TOP > 国内特許検索 > 貼付型人工皮膚製剤 > 明細書

明細書 :貼付型人工皮膚製剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6455427号 (P6455427)
登録日 平成30年12月28日(2018.12.28)
発行日 平成31年1月23日(2019.1.23)
発明の名称または考案の名称 貼付型人工皮膚製剤
国際特許分類 A61F   2/10        (2006.01)
A61L  15/58        (2006.01)
C07K  14/78        (2006.01)
FI A61F 2/10
A61L 15/58
C07K 14/78
請求項の数または発明の数 8
全頁数 13
出願番号 特願2015-524052 (P2015-524052)
出願日 平成26年6月24日(2014.6.24)
国際出願番号 PCT/JP2014/066635
国際公開番号 WO2014/208525
国際公開日 平成26年12月31日(2014.12.31)
優先権出願番号 2013136118
優先日 平成25年6月28日(2013.6.28)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成29年5月29日(2017.5.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504209655
【氏名又は名称】国立大学法人佐賀大学
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】青木 茂久
【氏名】竹澤 俊明
【氏名】宮崎 歩
【氏名】平山 博
個別代理人の代理人 【識別番号】110000590、【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
審査官 【審査官】小原 一郎
参考文献・文献 実公昭63-014857(JP,Y2)
特開平05-147395(JP,A)
国際公開第2011/154687(WO,A1)
特許第4677559(JP,B2)
特開2004-207600(JP,A)
実公昭61-002575(JP,Y2)
特開2013-042734(JP,A)
特開2001-104346(JP,A)
特開昭52-126089(JP,A)
特表2008-507341(JP,A)
国際公開第2012/163532(WO,A2)
TAKEZAWA,Toshiaki,Collagen Vitrigel: A Novel Scaffold That Can Facilitate a Three-Dimensional Culture for Reconstructing Organoids,Cell Transplantation,米国,COGNIZANT COMMUNICATION COMPANY,2004年,Vol.13,463-473
調査した分野 A61F 2/10
A61M 37/00
A61L 15/58
C07K 14/78
特許請求の範囲 【請求項1】
少なくとも粘着性フィルム、接着防止シートおよびコラーゲンビトリゲル膜乾燥体をこの順で含み、前記接着防止シートは、前記コラーゲンビトリゲル膜乾燥体が粘着性フィルムの粘着層に付着することを防止するのに十分な大きさで、コラーゲンビトリゲル膜乾燥体の位置と対応する前記粘着性フィルムの粘着剤層に貼付されてなり、前記コラーゲンビトリゲル膜乾燥体は、貼付時は、前記接着防止シート面に固定、保持されながら、前記粘着フィルムの剥離時には前記接着防止シートから脱着容易とされた貼付型人工皮膚製剤であって、貼付時の前記コラーゲンビトリゲル膜乾燥体の前記接着防止シート面への固定、保持が、次の(1)または(2)のいずれかの手段、
(1)前記コラーゲンビトリゲル膜乾燥体の下に設けられ、その外周部で前記粘着性フィ
ルムの粘着剤層と接着された、窓部を有する額縁状保持シートの窓部の内周部もしく
はこれに設けられた突起による固定、保持、
(2)前記コラーゲンビトリゲル膜乾燥体の、弱い接着力により前記接着防止シートに貼
付することによる固定、保持。
【請求項2】
接着防止シートが片面に剥離処理を施したプラスチックシートである請求項1に記載の貼付型人工皮膚製剤。
【請求項3】
剥離処理を施したプラスチックシートが、シリコーンコーティングを施したポリエチレンテレフタレートシートである請求項記載の貼付型人工皮膚製剤。
