TOP > 国内特許検索 > 燃料電池システム及びその運用方法 > 明細書

明細書 :燃料電池システム及びその運用方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6748953号 (P6748953)
公開番号 特開2017-037805 (P2017-037805A)
登録日 令和2年8月13日(2020.8.13)
発行日 令和2年9月2日(2020.9.2)
公開日 平成29年2月16日(2017.2.16)
発明の名称または考案の名称 燃料電池システム及びその運用方法
国際特許分類 H01M   8/04228     (2016.01)
H01M   4/86        (2006.01)
H01M   4/90        (2006.01)
H01M   8/04225     (2016.01)
H01M   8/10        (2016.01)
FI H01M 8/04228
H01M 4/86 B
H01M 4/90
H01M 8/04225
H01M 8/10
請求項の数または発明の数 6
全頁数 15
出願番号 特願2015-159087 (P2015-159087)
出願日 平成27年8月11日(2015.8.11)
審査請求日 平成30年7月31日(2018.7.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
発明者または考案者 【氏名】内田 誠
【氏名】柿沼 克良
【氏名】渡辺 政廣
【氏名】飯山 明裕
個別代理人の代理人 【識別番号】110001139、【氏名又は名称】SK特許業務法人
【識別番号】100130328、【弁理士】、【氏名又は名称】奥野 彰彦
【識別番号】100130672、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 寛之
審査官 【審査官】大内 俊彦
参考文献・文献 特開2006-244907(JP,A)
特表2013-540050(JP,A)
特開2006-120385(JP,A)
特開2005-11654(JP,A)
国際公開第2005/043663(WO,A1)
調査した分野 H01M 8/00-8/2495
H01M 4/86,4/90
特許請求の範囲 【請求項1】
アノードに用いられる触媒が、水素雰囲気下における電気抵抗よりも酸素を含む雰囲気下における電気抵抗の方が大きくなる特性を有する材料を担体とする触媒である燃料電池と、
前記燃料電池の運転停止時に、燃料ガスの供給が停止されると、燃料ガス室内の前記燃料ガスの一部又は全部を消費した後、前記燃料ガス室に酸素を含むガスを導入するように前記燃料電池を制御する制御装置と、
を有し、
前記燃料ガス室と連通し且つ大気に開放された流路に設けられたバルブを有し、前記制御装置により、前記燃料ガス室内の圧力が大気圧よりも低くなったときに前記バルブを開くことで酸素を含むガスである空気を前記燃料ガス室へ導入するように制御され、
前記制御装置により、
前記燃料電池の再起動時に前記バルブを開き、前記燃料ガス室に導入された前記燃料ガスにより前記空気を押し出して前記空気を大気に放出するように制御される、
燃料電池システム。
【請求項2】
アノードに用いられる触媒が、水素雰囲気下における電気抵抗よりも酸素を含む雰囲気下における電気抵抗の方が大きくなる特性を有する材料を担体とする触媒である燃料電池と、
前記燃料電池の運転停止時に、燃料ガスの供給が停止されると、燃料ガス室内の前記燃料ガスの一部又は全部を消費した後、前記燃料ガス室に酸素を含むガスを導入するように前記燃料電池を制御する制御装置と、
を有し、
前記燃料ガス室と連通し且つ大気に開放された流路に設けられたバルブを有し、前記制御装置により、前記燃料ガス室内の圧力が大気圧よりも低くなったときに前記バルブを開くことで酸素を含むガスである空気を前記燃料ガス室へ導入するように制御され、
前記制御装置により、
前記燃料電池が再起動された後、前記大気に開放された流路を通過するガスの中の空気濃度が予め定められた値を下回ると、前記バルブを閉じるように制御され、発電が開始される、
燃料電池システム。
【請求項3】
アノードに用いられる触媒が、水素雰囲気下における電気抵抗よりも酸素を含む雰囲気下における電気抵抗の方が大きくなる特性を有する材料を担体とする触媒である燃料電池と、
前記燃料電池の運転停止時に、燃料ガスの供給が停止されると、燃料ガス室内の前記燃料ガスの一部又は全部を消費した後、前記燃料ガス室に酸素を含むガスを導入するように前記燃料電池を制御する制御装置と、
を有し、
前記燃料ガス室と連通し且つ大気に開放された流路に設けられたバルブを有し、前記制御装置により、前記燃料ガス室内の圧力が大気圧よりも低くなったときに前記バルブを開くことで酸素を含むガスである空気を前記燃料ガス室へ導入するように制御され、
前記制御装置により、
前記燃料電池が再起動された後、前記大気に開放された流路を通過するガスの中の水素濃度が予め定められた値を上回ると、前記バルブを閉じるように制御される、
燃料電池システム。
【請求項4】
アノードに用いられる触媒が、水素雰囲気下における電気抵抗よりも酸素を含む雰囲気下における電気抵抗の方が大きくなる特性を有する材料を担体とする触媒である燃料電池と、
