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明細書 :創傷または線維症の治療剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6238319号 (P6238319)
登録日 平成29年11月10日(2017.11.10)
発行日 平成29年11月29日(2017.11.29)
発明の名称または考案の名称 創傷または線維症の治療剤
国際特許分類 A61K  48/00        (2006.01)
A61P  17/02        (2006.01)
A61P   1/02        (2006.01)
A61P   1/04        (2006.01)
A61P   1/16        (2006.01)
A61P   1/18        (2006.01)
A61P   9/00        (2006.01)
A61P  11/00        (2006.01)
A61P  13/12        (2006.01)
A61P  17/00        (2006.01)
A61P  21/00        (2006.01)
A61P  31/08        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P  35/02        (2006.01)
C12N  15/113       (2010.01)
FI A61K 48/00 ZNA
A61P 17/02
A61P 1/02
A61P 1/04
A61P 1/16
A61P 1/18
A61P 9/00
A61P 11/00
A61P 13/12
A61P 17/00
A61P 21/00
A61P 31/08
A61P 35/00
A61P 35/02
C12N 15/00 ZNAG
請求項の数または発明の数 6
全頁数 30
出願番号 特願2015-508606 (P2015-508606)
出願日 平成26年3月26日(2014.3.26)
国際出願番号 PCT/JP2014/058627
国際公開番号 WO2014/157380
国際公開日 平成26年10月2日(2014.10.2)
優先権出願番号 2013066606
優先日 平成25年3月27日(2013.3.27)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成29年1月19日(2017.1.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504205521
【氏名又は名称】国立大学法人 長崎大学
発明者または考案者 【氏名】森 亮一
【氏名】下川 功
個別代理人の代理人 【識別番号】100080791、【弁理士】、【氏名又は名称】高島 一
【識別番号】100125070、【弁理士】、【氏名又は名称】土井 京子
【識別番号】100136629、【弁理士】、【氏名又は名称】鎌田 光宜
【識別番号】100121212、【弁理士】、【氏名又は名称】田村 弥栄子
【識別番号】100117743、【弁理士】、【氏名又は名称】村田 美由紀
【識別番号】100163658、【弁理士】、【氏名又は名称】小池 順造
【識別番号】100174296、【弁理士】、【氏名又は名称】當麻 博文
審査官 【審査官】幸田 俊希
参考文献・文献 国際公開第2011/143511(WO,A1)
国際公開第2004/031350(WO,A1)
Siqueira,M.F. et al.,Impaired wound healing in mouse models of diabetes is mediated by TNF-alpha dysregulation and associated with enhanced actvation of forkhead box O1(FOXO1).,Diabetologia,2010年 2月,Vol.53, No.2,p.378-88
Ponugoti,B. et al.,Deregulation of FOXO1 Expression During Diabetes Contributes to Impaired Wound Healing.,Diabetes,2012年 6月,Vol.61, Suppl.1,p.A424
調査した分野 A61K 48/00
C12N 15/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
FoxO1に対するアンチセンス核酸もしくはsiRNAまたはその発現ベクターを含有する、創傷または線維症の治療剤であって、該アンチセンス核酸は、配列番号1または3の塩基配列に対応するmRNAにおける18~40個の連続する塩基配列の相補配列を含むものであり、該siRNAは、配列番号1または3の塩基配列に対応するmRNAにおける18~25個の連続する塩基配列を含むセンス鎖と、その相補配列を含むアンチセンス鎖からなるものである治療剤。
【請求項2】
線維症の治療剤である、請求項1に記載の治療剤。
【請求項3】
前記アンチセンス核酸が非修飾のホスホジエステルオリゴデオキシヌクレオチドである、請求項1または2に記載の治療剤。
【請求項4】
前記アンチセンス核酸が化学修飾されたオリゴデオキシヌクレオチドである、請求項1または2に記載の治療剤。
【請求項5】
線維症が、強皮症、腎線維症、心線維症、肺線維症、口腔線維症、心内膜心線維症、三角筋線維症、膵炎、炎症性大腸炎、クローン病、結節性筋膜炎、好酸球性筋膜炎、線維症候群、後腹膜線維症、肝線維症、肝硬変、慢性腎不全、骨髄線維症、薬剤誘導性エルゴチン中毒、リー-フラウメニ症候群における神経膠芽腫、散発性神経膠芽腫、骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性症候群、子宮癌、乳癌、カポジ肉腫、ハンセン病、コラーゲン蓄積大腸炎、急性線維症および拘縮からなる群より選ばれる請求項1~4のいずれか1項に記載の治療剤。
【請求項6】
前記アンチセンス核酸が、配列番号6~16のいずれかで表される塩基配列を含むものである、請求項1~5のいずれか1項に記載の治療剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、創傷または線維症の治療剤に関する。詳しくは、転写因子FoxO1の発現を抑制する核酸等を含有する創傷または線維症の治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚創傷治癒過程は、炎症細胞浸潤主体の「炎症期」(マウスモデルでは受傷後3日迄)、再上皮化、肉芽形成、血管新生の「増殖期」(マウスモデルでは受傷後7日頃迄)、過剰に生産された細胞外基質が分解される「成熟期」(マウスモデルでは受傷後7日頃以降)からなる生体防御反応で、一連の過程は細胞表面やサイトカインを介した細胞間相互作用で制御されている。通常、創傷治癒後に瘢痕(線維化)が残るが、胎生期の皮膚創傷修復部位では瘢痕が形成されず、皮膚組織が完全に再生する。この場合、創傷部位に炎症細胞の集簇が観察されないことから、炎症細胞が瘢痕形成に深く関与していると示唆されるが、その機序は未だ明らかでない。
【0003】
現在、創傷治癒の遅延や皮膚の線維化(瘢痕、ケロイド、肥厚性瘢痕等)の治療法として、シリコンジェルシート、増殖因子の塗布、ステロイド、圧迫療法、外科的手術等が挙げられる。基本的には、年単位の非常に長い期間をかけて行うことが一般的である。
【0004】
FoxOファミリーは、酵母からほ乳類に至るまで代謝、老化等の様々な高次生命現象に関与していることが明らかとなっている。ほ乳類における転写因子Fox0ファミリーは、FoxO1、FoxO3a、FoxO4、FoxO6によって構成されている。FoxO1については、ノックアウトマウスの解析から正常な血管新生に重要な役割を果たすことが知られている(非特許文献1)。しかし、皮膚創傷治癒過程における役割については未だ機能解析がなされていない。
【0005】
本発明者らは、オステオポンチンタンパク質に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドが創傷治癒に有効であることを見出し(非特許文献2)、特許出願している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】国際公開第2009/000129号パンフレット
【0007】

