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明細書 :接着剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6529130号 (P6529130)
登録日 令和元年5月24日(2019.5.24)
発行日 令和元年6月12日(2019.6.12)
発明の名称または考案の名称 接着剤
国際特許分類 C09J 201/06        (2006.01)
C09J  11/06        (2006.01)
C09J 133/02        (2006.01)
C09J 133/26        (2006.01)
C08F 220/58        (2006.01)
C08F 220/60        (2006.01)
C08F 220/06        (2006.01)
C08F 220/34        (2006.01)
FI C09J 201/06
C09J 11/06
C09J 133/02
C09J 133/26
C08F 220/58
C08F 220/60
C08F 220/06
C08F 220/34
請求項の数または発明の数 16
全頁数 24
出願番号 特願2015-534073 (P2015-534073)
出願日 平成26年7月10日(2014.7.10)
国際出願番号 PCT/JP2014/068499
国際公開番号 WO2015/029615
国際公開日 平成27年3月5日(2015.3.5)
優先権出願番号 2013175029
優先日 平成25年8月26日(2013.8.26)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成29年7月4日(2017.7.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】高原 淳
【氏名】西田 仁
個別代理人の代理人 【識別番号】110002837、【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
【識別番号】100075409、【弁理士】、【氏名又は名称】植木 久一
【識別番号】100129757、【弁理士】、【氏名又は名称】植木 久彦
【識別番号】100115082、【弁理士】、【氏名又は名称】菅河 忠志
【識別番号】100125243、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 浩彰
審査官 【審査官】松原 宜史
参考文献・文献 特表平08-504217(JP,A)
特表平09-511741(JP,A)
特開平09-302042(JP,A)
特開2002-145847(JP,A)
特開平09-111180(JP,A)
特開平04-221396(JP,A)
特開昭61-245149(JP,A)
特開昭54-120643(JP,A)
特開2007-056066(JP,A)
特開平09-286930(JP,A)
特開2012-233059(JP,A)
調査した分野 C09J 1/00-201/10
C08F 220/06
C08F 220/34
C08F 220/58
C08F 220/60
特許請求の範囲 【請求項1】
主鎖を形成する水溶性ポリマー単位と、この水溶性ポリマー単位に結合する親水性有機基と自己集合性基とから構成される有機重合体と、
硬化剤とを含み、
前記自己集合性基は、アミノ酸残基又はオリゴペプチドであり、
前記硬化剤は、アミド化剤、キレート化剤、又は電解質である接着剤。
【請求項2】
前記水溶性ポリマー単位に炭化水素基が結合している請求項1に記載の接着剤。
【請求項3】
前記水溶性ポリマー単位が、ポリ(メタ)アクリル酸又はポリ(メタ)アクリル酸アミドであり、これらポリ(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸アミドの側鎖に前記親水性有機基、自己集合性基、又は炭化水素基が結合している請求項1又は2に記載の接着剤。
【請求項4】
前記親水性有機基が、親水性基で置換された炭化水素基である請求項1~3のいずれかに記載の接着剤。
【請求項5】
前記自己集合性基の含有量が、有機重合体全体に対して5質量%以上、50質量%以下である請求項1~のいずれかに記載の接着剤。
【請求項6】
前記自己集合性基のアミノ酸残基又はオリゴペプチドを構成するアミノ酸が、アラニン、ロイシン、イソロイシン及びバリンから選ばれる少なくとも1種である請求項1~5のいずれかに記載の接着剤。
【請求項7】
前記親水性基がヒドロキシ基、または、アンモニウム塩を形成していてもよいアミノ基である請求項4に記載の接着剤。
【請求項8】
前記有機重合体が、下記一般式(I)のユニットを有するものである請求項1~のいずれかに記載の接着剤。
【化1】
JP0006529130B2_000020t.gif
[一般式(I)中、R1は、水素原子又はメチル基を表し;R2は、炭素数1~15の炭化水素基を表し;L1は、-O-又は-NH-を表し;Xは、親水性基を表し;R3は、水素原子又はメチル基を表し;R4は、炭素数1~30の炭化水素基を表し;L2は、-O-又は-NH-を表し;L3は、単結合又は-CO-を表し;Aは、前記自己集合性基を表し;R5は、水素原子又はメチル基を表し;R6は、炭素数3~30の炭化水素基を表し;L4は、-O-又は-NH-を表す。m、n、oは各ユニットの存在比を表し、かつmおよびnは0超の数であり、oは0以上の数である]
【請求項9】
一般式(I)において、R1が水素原子又はメチル基であり;L1が-O-又は-NH-であり;R2が炭素数1~6の炭化水素基であり;Xがヒドロキシ基またはアンモニウム塩を形成していてもよいアミノ基であり;R3が水素原子又はメチル基であり;R4が炭素数3~20の炭化水素基であり;L2が-O-又は-NH-であり;L3が-CO-であり;R6が炭素数4~10の炭化水素基であり;Aがアラニン、ロイシン、イソロイシン及びバリンから選ばれる少なくとも1種を構成アミノ酸とするアミノ酸残基又はオリゴペプチドであり、m:n:oが2~20:1:0~3を満足する請求項に記載の接着剤。
【請求項10】
前記硬化剤が、オリゴペプチドユニットのカルボキシ基末端のアミド化剤である請求項1~のいずれかに記載の接着剤。
【請求項11】
水中硬化性を有する請求項1~10のいずれかに記載の接着剤。
【請求項12】
主鎖を形成する水溶性ポリマー単位と、この水溶性ポリマー単位に結合する親水性有機基と自己集合性基とから構成され
下記一般式(I)のユニットを有するものである有機重合体。
【化2】
JP0006529130B2_000021t.gif
[一般式(1)中、R1は、水素原子又はメチル基を表し;R2は、炭素数1~6の炭化水素基を表し;L1は、-O-又は-NH-を表し;Xは、ヒドロキシ基またはアンモニウム塩を形成していてもよいアミノ基を表し;R3は、水素原子又はメチル基を表し;R4は、炭素数3~20の炭化水素基を表し;L2は、-O-又は-NH-を表し;L3は、単結合又は-CO-を表し;Aは、前記自己集合性基であって、構成アミノ酸が、アラニン、ロイシン、イソロイシン及びバリンから選ばれる少なくとも1種であるアミノ酸残基又はオリゴペプチドを表し;R5は、水素原子又はメチル基を表し;R6は、炭素数4~10の炭化水素基を表し;L4は、-O-又は-NH-を表す。m、n、oは各ユニットの存在比を表し、かつmおよびnは0超の数であり、oは0以上の数であり、m:n:oは、2~20:1:0~3を満足する。]
【請求項13】
前記一般式(I)において、R1が水素原子又はメチル基であり;L1が-O-又は-NH-であり;R2が炭素数1~4の直鎖状アルキレン基であり;Xがヒドロキシ基であり;R3が水素原子又はメチル基であり;R4が炭素数4~8の直鎖状アルキレン基であり;L2が-O-又は-NH-であり;L3が-CO-であり;Aがアラニンの2~6量体であるオリゴペプチドであり、m:n:oが7~13:1:0~3を満足する請求項12に記載の有機重合体。
【請求項14】
請求項12または13に記載の有機重合体を製造する方法であって、
そのホモポリマーが水溶性ポリマーとなるモノマーに前記親水性有機基が結合した第1のモノマーと、そのホモポリマーが水溶性ポリマーとなるモノマーに前記自己集合性基が結合した第2のモノマーとを共重合することを特徴とする有機重合体の製造方法。
【請求項15】
前記ホモポリマーが水溶性ポリマーとなるモノマーが(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸アミドである請求項14に記載の有機重合体の製造方法。
【請求項16】
請求項1~11のいずれかに記載の接着剤を製造する方法であって、
前記有機重合体と、前記硬化剤とを混合することを特徴とする接着剤の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤に関し、好ましくは水中や湿潤条件下で硬化し接着性を発揮する接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤としては、湿潤環境下で硬化して材料同士を接合するのに有用な水中接着剤が知られており、この様な水中接着剤として、例えば、フィブリノーゲンにトロンビンが作用してできる硬タンパク質を利用したフィブリン糊や、水分に反応して硬化し接着するシアノアクリレート、グルタルアルデヒドの添加により硬化するゼラチン、エポキシ樹脂等が知られている。また、カテコール性水酸基を有するポリマーも知られている(特許文献1)。
【0003】
これらの水中接着剤のうち、例えば、フィブリン糊では生体由来の成分を用いるため、大量生産ができず、感染症を引き起こすおそれがある。またシアノアクリレートは、その硬化物は十分な安全性を有するものの、硬化前の単量体は毒性を有するため人体に有害となる場合がある。また、ゼラチンに添加することにより硬化を誘起するグルタルアルデヒドには毒性があり、エポキシ樹脂は硬化時間が長い上に完全に硬化させるためには加熱を要する。
【0004】
しかし、水中接着剤は、医療用接着剤(インプラント用接着剤)、湿潤及び水中での材料(コンクリートや金属)表面接着など様々な用途に高い期待が持たれており、さらなる開発が求められている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2012-233059号公報(第1頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、新たな接着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、主鎖を形成する水溶性ポリマー単位と、この水溶性ポリマー単位に結合する親水性有機基と自己集合性基とから構成される有機重合体は、硬化剤によって硬化して接着性を発揮するため、接着剤として使用できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明に係る接着剤は、主鎖を形成する水溶性ポリマー単位と、この水溶性ポリマー単位に結合する親水性有機基と自己集合性基とから構成される有機重合体と、硬化剤とを含むことを特徴とする。前記水溶性ポリマー単位には炭化水素基が結合していてもよい。
【0009】
また、前記水溶性ポリマーが、ポリ(メタ)アクリル酸又はポリ(メタ)アクリル酸アミドであることが好ましく、これらポリ(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸アミドの側鎖に前記親水性有機基、自己集合性基、又は炭化水素基が結合していることが好ましい。
【0010】
前記親水性有機基は、親水性基で置換された炭化水素基であることが好ましく、親水性基はヒドロキシ基またはアンモニウム塩を形成していてもよいアミノ基であることが好ましい。また、前記自己集合性基はアミノ酸残基又はオリゴペプチドであることが好ましく、自己集合性基のアミノ酸残基又はオリゴペプチドを構成するアミノ酸が、アラニン、ロイシン、イソロイシン及びバリンから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0011】
本発明の接着剤は、前記有機重合体が、下記一般式(I)のユニットを有するものであることが好ましい。
【0012】
【化1】
JP0006529130B2_000002t.gif