【請求項4】
コラーゲンビトリゲル膜乾燥体が、アテロコラーゲンビトリゲル膜乾燥体である請求項1ないしの何れかの項記載の貼付型人工皮膚製剤。
【請求項5】
皮膚欠損部に容易に貼りつけることが可能であり、貼り換えの際にもコラーゲンビトリゲル膜が粘着性フィルムおよび接着防止シートに接着することなく創傷部に遺残することで、二次損傷を防止する機能を付与することを特徴とする請求項1ないしの何れかの項記載の貼付型人工皮膚製剤。
【請求項6】
創傷部の湿潤環境を粘着性フィルムが保持しつつ、コラーゲンビトリゲル膜乾燥体に含まれるコラーゲン成分が表皮細胞へ足場を供給しつつ、筋線維芽細胞の出現を抑制することで瘢痕形成を抑制して早期の治療を達成することを特徴とする請求項1ないしの何れかの項記載の貼付型人工皮膚製剤。
【請求項7】
コラーゲンビトリゲル膜乾燥体が、3型コラーゲンを含むアテロコラーゲンより作成されたものであり、コラーゲンビトリゲル膜が創傷部へ移行後も長時間遺残し、かつ異物反応を惹起しないことを特徴とする請求項1ないしの何れかの項記載の貼付型人工皮膚製剤。
【請求項8】
コラーゲンビトリゲルが含有する3型コラーゲンの作用より、創傷部周辺の線維芽細胞におけるTGF-βとCTGFの発現を抑制することにより、線維芽細胞から筋線維芽細胞への分化転換を抑制することを特徴とする請求項記載の貼付型人工皮膚製剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は貼付型人工皮膚製剤に関し、更に詳細には、コラーゲンビトリゲル膜乾燥体を使用し、患部に容易に貼付できると共に、当該コラーゲンビトリゲル膜乾燥体がある程度患部に融着した後にこれをカバーした粘着性の材料を剥離する場合でもコラーゲンビトリゲル膜に損傷を与えることのない貼付型人工皮膚製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
熱傷などの創傷で皮膚全層が欠損した場合、表皮細胞の再生が最も重要であるが、表皮細胞の再生には、その支持細胞である真皮内の線維芽細胞の再生が必要である。それと同時に、線維芽細胞は真皮内の細胞外マトリックス、即ちコラーゲン産生を担い、微小環境を調整する。通常、創部では線維芽細胞が筋線維芽細胞へ形質転換し、コラーゲン産生を行う。但し、この筋線維芽細胞は非常に強い収縮能を有しており、創部に病的な収縮を来たしケロイドや肥厚性瘢痕を形成するという原因となる。また、熱傷による真皮深部までの皮膚組織欠損の場合も、外傷と同様の機序で、治癒組織に瘢痕を形成する場合があり、特に、女性と小児の整容性に関して深刻なケースが多くみられる。創部治癒後の整容性についての改善が望まれているが、解決法は確立されていない。
【0003】
現在、創傷治癒を促進しながら、瘢痕形成を抑制するために人工皮膚が使用されており、例えば、スポンジ状のコラーゲンとシリコーン膜を組み合わせたペルナック(スミス・アンド・ネフュー;smith & nephew)や、テルダーミス(オリンパステルモバイオマテリアル株式会社)等が提供されている。
【0004】
しかしながら、既存の人工皮膚はスポンジ状で厚みがある為、創部への密着性に乏しく、創部に固定する際に縫合等の煩雑な外科的処置が必要である。また、製品の厚みにより、浸出液のドレナージ処理が困難であるという問題も有していた。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】WO2012/026531 A1
【0006】

【非特許文献1】「生物工学会誌」、2013年、第4号、第214-217頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記実情においてなされたものであり、創傷部に人工皮膚としてコラーゲンビトリゲル膜乾燥体を処置するにあたって縫合などの必要性がなく、また、浸出液による汚染等が生じにくく、その取り替えによる二次損傷のリスクもない人工皮膚製剤の提供をその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、従来の人工皮膚に関しその改良を検討した結果、まず皮膚欠損創傷部にコラーゲンビトリゲル膜を乾燥することで得られるその乾燥体(コラーゲンキセロゲル膜)とポリ塩化ビニリデン製ラップを組み合わせたものを縫合固定することで、創傷治癒の促進とともに瘢痕形成を抑制しうることを知った。
