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明細書 :電気化学反応器並びにそれを使用した一酸化炭素及び水蒸気からの水素及び二酸化炭素の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6480330号 (P6480330)
登録日 平成31年2月15日(2019.2.15)
発行日 平成31年3月6日(2019.3.6)
発明の名称または考案の名称 電気化学反応器並びにそれを使用した一酸化炭素及び水蒸気からの水素及び二酸化炭素の製造方法
国際特許分類 C25B   1/02        (2006.01)
C25B   1/00        (2006.01)
C25B   9/08        (2006.01)
C25B   9/18        (2006.01)
C25B  13/02        (2006.01)
C25B  13/04        (2006.01)
C25B  11/04        (2006.01)
C25B  11/06        (2006.01)
FI C25B 1/02
C25B 1/00 Z
C25B 9/08
C25B 9/18
C25B 13/02 301
C25B 13/04 301
C25B 11/04 Z
C25B 11/06 A
請求項の数または発明の数 4
全頁数 12
出願番号 特願2015-531798 (P2015-531798)
出願日 平成26年8月8日(2014.8.8)
国際出願番号 PCT/JP2014/070991
国際公開番号 WO2015/022912
国際公開日 平成27年2月19日(2015.2.19)
優先権出願番号 2013168640
優先日 平成25年8月14日(2013.8.14)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成29年7月10日(2017.7.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】平田 好洋
【氏名】鮫島 宗一郎
【氏名】下之薗 太郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100090273、【弁理士】、【氏名又は名称】國分 孝悦
審査官 【審査官】菅原 愛
参考文献・文献 特開2010-232134(JP,A)
国際公開第2009/157454(WO,A1)
調査した分野 C25B1/00-15/08
特許請求の範囲 【請求項1】
一酸化炭素及び水蒸気から水素及び二酸化炭素を製造する電気化学反応器であって、
鉄及びガドリニウム固溶セリアを含有するアノード電極と、
コバルト及びガドリニウム固溶セリアを含有するカソード電極と、
前記アノード電極と前記カソード電極との間に設けられ、ガドリニウム固溶セリアを含有する多孔質の電解質膜と、
を有することを特徴とする電気化学反応器。
【請求項2】
メタン及び二酸化炭素から水素及び一酸化炭素を生成する第1の電気化学反応器と、
水蒸気及び前記第1の電気化学反応器により生成された一酸化炭素から水素及び二酸化炭素を生成する第2の電気化学反応器と、
を有し、
前記第2の電気化学反応器は、
鉄及びガドリニウム固溶セリアを含有するアノード電極と、
コバルト及びガドリニウム固溶セリアを含有するカソード電極と、
前記アノード電極と前記カソード電極との間に設けられ、ガドリニウム固溶セリアを含有する多孔質の電解質膜と、
を有することを特徴とする複合電気化学反応器。
【請求項3】
電気化学反応器のアノード電極とカソード電極との間に電圧を印加する工程と、
前記カソード電極に向けて水蒸気及び一酸化炭素を含むガスを供給する工程と、
を有し、
前記電気化学反応器は、
鉄及びガドリニウム固溶セリアを含有するアノード電極と、
コバルト及びガドリニウム固溶セリアを含有するカソード電極と、
前記アノード電極と前記カソード電極との間に設けられ、ガドリニウム固溶セリアを含有する多孔質の電解質膜と、
を有することを特徴とする水素及び二酸化炭素の製造方法。
【請求項4】
メタン及び二酸化炭素から水素及び一酸化炭素を生成する第1の電気化学反応器と、水蒸気及び前記第1の電気化学反応器により生成された一酸化炭素から水素及び二酸化炭素を生成する第2の電気化学反応器とを有する複合電気化学反応器の前記第1の電気化学反応器のアノード電極とカソード電極との間に電圧を印加する工程と、
前記複合電気化学反応器の前記第2の電気化学反応器のアノード電極とカソード電極との間に電圧を印加する工程と、
前記第1の電気化学反応器の前記カソード電極に向けてメタン及び二酸化炭素を含むガスを供給する工程と、
を有し
前記第2の電気化学反応器は、
鉄及びガドリニウム固溶セリアを含有するアノード電極と、
コバルト及びガドリニウム固溶セリアを含有するカソード電極と、
前記アノード電極と前記カソード電極との間に設けられ、ガドリニウム固溶セリアを含有する多孔質の電解質膜と、
を有することを特徴とする水素及び二酸化炭素の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学反応器並びにそれを使用した水素及び二酸化炭素の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
(1)式で示すように、一酸化炭素及び水蒸気から水素及び二酸化炭素を得ることができる。
CO+HO→H+CO・・・(1)
【0003】
水素は燃料電池の燃料として使用することができる。二酸化炭素をメタンと反応させると、(2)式で示すように、水素及び一酸化炭素を得ることができる。
CH+CO→2H+2CO・・・(2)
【0004】
この反応で得られた一酸化炭素は(1)式の反応に用いることができる。従って、(1)式の反応及び(2)式の反応を組み合わせれば、温室効果ガスである二酸化炭素及びメタンを反応系外に放出することなく水素を製造することができる。メタンは天然ガスに含有され、また、家畜の排泄物及び下水の汚泥のメタン発酵で発生したガス、いわゆるバイオガスにも含有されている。
【0005】
しかしながら、従来、(1)式の反応を効率よく生じさせることは困難である。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】国際公開第2009/157454号
【0007】

