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明細書 :有機高分子三点架橋型ホスフィン、それを配位子とする遷移金属錯体および触媒

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6274202号 (P6274202)
登録日 平成30年1月19日(2018.1.19)
発行日 平成30年2月7日(2018.2.7)
発明の名称または考案の名称 有機高分子三点架橋型ホスフィン、それを配位子とする遷移金属錯体および触媒
国際特許分類 C08F 212/02        (2006.01)
C08F 212/14        (2006.01)
C08F 230/02        (2006.01)
C08F   8/42        (2006.01)
C07F   5/02        (2006.01)
B01J  31/24        (2006.01)
C07C   1/32        (2006.01)
C07C  15/14        (2006.01)
C07C 209/10        (2006.01)
C07C 211/54        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C08F 212/02
C08F 212/14
C08F 230/02
C08F 8/42
C07F 5/02
B01J 31/24
C07C 1/32
C07C 15/14
C07C 209/10
C07C 211/54
C07B 61/00
請求項の数または発明の数 16
全頁数 27
出願番号 特願2015-504399 (P2015-504399)
出願日 平成26年3月6日(2014.3.6)
国際出願番号 PCT/JP2014/055860
国際公開番号 WO2014/136909
国際公開日 平成26年9月12日(2014.9.12)
優先権出願番号 2013045650
優先日 平成25年3月7日(2013.3.7)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成29年3月1日(2017.3.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
【識別番号】301005614
【氏名又は名称】東ソー・ファインケム株式会社
発明者または考案者 【氏名】澤村 正也
【氏名】岩井 智弘
【氏名】原田 友哉
個別代理人の代理人 【識別番号】110000109、【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
審査官 【審査官】安田 周史
参考文献・文献 特開平02-049009(JP,A)
特開2007-302859(JP,A)
Julio Lloret et al.,ortho-Metalated Dirhodium(II) Catalysts Immobilized on a Polymeric Cross-Linked Support by Copolymer,Organometallics,2008年,27,p.850-856
Soichiro Kawamorita et al.,Rh-Catalyzed Borylation of N-Adjacent C(sp3)-H Bonds with a Silica-Supported Triarylphosphine Ligand,J. Am. Chem. Soc.,2012年,134,p.12924-12927
宮崎 辰也 et al.,シリカゲル担持かご型トリアリールホスフィン-Rh錯体によるN隣接sp3C-Hの直接ホウ素化反応,日本化学会講演予稿集,2012年,92(4),p.1431
調査した分野 C08F 212/02
C08F 212/14
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
スチレン三点架橋型ホスフィン単位及び4位に置換基Rを有するスチレン単位(但し、Rは、水素原子、炭素数1~6の低級アルキル基、炭素数1~6の低級アルコキシ基または極性官能基であり、Rが異なる2種以上のスチレン単位を有することができる)を含む高分子化合物の遷移金属のための配位子としての使用であって、前記使用時には、前記高分子化合物は前記高分子化合物中のスチレン三点架橋型ホスフィン単位のリン原子のみが、前記遷移金属と結合する、前記使用。
【請求項2】
前記高分子化合物は下記構造(1)を含む請求項1に記載の使用。
【化1】
JP0006274202B2_000024t.gif
(式中、PSは置換基Rを有するスチレン単位からなるポリスチレン単位鎖を示す。)
【請求項3】
前記スチレン三点架橋型ホスフィン単位は、トリス(4-ビニルフェニル)ホスフィン単位であり、前記高分子化合物は、トリス(4-ビニルフェニル)ホスフィン単位および置換基Rを有するスチレン単位の共重合体であり、前記置換基Rを有するスチレン単位は、置換基Rが互いに同一であるスチレン単位であるか、または置換基Rが互いに異なる2種以上のスチレン単位であり、前記置換基Rが互いに異なる2種以上のスチレン単位は、ランダムな配列で高分子化合物に含まれる請求項1に記載の使用。
【請求項4】
トリス(4-ビニルフェニル)ホスフィン単位および置換基Rを有するスチレン単位の当量比は1:20~1000の範囲である請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記共重合体は、ジビニルベンゼン単位による架橋をさらに含む請求項3または4に記載の使用。
【請求項6】
トリス(4-ビニルフェニル)ホスフィン単位、置換基Rを有するスチレン単位およびジビニルベンゼン単位当量比は1:20~1000:0.1~20の範囲である請求項5に記載の使用。
【請求項7】
トルエンまたはシクロペンチルメチルエーテル中での膨潤容積が2.0~7.0mL/gの範囲である請求項1~6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
前記極性官能基が、ヒドロキシル基、ポリエーテル基、アセトキシ基、エステル基またはアミド基である請求項1~7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記高分子化合物は金属を含有しない請求項1~8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
スチレン三点架橋型ホスフィン単位及び4位に置換基Rを有するスチレン単位(但し、Rは、水素原子、炭素数1~6の低級アルキル基、炭素数1~6の低級アルコキシ基または極性官能基であり、Rが異なる2種以上のスチレン単位を有することができる)を含む高分子化合物と遷移金属とを含む錯体であって、前記高分子化合物中のスチレン三点架橋型ホスフィン単位のリン原子のみが前記遷移金属に結合する、前記錯体。
【請求項11】
配位子としてハロゲン、カルボニル、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、スルホニル、またはシアノをさらに含む請求項10に記載の錯体。
【請求項12】
カルボニルは、エステル、アルデヒド、ケトンまたはアミドである請求項11に記載の錯体。
【請求項13】
前記遷移金属が、パラジウム、イリジウム、ロジウム、白金、ルテニウム、ニッケル、または銅である請求項10~12のいずれかに記載の錯体。
【請求項14】
請求項10~13のいずれかに記載の錯体を含む有機化合物カップリング反応用触媒。
【請求項15】
有機化合物カップリング反応がC-Cカップリング反応、C-Nカップリング反応又はsp3C-H結合のホウ素化反応である請求項14に記載の触媒。
【請求項16】
スチレン三点架橋型ホスフィン単位及び4位に置換基Rを有するスチレン単位(但し、Rは、水素原子、炭素数1~6の低級アルキル基、炭素数1~6の低級アルコキシ基または極性官能基であり、Rが異なる2種以上のスチレン単位を有することができる)を含む高分子化合物と遷移金属含有化合物とを反応させて、高分子化合物中のスチレン三点架橋型ホスフィン単位のリン原子のみが遷移金属に結合した錯体を得ることを含む錯体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、有機高分子三点架橋型ホスフィン化合物、この化合物を配位子とする遷移金属錯体およびこの錯体を含む触媒に関する。
(関連出願の相互参照)
本出願は、2013年3月7日出願の日本特願2013-45650号の優先権を主張し、その全記載は、ここに特に開示として援用される。
【背景技術】
【0002】
高分子担持ホスフィン-遷移金属触媒は、反応混合物からろ過法により触媒を容易に分離かつ再利用可能なことから、物質生産における環境負荷の低減に有効な手法であり、産業的利用が期待されている。従来の高分子担持ホスフィンの作成法、すなわち重合反応点を一つ持つ配位子ユニットとモノマーおよび架橋剤を用いた共重合法により調製された担持触媒では、活性中心と担体との立体障害や配位環境の制御が困難であるため、対応する均一系触媒と比較して触媒活性は一般に同程度または低下することが知られている(非特許文献1)。
【0003】
複数の重合反応点を有するホスフィン誘導体を架橋剤として製造された架橋高分子としては、例えば、以下の二例が知られている。第一の例は、ビス(4-ビニルフェニル)フェニルホスフィンを架橋剤としたポリスチレン担持ホスフィンである(非特許文献2)。
【0004】
第二の例は、二価ロジウム二核錯体に二つのトリス(4-ビニルフェニル)ホスフィンが配位した錯体を三点架橋剤として得たポリスチレン担持ホスフィンーロジウム錯体である(非特許文献3)。
【0005】
[非特許文献1]Grubbs, J. Am. Chem. Soc. 1971, 93, 3062.
[非特許文献2]Sherrington, J. Ploym. Sci. Pol. Chem. Ed. 1982, 20, 431.
[非特許文献3]Ubeda, Organometallics 2008, 27, 850.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献2に記載の高分子担持ホスフィンは高分子二点架橋型トリアリールホスフィンであるが、この高分子は金属錯体触媒の配位として用いられていない。さらに、本発明者はこの二点架橋型ホスフィンを配位子とした金属錯体を形成し、カップリング反応に実験的に試したが、本発明の金属錯体触媒のような高い触媒性能を示すものではなった。
【0007】
非特許文献3には高分子三点架橋型トリアリールホスフィンを用いた金属錯体が報告されている。しかし、非特許文献3に記載の方法では、出発原料として予め調製したロジウム二核錯体に限定されており、かつ対応する均一系ロジウム錯体よりも触媒活性が低下する。またこの架橋剤を重合反応に用いた後に、二価ロジウム二核錯体を他の金属種に交換することも記載されていない。
【0008】
本発明は、高い触媒反応活性を有する高分子担持ホスフィン化合物、この化合物と遷移金属とからなる錯体、さらにはこの錯体を含む触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、複数の重合反応点を導入した配位子ユニットを架橋剤として用い、種々のモノマーとの共重合法により新規の高分子三点架橋型ホスフィン化合物を製造し、これら高分子架橋ホスフィン化合物を配位子として、様々な種類の遷移金属種とホスフィン-金属1:1型錯体を自在に製造することができることを見出して、本発明を完成させた。
【0010】
尚、非特許文献3に記載のロジウム二核錯体においては、二つのホスフィン部位が近接して配置しており、ホスフィンを空間的に孤立化させることができる本発明の共重合体と明らかに相違するものである。さらに、非特許文献3に記載のロジウム二核錯体においては、金属配位点に反応空間を提供することはできないという点でも、本発明の化合物と明らかに相違するものである。また、非特許文献3に記載の金属錯体は予め調製したロジウム二核錯体を重合することで調製され、ロジウムを含有しないホスフィン部位を有する重合体は、調製方法も重合体自体も非特許文献3には記載されていない。
【0011】
本発明は以下のとおりである。
[1]
スチレン三点架橋型ホスフィン単位及び4位に置換基Rを有するスチレン単位(但し、Rは、水素原子、炭素数1~6の低級アルキル基、炭素数1~6の低級アルコキシ基または極性官能基であり、Rが異なる2種以上のスチレン単位を有することができる)を含む高分子化合物。
[2]
前記高分子化合物は下記構造(1)を含む[1]に記載の高分子化合物。
【化1】
JP0006274202B2_000002t.gif
(式中、PSは置換基Rを有するスチレン単位からなるポリスチレン単位鎖を示す。)
[3]
トリス(4-ビニルフェニル)ホスフィン単位および置換基Rを有するスチレン単位の共重合体であり、前記置換基Rを有するスチレン単位は、置換基Rが互いに同一であるスチレン単位であるか、または置換基Rが互いに異なる2種以上のスチレン単位であり、前記置換基Rが互いに異なる2種以上のスチレン単位は、ランダムな配列で高分子化合物に含まれる[1]に記載の高分子化合物。
[4]
トリス(4-ビニルフェニル)ホスフィン単位および置換基Rを有するスチレン単位の当量比は1:20~1000の範囲である[3]に記載の高分子化合物。
[5]
前記共重合体は、ジビニルベンゼン単位による架橋をさらに含む[3]または4に記載の高分子化合物。
[6]
トリス(4-ビニルフェニル)ホスフィン単位、置換基Rを有するスチレン単位およびジビニルベンゼン単位当量比は1:20~1000:0.1~20の範囲である[5]に記載の高分子化合物。
[7]
トルエンまたはシクロペンチルメチルエーテル中での膨潤容積が2.0~7.0mL/gの範囲である[1]~[6]のいずれかに記載の高分子化合物。
[8]
前記極性官能基が、ヒドロキシル基、ポリエーテル基、アセトキシ基、エステル基またはアミド基である[1]~[7]のいずれか1項に記載の高分子化合物。
[9]
前記高分子化合物は金属を含有しない[1]~[8]のいずれか1項に記載の高分子化合物。
[10]
[1]~[8]のいずれか1項に記載の高分子化合物と遷移金属とを含む錯体。
[11]
配位子としてハロゲン、カルボニル、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、スルホニル、またはシアノをさらに含む[10]に記載の錯体。
[12]
カルボニルは、エステル、アルデヒド、ケトンまたはアミドである[11]に記載の錯体。
[13]
前記遷移金属が、パラジウム、イリジウム、ロジウム、白金、ルテニウム、ニッケル、または銅である[10]~[12]のいずれかに記載の錯体。
[14]
[10]~[13]のいずれかに記載の錯体を含む有機化合物カップリング反応用触媒。
[15]
有機化合物カップリング反応がC-Cカップリング反応、C-Nカップリング反応又はsp3C-H結合のホウ素化反応である[14]に記載の触媒。
【発明の効果】
【0012】
本発明の高分子化合物においては、三本の高分子鎖(ポリスチレン単位鎖)を束ねる編み目の結び目に金属配位点となるホスフィンを配置させる。高分子鎖の中で、このような結び目同士が接近することは困難であり、各々のホスフィンが空間的に孤立化すると考えられる。そのため本発明の高分子化合物と遷移金属との錯体においては、遷移金属とホスフィンが選択的に1:1錯体を形成するものと考えられる。
【0013】
加えて、このような編み目の結び目(三点架橋点)には、高分子鎖の直鎖部位も接近しにくく、結果的に結び目のまわりに空間が形成される。つまり、結び目に位置する触媒活性中心は、高分子鎖の立体障害を受けることなく、そのまわりには十分な反応場が保持される。
【0014】
これら二つの効果が相まって、本発明による三点架橋型ホスフィン含有高分子化合物を配位子として用いた遷移金属錯体は高活性な触媒反応場を提供する事が可能となったと考えられる。但し、本発明者は上記理論に拘泥する意図はなく、結果として、本発明の遷移金属錯体は、高活性を示すことに変わりはない。
【0015】
事実、実施例に示すように、トリス(4-ビニルフェニル)ホスフィンを架橋剤として製造した架橋ポリスチレンである本発明の共重合体を用いることによって、パラジウム触媒による塩化アリール類のクロスカップリング反応が効率よく進行する。
【0016】
また、本発明はイリジウム触媒による2-アルキルピリジンの第二級sp3C-H結合ホウ素化反応ならびにロジウム触媒による窒素隣接位sp3C-H結合結合のホウ素化反応など、反応性の乏しい脂肪族炭素-水素結合切断を経る触媒反応にも有効である。
【0017】
本発明によれば、三点架橋型ホスフィン含有高分子化合物を調製後、種々の金属錯体を添加することで、高度に制御された不均一系遷移金属錯体触媒を自在に創出することができる。さらにこの触媒を種々のカップリング反応に適用できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<三点架橋型ホスフィン含有高分子化合物>
本発明は、三点架橋型ホスフィン含有高分子化合物に関する。この高分子化合物は、スチレン三点架橋型ホスフィン単位及び4位に置換基Rを有するスチレン単位を含む高分子化合物である。置換基Rを有するスチレン単位が有するRは、水素原子、炭素数1~6の低級アルキル基、炭素数1~6の低級アルコキシ基または極性官能基である。本発明の高分子化合物は、具体的には、下記構造(1)を含む高分子化合物である。

