TOP > 国内特許検索 > 磁化同軸プラズマ生成装置 > 明細書

明細書 :磁化同軸プラズマ生成装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6278414号 (P6278414)
登録日 平成30年1月26日(2018.1.26)
発行日 平成30年2月14日(2018.2.14)
発明の名称または考案の名称 磁化同軸プラズマ生成装置
国際特許分類 H05H   1/26        (2006.01)
C23C  14/32        (2006.01)
FI H05H 1/26
C23C 14/32 B
請求項の数または発明の数 7
全頁数 10
出願番号 特願2015-525201 (P2015-525201)
出願日 平成26年6月30日(2014.6.30)
国際出願番号 PCT/JP2014/067337
国際公開番号 WO2015/002131
国際公開日 平成27年1月8日(2015.1.8)
優先権出願番号 2013138533
優先日 平成25年7月2日(2013.7.2)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成29年5月26日(2017.5.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】浅井 朋彦
【氏名】関口 純一
【氏名】松本 匡史
個別代理人の代理人 【識別番号】100124257、【弁理士】、【氏名又は名称】生井 和平
審査官 【審査官】右▲高▼ 孝幸
参考文献・文献 特開昭63-91999(JP,A)
特開平5-240143(JP,A)
特開平6-151093(JP,A)
特開平9-115686(JP,A)
調査した分野 H05H 1/00
特許請求の範囲 【請求項1】
スフェロマックプラズマを生成する磁化同軸プラズマ生成装置であって、該磁化同軸プラズマ生成装置は、
外部電極と、
前記外部電極と同軸状に配置される内部電極と、
前記外部電極と内部電極との間にプラズマ生成ガスを供給するプラズマ生成ガス供給部と、
前記内部電極の内部に配置され、外部電極と内部電極との間にバイアス磁場を発生するバイアスコイルと、
前記外部電極と内部電極との間に負荷信号を印加する電源回路と、
前記バイアスコイルをパルス駆動するバイアスコイル用パルス電源と、
前記外部電極の外側に配置され、高導電率且つ低透磁率の材料からなる磁束保持部と、
スフェロマックプラズマが生成されるのに必要なバイアス磁場が外部電極と内部電極との間に与えられるのに十分な時間、且つ磁束保持部へのバイアス磁場の磁束の染み込み時間よりも短い時間でバイアスコイルをパルス駆動するようにバイアスコイル用パルス電源を制御する制御部と、
を具備することを特徴とする磁化同軸プラズマ生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁化同軸プラズマ生成装置において、前記磁束保持部は、外部電極に対して着脱可能であることを特徴とする磁化同軸プラズマ生成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の磁化同軸プラズマ生成装置において、前記磁束保持部は、外部電極と一体形成されることを特徴とする磁化同軸プラズマ生成装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の磁化同軸プラズマ生成装置であって、さらに、外部電極の外部に配置され、外部電極と内部電極との間にバイアス磁場を発生する外部バイアスコイルと、
前記外部バイアスコイルを駆動する外部バイアスコイル用電源と、
を具備することを特徴とする磁化同軸プラズマ生成装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れかに記載の磁化同軸プラズマ生成装置において、前記磁束保持部の厚さ、長さ、配置位置の何れか少なくとも1つにより、生成されるプラズマの速度、形状、温度、密度、磁束の何れか少なくとも1つを制御することを特徴とする磁化同軸プラズマ生成装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4の何れかに記載の磁化同軸プラズマ生成装置において、前記磁束保持部の厚さ、長さ、位置の何れか少なくとも1つにより、生成されるプラズマの放電開始位置を制御することを特徴とする磁化同軸プラズマ生成装置。
【請求項7】
請求項6に記載の磁化同軸プラズマ生成装置を合金薄膜生成装置に用いる場合、生成されるプラズマの放電開始位置を制御することで、内部電極のプラズマにより溶発される位置を制御することを特徴とする磁化同軸プラズマ生成装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は磁化同軸プラズマ生成装置に関し、特に、スフェロマックプラズマを生成可能な磁化同軸プラズマ生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スフェロマックプラズマを生成する装置として、磁化同軸プラズマ生成装置が知られている。磁化同軸プラズマ生成装置とは、同軸状に配置された外部電極と内部電極との間に電圧を印加し、両電極間に放電を起こさせることでプラズマを生成させるものである。この際、このプラズマにバイアス磁場を印加すると、放電電流による磁場と共に、バイアス磁場を含んだ状態で放出され、スフェロマックプラズマとなる。ここで、スフェロマックプラズマとは、自分自身に流れる電流によってポロイダルとトロイダルの両閉じ込め磁場が発生し、その磁場構造の持つ磁気ヘリシティを保存するように配位を自己組織化するものである。
