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明細書 :正極活物質およびそれを用いる二次電池

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6270056号 (P6270056)
登録日 平成30年1月12日(2018.1.12)
発行日 平成30年1月31日(2018.1.31)
発明の名称または考案の名称 正極活物質およびそれを用いる二次電池
国際特許分類 H01M   4/58        (2010.01)
H01M  10/36        (2010.01)
H01M   4/36        (2006.01)
FI H01M 4/58
H01M 10/36 A
H01M 4/36 C
請求項の数または発明の数 7
全頁数 11
出願番号 特願2014-545790 (P2014-545790)
出願日 平成25年11月12日(2013.11.12)
国際出願番号 PCT/JP2013/080577
国際公開番号 WO2014/073702
国際公開日 平成26年5月15日(2014.5.15)
優先権出願番号 2012248762
優先日 平成24年11月12日(2012.11.12)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成28年11月10日(2016.11.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
発明者または考案者 【氏名】岡田 重人
【氏名】中本 康介
【氏名】加納 佑輔
個別代理人の代理人 【識別番号】100099634、【弁理士】、【氏名又は名称】平井 安雄
審査官 【審査官】松嶋 秀忠
参考文献・文献 特表2006-523930(JP,A)
国際公開第2012/133527(WO,A1)
特開2012-003928(JP,A)
国際公開第2013/133369(WO,A1)
Prabeer Barpanda et al.,Sodium iron pyrophosphate: A novel 3.0 V iron-based cathode for sodium-ion batteries,Electrochemistry Communications,2012年 9月10日,Vol.24,pp.116-119
Tsuyoshi HONMA et al.,Fabrication of Na2FeP2O7 glass-ceramics for sodium ion battery,Journal of the Ceramic Society of Japan,2012年 8月 1日,Vol.120, No.1404,pp.344-346
調査した分野 H01M 4/58
H01M 4/36
H01M 10/36
特許請求の範囲 【請求項1】
ナトリウム含有リン酸塩NaMP(Mは遷移金属元素)から成ることを特徴とする水系ナトリウムイオン二次電池用の正極活物質。
【請求項2】
Mが、FeまたはMnのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の水系ナトリウムイオン二次電池用の正極活物質。
【請求項3】
カーボンコート処理された請求項1または請求項2に記載の水系ナトリウムイオン二次電池用の正極活物質。
【請求項4】
アニール処理された請求項1~3のいずれかに記載の水系ナトリウムイオン二次電池用の正極活物質。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の正極活物質から成る正極と、NaSO、NaNO3またはNaClOのうちの一または複数を電解質とする電解液を含むことを特徴とする水系ナトリウムイオン二次電池。
【請求項6】
負極がNaTi2(PO43から成ることを特徴とする請求項5に記載の水系ナトリウムイオン二次電池。
【請求項7】
正極活物質NaFePから成る正極と、NaTi2(PO43から成る負極と、電解質NaSOから成る電解液を含むことを特徴とする水系ナトリウムイオン二次電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の技術分野に属し、特に、水系ナトリウムイオン二次電池を構成する新規な正極活物質およびそれを用いる水系ナトリウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、高電圧で高エネルギー密度を達成できる二次電池として盛んに研究が進められている。リチウムイオン二次電池の電解液は、主として有機溶媒を用いる非水系溶媒が使用されているが、高価で引火しやすいことから、安全性やコストの面で問題がある。すなわち、現行のリチウムイオン電池は電解液に引火点が低く、高コストで粘性の高い非水溶媒が用いられており、安全性や経済性、レート特性の点で問題がある。これら3つの課題を解決するため、引火点が無く、安価で伝導度の高い水系電解液が検討され、水の電気分解が起こらない電位窓の制約の中で、安価であり引火しない利点がある水系の電解液を使用する二次電池が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、リチウムイオン電池は約1.2Vの水系電位窓の制約があるため、高電位をもつリチウムの特徴を生かせない。リチウムをナトリウムに置き換えた水系二次電池は、安価で安全性の高い次世代型二次電池として、しかも非水系ではレート特性に難のあるナトリウムイオン電池の欠点を払拭できるものと期待できる。水系二次電池のうち、リチウムイオン二次電池の電解質中で電気伝導を担うリチウムイオンをナトリウムイオンに置き換えた二次電池が実現できれば、より一層低コストで安全性の高い二次電池となり得る。ナトリウムイオン二次電池は、現在のところ、非水系の電解液を使用するものは、いくつか提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3、非特許文献1参照)が、水系ナトリウムイオン二次電池に関するものは現在、Na0.44MnO2を正極、NaTi(POを負極、2M Na2SO4水溶液を電解液にした組合わせのフルセル特性しか報告されていない(非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2009-094034号公報
