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明細書 :信号雑音除去装置、その方法及びプログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6304690号 (P6304690)
登録日 平成30年3月16日(2018.3.16)
発行日 平成30年4月4日(2018.4.4)
発明の名称または考案の名称 信号雑音除去装置、その方法及びプログラム
国際特許分類 A61B   5/00        (2006.01)
A61B   5/0452      (2006.01)
FI A61B 5/00 G
A61B 5/04 312C
A61B 5/04 312A
請求項の数または発明の数 6
全頁数 16
出願番号 特願2014-550174 (P2014-550174)
出願日 平成25年11月25日(2013.11.25)
国際出願番号 PCT/JP2013/081624
国際公開番号 WO2014/084162
国際公開日 平成26年6月5日(2014.6.5)
優先権出願番号 2012258972
優先日 平成24年11月27日(2012.11.27)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成28年11月17日(2016.11.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
発明者または考案者 【氏名】佐藤 寧
個別代理人の代理人 【識別番号】100099634、【弁理士】、【氏名又は名称】平井 安雄
審査官 【審査官】伊藤 幸仙
参考文献・文献 特開2006-301464(JP,A)
特開2003-108200(JP,A)
特開2007-108440(JP,A)
特開2007-110451(JP,A)
国際公開第2013/118398(WO,A1)
佐藤寧,DCT による生体電気信号の交流雑音除去法,[online] 九州大学 新技術説明会,日本,2011年12月16日,[検索日2014.1.23] インターネット<URL:https://www.jstshingi.jp/abst/p/11/1143/kit5.pdf>
調査した分野 A61B 5/00 - 5/22
特許請求の範囲 【請求項1】
入力される処理信号における波形のピークを検出するピーク検出手段と、
検出された前記各ピーク間の検出サンプル数を基準サンプル数にリサンプリングする第1リサンプリング手段と、
リサンプリングされた前記処理信号をFFTにより直交変換する直交変換手段と、
前記FFTによる直交変換後の周波数データに基づいて、位相及び振幅のベクトル化を行うベクトル演算手段と、
前記ベクトル演算手段にて求められた振幅方向の値に対して、基本波の周波数成分である基本周波数成分及び高調波の周波数成分である高調波成分を少なくとも抽出するフィルタリング手段と、
前記フィルタリング手段によりフィルタリング処理された振幅、及び前記ベクトル演算手段で得られた位相に基づいて、実数及び虚数の値に変換する逆ベクトル演算手段と、
前記逆ベクトル演算手段にて求められた実数及び虚数の値に基づいて、逆FFTの演算を行う逆直交変換手段と、
逆直交変換後に得られる前記処理信号を前記ピーク検出手段にて検出された前記ピークごとの前記検出サンプル数にリサンプリングする第2リサンプリング手段とを備えることを特徴とする信号雑音除去装置。
【請求項2】
請求項1に記載の信号雑音除去装置において、
前記直交変換手段が前記リサンプリングされた基準サンプル数に対応する次数を用いた変換処理を行うことを特徴とする信号雑音除去装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の信号雑音除去装置において、
入力される前記処理信号は、ピーク間の間隔にばらつきがある信号であることを特徴とする信号雑音除去装置。
【請求項4】
請求項3に記載の信号雑音除去装置において、
入力される前記処理信号が生体信号であることを特徴とする信号雑音除去装置。
【請求項5】
コンピュータが、
入力される処理信号における波形のピークを検出するピーク検出ステップと、
検出された前記各ピーク間の検出サンプル数を基準サンプル数にリサンプリングする第1リサンプリングステップと、
リサンプリングされた前記処理信号をFFTにより直交変換する直交変換ステップと、
前記FFTによる直交変換後の周波数データに基づいて、位相及び振幅のベクトル化を行うベクトル演算ステップと、
前記ベクトル演算ステップにて求められた振幅方向の値に対して、基本波の周波数成分である基本周波数成分及び高調波の周波数成分である高調波成分を少なくとも抽出するフィルタリングステップと、
