実施例においては、回帰型機械学習の教師データとして、既に一定の実力が認められた複数の審判による評価結果を用いる。こうすることにより、各審判による能力や個性の相違を平均化した標準的な教師データを作成することができ、サポートベクター回帰による評価結果を基準回答として用いることが可能となる。
【実施例2】
【0059】
次に、審判能力評価システム10Aは、基準回答と入力された回答とを比較し、合否を判定して(ステップS65)、その結果を出力する(ステップS66)。合否判定は、基準回答と回答との差違が、所定範囲内であれば合格というように、任意に基準を設定できる。また、一つのアクションに基づく評価だけでなく、複数のアクションに基づいて評価するようにしてもよい。
以上で説明した通り、第2実施例によれば、回帰型機械学習を用いることにより、審判の能力評価を客観的に実現することが可能となる。
【実施例2】
【0060】
以上、本発明について第1実施例、第2実施例を説明した。これらの実施例によれば、本発明は、種々の競技においてそのプレーの識別、完成度の評価を客観的かつ精度良く実現することができる。また、第2実施例に示したように、本発明は、審判の能力評価を客観的かつ精度良く行うことも可能である。
これらの実施例において説明した種々の特徴は、必ずしも全てを備えている必要はなく、本発明は、適宜、その一部を省略したり組み合わせたりして実施することができる。また本発明は、さらに種々の変形例を実現することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、運動中の選手の動きに関し、特定のプレーまたは演技としての完成度を評価するために利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
10、10A…運動動作評価システム
11…動きデータ入力部
12…動きデータ記憶部
13…アクション抽出部
14…アクションデータ記憶部
15…識別処理部
16…特徴ベクトル記憶部
17…評価処理部
20…訓練部
21…機械学習訓練処理部
22…教育データ記憶部
23…教師データ設定部
30…アクションデータ再生部
31…回答入力部
32…合否判定部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9