【非特許文献1】Furuyama, T., et al. (2004), J Biol Chem 279, 34741-34749
【非特許文献2】Mori, R., Shaw, T.J. and Martin, P. (2008), J Exp Med 205, 43-51
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在、創傷治癒の遅延や皮膚の線維化(瘢痕、ケロイド、肥厚性瘢痕等)の治療法として、シリコンジェルシート、増殖因子の塗布、ステロイド、圧迫療法、外科的手術等が挙げられる。基本的には、年単位の非常に長い期間をかけて行うことが一般的である。また、ケロイドになりやすい体質も示唆されているため、外科的手術を施しても再度罹患する可能性がある。本発明の目的は、創傷または臓器の線維化に対して短期間で簡便な治療手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、野生型(WT)マウスを用いて皮膚創傷治癒過程におけるFoxOファミリーの遺伝子発現動態を解析した。その結果、FoxO1およびFoxO3aは、正常皮膚に比べ、受傷後3日および7日目において、顕著に発現上昇が認められた。次に、FoxO1ヘテロ(ht)マウス(ノックアウト(KO)マウスは胎生致死)およびFoxO3a KOマウスを用いて、皮膚創傷治癒の肉眼的観察を行った。その結果、FoxO1 htマウスでは、コントロール(WT)マウスに比べ明らかな治癒の促進が認められたが、FoxO3a KOマウスでは明らかな差は認められなかったという知見に基づいて、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下に示す通りである。
【0010】
〔1〕 FoxO1の発現を特異的に阻害する物質を含有する、創傷または線維症の治療剤。
〔2〕 前記阻害物質が、アンチセンス核酸、RNAi誘導性核酸もしくはリボザイムまたはそれらの発現ベクターである、〔1〕に記載の治療剤。
〔3〕 前記アンチセンス核酸が、配列番号1または3の塩基配列に対応するmRNAにおける18~40個の連続する塩基配列の相補配列を含むものである、〔2〕に記載の治療剤。
〔4〕 前記アンチセンス核酸が非修飾のホスホジエステルオリゴデオキシヌクレオチドである、〔2〕または〔3〕に記載の治療剤。
〔5〕 前記アンチセンス核酸が化学修飾されたオリゴデオキシヌクレオチドである、〔2〕または〔3〕に記載の治療剤。
〔6〕 前記RNAi誘導性核酸がsiRNAである、〔2〕に記載の治療剤。
〔7〕 前記siRNAが、配列番号1または3の塩基配列に対応するmRNAにおける18~25個の連続する塩基配列を含むセンス鎖と、その相補配列を含むアンチセンス鎖からなるものである、〔6〕に記載の治療剤。
〔8〕 線維症が、強皮症、腎線維症、心線維症、肺線維症、口腔線維症、心内膜心線維症、三角筋線維症、膵炎、炎症性大腸炎、クローン病、結節性筋膜炎、好酸球性筋膜炎、線維症候群、後腹膜線維症、肝線維症、肝硬変、慢性腎不全、骨髄線維症、薬剤誘導性エルゴチン中毒、リー-フラウメニ症候群における神経膠芽腫、散発性神経膠芽腫、骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性症候群、子宮癌、乳癌、カポジ肉腫、ハンセン病、コラーゲン蓄積大腸炎、急性線維症および拘縮からなる群より選ばれる、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の治療剤。
〔9〕FoxO1の発現を特異的に阻害する物質の治療上有効量をそれを必要とする対象に投与する工程を含有する、創傷または線維症の治療方法。
〔10〕前記阻害物質が、アンチセンス核酸、RNAi誘導性核酸もしくはリボザイムまたはそれらの発現ベクターである、〔9〕に記載の治療方法。
〔11〕前記アンチセンス核酸が、配列番号1または3の塩基配列に対応するmRNAにおける18~40個の連続する塩基配列の相補配列を含むものである、〔10〕に記載の治療方法。
〔12〕前記アンチセンス核酸が非修飾のホスホジエステルオリゴデオキシヌクレオチドである、〔10〕または〔11〕に記載の治療方法。
〔13〕前記アンチセンス核酸が化学修飾されたオリゴデオキシヌクレオチドである、〔10〕または〔11〕に記載の治療方法。
〔14〕前記RNAi誘導性核酸がsiRNAである、〔10〕に記載の治療方法。
〔15〕前記siRNAが、配列番号1または3の塩基配列に対応するmRNAにおける18~25個の連続する塩基配列を含むセンス鎖と、その相補配列を含むアンチセンス鎖からなるものである、〔14〕に記載の治療方法。
〔16〕線維症が、強皮症、腎線維症、心線維症、肺線維症、口腔線維症、心内膜心線維症、三角筋線維症、膵炎、炎症性大腸炎、クローン病、結節性筋膜炎、好酸球性筋膜炎、線維症候群、後腹膜線維症、肝線維症、肝硬変、慢性腎不全、骨髄線維症、薬剤誘導性エルゴチン中毒、リー-フラウメニ症候群における神経膠芽腫、散発性神経膠芽腫、骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性症候群、子宮癌、乳癌、カポジ肉腫、ハンセン病、コラーゲン蓄積大腸炎、急性線維症および拘縮からなる群より選ばれる〔9〕~〔15〕のいずれか1項に記載の治療方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の治療剤によれば、FoxO1を標的とすることにより、炎症、上皮再生、肉芽組織形成等といった炎症と組織修復の同時制御が可能となる。したがって、がん、アルツハイマー、心筋梗塞等の炎症または細胞増殖が関連する病態の治療法としても効果を発揮することが期待されるため、応用性および有益性が非常に高い。皮膚においては、FoxO1を標的とすることにより、皮膚の創傷の障害部位において、再上皮化が促進されるばかりでなく、膠原線維の過剰な蓄積である瘢痕(肥厚性瘢痕など)またはケロイドの形成が抑制され、外観も良好な創傷治癒を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】転写因子FoxOファミリーの皮膚創傷治癒過程における発現動態を示すグラフである。FoxOファミリー遺伝子の発現レベルは18S rRNAの発現を内部標準としてその比で示す。
【図1B】FoxO1 ht(FoxO1 +/-)マウスとコントロール(WT)マウスの皮膚創傷治癒過程を肉眼で観察した結果を示す。
【図1C】FoxO1 ht(FoxO1 +/-)マウスとコントロール(WT)マウスの皮膚創傷治癒過程における創傷領域の面積を示す。直径4mmのbiopsy punchによる創傷面積(12.56mm2)を100%として創傷後の経過日数における創傷面積をグラフに示す。
【図1D】免疫染色法を用いて創傷部位におけるFoxO1の発現を可視化した顕微鏡写真である。受傷後1日目においては、再上皮化部位および表皮基底層、毛包部位に発現が認められた。矢印は再上皮化先端部、矢頭は創縁を示す。
【図1E】免疫染色法を用いて、創傷部位におけるFoxO1の発現細胞の同定を行った結果を示す。受傷後7日目の創傷部においては、創傷部に浸潤したマクロファージに発現が認められた。
【図1F】免疫染色法を用いて、創傷部位におけるFoxO1の発現細胞の同定を行った結果を示す。受傷後7日目の創傷部においては、血管内皮細胞に発現が認められた。
【図1G】FoxO1 ht(FoxO1 +/-)マウスおよびWTマウスにおける受傷後3日目の再上皮化を組織学的に調べた顕微鏡写真である。矢印は再上皮化先端部、矢頭は創縁を示す。
【図1H】FoxO1 ht(FoxO1 +/-)マウスおよびWTマウスにおける受傷後3日目の再上皮化の程度を測定したグラフである。
【図1I】マッソントリクローム染色法を用いて、FoxO1 ht(FoxO1 +/-)マウスおよびWTマウスにおける受傷後14日目の肉芽組織を調べた顕微鏡写真である。
【図1J】受傷後14日目の肉芽組織の領域の定量結果を示す(n = 6)。値は平均 ± SEMを示す。
【図2】FoxO1 ht(FoxO1 +/-)マウスおよびWTマウスの受傷後3日目および7日目の受傷部位におけるマクロファージの浸潤数を調べたグラフである。
【図3A】FoxO1アンチセンスオリゴヌクレオチド(AS ODN)のin vitroにおけるFoxO1 mRNAの切断結果を示す。
【図3B】FoxO1 AS ODNの8種類の候補を用いて、マウスケラチノサイト培養細胞またはマウスマクロファージ細胞株における遺伝子発現抑制効果をウエスタンブロッティング法で解析した結果を示す。
【図3C】FoxO1 AS ODNのNo.1717を用いて、遺伝子発現抑制効果の用量依存性をウエスタンブロッティング法で解析した結果を示す。
【図3D】FoxO1 AS ODNのNo.1717の遺伝子発現抑制効果の用量依存性を示すグラフである。FoxO1タンパク質の発現をβ-tnbulinタンパク質を内部標準として数値化し、コントロールオリゴデオキシヌクレオチドを用いた結果の平均の数値を1.0として相対値で示す。
【図4A】受傷後直後の創傷部にFoxO1 AS ODNまたはコントロールODNを滴下し、創傷の治癒を肉眼で観察した結果を示す。
【図4B】受傷後直後の創傷部にFoxO1 AS ODNまたはコントロールODNを滴下し、創傷治癒過程における創傷領域の面積を示す。直径4mmのbiopsy punchによる創傷面積(12.56mm2)を100%として創傷後の経過日数における創傷面積をグラフに示す。
【図5A】受傷後21日目の切開創傷での瘢痕化の肉眼による観察結果を示す。*は、傷の端を示す。 写真は、6つの独立した実験の代表例を示す。
【図5B】受傷後21日目の切開創傷部位のピクロシリウスレッド染色切片のコラーゲン線維およびアラインメントの解析結果を示す (I 型コラーゲン [赤および黄]; III型コラーゲン [緑];創縁 [矢頭])。肉芽組織は、創傷の中間点で可視化した (点線で示す)。画像は、8つの独立した実験の代表例である。非偏光イメージとして、低倍率を採用した。ボックス領域に示す高倍率の詳細は、偏光顕微鏡を用いた微分干渉コントラストイメージである。スケールバー = 50μm。
【図5C】受傷後21日目の中間創傷部位由来の 結合組織のTEMイメージを示す。高倍率の挿入図は、当該組織における異なるコラーゲン線維の直径を示す。スケールバー = 1μmおよび 100nm (挿入図)。
【図5D】受傷後21日目の創傷部位における線維の直径の全範囲のヒストグラムを示す (n = 1090線維、3尾のWT マウス由来およびn = 1354線維、3尾のFoxo1+/- マウス由来)。Foxo+/- マウスの創傷部位の線維の直径は、WTマウスよりも小さい傾向にある。
【図5E】21日目の創傷部位での空の細胞外空間の定量結果を示す (n = 3-4)。
【図5F】受傷後7日目の創傷部位でのCol1α1およびフィブロネクチンの遺伝子発現の定量結果を示す (qPCRにより測定)。18SリボソームRNAとの比較である (n = 8)。
【図6A】受傷後7日目の創傷部位でのCol1α1およびフィブロネクチンの遺伝子発現の定量結果を示す (qPCRにより測定)。 18SリボソームRNAとの比較である(n = 8)。スケールバー =10 μm。
【図6B】ELISAを用いたMPO濃度により、 Foxo1+/-マウスの創傷部位でのMPOレベルは、WTマウスに比べて有意に低下していることを示す (n = 8、1群当たり)。
【図6C】受傷後7日目の創傷部位の中間領域でF4/80 を用いたマクロファージに関する免疫組織化学である。スケールバー =10 μm。
【図6D】pNF-κB p65および全NF-κBのウエスタンイムノブロットを示す。
【図6E】全NF-κB に対するpNF-κB 活性のデンシトメトリー法による解析結果を示す (n = 4-5)。
【図7A】創傷した組織の核において、固定したオリゴヌクレオチドELISAを用いて FOXO1結合活性を測定した結果を示す。FOXO1コンセンサスオリゴヌクレオチド処理抽出物を陰性対照として用いた(n = 2-4)。
【図7B】3日目の創傷組織のウエスタンイムノブロットを示す。Foxo1+/-マウスの創傷部位で、全FOXO1および pFOXO1 (Thr24)の弱い発現を示す。両群において、全FOXO3A、pFOXO3A (Ser318/321)およびFOXO4のバンドは変化しなかった。
【図7C】pERK1/2 (Thr202/Tyr204)、全ERK1/2、pAKT (Ser473)、全AKTおよびミオシンIIbのウエスタンイムノブロットを示す。
【図7D】全ERK1/2およびAKTに対するそれぞれpERK1/2 (Thr202/Tyr204)およびpAKT (Ser473)のデンシトメトリー法による解析、ならびにミオシンIIb (n = 4-5)のデンシトメトリー法による解析結果を示す。
【図8A】FOXO1に関する免疫組織化学を示す。FOXO1 (茶) は日本人集団のヒトケロイド部位のケラチノサイトの基底層に高く存在することが明らかとなった(核をヘマトキシリンで染色する [紫])。スケールバー = 500 μm。
【図8B】FOXO1に関する免疫組織化学を示す。FOXO1 (茶) は日本人集団のヒトケロイド部位のケラチノサイトの基底層に高く存在することが明らかとなった(核をヘマトキシリンで染色する [紫]) (FOXO1 発現細(FOXO1 発現細胞 [矢頭])。スケールバー = 100 μm。
【図8C】FOXO1に関する免疫組織化学を示す。FOXO1 (茶) は日本人集団のヒトケロイド部位のケラチノサイトの基底層に高く存在することが明らかとなった(核をヘマトキシリンで染色する [紫]) (FOXO1 発現細胞 [矢頭])。スケールバー = 100 μm。
【図8D】FOXO1に関する免疫組織化学を示す。スケールバー = 500 μm。
【図8E】FOXO1に関する免疫組織化学を示す。スケールバー = 100 μm。
【図8F】FOXO1に関する免疫組織化学を示す。スケールバー = 100 μm。
【図8G】ケロイド部位のすぐ近傍の無傷の皮膚(3ケース) およびケロイド部位 (6ケース)のFOXO1陽性細胞のパーセンテージを示す。
【図8H】1名のアフリカ系アメリカ人の成熟ケロイド部位(3ケース)および2名の日本人患者の成熟ケロイド部位(6ケース)におけるFOXO1陽性細胞のパーセンテージを示す。
【図8I】FOXO1によるケロイドの悪化の提唱モデルを示す。上皮におけるFOXO1の発現上昇がケロイドの過形成の原因である。対照的に、成熟ケロイドの深い部位でFOXO1発現細胞の数が顕著に低下している。ケロイドの近傍の無傷の皮膚は正常に見える。しかしながら、FOXO1の発現は、成熟ケロイドに比べて顕著に上昇している。このことは、FOXO1陽性細胞はケロイドの拡張と関連していることを示唆する。以上まとめると、FOXO1陽性細胞の多くはコラーゲンを産生し炎症反応を促進させ、ケロイド瘢痕の増悪につながると考えられる。
【図9】Foxo1+/-マウスがLPSで誘導されたエンドトキシンショックに耐性であることを示す生存曲線である。
【図10】糖尿病モデルマウスの受傷後直後の創傷部にFoxO1 AS ODNまたはコントロールODNを滴下し、創傷の治癒を肉眼で観察した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、アミノ酸、(ポリ)ペプチド、(ポリ)ヌクレオチドなどの略号による表示は、IUPAC-IUBの規定〔IUPAC-IUB Communication on Biological Nomenclature, Eur. J. Biochem., 138: 9 (1984)〕、「塩基配列またはアミノ酸配列を含む明細書等の作成のためのガイドライン」(日本国特許庁編)、および当該分野における慣用記号に従う。

