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明細書 :腫瘍の検査方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-028474 (P2018-028474A)
公開日 平成30年2月22日(2018.2.22)
発明の名称または考案の名称 腫瘍の検査方法
国際特許分類 G01N  33/68        (2006.01)
C07K  14/82        (2006.01)
G01N  33/574       (2006.01)
FI G01N 33/68
C07K 14/82
G01N 33/574 A
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2016-160411 (P2016-160411)
出願日 平成28年8月18日(2016.8.18)
発明者または考案者 【氏名】八木田 和弘
【氏名】梅村 康浩
出願人 【識別番号】509349141
【氏名又は名称】京都府公立大学法人
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 2G045
4H045
Fターム 2G045AA26
2G045DA78
2G045FB03
4H045AA10
4H045AA30
4H045CA40
4H045EA51
要約 【課題】本発明は、新規な腫瘍の検査方法を提供する。
【解決手段】腫瘍においてKPNA2タンパク質及びCLOCKタンパク質の発現を検出する工程を含む、腫瘍の検査方法である。KPNA2タンパク質の発現が陽性、かつ、CLOCKタンパク質の発現が陰性である細胞が少なくとも1つ存在する場合、腫瘍は分化制御の異常が発現機序に関与するがんであると評価する。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
腫瘍においてKPNA2タンパク質及びCLOCKタンパク質の発現を検出する工程を含む、腫瘍の検査方法。
【請求項2】
KPNA2タンパク質の発現が陽性、かつ、CLOCKタンパク質の発現が陰性である細胞が少なくとも1つ存在する場合、腫瘍は分化制御の異常が発現機序に関与するがんであると評価する、請求項1に記載の検査方法。
【請求項3】
被験者に由来する腫瘍においてKPNA2タンパク質及びCLOCKタンパク質の発現を検出する工程を含む、腫瘍を有する患者の予後の予測方法。
【請求項4】
KPNA2タンパク質の発現を検出する手段、及びCLOCKタンパク質の発現を検出する手段を含む、腫瘍の検査キット。
【請求項5】
KPNA2タンパク質及びCLOCKタンパク質の組み合わせからなる、分化制御の異常が発現機序に関与するがんのマーカー。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、主に腫瘍の検査方法、腫瘍を有する患者の予後の予測方法、腫瘍の検査キット、及びがんのマーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
がん(悪性腫瘍)の発生機序として、遺伝子の変異の蓄積がその主たるものであると考えられてきた。近年、分化制御の異常、特に脱分化が発生機序に関与するがんの一群の存在が提唱されている(非特許文献1~3)。
【0003】
非特許文献4には、小児の腎臓に発生する代表的な悪性腫瘍であるウィルムス(Wilms)腫瘍のモデル動物が開示されている。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】M. L. Suvaet al. Science 339, 1567-1570 (2013).
【非特許文献2】G. L. Brien et al. Canc. Cell 29, 464-476 (2016).
【非特許文献3】S. B. Baylin and P. A. Jones. Nat. Rev. Cancer 11, 726-734 (2011).
【非特許文献4】K. Ohnishi et al. Cell 156, 663-677 (2014).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
脱分化などの分化制御の異常が発生機序に関与するがんは非常に予後の悪い進展が早いと考えらる。しかし、このようなタイプの腫瘍を検出する方法がこれまで知られていなかった。
【0006】
本発明の目的は、分化制御の異常、特に脱分化が発生機序に関与するがんを検出するための検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、腫瘍においてKPNA2タンパク質及びCLOCKタンパク質の発現を検出する工程を含む検査方法により、上記の目的を達成できることを見出した。本発明は、斯かる知見に基づいてさらに検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
本発明は、以下の態様を包含する。
項1、腫瘍においてKPNA2タンパク質及びCLOCKタンパク質の発現を検出する工程を含む、腫瘍の検査方法。
項2、KPNA2タンパク質の発現が陽性、かつ、CLOCKタンパク質の発現が陰性である細胞が少なくとも1つ存在する場合、腫瘍は分化制御の異常が発現機序に関与するがんであると評価する、項1に記載の検査方法。
項3、被験者に由来する腫瘍においてKPNA2タンパク質及びCLOCKタンパク質の発現を検出する工程を含む、腫瘍を有する患者の予後の予測方法。
項4、KPNA2タンパク質の発現を検出する手段、及びCLOCKタンパク質の発現を検出する手段を含む、腫瘍の検査キット。
項5、KPNA2タンパク質及びCLOCKタンパク質の組み合わせからなる、分化制御の異常が発現機序に関与するがんのマーカー。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、脱分化などの分化制御の異常は発生機序に関与するがんの検査方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】正常腎臓(-)及びモデルマウス由来の腎臓腫瘍(Dox +)おけるKPNA2タンパク質及びCLOCKタンパク質の免疫染色。バー: 10 マイクロメートル
【図2】正常腎臓組織及びウィルムス腫瘍おけるKPNA2タンパク質及びCLOCKタンパク質の免疫染色。
【図3】悪性ラブドイド腫瘍におけるKPNA2タンパク質及びCLOCKタンパク質の免疫染色。(A)ヘマトキリン・エオシン染色(H&E)像。バー: 50 マイクロメートル、(B, C)KPNA2タンパク質及びCLOCKタンパク質の免疫染色像。バー: 20 マイクロメートル
【図4】ウィルムス腫瘍モデルマウスの作製方法を模式的に示す。
【図5】ドキシサイクリン投与により発生した腎臓腫瘍を示す。上図は対照(Control (Dox OFF))であり、下図は腫瘍が発生した腎臓(Tumor (Dox ON))をそれぞれ示す。左図はそれぞれ肉眼像であり、左図はそれぞれヘマトキリン・エオシン染色(H&E)像である。バー:500 μm(像入図)及び50 μm
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.検査方法
腫瘍
本発明の検査方法は、腫瘍を対象とする。

