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明細書 :ゼオライト含有フィルムを備える構造体及びゼオライト含有フィルムを備える構造体の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-149734 (P2018-149734A)
公開日 平成30年9月27日(2018.9.27)
発明の名称または考案の名称 ゼオライト含有フィルムを備える構造体及びゼオライト含有フィルムを備える構造体の製造方法
国際特許分類 B32B   5/22        (2006.01)
B01D  71/02        (2006.01)
C01B  37/02        (2006.01)
B01D  67/00        (2006.01)
B01D  69/12        (2006.01)
C08K   3/34        (2006.01)
C08L  25/06        (2006.01)
C08L  33/12        (2006.01)
C08L 101/00        (2006.01)
B32B  27/18        (2006.01)
FI B32B 5/22
B01D 71/02
C01B 37/02
B01D 67/00
B01D 69/12
C08K 3/34
C08L 25/06
C08L 33/12
C08L 101/00
B32B 27/18 Z
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2017-047227 (P2017-047227)
出願日 平成29年3月13日(2017.3.13)
発明者または考案者 【氏名】近江 靖則
【氏名】武野 明義
【氏名】上野 恭平
【氏名】堀口 結以
出願人 【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000659、【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4D006
4F100
4G073
4J002
Fターム 4D006GA25
4D006MA02
4D006MA06
4D006MC01X
4D006MC03
4D006NA03
4D006NA39
4D006NA45
4D006NA50
4D006NA64
4D006PA04
4D006PB14
4D006PB32
4D006PB65
4F100AA20
4F100AC04B
4F100AK01B
4F100AK12B
4F100AK25B
4F100BA02
4F100DA11
4F100DJ00A
4F100EJ48A
4F100EJ48B
4F100GB90
4F100JA11
4F100YY00A
4F100YY00B
4G073BA02
4G073BA04
4G073BA63
4G073BA75
4G073BA82
4G073BB05
4G073BB48
4G073BD07
4G073BD16
4G073BD18
4G073CZ54
4G073DZ05
4G073FC04
4G073FC12
4G073FC18
4G073FC19
4G073FC25
4G073FD01
4G073FD04
4G073FD24
4G073GA03
4G073GB02
4G073UA06
4G073UB40
4J002AA001
4J002BC031
4J002BC061
4J002DJ006
4J002FD016
4J002FD206
4J002GD05
4J002GF00
要約 【課題】ゼオライトを含むフィルムと支持体とからなる構造体を提供する。またゼオライトを含むフィルムと支持体とを備えた構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の構造体は、支持体と、ゼオライトを含むフィルムとを備える。ゼオライトを含むフィルムは、ポリマーと、ポリマーの中に均一に分散したゼオライトとを含むゼオライト分散ポリマーフィルムである。本発明の構造体の製造方法は、ゼオライト粉末を溶剤に分散させる分散工程と、ゼオライトとポリマーを混合しフィルム原料を得る原料混合工程と、溶剤キャスト工程と、支持体を溶剤に浸漬する浸漬工程と、支持体にゼオライト分散ポリマーフィルムを巻き付ける巻付け工程と、ゼオライト分散ポリマーフィルム端部を支持体に押圧して固定し構造体を得る固定工程と、を備えている。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