【0003】
例えば、特許文献1には、外部電極と内部電極の間にコンデンサの直流放電を印加し、バイアス磁場を外部電極の外側から直流的に印加することで、スフェロマックプラズマを生成させる磁化同軸プラズマ生成装置が開示されている。また、本願発明者の1人が発明者の1人になっている特許文献2には、外部電極と内部電極との間に連続パルス信号を印加し、バイアス磁場を外部電極の外側から直流的に印加する磁化同軸プラズマ生成装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、外部電極と内部電極の間にパルス電圧を印加し、バイアス磁場を内部電極の内側から直流的に印加することで、スフェロマックプラズマを生成させる磁化同軸プラズマ生成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2006-310101号公報
【特許文献2】特開2010-050090号公報
【特許文献3】特開平6-151093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の従来技術では、何れもバイアスコイルにより発生するバイアス磁場が外部へ磁束漏れを起こし、大部分がプラズマの生成領域外に分散してしまい、磁化効率が低いという問題があった。また、例えば特許文献1や特許文献2のように外部電極の外側からバイアス磁場を印加するためにバイアスコイルを配置する例もある。しかしながら、吸着ガスの除去を行って超高真空を得るために必須である真空容器のベーキングが、バイアスコイルが外部に存在するとできないという問題があった。即ち、コイルの被覆膜等が熱の影響を受けてしまうため、一旦バイアスコイルを外した状態でベーキングするといった非効率な過程を経なければいけなかった。また、特許文献3のように内部電極の内側にバイアスコイルを配置した際には、ベーキングの問題は無くなるものの、磁束漏れの問題を解決できるものではないため、磁化効率が低いままであった。
【0007】
本発明は、斯かる実情に鑑み、磁化効率を高め、省電力化やコイルへの熱負荷を軽減可能な磁化同軸プラズマ生成装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した本発明の目的を達成するために、本発明による磁化同軸プラズマ生成装置は、外部電極と、外部電極と同軸状に配置される内部電極と、外部電極と内部電極との間にプラズマ生成ガスを供給するプラズマ生成ガス供給部と、内部電極の内部に配置され、外部電極と内部電極との間にバイアス磁場を発生するバイアスコイルと、外部電極と内部電極との間に負荷信号を印加する電源回路と、バイアスコイルをパルス駆動するバイアスコイル用パルス電源と、外部電極の外側に配置され、高導電率且つ低透磁率の材料からなる磁束保持部と、スフェロマックプラズマが生成されるのに必要なバイアス磁場が外部電極と内部電極との間に与えられるのに十分な時間、且つ磁束保持部へのバイアス磁場の磁束の染み込み時間よりも短い時間でバイアスコイルをパルス駆動するようにバイアスコイル用パルス電源を制御する制御部と、を具備するものである。
【0009】
ここで、磁束保持部は、外部電極に対して着脱可能であっても良い。
【0010】
また、磁束保持部は、外部電極と一体形成されても良い。
【0011】
さらに、外部電極の外部に配置され、外部電極と内部電極との間にバイアス磁場を発生する外部バイアスコイルと、外部バイアスコイルを駆動する外部バイアスコイル用電源と、を具備するものであっても良い。
【0012】
また、磁束保持部の厚さ、長さ、配置位置の何れか少なくとも1つにより、生成されるプラズマの速度、形状、温度、密度、磁束の何れか少なくとも1つを制御するものであっても良い。
【0013】
また、磁束保持部の厚さ、長さ、位置の何れか少なくとも1つにより、生成されるプラズマの放電開始位置を制御するものであっても良い。
【0014】
また、本発明の磁化同軸プラズマ生成装置を合金薄膜生成装置に用いる場合、生成されるプラズマの放電開始位置を制御することで、内部電極のプラズマにより溶発される位置を制御するものであっても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明の磁化同軸プラズマ生成装置には、磁化効率を高め、省電力化やコイルへの熱負荷を軽減可能であるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の磁化同軸プラズマ生成装置の構成を説明するための長手方向の概略断面図である。
【図2】図2は、本発明の磁化同軸プラズマ生成装置のバイアス磁場の磁束の空間分布のシミュレーション結果である。
【図3】図3は、本発明の磁化同軸プラズマ生成装置のバイアス磁場の軸方向の磁束密度の実測結果である。
【図4】図4は、本発明の磁化同軸プラズマ生成装置の磁束保持部の違いによるバイアス磁場の磁束の空間分布の実測結果である。
【図5】図5は、本発明の磁化同軸プラズマ生成装置から放出されたプラズマの反磁性信号の変化グラフである。
【図6】図6は、本発明の磁化同軸プラズマ生成装置の他の構成を説明するための長手方向の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図示例と共に説明する。図1は、本発明の磁化同軸プラズマ生成装置の構成を説明するための長手方向の概略断面図である。図示の通り、本発明の磁化同軸プラズマ生成装置は、外部電極1と、内部電極2と、プラズマ生成ガス供給部3と、電源回路4と、バイアスコイル5と、バイアスコイル用パルス電源6と、磁束保持部7と、制御部8とから主に構成されている。