【0012】
腫瘍とは、異常増殖を伴う細胞の集団をいう。該異常増殖は、生体の制御に反した自立的かつ過剰な増殖である。腫瘍には、浸潤性及び転移性を有する悪性腫瘍と、浸潤性及び転移性を有さない良性腫瘍が含まれる。また、悪性腫瘍には、上皮由来のがんと非上皮由来の肉腫が含まれる。

【0013】
対象とする腫瘍が由来する部位は特に限定されない。脳、脊髄、末梢神経などの神経;胃、大腸、小腸などの消化管;肺、咽頭などの呼吸器系器官;前立腺などの泌尿器系器官;子宮、卵巣などの女性生殖器官;血液、肝臓、胆のう、腎臓、膵臓、甲状腺、皮膚など生体のあらゆる組織、器官に由来する腫瘍を対象とすることができる。

【0014】
検査対象とする腫瘍は、被検対象由来であれば特に限定されない。例えば、被検対象から摘出手術や生検(バイオプシー)により採取することができる。また、腫瘍は、被検対象から採取したものをそのまま用いることも、パラフィン包埋などの適切な処置により標本化されたものを用いることもできる。

【0015】
被験対象は、特に限定されるものではないが、ヒトを含む哺乳類が例示される。非ヒト哺乳類としては、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ウマなどが挙げられる。本発明の検査方法の好ましい被験対象は、ヒトである。被験対象がヒトである場合、性別、年齢、人種は特に限定されない。

【0016】
KPNA2タンパク質、CLOCKタンパク質
本発明の検査方法は、腫瘍を構成する細胞においてKPNA2タンパク質及びCLOCKタンパク質の発現を検出する工程を含む。

【0017】
KPNA2(karyopherin alpha 2)タンパク質は、公知のタンパク質である。KPNA2タンパク質は、細胞内で分子の輸送に関与するkaryopherinファミリーに属する。KPNA2タンパク質は多能性幹細胞において発現し、多能性の維持に関与することが報告されている。