【非特許文献1】74th CATSJ Meeting Abstract, Vol. 36, No. 1 B06, pp. 452-455 (1994)
【非特許文献2】J. Power Sources, 182(2) (2008) 496-502
【非特許文献3】Inter. J. Hydro. Energy, 36(14) (2011) 8307-8315
【非特許文献4】Ceram. Inter., 35 (2009) 2023-2028
【非特許文献5】J. Ceram. Soc. Japan, 117(11) (2009) 1147-1152
【非特許文献6】Ceram. Inter., 38 (2012) 6713-6721
【非特許文献7】J. Ceram. Soc. Japan, 119(11) (2011) 763-769
【非特許文献8】The Japan Institute of Metals (Ed.), Metal Data Book, Maruzen, Tokyo, 1987, pp.12-13
【非特許文献9】Introduction to Ceramics, 2nd Ed., John Wiley & Sons, New York, 1976, p.867
【非特許文献10】J. Radio. Nucl. Chem. Lett., 118(1) (1987) 33-43
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、一酸化炭素及び水蒸気から高効率で水素及び二酸化炭素を製造することができる電気化学反応器並びにそれを使用した水素及び二酸化炭素の製造方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電気化学反応器は、一酸化炭素及び水蒸気から水素及び二酸化炭素を製造する電気化学反応器であって、鉄及びガドリニウム固溶セリアを含有するアノード電極と、コバルト及びガドリニウム固溶セリアを含有するカソード電極と、前記アノード電極と前記カソード電極との間に設けられ、ガドリニウム固溶セリアを含有する多孔質の電解質膜と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る水素及び二酸化炭素の製造方法は、上記の電気化学反応器のアノード電極とカソード電極との間に電圧を印加する工程と、前記カソード電極に向けて水蒸気及び一酸化炭素を含むガスを供給する工程と、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る複合電気化学反応器は、メタン及び二酸化炭素から水素及び一酸化炭素を生成する第1の電気化学反応器と、水蒸気及び前記第1の電気化学反応器により生成された一酸化炭素から水素及び二酸化炭素を生成する第2の電気化学反応器と、を有し、前記第2の電気化学反応器は、鉄及びガドリニウム固溶セリアを含有するアノード電極と、コバルト及びガドリニウム固溶セリアを含有するカソード電極と、前記アノード電極と前記カソード電極との間に設けられ、ガドリニウム固溶セリアを含有する多孔質の電解質膜と、を有することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る他の水素及び二酸化炭素の製造方法は、上記の複合電気化学反応器の前記第1の電気化学反応器のアノード電極とカソード電極との間に電圧を印加する工程と、前記複合電気化学反応器の前記第2の電気化学反応器のアノード電極とカソード電極との間に電圧を印加する工程と、前記第1の電気化学反応器の前記カソード電極に向けてメタン及び二酸化炭素を含むガスを供給する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高い効率で一酸化炭素及び水蒸気から水素及び二酸化炭素を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る電気化学反応器の構成を示す模式図である。
【図2】図2は、GDC粉体を作製する方法を示す図である。
【図3】図3は、アノード電極用の粉体を作製する方法を示す図である。
【図4】図4は、カソード電極用の粉体を作製する方法を示す図である。
【図5】図5は、アノード電極用の粉体及びカソード電極用の粉体から共焼結体を作製する方法を示す図である。
【図6】図6は、シフト反応における標準ギブス自由エネルギ変化(ΔG)の温度依存性を示すグラフである。
【図7】図7は、出口ガスの組成を示すグラフである。
【図8】図8は、シフト反応前後のカソード電極におけるX線回折パターンを示すグラフである。
【図9】図9は、シフト反応前後のアノード電極におけるX線回折パターンを示すグラフである。
【図10】図10は、出口ガスの流量及び電流密度を示すグラフである。
【図11】図11は、200℃~400℃で30時間の反応中の出口ガスの組成を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る電気化学反応器の構成を示す模式図である。

