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明細書 :シリコン単結晶生成装置、シリコン単結晶生成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6384921号 (P6384921)
登録日 平成30年8月17日(2018.8.17)
発行日 平成30年9月5日(2018.9.5)
発明の名称または考案の名称 シリコン単結晶生成装置、シリコン単結晶生成方法
国際特許分類 C30B  29/06        (2006.01)
C30B  11/02        (2006.01)
C01B  33/021       (2006.01)
FI C30B 29/06 501Z
C30B 11/02
C01B 33/021
請求項の数または発明の数 6
全頁数 11
出願番号 特願2015-508425 (P2015-508425)
出願日 平成26年3月20日(2014.3.20)
国際出願番号 PCT/JP2014/057833
国際公開番号 WO2014/156986
国際公開日 平成26年10月2日(2014.10.2)
優先権出願番号 2013061698
優先日 平成25年3月25日(2013.3.25)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成29年3月16日(2017.3.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
発明者または考案者 【氏名】柿本 浩一
【氏名】原田 博文
【氏名】高 冰
個別代理人の代理人 【識別番号】100099634、【弁理士】、【氏名又は名称】平井 安雄
審査官 【審査官】今井 淳一
参考文献・文献 米国特許第04256530(US,A)
米国特許出願公開第2008/0257254(US,A1)
調査した分野 C30B 29/06
C01B 33/021
C30B 11/02
特許請求の範囲 【請求項1】
底面部の一部の領域に単一のシリコン単結晶の種結晶が保持されると共に、固体及び/又は液体のシリコンが保持される坩堝と、
前記坩堝の底面より下方で且つ当該底面の面内における前記種結晶が保持される位置に対応する位置に配設され、シリコン溶融液を少なくとも前記種結晶の領域を含んで前記坩堝の下方から吸熱する吸熱部と、
前記坩堝の底面より下方で且つ当該底面の面内における前記吸熱部よりも外側の領域に配設され、前記吸熱部が前記坩堝の底面部から前記坩堝内を冷却すると同時に前記吸熱部により冷却される領域の周辺領域を加熱する加熱部とを備え、
前記吸熱部による熱流束のベクトルAが、前記坩堝の上部から下部に向かう方向であり、前記加熱部による熱流束のベクトルBが、前記坩堝の下部から上部に向かう方向であり、前記ベクトルA及び前記ベクトルBが、お互いに逆方向であるA×B<0の関係を保って制御され、前記坩堝内の液体/固体境界面であるシリコン単結晶の成長面を境にして、前記種結晶からのシリコン単結晶の成長に伴って、液体側のシリコン溶融液が前記加熱部により加熱されると共に、固体側のシリコン単結晶が前記吸熱部により冷却され、前記シリコン単結晶の成長面と前記坩堝の底面がなす固体側の角度が90°より大きくなるようにシリコン単結晶が成長することを特徴とするシリコン単結晶生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシリコン単結晶生成装置において、
前記吸熱部及び前記加熱部の熱流速を制御する制御手段を備え、
前記制御手段が、前記シリコン単結晶の少なくとも一部が種結晶として固体を維持するように、前記吸熱部及び前記加熱部の熱流速を制御して、前記種結晶の領域の温度を調整することを特徴とするシリコン単結晶生成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシリコン単結晶生成装置において、
前記坩堝内における所定箇所の温度を検出する温度検出手段と、
前記吸熱部及び前記加熱部の熱流速を制御する制御手段とを備え、
前記温度検出手段で検出された前記温度に基づいて、前記吸熱部及び/又は前記加熱部の熱流束を制御することを特徴とするシリコン単結晶生成装置。
