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明細書 :インクセット及び印刷物並びに印刷方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6296398号 (P6296398)
登録日 平成30年3月2日(2018.3.2)
発行日 平成30年3月20日(2018.3.20)
発明の名称または考案の名称 インクセット及び印刷物並びに印刷方法
国際特許分類 C09D  11/50        (2014.01)
C09D  11/54        (2014.01)
C09K  11/06        (2006.01)
B41J   2/01        (2006.01)
B41M   5/00        (2006.01)
FI C09D 11/50
C09D 11/54
C09K 11/06
B41J 2/01 501
B41M 5/00 120
請求項の数または発明の数 19
全頁数 17
出願番号 特願2015-501438 (P2015-501438)
出願日 平成26年2月17日(2014.2.17)
国際出願番号 PCT/JP2014/053587
国際公開番号 WO2014/129416
国際公開日 平成26年8月28日(2014.8.28)
優先権出願番号 2013029862
優先日 平成25年2月19日(2013.2.19)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成28年12月27日(2016.12.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
発明者または考案者 【氏名】河合 壯
【氏名】上野 紘史
個別代理人の代理人 【識別番号】110001069、【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
審査官 【審査官】上條 のぶよ
参考文献・文献 特開平8-156399(JP,A)
特開平9-277693(JP,A)
国際公開第2011/111607(WO,A1)
国際公開第2011/013520(WO,A1)
国際公開第2009/110199(WO,A1)
国際公開第2008/111293(WO,A1)
特開2005-114909(JP,A)
特開2005-112947(JP,A)
特開2003-073600(JP,A)
調査した分野 C09D 11/00
B41J 2/01
B41M 5/00
C09K 11/06
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
a) m座の配位子を有する、キラルでない蛍光発光性希土類錯体を含有する第1インク組成物と、
b) 該第1インク組成物と接触したときに前記m座の配位子と置換して前記蛍光発光性希土類錯体とは別の円偏光発光性希土類錯体を生じさせるn座のキラル配位子を含有する第2インク組成物とを備え、
mが1~3の整数、nが2~4の整数で且つmよりも大きいことを特徴とするインクセット。
【請求項2】
a) m座のキラル配位子を有する、円偏光発光性希土類錯体を含有する第1インク組成物と、
b) 該第1インク組成物と接触したときに前記m座の配位子と置換されて、キラルでない蛍光発光性希土類錯体を生じさせるn座のキラルでない配位子を含有する第2インク組成物とを備え、
mが1~3の整数、nが2~4の整数で且つmよりも大きいことを特徴とするインクセット。
【請求項3】
前記第2インク組成物は、前記第1インク組成物よりも低発光性であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクセット。
【請求項4】
前記第1インク組成物を用いて印刷された印刷物と前記第2インク組成物が接触し、熱処理されたときに、前記m座の配位子が前記n座の配位子と置換されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のインクセット。
【請求項5】
前記第1インク組成物と前記第2インク組成物が接触し、熱処理されたときに、前記m座の配位子が前記n座の配位子と置換されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のインクセット。
【請求項6】
前記蛍光発光性希土類錯体及び前記円偏光発光性希土類錯体を、該蛍光発光性希土類錯体の励起波長で励起したときの蛍光発光強度の比が、0.7:1~1:0.7であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクセット。
【請求項7】
前記蛍光発光性希土類錯体が、下記一般式(6)
【化6】
JP0006296398B2_000008t.gif
(式中、L1~L3は同一又は異なる水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、C1~C20の基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、メルカプト基のいずれかを表す。)