多孔質の支持体と、
前記支持体の表面に配置されたゼオライトを含むフィルムとを備える構造体であって、
前記ゼオライトを含むフィルムが、ポリマーと、前記ポリマーの中に均一に分散したゼオライトとを含むゼオライト分散ポリマーフィルムであることを特徴とする構造体。
【請求項2】
前記ポリマーがポリメタクリル酸メチルまたはポリスチレンであることを特徴とする請求項1記載の構造体。
【請求項3】
前記ゼオライト分散ポリマーフィルムは、前記支持体の表面に、溶剤を介して接着していることを特徴とする請求項1または2に記載の構造体。
【請求項4】
支持体の表面にゼオライト分散ポリマーフィルムを配置した構造体の製造方法であって、
ゼオライト粉末を溶剤に分散させる分散工程と、
前記ゼオライト粉末と前記溶剤との混合物に、ポリマーを添加して混合しフィルム原料を得る原料混合工程と、
前記フィルム原料から、溶剤キャスト法によってゼオライト分散ポリマーフィルムを製造する溶剤キャスト工程と、
前記支持体を溶剤に浸漬する浸漬工程と、
前記支持体に前記ゼオライト分散ポリマーフィルムを巻き付ける巻付け工程と、
前記支持体に巻き付けられた前記ゼオライト分散ポリマーフィルムの端部を前記支持体に溶剤で固定することにより構造体を得る固定工程と、
を備えていることを特徴とする構造体の製造方法。
【請求項5】
摂氏500度以上の温度で焼成する焼成工程をさらに備えることを特徴とする請求項4記載の構造体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質の支持体及び支持体の表面に配置されたゼオライト含有フィルムから成る構造体と、ゼオライト含有フィルムを備える構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なゼオライトは、以下の(式1)で表される、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む含水アルミノケイ酸塩である。
(M,MII1/2(AlSim+n))・xHO ・・・(式1)
ここで、Mはアルカリ金属であり、MIIはアルカリ土類金属であり、n≧mである。
【0003】
ゼオライトは、TO四面体と呼ばれるSiOあるいはAlOの四面体構造を基本構造に持ち、この四面体の頂点のO原子を共有して三次元で無限に連なることで多孔質の結晶となっている。このような骨格構造から、ゼオライトは、分子ふるい、膜反応器、触媒、吸着剤、乾燥剤、イオン交換剤、排ガスの除去剤、センサなどに広く利用されている。
【0004】
結晶構造としてMFI型構造を有するシリカライト膜(silicalite-1膜)は、ゼオライト膜の一種であって、熱的安定性および化学的安定性が高く、約5.5オングストロームの均一な細孔径を有し、疎水性を示す。シリカライト膜は、このような特性から、有機物/水混合液からの有機物の分離回収膜として広く研究されている。
【0005】
ゼオライトのみで膜化した自立膜は、機械的強度が弱いことが多い。このために、アルミナ、ステンレス、ムライト、シリカのような素材を用いた多孔質セラミックス支持体上に製膜される。このような膜は、一般的に支持膜と称されている。ゼオライトの支持膜は、分離膜として広く用いられている。多孔質セラミック支持体としては、円盤型(disk-type)と管状型(tubular-type)のものが知られているが、特に大表面積化に必要な管状支持体上への膜合成が広く研究されている。
【0006】
多孔質セラミックス支持体上へのゼオライト膜の合成方法としては、直接結晶化法(In situ crystallization method)と二次成長法(Secondary growth method)の二種類が知られている。直接結晶化法は支持体上へゼオライト結晶を直接結晶化させ膜化する方法であり、ゼオライト膜の製造に対して最も単純な方法ではあるが、再現性に乏しい場合がある。一方、二次成長法は、支持体表面をあらかじめゼオライト種結晶で被覆し、担持させたゼオライト種結晶層を二次成長させることにより膜化し製膜する方法である。二次成長法によるゼオライト膜の形成は、結晶核形成と結晶成長ステップが別工程となっている膜の製造方法であって、直接合成法と比較して、再現性が高く、より低温かつより短い合成時間で膜合成ができ、膜のマイクロ構造の制御に対して大きな利点がある。
【0007】