【0013】
[一般式(I)中、R1は、水素原子又はメチル基を表し;R2は、炭素数1~15の炭化水素基を表し;L1は、-O-又は-NH-を表し;Xは、親水性基を表し;R3は、水素原子又はメチル基を表し;R4は、炭素数1~30の炭化水素基を表し;L2は、-O-又は-NH-を表し;L3は、単結合又は-CO-を表し;Aは、自己集合性基を表し;R5は、水素原子又はメチル基を表し;R6は、炭素数3~30の炭化水素基を表し;L4は、-O-又は-NH-を表す。m、n、oは各ユニットの存在比を表し、かつmおよびnは0超の数であり、oは0以上の数である]
【0014】
さらに、本発明の接着剤は、前記有機重合体が、一般式(I)において、R1が水素原子又はメチル基であり;L1が-O-又は-NH-であり;R2が炭素数1~6の炭化水素基であり;Xがヒドロキシ基またはアンモニウム塩を形成していてもよいアミノ基であり;R3が水素原子又はメチル基であり;L2が-O-又は-NH-であり;L3が-CO-であり;R4が炭素数3~20の炭化水素基であり;Aがアラニン、ロイシン、イソロイシン及びバリンから選ばれる少なくとも1種を構成アミノ酸とするアミノ酸残基又はオリゴペプチドであり;R5が水素原子又はメチル基であり;L4が-O-又は-NH-であり;R6が炭素数4~10の炭化水素基であり、m:n:oが2~20:1:0~3を満足するものであることが好ましい。m:n:oは、2~20:1:0~1を満足するものであることがより好ましい。
【0015】
前記硬化剤は、オリゴペプチドユニットのカルボキシ基末端のアミド化剤であることが好ましい。本発明の接着剤は、水中や湿潤条件下で硬化性を有する接着剤であることが好ましい。
【0016】
主鎖を形成する水溶性ポリマー単位と、この水溶性ポリマー単位に結合する親水性基と自己集合性基とから構成される有機重合体も本発明の範囲に包含される。また、前記有機重合体は、下記一般式(1)のユニットを有するものであることが好ましい。
【0017】
【化2】
JP0006529130B2_000003t.gif

【0018】
[一般式(1)中、R1は、水素原子又はメチル基を表し;R2は、炭素数1~6の炭化水素基を表し;L1は、-O-又は-NH-を表し;Xは、ヒドロキシ基またはアンモニウム塩を形成していてもよいアミノ基を表し;R3は、水素原子又はメチル基を表し;R4は、炭素数3~20の炭化水素基を表し;L2は、-O-又は-NH-を表し;L3は、単結合又は-CO-を表し;Aは、構成アミノ酸が、アラニン、ロイシン、イソロイシン及びバリンから選ばれる少なくとも1種であるアミノ酸残基又はオリゴペプチドを表し;R5は、水素原子又はメチル基を表し;R6は、炭素数4~10の炭化水素基を表し;L4は、-O-又は-NH-を表す。m、n、oは各ユニットの存在比を表し、かつmおよびnは0超の数であり、oは0以上の数であり、m:n:oは、2~20:1:0~3を満足する。]
【0019】
また、本発明の有機重合体は、前記一般式(I)において、R1が水素原子又はメチル基であり;L1が-O-又は-NH-であり;R2が炭素数1~4の直鎖状アルキレン基であり;Xがヒドロキシ基であり;R3が水素原子又はメチル基であり;L2が-O-又は-NH-であり;L3が-CO-であり;R4が炭素数4~8の直鎖状アルキレン基であり;Aがアラニンの2~6量体であるオリゴペプチドであり、m:n:oが7~13:1:0~3を満足するものであることが好ましい。m:n:oは、7~13:1:0を満足するものであることがより好ましい。
【0020】
本発明の有機重合体は、そのホモポリマーが水溶性ポリマーとなるモノマーに親水性有機基が結合した第1のモノマーと、そのホモポリマーが水溶性ポリマーとなるモノマーに自己集合性基が結合した第2のモノマーとを共重合することを特徴とする製造方法により製造される。前記ホモポリマーが水溶性ポリマーとなるモノマーが(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸アミドであることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、主鎖を形成する水溶性ポリマー単位と、この水溶性ポリマー単位に結合する親水性有機基と自己集合性基とから構成される有機重合体と、硬化剤とを含むため、接着性に優れる。特に、水中でも効率よく硬化し、湿潤条件下や、湿潤表面に対する場合も効果的に接着性を発揮するようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、実施例2で得られた有機重合体2のNMRスペクトルを表す。
【図2】図2は、実施例2で得られた有機重合体2のFT-IRスペクトルを表す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、各構成要素について詳細に説明する。なお、本明細書において、(メタ)アクリルとはアクリルおよびメタクリルを意味し、各成分として例示する化合物は、特に断りのない限り、単独で又は複数種を組み合わせて使用することができる。

