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明細書 :黄銅鉱からの銅の浸出回収方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-024902 (P2018-024902A)
公開日 平成30年2月15日(2018.2.15)
発明の名称または考案の名称 黄銅鉱からの銅の浸出回収方法
国際特許分類 C22B  15/00        (2006.01)
C22B   3/08        (2006.01)
FI C22B 15/00 105
C22B 3/08
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2016-155952 (P2016-155952)
出願日 平成28年8月8日(2016.8.8)
発明者または考案者 【氏名】中澤 廣
出願人 【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査請求 未請求
テーマコード 4K001
Fターム 4K001AA09
4K001BA03
4K001DB03
要約 【課題】強力な酸化剤ではあるが高価であるためコスト増につながる二酸化マンガンを添加することなく、比較的マイルドな条件下においても、効率よく高い収率で黄銅鉱から銅を浸出回収可能とする新しい浸出方法を提供すること。
【解決手段】黄銅鉱と炭素材との混合物を硫酸水溶液に浸漬し、前記硫酸水溶液を酸素の共存下に加熱攪拌する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
黄銅鉱から銅を浸出する方法であって、前記黄銅鉱と炭素材との混合物を硫酸水溶液に浸漬し、前記硫酸水溶液を酸素の共存下に加熱攪拌することを特徴とする黄銅鉱からの銅の浸出回収方法。
【請求項2】
前記炭素材がカーボンブラックであることを特徴とする請求項1に記載の黄銅鉱からの銅の浸出回収方法。
【請求項3】
前記硫酸水溶液のpHが、0.6以上1.2以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の黄銅鉱からの銅の浸出回収方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の黄銅鉱からの銅の浸出方法において、前記炭素材を回収し、黄銅鉱からの銅の浸出に再利用可能な循環系を構成することを特徴とする黄銅鉱からの銅の浸出回収方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、黄銅鉱からの銅の浸出回収方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、低コストで消費エネルギーが少ない湿式製錬法による銅の生産量が増加している。湿式製錬法では、酸に容易に溶ける斑銅鉱、孔雀石等の酸化銅鉱と呼ばれる銅鉱物を硫酸や塩酸等の強酸に溶解させて、銅が浸出した貴液を回収し、貴液中から有機溶媒を用いて銅のみを抽出し、電解採取によって銅カソードとして銅を得ることができる。
【0003】
しかしながら、産出量が最も多い銅鉱物である黄銅鉱等の一次硫化銅鉱の場合には、上記の酸に溶けにくいことから、従来の湿式製錬法では銅の浸出速度および銅の浸出率が著しく低下し、銅の生産効率が悪いため事業として実施されていない。
【0004】
そこで、産出量の多い黄銅鉱に適用可能な湿式製錬法の開発が望まれている。
【0005】
これまでにも、湿式製錬法の工程中において、銀イオン、黄鉄鉱、活性炭等を添加して酸化還元電位を制御することで、高温高圧条件下における黄銅鉱からの銅の浸出が促進することが報告されている。例えば、特許文献1には、高温高圧条件下において硫酸水溶液による黄銅鉱からの銅の浸出回収を行うことが提案されている。特許文献2には、酸化還元電位を制御することにより、常温、常圧条件下において黄銅鉱からの銅の浸出回収を行うことが提案されている。
【0006】
