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明細書 :シリコンナノウォール構造体およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-149611 (P2018-149611A)
公開日 平成30年9月27日(2018.9.27)
発明の名称または考案の名称 シリコンナノウォール構造体およびその製造方法
国際特許分類 B82B   1/00        (2006.01)
H01L  29/06        (2006.01)
B82Y  20/00        (2011.01)
B82Y  30/00        (2011.01)
B82Y  40/00        (2011.01)
H01L  21/308       (2006.01)
B82B   3/00        (2006.01)
FI B82B 1/00
H01L 29/06 601N
B82Y 20/00
B82Y 30/00
B82Y 40/00
H01L 21/308 B
B82B 3/00
請求項の数または発明の数 12
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2017-045820 (P2017-045820)
出願日 平成29年3月10日(2017.3.10)
発明者または考案者 【氏名】平井 政和
【氏名】吉葉 修平
【氏名】市川 幸美
出願人 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
個別代理人の代理人 【識別番号】230104019、【弁護士】、【氏名又は名称】大野 聖二
【識別番号】100149076、【弁理士】、【氏名又は名称】梅田 慎介
【識別番号】100117444、【弁理士】、【氏名又は名称】片山 健一
審査請求 未請求
テーマコード 5F043
Fターム 5F043AA02
5F043AA35
5F043BB23
5F043BB27
5F043DD23
5F043DD30
5F043EE08
要約 【課題】シリコンウォールの貼り付きを生じさせずにシリコンナノウォール構造体を製造するための技術を提供すること。
【解決手段】本発明では、シリコン基板の深さ方向にウェットエッチングして複数のシリコンナノウォールを形成する工程からマスク部分をウェットエッチングにより除去する工程への移行をシリコン基板がエッチング液、洗浄液中に浸漬された状態で行うこととした。その結果、シリコンウォールの側壁面はエッチング液、洗浄液、酸化液に触れた状態にあり、隣接するシリコンウォールとの貼り付きが防止されるため、エッチングにより、従来のものよりも薄いシリコンウォールの形成が可能である。液中のままウェット酸化(薬液による酸化)でパッシベーション形成、又は、目的とするシリコンナノウォール(SNW)の薄さまで形成することが可能である。その後の熱酸化によって厚みを薄くする際の試料、工程への負担が軽減される。
【選択図】図3
特許請求の範囲 【請求項1】
シリコン基板上に複数のシリコンナノウォール(SNW)が実質的に等間隔でアレイ状に形成された構造体であって、
前記SNWの厚みの平均値Wが20nm以下であり、且つ、相互に隣接するSNWとの間隔Dが30nm以下である、
シリコンナノウォール構造体。
【請求項2】
前記SNWの高さの平均値をHとしたときのアスペクト比(R=H/W)が100以上である、
請求項1に記載のシリコンナノウォール構造体。
【請求項3】
前記シリコン基板および前記SNWの導電型はn型又はp型である、
請求項1または2に記載のシリコンナノウォール構造体。
【請求項4】
前記シリコン基板の主面は{110}面である、
請求項1~3の何れか1項に記載のシリコンナノウォール構造体。
【請求項5】
前記複数のSNWの側壁面にパッシベーション膜が形成されている、
請求項1~4の何れか1項に記載のシリコンナノウォール構造体。
【請求項6】