前記燃料電池の運転停止時に、燃料ガスの供給が停止されると、燃料ガス室内の前記燃料ガスの一部又は全部を消費した後、前記燃料ガス室に酸素を含むガスを導入するように前記燃料電池を制御する制御装置と、
を有し、
前記燃料ガス室と連通し且つ大気に開放された流路に設けられたバルブを有し、前記制御装置により、前記燃料ガス室内の圧力が大気圧よりも低くなったときに前記バルブを開くことで酸素を含むガスである空気を前記燃料ガス室へ導入するように制御され、
前記燃料ガス室と連通し且つ大気に開放された流路は、前記バルブを跨ぐように設けられた分岐流路が接続されており、前記燃料ガス室から大気へ向かうガスの流出を防止する逆止弁が前記分岐流路に設けられる、
燃料電池システム。
【請求項5】
前記材料は、ドープ対象となる金属化合物を構成する金属の原子価よりも大きい原子価を有する不純物がドープされた金属酸化物、金属窒化物及び金属炭化物のいずれかである、
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記燃料電池のカソードに用いられる触媒が、ドープ対象となる金属酸化物を構成する金属の原子価よりも大きい原子価を有する不純物がドープされた金属酸化物を担体とする触媒である、
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システム及びその運用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高分子電解質膜を使用した固体高分子形燃料電池において、燃料電池の運転を停止するときには、燃料電池への燃料ガス及び酸化ガスの供給を停止する。このとき、燃料ガス室に空気をパージする方法がある。
【0003】
例えば、特許文献1では、空気によるパージ操作を行なうことにより、窒素設備を不要にし、操作性と利便性に優れた燃料電池システムが開示されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2004-146084
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、燃料室に空気がパージされた状態から燃料電池を再起動する場合、燃料ガス流路に燃料ガスを供給すると、燃料ガス流路の上流側から燃料ガスが充填されるため、燃料ガス流路の下流部では空気が残ることがある。このとき、空気が残留した燃料ガス流路の下流側で生じる化学反応により、カソード触媒が劣化してしまう。以下、かかる劣化について、図1を用いて説明する。
【0006】
図1は、水素雰囲気下及び酸素雰囲気下における化学反応を示す図である。図1の領域Aは、アノードに燃料ガスが存在する水素雰囲気下の領域及びカソードに空気が存在する酸素雰囲気下の領域であり、領域Bは、アノード及びカソードに空気が存在する酸素雰囲気下の領域である。領域Aにおいては、アノードで、「H→2H+2e」の反応が生じ、プロトンH及び電子eが生成される。このプロトンHが高分子電解質膜を通ってカソードへ移動する。そして、カソードで、アノードから移動してきたプロトンHと、以下に述べるカソードの領域Bで起こる腐食反応により生じ、カソードの領域Bから移動してきた電子eにより、「O+4H+4e→2HO」の反応が生じ、水が生成される。
【0007】
次に、領域Bにおける化学反応について説明する。一般的に、固体高分子形燃料電池のカソードには白金微粒子を炭素担体に担持したPt/C触媒が用いられる。Pt/C触媒のHとの酸化反応に対する活性は極めて高く「H→2H+2e」の反応がアノードの領域Aで起こるため、領域A及び領域Bにおいて、アノードを構成する炭素基材(触媒層、ガス拡散層)を電子eが一様に伝搬し、両領域とも同等の高い電子密度(同等の電位)となり、アノードの領域Bに残存する酸素と「O+4H+4e→2HO」の反応を誘発する。しかし、ミクロンオーダーの薄層からなる高分子電解質膜を含む触媒層である領域Aから領域Bへの面内のプロトンHの移動抵抗は、これと垂直な高分子電解質膜の膜厚方向(高分子電解質膜を介した方向)の移動抵抗に比べ数桁大きく、領域AB間のプロトンHの移動は制限される。その結果、アノードの領域BにおいてプロトンHの欠乏状態が生ずる。かかる欠乏を補うべく、カソードの領域Bでは、触媒及び触媒担体の腐食反応である「Pt→Pt2++2e」及び「C+2HO→CO+4H+4e」の反応が望まれずも引き起こされ、プロトンH及び電子eが生成する。このプロトンHが高分子電解質膜を通ってアノードの領域Bへ移動し、アノードの領域Bでの「O+4H+4e→2HO」に使われる。かかるカソードの腐食反応で生じたプロトンHの移動を、本来の逆方向の流れということで「リバース電流」と呼ぶ。
【0008】
このように、燃料ガス流路に空気が浸入した場合、上記の化学反応が進行することで、カソードの触媒材料である白金(Pt)及び炭素(C)が腐食することにより、触媒としての性能が劣化してしまう。
【0009】
なお、かかる劣化は、燃料室に空気をパージせず、燃料電池の停止時において燃料ガス流路を封止し、水素を閉じ込める方法でも同様に生じる。理由は以下の通りである。まず、アノードに残存する燃料ガスとカソード内の空気が、高分子電解質膜を介して相互に拡散し、燃料ガスと空気とが反応することで燃料ガスが消費される。そして、アノードでは、特にバルブを閉じた状態でも、燃料ガスと空気との反応や、バルブからのリークにより、系内の圧力が次第に低下する。アノード系内の圧力が低下すると、酸化ガス流路から高分子電解質膜を通って燃料ガス流路内に空気が侵入する。
