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明細書 :抗バソヒビン2抗体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6300373号 (P6300373)
登録日 平成30年3月9日(2018.3.9)
発行日 平成30年3月28日(2018.3.28)
発明の名称または考案の名称 抗バソヒビン2抗体
国際特許分類 C07K  16/18        (2006.01)
C12N   5/12        (2006.01)
A61K  39/395       (2006.01)
A61P   9/00        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C12P  21/08        (2006.01)
FI C07K 16/18 ZNA
C12N 5/12
A61K 39/395 N
A61K 39/395 T
A61P 9/00
A61P 35/00
C12N 15/00 A
C12P 21/08
請求項の数または発明の数 9
微生物の受託番号 NPMD NITE P-1474
全頁数 18
出願番号 特願2014-513846 (P2014-513846)
出願日 平成25年11月11日(2013.11.11)
国際出願番号 PCT/JP2013/080450
国際公開番号 WO2014/087810
国際公開日 平成26年6月12日(2014.6.12)
優先権出願番号 2012264350
優先日 平成24年12月3日(2012.12.3)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成28年11月1日(2016.11.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
発明者または考案者 【氏名】佐藤 靖史
個別代理人の代理人 【識別番号】100095832、【弁理士】、【氏名又は名称】細田 芳徳
審査官 【審査官】福間 信子
参考文献・文献 国際公開第2009/096425(WO,A1)
国際公開第2010/024293(WO,A1)
T. Shibuya et al.,Isolation and Characterization of Vasohibin-2 as a Homologue of VEGF-Inducible Endothelium-Derived Angiogenesis Inhibitor Vasohibin,Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology,2006年,Vol. 26(5),pp. 1051-1057
X. Xue et al.,Vasohibin 2 is transcriptionally activated and promotes angiogenesis in hepatocellular carcinoma,Oncogene,2012年 3月21日,Vol. 32(13),pp. 1724-1734
Y. Sato,The vasohibin family: a novel family for angiogenesis regulation,The Journal of Biochemistry,2012年10月25日,Vol. 153(1),pp. 5-11
調査した分野 C07K 16/00-46
C12N 15/00-90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
DWPI(Thomson Innovation)