【特許文献2】特開2005-317511号公報
【特許文献3】特願2011-227413号公報<nplcit num="1"> <text>P. Barpanda et.al.;”Sodium iron pyrophosphate: A novel 3.0V iron-based cathode for sodium-ion batteries,” Electrochemistry Communications 24(2012)116-119</text></nplcit><nplcit num="2"> <text>S. Okada, E. Kobayashi, and K. Nakamoto, IUMRS-ICEM Meeting Abstract, A-6, Yokohama (2012).</text></nplcit>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これまでのところ、水系の電解液を使用するナトリウムイオン二次電池(水系ナトリウムイオン二次電池)でフルセル特性が報告されているのは、非特許文献2の電極の組合わせのみで、実用化されているものは未だ見当たらない。これは、水系の電解液を使用することで、二次電池の作動電位領域が水の電気分解反応が発生しない電位範囲内に限定され、正極負極の選択肢が限られてしまうためである。特に、Na0.44MnO2正極とNaTi(PO負極の組合わせの場合、この電池系の容量は正極に内包される0.44Na分で規制されてしまう課題があった。
【0006】
本発明の目的は、上記課題を解決するために提案されたものであり、水系の電解液を使用した場合でも安定して充放電動作でき、安価に製造することができる新しいタイプの水系ナトリウムイオン二次電池用正極活物質を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究の結果、水系の電解液に使用することができ、しかも多量のナトリウムを引き出すことで大容量化を可能にした水系ナトリウムイオン二次電池に好適な正極活物質を新たに見出した。さらに、この正極活物質を適当な負極活物質および水系電解質と組み合わせることにより、稼動安定性の高い水系ナトリウムイオン二次電池を構築できることを見出した。
【0008】
かくして、本発明に従えば、特定の構造式のナトリウム含有リン酸塩から成ることを特徴とする水系ナトリウムイオン二次電池用の正極活物質が提供される。また、本発明に従えば、上記の正極活物質と負極活物質を備え、水系電解質を用いることを特徴とする水系ナトリウムイオン二次電池も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】コインセルの概略図である。
【図2】本発明の実施例1で合成された正極活物質Na2FeP27と、その炭素コート品、さらにアニール処理品のX線回折図である。
【図3】本発明の実施例1で合成された負極活物質NaTi2(PO43と、そのカーボンコート品、さらにアニール処理品のX線回折図である。
【図4】本発明の実施例1で合成された正極活物質Na2FeP27単極評価用ビーカー型ハーフセルの概略図である。
【図5】本発明の実施例1で合成された正極活物質Na2FeP27単極ハーフセルの電流密度0.2 mA/cm2での非水系および水系ハーフセルの充放電曲線である。
【図6】本発明の実施例1で合成された正極活物質Na2FeP27単極ハーフセルの電流密度2 mA/cm2での非水系および水系でのハーフセルの充放電曲線である。
【図7】本発明の実施例1で合成された正極活物質Na2FeP27単極ハーフセルのレート特性を示すグラフである。
【図8】本発明の実施例1で合成された正極活物質Na2FeP27単極ハーフセルの2 mA/cm2の高レート条件でのサイクル特性を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例1で製造された正極にNa2FeP27、負極にNaTi2(PO43を用いた非水系および水系コイン型ナトリウムイオン電池の充放電曲線である。
【図10】本発明の実施例2で合成された正極活物質Na2MnP27のX線回折図である。
【図11】本発明の実施例2で合成された正極活物質Na2MnP27単極ハーフセルの電流密度0.2 mA/cm2での非水系ハーフセルの充放電曲線である。
【図12】本発明の実施例2で合成された正極活物質Na2MnP27単極ハーフセルの電流密度0.2 mA/cm2での水系ハーフセルの充放電曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る水系ナトリウムイオン二次電池用の正極活物質は、一般式NaMP(Mは遷移金属元素)のナトリウム含有リン酸塩から成る。ここで、Mは各種の遷移金属元素が原理的には適用可能であるが、このうち特に、電位と取り扱いの容易性からFeまたはMnが好ましく、特に好ましいのはFeである。