前記相互に隣接するSNWの間隔Dの領域にシリコン酸化物又はシリコン酸化物以外の絶縁物で充填されている、
請求項1~5の何れか1項に記載のシリコンナノウォール構造体。
【請求項7】
シリコン基板上に実質的に等間隔で並行して延在するストライプ状のパターンにマスクを形成する工程Aと、
前記マスクから露出する結晶領域を前記シリコン基板の深さ方向に薬液によりエッチングして複数のシリコンナノウォール(SNW)を形成する工程Bと、
前記マスク部分を薬液によるエッチングにより除去する工程Cとを備え、
前記工程Bから前記工程Cへの移行を前記シリコン基板が液中に浸漬された状態で行う、
シリコンナノウォール構造体の製造方法。
【請求項8】
前記工程Cを、シリコン結晶のバンドギャップよりも大きいエネルギの波長の光を用いる光アシストエッチング法により実行する、
請求項7に記載のシリコンナノウォール構造体の製造方法。
【請求項9】
前記工程Cの後工程として、前記複数のSNWの側壁面を薬液中で酸化してパッシベーション膜を形成する工程、又は、シリコンナノウォール(SNW)の側壁面を薬液により酸化する工程である工程Dを備え、前記工程Bから工程Cまで、又は、前記工程Cから工程Dまでを、前記シリコン基板が液中に浸漬された状態で行う、
請求項7または8に記載のシリコンナノウォール構造体の製造方法。
【請求項10】
前記工程Cの光アシストエッチングに用いられる薬液は、フッ酸(HF)と硝酸(HNO3)の混酸、若しくは、フッ酸(HF)と過酸化水素(H22)の混合液である、
請求項8~9の何れか1項に記載のシリコンナノウォール構造体の製造方法。
【請求項11】
前記工程Cの光アシストエッチングに用いられる薬液の酸濃度は1%以下である、
請求項8~10の何れか1項に記載のシリコンナノウォール構造体の製造方法。
【請求項12】
前記工程CもしくはDの後工程として、前記複数のSNWの側壁面を熱酸化する工程Eを備えている、
請求項9~11の何れか1項に記載のシリコンナノウォール構造体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はシリコンナノウォール構造体の製造技術に関し、より詳細には、太陽電池の製造に好適な、量子効果によるバンドギャップの拡がりを好ましい範囲に設計可能な厚みと高いアスペクト比を有するシリコンナノウォール構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノメートルサイズの微細な形状を有する構造体(ナノ構造体)は、量子サイズ効果によりバンドギャップが拡がり、バルク材料にはない特性を示す。このような量子サイズ効果は、サイズが小さくなることにより量子井戸幅が狭く(小さく)なると、電子の波動関数が満たすべき量子井戸端における境界条件の要請から、電子のエネルギ準位が大きくなることによると理解されている。
【0003】
このようなナノ構造体に関し、特表2011-519730号公報(特許文献1)には、超格子/量子井戸構造体を含むセグメント化された半導体ナノワイヤ及びその製造方法の発明が開示されている。このようなナノ構造体は太陽電池への応用も検討されてきており、例えばシリコンナノウォール構造体の研究も進められてきている。
【0004】
図1は、シリコンナノウォール構造体の、従来の製造プロセスを概念的に説明するための図である。先ず、シリコン基板100を準備する(a)。この基板100の主面に、後の工程でマスクとして作用することとなる窒化シリコン膜(Si34)110aをLPCVD法等で形成し(b)、続いて、窒化シリコン膜110a上に、ナノインプリント用のレジスト120aを塗布する(c)。そして、パターンモールド130を用いて、上記レジスト120aにナノインプリントパターニング120bを行う(d)。なお、このパターニングにより、幅が50~70nmのウォールが得られる。
【0005】