【0024】
本発明の接着剤は、主鎖を形成する水溶性ポリマー単位と、この水溶性ポリマー単位に結合する接着性調節用官能基とから構成される有機重合体と、硬化剤とを含む。この接着剤は、水中や湿潤条件下においても硬化できる水中硬化性を有しており、水中や湿潤条件下でも効率よく硬化し湿潤表面に対しても接着性を発揮する。

【0025】
≪主鎖を形成する水溶性ポリマー単位≫
前記有機重合体の主鎖を水溶性ポリマー単位で形成したのは、重合体と水との親和性を高めて凝集を防ぎ、水中や湿潤条件下で用いる場合でも取り扱いが容易になる様にするためである。水溶性ポリマーは、それ自身は水に溶解可能なポリマーであり、そこに親水性有機基、自己集合性基等の接着性調節用官能基が結合することで、水中や湿潤条件下での親和性、接着性、マトリックス強度などの水中接着剤としての基本特性が調節される。水溶性ポリマーに結合する接着性調節用官能基としては、親水性有機基、自己集合性基が含まれる。必要に応じて、疎水化のための炭化水素基、連結基としての炭化水素基などを接着性調節用官能基として用いてもよい。接着性調節用官能基は、水溶性ポリマーの側鎖に結合していることが好ましい。前記接着性調節用官能基が結合する前の水溶性ポリマー単独の状態での温度25℃の水に対する溶解度は、例えば、1g/L以上、好ましくは10g/L以上であり、より好ましくは50g/L以上である。

【0026】
前記水溶性ポリマーとしては、接着性調節用官能基との結合部位(例えば、OH基、COOH基、NH2基、CONH2基などの結合用官能基)を有するポリマーが好ましく、例えば、ポリビニルアルコールなどの他、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミドなどのポリ(メタ)アクリル系水溶性ポリマーが挙げられ、特に好ましい水溶性ポリマーは、ポリ(メタ)アクリル系水溶性ポリマーである。ポリ(メタ)アクリル系水溶性ポリマーは、接着性調節用官能基の導入が容易である。

【0027】
≪親水性有機基≫
前記親水性有機基は、有機重合体の親水性を向上するのに有用であり、被着材との接着性を高めることが可能となる。親水性有機基は、前記水溶性ポリマーの結合用官能基に結合可能な有機基と親水性基とから構成されることが好ましく、親水性基で置換された炭化水素基であることが特に好ましい。ここで、親水性基とは、水素結合を形成しうる基のことをいう。

【0028】
親水性基としては、接着剤をより効率よく硬化する観点から、例えば、ヒドロキシ基や、アンモニウム塩を形成していてもよいアミノ基(好ましくは塩を形成していてもよい第四級アンモニウム基)を用いることができる。第四級アンモニウム基は、ハロゲン化物イオン(好ましくは塩化物イオン)と塩を形成していることが好ましい。入手容易性の観点からは、親水性基としてはヒドロキシ基が好ましい。

【0029】
親水性基が置換する炭化水素基としては、従来公知の2価の炭化水素基が挙げられ、例えば、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基、脂肪族炭化水素基、直鎖状又は分岐鎖状のアルケニレン基、直鎖状または分岐鎖状のアルキニレン基等が挙げられるが、接着剤の硬化性を制御する観点からは、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、直鎖状アルキレン基がより好ましい。親水性基が置換する炭化水素基は、一般に炭素数1~15であり、好ましくは炭素数1~12、より好ましくは炭素数1~10である。

【0030】
親水性基が置換する炭化水素基としては、具体的には、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基等の炭素数1~10の直鎖状アルキレン基が挙げられ、より好ましくは炭素数1~8の直鎖状アルキレン基であり、親水性基の種類に応じて適宜選択できる。

【0031】
親水性基がヒドロキシ基の場合には、被着材に対する接着性制御の観点から、炭素数1~5の直鎖状アルキレン基が好ましく、炭素数1~3の直鎖状アルキレン基がより好ましい。また、親水性基がアンモニウム塩を形成していてもよいアミノ基である場合、被着材に対する接着性制御とともに、接着剤の硬化性をも制御する観点から、炭素数1~8の直鎖状アルキレン基が好ましく、炭素数4~7の直鎖状アルキレン基がより好ましい。

【0032】
親水性有機基としては、具体的には、下記式で表される基を用いることができる。ただし、*は水溶性ポリマー単位との結合手を表す。

【0033】
【化3】
JP0006529130B2_000004t.gif

【0034】
有機重合体において、親水性有機基、自己集合性基、炭化水素基等の接着性調節用官能基の合計に対する親水性有機基の含有量は、例えば50質量%以上65質量%以下であり、被着材に対する接着性向上の観点から、好ましくは55質量%以上60質量%以下である。親水性有機基の含有量が上記の割合であると、硬化性と被着材に対する接着性とのバランスが良好であり、接着剤の接着強度をより一層向上できるため好ましい。
これらの接着性調節用官能基の割合は、IR測定により結合状態を特定し、NMR測定によって官能基の種類とその含有割合を特定することによって算出することができる。官能基の含有割合については、各官能基の末端に由来するNMRスペクトルのピーク面積値の比率に基づいて算出することができる。

【0035】
≪自己集合性基≫
自己集合性基は、有機重合体が硬化する時に架橋構造を形成する機能を有しており、接着剤としてのマトリックス強度を高めるのに有用である。

【0036】
自己集合性基としては、アミノ酸残基又はオリゴペプチドなどのペプチド系自己集合性基を好ましく用いることができ、好ましくはオリゴペプチドである。ペプチドを構成するアミノ酸としては、α-アミノ酸、β-アミノ酸などが使用でき、α-アミノ酸が好ましい。α-アミノ酸は、天然アミノ酸、非天然アミノ酸のいずれであってもよいが、環境や生体に対する負荷を小さくする観点から天然アミノ酸が好ましい。好ましい天然アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、及び、バリンが含まれる。前記ペプチドは、単独のアミノ酸から構成されていてもよく、複数のアミノ酸から構成されていてもよい。特に好ましい自己集合性基には、単独のアミノ酸から構成されるペプチド系自己集合性基が含まれ、例えば、前記単独のアミノ酸がアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリンであるペプチド性自己集合性基が挙げられる。

【0037】
自己凝集性基がペプチド系自己集合性基の場合、構成アミノ酸の数は、一般に1~10程度であり、接着対象、必要な硬化度などの観点から好ましくは1~6、より好ましくは1~5である。ペプチド系自己集合性基は、一般に構成アミノ酸の数が多いほど自己集合性が向上するが、構成アミノ酸の数が上記の範囲であると、自己集合性が適度であり、接着剤が効率よく硬化し、溶剤にも適度に溶解又は分散するため好ましい。

【0038】
また、アミノ酸の種類によって自己集合性の程度は異なるため、アミノ酸の種類に応じて構成アミノ酸の数を調整することができ、例えば、アミノ酸がアラニンであれば2~6量体であることが好ましく、3~5量体であることがより好ましい。ロイシンであれば1~4量体であることが好ましく、1~3量体であることがより好ましい。イソロイシンである場合1~4量体であることが好ましく、1~3量体であることがより好ましい。また、バリンであれば1~4量体であることが好ましく、1~3量体であることがより好ましい。