前記フィルタリングステップによりフィルタリング処理された振幅、及び前記ベクトル演算ステップで得られた位相に基づいて、実数及び虚数の値に変換する逆ベクトル演算ステップと、
前記逆ベクトル演算ステップにて求められた実数及び虚数の値に基づいて、逆FFTの演算を行う逆直交変換ステップと、
逆直交変換後に得られる前記処理信号を前記ピーク検出ステップにて検出された前記ピークごとの前記検出サンプル数にリサンプリングする第2リサンプリングステップとを実行することを特徴とする信号雑音除去方法
【請求項6】
力される処理信号における波形のピークを検出するピーク検出手段
検出された前記各ピーク間の検出サンプル数を基準サンプル数にリサンプリングする第1リサンプリング手段
リサンプリングされた前記処理信号をFFTにより直交変換する直交変換手段
前記FFTによる直交変換後の周波数データに基づいて、位相及び振幅のベクトル化を行うベクトル演算手段、
前記ベクトル演算手段にて求められた振幅方向の値に対して、基本波の周波数成分である基本周波数成分及び高調波の周波数成分である高調波成分を少なくとも抽出するフィルタリング手段
前記フィルタリング手段によりフィルタリング処理された振幅、及び前記ベクトル演算手段で得られた位相に基づいて、実数及び虚数の値に変換する逆ベクトル演算手段、
前記逆ベクトル演算手段にて求められた実数及び虚数の値に基づいて、逆FFTの演算を行う逆直交変換する逆直交変換手段
逆直交変換後に得られる前記処理信号を前記ピーク検出手段にて検出された前記ピークごとの前記検出サンプル数にリサンプリングする第2リサンプリング手段としてコンピュータを機能させる信号雑音除去プログラム
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、周期性を有する生体信号から雑音信号を除去する信号雑音除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、脈波や心音などの心臓の動きに起因する生体信号は、周期的であり且つ波形の変化が大きいことから、高い周波数成分まで含まれている(図18(A)を参照)。このような波形の雑音除去を行う場合、単なるローパスフィルタを使用すると高い周波数成分が減衰してしまい、結果として波形歪が激しく現れて、医療的な意味を持つ重要な部分まで消されてしまう。すなわち、図18(B)の点線部分に示すように、細かい雑音を除去することができるものの、重要な波形が著しく劣化してしまい、医療行為に悪影響を及ぼしてしまう。
【0003】
このような問題を解決するために、現在は、心電波形を取る際に多点での計測を行い、その波形同士の相関関係を利用して雑音による影響を低減させることがなされている。また、病室のように雑音のない部屋において計測することで雑音を低減させている。
【0004】
しかしながら、近年では、膨大化する医療費に歯止めをかけるために、予防医療の需要が増えており、そのために家庭や屋外での正確な生体信号の計測技術が強く望まれている。すなわち、現在行われているような、多数の電極を付けた状態での生体信号の計測や雑音が無い状況での生体信号の計測では、日常生活に支障をきたすこととなり、日常生活に影響を与えることなく正確に生体信号を取得する技術が望まれる。
【0005】
上記の問題に関連し、日常的に心電図を計測して管理する技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に示す技術は、心臓疾患患者が日常生活において常時携帯でき、何時でも何処でも簡単に自分で計測するのに適した小型・軽量な器具となし、この心電計で心電図を録音記録し、電話回線により記録された心電図データーを医療センターまたはその内容を分析できる施設等に送信できるようにした心電波形データの変換・記憶・再生システムとそのための装置であり、フィルタにより心電波形データから雑音を除去することが記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、速度脈波信号として精度の高いデータを効率よく取得できる加速度脈波計測装置の技術が開示されており、0.5~2.0Hzの間で最大の周波数を選択し、その周波数fpに対して、DC成分(=fp×0)と、2倍(=fp×2)、3倍(=fp×3)、4倍(=fp×4)の周波数がそれぞれ選択され、各周波数に対して周波数ごとにことなるマスク幅を有する周波数フィルタマスクを作成することが記載されています。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2003-265425号公報
【特許文献2】特開2009-22638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に示す技術は、フィルタにより心電波形データから雑音を除去することが記載されているが、図18(B)に示したように、医療行為に重要な波形が著しく劣化してしまい、医療行為に悪影響を及ぼしてしまう可能性がある。