【0019】
【化2】
JP0006274202B2_000003t.gif

【0020】
式(1)中、PSは置換基Rを有するスチレン単位からなるポリスチレン単位鎖を示す。置換基Rは前記のとおりである。

【0021】
本発明の高分子化合物は、より具体的には、スチレン三点架橋型ホスフィン単位に相当するトリス(4-ビニルフェニル)ホスフィン単位および置換基Rを有するスチレン単位の共重合体であることができる。この共重合体は、トリス(4-ビニルフェニル)ホスフィン単位および置換基Rを有するスチレン単位からなる共重合成分をランダムに含むランダム共重合体であることができる。トリス(4-ビニルフェニル)ホスフィン単位は、下記トリス(4-ビニルフェニル)ホスフィン(化合物1)がビニル基を介して重合体に組み込まれた単位である。尚、本明細書においては、置換基Rを有するスチレン単位を単にスチレン単位と表現する場合がある。

【0022】
【化3】
JP0006274202B2_000004t.gif

【0023】
共重合成分は、共重合用モノマーとして上記トリス(4-ビニルフェニル)ホスフィンを用いることで、ポリスチレン単位鎖に導入され、トリス(4-ビニルフェニル)ホスフィンは3官能性であることから、各ビニル基が、それぞれ異なるポリスチレン単位鎖に導入されて、3本のポリスチレン単位鎖に1つのトリス(4-ビニルフェニル)ホスフィンが共重合単位として含有された共重合体を得ることができる。これによって、スチレン三点架橋型ホスフィン単位が形成される。但し、1つのトリス(4-ビニルフェニル)ホスフィンが共重合単位として、1本または2本のポリスチレン単位鎖に含有された共重合体が得られる可能性もあり、本発明の共重合体は、3本のポリスチレン単位鎖に1つのトリス(4-ビニルフェニル)ホスフィンが共重合単位として含有された共重合体、およびこの共重合体に、1本または2本のポリスチレン単位鎖に含有された共重合体が共存する共重合体混合物も包含する。上記式(1)では共重合成分中のポリスチレン単位鎖PSは、独立に記載されているが、鎖を省略した部分においても、各ポリスチレン単位鎖PSは独立した鎖であることもできるし、式中で示される他のポリスチレン単位鎖PSと連結している場合もあり得る。