【0039】
自己集合性基としてペプチド系自己集合性基を用いる場合、自己集合性基は、C末端側、N末端側のいずれで水溶性ポリマー単位に結合していてもよいが、本発明の接着剤が硬化性をより効果的に発揮する観点から、N末端側で水溶性ポリマー単位に結合していることが好ましい。

【0040】
自己集合性基としては、具体的には、下記式で表される基を用いることができる。

【0041】
【化4】
JP0006529130B2_000005t.gif

【0042】
【化5】
JP0006529130B2_000006t.gif

【0043】
【化6】
JP0006529130B2_000007t.gif

【0044】
【化7】
JP0006529130B2_000008t.gif

【0045】
自己集合性基は、少なくとも2価の炭化水素基を連結基として介して水溶性ポリマー単位に結合することが好ましい。炭化水素基を介することにより、架橋構造が形成されやすくなり、硬化性を調整することが可能となる。この連結基の役割を有する炭化水素基としては、例えば、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、脂環式炭化水素基、直鎖状又は分岐鎖状のアルケニレン基、直鎖状又は分岐鎖状のアルキニレン基を用いることができるが、接着剤の硬化性を制御する観点からは、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、直鎖状アルキレン基がより好ましい。また、自己集合性基の連結基としての炭化水素基は、一般に炭素数1~30であり、好ましくは炭素数1~25、より好ましくは炭素数1~20である。

【0046】
連結基である炭化水素基としては、具体的には、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、ウンデカン-1,11-ジイル基、ドデカン-1,12-ジイル基、トリデカン-1,13-ジイル基、テトラデカン-1,14-ジイル基、ペンタデカン-1,15-ジイル基、ヘキサデカン-1,16-ジイル基、ヘプタデカン-1,17-ジイル基、オクタデカン-1,18-ジイル基、ノナデカン-1,19-ジイル基、イコサン-1,20-ジイル基等の炭素数1~20の直鎖状アルキレン基が挙げられ、より好ましくは炭素数1~19の直鎖状アルキレン基であり、自己集合性基の種類やアミノ酸単位の結合数に応じて適宜選択できる。例えば、オリゴアラニンの場合、炭素数2~8の直鎖状アルキレン基が好ましく、炭素数3~5の直鎖状アルキレン基がより好ましい。また、オリゴロイシンの場合、炭素数10~20の直鎖状アルキレン基が好ましく、炭素数11~19の直鎖状アルキレン基がより好ましい。オリゴイソロイシンの場合、炭素数10~20の直鎖状アルキレン基が好ましく、炭素数11~19の直鎖状アルキレン基がより好ましい。オリゴバリンの場合、炭素数1~14の直鎖状アルキレン基が好ましく、炭素数1~13の直鎖状アルキレン基がより好ましい。
自己集合性基が、炭化水素基等を介して水溶性ポリマー単位に結合する場合、この連結基として用いられる炭化水素基等は自己集合性基とは別の接着性調節用官能基に分類される。

【0047】
自己集合性基の含有量は、接着性調節用官能基の合計に対して、例えば30質量%以上50質量%以下であり、接着剤の硬化性向上の観点から好ましくは35質量%以上45質量%以下である。また、自己集合性基の含有量は、有機重合体全体に対して、例えば5質量%以上50質量%以下であり、接着剤の硬化性向上の観点から好ましくは7質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上25質量%以下である。自己集合性基の含有量が上記の割合であると、硬化性と被着材に対する接着性とのバランスが良好であり、接着剤の接着強度をより一層向上できるため好ましい。

【0048】
≪炭化水素基≫
接着性調節用官能基は、必要に応じて、1価の炭化水素基を含んでいてもよい。これにより、被着材に応じて有機重合体の親水性、疎水性バランスを調整することができ、接着性をより一層向上することができる。1価の炭化水素基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、脂環式炭化水素基、直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基、直鎖状または分岐鎖状のアルキニル基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。

【0049】
前記1価の炭化水素基を適切に選択することで、有機重合体の溶剤(好ましくは水)に対する親和性を保ったまま、接着性を向上できる。好ましい炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、より好ましくは直鎖状アルキル基である。
また1価の炭化水素基の炭素数は、例えば、3~30程度、好ましくは4~15程度、さらに好ましくは5~10程度である。

【0050】
特に好ましい1価の炭化水素基としては、具体的には、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の炭素数4~10の直鎖状アルキル基が挙げられる。中でも、炭素数4~8の直鎖状アルキル基が好ましく、炭素数4~7の直鎖状アルキル基がより好ましい。

【0051】
炭化水素基は、接着性調節用官能基の合計に対して、例えば0質量%以上10質量%以下の含有量であり、被着材の親疎水性によって、好ましくは0質量%以上7質量%以下の含有量で使用できる。炭化水素基の含有量が上記の割合であると、被着材の種類によらず、硬化性を維持したまま被着材への接着性を向上でき、接着剤の接着強度をより向上できるため好ましい。

【0052】
本発明の有機重合体は、下記一般式(I)のユニットを有するものであることが好ましい。

【0053】
【化8】
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【0054】
[一般式(I)中、R1は、水素原子又はメチル基を表し;R2は、炭素数1~15の炭化水素基を表し;L1は、-O-又は-NH-を表し;Xは、親水性基を表し;R3は、水素原子又はメチル基を表し;R4は、炭素数1~30の炭化水素基を表し;L2は、-O-又は-NH-を表し;L3は、単結合又は-CO-を表し;Aは、自己集合性基を表し;R5は、水素原子又はメチル基を表し;R6は、炭素数3~30の炭化水素基を表し;L4は、-O-又は-NH-を表す。m、n、oは各ユニットの存在比を表し、かつmおよびnは0超の数であり、oは0以上の数である]

【0055】
2としては、親水性有機基が置換する炭化水素基として例示した基と同様の基を例示することができる。Xとしては、親水性有機基の親水性基として例示した基と同様の基を例示することができる。また、R4としては、自己集合性基の連結基として例示した2価の炭化水素基と同様の基を例示することができる。R6としては、1価の炭化水素基として例示した基と同様の基を例示することができる。

【0056】
m、n、oは、自己集合性基により得られる硬化性と、親水性有機基により得られる被着材に対する接着性とのバランスの観点から、m:nの比が2~20:1となることが好ましく、より好ましくは5~15:1であり、さらに好ましくは7~13:1である。また、n:oの比が1:0~5であることが好ましく、より好ましくは1:0~3であり、さらに好ましくは0~1、特に好ましくは1:0~0.5である。また、m:n:oの比が2~20:1:0~5であることが好ましく、2~20:1:0~3であることがより好ましく、2~20:1:0~1であることがさらに好ましい。m:n:oの比は、5~15:1:0~5であることも好ましく、5~15:1:0~3であることがより好ましく、5~15:1:0~0.5であることが特に好ましい。また、m:n:oの比は、7~13:1:0~5であることが好ましく、7~13:1:0~3であることがより好ましく、7~13:1:0であることがさらに好ましい。
炭化水素基を使用する場合には、m:n:oの比は、2~20:1:0.5~3であることが好ましく、7~13:1:0.7~2.6であることがより好ましい。