【0010】
このように、燃料室内への空気の混入を完全に防ぐことは困難であり、その結果、燃料電池の起動時に生じるリバース電流によるカソード触媒の劣化は避けがたいものであった。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、燃料電池のカソード触媒の劣化を低減することができる燃料電池システム及びその運用方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、アノードに用いられる触媒が、水素雰囲気下における電気抵抗よりも酸素を含む雰囲気下における電気抵抗の方が大きくなる特性を有する材料を担体とする触媒である燃料電池と、前記燃料電池の運転停止時に、燃料ガスの供給が停止されると、燃料ガス室内の前記燃料ガスの一部又は全部を消費した後、前記燃料ガス室に酸素を含むガスを導入するように前記燃料電池を制御する制御装置と、を有する燃料電池システムが提供される。
【0013】
本発明によれば、燃料電池の運転停止時において燃料ガス室内の燃料ガスが空気で置換されたときでも、アノードに、水素雰囲気下における電気抵抗よりも酸素を含む雰囲気下における電気抵抗の方が大きくなる特性を有する材料を担体とする触媒を用いることで、リバース電流の発生を抑制し、カソードに用いられる触媒の劣化を低減させることが可能となる。
【0014】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記燃料ガス室と連通し且つ大気に開放された流路に設けられたバルブを有し、前記制御装置により、前記燃料ガス室内の圧力が大気圧よりも低くなったときに前記バルブを開くことで酸素を含むガスである空気を前記燃料ガス室へ導入するように制御される。
好ましくは、前記制御装置により、前記燃料電池の再起動時に前記バルブを開き、前記燃料ガス室に導入された前記燃料ガスにより前記空気を押し出して前記空気を大気に放出するように制御される。
好ましくは、前記制御装置により、前記燃料電池が再起動された後、前記大気に開放された流路を通過するガスの中の空気濃度が予め定められた値を下回ると、前記バルブを閉じるように制御され、発電が開始される。
好ましくは、前記制御装置により、前記燃料電池が再起動された後、前記大気に開放された流路を通過するガスの中の水素濃度が予め定められた値を上回ると、前記バルブを閉じるように制御される。
好ましくは、前記燃料ガス室と連通し且つ大気に開放された流路は、前記バルブを跨ぐように設けられた分岐流路が接続されており、前記燃料ガス室から大気へ向かうガスの流出を防止する逆止弁が前記分岐流路に設けられる。
好ましくは、前記材料は、ドープ対象となる金属化合物を構成する金属の原子価よりも大きい原子価を有する不純物がドープされた金属酸化物、金属窒化物及び金属炭化物のいずれかである。
好ましくは、カソードに用いられる触媒が、ドープ対象となる金属酸化物を構成する金属の原子価よりも大きい原子価を有する不純物がドープされた金属酸化物を担体とする触媒である燃料電池と、前記燃料電池の運転停止時に、燃料ガスの供給が停止されると、燃料ガス室内の前記燃料ガスの一部又は全部を消費した後、前記燃料ガス室に酸素を含むガスを導入するように前記燃料電池を制御する制御装置と、を有する燃料電池システムが提供される。
好ましくは、前記金属酸化物は、酸化スズ、酸化チタン、酸化タングステン、酸化インジウム、酸化バナジウム及びペロブスカイト酸化物のうち少なくとも1つから選ばれる。
好ましくは、燃料電池システムの運用方法であって、アノードに用いられる触媒が、水素雰囲気下における電気抵抗よりも酸素を含む雰囲気下における電気抵抗の方が大きくなる特性を有する材料を担体とする触媒である燃料電池の運転停止時に、燃料ガスの供給が停止されると、燃料ガス室内の前記燃料ガスの一部又は全部を消費した後、前記燃料ガス室に酸素を含むガスを導入するように前記燃料電池を制御する制御ステップを有する燃料電池システムの運用方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来の燃料電池における、水素雰囲気下及び酸素雰囲気下における化学反応を示す図である。
【図2】水素雰囲気下及び酸素雰囲気下におけるアノードの電気抵抗の変化を示す図である。
【図3】水素雰囲気下及び酸素雰囲気下における化学反応及びアノードの電気抵抗を示す図であり、(a)は化学反応及び電気抵抗を、(b)は水素雰囲気下におけるアノード触媒の模式図を、(c)は酸素雰囲気下におけるアノード触媒の模式図を示す図である。
【図4】第1実施形態に係る燃料電池システムの構成を示すブロック図である。
【図5】第1実施形態に係る燃料電池システムの空気導入時におけるシーケンス図である。
【図6】第2実施形態に係る燃料電池システムの構成を示すブロック図である。
【図7】第2実施形態に係る燃料電池システムの空気導入時におけるシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。