【0018】
外部電極1は、例えば円筒形状の導体からなるものである。また、内部電極2は、外部電極1と同軸状に配置されている。そして、プラズマ生成ガス供給部3は、外部電極1と内部電極2との間にプラズマ生成ガスを供給するように構成されている。また、バイアスコイル5は、外部電極1と内部電極2との間にバイアス磁場を発生するものである。また、電源回路4は、外部電極1と内部電極2との間に負荷信号を印加するものである。なお、負荷信号とは、外部電極1と内部電極2間に印加した負荷電圧、又はそのとき流れた負荷電流を意味する。また、バイアスコイル用パルス電源6は、バイアスコイル5をパルス駆動するものである。そして、磁束保持部7は、外部電極1の外側に配置されるものである。また、制御部8は、バイアスコイル5をパルス駆動するようにバイアスコイル用パルス電源を制御するものである。以下、各部についてより詳細に説明する。

【0019】
図示例の磁化同軸プラズマ生成装置では、外部電極1と内部電極2は、一端が絶縁部材10により絶縁されながらそれらの配置位置が固定されており、他端がここからプラズマが放出されるように開放端となっている。外部電極1及び内部電極2は、磁化せず融点が高く、加工が容易なものであることが好ましい。例えば、ステンレス等で構成されれば良い。また、外部電極1とプラズマ生成ガス供給部3が一体的な構成となっており、プラズマ生成ガス供給部3から外部電極1と内部電極2との間の空間に、プラズマ生成ガス、例えばヘリウムガスやアルゴンガス等が供給される。なお、図示例ではプラズマ生成ガス供給部3が外部電極1に設けられる例を示したが、本発明はこれに限定されない。外部電極1と内部電極2の間にプラズマ生成ガスが供給可能であれば、例えば内部電極2にプラズマ生成ガス供給部が設けられても良い。また、図示のようにバイアスコイル5の中央付近にプラズマ生成ガスが供給された場合が、プラズモイドに含まれる磁束を増やすための効率が最も良くなる。この場合、図示例のように磁束保持部7の一部を貫通するようにプラズマ生成ガス供給部3が設けられれば良い。

【0020】
また、電源回路4は、外部電極1と内部電極2との間に負荷信号を印加するものである。電源回路4は、例えば直流的に負荷信号を印加するものであっても良いし、特許文献2のように連続パルス信号を印加するものであっても良い。

【0021】
本発明の磁化同軸プラズマ生成装置は、基本的な磁化同軸プラズマ生成装置の構造については図示例の構成に特に限定されるものではなく、スフェロマックプラズマを生成可能な構造である磁化同軸プラズマ生成装置であれば、如何なる構造であっても構わない。

【0022】
また、本発明の磁化同軸プラズマ生成装置のバイアスコイル5は、内部電極2の内部に配置されるものである。これにより、超高真空を得るために必須である真空容器のベーキングが、バイアスコイルの影響を受けることなく可能となる。このため、吸着ガスの除去が可能となる。バイアスコイル5は、外部電極1と内部電極2間に発生したプラズマに対して、バイアス磁場を印加するものである。これにより、プラズマが放電電流による磁場とバイアス磁場を含んだ状態で放出されるので、スフェロマックプラズマが生成されることになる。