【0009】
また、特許文献2に示す技術は、信号のばらつきにより周波数スペクトルが広がったように検出され、適正なピークを特定することが困難となる可能性がある。
【0010】
本発明は、例えば、医療行為などで重要となる生体信号を適正に残しつつ、雑音となる信号を確実に除去することができると共に、人体への負担を最小限に抑えて家庭や屋外での生体信号の計測を行うことができる信号雑音除去装置等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る信号雑音除去装置は、入力された処理信号における波形のピークを検出するピーク検出手段と、検出された前記各ピーク間の検出サンプル数を基準サンプル数にリサンプリングする第1リサンプリング手段と、リサンプリングされた前記処理信号を直交変換する直交変換手段と、直交変換後の周波数データから、基本波の周波数成分である基本周波数成分及び高調波の周波数成分である高調波成分を少なくとも抽出するフィルタリング手段と、フィルタリングされた周波数データを逆直交変換する逆直交変換手段と、逆直交変換後に得られる前記処理信号を前記ピーク検出手段にて検出された前記ピークごとの前記検出サンプル数にリサンプリングする第2リサンプリング手段とを備えるものである。
【0012】
このように、本発明に係る信号雑音除去装置においては、処理信号のピーク間の検出サンプル数を各区間ごとに同一の基準サンプル数にリサンプリングし、リサンプリングされた信号に対して直交変換を行い、基本周波数成分及びその整数倍の周波数となる高調波成分を抽出するため、例えば、医療行為やその他の波形検出に重要となる基本周波数成分及び高調波成分を残し、その他の雑音のみを確実に除去することができ、信号を発振する人体や装置への負担を最小限に抑えた処理信号の計測が可能になるという効果を奏する。
【0013】
本発明に係る信号雑音除去装置は、前記直交変換手段がFFTにより直交変換を行い、前記FFTによる直交変換後の周波数データに基づいて、位相及び振幅のベクトル化を行うベクトル演算手段と、前記フィルタリング手段により抽出された周波数成分について、実数及び虚数の値に変換する逆ベクトル演算手段とを備え、前記フィルタリング手段が、前記ベクトル演算手段にて求められた振幅方向の値に対して、少なくとも前記基本周波数成分及び高調波成分を抽出し、前記逆直交変換手段が、前記逆ベクトル演算手段にて求められた実数及び虚数の値に基づいて、逆FFTの演算を行うものである。
【0014】
このように、本発明に係る信号雑音除去装置においては、FFT(Fast Fourier Transform)により直交変換を行い、その変換結果を位相と振幅にベクトル化し、振幅の値に対してのみ基本周波数成分及び高調波成分を抽出するため、例えば、医療行為やその他の波形検出に重要となる基本周波数成分及び高調波成分を残し、その他の雑音のみを確実に除去することができ、信号を発振する人体や装置への負担を最小限に抑えた処理信号の計測が可能になるという効果を奏する。
【0015】
本発明に係る信号雑音除去装置は、前記直交変換手段が前記リサンプリングされた基準サンプル数に対応する次数を用いた変換処理を行うものである。
【0016】
このように、本発明に係る信号雑音除去装置においては、直交変換手段が前記リサンプリングされた基準サンプル数に対応する次数を用いた変換処理を行うため、変換後の結果からDC変化の基本周波数成分と高調波成分のみを確実に抽出することができ、例えば、医療行為やその他の波形検出に重要となる基本周波数成分及び高調波成分を残し、その他の雑音のみを確実に除去することができ、信号を発振する人体や装置への負担を最小限に抑えた処理信号の計測が可能になるという効果を奏する。
【0017】
本発明に係る信号雑音除去装置は、入力される前記処理信号が、ピーク間の間隔にばらつきがある信号とするものである。
【0018】
このように、本発明に係る信号雑音除去装置においては、処理対象となる入力された処理信号がピーク間の間隔にばらつきがあるため、従来であれば、雑音除去の際に、本来重要となる基本周波数成分及び高調波成分に影響を及ぼしてしまうが、本発明の処理を行うことで、ピーク間の間隔にばらつきがあっても、重要な信号のみを残して雑音を確実に除去することができるという効果を奏する。
【0019】
本発明に係る信号雑音除去装置は、入力される前記処理信号を生体信号とするものである。
【0020】
このように、本発明に係る信号雑音除去装置においては、入力される前記処理信号を生体信号とするため、生体信号のように、ピーク間の間隔にばらつきがあっても、重要な信号のみを残して雑音を確実に除去することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施形態に係る信号雑音除去装置のハードウェア構成図である。