【0017】
<アノードに用いられる触媒について>
アノードに用いられる触媒としては、水素雰囲気下における電気抵抗よりも酸素を含む雰囲気下における電気抵抗の方が大きくなる特性を有する材料を担体とする触媒を用いる。このような触媒の例としては、「Journal of Power Sources Volume 294、 30 October 2015、 Pages 292-298」に開示されている、導電性セラミックスを担体とする触媒が挙げられる。この触媒は、具体的には、導電性セラミックス担体上に貴金属及び/又は貴金属の合金を担持させた触媒である。導電性セラミックスとしては金属酸化物が用いられ、この中でも、化学的・電気化学的安定性の観点から、チタンを含む導電性セラミックスが好ましい。

【0018】
さらに、導電性セラミックスの導電性を大きくするため、異種金属(ドーパント)がドープされていてもよい。このドーパントとしては、例えばニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、アンチモン(Sb)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)を用いることができる。

【0019】
触媒として用いる貴金属は、例えば白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、銀(Ag)、金(Au)を用いることができる。特に、白金及び白金の合金が好ましい。以下、このような触媒を「セラミックス触媒」と呼ぶこととする。

【0020】
また、ドープ対象となる金属酸化物を構成する金属の原子価よりも大きい原子価を有する不純物がドープされた金属酸化物を担体とした触媒、例えば、Pt/Nb-TiO、Pt/Ta-TiOや、これら酸化物の代わりに窒化物又は炭化物を上記同様にドープしたものを担体とした触媒をアノードに用いることもできる。例えば、窒化物としてはTiN、SnN、Sn等が挙げられ、炭化物としてはTiC、WC、WC等が挙げられる。

【0021】
ここで、セラミックス触媒の有する「雰囲気抵抗スイッチングメカニズム(atmospheric resistive switching mechanism:ARSM)」について説明する。図2は、セラミックス触媒としてタンタルドープ酸化チタン(Pt/Ti0.9Ta0.12-δ)を用いた場合の各種雰囲気ガス下におけるアノードの電気抵抗の変化を表す図である。図2の実線がTi0.9Ta0.12-δを表し、破線が従来のPt/CB触媒(Pt担持カーボンブラック担体触媒)を表す。また、横軸は時間を、縦軸はアノードの電気抵抗を表す。

【0022】
雰囲気ガスをHからNへ切り替えたときには、無視できる程度の抵抗増加がみられるだけで、電気抵抗にNは影響しないと判断された。次に、NからAir(O)へ切り替えると、急激に電気抵抗が増加し、高い雰囲気依存性を示した。これは、Ti0.9Ta0.12-δ触媒の表面にOが吸着したことによりセラミックス担体表面に空乏層が形成されたためであると考えられる。このとき、酸素雰囲気下における電気抵抗は水素雰囲気下における電気抵抗の約9倍であった。このような電気抵抗の急激な変化をARSM(atmospheric resistive switching mechanismの略号)と呼ぶこととする。

【0023】
なお、ドープ対象となる金属化合物を構成する金属の原子価よりも大きい原子価を有する不純物がドープされた金属窒化物又は金属炭化物を担体とする触媒でもARSM効果が生じる。これは、酸素雰囲気下において窒化物又は炭化物が酸化され、触媒表面に酸化物被覆層が形成されるため、かかる酸化物被覆層がセラミックス触媒に用いた酸化物と同様の働きをするためである。なお、触媒活性には数ナノメートルオーダーでの酸化物被覆層が影響を及ぼす。

【0024】
次に、この状態でNへ切り替えても電気抵抗はほとんど変化しなかった。これは、Nを導入しても既に吸着されたOにほとんど影響を与えず、セラミックス担体に形成された空乏層が維持されたためであると考えられる。

【0025】
次に、この状態で再びHへ切り替えると、速やかに初期の状態と同程度の電気抵抗に復帰した。これは、導入されたHが、セラミックス担体に吸着されたOと反応することでセラミックス担体からOが速やかに除去され、これによりセラミックス担体に形成された空乏層が消滅したためであると考えられる。

【0026】
一方、従来の触媒Pt/CBでは、炭素担体へのOの吸着がほとんどなく、電気抵抗の雰囲気依存性は小さかった。

【0027】
<カソード触媒の劣化の低減について>
次に、セラミックス触媒をアノードに用いることで、カソード触媒の劣化が低減されることについて、図3を用いて説明する。セラミックス触媒を用いない燃料電池では、図1に示されるように、eはアノード内及びカソード内において領域Aと領域Bの間を移動するため、アノードにおける「O+4H+4e→2HO」の反応に加え、その反応と対となる反応であるカソードにおける腐食反応「C+2HO→CO+4H+4e」や「Pt→Pt2++2e」が並行して引き起こされ、その結果リバース電流を発生する。これに対し、図3はセラミックス触媒を用いた場合の、水素雰囲気下及び酸素雰囲気下における化学反応及びアノードの電気抵抗を示す図であり、図3(a)は化学反応及び電気抵抗を、図3(b)は水素雰囲気下におけるセラミックス触媒の模式図を、図3(c)は酸素雰囲気下におけるセラミックス触媒の模式図を示す図である。領域Aと領域Bの境界付近を界に、ARSMにより領域Bのセラミックス触媒の電気抵抗が大きく、アノードにおける領域Aから領域Bへのeの移動が妨げられる。その結果、アノードの領域Bにおける、「O+4H+4e→2HO」の反応が抑制され、かかる反応と対となるカソードにおける腐食反応も抑制され、リバース電流も発生しない。