特許請求の範囲 【請求項1】
配列番号2に示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号269~288を認識する、抗バソヒビン2抗体又はその抗原結合断片であって、該抗バソヒビン2抗体が、受託番号NITE BP-1474で示されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体である、抗体又はその抗原結合断片
【請求項2】
配列番号2に示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号269~288を認識する抗バソヒビン2モノクローナル抗体を産生する、受託番号NITE BP-1474で示されるハイブリドーマ。
【請求項3】
請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片を含有してなる、血管新生抑制剤。
【請求項4】
請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片を含有してなる、医薬組成物。
【請求項5】
請求項3に記載の血管新生抑制剤を含有してなる、血管新生の抑制を要する疾患の治療用医薬組成物。
【請求項6】
血管新生の抑制を要する疾患が、がんであることを特徴とする請求項に記載の治療用医薬組成物。
【請求項7】
工程(A):抗血管新生薬の候補化合物の投与後における被検個体由来の生体試料と、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片とを接触させて複合体を形成させて、該複合体の存在量を測定する工程
工程(B):前記工程(A)で測定された存在量を、投与前における存在量と比較する工程、ならびに
工程(C):前記工程(B)で行った比較において、該候補化合物の投与前に比べて投与後の方が該複合体の存在量が少ないと認められる場合に該候補化合物が抗血管新生薬として薬効を示している可能性が高いと判定する工程
を含む、抗血管新生薬の薬効評価方法。
【請求項8】
請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片を含有してなる、抗血管新生薬の薬効評価用キット。
【請求項9】
血管新生の抑制を要する疾患の治療または予防するための、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、抗バソヒビン2抗体に関する。より詳しくは、バソヒビン2に特異的なモノクローナル抗体又はその断片、該モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ、該抗体の遺伝子組換え抗体又はその断片、前記抗体又はその断片を含有する血管新生抑制剤、治療用医薬組成物、及びがんの治療用医薬組成物、ならびに、前記抗体又はその断片を用いた抗血管新生薬の薬効評価方法及び該方法を実施するためのキット、に関する。
【背景技術】
【0002】
血管新生とは、動物の組織又は器官において既存の細静脈、毛細血管からの血管内皮細胞の遊走、増殖及び管腔形成により新しい血管脈が形成される現象をいう。かかる現象は、動物の形態形成期や成長期のみならず、組織等の損傷の治癒、炎症の修復過程や月経周期に伴って生じるものであり、血管新生の促進因子と抑制因子の双方によりコントロールされ、該促進因子と抑制因子のバランスを保つことが血管の恒常性を保つのに重要である。
【0003】
しかしながら、腫瘍組織においては、血管新生促進因子が過剰発現することにより血管新生が亢進し、その結果、腫瘍組織のさらなる増大に繋がる。従って、抗がん治療としては、血管新生抑制因子や血管新生促進因子の阻害剤を投与する方法等が考えられる。
【0004】
バソヒビンは、本発明者らが見出したポリペプチドであり、バソヒビン1及びバソヒビン2がホモログ体として属する。これらのバソヒビンは、腫瘍細胞や間質細胞、マクロファージなどから分泌される血管新生促進因子(VEGF、FGF-2等)の刺激により血管内皮細胞に発現し、内皮細胞自身にオートクライン的に作用して、血管新生を抑制する作用を有することが知られている(特許文献1、2参照)。
【0005】
一方で、本発明者らは、特許文献2に開示のバソヒビン2、即ち、AK022567タンパク質、ならびに該タンパク質のスプライシングバリアントである、BC051856タンパク質、BC053836タンパク質、BC028194タンパク質、及びAY834202タンパク質には、がんや脳血管障害等の病態と同じような低酸素状態において、血管新生を促進する作用があることも見出し、報告している(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】WO2002/090546号パンフレット
【特許文献2】WO2006/073052号パンフレット
【特許文献3】WO2009/096425号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、バソヒビン2タンパク質に特異的な抗体又はその断片、該抗体を産生するハイブリドーマ、該抗体の遺伝子組換え抗体又はその断片、前記抗体又はその断片を含有する血管新生抑制剤及び治療用医薬組成物、ならびに、前記抗体又はその断片を用いた抗血管新生薬の薬効評価方法及び該方法を実施するためのキットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、バソヒビン2タンパク質の活性中心を特定するに至った。そしてバソヒビン2タンパク質のこの活性中心を含む特定エピトープに対するモノクローナル抗体を調製したところ、該モノクローナル抗体がバソヒビン2タンパク質と特異的に結合して、バソヒビン2タンパク質の有する血管新生作用を抑制することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は下記〔1〕~〔〕に関する。
〔1〕 配列番号2に示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号269~288を認識する、抗バソヒビン2抗体又はその抗原結合断片であって、該抗バソヒビン2抗体が、受託番号NITE BP-1474で示されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体である、抗体又はその抗原結合断片。
〔2〕 配列番号2に示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号269~288を認識する抗バソヒビン2モノクローナル抗体を産生する、受託番号NITE BP-1474で示されるハイブリドーマ。
〕 前記〔1〕記載の抗体又はその抗原結合断片を含有してなる、血管新生抑制剤。
〕 前記〔1〕記載の抗体又はその抗原結合断片を含有してなる、医薬組成物。
〕 前記〔〕記載の血管新生抑制剤を含有してなる、血管新生の抑制を要する疾患の治療用医薬組成物。
〕 工程(A):抗血管新生薬の候補化合物の投与後における被検個体由来の生体試料と、前記〔1〕記載の抗体又はその抗原結合断片とを接触させて複合体を形成させて、該複合体の存在量を測定する工程
工程(B):前記工程(A)で測定された存在量を、投与前における存在量と比較する工程、ならびに
工程(C):前記工程(B)で行った比較において、該候補化合物の投与前に比べて投与後の方が該複合体の存在量が少ないと認められる場合に該候補化合物が抗血管新生薬として薬効を示している可能性が高いと判定する工程
を含む、抗血管新生薬の薬効評価方法。
〕 前記〔1〕記載の抗体又はその抗原結合断片を含有してなる、抗血管新生薬の薬効評価用キット
〔8〕 血管新生の抑制を要する疾患の治療または予防するための、前記〔1〕記載の抗体又はその抗原結合断片。
【発明の効果】
【0010】
本発明の抗バソヒビン2抗体又はその断片は、バソヒビン2タンパク質と良好な特異性で結合し、その血管新生促進作用を阻害できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、バソヒビン2の内皮細胞の遊走能に対する効果を示す図である。
【図2】図2は、バソヒビン2の内皮細胞のチューブ形成に対する効果を示す図である。
【図3】図3は、モノクローナル抗体の内皮細胞の遊走能に対する効果を示す図である。
【図4】図4は、モノクローナル抗体の内皮細胞のチューブ形成に対する効果を示す図である。
【図5】図5は、モノクローナル抗体投与後のマウス腫瘍モデルにおける腫瘍形態を示す図である。左図がマウスIgG投与群、右図が抗VASH2抗体(クローン1760)投与群である。
【図6】図6は、モノクローナル抗体投与後のマウス腫瘍モデルにおける腫瘍体積変化を示す図である。
【図7】図7は、モノクローナル抗体投与後のマウス腫瘍モデルにおける腫瘍の血管を示す図である。左図がマウスIgG投与群、右図が抗VASH2抗体(クローン1760)投与群である。
【図8】図8は、モノクローナル抗体投与後のマウス腫瘍モデルにおける腫瘍の血管断面積の変化を定量的に示す図である。
【図9】図9は、マウスIgG、ベバシズマブ、又はモノクローナル抗体を投与後のマウス腫瘍体積を示す図である。
【図10】図10は、マウスIgG、ベバシズマブ、又はモノクローナル抗体を投与後のマウス腫瘍モデルにおける腫瘍体積変化を示す図である。
【図11】図11は、モノクローナル抗体投与後のマウス腫瘍モデルにおける腫瘍の血管を示す図である。(a)がマウスIgG投与群、(b)が抗VASH2抗体(クローン1760)投与群、(c)がベバシズマブ投与群である。
【図12】図12は、マウスIgG、ベバシズマブ、又はモノクローナル抗体を投与後のマウス腫瘍モデルにおける腫瘍の血管断面積の比率を定量的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の抗バソヒビン2抗体(以下、本発明の抗体ともいう)は、特定のアミノ酸配列を認識することによって、バソヒビン2タンパク質に特異的に結合するという特徴を有する。

【0013】
バソヒビン(Vasohibin)としては、バソヒビン1(Vasohibin-1)及びバソヒビン2(Vasohibin-2)が挙げられるが、本発明におけるバソヒビンとしては、バソヒビン2のことを指す。なお、特許文献1、2等に開示されているようにバソヒビン1とバソヒビン2は、異なる染色体上に存在する別の遺伝子であるが、それらの遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列は58%の相同性を有している。バソヒビン2としては、配列番号1で表される塩基配列からなるAY834202ポリヌクレオチドによりコードされるバソヒビン2タンパク質、及び配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるAY834202ポリペプチドのことをいう。