【0016】
本実施形態に係る複合電気化学反応器1には、図1に示すように、炭酸ガス改質用の電気化学反応器10、及びシフト反応用の電気化学反応器20が含まれている。

【0017】
電気化学反応器10では、アノード電極11とカソード電極12との間に、ガドリニウム固溶セリア(GDC:gadolinium-doped ceria)の電解質膜13が挟持されている。アノード電極11は、例えば触媒金属MとGDCとの混合物の多孔質体から構成されている。カソード電極12は、例えば触媒金属MとGDCとの混合物の多孔質体から構成されている。例えば、触媒金属MはNi及び/又はRuであり、触媒金属MはRu及び/又はCuである。電解質膜13は、例えばGDCの多孔質体から構成されている。GDCの組成は特に限定されないが、例えばCe0.8Gd0.21.9で表される。このようにして、電気化学反応器10が構成されている。

【0018】
電気化学反応器20では、アノード電極21とカソード電極22との間に、GDCの電解質膜23が挟持されている。アノード電極21は、例えば鉄(Fe)及びGDCを含む混合物の多孔質体から構成され、その開気孔率は、例えば41%程度である。カソード電極22は、例えばコバルト(Co)及びGDCを含む混合物の多孔質体から構成され、その開気孔率は、例えば43%程度である。電解質膜23は、例えばGDCの多孔質体から構成されている。GDCの組成は特に限定されないが、例えばCe0.8Gd0.21.9で表される。例えば、アノード電極21の厚さは5mm程度、カソード電極22の厚さは5mm程度、電解質膜23の厚さは0.5mm程度である。ここでいう厚さとは、アノード電極21とカソード電極22とを結ぶ方向における寸法である。このようにして、電気化学反応器20が構成されている。

【0019】
ここで、本実施形態に係る複合電気化学反応器1の動作について説明する。電気化学反応器10及び20は、例えば、アノード電極11とカソード電極22とが対向するように管2に入れられて使用される。電気化学反応器10では、アノード電極11とカソード電極12との間に1V~5V程度の電圧が印加され、電気化学反応器20では、アノード電極21とカソード電極22との間に1V~5V程度の電圧が印加される。また、例えば、電気化学反応器10の温度は700℃~800℃程度とされ、電気化学反応器20の温度は300℃~500℃とされる。

【0020】
カソード電極12に向けて、メタン(CH)及び二酸化炭素(CO)を含む原料ガスが供給されると、カソード電極12において、(11)式~(12)式に示す反応が生じる。
+CO→MO+CO・・・(11)
O+2e→M+O2-・・・(12)

【0021】
従って、カソード電極12では、(13)式に示す二酸化炭素の還元反応が生じることとなる。
CO+2e→CO+O2-・・・(13)

【0022】
この還元反応で生じた酸化物イオン(O2-)は一酸化炭素(CO)及びメタン(CH)と共に電解質膜13を透過し、アノード電極11まで到達する。そして、酸化物イオン(O2-)及びメタン(CH)がアノード電極11に到達すると、アノード電極11において、(14)式~(15)式に示す反応が生じる。
+O2-→MO+2e・・・(14)
CH+MO→CO+2H+M・・・(15)

【0023】
従って、アノード電極11では、(16)式に示すメタンの酸化反応が生じることとなる。
CH+O2-→CO+2H+2e・・・(16)

【0024】
(13)式及び(16)式より、電気化学反応器10における全反応の反応式は、(17)式で表わされる。
CO+CH→2H+2CO・・・(17)