【0028】
このように、セラミックス触媒のARSMによりリバース電流の発生を防ぐことで、カソード触媒の劣化を低減することが可能となる。

【0029】
第1実施形態
<燃料電池システムの構成>
次に、第1実施形態に係るセラミックス触媒をアノードに用い、Pt/CB触媒をカソードに用いた燃料電池を運用するためのシステムについて、図4を用いて説明する。燃料電池システムは、燃料電池100と、水素タンク4と、バッファタンク5と、バッテリー9を備える。

【0030】
燃料電池100は、図示しない燃料ガス室を備えるアノード1及び図示しない酸化ガス室を備えるカソード2で高分子電解質膜3が挟持されている。ここで、燃料ガス室とは、アノード1内における燃料ガスの流路であり、酸化ガス室とは、カソード2内における酸化ガスの流路である。以下、アノード1と言う場合には燃料ガス室を含み、カソード2と言う場合には酸化ガス室を含むものとする。アノード1にはセラミックス触媒を、カソード2にはPt/CB触媒を用いる。そして、アノード1に燃料ガスを、カソード2に酸化ガスを供給することにより、高分子電解質膜3を介してアノード1からカソード2に向かってプロトンが移動することで電力を得ることができる。高分子電解質膜3は、湿潤状態で良好な電気伝導性を示す材料で形成されており、例えばフッ素系樹脂により形成されたプロトン(イオン)伝導性のイオン交換膜が用いられる。アノード1には後述する水素タンク4から燃料ガスが供給され、カソード2には大気に開放された酸素流路5Iにより酸化ガスとしての空気が供給される。

【0031】
水素タンク4は、水素を含む燃料ガス(以下、水素と呼ぶ)を貯蔵し、水素をアノード1に供給するものである。水素タンク4とアノード1は水素流路4Iで接続され、水素流路4I上に開閉可能な水素供給バルブ6及び循環ポンプ8を備える。循環ポンプ8は、燃料電池の運転時には水素を多く消費して捨ててしまわないように再循環させ、再起動時にはアノード1及び水素流路4I内のガスを確実に排出させるものである。

【0032】
バッファタンク5は、酸素流路5Iを介してカソード2と接続され、混合ガス流路45Iを介してアノード1と接続され、大気に開放された混合ガス流路45Iに接続される。バッファタンク5とアノード1を接続する混合ガス流路45I上には開閉可能なパージバルブ7が設けられ、大気に開放された混合ガス流路45I上にはセンサー13が設けられる。バッファタンク5は、燃料電池100の再起動時において高圧のガスがカソード2に流入することを防ぐことに加え、外部に排出される水素の濃度を希釈する役割を持つ。なお、通常運転時に必要とされるパージ動作としてのパージバルブ7の「開閉」動作はここでは取り扱わない。

【0033】
センサー13は混合ガス流路45Iを通過するガスの中の水素濃度を取得するものであり、例えば濃度センサー、圧力センサー、電圧計、電流計等を利用することができる。

【0034】
バッテリー9は、配線12を介してアノード1及びカソード2と電気的に接続され、アノード1及びカソード2へのバッテリー9の電気接続をON/OFFさせるスイッチ10が配線12上に設けられる。そして、燃料電池100の運転時においてバッテリー9への充電を行わない場合は、スイッチ10はOFF状態となり、燃料電池100の運転停止命令を受けてアノード1への水素の供給が停止されると、スイッチ10をON状態としてバッテリー9とアノード1及びカソード2を導通し、アノード1に残存する水素のプロトン化を促進することで、アノード1内の水素を消費するものである。CPU11は制御部として機能し、センサー13からの信号を受信し、時間を計測し、水素供給バルブ6及びパージバルブ7の開閉命令を出力する。燃料電池100の運転時におけるスイッチ10のON/OFFは、燃料電池の発電電気をバッテリーへ充電することの必要性がCPU11により診断され、実行される。

【0035】
<運転停止命令及び再起動時のシーケンス>
次に、燃料電池システムの運転停止命令及び再起動時における制御について、図5を用いて説明する。図5は、アノード1の水素流量、水素分圧及び空気分圧、カソード2の空気流量、燃料電池100の電圧、水素供給バルブ6及びパージバルブ7の開閉タイミングを表した概念図である。なお、カソード2は大気に開放されているので、カソード2の出口付近の空気分圧は大気圧と等しく、ほとんど変化しないため図示を省略した。

【0036】
燃料電池100の運転時には、水素供給バルブ6を開き、水素タンク4からアノード1に水素が供給される。このとき、アノード1における水素流量及び水素分圧は略一定の値をとる。また、カソード2には、酸素を含むガスである空気が大気から供給されており、カソード2における空気の流量は略一定の値をとる。このとき、燃料電池100の電圧は略一定の値をとる。なお、パージバルブ7は閉じられた状態である。