【0014】
本明細書で用いられる「創傷」という用語は、例えば、急性創傷、治癒が遅延しているか緩徐であるかまたは困難な創傷、および慢性創傷を含めた、任意の組織に対する傷害を含む。創傷の例は、開放創傷および閉鎖創傷の両方を意味する。創傷は、例えば、熱傷、切開、切除、裂傷、表皮剥離、穿通創における刺し傷、手術による創傷、挫傷、血腫、圧挫傷害、および潰瘍を含む。また、予測される速度で治癒しない創傷も含まれる。

【0015】
本出願で用いられる「線維性」疾患、障害または状態には、線維原性に関連する生物学または病理学が明らかである急性症状および慢性症状、臨床症状または無症状がさらに含まれる。線維性疾患、線維性障害または線維性状態には、細胞外マトリックス内における線維性物質の過剰生成またはマトリックス関連成分の異常で、非機能的で、かつ/または過剰な蓄積による正常組織エレメントの置換を含めた、線維状物質の過剰生成を全体的または部分的に特徴とする疾患、障害または状態が含まれる。線維性疾患、線維性障害、または線維性状態には、線維症を特徴とする、線維原性に関連する生物学または病理学が含まれる。本発明においては、上記疾患、障害または状態を総称して、「線維症」という。

【0016】
線維症の例には、皮膚に関連して、強皮症(限局性強皮症、汎発性モルフェアまたは線状強皮症を含む)、ケロイド瘢痕化、乾癬、火傷による肥厚性瘢痕化、アテローム性動脈硬化、再狭窄、および脊髄損傷によって引き起こされた偽性強皮症を含む状態から生じる線維症を含む。また、線維症の例には、腎線維症(糸球体硬化症、腎尿細管間質線維症、進行性腎疾患または糖尿病性腎症を含む)、心線維症(例えば、心筋線維症)、肺線維症(例えば、糸球体硬化症肺線維症、特発性肺線維症、珪肺症、石綿肺症、間質性肺疾患、間質線維性肺疾患および化学療法/放射線照射により誘導される肺線維症)、口腔線維症、心内膜心線維症、三角筋線維症、膵炎、炎症性大腸炎、クローン病、結節性筋膜炎、好酸球性筋膜炎、多様な程度で正常な筋肉組織が線維状組織により置換されることを特徴とする一般的な線維症候群、後腹膜線維症、肝線維症、肝硬変、慢性腎不全;骨髄線維症、薬剤誘導性エルゴチン中毒、リー-フラウメニ症候群における神経膠芽腫、散発性神経膠芽腫、骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性症候群、子宮癌、乳癌、カポジ肉腫、ハンセン病、コラーゲン蓄積大腸炎および急性線維症を含む。線維症の例には、眼に関連して、グレーヴズ病の眼球突出、増殖性硝子体網膜症、前嚢白内障、急性黄斑変性、角膜線維症、手術による角膜瘢痕化、柵状織切除術誘発線維症、および他の眼線維症を含む状態から生じる線維症を含む。

【0017】
線維症にはまた、拘縮が含まれうる。術後拘縮を含めた拘縮とは、緊張性痙攣もしくは線維症によるか、または正常な組織のコンプライアンス、運動、もしくは平衡(例えば、筋肉、腱、靭帯、筋膜、滑膜、関節被膜、他の結合組織、または脂肪)の喪失による、運動範囲の永久的または長期的な低下を指す。一般に、拘縮状態は、急性および慢性両方の炎症成分による線維性反応を伴いうる。その一部は、リリース手技を含めた手術と関連しうる。デュピュイトラン拘縮、ペイロニー病、およびレダーホース病などの遺伝性拘縮もまた含まれる。

【0018】
線維症は、慢性の場合も急性の場合もある。線維性状態には、組織内における過剰量の細胞外マトリックスの蓄積が含まれ、機能不全また潜在的には臓器不全を引き起こす組織を形成する、過剰量の線維状組織が含まれる。慢性線維症は、主要臓器、最も一般的には、肺、肝臓、腎臓、および/または心臓の線維症を含む。急性線維症(通常、突発的で重度の発症を伴い、短期間にわたり持続する)は、傷害、虚血性疾患(例えば、心臓発作後における心筋の瘢痕形成)、環境汚染物質、アルコール、および他の種類の毒素、急性呼吸逼迫症候群、放射線照射および化学療法による治療を含めた各形態の外傷に対する一般的な反応として生じることが典型的である。外傷により損傷したすべての組織は、特に、損傷が反復される場合、線維性となりうる。

【0019】
本発明において、「治療」とは、上記「創傷」または「線維症」の治療のみならず、予防をも含む概念である。本発明においては、「治療」には「創傷」の治癒に伴う瘢痕またはケロイドの抑制も含まれる。「皮膚ケロイド」は、皮膚上における瘢痕組織の過度な成長である。より具体的には、ケロイドおよび肥厚性瘢痕(HSC)は、外傷、炎症、手術、やけどの後に、時には同時に生じるヒトに固有な皮膚線維増殖性疾患である。これらは、真皮および皮下組織におけるコラーゲンの過剰蓄積によって特徴付けられる。通常の傷の修復の細線瘢痕の特徴とは異なり、ケロイドおよびHSCの盛んな瘢痕化は、通常、外観が損なわれ、拘縮、痒み、および痛みにも繋がる。これらの障害は、創傷治癒の基本的なプロセスにおける異常を表し、これは、細胞の遊走と増殖、炎症、サイトカインおよび細胞外マトリックス(ECM)タンパク質の増加した合成および分泌、並びに新たに合成されたマトリックスの再形成を含む。生物学的には、ケロイドは、細胞外マトリックス成分の、特に、コラーゲン、フィブロネクチン、エラスチン、およびプロテオグリカンの、過度の沈着を有する非定型線維芽細胞の集合によって特徴づけられる線維性組織である。本発明においては、FoxO1の発現を特異的に阻害することにより、「創傷」の治癒に伴う瘢痕またはケロイドを抑制することができる。