【0014】
本発明におけるエピトープ(抗原における決定基)としては、バソヒビン2タンパク質のアミノ酸番号269番目(Leu)から288番目(Arg)までの部分ペプチド、又はその一部を用いることができる。該部分ペプチドにおいて、例えば、281番目(Lys)から285番目(Lys)までの連続したアミノ酸5個をアラニン(Ala)4個に置換したバソヒビン2変異体を作製して細胞に発現させた場合、血管新生の促進が認められなかった。従って、前記アミノ酸番号281~285のアミノ酸を含む部分ペプチドは、血管新生を促進する作用の発現に関与すると考えられる。このため、バソヒビン2タンパク質の血管新生促進作用の中和抗体を作製するには、バソヒビン2タンパク質のアミノ酸番号281~285のアミノ酸を含む部分ペプチドをエピトープとすることが好ましい。ここで、抗体の作製に使用する抗原は、本発明の抗体が調製できる範囲で制限されず、前述の本発明におけるエピトープのいずれかを含むペプチドであればよい。すなわち、抗原は、本発明におけるエピトープよりも長いバソヒビン2タンパク質の部分ペプチドであっても、あるいは、本発明におけるエピトープのカルボキシル末端又はアミノ末端にバソヒビン2タンパク質と関連しないペプチドが結合したペプチドであってもよく、KLH、OVA、BSAのようなキャリアタンパクやIgGのFc領域と結合していてもよい。

【0015】
なお、本明細書において「血管新生」とは、既存の血管から血管内皮細胞が出芽し、組織に進入する形で毛細血管が形成される現象を意味する。形成過程は1)プロテアーゼによる血管基底膜の消化、2)血管内皮細胞の遊走・増殖、3)管腔形成の順に進行する。

【0016】
本発明の抗体としては、配列番号2に示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号269~288を認識するものであればよい。即ち、アミノ酸番号269~288の部分ペプチドの全長に対し結合性を有するものであっても、その一部のアミノ酸に対し結合性を有するものであってもよいが、バソヒビン2タンパク質の血管新生促進作用を中和するための中和抗体としては、アミノ酸番号281~285のアミノ酸を含むエピトープに結合性を有するものが好ましい。なお、本発明の抗体は、配列番号2に示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号269~288を認識する範囲で、ポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよいが、好ましい態様としてはモノクローナル抗体が挙げられる。本発明の抗体は、本明細書で説明する適切な抗原を使用し、当業者に周知の方法で取得することができる。例えば、ハイブリドーマにより産生されるバソヒビン2モノクローナル抗体又はその断片が挙げられる。

【0017】
ハイブリドーマを用いたモノクローナル抗体は、例えば以下に詳述する方法で調製できる。

【0018】
先ず、抗原を調製する。具体的には、バソヒビン2タンパク質の部分ペプチドLeu269-Arg288(以降、バソヒビン2部分ペプチドという)について、アミノ末端又はカルボキシル末端にシステイン残基を付加したペプチドを、公知の方法に従って合成する。得られたペプチドについて、マレイミド化したKLH〔Keyhole Limpet Hemocyanin、Imject(登録商標)Maleimide Activated mcKLH、ピアス社製〕を用いて、ペプチドのSH基を介してハプテン抗原を調製する。

【0019】
またさらに、家兎IgGのFc領域とバソヒビン2部分ペプチドとの融合タンパク(Fc融合バソヒビン2タンパク質)も、抗原として用いることができる。この融合タンパクは公知の方法に従って調製することができるが、例えば、Fc融合バソヒビン2タンパク質は、バソヒビン2部分ペプチドのアミノ末端又はカルボキシル末端にFcを付加したポリヌクレオチド配列を導入したプラスミドベクターを、例えば、Freestyle 293-F Cells(Invitrogen)に導入して一過的に発現させた後、プロテインAカラムを用いて精製することにより調製することができる。なお、Fc融合バソヒビン2タンパク質の発現及び精製は、特に限定はなく公知の方法に従って行うことができる。

【0020】
次に、上記により得られた抗原を用いて哺乳動物を免疫する。哺乳動物としては、特に制限はないが、一般には、マウス、ラット、ウシ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、モルモット等を用いることができる。なかでも、マウス及びラットが好ましく、マウスがより好ましく、かかるマウスとしては、A/J系、BALB/C系、DBA/2系、C57BL/6系マウスが例示される。また、該哺乳動物の齢は、用いる動物種により異なり特に限定されないが、マウス又はラットの場合、通常約4~12週齢、好ましくは約5~10週齢である。なお、これらの哺乳動物は、本発明のモノクローナル抗体の製造のために、細胞融合される形質細胞との適合性を考慮して選択することができる。

【0021】
抗原は、免疫応答を増強させるためにアジュバントと混合して免疫原として使用される。アジュバントとしては、特に限定はなく公知のものを使用することができる。また、該アジュバントと抗原との混合は、用いるアジュバントについて当該分野で公知の方法に従うことができる。

【0022】
哺乳動物の免疫は、当該分野で公知の方法に従って行われる。例えば、免疫原を哺乳動物の皮下、皮内、静脈又は腹腔内に注射投与することによって行われる。また、免疫原の投与は、最初の免疫後に何回か繰り返して行われ、その投与間隔は適宜調整され得る。なお、免疫応答は、免疫される哺乳動物の種類及び系統によって異なるので、免疫スケジュール及び免疫原の投与量は、使用される動物に合わせて適切に設定され得る。

【0023】
かくして、免疫された哺乳動物体内において所望の抗体産生細胞を調製することができる。かかる抗体産生細胞としては、免疫原の最終投与の3~5日後に摘出した脾細胞が好ましい。なお、免疫された哺乳動物の脾臓を肥大させるために、ブースト(免疫原の追加注射)を行ってもよい。ブーストで投与される免疫原の量は、最初に投与される免疫原の量の約4~5倍とするのが望ましいが、これを目安として適宜増減することができる。

【0024】
得られた抗体産生細胞は、骨髄腫由来の細胞(ミエローマ細胞)と細胞融合させて、ハイブリドーマを調製する。

【0025】
ハイブリドーマの増殖能力は細胞融合に用いられるミエローマ細胞の種類に依存するので、ミエローマ細胞としては増殖能力の優れた細胞が好ましい。また、ミエローマ細胞は、融合させる抗体産生細胞の由来する哺乳動物と適合性があることが好ましい。かかる例としては、マウスミエローマP3U1、X63-Ag8.653等の骨髄腫細胞が例示される。