【請求項4】
坩堝内の底面部にシリコン単結晶の種結晶を投入し、生成されるシリコン結晶の原料となる固体のシリコンを投入する原料投入ステップと、
前記原料を加熱して溶融する溶融ステップと、
前記坩堝の底面より下方で且つ当該底面の面内における前記種結晶が保持される位置に対応する位置に配設される吸熱部が、溶融した前記原料を少なくとも前記種結晶の領域を含んで前記坩堝の下方から吸熱すると同時に、前記坩堝の底面より下方で且つ当該底面の面内における前記吸熱部よりも外側の領域に配設された加熱部が、前記吸熱部により冷却される領域の周辺領域を加熱してシリコン結晶を生成する結晶生成ステップとを含み、
前記結晶生成ステップが、前記吸熱による前記坩堝の上部から下部に向かう方向の熱流束のベクトルAと前記加熱手段の加熱による前記坩堝の下部から上部に向かう方向の熱流束のベクトルBとが、お互いに逆方向であるA×B<0の関係を保って実行され、前記坩堝内の液体/固体境界面であるシリコン単結晶の成長面を境にして、前記種結晶からのシリコン単結晶の成長に伴って、液体側のシリコン溶融液が前記加熱部により加熱されると共に、固体側のシリコン単結晶が前記吸熱部により冷却され、前記シリコン単結晶の成長面と前記坩堝の底面がなす固体側の角度が90°より大きくなるようにシリコン単結晶が成長することを特徴とするシリコン単結晶生成方法
【請求項5】
請求項4に記載のシリコン単結晶生成方法において、
前記結晶生成ステップが、前記シリコン単結晶の少なくとも一部が種結晶として固体を維持するように、前記吸熱及び前記加熱の熱流速を制御して、前記種結晶の領域の温度を調整することを特徴とするシリコン単結晶生成方法
【請求項6】
請求項又はに記載のシリコン単結晶生成方法において、
前記結晶生成ステップが、前記坩堝内の所定箇所で検出された温度に基づいて、前記吸熱及び/又は前記加熱の熱流束を制御して実行されることを特徴とするシリコン単結晶生成方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造法によりシリコン単結晶を生成するシリコン単結晶生成装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンの単結晶を生成する方法として、チョクラルスキー(CZ)法や浮遊帯域(FZ)法が一般的に行われている。CZ法は、坩堝内で多結晶のシリコンを溶融し、作成したい方位の種結晶と共に引き上げて単結晶を生成するものである。また、FZ法は、棒状の多結晶シリコンの下部に種結晶を配設し、加熱により種結晶と多結晶との境界部分を溶融して単結晶を生成するものである。いずれの方法においても高品質なシリコン単結晶を生成することができるが、設備が高価になるとともに、作業工程が煩わしいものとなり、太陽光パネルなどに用いるような大型のものや大量生産に不向きな技術である。
【0003】
そこで、太陽光パネルなどに用いる大型のシリコン結晶を効率よく生成するために鋳造法が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。鋳造法は固体のシリコンを坩堝内で溶融し冷却することで、シリコン結晶を大量に安価に生成することができる。しかしながら、この従来の鋳造法では主に多結晶が生成されるため、鋳造法により高純度の単結晶を効率よく大量に生産する技術が望まれている。
【0004】
上記課題に関して、鋳造法を利用してシリコン単結晶を生成する技術が特許文献2に開示されている。特許文献2に示す技術には、種結晶が配置された坩堝底面に配置された熱シンクから熱を引き抜きながら、熱シンク上に載置された坩堝の壁部に配置された更なる加熱器により加熱することで種結晶の成長を側部領域に引き起こしてシリコン単結晶を生成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2003-267717号公報
【特許文献2】特表2011-528308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に示す技術は、種結晶の大きさを坩堝の底面全体に相当する大きさにする必要があるため、コストの増大を招き大型化するのに非常に困難なものとなってしまう。また、仮に種結晶を小さくしてしまうと、種結晶が配置されていない部分については種が無いために種結晶の情報が伝達されず、多結晶のシリコンが生成されてしまい、高品質なシリコン単結晶を生成することができないという課題を有する。