【0024】
本発明の共重合体におけるトリス(4-ビニルフェニル)ホスフィン単位の導入量は、特に制限はないが、例えば、トリス(4-ビニルフェニル)ホスフィン単位1に対して当量比で、スチレン単位を10~1000の範囲とすることができる。但し、本発明の共重合体を、後述する金属錯体の配位子として用いる場合、トリス(4-ビニルフェニル)ホスフィン単位のリンが金属に対して配位する部位になること、および得られる金属錯体は触媒として使用することから、単量当たり比較的高い触媒活性が得られるという観点から、トリス(4-ビニルフェニル)ホスフィン単位の量は比較的高い方が好ましい。但し、トリス(4-ビニルフェニル)ホスフィン単位の量が過剰になると、トリス(4-ビニルフェニル)ホスフィン単位が接近しすぎて、立体障害により共重合反応が進みにくくなり、また得られた共重合体の架橋比率が高まり、取扱が困難になる可能性がある。このような観点を考慮して、トリス(4-ビニルフェニル)ホスフィン単位1に対して当量比で、スチレン単位を20~200の範囲、好ましくは30~150の範囲、より好ましくは40~100の範囲とすることができる。尚、上記当量比の好ましい範囲は、Rの種類によっても変化する。

【0025】
本発明の共重合体におけるポリスチレン単位鎖PSは、Rが水素原子の場合には、共重合単位がトリス(4-ビニルフェニル)ホスフィン以外の部分はスチレン単位からなる。Rが水素原子以外の場合には、ポリスチレン単位鎖PSの各スチレン単位は、Rを置換基として有するものである。あるいは、ポリスチレン単位鎖PSの各スチレン単位は、Rとして水素原子、炭素数1~6の低級アルキル基、炭素数1~6の低級アルコキシ基及び極性官能基のいずれか少なくとも2種類を有するものであることもできる。その場合の異なるRの配列はランダムであることができる。さらに、ポリスチレン単位鎖PSへのトリス(4-ビニルフェニル)ホスフィン単位の導入はランダムである。従って、本発明の共重合体はランダム共重合体である。

【0026】
本発明の共重合体においては、スチレン単位の芳香環上に置換基Rとして水素原子以外の残基を導入することによって、この共重合体を用いた遷移金属との錯体を触媒として用いる場合、触媒活性を向上させる事もできる。Rの例である炭素数1~6の低級アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基であり、炭素数1~6の低級アルコキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、t-ブトキシ基であることができる。極性官能基としては、例えば、ヒドロキシル基、ポリエーテル基、アセトキシ基、エステル基、アミド基などを挙げることができる。ポリエーテル基としては、例えばエチレングリコール単位を有するオリゴマーまたはポリマー鎖を挙げることができ、エチレングリコール単位の数は、例えば、2以上、100以下であることができる。ポリエーテル基は、より具体的には、例えば、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル基などである。エステル基としては、炭素数1~6の低級アルキル基とのエステル基を例示することができ、具体的には、例えば、メチルエステル基、エチルエステル基などである。アミド基のアシル基の置換基としては、炭素数1~6の低級アルキル基を挙げることができ、具体的には、例えば、メチルアミド基、エチルアミド基などである。触媒活性向上効果の高い置換基Rは、例えば、メチル基やt-ブチル基である。

【0027】
本発明の共重合体における複数のポリスチレン単位鎖は、ジビニルベンゼン単位による架橋を含むことができる。本発明の共重合体にジビニルベンゼン単位による架橋を導入することで、共重合体の強度を調整することができ、成形性を向上させることもできる。但し、トリス(4-ビニルフェニル)ホスフィン単位もポリスチレン単位鎖を架橋する機能を有するので、ジビニルベンゼン単位による架橋を含まず、トリス(4-ビニルフェニル)ホスフィン単位の導入のみで、共重合体強度調整および成形性向上は可能である。トリス(4-ビニルフェニル)ホスフィン単位の導入量と所望の共重合体強度および成形性を考慮して、ジビニルベンゼン単位の導入量は適宜決定することができる。

【0028】
ジビニルベンゼン単位による架橋量は、スチレン単位とトリス(4-ビニルフェニル)ホスフィン単位との量比を考慮して適宜決定できる。例えば、実施例において示したトリス(4-ビニルフェニル)ホスフィン単位1当量に対してスチレン単位60当量を共重合させる場合であってジビニルベンゼン単位をさらに共重合させる場合には、ジビニルベンゼン単位の当量比は、例えば、0.1~5の範囲で適宜選択することができ、0.2~4の範囲とすることもできる。上述のようにジビニルベンゼン単位の導入量が多くなれば、共重合体の強度を高め、あるいは成形性を向上させることができる。

【0029】
ジビニルベンゼン単位を含む共重合体の場合、より一般的には、トリス(4-ビニルフェニル)ホスフィン単位、スチレン単位およびジビニルベンゼン単位の当量比は、例えば、1:20~1000:0.1~20の範囲とすることができる。好ましくは1:30~200:0.1~10、より好ましくは1:35~200:0.1~10、さらに好ましくは1:40~200:0.1~10の範囲とする。ジビニルベンゼンは、例えば、m-ジビニルベンゼン, p-ジビニルベンゼンまたはそれらの混合物であることができる。さらに、ジビニルベンゼンは製法上の理由により、エチルビニルベンゼンを不純物として含むことがあり、ジビニルベンゼンとしてこの不純物を含有するものを用いることも出来、その場合、得られる本発明の共重合体は、ジビニルベンゼン単位に加えてやエチルビニルベンゼン単位を含むものであることもできる。

【0030】
本発明の高分子化合物(共重合体)は、架橋高分子化合物(共重合体)であることから分子量の特定は技術的に困難である。分子量または重合度に代わって有機溶媒中における膨潤容積を表示する。本発明の高分子化合物(共重合体)は、有機溶媒中、例えば、ヘキサン、ジクロロメタン、トルエン、t-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、アセトン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、メタノールにおける膨潤容積が、2.0~7.0 mL/gの範囲である。好ましくは3.0~6.0 mL/gの範囲である。特に好ましくはトルエンまたはシクロペンチルメチルエーテルにおける膨潤容積が、2.0~7.0 mL/gの範囲、さらに好ましくは3.0~6.0 mL/gの範囲である。

【0031】
本発明の共重合体は、トリス(4-ビニルフェニル)ホスフィン、置換基Rを有するスチレンをランダム共重合すること、トリス(4-ビニルフェニル)ホスフィン、置換基Rを有するスチレンまたはおよびジビニルベンゼンをランダム共重合することで合成できる。トリス(4-ビニルフェニル)ホスフィン(実施例における化合物1)は、Organometallics 2008, 27, 850.に報告がある化合物である。但し、この文献には、詳細な合成法およびスペクトルデータの記載されていない。実施例において化合物1として合成例を示す。Rを含むスチレンおよびジビニルベンゼンは市販品として入手できる。置換基Rを有するスチレンの置換基Rは、前記置換基Rを有するスチレン単位において説明したものと同様であり、Rは、水素原子、炭素数1~6の低級アルキル基、炭素数1~6の低級アルコキシ基または極性官能基である。置換基Rが異なる少なくとも2種類のスチレンを用いることで、2種類の置換基Rを有するスチレン単位を含む共重合体を得ることもできる。

【0032】
共重合体は、上記2種類または3種類のモノマーを所定の比率で、公知の重合開始剤を用いて、例えば、懸濁重合させることで合成できる。懸濁重合は、例えば、50~100℃で1~72時間の範囲で実施できる。但し、この範囲に限定される意図はなく、原料として用いるモノマーの種類や比率、使用する重合開始剤の種類や量、懸濁重合の条件などに応じて適宜決定することができる。

【0033】
<錯体>
本発明の錯体は、上記本発明の高分子化合物(共重合体)と遷移金属とを含む。遷移金属としては、例えば第一遷移元素(3d遷移元素)、第二遷移元素(4d遷移元素)及び第三遷移元素(5d遷移元素)を挙げることができる。第一遷移元素としては、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、及び亜鉛(Zn)を例示できる。第二遷移元素としては、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、及びカドミウム (Cd)を例示できる。第三遷移元素(5d遷移元素) としては、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os) 、イリジウム(Ir) 、白金(Pt) 、金(Au)、鉛(Pb)を例示できる。遷移金属は、触媒活性という観点からは、例えば、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)等であることが好ましい。但し、これらの元素に限定される意図ではない。本発明の錯体は、上記本発明の共重合体を配位子として含有する。上記本発明の共重合体のトリス(4-ビニルフェニル)ホスフィン単位のリン(P)が遷移金属に配位する。

【0034】
本発明の錯体は、遷移金属錯体の配位子として汎用される、例えば、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、カルボニル(エステル、アルデヒド、ケトン、アミド)、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、スルホニル、シアノ等の官能基をさらに含むことができる。これら配位子の種類及び数(1個の遷移金属に配位子する数)は、遷移金属の種類に応じて適宜決定される。本発明の錯体は、遷移金属と前記配位子の1種または2種以上とから錯体と上記本発明の高分子化合物(共重合体)と有機溶媒中で混合することにより調製することができる。用いる有機溶媒は、例えば、実施例で用いたトルエン、および前記本発明の高分子化合物(共重合体)の膨潤容積測定用有機溶媒の中から適宜選択することができる。