【0020】
本発明において、FoxO1は、任意の哺乳動物由来の転写因子である。哺乳動物としては、ヒトおよびヒトを除く哺乳動物が挙げられ、ヒトを除く哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ等の家畜、イヌ、ネコ等のペット、サル、オランウータン、チンパンジー等の霊長類が挙げられる。ヒトの疾患の治療のためには、ヒト由来のFoxO1に基づいて治療剤の有効成分を決定することが望ましいが、FoxO1の塩基配列およびアミノ酸配列は哺乳動物間で高度に保存されており(HomoloGene:1527を参照のこと)、他の哺乳動物のFoxO1に対する試験結果に基づいてヒトへの適用を考慮することができる。ヒトFoxO1の塩基配列およびアミノ酸配列は公知であり、例えば、FoxO1の塩基配列(配列番号1)およびアミノ酸配列(配列番号2)(GenBank Accession No. NM_002015.3)などがGenBankに登録され、公表されている。また、マウスFoxO1の塩基配列およびアミノ酸配列も公知であり、例えば、FoxO1の塩基配列(配列番号3)およびアミノ酸配列(配列番号4)(GenBank Accession No. NM_019739.3)などがGenBankに登録され、公表されている。ヒトFoxO1アミノ酸配列およびマウスFoxO1のアミノ酸配列は、BLASTNでホモロジー検索を行うと、91%の一致を示す。

【0021】
本発明の治療剤は、FoxO1の発現を特異的に阻害する物質を含有することを特徴とする。

【0022】
本発明の治療剤に有効成分として含まれるFoxO1の発現を特異的に阻害する物質は、FoxO1の転写過程に作用してその発現を特異的に阻害する物質であれば特に限定されるものではない。かかる阻害物質としては、アンチセンス核酸、RNAi誘導性核酸もしくはリボザイムまたはそれらの発現ベクターが挙げられる。

【0023】
FoxO1に対するアンチセンス核酸は、FoxO1の転写産物(mRNAまたは初期転写産物)を発現する細胞の生理的条件下で該転写産物とハイブリダイズし得る塩基配列からなり、且つハイブリダイズした状態で該転写産物にコードされるポリペプチドの翻訳を阻害し得るポリヌクレオチドをいう。アンチセンス核酸の種類はDNAであってもRNAであってもよいし、あるいはDNA/RNAキメラであってもよい。アンチセンス核酸は、非修飾(天然型)のリン酸ジエステル結合を有するものであっても、分解酵素に安定なチオリン酸型(リン酸結合のP=OをP=Sに置換)や2’-O-メチル型等の化学修飾されたヌクレオチドであってもよい。アンチセンス核酸の設計に重要な他の要素として、水溶性および細胞膜透過性を高めること等が挙げられるが、これらはリポソームやマイクロスフェアを使用するなどの剤形の工夫によっても克服できる。アンチセンス核酸の長さは、FoxO1の転写産物(例、配列番号1または配列番号3の塩基配列に対応するmRNA)と特異的にハイブリダイズし得る限り特に制限はなく、短いもので約6塩基程度、長いもので転写産物の全配列に相補的な配列を含むような配列であってもよい。合成の容易さや抗原性の問題等から、例えば約6塩基以上、好ましくは約18~約40塩基、より好ましくは約18塩基~約30塩基からなるオリゴヌクレオチドが例示される。さらに、アンチセンス核酸は、FoxO1の転写産物とハイブリダイズして翻訳を阻害するだけでなく、二本鎖DNAと結合して三重鎖(トリプレックス)を形成し、mRNAへの転写を阻害し得るものであってもよい。FoxO1に対するアンチセンス核酸は、好ましくは、配列番号6~16のいずれかで表される塩基配列(表2に示す。アンチセンス核酸がRNAの場合、TはUである)を含むものである。

【0024】
本明細書において、「相補的である」とは、塩基配列間で約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、更に好ましくは約95%以上、最も好ましくは100%の相補性を有することをいう。本明細書における塩基配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=-3)にて計算することができる。

【0025】
前記RNAi誘導性核酸とは、細胞内に導入されることにより、RNA干渉を誘導し得るポリヌクレオチドをいい、好ましくはRNAまたはRNAとDNAのキメラ分子である。RNA干渉とは、mRNAと同一の塩基配列(またはその部分配列)を含む2本鎖構造のRNAが、当該mRNAの発現を抑制する効果をいう。このRNAi効果を得るには、例えば、少なくとも19の連続する標的mRNAと同一の塩基配列(またはその部分配列)を有する2本鎖構造のRNAを用いることが好ましい。ただし、FoxO1の発現阻害作用を有していれば数塩基置換されているものであってもよく、19塩基長よりも短いRNAであってもよい。2本鎖構造は、センス鎖とアンチセンス鎖の異なるストランドで構成されていてもよいし、一つのRNAのステムループ構造によって与えられる2本鎖(shRNA)であってもよい。RNAi誘導性核酸としては、例えばsiRNA、miRNAなどが挙げられる。

【0026】
RNAi誘導性核酸は、転写抑制活性が強いという観点から、siRNAが好ましい。FoxO1に対するsiRNAは、FoxO1のmRNAの任意の部分を標的とすることができる。FoxO1に対するsiRNA分子は、RNAi効果を誘導できる限り特に制限されないが、例えば18~27塩基長、好ましくは21~25塩基長である。FoxO1に対するsiRNAは、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む二重鎖である。具体的には、FoxO1に対するsiRNAは、配列番号1の塩基配列に対応するmRNAにおける18~25個の連続する塩基配列を含むセンス鎖と、その相補配列を含むアンチセンス鎖からなるものである。また、FoxO1に対するsiRNAは、配列番号3の塩基配列に対応するmRNAにおける18~25個の連続する塩基配列を含むセンス鎖と、その相補配列を含むアンチセンス鎖からなるものである。FoxO1に対するsiRNAは、センス鎖、アンチセンス鎖の一方または双方の5’末端または3’末端においてオーバーハングを有していてもよい。オーバーハングは、センス鎖および/またはアンチセンス鎖の末端における1~数個(例、1、2または3個)の塩基の付加により形成されるものである。siRNAの設計方法は、当業者に公知であり、siRNAの様々な設計ソフトウエアまたはアルゴリズムを用いて、上記塩基配列から適切なsiRNAの塩基配列を選択することができる。

【0027】
FoxO1に対するsiRNA
FoxO1に対するsiRNAの具体的な配列は、配列番号6~16の塩基配列を基準として、下記(a)または(b)で定義される二重鎖RNAが例示される。

【0028】
(a)配列番号6~16のいずれかで表される塩基配列を含むアンチセンス鎖(ただし、TはUに置き換えられる)、およびその相補配列を含むセンス鎖から構成され、該センス鎖および/またはアンチセンス鎖の末端にオーバーハングを有していてもよく、かつ、FoxO1の発現阻害活性を有する二重鎖RNA;または
(b)配列番号6~16のいずれかで表される塩基配列の5’末端および/または3’末端において、1~数個の塩基が付加および/または欠失された塩基配列を含むアンチセンス鎖、およびその相補配列を含むセンス鎖から構成され、該センス鎖および/またはアンチセンス鎖の末端にオーバーハングを有していてもよく、かつFoxO1の発現阻害活性を有する二重鎖RNA。ここで、配列番号6~16のいずれかで表される塩基配列の5’末端および/または3’末端において、1~数個(例えば1~5個、好ましくは1~3個、より好ましくは1または2個)の塩基の付加および/または欠失は、FoxO1の発現阻害活性の保持という観点から、FoxO1遺伝子をコードするセンス鎖およびそのアンチセンス鎖の部分塩基配列との同一性を確保するように達成され得る。

【0029】
前記「リボザイム」とは核酸を切断する酵素活性を有するRNAをいうが、最近では当該酵素活性部位の塩基配列を有するオリゴDNAも同様に核酸切断活性を有することが明らかになっているので、本明細書では配列特異的な核酸切断活性を有する限りDNAをも包含する概念として用いる。具体的には、リボザイムは、FoxO1をコードするmRNAまたは初期転写産物を、コード領域の内部(初期転写産物の場合はイントロン部分を含む)で特異的に切断し得る。リボザイムとして最も汎用性の高いものとしては、ウイロイドやウイルソイド等の感染性RNAに見られるセルフスプライシングRNAがあり、ハンマーヘッド型やヘアピン型等が知られている。ハンマーヘッド型は約40塩基程度で酵素活性を発揮し、ハンマーヘッド構造をとる部分に隣接する両端の数塩基ずつ(合わせて約10塩基程度)をmRNAの所望の切断部位と相補的な配列にすることにより、標的mRNAのみを特異的に切断することが可能である。さらに、リボザイムを、それをコードするDNAを含む発現ベクターの形態で使用する場合には、転写産物の細胞質への移行を促進するために、tRNAを改変した配列をさらに連結したハイブリッドリボザイムとすることもできる(Nucleic Acids Res., 29(13): 2780-2788 (2001))。

【0030】
FoxO1特異的阻害物質は、発現ベクターとしても提供され得る。かかる発現ベクターは、FoxO1特異的阻害物質をコードするポリヌクレオチド、および当該ポリヌクレオチドに機能可能に連結されたプロモーターを含む。

【0031】
前記プロモーターは、その制御下にある発現対象の核酸の種類により適宜選択され得るが、例えば、polIIIプロモーター(例、tRNAプロモーター、U6プロモーター、H1プロモーター)、哺乳動物用プロモーター(例、CMVプロモーター、CAGプロモーター、SV40プロモーター)が挙げられる。