で表されるアセチルアセトン誘導体の配位子を有することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のインクセット。
【請求項8】
前記蛍光発光性希土類錯体が、下記一般式(7)
【化7】
JP0006296398B2_000009t.gif
(式中、Ln(III)は3価の希土類イオン、L1~L3は同一又は異なる水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、C1~C20の基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、メルカプト基のいずれかを表す。)
で表される構造を含むことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のインクセット。
【請求項9】
前記蛍光発光性希土類錯体が、下記一般式(8)
【化8】
JP0006296398B2_000010t.gif
(式中、Ln(III)はEu又はTbを表す。)
で表される構造を含むことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のインクセット。
【請求項10】
前記キラル配位子が、下記一般式(9)
【化9】
JP0006296398B2_000011t.gif
(式中、Xは同一又は異なる水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、C1~C6の直鎖状或いは分枝状の基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、ホスホン酸基、ジアゾ基、メルカプト基のいずれかを表し、Y及びZは5員の芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表し、R1は同一又は異なるC1~C6の直鎖状或いは分枝状の基、水素原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、ホスホン酸基、ジアゾ基、メルカプト基のいずれかを表し、R2は同一又は異なるC1~C6の直鎖状或いは分枝状の基、水素原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、ホスホン酸基、ジアゾ基、メルカプト基のいずれかを表す。)
で表されることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載のインクセット。
【請求項11】
前記キラル配位子が、下記式(10)
【化10】
JP0006296398B2_000012t.gif
で表されることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載のインクセット。
【請求項12】
前記第1インク組成物が、下記一般式(11)
【化11】
JP0006296398B2_000013t.gif
(式中、R3は同一又は異なる水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、C1~C20の基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、ホスホン酸基、ジアゾ基、メルカプト基のいずれかを表し、Tは2つのフェニル基を連結する単結合もしくは原子団であって2つのベンゼン環を炭素原子2個と同等もしくはそれ以下の距離をへだてて配置せしめる原子団を表す。)
で表されるホスト材料に前記蛍光発光性希土類錯体を分散させて成ることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載のインクセット。
【請求項13】
前記第2インク組成物が、下記一般式(11)
【化11】
JP0006296398B2_000014t.gif
(式中、R3は同一又は異なる水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、C1~C20の基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、ホスホン酸基、ジアゾ基、メルカプト基のいずれかを表し、Tは2つのフェニル基を連結する単結合もしくは原子団であって2つのベンゼン環を炭素原子2個と同等もしくはそれ以下の距離をへだてて配置せしめる原子団を表す。)
で表されるホスト材料に前記キラル配位子を分散させて成ることを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載のインクセット。
【請求項14】
前記原子団は、下記の式(12)
【化12】
JP0006296398B2_000015t.gif
で表される原子団のいずれかであることを特徴とする請求項12又は13に記載のインクセット。
【請求項15】
前記蛍光発光性希土類錯体が、下記一般式(13)
【化13】
JP0006296398B2_000016t.gif
(式中、Ln(III)はEu又はTbを表す。)
で表され、