【0057】
上記一般式(I)において、R1が水素原子又はメチル基であり;L1が-O-又は-NH-であり;R2が炭素数1~6の炭化水素基であり;Xがヒドロキシ基またはアンモニウム塩を形成していてもよいアミノ基であり;R3が水素原子又はメチル基であり;L2が-O-又は-NH-であり;L3が-CO-であり;R4が炭素数3~20の炭化水素基であり;Aがアラニン、ロイシン、イソロイシン及びバリンから選ばれる少なくとも1種を構成アミノ酸とするアミノ酸残基又はオリゴペプチドであり;R5が水素原子又はメチル基であり;L4が-O-又は-NH-であり;R6が炭素数4~10の炭化水素基であり、m:n:oが2~20:1:0~3を満足するものである有機重合体がより好ましい。

【0058】
中でも、上記一般式(I)において、R1が水素原子又はメチル基であり;L1が-O-又は-NH-であり;R2が炭素数1~4の直鎖状アルキレン基であり;Xがヒドロキシ基であり;R3が水素原子又はメチル基であり;L2が-O-又は-NH-であり;L3が-CO-であり;R4が炭素数4~8の直鎖状アルキレン基であり;Aがアラニンの2~6量体であるオリゴペプチドであり、m:n:oが7~13:1:0~3を満足するものである有機重合体がさらに好ましい。この様な有機重合体は、下記一般式(II)で表されるユニットを有する。

【0059】
【化9】
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【0060】
[一般式(II)中、R1は、水素原子又はメチル基を表し、;L1は、-O-又は-NH-を表し、;R2は、炭素数1~4の直鎖状アルキレン基を表し、;R3は、水素原子又はメチル基を表し、;L2は、-O-又は-NH-を表し、;R4は、炭素数4~8の直鎖状アルキレン基を表し、;Aは、アラニンの2~6量体であるオリゴペプチドを表し、m、nは各ユニットの存在比を表し、かつmおよびnは0超の数であり、m:nが7~13:1を満足する。]

【0061】
有機重合体の数平均分子量は、例えば、5,000以上であることが好ましく、より好ましくは20,000以上、さらに好ましくは30,000以上、特に好ましくは50,000以上である。また、有機重合体の数平均分子量は、500,000以下であることが好ましく、より好ましくは200,000以下、さらに好ましくは100,000以下である。分子量が大きいほど架橋・ゲル化に有利になって水中や湿潤条件下での硬化性が良好になる。また分子量を高くし過ぎないほど、有機重合体の溶剤への溶解性が良好になり、得られる溶液の粘性が抑制される。有機重合体の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィを用い、プルランを標準試料として作成した較正曲線に基づいて算出することができる。

【0062】
≪有機重合体の製造方法≫
本発明の有機重合体は、そのホモポリマーが水溶性ポリマーとなるモノマーに親水性有機基が結合した第1のモノマーと、そのホモポリマーが水溶性ポリマーとなるモノマーに自己集合性基が結合した第2のモノマーとを共重合することを特徴とする製造方法により製造される。これにより、各接着性調節用官能基と水溶性ポリマーの前駆体である単量体との反応性が異なっていても、水溶性ポリマー単位と所望の割合の各接着性調節用官能基とから構成される有機重合体を得ることができる。前記ホモポリマーが水溶性ポリマーとなるモノマーは、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸アミドであることが好ましい。また、第1のモノマー、第2のモノマーに加えて、そのホモポリマーが水溶性ポリマーとなるモノマーに炭化水素基が結合した第3のモノマーとを共重合してもよい。

【0063】
前記親水性有機基が結合した第1のモノマーは、好ましくは、下記一般式(m1)で表される。

【0064】
【化10】
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[一般式(m1)中、R1、R2、L1、Xは、上記と同様の基を表す。]

【0065】
また、前記自己集合性基が結合した第2のモノマーは、好ましくは、下記一般式(m2)で表される。

【0066】
【化11】
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[一般式(m2)中、R3、R4、L2、L3、Aは、上記と同様の基を表す。]

【0067】
さらに、前記炭化水素基が結合した第3のモノマーは、好ましくは下記一般式(m3)で表される。

【0068】
【化12】
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[一般式(m3)中、R5、R6、L4は、上記と同様の基を表す。]

【0069】
接着性調節用官能基を導入した第1のモノマー、第2のモノマー、第3のモノマーを重合させる方法としては、従来公知の方法を用いることができるが、反応性制御の観点から、ラジカル重合法を用いることが好ましい。開始剤としては、過酸化ベンゾイル等の過酸化物開始剤、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物開始剤等を用いることができる。アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物開始剤を用いると、重合安定性に優れるため好ましい。

【0070】
また、接着性調節用官能基が重合反応の際に意図しない反応をするおそれがある場合は、重合前の段階(好ましくは単量体に導入する前)に、各接着性調節用官能基をそれぞれ対応した保護基で保護し、重合反応後に脱保護すればよい。例えば、ヒドロキシ基についてはベンジル基、tert-ブチル基、メトキシメチル基等を用いることができ、アンモニウム塩を形成していてもよいアミノ基についてはtert-ブトキシカルボニル基やベンジルオキシカルボニル基等を用いることができる。

【0071】
ホモポリマーが水溶性ポリマーとなるモノマーに親水性有機基を導入して第1のモノマーを製造する方法としては、ホモポリマーが水溶性ポリマーとなるモノマーとして、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸アミドを用いる場合、例えば、親水性有機基の末端にヒドロキシ基やアミノ基を導入し、さらに、(メタ)アクリロイルハライド(好ましくは(メタ)アクリロイルクロリド)と反応させる方法を用いることができる。必要であれば、トリエチルアミン等の強塩基を共存させてもよい。溶剤には、テトラヒドロフラン等のケトン系溶剤を好ましく用いることができる。

【0072】
ホモポリマーが水溶性ポリマーとなるモノマーに自己集合性基を導入して第2のモノマーを製造する方法としては、ホモポリマーが水溶性ポリマーとなるモノマーとして、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸アミドを用いる場合、親水性有機基を導入する方法と同様の方法を用いることができる。特に、自己集合性基としてアミノ酸残基又はオリゴペプチドを用い、自己集合性基が炭化水素基等を介して水溶性ポリマーに結合する場合、炭化水素基の一方の末端にカルボキシ基を有し、他方の末端に(メタ)アクリロイルオキシ基又は(メタ)アクリロイルアミノ基を有する化合物を用いればよい。具体的には、自己集合性基であるアミノ酸残基又はオリゴペプチドのN末端と、前記化合物のカルボキシ基とを反応させればよい。この様な化合物としては、例えば、6-アクリロイルアルカン酸や、6-アクリロイルアミノアルカン酸等が挙げられる。アミノ酸残基又はオリゴペプチドのN末端と、カルボキシ基を反応させる際、N-ヒドロキシスクシンイミド等のカルボン酸活性化剤を用いてもよい。

【0073】
ホモポリマーが水溶性ポリマーとなるモノマーに炭化水素基を導入して第3のモノマーを製造する方法としては、ホモポリマーが水溶性ポリマーとなるモノマーとして、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸アミドを用いる場合、親水性有機基、自己集合性基を導入する方法と同様の方法を用いることができ、例えば、炭化水素基の末端にヒドロキシ基やアミノ基を導入し、さらに、(メタ)アクリロイルハライド(好ましくは(メタ)アクリロイルクロリド)と反応させる方法を用いることができる。

【0074】
≪硬化剤≫
本発明の接着剤は、硬化剤を含むことにより自己集合性基の自己集合を促進するものであり、自己集合性基に架橋構造を形成させることで、接着剤を硬化させることができる。硬化剤としては、アミド化剤、キレート化剤、電解質などを用いることができる。

【0075】
アミド化剤は、自己集合性基の末端(好ましくはC末端)に作用してアミド結合を形成しうる基と1価の炭化水素基とを含むものである。有機重合体とアミド化剤とを共存させると、自己集合性基の自己集合を促進するとともに、アミド化剤の炭化水素基と有機重合体に含まれる炭化水素基とが疎水性相互作用するため、接着剤としてのマトリックス強度を一層高めることができる。