【0035】
本発明の錯体における、上記本発明の高分子化合物(共重合体)中のトリス(4-ビニルフェニル)ホスフィン単位と遷移金属との当量比は、1:1である。即ち、1つの金属に対して1つのトリス(4-ビニルフェニル)ホスフィン単位が錯体を形成する。本発明の錯体は、高分子化合物(共重合体)中のトリス(4-ビニルフェニル)ホスフィン単位の少なくとも一部において金属錯体が形成されているものである。本発明の錯体を後述する触媒に用い、単位質量当たりの触媒反応活性が高いという観点からは、金属錯体を形成している高分子化合物(共重合)体中のトリス(4-ビニルフェニル)ホスフィン単位が多いほど好ましい。例えば、共重合体中のトリス(4-ビニルフェニル)ホスフィン単位の50~100%、好ましくは70~100%、より好ましくは90~100%が金属錯体を形成する。

【0036】
<触媒>
本発明は、上記本発明の錯体を含むカップリング反応用触媒に関する。カップリング反応とは、有機化合物の炭素と有機化合物の炭素、又は有機化合物の炭素と有機化合物のヘテロ原子との間に新たな結合を生じさせる反応を意味する。カップリング反応としては、例えば、C-Cカップリング反応、C-Nカップリング反応、sp3C-H結合のホウ素化反応などを挙げることができる。

【0037】
代表的なカップリングとして鈴木-宮浦カップリングを挙げることができ、好ましくは、ハロゲン化アリール又はハロゲン化アルケニルと、アリールボロン誘導体又はアルケニルボロン誘導体との縮合反応によって、ジアリール誘導体、アルケニルアリール誘導体又は1,3-ジエン類を生成する反応である。具体例としては、例えば、ハロゲン化ベンゼンとフェニルボロン酸とを縮合させてビフェニルを生成する反応を挙げられる。

【0038】
上記有機ハロゲン化物のハロゲンとしては、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子などが挙げられる。ハロゲン化アリールのアリール基としては、炭素環式芳香族基や複素環式芳香族基が挙げられる。炭素環式芳香族基としては、炭素数6~36、好ましくは炭素数6~18、炭素数6~12の単環式、多環式、又は縮合環式の炭素環式芳香族基が挙げられる。このような炭素環式芳香族基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントリル基などが挙げられる。また、複素環式芳香族基としは、1個~4個、好ましくは1~3個又は1~2個の窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子からなる異種原子を含有する3~8員、好ましくは5~8員の環を有する単環式、多環式、又は縮合環式の複素環基が挙げられる。このような複素環基としては、例えば、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、インドール基、ベンゾイミダゾリル基などが挙げられる。これらのアリール基はさらに置換基を有していても良く、このような置換基としては反応に悪影響を与えないものであれば特に制限はなく、例えば、前記したハロゲン原子、ニトロ基、置換又は非置換の炭素数1~20好ましくは1~10のアルキル基、置換又は非置換の炭素数1~20、好ましくは1~10のアルコキシ基、置換又は非置換の炭素数1~20、好ましくは1~10のアルコキシカルボニル基などが挙げられる。また、ハロゲン化アルケニルのアルケニル基としては、置換又は非置換のビニル基であり、当該ビニル基の置換基としては、置換又は非置換の炭素数1~20、好ましくは1~10のアルキル基、置換又は非置換の炭素数1~20、好ましくは1~10のアルケニル基、置換又は非置換の炭素数6~20好ましくは6~10のアリール基、置換又は非置換の炭素数7~20、好ましくは7~12のアルキニル基などが挙げられる。これらの置換基としては反応に悪影響を与えないものであれば特に制限はない。

【0039】
上記ボロン誘導体としては、オルトホウ酸のモノ、ジ若しくはトリエステル又はこれらの誘導体が挙げられるが、必ずしもオルトホウ酸又はこの誘導体に限定されるものではない。アリールボロン誘導体のアリール基としては、置換又は非置換のフェニル基、ナフチル基、ピリジン基、フリル基などの芳香環が挙げられ、これらの置換基としては反応に悪影響を与えないものであれば特に制限なく、例えば、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子などのハロゲン原子、置換又は非置換の炭素数1~20、好ましくは1~10のアルキル基、置換又は非置換の炭素数1~20、好ましくは1~10のアルコキシ基などが挙げられる。アルケニルボロン誘導体のアルケニル基としては、置換又は非置換ビニル基が挙げられ、これらの置換基としては反応に悪影響を与えないものであれば特に制限はない。

【0040】
カップリング反応の例としては、溝呂木-Heck反応を挙げることができる。この反応は、アルケン類と、ハロゲン化アリール又はハロゲン化アルケニルとの縮合反応によるアリールアルケン類又は1,3-ジエンを生成する反応である。

【0041】
上記アルケン類としては、少なくとも1個の水素原子を有するエチレン誘導体が挙げられる。好ましくはエチレンの少なくとも1個の水素原子がケト基、置換又は非置換のアルコキシカルボニル基、及び/又は、置換又は非置換のアリール基が置換したエチレン誘導体が挙げられる。当該アリール基としては前記した炭素環式芳香族基、複素環式芳香族基が挙げられる。これらの置換基としては、反応に悪影響を与えないものであれば特に制限はなく、例えば、前記した置換基などが挙げられる。より好ましいアルケン類としては、置換又は非置換の3‐ケトアルケン類、置換又は非置換のスチレン誘導体、置換又は非置換の(メタ)アクリル酸エステル類などが挙げられる。当該アクリル酸エステル類のエステル残基としては、置換又は非置換の炭素数1~20、好ましくは1~10のアルキル基が挙げられ、これらの置換基としては反応に悪影響を及ぼさない限り特に制限はない。好ましいアルケン類の例としては、例えば、アクリル酸メチルなどのアクリル酸エステル類、3-ケトブテンなどの3-ケトアルケン類、スチレンなどのスチレン誘導体が挙げられるが、これらの化合物に限定されるものではない。

【0042】
上記有機ハロゲン化物のハロゲンとしては、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子などが挙げられる。アリールまたはアルケニル基としては、脂肪族または芳香族置換基であればよく、例えば、置換又は非置換のビニル基、置換又は非置換のアリール基が挙げられ、アリール基としては前記した炭素環式芳香族や複素環式芳香族基などが挙げられる。また、これらの置換基としては反応に悪影響を与えないものであれば特に制限はない。

【0043】
カップリング反応の例としては、Stilleカップリングを挙げることもできる。具体例としては、アリール又はアルケニルスズ化合物と、ハロゲン化アリール又はハロゲン化アルケニルとの縮合反応によるビアリール類、アリールアルケン類または、1,3‐ジエンの生成反応を挙げることができる。

【0044】
上記スズ化合物の有する置換基としては、アリール基が挙げられ、例えば置換又は非置換のフェニル基、ナフチル基、ピリジン基、フリル基などの芳香環が挙げられ、これらの置換基としては反応に悪影響を与えないものであれば特に制限なく、例えば、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子などのハロゲン原子、置換又は非置換の炭素数1~20、好ましくは1~10のアルキル基、置換又は非置換の炭素数1~20、好ましくは1~10のアルコキシ基などが挙げられる。また、アルケニル基を有するスズ化合物でもよく、そのアルケニル基としては、置換又は非置換ビニル基が挙げられ、これらの置換基としては反応に悪影響を与えないものであれば特に制限はない。

【0045】
カップリング反応としては、園頭カップリングを挙げることもできる。具体的には、アルキン類とハロゲン化アリール又はハロゲン化アルケニルとの縮合反応によるアリールアルキン類又はアルケニルアルキンを生成する反応を挙げることができる。

【0046】
上記アルキン類の置換基としては、置換又は非置換のフェニル基、ナフチル基、ピリジル基、フリル基などの芳香族基が挙げられ、これらの置換基としては反応に悪影響を与えないものであれば特に制限はなく、例えば、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子などのハロゲン原子、置換又は非置換の炭素数1~20、好ましくは1~10のアルキル基、置換又は非置換の炭素数1~20、好ましくは1~10のアルコキシ基などが挙げられる。また、アルキン類の置換基としては、置換又は非置換ビニル基が挙げられ、これらの置換基としては反応に悪影響を与えないものであれば特に制限はない。

【0047】
上記有機ハロゲン化物のハロゲンとしては、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子などが挙げられる。アリール基またはアルケニル基としては、脂肪族または芳香族置換基であればよく、例えば、置換又は非置換のビニル基、置換又は非置換のアリール基が挙げられ、アリール基としては前記した炭素環式芳香族や複素環式芳香族基などが挙げられる。また、これらの置換基としては反応に悪影響を与えないものであれば特に制限はない。