前記キラル配位子が、下記式(14)
【化14】
JP0006296398B2_000017t.gif
で表され、
前記円偏光発光性希土類錯体が、下記一般式(15)
【化15】
JP0006296398B2_000018t.gif
(式中、Ln(III)はEu又はTbを表す。)
で表されることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクセット。
【請求項16】
m座の配位子を有する、キラルでない蛍光発光性希土類錯体を第1ホスト材料に分散させて成る第1インク組成物で形成された薄膜の上に、n座のキラル配位子を第2ホスト材料に分散させて成る第2インク組成物で印字し、熱処理を行うことにより形成される印刷物であって、mが1~3の整数、nが2~4の整数で且つmよりも大きいことを特徴とする印刷物。
【請求項17】
m座のキラル配位子を有する、円偏光発光性希土類錯体を第1ホスト材料に分散させて成る第1インク組成物で形成された薄膜の上に、n座のキラルでない配位子を第2ホスト材料に分散させて成る第2インク組成物で印字し、熱処理を行うことにより形成される印刷物であって、mが1~3の整数、nが2~4の整数で且つmよりも大きいことを特徴とする印刷物。
【請求項18】
m座の配位子を有する、キラルでない蛍光発光性希土類錯体を第1ホスト材料に分散させてなる第1インク組成物で薄膜を形成し、
該薄膜の上に、n座のキラル配位子を第2ホスト材料に分散させて成る第2インク組成物で印字し、
熱処理を行うことにより印刷物を形成する方法であって、
mが1~3の整数、nが2~4の整数で且つmよりも大きいことを特徴とする印刷方法。
【請求項19】
m座のキラル配位子を有する、円偏光発光性希土類錯体を第1ホスト材料に分散させてなる第1インク組成物で薄膜を形成し、
該薄膜の上に、n座のキラルでない配位子を第2ホスト材料に分散させて成る第2インク組成物で印字し、
熱処理を行うことにより印刷物を形成する方法であって、
mが1~3の整数、nが2~4の整数で且つmよりも大きいことを特徴とする印刷方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣やパスポート、運転免許証等に偽造防止用の識別マークの印刷を行うためのインクセット及び該インクセットを用いて印刷された印刷物並びに印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パスポートや運転免許証、健康保険被保険者証は、氏名、性別、年齢、居住地といった個人を特定する情報が記載された公的な書証であることから、本人確認や本人識別のための身分証明書として利用されている。このため、身分証明書が簡単に偽造、変造、改ざん等されるような場合は、本人確認の信頼性を損なうことになる。また、通貨(紙幣、硬貨)や有価証券、クレジットカード等の偽造、変造は、経済社会に大きな混乱をもたらす。そこで、従来より、これら身分証明書や通貨等の偽造を防止するため、特殊な材料から成る、或いは特殊な構造を有する識別マークを設けることが行われている。
【0003】
偽造防止という目的を考えると、識別マークはその存在自体が明らかでないことが望ましい。そこで、通常状態では不可視であるが、特定波長の励起光を照射することにより蛍光発光が生じる蛍光材料が識別マークの材料として広く利用されている。蛍光材料を用いた識別マークの存在は、励起光の照射によって生じる蛍光発光やその形状により認識される。
【0004】
蛍光材料の励起には通常、紫外光が用いられる。ところが、ブラックライト等の紫外光発生装置が広く流通する現在においては、だれでも識別マークの存在を確認することができる。蛍光材料自体の入手は比較的容易であるため、識別マークの存在が明らかになると偽造や変造等の危険性が高まる。
【0005】
これに対して、円偏光発光性を有する材料を用いた識別マークが提案されている(特許文献1~3参照)。該識別マークでは、励起光を照射したときに発せられる蛍光発光に加えて、該蛍光に含まれる円偏光成分の有無や右円偏光成分と左円偏光成分の強度差に基づき真贋判定を行うことができる。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2005-111704号公報
【特許文献2】特開2005-112947号公報
【特許文献3】特開2005-114909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
円偏光発光性の有無は位相差板と偏光板からなる円偏光板を通して観察することができ、右円偏光板及び左円偏光板を通して蛍光強度を測定することにより右円偏光成分及び左円偏光成分の強度差を求めることができる。紫外光発生装置と同様に円偏光板の入手も容易であることから、円偏光発光性の有無を確認したり右円偏光成分と左円偏光成分の強度差を求めたりすることも比較的容易に行うことができる。従って、円偏光発光性を付加した場合であっても、やはり、偽造や変造の危険性がある。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、円偏光発光を利用した真贋判定において、偽造が難しい印刷物を印刷することができるインクセット及び印刷物並びに印刷方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために成された本発明に係るインクセットは、