ナノインプリントパターニング120bにより露出された窒化シリコン膜110aの領域はドライエッチングにより除去され、パターニングされた窒化シリコン膜110bが得られる(e)。その後、窒化シリコン膜110b上のレジストを除去し(f)、パターニングされた窒化シリコン膜110bをハードマスクとして、シリコン基板100を深さ方向に異方性エッチングする。このシリコンの異方性エッチングには、例えば、KOH等の薬液を用いることができる。
【0006】
上記エッチングにより、主に、深さ方向にシリコンが除去されてシリコンウォールが形成されることとなるが、エッチングはシリコンウォール側壁面においても進行するから、エッチング後にはエッチング前の厚み(50~70nm)よりも薄くなり、例えば、高さが2~3μmで、厚みが30~50nm程度の厚みのシリコンウォール140が形成される(g)。
【0007】
上記シリコンウォール140を形成した後、高濃度のフッ酸溶液やリン酸溶液といった薬液を用いたエッチングにより、シリコンウォール140の上端部に残存する窒化シリコン膜110bを除去する(h)。そして、純水洗浄等を施した後、シリコンウォール140の厚みを更に薄くするために、熱酸化をおこなう。この熱酸化では、主としてシリコンウォール140の側壁が酸化され、酸化されたシリコンの分だけシリコンウォール140の厚みは薄くなる。このような酸化膜150の形成により、厚みが数ナノメートルレベルのシリコンナノウォール構造体が得られる(i)。例えば2nmの厚みのシリコンウォールは、概ね1.7eV程度のバンドギャップを有する。なお、厚みtのシリコン結晶部分が酸化されると、概ね厚み2tのシリコン酸化膜となる。
【0008】
ところで、これまでの製造プロセスでは、シリコンウォール形成時の異方性エッチング、シリコンウォール140の上端部に残存する窒化シリコン膜110bを除去するためのエッチング、これらのエッチング後の純水洗浄等は別個の液槽で行われている。そのため、シリコンウォールが形成された状態のシリコン基板は液槽から一旦外部に取り出され、次工程の液槽へと移されることになる。その際、外部に取り出された状態のシリコンウォールの表面(壁面)は外気に晒されることとなり、厚みが薄いシリコンウォールは撓んで、互いに貼りついてしまうという現象が生じ易い。このような貼り付き現象は、シリコンウォールが薄い程、また、表面が疎水性である程、生じやすい。
【0009】
最終的には厚みが数ナノメートルレベルのシリコンナノウォール構造体を得ることを目的としているにもかかわらず、エッチングによるシリコンウォールの形成の厚みを比較的厚めの30~40nm程度のものとせざるを得ないのは、水との表面張力に起因する相互の貼り付きを極力回避するため、撓みのレベルを低くしておく必要があるためである。
【0010】
図2は、シリコンウォール形成時の異方性エッチング後に液槽から外部に取り出した際のシリコンウォールの様子(a)、および、シリコンウォールの上端部に残存する窒化シリコン膜110bを除去するためのエッチング後に液槽から外部に取り出した際のシリコンウォールの様子(b)、を示すSEM像の例である。シリコンウォール形成時の異方性エッチング後に液槽から外部に取り出した状態でも既に、局所的に貼り付きが生じている。さらに、シリコンウォールの上端部に残存する窒化シリコン膜を除去するためのエッチング後に液槽から外部に取り出した状態では、シリコンウォールは完全に貼り付いてしまっている。
【0011】
尤も、上述したように、シリコンウォール形成時の厚みを比較的厚めにしておけば貼り付きの問題は生じ難いが、その場合には、ウォールのアスペクト比を大きくすることが難しいことや、酸化によりウォールを薄くする際の試料や工程への負担が大きくなることや酸化膜厚の制御性が難しくなる。具体的には、ウォールを薄くするために必要な酸化膜は当然に厚くなり、酸化温度を高くするか酸化時間を長くせざるを得ない。
【0012】
また、厚みtのシリコン結晶部分を酸化すると、その部分は厚みtのシリコン酸化膜となるのではなく、概ね厚み2tのシリコン酸化膜となるのであるから、これは、酸化によりウォールを厚みtだけ薄くするためには、薄くする厚み分だけのスペースを予め設けてパターン設計しておくことが必要になることを意味する。
【先行技術文献】
【0013】