【0032】
本発明の発現ベクターはさらに、選択マーカー遺伝子(テトラサイクリン、アンピシリン、カナマイシン、ハイグロマイシン、ホスフィノスリシン等の薬剤に対する抵抗性を付与する遺伝子、栄養要求性変異を相補する遺伝子等)をさらに含んでいてもよい。

【0033】
本発明の発現ベクターのバックボーン(backbone)としては、ヒト等の哺乳動物細胞中でFoxO1特異的阻害物質を産生できるものであれば特に制限されないが、例えば、プラスミドベクター、ウイルスベクターが挙げられる。哺乳動物への投与に好適なベクターとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンドビスウイルス、センダイウイルス等のウイルスベクターが挙げられる。なかでも、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス由来のウイルスベクターが好ましい。

【0034】
本発明の治療剤の投与量は、有効成分の種類もしくは活性、投与対象となる動物種、投与対象の病気の重篤度、薬物受容性、体重、年齢等によって異なるが、通常、成人1日あたり有効成分量として約0.0001~約1000mg/kgが例示される。また、本発明の治療剤を創傷部位への局所に適用する場合、創傷部位あたり約10μMの有効成分量が例示される。

【0035】
本発明の治療剤は、患者に対して経口的または非経口的に投与することができ、投与形態としては、経口投与、局所投与、静脈内投与、経皮投与などが挙げられ、必要に応じて、製薬学的に許容され得る添加剤と共に、投与に適した剤型に製剤化される。経口投与に適した剤型としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤などが挙げられ、非経口投与に適した剤型としては、例えば、注射剤、貼付剤、軟膏、ローション剤、クリーム剤に点眼剤などが挙げられる。これらは当該分野で汎用されている通常の技術を用い、調製することができる。本発明の治療剤は、上述の治療効果を奏する限りその投与経路および剤形は特に限定されないが、好ましい投与経路は局所投与であり、その剤形は注射剤、軟膏、ローション剤、クリーム剤または貼付剤である。

【0036】
また、本発明の治療剤は、これらの製剤の他に臓器内インプラント用製剤やマイクロスフェア等のDDS(ドラッグデリバリーシステム)化された製剤にすることもできる。

【0037】
例えば、本発明の治療剤を注射剤、軟膏、ローション剤、クリーム剤または貼付剤として用いる場合、安定剤(例えば、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエンなど)、溶解補助剤(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、マクロゴール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油など)、懸濁化剤(例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなど)、乳化剤(例えば、ポリビニルピロリドン、大豆レシチン、卵黄レシチン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート80など)、緩衝剤(例えば、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液、グルタミン酸、イプシロンアミノカプロン酸など)、粘稠剤(例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性セルロース誘導体、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、マクロゴールなど)、保存剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ベンジルアルコール、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル類、エデト酸ナトリウム、ホウ酸など)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、ホウ酸、ブドウ糖、プロピレングリコールなど)、pH調整剤(例えば、塩酸、水酸化ナトリウム、リン酸、酢酸など)、清涼化剤(例えば、l-メントール、d-カンフル、d-ボルネオール、ハッカ油など)、軟膏基剤(白色ワセリン、精製ラノリン、流動パラフィン、植物油(オリーブ油、椿油、落花生油など)など)などを添加剤として加えることができる。これら添加剤の添加量は、添加する添加剤の種類、用途などによって異なるが、添加剤の目的を達成し得る濃度を添加すればよい。