a) m座の配位子を有するキラルでない蛍光発光性希土類錯体を含有する第1インク組成物と、
b) 該第1インク組成物と接触したときに前記m座の配位子と置換されて前記蛍光発光性希土類錯体とは別の円偏光発光性希土類錯体を生じさせるn座のキラル配位子を含有する第2インク組成物とを備え、
mが1~3の整数、nが2~4の整数で且つmよりも大きいことを特徴とする。
【0010】
第1インク組成物は、蛍光発光性希土類錯体を含有するため、該第1インク組成物を用いて作製された印刷物は、励起光が照射されたときに蛍光を発する。このとき、前記蛍光発光性希土類錯体はキラルでないため、前記蛍光は左回りの円偏光成分と右回りの円偏光成分との間に強度差がなく、円偏光発光性を有しない。ここで、印刷物とは紙や樹脂、ガラス、金属などの基材上に形成された文字や絵、図形等の任意の形状を有する膜状の物体を指す。
【0011】
前記第1インク組成物で作製された印刷物の上に第2インク組成物を用いて印刷すると、該第2インク組成物に含有されるキラル配位子が前記蛍光発光性希土類錯体の配位子と置換して別の蛍光発光性希土類錯体が生じる。「印刷物」は流体ではなく固体の状態で存在するが、このような固体状の印刷物に含まれる蛍光発光性希土類錯体の配位子が別の配位子と置換されることは、本発明の大きな特徴の一つである。そして、第1インク組成物で作製された印刷物の上に第2インク組成物で印刷を行ったものは、真贋判別用の識別マークとして利用することができる。なお、以下の説明では、第1インク組成物だけで作製された印刷物と、該印刷物の上に第2インク組成物で印刷されたものを区別する場合、前者を「第1インク組成物の印刷物」といい、後者を「第1及び第2インク組成物の印刷物」或いは「本発明のインクセットで作製された印刷物」という。
【0012】
別の蛍光発光性希土類錯体はキラル配位子が配位しており、該蛍光発光性希土類錯体もキラリティを有する。この結果、第1インク組成物で作製された印刷物のうち第2インク組成物で印刷された部分のみ、円偏光性を有する蛍光発光を発する。第1インク組成物の印刷物の全体を覆うように第2インク組成物で印刷すれば、該印刷物全体から発せられる蛍光が円偏光性を有し、第1インク組成物の印刷物の一部のみを覆うように第2インク組成物で印刷すれば、該印刷物の一部から発せられる蛍光のみ円偏光性を有し、残りから発せられる蛍光は円偏光性を有しない。この場合、第1インク組成物の印刷物の上に第2インク組成物を用いて文字や記号等の情報を印刷すれば、円偏光発光の測定により読み出し可能な情報を付与することができる。
【0013】
このとき、第2インク組成物自体は、第1インク組成物よりも低発光性であること、或いは非発光性であることが好ましい。また、第2インク組成物は、通常状態(可視光線下)では無色透明であるか第1インク組成物と同じ色であり、且つ、第2インク組成物に含有されるキラル配位子により生じた円偏光性を有する蛍光発光性希土類錯体の蛍光強度が、第1インク組成物に含まれる蛍光発光性希土類錯体の蛍光強度と同等であることが好ましい。こうすれば、第1インク組成物の印刷物上の一部のみに第2インク組成物で印刷した場合でも、そのことが分かり難くなるため、偽造や変造等の危険性が一層小さくなる。
【0014】
第1インク組成物の印刷物と第2インク組成物が接触してからm座の配位子がn座のキラル配位子と置換されるまでの時間は、第1インク組成物に含まれる希土類錯体以外の材料、第2インク組成物に含まれるキラル配位子以外の材料、温度、湿度、圧力等の条件によって異なる。m座の配位子がn座のキラル配位子と置換されるまでに時間がかかる場合、円偏光発光を測定する時期によって円偏光発光の有無が異なる。従って、第1インク組成物の印刷物の上に、第2インク組成物を用いて文字やマーク等のパターンを印刷したことがより一層分かり難くなる。また、円偏光発光の有無に基づき、第1及び第2インク組成物の印刷物を作製してからの経過時間を知ることもできる。
【0015】
さらに、第1インク組成物の印刷物と第2インク組成物が接触した後、熱処理されることにより、前記m座の配位子が前記n座の配位子と置換されて前記円偏光発光性希土類錯体が生じるようにしても良い。この場合は、第1及び第2インク組成物の印刷物に対して熱処理を施すか否かで、該印刷物に円偏光発光性を付与するか否かを決めることができる。
【0016】
上記したインクセットは、第1インク組成物の印刷物の上に第2インク組成物で印刷すると、その部分に、第1インク組成物の印刷物にはなかった性質(円偏光発光性)が現れるというものであるが、これに代えて、第1インク組成物の印刷物の上に第2インク組成物で印刷すると、その部分における、第1インク組成物の印刷物が有していた性質(円偏光発光性)が消失するようにインクセットを構成しても良い。
すなわち、本発明の別の態様に係るインクセットは、
a) m座のキラル配位子を有する円偏光発光性希土類錯体を含有する第1インク組成物と、