【0026】
細胞融合の方法は、当該分野で公知の方法を用いることができ、例えばポリエチレングリコール(PEG)を用いる方法、センダイウイルスを用いる方法、電気融合装置を用いる方法等が例示される。

【0027】
得られたハイブリドーマは、公知の方法に従って選択培地で培養することにより分離することができる。なお、選択されたハイブリドーマが所望の抗体を産生しているかどうかを確認するために、培養上清を採取して抗体価アッセイを公知の方法、例えば、DELFIA法に基づいて行うことができる。

【0028】
かくして、所望のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマが得られる。該ハイブリドーマは、通常の培地で継代培養することができ、また液体窒素中で半永久的に保存することができる。

【0029】
ハイブリドーマから所望のモノクローナル抗体を取得するにあたっては、インビボ及びインビトロにおける培養法により大量調製することができる。インビトロ培養法は、ハイブリドーマを適当な血清培地若しくは無血清培地中で培養することにより実施でき、所望のモノクローナル抗体は培地中に産生される。この培養法によれば、比較的高純度の所望抗体を培養上清として得ることができる。また、インビボ培養法は、ハイブリドーマと適合性のある哺乳類動物、例えばマウスなどの腹腔内に、ハイブリドーマを注射接種して増殖することにより実施でき、所望抗体はマウス腹水として大量に回収することができる。

【0030】
なお、得られた培養上清及びマウスなどの腹水は、そのまま粗製抗体液として用いることができる。また、これらは常法に従って、例えば、DEAE陰イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、硫安分画法、PEG分画法、エタノール分画法などを適宜組合せることにより精製して、精製抗体とすることができる。

【0031】
かくして、配列番号2に示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号269~288を認識するモノクローナル抗体を得ることができる。

【0032】
本発明では、前記方法により特定の抗体を産生するハイブリドーマを調製して用いてもよいが、例えば、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2丁目5番地8)に下記受託番号のもとで寄託された細胞を好適に使用することもできる。
NITE BP-1474 (表示1760、受託日2012年11月29日)

【0033】
前記抗体の断片としては、前記エピトープ、即ち、バソヒビン2タンパク質の269番目(Leu)から288番目(Arg)までの部分ペプチド、又はその一部に対する抗原結合断片を有するものであればよい。ここで、バソヒビン2タンパク質の血管新生促進作用を中和するための断片としては、アミノ酸配列281~285を含むエピトープに対する抗原結合断片を有するものが好ましい。その形態は特に限定されず、例えば、Fab、F(ab')2、Fab'、scFv、diabody、dsFv、及びCDRを含むペプチドなどが挙げられる。これらの抗体断片は、公知の技術に従って調製することができ、例えばパパイン(Fab断片の製造)やペプシン(F(ab')2断片の製造)などの酵素によるタンパク質分解酵素切断によって調製され得る。

【0034】
また、本発明の一態様として、本発明の抗体の遺伝子組換え抗バソヒビン2抗体又はその断片も提供される。

【0035】
遺伝子組換え抗体としては、配列番号2に示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号269~288を認識するのであれば特に限定はなく、例えば、アミノ酸配列269~288の部分ペプチドの全長に対し結合性を有するものであっても、その一部のペプチドに対し結合性を有するものであってもよい。なお、バソヒビン2タンパク質の血管新生促進作用を中和するための中和抗体としては、アミノ酸配列281~285を含むエピトープに結合性を有するものが好ましい。遺伝子組換え抗体としては、例えば、抗体の投与対象個体において抗原性を低減できるように、抗体の投与対象がヒトの場合には、ヒト化抗体、ヒト抗体などが例示される。なお、本発明における遺伝子組換え抗体は、前記ハイブリドーマにより得られたモノクローナル抗体又はその断片を、公知の遺伝子組換え技術を用いて改変して取得することができる。

【0036】
ヒト化抗体としては、ヒト型キメラ抗体及びヒト型CDR(Complementarity Determining Region、相補性決定領域)移植抗体が挙げられる。ヒト型キメラ抗体は、例えば、前記モノクローナル抗体の重鎖可変領域(以下、VHと記す)と軽鎖可変領域(以下、VLと記す)、ヒト抗体の重鎖定常領域(以下、CHと記す)と軽鎖定常領域(以下、CLと記す)をコードする遺伝子を発現させることで調製することができる。ヒト型CDR移植抗体は、例えば、本発明の抗体のVH及びVLに対するCDRのアミノ酸配列をヒト抗体のVH及びVLの適切な位置に移植することで調製することができる。

【0037】
ヒト抗体としては、ヒト抗体ファージライブラリーやヒト抗体産生トランスジェニック動物から得られる抗体が挙げられる。なお、ヒト抗体ファージライブラリー及びヒト抗体産生トランスジェニック動物は公知の方法に従って調製することができる。

【0038】
また、遺伝子組換え抗体の断片としては、前記遺伝子組換え抗体の断片であればよく、本発明の抗体の断片と同様に、配列番号2に示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号269~288からなる部分ペプチド、又はその一部に対する抗原結合断片を有するのであれば、その形態及び調製方法に特に限定はない。ここで、バソヒビン2タンパク質の血管新生促進作用を中和するための断片としては、アミノ酸配列281~285を含むエピトープに対する抗原結合断片を有するものが好ましい。

【0039】
本発明の抗体又は断片は、配列番号2に示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号269~288を認識する範囲で、マンノース、フコース、ガラクトース、Nアセチルグルコサミン、Nアセチルノイラミン酸等の糖鎖で修飾されていてもよい。

【0040】
かくして、本発明の抗体又はその断片、及び、該抗体の遺伝子組換え抗体又はその断片が得られる。これらの抗体又はその断片は、AY834202ポリペプチドのアミノ酸配列のアミノ酸番号269~288を特異的に認識することから、バソヒビン2タンパク質と良好な結合性を示す。なお、本明細書において、これらの抗体又はその断片をまとめて、本発明の抗体又はその断片と記載することもある。