【図2】第1の実施形態に係る信号雑音除去装置の機能ブロック図である。
【図3】第1の実施形態に係る信号雑音除去装置におけるピーク検出部の処理を示す図である。
【図4】第1の実施形態に係る信号雑音除去装置における第1リサンプリング部の処理を示す図である。
【図5】第1の実施形態に係る信号雑音除去装置における補間処理を示す図である。
【図6】第1の実施形態に係る信号雑音除去装置においてリサンプリング処理を行った場合と行わなかった場合における直交変換の処理を示す図である。
【図7】第1の実施形態に係る信号雑音除去装置においてMDCTによる帯域分割を行う処理を示す図である。
【図8】第1の実施形態に係る信号雑音除去装置におけるMDCTによる帯域分割のブロック図及び計算式を示す図である。
【図9】第1の実施形態に係る信号雑音除去装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】第2の実施形態に係る信号雑音除去装置の機能ブロック図である。
【図11】第2の実施形態に係る信号雑音除去装置のベクトル演算の処理を示す図である。
【図12】第2の実施形態に係る信号雑音除去装置の動作を示すフローチャートである。
【図13】本発明に係る信号雑音除去装置において突発的な信号がある場合の処理を示す図である。
【図14】従来技術と本発明に係る信号雑音除去装置による処理結果の比較を示す図である。
【図15】本発明に係る信号雑音除去装置による体動雑音を除去した場合の結果を示す図である。
【図16】本発明に係る信号雑音除去装置による電源雑音を除去した場合の結果を示す図である。
【図17】本発明に係る信号雑音除去装置による白色雑音を除去した場合の結果を示す図である。
【図18】単なるローパスフィルタを使用した場合の従来技術を示す図である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明は多くの異なる形態で実施可能である。また、本実施形態の全体を通して同じ要素には同じ符号を付けている。
【0023】
以下の実施の形態では、主に装置について説明するが、所謂当業者であれば明らかな通り、本発明は方法、及び、コンピュータを動作させるためのプログラムとしても実施できる。また、本発明はハードウェア、ソフトウェア、または、ハードウェア及びソフトウェアの実施形態で実施可能である。プログラムは、ハードディスク、CD-ROM、DVD-ROM、光記憶装置、または、磁気記憶装置等の任意のコンピュータ可読媒体に記録できる。さらに、プログラムはネットワークを介した他のコンピュータに記録することができる。
【0024】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係る信号雑音除去装置について、図1ないし図9を用いて説明する。本実施形態に係る信号雑音除去装置は、例えば、心電信号や心音、脈波に関する周期性(一定又は所定の間隔でピークを繰り返して出力する性質)を有する生体信号から必要な信号を確実に残しつつ、不要な雑音のみを除去するものであり、生体信号における波形のピークを検出し、検出された各ピーク間の検出サンプル数を基準サンプル数にリサンプリングし、リサンプリングされた生体信号を直交変換し、直交変換後の周波数データから、基本波の周波数成分である基本周波数成分及び高調波の周波数成分である高調波成分をフィルタリングにより抽出し、フィルタリングされた周波数データを逆直交変換し、逆直交変換後に得られる生体信号を検出サンプル数にリサンプリングするものである。なお、本実施形態においては、処理信号として上記のような生体信号を用いた場合を例に以下説明するが、一定又は所定の間隔でピークを繰り返して出力する性質を有する信号であれば生体信号に限らず適用可能である。
【0025】
また、必要に応じて、基準サンプル数に対応する(又は同一の)次数を用いた直交変換を行う構成にすることもできる。
【0026】
図1は、本実施形態に係る信号雑音除去装置のハードウェア構成図である。信号雑音除去装置1は、CPU11、RAM12、ROM13、ハードディスク(HDとする)14、通信I/F15、及び入出力I/F16を備える。ROM13やHD14には、オペレーティングシステムや各種プログラムが格納されており、必要に応じてRAM12に読み出され、CPU11により各プログラムが実行される。
【0027】