【特許文献1】特表2011-519730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このような事情を踏まえ、本発明者らは、上述したシリコンウォールの相互の貼り付きを生じさせないためのプロセスにつき誠意検討を重ねてきた。本発明の目的は、シリコンウォールの貼り付きを生じさせずにシリコンナノウォール構造体を製造するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明に係るシリコンナノウォール構造体は、シリコン基板上に複数のシリコンナノウォール(SNW)が実質的に等間隔でアレイ状に形成された構造体であって、前記SNWの厚みの平均値Wが20nm以下であり、且つ、相互に隣接するSNWとの間隔Dが30nm以下である、ことを特徴とする。
【0016】
好ましくは、前記SNWの高さの平均値をHとしたときのアスペクト比(R=H/W)が100以上である。
【0017】
また、好ましくは、前記シリコン基板および前記SNWの導電型はn型又はp型である。
【0018】
さらに、好ましくは、前記シリコン基板の主面は{110}面である。
【0019】
ある態様では、前記複数のSNWの側壁面にパッシベーション膜が形成されている。
【0020】
また、ある態様では、前記相互に隣接するSNWの間隔Dの領域にシリコン酸化物又はシリコン酸化物以外の絶縁物で充填されている。
【0021】
本発明に係るシリコンナノウォール構造体の製造方法は、シリコン基板上に実質的に等間隔で並行して延在するストライプ状のパターンにマスクを形成する工程Aと、前記マスクから露出する結晶領域を前記シリコン基板の深さ方向に薬液によりエッチングして複数のシリコンナノウォール(SNW)を形成する工程Bと、前記マスク部分を薬液によるエッチングにより除去する工程Cとを備え、前記工程Bから前記工程Cへの移行を前記シリコン基板が液中に浸漬された状態で行う、ことを特徴とする。
【0022】
好ましくは、前記工程Cを、シリコン結晶のバンドギャップよりも大きいエネルギの波長の光を用いる光アシストエッチング法により実行する。
【0023】
ある態様では、前記工程Cの後工程として、前記複数のSNWの側壁面を薬液中で酸化してパッシベーション膜を形成する工程、又は、シリコンナノウォール(SNW)の側壁面を薬液により酸化する工程である工程Dを備え、前記工程Bから工程Cまで、又は、前記工程Cから工程Dまでを、前記シリコン基板が液中に浸漬された状態で行う。
【0024】
例えば、前記工程Cの光アシストエッチングに用いられる薬液は、フッ酸(HF)と硝酸(HNO3)の混酸、若しくは、フッ酸(HF)と過酸化水素(H22)の混合液である。
【0025】
また、例えば、前記工程Cの光アシストエッチングに用いられる薬液の酸濃度は1%以下である。
【0026】
また、ある態様では、前記工程CもしくはDの後工程として、前記複数のSNWの側壁面を熱酸化する工程Eを備えている。
【発明の効果】
【0027】
従来方法では、上述したシリコンウォールの貼り付き現象のため、エッチングにより形成するシリコンウォールは比較的厚いものとせざるを得ず、その後の熱酸化によって厚みを薄くするという手法がとられていた。これに対し、本発明では、シリコン基板の深さ方向にウェットエッチングして複数のシリコンナノウォールを形成する工程からマスク部分をウェットエッチングにより除去する工程への移行をシリコン基板がエッチング液、洗浄液中に浸漬された状態で行う、又は、その後のウェット酸化(薬液による酸化)の工程を液中に浸漬された状態で行うこととした。
【0028】
その結果、シリコンウォールの側壁面はエッチング液、洗浄液、酸化液等に触れた状態にあり、隣接するシリコンウォールとの貼り付きが防止されるため、エッチングにより、従来のものよりも薄いシリコンウォールの形成が可能である。液中のままウェット酸化でパッシベーション形成、又は、目的とするシリコンナノウォール(SNW)の薄さまで形成することが可能である。その後の熱酸化によって厚みを薄くする際の試料、工程への負担が軽減される。マスク部分のウェットエッチングに光アシストエッチングを用いることによりエッチャントの濃度低下、SNW幅を揃える効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】シリコンナノウォール構造体の、従来の製造プロセスを概念的に説明するための図である。
【図2】シリコンウォール形成時の異方性エッチング後に液槽から外部に取り出した際のシリコンウォールの様子(a)、および、シリコンウォールの上端部に残存する窒化シリコン膜110bを除去するためのエッチング後に液槽から外部に取り出した際のシリコンウォールの様子(b)、を示すSEM像である。
【図3】本発明に係るシリコンナノウォール構造体の構成の一例の概略を説明するための断面図である。
【図4】本発明に係るシリコンナノウォール構造体の製造プロセスの一例を概念的に説明するための図である。
【図5】シリコンナノウォール構造体の製造方法における、光アシストエッチング法を追加する前のシリコンウォールの様子(a)、光アシストエッチング法を追加してマスク部分を除去した後のシリコンウォールの様子(b)、および、シリコンウォールを形成したシリコン基板表面近傍の様子(c)を示すSEM像である。
【図6】シリコンナノウォール構造体を製造するに際し、従来の方法(ウェットエッチング)でシリコンウォールを形成したウォールの厚みの分布と、その後に光アシストエッチングを追加したウォールの厚みの分布を、比較して示したグラフである。
【図7】本発明を実施するに際して用いるエッチング槽(液槽)の態様を例示して示す断面概略図で、図7(a)はバスタブ型の液槽の例であり、図7(b)はスピンエッチャー型の液槽の例である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下では、厚みが10nmを超えるシリコンウォールも、シリコンナノウォール(SNW)と称することもある。