【0076】
アミド化剤としては、例えば、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有する第一級アルキルアミン、直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基を有する第一級アルケニルアミン、直鎖状又は分岐鎖状のアルキニル基を有する第一級アルキニルアミン等が挙げられるが、硬化性向上の観点から、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有する第一級アルキルアミンが好ましく、直鎖状アルキル基を有する第一級アルキルアミンがより好ましい。

【0077】
アミド化剤を使用する場合、縮合剤を共存させてもよい。縮合剤を共存させることで、アミド結合形成の確実性を高めることができる。縮合剤としては、従来公知の縮合剤を用いることができ、例えば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩等の水溶性カルボジイミドを好ましく用いることができる。
縮合剤を使用する場合、その使用量は、アミド化剤1質量部に対して1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、より好ましくは1.5質量部以上8質量部以下であり、さらに好ましくは2質量部以上7質量部以下である。

【0078】
自己集合性基の末端がC末端である場合、さらにカルボン酸活性化剤を用いてもよい。カルボン酸活性化剤としては、従来公知の化合物を用いることができ、例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド、N-ヒドロキシスルホスクシンイミド、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール、ペンタフルオロフェノール等が挙げられる。中でも、N-ヒドロキシスクシンイミドが好ましい。
カルボン酸活性化剤を用いる場合、その使用量はアミド化剤100質量部に対して50質量部以上150質量部以下であることが好ましく、より好ましくは70質量部以上130質量部以下であり、さらに好ましくは80質量部以上120質量部以下である。
なお縮合剤やカルボン酸活性化剤を用いる場合、これらも硬化剤に含めるものとする。

【0079】
キレート化剤は、自己集合性基(好ましくはオリゴペプチド)が配位しうる金属イオンを含む化合物であり、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩を用いることができる。本明細書において、遷移金属とは3族~12族に属する元素を指すものとする。有機重合体とキレート化剤とを共存させると、自己集合性基の自己集合に加えて、金属イオンに自己集合性基(好ましくはオリゴペプチド)が配位することでより強固な架橋構造が形成されるため、接着剤の硬化を促進するとともに、接着剤としてのマトリックス強度を一層高めることができる。

【0080】
金属イオンの金属種は、所望の硬化性促進度合いにより、自己集合性基と各金属の間の錯形成能に鑑みて、適宜選択することができるが、2価の金属が好ましく、2価のアルカリ土類金属がより好ましく、カルシウムが特に好ましい。また、塩としては、例えば、塩化物塩、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩、リン酸塩、塩化水酸化物塩、炭酸水素塩等の従来公知の金属塩を用いることができ、接着剤の硬化性向上の観点から適宜選択できる。

【0081】
電解質は溶剤(好ましくは水)中で陽イオンと陰イオンに電離する物質のことを指す。有機重合体と電解質とを共存させると、自己集合性基の自己集合性挙動を制御することができ、自己集合性基の種類に関らず、接着剤を硬化することができる。
電解質としては、酸、塩基、或いは塩のいずれであってもよく、接着剤の硬化性制御の観点から適宜選択することができるが、好ましくは塩であり、塩化ナトリウム等の無機塩が好ましい。

【0082】
中でも、硬化剤としては、アミド化剤が好ましい。

【0083】
接着剤において、硬化剤の含有量は、接着剤の全量に対して1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以上45質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以上40質量%以下である。

【0084】
本発明の接着剤は、適切な溶剤に溶解又は分散させて、好ましくは液状の接着剤として用いることができる。溶剤としては、硬化性の観点から水を用いることが好ましく、水溶性有機溶剤と組み合わせてもよい。前記水溶性有機溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2-メチル-2-プロパノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶媒;アセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒;等を用いることができる。液状接着剤に使用する溶媒100質量%中、水は90質量%以上であることが好ましく、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上、特に好ましくは100質量%であってもよい。
また、前記液状の接着剤に用いる接着剤(有機重合体及び硬化剤)は、特に限定されないが、得られる液状の接着剤100質量%中、例えば2質量%以上50質量%以下であり、硬化性向上の観点から、3質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下であることが好ましい。

【0085】
本発明の接着剤は、被着材に塗布し、圧着すること等によって接着することができる。塗布したときの厚みは、例えば0.1mm~5mm程度であれば、硬化性が最も効果的に発揮される。また、圧着時の圧力は、被着材を固定できる程度の圧力であればよい。接着状態は、例えば、接着されている2以上の被着材を、逆方向に引張るなどしてせん断応力をかけ、破断時の応力を求めること等によって評価することができる。

【0086】
本発明の接着剤は、その接着対象が、アルミニウム、鉄、ニッケル等の金属;コンクリート;細胞;タンパク質;ポリエチレン樹脂等の疎水性樹脂、アクリル樹脂、ナイロン樹脂等の親水性樹脂等の樹脂;等多岐にわたり、医療用接着剤(インプラント用接着剤)、湿潤及び水中での材料(コンクリートや金属)表面接着など様々な用途に有用である。