【0048】
カップリング反応としては、Buchwald-Hartwigカップリングを挙げることもできる。具体的には、炭素-酸素又は炭素-硫黄、より好ましくは炭素-窒素の結合形成反応を利用した、例えば1つ以上のアルキル基又はアリール基をもつアミン類とハロゲン化アリール又はハロゲン化アルケニルとの縮合反応による置換アミン類の生成反応である。

【0049】
上記アミン類の置換基としては、置換又は非置換の炭素数1~20、好ましくは1~10のアルキル基、或いは、置換又は非置換のフェニル基、ナフチル基、ピリジル基、フリル基などの芳香族基が挙げられ、これらの置換基としては反応に悪影響を与えないものであれば特に制限はなく、例えば、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子などのハロゲン原子、置換又は非置換の炭素数1~20、好ましくは1~10のアルキル基、置換又は非置換の炭素数1~20、好ましくは1~10のアルコキシ基などが挙げられる。

【0050】
上記有機ハロゲン化物のハロゲンとしては、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子などが挙げられる。アリール基またはアルケニル基としては、脂肪族または芳香族置換基であればよく、例えば、置換又は非置換のビニル基、置換又は非置換のアリール基が挙げられ、アリール基としては前記した炭素環式芳香族や複素環式芳香族基などが挙げられる。また、これらの置換基としては反応に悪影響を与えないものであれば特に制限はない。

【0051】
カップリング反応としては、sp3C-H結合のホウ素化反応なども挙げることもできる。具体的には、炭素‐ホウ素の結合形成反応を利用した、例えば2-アルキルピリジン類とアルコキシボロン誘導体との縮合反応による2-(2-ホウ素置換アルキル)ピリジン類の生成反応である。

【0052】
上記ピリジン類の置換基としては、置換又は非置換の炭素数2~20、好ましくは2~10のアルキル基が挙げられ、これらの置換基としては反応に悪影響を与えないものであれば特に制限はなく、例えば、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、フリル基などの芳香族基、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子などのハロゲン原子、置換又は非置換の炭素数1~20、好ましくは1~10のアルキル基、置換又は非置換の炭素数1~20、好ましくは1~10のアルコキシ基などが挙げられる。

【0053】
上記アルコキシボロン誘導体としては、置換又は非置換の炭素数1~20のアルコキシボロンまたはアルコキシジボロンとその誘導体が挙げられる。また、これらの置換基としては反応に悪影響を与えないものであれば特に制限はない。

【0054】
カップリング反応としては、窒素隣接位sp3C-H結合ホウ素化反応なども挙げることもできる。具体的には、炭素‐ホウ素の結合形成反応を利用した、例えばN-アルキルアミド類とアルコキシボロン誘導体との縮合反応によるN-ホウ素置換アルキルアミド類の生成反応である。

【0055】
上記N-アルキルアミド基およびN-アルキルウレア基のアシル基の置換基としては、例えば、置換の炭素数1~20、好ましくは2~10の環状及び非環状アルキル基を挙げることができる。加えて、置換の炭素数1~20、好ましくは2~10の2-アミノピリジン類も挙げられる。これらの置換基としては反応に悪影響を与えないものであれば特に制限はなく、例えば、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、フリル基などの芳香族基、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子などのハロゲン原子、置換又は非置換の炭素数1~20、好ましくは1~10のアルキル基、置換又は非置換の炭素数1~20、好ましくは1~10のアルコキシ基などが挙げられる。

【0056】
上記アルコキシボロン誘導体としては、置換又は非置換の炭素数1~20のアルコキシボロンまたはアルコキシジボロンとその誘導体が挙げられる。また、これらの置換基としては反応に悪影響を与えないものであれば特に制限はない。