上述した理由から、ゼオライト膜の製造には、種結晶を用いた二次成長法が広く使われている。二次成長法によるゼオライト膜を製造する場合、支持体上の均一で連続的な種結晶層は、高性能ゼオライト膜の合成において重要である。多孔質支持体の表面上を種結晶で覆う方法(以下、シーディング法とも言う)として、例えば、ディップコーティング法(dip-coating)、ラビング法(rubbing)、真空シーディング法(バキュームシーディング法、vacuum seeding), 濾過シーディング法(filtration seeding)、ラングミュア・ ブロジェット法(Langmuir-Blodgett)、スピンコーティング法(spin coating)、カチオン性ポリマー処理法(cationic polymer treatment)、静電力法(electrostatic forces)、パルスレーザーアブレーション法(pulsed laser ablation)、スパッタリング法(sputtering)及び泳動電着法(electrophoretic deposition)のような方法が開発されている。しかし、高性能ゼオライト膜を調製するための再現性の高いシーディング方法は開発されていない。ディップコーティング法は、現在広く使われている種結晶の生成方法の一つである。しかし、支持体を確実且つ完全に被覆するためには、ディップコーティングの工程を繰り返す必要がある。また、大きなゼオライト種結晶もしくは支持体の細孔径は重力の増加もしくは弱い毛管力といった現象によってその効果が減少する。さらに、一般にディップコーティング法は、非常になめらかで均一な支持体表面が要求されることが知られており、直径が1.0μmを超える細孔をもつ支持体では、再現性が低いことが報告されている。ラビング法は単純であるが、ラビングの工程を繰り返した後でさえ支持体上に均一な種結晶層を得ることは難しい。真空シーディング法は、異なる厚さを有する種結晶層を調製するために制御可能な方法であるが、小さなゼオライト種結晶は、低い圧力差の下でさえ支持体中に簡単に引きつけられ、支持体細孔中のゼオライト結晶は流体透過の妨げとなる。また、その他のシーディング法は支持体上に種結晶を堆積するときの工程の複雑さまたは再現性の低さなどの点から一般的に使われていない。上記で述べたように、従来のシーディング法では、支持体上の種結晶層は支持体や種結晶の特性に左右され、均一で連続的な種結晶層を得るのは難しく、操作は複雑であり、再現性も低い。したがって、産業的な大規模スケールでのゼオライト膜調製のために、単純で再現性の高いシーディング方法の開発が望まれている。
【0008】
水熱合成によるゼオライト膜の製造方法として、特許文献1から6を示す。特許文献1には、ハイシリカゼオライトの種結晶をハイシリカゼオライト膜用多孔質シリカ基体上にpH4以下で浸漬塗布した後、水熱合成法により種結晶を二次成長させてハイシリカゼオライト膜を形成する技術が開示されている。特許文献2には、Alを含まない多孔質基体を、ゼオライト種結晶分散液に浸漬し、次いで多孔質基体を分散液から引き揚げることで、多孔質基体の表面に種結晶を塗布し、種結晶が塗布された多孔質基体を、Al/Siモル比が0よりも大きく0.050以下となるように混合した膜形成用ゾルに浸漬し、水熱合成法により多孔質基体の表面に塗布された種結晶を二次成長させてゼオライト層を形成する技術が開示されている。特許文献3には、シリコン源(Si源)、アルミニウム源(Al源)、アルカリ源および水を含む原料液を準備する第1工程と、種結晶を準備する第2工程と、多孔質支持体を準備する第3工程と、多孔質支持体に種結晶を担持させる第4工程と、水熱処理により、種結晶を起点にゼオライトの多結晶体を成長させる第5工程と、からなるゼオライト膜の製造方法が開示されている。特許文献4には、多孔質支持体上にゼオライト種晶を付着させた後、ゼオライト膜を水熱合成により形成する技術が開示されている。特許文献4では、多孔質支持体にゼオライト種晶を付着させるための方法として、ゼオライト種晶の粉末を溶剤に分散させた分散液を多孔質支持体上に塗布する方法のほか、多孔質支持体製造時に原料の一部としてゼオライト種晶粉末を混入させることで、多孔質支持体にゼオライト種晶を付着させる方法も開示されている。塗布の方法としては、ゼオライト種晶を含む分散液を多孔質支持体に単純に滴下する方法、ゼオライト種晶を含む分散液に多孔質支持体を浸漬する方法、スピンコート、スプレーコート、ロールコート、スラリーの塗布、濾過など汎用されている方法が開示されている。特許文献5には、シリコン、アルミニウム、アルカリ金属、酸素及び有機構造規定剤を含んでなるアルミノシリケートゲルを製造する工程と、アルミノシリケートゲルを無機系多孔質支持体に塗布する工程と、アルミノシリケートゲルを塗布した無機系多孔質支持体を熱処理する工程を含むゼオライト分離膜の製造方法が開示されている。特許文献6には、シリカライトの種晶を多孔質基板に塗布した後、水熱合成法及び/又は水蒸気処理によって種晶を二次成長させてゼオライトに転換する手法により合成することを特徴とするゼオライト膜の製造方法が開示されている。