【0038】
本発明の治療剤は、アンチセンス核酸等の核酸をリポフェクション法を用いて製剤化することもできる。リポフェクション法には、通常ホスファチジルセリンからなるリポソームが用いられる。ホスファチジルセリンは陰電荷を有するため、ホスファチジルセリンの代用として、より安定したリポソームを作りやすいN-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリエチルアンモニウムクロライド(DOTMA)という陽イオン性脂質(商品名:トランスフェクタム、リポフェクトアミン)を用いることが好ましい。これらの陽イオン性脂質と陰電荷を持つ核酸との複合体を形成させると、全体として正に荷電しているリポソームが、負に荷電している細胞の表面に吸着し、細胞膜と融合できることで核酸を細胞内に導入することができる。
【実施例】
【0039】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例】
【0040】
(創傷モデル)
すべての実験は、長崎大学の動物実験倫理審査委員会の規定(No. 1108010940-5、1108010940-7および1311121101)に従って行った。FoxO1+/-およびFoxO3a-/- ノックアウトマウスの作出方法は、既報に記載されている(Furuyama, T., et al. (2004) J Biol Chem 279, 34741-34749)。マウス(週齢を合わせた雄:7-12週齢)を麻酔下で剃毛後、背面皮膚に対して4匹を全層切除(4mm生検パンチ; Kai Industries)または2匹を全層切開創傷(1cm)し、次いで、6mm生検パンチを用いて創傷を収集した。デジタルカメラを用いて創傷を記録し、Photoshop CS4(Adobe systems)にて領域を計算した。
【実施例】
【0041】
(ヒトの試料)
ヒトケロイド組織試料を、手術時に14名の日本人およびアフリカ系アメリカ人より得て、通常の病理学的試験により診断を確定した。正常の皮膚組織は、ケロイド部位のすぐ近傍から収集した。すべての実験は、長崎大学病院の倫理委員会の承認(No.09062523-2)の下、ヘルシンキ宣言に従って実施した。各被験者からインフォームドコンセントを書面にて得た。
【実施例】
【0042】
(組織学)
4%パラホルムアルデヒド(PFA)中で組織を固定し、パラフィンで包埋した。6μmの切片をヘマトキシリン&エオジン染色、マッソントリクローム染色、ピクロシリウスレッド染色あるいはFoxO1、好中球およびF4/80に対する免疫組織化学に供した。顕微鏡(偏光、落射蛍光または共焦点顕微鏡(C2+ system; Nikon Corporation))およびNIS-Elements ARソフトウエア(Nikon Corporation)を用いて、顕微鏡観察結果およびデータ解析をそれぞれ得た。
【実施例】
【0043】
(再上皮化および肉芽組織領域の解析)
再上皮化および肉芽組織領域の測定は、既報に従って行った(Mori, R., Shaw, T.J., and Martin, P. (2008) J Exp Med 205, 43-51)。要約すると、H&E染色した創傷切片上の再上皮化領域およびマッソントリクローム染色切片上の肉芽組織領域を、NIS-Elements ARソフトウエア(Nikon Corporation)を用いて測定した。
【実施例】
【0044】
(血管新生の解析)
創傷皮膚を4%PFA中で16時間固定し、次いで、10%、20%および30%スクロース (各パーセンテージにつき16時間)に暴露し、OCT化合物中で凍結させた。切片(50 μm厚)を組織ブロッキング剤(Blocking One Histo、Nacalai Tesque)および 0.3% Triton X-100で2時間透過処理をした。CD31に関する免疫組織化学を表1-1に示す。血管の三次元イメージングおよび血管密度の観察、収縮および評価を、共焦点顕微鏡、NIS-Elements C ソフトウエアおよびIMARISソフトウエア (BITPLANE)を用いて行った。
【実施例】
【0045】
(透過電子顕微鏡(TEM))
4℃の0.1 Mカコジル酸ナトリウム緩衝液中2%グルタルアルデヒドおよび4% PFA、その後、1%四酸化オスミウムで2時間皮膚検体を固定した。次いで、検体をTEM (モデル; JEM-1210, JEOL Ltd)のプロセスに供した。
【実施例】
【0046】
(コラーゲンの形態学的解析)
コラーゲンの直径の測定に関しては、処置群当たり無作為に選択した3つの視野を無傷の皮膚および創傷皮膚から写真撮影した。線維化領域は、IS-Elements ARソフトウエアおよびPhotoshopCS4を用いて測定した。コラーゲン密度の測定に関して、無作為に選択した3つの視野を無傷の皮膚および創傷皮膚から写真撮影した。コラーゲン線維を除外した細胞外空間を、PhotoshopCS4の手書き描画ツールを用いて輪郭を描いた領域から計算した(μm2/μm2 ; 細胞外空間の白い画素数[μm2]/(全領域- 細胞の占有領域 [μm2]) を領域に変換した)。
【実施例】
【0047】
(ヒトの無傷の皮膚およびケロイド部位でのマクロファージおよびFOXO1陽性細胞)
創傷床、ケロイドまたは無傷の皮膚における創傷F4/80陽性細胞 (マクロファージの指標)およびFOXO1陽性細胞 (非創傷皮膚、筋膜、再生上皮および痂皮に取り囲まれた領域として定義)を、3つの無作為の視野(0.14 mm2) から計数した。
【実施例】
【0048】
(RNAの単離および定量RT-PCR)
全RNAをQiazol(QIAGEN)を用いて抽出し、RNeasy MinElute Cleanup kit(QIAGEN)を用いて製造業者の指示書に従ってさらに精製した。RT-PCR用High Capacity RNA-to-cDNA Kit(Applied Biosystems)を用いて、RNA(2μg)を逆転写した。qPCR解析用遺伝子特異的プライマーおよびプローブは、TaqMan遺伝子発現アッセイ(Applied Biosystems)および遺伝子特異的プライマーセット(Takara Bio)から入手した。
【実施例】
【0049】
(核タンパク質の抽出およびFOXO1活性の測定)
Nuclear Extract kit (Active motif Japan)および製造業者の指示書に従って、核タンパク質を抽出した。要約すると、収集した皮膚の創傷部位を、Tissue Lyzer II (Qiagen)を用いてホモジナイズし、1M DDTおよび界面活性剤からなる1x低張緩衝液に添加し、次いで、氷上で15分間インキュベートした。 遠心分離(850 x g、10分、4℃)した後、抽出液に界面活性剤を添加し、遠心分離 (14,000 x g、15分、4℃)した。Complete Lysis Buffer由来の核沈殿物を氷上で30分間インキュベートした。遠心分離 (14,000 x g、10分、4℃)した後、核画分を調製した。FOXO活性は、TransAM FKHR (FOXO1/4) (Active motif Japan)および製造業者の指示書に従って測定した。FOXO1コンセンサスオリゴヌクレオチドで処理した抽出物を陰性対照として用いた。吸光度は、分光光度計 (model; LS-PLATE manager 2004, Wako Pure Chemical Industries, Osaka, Japan)で読み取った。FOXO1結合活性の程度は、以下のように計算した:
FOXO1結合活性 (任意の単位) = 光学密度/核タンパク質(μg)
【実施例】
【0050】
(全タンパク質抽出およびウエスタンブロッティング)
収集した皮膚創傷部位を、TissueLyzer II(Qiagen)を用いてホモジナイズし、プロテアーゼ阻害剤および脱リン酸化阻害剤を含むT-PER試薬(Thermo Fisher Scientific)を加えた。Ultrafree-MC 0.45 μmフィルター(Millipore)を用いて、上清に含まれる残屑を除去した。濾過したタンパク質試料(30 μg)を4-12% NuPAGE Novex Bis-Tris gel(Life technology)上で分離し、PVDF膜に移し、標準プロトコルに従ってブロッティングした。タンパク質のバンドをchemiluminescence(Thermo Fisher Scientific)により可視化し、Image J 1.47a ソフトウエア(National Institutes of Health)を用いてバンドの強度を計算した。
使用した抗体を表1-1および1-2に示す。
【実施例】
【0051】
【表1-1】
JP0006238319B2_000002t.gif
【実施例】
【0052】
【表1-2】
JP0006238319B2_000003t.gif
【実施例】
【0053】
(リポポリサッカリド (LPS)でのチャレンジ)
LPS (大腸菌血清型O55由来、フェノール抽出物、Wako Pure Chemical Industriesより入手) を生理食塩水中で再構成した。マウス (8-12 週齢、体重 30 g)に1.0 mg のLPSを腹腔内に注射し、生存をモニターした。
【実施例】
【0054】
(ELISA)
抽出したタンパク質を、ミエロペルオキシダーゼ (MPO) マウスELISA kit (abcam)および製造業者の指示書に従って測定した。
【実施例】
【0055】
(マイクロアレイ解析)
シアニン3-標識cRNA (Cy3-cRNA) を、Low input quick amp labeling kit、one color (Agilent Technologies) を用いて200 ngの全RNAから生成し、RNeasy mini kit (Qiagen)および製造業者の指示書に従って精製した。断片化したCy3-cRNA (600 ng)を、SurePrint G3マウスGEマイクロアレイ8×60 K (Agilent Technologies)に65℃で17時間ハイブリダイズさせた。次いで、マイクロアレイを洗浄し、Agilent DNA マイクロアレイスキャナーを用いてスキャンした。Ingenuity iReport (Ingenuity System)を用いて、マイクロアレイのデータを解析した。Robust Multi-Array Averageを用いて、プローブセットの強度をまとめ、正規化した。有意な差次的発現は、p値のカットオフ値0.05およびfold-changeのカットオフ値1.5を用いて、moderated t-test (Limma) により決定した。すべての生データは、GEO データベース (GSE48473)にて利用可能である。
【実施例】
【0056】
(ノックダウン研究用のアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド候補の設計)
アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(AS ODNs)は、既報(Mori, R., Shaw, T.J., and Martin, P. (2008) J Exp Med 205, 43-51)に従って設計した。要約すると、標的(マウス)センスFoxO1 mRNA配列(GenBank; NM_019739)をATおよびGT部位に関してスキャニングし、次いで、ATまたはGTのいずれか一方の側に8ヌクレオチドを含むようにしてAS ODNsを作製した。BLASTサーチを行って、FoxO1 mRNAに対して非特異的な配列を除外した。AS ODNsの配列を表2に示す。また、ヒトセンスFoxO1 mRNA配列(GenBank; NM_002015.3)をATおよびGT部位に関してスキャニングし、次いで、ATまたはGTのいずれか一方の側に8ヌクレオチドを含むようにしてAS ODNsを同様に作製する。
【実施例】
【0057】
【表2】
JP0006238319B2_000004t.gif
【実施例】
【0058】