【0025】
このように、電気化学反応器10により、二酸化炭素及びメタンから水素及び一酸化炭素が生成される。そして、カソード電極22に、電気化学反応器10により生成された一酸化炭素及び水素を含むガス並びに水蒸気が供給されると、カソード電極22において、(21)式~(22)式に示す反応が生じる。
Co+HO→CoO+H・・・(21)
CoO+2e→Co+O2-・・・(22)

【0026】
従って、カソード電極22では、(23)式に示す水蒸気の還元反応が生じることとなる。
O+2e→H+O2-・・・(23)

【0027】
この還元反応で生じた酸化物イオン(O2-)は水素(H)及び一酸化炭素(CO)と共に電解質膜23を透過し、アノード電極21まで到達する。そして、酸化物イオン(O2-)、水素(H)及び一酸化炭素(CO)がアノード電極21に到達すると、アノード電極21において、(24)式~(26)式に示す反応が生じる。
3Fe+4O2-→Fe+8e・・・(24)
Fe+CO→3FeO+CO・・・(25)
3FeO+O2-→Fe+2e・・・(26)

【0028】
(25)式及び(26)式より、アノード電極21では、(27)式に示す一酸化炭素の酸化反応が生じることとなる。FeのFe原子価の変化(Fe2+←→Fe3+)が一酸化炭素(CO)と酸化物イオン(O2-)との間の反応を促進する。
CO+O2-→CO+2e・・・(27)

【0029】
更に、酸化物イオン(O2-)、水素(H)及び一酸化炭素(CO)がアノード電極21に到達すると、アノード電極21において、(28)式~(30)式に示す反応も生じる。
2Fe+10Ce0.8Gd0.21.9+3O2-→2GdFeO+8CeO+6e・・・(28)
2GdFeO+CO→2FeO・Gd+CO・・・(29)
2FeO・Gd+O2-→2GdFeO+2e・・・(30)

【0030】
(29)式及び(30)式より、アノード電極21では、(31)式に示す一酸化炭素の酸化反応も生じることとなる。GdFeOのFe原子価の変化(Fe2+←→Fe3+)が一酸化炭素(CO)と酸化物イオン(O2-)との間の反応を促進する。
CO+O2-→CO+2e・・・(31)

【0031】
(23)式、(27)式、及び(31)式より、電気化学反応器20では、(32)式に示す反応が生じる。
CO+HO→CO+H・・・(32)

【0032】
このように、電気化学反応器20により、一酸化炭素及び水蒸気から二酸化炭素及び水素が生成される。

【0033】
そして、電気化学反応器10及び電気化学反応器20を含む複合電気化学反応器1では、(33)式に示す反応が生じる。
CH+CO+2HO→4H+2CO・・・(33)

【0034】
つまり、複合電気化学反応器1を用いれば、メタン、二酸化炭素及び水蒸気から水素及び二酸化炭素を製造することができる。(33)式より、電気化学反応器20から排出されるガスには、概ね67体積%の水素及び33体積%の二酸化炭素が含まれる。

【0035】
電気化学反応器20から排出される二酸化炭素は、再び電気化学反応器10に供給して再利用することができる。また、電気化学反応器20から排出される二酸化炭素を低温加圧下でドライアイスとして水素から分離してもよい。アノード電極21に含まれるFeが、(34)式で表される酸素ガスの生成(副反応)を抑制することができる。このため、高い効率で水素を得ることができる。
2O2-→O+4e・・・(34)

【0036】
メタンとしては天然ガス及びバイオガス等に含まれたものを用いることができる。本実施形態は、バイオガスの利用に特に好適である。これは、バイオガスは50体積%~70体積%のメタン及び30体積%~50体積%の二酸化炭素を含有していることが多いからである。つまり、バイオガスはカソード電極22に供給するメタンのみならず二酸化炭素をも含有しているからである。

【0037】
次に、電気化学反応器20を製造する方法について説明する。

【0038】
先ず、GDC粉体を作製する。図2は、GDC粉体を作製する方法を示す図である。GDC粉体の作製では、先ず、0.2MのCe(NO水溶液及び0.2MのGd(NO水溶液を、Ce及びGdのモル比を4対1として混合する(Ce:Gd=4:1)。次いで、この混合液を0.4Mのシュウ酸水溶液に加え、共沈させる。この結果、シュウ酸塩共沈物が得られる。その後、ろ過及び乾燥を行う。例えば、乾燥の温度は100℃とし、その時間は24時間とする。続いて、600℃で1時間の仮焼を空気中で行う。次いで、直径が3mmのアルミナ球を用いたボールミルにより粉化を24時間行い、GDC粉体を得る。