【0011】
本発明に係る正極活物質であるナトリウム含有リン酸塩NaMPは、公知の手段を使用して製造することができ、例えば、従来から知られた固相法によって合成することができる。例えば、本発明の製造方法の一例としては、出発原料に粉末状のNaHPO、Fe(COO)2・2H2Oを化学量論比で2:1で混合し、遊星ボールミルを用いてアセトン溶媒下で混合し、真空乾燥して得られる粉末をアルゴンガス雰囲気下で焼成を行うことで、ナトリウム含有リン酸塩NaFePを得ることができる。

【0012】
上記の正極活物質を、水系ナトリウムイオン二次電池の正極としてそのまま用いてもよいが、電極のレート特性を向上させるために、公知の導電材との複合体を形成させてもよい。
すなわち、本発明に従えば、レート特性を向上させる観点から、上記で得られた正極活物質であるナトリウム含有リン酸塩NaMPを、不活性ガス雰囲気下で炭素微粒子と共に粉砕・混合することにより、カーボンコートすることができる。該炭素微粒子としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等を使用することができるが、電極として使用する際の導電性の高さからアセチレンブラックが好適である。不活性ガスとしては、窒素ガスやアルゴンガス等を用いることができ、例えば、アルゴンガスを用いることができる。

【0013】
カーボンコートの際の粉砕・混合に適用される具体的手段は、特に限定されるものではなく、固形物質の粉砕・混合の目的で従来から用いられている各種の手段が適用可能であるが、好ましいのは、ボールミルであり、そのうち特に、原料を充分に粉砕・混合することができる点から遊星型ボールミルを用いることが好ましい。

【0014】
また、本発明の正極活物質は、当該カーボンコートの後、アニール処理を行うことが好ましい。アニール処理を行うことによって、カーボンコートを構成する炭素原子と正極活物質との接触状態が向上して電子伝導性が改善され、正極活物質の電池特性が改善されるものと推察される。なお、アニール処理の条件は特に限定されるものではないが、例えば、600℃、10時間実施することができる。

【0015】
本発明に従えば、以上のようにして得られた正極活物質NaMP、該正極活物質を含むナトリウムイオン水系二次電池正極、および該正極を組み合わせた水系ナトリウムイオン二次電池が提供される。

【0016】
本発明に従う正極を作製する際には、上記の正極活物質を用いるほかは公知の電極の作製方法に従えばよい。例えば、上記活物質の粉末を必要に応じてポリエチレン等の公知の結着材、さらに必要に応じてアセチレンブラック等の公知の導電材と混合した後、得られた混合粉末をステンレス鋼製等の支持体上に圧着成形したり、金属製容器に充填したりすることができる。

【0017】
また、例えば、上記混合粉末をトルエン等の有機溶剤と混合して得られたスラリーをアルミニウム、ニッケル、ステンレス、銅等の金属基板上に塗布する等の方法によっても本発明の正極を作製することができる。

【0018】
ナトリウム含有リン酸塩NaMP正極に対する負極としては、水系電解質を用いて正極と組み合わせた場合に、所定の電位特性を有する各種のものが利用可能であり、特に限定されるものではない。例えば、一般式NaM’(POで表されるナトリウム含有リン酸塩が挙げられる。ここで、M’は、各種の遷移金属元素が考えられるが、このうち特に好ましいのは、ナトリウム含有リン酸チタニウムNaTi(POである。

【0019】
本発明の水系ナトリウムイオン二次電池において、電解液は、ナトリウム塩を主電解質とする水系電解液であれば特に限定されない。この主電解質となるナトリウム塩としては、例えば、NaSO、NaNO3、NaClO、NaOH及びNa2S等が挙げられる。これらのナトリウム塩は、各々単独で用いることもできるが、2種以上を組み合わせて使用することもできる。本発明の水系ナトリウムイオン二次電池の電解液に用いられる特に好ましい電解質は、電池特性および安全性を考慮した取り扱いの容易性から、NaSOである。

【0020】
以上のことから、本発明の水系ナトリウムイオン二次電池は、好適な一態様として、正極活物質NaFePから成る正極と、NaTi2(PO43から成る負極と、電解質NaSOから成る電解液を含むものが挙げられる。この本発明に係る水系ナトリウムイオン二次電池は、従来の非水系のナトリウムイオン二次電池よりも優れた充放電特性を発揮することが確認されている(後述の実施例1参照)。

【0021】
その他の構成要素としては、公知のナトリウムイオン二次電池に使用されるものを構成要素として使用できる。

【0022】
ここで、図1は例としてコイン型試験電池の概略を示す断面図である。この図において水系ナトリウムイオン電池1は、大まかに言って電池の外部負極として機能する負極側ケース部材2と、電池の外部正極として機能する正極側ケース部材3と、両部材間に負極集電体4、負極活物質層5、セパレーター8、正極活物質層7及び正極集電体6をこの順番で有してなり、電解液スペース9を確保しつつ、漏液防止のガスケット10でかしめてコイン電池が構成される。本発明に係る水系ナトリウムイオン二次電池は、セパレーター、電池ケース他、構造材料等の要素についても従来公知の各種材料を使用することができる。