特許文献1の方法では、黄銅鉱に石炭などの炭素質物質を添加して、圧力100~3000kPa、温度90~200℃という、高温高圧条件下において塩酸水溶液による銅の浸出回収を行っている。しかしながら、このような浸出条件を整えるためには設備面での負担が大きく、コスト高となり、黄銅鉱からの銅の浸出回収方法としては実際的ではない。
【0007】
特許文献2の方法では、黄銅鉱を含む硫化銅鉱から硫酸溶液を用いて銅を浸出回収する際、硫化銅鉱にヨウ化物イオンを含む硫酸溶液と、酸化剤として二酸化マンガンを共に添加する必要がある。しかしながら、酸化剤として高価な二酸化マンガンを用いるため、依然としてコスト高となり、実操業に適用することは現実的ではなかった。また、特許文献2の方法では、必ずしも浸出回収される銅の収率が高いとは言えなかった。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】米国特許第5730776号公報
【特許文献2】特開2013-185236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、強力な酸化剤ではあるが高価であるためコスト増につながる二酸化マンガンを添加することなく、比較的マイルドな条件下においても、効率よく高い収率で黄銅鉱から銅を浸出回収可能とする新しい浸出方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下のとおりの黄銅鉱からの銅の浸出方法を提供する。
<1>黄銅鉱と炭素材との混合物を硫酸水溶液に浸漬し、前記硫酸水溶液を酸素の共存下に加熱攪拌することを特徴とする。
<2>炭素材がカーボンブラックである。
<3>硫酸水溶液のpHが、0.6以上1.2以下である。
<4>以上の発明において、炭素材を回収し、黄銅鉱からの銅の浸出に再利用可能な循環系を構成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の黄銅鉱からの銅の浸出方法によれば、強力な酸化剤ではあるが高価であるためコスト増につながる二酸化マンガンを添加することなく、比較的マイルドな条件下においても、効率よく高い収率で黄銅鉱から銅を浸出回収可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は、本発明の銅の浸出方法を適用した黄銅鉱精鉱からの銅の浸出割合と浸出温度の関係を示したグラフである。黄銅鉱精鉱には、炭素材としてカーボンブラックを添加して、硫酸水溶液で浸出した。(b)は、(a)における還元電位を示したグラフである。
【図2】図1の浸出残渣のXRDピークを示した図である。
【図3】本発明の銅の浸出方法を適用した黄銅鉱精鉱からの銅の浸出において、硫酸水溶液の初期pHが銅の浸出割合に及ぼす影響を示したグラフである。(b)は、(a)における還元電位を示したグラフである。
【図4】本発明の銅の浸出方法を適用した黄銅鉱精鉱からの銅の浸出において、パルプ濃度(黄銅鉱量)が銅の浸出割合に及ぼす影響を示したグラフである。
【図5】本発明の銅の浸出方法を適用した黄銅鉱精鉱からの銅の浸出において、エアレーションが銅の浸出割合に及ぼす影響を示したグラフである。
【図6】本発明の銅の浸出方法を適用した黄銅鉱精鉱からの銅の浸出において、浸出後の残渣に黄銅鉱精鉱と新たな浸出液を添加して、繰り返し浸出を行った場合の銅の浸出割合を示したグラフである。
【図7】(a)は、本発明の銅の浸出方法を適用した黄銅鉱精鉱からの銅の浸出において、黄銅鉱精鉱と炭素材であるカーボンブラック顆粒の接触が銅の浸出割合に及ぼす影響を示したグラフである。(b)は、(a)における還元電位を示したグラフである。グラフ中の-74+52μmとの記載は、黄銅鉱鉱石の粒径が、52μm以上74μm以下の範囲内であることを意味している。また、グラフ中の-710+500μmとの記載は、黄銅鉱鉱石の粒径が、500μm以上710μm以下の範囲内であることを意味している。
【図8】(a)は、本発明の銅の浸出方法を適用した黄銅鉱精鉱からの銅の浸出において、カーボンブラックの添加量が銅の浸出割合に及ぼす影響を示したグラフである。(b)は、(a)における還元電位を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の黄銅鉱からの銅の浸出方法を詳細に説明する。