【0009】
フィルムとゼオライトを含む特許文献として以下のものが知られている。特許文献7には、(a)ホスト親水性ポリマーを、所定量の不溶性無機ナノ粒子、及び非溶媒添加物と共に溶媒中に分散させて、ポリマー—無機溶液を形成する工程と、(b)フッ化表面変性高分子(SMM)をポリマー—無機溶液に加えて、ポリマー—無機ナノ粒子SMMブレンドを形成する工程と、(c)ポリマー—無機ナノ粒子ブレンドをキャストし、溶媒を所定の時間、室温で蒸発させて、キャストフィルムを形成する工程と、(d)系統的に蒸発の時間を変化させて、蒸発時間が無機ナノ粒子の底層での沈殿、及び疎水性SMMの上層への移動に及ぼす影響を調査し、及び変更する工程と、(e)溶媒の蒸発を制御する特定の置換手段を有するカバーでキャストフィルムを覆って、無機ナノ粒子の底層での沈殿、及び疎水性SMMの空気/ポリマー界面への移動により多くの時間を許容する工程と、(f)工程(c)で得られたキャストフィルムを水中に浸漬してゲル化する工程とを含む、膜蒸留の複合混合マトリックス親水性/疎水性膜の製造方法が開示されている。特許文献8には、エネルギーを受けて蒸発する成膜原料と、成膜原料の蒸発を促進させる陽イオンを孔内に保持する多孔質材料とを有し、成膜原料が無機珪素化合物であり、多孔質材料が珪素系の多孔質材料である蒸着源材料を準備し、蒸着源材料にエネルギーを与えて成膜原料を蒸発させ、蒸発した成膜原料を含む膜を基材上に形成することを特徴とする成膜方法が開示されている。特許文献9には、円筒形の支持体上に、ラビング法、吸引法、含浸法等によってゼオライトの微結晶を担持させ、水熱合成によってゼオライトを成長させる工程が開示されている。特許文献10には、多孔性支持膜と、界面重合によって多孔性支持膜上に重合された水透過性の薄膜と、複合膜を形成するために薄膜上にコーティングされた、薄膜およびナノ粒子とは異なる化学組成を有する表面コーティング物質を含む混合物と、を含み、コーティングするナノ粒子がゼオライトである複合膜の形成方法が開示されている。特許文献11には高分子マトリクスフィルムを、キャスト多孔質高分子支持体中に分散しているミクロ粒子およびナノ粒子の範囲のサイズの粒子を有するキャスト多孔質高分子支持体上で重合させることを含む、圧縮抵抗性複合薄膜を製造する方法であって、粒子がゼオライトを含んでいる薄膜の製造方法が開示されている。特許文献12には、多孔質セラミック製触媒支持体に触媒塗膜または触媒支持塗膜を施すのに先立って、支持体に下塗りを施す方法が開示されている。この下塗りを施す方法は、水と、少なくとも一種類の塗膜材料とを含む混合液からなる塗膜を支持体に施すステップと、支持体を第1のマイクロ波の場に曝して前記塗膜を乾燥させ、重合した膜を形成するステップと、ゼオライトと少なくとも一種類の触媒金属とを含む触媒混合液をセラミック製支持体に塗布する工程を備えている。特許文献13には、ナノ複合膜を形成するための方法が開示されている。特許文献13のナノ複合膜は、ポリマーマトリクスおよびそのポリマーマトリクス内にゼオライトを含むフィルムを備えている。複合膜を製造する方法は、極性液体と第一のモノマーとを含む極性混合物を提供するステップと、非極性液体と第二のモノマーとを含む非極性混合物を提供するステップと、極性混合物または非極性混合物のいずれかにおいてナノ粒子を提供するステップと、極性混合物と非極性混合物とを第一のモノマーが第二のモノマーと反応するのに十分な温度で接触させて界面重合させてポリマーマトリクスを形成するステップとを備えている。特許文献14には、多孔性下層にゼオライトフィルムのための合成溶液をモジュール中で適用してゼオライト層の結晶化を起こし、続いて少なくとも350℃の温度で酸素含有気体を通しながらか焼することを特徴とする膜モジュールの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【0010】

【特許文献1】特開2015-033688号公報
【特許文献2】特開2016-175073号公報