【0023】
以下に、本発明の特徴をさらに具体的に示すために実施例を記すが、本発明は以下の実施例によって制限されるものではなく、コイン型以外にも例えば円筒状、角型等種々の形状、サイズを当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。また、本発明の二次電池は、その用途を特に限定するものではない。

【0024】
(実施例1)
正極活物質Na2FeP27の合成
正極活物質Na2FeP27は固相法によって合成した。出発原料にNaHPO、Fe(COO)2・2H2Oを化学量論比で2:1で混合し、遊星ボールミルを用いてアセトン溶媒下で400rpmで10時間混合し、真空乾燥して得られる粉末をAr雰囲気下で600℃—10時間焼成して、Na2FeP27を得た(図2-項番1)。同図のXRDパターンから、ごく一部に不純物としてNa3PO4、NaPO3、Fe227が認められたが、大部分の主相は三方晶Na2FeP27と同定された。合成した正極活物質とアセチレンブラック(AB)を70:25の重量比で混合し、遊星ボールミルを用いて300rpm、10時間カーボンコート処理を行った(図2-項番2)。得られた粉末(正極活物質およびAB)を600 ℃、10時間、Ar雰囲気下で熱処理した(図2-項番3)。得られた粉末(正極活物質/C)とPTFEを重量比で95:5で混合し、ペレットに成形したものを正極とした。

【0025】
負極活物質NaTi2(PO43の合成
負極となるNaTi2(PO43はPechini法にて合成した。過酸化水素30%溶液にTi(OCH2CH2CH2CH34を溶かした40mLの溶液と28%のアンモニア水15mLおよびTiの2倍モル量のクエン酸を加え、さらにNa2CO3を溶かした硝酸溶液10mLとNH42PO4水溶液10mL、エチレングリコールを加えて80℃で1~2時間で蒸発乾固させた後、140℃でさらに1~2時間加熱して茶色のゲルを得る。これを350℃および800℃でそれぞれ大気中焼成することでNaTi2(PO43を得た(図3-項番1)。同図のXRDパターンから、主相はICDD#33-1296と一致し、ナシコン型NaTi2(PO43単相と同定された。合成した負極活物質とアセチレンブラック(AB)を70:25の重量比で混合し、遊星ボールミルを用いて400rpm、1時間カーボンコート処理を行った(図3-項番2)。得られた粉末(負極活物質およびAB)を800 ℃、1時間、窒素雰囲気下で熱処理した(図3-項番3)。得られた粉末(負極活物質/C)とPTFEを重量比で95:5で混合し、ペレットに成形したものを負極とした。

【0026】
非水系および水系ナトリウムハーフセルの作製
実施例1で得られた上記Na2FeP27ボールミル品と、さらにアニール処理したアニール品それぞれについて正極ペレット作成しこれを作用極とし、これに対極をZn板、参照極にAg/AgClを用いた。溶液系電解液として、Na2SO4、NaNO3、NaClO4の3種のナトリウム塩を選定し、Arグローブボックス中でArバブリング処理を行った酸素濃度が10-6 M程度の超純水を用い作製した、2M Na2SO4、4M NaNO3、4M NaClO4、3種の水系電解液を用いてビーカー型のハーフセルを作製した(図4)。
比較のため、非水系ハーフセルはNa2FeP27正極ペレットを作用極、対極をナトリウム金属、非水電解液に1 M NaClO4/PCを用いコインセルを作製した。

【0027】
非水系および水系ナトリウムハーフセルの充放電プロファイル
図5に電流密度0.2 mA/cm2 における上記で得られた1 M NaClO4/PC非水系および2M Na2SO4水溶液系電解液のナトリウムハーフセル単極特性を示す。水系ハーフセルではAg/AgCl参照極に対し、-0.6~0.7Vの電圧範囲で充放電試験し、対する非水系ナトリウムハーフセルではナトリウム対極に対し、2.3~3.6Vの電圧範囲で充放電試験した。非水系と同等の容量を水系でも得られ、またボールミル品に比べ、アニール処理の効果は、非水系、水系にかかわらず顕著であった。

【0028】
図6は電流密度を2mA/cm2 に上げた時のナトリウムハーフセル単極特性を示す。2mA/cm2の大電流充放電条件では非水系ナトリウムハーフセルの充放電過電圧が大きくなっているが、水系ナトリウムイオン電池は、いずれも、水系電解液の低粘度、高ナトリウムイオン濃度、高イオン導電性が功を奏して、非水系よりも小さな充放電過電圧を維持した。