【0007】
また、坩堝の底面を複数のブロックに分割し、各ブロックごとに種結晶を配設して成長させる方法があるが、各ブロック間で成長が衝突して欠陥になってしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、鋳造法を利用して高品質で大型のシリコン単結晶を容易に生成することができるシリコン単結晶生成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るシリコン単結晶生成装置は、底面部の一部の領域に単一のシリコン単結晶の種結晶が保持されると共に、固体及び/又は液体のシリコンが保持される坩堝と、前記坩堝内のシリコン溶融液を少なくとも前記種結晶の領域を含んで前記坩堝の下方から吸熱する吸熱部と、前記吸熱部により冷却される領域の周辺領域を加熱する加熱部とを備え、前記吸熱部による熱流束のベクトルAと前記加熱部による熱流束のベクトルBとが、A×B<0の関係を保って制御されるものである。
【0010】
このように、本発明に係るシリコン単結晶生成装置においては、吸熱部による熱流束のベクトルAと加熱部による熱流束のベクトルBとが、A×B<0の関係、すなわち、熱の流れる方向が逆向きの関係を保って制御されることで、種結晶から上方向への成長を行うと同時に、種から横方向への結晶成長も可能となり、小さい種結晶であっても全ての成長方向に対して確実に種結晶の情報を伝達することができ、多結晶の含有を最小限に抑えた高品質なシリコン単結晶を生成することができるという効果を奏する。
【0011】
また、鋳造法を利用して熱制御のみの簡易的な作業工程で、単一の小さな種結晶から高品質且つ大型のシリコン単結晶を生成することができるため、安価な設備で大量生産を行うことが可能になるという効果を奏する。
【0012】
本発明に係るシリコン単結晶生成装置は、前記吸熱部が前記坩堝の底面部から前記坩堝内を冷却すると同時に、前記加熱部が前記吸熱部により冷却される領域の周辺領域を前記坩堝の底面部より下方に配設された熱源により加熱するものである。
【0013】
このように、本発明に係るシリコン単結晶生成装置においては、シリコン単結晶の種結晶の領域を坩堝の底面部から吸熱しながら、その吸熱により冷却される領域の周辺領域を坩堝の底面より下方に配設された熱源により加熱することで、種結晶から上方向への成長を行うと共に、横方向への結晶成長も可能となり、小さい種結晶から多結晶を含まない高品質なシリコン単結晶を生成することができるという効果を奏する。
【0014】
本発明に係るシリコン単結晶生成装置は、前記吸熱部及び前記加熱部の熱流速を制御する制御手段を備え、前記制御手段が、前記シリコン単結晶の少なくとも一部が種結晶として固体を維持するように、前記吸熱部及び前記加熱部の熱流速を制御して、前記種結晶の領域の温度を調整するものである。
【0015】
このように、本発明に係るシリコン単結晶生成装置においては、シリコン単結晶の少なくとも一部が種結晶として固体を維持するように、吸熱部及び加熱部の熱流速を制御して、種結晶の領域の温度を調整するため、種結晶から確実に情報伝達を行って多結晶を含まない高品質なシリコン単結晶を生成することができるという効果を奏する。
【0016】
本発明に係るシリコン単結晶生成装置は、前記吸熱部及び前記加熱部の熱流速を制御する制御手段を備え、前記制御手段が、前記シリコン単結晶の成長面及び前記坩堝の底面がなす固化された前記シリコン単結晶の角度が90°より大きく維持されるように前記吸熱部及び前記加熱部の熱流速を制御するものである。
【0017】
このように、本発明に係るシリコン単結晶生成装置においては、シリコン単結晶の成長面及び前記坩堝の底面がなす固化された前記シリコン単結晶の角度が90°より大きく維持(すなわち、横方向に成長するシリコン結晶の固体/液体の境界面が、坩堝の底面に対して成長方向で90度未満に維持)されるように吸熱部及び加熱部の熱流速を制御するため、種結晶から確実に情報伝達が行われて多結晶を含まない高品質なシリコン単結晶を生成することができるという効果を奏する。
