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明細書 :抗体のリフォールディング方法、リフォールディングされた抗体の製造方法、リフォールディングされた抗体、及びこれらの利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6453208号 (P6453208)
登録日 平成30年12月21日(2018.12.21)
発行日 平成31年1月16日(2019.1.16)
発明の名称または考案の名称 抗体のリフォールディング方法、リフォールディングされた抗体の製造方法、リフォールディングされた抗体、及びこれらの利用
国際特許分類 C07K   1/113       (2006.01)
C07K  16/00        (2006.01)
C07K  19/00        (2006.01)
C07K  17/08        (2006.01)
C12N   1/15        (2006.01)
C12N   1/19        (2006.01)
C12N   1/21        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C07K 1/113
C07K 16/00
C07K 19/00
C07K 17/08
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
C12N 15/09 ZNAZ
請求項の数または発明の数 13
全頁数 34
出願番号 特願2015-500192 (P2015-500192)
出願日 平成26年2月3日(2014.2.3)
国際出願番号 PCT/JP2014/052475
国際公開番号 WO2014/125955
国際公開日 平成26年8月21日(2014.8.21)
優先権出願番号 2013027862
優先日 平成25年2月15日(2013.2.15)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成29年1月30日(2017.1.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
発明者または考案者 【氏名】熊田 陽一
【氏名】石川 泰行
【氏名】藤原 勇佐
【氏名】岸本 通雅
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査官 【審査官】柴原 直司
参考文献・文献 国際公開第2011/102342(WO,A1)
特開2011-168505(JP,A)
Anal. Bioanal. Chem., (2010), 398, [3], p.1295-1303
調査した分野 C07K 16/00-16/46
C07K 17/00-17/14
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
(1-1)ペプチドが直接またはリンカーを介して連結されてなる不活性な抗体を変性させる工程、ここで該ペプチドは、該不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有する、及び、
(1-2)前記工程(1-1)において変性した、前記ペプチドが連結されてなる不活性な抗体を、液相に分散させる工程、ここで、該液相は、前記ペプチドが連結されてなる不活性な抗体全体の等電点よりpHが0.5~4.5高い溶液である、
を含む、液相中での抗体のリフォールディング効率を向上させる方法、
ここで、前記ペプチドは以下の(a)~(c)のいずれかに示すペプチドである、
(a)配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(b)前記(a)のアミノ酸配列において1または2のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなるペプチド、
(c)5~20個のアスパラギン酸残基からなるペプチド。
【請求項2】
抗体が1本鎖抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、単ドメイン抗体、多価性1本鎖抗体、定常部融合1本鎖抗体及び完全長抗体からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ペプチドの等電点が8.5以下である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の方法によって抗体をリフォールディングする工程、及び、前記リフォールディングされた抗体を含む液相を基材に接触させる工程を含有する、リフォールディングされた抗体の基材への固定化方法、
ここで、該抗体には、該抗体の等電点よりも低い等電点を有するペプチドが直接またはリンカーを介して連結されており、該ペプチドは以下の(a)~(c)のいずれかに示すペプチドである、
(a)配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(b)前記(a)のアミノ酸配列において1または2のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなるペプチド、
(c)5~20個のアスパラギン酸残基からなるペプチド。
【請求項5】
抗体に連結されたペプチドを介して、抗体が基材に固定される、請求項4に記載の固定化方法。
【請求項6】
前記抗体の等電点よりも低い等電点を有するペプチドが以下の(a)に示すペプチドであり、基材がポリカーボネート及びポリメタクリル酸メチルからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項4または5に記載の固定化方法、
(a)配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるペプチド。
【請求項7】
請求項4~6のいずれかに記載の固定化方法によってリフォールディングされた抗体が固定されてなる、基材。
【請求項8】
ペプチドが直接またはリンカーを介して連結されてなる不活性な抗体を含有する、液相中での抗体のリフォールディング効率を向上するための組成物、
ここで該ペプチドは、該不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有し、該ペプチドは以下の(a)~(c)のいずれかに示すペプチドであり、
(a)配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(b)前記(a)のアミノ酸配列において1または2のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなるペプチド、
(c)5~20個のアスパラギン酸残基からなるペプチド、
該液相中での抗体のリフォールディングは、次の工程を含む方法により実施される、
(2-1)前記ペプチドが直接またはリンカーを介して連結されてなる不活性な抗体を変性させる工程、及び、
(2-2)前記工程(2-1)において変性した、前記ペプチドが連結されてなる不活性な抗体を、液相に分散させる工程、ここで、該液相は、前記ペプチドが連結されてなる不活性な抗体全体の等電点よりpHが0.5~4.5高い溶液である。
【請求項9】
更に、前記ペプチドが連結されてなる不活性な抗体全体の等電点よりもpHが0.5~4.5高い溶液を含有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
抗体をコードするポリヌクレオチドと、該抗体の等電点より低い等電点を有するペプチドをコードするポリヌクレオチドとが直接またはリンカーを介して連結されてなる、ペプチド連結抗体発現ベクターの液相中での抗体のリフォールディング効率を向上するための使用であって
ここで、該ペプチドは以下の(a)~(c)のいずれかに示すペプチドであり、
(a)配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(b)前記(a)のアミノ酸配列において1または2のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなるペプチド、
(c)5~20個のアスパラギン酸残基からなるペプチド、
該液相中での抗体のリフォールディングは、次の工程を含む方法により実施される、
(3-1)前記ペプチドが直接またはリンカーを介して連結されてなる不活性な抗体を変性させる工程、及び、
(3-2)前記工程(3-1)において変性した、前記ペプチドが連結されてなる不活性な抗体を、液相に分散させる工程、ここで、該液相は、前記ペプチドが連結されてなる不活性な抗体全体の等電点よりpHが0.5~4.5高い溶液である
前記使用
【請求項11】
請求項10に記載のベクターを宿主細胞に導入して形質転換させることにより得られる形質転換体の液相中での抗体のリフォールディング効率を向上するための使用であって、
該液相中での抗体のリフォールディングは、次の工程を含む方法により実施される、
(4-1)前記ペプチドが直接またはリンカーを介して連結されてなる不活性な抗体を変性させる工程、及び、
(4-2)前記工程(4-1)において変性した、前記ペプチドが連結されてなる不活性な抗体を、液相に分散させる工程、ここで、該液相は、前記ペプチドが連結されてなる不活性な抗体全体の等電点よりpHが0.5~4.5高い溶液である、
前記使用
【請求項12】
請求項11に記載の形質転換体から得られる、ペプチドが連結されてなる抗体の液相中での抗体のリフォールディング効率を向上するための使用であって
該液相中での抗体のリフォールディングは、次の工程を含む方法により実施される、
(5-1)前記ペプチドが直接またはリンカーを介して連結されてなる不活性な抗体を変性させる工程、及び、
(5-2)前記工程(5-1)において変性した、前記ペプチドが連結されてなる不活性な抗体を、液相に分散させる工程、ここで、該液相は、前記ペプチドが連結されてなる不活性な抗体全体の等電点よりpHが0.5~4.5高い溶液である、
前記使用
【請求項13】
5~20個のアスパラギン酸残基からなるペプチドが直接またはリンカーを介して連結されてなる不活性な抗体、ここで該ペプチドは、該不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有する。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は抗体のリフォールディング方法、リフォールディングされた抗体の製造方法、リフォールディングされた抗体、及びこれらの利用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バイオ、医薬、食品をはじめとする様々な分野において抗体が広く利用されている。抗体は個々に特有の活性を有していることから、その活性に基づいて目的に応じた抗体が選択され、利用されている。また、抗体を生産する方法も種々知られており、所望の抗体を大量生産することも可能となっている。
【0003】
しかしながら、従来の生産方法では十分な活性を備えた抗体が得られるとは限らない。例えば、組換え大腸菌などを宿主として抗体を生産させた場合、その大部分が不活性な抗体として得られることも多い。所望の活性を備えた抗体を獲得するためには、得られた不活性な抗体に対して更にリフォールディング操作を行う必要がある。
【0004】
ここでリフォールディングに関して、例えば、アルギニン、還元型グルタチオン、酸化型グルタチオンを含有するリフォールディング緩衝液中に変性したタンパク質を滴下する工程を包含する、変性したタンパク質のリフォールディング方法が報告されている(特許文献1)。また、界面活性剤存在下で膜タンパク質をリフォールディングする工程を包含する方法が報告されている(特許文献2)。また、金属キレート配位子に配位結合する金属イオンを含む活性固相に結合するための固着部分を有するペプチドをキレート結合によって固相表面に吸着させたのちに、固相表面上で該ペプチドをリフォールディングできることが報告されている(特許文献3)。また、特定のペプチドを固相表面に吸着させたのちに、固相表面上で該ペプチドの立体構造を修復できることが報告されている(特許文献4、5)。
【0005】
このように、これまでに種々のリフォールディング方法が報告されているが、従来の方法ではリフォールディング効率が低い。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】国際公開第2005/033307号
【特許文献2】特表2007-537139号公報
【特許文献3】特表2008-520616号公報
【特許文献4】国際公開第2009/101807号
【特許文献5】特開2011-168505号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このことから、本発明は、所望の活性を備えた抗体をより効率良くリフォールディングできる手段を提供することを目的とする。より具体的には、所望の抗体をより効率良くリフォールディングできる、液相中での抗体のリフォールディング方法を提供することを目的とする。また、本発明は、リフォールディングされた抗体を液相中で効率良く製造するための方法、及び該方法により得られるリフォールディングされた抗体を提供することを目的とする。また、本発明は、前記方法によってリフォールディングされた抗体の基材への固定化方法、及び該方法によってリフォールディングされた抗体が固定されてなる基材を提供することを目的とする。更に、本発明は、液相中での抗体のリフォールディング用組成物、液相中での抗体のリフォールディング用助剤、液相中での抗体のリフォールディング用ペプチド発現ベクター、液相中での抗体のリフォールディング用ペプチド連結抗体発現ベクター、該ベクターを用いて得られる形質転換体、及び該形質転換体から得られるペプチドが連結されてなる抗体などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、変性された不活性な抗体のリフォールディングを、液相中で、該不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有するペプチドを用いて行うことによって、効率良くリフォールディングでき、従って、所望の抗体を効率良く獲得できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成されたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、下記に掲げる発明を提供する。
項1.(1-1)ペプチドが直接またはリンカーを介して連結されてなる不活性な抗体を変性させる工程、ここで該ペプチドは、該不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有する、及び、
(1-2)前記工程(1-1)において変性した、前記ペプチドが連結されなる不活性な抗体を、液相に分散させる工程、
を含む、液相中での抗体のリフォールディング方法。
項2.抗体が1本鎖抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、単ドメイン抗体、多価性1本鎖抗体、定常部融合1本鎖抗体及び完全長抗体からなる群より選択される少なくとも1種である、項1に記載のリフォールディング方法。
項3.前記ペプチドの等電点が8.5以下である、項1または2に記載のリフォールディング方法。
項4.前記ペプチドが、基材に対して親和性を有するペプチドである、項1~3のいずれかに記載のリフォールディング方法。
項5.前記リンカーが、基材に対して親和性を有するペプチドである、項1~4のいずれかに記載のリフォールディング方法。
項6.(2-1)ペプチドが直接またはリンカーを介して連結されてなる不活性な抗体を変性させる工程、ここで該ペプチドは、該不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有する、及び、
(2-2)前記工程(2-1)において変性した、前記ペプチドが連結されてなる不活性な抗体を、液相に分散させる工程、
を含む、リフォールディングされた抗体の製造方法。
項7.抗体が1本鎖抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、単ドメイン抗体、多価性1本鎖抗体、定常部融合1本鎖抗体及び完全長抗体からなる群より選択される少なくとも1種である、項6に記載の製造方法。
項8.前記ペプチドの等電点が8.5以下である、項6または7に記載の製造方法。
項9.前記ペプチドが、基材に対して親和性を有するペプチドである、項6~8のいずれかに記載の製造方法。
項10.前記リンカーが、基材に対して親和性を有するペプチドである、項6~9のいずれかに記載の製造方法。
項11.項6~10のいずれかに記載の製造方法によって得られる、リフォールディングされた抗体。
項12.項1、3、4、6、8及び9のいずれかに記載の、前記不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有するペプチドからなる、液相中での抗体のリフォールディング用助剤。
項13.項1~5のいずれかに記載の方法によってリフォールディングされた抗体及び/または項6~10のいずれかに記載の製造方法によって得られたリフォールディングされた抗体を、基材に接触させる工程を含有する、リフォールディングされた抗体の基材への固定化方法。
項14.抗体に連結されたペプチドを介して、抗体が基材に固定される、項13に記載の固定化方法。
項15.前記不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有するペプチドが以下の(a)または(b)に示すペプチドであり、基材がポリカーボネート及びポリメタクリル酸メチルからなる群より選択される少なくとも1種である、項13または14に記載の固定化方法、
(a)配列番号1~4のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(b)前記(a)のアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が欠失、置換及び/または付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、ポリカーボネート及びポリメタクリル酸メチルからなる群より選択される少なくとも1種に親和性を有するペプチド。
項16.項13~15のいずれかに記載の固定化方法によってリフォールディングされた抗体が固定されてなる、基材。
項17.ペプチドが直接またはリンカーを介して連結されてなる不活性な抗体を含有する、液相中での抗体のリフォールディング用組成物、ここで該ペプチドは、該不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有する。
項18.更に、前記ペプチドが直接またはリンカーを介して連結されなる不活性な抗体の等電点よりもpHが0.5以上高い溶液を含有する、項17に記載の組成物。
項19.抗体をコードするポリヌクレオチドと、該抗体の等電点より低い等電点を有するペプチドをコードするポリヌクレオチドとが直接またはリンカーを介して連結されてなる、液相中での抗体のリフォールディング用ペプチド連結抗体発現ベクター。
項20.項19に記載のベクターを宿主細胞に導入して形質転換させることにより得られる形質転換体。
項21.項20に記載の形質転換体から得られる、ペプチドが連結されてなる抗体。
項22.項1、3、4、6、8及び9のいずれかに記載の、前記不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有するペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する、液相中での抗体のリフォールディング用ペプチド発現ベクター。
項23.アスパラギン酸残基からなるペプチドが直接またはリンカーを介して連結されてなる抗体、ここで該ペプチドは、該不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有する。
項24.前記抗体が、不活性な抗体またはリフォールディングされた抗体である、項23に記載の抗体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、不活性な抗体から所望の活性を備えた抗体へと効率良くリフォールディングすることができる。このように、本発明は所望の活性を備えた抗体を効率良く獲得できることから、抗体の生産コストを低減することが可能となり、従って、本発明によれば抗体をより安価に提供することが可能となる。
【0011】
また、本発明において使用する、不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有するペプチドが基材への吸着能を備えている場合には、リフォールディングにより得られた所望の活性を備える抗体を、該ペプチドを介して、その活性が保持された状態で、より容易、高効率、高密度に、更にその配向がより均一になるよう制御して基材に固定化することができる。
【0012】
また、本発明が対象とする抗体には、前記不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有するペプチド以外にも、基材への吸着能を備えた別のペプチドを更に連結させることができる。このことから、本発明において使用する前記不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有するペプチドが基材への吸着能を備えていない場合であっても、基材への吸着能を備えた前記別のペプチドを介して、リフォールディングにより得られた所望の活性を備えた抗体を、その活性が保持された状態で、より容易、高効率、高密度に、更にその配向がより均一になるよう制御して基材に固定化することができる。
【0013】
このことから本発明によれば、所望の活性を備えた抗体を効率良く獲得できるとともに、所望の活性を備えた抗体が固定化された高精度な基材を、より簡便且つ効率良く得ることができる。このような本発明は、バイオ、医薬、食品をはじめとする様々な分野における抗体利用技術の一層の普及に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は抗CEA抗体を用いたリフォールディング結果を示す。
【図2】図2は抗CEA抗体を用いたリフォールディング結果を示す。
【図3】図3は抗RNase抗体を用いたリフォールディング結果を示す。
【図4】図4は抗RNase抗体を用いたリフォールディング結果を示す。
【図5】図5は抗CRP抗体を用いたリフォールディング結果を示す。
【図6】図6は抗CRP抗体を用いたリフォールディング結果を示す。
【図7】図7は各抗体におけるリフォールディング結果を示す(抗TSH抗体、抗IgA抗体、抗IgG抗体、抗TF189抗体)。
【図8】図8は、リフォールディングされた抗体を基材へ固定させた結果を示す(PM)。
【図9】図9は、低等電点ペプチド及び親和性ペプチドを連結させた抗体におけるリフォールディング結果を示す(PS)。
【図10】図10は、低等電点ペプチド及び親和性ペプチドを連結させた抗体におけるリフォールディング結果を示す(SiN)。
【図11】図11は、リフォールディングされた抗体を基材へ固定させた結果を示す(PM)。
【図12】図12は、リフォールディングされた抗体を基材へ固定させた結果を示す(PS)。
【図13】図13は重鎖Fab、軽鎖Fabのリフォールディング結果を示す(抗CEA抗体)。
【図14】図14は重鎖Fab、軽鎖Fabのリフォールディング結果を示す(抗RNase抗体)。
【図15】図15は重鎖Fab、軽鎖Fabのリフォールディング結果を示す(抗TF189抗体)。
【図16】図16は重鎖Fab、軽鎖Fabのリフォールディング結果を示す(抗AFP抗体)。
【図17】図17は、リフォールディングされた重鎖Fab、軽鎖Fabの活性評価の結果を示す(抗CEA抗体)。
【図18】図18は、リフォールディングされた重鎖Fab、軽鎖Fabの活性評価の結果を示す(抗RNase抗体)。
【図19】図19は、リフォールディングされた重鎖Fab、軽鎖Fabの活性評価の結果を示す(抗TF189抗体)。
【図20】図20はラクダ抗体VHHのリフォールディング結果を示す。
【図21】図21はリフォールディングされたVHHの基材へ固定及び活性評価の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について説明する。
1.液相中での抗体のリフォールディング方法
本発明の液相中での抗体のリフォールディング方法は、(1-1)ペプチドが直接またはリンカーを介して連結されてなる不活性な抗体を変性させる工程、及び、(1-2)前記工程(1-1)において変性した、前記ペプチドが連結されなる不活性な抗体を、液相に分散させる工程、を含むことを特徴とする。ここで、前記工程(1-1)において、前記ペプチドは、前記不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有することを特徴とする。