b) 該第1インク組成物と接触したときに前記m座の配位子と置換されて、キラルでない蛍光発光性性希土類錯体を生じさせるn座のキラルでない配位子を含有する第2インク組成物とを備え、
mが1~3の整数、nが2~4の整数で且つmよりも大きいことを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る印刷物は、m座の配位子を有する、キラルでない蛍光発光性希土類錯体を第1ホスト材料に分散させて成る第1インク組成物で形成された薄膜の上に、n座のキラル配位子を第2ホスト材料に分散させて成る第2インク組成物で印字し、熱処理を行うことにより形成される印刷物であって、mが1~3の整数、nが2~4の整数で且つmよりも大きいことを特徴とする。

【0018】
本発明に係る別の印刷物は、m座のキラル配位子を有する、円偏光発光性希土類錯体を第1ホスト材料に分散させて成る第1インク組成物で形成された薄膜の上に、n座のキラルでない配位子を第2ホスト材料に分散させて成る第2インク組成物で印字し、熱処理を行うことにより形成される印刷物であって、mが1~3の整数、nが2~4の整数で且つmよりも大きいことを特徴とする。
【0019】
さらに、本発明に係る印刷方法は、m座の配位子を有する、キラルでない蛍光発光性希土類錯体を第1ホスト材料に分散させてなる第1インク組成物で薄膜を形成し、
該薄膜の上に、n座のキラルな配位子を第2ホスト材料に分散させて成る第2インク組成物で印字し、
熱処理を行うことにより印刷物を形成する方法であって、
mが1~3の整数、nが2~4の整数で且つmよりも大きいことを特徴とする。

【0020】
また、本発明に係る別の印刷方法は、m座のキラル配位子を有する、円偏光発光性希土類錯体を第1ホスト材料に分散させてなる第1インク組成物で薄膜を形成し、
該薄膜の上に、n座のキラルでない配位子を第2ホスト材料に分散させて成る第2インク組成物で印字し、
熱処理を行うことにより印刷物を形成する方法であって、
mが1~3の整数、nが2~4の整数で且つmよりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、蛍光発光性を有する印刷物の一部にのみ円偏光発光性を有する領域を形成することができる。また、別の態様の本発明によれば、円偏光発光性を有する印刷物の一部に非円偏光発光性の蛍光発光性領域を形成することができる。このとき、印刷物に占める円偏光発光性領域或いは非円偏光発光性領域の割合を小さくすれば、これらの領域の存在が明らかになり難くなり、偽造、変造がされ難い識別マークを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例1で用いたDPEPOの構造式(a)、[Eu((R)-iPr-pybox) (hfa)3] の構造式(b)。
【図2】本発明の実施例1で作製した数字パターンを示す図。
【図3】数字パターンの蛍光顕微鏡像の観察画像。
【図4】数字パターンの蛍光強度マッピング像(a)、円偏光発光マッピング像(b)。
【図5】図形パターンの説明図。
【図6】図形パターンの目視像(a)、蛍光顕微鏡像(b)、蛍光強度マッピング像(c)、円偏光発光マッピング像(d)。
【図7】本発明の実施例2に係る識別マークの作製手順を示す図。
【図8】本発明の実施例2に係る識別マークの熱処理前後のCPLスペクトル(上段)及び蛍光発光スペクトル(下段)を示す図(a)、及び別途合成した円偏光発光性希土類錯体のCPLスペクトル(上段)及び蛍光発光スペクトル(下段)を示す図(b)。
【図9】本発明の実施例2の推定化学反応式。
【図10】本発明の実施例3に係る識別マークの目視像(a)、蛍光顕微鏡像(b)、円偏光発光マッピング像(c)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係るインクセットは、キラルでない蛍光発光性希土類錯体を含有する第1インク組成物と、キラル配位子を含有する第2インク組成物とを備える。従来より、蛍光発光を利用した識別マークが知られているが、本発明のインクセットを用いて識別マークを印刷することにより、全体からは蛍光発光が生じ、その一部のみ円偏光性を有するような識別マークを得ることができる。本発明のインクセットの第1インク組成物に含有されるキラルでない蛍光発光性希土類錯体と、第2インク組成物に含有されるキラル配位子には様々な組み合わせが考えられるが、具体的には次のようにして決定した。

【0024】
希土類錯体とは、希土類元素の2価、3価又は4価のイオンを中心イオンとして、1ないし複数の各種配位子が配位した有機錯体である。このような錯体としては、希土類イオンが他の化学種に取り囲まれてホスト-ゲスト構造をとった包接化合物や、単に中心の希土類イオンに配位子が配位したのみ(希土類イオンが他の化学種に包接されていない)のものがある。包接化合物構造は、一般的に不斉部位が希土類イオンから離れているため、希土類イオンのキラリティの影響が少ない。また、錯体がデルタ体及びデルタ体の光学異性体混合物になる可能性が高く、キラリティの低下が考えられる。このことから、本発明者は、他の化学種に包接されていない錯体構造を有する希土類錯体を中心に探索したところ、3価の希土類イオンを中心イオンとして、不斉ビスオキサゾリンピリジン(Bis (oxazolinyl) pyridine)骨格を有する配位子と、アセチルアセトン誘導体が配位した、以下の一般式(1)