【0014】
本発明の黄銅鉱からの銅の浸出方法は、黄銅鉱から銅を浸出する方法であって、前記黄銅鉱と炭素材との混合物を硫酸水溶液に浸漬し、前記硫酸水溶液を酸素の共存下に加熱攪拌することを特徴とする。

【0015】
本明細書において、「攪拌する」との用語は、硫酸水溶液の流動を伴う物理的な操作全般を意味しており、例えば、マグネチックスターラー等の装置を用いて攪拌する方法、攪拌翼を備えた装置等を用いて攪拌する方法、硫酸水溶液、黄銅鉱および炭素材を混入した反応容器自体を転動、振動等により攪拌する方法、気体をバブリングさせて硫酸水溶液を攪拌させる方法等が包含される。

【0016】
本発明においては、硫酸水溶液に酸素の共存下で、黄銅鉱および炭素材を添加すると、硫酸水溶液の酸化還元電位が低下し、第一に、黄銅鉱(CuFeS)が還元されて輝銅鉱(CuS)が生成すると考えられる。

【0017】
第二に、硫酸水溶液に酸素が溶存し、かつ炭素材の存在下においては、黄銅鉱より溶出したe(III)によって輝銅鉱が酸化、溶解されて、それに伴い銅が浸出する反応が生じると考えられる。

【0018】
全体では、黄銅鉱と炭素材および鉄が、硫酸水溶液中で酸化還元反応を生じ、黄銅鉱から銅が浸出回収されると考えられる。

【0019】
本発明の黄銅鉱からの銅の浸出促進方法においては、浸出液中で、黄銅鉱と炭素材の表面が相互に直接接触することが必要であると考えられる。黄銅鉱と炭素材の表面が相互に直接接触することにより、浸出液の酸化還元電位が600mV vs.SHE 以下に低下することが考えられる。浸出液の酸化還元電位が600mV vs.SHE 以下に低下することにより、黄銅鉱は、下記の式のように、まず、浸出液によって黄銅鉱より溶出したCu2+とFe2+により還元され輝銅鉱CuSを生成すると考えられる。CuSは、Fe2+の酸化により生じたFe3+により酸化溶解すると考えられる。これらの反応機構は、以下の酸化還元反応式で表すことができると考えられる。

【0020】
CuFeS2 + 3Cu2+ + 3Fe2+ → 2Cu2S + 4Fe3+ (1)
2Cu2S + 8Fe3+ → 4Cu2+ + 2So + 8Fe2+ (2)
このような反応が進行し、黄銅鉱からの銅の浸出が促進されると考えられる。

【0021】
本発明においては、黄銅鉱から銅を溶出させるための浸出液として、硫酸水溶液を用いるが、硫酸水溶液のpHとしては、例えば、pH0.6以上1.2以下の範囲が好ましく考慮される。pHが1.2を超えると、輝銅鉱の生成速度が低下し、pHが0.6を下回ると、硫酸の過剰消費や浸出後工程である溶媒抽出へ悪影響を及ぼす恐れがある。

【0022】
前記浸出液中にFe(II)が存在することにより、式(1)に示した黄銅鉱の還元および二価の鉄イオンの酸化が促進される第一の反応がスムーズに開始されると考えられる。

【0023】
一方、式(1)に示した第一の反応の開始時点において、浸出液中にFe(III)が溶解されていると、酸化還元電位が低下せず、銅の急速な浸出は起こらないが、Fe(III)の還元が終了すると、硫酸水溶液の酸化還元電位が600mVvs.SHEを下回り、銅の浸出が促進されると考えられる。

【0024】
この酸化還元反応は、従来行われている湿式製錬法による銅の浸出方法のように、強力な酸化剤ではあるが高価であるためコスト増につながる二酸化マンガンを添加することなく、比較的マイルドな条件下で進行する。

【0025】
このような反応は、酸素の共存下での硫酸水溶液中おける溶存酸素量(DO)が一定量以上の条件下において、産業上実用的な反応速度で進行することが考えられる。

【0026】
硫酸水溶液中の溶存酸素量は、黄銅鉱および炭素材を添加した硫酸水溶液を酸素の共存下に攪拌することにより調整可能である。

【0027】
上記酸素の共存下としては、例えば、純酸素ガス、空気等の酸素を含む気体が存在、溶存している状態を意味している。例えば、酸素を含む気体が封入されたガスボンベに、ホースやガラス管等の気体流路となる器具を、流量調節弁等を介して接続し、この気体流路の一端を上記硫酸水溶液中に浸漬する方法や、エアレーション用のポンプとホースやガラス管等の気体流路となる器具を接続し、この気体流路の一端を上記硫酸水溶液中に浸漬する方法等公知の方法を適用することができる。