【0016】
本発明における前記工程(1-1)は、前述の通り、前記ペプチドが直接またはリンカーを介して連結されてなる不活性な抗体を変性させる工程である。

【0017】
ここで抗体は任意の抗体をいい、特に制限されないが、例えば1本鎖抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、単ドメイン抗体(ナノボディ、variable domain of heavy chain of heavy-chain antibody(VHH)など)、多価性1本鎖抗体、定常部融合1本鎖抗体、完全長抗体(インクローナルなどを含む)などが例示される。

【0018】
また、工程(1-1)に使用される前記ペプチド、すなわち、不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有するペプチドは、該不活性な抗体の等電点(pI)よりも低い等電点を有する。該ペプチドの等電点は、このように不活性な抗体の等電点より低い限り制限されないが、該ペプチドの好ましい等電点として8.5以下が例示され、より好ましくは8以下、更に好ましくは7.5以下、更に特に好ましくは7以下が例示される。

【0019】
該ペプチドとしては前述の説明を充足する限り制限されないが、好ましくは5~50のアミノ酸残基であるものが例示され、より好ましくは5~41のアミノ酸残基、更に好ましくは10~31のアミノ酸残基であるものが例示される。

【0020】
また、このような等電点及びアミノ酸残基数を有する前記ペプチドにおいて好ましくは酸性アミノ酸残基を2以上含むものが例示され、より好ましくは酸性アミノ酸残基を3~20、更に好ましくは酸性アミノ酸残基を4~15含むものが例示される。

【0021】
また、前記酸性アミノ酸残基数を充足する前記ペプチドにおいて好ましくは酸性アミノ酸残基数が塩基性アミノ酸残基数より多いものが例示され、より好ましくは1以上多いもの、更に好ましくは酸性アミノ酸残基数が塩基性アミノ酸残基数より2~25、特に好ましくは酸性アミノ酸を4~20多いものが例示される。

【0022】
ここで、酸性アミノ酸とはアスパラギン酸、グルタミン酸を指し、塩基性アミノ酸とはリシン、アルギニン、ヒスチジンを指す。

【0023】
このようなペプチドとして好ましくは「不活性な抗体」の等電点よりも「該不活性な抗体と前記ペプチドとが直接連結されてなるもの」全体としての等電点を0.3以上低くできるものであり、より好ましくは等電点を0.3~5程度低くできるものであり、更に好ましくは0.3~4程度低くできるものが例示される。また、このようなペプチドとしてより好ましくは「不活性な抗体」の等電点よりも「該不活性な抗体と前記ペプチドとがリンカーを介して連結されてなるもの」全体としての等電点を0.3以上低くできるものであり、より好ましくは等電点を0.3~5程度低くできるものであり、更に好ましくは0.3~4程度低くできるものが例示される。

【0024】
また、抗体の等電点にもよるが、ペプチドとして好ましくは、前記不活性な抗体と前記ペプチドとが直接またはリンカーを介して連結されてなるものの全体としての等電点を3.5~7.5程度にできるものが挙げられ、より好ましくは全体としての等電点を3.5~7程度にできるものが挙げられ、更に好ましくは全体としての等電点を4~6.5程度にできるものが挙げられる。

【0025】
本発明において使用される、不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有するペプチドは、これが連結される不活性な抗体の等電点を考慮して選択される。使用する該不活性な抗体と該ペプチドとは、当業者であれば容易に選択できる。なお、本発明において等電点は、市販のソフトウェアGenetyx ver6(株式会社ゼネティックス製)を用いて算出される値であり、Genetyx ver6の手順に従いアミノ酸配列を入力することによって、そのアミノ酸残基の配列に基づいてプログラムに従い等電点が算出される。例えば、本発明において算出される抗体の等電点は、抗体のアミノ酸配列が同一であれば、その活性、不活性に関わらず、同じ値が算出される。すなわち、本発明において「不活性な抗体」の等電点と「抗体」の等電点は同じである。

【0026】
該ペプチドは、前述のように不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有する限り制限されないが、一例として、アスパラギン酸及び/またはグルタミン酸からなるペプチド、アスパラギン酸及び/またはグルタミン酸の残基数が塩基性アミノ酸の残基数より多いペプチド、配列番号1~4のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号1~4のいずれかで表されるアミノ酸配列を2以上有するペプチド、これらのペプチドのアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が欠失、置換及び/または付加されたアミノ酸配列からなるペプチドが挙げられる。

【0027】
なお、本発明においてペプチドとは、アミノ酸残基の数によってはオリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質と称されるものも含む。また、前記ペプチドにおいて、「1または複数」の範囲は本発明の効果を奏する限り制限されないが、例えば1~15個、好ましくは1~10個、より好ましくは1~5個、さらに好ましくは1~4個、特に好ましくは1~3個、さらに特に好ましくは1または2個が挙げられる。

【0028】
特定のアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸を欠失、置換及び/または付加させる技術は公知である。このように欠失、置換及び/または付加されたペプチドとして、例えば、アスパラギン酸及び/またはグルタミン酸からなるペプチド、アスパラギン酸及び/またはグルタミン酸の残基数が塩基性アミノ酸の残基数より多いペプチド、配列番号1~4のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチド、または、配列番号1~4のいずれかで表されるアミノ酸配列を2以上有するペプチドの有するアミノ酸配列に対して50%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つ、本発明の効果を奏するペプチドが例示される。また、該ぺプチドとして、アミノ酸の同一性は通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上、更に特に好ましくは98%以上である。

【0029】
該ペプチドは前述の特徴を備える限り制限されないが、リフォールディングされた抗体を何らかの基材に固定させる場合、該抗体を基材により簡便に固定する観点から、前述の、不活性な抗体に直接またはリンカーを介して連結されてなる、該不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有するペプチド(以下、低等電点ペプチドと称する場合がある)は、更に基材に対して親和性を備えているものが好ましい。例えば、本発明を制限するものではないが、前記配列番号1~4のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチドはポリカーボネート及び/またはポリメタクリル酸メチルに親和性を有しており、従って、基材に対して親和性を備えている低等電点ペプチドとしては配列番号1~4のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号1~4のいずれかで表されるアミノ酸配列を2以上有するペプチド、これらのペプチドのアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が欠失、置換及び/または付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、ペプチドはポリカーボネート及び/またはポリメタクリル酸メチルに親和性を有するペプチドが例示される。1または複数のアミノ酸が欠失、置換及び/または付加については前述と同様に、親和性、基材、これらの結合条件については後述と同様に説明される。