【0018】
CLOCKタンパク質は、公知のタンパク質である。CLOCKタンパク質は、概日リズムの制御に必須の、bHLH-PAS(Basic Helix-Loop-Helix-Per-Arnt-Sim)ファミリーに属する転写因子である。なお、胚性幹細胞などの多能性幹細胞においては、CLOCKタンパク質の発現が検出されず、概日リズムが発生しないことが知られている。

【0019】
例えば、ヒト(Homo sapiens)のKPNA2タンパク質及びCLOCKタンパク質のアミノ酸配列は、米国生物工学情報センター(NCBI; National Center for Biotechnology Information)が提供すGenBankに、下記のアクセッション番号で登録されている(複数のリビジョン(revision)が登録されている場合、最新のリビジョンを指すと理解される。):
ヒトKPNA2タンパク質:NP_002257、NP_001307540
ヒトCLOCKタンパク質: NP_001254772、NP_004889。

【0020】
KPNA2タンパク質及びCLOCKタンパク質を検出する手段は、当業者が適宜選択することができる。通常の病理診断に用いられること、および、簡便であるとの観点から、免疫組織化学染色が好適である。この場合、KPNA2タンパク質を検出する手段としてはKPNA2タンパク質を特異的に検出することができる抗体(すなわち、KPNA2タンパク質に特異的に結合する抗体)、及び、CLOCKタンパク質を検出する手段としてはCLOCKタンパク質を特異的に検出することができる抗体(すなわち、CLOCKタンパク質に特異的に結合する抗体)をそれぞれ使用する。「抗体」とは、イムノグロブリン(Ig)タンパク質分子の全長、及び、F(ab)、F(ab')2等のフラグメントを含む。

【0021】
KPNA2タンパク質を特異的に検出することができる抗体、及び、CLOCKタンパク質を特異的に検出することができる抗体は、それぞれ公知の手段により作成することができる。市販品を用いることもできる。

【0022】
評価基準
本発明の検査方法は、KPNA2タンパク質の発現が陽性、かつ、CLOCKタンパク質の発現が陰性である細胞が少なくとも1つ存在することを評価基準とする。ここで、「発現が陰性」とは、例えばタンパク質の検出を免疫組織化学染色で行う場合は、染色が検出できないことをいい、「発現が陽性」とは、例えばタンパク質の検出を免疫組織化学染色で行う場合は、染色が検出できることをいう。この際、適切な対照との比較を行うことが好ましい。

【0023】
なお、KPNA2タンパク質は細胞の細胞質又は核での発現が検出され、CLOCKタンパク質は細胞の核での発現が検出される。

【0024】
検査方法
本発明の検査方法の1つの態様において、上記の評価基準を満たす場合に、腫瘍が脱分化(リプログラミング)などの分化制御の異常が発生機序に関与するがん(エピジェネティック発がんが関与するがん、と換言できる)であるか否かを評価あるいは判定をすることができる。このような評価または判定は、医師でない者が、医療行為に該当することなく行うことができる。医師であれば、このようなタイプのがんであるか否かの診断を、医療行為として行うことができる。

【0025】
腫瘍が脱分化(リプログラミング)などの分化制御の異常が発現機序に関与するがんは、従来知られていた遺伝子変異(塩基配列の異常)のみに依拠するがんとは区別される。腫瘍が脱分化(リプログラミング)などの分化制御の異常が発現機序に関与するがんは、遺伝子変異を伴わない場合、遺伝子変異を伴う場合がある。

【0026】
脱分化(リプログラミング)などの分化制御の異常が発現機序に関与するがんの具体例としては、ウィルムス(Wilms)腫瘍、悪性ラブドイド腫瘍(Malignant rhabdoid tumour、MRT)などが例示されるが、これに限定されない。

【0027】
また、脱分化などの分化制御の異常は発現機序に関与するがんは、病態の進行が早く、予後が悪いことが知られている。そのため、本発明の検査方法の別の態様において、腫瘍が由来する被験対象の予後を予測することもできる。