【0041】
本発明は、本発明の抗体又はその断片を含有する医薬組成物を提供する。本医薬組成物は、以下に説明するような血管新生抑制剤をはじめとした薬剤や治療用医薬組成物を一つの態様として含む。

【0042】
本発明はまた、本発明の抗体又はその断片を含有する血管新生抑制剤を提供する。

【0043】
本発明の血管新生抑制剤は、実質的に、本発明の抗体又はその断片により構成され、循環血中を介して送達された部位において、バソヒビン2タンパク質と結合することにより、バソヒビン2タンパク質が有する血管新生促進作用の発現を抑制するという効果を奏する。

【0044】
本発明の血管新生抑制剤は、循環血中に移行するのであれば、その投与形態は限定されない。

【0045】
また、本発明は、本発明の血管新生抑制剤を含有する、血管新生の抑制を要する疾患の治療用医薬組成物、即ち、治療剤を提供する。

【0046】
血管新生の抑制を要する疾患としては、血管新生を抑制することにより治療効果がみられる疾患であれば特に限定はないが、例えば、血管性疾患、炎症性疾患、眼内血管新生性疾患、生殖器官系疾患、中枢神経系疾患、がん等が挙げられる。具体的には、動脈硬化、高血圧、狭心症、閉塞性動脈硬化症、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病性血管障害、血管奇形、肝炎、肺炎、糸球体腎炎、甲状腺炎、骨髄炎、滑膜炎、骨破壊、軟骨破壊、リュウマチ、喘息、サルコイドーシス、クロウー深瀬症候群、パンヌス、アレルギー性浮腫、潰瘍、腹水、腹膜硬化、組織癒着、糖尿病性網膜症、網膜静脈閉塞症、加齢黄斑変性症、子宮機能不全、胎盤機能不全、卵巣機能過亢進、濾胞性嚢胞、網膜症、脳卒中、血管性痴呆、アルツハイマー病、固形癌(例えば、卵巣癌、大腸癌)、血管腫、血管内皮腫、肉腫、カポジ肉腫及び造血器腫瘍等の悪性新生物が例示される。

【0047】
本発明の治療用医薬組成物としては、本発明の血管新生抑制剤を公知の医薬用担体と組み合わせて製剤化したものが挙げられる。また、本発明の治療用医薬組成物としては、本発明の抗体又はその断片以外に、本発明の抗体又はその断片と同じ用途に使用可能な他の成分、例えば公知の血管新生抑制作用を有する成分と配合することもできる。

【0048】
本発明の治療用医薬組成物の製造は、本発明の抗体又はその断片が循環血中を介して血管新生の抑制を要する部位に到達できるような剤型に製造できるのであれば、通常、本発明の血管新生抑制剤を薬学的に許容できる液状又は固体状の担体と配合することにより行われ、所望により溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等を加えて、錠剤、顆粒剤、散剤、粉末剤、カプセル剤等の固形剤や、通常液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤とすることができる。また、使用前に適当な担体の添加によって液状となし得る乾燥品や、その他、外用剤とすることもできる。なお、医薬用担体は、治療剤の投与形態及び製剤形態に応じて選択することができ、特に限定はない。本明細書において、血管新生の抑制を要する部位とは、上記血管新生の抑制を要する疾患の発症部位を意味する。

【0049】
上記のような各種製剤形態での治療用医薬組成物は、それぞれ公知の医薬用担体などを利用して、適宜、常法により製造することができる。また、かかる治療用医薬組成物における本発明の抗体又はその断片の含有量は、その投与形態、投与方法などを考慮し、本発明の所望の効果の発現が得られ得るような量であればよく、特に限定されるものではない。本発明の治療用医薬組成物中の本発明の抗体又はその断片の含有量としては通常1~100重量%程度である。なお、ここでいう本発明の抗体又はその断片の含有量とは、本発明の抗体及びその断片を複数種類含有する場合には合計含有量のことを意味する。

【0050】
本発明の治療用医薬組成物は、製剤形態に応じた適当な投与方法で投与される。投与方法も本発明の抗体又はその断片を循環血中を介して送達できるのであれば特に限定はなく、例えば内用、外用及び注射により投与することができる。本発明の治療用医薬組成物を注射により投与する場合は、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、皮内などに投与し得、外用により投与する場合は、例えば、座剤等の外用剤として、その適する投与方法により投与すればよい。

【0051】
本発明の治療用医薬組成物の投与量は、その製剤形態、投与方法、使用目的及び当該医薬組成物の投与対象である患者又は患獣の年齢、体重、症状によって適宜設定され一定ではない。また、投与は、所望の投与量範囲内において、1日内において単回で、又は数回に分けて行ってもよい。投与期間も任意である。

【0052】
本発明はまた、被験個体に、有効量の本発明の抗体又はその断片を投与することを含む、血管新生の抑制を要する疾患の治療方法を提供する。

【0053】
本明細書中において被験個体とは、好ましくは血管新生の抑制を必要とするヒトであるが、バソヒビン2タンパク質により血管新生が促進される哺乳動物であればよく、ウシ、ウマ、ヤギ等の家畜動物、イヌ、ネコ、ウサギ等のペット動物、又は、マウス、ラット、モルモット、サル等の実験動物であってもよい。

【0054】
また、本明細書中において有効量とは、本発明の抗体又はその断片を上記被験個体に投与した場合に、投与していない被験個体と比較して、血管新生が抑制される抗体又はその断片の量である。具体的な有効量としては、投与形態、投与方法、使用目的及び被験個体の年齢、体重、症状等によって適宜設定され一定ではない。

【0055】
本発明の血管新生の抑制を要する疾患の治療方法においては、有効量の本発明の抗体又はその断片をそのまま上記被験個体に投与してもよく、また、上記のような治療用医薬組成物等の医薬として投与してもよい。また、投与方法にも限定はなく、例えば、上記の治療用医薬組成物と同様に、経口投与や注射等により投与すればよい。