【0009】
そして、この方法をより簡単に実施するために、ラップフィルムに粘着剤層を設け、これにコラーゲンビトリゲル膜乾燥体を載せ、皮膚欠損創傷部をカバーするようにした。この方法では、操作性は容易となったが、貼付後、ラップフィルムを剥がす際にコラーゲンビトリゲルも組織から剥離してしまい、ビトリゲル内外に遊走、侵入、増殖してきた再生組織を損傷し、創部の再生を障害する可能性が明らかとなった。
【0010】
そこで、皮膚欠損部へコラーゲンビトリゲル膜乾燥体を安定して固定すると共に、粘着性フィルム剥離の際も、貼付したコラーゲンビトリゲル膜に損傷を与えない方法について鋭意検討を行った。その結果、コラーゲンビトリゲル膜乾燥体と粘着性フィルムの粘着剤層との間に粘着防止フィルムを挿入することで上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち本発明は、少なくとも粘着性フィルム、接着防止シートおよびコラーゲンビトリゲル膜乾燥体をこの順で含み、前記接着防止シートは、コラーゲンビトリゲル膜乾燥体が粘着性フィルムの粘着層に付着することを防止するのに十分な大きさで、コラーゲンビトリゲル膜乾燥体の位置と対応する粘着性フィルムの粘着剤層に貼付されてなり、コラーゲンビトリゲル膜乾燥体は、貼付時は、接着防止シート面に固定、保持されながら、粘着フィルムの剥離時には接着防止シートから脱着容易とされたことを特徴とする貼付型人工皮膚製剤である。
【0012】
また本発明は、貼付時の前記コラーゲンビトリゲル膜乾燥体の接着防止シート面への固定、保持が、前記コラーゲンビトリゲル膜乾燥体の下に設けられ、その外周部で前記粘着性フィルムの粘着剤層と接着された、窓部を有する額縁状保持シートの窓部の内周部もしくはこれに設けられた突起により行われるものである上記貼付型人工皮膚製剤である。
【0013】
更に本発明は、貼付時のコラーゲンビトリゲル膜乾燥体の接着防止シートへの固定、保持が、弱い接着力により前記コラーゲンビトリゲル膜乾燥体を、前記接着防止シートに貼付することにより行われるものである上記貼付型人工皮膚製剤である。
【0014】
更にまた本発明は、貼付時のコラーゲンビトリゲル膜乾燥体の接着防止シートへの固定、保持が、前記コラーゲンビトリゲル膜乾燥体と前記接着防止シートの間の物理的固着手段により行われるものである上記貼付型人工皮膚製剤である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の貼付型人工皮膚製剤(以下、「人工皮膚」と略称する)は、コラーゲンビトリゲル膜を乾燥させることにより得られる、高密度コラーゲン線維の高凝集性膜で、その厚みも数十~数百μm(マイクロメートル)程度であるコラーゲンビトリゲル膜乾燥体(コラーゲンキセロゲル膜ともいう)を粘着性フィルムと一体化した絆創膏タイプのものであるため、縫合等の処置を必要とせず、従来品と比較してその取扱いは極めて容易である。更に、所定時間使用後に粘着性フィルムを剥がす際に、コラーゲンビトリゲル膜が同時に剥離することはなく、ビトリゲル内外に浸潤、増殖してきた細胞成分を障害することによる二次損傷による創部治癒の遅延を回避できるものである。
【0016】
本発明の人工皮膚は、前記のように貼付時はこの粘着防止フィルム上に固定されたコラーゲンビトリゲル膜乾燥体が保持され、また、粘着性フィルムの剥離時も、粘着防止フィルムがコラーゲンビトリゲル膜と粘着剤成分との接着を防止するため、ビトリゲルを含む再生組織に損傷を与えないため、熱傷、褥瘡および外傷皮膚欠損などの皮膚欠損部に容易に貼り付けることが可能であり、皮膚欠損部の治療に幅広く利用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明人工皮膚の第一態様の例を、貼付される側(コラーゲンビトリゲル膜側)から見た平面図である。
【図2】図1の人工皮膚の断面を模式的に示した図である。下側が貼付される側である。
【図3】図1、図2の人工皮膚の構成を示す図面である。
【図4】額縁状保持シートの別の例を示す図面である。
【図5】本発明人工皮膚の第2態様の例の構成を示す図面である。
【図6】本発明人工皮膚貼付群の粘着性フィルム剥離後の再生皮膚組織の断面写真である(×40)。
【図7】図6の再生皮膚組織での筋線維芽細胞マーカー(α-SMA)の発現を示す図である。点線より上のコラーゲンビトリゲル周辺では、α-SMAの高い発現を示す筋線維芽細胞が見られるが、点線より下のコラーゲンビトリゲル内部では、線維芽細胞が多く見られる。