【0031】
図3は、本発明に係るシリコンナノウォール構造体の構成の一例の概略を説明するための断面図である。

【0032】
シリコン基板10上には複数のシリコンナノウォール(SNW)20が実質的に等間隔でアレイ状に形成されている。

【0033】
なお、シリコン基板10の導電型はp型でもn型でもよいが、n型であることが好ましい。これは、後述する光アシストエッチングの際、多数キャリアが電子であるn型シリコンにおいては、仮にシリコンウォールに厚い領域と薄い領域があっても、そのウォール幅の不均一性が緩和される傾向が大きいためである。

【0034】
この点について簡単に説明しておくと、光照射によりシリコン結晶内には電子・正孔対が生じるが、その発生量は、シリコンウォール幅が厚い領域では相対的に多く、薄い領域では相対的に少ない。光アシストエッチングで重要な役割を果たすのは正孔であるが、光照射で生じた正孔はシリコンウォールの側壁面に向かって移動する。エッチャントがフッ酸である場合、シリコンウォールの側壁面において下記の反応が生じてエッチングが進行する。

【0035】
Si+6HF+2正孔→H2SiF6+H2+2H+

【0036】
よって、光照射で生じた正孔が相対的に多いシリコンウォール幅が厚い領域では相対的にエッチングが速く進行する一方、光照射で生じた正孔が相対的に少ないシリコンウォール幅が薄い領域では相対的にエッチングが遅く進行する。その結果として、ウォール幅の不均一性が緩和されることになる。なお、シリコン基板10の導電型がn型であれば、当然に、SNWの導電型もn型となる。

【0037】
シリコン基板10の主面は{110}面であることが好ましい。これは、シリコン基板10の主面が{110}面であると、{111}面は主面に垂直な結晶面となる(例えば(1,1,0)面と(1,-1,1)面)が、この{111}面はシリコン結晶の最稠密面であって選択エッチングに好適な面であるから、この面をシリコンウォールの側壁面と出来れば、アスペクト比の高いシリコンナノウォールを形成しやすいためである。

【0038】
なお、図3中において符号30で示したものは、複数のSNWの側壁面に設けられたパッシベーション膜、SNWを薄くしたシリコン酸化物、若しくは、相互に隣接するSNWの間隔Dの領域に充填されたシリコン酸化物又はシリコン酸化物以外の絶縁物である。このようなものとしては、Atomic Layer Deposition(原子層堆積)によるアルミナを例示することができる。

【0039】
図4は、本発明に係るシリコンナノウォール構造体の製造プロセスの一例を概念的に説明するための図である。このプロセスにおいても、シリコン基板10の準備(a)から窒化シリコン膜(Si34)等のハードマスク40のパターニング(b)までの工程は、上述した従来のものと同様である。