【0028】
また、腫瘍が脱分化(リプログラミング)などの分化制御の異常が発現機序に関与するがんは、遺伝子変異のみに依拠するがんとは有効な治療方法が異なると考えられる。そのため、本発明は、有効な治療方針の選択方法をも提供する。腫瘍が脱分化(リプログラミング)などの分化制御の異常が発現機序に関与するがんの有効な治療方法としては、分化誘導療法が包含されるが、これに限定されない。分化誘導療法には、有効量のレチノイン酸を投与する方法が例示される。

【0029】
2.キット
本発明はまた、腫瘍を検査するためのキットをも提供する。

【0030】
本発明のキットは、腫瘍を構成する細胞においてKPNA2タンパク質の発現を検出する手段及び腫瘍を構成する細胞においてCLOCKタンパク質の発現を検出する手段を含む。

【0031】
このようなタンパク質の発現を検出する手段としては、前述のKPNA2タンパク質及びCLOCKタンパク質のそれぞれに特異的に結合する抗体が例示される。

【0032】
また、本発明のキットには、必要に応じて他の成分を含めることができる。他の成分は、例えば試料を採取するための道具、ポジティブコントロール試料(例えば、腫瘍が脱分化などの分化制御の異常が発現機序に関与するがんであることが確定している腫瘍の試料)及びネガティブコントロール試料(例えば、腫瘍が脱分化(リプログラミング)などの分化制御の異常が発現機序に関与するがんでないことが確定している腫瘍の試料)などが挙げられるが、これに限定されない。上記検査方法を行うための手順を書き記した書面などを含むこともできる。

【0033】
本発明のキットは、常法に従い、上記成分を適宜備えることで作製することができる。

【0034】
キットの使用形態は特に限定されないが、上記検査方法に用いることが好ましい。上記検査方法に用いた場合、腫瘍の検査を容易に行うことが可能となる。

【0035】
3.マーカー
本発明はまた、KPNA2タンパク質及びCLOCKタンパク質の組み合わせからなる、脱分化などの分化制御の異常が発現機序に関与するがんのマーカーをも提供する。

【0036】
本発明のマーカーは、上記の免疫組織化学染色により検出することができる。

【0037】
また、CLOCKタンパク質として組み合わせて、脱分化などの分化制御の異常が発現機序に関与するがんのマーカーとして用いるためのKPNA2タンパク質、及び、KPNA2タンパク質として組み合わせて、脱分化などの分化制御の異常が発現機序に関与するがんのマーカーとして用いるためのCLOCKタンパク質をもそれぞれ提供する。

【0038】
また、KPNA2タンパク質及びCLOCKタンパク質の組み合わせの脱分化などの分化制御の異常が発現機序に関与するがんのマーカーとしての使用;CLOCKタンパク質として組み合わせて、脱分化などの分化制御の異常が発現機序に関与するがんのマーカーとして用いるためのKPNA2タンパク質の使用;KPNA2タンパク質として組み合わせて、脱分化などの分化制御の異常が発現機序に関与するがんのマーカーとして用いるためのCLOCKタンパク質の使用をも提供する。

【0039】
4.スクリーニング方法
本発明はまた、脱分化などの分化制御の異常が発現機序に関与するがんの治療薬のスクリーニング方法をも提供する。具体的には、治療薬の候補物質を被験者に投与し、がんの治療効果が認められる候補物質を治療薬として判定するスクリーニング方法において、被験者に由来するがんにおいてKPNA2タンパク質の発現が陽性、かつ、CLOCKタンパク質の発現が陰性である細胞が少なくとも1つ存在するスクリーニング方法である。また、治療薬の候補物質をがん細胞と接触させ、がんの治療効果が認められる候補物質を治療薬として判定するスクリーニング方法において、がん細胞においてKPNA2タンパク質の発現が陽性、かつ、CLOCKタンパク質の発現が陰性であるスクリーニング方法である。