【図8】比較である2層型群の粘着性フィルム剥離後の再生皮膚組織の状態を示す断面写真である(×40)。
【図9】線維芽細胞からのTGF-βの発現を示す図面である。右側が本発明人工皮膚貼付群、左側が2層型貼付群である。
【図10】線維芽細胞からのCTGFの発現を示す図面である。右側が本発明人工皮膚貼付群、左側が2層型貼付群である。
【発明の実施の形態】
【0018】
本発明の人工皮膚は、その貼付時には、これに含まれるコラーゲンビトリゲル膜乾燥体(以下、「コラーゲンビトリゲル乾燥膜」という)が接着防止シートに固定、保持されながら、コラーゲンビトリゲル膜が創傷部組織に融着した後、粘着フィルムの剥離する際にはこれが接着防止シートから簡単に脱着可能としたものである。
【0019】
具体的な本発明の人工皮膚の態様の一例としては、粘着性フィルム、接着防止シート、コラーゲンビトリゲル乾燥膜および額縁状保持シートをこの順で含み、前記接着防止シートは、コラーゲンビトリゲル乾燥膜とほぼ同一の面積で、コラーゲンビトリゲル乾燥膜の位置と対応する粘着性フィルムの粘着剤層に貼付されてなり、前記額縁状保持シートは、窓部を有し、かつ当該額縁状保持シートはその外周部で粘着性フィルムの粘着剤層と接着され、当該窓部の内周部もしくはこれに設けられた突起により前記コラーゲンビトリゲル乾燥膜を保持することを特徴とする貼付型人工皮膚製剤(以下、「第一態様発明」という)を挙げることができる。

【0020】
また、本発明の人工皮膚の別の態様の例としては、粘着性フィルム、接着防止シートおよびコラーゲンビトリゲル乾燥膜をこの順で含み、前記接着防止シートは、コラーゲンビトリゲル乾燥膜とほぼ同一の面積で、前記コラーゲンビトリゲル乾燥膜の位置と対応する粘着性フィルムの粘着剤層に貼付されてなり、かつ、前記コラーゲンビトリゲル乾燥膜は、弱い接着力により前記接着防止シートに貼付、保持されたことを特徴とする貼付型人工皮膚製剤(以下、「第二態様発明」という)を挙げることができる。

【0021】
以下、本発明人工皮膚について、そのいくつかの実施態様例を示す図面と共に、本発明を更に詳しく説明する。図1は本発明人工皮膚の第一態様発明を示す平面図、図2はそのA-A’の断面図、図3はその構成を示す図面である。各図中、1は人工皮膚、2は粘着性フィルム、3は接着防止シート、4はコラーゲンビトリゲル乾燥膜、5は額縁状保持シート、6は粘着剤層、7は窓部をそれぞれ示す。
【0022】
図1ないし図3に示すように、第一態様発明では、コラーゲンビトリゲル乾燥膜4は、接着防止シート3を介して粘着性フィルム2の接着剤層6側に置かれる。
【0023】
本発明人工皮膚1において、基体として使用され、コラーゲンビトリゲル乾燥膜4を覆う粘着性フィルム2は、ヒトの皮膚に貼付、使用できるものであれば、特段制約されるものでなく、一般的な貼付剤に使用される基材、粘着剤の組み合わせを利用することができる。このような粘着性フィルムの一例としては、ポリエーテル・ポリアミド共重合体のようなポリウレタンシートの一面に粘着剤としてアクリル系粘着剤や、シリコーン系粘着剤を塗布して粘着剤層6を形成し、その反対側をポリプロピレン等の保護フィルムでカバーした、透明なドレッシングテープ等を挙げることができる。このようなドレッシングテープとしては、例えば、「ユーテープ」(祐徳薬品工業株式会社製)等として市販されているものを使用することもできる。
【0024】
また、本発明の人工皮膚1で使用されるコラーゲンビトリゲル乾燥膜4は、前記したように、高密度コラーゲン線維の薄膜乾燥体である。このものは、ブタ、ウシ等の動物由来のアテロコラーゲンを原料に、特許文献1に記載の方法により作成できるものである。本発明で用いるコラーゲンビトリゲル乾燥膜4としては、上記のアテロコラーゲンを原料とするアテロコラーゲンビトリゲル膜乾燥体が好ましく、特に、3型コラーゲンを1~25%程度、好ましくは10%前後で含有するアテロコラーゲンビトリゲル膜乾燥体が瘢痕抑制が優れているという理由で好ましい。
【0025】
本発明人工皮膚1では、上記のコラーゲンビトリゲル乾燥膜4を所望の形状、所望の大きさとして利用することができる。例えばその形態は、創傷部の形態に応じて、正方形ないし長方形、円形ないし楕円形、雲形等種々のものとすることができる。またその大きさも、創傷部の大きさに応じて適宜決めることができる。