【0057】
本発明の触媒を用いるカップリング反応は、原料の種類等に応じて反応条件(溶媒、温度、時間など)は適宜決定できる。反応温度としては、例えば、室温から溶媒の沸点温度までの範囲で適宜選択できる。
【実施例】
【0058】
以下本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。但し、本発明は実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0059】
すべての合成操作はガラス反応容器を使って行なった。反応容器は加熱-真空-冷却して乾燥させたものを使用し、反応はアルゴンあるいは窒素雰囲気下で行なった。反応液の撹拌にはテフロン(登録商標)コートされた磁気撹拌子を用いて行った。試薬は東京化成、関東化学、和光純薬、シグマアルドリッチ社から購入したものを使用した。市販のスチレンおよび置換スチレンモノマーはアルミナカラムを通して精製したものを使用した。ビス(ピナコラト)ジボロンはAllyChem社から購入し、室温下にてヘキサンに不溶な成分をろ別し、ペンタンを用いて再結晶したものを使用した。使用溶媒は関東化学社の脱水級を購入しこれをさらに凝固-融解法により脱気し、モレキュラーシーブ4Aで脱水して使用した。
【実施例】
【0060】
NMRスペクトル(液体)はVarian Gemini 2000 (1H; 300MHz、13C; 75.4MHz、31P; 121.4MHz) NMR装置を使用した。内部標準としてテトラメチルシラン(1H)、重クロロホルム(13C)を使用し、外部標準として85%リン酸(31P)を使用した。CP/MAS NMRスペクトル(固体)はBruker MSL-300 (13C; 75.4 MHz、31P; 121.4 MHz) NMR装置を使用した。
【実施例】
【0061】
トリス(4-ビニルフェニル)ホスフィン(化合物1)合成
【化4】
JP0006274202B2_000005t.gif
【実施例】
【0062】
化合物1は、Organometallics 2008, 27, 850.に報告がある。しかし、詳細な合成法およびスペクトルデータの記載はなされていない。
【実施例】
【0063】
100 mLの二口ナス型フラスコに撹拌子と削状マグネシウム(1.3 g、54 mmol)を入れ、アルゴン雰囲気下後、テトラヒドロフラン(24 mL)とp-クロロスチレン(5.0 g、36 mmol)を順次加え、加熱還流下1時間撹拌し、対応する有機マグネシウム試薬を調製した。さらに、三塩化リン(1.3 g、10 mmol)を加え、室温下6時間撹拌した。反応液に水を加え、有機層をクロロホルムで抽出後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。減圧下で有機溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン = 4 : 1)により化合物1を単離した。収量 2.0 g、収率 60%
【実施例】
【0064】
化合物1のNMRデータ:
1H NMR (CDCl3): δ 5.28 (d, J = 10.7 Hz, 3H), 5.78 (d, J = 17.7 Hz, 3H), 6.71 (dd, J = 17.7, 10.7 Hz 3H), 7.22-7.42 (m, 12H).
13C NMR (CDCl3): δ 114.77 (3C), 126.39 (d, J = 7.4 Hz, 6C), 133.96 (d, J = 19.4 Hz, 6C), 136.42 (3C), 136.69 (d, J = 10.8 Hz, 3C), 138.06 (3C).
31P NMR (CDCl3): δ -6.3.
【実施例】
【0065】
フェニルビス(4-ビニルフェニル)ホスフィン(化合物2)の合成
【化5】
JP0006274202B2_000006t.gif
【実施例】
【0066】
化合物2は既知化合物(J. Ploym. Sci. Pol. Chem. Ed. 1982, 20, 431.)である。
【実施例】
【0067】
100 mLの二口ナス型フラスコに撹拌子と削状マグネシウム(0.16 g、6.6 mmol)を入れ、アルゴン雰囲気下後、テトラヒドロフラン(3 mL)とp-クロロスチレン(0.84 g、6.0 mmol)を順次加え、加熱還流下1時間撹拌し、対応する有機マグネシウム試薬を調製した。さらに、フェニルジクロロホスフィン(0.36 g、2.0 mmol)のTHF (20 mL) 溶液を加え、室温下18時間撹拌した。反応液に水を加え、有機層をジエチルエーテルで抽出後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。減圧下で有機溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン = 4 : 1)により化合物2を単離した。収量 0.44 g、収率 70%
【実施例】
【0068】
化合物2のNMRデータ:
1H NMR (CDCl3): δ 5.28 (d, J = 11.2 Hz, 2H), 5.78 (d, J = 17.7 Hz, 2H), 6.71 (dd, J = 17.7, 11.2 Hz, 2H), 7.22-7.42 (m, 13H).
13C NMR (CDCl3): δ 114.69 (2C), 126.31 (d, J = 6.9 Hz, 4C), 128.55 (d, J = 6.9 Hz, 2C), 128.78, 133.70 (d, J = 19.4 Hz, 2C) 133.93 (d, J = 19.4 Hz, 4C), 136.36 (2C), 136.71 (d, J = 10.8 Hz, 2C), 137.12 (d, J = 10.8 Hz), 137.94 (2C).
31P NMR (CDCl3): δ-5.8.
【実施例】
【0069】
ジフェニル(4-ビニルフェニル)ホスフィン(化合物3)の合成
【化6】
JP0006274202B2_000007t.gif
【実施例】
【0070】
化合物3は、既知化合物であり、WAKO、Aldrichより市販もされている。
【実施例】
【0071】
100 mLの二口ナス型フラスコに撹拌子と削状マグネシウム(0.16 g、6.6 mmol)を入れ、アルゴン雰囲気下後、テトラヒドロフラン(3 mL)とp-クロロスチレン(0.84 g、6.0 mmol)を順次加え、加熱還流下1時間撹拌し、対応する有機マグネシウム試薬を調製した。さらに、ジクロロフェニルホスフィン(0.89 g、4.0 mmol)のTHF (20 mL) 溶液を加え、室温下18時間撹拌した。反応液に水を加え、有機層をジエチルエーテルで抽出後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。減圧下で有機溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン = 4 : 1)により化合物3を単離した。収量 1.1 g、収率 97%
【実施例】
【0072】
化合物3のNMRデータ:
1H NMR (CDCl3): δ 5.28 (d, J = 10.5 Hz, 1H), 5.78 (d, J = 17.7 Hz, 1H), 6.71 (dd, J = 17.7, 10.5 Hz, 1H), 7.21-7.42 (m, 14H).
13C NMR (CDCl3): δ 114.71, 126.34 (d, J = 6.9 Hz, 2C), 128.58 (d, J = 6.9 Hz, 4C), 128.81 (2C), 133.78 (d, J = 19.5 Hz, 4C), 134.01 (d, J = 19.5 Hz, 2C), 136.44, 136.64 (d, J = 10.5 Hz), 137.19 (d, J = 10.5 Hz, 2C), 137.99.
31P NMR (CDCl3): δ -5.4.
【実施例】
【0073】
ポリスチレン三点架橋型ホスフィン4の合成
【化7】
JP0006274202B2_000008t.gif
【実施例】
【0074】
500 mLの3口ナス型フラスコに撹拌子を入れ、アルゴン雰囲気下、化合物1(0.17 g、0.50 mmol)、p-(t-ブチル)スチレン(4.8 g、30 mmol)、ジビニルベンゼン(0.13 g、純度>50%(エチルビニルベンゼンを含む)、>0.50 mmol)、水(120 mL)およびクロロベンゼン(6.0 mL)の順次加えた。さらに、その混合物へ塩化ナトリウム(3.0 g)、アカシアゴム(4.8 g)およびアゾビスイソブチロニトリル(0.050 g、0.30 mmol)を加え、80℃下24時間加熱撹拌し、懸濁重合を行った。反応物を室温まで冷却後、不溶物をろ取し、水、メタノール、トルエン、THF、メタノールで順次洗浄後、80℃で真空乾燥し、ポリスチレン三点架橋型ホスフィン4を白色のビーズ状固体として得た(4.6 g 90 wt%)。
【実施例】
【0075】
本反応にて得られるポリマーは不溶性固体であるため、詳細な分子量や重合度を精密に決定することは困難である。そこでポリマーの組成比は、各々の反応剤が同等の反応性をもって重合が進行していると仮定し、その仕込み比に等しいと算出した。また、生成物の13C CP/MAS NMR測定の結果より、化合物1のビニル基に由来するピーク(115 ppm付近)が観測されなかったことから、表題の三点架橋型ホスフィン4が生成したと判断した。
【実施例】
【0076】
ポリスチレン三点架橋型ホスフィン4のNMRデータ:
31P CP/MAS: δ -6.2.
13C CP/MAS: δ 34 (-CH(CH3)3), 36 (-CH(CH3)3), 39-59 (-CHArCH2-), 127 (Ar), 145 (Ar), 149 (Ar)
【実施例】
【0077】
ポリスチレン三点架橋型ホスフィン4-ロジウム錯体[RhCl(cod)(4)]によるリン含有量測定
【化8】
JP0006274202B2_000009t.gif
【実施例】
【0078】
10 mLのシュレンクフラスコに撹拌子、ポリスチレン三点架橋型ホスフィン4(200 mg)、[RhCl(cod)]2(9.7 mg、0.020 mmol)およびベンゼン(2.0 mL)を加え、室温下1時間撹拌した。黄色ビーズをろ取し、ベンゼンで洗浄した後、60℃で真空乾燥してRhCl(cod)(4)を得た(204 mg)。減圧下でろ液の有機溶媒を留去した後、未反応の[RhCl(cod)]2(5.3 mg)を回収した。4のリン原子がロジウムと1:1で反応していると仮定し、リン原子の含有量を0.09 mmol/gと決定した。
【実施例】
【0079】
RhCl(cod)(4)のNMRデータ:
31P CP/MAS: δ 28.1
13C CP/MAS: δ 33 (-CH(CH3)3), 36 (-CH(CH3)3), 37-58 (-CHArCH2-), 127 (Ar), 145 (Ar), 149 (Ar).