【特許文献3】特開2016-174996号公報
【特許文献4】特開2015-174081号公報
【特許文献5】特開2015-150527号公報
【特許文献6】特開2008-188564号公報
【特許文献7】特表2014-502921号公報
【特許文献8】特開2011-246776号公報
【特許文献9】特開2007-54772号公報
【特許文献10】特表2010-540215号公報
【特許文献11】特表2010-508140号公報
【特許文献12】特表2009-513338号公報
【特許文献13】特表2008-535648号公報
【特許文献14】特表平08-501246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
二次成長法によるゼオライト膜の製造方法において、支持体上の均一で連続的な種結晶層は、高性能なゼオライト膜の合成にとって重要である。しかし、従来のシーディング法では、支持体上の種結晶層は支持体や種結晶の特性に左右され、均一で連続的な種結晶層を得るのは難しく、操作は複雑であり、再現性も低かった。
【0012】
本発明はかかる実情に鑑みてなされものであって、支持体上に均一で連続的なゼオライトの種結晶層を形成することのできる、ゼオライト含有フィルムを備えた構造体を提供すること、および支持体の特性にかかわらず高品質なゼオライトの種結晶層を容易に形成可能な方法を提供することを解決すべき課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の構造体は、多孔質の支持体と、支持体の表面に配置されたゼオライトを含むフィルムとを備える構造体である。本発明の構造体は、ゼオライトを含むフィルムが、ポリマー(重合体)と、ポリマーの中に均一に分散したゼオライトとを含むゼオライト分散ポリマーフィルムであることを特徴とする。
【0014】
本発明の構造体は、ポリマーがポリメタクリル酸メチルまたはポリスチレンなど、低沸点溶剤に可溶なものであることが好ましい。
【0015】
本発明の構造体は、ゼオライト分散ポリマーフィルムが、支持体の表面に溶剤を介して接着していることが好ましい。
【0016】
本発明の構造体は、支持体が溶剤に溶けないことが好ましい。
【0017】
本発明はまた、支持体の表面にゼオライト分散ポリマーフィルムを配置した構造体の製造方法を提供する。本発明の製造方法は、ゼオライト粉末を溶剤に分散させる分散工程と、ゼオライト粉末と溶剤との混合物に、ポリマーを添加して混合しフィルム原料を得る原料混合工程と、フィルム原料から、溶剤キャスト法によってゼオライト分散ポリマーフィルムを製造する溶剤キャスト工程と、支持体を溶剤に浸漬する浸漬工程と、支持体にゼオライト分散ポリマーフィルムを巻き付ける巻付け工程と、支持体に巻き付けられたゼオライト分散ポリマーフィルム端部を支持体に押圧して固定することにより構造体を得る固定工程と、を備えていることを特徴とする。
【0018】
本発明の構造体の製造方法は、摂氏500度以上の温度で焼成する焼成工程をさらに備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のゼオライトを含むフィルムを備える構造体は、ゼオライトがポリマー中に均一に分散したゼオライト分散ポリマーフィルムが支持体上に配置されており、このゼオライト分散ポリマーフィルムから、ゼオライトの均一で連続的な種結晶層を容易に製造することができる。
【0020】
本発明の構造体の製造方法は、ゼオライト分散ポリマーフィルムを支持体上に巻きつけているので、種結晶が支持体細孔内に侵入することを防ぐことができるため、支持体の細孔径や形成する種結晶の大きさにかかわらず、均一な種結晶層を形成することができる。
【0021】
ゼオライトの種結晶の担持量を調整する場合、フィルムに分散させる種結晶量を変化させることで容易に調製可能である。そして1回の工程によって、均一で連続的な種結晶層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の実施例に従った構造体の製造方法のフローチャートである。
【図2】図2は、本発明の構造体の製造工程を模式的に示す図である。
【図3】図3は、実施例1の支持体1表面のSEMによる図面代用写真である。
【図4】図4は、実施例1のシリカライト分散ポリマーフィルム2を配置した構造体3のSEMによる図面代用写真である。
【図5】図5は、実施例1の摂氏550度で焼成した構造体3のSEMによる図面代用写真である。