通信I/F15は、他の装置間の通信を行うためのインタフェースである。入出力I/F16は、キーボードやマウス等の入力機器からの入力を受け付けたり、プリンタやモニタ等にデータを出力するためのインタフェースである。この入出力I/F16は、必要に応じて光磁気ディスク、フロッピーディスク、CD-R、DVD-R等のリムーバブルディスク等に対応したドライブを接続することができる。また、USBメモリ、SD(HC)カード、マイクロSD等の記憶媒体に対応したインターフェースとして機能する。各処理部はバスを介して接続され、情報のやり取りを行う。
【0028】
なお、上記信号雑音除去装置1の構成はあくまで一例であり、必要に応じて変更可能である。例えば、信号雑音除去装置1は、センサからの情報を取得してリアルタイムに雑音除去を行う小型の携帯型医療端末としても適用できるし、センサから取得した情報を管理端末側に一括転送して記憶し、記憶された情報を用いて管理端末にて雑音除去の処理を行う構成であってもよい。また、例えば、ゲーム機のコントローラや自動車の運転席等に設置し、ゲーム者や運転者の生体信号をモニタリングしながら雑音除去の処理を行う構成であってもよい。その場合、必ずしもHD14がなくても、メモリのみで処理を行うことが可能である。
【0029】
図2は、本実施形態に係る信号雑音除去装置の機能ブロック図である。信号雑音除去装置1は、入力された生体信号を取得してそのピークを検出するピーク検出部21と、検出したピークに基づいて各ピーク間のサンプル数(以下、検出サンプル数とする)を検出するサンプル数検出部22と、検出サンプル数に基づいてピーク間の波形データを切り出す波形切出部23と、切り出した波形データの検出サンプル数を所定のサンプル数(以下、基準サンプル数とする)にリサンプリングする第1リサンプリング部24と、リサンプリングされた信号を直交変換する直交変換部25と、直交変換により得られた周波数データから基本周波数成分と高調波成分のみを抽出するフィルタリング部26と、フィルタリングされた周波数データを逆直交変換して波形データを生成する逆直交変換部27と、逆直交変換された波形データを検出サンプル数でリサンプリングする第2リサンプリング部28とを備える。
【0030】
ピーク検出部21は、取得した生体信号におけるピークを検出する。図3は、本実施形態に係る信号雑音除去装置におけるピーク検出部21の処理を示す図である。図3(A)は、ピーク検出部21のブロック図を示し、図3(B)は、ピークホールドの様子を示す図である。図3(A)中のCMPはコンパレータであり、XとYとを比較して、X>Yの場合はXにCを乗じた結果をZ-1とA1、B1に供給することでY=Xとなる伝達関数を実現し、Z-1へもY=Xとなるための値を記憶する。一方、X<Yの場合は単なる1次IIR型のローパスフィルタとして動作することから、下向きに包絡する結果となる。すなわち、図3(B)に示すようにピークホールドを行うことができる。なお、図3(B)において、点線が信号波形を示し、実線がピークホールドの軌跡を示している。
【0031】
図4は、本実施形態に係る信号雑音除去装置における第1リサンプリング部の処理を示す図である。図4(A)はリサンプリング前の信号波形を示す、図4(B)はリサンプリング後の信号波形を示す。ピーク検出部21により各ピークが検出されると、サンプル数検出部22が、各ピーク間における検出サンプル数を演算する。すなわち、図4(A)におけるrr1,rr2,・・・,rrNのサンプル数が検出サンプル数として演算される。生体信号のピークは本来ほぼ等間隔で発生し、各ピーク間の波形もほぼ同じ波形が発生するものの、周期は必ずしも一定ではなく、身体の動きや環境に応じてピーク間の間隔(すなわち、検出サンプル数)や波形に揺らぎが生じる。本実施形態においては、後述する処理によりこの揺らぎを取り除くことで、正確な生体信号を抽出する。
【0032】
検出サンプル数が演算されると、波形切出部23が、各ピーク間ごとに波形データを切り出し、第1リサンプリング部24が切り出した波形データについて、基準サンプル数にリサンプリングする。すなわち、図4(B)におけるrrのサンプル数にリサンプリングされて補間処理が施される。このリサンプリング処理と補間処理により、図4(B)に示すように、各ピーク間の間隔が一定となり、生体信号の揺らぎが除去される。
【0033】
なお、補間処理については、一般的に知られている直線補間や多項式補間(ラグランジェ補間、スプライン補間等)を用いることができるが、高調波の影響を考慮すると、図5に示すように多項式補間(特に、ラグランジェ補間)を用いたほうが、高精度に補間処理ができることがわかる。また、基準サンプル数は、後段の直交変換処理を考慮して2に(例えば、128や256等)設定されることが好ましい。
【0034】
基準サンプル数にリサンプリングされると、直交変換部25が直交変換処理を行うことで、リサンプリングされた波形データを周波数データに変換する。直交変換処理の方法としては、例えば、DCT(Discrete Cosine Transform:離散コサイン変換)、MDCT(Modified DCT:変形離散コサイン変換)、LOT(Lapped Orthogonal Transform:重複直交変換)、WHT(Walsh-Hadamard Transform:ウォルシュ-アダマール変換)等を用いることができる。ここでは、仮にDCT変換を行うものとする。