【0039】
次いで、アノード電極21用の粉体及びカソード電極22用の粉体を個別に作製する。図3は、アノード電極21用の粉体を作製する方法を示す図であり、図4は、カソード電極22用の粉体を作製する方法を示す図である。図5は、アノード電極21用の粉体及びカソード電極22用の粉体から共焼結体を作製する方法を示す図である。

【0040】
アノード電極21用の粉体の作製では、図3に示すように、先ず、Fe(NO・9HOを600℃で2時間、空気中で仮焼する。仮焼により熱分解が生じ、Fe粉体が得られる。次いで、Fe粉体及びGDC粉体をFe量に換算してFe:GDC=30:70の体積比で混ぜ合わせ、この混合物の懸濁液(サスペンション)を作製する。溶媒には水を用いる。このサスペンションの作製に際しての攪拌は手動で行い、その時間は20分間とする。その後、自然乾燥を2日間、空気中で行う。この結果、アノード電極21用の粉体として、Fe-GDC粉体が得られる。

【0041】
カソード電極22用の粉体の作製では、図4に示すように、先ず、粉砕したGDC粉体及び0.4MのCo(NO水溶液をCo量に換算してCo:GDC=30:70の体積比で混ぜ合わせ、この混合物の懸濁液(サスペンション)を作製する。このサスペンションの作製に際しての攪拌時間は、例えば24時間とする。次いで、凍結乾燥を行い、更に、800℃で2時間の仮焼を空気中で行う。この結果、カソード電極22用の粉体として、Co-GDC粉体が得られる。

【0042】
そして、図5に示すように、アノード電極21用の粉体の層とカソード電極22用の粉体の層との間に電解質膜23用のGDC電解質粉体の層を挟み込み、80MPaで一軸加圧成形(積層方向の加圧)を1分間行う。次いで、150MPaでの等方加圧成形を1分間行う。その後、800℃で2時間の共焼結を空気中で行う。その後、800℃程度で、3体積%程度のHOを含むHガスを50ml/分の流量で24時間、カソード電極22側から供給することにより、カソード電極22用の粉体中のCoをCoに還元し、アノード電極21用の粉体中のFeをFeに還元する。これらの一連の処理により、アノード電極21、カソード電極22及び電解質膜23を備えた電気化学反応器を製造することができる。

【0043】
次に、本発明者らが行った実験について説明する。この実験では、上記の実施形態と同様の構成の電気化学反応器を構築し、この電気化学反応器の特性の調査を行った。

【0044】
先ず、上記の実施形態と同様の方法で共焼結までの処理を行った。アノード電極21用の粉体の層の厚さは5mm、カソード電極22用の粉体の層の厚さは5mm、電解質膜23用のGDC電解質粉体の層の厚さは0.5mmとした。GDC電解質粉体の層の直径は10mmとした。次いで、アノード電極21用の粉体の層及びカソード電極22用の粉体の層の各々に、Pt線を溶接したPtメッシュを接着した。接着にはPtペーストを用いた。また、これら3層の積層体をアルミナホルダに設置し、その後に900℃で10分間、ガラスリングを加熱することで封着を行った。続いて、800℃まで冷却し、3体積%程度のHOを含むHガスを50ml/分の流量で24時間、カソード電極22側から供給することにより、カソード電極22用の粉体中のCoをCoに還元し、アノード電極21用の粉体中のFeをFeに還元した。このようにして、アノード電極21、カソード電極22及び電解質膜23を備えた電気化学反応器20を得た。次いで、ポテンショスタット(HA-501G, Hokuto Denko Co., Japan)によりアノード電極21とカソード電極22との間に1Vの電圧を印加した上で、10体積%のCO及び90体積%のArの混合ガスに更に水蒸気を混合させたガスをカソード電極22に向けて供給した。CO及びArの混合ガスの流量は81.2ml/分とし、水の流量は2.9ml/時とした。このときのCO/HOのモル比は1/7.35である。