【0026】
また、接着防止シート3は、上記コラーゲンビトリゲル乾燥膜4が、粘着性フィルム2の粘着剤層6と接着することを防止するために、これらの間に設けられる。このもの自体は粘着剤層6には接着し、コラーゲンビトリゲル膜乾燥体4とは実質的に接着しないものであり、このような性質を有するシートであれば、特段材質に制限なく使用することができる。このような接着防止シート3の一例としては、片面を剥離処理したプラスチックシートが挙げられ、特に好ましいものとしては、シリコーンコートしたPETシートが挙げられる。

【0027】
この接着防止シート3は、その形状がコラーゲンビトリゲル乾燥膜4と実質的に同一であり、これが粘着性フィルムの粘着層に付着することを防止するのに十分な大きさであれば良い。より具体的には、その大きさ(面積)はコラーゲンビトリゲル膜乾燥体4と同一か、これより3~10%程度大きいものであることが好ましい。
【0028】
このように接着防止シート3の形状および大きさが限定される理由は、その大きさが小さすぎると、コラーゲンビトリゲル乾燥膜4が接着防止シート3からはみ出した場合には、コラーゲンビトリゲル乾燥膜4が粘着性フィルム2と接着してしまい、粘着性フィルム2を剥がすときに同時に剥がれる問題が生じるためである。また、大きすぎる場合は、粘着性フィルム2後記する額縁状シート5外周部との接着面積が小さくなり、接着性の面での問題が生じるためである。

【0029】
更に、第一態様発明では、コラーゲンビトリゲル乾燥膜4の接着防止シート3の反対側に額縁状保持シート5が設けられる。この額縁状保持シート5の形状は、長方形、正方形、楕円形、円形等とすることができ、また窓部7の形状もコラーゲンビトリゲル乾燥膜4の形状に合わせて、長方形、正方形、楕円形、円形等とすることができる。

【0030】
長方形である額縁状保持シート5の一例は、図1に示すように、中央に長方形の窓部7を有する形状で、その外周部において粘着性フィルム2の粘着剤層6に接着されているものである。このものは、図1、2のようにその内周部(窓部側)でコラーゲンビトリゲル乾燥膜4を保持する機能を有する。すなわち、額縁状保持シート5の外周部が固定された状態で、コラーゲンビトリゲル乾燥膜4をその内周部により挟み、押さえることで非接着的に固定するものである。このため、前記のように額縁状保持シート5の窓部7は、コラーゲンビトリゲル膜乾燥体4の形状と相似形であることが必要である。

【0031】
上記額縁状保持シート5によるコラーゲンビトリゲル乾燥膜4の保持は、図1ないし3の態様では、コラーゲンビトリゲル乾燥膜4より小さな窓部7の近傍(内周部)で保持する。また、額縁状保持シート5の別の一例は、図4に示すように、コラーゲンビトリゲル乾燥膜4より大きな窓部7に、突出部8を複数個設けたものである。この態様の額縁状保持シート5では、この突出部8でコラーゲンビトリゲル乾燥膜4を保持することができる。
【0032】
前記、窓部7の内周部でコラーゲンビトリゲル乾燥膜4を保持、固定する図1ないし図3の態様においては、コラーゲンビトリゲル乾燥膜4の大きさに対する、額縁状保持シート5の窓部7、外枠の大きさおよび接着防止シート3の大きさの関係が重要である。
【0033】
すなわち、図3における額縁状保持シート5の対応する窓部7の長さ(b)は、コラーゲンビトリゲル乾燥膜4の一辺の長さ(a)より短くなければならない。これは、額縁状保持シート5の窓部7の内周部でコラーゲンビトリゲル膜4の脱落を防ぐ必要があるためで、必ず、a>bでなければならない。また、上でも述べたが、額縁状保持シート5の外周の辺の長さ(c)は、少なくとも外周の一部が粘着フィルム2の接着剤層6に接着、固定される必要があるため、コラーゲンビトリゲル膜4の辺(a)より長くならなければならない。すなわち、c>aでなければならない。なお、図3では、コラーゲンビトリゲル乾燥膜4が長方形である場合について、水平方向についてのみ示しているが、上下方向についても同じ関係が成立する必要がある。また、形状が円形の場合は、その直径について同様な関係を満たすことが必要である。
【0034】
具体的なaの長さに対するbの長さは、額縁状保持シート5として使用する材料にもよるが、5~15%程度短いものが好ましい。bの長さが5%未満では、貼付の際にコラーゲンビトリゲル乾燥膜4が脱落しやすくなるおそれがあり、また、15%を超える場合は、人工皮膚の粘着性フィルム2を剥がす際に、この部分がコラーゲンビトリゲル膜中に残りやすくなるので好ましくない。また、aに対するcの長さは、2~5%程度大きいことが望ましい。