【0018】
本発明に係るシリコン単結晶生成装置は、前記坩堝内における所定箇所の温度を検出する温度検出手段と、検出された前記温度に基づいて、前記吸熱部及び/又は前記加熱部の熱流束を制御する制御手段とを備えるものである。
【0019】
このように、本発明に係るシリコン単結晶生成装置においては、坩堝内における所定箇所の温度を検出し、検出された温度に基づいて、吸熱部及び/又は加熱部の熱流束を制御するため、多結晶を含まない高品質なシリコン単結晶を生成することができると共に、作業を効率よく行うことができるという効果を奏する。
【0020】
本発明に係るシリコン単結晶生成方法は、坩堝内の底面部にシリコン単結晶の種結晶を投入し、生成されるシリコン結晶の原料となる固体のシリコンを投入する原料投入ステップと、前記原料を加熱して溶融する溶融ステップと、溶融した前記原料を少なくとも前記種結晶の領域を含んで前記坩堝の下方から吸熱すると同時に、当該吸熱領域の周辺領域を加熱してシリコン結晶を生成する結晶生成ステップとを含み、前記吸熱による熱流束のベクトルAと前記加熱による熱流束のベクトルBとが、A×B<0の関係を保って実行されるものである。
【0021】
本発明に係るシリコン単結晶生成方法は、前記結晶生成ステップが、前記坩堝の底面部から前記坩堝内を冷却すると同時に、当該冷却される領域の周辺領域を前記坩堝の底面部より下方に配設された熱源により加熱するものである。
【0022】
本発明に係るシリコン単結晶生成方法は、前記結晶生成ステップが、前記シリコン単結晶の少なくとも一部が種結晶として固体を維持するように、前記吸熱及び前記加熱の熱流速を制御して、前記種結晶の領域の温度を調整するものである。
【0023】
本発明に係るシリコン単結晶生成方法は、前記結晶生成ステップが、前記シリコン単結晶の成長面及び前記坩堝の底面がなす前記シリコン単結晶の角度が90°より大きく維持されるように前記吸熱及び前記加熱の熱流速を制御して実行されるものである。
【0024】
本発明に係るシリコン単結晶生成方法は、前記結晶生成ステップが、前記坩堝内の所定箇所で検出された温度に基づいて、前記吸熱及び/又は前記加熱の熱流束を制御して実行されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施形態に係るシリコン単結晶生成装置の断面図である。
【図2】従来の一般的なシリコン結晶成長法を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係るシリコン単結晶生成装置で実現されるシリコンの結晶成長を示す図である。
【図4】従来における熱源からの加熱の一例及び第1の実施形態に係るシリコン単結晶生成装置における熱源からの加熱の一例を示すイメージ図である。
【図5】第1の実施形態に係るシリコン単結晶生成方法の手順を示すフローチャートである。
【図6】第1の実施形態に係るシリコン単結晶生成方法でシリコン単結晶を成長させた場合の成長過程を示す図である。
【図7】第1の実施形態に係るシリコン単結晶生成方法で生成されたシリコンの単結晶と多結晶の分布を示す図である。
【図8】第1の実施形態に係るシリコン単結晶生成方法において坩堝底面及び成長面の間でシリコン溶融液がなす角度と成長時間との関係を示す図である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明は多くの異なる形態で実施可能である。また、本実施形態の全体を通して同じ要素には同じ符号を付けている。
【0027】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係るシリコン単結晶生成装置及び当該シリコン単結晶生成装置を用いたシリコン単結晶生成方法について、図1ないし図8を用いて説明する。本実施形態に係るシリコン単結晶生成装置は、主に太陽光パネルとして利用されているシリコン(Si)半導体の単結晶を鋳造法により製造するものである。
【0028】