【0045】
そして、出口ガスの組成を100℃で分析した。この分析には、活性炭(60/80メッシュ)及び熱伝導度検出器を有するガスクロマトグラフィ(GC7100, J-Science Lab Co. Ltd., Japan)を用いた。また、X線回折装置(RINT 2200PCH/KG, Rigaku Co., Japan)を用いてアノード電極21及びカソード電極22を構成する物質の解析を行った。

【0046】
図6に、(32)式で表されるシフト反応における標準ギブス自由エネルギ変化(ΔG)の温度依存性を示す。水素ガスは857℃以下で発生する。HOガスの分解エネルギを減少させるために反応温度は低いことが望ましい。非特許文献7に記載されたシフト反応に用いられるサーメット触媒(Co-Mo-K/Al、Ru/Fe、Cu/ZnO/Al、Au/CeO、Pt/CeO、Au/TiO)は200℃~350℃の比較的低温で高い性能を示しており、図6に示す熱力学計算の結果と一致する。

【0047】
図7に、上記の方法で測定した出口ガスの組成を示す。電気化学反応器20の温度は400℃~700℃とした。一定の温度でガス割合を測定した後、印加電圧のスイッチを切り、供給ガスをアルゴンガスに切り換えた。反応温度が次の温度に達した後、COガスと水蒸気を再び供給し、電圧を印加した。したがって、反応温度が変化した後、ガス組成は時間とともに次第に定常状態に達した。図7に示すように、水素及び二酸化炭素を同程度に大量に含む混合ガスが得られた。また、水素の割合は温度が低いほど高かった。この結果も、図6に示す熱力学計算の結果と一致する。更に、酸素ガスの生成量はいずれの温度においても少なかった。酸素ガスの生成は(34)式に示す放電と関係づけられる。

【0048】
図8に、700℃でのシフト反応前後のカソード電極22におけるX線回折パターンを示す。図8中の(a)はシフト反応前のX線回折パターンを示し、(b)はシフト反応後のX線回折パターンを示す。上記のように、シフト反応の前にCoは水素により金属Coに還元されている。そして、金属Coはシフト反応における触媒として作用する。2θ=20°~26°に現れている散乱した回折ピークは、電気化学反応器を固定するために用いた型の材料であるフェノール樹脂に起因する。

【0049】
図9に、700℃でのシフト反応前後のアノード電極21におけるX線回折パターンを示す。図9中の(a)はシフト反応前のX線回折パターンを示し、(b)はシフト反応後のX線回折パターンを示す。Fe及びGDCは空気中でほとんど反応することなく、化学的に安定だった。シフト反応後のアノード電極21には、Fe、Fe及び、GdFeO、及びGDCの存在が確認された。

【0050】
図8及び図9に示す結果から、上記の(21)式~(32)式の反応が生じていることが裏付けられた。

【0051】
図10に、上記の方法で測定した出口ガスの流量及び電流密度を示す。カソード電極22に向けて供給したガスの温度は400℃~700℃とした。図10に示すように、いずれの温度においても安定した流量のガスが得られた。電流密度は、400℃~600℃では、温度の上昇に伴って低下するという傾向が現れた。この結果は、低い電気伝導度を有するFe及びGdFeOが、Feを含有するアノード電極21の酸化により生成したことを裏付けていると考えられる((24式)及び(28式)参照)。非特許文献9によればFeの電気伝導度は77℃で10S・cm-1であり、非特許文献10によればGdFeOの電気伝導度は280℃~560℃で0.33S・cm-1であり、非特許文献8によればFeの電気伝導度は400℃で2.3×10S・cm-1である。電流密度が700℃で600℃よりも高くなったが、これは、電解質膜23を透過する酸化物イオン(O2-)の拡散係数が700℃において600℃よりも高かったためであると考えられる。これが、(26)式の反応及び(30)式の反応を促進させている。

【0052】
図11に、電気化学反応器の200℃~400℃での耐久性を示す。200℃、300℃、400℃の各温度で10時間運転し、電気化学反応器の出口ガスの組成を調べた。400℃では、反応開始から2時間は水素ガスの割合が徐々に増加し、その後8時間にわたり水素及び二酸化炭素が安定的に生成した。温度の低下に伴い、水素ガスの割合は低下した。上記の400℃~700℃での水素割合は低温ほど高くなるという傾向も考慮すると、この電気化学反応器では400℃で最も効率よくシフト反応が進行することが分かった。

【0053】
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、例えば、電気化学反応器に関連する産業に利用することができる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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