【図6】図6は、実施例1の完成した構造体3と構造体3から製造したシリカライト膜のXRDパターンを示す図である。図6(a)は構造体3、図6(b)は構造体3から製造したシリカライト膜のXRDパターンである。
【図7】図7は、実施例1の構造体3から製造したシリカライト膜のSEMによる図面代用写真である。図7(a)は表面の写真であり、図7(b)は断面の写真である。
【図8】図8は、実施例1のシリカライト分散ポリマーフィルムの原料であるシリカライト種結晶のSEMによる図面代用写真である。
【図9】図9は、実施例2の支持体1表面の図面代用写真(図9(a))と、焼成後の構造体3表面のSEMによる図面代用写真(図9(b))である。
【図10】図10は、実施例3の焼成後の構造体3表面の図面代用写真である。
【図11】図11は、実施例4の焼成後の構造体3表面の図面代用写真である。
【図12】図12は、実施例4の焼成後の構造体3表面の図面代用写真である。

【実施例】
【0023】
(実施例1)
以下、本発明にかかる構造体3の製造方法および本発明の構造体3から得られるゼオライト膜の特徴について、ゼオライト膜の一種であるシリカライト(Silicalite-1)膜を製造した例を挙げて説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施例に従った構造体3の製造方法のフローチャートである。図2は、構造体3の製造工程を模式的に示した図である。本実施例では、ポリマーとしてポリメタクリル酸メチル(分子量350,000)、溶剤としてアセトンを用いている。溶媒として、クロロホルム(純度99.9%)を用いている。ゼオライト粉末として、MFI型ゼオライトであるシリカライト粉末を用いている。図8に、シリカライト粉末の図面代用写真を示す。支持体として、二酸化ケイ素で構成された円筒を用いている。
【0025】
ステップ1の分散工程で、シリカライト粉末と溶剤を混合し超音波にて分散処理を行った。ステップ1の分散処理後、ポリマーを添加し、スターラーで1日攪拌して混合し、フィルム原料を得た(ステップ2)。このとき、ポリマーは溶剤に対して2.5wt.%となるように原料を混合した。
【0026】
次に、フィルム原料を製膜基板上に移し、溶剤キャスト法にて成膜し、シリカライト分散ポリマーフィルム2を得た。本実施例の溶剤キャスト工程では、温度を室温(摂氏25度)に保持した(ステップ3)。成膜したシリカライト分散ポリマーフィルム2を大気圧下および真空下で乾燥した(ステップ4)。
【0027】
シリカライト分散ポリマーフィルム2と支持体1からなる構造体3を構成するために、支持体1を溶剤中に1分間程度浸漬した(ステップ5)。これにより、支持体1と溶剤とをなじませた。支持体1を溶剤から取り出し、ただちに支持体1にシリカライト分散ポリマーフィルム2を巻きつけた(ステップ6)。シリカライト分散ポリマーフィルム2の巻き終わりの箇所は、溶剤を含ませた治具でなでてポリマーの一部を溶かすことで接着した(ステップ7)。シリカライト分散ポリマーフィルム2を巻き付けた支持体1を、室温で1時間乾燥させて構造体3を得た(ステップ8)。
【0028】
乾燥後の構造体3は、ポリマー素材を焼き飛ばす焼成処理を行うことで、支持体1上にシリカライトの種結晶のみを塗布した状態とすることができる。焼成条件は、たとえば、摂氏550度で12時間とすることができる。
【0029】
図3に、シリカライト分散ポリマーフィルム2を配置する前の支持体1表面のSEM(走査型電子顕微鏡)によって撮像した図面代用写真を示す。図4に、シリカライト分散ポリマーフィルム2を配置した後の構造体3のSEMによる図面代用写真を示す。
【0030】
図5に、摂氏550度で焼成した構造体3のSEMによる図面代用写真を示す。構造体3を焼成すると、ポリマーが消失して支持体1の表面にシリカライト種結晶のみが担持され支持体1上に連続的で均一な種結晶層が形成された。
【0031】
焼成により支持体1からシリカライト種結晶が欠落することはなかった。これは、焼成をすることで支持体1とシリカライト間の末端OH基による脱水重縮合により、支持体1とシリカライト種結晶層間に新たなSi-O-Si結合が形成されたためであると考えられる。
【0032】
図6に、完成した構造体3のXRDパターンを示す。図6の符号aに示す測定結果が、構造体3のXRDパターンである。符号bに示す測定結果が、構造体3から製造されたシリカライト膜のXRDパターンである。構造体3にMFI型ゼオライト特有のピーク(2θ=8-10°、23-25°)が観察され、支持体上にシリカライトが存在していることが確認された。