【0023】
次に、本発明の最も特徴的な構成要素について説明していく。バイアスコイル用パルス電源6は、上述のようにバイアスコイル5をパルス駆動するものである。バイアスコイル用パルス電源6は、例えば所定の周波数のサイン波電流をバイアスコイル5に印加可能に構成されている。また、例えばトランジスタを用いて電源(コンデンサ)をインバータ制御して、矩形波の連続パルス信号をバイアスコイル5に印加するようにしても良い。

【0024】
また、磁束保持部7は、外部電極1の外側に配置されるものである。そして、磁束保持部7は、高導電率且つ低透磁率の材料からなるものである。例えば、銅や銅合金等であれば良い。磁束保持部7は、バイアスコイル5により印加されるバイアス磁場の磁束を外部に漏らさないようにするために用いられる。また、磁束保持部7は、外部電極1の外形状に合わせ形成される。例えば外部電極1が円筒形状であれば、それに合わせて外部電極1も円筒形状となる。そして、磁束保持部7は、ジャケット状、又はシェル状に、概ね外部電極1を覆うように構成されれば良い。磁束保持部7の長さについては、バイアスコイル5の長さと同等以上の長さを有していれば、バイアスコイル5から発生するバイアス磁場の磁束を効率良く閉じ込めることが可能となる。なお、磁束保持部7の厚みについては後述する。

【0025】
そして、制御部8は、スフェロマックプラズマが生成されるのに必要なバイアス磁場が外部電極1と内部電極2との間に与えられるのに十分な時間、且つ磁束保持部7へのバイアス磁場の磁束の染み込み時間よりも短い時間でバイアスコイル5をパルス駆動するようにバイアスコイル用パルス電源6を制御するものである。即ち、磁束保持部7に磁束が染み込まないような時間間隔でバイアス磁場の磁束の空間分布を制御し、外部電極1と内部電極2の間に効率良く、必要なバイアス磁場を発生させるように制御すれば良い。

【0026】
ここで、磁束保持部7の厚みについては、スフェロマックプラズマが生成されるのに必要なバイアス磁場が外部電極1と内部電極2との間に与えられるのに十分な時間だけバイアスコイル5を駆動しても、磁束保持部7に磁束が染み込んで通り抜けないような厚みを有していれば良い。磁束保持部7に磁束が長い時間加わると、磁束保持部7に染み込んで通り抜けてしまうため、バイアス磁場に必要な時間よりも長く、且つ磁束が染み込む時間と磁束保持部7の厚みとを考慮して、パルス駆動時間を設定すれば良い。

【0027】
また、磁束保持部7は、外部電極1に対して着脱可能に構成されても良い。これにより、プラズマ生成条件等に応じて磁束保持部7の厚みを変える等、より汎用性を持たせることも可能である。また、磁束保持部7を外部電極1と一体形成しても良い。即ち、外部電極1を銅等、高導電率且つ低透磁率の材料で構成すると共に、その外部電極1の厚みを、バイアス磁場に必要な時間よりも長く、且つ磁束が磁束保持部に染み込む時間よりも短い時間となるのに足りる厚みとなるように、適宜設計することも可能である。

【0028】
本発明の磁化同軸プラズマ生成装置のより具体的な設計例を挙げると、例えば外部導体の外径が92mm、内径が86mmであり、内部導体の外径が54mm、内径が48mmであり、バイアスコイルの内径が45mmで50巻のものでコイル長が約20cmである。そして、磁束保持部を銅で構成し、この内径が92mm、厚みを3mmである。バイアスコイルに対しては、バイアスコイル用パルス電源を用いて周波数1kHzのサイン波電流を流した。このような条件で、磁束保持部への磁束の染み込み時間よりも短い時間でありながら、スフェロマックプラズマが生成されるのに十分なバイアス磁場を与えることが可能となる。