【0040】
また、治療効果が期待される患者の亜群を予測するための方法も提供される。

【0041】
被験者に由来するがんにおいてKPNA2タンパク質の発現が陽性、かつ、CLOCKタンパク質の発現が陰性である細胞が少なくとも1つ存在するは、例えば、当該被験者から採取された試料において上記の検査方法により行うことができる。

【0042】
がんの治療効果が認められることは、公知の手法により判定をすることができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。しかし、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。
【実施例】
【0044】
[実施例1]ウィルムス(Wilms)腫瘍モデルマウス由来資料
試料
後述する参考例により作成したウィルムス(Wilms)腫瘍モデルマウスから採取した腎臓、および対照マウスから採取した腎臓を用いた。
【実施例】
【0045】
染色
マウスから摘出した腎臓の組織試料を10%緩衝化ホルマリンで一晩固定し、パラフィン(Tokyo Central Pathology Laboratory)に包埋した。ロータリーミクロトーム(Leica RM2265)ないしスライディングミクロトーム(LS-113; 大和光機工業社製)を用いて5マイクロメートル厚の切片を作製した。切片を定法に従いヘマトキシリン及びエオシンで染色した。内在のペルオキシダーゼを不活性させた後に、連続する切片を用いて抗CLOCK抗体(1:500希釈又は1:2000希釈)又は抗KPNA2抗体(1:1000希釈又は1:2000希釈)を用いて4℃で3晩インキュベートした。二次抗体としてビオチン化抗マウスIgG抗体又はビオチン化抗ラットIgG抗体を用いて、アビジン-ビオチン-ペルオキシダーゼ複合体(avidin-biotin peroxidase complex)(Vectastain Elite ABC kit、Vector Laboratories社製)により可視化した。
【実施例】
【0046】
抗CLOCK抗体及び抗KPNA2抗体は、MBL社から販売されているものを使用した。
【実施例】
【0047】
結果及び考察
結果を図1に示す。対照の正常な腎臓細胞(Control Mouse Kidney (Dox -))ではKPNA2タンパク質の発現は観察されなかったが、腎臓腫瘍細胞(Mouse Kidney Tumor (Dox ;))ではKPNA2タンパク質の高い発現が観察された。CLOCKタンパク質については、正常な腎臓細胞では明らかな発現が観察されたが、腎臓腫瘍細胞では発現は観察されなかった。
【実施例】
【0048】
なお、腎臓腫瘍細胞においてClock遺伝子のmRNAは検出されたため(データは示さない)、CLOCKタンパク質の発現の抑制は、転写後の調節に基づくと考えられる。
【実施例】
【0049】
[実施例2]ヒト由来試料:ウィルムス(Wilms)腫瘍
試料
京都府立医科大学において収集、保存及び管理された、インフォームドコンセントを行い承諾を得た患者から得た、ホルマリン固定及びパラフィン包埋をしたウィルムス腫瘍患者由来の腫瘍試料を使用した。
【実施例】
【0050】
ロータリーミクロトーム(Leica RM2265)ないしスライディングミクロトーム(LS-113; 大和光機工業社製)を用いて5マイクロメートル厚の切片を作製した。
【実施例】
【0051】
染色
実施例1と同様にしてKPNA2タンパク質及びCLOCKタンパク質の免疫染色を行った。
【実施例】
【0052】
結果及び考察
結果を図2に示す。対照の正常なヒト腎臓組織(Normal Kidney Tissue)ではKPNA2タンパク質の発現は観察されなかったが、ヒトウィルムス腫瘍細胞(Human Wilms Tumor tissue)ではKPNA2タンパク質の高い発現が観察された。CLOCKタンパク質については、正常な腎臓細胞では明らかな発現が観察されたが、ウィルムス腫瘍細胞では発現は観察されなかった。
【実施例】
【0053】
なお、ウィルムス腫瘍細胞においてClock遺伝子のmRNAは検出されたため(データは示さない)、CLOCKタンパク質の発現の抑制は、転写後の調節に基づくと考えられる。