【0056】
本発明の治療方法によれば、前記の本発明の治療用医薬組成物の対象となる疾患を治療することができ、例えば、血管新生によって進展する疾患の治療を行う効果が発揮され得る。

【0057】
本発明は、本発明の抗体又はその断片を含有する、診断薬を提供する。本診断薬を用い、前記本発明の治療用医薬組成物の対象となる疾患を診断することができる。

【0058】
本発明者らは、バソヒビン2タンパク質ががん細胞で発現することを報告している(Xue et al. Oncogene. 2012 [Epub ahead of print], Takahashi et al. Mol. Cancer Res. 10 (2012), 1135-1146.参照)。従って、本発明の診断薬を用いることで、被験個体から採取した生体試料、例えば、血液、血漿、組織等においてバソヒビン2タンパク質の検出を行うことができ、検出されたバソヒビン2タンパク質の有無又はバソヒビン2タンパク質の量に基づいて、被験個体ががんをはじめとするバソヒビン2タンパク質2による血管新生によって進展する疾患に罹患しているか否かを診断することができる。例えば、被験個体から採取した生体試料において、本発明に係る診断薬を用いて検出したバソヒビン2タンパク質量と、健常対照個体から採取した生体試料において本発明に係る診断薬を用いて検出したバソヒビン2タンパク質量とを比較し、健常対照個体よりも、被験個体において有意にバソヒビン2タンパク質量が多い時に、被験個体が血管新生によって進展する疾患に罹患していると診断することができる。なお、本診断薬を使用した診断方法において、バソヒビン2タンパク質の検出方法、定量方法は当業者に周知の方法を用いることができる。

【0059】
また、本発明の一態様として、抗血管新生薬の薬効評価方法が提供される。

【0060】
本発明者らは、バソヒビン2タンパク質ががん細胞から分泌され、バソヒビン2をノックダウンすることで腫瘍血管新生と腫瘍増殖が抑制されることを報告している(Xue et al. Oncogene. 2012 [Epub ahead of print], Takahashi et al. Mol. Cancer Res. 10 (2012), 1135-1146.参照)。従って、抗血管新生薬が投与された個体では、腫瘍組織における血管新生が抑制されて、腫瘍組織の増殖が抑制されるためにバソヒビン2の分泌量が減少し、血中バソヒビン2量が変化する可能性があると考えられる。各個体におけるがん細胞に対する抗血管新生薬の反応性は個体によって異なることが予想されるが、その反応性はまさにそれらの薬剤の持つ抗血管新生効果に反映される。従って、本発明の薬効評価方法において、これらの薬剤の投与の前後での血中バソヒビン2タンパク質の変動量を測定することにより、各個体における薬剤への反応性を予測したり、実際に投与した後の薬効を評価したりすることが可能になると考えられる。

【0061】
上記薬効評価方法は、具体的には、
工程(A):抗血管新生薬の候補化合物の投与後における被験個体由来の生体試料と、本発明の抗体又はその断片とを接触させて複合体を形成させて、該複合体の存在量を測定する工程
工程(B):前記工程(A)で測定された存在量を、投与前における存在量と比較する工程、ならびに
工程(C):前記工程(B)で行った比較において、該候補化合物の投与前に比べて投与後の方が該複合体の存在量が少ないと認められる場合に該候補化合物が抗血管新生薬として薬効を示している可能性が高いと判定する工程
を含む。

【0062】
上記薬効評価方法の工程(A)における複合体の存在量の測定は、本発明の抗体又はその断片を用いる方法であれば、当業者においては周知の方法を用いることができるが、サンドイッチELISA法が好ましい。なお、ここでいう複合体とは、本発明の抗体又はその断片とバソヒビン2タンパク質との複合体を意味する。また、被検個体としては、前記と同様のものが例示されるが、特に、新規抗血管新生薬候補物質の薬効を評価し、有効な物質を選別する場合は、ヒト以外の実験動物を被験個体とすることが好ましい。一方、本薬効評価方法によって、抗血管新生薬がその個体において有効か否かを判断する場合には、ヒトを被験個体とすることが好ましい。

【0063】
工程(B)において、上記により得られた存在量について、候補化合物の投与前における該存在量に基づいて統計学的な解析を行って比較を行う。解析方法としては、特に限定はなく、公知の方法を用いることができる。また、その後の工程(C)における判定は、例えば、該候補化合物の投与後の試料における複合体存在量が投与前の試料における複合体存在量と比べて少ない場合に、該候補化合物が抗血管新生薬として血管新生を抑える効果を示している可能性が高いと判断される。