【0035】
DCT変換は、複数のフィルタバンクとして機能し、N個のBPF(バンドパスフィルタ)が存在する。しかし、DCTのような直交変換ではデシメーション処理であるため、それぞれ帯域分割された信号はDC信号となる。すなわち、上記のように、リサンプリング処理により時間軸方向に正規化した処理を施せば、周期信号のように整数倍の高調波を持つ波形は、必ず直流成分に変換される。つまり、雑音成分は高調波構造を持たないことからAC成分となり、フィルタリング部26の処理により直流成分のみをLPF(ローパスフィルタ)で抽出することで雑音成分を除去することができる。
【0036】
図6は、リサンプリング処理を行った場合と行わなかった場合のそれぞれにおける直交変換後のスペクトル分布のイメージを示す図である。図6(A)はリサンプリング処理を行わなかった場合の直交変換後のスペクトル分布のイメージ図を示し、図6(B)はリサンプリング処理を行った場合の直交変換後のスペクトル分布のイメージ図を示す。図6(A)に示すように、リサンプリング処理、すなわち時間軸方向に正規化しなかった場合は、生体信号の揺らぎの影響によりスペクトルが広がったように見えてしまうのに対して、図6(B)に示すように、時間軸方向に正規化した場合は、非常に急峻なスペクトルを得ることができる。
【0037】
なお、MDCTによる帯域分割を行う場合、基準サンプル数(2)と同じ次数nに分割する。直交変換による処理は、通常のBPFと異なり、変換後の各周波数帯域が図7(A)に示すようにDC(0Hz)からBAND帯域の幅の結果となる。すなわち、図7(B)に示すように、正規化された一定期間の生体信号は基本周波数の整数倍に周波数が発生し、この整数倍の周波数と直交変換後の帯域周波数を一致させることで、変換後の結果はゆっくりとしたDC変化のみとなり、雑音は図7(C)に示すように整数倍以外の領域に発生する。図8は、このMDCTによる帯域分割のブロック図及び計算式を示す。MDCTで周波数変換を行い、IMDCTで逆変換を行うものである。
【0038】
直交変換後は、フィルタリング部26が、変換後の各周波数データごとに基本周波数成分及び高調波成分を抽出し、逆直交変換部27が、直交変換部25と逆の変換処理を行う。第2リサンプリング部28は、逆変換により生成された波形データを、サンプル数検出部22で検出された検出サンプル数でリサンプリングし、入力波形のサンプル数に戻して出力する。
【0039】
次に、本実施形態に係る信号雑音除去装置の動作について説明する。図9は、本実施形態に係る信号雑音除去装置の動作を示すフローチャートである。まず、ピーク検出部21が、生体に取り付けられたセンサで検知した周期性の生体信号を取得し(S1)、その生体信号からピークを検出する(S2)。サンプル数検出部22が、検出された各ピーク間の検出サンプル数を検出し(S3)、波形切出部23が、各ピーク間の波形を切り出す(S4)。第1リサンプリング部24が、切り出した波形の検出サンプル数を所定の基準サンプル数でリサンプリングして補間する(S5)。
【0040】
なお、この基準サンプル数は、2に設定されることが望ましく、検出された検出サンプル数の平均値、最小サンプル数又は最大サンプル数を基準に設定されてもよい。特に、検出サンプル数の最大値以上で、且つ、直近の2に設定されることが望ましい。こうすることで、処理を効率よく行いつつ、補間処理における誤差を最小限に抑えることができる。
【0041】
基準サンプル数にリサンプリングされた生体信号の信号データに対して、直交変換部25が直交変換を行う(S6)。直交変換された周波数データにフィルタリング処理をして、基本周波数成分及び高調波成分を抽出する(S7)。すなわち、基本周波数成分及び高調波成分以外のノイズ成分を除去する。逆直交変換部27が、ノイズ成分が除去された周波数データに対して逆直交変換の処理を行う(S8)。第2リサンプリング部28が、逆直交変換で取得された信号データについて、S3で検出された検出サンプル数でリサンプリングをして補間する(S9)。この一連の処理により、元の生体信号からノイズ成分のみが除去された新たな生体信号が出力される。
【0042】
このように、本実施形態における信号雑音除去装置においては、生体信号のピーク間の検出サンプル数を各区間ごとに同一の基準サンプル数にリサンプリングし、リサンプリングされた信号に対して直交変換を行い、基本周波数成分及びその整数倍の周波数となる高調波成分を抽出するため、医療行為に重要となる基本周波数成分及び高調波成分を残し、その他の雑音のみを確実に除去することができ、人体への負担を最小限に抑えた生体信号の計測が可能になる。