【0037】
次に、時刻t1において燃料電池100の運転停止命令が発せられたとする。このとき、水素供給バルブ6を閉じてアノード1への水素の供給を停止するとともに、スイッチ10をON状態とし、アノード1及びカソード2へのバッテリー9の電気接続をONにする。これにより、アノード1に残存する水素が消費され、配線12を介して電子がバッテリー9へ移動し、バッテリー9が蓄電される。したがって、アノード1における水素分圧及び燃料電池100の電圧は徐々に減少する。図5では説明のために直線的に減少するとしたが、実際にはこのような直線とならない場合がある。

【0038】
そして、アノード1中の水素濃度が実質的に0と見なせる時点(t2)でパージバルブ7を開き、アノード1への空気導入を開始する。この濃度は、燃料電池100の電圧が所定の閾値に低下した時点、またはバッテリー9への充電電気量が所定の電気量となった時点、或いは経験的に定めた充電時間に達した時点などで判定する。なお、時刻t2を、アノード1内の水素の一部又は全部を消費した時刻としてもよい。アノード1内の水素の一部を消費したときのアノード1内の圧力は、大気圧を1atmとしたときに、例えば0.001~0.7atmが好ましい。より好ましくは、0.005~0.5atmである。さらに好ましくは、0.01~0.3atmである。具体的には、0.001、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7atmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。このとき、アノード1内の圧力は大気圧よりも低い圧力(負圧)となっているため、パージバルブ7を開くことでアノード1内に空気が自発的に流れ込み、1秒以下~数秒でアノード1内に空気を充填することができる。なお、電圧や充電電気量による水素濃度の取得は必ずしも必要でなく、予め設定された水素流路4Iの体積及び充電時間より、アノード1に残存する水素濃度の時間変化を求め、アノード1内における水素濃度が実質的に0となるまでに要する時間(t)を算出し、t1からt経過後にアノード1への空気導入を開始することとしてもよい。

【0039】
空気導入を開始して一定時間経過後、時刻t3において燃料電池100の動作を停止させる。このとき、パージバルブ7を閉じてアノード1内に空気を閉じ込めるので、アノード1における空気分圧は略一定の値をとる。本実施形態では、アノード1の触媒としてセラミックス触媒を用いているので、上述のARSMによりリバース電流が発生することを抑制できるため、カソード2に用いたPt/CB触媒の劣化を低減させることが可能となる。

【0040】
次に、時刻t4において燃料電池100を再起動させる場合に関して説明する。まず初めにカソード2への空気導入を開始し、一定流量となったとする。このとき(t4)、水素供給バルブ6及びパージバルブ7を開き、アノード1内の空気を水素で置換する。このとき、押し出された空気及び供給された水素の混合ガスが混合ガス流路45Iを通ってバッファタンク5に送られ、混合ガスの圧力が緩和されるとともに、水素の濃度が希釈される。そして、混合ガス流路45Iを通って大気に排出される。このとき、水素供給バルブ6を開いた直後には混合ガス中の水素濃度は実質的に0であるが、アノード1内の空気が押し出されることで水素濃度が増大する。混合ガスの水素濃度が4%を超えると、着火源がある場合、燃焼したり爆発する恐れがあるので、センサー13により取得される水素濃度が例えば3.8%を超えた時点(t5)でパージバルブ7を閉じ、アノード1及び水素流路4Iに水素を閉じ込める。なお、上述のように、センサー13による水素濃度の取得は必ずしも必要でなく、予め設定された水素流路4Iの体積及び充電時間より、アノード1内の水素濃度の時間変化を求め、アノード1内における水素濃度が増加して大気に放出される混合ガスの水素濃度が例えば3.8%となるまでに要する時間(t)を算出し、t4からt経過後にパージバルブ7を閉じることとしてもよい。なお、アノード1への水素導入時(t4)に先立ちカソード2への空気を一定流量で導入することで、水素濃度を正確に計測することができ、さらに、カソード2内へ空気が流入することを防止することができる。

【0041】
このとき、CPU11により、センサー13からの信号が受信され、時間が計測される。

【0042】
このように、運転停止命令を受けてからアノード1内の水素を積極的に消費させ、アノード1内の圧力を大気圧と比べて低くすることにより、アノード1内に空気を自発的に流し込むことができる。なお、アノード1内の圧力が低い、換言すると、アノード1内の圧力と大気圧の差が大きいほど空気が速く流れこむようになる。このときのアノード1内の圧力は、上述のように例えば0.001~0.7atmが好ましい。より好ましくは、0.005~0.5atmである。さらに好ましくは、0.01~0.3atmである。この程度の圧力差であれば、アノード1内を空気で素早く置換することができる。これにより、水素と酸素の混在時間を可能な限り低減させている。これは、水素と酸素が混在した状態では過酸化酸素が発生し、高分子電解質膜3を痛めるため好ましくなく、さらに、水素が長時間アノード1内に留まった状態では、徐々にアノード1の外部へ水素が漏れ出てしまい、水素のロスとなるためである。

【0043】
そして、アノード1にセラミックス触媒を用いることで、上述のARSMによりリバース電流の発生を抑制できるため、カソード2に用いたPt/CB触媒の劣化を低減させることが可能となる。