【0035】
また、図3の接着防止シート3の辺の長さは、コラーゲンビトリゲル乾燥膜4の辺の長さaと同一であるか、これより若干長いこと、すなわちa≦dであることが必要である。これは、理論的にはa=dで粘着性フィルムの粘着剤層と、コラーゲンビトリゲル乾燥膜4の接着を防ぐことが可能であるが、実際の製造工程においては、若干の余裕を見る必要があるため、a<dの方が好ましい。この場合のdの長さは、aより2~5%程度長ければ十分である。

【0036】
なお、額縁状保持シート5として図4のような形状のものを使用した場合は、上記のaとcの関係を満たす必要はないが、この場合は少なくとも突起部8の間隔(e)が、コラーゲンビトリゲル乾燥膜4を保持できる程度にaより小さくなければならない。
【0037】
以上説明した額縁状保持シート5は、上記の保持機能を有するため、ある程度の強さを有する材質であることが望ましく、例えば、PET等のシートを利用することができる。また、使用後剥離するに際し、コラーゲンビトリゲル膜から簡単に剥離できるよう、コラーゲンビトリゲル乾燥膜4側を剥離処理しておくことが好ましい。
【0038】
次に本発明人工皮膚の第二態様発明について、図5を用いて説明する。図5中、1ないし4および6は、図1ないし3と同じであり、9は、弱粘着性部(点状塗布部)を示す。
【0039】
本態様の人工皮膚は、粘着性フィルム2、接着防止シート3およびコラーゲンビトリゲル乾燥膜4より構成され、第一態様で含まれていた、額縁状保持シート5は必要としない。
【0040】
その代わり、この態様では接着防止シート3のコラーゲンビトリゲル乾燥膜4側に、貼付の際にコラーゲンビトリゲル乾燥膜4を適度な粘着性で保持することができると共に、粘着性フィルム2を剥離する時には、コラーゲンビトリゲル膜から簡単に外れる程度の弱い粘着性を有する弱粘着性部9が設けられている。
【0041】
図5では、弱粘着性部9は、粘着剤を点状に塗布することで形成されているが、これに限らず、線状に塗布して形成しても良いし、粘着性が極めて低い粘着剤であれば、全面に塗布しても良い。要するに、弱粘着性部9に求められる粘着力は、第二態様の人工皮膚1を創傷部に貼付するときには、コラーゲンビトリゲル乾燥膜4が接着防止シート3から脱落またはずれ動くことがない程度の粘着性で、しかも創傷部の回復後に全体を覆っている粘着性フィルム2を剥がす際は、コラーゲンビトリゲル膜が接着防止シート3から極めて容易に剥がれる程度のものであれば良い。このような粘着剤の例としては、好ましくは、生体適合性を有する粘着剤、更に好ましくはコラーゲンビトリゲル乾燥体と相性の良いにかわ系粘着剤(ゼラチン)がある。また、粘着剤を使用せずに弱粘着性を持たせる方法もある。つまり、シリコンコートしたPETの上にコラーゲンビトリゲルの水和物を重層、乾燥させる手法である。両者は適度の接着性を維持することができる。
【0042】
更に、上記第二態様の変形として、コラーゲンビトリゲル乾燥膜4の接着防止シート3への固定、保持を、コラーゲンビトリゲル乾燥膜4と接着防止シート3の間の物理的固着手段により行なった貼付型人工皮膚製剤を挙げることができる(図示せず)。
【0043】
この態様は、第二態様の貼付の際にコラーゲンビトリゲル乾燥膜4を保持でき、剥離する時には、コラーゲンビトリゲル膜から簡単に外れる程度の弱い粘着性を有する弱粘着性部9の代わりに、例えば、複数の針等による針穿や、複数の突起を有する金型での部分圧縮等の物理的固着手段で、コラーゲンビトリゲル乾燥膜4と接着防止シート3を圧着し、固定、保持するものである。この場合も、第二態様と同様、人工皮膚1を創傷部に貼付するときには、コラーゲンビトリゲル膜4が接着防止シート3から脱落等することがない程度の強さで、粘着性フィルム2を剥がす際は、コラーゲンビトリゲル膜が接着防止シート3から極めて容易に剥がれる程度の強さの固着で良い。
【0044】
以上説明した本発明人工皮膚1の大きさには、特段制約はないが、例えば、一般的に使用される長方形とした場合の全体の大きさ(粘着性フィルム2の大きさ)として、60~200mm×60~220mm程度であり、これに使用されるコラーゲンビトリゲル乾燥膜4の大きさとして、25~50mm×25~50mm、額縁状保持シート5の外形の大きさとして、30~60mm×30~60mm程度であることが好ましい。また、円形状等、他の形状とする場合も、これに準じればよい。