【0033】
(実施例2)
本実施例では、種結晶の粒径よりも支持体の細孔径の方が大きい支持体にシリカライト分散ポリマーフィルム2を巻き付け、構造体3を製造した。支持体として、酸化アルミニウムで構成された円筒を用いている。その他の工程条件については、実施例1と同様であるので、重複説明を割愛する。
【0034】
図9(a)に、本実施例の支持体1表面のSEMによる図面代用写真を示す。図9(b)に、本実施例の支持体1にシリカライト分散ポリマーフィルム2を巻き付けて焼成した構造体3表面のSEMによる図面代用写真を示す。
【0035】
図9(a)に示したとおり、支持体は直径が1μm以上の細孔を有しており、表面の凹凸も大きい。本実施例で用いたシリカライトの種結晶の粒径は、1μm程度であり、種結晶の粒径よりも支持体の細孔径の方が大きい。そのため、従来のシーディング方法では、支持体細孔中にシリカライトの粒子が入り込み、均質な成膜が困難となり、高品質なゼオライト膜が得られないという恐れがあった。しかしながら、本実施例の構造体3を焼成することにより、均一で連続的な種結晶層を支持体1の表面に形成できることが明らかとなった。この結果から、シリカライト分散ポリマーフィルム2を巻き付けて種結晶層を形成する方法は、種結晶の粒径よりも大きな細孔径を有し、表面粗さが大きな支持体1上でさえもシリカライトの種結晶層を製造することが可能であり、多方面での応用が可能となると考えられる。
【0036】
(実施例3)
本実施例では、ポリマーとして、分子量が350,000のポリメタクリル酸メチルを用いた。そして、ステップ3の溶剤キャスト工程で、製膜基板を摂氏40度~60度に加温して、成膜を行った。その他の工程条件については、実施例1と同様であるので、重複説明を割愛する。
【0037】
溶剤キャスト工程の温度を60度に上昇させて製造したシリカライト分散ポリマーフィルム2は室温条件で成膜したフィルムより厚みが増し、硬度が増加する傾向があった。しかし、このシリカライト分散ポリマーフィルムを巻き付けて焼成した構造体3表面のSEMによる図面代用写真(図10)から、フィルム特性の差はあるが、実施例1のフィルムと同様に、均一で連続的なシリカライトの種結晶層を得ることができた。この傾向は、工程を摂氏40度に維持した場合も同様であり、またポリマーの種類にかかわらず同じ傾向が認められた。
【0038】
(実施例4)
本実施例では、ポリマーとして、分子量が350,000~996,000のポリメタクリル酸メチルを用いた。そして溶媒であるクロロホルムに対するポリメタクリル酸メチルの比率を変更し、より多くの溶媒を使用した状態で溶剤キャスト工程により、シリカライト分散ポリマーフィルムを製造した。このときのフィルム温度は、摂氏60度に設定して成膜を行った。その他の工程条件については、実施例1と同様であるので、重複説明を割愛する。
【0039】
図11に、分子量が、350,000のポリメタクリル酸メチルを1.8wt.%用い、溶剤キャスト工程でのフィルム温度を摂氏60度に維持して製造したシリカライト分散ポリマーフィルム2を巻き付けて焼成した構造体3表面の図面代用写真を示す。
【0040】
ポリマーの分子量を変えて、同様の製造方法でシリカライト分散ポリマーフィルムを形成し、構造体3を製造した結果を図12に示す。図12は、分子量が600,000のポリメタクリル酸メチルを用いたシリカライト分散ポリマーフィルム2を巻き付けて焼成した構造体3表面の図面代用写真である。溶媒量を増加させることで、シリカライト分散ポリマーフィルム2は柔軟になり、分子量を増加させたフィルムからも均一で連続した種結晶層を有する構造体3が得られた。
【0041】
(構造体を使用して製造したシリカライト膜)
シリカライト分散ポリマーフィルムを備えた本発明の構造体を焼成することにより、支持体の表面にシリカライトの種結晶を塗布した状態にすることができる。このような、焼成処理後の構造体を用い、さらに、SiO:0.05TPABr:0.05NaOH:75HOの組成のゲルを調製して二次成長法により製膜することで、シリカライト膜を支持体1上に成膜することができる。
【0042】