【実施例】
【0054】
[実施例3]ヒト由来試料:悪性ラブドイド腫瘍(Malignant rhabdoid tumour、MRT)
試料
京都府立医科大学において収集、保存及び管理された、インフォームドコンセントを行い承諾を得た患者から得た、ホルマリン固定及びパラフィン包埋をした悪性ラブドイド腫瘍患者由来の腫瘍試料を使用した。
【実施例】
【0055】
ロータリーミクロトーム(Leica RM2265)ないしスライディングミクロトーム(LS-113; 大和光機工業社製)を用いて5マイクロメートル厚の切片を作製した。
【実施例】
【0056】
染色
実施例1と同様にしてKPNA2タンパク質及びCLOCKタンパク質の免疫染色を行った。
【実施例】
【0057】
結果及び考察
結果を図3に示す。悪性ラブドイド腫瘍の腎臓においても、ウィルムス腫瘍の場合と同様に、KPNA2タンパク質の高い発現が観察されCLOCKタンパク質の発現は観察されなかった。
悪性ラブドイド腫瘍は、ATP依存SWI/SNFクロマチンリモデリング複合体(SWI/SNF ATP-dependent chromatin-remodeling complex)のサブユニットをコードするSNF5(SMARCB1)遺伝子の両アレル不活性化(bi-allelic inactivation)を特徴とする。悪性ラブドイド腫瘍において、多数の遺伝子発現が改変されることを介したエピジェネティックに誘導される分化異常(epigenetically induced dysdifferentiation)に基づき発生することが知られている。
【実施例】
【0058】
[参考例1]ウィルムス(Wilms)腫瘍モデルマウスの作製
ウィルムス(Wilms)腫瘍モデルマウスは、非特許文献3の記載に準じて作製した。図4に作製方法を模式的に示す。ウィルムス(Wilms)腫瘍モデルマウスは、ドキシサイクリン(Dox)により誘導可能な4つの転写因子Oct3/4,、Sox2、Klf4及びc-Myc (TetO:OSKM)を有し、ドキシサイクリンの投与によりウィルムス腫瘍様の腎臓の腫瘍が発生する。
【実施例】
【0059】
まずは、非特許文献3に記載のRosa26:M2-rtTA TetO:OSKMのESC(胚性幹細胞、Embryonic stem cells)用いて、Per2プロモーター制御下のルシフェラーゼレポーター遺伝子を安定発現するマウスからESCを作製した。mPer2:luc-pT2Aと選択マーカーZeocinを有するプラスミド3マイクログラムを、Tol2 トランスポゼース発現ベクター(pCAGGS-TP)を40マイクロリットルの液体培地に希釈して、FuGENE 6(Promega社製)を12マイクロリットル添加して十分攪拌した。 室温で15分間インキュベートした後に、混合液を2-2.5×105細胞に添加した。細胞を10 μg/mLのZeocin(Invitrogen社製)を用いて選択した。
【実施例】
【0060】
次いで、Rosa26:M2-rtTA TetO:OSKM/ mPer2:lucのESCをC57BL/6 ×DBA/2のF1 ハイブリッド胚盤胞,にインジェクションして、キメラ胚を作製した。
文献の記載に従い、ドキシサイクリン(Doxycycline)投与をした。4週齢以上のマウスの飲料水に、0.2 又は2 mg/ml ドキシサイクリン(Dox)及び10 mg/ml スクロースを添加した。 10-20日後にマウスが病的になった後に、数日間ドキシサイクリンを除去し他後に、屠殺した。
【実施例】
【0061】
マウスは、標準の明暗条件下(LD12:12スケジュール)で管理し、自由摂食(ad libitum)とした。
【実施例】
【0062】
図5に示すとおり、対照のドキシサイクリン投与をしなかったマウス(Dox OFF)腎臓切片は、糸球体(glomeruli)、近位尿細管(proximal tubules)及び遠位尿細管(distal tubules)が観察され、肉眼及び組織額的な以上は観察されなかった。一方、ドキシサイクリン投与をしたマウス(Dox ON)の腎臓切片においては、未分化状態の細胞から構成される腫瘍が確認できた。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4