【0029】
図2に、本発明の磁化同軸プラズマ生成装置のバイアス磁場の磁束の空間分布のシミュレーション結果を示す。図2(a)が磁束保持部を設けた場合であり、図2(b)が磁束保持部を設けていない従来技術の場合である。なお、シミュレーションは、磁束保持部を銅で作成した場合の結果である。図示の通り、本発明の磁化同軸プラズマ生成装置では、磁束保持部によりバイアス磁場の磁束が外部導体と内部導体の間に封じ込められていることが分かる。即ち、磁化効率が高まっていることが分かる。

【0030】
上述のように構成された本発明の磁化同軸プラズマ生成装置では、以下のようにプラズマが生成される。まず、プラズマ生成ガス供給部3からプラズマ生成ガスが供給される。外部電極1と内部電極2との間の空間に電源回路4により負荷信号を印加すると、外部電極1と内部電極2との間に放電が発生し、放電電流が流れてプラズマが生成される。そして、バイアスコイル5によるバイアス磁場が、バイアスコイル用パルス電源6、磁束保持部7、制御部8により空間分布制御され、磁束がプラズマ生成領域に分散する。生成されたプラズマは、放電電流による磁場と共に、バイアスコイル5によるバイアス磁場により、ポロイダル方向とトロイダル方向の磁場が生じ、スフェロマックプラズマとして外部電極1と内部電極2の開放端から放出される。放出されたスフェロマックプラズマは、すぐには拡散することなく、プラズマ塊の状態のまま高速で放出される。

【0031】
そして、本発明の磁化同軸プラズマ生成装置では、外部に漏れる磁束を減らすことが可能となる為、磁化効率が高まる。即ち、同じ磁束を生成するために必要な電力を軽減できるので、省電力化が図れる。さらに、磁化効率が高まることから、バイアスコイルのサイズを小さくすることが可能となる為、装置の大きさや重量を低減できる。さらに、パルス駆動するため、バイアスコイルの熱負荷も軽減可能となる。

【0032】
さて、このように構成された本発明の磁化同軸プラズマ生成装置の実測結果について説明する。図3は、本発明の磁化同軸プラズマ生成装置のバイアス磁場の軸方向の磁束密度の実測結果である。図中、横軸が時間であり、左縦軸が軸方向の磁束密度である。また、細かい点線がバイアスコイル用パルス電源の電流変化(右縦軸)を表し、実線が本発明の磁化同軸プラズマ生成装置の磁束密度変化を表す。また、比較例として磁束保持部を用いない場合の磁束密度変化を点線で示す。

【0033】
図示の通り、本発明の磁化同軸プラズマ生成装置は、バイアスコイル用パルス電源の電流に対応して軸方向の磁束密度が変動していることが分かり、そのピークの大きさも大きいことが分かる。一方、磁束保持部を用いない例では、本発明の例と比べて磁束密度が70%程度しかないことが分かる。したがって、本発明の磁化同軸プラズマ生成装置の磁束保持部が機能し、十分に磁束が保持できていることが分かる。

【0034】
さらに、本発明の磁化同軸プラズマ生成装置の磁束保持部には、以下の効果がある。磁束保持部の有無によって、外部電極と内部電極間の放電条件に違いが出る。即ち、外部電極と内部電極との間の空間に電源回路により電流を印加することで電極間に放電を発生させプラズマを生成させるが、磁束保持部の設置により、より低い印加電圧により放電を発生させることが可能となる。例えば、磁束保持部を設けない場合には、260V以上の電圧を電極間に印加しなければプラズマが生成されなかったが、磁束保持部を設けた場合には、200V以上の電圧の印加でプラズマが生成された。したがって、例えばより低い電圧でプラズマを生成させることが可能となる。

【0035】
次に、バイアス磁場の磁束の空間分布の実測結果について説明する。図4は、本発明の磁化同軸プラズマ生成装置の磁束保持部の違いによるバイアス磁場の磁束の空間分布の実測結果であり、図4(a)が磁束保持部をプラズマが放出される開放端付近まで設けた場合であり、図4(b)が磁束保持部をプラズマが放出される開放端付近までは設けていない場合である。なお、縦軸が内部電極の中心からの距離である。即ち、0が内部電極の中心である。また、横軸が軸方向の距離であり、0が軸方向の中心である。より具体的には、磁束保持部としては3mmのものを用い、図4(a)では開放端付近の磁束保持部として1mmのものを用いた。即ち、図4(a)と図4(b)の違いは、開放端付近に1mmの磁束保持部を設けたか否かである。また、図5は、本発明の磁化同軸プラズマ生成装置から放出されたプラズマの反磁性信号の変化グラフであり、図5(a)が図4(a)の磁束保持部の状態のもの、図5(b)が図4(b)の磁束保持部の状態のものである。図中、横軸が時間であり、縦軸が反磁性信号強度である。また、「Upstream」がプラズマが放出される開放端に近い位置の測定結果を表し、「Downstream」が開放端から遠い位置の測定結果を表し、「Middle」がその間の位置の測定結果を表す。