【0044】
さらに、燃料電池100の動作停止時にはアノード1及びカソード2のいずれも空気でパージされているので、Pt/CB触媒以外に代えて、水素に弱い材料をカソード2に用いることが可能となる。例えば、動作停止時においてアノードに水素を閉じ込め、かかる水素を空気と置換しない燃料電池では、担体として水素に弱い材料であるSnOを用いた触媒をカソードに用いた場合、アノード内の水素が電解質膜を介してカソードへと拡散し、これによりSnOが一部還元され、Snとなる。そして、高分子電解質膜は酸性であるので、Snが溶け出し、プロトンの移動経路や触媒上に付着してしまう。これに対し、本実施形態の燃料電池システムでは、燃料電池100の動作停止時には燃料電池100内に水素が存在しないので、従来のPt/CB触媒に代えて水素に弱い材料をカソード2に用いることが可能となった。具体的には、ドープ対象となる金属酸化物を構成する金属の原子価よりも大きい原子価を有する不純物がドープされた金属酸化物を担体とした触媒、例えば、Pt/Nb-SnO、Pt/Ta-SnO、Pt/Sb-SnO等に加え、酸化タングステン系(WO)、酸化インジウム系(In-SnO)、酸化バナジウム系(VOx)、ぺロブスカイト酸化物系(La1-xSr)MO(M:遷移金属)及びPrNiOを担体とした触媒をカソードに用いることができる。これらの材料は、電池の負荷変動や起動停止時の高電位暴露に対し、炭素と比較して著しく腐食が生じにくいので、従来のPt/CB触媒よりも好ましい。

【0045】
第2実施形態
<燃料電池システムの構成>
次に、第2実施形態に係る燃料電池を運用するためのシステムについて、図6を用いて説明する。第1実施形態についての図4と同じ要素には同じ符号を付し、その説明を省略する。第2実施形態では、第1実施形態に加え、混合ガス流路45Iにパージバルブ7を跨いで分岐流路14Iが設けられ、分岐流路14I上に燃料ガス室から大気へ向かうガスの流出を防止し、燃料ガス室へ向かうガスの流入を許可する逆止弁5rが設けられる。そして、センサー13は、水素濃度に代えて酸素濃度を取得するものである。逆止弁5rは、混合ガス流路45Iとアノード1の間の圧力差が予め定めた閾値に達したとき、空気が混合ガス流路45Iを通ってアノード1内に導入できる閾値を有するものを選択する。

【0046】
<運転停止命令及び再起動時のシーケンス>
次に、燃料電池システムの運転停止命令及び再起動時における制御について、図7を用いて説明する。基本的には図5と同様の制御であるが、パージバルブ7の開閉タイミングが異なる。

【0047】
時刻t1において燃料電池100の運転停止命令が発せられたとする。このとき、水素供給バルブ6を閉じてアノード1への水素の供給を停止するとともに、スイッチ10をON状態とし、アノード1及びカソード2へのバッテリー9の電気接続をONにする。これにより、アノード1に残存する水素が分解され、配線12を介して電子がバッテリー9へ移動し、バッテリー9が蓄電される。したがって、アノード1における水素分圧及び燃料電池100の電圧は徐々に減少する。図7では説明のために直線的に減少するとしたが、実際にはこのような直線とならない場合がある。

【0048】
アノード1内の水素分圧が減少していき、大気圧との圧力差が所定の値を超えたとき(t2)、逆止弁5rを通って大気から空気が自発的に流入する。所定の値とは、例えば0.001~0.7atmが好ましい。より好ましくは、0.01~0.5atmである。さらに好ましくは、0.1~0.3atmである。具体的には、0.001、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.6、0.7atmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。つまり、時刻t2において逆止弁5rの働きによりアノード1内の水素と空気の置換が開始されるので、パージバルブ7を開く必要がなく、したがってCPU11等によるパージバルブ7の制御が不要となる。なお、アノード1内に少量残存した水素は、逆止弁5rを介して導入された酸素とアノード触媒上でリバース電流を生じない非発電的な化学反応により完全消費させることが可能である。t2を超えた時刻~t4の直前の時刻までの制御は第1実施形態と同じであるので説明を省略する。

【0049】
次に、時刻t4において燃料電池100を再起動させる場合に関して説明する。まず初めにカソード2への空気導入を開始し、一定流量となったとする。このとき(t4)、水素供給バルブ6を開き、アノード1内に水素を供給する。このとき、パージバルブ7は閉じたままであり、短時間ではあるがアノード1内に酸素と水素が混在した状態となるが、上に説明したように、セラミックス触媒のARSM効果によりリバース電流の発生を防ぐことが出来る。

【0050】
そして、アノード1の圧力が大気圧より高い所定の圧力になったとき(t4')、パージバルブ7を開き、アノード1内に残存する空気を一気に排出する。そして、センサー13により取得される酸素濃度に基づいて算出された空気濃度が所定の値を下回った時点(t5)でパージバルブ7を閉め、循環ポンプ8の作動を開始して燃料電池100を運転させる。ここで、空気濃度の所定の値とは、例えば96%である。なお、時刻t4から時刻t4'まではパージバルブ7が閉じているため、空気は閉じ込められたままなので、t4からt4'までは空気分圧は一定である。なお、カソード2への空気導入をアノード1への水素導入時(t4)に先立ち開始することもでき、この場合、水素濃度をより正確に計測することができ、さらに、カソード2内へ空気が流入することを防止することができる。