【0030】
本発明において前記ペプチドが直接またはリンカーを介して連結されてなる不活性な抗体は、前記ペプチドと不活性な抗体とが直接またはリンカーを介して連結されている限り制限されず、連結部位も制限されない。例えば、不活性な抗体は、1種の前記ペプチド1つまたは複数個に、直接またはリンカーを介して連結されていてもよく、複数種の前記ペプチドに直接またはリンカーを介して連結されていてもよい。

【0031】
これらの連結部位は、本発明の効果が得られる限り制限されないが、リフォールディングされた抗体において所望の活性の発揮を妨げない部位が例示される。抗体の所望の活性になるべく悪影響を与えないようにする点から、抗体の可変部以外に該ペプチドを連結させることが好ましく、抗体の可変部よりもC末端側及び/またはN末端側がより好ましく、抗体の可変部よりもC末端側が更に好ましい。

【0032】
また、使用可能なリンカーとしても本発明の効果が得られる限り制限されず、従来公知の技術を用いて当業者が通常の検討範囲内で適宜決定すればよい。このようなリンカーとして、一般にフレキシブルリンカーと称されるリンカーが例示され、広く用いられているフレキシブルリンカーのアミノ酸配列としては(G4S)n(例えばn=1~4)が例示される。

【0033】
また、前記ペプチドが基材に対して親和性を備えているか否かにかかわらず、前述のようにリフォールディングされた抗体を基材により簡便に固定する観点から、リンカーとして、基材に親和性を備えているペプチド(以下、親和性ペプチドと称する場合がある)を用いてもよい。

【0034】
このような親和性ペプチドとしては、本発明の効果が制限されず、また、基材に親和性を有している限り制限されないが、一例として配列番号5~52のいずれかで示されるアミノ酸配列を含有するペプチド、ヒスチジンからなるペプチド、TATペプチドなどが挙げられる。

【0035】
例えば、配列番号5~8で表されるペプチドは、ポリカーボネート及び/またはポリメタクリル酸メチルに親和性を有しており、配列番号9~28で表されるペプチドは親水性ポリスチレンなどの親水性の樹脂に親和性を有しており、配列番号29~52で表されるペプチドは窒化ケイ素に親和性を有しており、ヒスチジンからなるペプチドはニッケル、亜鉛、銅、コバルト、鉄などの二価の金属をはじめとする金属に親和性を有しており、TATペプチドは細胞膜等に代表されるリン脂質二重膜に親和性を有している。このことから、これらのペプチドはそれぞれポリカーボネート及び/またはポリメタクリル酸メチル製の基材、親水性の樹脂製の基材、窒化ケイ素製の基材、金属製の基材、またはリン脂質二重膜が付されてなる基材に親和性を有している。基材の詳細は後述のように説明される。

【0036】
また、このほか親和性ペプチドとしては、配列番号5~52のいずれかで表されるアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が欠失、置換及び/または付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、前記所定の基材に親和性を有するペプチドが例示される。これらのアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が欠失、置換及び/または付加についても、前述と同様に説明され、基材への親和性を有する範囲であれば制限されない。また、これらにおいて前記低等電点ペプチドに該当するペプチドは、前述する基材に親和性を有する低等電点ペプチドとして好ましく用いられる。

【0037】
また、親和性ペプチドは、不活性な抗体と低等電点ペプチドとの間以外の部分に連結されてもよい。また、該親和性ペプチドは、前記フレキシブルリンカーなど他の任意のリンカーと更に連結されていてもよい。

【0038】
また、本発明において前記低等電点ペプチドと不活性な抗体との間には、更には、低等電点ペプチド、親和性ペプチド、不活性な抗体の間には、必要に応じて低等電点ペプチド、親和性ペプチド及び/または抗体とを切断できるように切断部位が連結されていてもよい。切断方法も制限されず、従来公知の技術を用いて当業者が通常の検討範囲内で適宜決定すればよい。例えば、このような切断については、従来公知の制限酵素による切断が例示され、この場合、制限酵素による切断可能な部位を必要に応じて連結させておけばよく、不活性な抗体をリフォールディングさせた後に従来公知の制限酵素で切断可能なようにしておくことが例示される。

【0039】
本発明において低等電点ペプチドと不活性な抗体が連結される一例として、更に親和性ペプチドが連結される一例として、これらに制限されないが、不活性な抗体-低等電点ペプチド、不活性な抗体-親和性ペプチド-低等電点ペプチド、不活性な抗体-低等電点ペプチド-親和性ペプチド、不活性な抗体-親和性ペプチド-低等電点ペプチド-親和性ペプチド、親和性ペプチド-不活性な抗体-低等電点ペプチドなどが挙げられる。

【0040】
また、例えば、低等電点ペプチドが基材への親和性を備えている場合には、該低等電点ペプチドを介して、リフォールディングされた抗体を基材に容易に固定させることができる。また、低等電点ペプチドが基材への親和性を備えてない場合には、例えば前述の親和性ペプチドを連結させることによって、該親和性ペプチドを介して、リフォールディングされた抗体を基材に容易に固定させることができる。また、例えば不活性な抗体-親和性ペプチド-低等電点ペプチドのような構造を有する場合には、抗体をリフォールディングさせた後に低等電点ペプチドを切断して、残った親和性ペプチドを介して、リフォールディングされた抗体を基材に容易に固定させることもできる。

【0041】
なお、本発明において親和性を有するとは、ペプチドが基材に直接結合できるかどうかに基づき判断すればよく、直接結合すれば親和性を有するといえる。また、ペプチドによって親和性が異なることから、親和性を有するペプチドを介して抗体を基材に固定させる場合には、親和性を有するペプチドと基材とを適宜選択することによって一層容易に抗体を基材に固定できる。

【0042】
親和性ペプチドとしては前述のものが例示でき、これらに適する基材としてはそれぞれ前述のポリメタクリル酸メチル製の基材、ポリカーボネート製の基材、親水性の樹脂製の基材、窒化ケイ素製の基材などが例示される。

【0043】
基材としてより具体的に、例えば「ポリメタクリル酸メチル製の基材」とは、表面が修飾されていないポリメタクリル酸メチルを基材表面の一部及び/または全面に有し、且つ、そのポリメタクリル酸メチル表面に前記ポリメタクリル酸メチルに対して親和性を有するペプチドが結合できる限り制限されない。例えば、ポリメタクリル酸メチル製の基材とは、ポリメタクリル酸メチルからなる基材、他の成分で構成されたものの一部または全面にポリメタクリル酸メチルが積層及び/または被覆されてなる基材などが挙げられる。また、例えば「親水性の樹脂製の基材」とは、表面が修飾されていない親水性の樹脂を基材表面の一部及び/または全面に有し、且つ、その親水性の樹脂表面に前記親水性の樹脂に対して親和性を有するペプチドが結合できる限り制限されない。例えば、親水性の樹脂製の基材とは、親水性の樹脂からなる基材、他の成分で構成されたものの一部または全面に親水性の樹脂が積層及び/または被覆されてなる基材など親水性の樹脂表面を有する基材が挙げられる。親水性の樹脂としては、親水性の、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリジメチルシロキサンといった樹脂が例示される。通常、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンなどは疎水性であるが、基材表面にこれらの樹脂が使用される場合には、その表面を親水化処理して親水性としたものを指す。親水化処理は化学処理、電子線照射処理、オゾン酸化処理、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理など、従来公知の方法によって適宜行えばよい。また、例えば「窒化ケイ素基材」とは、表面が修飾されていない窒化ケイ素を基材表面の一部及び/または全面に有し、且つ、前記窒化ケイ素親和性ペプチドが窒化ケイ素表面に結合できる限り制限されない。例えば、窒化ケイ素基材とは、窒化ケイ素からなる基材、他の成分で構成されたものの一部または全面に窒化ケイ素が積層及び/または被覆されてなる基材などが挙げられる。また、前述の「ポリカーボネート製の基材」、「金属製の基材」、「リン脂質二重膜を有する基材」もこれらと同様に説明でき、当業者であればこれらの基材を容易に取得することができる。

【0044】
不活性な抗体、低等電点ペプチド、親和性ペプチドなどは、従来公知の遺伝子工学的手法や化学合成法などによって作製できる。例えば、不活性な抗体やこれらのペプチドは、抗体及び/または前記ペプチドの産生能を有する微生物から単離・精製することによって取得してもよい。また、前記ペプチドは、前記ペプチドのアミノ酸配列またはこれをコードするヌクレオチド配列の情報に従って、従来公知の化学合成法により合成して取得してもよい。化学合成法には、液相法や固相法によるペプチド合成法が包含される。取得したペプチドが基材への親和性を有するかどうかについては、取得したペプチドが基材に直接結合できるかどうかに基づき判断すればよく、直接結合すれば親和性を有するといえる。結合条件は、使用するペプチドの種類や基材に応じて、あるいは、基材に固定化させたい抗体等に応じて適宜決定すればよく、例えはPBSといった任意の緩衝液中でペプチドを基材と接触させることにより、取得したペプチドが基材に直接結合できるかどうか判断すればよい。低等電点ペプチドが連結されてなる不活性な抗体、あるいは、更に親和性ペプチドが連結されてなる不活性な抗体は例えば架橋剤などを利用して作製でき、また、例えば後述する発現ベクターを用いて作製でき、低等電点ペプチドをコードするポリヌクレオチド、抗体をコードするポリヌクレオチド、更に必要に応じて親和性ペプチドをコードするポリヌクレオチドをベクター等に挿入し、次いで、該ベクターが組み込まれた形質転換体を培養したのち、所望のペプチドを取得すればよい。

【0045】
本発明において使用される前記「ペプチドが直接またはリンカーを介して連結されてなる不活性な抗体」の全体としての等電点は、使用する抗体の等電点にもよって異なり、本発明の効果が得られる限り制限されないが、例えば、全体としての等電点は好ましくは3.5~7.5、より好ましくは3.5~7程度、更に好ましくは4~6.5程度が例示される。

【0046】
本発明の前記工程(1-1)は、前記ペプチドが直接またはリンカーを介して連結されてなる不活性な抗体を変性させる工程である。ここで変性とは前述の不活性な抗体を可溶化させることであり、例えば、不活性な抗体に対して変性剤、還元剤などをはじめとするカオトロピック剤や界面活性剤といったタンパク質変性能を有する薬剤を作用させることにより、不活性な抗体を変性させて可溶化することが例示される。より具体的な薬剤の例として、尿素(例えば8M)、塩酸グアニジン(例えば6M)、SDS(sodium lauryl sulfate、例えば1%)、チオシアン酸ナトリウム(例えば4M)、チオシアン酸カリウム(例えば4M)、β-メルカプトエタノール、ジチオトレイトールなどが挙げられ、より具体的な変性の例として、前述のペプチドが連結されてなる不活性な抗体に前記薬剤を作用させることにより実施できる。このような不活性な抗体の変性は本発明の分野においてよく知られており、当業者であれば従来公知の技術を用いて当業者が通常の検討範囲内でタンパク質変性能を有する薬剤の種類、その濃度、変性時間等を適宜決定すればよい。

【0047】
本発明において不活性な抗体としては、抗体が持つ特有の活性が十分に発揮されない抗体をいう。例えば、組換え大腸菌などを宿主として抗体を生産させた場合、その抗体の大部分が不溶で不活性な凝集体(封入体(inclusion body))として回収されることがあり、この凝集体(封入体)の状態にある抗体が例示される。

【0048】
前記工程(1-2)は、前記工程(1-1)において変性した、前記ペプチドが連結されなる不活性な抗体を、液相に分散させることによって、所望の活性を有する抗体へとリフォールディングする工程である。より具体的には、前記工程(1-2)は、前記ペプチドが連結されなる不活性な抗体を、基材などの固相に固定されていない状態で液相に分散させることによって、所望の活性を有する抗体へとリフォールディングする工程である。固相とは特に制限されないが、前述するようなポリカーボネート及び/またはポリメタクリル酸メチル製の基材、親水性の樹脂製の基材、窒化ケイ素製の基材、金属製の基材、リン脂質二重膜が付されてなる基材、ゲルなどが例示される。液相へ分散させる例としては、変性した、前記ペプチドが連結されなる不活性な抗体の、希釈による液相への分散、透析による液相への分散、ゲルクロマトグラフィーを用いた液相への分散などが挙げられ、変性した、前記ペプチドが直接またはリンカーを介して連結されてなる不活性な抗体が更に液相に分散される限り制限されない。