AS ODN切断のインビトロ実験については、マウスFoxO1 mRNAをRIKEN FANTOM FLSクローン(Clone ID: E430027H20; DNAFORM)から転写し、得られたRNAをRNeasy MinElute Cleanup kit(Qiagen)を用いて精製した。AS ODNsの切断効率を評価するため、転写したRNA(0.3 μg)を、最終容量10 μlの切断緩衝液(10 mM MgCl2、5 mM Tris(pH 7.5)および150 mM NaCl)中で、コントロールまたはFoxO1 AS ODNs(最終濃度2 μM)、RNase H(Life Technologies)およびRNase阻害剤(非特異的RNA分解を阻害する;Life Technologies)とともに37℃で20分間インキュベートした。RNA生成物を RNA用2%アガロースゲル(AMRESCO)上で分離し、SYBR Gold核酸ゲル染色(Life Technologies)で染色し、FLA-3000(Fujifilm)を用いて検出し、切断効率を決定した。
ODN送達のインビボ実験については、創傷直後にODNsを局所投与した(50 μl; 1 または10 μMのODNs、30% Pluronic F-127ゲル中、Pluronic F-127ゲルは4℃未満では液体であるが37℃で固いゲルであり、該ゲルが徐放性媒体として作用する(Mori, R., Shaw, T.J., and Martin, P.(2008));Sigma-Aldrich)。
【実施例】
【0059】
(マウス初代上皮ケラチノサイトおよびRAW264.7マウスマクロファージ細胞株の細胞培養ならびにFoxO1 AS ODN処理)
新生仔BALB/cマウスのマウス初代上皮ケラチノサイト(CLS Cell Line Service GmbH, Germany)およびRAW264.7細胞は、MEM(ケラチノサイト用)またはDMEM(RAW264.7細胞用)中で培養した。FoxO1 AS ODN処理については、細胞を収集し、Neon Transfection System(Life Technologies)を用いて、10μMのFoxO1 AS ODNまたはネガティブコントロールODNをトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、RAW264.7細胞をLPS(最終濃度100 ng/mL)で2時間刺激し、回収した。
【実施例】
【0060】
(データ解析)
データは平均 ± SEMで示す。平均間の統計学的有意差をANOVAで評価した後、GraphPad Prism ソフトウエア(GraphPad Software, San Diego, CA, USA)を用いて、Tukey多重比較検定、コントロールに対するすべてのカラムを比較するDunnett検定または二群間のみを比較する場合Student両側または片側t-検定を行った。
【実施例】
【0061】
(統計学的解析)
すべてのデータは平均±SEMで示す。統計学的有意差を分散分析で評価した後、
(1) 多重比較のためのTukey事後検定;
(2) コントロールに対するすべてのカラムを比較するDunnett事後検定;または
(3) Student両側または片側t-検定
を行った。
生存曲線は、Kaplan-Meier生存解析を用いて解析し、log-rank検定で比較した。統計学的解析は、GraphPad Prism ソフトウエア (GraphPad Software)を用いて実施した。有意差は、p<0.05の値で達成された。【0062】
結果および考察
(FoxO1ヘテロマウスは皮膚創傷治癒が促進する)
FoxOファミリーは、酵母からほ乳類に至るまで代謝、老化等の様々な高次生命現象に関与していることが明らかとなっている。ほ乳類における転写因子Fox0ファミリーは、FoxO1、FoxO3a、FoxO4、FoxO6によって構成されている。したがって、皮膚創傷治癒過程においても何らかの役割を担っていると推察される。そこで、まず初めに、マウス背部に直径4mmの皮膚打ち抜き損傷を作製し、皮膚創傷治癒過程におけるFoxOファミリーの遺伝子発現動態を解析した。その結果、FoxO1およびFoxO3aは、正常皮膚に比べ、受傷後3日および7日目において、顕著に発現上昇が認められた(図1A)。
【実施例】
【0063】
次に、FoxO1ヘテロ(ht)マウスおよびFoxO3a KOマウスを用いて、皮膚創傷治癒の肉眼的観察を行った。その結果、FoxO1 htマウスでは、コントロール(WT)マウスに比べ明らかな治癒の促進が認められた(図1B、図1C)。一方、FoxO3a KOマウスでは明らかな差は認められなかった(データ示さず)。
【実施例】
【0064】
免疫染色法を用いて、創傷部位におけるFoxO1の発現細胞の同定を行った。その結果、受傷後1日目においては、再上皮化部位および表皮基底層、毛包部位に発現が認められた(図1D)。また、受傷後7日目の損傷部においては、創傷部に浸潤したマクロファージおよび血管内皮細胞に発現が認められた(図1E、図1F)。
【実施例】
【0065】
組織学的に受傷後3日目の再上皮化を調べたところ、FoxO1 htマウスでは、WTマウスに比べ有意に再上皮化が促進していた(図1G、図1H)。また、マッソントリクローム染色法を用いて、受傷後14日目の肉芽組織を調べたところ、FoxO1 htマウス(0.15 ±0.014 mm2 )では、野生型マウス(0.26 ± 0.021 mm2) に比べて有意に肉芽面積の減少が認められた(図1I、図1J)。FoxO1 htマウスでは、マクロファージの浸潤が減弱していたことから(図2)、皮膚創傷治癒過程におけるFoxO1の役割は、炎症制御および表皮細胞の増殖に関与していると推察される。
【実施例】
【0066】
肉芽組織の形成に血管新生は極めて重要であり、FOXO1は胎児の発生における脈管形成に関与している(Furuyama T etal., J Biol Chem 2004, 79:34741-34749)ので、Foxo1+/-マウスとWTマウスの修復過程の脈管成長を調べた。内皮細胞のマーカーであるPECAM/CD31に対する共焦点顕微鏡により、三次元の血管構造を構築した。Foxo1+/-マウスの無傷の皮膚における血管網は、WTマウスと同様であった(0.033 ± 0.0024 μm3 /μm3 対 0.026 ± 0.0057 μm3/μm3)。 修復過程を通して、Foxo1+/-マウスとWTマウスは、肉芽組織内の血管密度においてほぼ同じ変化を示した。受傷後7日目のFoxo1+/-マウスおよび野生型マウスにおける血管内腔の密度は、それぞれ、0.071 ± 0.012 μm3/μm3 および 0.067 ± 0.0082 μm3/μm3 であった。同様に、受傷後14日目のFoxo1+/-マウスおよび野生型マウスの肉芽組織における血管内腔の密度は、それぞれ、0.038 ±0.0074 μm3/μm3 および 0.035 ± 0.0084 μm3/μm3 に増加していた。
上記解析結果は、FOXO1タンパク質の減弱化した発現は、創傷治癒の早期の段階でケラチノサイトの移動を促進させ、肉芽組織を形成する領域を減少させることによって(ただし、このことは血管新生のレベルにおける相違によるものではなく)、皮膚創傷治癒の修復速度を促進させ、再生した皮膚の質が改善されることにつながることを示唆する。
【実施例】
【0067】
(FoxO1アンチセンスオリゴヌクレオチドの作製)
FoxO1 htマウスを用いた解析により、FoxO1発現の減弱は、創傷治癒を促進することが明らかとなった。そこで、皮膚創傷部位におけるFoxO1発現の人為的制御を目的として、11種類のFoxO1アンチセンスオリゴ(AS ODN)を作製し、in vitro解析をおこなった。
その結果、8種類の候補は、FoxO1 mRNAの目的部位(配列)に結合し、FoxO1 mRNAを切断することが示された(図3A)。次に、マウスケラチノサイト培養細胞およびマクロファージ細胞株を用いて、上記8種類の候補を用いて遺伝子発現抑制を行い、ウエスタンブロッティング法で蛋白質発現を調べた。その結果、No.1717 AS ODN導入細胞が最も発現低下していたことから、No.1717が最も効果があると判断された(図3B)。そこでPluoronic gelにNo.1717 FoxO1 AS ODNを含み、受傷後直後に創傷部に滴下し、6時間後の創傷部におけるFoxO1蛋白質発現を、ウエスタンブロッティング法で解析した。その結果、10μMにおいて最も発現抑制が認められた(図3C、図3D)。
【実施例】
【0068】
(アンチセンスオリゴを用いたFoxO1発現抑制は皮膚創傷治癒を促進する)
受傷後直後の創傷部にFoxO1 AS ODNを滴下し(10μM)、創傷部特異的にFoxO1発現抑制を行い、創傷治癒の肉眼的観察を行った。その結果、FoxO1 AS ODN投与群では有意に治癒が促進していた(図4A、図4B)。
【実施例】
【0069】
(コラーゲンの組織化はFoxo1+/-マウスの創傷部位において変化する)
瘢痕化は、創傷治癒過程の最終段階で出現し、創傷治癒の質の最終の評価基準である。変化したFOXO1の発現が創傷部位での瘢痕の発生に影響するか否かを調べるために、Foxo1+/-マウスおよび WTマウスに1cmの切開創傷をした後、21日間瘢痕化をモニターした (図5A)。 ピクロシリウスレッド染色により、受傷後21日目のFoxo1+/-マウスにおいて、I型コラーゲン (赤および黄色)およびIII型コラーゲン (緑)の線維束が顕著に低下していることが示された (図5B)。
瘢痕の発生をさらに解析するために、TEMを用いて、創傷部位でのコラーゲン線維束の全体のパターン、個々のコラーゲン線維の直径および線維密度を明らかにした。Foxo1+/-マウスおよびWTマウスの無傷の皮膚内のコラーゲンの形態は、区別できなかった(データ示さず)。興味深いことに、Foxo1+/-マウスの創傷部位の中間領域での線維の直径(61.5 ± 0.49 nm)は、WTマウス(63.3 ± 0.46 nm)に比べて顕著に(p < 0.001)低下していた (図5C、5D)。さらに、Foxo1+/-マウスの創傷部位内のコラーゲン線維束の空間は、野生型マウス(0.38 ± 0.023μm2/μm2)に比べて、有意に (p <0.05)増加しており (0.62 ± 0.094 μm/μm2) (図5E)、非創傷皮膚により類似していた。受傷後7日目のFoxo1+/-マウスの創傷部位では、フィブロネクチンではなくI型コラーゲンα1 (Col1α1)の遺伝子発現は、野生型マウスに比べて有意に低下していた (0.58 ± 0.073対0.82 ± 0.063) (図5F)。Foxo1+/- マウスにおける治癒の成熟期の瘢痕形成(すなわち、線維化)の低下においては、創傷部位でのコラーゲンの集合の相違が重要な役割を果たすことを示唆する。
【実施例】
【0070】
(Foxo1+/-マウスの創傷部位において炎症反応が減衰する)
皮膚の修復過程の様々な時点において、いくつかの白血球系統が創傷部位に浸潤する。IHC染色により、創傷に浸潤した好中球およびマクロファージがFOXO1 タンパク質を発現していることが示された (図1D、1E)。抗好中球抗体を用いた好中球IHCまたはMPOの測定により明らかになった好中球は、野生型対照に比べて、Foxo1+/-マウスの創傷への好中球のリクルートメントが低下していることを示唆する(図6A、6B)。マクロファージに対するF4/80のIHCにより、野生型マウスにおける好中球の増殖/移動期および好中球の浸潤後にこれらの免疫細胞が創傷部位に移動することを確認したが、Foxo1+/-マウスの創傷部位においてマクロファージの数の有意な減少(40%)を観察した(図6C、2)。
炎症反応においてNF-κBが重要な役割を果たしているので、ウエスタンイムノブロット解析により、受傷後3日目のFoxo1+/-マウスの創傷部位でNF-κB p65 (Ser536)のリン酸化レベルが野生型マウスに比べて顕著に低下している(38%)ことを示した (図6D、6E)。さらに、Foxo1+/-マウスは、高用量のLPSで誘導したエンドトキシンショック(インビボでTLR4を介してNF-κB のシグナル伝達の活性化につながる)に有意に耐性であることが示された(図9)。
以上まとめると、これらのデータは、FOXO1は創傷部位への炎症性細胞のリクルートメントを調節し、Foxo1+/-マウスにおける低下したFOXO1が炎症反応を低下させることを示唆する。
【実施例】
【0071】
(創傷部位におけるFOXOファミリーの発現およびリン酸化)