【化1】
JP0006296398B2_000002t.gif
(式中、Ln(III)はEu、Tb、Sm等の3価の希土類イオン、Xは同一又は異なる水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、C1~C6(好ましくはC1~C3)の直鎖状或いは分枝状の基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、ホスホン酸基、ジアゾ基、メルカプト基のいずれかを表し、Y及びZは5員の芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表し、R1は同一又は異なるC1~C6(好ましくはC1~C3)の直鎖状或いは分枝鎖状の基、水素原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、ホスホン酸基、ジアゾ基、メルカプト基のいずれかを表し、R2は同一又は異なるC1~C6(好ましくはC1~C3)の直鎖状或いは分枝鎖状の基、水素原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、ホスホン酸基、ジアゾ基、メルカプト基のいずれかを表し、L1~L3は同一又は異なる水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、C1~C6(好ましくはC1~C3)の直鎖状或いは分枝状の基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、メルカプト基のいずれかを表す。)
で表される希土類錯体が、蛍光発光性及び円偏光発光性の両方において優れることを見いだした(国際公開WO2011/111607参照)。

【0025】
不斉配位子(キラル配位子)が希土類錯体に組み込まれることによって、円偏光発光が生じる。また、アセチルアセトン誘導体は光増感機能を有する配位子として知られている。そこで、第2インク組成物に含有されるキラル配位子として、不斉ビスオキサゾリンピリジン骨格を有する配位子(以下、「ビスオキサゾリンピリジン配位子」、又は略語「pybox」と表記する)を選択した。

【0026】
第2インク組成物に含有されるキラル配位子は、第1インク組成物に含有される蛍光発光性希土類錯体の配位子と置換されて、円偏光発光性を有する蛍光発光性希土類錯体となる。希土類イオンと配位子の配位結合の強さを決める要因の一つに配位原子(配位座)の数がある。上述したビスオキサゾリンピリジン配位子は三座配位子であることから、単座配位子、或いは二座配位子の中で、上記したアセチルアセトン誘導体と共に希土類イオンと配位結合したときに、キラルでない蛍光発光性希土類錯体となるような配位子を探索した。

【0027】
この結果、以下の一般式(2A)
【化2】
JP0006296398B2_000003t.gif
(式中、R3は同一又は異なる水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、C1~C20の基(好ましくはC1~C6の基)、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、ホスホン酸基、ジアゾ基、メルカプト基のいずれかを表し、Tは単結合もしくは原子団であって、2つのベンゼン環を炭素原子2個と同等もしくはそれ以下の距離をへだてて配置せしめることにより2つの酸素原子間の距離を希土類金属イオンの配位に適した距離(おおむね1nm以下)に制御する原子団を表す。代表的には、下記の式(2B)
【化16】
JP0006296398B2_000004t.gif
で表される原子団が挙げられる。)
で表される、二座のホスフィンオキシド配位子が条件を満たすことを見いだした。

【0028】
つまり、このホスフィンオキシド配位子と上述のアセチルアセトン誘導体が希土類イオンに配位結合して成る希土類錯体は、蛍光発光性を有するが円偏光発光性を有しない希土類錯体であった。この希土類錯体とホスト材料から第1インク組成物を調製し、このインク組成物を用いて薄膜を形成した。そして、この薄膜が蛍光発光性を有するが、円偏光性を有しないことを確認した後、この薄膜の上に、ビスオキサゾリンピリジン配位子とホスト材料から成る第2インク組成物を塗布して、円偏光発光性を測定した。その結果、第1インク組成物の薄膜のうち第2インク組成物で塗布された部分では蛍光発光性及び円偏光発光性の両方を有することが確認された。

【0029】