13C CP/MAS測定においてシクロオクタジエンに相当するシグナルは観測されなかったが、31P CP/MAS測定のシグナル(28.1 ppm)が、類似の構造を有する既知化合物[RhCl(cod)(PPh3)]の31P NMR (CDCl3)シグナル(31.3 ppm, Tiburcio, Polyhedron 2006, 25, 1549.)とほぼ一致することから、表題の化合物RhCl(cod)(4)が生成したと判断した。
【実施例】
【0080】
ポリスチレン三点架橋型ホスフィン5の合成
【化9】
JP0006274202B2_000010t.gif
【実施例】
【0081】
500 mLの3口ナス型フラスコに撹拌子を入れ、アルゴン雰囲気下、化合物1(0.17 g、0.50 mmol)、p-メチルスチレン(3.6 g、30 mmol)、ジビニルベンゼン(0.13 g、純度>50%(エチルビニルベンゼンを含む)、>0.50 mmol)、水(120 mL)およびクロロベンゼン(6.0 mL)の順次加えた。さらに、その混合物へ塩化ナトリウム(3.0 g)、アカシアゴム(4.8 g)およびアゾビスイソブチロニトリル(0.050 g、0.3 mmol)を加え、80℃下24時間加熱撹拌し、懸濁重合を行った。反応物を室温まで冷却後、不溶物をろ取し、水、メタノール、トルエン、THF、メタノールで順次洗浄後、80℃で真空乾燥し、ポリスチレン三点架橋型ホスフィン5を白色のビーズ状固体として得た(2.4 g、62wt%)。
【実施例】
【0082】
本反応にて得られるポリマーは不溶性固体であるため、詳細な分子量や重合度を精密に決定することは困難である。ポリマーの組成比は、各々の反応剤が同等の反応性をもって重合が進行していると仮定し、その仕込み比に等しいと算出した。また、生成物の13C CP/MAS NMR測定の結果より、化合物1のビニル基に由来するピーク(115 ppm付近)が観測されなかったことから、表題の三点架橋型ホスフィン5が生成したと判断した。[RhCl(cod)]2との錯化実験から、5のリン原子の含有量を0.11 mmol/g と決定した。
【実施例】
【0083】
ポリスチレン三点架橋型ホスフィン5のNMRデータ:
31P CP/MAS: δ -6.5.
13C CP/MAS: δ 23 (CH3C6H4-), 34-57 (-CHArCH2-), 130 (Ar), 145 (Ar).
【実施例】
【0084】
ポリスチレン三点架橋型ホスフィン6の合成
【化10】
JP0006274202B2_000011t.gif
【実施例】
【0085】
500 mLの3口ナス型フラスコに撹拌子を入れ、アルゴン雰囲気下、化合物1(0.17 g、0.50 mmol)、p-メトキシスチレン(4.0 g、30 mmol)、ジビニルベンゼン(0.13 g、純度>50%(エチルビニルベンゼンを含む)、>0.50 mmol)、水(120 mL)およびクロロベンゼン(6.0 mL)の順次加えた。さらに、その混合物へ塩化ナトリウム(3.0 g)、アカシアゴム(4.8 g)およびアゾビスイソブチロニトリル(0.050 g、0.3 mmol)を加え、80℃下24時間加熱撹拌し、懸濁重合を行った。反応物を室温まで冷却後、不溶物をろ取し、水、メタノール、トルエン、THF、メタノールで順次洗浄後、80℃で真空乾燥し、ポリスチレン三点架橋型ホスフィン6を白色のビーズ状固体として得た(3.0 g、70wt%)。
【実施例】
【0086】
本反応にて得られるポリマーは不溶性固体であるため、詳細な分子量や重合度を精密に決定することは困難である。ポリマーの組成比は、各々の反応剤が同等の反応性をもって重合が進行していると仮定し、その仕込み比に等しいと算出した。また、生成物の13C CP/MAS NMR測定の結果より、化合物1のビニル基に由来するピーク(115 ppm付近)が観測されなかったことから、表題の三点架橋型ホスフィン6が生成したと判断した。[RhCl(cod)]2との錯化実験から、6のリン原子の含有量を0.08 mmol/g と決定した。
【実施例】
【0087】
ポリスチレン三点架橋型ホスフィン6のNMRデータ:
31P CP/MAS: δ-6.5.
13C CP/MAS: δ 34-54 (-CHArCH2-), 56 (CH3OC6H4-), 115 (Ar), 129 (Ar), 160 (Ar).
【実施例】
【0088】
ポリスチレン三点架橋型ホスフィン7の合成
【化11】
JP0006274202B2_000012t.gif
【実施例】
【0089】
500 mLの3口ナス型フラスコに撹拌子を入れ、アルゴン雰囲気下、化合物1(0.17 g、0.50 mmol)、スチレン(3.1 g、30 mmol)、ジビニルベンゼン(0.13 g、純度>50%(エチルビニルベンゼンを含む)、>0.50 mmol)、水(120 mL)およびクロロベンゼン(6.0 mL)の順次加えた。さらに、その混合物へ塩化ナトリウム(3.0 g)、アカシアゴム(4.8 g)およびアゾビスイソブチロニトリル(0.050 g、0.3 mmol)を加え、80℃下24時間加熱撹拌し、懸濁重合を行った。反応物を室温まで冷却後、不溶物をろ取し、水、メタノール、トルエン、THF、メタノールで順次洗浄後、80℃で真空乾燥し、ポリスチレン三点架橋型ホスフィン7を白色のビーズ状固体として得た(2.7 g、81wt%)。
【実施例】
【0090】
本反応にて得られるポリマーは不溶性固体であるため、詳細な分子量や重合度を精密に決定することは困難である。ポリマーの組成比は、各々の反応剤が同等の反応性をもって重合が進行していると仮定し、その仕込み比に等しいと算出した。また、生成物の13C CP/MAS NMR測定の結果より、化合物1のビニル基に由来するピーク(115 ppm付近)が観測されなかったことから、表題の三点架橋型ホスフィン7が生成したと判断した。[RhCl(cod)]2との錯化実験から、7のリン原子の含有量を0.12 mmol/g と決定した。
【実施例】
【0091】
ポリスチレン三点架橋型ホスフィン7のNMRデータ:
31P CP/MAS: δ-7.3.
13C CP/MAS: δ 34-58 (-CHArCH2-), 130 (Ar), 148 (Ar).
【実施例】
【0092】
ポリスチレン三点架橋型ホスフィン8の合成
【化12】
JP0006274202B2_000013t.gif
【実施例】
【0093】
500 mLの3口ナス型フラスコに撹拌子を入れ、アルゴン雰囲気下、化合物1(0.085 g、0.25 mmol)、p-(t-ブチル)スチレン(0.80 g、5.0 mmol)p-ビニルベンジル{メチルテトラ(エチレングリコール)}(1.6 g、5.0 mmol)、ジビニルベンゼン(0.065 g、純度>50%(エチルビニルベンゼンを含む)、>0.25 mmol)、水(60 mL)およびクロロベンゼン(3.0 mL)の順次加えた。さらに、その混合物へ塩化ナトリウム(1.5 g)、アカシアゴム(2.4 g)およびアゾビスイソブチロニトリル(0.050 g、0.3 mmol)を加え、80℃下24時間加熱撹拌し、懸濁重合を行った。反応物を室温まで冷却後、不溶物をろ取し、水、メタノール、トルエン、THF、メタノールで順次洗浄後、80℃で真空乾燥し、ポリスチレン三点架橋型ホスフィン8を白色のビーズ状固体として得た(2.1 g、81wt%)。
【実施例】
【0094】
本反応にて得られるポリマーは不溶性固体であるため、詳細な分子量や重合度を精密に決定することは困難である。ポリマーの組成比は、各々の反応剤が同等の反応性をもって重合が進行していると仮定し、その仕込み比に等しいと算出した。また、生成物の13C CP/MAS NMR測定の結果より、化合物1のビニル基に由来するピーク(115 ppm付近)が観測されなかったことから、表題の三点架橋型ホスフィン8が生成したと判断した。[RhCl(cod)]2との錯化実験から、8のリン原子の含有量を0.10 mmol/g と決定した。
【実施例】
【0095】
ポリスチレン三点架橋型ホスフィン8のNMRデータ:
31P CP/MAS: δ-6.4.
13C CP/MAS: δ 34 (-C(CH3)3),36 (-C(CH3)3),38-58 (-CHArCH2-), 61(-OCH3),73(-CH2O-,-OCH2CH2O-)129 (Ar), 138 (Ar),145 (Ar),150 (Ar).
【実施例】
【0096】
ポリスチレン二点架橋型ホスフィン9の合成
【化13】
JP0006274202B2_000014t.gif
【実施例】
【0097】
500 mLの3口ナス型フラスコに撹拌子を入れ、アルゴン雰囲気下、化合物2(0.14 g、0.50 mmol)、p-(t-ブチル)スチレン(4.8 g、30 mmol)、ジビニルベンゼン(0.26 g、純度>50%(エチルビニルベンゼンを含む)、>1.0 mmol)、水(120 mL)およびクロロベンゼン(6.0 mL)の順次加えた。さらに、その混合物へ塩化ナトリウム(3.0 g)、アカシアゴム(4.8 g)およびアゾビスイソブチロニトリル(0.050 g、0.30 mmol)を加え、80℃下24時間加熱撹拌し、懸濁重合を行った。反応物を室温まで冷却後、不溶物をろ取し、水、メタノール、トルエン、THF、メタノールで順次洗浄後、80℃で真空乾燥し、ポリスチレン二点架橋型ホスフィン9を白色のビーズ状固体として得た(3.0 g、57wt%)。
【実施例】
【0098】
本反応にて得られるポリマーは不溶性固体であるため、詳細な分子量や重合度を精密に決定することは困難である。ポリマーの組成比は、各々の反応剤が同等の反応性をもって重合が進行していると仮定し、その仕込み比に等しいと算出した。また、生成物の13C CP/MAS NMR測定の結果より、化合物2のビニル基に由来するピーク(115 ppm付近)が観測されなかったことから、表題の二点架橋型ホスフィン9が生成したと判断した。[RhCl(cod)]2との錯化実験から、9のリン原子の含有量を0.12 mmol/g と決定した。
【実施例】
【0099】
ポリスチレン二点架橋型ホスフィン9のNMRデータ:
31P CP/MAS: δ-5.7.
13C CP/MAS: δ 33 (-CH(CH3)3), 36 (-CH(CH3)3), 38-58 (-CHArCH2-), 127 (Ar), 145 (Ar), 150 (Ar).
【実施例】
【0100】
ポリスチレン一点架橋型ホスフィン10の合成
【化14】
JP0006274202B2_000015t.gif
【実施例】
【0101】
500 mLの3口ナス型フラスコに撹拌子を入れ、アルゴン雰囲気下、化合物3(0. 17 g、0.50 mmol)、p-(t-ブチル)スチレン(4.8 g、30 mmol)、ジビニルベンゼン(0.39 g、純度>50%(エチルビニルベンゼンを含む)、>1.50 mmol)、水(120 mL)およびクロロベンゼン(6.0 mL)の順次加えた。さらに、その混合物へ塩化ナトリウム(3.0 g)、アカシアゴム(4.8 g)およびアゾビスイソブチロニトリル(0.050 g、0.30 mmol)を加え、80℃下24時間加熱撹拌し、懸濁重合を行った。反応物を室温まで冷却後、不溶物をろ取し、水、メタノール、トルエン、THF、メタノールで順次洗浄後、80℃で真空乾燥し、ポリスチレン一点架橋型ホスフィン10を白色のビーズ状固体として得た(3.4 g、64wt%)。