【0049】
このような分散は、前述の変性した、ペプチドが連結されなる不活性な抗体がリフォールディングされる限り制限されないが、例えば、前記工程(1-2)において液相に分散される直前の前記ペプチドが連結されなる不活性な抗体が接触している前記薬剤濃度が例えば1/10~1/100などへと低減されるように、前記変性したペプチドが連結されなる不活性な抗体を液相に分散されることが例示される。液相に分散される温度、時間も当業者であれば適宜設定でき、例えば後述する実施例に従い実施できる。

【0050】
液相へ分散させるにあたって使用可能な溶液は、前述の変性した、ペプチドが連結されなる不活性な抗体を液相に分散させることが可能であって、該不活性な抗体のリフォールディングが可能な溶液であれば制限されない。このような溶液として、後述の実施例に記載されるような緩衝液といった溶液が例示され、必要に応じて、溶液のイオン強度、組成等を適宜設定すればよい。例えばこのような溶液として、前記ペプチドが直接またはリンカーを介して連結されてなる不活性な抗体全体の等電点よりpHが0.5以上高い溶液が例示され、好ましくは前記等電点よりpHが0.5~4.5高い溶液が例示され、より好ましくは前記等電点よりpHが1~4高い溶液が例示され、更に好ましくは前記等電点よりpHが1.5~4高い溶液が例示される。また、本発明の効果が得られる限り制限されないが、抗体をこのような液相へ分散させるにあたって使用可能な溶液のイオン強度は、好ましくはNaCl濃度0~500mMが例示され、イオン強度が低い場合であっても高効率でのリフォールディングが可能である点から、より好ましくはNaCl濃度0~300mMが例示され、更に好ましくはNaCl濃度0~150mMが例示される。

【0051】
この観点から、本発明は、抗体のリフォールディング用組成物を提供するともいえ、該組成物は、前記ペプチドが直接またはリンカーを介して連結されてなる不活性な抗体を含有し、より好ましくは、前述のようにして変性した、前記ペプチドが連結されてなる不活性な抗体を含有する。また、該組成物は、更に必要に応じて、前記ペプチドが連結されてなる不活性な抗体のリフォールディングが可能な溶液を含有し、好ましくは前記ペプチドが直接またはリンカーを介して連結されてなる不活性な抗体全体の等電点よりpHが0.5以上高い溶液を含有し、より好ましくは前記等電点よりpHが0.5~4.5高い溶液を含有し、更に好ましくは前記等電点よりpHが1~4高い溶液を含有し、特に好ましくは前記等電点よりpHが1.5~4高い溶液を含有してもよい。該組成物を用いることによって不活性な抗体をより簡便にリフォールディングでき、該組成物中でリフォールディングが進む観点からは、該組成物にリフォールディングされた抗体が含有されている場合もある。

【0052】
本発明においてリフォールディングとは本発明の分野で通常使用されている意味であり、抗体が、凝集体すなわち封入体といった不活性な状態から、非凝集体(非封入体)であり且つその抗体特有の活性を発揮できる状態になることをいう。このような非凝集体(非封入体)の状態にある抗体が前記液相に存在していれば、不活性な抗体がリフォールディングされたということができる。あるいは、このような所望の活性を備える抗体が前記液相に存在していれば、不活性な抗体がリフォールディングされたということができる。

【0053】
また、本発明は効率よくリフォールディングを行うことができるものであり、リフォールディング効率は、前記液相において、凝集体(封入体)の状態にある抗体の量と、非凝集体(非封入体)の状態にある抗体の量とを比較することによって判断され、非凝集体(非封入体)の状態にある抗体の量が多いほど、リフォールディング効率が高いと判断する。後述する実施例に基づけば、得られた液相の吸光度を測定したり、遠心前の液相中の抗体濃度と遠心後に得られた上清中の抗体濃度とを比較することにより判断でき、前者では吸光度が低いほど、後者では遠心前の液相中の抗体濃度に対して遠心後に得られた上清中の抗体濃度が高いほど、リフォールディング効率が高いと判断する。より具体的には、例えば、後述する透析を用いた実施例に基づけば、リフォールディング後に得られる抗体を含有する溶液の吸光度を測定したり、リフォールディング後に得られる抗体を含有する溶液において、遠心前の溶液中の抗体濃度と遠心後に得られた上清中の抗体濃度とを比較することにより判断でき、前者では吸光度が低いほど、後者では遠心前の液相中の抗体濃度に対して遠心後に得られた上清中の抗体濃度が高いほど、リフォールディング効率が高いと判断する。また、例えば、後述するゲルクロマトグラフィを用いた実施例に基づけば、カラムに負荷する直前の溶液中の抗体濃度(あるいは重量)と、カラムから溶出させた抗体濃度(あるいは重量)とを比較して、前者に対する後者の割合が高いほど、抗体が効率よくリフォールディングされたといえる。

【0054】
このように、本発明において「液相中での抗体のリフォールディング」とは、前記工程(1-1)において変性された、前記ペプチドが連結されてなる不活性な抗体が、前記工程(1-2)において、基材などの固相に固定されていない状態で、所望の活性を有する抗体へとリフォールディングされることをいう。該方法によれば、不活性な抗体のリフォールディング効率を向上させることができ、従って、所望の活性を備えた抗体を高効率で獲得することができる。このことから、該方法はまた、不活性な抗体のリフォールディング効率を高める方法ともいえる。

【0055】
また、ここで使用される不活性な抗体が親和性を有するペプチドに連結されている場合には、後述の固定化方法に記載されるように、抗体のリフォールディング後、該親和性を有するペプチドを介して、所望の抗体を基材により簡便、高精度且つ高効率で固定化させることができ、これは、所望の抗体がより高精度且つ高効率で固定されてなる基材の提供に寄与する。

【0056】
また、このように不活性な抗体に前記低等電点ペプチドを連結させることによって不活性な抗体を効率良くリフォールディングできることから、該低等電点ペプチドは、液相中での抗体のリフォールディング助剤ということができる。このことから、本発明は抗体の等電点よりも低い等電点を有するペプチドからなる、液相中での抗体のリフォールディング助剤を提供する。該助剤は、抗体のリフォールディング効率を向上させるために使用される。該助剤、すなわち、低等電点ペプチドは前述と同様にして説明される。

【0057】
また、このように不活性な抗体に前記低等電点ペプチドを連結させることによって不活性な抗体を効率良くリフォールディングできることから、本発明は、前記低等電点ペプチドが直接またはリンカーを介して連結されてなる不活性な抗体やリフォールディングされた抗体を提供するものともいえる。これらの低等電点ペプチド、抗体等についても前述と同様にして説明される。

【0058】
2.リフォールディングされた抗体の製造方法
本発明のリフォールディングされた抗体の製造方法は、(2-1)ペプチドが直接またはリンカーを介して連結されてなる不活性な抗体を変性させる工程、及び、(2-2)前記工程(2-1)において変性した、前記ペプチドが連結されてなる不活性な抗体を、液相に分散させる工程、を含むことを特徴とする。ここで、前記工程(2-1)において、前記ペプチドは、前記不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有することを特徴とする。

【0059】
ここで、不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有するペプチド、抗体、不活性な抗体、ペプチドが直接またはリンカーを介して連結されてなる不活性な抗体、リンカー、変性、液相、分散、変性や分散の条件、抗体のリフォールディング等は、前述と同様にして説明される。また、リンカーとして親和性ペプチドを用いる場合、その基材等についても前述と同様に説明される。

【0060】
該製造方法によればリフォールディングされた抗体が製造され、特に、リフォールディングされた抗体を効率良く製造できる。

【0061】
該製造方法において得られる前記ペプチドが直接またはリンカーを介して連結されてなる抗体においては、必要に応じて、不要なペプチドを切断することも可能であり、この場合、例えば前述する切断部位をあらかじめ連結させておき、リフォールディング後に制限酵素等を用いて不要なペプチドを切断させればよい。

【0062】
このような本発明の製造方法によれば、前記ペプチドが連結されてなる抗体を効率良く獲得することができる。このことから、本発明の製造方法は、リフォールディングされた抗体の製造効率を高める方法ともいえる。また、このようにして得られたリフォールディングされた抗体が基材に対して親和性を有するペプチドと連結されている場合には、必要に応じて該親和性を有するペプチドを介して、得られた抗体を基材により容易、高精度且つ高効率で固定でき、従って、本発明は、種々の分析等においてより高精度な基材の提供に寄与する。

【0063】
3.リフォールディングされた抗体の基材への固定化方法、及び該固定化方法によってリフォールディングされた抗体が固定されてなる基材
本発明のリフォールディングされた抗体の基材への固定化方法は、前述の液相中での抗体のリフォールディング方法によってリフォールディングされた抗体及び/または前述のリフォールディングされた抗体の製造方法によって得られたリフォールディングされた抗体を、基材に接触させる工程を含有することを特徴とする。

【0064】
ここで、液相中での抗体のリフォールディング方法、リフォールディングされた抗体の製造方法、及びリフォールディングされた抗体は前述の通りである。

【0065】
本発明のリフォールディングされた抗体の基材への固定化方法は、前述のようにして得られたリフォールディングされた抗体を、基材に接触させる工程を含有し、これによってリフォールディングされた抗体が基材に固定される。本発明の固定化方法は前述のリフォールディングされた抗体が基材に固定される限り制限されないが、抗体をより簡便に固定できる観点から、好ましくは前述の抗体に連結されてなる低等電点ペプチド及び/または親和性ペプチドを介して、該ペプチドが連結されたままリフォールディングされた抗体が基材に固定化され、より好ましくは前述の抗体に連結されてなる基材への親和性を有するペプチドを介して、該ペプチドが連結されたまま前述のリフォールディングされた抗体が固定化される。抗体を一層簡便に固定できる観点から、抗体を、基材に接触させる前に、抗体に連結されてなる低等電点ペプチド及び/または親和性ペプチドのうち固定に不要なペプチドを、前述するような制限酵素等を用いて切断しておくことが好ましい。この具体的な例としては、前述の低等電点ペプチド自体が基材への親和性を有しているのであれば、低等電点ペプチド介してリフォールディングされた抗体を基材へ固定すればよい。また、低等電点ペプチド自体が基材への親和性を有していないのであれば、例えば、抗体-親和性ぺプチド-低等電点ペプチドのように連結されたリフォールディングされた抗体を獲得した後、抗体-親和性ぺプチドと低等電点ペプチドとを切断して、前者を基材に接触させることによって、親和性ぺプチドを介してリフォールディングされた抗体を基材へ固定すればよい。

【0066】
ここで「親和性を有する」とは前述と同様に説明され、ペプチドが基材に直接結合できるかどうかに基づき判断すればよく、直接結合すれば親和性を有するといえる。また、ペプチドによって親和性が異なることから、親和性を有するペプチドを介して抗体を基材に固定させる場合には、親和性を有するペプチドと基材とを適宜選択することによって一層容易に抗体を基材に固定できる。親和性を有するペプチドとしては前述のものが例示でき、これらに適する基材としてはポリメタクリル酸メチル製の基材、ポリカーボネート製の基材、親水性の樹脂製の基材、窒化ケイ素製の基材など前述の基材が例示される。これらの基材も前述と同様に説明される。また、基材の形状も、前記ペプチドを結合できる限り制限されず、例えば、板状、フィルム状(シート状)、球状、粒状(ビーズ状)、繊維状、マイクロプレート状、筒状など任意の形状が挙げられる。本発明の基材をプロテインチップなどのバイオチップとして使用する場合には、窒化ケイ素基材は板状、フィルム状(シート状)等の形状が好ましく例示される。

【0067】
また、接触条件も前述と同様に説明され、一例として、後述の実施例に示される接触条件を採用してもよく、該実施例に示される条件を参考にして、当業者が適宜決定すればよい。例えば、前記親和性を有するペプチドが連結されてなる抗体を含有する緩衝液といった任意の溶液、例えばPBS溶液等を、基材と一定時間接触させることによって、前記ペプチドと基材とを結合させることができ、また、後述の実施例を参考にして、必要に応じて溶液を希釈したりpH等を変更して基材と結合させることができる。

【0068】
本発明の固定化方法によれば、効率良く回収されたリフォールディングされた抗体を簡便に基材に固定できることから、リフォールディングされた抗体が固定化された基材を効率良く獲得することができる。また、リフォールディングされた抗体が基材に親和性を有するペプチドと連結されている場合には、該ペプチドを介して、活性が保持された状態で抗体を基材により簡便且つ高密度に固定することができ、更に、抗体の配向がより均一になるよう制御して固定することができる。このことから、本発明は所望の抗体をより簡便、高精度且つ高効率で固定化させることができる。また、本発明の固定化方法によれば、リフォールディングされた所望の抗体がより高精度且つ高効率で固定されてなる基材を容易に製造できることから、本発明はプロテインチップ等のバイオチップをはじめ、抗原抗体反応や酵素反応等を利用するカラムの充填剤、ELISA法などにおけるマイクロプレートなどの製造も容易にする。このことから、本発明の固定化方法や基材は、臨床検査、創薬研究、環境モニタリング、生化学などのあらゆる分野において有用である。