【0064】
本発明の別の態様では、抗血管新生薬の薬効評価を行うためのキットが提供される。

【0065】
本発明のキットには、本発明の抗体又はその断片を含有するものが挙げられ、サンプル中のバソヒビン2タンパク質を検出する際に本発明の抗体又はその断片を用いる検出方法であれば、前記キットを用いることができる。本発明の抗体又はその断片は生体内バソヒビン2タンパク質を良好な特異性で認識することが可能であることから、該キットの使用は抗血管新生薬の薬効評価に大きな貢献をもたらすことができる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【実施例】
【0067】
参考例1〔バソヒビン2の内皮細胞の遊走能に対する効果〕
MLTC-1細胞に、Mock遺伝子、野生型バソヒビン2(野生型VASH2)としてAY834202ポリペプチドをコードする遺伝子、変異型バソヒビン2(変異型VASH2)としてAY834202ポリペプチドのアミノ酸番号281~285のアミノ酸5個をアラニン4個に置換したポリペプチドをコードする遺伝子をそれぞれ導入し、得られた細胞(MLTC-1/Mock、MLTC-1/野生型VASH2、MLTC-1/変異型VASH2)を24穴プレートに1×10個/ウェルずつ播種し、0.5%血清を含む培地で24時間培養した。その後、低血清培地で17時間培養した臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)5×10個をポアサイズ8μmのインサートに添加し、37℃で4時間インキュベートした後、メンブレンの下面に移動したHUVECをギムザ染色で染色した。下面に移動したHUVECを光学顕微鏡下に200倍でランダムに5視野カウントしその平均値および標準偏差を算出した。結果を図1に示す。なお、内皮細胞の遊走能検査は、in vitroでの代表的な血管新生のアッセイ法の1つである。
【実施例】
【0068】
MLTC-1/野生型VASH2の培養上清は、Mockと比較して有意にHUVECの遊走を促進した(p<0.01)が、MLTC-1/変異型VASH2の培養上清ではMockと比較して遊走促進効果が観察されなかった。
【実施例】
【0069】
参考例2〔バソヒビン2の内皮細胞のネットワーク形成に対する効果〕
24穴プレートの各ウェルに、500μLの成長因子非添加Matrigel(BD Biosciences)を添加してゲル化させ、その上に低血清培地で17時間培養したHUVEC 7.5×10個(500μLに懸濁)を播種し、参考例1で得られたMLTC-1/Mock、MLTC-1/野生型VASH2、MLTC-1/変異型VASH2の培養上清500μLをそれぞれ添加して37℃で5時間インキュベートした。形成されたネットワークの分岐点を位相差顕微鏡下に40倍でランダムに5視野カウントしその平均値および標準偏差を算出した。PBS添加群を陰性コントロール、VEGF 20ng/mL添加群を陽性コントロールとした。結果を図2に示す。なお、内皮細胞のネットワーク形成能検査は、in vitroでの代表的な血管新生のアッセイ法の1つである。
【実施例】
【0070】
MLTC-1/野生型VASH2の培養上清を添加するとHUVECによるネットワーク形成はMockと比較して有意に促進されたが(p<0.01)、MLTC-1/変異型VASH2の培養上清を添加するとネットワーク形成促進効果が観察されなかった。
【実施例】
【0071】
これらより、AY834202ポリペプチドのアミノ酸番号281~285のアミノ酸は、HUVECの遊走を促進する活性に関連することが明らかとなった。
【実施例】
【0072】
調製例1〔モノクローナル抗体の調製〕
(抗原の調製)
バソヒビン2タンパク質として、AY834202ポリペプチドのアミノ酸番号281~285のアミノ末端あるいはカルボキシル末端にシステイン残基を付加したペプチドをシグマアルドリッチ社にて合成し、それぞれをクローン71、1694、1760、2356とした。得られた各ペプチドについて、マレイミド化したKLH〔Keyhole Limpet Hemocyanin、Imject(登録商標)Maleimide Activated mcKLH、ピアス社製〕を用いて、ペプチドのSH基を介してハプテン抗原を調製した。なお、AY834202ポリペプチドは、特許文献3に記載の方法に従って作製した。
【実施例】
【0073】
(モノクローナル抗体の調製)
バソヒビン2のハプテン抗原を、初回免疫には完全アジュバントと、2回目以降は不完全アジュバントと等量混和することにより、免疫原としての乳剤を調製した。
【実施例】
【0074】
モノクローナル抗体は以下のようにして作成した。5週齢の雌Balb/c系マウスに、投与1回につき、一匹当り50μgのハプテン抗原をFCA等のアジュバントと混合し、腹腔内に投与した。2週間以上の間隔をおいて免疫を繰り返し、抗原ペプチドに対して抗体価の上昇したマウスに対して最終のブースターとして50μgのハプテン抗原を尾静脈より投与した。最終ブースト3日後にマウスより脾臓を摘出し、脾細胞を調製した。脾細胞とミエローマ細胞(p3.x63.Ag8.653)とをPEG法を用いて細胞融合を行い、ハイブリドーマを作製した。
【実施例】
【0075】
各モノクローナル抗体は、抗体産生ハイブリドーマの無血清培地あるいはハイブリドーマをマウスに投与して得られた腹水より、プロテインAカラム(MAPS IIキット、Bio-Rad Laboratories Inc.)を用いて精製した。
【実施例】
【0076】
実施例1〔モノクローナル抗体の内皮細胞の遊走能に対する効果〕
MLTC-1/野生型VASH2を24穴プレートに1×10個/ウェルずつ播種し、0.5%血清を含む培地で24時間培養した後、低血清培地で17時間培養したHUVEC 5×10個をポアサイズ8μmのインサートに添加した。この時マウスIgG、マウス抗血清(ポリクローナル抗体)、抗ヒトVASH2モノクローナル抗体のクローン71、1694、1760、2356をそれぞれ5μg/mLの濃度でlower chamberに添加した。37℃で4時間インキュベートした後、メンブレンの下面に移動したHUVECをギムザ染色で染色した。下面に移動したHUVECを光学顕微鏡下に200倍でランダムに5視野カウントしその平均値および標準偏差を算出した。MLTC-1/Mockを播種した群を陰性コントロールとした。結果を図3に示す。
【実施例】
【0077】
図3より、ポリクローナル抗体と各モノクローナル抗体を添加した群は、いずれもマウスIgG添加群と比較して有意に内皮細胞の遊走を抑制したが、クローン1760が最も抑制効果が強かった(p<0.01)。