【0040】
本発明では、パターニングされたハードマスク40を利用したシリコン基板10の深さ方向へに異方性エッチング(c)、シリコンウォール20を形成した後のシリコンウォール上端部に残存するハードマスクの除去(d)、さらに、それに続く純水洗浄、パッシベーション膜形成等(e)を、一貫して、シリコンウォールの側壁が薬液に触れた状態で行う。

【0041】
上述のとおり、従来の製造プロセスでは、上記一連のエッチングや純水洗浄等の処理は別個の液槽で行われていたため、シリコンウォールが形成された状態のシリコン基板が液槽から一旦外部に取り出された際にシリコンウォールの側壁が薬液に触れた状態にはない。このため、シリコンウォールの側壁面が外気に晒されて、上述した貼り付き現象を引き起こす。

【0042】
しかし、エッチング対象が異なるために異なるエッチャントが必要となる場合であっても、シリコンウォールの側壁が薬液に触れた状態でエッチャントの置換が行われれば、シリコンウォールの側壁の間には何らかの薬液が存在しているから、これが側壁間のバッファとして作用し、貼り付き現象は生じない。本発明者らはこの着想に基づき、本発明を成すに至った。

【0043】
すなわち、本発明に係るシリコンナノウォール構造体の製造方法では、シリコン基板上に実質的に等間隔で並行して延在するストライプ状のパターンにマスクを形成する工程Aと、前記マスクから露出する結晶領域を前記シリコン基板の深さ方向にウェットエッチングして複数のシリコンナノウォール(SNW)を形成する工程Bと、前記マスク部分をウェットエッチングにより除去する工程Cと、を備えており、前記工程Cを、シリコン結晶のバンドギャップよりも大きいエネルギの波長の光を用いる光アシストエッチング法により実行するとともに、前記工程Bから前記工程Cへの移行を前記シリコン基板がエッチング液、洗浄液といった液中に浸漬された状態で行われる。

【0044】
なお、本発明で光アシストエッチング法を採用するのは、工程Bまでで形成したシリコンナノウォール(SNW)の窒化シリコン膜(Si34)等のハードマスク40の除去を濃度の薄い酸によるエッチングを用いても加速させるものであり、且つ、シリコンナノウォール(SNW)幅の不均一性を緩和することが可能である。

【0045】
なお、上記工程Cの光アシストエッチングに用いられるエッチャントは、例えば、フッ酸(HF)と硝酸(HNO3)の混酸、若しくは、フッ酸(HF)と過酸化水素(H22)の混合液である。

【0046】
従来方法では、上述したシリコンウォールの貼り付き現象のため、エッチングにより形成するシリコンウォールは比較的厚いものとせざるを得ず、その後の熱酸化によって厚みを薄くするという手法がとられていた。これに対し、本発明では、上記工程Bから工程Cへの移行をシリコン基板がエッチング液、洗浄液などの液中に浸漬された状態で行われるため、シリコンウォールの側壁面はエッチング液、洗浄液などの液に触れた状態にあり、隣接するシリコンウォールとの貼り付きが防止されるため、エッチングにより、従来のものよりも薄いシリコンウォールの形成が可能となる。その結果、その後に熱酸化によって厚みを薄くする際の試料や工程への負担が軽減される。

【0047】
図5は、シリコンナノウォール構造体の製造方法における、光アシストエッチング法を追加する前のシリコンウォールの様子(a)、光アシストエッチング法を追加してマスク部分を除去した後のシリコンウォールの様子(b)、および、シリコンウォールを形成したシリコン基板表面近傍の様子(c)を示すSEM像である。

【0048】
図6は、シリコンナノウォール構造体を製造するに際し、従来の方法(ウェットエッチング)でシリコンウォールを形成したウォールの厚みの分布と、その後に光アシストエッチングを追加したウォールの厚みの分布を、比較して示したグラフである。