本実施形態に係るシリコン単結晶生成装置で用いられる鋳造法は、固体のシリコン原料を坩堝内に投入して高温で溶融し、当該溶融した液体のシリコンを所定の方法で冷却して固化することで、目的とする形状のシリコン結晶を得るものである。通常であれば、この鋳造法により固化されたシリコンは多結晶となるが、予め坩堝の底に単結晶の種を配置し、以下に詳細に示すような冷却方法を行うことで、欠陥の少ない高品質の単結晶を生成することができる。
【0029】
本実施形態に係るシリコン単結晶生成装置の一例を図1の断面図に示す。シリコン単結晶生成装置100において、溶融している液体シリコン1とその一部が固化することで生成されたシリコン結晶2とを収納するための容器である坩堝3,4が台座5に載置されており、台座5に連接して当該台座5を支持する軸受台6が上下移動可能に配設されている。坩堝3,4、台座5及び軸受台6の周囲にはヒータ12-14が配設されており、加熱及び冷却の温度制御が行われる。シリコン単結晶生成装置100の最外周には、熱を遮断するための断熱材7-11が配設され、外部との熱エネルギーの移動を遮断している構成である。
【0030】
図2に、従来の一般的なシリコン結晶成長法を示す。図2(A)は、ある瞬間における坩堝3,4内のシリコンの状態を示し、図2(B)は、図2(A)の状態から時間が経って成長が進んだ場合の坩堝3,4内のシリコンの状態を示す。従来は、図2(A)に示すように、坩堝3,4の中で溶融された液体のシリコンを坩堝3,4の底部から冷却して結晶成長させることが一般的に行われている。そして、そのまま冷却し続けると、図2(B)に示すように液体シリコンと固体シリコンの界面が、シリコン結晶の成長に伴って変動する。図2(B)から明らかなように、従来の方法でシリコン結晶の成長を行うと、シリコン単結晶の種結晶から成長できない領域(図中の一点鎖線が示す領域)が発生し、その領域で成長したシリコン結晶は多結晶となってしまう。
【0031】
この多結晶の領域をなくすために、例えば単結晶の種結晶を坩堝3,4の底面全体を覆うように配置することが考えられるが、種結晶のサイズが非常に大きくなり、コスト面も含めて大型化するのに困難を有する。また、小さい種結晶で結晶成長させた場合は、図2(A)に示すように結晶成長の界面と坩堝3,4の底面とのなす角度(固体のシリコン単結晶がなす角度)が90度以下であるため、上述したように、シリコン単結晶の種結晶から成長できない領域が発生してしまう。このような問題を解決するために、本実施形態においては、坩堝3,4の底面から冷却される領域の周辺領域を坩堝3,4の底面から同時に加熱する。
【0032】
図3は、本実施形態に係るシリコン単結晶生成装置で実現されるシリコンの結晶成長を示す図である。図3(A)は、ある瞬間における坩堝3,4内のシリコンの状態を示し、図3(B)は、図3(A)の状態から時間が経って成長が進んだ場合の坩堝3,4内のシリコンの状態を示す。図3(A)に示すように、本実施形態においては、坩堝3,4の底面に配置されたシリコン単結晶の種結晶の領域を冷却すると共に、その冷却される領域の周辺領域を同時に加熱する。
【0033】
そうすることで、図3(A)に示すように液体シリコンと固体シリコンの界面が、略楕円体を形成するようにシリコン単結晶の成長が進む。すなわち、結晶成長の界面と坩堝3,4の底面とのなす角度(固体のシリコン単結晶がなす角度)が90度より大きくなり、図3(B)に示すように、小さい種結晶で成長させた場合であっても、図2(B)に示すようなシリコン単結晶の種結晶から成長できない領域が発生することなく、横方向の成長であっても種結晶の情報が正確に伝達され高品質のシリコン単結晶を生成することができる。
【0034】
図4は、熱源からの加熱の一例を示す図である。図4(A)は、従来における坩堝の側面からの加熱の一例を示し、図4(B)は、本実施形態における坩堝の底面からの加熱の一例を示している。図4からわかるように、坩堝底部では、熱源Aへの熱流束aは下向きで、熱源Bからの熱流束bは斜め下向きであるため、熱流束aとbの関係がa×b≧0となる。すなわち、図4(A)に示すように、結晶成長の界面と坩堝3,4の底面との間でシリコン単結晶がなす角度が90度以下となり、上述したように、シリコン多結晶が成長する領域が発生してしまう。
【0035】