【実施例】
【0078】
実施例2〔モノクローナル抗体の内皮細胞のネットワーク形成に対する効果〕
24穴プレートの各ウェルに、500μLの成長因子非添加Matrigel(BD Biosciences)を添加してゲル化させ、その上に低血清培地で17時間培養したHUVEC 7.5×10個(500μLに懸濁)を播種し、MLTC-1/野生型VASH2の培養上清500μLを添加した。この時マウスIgG、マウス抗血清(ポリクローナル抗体)、抗ヒトVASH2モノクローナル抗体のクローン71、1760、あるいは以前にAY834202ポリペプチドのアミノ酸番号207(セリン)~219(リジン)までの部分ペプチドを抗原として作成したモノクローナル抗体5E3をそれぞれ5μg/mLの濃度でlower chamberに添加した。37℃で5時間インキュベートした後、形成されたネットワークの分岐点を位相差顕微鏡下に40倍でランダムに5視野カウントしその平均値および標準偏差を算出した。MLTC-1/Mockを播種した群を陰性コントロールとした。結果を図4に示す。
【実施例】
【0079】
図4より、クローン71、1760、5E3を添加した群は、いずれもマウスIgG添加群と比較して有意にネットワーク形成を抑制したが、遊走実験と同様、クローン1760が最も抑制効果が高かった(p<0.01)。なお、以前に作成していた別のアミノ酸配列を認識する抗VASH2モノクローナル(5E3)には中和活性は認められなかった。
【実施例】
【0080】
以上の結果から、作製したモノクローナル抗体はバソヒビン2タンパク質に対する中和活性を有しており、このうちクローン1760が最も中和活性が高いことが明らかとなった。
【実施例】
【0081】
実施例3〔マウス腫瘍モデル-1〕
6~8週齢、雌のBALB-cヌードマウスの背部皮下に、ヒト卵巣漿液性腺癌細胞株(SKOV-3)1×10個を100μLのPBSに懸濁して移植した(n=4)。腫瘍が計測可能になった時点(直径5mm程度)よりマウスIgG(5mg/kg)あるいは抗ヒトVASH2モノクローナル抗体のクローン1760(5mg/kg)を腹腔内投与した。また、抗体投与時に腫瘍径を計測し、長径×短径×短径×1/2より腫瘍体積を算出し、平均値を算出した。抗体投与は計6回(0日目、4日目、7日目、12日目、15日目、19日目)行い、治療開始22日目に腫瘍を摘出した。腫瘍摘出直前の代表的な写真を図5に、腫瘍体積の変化を図6に示す。
【実施例】
【0082】
図5及び6より、クローン1760投与群では、マウスIgG投与群と比較して有意に腫瘍増殖が抑制され(p<0.05)、33%の腫瘍体積減少を認めた。
【実施例】
【0083】
また、摘出した腫瘍の血管を免疫染色で可視化し、腫瘍面積における血管断面積比率を算出した。腫瘍血管の代表的な写真を図7に、その断面積の比較を図8に示す。
【実施例】
【0084】
図7及び8より、クローン1760投与群では、マウスIgG投与群と比較して有意な腫瘍の血管断面積の減少が認められ(p<0.01)、個体レベルでの腫瘍血管新生抑制効果が確認された。
【実施例】
【0085】
実施例4〔マウス腫瘍モデル-2〕
6~8週齢、雌のBALB-cヌードマウスの背部皮下に、実施例3と同様にして、ヒト卵巣漿液性腺癌細胞株(SKOV-3)1×10個を移植した(n=8)。腫瘍が計測可能になった時点(直径5mm程度、約1週間後)よりマウスIgG(5mg/kg)あるいは抗ヒトVASH2モノクローナル抗体のクローン1760(10、15、25、50mg/kg)、血管新生阻害薬であるベバシズマブ(中外製薬社製、5mg/kg)を腹腔内投与した。また、抗体投与時に腫瘍径を計測し、長径×短径×短径×1/2より腫瘍体積を算出し、平均値を算出した。抗体投与は計5回(0日目、4日目、7日目、11日目、14日目)行い、治療開始18日目に腫瘍を摘出した。18日目の腫瘍体積を図9に示す。
【実施例】
【0086】
図9より、ベバシズマブ(5mg/kg)投与群とクローン1760(25mg/kg)投与群はほぼ同程度の腫瘍増殖抑制効果を示すことが分かる。
【実施例】
【0087】
また、マウスIgG(5mg/kg)投与群、クローン1760(25mg/kg)投与群、ベバシズマブ(5mg/kg)投与群の腫瘍体積の変化を図10に示す。
【実施例】
【0088】
図10より、ベバシズマブ投与群はマウスIgG投与群に対して腫瘍増殖がp<0.016で抑制されたのに対し、クローン1760投与群では腫瘍増殖がp<0.010で抑制されており、その抑制効果の推移もほぼ同じであることが分かる。
【実施例】
【0089】
さらに、摘出した腫瘍の血管を免疫染色で可視化し、腫瘍面積における血管断面積比率を算出した。マウスIgG(5mg/kg)投与群、クローン1760(25mg/kg)投与群、ベバシズマブ(5mg/kg)投与群の代表的な写真を図11に、その断面積の比較を図12に示す。
【実施例】
【0090】
図11及び12より、クローン1760投与群では、ベバシズマブ(5mg/kg)投与群と同様に、マウスIgG投与群と比較して有意な腫瘍の血管断面積の減少が認められ(p<0.01)、個体レベルでの腫瘍血管新生抑制効果が確認された。
【実施例】
【0091】
本発明者らは、バソヒビン2がヒトの肝癌や卵巣癌に発現し、そのバソヒビン2の発現をノックダウンすることで腫瘍血管新生や腫瘍の発育が抑制できることを明らかにしている。また、本発明者らは以前にAY834202ポリペプチドのアミノ酸番号207~219までを認識するモノクローナル抗体5E3を樹立していたが、中和活性を報告されている抗バソヒビン2抗体はないことから、本発明において、本発明の抗バソヒビン2抗体が腫瘍の発育を抑制できる事を初めて明らかにした。以上より、本発明の抗体は、病的な血管新生の制御を目的としたがん治療や眼科疾患への応用が期待される。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の抗バソヒビン2抗体は、バソヒビン2タンパク質を良好な特異性で認識し、バソヒビン2タンパク質の有する血管新生促進作用を抑制することができることから、抗バソヒビン2抗体を含有する医薬組成物は、例えば、がんなどの血管新生の抑制を要する疾患の治療などに好適に用いられる。
【配列表フリ-テキスト】
【0093】
配列表の配列番号1は、AY834202ポリヌクレオチドである。
配列表の配列番号2は、AY834202ポリペプチドである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11