【0069】
4.発現ベクター、形質転換体、及び該形質転換体から得られるペプチドが連結されてなる抗体
本発明の液相中での抗体のリフォールディング用ペプチド連結抗体発現ベクターは、抗体をコードするポリヌクレオチドと、該抗体の等電点より低い等電点を有するペプチドをコードするポリヌクレオチドとが直接またはリンカーを介して連結されてなることを特徴とする。

【0070】
該ペプチド連結抗体発現ベクターは、後述するポリヌクレオチドを含んでおり、且つ、その宿主細胞において該ポリヌクレオチドの塩基配列に基づきペプチド連結抗体を発現できるものであれば特に制限されない。該ペプチド連結抗体発現ベクターは、このベクターを用いて発現される、前記ペプチドが直接またはリンカーを介して連結されてなる抗体の液相中でのリフォールディングを効率良く行うことを目的として用いられる。ここで、液相、抗体、リフォールディング、抗体、抗体の等電点より低い等電点を有するペプチド、リンカー等については前述と同様にして説明される。ポリヌクレオチドは以下のようにして説明される。

【0071】
本発明において使用される、抗体の等電点より低い等電点を有するペプチドをコードするポリヌクレオチドは、発現されたペプチドの等電点が、該ペプチドに直接またはリンカーを介して連結される抗体の等電点より低いものであれば制限されず、前述の「1.液相中での抗体のリフォールディング方法」において説明される低等電点ペプチドをコードするポリヌクレオチドが例示される。該低等電点ペプチドをコードするポリヌクレオチドであれば制限されないが、一例として、アスパラギン酸及び/またはグルタミン酸からなるペプチドをコードするポリヌクレオチド、アスパラギン酸及び/またはグルタミン酸の残基数が塩基性アミノ酸残基数より多いペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号1~4のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチドをコードするポリヌクレオチド、例えば配列番号53~56のいずれかで表される塩基配列を有するポリヌクレオチド、また、これらのポリヌクレオチドの塩基配列を2以上有するポリヌクレオチドなどが挙げられる。また、これらのいずれかのポリヌクレオチドの相補鎖に対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドなどが例示される。

【0072】
ここで、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズ」するとは、標準的なハイブリダイゼーション条件下に、2つのポリヌクレオチド断片が互いにハイブリダイズできることを意味し、本条件は、Sambrook et al., Molecular Cloning : A laboratory manual (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, USAに記載されている。より具体的には、「ストリンジェントな条件」とは、6.0xSSC中で、約45℃にてハイブリダイゼーションを行い、そして2.0xSSCによって50℃にて洗浄することを意味する。前記相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドは、通常、前述のヌクレオチド配列と一定以上の同一性を有し、その同一性は、例えば70%以上が例示され、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、さらに特に好ましくは99%以上である。ヌクレオチド配列の同一性は、市販のまたはインターネット等の電気通信回線を通じて利用可能な解析ツールを用いて知ることができ、例えば、FASTA、BLAST、PSI-BLAST、SSEARCH等のソフトウェアを用いて計算できる。

【0073】
これらのポリヌクレオチドは、従来公知の遺伝子工学的手法や化学合成法などを用いて作製できる(Proc. Natl. Acad. Sci., USA., 78, 6613 (1981);Science, 222, 778 (1983);Molecular Cloning 2d Ed, Cold Spring Harbor Lab. Press(1989);続生化学実験講座「遺伝子研究法I、II、III」、日本生化学会編(1986)等参照)。例えば、所望のポリヌクレオチドを有する微生物をはじめ適当な起源から定法に従ってcDNAライブラリーを作製し、該ライブラリーから、適切なプローブ等を用いて、所望のポリヌクレオチドを取得すればよい。また、当業者であれば前記ペプチドのアミノ酸配列に基づいて、従来公知の手法に基づき容易に解析、入手すればよい。配列番号53~56のいずれかで表されるポリヌクレオチドがコードするアミノ酸配列は、それぞれ前記配列番号1~4で表されるアミノ酸配列に相当し、例えば、配列番号1~4いずれかで表されるアミノ酸の配列情報や、配列番号53~56のいずれかで表されるヌクレオチドの配列情報に基づいて、あるいは、前述のペプチドの配列情報などに基づいて、従来公知の化学的DNA合成法により容易に作製、取得すればよい。

【0074】
抗体をコードするポリヌクレオチドが、前記低等電点ペプチドをコードするポリヌクレオチドの上流に連結されるか下流に連結されるか、また、抗体の分子内部に前記ペプチドをコードするポリヌクレオチドが連結されるかについては、当業者が適宜決定すればよい。いずれにおいても、抗体の生理活性や立体構造を損なわない位置に連結することが好ましい。

【0075】
本発明のペプチド連結抗体発現ベクターには、必要に応じて前述のリンカーや切断部位が更に接続されていてもよい。リンカーを構成する塩基配列は、本発明の効果が得られる限り制限されず、従来公知の技術を用いて当業者が通常の検討範囲内で適宜決定すればよい。このようなリンカーとして前述のフレキシブルリンカーが例示され、該リンカーを好適に発現可能なヌクレオチド配列を、該ベクターに適宜接続すればよい。

【0076】
また、特にリンカーとして親和性ペプチドを用いる場合には、親和性ペプチドとして前述のものが例示され、親和性ペプチドをコードするポリヌクレオチドについても前述と同様に説明される。例えば親和性ペプチドをコードするポリヌクレオチドとしては、配列番号5~52のいずれかで示されるアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするポリヌクレオチド、例えば配列番号57~86のいずれかで表される塩基配列を有するポリヌクレオチド、ヒスチジンからなるペプチドをコードするポリヌクレオチド、TATペプチドをコードするポリヌクレオチドなどが挙げられる。また、これらのうちいずれかのポリヌクレオチドの相補鎖に対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドなどが例示され、ストリンジェントな条件や各ポリヌクレオチドの作製手順等は前述と同様に説明される。

【0077】
親和性ペプチドなどのリンカー等も、本発明の効果を奏する限り、ペプチド連結抗体発現ベクターへの連結部位は制限されないが、好ましくは前記プロモーターの制御下に配置される。また、例えば、抗体-親和性ペプチド-低等電点ペプチドの順となるよう発現させたい場合には、ベクターにおいてポリヌクレオチドをこの順で連結させればよい。この際、前記この他のリンカーや切断部位も必要に応じて更に適宜連結させればよい。

【0078】
例えば、低等電点ペプチドを構成する塩基配列やリンカーを構成する塩基配列は、抗体をコードするポリヌクレオチドの5’末端側及び/または3’末端側など任意の場所に連結させることができ、抗体の所望の活性になるべく悪影響を与えないようにする点から、前記ペプチドやリンカーをコードするポリヌクレオチドは、抗体の可変部を構成する塩基配列以外に連結させることが好ましく、抗体の可変部を構成する塩基配列よりも5’末端側及び/または3’末端側がより好ましく、抗体の可変部を構成する塩基配列よりも3’末端側が更に好ましい。

【0079】
ベクターは、従来公知のように一般に宿主細胞との関係から適宜選択される。より具体的には、本発明において使用されるベクターは、遺伝子工学分野において一般的に使用されている発現ベクターであれば制限されず、pBR、pUC、pCD、pET、pGEX、pCMV、pMSG、pSVLをはじめとする、大腸菌等の細菌や酵母由来のプラスミドベクターや、レトロウイルス、アデノウイルス、ワクチニアウイルス、バキュロウイルス、更にファージ等由来のウイルスベクターが例示される。これらのベクターは、前述するように宿主細胞との関係から適宜選択される。

【0080】
これらのベクターには、必要に応じてプロモーターが接続されており、プロモーターは宿主細胞に適したプロモーターであれば制限されず、従来公知のプロモーターを使用できる。例えば、プロモーターとしてlacプロモーター、trpプロモーター、tacプロモーター、trcプロモーター、racAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーター、T7プロモーター等が挙げられ、これは例えば宿主細胞として大腸菌を用いる場合に使用される。また、例えば、プロモーターとしてSV40プロモーター、CMVプロモーター、RSVプロモーター、HSV-TKプロモーター、LTRプロモーター、SRαプロモーター、EF-1αプロモーター等が挙げられ、これは例えば宿主細胞として動物細胞を用いる場合に使用される。プロモーターとして、宿主細胞との関係等を考慮して、他に酵母細胞用プロモーター、昆虫細胞用プロモーター、ウイルスプロモーター等も使用することができる。プロモーターが内在しているベクターにおいては、内在のプロモーターを使用してもよい。

【0081】
本発明のペプチド連結抗体発現ベクターにおけるプロモーターの接続位置は、その宿主細胞において、前記ペプチド連結抗体が発現される限り制限されない。一般に、プロモーターは、前記ペプチド連結抗体をコードするポリヌクレオチドの塩基配列の上流に接続される。すなわち、本発明のペプチド連結抗体発現ベクターにおいて、前記ペプチド連結抗体をコードするポリヌクレオチドは該プロモーターの制御下にある。

【0082】
宿主細胞としては、従来公知の原核細胞や真核細胞の各種細胞が使用でき、大腸菌、枯草菌、ストレプトコッカス、スタフィロコッカス、放線菌、糸状菌等の細菌、酵母、アスペルギルス、ドロソフィラS2、スポドプテラSf9等の昆虫などの細胞、また、L細胞、CHO細胞、COS細胞、Art-20細胞、HeLa細胞、C127細胞、ミエローマ細胞、GH3細胞、FL細胞、VERO細胞、CV-1細胞、Bowesメラノーマ細胞、アフリカツメガエルなどの卵母細胞等の動植物などの細胞が例示される。

【0083】
これらのベクター、プロモーター及び宿主細胞は、本分野の技術常識に基づき適宜組み合わせて使用すればよい。一例であるが組み合わせとしては、pET(T7プロモーター)/大腸菌BL21(DE3)、pGEX(Tacプロモーター)/大腸菌BL21が例示される。

【0084】
このほか、本発明のペプチド発現ベクターには、更に、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、薬剤耐性遺伝子、Green Fluorescent Protein(GFP)等のマーカー遺伝等の塩基配列が接続されていてもよい。これらの塩基配列は、目的に応じて前記発現ベクターの任意の位置に接続される。

【0085】
本発明のペプチド連結抗体発現ベクターは、該分野で従来公知の方法を用いて作製すればよく、制限酵素等を用いて前記ペプチドをコードするポリヌクレオチドや前記抗体をコードするポリヌクレオチドをはじめとする必要な塩基配列を、前記ベクター上の適切な位置に配置して作製すればよい。これら発現ベクターによれば、所望のペプチドが連結されてなる抗体を容易に獲得できる。

【0086】
また、本発明は、前記ペプチド連結抗体発現ベクターを宿主細胞に導入して形質転換させることにより得られる形質転換体を提供する。本発明において宿主細胞は、前述の宿主細胞が例示される。ペプチド連結抗体発現ベクターを宿主細胞に導入して形質転換体を得る方法は特に制限されず、従来公知の一般的な方法に従い行えばよい。例えば、多くの標準的な実験室マニュアルに記載される方法に従って行うことができ、その具体的手法としては、塩化カルシウム法、塩化ルビジウム法、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、マイクロインジェクション、リポソーム等のカチオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、ファージ等による感染等が挙げられる。

【0087】
また、本発明は、前記形質転換体から得られる、前記ペプチドが連結されてなる抗体を提供する。形質転換体、ペプチド、及び抗体については前述の通りである。本発明において前記ペプチドが連結されてなる抗体は、前記ペプチドと前記抗体とを前述のように連結することによって一体化させたペプチド融合抗体である。

【0088】
本発明において前記ペプチドが連結されてなる抗体は、前記形質転換体を適切な培地で培養し、該形質転換体及び/又は培養物から所望のペプチド融合抗体を回収することにより製造することができる。培養、回収する方法も特に制限されず、従来公知の一般的な方法に従い行えばよい。例えば、培養は、宿主細胞に適した任意の培地を用いて継代培養またはバッチ培養を行えばよく、形質転換体の内外に産生されたタンパク質量を指標にして、ペプチド融合抗体が適当量得られるまで行えばよい。該培養に用いられる培地としては、宿主細胞に応じて慣用される各種の培地を適宜選択すればよく、温度、時間等の培養条件も宿主細胞に適した従来公知の条件で実施すればよい。