このことは、第1インク組成物の薄膜の上に第2インク組成物を塗布した部分では、第1インク組成物中の蛍光発光性希土類錯体のホスフィンオキシド配位子がビスオキサゾリンピリジン配位子に置換されたことを意味する。このような現象は、第1インク組成物中の蛍光発光性希土類錯体のキラルでない配位子の配位座数が、第2インク組成物中のキラル配位子の配位座数よりも小さければ生じることが類推され、従って、本発明のインクセットにおいては、第1インク組成物に含有される蛍光発光性希土類錯体の配位子の配位座mは、第2インク組成物に含有されるキラル配位子の配位座nよりも小さく、1~3の整数である。一方、キラル配位子の配位座nは2~4の整数である。これは、希土類錯体の配位数が通常8~10の範囲であり、その中でも蛍光発光強度が高いものとして知られている希土類錯体の配位数が4以下であることが背景となっている。

【0030】
また、希土類元素の特性(イオン半径、配位形態等)は非常に類似しており、キラルでない蛍光発光性希土類錯体の中心イオンとして、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybのいずれかの3価の希土類イオンを用いれば、前段落に記したような蛍光発光及び円偏光発光が得られる。ただし、本発明に係るインクセットでは、希土類錯体の中心イオンとしてNd、Sm、Eu、Tb、Ybのいずれかの3価のイオンが好ましく、さらに好ましくはEu又はTbである。なお、中心イオンとしてNd、Ybなどを用いることにより、本発明に係る希土類錯体は近赤外領域での発光を生じる。

【0031】
以上より、本発明においては、第1インク組成物に含まれるキラルでない蛍光発光性希土類錯体と、第2インク組成物に含まれるキラル配位子としては種々の組み合わせが考えられるが、特に、キラルでない蛍光発光性希土類錯体として下記一般式(3)
【化3】
JP0006296398B2_000005t.gif
(式中、Ln(III)はEu又はTbを表す。)
で表される希土類錯体を、キラル配位子としては、下記式(4)
【化4】
JP0006296398B2_000006t.gif
で表される配位子を選択することが好ましい。

【0032】
上記の組み合わせでは、第1インク組成物の印刷物(薄膜)上に第2インク組成物で印刷することにより生じる円偏光性の蛍光発光性希土類錯体は、次の式(5)
【化5】
JP0006296398B2_000007t.gif
(式中、Ln(III)はEu又はTbを表す。)
で表される希土類錯体となる。ビスオキサゾリンピリジン配位子(pybox)とヘキサフルオロアセチルアセトン(hfa)が希土類イオンに配位した希土類錯体は優れた円偏光発光性を有し、且つ、高い発光特性を有することが知られている。従って、第1インク組成物を、上記式(3)で表される蛍光発光性希土類錯体を含有する組成物とし、第2インク組成物をpyboxを含有する組成物とすれば、第1インク組成物と第2インク組成物が接触することにより、優れた円偏光発光性、高い発光特性を有する希土類錯体を生じさせることができる。

【0033】
なお、本発明は、キラルな、つまり円偏光性を有する蛍光発光性希土類錯体を含有する第1インク組成物と、キラルでない配位子を含有する第2インク組成物とを備えるインクセットとしても実現可能である。このようなインクセットを用いて識別マークを印刷することにより、全体からは円偏光性を有する蛍光発光が生じ、その一部のみ円偏光性を有しないような識別マークを得ることができる。こちらのインクセットを第2インクセット、上述したインクセットを第1インクセットとすると、第1のインクセットと第2インクセットは、第1インク組成物と第2インク組成物に含有される配位子及び希土類錯体の円偏光性と非円偏光性、識別マークの円偏光性と非円偏光性が逆であるだけで、インクセット全体としてみると、同様の性質を有している。従って、第2インクセットにおいても、上述した第1インクセットと同様の方法で、第1インク組成物に含有されるキラルな蛍光発光性希土類錯体と第2インク組成物に含まれるキラルでない配位子の組み合わせを決定することができる。
以下、本発明の具体的な実施例を、第1インクセットを例に挙げて説明する。
【実施例1】
【0034】
1.円偏光発光性希土類錯体を含む複合型インクによるイメージ(数字)の確認
円偏光発光性Eu(III)錯体である[Eu((R)-iPr-pybox) (hfa)3] 130mg、ホスト材料であるbis[(2-diphenylphosphoryl)phenyl]ether(DPEPO) 45mgを、1-ブタノール 0.5mL、エタノール 0.5mLに混ぜ合わせ、複合型インクを調製した。図1(a)にDPEPOの構造を、(b)に[Eu((R)-iPr-pybox) (hfa)3] の構造を示す。
次に、上記複合型インクを用いてインクジェット装置(株式会社SIJテクノロジ製、ST0 50)によりガラス基板上に数字を印字した。図2に印字した数字を、図3に蛍光顕微鏡(オリンパス株式会社製、IX71、4倍対物レンズ)の観察画像を示す。
続いて、ガラス基板上の印字した数字を円偏光蛍光顕微鏡(自作)により蛍光強度マッピング(PL-mappimg、613nm)及び円偏光マッピング(CPL-mapping、613nm)により観察した。その結果をそれぞれ図4の(a)及び(b)に示す。図4から分かるように、いずれの方法でも数字を読み出すことができた。
【実施例1】
【0035】
2.円偏光発光性希土類錯体を含む複合型インクによるイメージ(図形パターン)の確認