本発明者らの知見は、Foxo1+/-マウスが皮膚創傷治癒を促進させ、皮膚創傷治癒の初期の段階で炎症反応を低減して再上皮化を促進させ、その後の線維化/瘢痕化を低下させるという明確な証拠を提供する。FOXO1 DNA結合活性の低下を最初に確認した後、次に、Foxo1+/-マウスおよびWTマウスの創傷部位での包括的な遺伝子発現プロファイルを行った。ELISA研究により、受傷後3日および7日後のFoxo1+/-マウスの創傷部位由来の細胞において、FOXO1の結合が低下していることが示された(それぞれ、66 ± 13%および56 ± 15%、野生型マウスとの比較) (図7A)。同様の結果が遺伝子 (表3) およびFOXO1のタンパク質発現 (図7B)で見出された。
ヒト線維芽細胞において、FOXO1およびFOXO3AがFoxo1遺伝子発現にインパクトを与えることが示されているので、Foxo1+/-マウスの受傷後3日目の創傷部位において、FOXO1、FOXO3AおよびFOXO4のタンパク質発現レベルおよびリン酸化レベルを調べた (図7B)。Foxo1+/-マウスの創傷部位において、FOXO1タンパク質レベルおよびそのリン酸化(pFOXO1 [Thr24])レベルは顕著に低下しているが、FOXO3A、pFOXO3A (Ser318/321)およびFOXO4の発現はいずれの群でも変化がなかったことを明らかにした。
これらの結果および皮膚修復中のFoxoファミリー遺伝子の発現パターン(図1A)は、皮膚創傷治癒の初期の段階で、創傷部位でのFOXOsはpFOXO1 (Thr24) およびpFOXO3A (Ser318/321)により優勢に調節されていることを示唆する。
【実施例】
【0072】
【表3】
JP0006238319B2_000005t.gif
【実施例】
【0073】
(Foxo1+/-マウスの創傷部位においてERK1/2の活性化が促進される)
FOXO1タンパク質発現が低下したときの皮膚創傷治癒促進の基礎となっている分子メカニズムを決定するために、Foxo1+/-マウス対 WTマウス由来の皮膚創傷3日目の試料でマイクロアレイ解析を実施した。倍率変換カットオフ 1.5 (p-値のカットオフが0.05)を用いて、Foxo1+/-マウスにおいて、それぞれ、アップレギュレートおよびダウンレギュレートする387および269個の差次的調節遺伝子 (DRGs) を同定した。次いで、遺伝子発現、活性化、翻訳後修飾および物理的相互作用などのDRGs間の分子相互作用を解析することによって、どの分子/経路がFoxo1+/-マウスにおける治癒を促進させうるかについてスクリーニングした。以前のインビボでの研究により、皮膚創傷治癒関連遺伝子: 線維芽細胞増殖因子2 (Fgf2)、アディポネクチン(Adipoq)およびNotch1が明らかとなっている。本研究結果により、Foxo1+/-マウスの創傷部位において、Fgf2、 AdipoqおよびNotch1は、それぞれ、1.65倍、1.82倍および1.94倍と、有意に(p < 0.05) 増加していることが示された (表3)。
本発明者らが観察したFOXO1の表現型に2つの重要なシグナル経路が関与している可能性がある。ERK1/2シグナル伝達経路は、細胞増殖に関与し、AKTシグナル伝達経路は、FOXO1の上流で皮膚創傷治癒機能に関連している。ERK1/2およびAKT経路は、Fgf2およびAdipoqにより活性化され、上皮細胞および線維芽細胞の増殖に関与する。したがって、本発明者らは、Foxo1+/-マウスの創傷部位におけるERKおよびAKT経路の活性化が変化しているか否かを調べた。Foxo1+/-マウスの受傷後3日目の創傷部位におけるERK1/2 (Thr202/Tyr204) のリン酸化レベルは、野生型に比べて顕著に上昇していた (それぞれ、1.5 ± 0.13および1.0 ± 0.11) (図7C)。対照的に、Foxo1+/-マウスの受傷後7日目の創傷部位におけるAKT (Ser473) のリン酸化は、野生型に比べて顕著に低下していた (それぞれ0.56 ± 0.054および1.0 ± 0.20) (図7D)。
マイクロアレイ解析により、細胞の移動および増殖に関連するいくつかのシグナルが有意にアップレギュレートしていることが示された。例えば、ミオシン重鎖10 (Myh10)である(1.64倍)。MYH10は、ERK1/2経路の下流にある非筋肉アイソフォームMyosin IIbを生成する。Myosin IIbは、上皮および創傷線維芽細胞の両方に発現しており、本研究では、Myh10はFoxo1+/-マウスの創傷部位で顕著に誘導される(表3)。Myosin IIbアイソフォームのタンパク質レベルは、野生型に比べてFoxo1+/- マウスの創傷部位において顕著に上昇している (それぞれ、1.5 ± 0.21および1.0 ± 0.067) (図7C、7D)。
以上まとめると、これらの結果は、Foxo1+/-マウスの創傷部位の早期段階でERK経路を介してMyosin IIbの発現が亢進していることを示唆する。
【実施例】
【0074】
(FOXO1の上昇はヒトケロイド瘢痕と関連する)
FOXO1の発現パターンがヒトケロイド瘢痕で変化するか否かを調べた。ヒトケロイド瘢痕は、ヒト皮膚線維症の代表例であり、上皮の肥大、および瘢痕組織の異常増殖により特徴付けられ、爪のように増殖し、近隣の正常皮膚に侵入する。
IHCにより、FOXO1は、ケロイドの肥大上皮層の基底層直上のケラチノサイトに優勢に存在することが示され(図8A)、 また、線維芽細胞および炎症細胞にも存在した (図8B)。
しかしながら、ケロイド組織の深い部位にある線維芽細胞でのFOXO1の存在は、強くなかった (図8C)。興味深いことに、FOXO1は、正常皮膚層のケロイド部位の直近の多数の線維芽細胞および炎症細胞に顕著に存在した (図8D、8Eおよび8G)。これらの結果は、FOXO1がケロイドの成長を近接する正常皮膚にまで拡大することに関与し、過剰の細胞外マトリックスタンパク質の生産を推進している可能性を示唆する。
ケロイドの発生は、年齢、生理学的状態および遺伝的背景と関連していることが知られている。ケロイドは、アフリカ系アメリカ系統の個人に頻繁に発生する。そこで、本発明者らは、FOXO1の発現を調べて、アフリカ系アメリカ人と日本人との間のケロイドの比較ケースレポートを行った。すべてのケロイド部位のケラチノサイト、線維芽細胞および炎症細胞のFOXO1の発現レベルは、日本人と比べてアフリカ系アメリカ人において顕著に高かった(図8Fおよび8H)。
以上まとめると、これらの結果は皮膚線維症の発生はFOXO1の調節が寄与していることが示唆される(図8I)。
【実施例】
【0075】
(糖尿病モデル動物(STZ誘発糖尿病モデルマウス)における創傷治癒の促進)
ストレプトゾトシン(STZ、Wako 社)を、生理食塩水を用いて溶解した(SYZ 溶液の作成)。前記溶液を調製後5分以内に、予備飼育した雄性B6マウス(SPF、6匹/群、施設内飼育による自家繁殖)に、体重あたりSTZを10 mg/kgになるよう腹腔内投与した。
その後一日おきに合計5回投与した。最終投与から数えて10日後に、血液中グルコースを測定し、400mg/dl以上を糖尿病誘発マウスと定義した。
【実施例】
【0076】
前記糖尿病誘発マウスを麻酔下で剃毛後、背部に皮膚全層切除損傷(4mm生検パンチ;Kai Industries)を合計4箇所施した。 受傷後速やかに、創傷部にFoxO1 AS ODNまたはコントロールODNを滴下し(10μM)、創傷治癒の肉眼的観察を行った。その結果、FoxO1 AS ODN投与群では、コントロールODN投与群に比べて、明らかに創傷治癒が促進していた(図10)。
【実施例】
【0077】
まとめ
本研究では、皮膚創傷治癒に効果のあるFoxO1アンチセンスオリゴの開発に成功した。
治癒促進の原因としては、FoxO1 htマウス解析結果より、炎症反応の減弱およびFgf2等の治癒促進効果のある様々な増殖因子類の上昇が理由として考えられる。
【実施例】
【0078】
先に述べたように、皮膚瘢痕形成は、皮膚の線維化としてとらえられる。臓器線維化とは、慢性炎症に伴って発症する、種々の臓器で認められる不可逆的な病態である。したがって、臓器線維化治療法の開発だけでなく、先制医療としての臓器線維化発症マーカーの探索および早期診断法の確立が急務であるが、未だその有効な治療法または診断法は、開発されていない。皮膚の線維化の発症機構は、他臓器における線維化発症機構と類似部分が認められている。したがって、本研究モデルは、創傷治癒研究に限らず、線維化発症機構の病態解明に有効なモデルである。本研究では、FoxO1 AS ODN 投与群では、コラーゲンの様態変化も認められた。したがって、本研究で作製したFoxO1 AS ODNは皮膚創傷治癒促進・瘢痕形成減弱に留まらず、他臓器における臓器線維化抑制にも効果があると十分推察することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
治癒遅延、ケロイド等の皮膚病態を呈する患者は、外傷や環境因子による体質の変化に起因することはもとより、糖尿病、ステロイド治療歴、遺伝病(例:白血球接着不全症候群等)を煩っている患者、人種間の差異等、原因は多岐にわたっている。そのため、世界中で年間数十億人が上記皮膚病態に苦しんでいると推察されており、本発明は多数の患者に対する根本的治療を提供するものである。
【0080】
本出願は、日本で出願された特許出願特願2013-066606(出願日:2013年3月27日)を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。
【0081】
配列表フリーテキスト
配列番号5:コントロールのオリゴデオキシヌクレオチド
配列番号6:マウスFoxO1に対するアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド
配列番号7:マウスFoxO1に対するアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド
配列番号8:マウスFoxO1に対するアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド
配列番号9:マウスFoxO1に対するアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド
配列番号10:マウスFoxO1に対するアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド
配列番号11:マウスFoxO1に対するアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド
配列番号12:マウスFoxO1に対するアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド
配列番号13:マウスFoxO1に対するアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド
配列番号14:マウスFoxO1に対するアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド
配列番号15:マウスFoxO1に対するアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド
配列番号16:マウスFoxO1に対するアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド
図面
【図1A】
0
【図1B】
1
【図1C】
2
【図1D】
3
【図1E】
4
【図1F】
5
【図1G】
6
【図1H】
7
【図1I】
8
【図1J】
9
【図2】
10
【図3A】
11
【図3B】
12
【図3C】
13
【図3D】
14
【図4A】
15
【図4B】
16
【図5A】
17
【図5B】
18
【図5C】
19
【図5D】
20
【図5E】
21
【図5F】
22
【図6A】
23
【図6B】
24
【図6C】
25
【図6D】
26
【図6E】
27
【図7A】
28
【図7B】
29
【図7C】
30
【図7D】
31
【図8A】
32
【図8B】
33
【図8C】
34
【図8D】
35
【図8E】
36
【図8F】
37
【図8G】
38
【図8H】
39
【図8I】
40
【図9】
41
【図10】
42