【0089】
このようにして得られるペプチド融合抗体は、更に、必要に応じて、その物理的性質、化学的性質等を利用した各種の分離操作、例えば溶媒抽出、蒸留、各種クロマトグラフィー等の操作によって分離、精製してもよい(「生化学データーブックII」、1175-1259 頁、第1版第1刷、1980年、株式会社東京化学同人発行;Biochemistry, 25(25), 8274 (1986); Eur. J. Biochem., 163, 313 (1987)等参照)。

【0090】
このようにして得られたペプチド融合抗体は、前記液相中での抗体のリフォールディング方法やリフォールディングされた抗体の製造方法に好ましく使用される。
【実施例】
【0091】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0092】
試験例1:Anti-CEA scFvのリフォールディング効率の評価
1.後述する手順に従い、以下の実施例1-1~1-3及び比較例1に示す構造を備えた、不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有するペプチドが連結されてなる不活性な抗体を調製した。
【実施例】
【0093】
なお、実施例1-1は癌胎児性抗原(CEA、carcinoembryonic antigen)に対する1本鎖抗体(anti-CEA scFv)に、配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(PM)とヒスチジン残基(His)を直線状に連結させたものである。実施例1-2~1-3は、実施例1-1において配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるペプチドに代えて、それぞれアスパラギン酸残基5個からなるペプチド(D5)、アスパラギン酸残基10個からなるペプチド(D10)を用いた以外は、実施例1と同じ構造を有するものである。なお、配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを連結させていない以外は、実施例1と同じ構造を有するものを比較例1とした。本試験例において「等電点」は、実施例1-1~1-3のペプチドが連結されてなる抗体、または比較例1におけるヒスチジンが連結されてなる抗体のアミノ酸配列から計算した値であり、市販のソフトウェアGenetyx ver6(株式会社ゼネティックス製)を用いて、その手順に従いアミノ酸配列を入力することによって算出された値である。
実施例1-1:anti-CEA scFv-PM-His(等電点4.9)
実施例1-2:anti-CEA scFv-D5-His(等電点4.7)
実施例1-3:anti-CEA scFv-D10-His(等電点4.4)
比較例1:anti-CEA scFv-His(等電点5.3)
まず、配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるペプチドをコードするポリヌクレオチド(配列番号56)の3’末端側に6つのヒスチジン残基を連結させたヌクレオチド配列を合成し、これをpET22ベクター(メルク社製)のNot I/Xho Iサイトに導入した。次いで、anti-CEA scFvをPCRで増幅し、前記ベクターのNdeI/NotIサイトに導入した。これにより、T7プロモーター/Lacオペレーター→RBS→スタートコドン(ATG)- anti-CEA scFv→前記ペプチド-Stopコドン→T7ターミネーターの順で連結された、実施例1-1を作製するための発現ベクターを得た。同様に、配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるペプチドをコードするポリヌクレオチドに代えて、5つの連続するアスパラギン酸残基からなるポリヌクレオチド、または、10つの連続するアスパラギン酸残基からなるポリヌクレオチドを用いた以外は同様にして、実施例1-2または実施例1-3を作製するためのするための発現ベクターを得た。また、配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるペプチドをコードするポリヌクレオチドを用いない以外は実施例1-1同様にして、比較例1を作製するための発現ベクターを得た。
【実施例】
【0094】
このようにして得た各発現ベクターを用いてRosetta(登録商標)DE3 Competent Cells(Novagen社製)を形質転換し、アンピシリン及びクロラムフェニコールを含むLB-agarプレートで培養し、コロニーを形成させた。コロニーを採取して2xYT培地(アンピシリン及びクロラムフェニコール含有)10mL中に植菌し、一晩、200rpm、37℃で振盪培養して培養液を得た。続いて、500mLのバッフル付きフラスコにOvernight Express TB Instant Medium(メルク社製)を50mL加え、更にアンピシリン、クロラムフェニコール、培養液をOD=0.1となるように加えて37℃、200rpm、24時間振盪培養した。
【実施例】
【0095】
培養後、菌体を遠心分離によって回収し、PBS(NaCl 137mM, KCl 2.7mM, Na2HPO4 8.1mM, KH2PO41.47 mM (pH 7.4))を5mL加えて超音波破砕し、遠心分離によって封入体を回収し、封入体を蒸留水で3回洗浄したのち凍結乾燥した。このようにすることによって、粉末状の、前記ペプチドが連結されてなる不活性な抗体を得た。
【実施例】
【0096】
このようにして得られた粉末状の封入体を6M塩酸グアニジン溶液に可溶化し(25℃、10分)、遠心分離(25℃、10,000rpm、15分)して上清を回収した。次いで、His-Trap HPカラム(GEヘルスケア社製)を8M 尿素、20mMイミダゾールを含む2xPBSで平衡化し、そこに、前述のようにして得た上清を供給して、前記ペプチドが連結されてなる抗体をカラムに吸着させ、8M 尿素、0.4M イミダゾールを含む2xPBSで溶出し、得られた溶出液を、8M尿素を含むPBSで透析し、前記ペプチドが連結されてなる不活性な抗体を終濃度500μg/mLで含有する溶液を得た。
【実施例】
【0097】
後述するリフォールディング用の液相をBD Flacon(登録商標)96ウェルマイクロプレートウェル(日本ベクトンディッキンソン社製)内に準備し、前述のようにして変性させた、前記ペプチドが連結されてなる不活性な抗体を、終濃度200μug/mL(0.5M Uera)となるようにそれぞれのウェル中へ分散させた(総体積200uL)。
【実施例】
【0098】
リフォールディング用の液相について、後述の図中、pH6の液相は0.05M MESグッドバッファー(商品名MES(2-(N-Morpholino)ethanesulfonic Acid)、ナカライテスク社製)、pH6.5の液相は0.05M ADAグッドバッファー(商品名ADA(N-(2-Acetamido)iminodiacetic Acid)、ナカライテスク社製)、pH7の液相は0.05M MOPSグッドバッファー(商品名MOPS(3-(N-Morpholino)propanesulfonic Acid)、ナカライテスク社製)、pH7.5の液相は0.05M HEPESグッドバッファー(商品名HEPES(2-[4-(2-Hydroxyethyl) -1-piperazinyl]ethanesulfonic Acid)、ナカライテスク社製)、pH8の液相は0.05M EPPSグッドバッファー(商品名EPPS(N-(2-Hydroxyethyl)piperazine-N'-3-propanesulfonic Acid)、ナカライテスク社製)、pH8.5の液相は0.05M TAPSグッドバッファー(商品名TAPS(N-Tris(hydroxymethyl)methyl-3-aminopropanesulfonic Acid)、ナカライテスク社製)を用いて、また、必要に応じて、NDSB及び/またはNaClを添加することにより準備した。また、図中の各液相のpH(6.0~7.5)、NDSB(1-(3-スルホナトプロピル)ピリジニウム、0Mまたは0.5M)、NaCl濃度(0~300mM)は、マイクロプレートウェルにおいて前記ペプチドが連結されてなる不活性な抗体を分散させた後の液相中の値である。
【実施例】
【0099】
前述のようにして分散させた後、室温でインキュベートしながら、インキュベート開始時から30分おきに合計6時間、波長450nmにおける吸光度をマイクロプレートリーダーで測定した。得られた吸光度を凝集体の指標として評価した。吸光度値が高いほど、凝集体すなわちリフォールディングされていない抗体が多く残存していることを示す。
【実施例】
【0100】
2.結果を図1及び図2示す。図はいずれも6時間インキュベートした後に測定した結果である。
実施例1-1(anti-CEA scFv-PM-His)及び比較例1(anti-CEA scFv-His)を用いた結果を図1に示す。図1から明らかなように、比較例1に対して、実施例1-1においてOD値が著しく小さいことが確認された。図1はOD値が小さいほど不溶で不活性な凝集体としての抗体が減少していることを示し、すなわち、OD値が小さいほどリフォールディング効率が高いことを示す。なお、図1において、例えばpH6.0-、0mMで示されるものは、pH6、NDSB無添加、NaCl 0mMの液相に分散させてリフォールディングを行ったことを示し、pH6.0+、50mMで示されるものは、pH6、NDSB 0.5M、NaCl 50mMの液相に分散させてリフォールディングを行ったことを示す。また、図中、例えば「pH6.0-」や「pH6.0+」においてはそれぞれ4本のバーが示されているが、これは左から順に、すなわち図1の比較例1(anti-CEA scFv-His)の結果を示すグラフにおいて「pH6.0-」のバーの上部に示されている1~4の数字の小さいほうから順にNaCl 0mM、50mM、150mM、300mMの結果を示す。後述する同様の図においても同様に説明される。
【実施例】
【0101】
また、図中には示さないが、pH8やpH8.5の液相に分散させた場合であっても、NDSBの添加の有無、NaCl濃度にかかわらず、実施例1-1においてpH7の場合と同様の良好な結果が得られた。
【実施例】
【0102】
また、実施例1-2及び1-3を用いた場合の効果を図2に示す。図2から明らかなように、実施例1-2及び1-3のいずれにおいても前述の比較例1と比べてOD値が著しく小さいことが確認された。
【実施例】
【0103】
このことから、不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有するペプチドを連結させた不活性な抗体を変性させ、これを液相に分散させることによって、該ペプチドを連結させていない抗体を用いた場合と比較して、抗体のリフォールディング効率が著しく向上されることが確認できた。
【実施例】
【0104】
試験例2:Anti-RNase scFvのリフォールディング効率の評価
1.以下の手順で、以下の実施例2-1~2-5及び比較例2に示す構造を備えた、不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有するペプチドが連結されてなる不活性な抗体を調製した。
実施例2-1:anti-RNase scFv-PM-His(等電点5.96)
実施例2-2:anti-RNase scFv-D5-His(等電点5.75)
実施例2-3:anti-RNase scFv-D10-His(等電点4.93)
実施例2-4:anti-RNase scFv-D15-His(等電点4.55)
実施例2-5:anti-RNase scFv-D20-His(等電点4.32)
比較例2:anti-RNase scFv-His(等電点7.26)
抗体としてRNaseに対する1本鎖抗体を用いた以外は試験例1の実施例1-1~1-3及び比較例1と同様にして、実施例2-1~2-3及び比較例2に示す、不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有するペプチドが連結されてなる不活性な抗体を調製した。
【実施例】
【0105】
更に、抗体としてRNaseに対する1本鎖抗体を用い、アスパラギン酸残基5個からなるペプチドに代えてアスパラギン酸残基15個からなるペプチド(D15)またはアスパラギン酸残基20個からなるペプチド(D20)を用いる以外は試験例1の実施例1-2と同様にして、実施例2-4及び2-5に示す、不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有するペプチドが連結されてなる不活性な抗体を調製した。なお、該調製において、実施例1-2において使用した5つの連続するアスパラギン酸残基からなるポリヌクレオチドに代えて、15つの連続するアスパラギン酸残基からなるポリヌクレオチド、または、20つの連続するアスパラギン酸残基からなるポリヌクレオチドを用いた以外は同様にして実施例2-4及び2-5を作製するためのするための発現ベクターを使用した。
【実施例】
【0106】
次いで、実施例2-1~2-5及び比較例2に示される抗体に対して試験例1と同様の手順にて変性、リフォールディングを行い、マイクロプレートリーダーを用いて吸光度を評価した。
【実施例】
【0107】
2.結果を図3及び図4に示す。
実施例2-1及び比較例2を用いた場合の効果を図3に示す。図3から明らかなように、比較例2に対して、実施例2-1においてOD値が著しく小さいことが確認された。
【実施例】
【0108】
また、実施例2-2~2-5を用いた場合の効果を図4に示す。図4から明らかなように、実施例2-2~2-5のいずれにおいても前述の比較例2と比べてOD値が著しく小さいことが確認された。
【実施例】
【0109】
このことから、anti-RNase scFvにおいても、不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有するペプチドを連結させた不活性な抗体を変性させ、液相に分散させることによって、該ペプチドを連結させていない抗体を用いた場合と比較して、抗体のリフォールディング効率が著しく向上できることが確認できた。
【実施例】
【0110】
試験例3:Anti-CRP scFvのリフォールディング効率の評価