【0045】
本発明の人工皮膚1は、最終的に粘着性フィルム2の粘着剤層6全面に渡り、内側をシリコーンコーティングなどで剥離処理した剥離紙(図示せず)等を貼り合わせることで、コラーゲンビトリゲル乾燥膜4および存在する場合は額縁状保持シート5をカバーし、最終的な形態とすることができる。このように剥離紙を貼り合わせることで、粘着性フィルム2の粘着剤層6を保護すると共に、額縁状保持シート5がある場合はそれを動きにくくし、コラーゲンビトリゲル乾燥膜4を安定に保持することができる。
【0046】
そして、上記の最終形態のものを、例えば、滅菌紙で包装し、滅菌後アルミパック等に封入して最終的な製品とすることができる。なお、滅菌方法としては、EOG(エチレンオキサイドガス)滅菌や電子線滅菌を行うことができる。EOG滅菌と電子線滅菌を比較すると、創部縮小率は同等であるが、組織遺残率はEOG滅菌の方が高く優れていることが確認されている。また、筋線維芽細胞出現率及び細胞遊走率においては、EOG滅菌の方が、電子線滅菌よりも低く、EOG滅菌は筋線維芽細胞の出現を抑制する点において優れていることが確認されている。しがたって、滅菌方法としては、好ましくは、EOG滅菌である。
【0047】
以上説明した本発明の人工皮膚は、熱傷、褥瘡、外傷性皮膚欠損などに起因する皮膚欠損創傷部に容易に貼り付けることが可能であり、貼付された粘着性フィルムが創傷部の湿潤環境を保持しながら、コラーゲンビトリゲル乾燥膜4に含まれるコラーゲン成分が再生する表皮細胞へ足場を供給しつつ、筋線維芽細胞の出現を抑制することで瘢痕形成を抑制し、皮膚再生を促進する。
【0048】
そして、創傷部から粘着性フィルム2を剥がす際も、コラーゲンビトリゲル膜と粘着性フィルム2の粘着剤層6の間に接着防止シート3が存在するため、コラーゲンビトリゲル膜は粘着性フィルム2に接着することなく、創傷部に遺残することで、二次損傷を防止することができるのである。
【0049】
このような機能を有する本発明の人工皮膚は、創傷の新しい治療方法を提供するものであり、広く利用されることが期待できる。この具体的な使用方法の一例を、態様1発明について示せば次の通りである。
【0050】
[ 使用する前の準備 ]
(1) 清潔な環境で外装を開封し、アルミパックから滅菌紙包装を取り出す。
(2) 無菌的に滅菌紙から本体を取り出し、無菌容器に入れておく。
(3) 処置をする患部の大きさにあうだけのビトリゲルの大きさに見合った個数を準備する。
【0051】
[ 貼付方法 ]
(1) 患部のデブリードマンを十分に施したあと、コラーゲンビトリゲル乾燥膜側の剥離紙をはぎ、その面を患部に当て、患部を包み込むように合わせる。
(2) 患部がすべて覆われた状態で、動かないように押えたまま粘着性フィルムの上部にあるポリプロピレンフィルムを無菌的に剥がし、しっかり押さえる。
(3) 患部全体がコラーゲンビトリゲル乾燥膜に覆われた状態を確認し、湿潤環境ができていることも確認する。
(4) 本発明人工皮膚と創傷面との間に気泡がないことを確認する。もし気泡が存在したら指で気泡を外に誘導する。
(5) 湿潤液があふれ、粘着性フィルムがつかない場合は、止血とデブリードマンをやり直し、再度コラーゲンビトリゲル乾燥膜を施す。
(6) 1週間~2週間、患部の状態を観察しながら剥がすタイミングを探る。患部に残すのはコラーゲンビトリゲル薄膜のみであり、押える役割の額縁状保持シートや、接着防止シート、粘着性フィルムはすべて除去する。
【実施例】
【0052】
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
【0053】
実 施 例 1
広範囲皮膚欠損治療効果:
野生型マウス(C57BL6J)の背部に、直径1.5cmの広範囲皮膚全層欠損を作製し、皮膚欠損創傷モデルとした。その創傷部に本発明の人工皮膚または被覆材を貼付し、創傷部での瘢痕収縮抑制効果の検証を行った。
【0054】
本発明の人工皮膚は、図1および2に示すような構成の3層型のもので、使用するコラーゲンビトリゲル乾燥膜は、農業生物資源研究所より入手した、直径1.5cmの円型で、その厚さは、約70~100μmのものであった。また、額縁状保持シートとしては、直径1.8cmのペットシートに、直径1.3cmの窓を開けたものを用い、粘着防止シートとしては、シリコーン処理したPETシートで、直径1.6cmのものを用いた。更に、粘着性フィルムとしては、ドレッシングフィルム(ユーテープ(祐徳薬品工業社製); 6×10cm)を使用した。