【0049】
光アシストエッチングの効果により、シリコンウォール幅が相対的に厚いもののエッチングレートは相対的に高く、シリコンウォール幅が相対的に薄いもののエッチングレートは相対的に低い。よって、この効果を利用すれば、光アシストエッチング前の段階における厚み分布(ばらつき)を小さくすることができ、厚みの均一性を高めることができる。なお、カウントしたウォールの本数は何れも261本である。熱酸化によりシリコンウォールの幅を薄くする場合には、このような厚みの均一性を高める効果は得られないから、シリコンウォールの幅をnmレベルにまで薄くすることが求められる場合の厚み均一化の手法として、光アシストエッチングは極めて有効な手法であると言える。

【0050】
上記工程Cで、光アシストエッチング法を用いた場合、エッチャントの酸濃度を低く抑えることが可能となる。一般のウェットエッチングの場合には、HF等の酸濃度は20%程度であるが、光アシストエッチング法では酸濃度を1%以下でも窒化シリコン膜(Si34)等のハードマスク40を短時間で除去することが可能であり、この後、純水等で置換する場合有利である。

【0051】
なお、熱酸化によりシリコンウォールの厚みを薄くする工程を実行するに際しては、シリコンウォールが形成されたシリコン基板を液中から取り出して熱処理炉に投入する必要があり、その際に、隣接するシリコンウォールとの貼り付きが生じるおそれがある。そこで、これを回避すべく、上記工程Cの後工程として液中で、シリコンナノウォール(SNW)幅を薄くするウェット酸化(薬液による酸化)を実施し目的の薄さまでする、又は、シリコンウォールの側壁面を薬液中で酸化してパッシベーション膜を形成する工程Dを備えるようにしてもよい。そしてこの工程Dの後工程として、シリコンウォールの側壁面を熱酸化しシリコンナノウォール(SNW)幅を目的の薄さまでにし、相互に隣接するシリコンウォールの間隔Dの領域にシリコン酸化物、又はそれ以外の絶縁物を充填する工程Eを備えるようにしてもよい。

【0052】
本発明を実施するに際して用いるエッチング槽(液槽)は種々の態様があり得る。

【0053】
図7は、本発明を実施するに際して用いるエッチング槽(液槽)の態様を例示して示す断面概略図で、図7(a)はバスタブ型の液槽の例であり、図7(b)はスピンエッチャー型の液槽の例である。

【0054】
図7(a)に示したバスタブ型の液槽では、図の左側からエッチングやリンスに用いられる薬液等(HF、HF+HNO3、HF+H22、H22、HNO3、H2Oなど)が導入され、エッチング完了、又は、酸化後には図の右側から排出される。なお、シリコン結晶10のバンドギャップよりも大きいエネルギの波長の光は液槽の上方から照射される。前工程のエッチングで用いたエッチャントを排出しながら、次工程で用いるエッチャントを導入するため、シリコン基板上に形成されたシリコンウォールの側壁面は常時、薬液に触れた状態にあり、相互の貼り付きが防止される。

【0055】
図7(b)に示したスピンエッチャー型の液槽では、液槽内に設けられた回転可能な試料ホルダ50内にシリコン基板が載置され、この試料ホルダがエッチング槽となる。この態様でも、図の左側からエッチングやリンスに用いられる薬液等(HF、HF+HNO3、HF+H22、H22、HNO3、H2Oなど)が試料ホルダ内に導入され、エッチング完了、又は、酸化後には図の右側から排出される。なお、シリコン結晶のバンドギャップよりも大きいエネルギの波長の光は液槽の上方から照射される。この場合も、前工程のエッチングで用いたエッチャントを排出しながら、次工程で用いるエッチャントを導入するため、シリコン基板上に形成されたシリコンウォールの側壁面は常時、薬液に触れた状態にあり、相互の貼り付きが防止される。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、シリコンウォールの貼り付きを生じさせずにシリコンナノウォール構造体を製造するための技術を提供する。
【符号の説明】
【0057】
10、100 シリコン基板
20、140 シリコンナノウォール(SNW)
30、150 パッシベーション膜、シリコン酸化物
40、110b ハードマスク
50 試料ホルダ
120a レジスト
130 パターンモールド
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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