【0028】
硫酸水溶液中の溶存酸素量(DO)としては、例えば、1.0ppm~10.0ppmの範囲が例示される。硫酸水溶液中の溶存酸素量(DO)が上記の範囲内であれば、黄銅鉱の還元および二価の鉄イオンの酸化が促進し、前記の酸化還元反応が所定の反応速度で進行する。

【0029】
前記硫酸水溶液中の溶存酸素量(DO)の測定方法としては、例えば、隔膜電極法やウインクラー法等の公知の方法を適用することができる。

【0030】
黄銅鉱および炭素材を添加した硫酸水溶液の攪拌には、前記のとおり、攪拌子とマグネチックスターラーを用いる方法や、回転軸に回転翼が設けられたプロペラ状の攪拌翼を用いる方法、黄銅鉱および炭素材を添加した硫酸水溶液を混入した反応容器自体を転動、振動させて攪拌する方法、酸素を含む気体を硫酸水溶液中に吹き込みバブリングして攪拌する方法等、公知の各種の方法を適用することができる。

【0031】
また、本発明の黄銅鉱からの銅の浸出方法においては、硫酸水溶液をその沸点未満の温度で加熱することが好ましく考慮される。硫酸水溶液をその沸点未満の温度で加熱することにより、硫酸水溶液の揮発を抑制しつつ、前記の酸化還元反応を促進することができる。加熱温度の上限としては、硫酸水溶液が沸騰しない程度の比較的マイルドな温度で加熱することが好ましく考慮される。また、加熱温度の下限としては、炭素材の種類や黄銅鉱および炭素材の添加量等によって変化するものの、例えば、40℃以上、好ましくは50℃以上であることが例示される。

【0032】
硫酸水溶液を加熱する際の熱源としては、流動可能な熱媒体や電気ヒーター等公知の方法を適用することができる。このような熱源と、硫酸水溶液を入れた反応容器を接触させるなどして硫酸水溶液を加熱することが可能である。

【0033】
本発明の原料に用いる黄銅鉱としては、特に限定されるものではなく、含有される銅鉱物の一部あるいは大部分が黄銅鉱である黄銅鉱鉱石、または黄銅鉱鉱石から浮選などによって黄銅鉱が濃縮された黄銅鉱精鉱が用いられる。

【0034】
本発明においては、黄銅鉱を粉砕、磨砕して得られる黄銅鉱粒子と炭素材粒子の表面が直接接触することによって、前記酸化還元反応が進行し、黄銅鉱の還元および黄銅鉱から溶出した二価の鉄イオンの酸化が促進すると考えられる。このため、反応系内における黄銅鉱粒子の表面積が大きいほど、後述の炭素材の粒子との接触面積が増大し、酸化還元反応の反応効率も向上する。黄銅鉱粒子の表面積を増大させる上で、粒子径を小さくすることが有効であるため、黄銅鉱はあらかじめ顆粒状あるいは粉体状に粉砕されて用いられることが好ましい。粉砕の方法としては、例えば、遊星ボールミルや攪拌ビーズミルなどの公知の粉砕方法を適用可能である。黄銅鉱粉砕物の粒子径は、特に限定されるものではないが、例えば、10μm以上250μm以下、好ましくは20μm以上100μm以下、さらに好ましくは50μm以上75μm以下のものが例示される。なお、原料に用いる黄銅鉱が黄銅鉱精鉱である場合には、既に微細な粒子となっているため、必ずしも粉砕処理は必要ではない。

【0035】
本発明においては、黄銅鉱に対して炭素材を添加する。

【0036】
本発明に用いる炭素材としては、例えば、グラファイトやカーボンブラック、カーボンナノチューブ、活性炭、木炭等が例示される。これらの炭素材は、前記酸化還元反応を促進する限りにおいて、特に制限されることなく用いられる。