1.以下の手順で、次の実施例3-1~3-5及び比較例3に示す構造を備えた、不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有するペプチドが連結されてなる不活性な抗体を調製した。試験例2とは異なる抗体である、C反応性蛋白(CRP、C-reactive protein)に対する1本鎖抗体を用いた以外は試験例2と同様にして試験を行った。
実施例3-1:anti-CRP scFv-PM-His(等電点5.9)
実施例3-2:anti-CRP scFv-D5-His(等電点5.8)
実施例3-3:anti-CRP scFv-D10-His(等電点5)
実施例3-4:anti-CRP scFv-D15-His(等電点4.6)
実施例3-5:anti-CRP scFv-D20-His(等電点4.4)
比較例3:anti-CRP scFv-His(等電点6.6)
【実施例】
【0111】
2.結果を図5及び図6に示す。
実施例3-1及び比較例3を用いた場合の効果を図5に示す。図5から明らかなように、比較例3に対して、実施例3-1においてOD値が著しく小さいことが確認された。
【実施例】
【0112】
また、実施例3-2~3-5を用いた場合の効果を図6に示す。図6から明らかなように、実施例3-2~3-5のいずれにおいても前述の比較例3と比べてOD値が著しく小さいことが確認された。
【実施例】
【0113】
このことから、anti-CRP scFvにおいても、不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有するペプチドを連結させた不活性な抗体を変性させ、液相に分散させることによって、該ペプチドを連結させていない抗体を用いた場合と比較して、抗体のリフォールディング効率が著しく向上できることが確認された。
【実施例】
【0114】
試験例4:Anti-TSH、Anti-IgA、Anti-IgGまたはAnti-TF189のscFvのリフォールディング効率の評価
1.前述の実施例1において抗体としてTSH、IgA、IgGまたはTF189を用いる以外は同様にして実施例4~7に示す構造を備えた、不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有するペプチドが連結されてなる不活性な抗体を調製し、同様にして試験を行った。
実施例4:anti-TSH scFv-PM-His(等電点6.41)
実施例5:anti-IgA scFv-PM-His(等電点6.49)
実施例6:anti-IgG scFv-PM-His(等電点6.14)
実施例7:anti-TF189 scFv-PM-His(等電点5.86)
【実施例】
【0115】
2.結果を図7に示す。
図7に示すように、抗体としてTSH、IgA、IgGまたはTF189の1本鎖抗体を用いた場合も、前記ペプチドを連結させることによってリフォールディング効率を高めることができた。なお、図中、例えば「pH7.5-」や「pH7.5+」においてはそれぞれ4本のバーが示されているが、これは左から順にTSH、IgA、IgG、TF189の結果を示す。また、図はイオン強度(NaCl濃度)0mMの溶液に分散させてリフォールディングを行った結果である。
【実施例】
【0116】
試験例5:リフォールディング効率の算出
前記実施例1-1、実施例2-1、実施例3-1、実施例4及び比較例1に示される不活性な抗体を以下のように変性、リフォールディングを行うことによって、これらにおけるリフォールディング効率を算出した。
【実施例】
【0117】
具体的には、それぞれの前記ペプチドを連結させた不活性な抗体を、終濃度500μg/mLとなるように8M 尿素を含有するPBS中に希釈した。このようにして変性させたそれぞれの前記ペプチドを連結させた不活性な抗体を、液相(0.05M TAPSグッドバッファー、pH8.5、NDSB201無添加、NaCl濃度0mM)に透析により18時間分散させた(最終濃度0.5M Uera)。10000g、25℃で、2分間遠心分離を行い、上清を回収した。遠心分離前後の抗体濃度をDC Protein Assay Kit(バイオラッドラボラトリーズ社製)によって定量し、遠心後に回収した上清中の抗体濃度を、遠心直前の液相中の抗体濃度で除して回収率を算出した。
【実施例】
【0118】
その結果、実施例1-1におけるリフォールディング効率は91.2%であり、これは比較例1におけるリフォールディング効率43.9%を、2倍以上で上回る回収率であった。また、リフォールディング効率は、実施例2-1では88%、実施例3-1では90%、実施例4では93%であり、いずれも高効率であった。
【実施例】
【0119】
試験例6:リフォールディングされた抗体の基材への固定化
1.配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(PM)は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)製の基材に親和性を有しており、実施例2-1において該ペプチドは1本鎖抗体に連結されている。このことから、前述のようにして得た、配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるペプチドが連結されたリフォールディングされた抗体を、ポリメタクリル酸メチル製の基材と接触させることによって、該ペプチドを介してリフォールディングされた抗体が該基材上に良好に固定できるかどうかについて検討した。比較例として、前記比較例2をリフォールディングしたものを用いた。なお、リフォールディングでは0.05M TAPSグッドバッファーを用い、pH8.5、NDSB201無添加、NaCl濃度0mMに調整した液相を用いた。
【実施例】
【0120】
具体的には、リフォールディング後に得られた各抗体をPBSで2倍ずつ段階希釈し、ポリメタクリル酸メチル製のマイクロプレート中に100μLずつ添加し、4℃で一晩インキュベートした。次いで、マイクロプレートをPBST(PBS-0.1%Tween20)で洗浄後、2%BSA-PBSTを300μLずつ加えて25℃で1時間インキュベートした。PBSTでプレートを洗浄後、2%BSA-PBSTで100ng/mLに希釈したビオチン化RNase(抗原)を100μLずつ加えて25℃で1時間インキュベートした。PBSTでプレートを洗浄後、2%BSA-PBSTで5000倍希釈したHRP標識ストレプトアビジンを100μLずつ加えて25℃で1時間インキュベートした。PBSTで洗浄後、TMB基質溶液を100μLずつ加えて25℃で15分インキュベートし、0.3M H2SO4を100μLずつ加えて発色反応を停止した。マイクロプレートリーダーで波長450nmにおける吸光度(副波長650nm)を測定した。
【実施例】
【0121】
2.結果を図8に示す。該結果から明らかなように、実施例2-1を用いた場合には、基材上での活性が、リフォールディングされた抗体の濃度依存的に向上した。これに対して、前記ペプチドが連結されていない比較例2を用いた場合には、リフォールディングされた抗体に基づく活性が著しく低かった。このことから、実施例2-1で用いられたペプチドは、抗体の変性及びリフォールディング後であっても、そのポリメタクリル酸メチルに対する良好且つ特異的な親和性を維持していることが確認され、前述のようにしてリフォールディングされた抗体も、その特有の活性を十分に保持していることが確認された。
【実施例】
【0122】
試験例7:低等電点ペプチド及び親和性ペプチドを連結させた抗体における、リフォールディング効率の評価
1.前記実施例2-4において連結させたペプチドに加えて、以下の親和性ペプチドを連結させた以外は試験例2と同様にして、抗体のリフォールディング効率を比較した。ここで、下記PSは、配列番号10で表されるアミノ酸配列からなる親和性ペプチドであり、親水性ポリスチレンに対して親和性を有する。下記SiNは、配列番号29で表されるアミノ酸配列からなる親和性ペプチドであり、窒化ケイ素に対して親和性を有する。実施例8-1においてPSとD15との間に酵素により切断可能な切断部位を連結させた。同様に、実施例8-2においてSiNとD15との間に切断部位を連結させた。また、実施例2-4の低等電点ペプチドに代えて、前記親和性ペプチドを連結させたものを、比較例4(PS)及び比較例5(SiN)とした。なお、配列番号10で示されるアミノ酸配列からなるペプチドをコードするポリヌクレオチドは配列番号61で表され、配列番号29で表されるアミノ酸配列ペプチドをコードするポリヌクレオチドは配列番号63で表される。
実施例2-4:anti-RNase scFv-D15-His(等電点4.55)
実施例8-1:anti-RNase scFv-PS-D15-His(等電点5)
実施例8-2:anti-RNase scFv-SiN-D15-His(等電点4.83)
比較例2:anti-RNase scFv-His(等電点7.26)
比較例4:anti-RNase scFv-PS-His(等電点8.97)
比較例5:anti-RNase scFv-SiN-His(等電点8.14)
【実施例】
【0123】
2.結果を図9及び10に示す。
図9はPSを用いた結果であり、図10はSiNを用いた結果である。図9から明らかなように、親和性ペプチドPSの存在下でも、不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有するペプチドが連結された不活性な抗体ではODが低く、その抗体のリフォールディング効率を高めることができた。同様に、図10においても同様に、親和性ペプチドSiNの存在下でも、不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有するペプチドが連結された不活性な抗体では、その抗体のリフォールディング効率を高めることができた。
【実施例】
【0124】
試験例8:リフォールディングされた抗体の基材への固定化
1.前記実施例2-1、実施例2-4、実施例8-1を用いて、リフォールディングされた抗体を、ポリメタクリル酸メチル製の基材と接触させることによって、前記ペプチドを介してリフォールディングされた抗体が前記基材上に良好に固定できるかどうかについて検討した。
【実施例】
【0125】
具体的には、前記実施例2-4、実施例8-1、比較例4をそれぞれ前記試験例7に従いリフォールディングさせたのち(液相0.05M TAPSグッドバッファー、pH8.5、NDSB201無添加、NaCl濃度0mM)、各ペプチドが連結されてなるリフォールディングされた抗体が50ug/mLの濃度になるようPBSで調製し、これをポリメタクリル酸メチル製の基材(マイクロプレート)に100uLずつ加えて25℃で2時間インキュベートした。次いで、PBSTで5回基材を洗浄後、2%BSAを含むPBST(2% BSA-PBST)を300uLずつ加え、25℃で1時間インキュベートした。次いで、PBSTで5回基材を洗浄後、biotin標識RNaseを0~1ug/mLとなるよう2%BSA-PBSTで希釈し、100uLずつ加えて25℃で1時間インキュベートした。次いで、PBSTで5回基材を洗浄後、HRP標識ストレプトアビジンを0.2ug/mLとなるよう2%BSA-PBSTで希釈し、100uLずつ加えて25℃で1時間インキュベートした。次いで、PBSTで5回基材を洗浄後、TMBを100uLずつ加えて25℃で15分間インキュベートし、0.3M硫酸を100uL加えて発色反応を停止させた(発色反応)。その後、450nmにおける吸光度(副波長 650nm)をマイクロプレートリーダーで測定した。
【実施例】
【0126】
また、ポリメタクリル酸メチル製の基材(マイクロプレート)を親水性ポリスチレン製の基材(マイクロプレート)に代えた以外は前述と同様にして前記実施例2-4、実施例8-1を用いて試験を行い、親水性ポリスチレン製の基材に対して固定の程度を測定した。
【実施例】
【0127】
2.結果を図11及び12に示す。
図11から明らかなように、ポリメタクリル酸メチルに親和性を有し、且つ、不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有するペプチド(PM)が導入されている実施例2-1においてリフォールディングされた抗体によれば、該リフォールディングされた抗体に連結されているPMの効果によって、ポリメタクリル酸メチル製の基材にリフォールディングされた抗体が高密度に固定化され、ポリメタクリル酸メチルに親和性を有するペプチドが連結されていない他のリフォールディングされた抗体と比較して、高いシグナルが得られた。
【実施例】
【0128】
また、図12においても同様の傾向が認められ、親水性ポリスチレンに親和性を有するペプチド(PS)と不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有するペプチドの両ペプチドが導入されている実施例8-1においてリフォールディングされた抗体によれば、該リフォールディングされた抗体に連結されているPSの効果によって、親水性ポリスチレン製の基材にリフォールディングされた抗体が高密度に固定化され、親水性ポリスチレンに親和性を有するペプチドが連結されていない他のリフォールディングされた抗体と比較して、高いシグナルが得られた。
【実施例】
【0129】
試験例9:重鎖Fab、軽鎖Fabのリフォールディング効率の評価
1.実施例1-1(anti-CEA scFv-PM-His)における一本鎖抗体を、CEAに対する重鎖のFab抗体(Fab H)またはCEAに対する軽鎖のFab抗体(Fab L)に代えた以外は、試験例1と同様にして、以下の実施例9-1及び実施例9-2に示される、不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有するペプチドが連結されてなる不活性な抗体を作製した。また、実施例2-1(anti-RNase scFv-PM-His)における一本鎖抗体を、RNaseに対する重鎖のFab抗体(Fab H)またはRNaseに対する軽鎖のFab抗体(Fab L)に代えた以外は、試験例2と同様にして、以下の実施例9-3及び実施例9-4に示される、不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有するペプチドが連結されてなる不活性な抗体を作製した。また、実施例7(anti-TF189 scFv-PM-His)における一本鎖抗体を、TF189に対する重鎖のFab抗体(Fab H)またはTF189に対する軽鎖のFab抗体(Fab L)に代えた以外は、試験例4と同様にして、以下の実施例9-5及び実施例9-6に示される、不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有するペプチドが連結されてなる不活性な抗体を作製した。また、同様に、抗体としてAFPを用いる以外は実施例9-1等と同様にして、以下の実施例9-7及び実施例9-8に示される、不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有するペプチドが連結されてなる不活性な抗体を作製した。