【0029】
図7にそれらの電池のレート特性を示すが、確かに3種類の水系ナトリウムイオン電池はいずれも非水系ナトリウムイオン電池を凌ぐレート特性を示していることがわかる。

【0030】
また、図8に示すように、2mA/cm2の高レートでのサイクル性においても水系ナトリウムイオン電池は、非水系ナトリウムイオン電池を凌ぐ特性を示した。

【0031】
非水系および水系ナトリウムイオン電池フルセルの作製
実施例1で得られた上記正負極活物質を重量比で正極:負極 = 1:1.5となるようにペレットに成形したものをそれぞれ正極負極とした。これをArドライボックス中で、正極にNa2FeP27、負極にNaTi2(PO43、非水電解液に1 M NaClO4/PCを用いコインセルを作製した。また、水溶液系電解液として、ハーフセル同様、Na2SO4、NaNO3、NaClO4の3種のナトリウム塩をArグローブボックス中でArバブリング処理を行った酸素濃度が10-6 M程度の超純水を用い作製した、2M Na2SO4、4M NaNO3、4M NaClO4、3種の水系電解液を用いてコインセルを作製した。

【0032】
非水系および水系ナトリウムイオン電池フルセルの充放電プロファイル
図9に正極をNa2FeP27、負極をNaTi2(PO43として非水系と水系電解液を用いた場合の電流密度2 mA/cm2 におけるフルセルの電圧範囲0~1.4Vでの充放電プロファイルを示す。4M NaNO3を除き、他の水系ナトリウムイオン電池は、いずれも、1M NaClO4/PC非水系ナトリウムイオン電池と同等の充放電プロファイルを示した。フルセルの場合でも、上述のハーフセル同様、水系電解液の低粘度、高ナトリウムイオン濃度、高イオン導電性が功を奏して、非水系よりも水系ナトリウムイオン電池の方が充放電過電圧に関しては良好であることが確認された。
以上の結果から、実際に本発明に係る正極活物質Na2FeP27は、水系の電解液にて、水の電気分解を発生させることなくナトリウムの挿入および脱離が可能であることがわかり、水系二次電池にインサーションゲストとしてNa2FeP27を用いることで、従来に無い好特性の水系ナトリウムイオン電池を実現できることが示された。

【0033】
(実施例2)
実施例1に変えて変更箇所のみを記載する。正極活物質NaMnPは固相法によって合成した。出発原料にNaCO、Mn、(NHHPOを化学量論比で3:1:6で混合し、遊星ボールミルを用いて200rpmで2時間混合した。得られた粉末を大気下で600℃-3時間焼成を行い、さらに大気下で650℃-15時間焼成を行い、5℃/hで20時間徐冷したのち、100℃/hで室温まで降温させ、NaMnPを得た(図10)。同図のXRDパターンから、大部分の主相は三方晶NaMnPと同定されたが、不純物が多く認められた。合成した正極活物質とアセチレンブラック(AB)を70:25の重量比で混合し、遊星ボールミルを用いて200prm-24時間カーボンコート処理を行った。得られた粉末(正極活物質およびAB)をそれぞれ500℃-1時間熱処理した。得られた粉末(正極活物質/C)とPTFEを重量比で95:5で混合し、ペレットに成形したものを正極とした。

【0034】
非水系および水系ナトリウムハーフセルの作製
実施例2で得られた上記NaMnPアニール品について正極ペレット作成しこれを作用極とし、これに対極をZn板、参照極にAg/AgClを用いた。溶液系電解液として、Na2SOを選定し、2M Na2SO4水系電解液を用いてビーカー型のハーフセルを作製した(図4)。
比較のため、非水系ハーフセルはNaMnP正極ペレットを作用極、対極をナトリウム金属、非水電解液に1 M NaClO4/PCを用いコインセルを作製した。

【0035】
非水系および水系ナトリウムハーフセルの充放電プロファイル
図11に電流密度0.2mA/cm2 における上記で得られた1M NaClO4/PC非水系および図12に2M Na2SO4水溶液系電解液のナトリウムハーフセル単極特性を示す。図12の水系ハーフセルではAg/AgCl参照極に対し、-0.6~0.7Vの電圧範囲で充放電試験し、これに対して図11の非水系ナトリウムハーフセルではナトリウム対極に対し、2.7~4.5Vの電圧範囲で充放電試験した。本発明に係る正極活物質NaMnPについても、水溶液中で可逆的に充放電が行えることが分かった。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11