【0043】
(本発明の第2の実施形態)
本実施形態に係る信号雑音除去装置について、図10ないし図12を用いて説明する。なお、本実施形態においては前記第1の実施形態と重複する説明は省略する。本実施形態に係る信号雑音除去装置は、前記第1の実施形態に係る信号雑音除去装置において、FFTにより直交変換を行い、直交変換後の周波数データに基づいて位相及び振幅のベクトル化を行う。そして、ベクトル化された振幅方向の値に対して基本周波数成分及び高調波成分を抽出し、抽出された周波数成分について実数及び虚数の値に逆ベクトル変換を行う。この求められた実数及び虚数の値に基づいて逆FFTの演算を行うものである。
【0044】
図10は、本実施形態に係る信号雑音除去装置の機能ブロック図である。信号雑音除去装置1は、前記第1の実施形態の場合と同様に、ピーク検出部21とサンプル数検出部22と波形切出部23と第1リサンプリング部24とフィルタリング部26と第2リサンプリング部28とを備え、また、直交変換処理として具体的にFFT処理を行うFFT処理部101と、FFT処理により変換された周波数データに基づいて位相及び振幅のベクトル化を行うベクトル演算部102と、ベクトル化された振幅に対して基本周波数成分及び高調波成分のフィルタリングを行うフィルタリング処理部26と、フィルタリングされた振幅及びベクトル演算部102でベクトル化された位相に基づいて、実数及び虚数の値に逆ベクトル変換を行う逆ベクトル演算部103と、求められた実数及び虚数の値に基づいて逆FFT処理を行う逆FFT処理部104とを備える。
【0045】
図11は、本実施形態に係る信号雑音除去装置のベクトル演算の処理を示す図である。図に示すように、FFTによる直交変換処理を行った場合、Re(Real:実数)とIm(Imaginary:虚数)の値から、以下のように振幅及び位相が求められる。
【0046】
【数1】
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【0047】
本実施形態においては、雑音を除去する際に位相は無関係であることから、振幅の値に対して、フィルタリング処理部26がフィルタリング処理を行う。このとき、前記第1の実施形態の場合と同様に、基本周波数成分及び高調波成分のフィルタリングが行われる。そして、逆ベクトル演算部103が、フィルタリング処理された振幅及び上記ベクトル化の処理で得られた位相に基づいて、実数及び虚数の値に逆ベクトル変換を行う。
【0048】
次に、本実施形態に係る信号雑音除去装置の動作について説明する。図12は、本実施形態に係る信号雑音除去装置の動作を示すフローチャートである。まず、ピーク検出部21が、生体に取り付けられたセンサで検知した周期性の生体信号を取得し(S121)、その生体信号からピークを検出する(S122)。サンプル数検出部22が、検出された各ピーク間の検出サンプル数を検出し(S123)、波形切出部23が、各ピーク間の波形を切り出す(S124)。第1リサンプリング部24が、切り出した波形の検出サンプル数を所定の基準サンプル数でリサンプリングして補間する(S125)。
【0049】
なお、この基準サンプル数は、第1の実施形態の場合と同様に、2に設定されることが望ましく、検出された検出サンプル数の平均値、最小サンプル数又は最大サンプル数を基準に設定されてもよい。特に、検出サンプル数の最大値以上で、且つ、直近の2に設定されることが望ましい。こうすることで、処理を効率よく行いつつ、補間処理における誤差を最小限に抑えることができる。
【0050】
基準サンプル数にリサンプリングされた生体信号の信号データに対して、FFT処理部101がFFT処理を行う(S126)。ベクトル演算部102が、FFT処理された周波数データの位相と振幅をベクトル化する(S127)。ベクトル化された振幅に対して、フィルタリング部26がフィルタリング処理して、基本周波数成分及び高調波成分を抽出する(S128)。すなわち、基本周波数成分及び高調波成分以外のノイズ成分を除去する。逆ベクトル演算部103が、フィルタリング処理された振幅及び上記ベクトル演算部102で得られた位相に基づいて、実数及び虚数の値に逆ベクトル変換を行う(S129)。逆FFT処理部104が、ノイズ成分が除去された周波数データに対して逆FFTの処理を行う(S130)。第2リサンプリング部28が、逆FFTで取得された信号データについて、S123で検出された検出サンプル数でリサンプリングをして補間する(S131)。この一連の処理により、FFTを用いて、元の生体信号からノイズ成分のみが除去された新たな生体信号が出力される。
【0051】