【0087】
本願は、2013年8月26日に出願された日本国特許出願第2013-175029号に基づく優先権の利益を主張するものである。2013年8月26日に出願された日本国特許出願第2013-175029号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例】
【0088】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【実施例】
【0089】
(引張りせん断破壊強度測定)
有機重合体の10%水溶液10mgをステンレス板上、10mm×10mmの領域に塗布し、2枚のステンレス板で挟んだ。これをクリップで固定し、室温、高湿度下(湿度80%)で24時間静置し、ステンレス板の接着を行った。接着したステンレス板の両末端を引張試験機に固定し、1.0mm/分でサンプルを引っ張り、その荷重を測定した。そして、ステンレス板が剥離した際の荷重と接着面積から下記式により引張りせん断破壊強度を求めた。
引張りせん断破壊強度(kPa)=荷重(N)/接着面積(m2)×10-3
さらに、前記ステンレス板の代わりに、基板としてポリエチレン板、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)板、6-ナイロン板を使用して同様の測定を行い、引張りせん断破壊強度を求めた。なお、いずれの基板も有機重合体塗布時に前処理は行っていない。
【実施例】
【0090】
(分子量測定)
膜電極接合体を構成する高分子電解質の分子量測定は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いた。
測定に際しては、有機重合体4mgを移動相溶媒0.1M炭酸ナトリウム水溶液8mLに溶解して、下記条件で測定を行い、プルランを標準試料として作成した較正曲線に基づいて換算することによって、高分子電解質の重量平均分子量および数平均分子量を算出した。測定におけるGPC条件は、下記の通りである。
移動相:0.1M炭酸ナトリウム水溶液
流速:0.8ml/min
装置:Shimadzu Prominence HPLCシステム
カラム:TSKgel G4000PWXL,TSKgel G5000PWXL
【実施例】
【0091】
(NMR測定)
得られた有機重合体について、1H-NMR測定を行った。装置としてブルカー社製「AV400N」を用いて25℃で測定した。溶媒は重水を用い、サンプルの濃度は15mg/mLとした。
【実施例】
【0092】
(FT-IRスペクトル測定)
得られた有機重合体について、KBrペレット法にてFT-IR測定を行った。装置としてブルカー社製「VERTEX70」を用いた。
【実施例】
【0093】
(合成例1):自己集合性基を含むモノマーの製造
工程1
N-α-(9-fluorenylmethoxycarbonyl)-di-L-alanine tert-butyl ester(Fmoc-Ala-Ala-OtBu)の製造
【実施例】
【0094】
【化13】
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【実施例】
【0095】
N-α-(9-fluorenylmethoxycarbonyl)-L-alanine(Fmoc-Ala-OH)10.0g (30.4mmol)と1-hydroxybenzotriazolemonohydrate (HOBt) 5.59g (30.4mmol)をdimethylformamide(DMF) 60mlに溶解し、氷浴上で冷却した。これにN,N'-Dicyclohexylcarbodiimide(DCC)6.90g (33.4mmol)を加え、0℃で1時間撹拌した。次いで、L-alanine tert-butyl ester(H-Ala-OtBu) 5.59g (30.4mmol)とtriethylamine(TEA)4.21ml(30.4mmol)を加え、室温で14時間撹拌した。反応溶液を濾過して沈殿物を除き、減圧下で濃縮した。残渣を酢酸エチルに溶解し、1N塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム溶液、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過の後、溶媒を減圧下に留去し、残渣からヘキサン-酢酸エチル混合溶媒による再結晶を行い、目的物(Fmoc-Ala-Ala-OtBu)11.0g(27.3mmol)を得た。1H-NMR測定により、目的とする化合物が生成したことを確認した。
【実施例】
【0096】
1H-NMR(400MHz, CDCl3, δppm); 7.76(2H, d, J= 7.5), 7.59(2H, d, J= 7.3), 7.40(2H,t, J= 7.4), 7.31(2H, dt, J= 1.0, 7.4), 6.42(1H, d, J= 6.7), 5.41(1H, d, J= 7.0), 4.39-4.47(3H, m), 4.22(2H, t, J= 7.0), 1.46(9H, s), 1.41(3H, d, 6.8), 1.38(3H,d, 7.1)
【実施例】
【0097】
工程2
N-α-(9-fluorenylmethoxycarbonyl)-tri-L-alanine tert-butyl ester(Fmoc-Ala-Ala-Ala-OtBu)の製造
【実施例】
【0098】
【化14】
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【実施例】
【0099】
Fmoc-Ala-Ala-OtBu 8.02g(18.3mmol)をDMF 180mlに溶解し、diethylamine(DEA) 18mlを加え、室温で1.5時間撹拌した後、反応溶液を減圧下に濃縮し、di-L-alanine tert-butyl ester(H-Ala-Ala-OtBu)を得た。一方で、Fmoc-Ala-OH 6.08g(18.3mmol)とHOBt 3.38g(22.0mmol)をDMF 32mlに溶解し、DCC 4.20g(20.1mmol)を加えて氷冷下に1時間撹拌した。先に合成したH-Ala-Ala-OtBuをDMF 8mlに溶解して、この反応溶液に加え、室温で14時間撹拌した。反応溶液を濾過して沈殿を除き、減圧下で濃縮・乾固して固体を得た。これを1N 塩酸、ついで飽和炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄し、酢酸エチル-ヘキサンの混合溶液から再結晶を行い、目的物(Fmoc-Ala-Ala-Ala-OtBu)6.89g(13.5mmol)を得た。1H-NMR測定により、目的とする化合物が生成したことを確認した。
【実施例】
【0100】
1H-NMR(400MHz, CDCl3, δppm); 7.77(2H, d, J= 7.5), 7.59(2H, d, J= 7.5), 7.40(2H,t, J= 7.5), 7.31(2H, dt, J= 1.1, 7.4), 6.59(1H, d, J= 7.6), 6.55(1H, d, J= 6.8), 5.42(1H, d, J= 6.3), 4.40-4.52(4H, m), 4.20-4.28(2H,m), 1.46(9H, s), 1.40(6H, d, 7.0), 1.36(3H, d, 7.1)
【実施例】
【0101】
工程3
N-α-(9-fluorenylmethoxycarbonyl)-tetra-L-alanine tert-butyl ester(Fmoc-Ala-Ala-Ala-Ala-OtBu)の製造
【実施例】
【0102】
【化15】
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【実施例】
【0103】
Fmoc-Ala-Ala-Ala-OtBu 3.00g(5.89mmol)をDMF 50mlに溶解し、DEA 5mlを加え、室温で2時間撹拌した後、反応溶液を減圧下に濃縮し、tri-L-alanine tert-butyl ester(H-Ala-Ala-Ala-OtBu)を得た。一方で、Fmoc-Ala-OH 2.13g(6.48mmol)とHOBt 1.09g(7.07mmol)をDMF 10mlに溶解し、DCC 1.46g(7.07mmol)を加えて氷冷下に1時間撹拌した。先に合成したH-Ala-Ala-Ala-OtBuをDMF 5mlに溶解して、この反応溶液に加え、室温で14時間撹拌した。この間、溶液がゲル化したためDMF 20mlを加えた。反応溶液を濾過して沈殿を除き、DMFを減圧下に濃縮し、粗生成物を得た。これをクロロホルムから再結晶し、目的物(Fmoc-Ala-Ala-Ala-Ala-OtBu)2.77g(4.77mmol)を得た。1H-NMR測定により、目的とする化合物が生成したことを確認した。
【実施例】
【0104】
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6, δppm); 8.16(1H, d, J= 7.0), 7.99(1H, d, J= 7.0), 7.90-7.87(3H, m), 7.72(2H, t, J= 7.1), 7.54(1H, d, J= 7.6), 7.42(2H, dt, J= 0.8, 7.5),7.33(2H, dt, J= 1.1, 7.4), 4.19-4.31(5H, m), 4.01-4.12(2H,m), 1.38(9H, s), 1.19-1.25(12H, m)
【実施例】
【0105】
工程4
N-succinimidyl 6-acryamidehexanolate (AAm-Hex-Suc)の製造
【実施例】
【0106】
【化16】
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【実施例】
【0107】
6-acrylamidehexanoic acid 3.00g (16.2mmol)とN-hydroxysuccinimide 1.86g (16.2mmol)をtetrahydrofuran(THF)15mlに溶解し、氷浴上で冷却した。ここにDCC 3.68g(17.8mmol)のTHF (15ml)溶液を滴下し、0℃で12時間攪拌した。反応溶液を濾過して沈殿を除いたのち、減圧下に濃縮した。残渣を酢酸エチルに溶解し、1N塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム溶液、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過の後、溶媒を減圧下に留去し、残渣からヘキサン-酢酸エチル混合溶媒による再結晶を行い、目的物(AAm-Hex-Suc)2.81g (9.95mmol)を得た。1H-NMR測定により、目的とする化合物が生成したことを確認した。