右円偏光性Eu(III)錯体[Eu((R)-iPr-pybox) (hfa)3]および左円偏光性Eu(III)錯体[Eu((S)-iPr-pybox) (hfa)3]それぞれ130mgを、ホスト材料であるbis[(2-diphenylphosphoryl)phenyl]ether(DPEPO) 50mgと共に、1-ブタノール 0.5mL、エタノール 0.5mLに混ぜ合わせ、右円偏光性複合型インク及び左円偏光性複合型インクを調製した。次に、図5に示すように、インクジェット装置を用いてガラス基板上に右円偏光性複合型インクで縦のラインを、左円偏光性複合型インクで横のラインを形成した。その後、円偏光蛍光顕微鏡により円偏光像を観察したところ、左右円偏光の違いにより縦のラインと横のラインを識別することができた。図6の(a)に目視画像を、(b)に蛍光顕微鏡の観察画像を、(c)に蛍光強度マッピング(PL-mappimg、613nm)を、(d)に円偏光マッピング(CPL-mapping、613nm)を示す。円偏光マッピングでは、縦ラインが青色で、横ラインが赤色で表される。
【実施例2】
【0036】
1.識別マーク(印刷物)の作製
Eu(III)錯体である[Eu(hfa)3(H2O)2] 50mgを、ホスト材料であるDPEPO 45mgと共に、1-ブタノール 0.5mL、エタノール 0.5mLに混ぜ合わせ、第1インク組成物を調製した。この第1インク組成物を用いてガラス基板1上に薄膜2を作製した(図7の(a)、(b)参照)。続いて、この薄膜2上の一部に、キラル配位子である(R)-iPr-Pybox 30mgとホスト材料であるDPEPO 45mgを、1-ブタノール 0.5mL、エタノール 0.5mLに混ぜ合わせて第2インク組成物を調製した。第2インク組成物に用いたキラル配位子((R)-iPr-Pybox)は低発光性であるため、第2インク組成物は通常状態(可視光線下)ではほぼ無色透明である。そして、インクジェット装置を用いて前記薄膜2上に第2インク組成物で楕円状の領域3を形成した(図7の(c)参照)。以下、これを識別マーク4という。さらに、該識別マーク4を2時間、熱処理(70℃)した。
【実施例2】
【0037】
2.識別マークの蛍光発光スペクトル及びCPLスペクトル
熱処理前後の識別マーク4の蛍光発光スペクトル、CPLスペクトルの測定結果を図に示す。いずれも励起波長は375nmとした。図8の(a)は、熱処理前後の識別マーク4の領域3のCPLスペクトル(上段)及び蛍光発光スペクトル(下段)を示す。図8の(a)に示すように、領域3の発光スペクトルは熱処理前と熱処理後で変化し、特に波長615nm付近の発光強度は熱処理後に上昇した。また、熱処理前の領域3は円偏光発光が観察されなかったのに対して、熱処理後の領域3から円偏光発光が観察された。図8の(b)は、別途合成した[Eu ((R)-iPr-pybox)(hfa)3]の薄膜のCPLスペクトル(上段)及び蛍光発光スペクトル(下段)を示す。

【実施例2】
【0038】
図8の(a)と(b)の比較から分かるように、熱処理後の領域3の蛍光発光スペクトル及びCPLスペクトルは、[Eu ((R)-iPr-pybox)(hfa)3]の薄膜の蛍光発光スペクトル及びCPLスペクトルとほぼ一致した。以上より、図9に推定される反応式を示す。このように反応が進んだ結果、熱処理後の領域3には[Eu ((R)-iPr-pybox)(hfa)3]錯体が形成されたと考えられる。
【実施例3】
【0039】
実施例2と同様に、第1インク組成物からなる薄膜2を作製し、この薄膜2上に、第2インク組成物を用いてインクジェット装置で数字パターンを印字し、識別マーク4を作製した。数字パターンは実施例1と同じである(図2参照)。さらに、熱処理(70℃、2時間)を行った。図10に熱処理後の識別マーク4の目視像(a)、蛍光顕微鏡の観察画像(b)、CPLマッピング(592nm)像(c)を示す。図10(a)、(b)から、目視及び蛍光発光からは文字パターンの有無は不明であるが、図10(c)から、CPLマッピングにより識別マーク4上の文字パターンを読み出すことができることが分かった。
【実施例3】
【0040】
なお、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内での種々の変形が可能である。
例えば、上記の各実施例ではEu3+イオンを中心イオンとする希土類錯体について説明したが、その他の希土類元素の3価のイオンでも同様の結果が得られる。特に、Eu3+イオンとTb3+イオンを中心イオンとする希土類錯体は類似の円偏光発光が観察されることが報告されている(例えば " J. Am. Chem. Soc. 2011, 133, 9892-9902 ")。従って、Eu3+イオンに代えてTb3+イオンを用いた場合でも同様の結果が得られることは明らかである。
上記実施例では、可視光線下で無色透明の第2インク組成物を用いたが、第1インク組成物とほぼ同じ色の第2インク組成物を用いても良い。
【符号の説明】
【0041】
1…ガラス基板
2…薄膜
3…領域
4…識別マーク
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9