一方、本実施形態に係るシリコン単結晶生成装置で実現されるシリコンの結晶成長の場合は、図4(B)に示すように、熱流束aと熱流束bの向きがお互いに逆方向を向いているので、a×b<0の関係となっている。すなわち、結晶成長の界面と坩堝3,4の底面との間でシリコン単結晶がなす角度が90度より大きくなり、上述したように、種結晶の情報が正確に伝達され高品質のシリコン単結晶を生成することができる。
【0036】
次に、本実施形態に係るシリコン単結晶生成装置を用いたシリコン単結晶生成方法について説明する。図5は、本実施形態に係るシリコン単結晶生成方法の手順を示すフローチャートである。まず、坩堝3,4にシリコン単結晶の種結晶が投入され、坩堝3,4の底面部に配置される(S1)。なお、このとき、種結晶は坩堝3,4の底面部の中心付近に配置されることが好ましいが、必ずしも中心付近である必要はなく、吸熱部による吸熱が可能な位置であればよい。例えば、坩堝3,4の底面部が矩形である場合には、そのいずれかの角に配置してもよい。また、種結晶を複数に分割して複数の領域に配置することは好ましくなく、一の種結晶を一の領域に配置することが好ましい。種結晶が配置されると、生成するシリコン単結晶となる原料を坩堝3,4内に投入する(S2)。ヒータ12-14により坩堝3,4内を加熱してシリコン原料を溶融する(S3)。このとき、種結晶の少なくとも一部は固体として維持されるように加熱する。
【0037】
原料が溶融されると、坩堝3,4の底面部から種結晶の領域を冷却すると共に、その冷却される領域の周辺領域を同時に加熱しながら原料を固化する(S4)。このとき、種結晶の領域は坩堝3,4の底面部の熱源Aから吸熱され、その冷却される領域の周辺領域は坩堝3,4の底面より下方の熱源Bにより加熱される。そうすることで、熱源Aの熱流束aと熱源Bの熱流束bとの関係をa×b<0にすることができ、結晶成長の界面と坩堝3,4の底面とのなす角度(シリコン単結晶がなす角度)が90度より大きくなり、種結晶の情報が正確に伝達され高品質のシリコン単結晶を生成することができる。また、このとき、熱流束の制御を坩堝3,4全体の温度を監視して行う。坩堝3,4全体の温度を監視しながら、所定のタイミングで加熱及び吸熱をそれぞれ停止して(S5,S6)、シリコン単結晶の生成を完了する。なお、加熱及び吸熱の停止は、坩堝3,4の形状や融液の深さに応じて制御される。
【0038】
図6は、上記で説明した方法でシリコン単結晶を成長させた場合の成長過程を示す図である。図6(A)から順次シリコン結晶が成長し、最終的に図6(H)にまで成長してシリコン単結晶の生成が終了する。図6からわかるように、種結晶を中心として放射状(マシュマロ状、球体状、楕円体状)に成長が進み、最終的には図7に示すように、一部に多結晶が形成されているものの大部分を単結晶として生成することができる。
【0039】
図8は、上記の方法でシリコン単結晶を成長させた場合の成長時間と、結晶成長の界面及び坩堝3,4の底面の間でシリコン原料の溶融液がなす角度との関係を示す図である。グラフ中の各プロット(a)~(h)は、図6の(A)~(H)に対応している。各工程において、坩堝全体の温度に基づいて吸熱と加熱を制御することで、結晶成長の界面及び坩堝3,4の底面の間で溶融液がなす角度(図8における縦軸に相当)を90度未満としている。すなわち、結晶成長の界面及び坩堝底面の間でシリコン結晶がなす角度は常に90度以上を保っており、結晶の成長がマシュマロ状(球体状、楕円体状)に進んでいることがわかる。
【0040】
このように、本発明に係るシリコン単結晶生成装置及び当該装置を用いたシリコン単結晶生成方法によれば、種結晶から上方向ではなく横方向への結晶成長が可能となり、小さい種結晶から多結晶を含まない高品質なシリコン単結晶を生成することができる。また、鋳造法を利用して坩堝底面からの熱制御のみの簡易的な作業工程で、高品質且つ大型のシリコン結晶を生成することができるため、安価な設備で大量生産を行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0041】
1 液体シリコン
2 シリコン結晶
3-4 坩堝
5 台座
6 軸受台
7-11 断熱材
12-14 ヒータ
100 シリコン単結晶生成装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7