シリカライト膜の製造方法を、さらに詳細に述べる。シリカ源としてコロイダルシリカを用い、有機構造規定剤としてTPABrを用い、鉱化剤としてNaOHを用い、イオン交換水を用いた。各試薬をSiO:0.05TPABr:0.05NaOH:75HOのモル組成になるように膜合成のための二次合成ゲルを調製して、撹拌条件下、室温で1時間熟成させた。次に、本発明の構造体をテフロン治具に取り付け、構造体および合成ゲルを、テフロン製内筒を有する120mlオートクレーブへ導入し、静置条件下、自己圧下において摂氏160度で24時間水熱処理した。得られたシリカライト膜は温水洗浄した。その後、摂氏60度で一晩乾燥した。さらに、ゼオライト細孔内に存在する有機構造規定剤を除去するために摂氏375度で60時間焼成することで、シリカライト膜が得られる。
【0043】
シリカライト膜を成膜した後の構造体3のXRDパターンを図6に符号bで示している。焼成処理を行い、さらにシリカライト膜を成膜した構造体3は、MFI型ゼオライト膜特有のピークが観察され、他の不純物層のピークは観察されなかった。
【0044】
構造体3上に成膜したシリカライト膜のSEM像を図7に示す。得られた膜はシリカライト膜特有の形態を示し、支持体上に緻密で連続的なシリカライト層の形成が確認された。図6および図7の結果より、シリカライト分散ポリマーフィルムを用いたシーディングと、その後の焼成により、ポリマー成分は完全に消失し、本研究のシーディング法がゼオライト膜の合成に対して負の影響がないことが明らかとなった。
【0045】
得られたシリカライト膜の分離性能を、浸透気化(PV)試験を用いたエタノール/水混合溶液の分離によって評価した。供給液はEtOH/water=10/90(w/w)、操作温度50度である。
【0046】
分離係数α、透過流束J[kgm-2-1)]は以下の式を用いて算出した。
【0047】
分離係数
αethanol/water
=(Cethanol/Cwaterpermeate/(Cethanol/Cwaterfeed
【0048】
透過流速
J=(permeate[kg])/(membrane area[m])
× (permeate time[h])

【0049】
本発明の構造体3を用いて製造したシリカライト膜は、91の分離係数(透過液エタノール濃度91wt%)と、2.49kgm-2-1の透過流束を示した。
【0050】
一般に、浸透気化分離係数と透過流束には二律背反の関係があり、分離係数が高い膜では透過流束が低くなる。従来の一般的なゼオライト膜では、分離係数が60を超える高いエタノール選択性を有する膜の透過流束は2kgm-2-1を超えるものはほとんどなかった。これに対して、実施例1の構造体を用いて製造したシリカライト膜は、高い分離係数(60以上)を示し、かつ高い透過流束(2kgm-2-1以上)を示した。実施例1の構造体3を用いて得られるシリカライト膜は、組織が密で且つ連続的であり、膜としての欠陥がなく、その結果高い分離係数を示す。しかも、支持体1の細孔内に侵入したシリカライト種結晶による流体透過抵抗がないため、高い透過流束が得られることが確認された。
【0051】
以上述べてきたとおり、本発明のゼオライト分散ポリマーフィルムを備えた構造体を用いるゼオライト種結晶層の製造技術は、単純な工程によって高品質な種結晶の層を形成することが可能である。
【0052】
表1に、本発明の種結晶層を用いて製造した5個のシリカライト膜について、その分離係数、透過流束を測定した結果の例を示す。
【0053】
【表1】
JP2018149734A_000003t.gif

【0054】
本発明の製造技術を適用したゼオライトの種結晶層は、品質が非常に安定しており、この種結晶層を用いて製造したシリカライト膜の特性は非常に再現性が高いことが明らかとなっている。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のゼオライトの均一で連続的な種結晶層を形成することのできる、ゼオライト含有フィルムを備えた構造体に関する技術は、ゼオライト膜の製造に利用することができる.本発明の技術によって製造されるゼオライト膜は、膜分離、膜反応器、センサ、有機物/水混合液からの有機物の分離回収膜として利用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 支持体
2 シリカライト分散ポリマーフィルム
3 構造体
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
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【図10】
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【図11】
10
【図12】
11