【0037】
本発明においては、入手容易性、取り扱い性、そしてコスト等の観点から、炭素材がカーボンブラックであることが好ましく考慮される。カーボンブラックとしては、例えば、着色剤用カーボンブラック粉末、高導電性カーボンブラック粉末等が例示される。また、これらのカーボンブラック粉末が凝集して形成されるカーボンブラック顆粒を用いることも好ましく考慮される。

【0038】
カーボンブラックの製品は、通常、粒子径が1mm程度のビードと呼ばれる顆粒状の態様で輸送販売されることが殆どである。このような大きな粒子径を有する顆粒状とすることにより、飛散を防止することができる。上記ビードは、ドメインと呼ばれるカーボンブラックの最小単位の粒子が凝集して形成されたアグリゲート(一次凝集体)が、さらに凝集して形成されたアグロメレート(二次凝集体)の複合体である。ドメインの粒子径は、例えば、10nm~500nm程度、アグリゲートの粒子径は、例えば、50nm~1.0μm程度、アグロメレートの粒子径は、例えば、5μm~750μm程度であることが例示される。本発明においては、カーボンブラックの形態が上記のドメイン、アグリゲート、アグロメレート、ビードのいずれの形態であっても、適用可能である。

【0039】
前記炭素材の添加量としては、例えば、黄銅鉱精鉱の質量の0.1~1.0倍の範囲が例示され、好ましくは、黄銅鉱精鉱の質量の0.5倍であることが例示される。炭素材の添加量が黄銅鉱精鉱の質量の1.0倍を超えると、銅の回収コストが高くなり、炭素材の添加量が黄銅鉱精鉱の質量の0.1倍未満の場合、銅の浸出速度が遅くなる。炭素材としてカーボンブラックを用いた場合、カーボンブラックの密度が小さいため、添加量が黄銅鉱精鉱の質量の1.0倍を超えると、固形分体積が増大し、酸化還元反応を妨げるおそれがある。

【0040】
本発明においては、浸出液中の炭素材を回収し、黄銅鉱からの銅の浸出に再利用可能な循環系を構成することが好ましく考慮される。

【0041】
すなわち、浸出液中に分散あるいは沈殿した炭素材を回収して黄銅鉱とともに硫酸水溶液に添加する、またはそのまま浸出液中に残しておき、黄銅鉱および硫酸水溶液を添加することにより、炭素材を銅の浸出に再利用することができる。

【0042】
炭素材の回収は、例えば、浸出液を定性濾紙や炭素材の粒子径よりも孔径の小さな多孔膜等を用いて濾過する方法等公知の方法を各種適用することが可能である。

【0043】
本発明の黄銅鉱からの銅の浸出方法においては、黄銅鉱および炭素材の混合物を硫酸水溶液に添加しているが、炭素材と混合した黄銅鉱鉱石を積み上げ、黄銅鉱鉱石の積層体の上方から硫酸水溶液を送液することによるヒープ・リーチング法にも適用可能である。従来、ヒープ・リーチング法は、黄銅鉱を含む銅鉱石には適用が困難であったが、本発明の銅の浸出方法を応用することによって、浮遊選別のような濃縮工程を経ることなく、簡便に黄銅鉱を含む銅鉱石からの銅の浸出が可能となる。