【実施例】
【0102】
本反応にて得られるポリマーは不溶性固体であるため、詳細な分子量や重合度を精密に決定することは困難である。ポリマーの組成比は、各々の反応剤が同等の反応性をもって重合が進行していると仮定し、その仕込み比に等しいと算出した。また、生成物の13C CP/MAS NMR測定の結果より、化合物3のビニル基に由来するピーク(115 ppm付近)が観測されなかったことから、表題の一点架橋型ホスフィン10が生成したと判断した。[RhCl(cod)]2との錯化実験から、10のリン原子の含有量を0.09 mmol/g と決定した。
【実施例】
【0103】
ポリスチレン一点架橋型ホスフィン10のNMRデータ:
31P CP/MAS: δ-5.7.
13C CP/MAS: δ 33 (-CH(CH3)3), 36 (-CH(CH3)3), 37-57 (-CHArCH2-), 127 (Ar), 145 (Ar), 150 (Ar).
【実施例】
【0104】
PdCl2(PhCN)2と4の錯化実験
【化15】
JP0006274202B2_000016t.gif
【実施例】
【0105】
10 mLシュレンクフラスコに撹拌子とポリスチレン三点架橋型ホスフィン4(0.20 g、P: 0.018 mmol)およびPdCl2(PhCN)2(3.5 mg、0.0090 mmol)を入れ、アルゴン雰囲気下、ベンゼン 2 mLを加え、室温下1時間撹拌した。反応物をろ取し、ベンゼンで洗浄後、60℃で真空乾燥し、ポリスチレン三点架橋型ホスフィン4を配位子として有する遷移金属錯体を得た(0.20 g)。反応後のポリマーの31P CP/MAS NMR測定から、未反応の4およびPdCl2(PhCN)(4)の生成を確認した。
【実施例】
【0106】
反応後のポリマーのNMRデータ:
31P CP/MAS: δ-6.9 (PAr3), 33.2 (Pd-PAr3).
【実施例】
【0107】
PdCl2(PhCN)2と10の錯化実験
【化16】
JP0006274202B2_000017t.gif
【実施例】
【0108】
10 mLシュレンクフラスコに撹拌子とポリスチレン三点架橋型ホスフィン10(0.20 g、P: 0.018 mmol)およびPdCl2(PhCN)2(3.5 mg、0.009 mmol)を入れ、アルゴン雰囲気下、ベンゼン 2 mLを加え、室温下1時間撹拌した。反応物をろ取し、ベンゼンで洗浄後、60℃で真空乾燥し、ポリスチレン三点架橋型ホスフィン10を配位子として有する遷移金属錯体を得た(0.20 g)。反応後のポリマーの31P CP/MAS NMR測定から、未反応の10、PdCl2(PhCN)(10)およびPdCl2(10)2の生成を確認した。
【実施例】
【0109】
反応後のポリマーのNMRデータ:
31P CP/MAS: δ-5.5 (PAr3)、23.8 (Pd-(PAr3)2)、31.1 (Pd-PAr3).
【実施例】
【0110】
塩化アリールを基質としたパラジウム触媒による鈴木-宮浦クロスカップリング反応
窒素雰囲気下、10 mLのシュレンクフラスコに撹拌子および配位子(P: 0.010 mmol)を加えた。PdCl2(PhCN)2(1.9 mg、0.0050 mmol)のテトラヒドロフラン溶液(1 mL)を加え、室温下5分撹拌した。続いて、K3PO4(318 mg、1.5 mmol)、フェニルボロン酸(91.4 mg, 0.75 mmol)と4-クロロトルエン(63.3 mg、0.50 mmol)を順次加えた。続いて、40℃で2時間加熱撹拌し、反応させた。目的のカップリング生成物である4-メチルビフェニルの収率は、1,1,2,2,-テトラクロロエタン(0.50 mmol)を内部標準とする1H NMR測定により算出した。配位子効果の結果を表1に示す。さらに、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)により精製し、カップリング生成物を単離した。実施例1:収量71 mg、収率85%
【実施例】
【0111】
4-メチルビフェニルのNMRデータ:
1H NMR (CDCl3): δ 2.40 (s, 3H), 7.22-7.28 (m, 2H), 7.28-7.37 (m, 1H), 7.38-7.47 (m, 2H),7.48-7.54 (m, 2H), 7.55-7.62 (m, 2H).
13C NMR (CDCl3): δ 20.95, 127.03 (3C), 127.05 (2C), 128.77 (2C), 129.54 (2C), 137.08, 138.44, 141.25.
【実施例】
【0112】
【表1】
JP0006274202B2_000018t.gif
【実施例】
【0113】
塩化アリールを基質としたパラジウム触媒による水中鈴木-宮浦クロスカップリング反応
窒素雰囲気下、10 mLのシュレンクフラスコに撹拌子、配位子(P: 0.010 mmol)、PdCl2(PhCN)2(1.9 mg、0.005 mmol)とテトラヒドロフラン(1 mL)を加え、室温下5分撹拌した。減圧下にて溶媒を留去後、再び窒素雰囲気下にてK3PO4(318 mg、1.5 mmol)、フェニルボロン酸(91.4 mg, 0.75 mmol)と4-クロロトルエン(63.3 mg、0.5 mmol)、H2O(1 mL)を順次加えた。続いて、40℃で2時間加熱撹拌し、反応させた。目的のカップリング生成物である4-メチルビフェニルの収率は、1,1,2,2,-テトラクロロエタン(0.50 mmol)を内部標準とする1H NMR測定により算出した。配位子効果の結果を表2に示す。さらに、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)により精製し、カップリング生成物を単離した。実施例13:収量 60 mg、収率71%
【実施例】
【0114】
【表2】
JP0006274202B2_000019t.gif
【実施例】
【0115】
塩化アリールを基質としたパラジウム触媒によるBuchwald-Hartwigアミノ化反応
窒素雰囲気下、10 mLのシュレンクフラスコに撹拌子および配位子(P: 0.0050 mmol)を加えた。[PdCl(allyl)]2(0.46 mg、0.013 mmol)のトルエン溶液(0.8 mL)を加え、室温下5分撹拌した。続いて、t-ブタノール(0.2 mL)、KOtBu(46 mg、0.35 mmol)、4-ブチルクロロベンゼン(42 mg、0.25 mmol)とアニリン(28 mg、0.30 mmol)を順次加えた。続いて、100℃で20時間加熱撹拌し、反応させた。目的のカップリング生成物である4-ブチル-N-フェニルアニリンの収率は、1,1,2,2,-テトラクロロエタン(0.25 mmol)を内部標準とする1H NMR測定により算出した。配位子効果の結果を表3に示す。さらに、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル = 90 : 10)により精製し、カップリング生成物を単離した。実施例21:収量45 mg、収率80%
【実施例】
【0116】
4-ブチル-N-フェニルアニリンのNMRデータ:
1H NMR (CDCl3): δ 0.93 (t, J = 7.5 Hz, 3H), 1.29-1.43 (m, 2H), 1.52-1.64 (m, 2H), 2.56 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 5.61 (s, 1H), 6.84-6.91 (m, 1H), 7.00-7.05 (m, 4H), 7.07-7.11 (m, 2 H), 7.20-7.28 (m, 2H).
13C NMR (CDCl3): δ 18.86, 22.23, 33.73, 34.83, 116.97 (2C), 118.72 (2C), 120.34, 129.23 (2C), 129.36 (2C), 136.12, 140.54, 143.95.
【実施例】
【0117】
【表3】
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【実施例】
【0118】
イリジウム触媒によるC(sp3)-Hホウ素化反応
窒素雰囲気下、10 mLのシュレンクフラスコに撹拌子、配位子(P: 0.0060 mmol)およびビス(ピナコラト)ジボロン(76 mg、0.30 mmol)を加えた。そこに、[Ir(OMe)(cod)]2(2.0 mg、0.0030 mmol)のシクロペンチルメチルエーテル溶液(1.0 mL)および2-ペンチルピリジン(135 mg、0.90 mmol)を加え、60℃で15時間加熱撹拌し、反応させた。目的のカップリング生成物である2-(2-ピナコラトボリルペンチル)ピリジンの収率は、1,1,2,2,-テトラクロロエタン(0.30 mmol)を内部標準とする1H NMR測定により算出した。配位子効果の結果を表4に示す。さらに、粗生成物を減圧蒸留により精製し、目的ホウ素化体を単離した。実施例31:収量35 mg、収率42%
【実施例】
【0119】
2-(2-ピナコラトボリルペンチル)ピリジンのNMRデータ:
1H NMR (CDCl3): δ 0.88 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 1.10-1.18 (m, 2H), 1.23 (s, 6H), 1.24 (s, 6H), 1.29-1.40 (m, 2H), 1.42-1.55 (m, 1H), 2.82 (dd, J = 16.2, 6.6 Hz, 1H), 3.07 (dd, J = 16.2, 6.6 Hz, 1H), 7.22 (t, J = 5.7 Hz, 1H), 7.28 (d, J = 7.4 Hz, 1H), 7.71 (td, J = 7.4, 0.9 Hz, 1H), 8.55 (d, J = 7.1 Hz, 1H).
13C NMR (CDCl3): δ 14.25, 22.22, 25.49 (2C), 25.58 (2C), 33.27, 38.08, 80.83, 80.85, 121.64, 123.46, 138.42, 144.80, 162.70. ホウ素に直接結合した炭素のシグナルは観測されなかった。
【実施例】
【0120】
【表4】
JP0006274202B2_000021t.gif
【実施例】
【0121】
ポリスチレン架橋ホスフィンの膨潤特性評価:
ろ紙を敷いた目盛り付き1.0 mLシリンジにポリスチレン架橋ホスフィン 100 mg(乾燥状態の容積:1.8 mL/g)を入れ、適当な有機溶媒を1.0 mL加えて30分間静置した。過剰の溶媒を除き、膨潤したポリマーの容積を測定した結果を表5および表6に示す。
【実施例】
【0122】
【表5】
JP0006274202B2_000022t.gif
【実施例】
【0123】
【表6】
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【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は、遷移金属錯体が関係する技術分野において有用である。