このように、本実施形態に係る信号雑音除去装置においては、FFTにより直交変換を行い、その変換結果を位相と振幅にベクトル化し、振幅の値に対してのみ基本周波数成分及び高調波成分を抽出するため、医療行為に重要となる基本周波数成分及び高調波成分を残し、その他の雑音のみを確実に除去することができ、人体への負担を最小限に抑えた生体信号の計測が可能になる。
【0052】
なお、上記各実施形態における基準サンプル数の設定については、以下のようにして行うことも可能である。すなわち、複数の基準サンプル数について信号雑音除去装置により雑音除去を行い、各基準サンプル数ごとに出力された結果の信号波形と、元々の入力波形とを比較して、誤差が最小となる信号波形の基準サンプル数を設定する。そうすることで、波形の誤差を最小限に抑えた雑音の除去を行うことが可能となる。
【0053】
また、上記各実施形態に係る信号雑音除去装置は、複数のピークが含まれる処理信号であれば全て適用可能であり、例えば、回転系の運動を行う、モータ、発電機、エンジン等の信号雑音の除去に応用することが可能である
【0054】
さらに、特に心電信号や心音、脈波等の信号の場合、病気などが原因で突発的に異常波形が現れる場合がある。例えば、不整脈などの場合、通常時はある程度周期性を持った信号(上記で説明したように多少のゆらぎがあり、周期が一定とは限らない信号)のピークが現れているものの、突発的に周期性から明らかに大きく外れたピーク信号が現れる場合がある。そのような場合であっても、上記各実施形態に係る信号雑音除去装置では、突発的なピーク信号を除くことなく正確に検出することができる。すなわち、図13に示すように、周期性から大きく外れた突発的な信号であっても、ピークさえ検出することができれば、ノイズのみが除去された正確な信号検出が可能である。
【実施例】
【0055】
以下に、本発明の信号雑音除去装置を用いた実験結果を示す。図14は、従来技術の処理結果と本発明に係る信号雑音除去装置を用いた場合の処理結果との比較を示す図である。図14(A)は、単なるローパスフィルタを用いた従来技術の処理前後の信号を示す図であり、図14(B)は、本発明に係る信号雑音除去装置を用いた場合の処理前後の信号を示す図である。図から明らかな通り、本発明に係る信号雑音除去装置を用いた場合は、生体信号で重要となる周期性の信号部分については確実に残しつつ、雑音は綺麗に除去されていることがわかる。
【0056】
図15は、体動による雑音がある実際の心電波形に対して、本発明の信号雑音除去装置を用いた場合の処理結果を示す図である。図15(A)は処理前の信号波形であり、図15(B)は処理後の信号波形である。図15(A)においては、特に点線で示す箇所のように体動が原因で大きな雑音が検出されているが、図15(B)の処理後の信号波形では、体動による雑音が完全に除去されていることがわかる。
【0057】
図16は、電源による雑音がある実際の心電波形に対して、本発明の信号雑音除去装置を用いた場合の処理結果を示す図である。図16(A)は処理前の信号波形であり、図16(B)は処理後の信号波形である。図から明らかなように、図16(A)における電源雑音は、図16(B)においては完全に除去されている。
【0058】
図17は、白色雑音がある実際の心電波形に対して、本発明の信号雑音除去装置を用いた場合の処理結果を示す図である。図17(A)は処理前の信号波形であり、図17(B)は処理後の信号波形である。図から明らかなように、図17(A)における白色雑音は、図17(B)においては完全に除去されている。
【0059】
以上のように、本発明の信号雑音除去装置を用いることで、様々なタイプの不要な雑音を綺麗に除去することができるという明らかな効果が示される。また、周期性を有する生体信号で必要な信号については、確実に残すことができることが明らかである。
【符号の説明】
【0060】
1 信号雑音除去装置
11 CPU
12 RAM
13 ROM
14 HD
15 通信I/F
16 入出力I/F
21 ピーク検出部
22 サンプル数検出部
23 波形切出部
24 第1サンプリング部
25 直交変換部
26 フィルタリング部
27 逆直交変換部
28 第2サンプリング部
101 FFT処理部
102 ベクトル演算部
103 逆ベクトル演算部
104 逆FFT処理部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
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【図15】
14
【図16】
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【図17】
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【図18】
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