【0055】
一方、比較の被覆材としては、上記ドレッシングフィルムと粘着防止シートを組み合わせた2層型のものを使用したもの(2層型貼付群)を、比較としては何も貼付しないもの(非貼付群)を用いた。
【0056】
試験開始から経時的に皮膚欠損創傷モデルの創傷部の大きさを観察し、創傷部縮小率を調べた。この結果、3層型の本発明人工皮膚を貼付した場合(本発明人工皮膚貼付群)は、非貼付群、2層型貼付群と比較し、治癒完了と判断される90%の縮小率に達するまで有意な差は見られなかった。
【0057】
また、本発明人工皮膚貼付群では、粘着性フィルムを剥離した後の再生皮膚組織は肉眼的に平坦な形状を示していた(図6)。更に病理組織学的に解析したところ、創傷部には多量のビトリゲルの遺残が見られ、ビトリゲル内部への紡錘形細胞の浸潤が見られた。しかし、組織内に遺残したビトリゲルへの異物反応や、CD68陽性マクロファージの浸潤はみられなかった。また、ビトリゲル周囲に増殖した紡錘形細胞は筋線維芽細胞マーカー(α—SMA)の高い発現が見られたが、ビトリゲル内部での筋線維芽細胞はごく少数であり、殆どは線維芽細胞相当であった(図7)。
【0058】
一方、2層型貼付群では、再生皮膚に隆起性の病的瘢痕形成が見られ(図8)、再生皮膚組織中に出現する紡錐形細胞は、そのほとんどがα-SMA陽性の筋線維芽細胞であった。また、本発明人工皮膚貼付群と比較し、2層型貼布群では線維芽細胞からのTGF-βや(図9、左側)、CTGFの発現は高値であり(図10、左側)、分子細胞学的にも創部での強い病的な線維化現象を確認し得た。
【0059】
以上より、ビトリゲルは線維芽細胞から筋線維芽細胞への形質転換を抑制すると考えられ、この形質転換抑制作用が創部閉鎖線維化と瘢痕抑制効果に寄与するものと推察された。
【産業上の利用可能性】
【0060】
今回我々は、平易な操作性と、従来品以上の性能を有する人工皮膚を、シリコーン処理PETフィルムなどの粘着防止シートをドレッシングテープなどの粘着性フィルムとビトリゲル乾燥膜間に挿入することにより開発した。
【0061】
現在市販されている人工皮膚でのコラーゲン部分はスポンジ状に加工されており、創部への固定には縫合が必要であり、操作性に難点がある。これに対し、本発明において使用するコラーゲンビトリゲル乾燥膜はガラス化処理により薄膜状態となった高密度コラーゲンであり、素材として全く異なる新規なものである。そして、これをドレッシングテープのような粘着性フィルムと組み合わせることで、縫合が不要となり、操作性が格段に向上したものである。
【0062】
そして、本発明の人工皮膚で使用される粘着性フィルムは、創傷部の湿潤環境を維持し、外界との物理的バリアを構成するものであり、また、接着着防止シートは包交時等に、コラーゲンビトリゲル膜と再生組織が、粘着性フィルムに付着する事を妨げ、2次損傷を防止するものである。
【0063】
また、医療的見地からは、コラーゲンビトリゲル膜は創部にコラーゲンを供給し、組織再生における微小環境を整えることに加え、自身が有する筋線維芽細胞出現抑制効果により、再生を促進すると同時に、病的瘢痕形成を抑制するものである。しかも、本発明で使用するコラーゲンビトリゲル乾燥膜は非常に高い生体適合性を有しており、創傷部で拒絶反応や異物反応を惹起することは確認されていない。
【0064】
従って、本発明の人工皮膚は、熱傷、褥瘡および外傷皮膚欠損などの皮膚欠損部に貼り付けという簡単な手段で使用でき、しかも密封治療的な効果も期待できるので、種々の原因による皮膚欠損部の治療に幅広く利用できるものである。特に、現行の人工皮膚製品では基本的に汚染に伴う交換(包交)は不可能であるのに対し、本発明製品では、粘着防止シートを採用したことにより、創傷部処置で一般的な包交も可能となり、感染対策面でも非常に有利なものである。
【符号の説明】
【0065】
1 … … 人工皮膚
2 … … 粘着性フィルム
3 … … 接着防止シート
4 … … コラーゲンビトリゲル乾燥膜
5 … … 額縁状保持シート
6 … … 粘着剤層
7 … … 窓部
8 … … 突起部
9 … … 弱粘着性部

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9