【0044】
以下に実施例を示すが、本発明の黄銅鉱からの銅の浸出方法は、以下の実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0045】
<実施例1:加熱温度が黄銅鉱からの銅の浸出に及ぼす影響の評価実験>
実施例では、黄銅鉱として、チリのアタカマ鉱山から提供された黄銅鉱精鉱(粒子径102μm以下、銅品位28.9%)を用いた。
【実施例】
【0046】
以下の実施例においては、カーボンブラックとして、デンカブラック(電気化学工業(株)製、50%粒径 35nm)を用いた。実施例6のみ、カーボンブラック顆粒として、デンカブラック(電気化学工業(株)製、50%粒径 35nm)をアグロメレーションし、粒子径が500μm以上710μm以下のアグロメレートを使用した。なお、このアグロメレートをカーボンブラック顆粒と呼称する。
【実施例】
【0047】
浸出(リーチング)試験は200mLの硫酸水溶液(pH0.6)を入れた300mLの実験用フラスコで行った。フラスコに0.5gの黄銅鉱精鉱、0.5gのカーボンブラックをサンプルとして添加し、エアレーション用のガラス管を挿通したシリコ栓でフラスコの口を密栓した。このフラスコを30℃、40℃、50℃に保温された恒温水槽にそれぞれ浸漬し、マグネチックスターラーを用いて、200rpmで攪拌した。浸出開始から所定の間隔で、浸出液中の銅の浸出割合(%)と酸化還元電位を測定した。酸化還元電位は、銀-塩化銀参照電極(3.3N KCl)と白金電極を用いて測定し、酸化還元電位をNHE(水素標準電極)に対する値に変換した。
【実施例】
【0048】
浸出試験の最後に、浸出液を濾過し、残渣を濾別して回収し60℃で乾燥し、XRD分析を行った。
<結果1>
図1(a)に示すように、加熱温度が40℃以上では、黄銅鉱精鉱(図中ではChalcopyriteと表記)からの銅の浸出割合が増加し、温度依存的な銅の浸出促進が確認された。特に、50℃で加熱した場合、浸出開始から94時間で約90%の銅を回収することができた。特許文献2に記載された湿式製錬法においては、同程度の銅を回収するために最短でも20日程度かかるため、本発明の銅の浸出方法が極めて高効率であることが確認された。
【実施例】
【0049】
また、図1(b)に示すように、加熱温度が40℃以上である場合、酸化還元電位が600mV以下となり、銅の浸出が促進されることが確認された。
【実施例】
【0050】
一方、30℃に保温した場合、浸出開始から94時間経過後であっても、約10%の銅を回収することができるにとどまった。30℃における酸化還元電位は600mVを下回ることはなく、このため、銅の浸出割合が低い値にとどまると考えられる。
【実施例】
【0051】
図2は、図1(a)における浸出残渣のXRDピークを示している。図中(a)は30℃に保温したときのXRDピークを示しており、黄銅鉱のピークを明瞭に確認することができる。一方、図中(b)に示した、40℃で加熱後の浸出残渣のXRDピークにおいては、黄銅鉱のピークが減衰するとともに、硫黄のピークが増幅傾向を示した。さらに、図中(b)に示した、50℃で加熱後の浸出残渣のXRDピークにおいては、黄銅鉱のピークが消失し、硫黄のピークが顕著に増幅されていた。すなわち、黄銅鉱が硫酸水溶液中に溶解し、酸化還元反応の結果硫黄が生成されたことを示していると考えられる。
【実施例】
【0052】
したがって、本発明の黄銅鉱からの銅の浸出方法では、酸化剤として高価な二酸化マンガンを添加しなくとも、40℃以上の比較的マイルドな加熱により酸化還元反応が進行し、十分に銅を浸出させることができる点において、従来の湿式製錬法よりも優れている。
【実施例】
【0053】
<実施例2:黄銅鉱からの銅の浸出に及ぼすpHの影響の評価実験>