実施例9-1:anti-CEA Fab H-PM-His (等電点4.91)
実施例9-2:anti-CEA Fab L-PM-His (等電点5.81)
実施例9-3:anti-RNase Fab H-PM-His (等電点6.32)
実施例9-4:anti-RNase Fab L-PM-His (等電点5.55)
実施例9-5:anti-TF189 Fab H-PM-His (等電点6.54)
実施例9-6:anti-TF189 Fab L-PM-His (等電点5.33)
実施例9-7:anti-AFP Fab H-PM-His (等電点7.29)
実施例9-8:anti-AFP Fab L-PM-His (等電点5.81)
得られた実施例9-1~9-8のペプチドが連結されてなる不活性な抗体を、前記試験例1と同様にして変性、リフォールディングを行い、そのリフォールディング効率を評価した。なお、本試験例では、変性、リフォールディングは実施例9-1~9-8がそれぞれ単独で存在する条件下で行うことに加えて、実施例9-1及び9-2が共存する条件下(anti-CEA Fab-PM-His (H+L))、実施例9-3及び9-4が共存する条件下(anti-RNase Fab-PM-His (H+L))、実施例9-5及び9-6が共存する条件下(anti-TF189 Fab-PM-His (H+L))、実施例9-7及び9-8が共存する条件下(anti-AFP Fab-PM-His (H+L))でも行った。
【実施例】
【0130】
2.結果を図13~図16に示す。
図13~図16は、それぞれCEA、RNase、TF189、AFPに関する各結果を示す。これらの結果から明らかなように、いずれにおいてもOD値が小さく、効率良くリフォールディングされていることが確認された。
【実施例】
【0131】
試験例10:リフォールディング効率の算出
試験例9において実施例9-1及び9-2が共存する条件下(anti-CEA Fab-PM-His (H+L))、実施例9-3及び9-4が共存する条件下(anti-RNase Fab-PM-His (H+L))、実施例9-5及び9-6が共存する条件下(anti-TF189 Fab-PM-His (H+L))を用いて、前記試験例5と同様にして変性、リフォールディングを行うことによって、これらにおけるリフォールディング効率を算出した。
【実施例】
【0132】
その結果、リフォールディング効率は、anti-CEA Fab-PM-His (H+L)では93%、anti-RNase Fab-PM-His (H+L)では100%、anti-TF189 Fab-PM-His (H+L)では100%であり、いずれも高効率であった。
【実施例】
【0133】
試験例11:リフォールディングされた重鎖Fab、軽鎖Fabの活性評価
1.以下のペプチドを連結させた不活性な抗体を、前記試験例10と同様にして変性、リフォールディングすることによって得た、リフォールディングされた各抗体を、後述の手順に従いポリメタクリル酸メチル製の基材と接触させ、固定された各抗体の活性を評価した。また、前記試験例10において用いたanti-CEA Fab -PM-His (H+L)、anti-RNase Fab -PM-His (H+L)、anti-TF189 Fab -PM-His (H+L)についてもリフォールディングを行い、同様にしてポリメタクリル酸メチル製の基材と接触させて、固定された各抗体の活性を評価した。リフォールディングは、0.05M TAPSグッドバッファーを用い、pH8.5、NDSB201無添加、NaCl濃度0mMに調整された液相を用いて行った。
-CEAに対する抗体
実施例1-1:anti-CEA scFv-PM-His
実施例9-1:anti-CEA Fab H-PM-His
実施例9-2:anti-CEA Fab L-PM-His
-RNaseに対する抗体
実施例2-1:anti-RNase scFv-PM-His
実施例9-3:anti-RNase Fab H-PM-His
実施例9-4:anti-RNase Fab L-PM-His
-TF189に対する抗体
実施例7:anti-TF189 scFv-PM-His
実施例9-5:anti-TF189 Fab H-PM-His
実施例9-6:anti-TF189 Fab L-PM-His
【実施例】
【0134】
より具体的には、前述のようにして得た、不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有するペプチドが連結されてなる、リフォールディングされた抗体(anti-CEA抗体、anti-RNase抗体)が100ug/mLの濃度になるようPBSで調製し、これをポリメタクリル酸メチル製の基材(マイクロプレート)に100uLずつ加えて25℃で2時間インキュベートした。次いで、PBSTで5回基材を洗浄後、2%BSAを含むPBST(2% BSA-PBST)を300uLずつ加え、25℃で1時間インキュベートした。次いで、PBSTで5回基材を洗浄後、biotin標識CEAまたはbiotin標識RNaseを0~1ug/mLとなるよう2%BSA-PBSTで希釈し、100uLずつ加えて25℃で1時間インキュベートした。次いで、PBSTで5回基材を洗浄後、HRP標識ストレプトアビジンを0.2ug/mLとなるよう2%BSA-PBSTで希釈し、100uLずつ加えて25℃で1時間インキュベートした。次いで、PBSTで5回基材を洗浄後、TMBを100uLずつ加えて25℃で15分間インキュベートし、0.3M硫酸を100uL加えて発色反応を停止させた。その後、450nmにおける吸光度(副波長 650nm)をマイクロプレートリーダーで測定した。
【実施例】
【0135】
また、不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有するペプチドが連結されてなる、リフォールディングされた抗体(anti-TF189抗体)については、同様に、前述のようにして得たペプチドが連結されてなるリフォールディングされた抗体が100ug/mLの濃度になるようPBSで調製し、これをポリメタクリル酸メチル製の基材(マイクロプレート)に100uLずつ加えて25℃で2時間インキュベートした。次いで、PBSTで5回基材を洗浄後、2%BSAを含むPBST(2% BSA-PBST)を300uLずつ加え、25℃で1時間インキュベートした。次いで、PBSTで5回基材を洗浄後、Transferrinを0~1ug/mLとなるよう2%BSA-PBSTで希釈し、100uLずつ加えて25℃で1時間インキュベートした。次いで、PBSTで5回基材を洗浄後、biotin標識抗Transferrin抗体を0.25ug/mLとなるよう2%BSA-PBSTで希釈し、100uLずつ加えて25℃で1時間インキュベートした。これ以降の手順は前述同様にして行い、吸光度測定した。
【実施例】
【0136】
2.結果を図17~19に示す。
図17~19から明らかなように、特にFab LとFab Hを混合させた場合に、一本鎖抗体を用いた場合と同様に、所望の活性が観察された。通常、H鎖とL鎖はこれらが協力して抗原認識を行うと考えられている。本試験例において、Fab HやFab Lが単独で存在する場合と比較して、Fab LとFab Hとが共存させてリフォールディングを行い、この場合に高い活性が認められたことは、本発明によれば抗体に由来する所望の活性が良好に回復されていることを示している。
【実施例】
【0137】
試験例12:VHHのリフォールディング効率の評価
前述の実施例1において抗体としてラクダ由来VHHを用いる以外は同様にして実施例10に示す構造を備えた、不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有するペプチドが連結されてなる不活性な抗体を調製し、同様にして試験を行った。また、比較のため、比較例6に示す構造を備えた抗体を調製し、同様にして試験行った。
実施例10:VHH-PM-His(等電点6.05)
比較例6:VHH-His(等電点8.20)
図20に示すように、抗体としてVHH単ドメイン抗体を用いた場合も、前記ペプチドを連結させることによって凝集が著しく解消され、これによってリフォールディング効率を高めることができることが分かった。液相のpHが7.5など更に低い場合であっても、同様の傾向が認められた。
【実施例】
【0138】
試験例13:リフォールディング効率の算出
試験例12に記載される実施例10及び比較例6を用いて、前記試験例5と同様にして変性、リフォールディングを透析によって行い、これらにおけるリフォールディング効率を算出した。具体的には、8M Urea-PBSに溶解させた実施例10(VHH-PM-His)を、0.5mg/mL VHH-PM-His、0.5M Urea、50mM TAPSとなるよう希釈して得た溶液1mLを透析チューブ内に入れ、50mM TAPS 1Lの外液に対して4℃で一晩透析した。次いで、透析チューブ内の溶液を回収し、遠心分離によって凝集体を除去した。遠心分離前後のタンパク質濃度をDC Protein Assay(バイオラッドラボラトリーズ社製)によってそれぞれ定量し、回収率を算出した。比較例6(VHH-His)についても同様にして回収率を算出した。
【実施例】
【0139】
その結果、実施例10では回収率が95%であったのに対し、比較例6では回収率が20%であった。このことから、抗体としてVHHを用いた場合であっても不活性な抗体を効率よくリフォールディングできたことが分かった。
【実施例】
【0140】
試験例14:リフォールディング効率の算出
試験例13とは異なる方法を用いて、実施例10についてリフォールディング効率を算出した。具体的には、ゲルクロマトグラフィーによってリフォールディング効率を算出した。まず、AKTA Purifier UPC10 クロマトグラフィシステム(GEヘルスケア社製)にゲル濾過カラムHi Trap Desalting(GEヘルスケア社製) 5mL を2個連結してセットし、50mM TAPS (pH 8.5)で平衡化した。次に、8M Urea-PBSに溶解させた実施例10(VHH-PM-His)を、0.5mg/mL VHH-PM-His、0.5M Urea、50mM TAPS、0.5M NDSB201となるよう希釈して得た溶液2mLを前記カラムに負荷し、50mM TAPS (pH 8.5)を供給した。次いで 最初に溶出されるタンパク質のピークを含有する溶液を回収した(3mL回収)。 回収したタンパク質溶液の濃度をDC protein assay(バイオラッドラボラトリーズ社製)で定量し、アプライ量と回収量から回収率を算出した。その結果、実施例10では回収率が99%であった。このことから、抗体としてVHHを用いた場合であっても不活性な抗体を効率よくリフォールディングできたことが分かった。
【実施例】
【0141】
試験例15:リフォールディングされたVHHの基材への固定及び活性評価
1.前記実施例10を用いてリフォールディングされた抗体を、ポリメタクリル酸メチル製の基材と接触させることによって、前記ペプチドを介してリフォールディングされた抗体が前記基材上に良好に固定できるかどうかについて検討した。また、当該固定化された抗体がその活性を維持しているかどうかについて検討した。比較例6についても同様にして検討した。
【実施例】
【0142】
具体的には、前記実施例10を試験例13に従いリフォールディングさせたのち、ペプチドが連結されてなるリフォールディングされた抗体が45ug/mLの濃度になるようPBSで調製し、これをポリメタクリル酸メチル製の基材(マイクロプレート)に100uLずつ加えて25℃で2時間インキュベートした。次いで、PBSTで5回基材を洗浄後、2% BSA-PBSTを300uLずつ加え、25℃で1時間インキュベートした。次いで、PBSTで5回基材を洗浄後、biotin標識hCGを0~1ug/mLとなるよう2%BSA-PBSTで希釈し、100uLずつ加えて25℃で1時間インキュベートした。次いで、PBSTで5回基材を洗浄後、HRP標識ストレプトアビジンを0.2ug/mLとなるよう2%BSA-PBSTで希釈し、100uLずつ加えて25℃で1時間インキュベートした。次いで、PBSTで5回基材を洗浄後、TMBを100uLずつ加えて25℃で15分間インキュベートし、0.3M硫酸を100uL加えて発色反応を停止させた(発色反応)。その後、450nmにおける吸光度(副波長 650nm)をマイクロプレートリーダーで測定した。
【実施例】
【0143】
2.結果を図21に示す。
図21から明らかなように、ポリメタクリル酸メチルに親和性を有し、且つ、不活性な抗体の等電点よりも低い等電点を有するペプチド(PM)が導入されている実施例10においてリフォールディングされた抗体によれば、該リフォールディングされた抗体に連結されているPMの効果によって、ポリメタクリル酸メチル製の基材にリフォールディングされた抗体が高密度に固定化され、ポリメタクリル酸メチルに親和性を有するペプチドが連結されていない抗体と比較して、高いシグナルが得られた。このことから、実施例10においてリフォールディングされた抗体が基材に高密度に固定化され、また、抗体に由来する所望の活性が良好に回復されていることが分かった。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
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【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20