【実施例】
【0108】
1H-NMR(400MHz, CDCl3, δppm); 6.28(1H, dd, J= 1.6, 17.0) 6.13(1H, dd, J= 10.2, 17.0), 5.86(1H, s), 5.63(1H, dd, J= 1.6, 10.2) , 3.36(2H, dd, J= 6.6, 12.6), 2.85(4H, s), 2.63(2H, t, J= 7.1), 1.80(2H, tt, J= 7.2, 7.5), 1.56-1.64(2H, m), 1.46-1.52(2H,m)
【実施例】
【0109】
工程5
6-acrylamidehexanoate tetra-L-alanine tert-butyl ester(AAm-Hex-Ala-Ala-Ala-Ala-OtBu)の製造
【実施例】
【0110】
【化17】
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【実施例】
【0111】
Fmoc-Ala-Ala-Ala-Ala-OtBu 2.70g(4.65mmol)をDMF 50mlに溶解し、DEA 5mlを加え、室温で2時間撹拌した後、反応溶液を減圧下に濃縮し、tetra-L-alanine tert-butyl ester(H-Ala-Ala-Ala-Ala-OtBu)を得た。これをDMF 50mlに溶解し、AAm-Hex-Suc 1.44g(5.11mmol)を加え、室温で14時間攪拌した。反応溶液を減圧下で3分の1に濃縮し、エーテル200mlを加え、生じた沈殿を回収、乾燥して、自己集合性基含有単量体(AAm-Hex-Ala-Ala-Ala-Ala-OtBu)2.26g(4.30mmol)を得た。1H-NMR測定により、目的とする化合物が生成したことを確認した。
【実施例】
【0112】
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6, δppm); 8.14(1H, d, J= 7.0), 8.05(1H, t, J= 5.2), 7.99(1H, d, J= 7.3), 7.94(1H, d, J= 7.4), 7.87(1H, d, J= 7.7), 6.20(1H, dd, J= 10.1, 17.1), 6.05(1H, dd, J= 2.4, 17.1), 5.55(1H, dd, J= 2.3, 10.0), 4.19-4.31(3H, m), 4.05-4.12(1H,m), 3.10(2H, dd, J= 6.9, 12.7), 2.10(2H, t, J= 7.4), 1.38-1.54(14H,m), 1.17-1.27(15H, m)
【実施例】
【0113】
(実施例1)
N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド0.574g(4.99mmol)、合成例1で得た自己集合性基含有単量体0.264g(0.502mmol)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)20.4mg(0.124mmol)をジメチルアセトアミド10mlとメタノール1mlの混合溶液に溶解し、真空下(0.1Pa)で凍結と融解を3回繰り返して酸素の除去を行った。この後、真空下(0.1Pa)で反応溶液を溶封し、60℃で16時間攪拌した。次いで、反応溶液をジエチルエーテルに注ぎ、生じた沈澱を集め、ジエチルエーテルで洗浄を繰り返し、減圧乾燥して、カルボキシ基が保護された前駆体ポリマー1を0.792g得た。この前駆体ポリマー1の0.740gをトリフルオロ酢酸30mlに溶解し、3時間反応して保護基の除去を行った。トリフルオロ酢酸を減圧下に留去し、ジエチルジエーテルに注ぎ、生じた沈殿を集めた。沈殿を水にとかして透析し、凍結乾燥して本発明の有機重合体1を0.602g得た。重量平均分子量は101,000、数平均分子量は36,000であった。
【実施例】
【0114】
有機重合体1の20部を、10質量%の濃度となる様に脱イオン水と混合し、さらに硬化剤としてのヘキシルアミンを1.2部、縮合剤としての1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を6.5部、カルボン酸活性化剤としてのN-ヒドロスクシンイミドを1.3部を混合して、本発明の接着剤1を調製した。
【実施例】
【0115】
(実施例2)
N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド0.574g(4.99mmol)、合成例1で得た自己集合性基含有単量体0.264g(0.502mmol)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)20.4mg(0.124mmol)の代わりに、N-(2-ヒドロキシエチルアクリルアミド)0.518g(4.50mmol)、合成例1で得た自己集合性基含有単量体0.264g(0.502mmol)、N-ヘキシルアクリルアミド83.0mg(0.535mmol)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)37.0mg(0.225mmol)をジメチルアセトアミド10mlとメタノール1mlの混合溶液に溶解したこと以外は実施例1と同様にして、前駆体ポリマー2を0.644g得た。この前駆体ポリマー2の0.600gをトリフルオロ酢酸30mlに溶解し、3時間反応して保護基の除去を行った。トリフルオロ酢酸を減圧下に留去し、ジエチルジエーテルに注ぎ、生じた沈殿を集めた。沈殿を水にとかして透析し、凍結乾燥して本発明の有機重合体2を0.431g得た。重量平均分子量24,900、数平均分子量8,800であった。
【実施例】
【0116】
得られた有機重合体2について、NMRスペクトル測定を行ったところ、図1に示すように、0.7ppmにヘキシルの末端メチル基(CH3)に由来するピークが確認され、1.2ppmにアラニンのメチル基、1.2~2ppmに主鎖アクリルアミド、3ppmにエチル基、3.5ppmに水酸基の結合したメチレン基(CH2)、4.1ppmにアラニンのアルファ水素(構造単位につき4個)、5ppmに水酸基、7~8ppmにアミドプロトン由来のピークが確認された。
このうち、親水性有機基を有する構造単位の相対量を、水酸基の結合したメチレン基(CH2)に由来するピーク(3.5ppm)のピーク面積値をプロトン数(2)で割った数値から求め、自己集合性基を有する構造単位の相対量を、アラニンのアルファ水素(構造単位につき4個)に由来するピーク(4.1ppm)のピーク面積値をプロトン数(4)で割った数値から求め、炭化水素基を有する構造単位の相対量を、ヘキシルの末端メチル基(CH3)に由来するピーク(0.7ppm)のピーク面積値をプロトン数(3)で割った数値から求め、その比率をm:n:oとして算出した。具体的には、
m:n:o=(4.0/2):(0.8064/4):(0.6076/3)≒10:1:1であった。
【実施例】
【0117】
また、得られた有機重合体2について、FT-IR測定を行ったところ、1500~1700cm-1にアミド結合(C=O伸縮振動、N-H変角振動、C-N伸縮振動)に由来するピークが確認され、2900cm-1にC-H伸縮振動に由来するピークが確認された。
【実施例】
【0118】
有機重合体2の19部を、10質量%の濃度となる様に脱イオン水と混合し、さらに硬化剤としてのヘキシルアミンを1.1部、縮合剤としての1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を6.0部、カルボン酸活性化剤としてのN-ヒドロスクシンイミドの1.3部を混合して、本発明の接着剤2を調製した。
【実施例】
【0119】
(実施例3)
N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド0.574g(4.99mmol)、合成例1で得た自己集合性基含有単量体0.264g(0.502mmol)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)20.4mg(0.124mmol)の代わりに、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド0.461g(4.01mmol)、合成例1で得た自己集合性基含有単量体0.262g(0.499mmol)、N-ヘキシルアクリルアミド0.157g(1.01mmol)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)38.2mg(0.233mmol)をジメチルアセトアミド10mlとメタノール1mlの混合溶液に溶解したこと以外は実施例1と同様にして、前駆体ポリマー3を0.799g得た。この前駆体ポリマー3の0.747gをトリフルオロ酢酸40mlに溶解して、上記の条件で反応、精製を行い、有機重合体3を0.710g得た。重量平均分子量は30,500、数平均分子量は11,000であった。
【実施例】
【0120】
有機重合体3の11部を、10質量%の濃度となる様に脱イオン水と混合し、さらに硬化剤としてのヘキシルアミンを0.62部、縮合剤としての1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を3.7部、カルボン酸活性化剤としてのN-ヒドロスクシンイミドの0.83部を混合して、本発明の接着剤3を調製した。
【実施例】
【0121】
得られた接着剤1~3について、引張りせん断破壊強度測定を行った結果を表1に示す。本発明の接着剤は、高湿度下でも接着性を発揮することができ、水中接着剤としても優れるものであることが明らかになった。そして特に、有機重合体に炭化水素基を導入することにより、親水性樹脂である6-ナイロン、ポリメタクリル酸メチルに対する接着性が向上することが明らかになった。
【実施例】
【0122】
【表1】
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【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明の接着剤は、医療用接着剤(インプラント用接着剤)、湿潤及び水中での材料(コンクリートや金属)表面接着など様々な用途に有用である。
図面
【図1】
0
【図2】
1