実施例2では、浸出(リーチング)試験は実施例1と同様に、200mLの硫酸水溶液pHを入れた300mLの実験用フラスコで行った。硫酸水溶液としては、pHが0.6、0.8、1.0、1.2とそれぞれ異なる硫酸水溶液を用いた。フラスコに0.5gの黄銅鉱精鉱、0.25gのカーボンブラックをサンプルとして添加し、フラスコを50℃に保温された恒温水槽にそれぞれ浸漬し、マグネチックスターラーを用いて、200rpmで攪拌した。実施例1と同様にして、浸出開始から所定の間隔で、浸出液中の銅の浸出割合(%)と酸化還元電位を測定した。
<結果2>
図3(a)に示すように、硫酸水溶液のpHが低いほど、銅の浸出割合が上昇することが確認された。pHが0.8以下の硫酸水溶液では、浸出開始から94時間で約90%の銅を回収することができた。pH0.8における銅の浸出割合の変化とpH0.6における銅の浸出割合の変化を比較すると、pH0.6では、特に浸出開始30時間後から70時間後における銅の浸出割合のグラフの立ち上がり方が急であり、浸出開始から70時間で約80%の銅を回収することができた。
【実施例】
【0054】
また、図3(b)に示すように、硫酸水溶液のpHが1.2以下である場合、pHの値にかかわらず酸化還元電位が600mV以下となり、pH依存的な銅の浸出が促進されることが確認された。
【実施例】
【0055】
<実施例3:黄銅鉱からの銅の浸出に及ぼす黄銅鉱量の影響の評価実験>
実施例3では、浸出(リーチング)試験は、pH0.6の硫酸水溶液200mLを入れた300mLの実験用フラスコで行った。黄銅鉱精鉱の添加量を1g、2g、4gとそれぞれ変化させつつ、黄銅鉱精鉱/カーボンブラックの質量比が常に2となるようにカーボンブラックを添加した。フラスコを50℃に保温された恒温水槽にそれぞれ浸漬し、マグネチックスターラーを用いて、200rpmで攪拌した。実施例1と同様にして、浸出開始から所定の間隔で、浸出液中の銅の浸出割合(%)を測定した。
<結果3>
図4に示すように、黄銅鉱精鉱の添加量が増大するにつれて浸出時間は長くなるものの、90%程度の銅を回収可能であることが確認された。
【実施例】
【0056】
<実施例4:黄銅鉱からの銅の浸出に及ぼすエアレーションの影響の評価実験>
実施例4では、浸出(リーチング)試験は、pH0.6の硫酸水溶液を入れた300mLの実験用フラスコで行った。三角フラスコ内の浸出液を流量90mL/minの窒素ガス(N)で1時間エアレーションした後、0.5gの黄銅鉱精鉱と0.25gのカーボンブラックを添加し、三角フラスコを50℃の高温水槽に浸漬して、マグネチックスターラーで攪拌しつつNをエアレーションした状態で浸出試験を開始した。浸出開始から94時間後に、Nのエアレーションを停止し、5分間空気をエアレーションした後、実施例1と同様にしてリーチング試験を再開した。
<結果4>
図5に示すように、Nをエアレーションしている間は、黄銅鉱からの銅の浸出はほとんど促進されなかったが、空気のエアレーション後は、比較対象と同様に銅の浸出が促進されることが確認された。
【実施例】
【0057】
このため、本発明の黄銅鉱からの銅の浸出促進方法においては、浸出液中に空気を吹き込むことにより、比較的マイルドな加熱条件であっても、銅の浸出が促進されることが確認された。
【実施例】
【0058】
<実施例5:浸出残渣中のカーボンブラックを用いた黄銅鉱の浸出実験>
実施例5では、浸出(リーチング)試験は、pH0.6の硫酸水溶液を200mL入れた300mLの実験用フラスコで行った。フラスコに、0.5gの黄銅鉱精鉱、0.25gのカーボンブラックをサンプルとして添加し、50℃に保温された恒温水槽にそれぞれ浸漬し、マグネチックスターラーを用いて、200rpmで攪拌した。1回目のリーチング試験の終了後、デカンテーションによって三角フラスコから浸出液を取り除き、フラスコ中に残され浸出残渣に、0.5gの黄銅鉱精鉱と新たな浸出液としてpH0.6の硫酸水溶液を200mL添加して、1回目のリーチング試験と同様にリーチング試験を行った。さらに、2回目のリーチング試験の終了後、2回目のリーチング試験と同様の操作を繰り返し、3回目のリーチング試験を行った。1回目から3回目のリーチング試験において、実施例1と同様にして、浸出開始から所定の間隔で、浸出液中の銅の浸出割合(%)と酸化還元電位を測定した。
<結果5>