【0036】
図4から分かる通り、開放端付近の磁束保持部の有無により、磁束の空間分布に差が表れていることが分かる。即ち、3mmの磁束保持部からは外部への磁束漏れは認められない。一方、1mmの磁束保持部からは、一部が漏れ出していることが分かる。そして、図5から分かる通り、放出されたプラズマの特性に違いが表れていることが分かる。即ち、磁束保持部の厚みや位置によって、放出されたプラズマが塊となって一気に通過するように制御したり、長い塊でゆっくり通過するように制御したりすることが可能となる。このように、本発明の磁化同軸プラズマ生成装置では、生成されるプラズマの特性を積極的に制御することも可能である。具体的には、磁束保持部の厚さ、長さ、配置位置等を変えることで、生成されるプラズマの速度、形状、温度、密度、磁束等を制御することが可能となる。本発明の磁化同軸プラズマ生成装置では、磁束保持部は簡単に着脱が可能であるため、生成されるプラズマの用途に応じて磁束保持部を適宜選択するのも容易である。また、動的に磁束保持部の配置位置や長さ等を任意に変えることも可能であるため、プラズマ制御を動的に行うことも可能である。

【0037】
さらに、磁束保持部の位置等を変えることにより、生成されるプラズマの放電開始位置を制御することも可能である。放電開始位置を任意に制御することができると、以下に説明するように、合金薄膜生成装置に応用も可能である。合金薄膜生成装置の場合、内部電極を、生成すべき合金薄膜の原料となる各種金属からそれぞれ形成される複数の金属片を選択可能に組み合わせて棒状に構成する。より具体的には、例えば本願発明者と同一の発明者が含まれる特開2014-051699に開示の装置のように構成すれば良い。そして、内部導体の軸方向に垂直に、合金薄膜を生成する基板を対向させる。このとき、放電開始位置を変化させることで内部電極のプラズマにより溶発される位置を制御することで、生成すべき合金薄膜の各種金属の混合割合を制御することが可能となる。したがって、所望の合金薄膜が得られるように、磁束保持部の厚さ、長さ、配置位置等を変化させれば良い。

【0038】
また、図示例の磁化同軸プラズマ生成装置では、バイアス磁場を発生するバイアスコイルは内部電極の内部に配置されるものを示したが、本発明はこれだけに限定されるものではない。図6は、本発明の磁化同軸プラズマ生成装置の他の構成を説明するための長手方向の概略断面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は概ね同一物を表しているため、詳細な説明は省略する。なお、図示例ではプラズマ生成ガス供給部3を内部電極側に設けた例を示した。図示の通り、さらに外部電極1の外部に外部バイアスコイル15を配置し、外部電極1と内部電極2との間にバイアス磁場を発生するようにしても良い。そして、外部バイアスコイル用電源16により外部バイアスコイル15を駆動するように構成する。このとき、制御部8は、外部バイアスコイル用電源16も制御する。外部バイアスコイル用電源16は、磁束保持部7を通過して外部電極1と内部電極2の間にバイアス磁場を効率良く発生させるように制御すれば良い。即ち、磁束保持部7に磁束が染み込んで通過する時間間隔でバイアス磁場の磁束の空間分布を制御すれば良い。これにより、内部電極2の内部のバイアスコイル5と、外部電極1の外部の外部バイアスコイル15の2つを用いてバイアス磁場を発生させることが可能となり、より大きな磁束を与えることが可能となる。

【0039】
なお、本発明の磁化同軸プラズマ生成装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0040】
1 外部電極
2 内部電極
3 プラズマ生成ガス供給部
4 電源回路
5 バイアスコイル
6 バイアスコイル用パルス電源
7 磁束保持部
8 制御部
10 絶縁部材
15 外部バイアスコイル
16 外部バイアスコイル用パルス電源
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5