【0051】
なお、上述のように、センサー13による空気濃度の取得は必ずしも必要でなく、予め設定された水素流路4Iの体積及び充電時間より、アノード1内の空気濃度の時間変化を求め、アノード1内における空気濃度が減少して混合ガスの空気濃度が100%から96%となるまでに要する時間(t)を算出し、t1からt経過後にパージバルブ7を閉じることとしてもよい。

【0052】
<燃料電池システムの他の側面>
アノード1にセラミックス触媒を用い、電池の停止時に積極的に空気置換する燃料電池100を用いた燃料電池システムについて説明したが、この場合、リバース電流の発生を抑制できるので、カソード触媒に従来のPt/C触媒を用いてもよく、また、従来のPt/CB触媒に代えて、とりわけ電池停止時の高分子電解質膜を介して拡散漏洩する水素雰囲気に弱い材料をカソードの触媒として用いることが可能となった。具体的には、ドープ対象となる金属酸化物を構成する金属の原子価よりも大きい原子価を有する不純物がドープされた金属酸化物を担体とした触媒、例えば、Pt/Nb-SnO、Pt/Ta-SnO、Pt/Sb-SnO等に加え、酸化タングステン系(WO)、酸化インジウム系(In-SnO)、酸化バナジウム系(VOx)、ぺロブスカイト酸化物系(La1-xSr)MO(M:遷移金属)及びPrNiOを担体とした触媒をカソード2に用いることができる。他方、アノード1に従来のPt/C触媒を用い、カソード2に水素に弱いが酸化雰囲気環境では安定なPt/Nb-SnO、Pt/Ta-SnO、Pt/Sb-SnO等に加え、酸化タングステン系(WO)、酸化インジウム系(In-SnO)、酸化バナジウム系(VOx)、ぺロブスカイト酸化物系(La1-xSr)MO(M:遷移金属)及びPrNiOを担体とした触媒を用いた場合について説明する。システムの構成及び動作は図4及び図5又は図6及び図7と同様である。

【0053】
ここで、燃料電池100の運転停止命令を受けてからアノード1内へ空気導入することで、燃料電池100内から水素を排除しているので、従来のPt/CB触媒に代えて水素に弱い材料をカソードに用いることが可能となった。具体的には、ドープ対象となる金属酸化物を構成する金属の原子価よりも大きい原子価を有する不純物がドープされた金属酸化物を担体とした触媒、例えば、Pt/Nb-SnO、Pt/Ta-SnO、Pt/Sb-SnO等に加え、酸化タングステン系(WO)、酸化インジウム系(In-SnO)、酸化バナジウム系(VOx)、ぺロブスカイト酸化物系(La1-xSr)MO(M:遷移金属)及びPrNiOを担体とした触媒をカソード2に用いることができる。ここで、アノード1にセラミックス触媒を用いていないので図1のようなARSM効果はないが、カソード2に用いられる触媒はそれ自体が酸化物でそれ以上酸化されることが無く、従来のPt/CB触媒よりも好ましい。

【0054】
以上、本実施形態に係る燃料電池システム及びその運用方法について説明したが、これらは単なる例示であり、本発明はこれらに限定されない。

【0055】
例えば、水素雰囲気下における電気抵抗よりも酸素雰囲気下における電気抵抗の方が大きくなる特性を有する材料であればよい。また、循環ポンプ8及びバッファタンク5を省略することもできる。また、バッテリー9に代えて、抵抗を設けてもよい。これにより、アノード1から移動した電子が熱エネルギーに変換されることで、アノード1内の水素をすばやく消費させることができる。また、パージバルブ7に加え、空気をアノード1に送り込むポンプを設け、これによりアノード1内の水素と酸素を素早く置換することとしてもよい。また、混合ガス流路45Iを通過するガスの中の水素濃度又は酸素濃度を取得することに代え、アノード1内に設けたセンサーによりアノード1内の水素濃度又は酸素濃度を取得することとしてもよい。また、ガスが逆止弁5rを逆流した場合に備え、逆止弁5rを2つ直列に設けてもよい。さらに、燃料電池100の再起動時にパージバルブ7を開き、アノード1内の圧力と大気圧との圧力差が小さくなったときに、ガスがアノード1内に逆流しないように、大気からアノード1へ向かうガスの流入を防止する逆止弁を混合ガス流路45Iのパージバルブ7より大気側に設けてもよい。さらに、第1実施形態においてセンサー13で酸素濃度を取得してもよく、第2実施形態においてセンサー13で水素濃度を取得してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1:アノード、2:カソード、3:高分子電解質膜、4:水素タンク、4I:水素流路、5:バッファタンク、5I:酸素流路、5r:逆止弁、45I:混合ガス流路、6:水素供給バルブ、7:パージバルブ、8:循環ポンプ、11:CPU、10:スイッチ、9:バッテリー、12:配線、13:センサー、14I:分岐流路、100:燃料電池
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6