図6に示すように、浸出残渣中のカーボンブラックを炭素材として利用した繰り返し浸出では、浸出工程の繰り返し数を重ねても黄銅鉱からの銅の浸出割合に大きな変化は認められなかった。したがって、本発明の黄銅鉱からの銅の浸出方法においては、カーボンブラックの再利用が可能である。
【実施例】
【0059】
このため、浸出に用いる容器から浸出液を取り除き、新たな黄銅鉱と浸出液を供給可能な構成を備える浸出系を構成することにより、黄銅鉱からの銅の浸出を連続的に行うことができる循環系とすることも可能であると考えられる。
【実施例】
【0060】
<実施例6:黄銅鉱とカーボンブラック顆粒の接触が黄銅鉱からの銅の浸出に及ぼす影響の評価実験>
実施例6では、浸出(リーチング)試験は、pH0.6の硫酸水溶液を200mL入れた300mLの実験用フラスコで行った。フラスコに、実施例1から6でも使用した粒子径500μm以上710μm以下のカーボンブラック顆粒0.25gを目開き20μmの網布でできた袋に入れて浸出液に添加し、さらに粒子径52μm以上74μm以下の黄銅鉱精鉱0.5gを添加した。50℃に保温された恒温水槽にフラスコを浸漬し、マグネチックスターラーを用いて、200rpmで攪拌した。浸出開始から所定の間隔で、浸出液中の銅の濃度(mg/L)と酸化還元電位を測定した。
【実施例】
【0061】
なお、比較対象として、浸出液中で黄銅鉱とカーボンブラック顆粒が直接接触した状態で浸出試験を行った結果を示す。
<結果6>
図7(a)に示すように、カーボンブラック顆粒を袋に入れた状態で浸出液中に添加した場合、袋の網布の目開きが小さいため、カーボンブラック顆粒と黄銅鉱との直接接触が起こらず、黄銅鉱からの銅の浸出はほとんど確認されなかった。
【実施例】
【0062】
また、図7(b)に示すように、浸出液の酸化還元電位が600mVを下回らないことも確認された。
【実施例】
【0063】
このため、本発明の黄銅鉱からの銅の浸出促進方法においては、黄銅鉱と炭素材の表面との直接接触が必須であると考えられる。
【実施例】
【0064】
<実施例7:カーボンブラックの添加量が黄銅鉱からの銅の浸出に及ぼす影響の評価実験>
実施例7では、浸出(リーチング)試験は、pH0.6の硫酸水溶液200mLを入れた300mLの実験用フラスコで行った。黄銅鉱精鉱0.5gと、カーボンブラックをそれぞれ0g、0.05g、0.1g、0.25g、0.5g添加した。フラスコを50℃に保温された恒温水槽にそれぞれ浸漬し、マグネチックスターラーを用いて、200rpmで攪拌した。実施例1と同様にして、浸出開始から所定の間隔で、浸出液中の銅の浸出割合(%)を測定した。
<結果7>
図8(a)に示すように、カーボンブラックを添加しなかった場合、黄銅鉱からの銅の浸出はほとんど促進されなかった。一方、カーボンブラックを添加した場合、添加量依存的に黄銅鉱からの銅の浸出割合が増大することが確認された。特に、0.1g以上のカーボンブラックを添加した浸出液中では、浸出開始から94時間後に銅の約90%が回収された。
【実施例】
【0065】
また、図8(b)に示すように、カーボンブラックを添加しなかった場合、浸出液の酸化還元電位が600mVを下回ることはなく、カーボンブラックの添加量依存的に急激に浸出液中の酸化還元電位が600mV以下になることが確認された。なお、浸出開始から74時間経過後に浸出液の酸化還元電位が急激に上昇し、600mVを上回るのは、浸出液中のFe(III)濃度の増加によるものと考えられる。
【実施例】
【0066】
以上の実施例1~7の結果から明らかなように、本発明の黄銅鉱からの銅の浸出方法は、強力な酸化剤ではあるが高価であるためコスト増につながる二酸化マンガンを添加することなく、比較的マイルドな条件下においても、効率よく高い収率で黄銅鉱から銅を浸出回収可能とする全く新しい技術である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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